« 2017年5月 | トップページ | 2017年7月 »

2017/06/30

2017年6月のお仕事

2017年6月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※6月30日更新)


[紙] 6月30日発売「月刊エンタメ」2017年8月号にて、けやき坂46長濱ねる×加藤史帆×佐々木久美「ひらがな全国ツアー振り返り座談会」を担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 6月29日、「リアルサウンド」にてBOOM BOOM SATELLITESのライブ評「BOOM BOOM SATELLITESは最後まで“究極のライブ”を見せた 二人の歩み凝縮したラストステージ」が公開されました。

[紙] 6月28日発売「TV Bros.」2017年7月1日号にて、MR. BIG『DEFYING GRAVITY』アルバムレビューを執筆しました。

[紙] 6月28日発売「ヘドバン Vol.14」にて、MEGADETH&ANTHRAX来日公演レポート、Boris新作クロスレビュー、Aldiousアルバムレビュー、LOVEBITES EPレビュー、STONE SOURアルバムレビューを執筆しました。(Amazon

[WEB] 6月26日、「リアルサウンド」での連載「日本ヘヴィメタル/ラウドロック今昔物語」にて第6回「Fear, and Loathing in Las Vegasは“ラウド×エレクトロ”の歴史をどう更新した?」が公開されました。

[紙] 6月23日発売「BRODY」2017年8月号増刊にて、けやき坂46結成1周年ドキュメント「私たちの願い」、けやき坂46長濱ねる「芸ノ章〜華道編〜」を執筆しました。(Amazon

[紙] 6月23日発売「BRODY」2017年8月号にて、欅坂46「残酷な観客達」ドキュメント、けやき坂46長濱ねる「芸ノ章〜華道編〜」を執筆しました。(Amazon

[WEB] 6月21日、「Red Bull Japan」オフィシャルサイトにてコラム「ロックファンにも強く伝えたい欅坂46、3つの魅力」が公開されました。

[WEB] 6月20日、「リアルサウンド」にて乃木坂46堀未央奈のインタビュー「乃木坂46 堀未央奈、“2期生の躍進”を語る「頼りない人間だけど、私なりにみんなを支えたい」」が公開されました。

[WEB] 6月19日、「Red Bull Japan」オフィシャルサイトにてコラム「今年の夏フェス出演注目アーティスト8選」が公開されました。

[WEB] 6月18日、「BARKS」にて「SATANIC CARNIVAL '17」NOISEMAKERのライブレポート「【速レポ】<SATANIC CARNIVAL>NOISEMAKER、「こういう景色を誕生日に味わえるなんて」」が公開されました。

[WEB] 6月18日、「BARKS」にて「SATANIC CARNIVAL '17」a crowd of rebellionのライブレポート「【速レポ】<SATANIC CARNIVAL>a crowd of rebellion、「夢見たステージに今立ってるよ!」」が公開されました。

[WEB] 6月18日、「BARKS」にて「SATANIC CARNIVAL '17」04 Limited Sazabysのライブレポート「【速レポ】<SATANIC CARNIVAL>04 Limited Sazabys、2日目トップで「あの頃より強くなってる」」が公開されました。

[WEB] 6月18日、「リアルサウンド」にてLiSAのインタビュー「LiSAが語る、自身の快進撃と活動スタンス「一番の目標は『長くみんなと生きていきたい』」」が公開されました。

[WEB] 6月17日、「BARKS」にて「SATANIC CARNIVAL '17」Dizzy Sunfistのライブレポート「【速レポ】<SATANIC CARNIVAL>Dizzy Sunfist、「ハイスタの遺伝子を見せつけにきました!」」が公開されました。

[WEB] 6月17日、「BARKS」にて「SATANIC CARNIVAL '17」Ken Yokoyamaのライブレポート「【速レポ】<SATANIC CARNIVAL>Ken Yokoyama、「ここ日本ではそうないと思うぜ」」が公開されました。

[WEB] 6月17日、「BARKS」にて「SATANIC CARNIVAL '17」四星球のライブレポート「【速レポ】<SATANIC CARNIVAL>四星球、「コミックバンドがやってきました!」」が公開されました。

[WEB] 6月17日、「BARKS」にて「SATANIC CARNIVAL '17」SHANKのライブレポート「【速レポ】<SATANIC CARNIVAL>SHANK、「もう二度と出られないと思ってたら、まさかのメインステージ!」」が公開されました。

[紙] 6月17日発売「LiSAぴあ」にて、LiSAロングインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 6月15日、「リアルサウンド」にてAKB48のアーティスト分析記事「AKB48『選抜総選挙』、今年のキーワードは“新陳代謝”? 識者が語る注目ポイント」にコメントを提供しました。

[WEB] 6月14日、「NIKKEI STYLE」にて「乃木坂46が挑む『あさひなぐ』 舞台と映画で違う色」(「日経エンタテインメント!」2017年6月号掲載分)が公開されました。

[紙] 6月14日発売「TV Bros.」2017年6月17日号にて、Cornelius『Mellow Waves』、CHEAP TRICK『WE'RE ALL ALRIGHT!』アルバムレビューを担当・執筆しました。

[紙] 6月13日発売「週刊SPA!」6月20日号にて、「けやき坂46のセカイ」特集にコメントを寄せました。(Amazon

[WEB] 6月10日、「リアルサウンド」にてTSPのインタビュー「J-METALのDNAを継承、TSPが目指す理想のバンド像「媚びずに自分たちの音楽をアピールしたい」」が公開されました。

[紙] 6月7日発売「別冊カドカワ 総力特集 菅田将暉」にて、菅田将暉1万字ロングインタビュー、菅田将暉×オカモトレイジ(OKAMOTO'S)対談を担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 6月5日発売「週刊ビッグコミックスピリッツ」2017年27号にて、乃木坂46出演の映画「あさひなぐ」撮影現場密着レポートを執筆しました。(Amazon

[WEB] 6月3日、「リアルサウンド」にてlynch.のインタビュー「lynch.が語る、活動再開から新作完成までの一部始終「あいつがいたことも事件のことも全部背負う」」が公開されました。

[WEB] 6月2日、「リアルサウンド」にてLittle Glee Monsterのインタビュー「Little Glee Monsterが語る、“激動の2017年”と夢にかける思い「一番“鍛えられる”1年になる」」が公開されました。

[紙] 6月2日発売「日経エンタテインメント!」2017年7月号増刊 「AKB48グループ次世代メンバー」特装版AKB48選抜総選挙記事にて、福岡聖菜、松岡はなインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 6月2日発売「日経エンタテインメント!」2017年7月号AKB48選抜総選挙記事にて、指原莉乃、渡辺麻友、松井珠理奈、宮脇咲良インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 6月1日発売「ぴあMovie Special 2017 Summer」にて、乃木坂46メンバーのコメントを含む映画「あさひなぐ」撮影現場密着レポートを執筆しました。(Amazon

投稿: 2017 06 30 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

NICKELBACK『FEED THE MACHINE』(2017)

前作『NO FIXED ADDRESS』(2014年)でユニバーサル傘下の「Republic」と契約したものの、たった1枚で移籍することになったNICKELBACK。2年半年ぶり、通算9作目のスタジオアルバムとなる本作『FEED THE MACHINE』は「BMG(BMG Rights Management GmbH)」から、Warner Musicのディストリビューションで今年6月16日に世界同時発売されました。これにより、前々作まで在籍したRoadrunnerと同じWarner Musicに戻ったという解釈もできるわけですね。

さて、今年2月には先行トラックとしてアルバムタイトルトラック「Feed The Machine」が公開済みでしたが、前作での若干ソフトで実験的な作風から一変、6thアルバム『DARK HORSE』(2008年)あたりで聴けたヘヴィでガッツのあるサウンドに先祖返りしております。続く2曲目「Coin For The Ferryman」もバスドラがドコドコするところにギターもザクザクとリフを刻む、これぞヘヴィロック!と叫びたくなるスタイルで、もうこの2曲だけで「勝利!」と実感。さらに3曲目にはこのバンドならではのメロウなバラード「Song On Fire」も飛び出し、明らかに「リスナーがイメージするNICKELBACK」が展開されています。

ヘヴィながらもファンキーでリズミカルな「Must Be Nice」、若干ダークで重みのあるバラード調の「After The Rain」、グルーヴィーなギターリフが気持ち良い「For The River」、壮大さすら感じさせるパワーバラード「Home」、ゴリゴリな「The Betrayal (Act III)」、某アイドルグループのファンが喜びそうなタイトルの美メロHRチューン「Silent Majority」(本作でもっともお気に入りの1曲)、カントリーテイストのパワーバラード「Every Time We're Together」があったりと……あれ、バラード多くね?

確かにバラードタイプの楽曲、多いです。だけど、アートワークからもわかるように、本作は全体的にダークな作風。バラードタイプの楽曲ですら、ダークかつヘヴィなテイストで、実はそこまでバラードが多いと気にならないんです。メタリックな楽曲が2曲、3曲と続くと本当に重苦しくて、何度も聴くにはちょっとつらくなってしまうんですが、こうやって適度にバラードタイプの楽曲が挿入されることで“歌モノHR”として気持ち良く楽しめるわけです。全11曲で44分程度というトータルランニングも近作同様で、この長さならヘヴィな作風でも繰り返し聴けてしまう。

もしここ数作で「NICKELBACK、日和ったなぁ」とがっかりしていた人がいたら、迷わず本作を手に取ってほしいです。間違いなく、「あの頃のNICKELBACK」がここにいるはずですから。しかも、あの頃よりもさらにパワーアップした姿で。



▼NICKELBACK『FEED THE MACHINE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 30 12:00 午前 [2017年の作品, Nickelback] | 固定リンク

2017/06/29

SMASHING PUMPKINS『SIAMESE DREAM』(1993)

1993年夏に発表されたSMASHING PUMPKINSの2ndアルバム。前作『GISH』(1991年)はNIRVANA『NEVERMIND』やPEARL JAM『TEN』の数ヶ月前に発表されたものの、大きな話題にならずセールス的に惨敗。そこでビリー・コーガン(Vo, G)は「この流れに乗ってやる」とばかりに、“良い曲、良いアルバム”を目指してこの『SIAMESE DREAM』を制作するのでした。

前作はいわゆるインディーロックの範疇にある作風でしたが、その中にもキラリと光るメロディセンスやのちのポピュラリティにつながる要素は含まれていました。その秘めた才能は、本作に収められている「Today」や「Disarm」といったメロウな楽曲で存分に活かされることになります。

オープニングの「Cherub Rock」や「Geek U.S.A.」などで聴けるハードロック的手法は、確かに前作にも多少見え隠れしたテイストですが、ここではさらにその色を強めています。また、今作ではグランジ(主にNIRVANA)特有の“強弱法”(バースは静かめに、サビで一気に爆発するアレンジ法)を多用した楽曲が多いのも特徴で、「Today」や「Mayonaise」あたりはそのもっともたる楽曲。かと思えばストリングスを導入した「Disarm」や「Luna」、メロトロンをフィーチャーしたアコースティックナンバー「Spaceboy」などもあり、続く次作『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995年)への布石も感じさせます。

もちろん、前作で顕著だったジャムセッション的な長尺ナンバーも、「Soma」や「Silverfuck」で引き継がれつつその強度をさらに増している。前作をなかったことにせず、しっかり延長線上にありながらも何十歩も先に進んだ、それがこの『SIAMESE DREAM』の強みだと思います。

音楽的才能の本格的開花は2枚組大作の3rd『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』に譲るとして、本作では我々がよく知るSMASHING PUMPKINSの根幹を作り上げたという点での“1stアルバム”なのかなと。もちろん『GISH』という習作があってこその本作なのですが、グランジという時代の流れにしっかり乗りながらバンドの個性を確立させたという意味では、本作は重要な1枚だったと言えるわけです。

そして、セールス的にもしっかり結果を出したのが本作。全米10位、400万枚以上もの売り上げを記録しております。ただ、意外にも本作からはBillboard TOP100に入るシングルヒットは生まれておらず、「Cherub Rock」「Today」「Disarm」がそれぞれBillboardオルタナティブソングチャートで7位、4位、8位にランクインしたのみ。ヒットシングル連発は次作以降なんですね。

グランジのイメージが強い彼らですが、シアトルの外からグランジに接近して独自の個性を磨いたという点においてはSTONE TEMPLE PILOTSに通ずるものがあるなと。思えば両バンドともに、HR/HM的なポピュラリティがしっかり備わってるところも似てますし。ただ、ビリー・コーガンという男が“まとも”だったことで、カートやスコット・ウェイランドみたいにはなれなかった。今となってはそれでよかったんですけどね。



