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2017/07/31

2017年7月のお仕事

2017年7月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※7月23日更新)


[WEB] 7月23日、「リアルサウンド」にて公開された「追悼チェスター・ベニントンーー彼とLinkin Parkが音楽シーンにもたらしたもの」にコメントを寄せました。

[WEB] 7月22日、「リアルサウンド」にてMasion book girlのアーティスト評「Maison book girlは一線を画する存在へ “総合芸術的”グループの魅力を考察」が公開されました。

[紙] 7月18日から全国のTSUTAYA店頭で無料配布中の「TSUTAYA on IDOL×BRODY 欅坂46特別号」にて、菅井友香×渡辺梨加インタビューおよび齊藤京子×佐々木久美インタビューを担当・執筆しました。

[WEB] 7月14日、「激ロッック」にて10-FEETインタビュー10-FEETニューシングル『太陽の月』ディスクレビューが公開されました。

[WEB] 7月13日、「Red Bull Japan」オフィシャルサイトにてコラム「『FUJI ROCK FESTIVAL '17』必見アーティスト9選」が公開されました。

[WEB] 7月12日、「リアルサウンド」にて上白石萌音のインタビュー「上白石萌音が明かす、オリジナル曲を歌うことで芽生えた“変化”「ひとつ解き放たれた感覚がある」」が公開されました。

[紙] 7月12日発売「TV Bros.」2017年7月15日号にて、原田知世『音楽と私』アルバムレビューを執筆しました。

[紙] 7月10日配布開始のフリーマガジン「激ロックマガジン」2017年7月号にて、10-FEETインタビューを担当・執筆しました。

[WEB] 7月6日、「リアルサウンド」にてLiSAのライブ評「LiSAのパレードはまだ始まったばかり アリーナツアーに見たエンターテイナーとしてのポテンシャル」が公開されました。

投稿: 2017 07 31 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

2017/07/24

ROLLING STONES『UNDERCOVER』(1983)

ROLLING STONESが1983年末に発表したスタジオアルバム(本国イギリスでは17枚目、アメリカでは19枚目)。全英2位、全米1位を獲得し、アメリカではマルチミリオンを達成した前作『TATTOO YOU』(1981年)からは「Start Me Up」(全英7位、全米2位)、「Waiting On A Friend」(全英50位、全米13位)、「Hang Fire」(全米20位)とシングルヒットも連発させ、同作を携えた大々的なツアーも大成功させました。

そこから約2年後に発表された本作『UNDERCOVER』は、前作『TATTOO YOU』が過去の未発表曲を中心に構成されたことから、久しぶりの“純粋な”オリジナルアルバムとなりました。パンクがニューウェイブが流行した70年代末〜80年代初頭を経て、ストーンズはアメリカで流行り始めていたヒップホップに、ニューウェイブ以降のダブやアフリカンビートを取り混ぜることで、新たなスタイルを確立させようとします。

シングルカットもされたオープニング曲「Undercover Of The Night」(全英11位、全米9位)は、パワフルな電子ドラムをフィーチャーしており、当時のクラブシーンを意識して制作されたのでは?と予想できるナンバー。ビル・ワイマンの印象的なベースライン、そしてキース・リチャーズによるメタリックなギターリフ、すべてがカッコイイとしか言いようのないナンバーです。

他にもレゲエを基盤にしつつも、電子パーカッションを効果的に取り入れた「Feel On Baby」、ダビーなアフロビートとゴージャスなブラスセッションの取り合わせが気持ち良い「Too Much Blood」、ファンキーなサウンド&リズムの「Pretty Beat Up」、従来のストーンズ流R&Rに電子的要素を取り入れた「It Must Be Hell」など、新機軸を感じさせる楽曲多数。特に「Undercover Of The Night」と「Too Much Blood」は12インチシングルとしてダンスミックスも制作されるなど、もともとフロアを意識して制作されたんじゃないかと推測されます。

こういった新機軸はミック・ジャガー主導であろうことは、これまでのストーンズの歴史を振り返れば想像つきますが、となるとキースに「待った!」と言っていたんじゃないかという予想もできるわけで。実際、上記の楽曲以外はこれまでのストーンズの型に沿ったストレートでシンプルなロックンロールなわけで、そのへんに当時のミックとキースのこだわり(ぶつかり合い)が感じられたりもします。

結局本作での試みはこの1作のみで終了(全英3位、全米4位)。というか、同作でのツアーは実現することなく、ミックは初のソロアルバム制作へと向かい、ストーンズとしてはキース主導の次作『DIRTY WORK』(1986年)へと続いていくわけです。



▼ROLLING STONES『UNDERCOVER』
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投稿: 2017 07 24 12:00 午前 [1983年の作品, Rolling Stones] | 固定リンク

2017/07/23

ALICE IN CHAINS『BLACK GIVES WAY TO BLUE』(2009)

2002年4月、レイン・ステイリー(Vo)の急死をもって、その活動に幕を下さざるをえない状況に追い込まれたALICE IN CHAINS。それから4年後、彼らは新ボーカリストにウィリアム・デュヴァールを迎え再始動。オリジナルアルバムとしては1995年の3rd『ALICE IN CHAINS』から実に14年ぶりに発表されたのが、本作『BLACK GIVES WAY TO BLUE』です。

ミドルテンポで引きずるようにヘヴィで陰鬱なスラッジサウンドはそのままに、あの“聴いてるだけでどこか不安な気持ちになってくる”も健在。冒頭2曲「All Secrets Known」「Check My Brain」を聴けば、間違いなく「あのALICE IN CHAINSが帰ってきた!」と実感できるはずです。

3曲目「Last Of My Kind」に入り、ようやくウィリアムの本領発揮。レインのような“爬虫類的でカリスマチックな”歌声ではないものの、深みのあるパワフルな歌声を響かせてくれる。最初こそこのALICE IN CHAINSサウンドに別の声が乗ることに違和感があったけど、何度か聴き返しているうちにそれも慣れてくると思います。

