JIMMY PAGE『OUTRIDER』(1988)
ジミー・ペイジがLED ZEPPELIN解散後、初めて本格的に取り組んだソロ“ロック”アルバムが、1988年に発表された本作。ペイジは1982年に映画『ロサンゼルス』(原題:DEATH WISH II)のサウンドトラックを発表しており、ソロ作品としては同作が1枚目ということになりますが、当然ながらファンが求めるサウンドではなかったし、その後ポール・ロジャース(FREE、BAD COMPANY)らと結成したTHE FIRMもZEPPELINとはかけ離れたブルースロックだったし。で、1985年の『LIVE AID』でZEPPELINが“擬似”再結成したり、1988年のAtlantic Records 40周年記念ライブでボンゾ(ジョン・ボーナム)の息子、ジェイソンを迎えたZEPPELIN“ほぼ”再結成があったりで、ファン的には「いいから早くちゃんとやれ!」とツッコミを入れたくなる日々がずーっと続いていたわけです。
が、当時高校生だった自分にとっては、この『OUTRIDER』がリアルタイムで初めて接する「ペイジがZEP的ロックをやる」アルバムだったわけで。しかもリリース直前にAtlantic Records 40周年記念ライブをテレビ(そう、当時は深夜にこういうのをちゃんと地上波で放送してくれたんですよ!)で観たこともあり(確か、番組の合間に本作のCMもやってましたよね)、期待は高まる一方だったわけです。
ちょうど本作リリース数ヶ月前に、ロバート・プラントがソロアルバム『NOW AND ZEN』を発表したばかり。こちらはそれ以前のソロ作と比べれば若干開き直った作風(当時はそんなこと微塵も思わなかったけど)で、中にはZEPナンバーをサンプリングした楽曲「Tall Cool One」もあったし、同曲と「Heaven Knows」ではかのペイジがギターでゲスト参加しており、それなりに話題になったばかりでした。
で、『OUTRIDER』ですが。確かにペイジらしさ、ZEPっぽさは感じられます。1曲目「Wasting My Time」は『PHYSICAL GRAFFITI』(1975年)のアウトテイクと言われたら信じちゃうような楽曲だし、プラントが自身のソロ作参加のお礼でゲスト参加した「The Only One」も『CODA』(1982年)に入ってそうなタイプだし。「Wanna Make Love」も……まぁZEP寄りかなと。途中で入る転調も“らしい”しね。
そう、アナログでいうA面(M-1〜5。うちM-3、5はインスト)は確かにペイジ、頑張ってZEPを演じてるんですよ。しかし、アナログB面(M-6〜9)は完全に別モノ。もっとレイドバックしたブルースロックといいますか、そもそもボーカルがプラント的なシンガーじゃない。
あ、言い忘れましたが、「Wasting My Time」「Wanna Make Love」を歌うのは、ブルーアイドソウルシンガーのジョン・マイルズ。そこそこプラントに似せようと頑張ってます、というか当のプラントがもはやハイトーン無理なので、こっちのほうがプラントっぽいといいますか(笑)。
で、B面で歌っているのがイギリスの名ブルース/ソウルシンガーのクリス・ファーロウ。かつてROLLING STONE「Out Of Time」のカバーをヒットさせた人ですね。ファーロウのボーカルに合わせて、ペイジもレイドバックしまくり、というか趣味丸出しです。レオン・ラッセルのカバー「Hummingbird」や、「Prison Blues」「Blues Anthem (If I Cannot Have Your Love…)」なんていうまんまなオリジナル曲まであり、もう聴いてるこっちが恥ずかしくなるくらい(嘘ですが)。
そういうこともあり、当時は期待値が高かっただけに「満足45%、よくわかんないけどわかった気になってる55%」ぐらいの比率で何度も聴き込みました。そういうこともあり、嫌いになれない1枚なんですよね。
あ、インスト曲が良いです(そこ?)。すごく“ソロアルバム”っぽくて、良いです。別にペイジはジェフ・ベックやクラプトンみたいにエレキギターをバリバリ弾きまくったインストソロを作らなくてもいいんです。こういう曲が聴けたら……っていうのは擁護しすぎ?
まぁ何はともあれ、このアルバムがなかったらその後のCOVERDALE・PAGEも、PAGE/PLANTもなかったわけで。そういう意味でも1990年代以降のZEPPELINワークスを語る上で非常に重要な1枚なわけです。
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