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2017年5月20日 (土)

MEGADETH JAPAN TOUR 2017 – Special Guest ANTHRAX@Zepp DiverCity(2017年5月18日)

2015年の『LOUD PARK 15』以来の来日公演となったMEGADETH。今回はANTHRAXがスペシャルゲストとして参加し、さらにオープニングアクトとしてHER NAME IN BLOOD(5月17日、19日公演)、THE冠(5月18日公演)が出演するとなれば、観ないわけにはいきません。本稿では、THE冠が“BIG4”と同じステージに立った18日のZepp DiverCity公演について記します。

当日、筆者は夕方からのlynch.へのインタビューを終え、その足でお台場へ移動。電車の中でTwitterのタイムラインをチェックすると……そこには悪い冗談が。英文でSOUNDGARDEN のシンガー、クリス・コーネル急逝」とあったのです……いやいや、意味がわからない。お台場に着くまで、とにかくさまざまな海外サイトを巡回し、この情報が間違いない事実であることが確認できました。現地時間5月17日、SOUNDGARDENがデトロイトでのライブを終えた後、滞在先のホテルで亡くなった、と。

そんなどんよりとした気持ちのまま、自分はこれから最高になること間違いなしのスペシャルライブを観なくてはいけないのか……なかば絶望にも似た気分の中、18時過ぎに会場入り。20分後には、THE冠が晴れの舞台に立つというのに……。

ですが、THE冠による究極のエンタテインメント・メタルショーによって、自分の目の前を覆っていた暗い霧は一気に晴れることになります。開場20分後にも関わらず、フロアは半分以上埋め尽くされた状態。オープニングSEが鳴り始めると同時に客席からは「カンムリーッ!」の声。バンドメンバー、そして冠徹弥がステージに登場すると、「よろしくお願いします!」の一声からライブに突入します。

1曲目は「帰ってきたヘビーメタル」。とてもオープニングアクトとは思えないほどの盛り上がりで、フロアにはいつの間にかモッシュやクラウドサーファーの姿も。コール&レスポンスでも思った以上のリアクションがあり、MCでは冠さんが「ウソ? (お客さん)こんなにあったかいの? よかったーっ!」と喜ぶ一幕もありました。続けて彼は「このオープニングアクトという役割は自分たちをアピールする場じゃない、次のANTHRAXにつなぐための役割りだ」と宣言。以降も時に激しさで、時にコミカルさで観客を掌握していきます。「こんな舞台に立てると思ってなかったです。25年ヘヴィメタルを続けてきて、本当によかったです」と感無量の冠さんは、ラストナンバー「担がれた冠」で会場をお祭り状態へと一変させ、約30分にわたるステージを完遂。この日の彼らのステージは間違いなく、国境の垣根をぶち壊すほどのものでした。

セットリスト
01. 帰ってきたヘビーメタル
02. 哀罠メタル
03. 糞野郎
04. 初志冠徹
05. 担がれた冠

THE冠がその役目を全うしたあと、ステージにはANTHRAXのセッティングが用意されていきます。場内のBGMがIRON MAIDEN「The Number Of The Beast」に切り替わると、場内のボルテージも一気に加速。曲終わりと同時に暗転すると、BLUES BROTHERSでおなじみの「I Can't Turn You Loose」が流れ始めます。さあ、ここからがショーの始まり。古くからのスラッシュファンにはおなじみの、あの不穏なギターフレーズが場内に響き渡ります。ANTHRAXの1曲目は今から30年前に発売された名作アルバム『AMONG THE LIVING』(1987年)のオープニングナンバー! ミドルテンポのリズムに合わせてオーディエンスが拳を上げ続け、テンポアップしたタイミングにジョーイ・ベラドナ(Vo)が猛ダッシュでステージに登場。30年という歳月の流れをまったく無視した、非常にアグレッシヴな歌と演奏でオーディエンスを圧倒します。スコット・イアン(G)のザクザクと気持ちよいリフ、チャーリー・ベナンテ(Dr)の軽やかさと重さを兼ね備えたリズム、フランク・ベロ(B)の激しく動きながら奏でられるバキバキのベース、そしてジョナサン・ドネイズ(G)が奏でる流麗なギターソロは、昨年11月に『KNOTFEST JAPAN 2016』で観たときよりもさらに存在感を増しています。おそらく会場の規模感や音響関係の影響もあるかもしれませんが、バンドとしては今がベストと言わんばかりのパフォーマンスが次々と繰り出されていきます。

そもそも、この日のセットリスト自体が『AMONG THE LIVING』30周年ライブと言われても不思議じゃないくらいの内容で、当日演奏された9曲のうち同作から4曲も披露。それ以外には「Madhouse」「Antisocial」といったおなじみの楽曲に、直近2作からの3曲という「ファンの求めるANTHRAX」と「バンドがプッシュしたい今のANTHRAX」を絶妙に織り交ぜたベスト選曲。「Breathing Lightning」や「Blood Eagle Wings」といった近作からの楽曲には80年代の彼らにはなかった個性も強く感じられるものの、約60分のセットリストの中で程よいアクセントになっていたし、それによってフロアのテンションがガタ落ちするということもなかった。結局、ANTHRAXは終始アゲ状態のまま、ラストの「Indians」まで突っ走り、ジョーイはご機嫌の様子でRAINBOW「Long Live Rock 'n' Roll」を熱唱してステージをあとにしました。

