POISON『NATIVE TONGUE』(1993)
3枚のマルチプラチナムアルバムを発表したものの、早くも登場した2枚組ライブアルバム『SWALLOW THIS LIVE』(1991年)が大きなヒットにつながらず、C.C.デヴィル(G)が脱退(事実上のクビ)。POISONにとって最初にして最大の難関となったギタリスト問題も、しばらくしてリッチー・コッツェンというバカテクギタリストの加入により解決し、1993年初頭に通算4作目のスタジオアルバム『NATIVE TONGUE』がリリースされます。
当時のリッチーの評価は、現在のような「ブルースフィーリングあふれる、歌心のあるギタリスト」というものではなく、「シュラプネル系のテクニカル&速弾きギタリスト」というもの。しかし、POISONで聴かせるそのプレイは、確かにテクニカルではあるものの速弾き一辺倒ではなく、非常にレイドバックしたプレイでした。たぶん、多くのHR/HMファンが驚いたのではないでしょうか。
作品を重ねるごとにグラム路線から脱却し、前作『FLESH & BLOOD』(1990年)ではマッチョな(それでいて“枯れ”も感じさせる)サウンドにまで到達したPOISONでしたが、本作『NATIVE TONGUE』ではリッチーという才能を得たことで、その路線を一気に本格的なものへと昇華させることに成功。それまでのニセモノ感はどこへやら、本作から聴き始めたリスナーは間違いなく「こういうバンド」だと勘違いするはずです(笑)。
にしても、本作の完成度といったら……客観的に見ても、過去イチの出来ではないでしょうか。まず本作は、オープニングの「The Scream」やシングルカットもされた「Stand」など、ゴスペル色の強いハードロックが次々と展開されていきます。過去3作と比べたら、一聴して地味に感じるかもしれません。しかし、サウンド自体はこの手のレイドバックしたハードロックの中でもかなり派手めで、そのへんのPOISONというバンドのこだわりが感じられます。
また、バラードにしても過去のパワーバラードとは異なり、ソウルの影響下にある本格派バラード「Until You Suffer Some (Fire And Ice)」も飛び出し、当時は「どうしたPOISON?」と呆気にとられたものでした。が、今聴くと本当に良いですね、これ(笑)。前作での「Something To Believe In」で見せた路線の究極系と捉えると、非常に納得がいくといいますか。
後半には、従来の路線に近い「Strike Up The Band」や「Ride Child Ride」「Blind Faith」などストレートなハードロックもあるものの、やはりテイスト的には本作のマナーに従ったもの。まぁ『FLESH & BLOOD』からの流れで考えれば、本作の後半は前作の延長(=我々の知るPOISON)、前半はリッチー主導の本格路線(=過去のPOISONを覆す)ということになるんでしょうね。
すでにHR/HM冬の時代に突入していたものの、本作は全米16位、50万枚を超える中ヒットを記録。確かに前作までのマルチプラチナムと比較すれば“落ちた”ように見えますが、同時代に活躍した他のバンドと比較したら一番善戦したと思います。
結局リッチーは本作1枚のみで脱退。本作での路線をさらに推し進めたソロ作を続発したのちにMR. BIGに加入したり、ビリー・シーン(B)やマイク・ポートノイ(Dr)とTHE WINERY DOGSを結成したりするわけです。そういう意味では、今のリッチー・コッツェンにとって原点的1枚とも言えますね。POISONにとってはどのポジションの作品になるのかわかりませんが。
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