▼SMASHING PUMPKINS『SIAMESE DREAM』
(amazon:国内盤 / 国内盤2CD+DVD / 海外盤CD / 海外盤2CD+DVD

投稿: 2017 06 29 12:00 午前 [1993年の作品, Smashing Pumpkins] | 固定リンク

2017/06/28

Cornelius『Mellow Waves』(2017)

前作『SENSOUS』からすでに11年も経っていたことに、まず驚かされました。確かに最近ニューアルバムは出てなかったけど、METAFIVEでの活動をはじめ、Salyuを筆頭に他アーティストとのコラボもあったし、『デザインあ』やら『FANTASMA』リマスター盤やらとリリースアイテムもそこそこあり、この11年でいろいろ楽しませてもらっていたのも事実。けど、こうやって久しぶりにアルバム単位で新しい音源が届けられることが、ファンとしては一番嬉しいものです。

先行7インチアナログが2枚(『あなたがいるなら』『いつか / どこか』)発表されていたので、今作の方向性はなんとなく把握できてはいたけど、前作ではサウンドのみならず歌詞までをもミニマルなものへと昇華していたところを、今作ではそのミニマルな言葉から“思い”がにじみ出ているように感じられました。坂本慎太郎が作詞で参加した2曲(「あなたがいるなら」「未来の人へ」。『いつか / どこか』カップリングでアルバム未収録の「悪くない。この感じ」を含めれば3曲)は特にその傾向が強く、そこに引っ張られるかのように、小山田の歌詞もシンプルな単語を羅列して言葉遊びをしつつも、そこから“人肌”感が伝わってきます。それは今回の小山田自身の歌声にも通ずるものがあり、何度も繰り返し聴きたくなる優しさに満ち溢れている。本作をどうライブで表現するのか、今からフジロックが楽しみでなりません。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼Cornelius『Mellow Waves』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2017 06 28 12:00 午後 [2017年の作品, Cornelius] | 固定リンク

NIRVANA『BLEACH』(1989)

1989年初夏に発表された、NIRVANAの記念すべきデビューアルバム。バンドの結成が1987年なので、約2年後には本作をリリースしているんですね。もっとも彼らが今のような知名度を獲得するのは、そこからさらに2年以上要するわけですが(それにより、本作に対する評価も激変します)。

米・シアトルを拠点とするインディーレーベル「Sub Pop」から発表された本作は、当時ほとんど話題になることなく、当然日本盤が発売されるのも次作『NEVERMIND』(1991年)の大ヒット以降ですし、自分が記憶してる限りでは1990年夏時点では輸入盤すら都内でもほとんど見かけることはなかったはずです(だって、当時彼らのことを知ってアルバムを探し回ったんですから)。

1989年当時はまだグランジなんて言葉すら耳にすることはなかったし、かのSOUNDGARDENがようやくメジャーから『LOUDER THAN LOVE』を発表した程度。MUDHONEYやMELVINSといったバンドはすでに活動していましたが、ここ日本では“知る人ぞ知る”な存在でした。

しかし、ここで聴けるサウンドは初期グランジムーブメントにおいて非常に重要なもの。確かに『NEVERMIND』以降ですべてが変わってしまいましたが、それでも多くのリスナーが「グランジと聞いてイメージするもの」は『NEVERMIND』よりもこの『BLEACH』に詰まっているのではないか……あのムーブメントから25年も経った今だからこそ、余計にそう思うわけです。

決して録音状態が良いとは言えない、インディーズならではのチープな音質にラフな演奏。楽曲もニューウェーブを通過したようなものから、当時のマニアックなインディーロック、どことなくハードロックの色合いもあったりなかったり……と一筋縄でいかない印象が強いですが、歌メロはこの時点で非常にポップなものが多いのも事実。1曲目「Blew」からしてそうですし、きわめつけは「About A Girl」。このあたりのカラーを強めていくことで、のちの『NEVERMIND』へと続いていくんだなと実感させられます。

それと、久しぶりに本作を聴いて思ったのは……カート・コバーン(Vo, G)という人は本当にMELVINSが好きだった(リスペクトしていた)んだな、と。たまたま初期MELVINSの作品を聴いていた流れで本作を聴いたからか、余計にそう感じたのでした。そういえば本作にはそのMELVINSのデイル・クローヴァー(Dr)も参加してますしね。当時、短期間でも一緒に活動できたことは嬉しかったんじゃないか……なんて、本作を聴いて勝手に想像するわけです(まぁ実際、MELVINSと出会って自分の人生は変わった、なんてこと言ってましたしね、カート)。全体的にヒリヒリとした作風なのに、今となってはそういう微笑ましさも感じられる奇跡の1枚。何周も回って、彼らの作品の中で今一番気に入っているのが本作だったりします。

NIRVANAをこれから聴くなら、「もちろん最初は『BLEACH』から」……とは言いませんよ。素直に『NEVERMIND』から聴けばいいと思います。そこから『BLEACH』にさかのぼるか、『IN UTERO』(1993年)に進むかはあなたの自由。どちらを選んだとしても、きっと驚くことでしょうから(苦笑)。



▼NIRVANA『BLEACH』
(amazon:国内盤 / 国内デラックス盤 / 海外盤CD / 海外デラックス盤CD

投稿: 2017 06 28 12:00 午前 [1989年の作品, Nirvana] | 固定リンク

2017/06/27

BON JOVI『LOST HIGHWAY』(2007)

このアルバム、今から10年前の6月にリリースされたんですね。そうか、もうそんなに経つのか……。

とういことで、今回紹介するのはBON JOVIが2007年6月にリリースした通算10枚目のオリジナルアルバム『LOST HIGWAY』です。7作目『CRUSH』(2000年)で本格的な復活を果たし、続く『BOUNCE』(2002年)『HAVE A NICE DAY』(2005年)がともに全米2位という好成績を残してきましたが、この『LOST HIGWAY』でBON JOVIは4th『NEW JERSEY』(1988年)以来19年ぶりに全米1位に輝きます。

プロデュースには現在も共同制作者としてバンドに携わるジョン・シャンクスと、元GIANTのギタリストで現在はカントリー系プロデューサーとして知られるダン・ハフが各6曲ずつ参加。前作『HAVE A NICE DAY』からのシングル「Who Says You Can't Go Home」がカントリーチャートでヒットしたこともあり、同アルバムで見せた「カントリーテイストをにじませたアメリカンパワーポップ」路線をさらに推し進めた、よりアーシーで土着的なカントリーロックが軸になっています。もともと持ち合わせていたカラーではあるものの、ここでその後10年のBON JOVIの路線を決定付けたという意味では、非常に重要な1枚と言えるでしょう。

パワフルなビートが心地よいハードロック「Summertime」や、黒っぽさが強くにじみ出た(かつギターワウを用いた)「We Got It Going On」など従来のBON JOVIらしさも残しつつも、全体を覆うのは「Lost Highway」や「Whole Lot Of Leavin'」みたいに肩の力が抜けたカントリーロック。もはや「Livin' On A Prayer」も「Bad Medicine」も「Born To Be My Baby」も、ここには存在しません。が、聴けばそれが「BON JOVIだ」と認識できる楽曲ばかりなのはさすがといいますか。

かと思えば、カントリー界の人気アーティストBIG & RICHをフィーチャーした「We Got It Going On」や、ジョン・ボン・ジョヴィとリアン・ライムスのデュエットが楽しめる「Till We Ain't Strangers Anymore」みたいなコラボ曲もある。このへんは「Who Says You Can't Go Home」がもたらした成功が大きかったんでしょうね。ただ、それによって「80〜90年代のBON JOVI」は遠くになりけり……ということになってしまったわけですが。

今聴くと本当にリラックスして楽しめるアルバムですし、前作『HAVE A NICE DAY』が好きなら問題なく気に入ってもらえるんじゃないかな。ただ、残念ながら「Have A Nice Day」や「It's My Life」みたいな“キメの1曲”が存在しないことで、本作の印象を弱めているのも事実。特に「80〜90年代のBON JOVI」が好きな人、そのイメージが強い人にとってはこの『LOST HIGHWAY』を素直に楽しめるかどうかで、その後の諸作品にスッと入っていけるかが決まるような気もします。



▼BON JOVI『LOST HIGHWAY』
(amazon:国内盤 / 海外盤CD

投稿: 2017 06 27 12:00 午前 [2007年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2017/06/26

LITTLE CAESAR『LITTLE CAESAR』(1990)

以前THE QUIREBOYSTHE BLACK CROWESのレビューで、1990年はHR/HMシーンにおいてひとつの変わり目だったということを書いたと思います。その数年前にGUNS N' ROSESが大ブレイクしたことで、シーンの主流が派手なスタイルからよりナチュラルで土着的なスタイルに移行していき、サウンド自体はよりシンプルでアーシーなものが好まれるようになります(極論ですが、それがのちにNIRVANAやPEARL JAMがブレイクした一因にもなっているのではないかと)。

で、その流れに乗って、当のGUNS N' ROSESを生み出したGeffen Recordsが1990年に送り出した新人が、このLITTLE CAESARです。ツインギターの5人組という編成は、初期のGN'Rと一緒。ソウルフルでしゃがれた声の持ち主ロン・ヤング(Vo)のボーカルスタイルや、ブルースやR&B、ソウルからの影響が色濃いハードなロックンロールという点も、先のTHE QUIREBOYSやTHE BLACK CROWESに通ずるものがあります。しかも、デビューシングルはアレサ・フランクリンの名曲「Chain Of Fools」カバー。うん、間違ってないよ。

ところが、本作をプロデュースしたのが、ボブ・ロック。当時はMOTLEY CRUE『DR. FEELGOOD』(1989年)BLUE MURDER『BLUE MURDER』(1989年)、THE CULT『SONIC TEMPLE』(1989年)といったヒット作を連発していた時期で、この流れは必然かと。がしかし、そのセレクトは間違っているよ……少なくとも、シンプルでナチュラルでアーシーにはならないってば。

実際、完成したアルバムはTHE CULT『SONIC TEMPLE』にも通ずる「ブルージーなフィーリングを持つ楽曲を、派手なサウンドプロダクションでビルドアップした80年代末らしい」作品集に仕上げられています。実際、素晴らしいハードロックアルバムだし、これはこれで間違ってないんだけど……うん、時代が悪かったよね。

とにかくボーカルの男臭さが最高。どっしり腰を据えたヘヴィなビートの上を、HR/HMというよりはR&Rの歪みにちかいギター2本がのたうちまわり、さらにその上で器用じゃないけど色気があるボーカルが乗る。楽曲もGN'RというよりはAEROSMITHに近いし、THE BLACK CROWESというよりは同時期にイギリスでデビューしたてのTHUNDER寄りかな。THE QUIREBOYSも2ndアルバムの路線には近いかも(同じボブ・ロックが携わってるしね)。ヘヴィに生まれ変わった「Chain Of Fools」も悪くないし、ソウルバラード「In Your Arms」「Midtown」「I Wish It Would Rain」、ブルースハープが絡む「Rock - N - Roll State Of Mind」など良曲多し。今挙げたようなアーティストが好きな人なら間違いなく気に入る1枚だと思います。

にしても、当時Geffenの名物A&Rだったジョン・カロドナーは、ROCK CITY ANGELSとLITTLE CAESARをデビューさせるタイミング、逆だったんじゃないかなと思うんですよね。もちろん、その時代にそのバンドがいたからそのタイミングにデビューさせたわけだけどさ。

ちなみに本作、全米チャートで最高139位止まり。シングル「Chain Of Fools」は88位、「In Your Arms」は79位と小ヒットを記録しています。確かに「Chain Of Fools」は当時、よくラジオで耳にしたしね。バンドは続く2ndアルバム『INFLUENCE』(1992年)リリース後に解散(本作にはかのアール・スリックが参加)。ロン・ヤングは映画『ターミネーター2』にちょい役で出演したり、エイドリアン・ヴァンデンバーグ(G)とMANIC EDENというバンドを組んだりしてちょっとだけ話題になりました。そして、2000年以降にLITTLE CAESARは再結成。現在までにアルバムを数作発表しているようです。



▼LITTLE CAESAR『LITTLE CAESAR』
(amazon:国内盤 / 海外盤CD / 海外盤2CD(2ndアルバムと同梱) / 海外盤CD-R

投稿: 2017 06 26 12:00 午前 [1990年の作品, Little Caesar] | 固定リンク

2017/06/25

CHEAP TRICK『WE'RE ALL ALRIGHT!』(2017)

昨年春に発表された前作『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLOW』が7年ぶりの新作ということでびっくりしたわけですが、続く本作『WE'RE ALL ALRIGHT!』はなんと前作から1年2ヶ月という短いスパンで制作〜リリースされたことで、さらに驚かされたわけです。だって、昨年11月には来日公演までしてさ、またしばらく見納め(聴き納め)かなと思っていたのに……特に大御所クラスになると新作のスパンが5年前後になっても不思議じゃないので、この予想外の新作にはただただ嬉しい限りです。