全体的な構成は、前作にあたる『ALICE IN CHAINS』の延長線上にある作風。しかし、レインのドラッグ癖で思うように活動できず無理矢理仕上げた感も多少なりともあった『ALICE IN CHAINS』と比べると、本作はより整理されている印象が強い。もちろん、前作はその無理矢理感が良い方向に作用していたわけで、あれと同じもの、あるいはそれに近いものを再び作ることは不可能。そういう意味では、ここには前作で試みた挑戦の完成型が存在しているのではないでしょうか。あの当時は『ALICE IN CHAINS』こそがAICサウンドの究極型だと思っていたけど、その続きがあったとは(いや、その続きが聴けることになるとは)……長生きはしてみるものですね。

ジェリー・カントレル(G, Vo)がメインで歌う「Your Decision」なんて、まんまALICE IN CHAINSじゃないですか(当たり前の話ですが)。でも、そこには不条理さも混沌さも存在しない。それが聴く人によってはもの足りなさにつながるかもしれませんが、1枚のロックアルバムとしての完成度は非常に高い。グランジブームが終焉した1994〜5年頃から10数年経ち、ようやく本家のうちの1組が万全の体制で“あの頃”にけじめをつけた。この『BLACK GIVES WAY TO BLUE』はそういう、今後活動を続けていくために作らなくてはいけなかったアルバムなんじゃないでしょうか。

「Your Decision」のラストフレーズ“It's Over”を耳にするたび、そう思わずにはいられません(で、前作のラストナンバーが「Over Now」だったのにも、何かの因縁を感じるという)。



▼ALICE IN CHAINS『BLACK GIVES WAY TO BLUE』
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投稿: 2017 07 23 12:00 午前 [2009年の作品, Alice in Chains] | 固定リンク

2017/07/22

DEAD BY SUNRISE『OUT OF ASHES』(2009)

LINKIN PARKのチェスター・ベニントン(Vo)が現地時間7月20日朝、ロサンゼルスの自宅で亡くなっているところを発見されました。自殺だったとのことです(詳細はこちら)。LINKIN PARKは来週から新作『ONE MORE LIGHT』を携えた北米ツアーも控えており、そのうちの数ヶ所には11月の来日公演で共演するONE OK ROCKがゲスト出演する予定でした。

11月の来日公演には僕も足を運ぶ予定だったので、ぶっちゃけ驚きを隠しきません。いや、ショックといったほうが正しいか。深夜にこの報せを受け、そのまま眠れずに朝を迎えてしまったのですから。

ふとLINKIN PARKの音源を手にとってみようとしたら、しばらく聴いていなかったこのアルバムが目に入りました。そういえば、これはまだ取り上げてなかったな……今日はチェスターのソロプロジェクト・DEAD BY SUNRISE唯一のアルバム『OUT OF ASHES』(2009年)を紹介することにします。

このプロジェクトは2005年頃に立ち上げられ、LINKIN PARKの3rdアルバム『MINUTES TO MIDNIGHT』(2007年)のレコーディング開始前にこの『OUT OF ASHES』を制作したとのこと。プロデューサーにハワード・ベンソン、制作パートナーに元ORGYのギタリスト2人、ライアン・シャックとアミア・デラクを迎え本作を完成させました。作風的になんとなく『MINUTES TO MIDNIGHT』で聴けるストレートなサウンドは、すでにこのDEAD BY SUNRISEを立ち上げた時点から決まっていたのですね。

とはいえ、LINKIN PARKとDEAD BY SUNRISEはボーカリストとソングライター(の一部)が一緒というだけで、バンドとしては別モノ。特にこのDEAD BY SUNRISEはヒップホップ色皆無ですし、よりダークさが強まっている印象があります。ゴシック的なダークさではなく、90年代初頭のグランジあたりに蔓延していたダークさと言ったほうがわかりやすいでしょうか。

適度にプログラミングなどを導入していますが、基本的にはギターを軸にしたハードロック。本作でのチェスターは激しさよりも、歌をじっくり聴かせることに注力しているように感じられます。「Crawl Back In」でのグランジ的作風はLINKIN PARKにはないラフさがあるし(これがのちのSTONE TEMPLE PILOTS参加につながるとは、当時は思ってもみませんでしたが)、バラード調の「Give Me Your Name」で美しい歌声を聴かせたかと思えば、続く「My Suffering」や「Condemned」では初期LINKIN PARKを思わせるスクリームを響き渡らせる。「Inside Of Me」みたいにLINKIN PARK的な楽曲もあるけど、それ以上に耳に残るのは、「Let Down」や「Into You」、そして「In The Darkness」のようなムーディーな歌モノ。同じシンガーによる2つのバンドの比較は避けきれませんし、それによってファンは本作を「LINKIN PARKより劣る」と判断してしまうかもしれません。実際、自分もリリース当時はそう感じたんですから。

でも、久しぶりに聴いてみたら(チェスターの死を抜きにしても)しっかり楽しめる1枚になっていた。これってもしかしたら、LINKIN PARK自体の方向性が少しずつDEAD BY SUNRISEに歩み寄っていたのもあるのかも……なんていうのは、言い過ぎでしょうか?

結果的には1回こっきりのプロジェクトで終わってしまいましたが、この続きがもしあったのなら……いや、“たられば”はやめておきましょう。今は彼が残した数々の名作に浸ることにしましょう。



▼DEAD BY SUNRISE『OUT OF ASHES』
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投稿: 2017 07 22 12:00 午前 [2009年の作品, Dead By Sunrise, Linkin Park, Orgy] | 固定リンク

2017/07/21

RED HOT CHILI PEPPERS『ONE HOT MINUTE』(1995)

1995年秋に発表された、RED HOT CHILI PEPPERS通算6枚目のスタジオアルバム。前作『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)がバカ売れ(全米3位、全世界でトータル1300万枚超)したものの、リリース翌年にジョン・フルシアンテ(G)が突如脱退。以降はサポートなどで数名のギタリストを入れ替えつつ活動していましたが、最終的に元JANE'S ADDICTIONのデイヴ・ナヴァロが加入するという衝撃の展開に。そうして約4年ぶりに発表されたのが、この『ONE HOT MINUTE』というアルバムです。

