MR. BIG『DEFYING GRAVITY』(2017)
苦しい環境下で最善を尽くした前作『...THE STORIES WE COULD TELL』(2014年)から3年ぶりに発表された、MR. BIG通算9作目のスタジオアルバム。ツアーではパーキンソン病で体が思うように動かなくなってきたパット・トーピー(Dr)に替わり、マット・スターがサポートで参加。もちろんパットもパーカッションとコーラスでライブに加わり、新たな5人編成というスタイルでツアーを完遂します。
で、そこから今作に向かっていくわけですが、今回のプロデューサーは初期4作を手がけてきたケヴィン・エルソン。バンドとしても来年で結成30周年を迎えることもあり、ここで改めて原点に戻ろうという思いがあったのかもしれません。ドラムトラックは前作のようにプログラミングではなく、パットが方向性を指示しながらマットがプレイ。楽曲制作にはもちろんメンバー4人が中心となり、これまで同様の外部ライターを迎えて書き下ろされていくのですが……。
なんですか、この突き抜け方は!? 1曲目「Open Your Eyes」のオープニングでは、1stアルバム『MR. BIG』(1989年)のオープニングに収められていたエンジニアの声がそのまま流用され驚いたところで、そのまま軽やかにスタート。かと思えば、続いて爽やかなパワーポップチューン「Defying Gravity」が飛び出す。さらに、ブギーのリズムが気持ち良い「Everybody Needs A Little Trouble」、カントリー調のミディアムナンバー「Damn I'm In Love Again」、ど頭のギター&ベースによるテクニカルなフレーズに驚かされる「Mean To Me」、どこか影のあるソウルバラード「Nothin' Bad ('Bout Feelin' Good)」と良曲が続くこの構成……再結成後の2枚(『WHAT IF...』『...THE STORIES WE COULD TELL』)がバンドの原点である「ブルージーでソウルフルなHR」に立ち返ったかと思っていたら、今作ではその一歩先にある『LEAN INTO IT』(1991年)で見せた“開け方”が存在する。そう、バンドが今回目指した“原点”は最大のヒット作となった『LEAN INTO IT』期に立ち返ることだったのかもしれません。
事実、本作には「To Be With You」が全米1位を獲得した時期を振り返る「1992」という楽曲も存在します。これなんてメロディに「Green-Tinted Sixties Mind」の匂いが感じられますしね。もちろん、すべてがあの頃の焼き直しではありません。あのアルバムから26年後のエリック・マーティン(Vo)、ポール・ギルバート(G)、ビリー・シーン(B)、そしてパット・トーピーの姿がここには存在するのですから。
唯一、難癖をつけるとしたら……やはり1曲目はギター&ベースのユニゾンバリバリのファストチューンでキメてほしかったな、と。まぁそれをやらないからこそ、「2017年のMR. BIG」なわけで、それも重々理解できるんですけど……たぶん、それをやらないというのも彼らなりの意地なのかもしれません。本当はそんな意地、捨ててほしかったんですけどね。
まぁ苦言は本当にそれくらいで、あとはもうひたすら楽しくて聴き応えのある、いかにもこのバンドらしい作品集だと思います。そして、このアルバムに触れてから過去2作を聴き返すと、また違った聴こえ方をしてくるから本当に不思議。30周年を前にネクストレベルに到達しそうな、そんな力作。ここ日本だけでなく、久しぶりに海外でもヒットしてほしいな。

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