本作は新曲に加え、過去に制作されたものの未発表だった楽曲を新たにレコーディングしたもので、見方によっては「2017年のCHEAP TRICKによる、純然たる新作」とは言い難いかもしれません。が、ファンにとってはそういう細かいことはどうでもよく、今のCHEAP TRICKが本作で鳴らされているような音/楽曲に再び挑戦してくれている事実が単純に嬉しいし、素敵だと思うわけです。

比較的落ち着いたイメージの強かった前作とは相反し、今作は終始アグレッシブ。初期の「元気よく、勢いのあるパワーポップ/ロック」路線に寄った作風。アップテンポの楽曲がズラリと並び、ロビン・ザンダー(Vo)もがなるように歌っています。ポップな作風の楽曲にしても“枯れ”よりも“若々しさ”が前面に打ち出されており、そこに「ああ、自分は今CHEAP TRICKの新作を聴いているんだ」と強く実感できることでしょう(と、前作のレビューと同じことを書いてしまいますが)。

大半の曲が2分台〜3分台半ばというのも、初期の彼ららしく、アルバム本編10曲で33分程度というランニングタイムも納得。ちなみに本作には3曲追加したデラックスエディション(日本盤の通常仕様はこちら)も用意されていますが、それでも全13曲で44分程度(さらに日本盤はボーナストラックでライブテイク2曲を追加。これは正直蛇足かな)。最近のロックアルバムが少しずつではありますが、こういう40分前後という昔ながらの作風に戻りつつあるのはちょっと興味深い話ですね。

個人的にはデラックス盤に追加された3曲(THE MOVEのカバー「Blackberry Way」、『DREAM POLICE』を思わせる「Like A Fly」、メロウでサイケなミディアムバラード「If You Still Want My Love」)も本編10曲に負けず劣らずの出来だと思うので、ぜひこちらの仕様をオススメしたいと思います。



▼CHEAP TRICK『WE'RE ALL ALRIGHT!』
(amazon:国内盤 / 海外盤CD

投稿: 2017 06 25 12:00 午前 [2017年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2017/06/24

MR. BIG『...THE STORIES WE COULD TELL』(2014)

2014年9月にリリースされた、通算8枚目のオリジナルアルバム。再結成後としては、2010年末に発表された前作『WHAT IF...』から3年9ヶ月ぶり。ここまで時間が空いたのには理由があり……ご存知のとおり、パット・トーピー(Dr)のパーキンソン病が発覚。また、ポール・ギルバート(G)の難聴が悪化したことや、ビリー・シーン(B)がリッチー・コッツェン(Vo, G)、マイク・ポートノイ(Dr)と新たに結成したバンド、THE WINERY DOGSの活動が好調だったことが、制作の遅れにつながったと言われています。

さて、そうなると誰がバンドの新作制作を引っ張るのか。意外にも、その役割を引き受けたのがエリック・マーティン(Vo)でした。エリックは全13曲中(ボーナストラック除く)11曲にクレジットされ、プロデューサーのパット・リーガンとともに根気よく作業を続けたようです。そこには、病気でドラムが叩けなくなったパット・トーピーが自身がプログラミングしたドラムトラックを採用するという、気の遠くなる作業も含まれているのですから……。

そういう難産の末完成した本作ですが、評価は前作ほど高くないのも事実。ドラム云々は抜きにしても(実際、シンバルなど金モノ系を集中して聴かない限り、プログラミングしたドラムトラックとは気づかないのでは?)、なんとなくバンドが完璧に噛み合ってない印象を受けるのです。

楽曲自体は前作の延長線上にあり、メロディラインなど比較的優れたナンバーが多いのですが、ギターとベースが遠慮がちというか。このへんはポールの病気の影響も大きいのかもしれませんが、それに引っ張られるようにベースもボトムを支えることに専念している印象を受けます。そこにパットの件が加わるもんだから……言い方は悪いけど、「エリック・マーティンのソロアルバム(MR. BIG寄り)」と感じてしまうのです。

いえ、エリックはそうならないよう、しっかりMR. BIGというバンドのことを意識して作業に当たったと思うんです。しかしエリック以外のメンバーが地味すぎるがために、結果エリックの個性のみが突出してしまう。それが先の「バンドが完璧に噛み合ってない」につながるわけです。

改めて聴き返してみても、決して悪いアルバムではないんですよ。だけど、地味さが前面に出てしまい、前作よりも聴く頻度が落ちてしまった。悲しいかな、そういう残念な1枚であります。

また、本作は日本盤の初回限定盤のみ、初期編成で発表した4枚のアルバムからのベスト選曲を再録音したボーナスティスク付き。なぜこのタイミングで再録ベスト?と思ったけど、実はこれ、パットが過去の楽曲でプログラミングの練習をしたってことなんじゃないでしょうか。ここでの“リハーサル”があったから、オリジナル新作では違和感のない“ドラミング”を披露することができた。そう思うと、この『...THE STORIES WE COULD TELL』というアルバムがいかに難産だったかが理解できると思います。

もうひとつ残念なのは、新作本編よりもこっちのボーナスディスクのほうが聴く頻度が高かったということ。声域が若干低くなったエリックに合わせて半音下げで再録された名曲の数々は、原曲よりテンションが落ちるものではありますが、曲によっては大人の色気を感じるものも含まれており、まったくナシではないかな。とはいえこれ、単なるオマケなのであまり高い評価は付けないでおきます。

本作を携えたツアーでは、パットもステージ上に姿はあるものの、基本的にはサポートドラマーのマット・スターがプレイ。パットはタンバリンを叩いたりコーラスを入れたりしつつ、限られた楽曲でドラムを披露してくれました。ここでの変則編成がメンバー的にもお気に召したようで、新たな未来へとつながっていくわけです。



▼MR. BIG『...THE STORIES WE COULD TELL』
(amazon:国内盤CD+DVD / 国内盤2CD+DVD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 24 12:00 午前 [2014年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/06/23

MOTORHEAD『1916』(1991)

1991年初春にリリースされた、MOTORHEAD通算9枚目のスタジオアルバム。当時のメンバーはレミー(Vo, B)、フィル・キャンベル(G)、マイケル・ワーゼル・バーストン(G)、フィル・アニマル・テイラー(Dr)。アニマルにとっては本作がラスト作になります。また、本作はバンドがイギリスからアメリカ(ロス)に渡ってから初の作品であると同時に、メジャーレーベルから最初の1枚でもあります。

MOTORHEADという名前を聞いて、多くの人が思い浮かべるのが「ロックンロール」「ハードロック」「ヘヴィメタル」といったところでしょうか。そのカテゴライズで言えば、本作は完全なるロックンロールアルバム。レミーがライブを始める間に言うセリフ「We are Motorhead. We play rock n' roll」がここまでピッタリなアルバムも他にないんじゃないかってくらい、完璧な1枚だと個人的には感じています。

冒頭の「The One To Sing The Blues」から地を這うような、それでいて軽快さも持ち合わせたグルーヴ感のロックンロールを炸裂。続いてい3コードのお約束R&Rナンバー「I'm So Bad (Baby I Don't Care)」、爽快さすら感じさせるメジャーキーの「No Voices In The Sky」、シンプルでストレートな「Going To Brazil」とアッパーな楽曲が連発されます。この時点でもう最高。文句なし。

しかし、アルバム中盤に差し掛かると、それまでのMOTORHEAD史上でもっとも問題作と呼べるような2曲が登場。それがダークなミディアムスロウチューン「Nightmare / The Dreamtime」と、パワーバラードと言えなくもないヘヴィブルース「Love Me Forever」です。前者はそのダークさゆえ、MOTORHEADっぽいと言えますが、後者は8分の6拍子のバラード調。確かに度肝を抜かれますが、よくよく聴くとその構成はLED ZEPPELINの「Dazed And Confused」に近かったりして、要するにこれはMOTORHEAD版ブルースってことなんだろうなと。これもロックンロールなんだと、改めて納得させられた次第です。

後半も、ピアノやブラスを導入した異色のロック「Angel City」やRAMONESへのトリビュートソング「Ramones」などアップチューンが立て続けに繰り出され、最後にタイトルトラック「1916」。しかしこれが、正真正銘のスローバラード。レミーがストリングスをバックに歌うその様は、いわば“MOTORHEAD版「Yesterday」”か。結局、本作がきっかけとなり、彼らはその後も積極的にスローナンバーに挑戦していくことになります……が、そこはMOTORHEAD。せいぜいアルバムに1曲程度の割合なので、個人的にはまったく問題なし。アクセントと思えば気持ちよく聴けるはずです。

僕個人としては、本作がMOTORHEADでもっとも好きなアルバムなんですよね。きっと初めてライブを観たのが、このアルバムでの来日公演だからというのも大きいのかな。まぁそれを抜きにしても、本作は第2次黄金期の幕開けにふさわしい傑作だと思いますけどね!



▼MOTORHEAD『1916』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 23 12:00 午前 [1991年の作品, Motorhead] | 固定リンク

2017/06/22

POISON『NATIVE TONGUE』(1993)

3枚のマルチプラチナムアルバムを発表したものの、早くも登場した2枚組ライブアルバム『SWALLOW THIS LIVE』(1991年)が大きなヒットにつながらず、C.C.デヴィル(G)が脱退(事実上のクビ)。POISONにとって最初にして最大の難関となったギタリスト問題も、しばらくしてリッチー・コッツェンというバカテクギタリストの加入により解決し、1993年初頭に通算4作目のスタジオアルバム『NATIVE TONGUE』がリリースされます。

当時のリッチーの評価は、現在のような「ブルースフィーリングあふれる、歌心のあるギタリスト」というものではなく、「シュラプネル系のテクニカル&速弾きギタリスト」というもの。しかし、POISONで聴かせるそのプレイは、確かにテクニカルではあるものの速弾き一辺倒ではなく、非常にレイドバックしたプレイでした。たぶん、多くのHR/HMファンが驚いたのではないでしょうか。

作品を重ねるごとにグラム路線から脱却し、前作『FLESH & BLOOD』(1990年)ではマッチョな(それでいて“枯れ”も感じさせる)サウンドにまで到達したPOISONでしたが、本作『NATIVE TONGUE』ではリッチーという才能を得たことで、その路線を一気に本格的なものへと昇華させることに成功。それまでのニセモノ感はどこへやら、本作から聴き始めたリスナーは間違いなく「こういうバンド」だと勘違いするはずです(笑)。

にしても、本作の完成度といったら……客観的に見ても、過去イチの出来ではないでしょうか。まず本作は、オープニングの「The Scream」やシングルカットもされた「Stand」など、ゴスペル色の強いハードロックが次々と展開されていきます。過去3作と比べたら、一聴して地味に感じるかもしれません。しかし、サウンド自体はこの手のレイドバックしたハードロックの中でもかなり派手めで、そのへんのPOISONというバンドのこだわりが感じられます。

また、バラードにしても過去のパワーバラードとは異なり、ソウルの影響下にある本格派バラード「Until You Suffer Some (Fire And Ice)」も飛び出し、当時は「どうしたPOISON?」と呆気にとられたものでした。が、今聴くと本当に良いですね、これ(笑)。前作での「Something To Believe In」で見せた路線の究極系と捉えると、非常に納得がいくといいますか。

後半には、従来の路線に近い「Strike Up The Band」や「Ride Child Ride」「Blind Faith」などストレートなハードロックもあるものの、やはりテイスト的には本作のマナーに従ったもの。まぁ『FLESH & BLOOD』からの流れで考えれば、本作の後半は前作の延長(=我々の知るPOISON)、前半はリッチー主導の本格路線(=過去のPOISONを覆す)ということになるんでしょうね。

すでにHR/HM冬の時代に突入していたものの、本作は全米16位、50万枚を超える中ヒットを記録。確かに前作までのマルチプラチナムと比較すれば“落ちた”ように見えますが、同時代に活躍した他のバンドと比較したら一番善戦したと思います。

結局リッチーは本作1枚のみで脱退。本作での路線をさらに推し進めたソロ作を続発したのちにMR. BIGに加入したり、ビリー・シーン(B)やマイク・ポートノイ(Dr)とTHE WINERY DOGSを結成したりするわけです。そういう意味では、今のリッチー・コッツェンにとって原点的1枚とも言えますね。POISONにとってはどのポジションの作品になるのかわかりませんが。



▼POISON『NATIVE TONGUE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 22 12:00 午前 [1993年の作品, Poison, Richie Kotzen] | 固定リンク

2017/06/21

MICHAEL MONROE『SENSORY OVERDRIVE』(2011)