ジョンならではのメロウ&サイケデリックな側面が強く表れ、それがレッチリ本来のファンク+パンクなスタイルと融合したことで4thアルバム『MOTHER'S MILK』(1989年)よりも強靭な個性を確立。しかもそのアルバムがバカ売れしてしまったことで、バンドは成功した路線を踏襲するのかどうかに注目が集まりましたが、そこはレッチリのこと。『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』とは異なるハードな作品を提供してくれました。

とにかく、デイヴ・ナヴァロのギターが派手。JANE'S ADDICTION時代もその個性的なプレイでリスナーを楽しませてくれたデイヴですが、本作ではとにかくギターが暴れまくっている。で、必然的に楽曲もそれに見合った激しくて派手なファンクロックが満載。1曲目「Warped」での緊張感の強いサウンド&プレイは、この時期この編成ならではの奇跡的な好演ではないでしょうか。

その後も「Aeroplane」「Deep Kick」「Coffee Shop」「One Big Mob」「Shallow Be Thy Game」など、とにかくカッコいい曲が満載。かと思うと、前作における「Under The Bridge」ほどではないもののそれなりに聴き応えのある歌モノ「My Friends」「Tearjerker」もある。デイヴのギタープレイが好みというのも大きいですが、個人的にはレッチリの全作品中もっとも好きなアルバムが本作です。

ただ、デイヴが参加したのは本作のみ。1997年夏のフジロック初年度に嵐の中でのライブが話題となりましたが、その後デイヴはバンドを離れ、ジョンが再加入。1999年に『CALIFORNICATION』をリリースし、第2期黄金期の幕開けを飾ることになります。

そういう意味では、この『ONE HOT MINUTE』は非常に不憫なアルバムなんですよね。ジョン再加入後には本作からの楽曲もほぼ演奏されていないし、現在におけるまで黙殺状態が続いている。ジョンとフリー(B)はその後、再結成JANE'S ADDICTIONで共演しているので不仲ではないはずですが、できることならこの時代のレッチリも再び観てみたいものです(できれば、アンソニーが骨折してない状況で)。



▼RED HOT CHILI PEPPERS『ONE HOT MINUTE』
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投稿: 2017 07 21 12:00 午前 [1995年の作品, Jane's Addiction, Red Hot Chili Peppers] | 固定リンク

2017/07/20

GOJIRA『MAGMA』(2016)

フランス出身の4人組ヘヴィメタルバンド、GOJIRAが2016年初夏に発表した通算6枚目のスタジオアルバム。前作『L'ENFANT SAUVAGE』(2012年)は日本盤もリリースされ、2015年10月には『LOUD PARK 15』出演およびSLAYER単独公演のゲストアクトとして初来日公演も実現したので、(また、昨年の映画『シン・ゴジラ』公開にあわせてそのバンド名で)記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。

もともとヘヴィでプログレッシヴな要素を持ち合わせていたバンドではありますが、4年ぶりの新作となった本作『MAGMA』ではそのプログレッシヴさがより強まっているように感じました。スピードで推し進めつつ豪快なアレンジで起承転結するスタイルではなく、ミディアム〜スローで重々しいサウンドの中で表情を少しずつ変えていくその様は、どこかMASTODONや2000年代後半以降のOPETHにも通ずるものがあります。

特に本作は、クリーントーンの歌声が印象的なオープニングトラック「The Shooting Star」でいきなり驚かされるのですが、曲が進むにつれて従来のGOJIRAらしい要素も登場します。特徴的なエフェクトをかけたギターサウンドが耳に残る「Stranded」、緊張感のあるヘヴィサウンドとメロディアスなギターフレーズ、そしてどこか宗教的な歌メロとの融合が不思議な空気感を醸し出すアルバムタイトルトラック「Magma」、バスドラ連打とギター&ベースリフのユニゾンが気持ち良い「Pray」など、とにかく聴きどころの多い1枚です。

プログレッシヴな作風とはいえ、1曲1曲が連作になっているわけではなく、そのどれもが単体として独立した楽曲で、なおかつ1曲3〜4分程度。最長でも6分台で、それも全10曲中2曲。トータルで44分にも満たないトータルランニングのせいもあって、非常に聴きやすい印象を受けます。プログレッシヴなテイストはあくまで味付けといったところで、それがバンドにとってメインの武器ではない。陰鬱なヘヴィさに加えて、本作ではメロディアスさが少々強まったことで、かつてないほどに個性的な作品に仕上がったように思います。

残念ながら、本作は国内盤未発売。ぜひ『LOUD PARK』での再来日に期待しつつ、そのタイミングでの国内盤リリースにも期待したいところです。



▼GOJIRA『MAGMA』
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投稿: 2017 07 20 12:00 午前 [2016年の作品, Gojira] | 固定リンク

2017/07/19

ALCEST『KODAMA』(2016)

フランス出身の2人組“ブラックメタル+シューゲイザー=ブラックゲイズ”バンド、ALCESTが2016年秋に発表した5thアルバム。僕個人は前作『SHELTER』(2014年)で初めて彼らの音に触れたのですが、同作はそれ以前のブラックメタル的要素が減退し、よりポジティブで多幸感にあふれたサウンドが印象的な作品でした。バンドとしての進化を強くイメージさせた『SHELTER』から、次に彼らがどこへ進んでいくのか。それが端的に示されたのがこの『KODAMA』というアルバムになるわけです。

本作のタイトルは日本語の“木霊”のことで、作品自体も日本びいきの彼らが大ファンの宮崎駿作品『もののけ姫』からインスパイアされ制作。前作を覆っていた穏やかな空気感とは異なり、また初期のブラックメタル的路線とも異なる……その中間とまではいきませんが、ブラックゲイズ路線を一歩推し進めた内容と言えるかもしれません。