セットリスト
01. Among The Living
02. Caught In A Mosh
03. Madhouse
04. Fight 'Em 'Til You Can't
05. Breathing Lightning
06. Efilnikufesin (N.F.L.)
07. Blood Eagle Wings
08. Antisocial
09. Indians

30分近い転換を経て、いよいよこの日の主役・MEGADETHの登場。ステージセットはANTHRAXとは異なり、3つのLEDスクリーンが用意されただけのシンプルなもの。再び場内が暗転し、SEに乗せてスクリーンにMEGADETHのロゴが映し出されたと同時に、突如「Hangar 18」からライブに突入します。ステージ中央にはデイヴィッド・エレフソン(B)、そのすぐそばにデイヴ・ムステイン(Vo, G)、キコ・ルーレイロ(G)が立ち、後方にはヘッドフォンをした新加入のダーク・ヴェルビューレン(Dr)が構える。歌パートになるとムステインがマイクの前に移動し、そのヒステリックな歌声を会場中に響き渡らせる。早くもフロアにはムステインに合わせて歌う者、激しくヘッドバンギングする者、モッシュとも呼び難い激しい動きをする者などが続出。そのまま「Wake Up Dead」へとなだれ込むとフロアの熱気はさらに上昇し、この時点で今日のライブが最高のものになることは確約されたも同然です。当然、筆者自身も開演前に知った“あの”出来事のことをすっかり忘れさせられていたのですから……。

この日のセットリストは前日の大阪公演とほぼ同じもので、一部曲順が変わった程度。けど、そんなことどうでもいい!というほどに観客は次々繰り出される名曲群、そして最新アルバム『DYSTOPIA』(2016年)からの楽曲に興奮させられ、気づけば頭の中が空っぽになるまでヘドバンし続けていた。新ドラマーのダークは個人的にSOILWORKでの仕事ぶりを高評価していただけに、MEGADETHでもその正確無比のプレイぶりを発揮してくれ、改めて適任だなと実感させられました。また、キコもインテレクチュアルスラッシュメタルと呼ばれた80年代の楽曲、マーティ・フリードマンを迎えより正統派メタルへと進化した90年代の楽曲、さらなるオリジナリティを確立させたゼロ年代以降の楽曲を難なくプレイしつつ、そこに彼ならではのオリジナルなフレージングを織り交ぜることでその個性を提示。ガットギターを使った「Conquer Or Die!」あたりはマーティと比較されてもおかしくないけど、ここで改めてキコがマーティの代役でもなんでもなく、「あのANGRAのキコ・ルーレイロがMEGADETHで弾いてるんだ!」と強く印象づけることに成功したのではないでしょうか。

ムステインは終始ご機嫌で、曲間のMCでは笑顔を見せつつ日本のファンに対する感謝の言葉を述べる。1991年に初めてMEGADETHのライブを観たときに感じた、あのヒリヒリした感覚はもうそこにはなかったけど、今はもうこれでいい。いつ死んでもおかしくなかったムステインが、今日もこうしてステージに立ち、過去の代表曲とともに新曲をプレイしてくれるのだから。『DYSTOPIA』の楽曲も音源では「う〜ん、もうひと声!」と感じていたのに、生で聴くとここまで躍動感があってカッコいいものだったんだ!と知れて大満足だったしね。

けど、そういったハッピーな空気もエンディング間際に一変。「Peace Sells」を終え、そのままラストナンバー「Holy Wars… The Punishment Due」に突入するかと思いきや、ムステインは神妙な面持ちで「友人のクリス・コーネルが亡くなった。とても悲しい……」と語り、おそらく情報を知ってすぐにリハーサルしたと思われるSOUNDGARDEN「Outshined」をカバー。どこか苦しそうな表情で歌うムステインを目にし、それまで胸の奥にしまっていた悲しさが溢れ出す。そこから正真正銘のラストナンバー「Holy Wars… The Punishment Due」へと移行するのだけど、今まで彼らのライブで聴いてきた同曲の中でも、もっとも物悲しく響いた気がします。ムステインはギターソロで感情のすべてをぶつけるかのようにプレイし、最後の最後に「See you soon, Chris.」「みんな、また会おう」という言葉を残してステージをあとにしました。

予定外のカバーは喜ぶべきなんでしょうけど、何とも言えない気持ちを抱えたまま会場をあとにしたのは自分だけだったのかな。こんなこと言っては失礼だけど、いつ死んでいてもおかしくなかったムステインが今もこうしてステージに立ち続け、グランジシーンをサバイブしてきたクリスが自らの命を断つ……人生って本当に残酷なものだなと感じさせられたと同時に、こんなに最高なステージを今でも続けてくれるMEGADETHをまた観たい、だから明日からも自分の人生を全うしよう。そう強く思った一夜でした。

セットリスト
01. Hangar 18
02. Wake Up Dead
03. In My Darkest Hour
04. The Threat Is Real
05. Sweating Bullets
06. She-Wolf
07. Conquer Or Die!
08. Lying In State
09. Trust
10. Poisonous Shadows
11. Tornado Of Souls
12. Fatal Illusion
13. A Tout Le Monde
14. Post American World
15. Dystopia
16. Symphony Of Destruction
<アンコール>
17. Peace Sells
18. Outshined (SOUNDGARDEN Cover)
19. Holy Wars…The Punishment Due

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