先日55歳の誕生日を迎えたばかりのマイケル・モンロー。再生HANOI ROCKS解散を経て、現在彼の活動拠点となるのが自身の名前を冠したMICHAEL MONROEというバンドです。今回紹介するのは、2011年春にリリースされたMICHAEL MONROE名義での1stアルバム(ソロとしては通算6枚目)。当時のメンバーはマイケルのほか、ジンジャー・ワイルドハート(G)、スティーヴ・コンテ(G)、サミ・ヤッファ(B)、カール・ロックフィスト(Dr)。ジンジャーは本作に伴う活動途中で、案の定バンドを離れています。

バンド編成になったからといって急激に音楽性が変わるわけもなく、ここで聴ける楽曲やサウンドは過去のマイケル・モンローを知る人なら納得の内容。パンクロックを通過した軽快なロックンロールがたっぷり詰め込まれています。HANOI ROCKSだろうがDEMOLITION 23.だろうが、なんでもあり。どの時代の曲と混ざり合っても違和感のない、普遍的なロックンロールソング集と言えるでしょう。

とはいえ、ソングライティングに携わる人間が変われば、そのテイストが多少異なる楽曲もいくつか含まれるわけで。本作でいえば、ポップなメロディを持つ「Superpowered Superfly」は明らかにジンジャーの手腕によるもの。この曲と「Later Won't Wait」はジンジャーが単独で書き下ろしたもので、「Later Won't Wait」もどこかTHE WiLDHEARTSやその他ジンジャーが携わってきたバンドに共通するストレンジさが含まれており、それがマイケルの個性とぶつかり合うことで生じた化学反応を楽しむことができます。

こういった新境地もいくつか含まれていたことから、個人的には「MICHAEL MONROE、これから面白くなるんじゃね?(但しジンジャーが抜けなければ)」と思っていたのですが……さすがに2枚目はなかったと。ただ、次は次で面白いコラボレーションが生まれるので、また別の意味でワクワクしたわけですが。

ちなみに、ジンジャーの後釜としてバンドに加わったのが、当時BACKYARD BABIESが活動休止中だったドレゲン。マイケルとBYBは過去にコラボ経験があるとはいえ、この邂逅にはさすがに驚きました。

なお、本作の本編ラストに収められている「Debauchery As A Fine Art」は、前年に発表されたライブアルバム『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』に先行収録されていた「Motorheaded For A Fall」を改作したもの。基本構成は一緒ですが、このスタジオテイクにはオリジナルタイトルにその名が含まれていたMOTORHEADのレミーがゲスト参加しています。

2017年のこのタイミングに「マイケル・モンローってどんな人? どれから聴けばいいの?」と質問されたら、まずはこのアルバムをオススメすると思います。そこから新作まで順々に聴いてもいいし、過去をさかのぼってもいい。あるいは、HANOI ROCKSに進むのもアリ。本作を拠点にすれば、マイケルのどのキャリアにもたどり着けるはずです。



▼MICHAEL MONROE『SENSORY OVERDRIVE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 21 12:00 午前 [2011年の作品, Ginger Wildheart, Michael Monroe] | 固定リンク

2017/06/20

AC/DC『ROCK OR BUST』(2014)

2014年11月にリリースされた、AC/CD通算15枚目(オーストラリア国内では16枚目)のスタジオアルバム。プロデュースは前作同様、ブレンダン・オブライエンが担当。マルコム・ヤング(G)が認知症のためバンドを離れ、代わりにマルコム&アンガス・ヤング(G)の甥にあたるスティーヴィー・ヤングが加入して制作されました。また、本作を携えたツアー期間にフィル・ラッド(Dr)が逮捕されバンドを脱退。代役として90年代前半に在籍したクリス・スレイドが再加入しています。また、ブライアン・ジョンソン(Vo)も聴力障害のためツアーを離脱。2016年のツアーではGUNS N ROSESのアクセル・ローズがゲスト・ボーカリストとして代役を務めたことは記憶に新しいと思います。さらに、クリフ・ウィリアムズ(B)も本ツアー終了後にバンドから脱退。結果として、我々がよく知るAC/DC最後のアルバムとなってしまいました。

全米1位を獲得した前作『BLACK ICE』(2008年)から6年ぶりに発表された本作は、どの曲も2〜3分台という非常にシンプルな構成。全11曲でトータル34分というランニングタイムは昨今の作品としては非常に短く感じますが、実際に聴くとその倍くらいあるんじゃないかと思えるほどの濃厚さがあります。シンプルだからこその濃さ。これこそが、40年以上の活動を経て到達した境地なのかもしれません。

思えば前作は8年ぶりの新作。気合いを入れて望み、結果として全15曲入り、トータル55分という、当時としては「最強のAC/DC」を表現していたと思います。しかし、その最強な状態からさらに余計なものをそぎ落とした結果、「11曲ぐらいで、34分でも大丈夫じゃない?」という結論にたどり着いた。というのは、考えすぎでしょうか? でも、そう思えるぐらいに寸分も隙がない、鉄壁なロックンロールアルバムだと思うのです。

そう、本作はHR/HMというよりはロックンロール。『BLACK ICE』はまだハードロックですよね。それ以上に原始的、もしくはルーツに原点回帰したのがこの『ROCK OR BUST』なんじゃないでしょうか。

とはいえ、ボン・スコット時代のそれと比較するとまた違うんですけどね。まぁそこは、ブライアン・ジョンソンという替えがきかないボーカリストによるものが大きいと思いますが。幸いブライアンはまだバンドに残っているようですし、耳の調子次第ではツアーにも復帰してくれるはず。レコーディングだって……どうなるのかわかりませんけどね。仮にこのアルバムでバンドの歴史に幕を降ろしたとしても、それはそれで納得がいきますし。

できることなら、このアルバムを携えた来日公演を見たかった。もし後悔があるとしたら、その一点のみです。



▼AC/DC『ROCK OR BUST』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 20 12:00 午前 [2014年の作品, AC/DC] | 固定リンク

2017/06/19

ROCK CITY ANGELS『YOUNG MAN'S BLUES』(1988)

海外では1988年、ここ日本では1989年1月にリリースされたROCK CITY ANGELSのメジャーデビューアルバム。当時アナログでは2枚組で発表されましたが、CDでは1枚に収められています。

1988年に入り、前年デビューのGUNS N' ROSESが爆発的ヒットを飛ばし、ホクホク顔だった所属レーベルのGeffen Records。装飾をそぎ落とした本格派のハードロックが徐々に求められていく流れの中、当然のように「第二のガンズ」を探すべく新人を青田買いしていくわけですが、そこで射止めたのがフロリダ出身の5人組ロックバンドだったROCK CITY ANGELS。結成当初はグラムロック的でしたが、徐々に本作で聴けるブルージーな土着的ロックへとシフトしていったようです。ちなみに、デビュー前には当時まだ無名だったジョニー・デップも在籍していたとのことです(本作が楽曲クレジットには彼の名前も)。

二匹目のドジョウを狙ってデビューした彼らですが、ぶっちゃけ全然ガンズじゃないです。ガンズというよりも、その数年後にデビューするTHE BLACK CROWESに近いかもしれません。それもそのはず、本作のプロデューサーはZZ TOPなどを手がけてきたジョー・ハーディ。確かに70年代のZZ TOPに通ずるものがあるかもしれません。

ここ日本ではTBS『PURE ROCK』でオープニング曲「Deep Inside My Heart」のMVがちょくちょく流れており、その小汚いルックスとTHE GEORGIA SATELLITESにも通ずる古臭いブギーサウンドがそれなりにインパクトを与えていました。全編こういった土着的ロックかといいますとそうでもなく、「Damned Don't Cry」のように自身のルーツであるグラムロックをまんま表現した曲もあれば、ダイナミックなハードロック「Wild Tiger」もあるし、オーティス・レディングのソウルバラードをカバーした「These Arms Of Mine」もある。疾走感のある「Rumblefish」、ゴリゴリのハードブギー「Boy From Hell's Kitchen」、ピアノとアコギをフィーチャーしたカントリーバラード「Liza Jo」、ファンキーなダンスロック「Beyond Babylon」など、とにかく聴き応えのあるR&Rアルバムです。こうやって聴き返すと、ハードロック色の強いROLLING STONESみたいなイメージもあるなと。当時は「第二のガンズ」という色眼鏡が最初にあったので、子供だった自分はそこまで気づけませんでしたが。

時代が早すぎたとか売り出し方を間違えたとかいろいろあると思いますが、リリースから30年近く経った今だからこそ再評価したい1枚じゃないでしょうか。本作発表後、彼らはアメリカからイギリスに渡り、そこでTHIN LIZZYのブライアン・ロバートソン(G)を新メンバーに迎えレコーディングを行ったようですが、それらの音源は発表されることなくGeffenから離脱。その後も地味に活動していたようですが、2012年にボーカルのボビー・デュランゴが死去。これを機に、バンドは解散してしまったようです。

本作、日本盤は初版以降廃盤状態。海外では10年くらい前に別レーベルから再発されたようですが、こちらもすでに廃盤。デジタル配信もされていないので、残念ながら中古で探すしかなさそうです。



▼ROCK CITY ANGELS『YOUNG MAN'S BLUES』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 19 12:00 午前 [1988年の作品, Rock City Angels] | 固定リンク

2017/06/18

LED ZEPPELIN『LED ZEPPELIN』(1969)

1969年初頭にリリースされた、LED ZEPPELINの記念すべき1stアルバム。当時は全英6位、全米7位と1位こそ獲っていないものの、今日までに全米だけでも800万枚を超える売り上げを記録。デビュー作としては申し分のないヒット作になったと思いますし、本作のこの成功があったからこそ続く2ndアルバムから快進撃が始まるわけですからね。

私自身がツェッペリンを聴き始めたのが高校1年の頃。最初は2枚目、続いて4枚目というありがちなコースをたどったわけですが、その次が実は……3rdなんです(笑)。そっちに行っちゃったか〜って感じかもしれませんが、当時地元のレンタル店に2枚目〜4枚目とライブ盤しかなかったもので。

しかし、1988年にツェッペリンのアルバムが廉価版として再発。2000円以下で手軽に手に入るということで、まず最初に購入したのがこの1stアルバムだったのです。以降、高校生の小遣いで少しずつ、リリース順に買い集めていくのですが、途中でなぜか全作品をアナログ盤でいただくというハプニングが。結局高校生の間に全アルバムを制覇することができたわけです。

1stアルバムの印象というと、やはり1曲目「Good Times Bad Times」イントロの、「ダン、ダン!」というインパクトの強いジョン・ボーナム(Dr)のドラムなわけですが、初めて聴いたときはそこまで衝撃を受けることなく(苦笑)。むしろ「Communication Breakdown」みたいな速い曲にばかり目が(耳が)行ってしまったという。そりゃあ2ndと比べたら、1曲目のインパクトは弱いかもしれませんが、今となっては本作のカッコ良さ、嫌というほどに理解できます。

「Good Times Bad Times」のインパクトもさることながら、つづく2曲目「Babe I'm Gonna Leave You」のドラマチックさも完璧。続くブルースナンバー2連発「You Shook Me」「Dazed And Confused」(ここまで4曲中3曲がカバーという)でこのバンドの真髄をじっくり味わい、B面はもうちょっとバラエティに富んだ楽曲群を味わう。どことなくゴスペルチックな「Your Time Is Gonna Gome」、インスト「Black Mountain Side」、ファストチューン「Communication Breakdown」ときて、再度ブルースカバー「I Can't Quit You Baby」「How Many More Times」で締めくくる。カバー曲ですら自分たちのオリジナル曲みたいに仕上げてしまう独自のアレンジ力。ジミー・ペイジ(G)、恐るべし。

アレンジャー、プロデューサーとしての才能はもちろんのこと、本作でのギタープレイもなかなかのもの。ボンゾのリードドラム(笑)に引っ張られるように、決してテクニカルではないものの弾きまくるギター。その上で女性の喘ぎ声のごとくハイトーンボイスで歌いまくるロバート・プラント(Vo)。グルーヴ感の強いベースラインでリードドラムを支え、時にキーボードプレイも披露するマルチプレイヤーのジョン・ポール・ジョーンズ(B, Key)と、この時点ですでに才能溢れまくりな面々が揃ったことが伺えるわけです。

1st派か2nd派かでときどき意見が分かれることがありますが、自分の場合は基本的には2nd派なんですが(インパクトの強さで)、僅差で1stも好きだからどっちが優れてるなんて言えない(ただ、もっとも好きなのは『PRESENCE』なんですが)。ただ、今このタイミングでは1st派かもしれません(笑)。だって、本当に素晴らしいデビューアルバムなんだもの。改めて聴き入ってしまいましたよ。