1曲目「Kodama」こそ穏やかさと激しさが同居した、非常にプログレッシブなサウンドが展開されますが、2曲目「Eclosion」ではスクリームなどブラックメタル的テイストが復活。その後もブラストビートを用いた「Oiseaux De Proie」などが登場しますが、それは「一周回って、こういう表現もありだよね」的な使い方で、原点回帰でも後退でもなんでもない。『SHELTER』という快作があったからこそたどり着けた、新たな地平と言えるのではないでしょうか。

いわゆるシューゲイザーともドリームポップとも違う、ヒリヒリと張り詰めた空気感と穏やかな空気感が交互に現れる長尺の楽曲が大多数を占める(全6曲中、7分超えが4曲。内2曲は9分前後)にもかかわらず、非常に練った構成・アンサンブルで聴く者を飽きさせないのはさすがの一言。ポストロックをメタル的解釈で表現した本作は、どこか映画のサウンドトラック的な表情も感じられます。

いわゆるシューゲイザーではもの足りないというメタルヘッズは、こういった方向からシューゲイザーの世界に触れてみてはどうでしょう。それこそ、彼らは初期の作品はもっとブラックメタル色が強いので、もっともバランスの取れた本作を起点にALCESTの音に触れてみることをオススメします。



▼ALCEST『KODAMA』
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投稿: 2017 07 19 12:00 午前 [2016年の作品, Alcest] | 固定リンク

2017/07/18

KORN『FOLLOW THE LEADER』(1998)

1998年晩夏に発表された、KORN通算3作目のオリジナルアルバムにして最大のヒット作。前作『LIFE IS PEACHY』(1996年)の全米3位、200万枚以上の売り上げに続き、本作は全米1位、500万枚以上ものセールスを記録しています。

最大のヒット作へと導いた最大の要因は、初期2作にあった難解さが後退し、よりわかりやすいメロディとビートを前面に打ち出したこと。「Got The Life」(全米オルタナチャート17位)、「Freak On A Leash」(同チャート6位)といったシングルヒットが生まれたことも大きく影響しているはずです。

LIMP BIZKITも2ndアルバム『SIGNIFICANT OTHER』(1999年)を最初に聴いたときに「ああ、こりゃ売れるわ」と直感で理解しましたが(結果、本当に全米1位に)、この『FOLLOW THE LEADER』も最初に聴いたときにまったく同じことを感じましたし、「垢抜けたなぁ。こりゃあ前作までのファンに叩かれるだろうな」とも思いました。事実、過去2作が好きだったファンからは総スカンを食らったものの、それ以上の新規ファンを獲得したことで大成功を収めるのですから、それはそれで間違ってなかったと言えるかもしれません。

とにかく、歌メロがわかりやすくなり、先に挙げたようなシングル曲など口ずさめるようなポップな楽曲(とはいえ、そのサウンドや音像は非常にヘヴィなのですが)が急増したことはバンドにとってかなりの挑戦だったと言えるはず。演奏面ではところどころで複雑怪奇なプレイを聴かせてくれますが、それがメインとなることはなく、あくまで歌に対する味付けといった程度に収められています。

「Blind」(1stアルバム収録)も「Good God」(2ndアルバム)もここにはないけれど、それでも「It's On!」や「Dead Bodies Everywhere」もあるし、ラストを締めくくるにふさわしい「My Gift To You」もある。ヒップホップファンにはアイス・キューブをフィーチャーした「Children Of The Korn」もあるし、LIMP BIZKITのフレッド・ダーストが参加した「All In The Family」、THE PHARCYDEやSLIMKID3で知られるトレ・ハードソンをゲストに迎えた「Cameltosis」もある。つまりヘヴィロックファン、ヒップホップファン、そしてライト層の全方位に向けた冒険的、かつ「これが売れなきゃウソ!」と断言できるような1枚なわけです。

KORNはその後、本作を下地にした作品創りを繰り返しています。初期に原点回帰!なんていわれても、やはり1stや2ndにあった狂気性を取り戻すまでには至らず……そういう点においては、この『FOLLOW THE LEADER』はバンドにとって“パンドラの箱”だったのかもしれませんね。



▼KORN『FOLLOW THE LEADER』
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投稿: 2017 07 18 12:00 午前 [1998年の作品, Korn, Limp Bizkit] | 固定リンク

2017/07/17

ORGY『CANDYASS』(1998)

1998年晩夏にリリースされたLA出身のヘヴィロックバンド、ORGYのメジャーデビューアルバム。インダストリアルの要素を取り入れたそのサウンドについて、本人たちは“デス・ポップ”と呼んでいたようですが、正直どこまで定着していたかは不明です。ただ、“乱行パーティ”を意味するそのバンド名、KORN主宰レーベル「Elementree Records」からのデビュー、そしてNEW ORDERの名曲中の名曲「Blue Monday」をカバーしたことが大きな話題となり、本作は全米32位、100万枚を超えるヒット作になりました。

インダストリアル調のリズムとデジタルを同期させたバンドサウンドはどこかNINE INCH NAILSを彷彿とさせるものの、あそこまでのカリスマ性が感じられないのも事実。とはいえ、ところどころに引っかかりのあるメロディが散りばめられており、決して駄作とは言い切れない。陰鬱だけど耽美さも感じられる空気感は、同年に発表され大ヒットしたMARILYN MANSON『MECHANICAL ANIMALS』にも通ずるものがあるんじゃないでしょうか。そう考えると1994年頃を起点にスタートした新世代ヘヴィロックの波が、この1998年を境に新たな方向に進み始めたと言えなくもありません。

ちなみにこのバンド、元ROUGH CUTTのアミア・デラク(G)が参加しているというのも興味深いところ。L.A.メタルが生き絶え、グランジが世の中を席巻していた時期に、アミアは時代の波に乗ってこういうことを始めたんだなと思うと、なんとも涙ぐましいものを感じてしまいます。