……と、今回も思い出話でお茶を濁してしまい、申し訳ありません。なお、2014年発売のデラックス・エディションについては、後日改めて取り上げたいと思います。



▼LED ZEPPELIN『LED ZEPPELIN』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 18 12:00 午前 [1969年の作品, Led Zeppelin] | 固定リンク

2017/06/17

MR. BIG『WHAT IF...』(2010)

2009年にエリック・マーティン(Vo)、ポール・ギルバート(G)、ビリー・シーン(B)、パット・トーピー(Dr)のオリジナル編成で復活したMR. BIG。まずは日本を含むワールドツアーを行い、バンドの健在ぶりを存分にアピールしました。そのツアーでの手応えを制作活動に向け、日本で2010年末(海外では2011年初頭)に発表した通算7枚目のスタジオアルバムがこの『WHAT IF...』です。

オリジナル編成としては1996年の『HEY MAN』から14年ぶりの新作となった本作は、IRON MAIDENやAEROSMITHとの仕事で知られるケヴィン・シャーリーをプロデューサーに迎えて制作。作風的にはリッチー・コッツェン在籍時の2枚よりもむしろ、『HEY MAN』までのMR. BIGに近いかもしれません。オープニングがファストチューンではなく、ずっしりとしたリズムでじっくり聴かせる「Undertow」というところは『HEY MAN』やリッチー時代にも通ずるものがありますが、続く「American Beauty」は初期ファンには嬉しいファストチューン。ギター&ベースのユニゾンプレイもふんだんに取り入れられており、「なぜこの曲を1曲目にしなかった!?」と憤るファンも多いのではないでしょうか。

が、しかし。この曲を2曲目に配置することで、「Undertow」も「American Beauty」も映えると思うんですよ、実際のところ。そこから若干ダークなバラード「Stranger In My Life」(終盤のポールのギターソロが最高)、パーカッシヴなドラムパターンがクールな「Nobody Left To Blame」、再びアッパーな「Still Ain't Enough For Me」と続いていく前半の構成も、より新鮮に聴こえるんじゃないでしょうか。実際、僕はそうでした。

エリックの高音が出にくくなったことから、再結成後は半音下げチューニングでライブもレコーディングも実施していることから、必要以上にダークさが前に出てしまいがちですが、それが本作の作風にはぴったり合っていると思う。

それと『HEY MAN』以降減少傾向にあった、曲中の“オカズ”が一気に増えていること。ちょっとしたギター&ベースのユニゾンや、いきなり飛び込んでくるギターやベースの速弾きフレーズ。この“オカズ”という名の無駄があってこそ、MR. BIGなんだよなぁ〜と、このアルバムを聴いたときにふと考えたことを、今思い出しました。

大ヒット作『LEAN INTO IT』(1991年)というよりは、バンドのルーツである1stアルバム『MR. BIG』(1989年)に『HEY MAN』の手法でもう一度チャレンジした。そんな印象を受けるのが、再結成1作目のこのアルバム。佳曲は多いけど、突出した名曲はない。だけど、全体で勝負する。結果、アルバムを聴き終えたときに「ああ、MR. BIGの新作だった」と納得させられる。もう今さら“ドリルソング”や「To Be With You」の第二弾なんて望んでないし、今はこの体制で再び長く続けてくれることを祈るばかり。そう、リリース当時はそう思っていたんです……。



▼MR. BIG『WHAT IF...』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+DVD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 17 12:00 午前 [2010年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/06/16

FREE『FIRE AND WATER』(1970)

FREEのスタジオアルバムでもっともヒットしがのが、1970年6月に発売された通算3枚目のスタジオアルバム『FIRE AND WATER』です。実は彼ら、我々が思っている以上に実働期間が短く、1969年にデビューして1971年には一度解散。1972年に再結成するものの、翌1973年には再度解散しているのです。

1969年に発表された2枚のスタジオ作『TONS OF SOBS』『FREE』も決して悪くはないのですが、やはり『FIRE AND WATER』には「All Right Now」という大ヒットシングル(全英2位、全米4位)が含まれていることもあり、アルバム自体も全英2位、全米17位という出世作につながったと言えます。

考えてみたら、たった7曲しか入っていない35分程度のアルバムなのですが、その中身はかなり濃密。ポール・ロジャース(Vo)の歌声も脂が乗った状態で艶やかだし、ポール・コゾフ(G)のギターソロも非常にセクシー。アンディ・フレイザー(B)のベースラインは無駄に動き回るし、サイモン・カーク(Dr)のドラミングは大きな特徴があるわけじゃないけど妙にしっくりくるし。4人の個性は本当にバラバラなのですが、そのすべてが良い方向に噛み合った奇跡的な1枚ではないでしょうか。

前半4曲(アナログA面)の気だるさは若い頃に聴いたときは退屈に聴こえたのに、今はなぜかグッとくるものがある。で、B面(5曲目以降)のその気だるさは引き続きなんですが、「Mr. Big」後半のインタープレイはいつ聴いてもカッコ良いし、最後はポップでキャッチーな(本作中唯一陽気な)「All Right Now」で締めくくる。最後だけ取って付けた感がなきにしもあらずですが、まぁこの時代のアルバムってこういうものなんじゃないの?という一言でここは済ませたいと思います。

個人的ベストソングは、オープニングからどっしり構えた「Fire And Water」と、ピアノとポール・ロジャースのセクシーな歌声の相性抜群な「Heavy Load」、そして(バンドのほうの)MR. BIGのカバーよりやっぱり原曲のほうが最高でしょ!ってことで「Mr. Big」。もちろんそれ以外の楽曲もすべて良し。「Oh I Wept」も「Remember」も良いしね。

人によっては「FREEはライブ盤『FREE LIVE!』とベスト盤を聴いておけばOK!」と言うかもしれませんが、ここはあえて本作を真っ先にオススメしておきたいと思います。



▼FREE『FIRE AND WATER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 16 12:00 午前 [1970年の作品, Free] | 固定リンク

2017/06/15

ROLLING STONES『THEIR SATANIC MAJESTIES REQUEST』(1967)

本家のリリースから遅れること約半年、“ストーンズ版『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』”として1967年12月に発表されたのが本作『THEIR SATANIC MAJESTIES REQUEST』です。いや、別にストーンズ側はそう呼んでませんけどね。

ブルースやR&Bをベースにしたライブ中心の音楽性ながらも、60年代後半に突入するとスタジオワークにも興味を示し始め(それがビートルズの後追いだったのかどうかは別として)、その集大成として制作されたのが本作。ビートルズ同様、本作からのシングルカット曲は一切なく(USなどでは「She's A Rainbow」がシングル化)、作風もサイケデリック色を強めた、およそ“我々の知るストーンズらしくない”内容。

しかし、これが聴けば聴くほどクセになる代物でして。正直、10代後半で初めて聴いたときはその良さにまったく気づけませんでしたが、今ではなぜか定期的に聴きたくなる1枚。無駄にゴージャスな「Sing This All Together」を筆頭に、ビル・ワイマン(B)が歌う(ラストのいびき含め)牧歌的な「In Another Land」、のちにKISSもカバーした「2000 Man」、のちにLED ZEPPELINに加入するジョン・ポール・ジョーンズがストリングス編曲を手がけた名曲「She's A Rainbow」、1989年の『STEEL WHEELS TOUR』でライブ初演奏された「2000 Ligh Years From Home」、明らかにビートルズを意識したであろう「On With The Show」など良曲多し。無駄にサイケなミックスの「The Lantern」あたりもなかなかの出来ですしね。

で、本作でもっとも問題作なのがアルバム中盤に登場する、8分以上にもおよぶ「Sing This All Together (See What Happens)」。生演奏によるコラージュ的楽曲で、サイケさとストーンズ本来が持つ野性味あふれる暴力性に満ちた大作……ということはなく、ビートルズにおける「Revolution 9」並みに難解です。アルバムのど真ん中にこんな難所を用意するなんて、ストーンズめ……(個人的にも3回に1回は飛ばしています)。

ということで、非常に評価が分かれるアルバムだと思いますし、これを真っ先に聴くぐらいだったら、60年代末から80年代半ばまでのアルバムを全部聴いたほうがいいと思います。それでも、「ほかの作品も聴いてみたい!」と思うのなら、積極的にオススメはしませんが話のネタとして聴いてみるのも良いかもしれません。



▼ROLLING STONES『THEIR SATANIC MAJESTIES REQUEST』
(amazon:国内盤CD / 国内盤SACD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 15 12:00 午前 [1967年の作品, Rolling Stones] | 固定リンク

2017/06/14

THE BEATLES『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』(1967/2017)

THE BEATLESが今から50年前の1967年5月26日(UK。USでは6月2日)にリリースした、通算8枚目のオリジナルアルバム。前年をもってライブ活動を停止した彼らが、ライブでの披露を前提とせず、ひとつのスタジオ作品としてとことん作り込んだ最初の作品が本作でした。

……なんて説明は今さらいりませんよね。

思えばビートルズの諸作品が初CD化されたのが、本作がリリースされてから20年後の1987年。それ以前は当然のようにアナログ盤だったわけで、今みたいに「これが正規のオリジナルアルバム」という概念が国によって異なったり、アルバム未収録のシングル曲を集めた編集盤がたくさん出ていたりで、正直どれから聴いていいかわからなかったというのが中学生時代の自分。結果、オリジナルアルバムではない編集盤を最初に手に取ったわけですが、高校に入ったと同時にこのCD化。当然周りの自称・ビートルマニアな友人から『PLEASE PLEASE ME』や『WITH THE BEATLES』のCDを借りて、カセットにダビングして聴いていたのです。

で、ちょうど夏くらいにこの『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』がようやくCD化。当時の音楽誌などで「ビートルズの最高傑作」なんて触れ込みもあり、最初に買うならこれにしようと、夏休みのバイト代から本作を購入。つまり、僕が初めて購入したビートルズのCDが本作だったわけです。

いわゆるヒットシングル皆無、初期の「She Loves You」や「Help」とも違うし、「Yesterday」や「Let It Be」ともちょっと違う。今ならサイケデリックがなんちゃら〜と言語化できるけど、あの当時は「Lucy In The Sky With Diamond」の浮遊感も「Within You Without You」のインドっぽさも、どこかコミカルな「When I'm Sixty-Four」の魅力にも、そしてラストの「A Day In The Life」のすごさも理解できておらず。ただ、オープニングの「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」のガレージロック感?にはカッコ良さを見出し、そこを何度もリピートしていたものです。

その後、何度も聴き返すうちにメロディが頭に入ってきて、気づいたらアルバムをまるごとリピートして聴き返していた。けど、周りのロック仲間には勧めることなく、ひとり家で聴いていた……そんなアルバムでした。

初版のCDは今でも家にあるし、その後の最新リマスター盤も購入。そしてつい先日、本作の最新ステレオミックス盤+未発表テイクからなる50周年記念エディションも発売。つまり、初めて聴いてから30年近くもの歳月が流れたわけです。ひぃ。

最初のリマスター盤のときにも音の分離の良さに驚かされましたが、今回はそれに加えて低音がかなり効いたミックスに。ドラムとベース(特にバスドラの鳴り)の質感・バランスがより現代的になったことによって、とても50年前の音とは思えない仕上がりに変わったように感じました。「A Day In The Life」冒頭のアコギの繊細な鳴りなんて、すごく今っぽいしね。

と同時にこのアルバムの音、現代のテクノロジーで真似ようと思っても再現できないんじゃないだろうか……と思わせられる、改めて奇跡の音なんじゃないかなと久しぶりに聴き返して実感しました。

僕が購入したのは、2枚組仕様のほう。さすがに“ハコ”のほうは断念しました。ディスク2にはアルバムの未発表テイクをたんまり収録。『ANTHOLOGY』シリーズの延長として楽しみましたが、どういう過程を経て完成品となっていくのかが伺えて、それはそれとして面白かったです。音もスタジオ盤より生々しさが強まっていて、個人的には好み。ですが、もちろん万人にはオススメしませんけど。

あと、ラストに収録されている「Strawberry Fields Forever」(こちらは2015年発売『THE BEATLES 1』リマスター盤のステレオミックス)と「Penny Lane」(こちらは最新ステレオミックス)はやっぱり素晴らしいと思います。『THE BEATLES 1』リマスター盤は今でもよく聴いてますが、今後もこの『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』デラックス盤とあわせて聴き続けることでしょう。というか、聴き続けます。はい。

と、今回はほぼ思い出話でお届けしました……。



▼THE BEATLES『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 国内盤4CD+DVD+Blu-ray / 海外盤2CD

投稿: 2017 06 14 12:00 午前 [1967年の作品, 2017年の作品, Beatles, The] | 固定リンク

2017/06/13

RATT『DETONATOR』(1990)