そんなL.A.メタル界隈の人間が絡むバンドが、NEW ORDERの「Blue Monday」をカバーしているのも、非常に味わい深いものがあります。この時期、ヘヴィロックバンドが80年代のヒット曲をカバーするのは一種の流行りみたいなものでしたが、ORGYもその流れに乗ってヒットを手にするのですから、賢いというかなんというか。このカバーがまたド直球で、嫌いになれないんだよね(アルバムの中では比較的浮いている存在なんだけど)……。

アルバムにはこのほか、KORNのジョナサン・デイヴィス(Vo)も「Revival」で共作&ゲストボーカルで参加しています。かといって作品自体はKORN界隈の一派というよりも、「NINE INCH NAILSやFILTERといったバンドが好きな人なら気にいるかも」といった内容かも。当時はハイプ的存在だったかもしれないけど、今となっては悪くないんじゃないかな。10数年ぶりに聴きましたが、リリース当時よりも素直に楽しめましたよ。



▼ORGY『CANDYASS』
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投稿: 2017 07 17 12:00 午前 [1998年の作品, Korn, New Order, Orgy] | 固定リンク

2017/07/16

MARILYN MANSON『MECHANICAL ANIMALS』(1998)

1998年初秋にリリースされた、MARILYN MANSON通算3作目のオリジナルフルアルバム。前作『ANTICHRIST SUPERSTAR』(1996年)が全米3位、全世界トータルで700万枚もの売り上げを記録する大ヒット作となりましたが、続く今作ではついに全米No.1を獲得します。

しかし、その内容はというと『ANTICHRIST SUPERSTAR』までの暴力的でメタリックなサウンドから一転、よりメロウでグラマラスでデカダンな世界観を展開。アルバムジャケットからもわかるように、ヴィジュアル面でも変化を遂げており、ここからアルバムごとに趣向の異なるサウンド/ヴィジュアルが提示されていくことになります。それはまるで、全盛期のデヴィッド・ボウイのごとく……。

また本作は、前作のように明確なコンセプトアルバム的作風ではないものの、オープニングの「Great Big White World」からラストの「Coma White」までの流れやストーリーが数珠つなぎのように感じられる構成になっています。ヘヴィな曲はあるにはあるけど、それは決してメタリックではなく、陰鬱さと耽美さを兼ね備えた“重さ”であり、同時にどこか物悲しさも漂わせている。その“哀”の部分が強く提示されているところが、前作との大きな違いでしょうか。

スローテンポ感ながらも不思議とキャッチーさと躍動感が味わえる「The Dope Show」やシャッフルビートが心地よい「Rock Is Dead」(映画『マトリックス』にも使用されたことでおなじみ)、70年代半ばのボウイにも通ずるファンキーな「I Don't Like The Drugs (But The Drugs Like Me)」などのシングル曲に加え、先のオープニング&エンディング曲やアルバムタイトル曲「Mechanical Animals」など強弱を強調したミドルチューン、初期ボウイを彷彿とさせるアコースティックナンバー「The Speed Of Pain」、メタルというよりもインダストリアル色が強いアップチューン「Posthuman」「I Want To Disappear」「New Model, No. 15」、ジャズの香りを漂わせるスローナンバー「Fundamentally Loathsome」、のちに発表されるライブアルバムのタイトルのモチーフ(『THE LAST TOUR ON
EARTH』)にも用いられたニューウェイブ色の強い「The Last Day On Earth」と……とにかく、全曲粒ぞろい。おどろおどろしさで押し通した前作までは異なり、あくまで音楽で押し通そうとするその姿勢に、マリリン・マンソン氏の強い意志が打ち出されているように感じます。

個人的な推し曲はオープニングの「Great Big White World」、タイトルトラック「Mechanical Animals」、そしてアルバムを締めくくる「Coma White」の3曲。特に「Coma White」はマンソン史上ベスト3に入る名曲だと断言したい。MARILYN MANSONというバンドが単なるキワモノやトリックスターではないことを証明した、『ANTICHRIST SUPERSTAR』以上の名作だと確信しております。



▼MARILYN MANSON『MECHANICAL ANIMALS』
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投稿: 2017 07 16 12:00 午前 [1998年の作品, Marilyn Manson] | 固定リンク

2017/07/15

TEAM SLEEP『WOODSTOCK SESSIONS VOL.4』(2015)

DEFTONESのチノ・モレノ(Vo)は前回紹介した✝✝✝以外にも複数のプロジェクトを抱えていますが、その中でも比較的長く続いているのが、このTEAM SLEEPかもしれません。

結成は2000年。ちょうどDEFTONESが『WHITE PONY』をリリースした時期にあたります。それから5年後、セルフタイトル作となる1stアルバムをメジャーから発表しますが、以降10年近くは完全に凍結していたようでした。

今回紹介するアルバムはTEAM SLEEP名義では通算2作目の作品で、タイトルどおりウッドストックにあるスタジオでライブレコーディングされた音源から構成。ライブといっても観客の声は抑え気味で、基本的にはスタジオセッションを一部のファンが観覧しているといったところでしょうか。

全9曲中5曲が1stアルバムの楽曲で、その合間にここでのみ聴くことができる最新のインストナンバーなどが挿入されています。約40分絶え間なく続くサウンドスケープは圧巻の一言。15曲入りで50分超だった1stアルバムに手を出すにはちょっとハードルが高すぎるというDEFTONESファンには、とっつきやすい1枚かもしれません。

サウンド的にも『WHITE PONY』以降のチノがバンドで表現しようとしていたもうひとつの要素……ポストロックやアンビエント/サイケのカラーが色濃く表れているし、✝✝✝で表現されたダークでゴシック調のエレクトロポップとは異なりながらも、“もしかしたら、これもまたDEFTONESが進んでいたかもしれない道”と実感させられるのではないでしょうか。

バンドサウンドが軸になっているという点でも、本作は✝✝✝よりもとっつきやすいかもしれません。特に『OK COMPUTER』期のRADIOHEAD、MOGWAIや90年代以降のKING CRIMSONあたりが好きなロックリスナーにはピンとくるものがあるのではないでしょうか。