RATTが1990年夏に発表した、通算5作目のフルアルバム。スティーヴン・パーシー(Vo)、ロビン・クロスビー(G)、ウォーレン・デ・マルティーニ(G)、フォアン・クルーシェ(B)、ボビー・ブロッツァー(Dr)というデビュー時からの黄金期メンバーによる最後のアルバムになります。

1stアルバム『OUT OF THE CELLAR』(1984年)以降、地味に少しずつセールスを落とし続けていたRATTが、起死回生とばかりに制作したのが本作。「BON JOVIの爆発的ヒットやAEROSMITHの再ブレイクよ再び……」という思いで(かどうかは知りませんが)プロデューサーおよびソングライターとしてデズモンド・チャイルドを迎え、本気でヒット作を生み出そうとします。

RATTといえば、スティーヴンの癖の強いボーカルと、ミッドテンポでグルーヴ感の強い楽曲というイメージがあったかと思います。それがリスナーにとって引っかかりになると同時に、聴き手を限定してしまっていた面もあります。そこで本作では、癖の強かった楽曲をよりストレートでわかりやすくし、ポップでキャチーな歌メロを乗せることでRATT本来の癖を薄めていくのです。

確かにオープニングの「Shame Shame Shame」や「Lovin' You's A Dirty Job」あたりは本来のRATTに近いものの、異常にポップに響くメロディが含まれていたりと、「どこか違う」と感じてしまった古くからのファンも少なくないはず。さらに「One Step Away」みたいな爽やかなポップメタルまで登場するもんだから、「??」となってしまうし、しまいにはバンド史上初のバラード「Givin' Yourself Away」まで飛び出すのですから……そりゃあ反感買いますよね。

チャート的には全米23位と健闘しますが、セールスは前作『REACH FOR THE SKY』(1988年)の約半分となる50万枚止まり。シングルカットされた「Lovin' You's A Dirty Job」「Shame Shame Shame」「Givin' Yourself Away」に至ってはBillboardにチャートインすらしませんでした。

……がしかし。本当にこのアルバム、駄作でしょうか? 確かにRATTらしさは薄められていますし、「One Step Away」や「Givin' Yourself Away」には苦笑してしまいますが、全体を通して聴くとそこまで悪くない、いや、悪くないどころか非常に優れたHRアルバムだと思うんですよ。「Hard Time」や「Top Secret」(初期からあった曲をリアレンジしたもの)といった激しい楽曲もあるし、何よりオープニングの「Shame Shame Shame」のカッコ良さといったら。この曲、個人的RATTベストソングの3本指に入るほど好きな曲です。

ちなみに本作、ロビンが作曲に携わった楽曲は2曲のみ(「All Or Nothing」「Can't Wait On Love」)。前作では10曲中6曲に関わっており、そのへんもとっつきやすさにつながっていると同時に、翌1991年に彼がバンドを脱退する引き金になったんでしょうね。



▼RATT『DETONATOR』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 13 12:00 午前 [1990年の作品, Ratt] | 固定リンク

2017/06/12

WINGER『IN THE HEART OF THE YOUNG』(1990)

1990年夏に発表された、WINGERの2ndアルバム。デビュー作『WINGER』(1988年)が100万枚を超えるヒット作となったこともあり、本作でも引き続きボー・ヒルをプロデューサーに迎え、前作の延長線上にあるアルバムを制作しようとしました。

実際、完成した『IN THE HEART OF THE YOUNG』は前作をよりソリッドにしたサウンドで、楽曲も各メンバーのテクニカルなプレイをフィーチャーした玄人好みの内容でした。しかし、これを良しとしなかったのがプロデューサーのボー・ヒル。当初収録予定だったヘヴィな2曲(「All I Ever Wanted」「Never」)をカットし、バンドに対して新曲を書くことを提案します。“ヘヴィすぎる”という声に対してバンドが下した答えが、のちにシングルカットされヒット曲となる「Can't Get Enuff」「Easy Come Easy Go」でした。

シーケンスを導入した、どこか機械的な印象を与えるこの2曲は、確かにそれ以前に書かれたアルバム曲と比べると異色ですが、その「Can't Get Enuff」がアルバムのオープニングを飾ったことで本作はまた別の印象を与えることになります。

DEF LEPPARD的な「Can't Get Enuff」「Easy Come Easy Go」、そしてソフトバラード「Miles Away」がアルバム前半に配置されたことで、以前よりも“軽く”なった……当時、そう感じたリスナーは少なくなかったはずです。しかも、本作からシングルカットされたのがこの3曲であり、特に「Miles Away」は全米12位という過去最大のヒット曲になってしまうのですから……成功は素直に嬉しかったと思うけど、この方向性自体に彼らは疑問を感じていたのではないでしょうか。続く3rdアルバム『PULL』(1993年)がヘヴィな作風だったことを考えれば、なんとなく頷ける話かと思います。

とはいえ、世に発表されたアルバムは決して悪い作品ではありません。確かに「Can't Get Enuff」や「Easy Come Easy Go」を最初に聴いたときは驚きましたが、「Rainbow In The Rose」「In The Day We'll Never See」みたいなプログレッシヴ路線の楽曲、前作の流れにあるバラードタイプの「Under One Condition」、ドラマチックな「In The Heart Of The Young」、グルーヴィーな「Loosen Up」「Little Dirty Blonde」「Baptized By Fire」(この曲冒頭のギターソロはもともと「Never」のオープニングに入っていたもの)、豪快なハードロック「You Are The Saint, I Am The Sinner」と聴き応えのある楽曲ばかり。シングル曲の印象で本作と接すると痛い目を見るかもしれません。

確かに追加の2曲がなかったら、本作は地味な作品になっていたでしょう。そういう意味ではプロデューサーの采配は正しかったし、実際非常にバラエティに富んだ作品に仕上がったと思います。よく「2ndアルバムは鬼門。真価が問われる」(1枚目はデビュー前の集大成で、2枚目からが本当の勝負)と言いますが、本当にそのとおりだなと納得されられたのは僕ら以上にバンドだったのではないでしょうか(まぁその結果、いろいろ苦悩することになるのですが)。



▼WINGER『IN THE HEART OF THE YOUNG』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 12 12:00 午前 [1990年の作品, Winger] | 固定リンク

2017/06/11

WARRANT『LOUDER HARDER FASTER』(2017)

LAメタル末期にデビューしたWARRANTの、前作『ROCKAHOLIC』(2011年)から6年ぶりに発表された通算9枚目のオリジナルアルバム。前作からジェイニー・レイン(Vo/2011年死去)を除くオリジナルメンバーに、元LYNCH MOBのロバート・メイソン(Vo)を加えた編成で活動しており、今作が現編成2作目となります。

“よりデカく、より激しく、より速く”というタイトル通りの内容といったところでしょうか。純粋にハードロックアルバムとして優れた内容だと思いますし、歌も演奏も曲も申し分なし。例えば本作が1988年前後にリリースされていたら、きっと100万枚を超えるヒット作になっていたんだろうな、と思うのです。

とはいえ、本作はそこまで古臭さを感じさせないし、別に2017年という現代に鳴っていても特に大きな違和感はないかなと。いやウソです。やっぱり時代の流れは感じてしまいます。メロディの節々に“あの頃”のWARRANTをしっかり感じさせつつ、“我々の知るWARRANTではない何か”も存在する。でも、それは決して近代的なものではなく、古き良き時代のHR/HMそのものという……つまり、良くも悪くもどこかで“止まってしまっている”のです。

WARRANTというバンドもまた、90年代初頭のグランジの勢いに当てられ、当時は『DOG EAT DOG』(1992年)をはじめとしたダークな作品をいくつか発表しています。しかし、ここ最近の彼らはよりストレートなハードロックに回帰しており、そのへんの時代とうまく寄り添う行為は今は亡きジェイニーの画策だったんだろうなと思うわけです。

で、そのジェイニーを欠いたバンドがごく普通のハードロックを鳴らすというところに大きな意味があるんじゃないかと。きっと初期のパーティロック路線も策士ジェイニーによるアイデアだったかもしれないわけで、そう考えると他のプレイヤーたちは本来こういったド直球のハードロックをやりたかったんだろうな、と。丁寧だけど抑揚があまりないジェイニーとは異なる“歌える”シンガー(前任のジェイミー・セント・ジェイムズしかり、ロバートしかり)を迎えたのも、その思いを具現化するためだったんじゃないかと……まるでデヴィッド・リー・ロスからサミー・ヘイガーに移行したVAN HALENみたいですね。

結局、キャラの強い(もしくは賢く商才に長けた)フロントマンで成功したバンドが“音楽”に目覚めると、こういう方向に進みたくなるのは自然な流れなのかな。もちろんこれはこれで間違いじゃないし、実際完成したアルバムもなかなかの力作だと思いますが……残念ながら「我々が知るWARRANTのニューアルバム」ではないな、と。ただ、そういった枕詞を無視すれば、純粋にカッコ良いHRアルバムとして愛聴できそうです。抑揚がないとか散々貶してるジェイニーですが、なんだかんだで初期3作に対する思いが強いので、こういう評価になってしまいました。このバンドに対して「初期のほうが〜」という思い入れがない人なら、間違いなく満足できる1枚だと思います。



▼WARRANT『LOUDER HARDER FASTER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 11 12:00 午前 [2017年の作品, Warrant] | 固定リンク

2017/06/10

HAREM SCAREM『UNITED』(2017)

今年で結成30周年を迎えるカナダのHRバンド、HAREM SCAREMが4月にリリースした通算14作目のスタジオアルバム。2008年に一度解散し、2013年に再結成を果たした彼らは同年に名作2ndアルバム『MOOD SWING』のリテイクアルバム『MOOD SWING II』を発表し、翌2014年には新曲のみのオリジナルアルバム『THIRTEEN』を制作と再始動後も順調に活動を重ねています。

3rdアルバム『VOICE OF REASON』(1995年)でダークなサウンドに傾倒し始め日本のファンをがっかりさせ、5th『BIG BANG THEORY』(1998年)あたりからパワーポップ寄りの楽曲にも着手し始めたHAREM SCAREMですが、再結成後は多くのファンが望む“1st〜2ndアルバム路線”を踏まえつつ大人になったバンドの姿を見せています。この最新作でもその方向性は変わっておらず、むしろその純度がより高くなっているように感じられました。

前作『THIRTEEN』も決して悪いアルバムではなかったし、むしろ好きな作品ではあったんですが、今作はとにかく1曲1曲の完成度が無駄に高い。アルバムによっては1曲くらい「う〜ん、個人的に好みじゃなけど、こういう曲が好きなリスナーもいるしな……」という曲が入っていてもおかしくないところを、今作はどの曲も両手をあげて大歓迎したくなる良曲ばかり。適度にハードで適度にポップ、そしてメロディやサウンドから爽快感が感じられるハードロックと表現すればいいのでしょうか……90年代の彼ら(主に1st〜2ndあたり)に感じられた“ビッグプロデュース”はそこにはなく、地に足のついた等身大のサウンドで、ファンが求めるサウンドと「大人になった今だから表現できるサウンド」をバランス良く融合させている。そこには攻めのハードロックもあれば、パワーポップ調のゆるやかな楽曲もあり、無駄にバラードで水嵩を増すようなこともしない。11曲全45分という適度な長さも功を奏し、何度もリピートしたくなる極上のハードロックアルバムに仕上げられているのです。

イントロの時点で若干ダークで激し目の楽曲なのかと不安にさせておいて、メインリフが入ると豪快かつ爽快感のあるキャッチーなハードロックで聴き手を喜ばせてくれる「United」から、続く「Here Today Gone Tomorrow」「Gravity」と、とにかく頭から心を鷲掴みにされっぱなし。その後もこのテンションを崩すことなく、ドラマチックなラストナンバー「Indestructible」で締めくくる。個人的には2000年代に入ってからの彼らのアルバムでもっとも気に入っています。こういう良質なアルバムがジャンルの分け隔てなく、もっといろんなリスナーに「いいね!」と言ってもらえるような時代が戻ってくるといいな。



▼HAREM SCAREM『UNITED』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+DVD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 10 12:00 午前 [2017年の作品, Harem Scarem] | 固定リンク

2017/06/09

THE CHARLATANS『DIFFERENT DAYS』(2017)

THE CHARLATANS通算13枚目のオリジナルアルバム。ドラマーのジョン・ブルックスが2013年8月に脳腫瘍で急逝し、悲しみを乗り越えて制作された前作『MODERN NATURE』(2015年)が全英7位と、久しぶりのTOP10ヒットとなった彼ら。そこから2年を経て届けられる今作には、ジョニー・マーやポール・ウェラー、スティーヴン・モリス(NEW ORDER)、アントン・ニューコム(THE BRIAN JONESTOWN MASSACRE)といったアーティスト仲間に加え、推理作家のイアン・ランキンとカート・ワグナー、ティム・バージェス(Vo)の長年の友人である女優のシャロン・ホーガンがゲスト参加しています。