こういったサイドプロジェクトが、いかにその後の『GORE』(2016年)制作に影響を与えたかを想像するだけで、個人的にはとても興味深いものがあります。



▼TEAM SLEEP『WOODSTOCK SESSIONS VOL.4』
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投稿: 2017 07 15 12:00 午前 [2015年の作品, Deftones, Team Sleep] | 固定リンク

2017/07/14

✝✝✝ (CROSSES)『✝✝✝』(2014)

DEFTONESのチノ・モレノ(Vo)が幼少期からの友人であるFARのショーン・ロペス(G)、そしてチャック・ドゥーム(B)の3人で2011年からスタートさせたサイドプロジェクト・✝✝✝(“CROSSES”と読む)。2枚のEPを経て2014年に完成させたのが、このセルフタイトルのフルアルバムです。

DEFTONESでトライしているダークでゴシックな作風はそのままに、サウンド面をそのままエレクトロに置き換えて表現したのがこの✝✝✝と言えるでしょう。ヘヴィロック的な激しさを伴う楽曲もあるにはあるし、曲によってはスクリームも取り入れられていますが、それはほんの味付け程度。基本的にはダウナーでメロウな世界観が展開されています。

過去に発表された2枚のEP収録曲をそのまますべて収録したほか、新たに録り下ろされた新曲5曲を加えた全15曲から構成されているという点においては、結成から2014年時点での集大成と呼べるでしょう。トラックリストも非常に考えられているように見えますが、実は1曲目から1st EP収録曲、2nd EP収録曲、新曲のサイクルを繰り返して収められているという不思議な構成。それでも単なる寄せ集めには感じられないのは、1曲1曲が独立した世界観を持っているからでしょうか。

もともとチノのルーツにはDEPECHE MODEあたりからの影響が見え隠れしていたし、実際DEFTONESでDEPECHE MODEのカバーにも挑戦していましたが、こうやって打ち込み主体のサウンドにトライすると、やはりそういう方向性になってしまうのですね。もちろん、単なるDEPECHE MODEオマージュでは終わっておらず、そこにはシューゲイザーやドリームポップ、あるいはトリップホップあたりからの影響も色濃く表れている。DEFTONESではテイストとして取り入れていた要素を、ここではサウンドの軸として全面に打ち出しているのは大きない違いと言えます。

同じシンガー、違うバンドメンバーではあるものの、DEFTONESと✝✝✝がまったくの別モノと思えないのも事実。それは“スタート地点は同じなのに、そこから枝分かれした道、進んだ道が異なることでゴールが違った”だけの話なんでしょうね。そしてチノが✝✝✝というプロジェクトを経て、DEFTONESで『GONE』(2016年)という力作を完成させたという点も、非常に興味深いのではないでしょうか。



▼✝✝✝ (CROSSES)『✝✝✝』
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投稿: 2017 07 14 12:00 午前 [2014年の作品, Crosses (✝✝✝), Deftones] | 固定リンク

2017/07/13

NINE INCH NAILS『NOT THE ACTUAL EVENTS』(2016)

2016年末に突如デジタル配信&ストリーミングがスタートした、NINE INCH NAILSの最新EP。新録音源としては、2013年8月発売のアルバム『HESITATION MARKS』以来3年4ヶ月ぶり。しかも『HESITATION MARKS』が『YEAR ZERO』(2007年)以来のメジャーレーベルからのリリースだったのに対し、本作では再び自主レーベル(インディーズ)からの発表となっており、そのへんの事情もいろいろを想像させられるわけです。

新曲のみで構成されたEPという点においては、おそらく1992年の名作『BROKEN』以来ということになるのでしょうか。『BROKEN』は長く続いた前レーベルとの裁判の末に完成した、感情をありのままぶつけた小作品集という印象ですが、今作はその攻撃的な感情に加え知的さも存分に感じられる、非常にバランス感の取れた楽曲集という印象が強いです。

とはいえ、そこはトレント・レズナーのこと。『HESITATION MARKS』よりも音数が多く、歪んだ音像で重さを表現しようとするあたりに、これからのNINE INCH NAILSの方向性が見え隠れしたりもしています。

2分に満たないオープニングトラック「Branches / Bones」は、まるでSUICIDE「Ghost Rider」の21世紀版といったスタイル。激しいのに、どこか冷静さ・冷徹さが感じられ、これぞNINE INCH NAILSといったナンバーだと思います。

エレクトロ色が濃い「Dead World.」はどこか異色で、冒頭の囁くような低音ボーカルにドキッとさせられつつ、サビに入ると“いかにも”な歌メロを聞かせてくれる。インダストリアル調のミドルヘヴィナンバー「She's Gone Away」もテイスト的には前曲「Dead World.」の流れにあるもので、後ろで鳴っている激しいギターサウンドやフィードバック音にも強い主張が感じさせつつ、どこか宗教的な雰囲気すら漂わせている。

3拍子でゴリゴリと攻める「The Idea Of You」もボーカルの方向性的には前2曲と同じ流れにありながらも、淡々とシーケンスされるAメロから急に激しさを増すサビへ流れるアレンジが気持ちよい。そして最後の「Burning Bright (Field On Fire)」は、歪みまくった音像の中で歌メロを崩して歌うトレントに新たな可能性を感じます。いろんな音が相まって、ある種カオスを生み出しているのですが、不思議とそれが気持ち良かったりする。実は本作中で一番キャッチーな楽曲かもしれませんね。

この5曲を聴く限りでは、まだ新たなNINE INCH NAILS像を明確に見せていないような気がする。というよりも、EPを連作するスタイルで徐々に次の方向性を明確化させていくんじゃないでしょうか。そういう意味では、この『NOT THE ACTUAL EVENTS』は“『HESITATION MARKS』の次”ではなく、そこへ向けた習作と呼んだほうが正しいのかもしれません。



▼NINE INCH NAILS『NOT THE ACTUAL EVENTS』
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投稿: 2017 07 13 12:00 午前 [2016年の作品, Nine Inch Nails] | 固定リンク

2017/07/12

MINISTRY『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』(1989)

MINISTRYが1989年に発表した通算4作目のスタジオアルバム。初期はニューウェイブやエレクトロニックボディミュージックの流れにあるサウンドが特徴でしたが、1988年の3rdアルバム『THE LAND OF RAPE AND HONEY』あたりからインダストリアル色が強まり、続く本作ではそこにメタリックな要素が加わり、のちの方向性が定まることになります。

リリース当初はここ日本でも一部のマニアにしか知られていなかった彼らが、一躍ここ日本のメタルファンの間で注目を集めることになったのは、1991年初頭に行われたMEGADETHの来日公演の開演前SEに、本作の冒頭2曲「Thieves」「Burning Inside」が使用されたことから。僕も当時、中野サンプラザでMEGADETHを観ていますが、確かに客入れ時に流れていたこの2曲が異常にカッコよかったことをよく憶えています。当時は今のようにインターネットもなく、それがMINISTRYというバンド(ユニット)の楽曲だと知るのは数ヶ月後、音楽誌『BURRN!』を読んでからでした。

反復する性急なデジタルビートの上に、ザクザクと気持ち良いスラッシュメタル風ギターリフが乗る。ボーカルもメロディを歌うのではなく、がなるように叫び散らすだけ。タイミング的にはちょうどNINE INCH NAILSに注目が集まり始め(彼らはGUNS N' ROSESとの共演などにより、1989年に発表したデビュー作『PRETTY HATE MACHINE』でプチブレイク)、日本でもSOFT BALLETがボディミュージックを極め、デジタルサウンドを本格的に取り入れる前のTHE MAD CAPSULE MARKETSがメジャーデビューした時期。そういう時代背景を考えると、この時期にMINISTRYが日本で“見つかった”のは興味深いところです。

本作の魅力は、スラッシーな楽曲一辺倒ではないところ。冒頭3曲はその系統の楽曲ですが、「Cannibal Song」はゴスやニューウェイブのカラーが感じられるし、「Breathe」はパーカッシブなドラムパターンが印象的。終盤の「Faith Collapsing」はダークなミドルチューンだし、ラストの「Dream Song」なんてどこか宗教じみた世界観が展開されている。「Thieves」「Burning Inside」のカラーを求めて本作に手を出したメタルファンにはちょっと厳しい内容かもしれませんが、のちのゴシックメタルなどにも通ずる世界観が繰り広げられていると考えれば、意外と入っていきやすいのではないでしょうか。

メタル度という点においては、次作『PSALM 69: THE WAY TO SUCCEED AND THE WAY TO SUCK EGGS』(1992年)より劣るものの、やはり冒頭2曲の完璧さを考えたら、まずは本作から聴いてほしい。そう力説したくなるほど、お気に入りの1枚です。



▼MINISTRY『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』
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投稿: 2017 07 12 12:00 午前 [1989年の作品, Ministry] | 固定リンク

2017/07/11

FAITH NO MORE『ANGEL DUST』(1992)

FAITH NO MOREでどのアルバムが一番好きか?と尋ねられたとき、意外と意見が割れるんじゃないかなという気がしていて。どの作品で初めて彼らに触れたかも大きい気がするんですが、僕の場合は大ヒットした『THE REAL THING』(1989年)から入ったものの、実はその次の4thアルバム『ANGEL DUST』が一番気に入っているんですよね。

1992年6月に発表された本作は、シングル「Epic」の大ヒット(全米9位)によってミリオンヒットとなった『THE REAL THING』に続くアルバムで、マイク・パットン(Vo)がバンドに加わってから通算2枚目のスタジオ作品です。プロデューサーマット・ウォレスとバンドという、前作とまったく同じ布陣。前作が予期しなかったヒットを記録しただけに、プレッシャーもかけられたんじゃないかと想像しますが……いざ完成した本作は、その後の“やりたい放題”ぶりを予見させる内容で、非常にバランス感に優れた1枚ではないかと思います。

無駄にメジャー感があってキャッチーな楽曲が多かった『THE REAL THING』と比較すると、そのへんのカラーは若干抑え目。シングルカットされた「Midlife Crisis」や「A Small Victory」、「Everything's Ruined」あたりは確かにメジャー感こそあれど、派手さは皆無。そこに加えてシリアスかつヘヴィな「Land Of Sunshine」や「Caffeine」、どこか間の抜けたイメージの「RV」、複雑怪奇なハードコア「Malpractice」、“オペラ座の怪人+ファンク+キッズコーラス”と支離滅裂ながらもカッコいい「Be Aggressive」など、非常にクセの強い楽曲がずらりと並ぶのですから。ミクスチャーだなんだと新しい音楽に触れて喜んでいた前作のノリを期待して本作に手を出したら、次々に邪悪なキャラクターが飛び出すパンドラの箱を開けてしまった……そんな体験ができるはずです(笑)。

思えばFAITH NO MOREにHR/HMテイストが強く感じられたのは、本作までなんですよね。それは、本作を最後に脱退したギタリスト、ジム・マーティンのプレイによるものが大きいのかなと。その後バンドに加わり、再結成にも参加するジョン・ハドソンと比べると、無駄に派手ですからね(見た目含め)。

ちなみに本作、チャート的にはFAITH NO MOREのキャリアで唯一全米10位内に達したアルバム(最高10位)。実は『THE REAL THING』って、11位止まりなんですよ。ただ、順位的にはそんなに変わらないけど、セールス的には『THE REAL THING』が100万枚、本作『ANGEL DUST』は50万枚とシングルヒットの有無で差が出てしまったようです。

なお、再発盤には追加収録されてますが、本作リリースからしばらくしてバンドはライオネル・リッチーが在籍したCOMMODORESの名曲「Easy」のカバーをシングルリリース。こちらは全米58位という中ヒットを記録しています。前作ではBLACK SABBATH「War Pigs」を取り上げていた彼らが、次作でCOMMODORESをセレクトしたというのも面白いし、こっちのほうが本来の彼らのセンスなんでしょうね(本気とも冗談とも取れる微妙なラインが)。