作風としては、全体的に前作の延長線上にある1枚と言えるでしょう。が、冒頭の低音ボーカルを生かした穏やかなスローチューン「Hey Sunrise」にはきっと驚かされるはず。今回は内省的な作品なのか!?と思いきや、続く「Solutions」でアップテンポに。しかし、どこか物悲しさが伴うメロディや空気感は1曲目から変わらず、ちょっと心配になっているとエンディングの日本語ナレーションにハッとさせられ、そのままタイトルトラックに突入。若干穏やかながらも、ようやくこのバンドらしさが出てきたなと。先行シングル「Plastic Machinery」あたりでやっと、“俺たちのシャーラタンズ”が戻ってきた!とガッツポーズをとってしまうのではないでしょうか。

エレクトロの要素を取り入れた「Not Forgotten」や「Over Again」など、後半に進むにつれてダンサブルさが増していき、グワーッと盛り上がったところで、アコースティックの小楽曲「The Setting Sun」とポール・ウェラーがゲスト参加したスローなサイケチューン「Spinning Out」とダウナー2連発。予期してなかったこのエモさに心を一気に持っていかれてしまいます。

確かに穏やかさがより強まったように感じられますが、それもこのバンド本来の持ち味。その風味がより濃くなったと思えば、なんら違和感なく楽しめるはずです。まぁ今さら彼らに「Weirdo」みたいにアドレナリン溢れまくりなアッパーなダンスチューンを求めるのは筋違いだと思いますし、この進化(というか深化かしら)はバンドの成長としてまったく正しい歩み方だと思いました。



▼THE CHARLATANS『DIFFERENT DAYS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 09 12:00 午前 [2017年の作品, Charlatans, The] | 固定リンク

2017/06/08

HARRY STYLES『HARRY STYLES』(2017)

「人は見かけによらない」。いや、「人を見た目で判断してはいけない」のほうが正しいかな。自分にとってこの言葉が最適なのが、今回紹介するONE DIRECTIONのハリー・スタイルズが発表したこの初ソロアルバム。多くの“外野”同様、筆者自身も彼のことをボーイズアイドルグループの一員という偏見で見ていたけど、それによって彼が本来持ち合わせていた才能にまったく気づけなかったとは。ホント、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

本作収録曲の大半はジャマイカで書かれたとのこと。そのせいもあってか、「新しい時代の兆し」と命名された1stシングル「Sign of the Times」含め、どの曲もオーガニックで、どこかサイケデリックな香りがする。時にそれはKULA SHAKERが醸し出すインドテイストのロック/ポップソングのようでもあり、不思議と耳に、体に馴染んでいく。うん、シンプルに気持ち良いサウンドと歌なんですよ。

特に頭2曲(「Meet Me in the Halfway」「Sign of the Times」)で内省的な雰囲気を与えつつ、続く「Carolina」では中期ビートルズ的なサイケデリックロックでさらに自分の懐へと惹きつける。いわゆる「ボーイズアイドルグループがやりそうな仰々しいラブバラード」は皆無で、それこそ本作が1Dメンバーによるものだと知らなかったら、超個性的な男性シンガーがデビューしたと歓喜していたのかも……そう思うと、本当に先入観ってよくないですね。ごめんなさい。

歌詞も単なるラブソングから一歩踏み込んで、自身の内面と対峙するかのようにディープなものばかり。ロビー・ウィリアムズしかりジャスティン・ティンバーレイクしかり……もっと言えばジョージ・マイケルもしかり……彼らは大ブレイクしたグループを飛び出して個を主張することで、思いもしない方向へと到達し、新たな支持層を獲得してきましたが、きっとこのハリーも先人たち同様にここから一気に確変するはず。ロックもポップもソウルも全部飲み込んだこのアルバムは、間違いなくその最初の一歩になるはずです。

※このレビューは本作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを、加筆・修正して掲載しております。



▼HARRY STYLES『HARRY STYLES』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 08 12:00 午前 [2017年の作品, Harry Styles] | 固定リンク

2017/06/07

THE BLACK CROWES『SHAKE YOUR MONEY MAKER』(1990)

アメリカ・ジョージア州出身のロックバンド、THE BLACK CROWESが1990年初頭にリリースした1stアルバム。全米4位まで上昇し、500万枚以上を売り上げた出世作です。特に本作からのシングル「Hard To Handle」(オーティス・レディングのカバー)が全米26位のヒットになったことを機にブレイクし、他にも「She Talks To Angels」(全米30位)、「Jealous Again」(全米75位)といったヒット曲が生まれました。その後の彼らはよりディープな方向へと進んでいったため、こういったヒットシングルが複数生まれたのは本作と、続く2ndアルバム『THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』(1992年)までとなります。

前回のTHE QUIREBOYSの際にも触れましたが、シーンがよりオーガニックなサウンドを求め始めた中、アメリカから登場したのがこのTHE BLACK CROWES。よくROLLING STONESあたりと比較されましたが、それよりも彼らの場合はアメリカ南部出身のロックバンド……LYNYRD SKYNYRDやTHE ALLMAN BROTHERS BAND、あるいはTHE GEORGIA SATELLITESや初期のZZ TOPのほうが近いような気がします。きっと本作のレコーディングにストーンズのサポートピアニスト、チャック・リーヴェルが参加していたことやオーティスをカバーしていることで、当初はストーンズと比較しがちだったんでしょうね。

彼らの全キャリアの中でもっとも聴きやすいのが本作で、のちのセッション色濃厚な作品群と比べればどの曲もシンプルかつコンパクト。なおかつキャッチーで、適度なハードさもある。そのへんはBON JOVIGUNS N' ROSESが好きというリスナーにもアピールするかもしれません。特にオープニングを飾る「Twice As Hard」あたりは、モロにハードロック的手法ですしね。

かと思えばストーンズにも通ずるソウルフルなバラード「Sister Luck」「Seeing Things」、切ないアコースティックバラード「She Talks To Angels」もあって聴き応えもある。ホンキートンク調ピアノが心地よいR&R「Jealous Again」もあれば、軽快なカントリーロック「Thick n' Thin」もあるし、適度にハードなど直球の「Struttin' Blues」もある。エンディングの「Stare It Cold」もひたすらカッコ良いしね。音自体は隙だらけなんだけど、作品としては隙が感じられない完璧なロックンロールアルバムに仕上がっています。

サザンロックってちょっと敷居が高いとかとっつきにくいという印象がある人、わかります。若い頃の自分もそうでしたから。でも、このアルバムからTHE BLACK CROWESの作品を追っていけば、そのディープな世界にじわじわと入り込むことができるかもしれません。あるいは「ここまでならOK」という自分の中での基準値もわかるのではないでしょうか。そういう意味では本作は、入門編的1枚と呼んで差し支えないでしょう。



▼THE BLACK CROWES『SHAKE YOUR MONEY MAKER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 07 12:00 午前 [1990年の作品, Black Crowes, The] | 固定リンク

2017/06/06

THE QUIREBOYS『A BIT OF WHAT YOU FANCY』(1990)

イギリス出身のロックンロール/ハードロックバンド、THE QUIREBOYSが1990年初頭にリリースしたメジャーデビューアルバム。当時のベーシストがフィル・ モグ(UFO)の甥っ子であるナイジェル・モグだったり、メジャーデビュー前にその後THE WiLDHEARTSを結成するジンジャー・ワイルドハート(G)が在籍していたりなどでも知られますが、こういうこと抜きに本作は当時全英2位という好成績を残し、ここ日本でも人気を博しました。アメリカではTHE LONDON QUIREBOYS名義でデビューし、ビルボード100位内入り(93位)。同作からのシングルも「Hey You」(全英14位、全米53位)、「I Don't Love You Anymore」(全英24位、全米76位)、「There She Goes Again」(全英37位、全米91位)と英米でそれなりに数字を残しました。

いわゆるHR/HMブームと呼ばれるものがBON JOVIのアコースティックナンバー(「Wanted Dead or Alive」など)のヒットやGUNS N' ROSESの登場以降、よりナチュラルな方向へと移行していき、無駄な装飾が削ぎ落とされたサウンドが好まれ始めたタイミング。アメリカからTHE BLACK CROWESという土着的なロックンロールバンドがデビューし、それと同じタイミングにイギリスからもTHE QUIREBOYSというバンドデビューするというのが、非常に興味深い話で。まぁリスナーがいわゆるアリーナロックに飽き飽きしていた頃に、世の中がアンプラグドだ何だとオーガニックサウンドやシンプルなロックに注目するようになり、そのすぐあとにNIRVANAやPEARL JAMのようなバンドがメジャーシーンに現れた。つまりTHE BLACK CROWESやTHE QUIREBOYSはその中継ぎ的存在だった……というのは言い過ぎですね、はい。

別にいつの時代でもこういうロックンロールを鳴らすバンドはいたはずなのに、たまたまシーンの青田買いがここまでたどり着いたってことなんでしょう。THE QUIREBOYSも良い意味でそのブームに乗っかり、“very british”なサウンドを堂々と鳴らした結果、幸か不幸か大きなヒットにつながってしまった。本作リリースから数年で一度解散してしまうことを考えると、はやり不幸だったのかもしれません。

とはいえ、中身自体は本当に優れたロックンロールアルバム。オープニングを飾る軽快なR&R「7 O'Clock」を筆頭に、ど直球のタイトルに苦笑するしかない「Sex Party」、カントリーテイストのミディアムチューン「Sweet Mary Ann」、じっくり聞かせるスローバラード「I Don't Love You Anymore」など聴きどころ満載。フロントマンのスパイク(Vo)のしゃがれた歌声は、時に若き日のロッド・スチュワートと重なる瞬間もあったりなかったりで、HR/HMとは異なる味わい深さもあっていつ聴いても飽きない魅力が備わっています(そういえば本作のプロデュースには、ロッド・スチュワートのバンドにもいたギタリスト、ジム・クリーガンが参加しています)。

HR/HMファンにも楽しんでもらえるとは思いますが、どちらかというとROLLING STONESや初期のAEROSMITH、ソウルやR&Bのテイストを持つロックバンドを好む人にオススメしたい1枚かもしれません。リリースから27年も経っている事実に驚かされましたが、時の流れを感じさせない、普遍的なロックンロールアルバムです。



▼THE QUIREBOYS『A BIT OF WHAT YOU FANCY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 06 12:00 午前 [1990年の作品, Quireboys, The] | 固定リンク

2017/06/05

DEF LEPPARD『THE DEF LEPPARD E.P.』(1979)

DEF LEPPARDがメジャーデビュー前の1979年1月、自主レーベルから発表した3曲入りEP(レコーディングは前年1978年11月に実施)。当時のメンバーはジョー・エリオット(Vo)、ピート・ウィリス(G)、スティーヴ・クラーク(G)、リック・サヴェージ(B)の4人で、ドラムにはセッションメンバーとしてフランク・ヌーンが参加。本作完成後に当時15歳だったリック・アレンが加わり、メジャーデビュー時のメンバーが揃うことになります。

本作に収録されているのは「Ride Into The Sun」「Getcha Rocks Off」(以上A面)、「The Overture」(B面)の3曲で、「Getcha Rocks Off」と「The Overture」はのちの1stアルバム『ON THROUGH THE NIGHT』(1980年)で再レコーディング(その際、「Getcha Rocks Off」は「Rocks Off」、「The Overture」は「Overture」と改題)。「Ride Into The Sun」も4thアルバム『HYSTERIA』(1987年)からのシングルでカップリング曲として再録音され、のちにコンピレーションアルバム『RETRO ACTIVE』(1993年)に収録されているので、楽曲自体はこれまでも聴くことはできました(オリジナルの「Getcha Rocks Off」のみ、METALLICAのラール・ウルリッヒ企画によるNWOBHMコンピ『NEW WAVE OF BRITISH HEAVY METAL '79 REVISITED』でCD化済み)。

しかし、当時アナログ盤で限定リリースされた本作。その後もファンの間では高値で取引されていましたが、2017年4月のレコードストアデイでアナログ盤が限定再発され、より手軽に楽しむことができるようになりました。

セルフプロデュースということもあり、そのサウンドの荒々しさはのちの『ON THROUGH THE NIGHT』以上。初めて『ON THROUGH THE NIGHT』を聴いたときも、以降の『PYROMANIA』(1983年)や『HYSTERIA』と比較すればラフ以外の何物でもありませんでしたが、この『THE DEF LEPPARD E.P.』 収録の3曲はそれ以上。HR/HMというよりもガレージバンドの勢いといいましょうか、とにかく「ここから何かが始まり、ハジけようとしている」感がひしひしと感じられます。

本作を聴いてしまうと、「Ride Into The Sun」ものちの再録音バージョンよりもカッコ良く聞こえるし、『ON THROUGH THE NIGHT』中でもかなりアグレッシヴだと思っていた「Rocks Off」も原曲の「Getcha Rocks Off」のほうがよりパンキッシュだし。かと思えば、「The Overture」の時点でその後のプログレッシヴな作風の片鱗を見せていたのだと改めて驚かされたり。ここから始まったというよりも、「開始前夜」という表現のほうがぴったりな1枚ではないでしょうか。



▼DEF LEPPARD『THE DEF LEPPARD E.P.』
(amazon:海外盤アナログ

投稿: 2017 06 05 12:00 午前 [1979年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2017/06/04

PRAYING MANTIS『A CRY FOR THE NEW WORLD』(1993)

NWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)つながりで、まもなく来日公演も行われるPRAYING MANTISからも1枚紹介してみたいと思います。

今回紹介するのは、1990年に再結成を果たした同バンドの通算3作目、再結成後2作目のオリジナルアルバム。ティノ(G, Vo)&クリス(B, Vo)のトロイ兄弟を中心に結成され、1981年に名盤と呼ばれる1stアルバム『TIME TELLS NO LIES』を発表したPRAYING MANTISですが、その後契約上のトラブルなどに巻き込まれて活動休止へ。1990年に日本で行われたNWOBHM10周年コンサートに、元IRON MAIDENのデニス・ストラットン(G)らと参加したことで、デニスを含む編成でPRAYING MANTISとしての活動を再開。1991年発表の2ndアルバム『PREDATOR IN DISGUISE』では専任ボーカルを入れずに制作されましたが、この『A CRY FOR THE NEW WORLD』にはアルバムとしては初めて専任ボーカルを迎えて制作されました。

ここで歌っているのは、新人シンガーのコリン・ピール。決して上手とか存在感の強い歌い手ではありませんが、その適度に湿り気のある歌声はPRAYING MANTISの特徴である「哀愁感の強い泣きメロHR」にぴったり。結果として、この『A CRY FOR THE NEW WORLD』という作品を名盤と呼ぶにふさわしい1枚へと昇華させています。

1曲目の疾走チューン「Rise Up Again」からとにかく圧巻。この泣きのファストナンバーに続くタイトルトラック「A Cry For The New World」も、劇的なバラード「A Moment In Life」も非の打ち所がない名曲。その後もツインリードギターがひたすらカッコいい超絶名曲「Letting Go」を筆頭に、名曲のオンパレード。クライマックスに相応しい大作「Journeyman」から突如不穏な空気に一変するラストのインストナンバー「The Final Eclipse」まで、とにかく最後まで飽きることなく楽しめる1枚です。

サウンドプロダクション的にも前作『PREDATOR IN DISGUISE』から向上しているし(2017年の今聴くと作り込みすぎ感が強いですが)、前作でのボーカルに物足りなさを感じていた人(そういう人もいたんじゃないかなと。僕はアリでしたが、当時自分の周りにそういう人が複数いたので)もコリンのスルメ的ボーカルには満足してくれると思うし。ひとつ難を挙げるとすると、6分を超える長尺曲が複数あることで全11曲で60分超えの大作になっているということ。もしかしたら9曲ぐらいでまとめて50分超えないぐらいに収めていたら、もっと高評価を得ていたのかなとも思えなくもない……けど、良い曲が多いことに越したことはないし、90年代前半という時代を考えればこれはこれで良かったのかもしれませんね。



▼PRAYING MANTIS『A CRY FOR THE NEW WORLD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 04 12:00 午前 [1993年の作品, Praying Mantis] | 固定リンク

2017/06/03

TYGERS OF PAN TANG『TYGERS OF PAN TANG』(2016)

ここ最近MR. BIGネタが続いたので、ここらで気分転換。

今回紹介するのはNWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)ムーブメントの中から登場したバンド、TYGERS OF PAN TANGが2016年秋に発表した通算12枚目のスタジオアルバムです。結成から40年近くを経た今、あえてニューアルバムのタイトルにバンド名を冠するというのも興味深いのですが、さらに気になるのがその内容。いやぁ、びっくりしました。

TYGERS OF PAN TANGというと正直、ジョン・サイクス(G)がかつて在籍したバンドという程度の認識で、アルバムもサイクスが参加した2nd『SPELLBOUND』(1981年)と3rd『CRAZY NIGHTS』(1981年)しか聴いたことがないという、その程度の知識しかありませんでした。しかし、IRON MAIDENやDEF LEPPARDのように同じシーンから誕生し現在も第一線で活躍しているバンドと違い、TYGERS OF PAN TANGは何度かの解散含め紆余曲折ありながら、今日まで活動を継続。オリジナルメンバーはもはやギタリストのロブ・ウィアーのみですが、2004年から参加するジャコポ・メイレ(Vo)含め、近年はほぼ固定メンバーで定期的に新作リリースやツアーを重ねていたようです。

本作は2013年に加入した新ギタリスト、ミッキー・クリスタルが加わって初のアルバムなのですが、その中身は王道中の王道HR/HM。オープニングの「Only The Brave」の “これぞヘヴィメタル!”とガッツポーズを取りたくなる疾走感にまずヤラれ、続くミドルチューン「Dust」「Glad Rags」の“これぞブリティッシュハードロック!”な作風にニンマリ(特に後者はTHUNDRあたりにも通ずるテイスト)。かと思えば「The Reason Why」「Praying For A Miracle」「Angels In Disguise」みたいな泣きのナンバーもある。もちろん、その合間にはメタリックなファストチューンやずっしりと重いミディアムナンバーも満載。捨て曲なしで、11曲44分があっという間に感じられる構成になっています。

全体的に古き良きHR/HMという作風ながらも、ところどころに若々しさが少し感じられるのはどうやら新加入のミッキー・クリスタルによる影響もあるようですね。メロウで適度に“泣く”ギタープレイはこういった王道HR/HMには欠かせないものですし、それを単なる懐古主義で終わらせていないのはさすがだなと思いました。IRON MAIDENあたりのバンドから感じる王道感とはまた別のテイストによる王道感、良いと思います。

こういう嬉しい出会いがあるから、「昔からやってます」な方々の新作も見逃せないんですよね。いやぁ、昨年のうちに聴いていたらこのアルバム、ベストアルバム候補に間違いなく入っていたと思います。それくらいの良作です。



▼TYGERS OF PAN TANG『TYGERS OF PAN TANG』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2017 06 03 12:00 午前 [2016年の作品, Tygers of Pan Tang] | 固定リンク

2017/06/02

MR. BIG『GREATEST HITS』(2004)

2002年に解散したMR. BIGの、ポール・ギルバート時代(1989〜1996年)とリッチー・コッツェン時代(1999年〜2001年)の両期をまとめたオールタイムベストアルバム。2004年という微妙な時期に発表されていますが、解散前までのキャリアを総括するという意味では非常に手軽な1枚と言えます。

最初のベストアルバム『BIG BIGGER BIGGEST! THE BEST OF MR. BIG』(1996年)がポール時代、しかもチャート的に成功した『LEAN INTO IT』(1991年)と『BUMP AHEAD』(1993年)の楽曲が半数を占めるという偏った内容でしたが、本作は1st『MR. BIG』(1989年)から3曲、2nd『LEAN INTO IT』から5曲、3rd『BUMP AHEAD』から3曲、4th『HEY MAN』から1曲、5th『GET OVER IT』(1999年)から2曲、6th『ACTUAL SIZE』(2001年)から2曲と、まぁ妥当な割合となっています。

そこに加えて、本作にはアルバム未収録曲「Strike Like Lightning」が追加されているのが大きなポイント。1990年に映画『ネイビー・シールズ』のサウンドトラックに提供したこの曲は、一部のファンのみの間で知られる隠れた名曲。1st『MR. BIG』の延長線上にあるストレートなハードロックチューンですが、実はこの曲、メンバーのペンによるものではないんですね。そこも含めて、非常に貴重なナンバーではないかと。

ちなみに同サントラにはもう1曲「Shadows」というアルバム未収録曲も収められていますが、こちらはベストアルバムには入っていません。どうせならこっちも入れてほしかった。

さて、アルバムの構成ですが、年代順(リリース順)となっており、純粋にバンドの成長・変化を楽しむことができるはずです。「Big Love」や「Take A Walk」「Alive And Kickin'」「Price You Gotta Pay」といったライブならではの非シングル曲もそれなりに入っているし、なによりもバラード率が低いのが良い(笑)。「MR. BIGといえば美しいバラード!」という人には、2000年にバラード系楽曲をまとめた『DEEP CUTS』というコンピレーションアルバムも発表されているので、ぜひそちらを。

ただ、オールキャリア総括というのを頭ではわかっていても、「Take Cover」のあとに突然「Dancin' With My Devils」が来ると「?」となってしまうのはどうにかならないでしょうか。まぁ自分自身の問題ですけどね。

まぁつまりは……結局僕自身の中でのMR. BIGとは「エリック・マーティン、ポール・ギルバート、ビリー・シーン、パット・トーピーの4人」っていうことなんです。リッチー・コッツェンには悪気はないんだけど。あ、『MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION』(1994年)や『WAVE OF EMOTION』(1996年)、大好きです(笑)。



▼MR. BIG『GREATEST HITS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 02 12:00 午前 [2004年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/06/01

MR. BIG『ACTUAL SIZE』(2001)

2001年夏に発表された、MR. BIG通算6枚目のスタジオアルバム。プロデューサーには、リッチー・コッツェン(G, Vo)が連れてきたリッチー・ズィート(リッチーが参加したPOISON『NATIVE TONGUE』(1993年)やリッチーの『MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION』(1994年)などを手がけたプロデューサー)が迎えられ、ほぼリッチー・コッツェン主導のもと制作された1枚と言っていいでしょう。

事実、ソングライティングの面ではバンドの創始者であるビリー・シーン(B)が1曲(「How Did I Give Myself Away」)のみクレジットされているだけで、大半がリッチー、そしてエリック・マーティン(Vo)、さらにはパット・トーピー(Dr)がそれぞれメインで書かれた楽曲が中心。ビリーのプレイもオープニングの「Lost In America」や「Suffocation」でこそテクニカルなフレーズが登場するものの、全体的には地味の一言。完全に存在感を消されているような印象すら受けます。

だって、アルバムからのリードシングル「Shine」(リッチー・コッツェンとリッチー・ズィートで書かれたポップチューン)の地味さといったら、前作『GET OVER IT』(1999年)以上ですから。途中、ギターとベースのユニゾンフレーズも登場しますが、決してテクニカルなものではないし。ボーカルにしても、コーラスをとるリッチーの存在感が前作以上で、エリックが歌っているからMR. BIGのアルバムであることを思い出すくらい。リッチーの声に気を取られてたら、確実に彼のアルバムと勘違いしちゃうんじゃないでしょうか。

確かに、リッチーの持ち味を生かした「Suffocation」(しかもこの曲、パットがチャック・ライトらと書いた楽曲なのだから驚き)をはじめカッコいい曲も複数存在します。しかし、それらは別に「MR. BIGである必要のないもの」ばかり。エリックやリッチーがソロでやればまったく問題のない楽曲ばかりなんです。

そういえば、先の「Suffocation」しかり、本作ではパットが今まで以上に大活躍しています。意外にもフックになってくるのは「Crawl Over Me」「Cheap Little Thrill」など、パットが書いた曲ばかりですし。それも、どこかポール・ギルバート時代に通ずる不思議な魅力があるんですから……もしかしたらMR. BIGがこの時点でもMR. BIGらしさを保てていたのは「エリックの声」という対外的な要素と、パットのソングライターとしての才能だったのかもしれませんね。

そんなパットの頑張りがあったものの、ビリーからしたらそりゃあ不満たらたらですよね。実際、リリース前のインタビューでビリー、かなり本音を漏らしていたはず。その結果、リリースを待たずしてビリーがバンドから解雇されるという青天の霹靂。その直後にバンドは本作とそのツアーをもって解散することを発表し、そのツアーにもビリーが参加することを改めてアナウンスするのです。要はビリー、サポートメンバー扱いですよ。

2002年春にはここ日本でもフェアウェルツアーを行いましたが、僕は行ってません。そんなギスギスしたバンド、見たくないもの。

そんなネガティブな思い出が多い作品だけに、個人的にはどうしても正当な評価を下しにくいのですが……バンドが無事再結成した今聴くと、そこまで悪くない作品だなと思いました。ただ、「これをMR. BIGがやるべきか?」と問われたら「NO」と即答しますけどね。



▼MR. BIG『ACTUAL SIZE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 06 01 12:00 午前 [2001年の作品, Mr. Big, Richie Kotzen] | 固定リンク