▼FAITH NO MORE『ANGEL DUST』
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投稿: 2017 07 11 12:00 午前 [1992年の作品, Faith No More] | 固定リンク

2017/07/10

THE CULT『SONIC TEMPLE』(1989)

リック・ルービンをプロデューサーに迎えた1987年の3rdアルバム『ELECTRIC』で、ゴシックテイストのニューウェイブサウンドからハードロック路線へとシフトチェンジし、それなりに成功を収めたTHE CULT。続く1989年の4thアルバム『SONIC TEMPLE』では時代の寵児ボブ・ロックをプロデューサーに迎え、より硬質なサウンドへとビルドアップさせます。

初期の『DREAMTIME』(1984年)や『LOVE』(1985年)のイメージは完全に払拭され、音だけ聴けば同時期に制作されたBLUE MURDERの1枚目MOTLEY CRUE『DR. FEELGOOD』、あるいはBON JOVI『NEW JERSEY』AEROSMITH『PERMANENT VACATION』にも通ずるものがあります。もちろんそこを狙っての起用なんでしょうけど、リック・ルービンらしさ満載のスカスカなハードロック(『ELECTRIC』)とはある種対局の作品を完成させたなという印象があります。

それは楽曲の構成にも端的に表れており、3分前後の楽曲が中心だった前作から一変、今作では4〜5分台の楽曲が中心で、オープニングの「Sun King」は仰々しいオープニングを含む6分超え、「Soul Asylum」に至っては7分半もあるのですから驚きです。

もちろん、ただ長くすればいいってわけじゃないい。そこはボブ・ロックが絡んでいるので問題なし。過剰なまでにドラマチックなアレンジが施されたことによって、THE CULTというバンドが本来持ち合わせていた“湿り気”が強調される結果となりました。むしろ前作のカラッとしたサウンドが異質なわけで、本作で聴ける音/アレンジのほうが実は本来の彼らに近いのでは……という錯覚に陥ってしまうのですから(笑)、さすがとしか言いようがない。

イアン・アストベリー(Vo)のボーカルも絶好調だし、なによりもビリー・ダフィー(G)のギターの暴れっぷりといったら。その後も印象的なギタープレイが聴ける作品はいくつかありますが、「American Horse」みたいにハードな曲ではグイグイ攻め、「Edie (Ciao Baby)」のような聴かせる曲では引きのプレイで印象づける、バランスの良いギタープレイを楽しむという点においては本作が随一ではないかと思います。

当時MTVや『PURE ROCK』(TBSで日曜深夜に放送されていた、HR/HM専門プログラム)で「Fire Woman」のMVが頻繁に流れていた印象があり、「ああ、THE CULT売れてるなぁ」なんて思ってましたが、実際に本作は全米10位という最大のヒット作になったんですよね。「Fire Woman」自体も全米46位とバンド史上最大のヒット曲になったし、他にも「Edie (Ciao Baby)」が全米93位まで上昇。後にも先にも、Billboard TOP100にランクインしたのはこの2曲のみ。

あ、本作のレコーディングではブライアン・アダムスのバンドでおなじみのミッキー・カリー(Dr)がドラムを叩いてますが、ツアーではのちにGUNS N' ROSESに加わるマット・ソーラムが参加していたのも、この時期の特筆すべきポイントです。



▼THE CULT『SONIC TEMPLE』
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投稿: 2017 07 10 12:00 午前 [1989年の作品, Cult, The] | 固定リンク

2017/07/09

WARRIOR SOUL『DRUGS, GOD AND THE NEW REPUBLIC』(1991)

知る人ぞ知る?な存在、ニューヨーク出身のハードロックバンドWARRIOR SOULが1991年に発表した2ndアルバム。前年1990年にここ日本でも1stアルバム『LAST DECADE DEAD CENTURY』を発表しているのですが、ちょうどリリース元のGeffen Recordsがここ日本でワーナーミュージックからビクター系へと権利が移ったことで、1枚目はあやふやな扱いになってしまったんですよね。なので、僕自身が彼らをちゃんと知ったのはこの2ndアルバムから。変な話ですが、このアルバムをNIRVANA『NEVERMIND』やPEARL JAM『TEN』あたりと同じタイミングで購入して、並列で聴いてたんですよね(苦笑)。

当時はフロントマンのコリー・クラークを「90年代のジム・モリソン」的に例えるメディアが見受けられましたが、確かにそれも納得してしまうようなルックスとカリスマ性が備わっていたように記憶しています。アルバム自体やTHE DOORSというより、その彼らに影響を受けたイギー・ポップや彼のバンドTHE STOOGESに通ずるものがあり、パンクロックと60〜70年代的ハードロック、そしてサイケ&アートロックを絶妙なバランスでミックスしたような楽曲/サウンドを楽しめるかと思います。

とにかく1曲目「Intro」でのアジテーションからしてカッコいい。終盤の「We are the goverment!」の連呼から、そのまま「Rock & Roll!」のシャウトとともになだれ込む「Interzon」の、デトロイトロック的ワイルドさたるや……ってこれ、JOY DIVISIONのカバーやん! あの曲がTHE STOOGESみたいに生まれ変わってしまうことに驚きですが、これが意外とイケるんですよね。

その後もSOUNDGARDENやPEARL JAMにも通ずるグルーヴィーなロックを聴かせてくれたり、どこか古めかしいメロディ進行&コーラスワークが印象的な楽曲あり、ひたすら疾走する爆走ロックンロールあり、KILLING JOKEあたりにも通ずる“スラッシュメタル的ギターリフ+ニューウェイブ的アレンジ”なナンバーあり……と、HR/HMファンでも存分に楽しめる要素が存分に存在します。逆に、HR/HMは苦手だけどSOUNDGARDENあたりのグランジバンドはいけるって人でも入っていきやすい要素がかなりあるんじゃないかな。

思えばこの時代って、FAITH NO MOREやJANE'S ADDICTION、RED HOT CHILI PEPPERSなども台頭し始め、メタルとそうじゃないオルタナバンド(当時はミクスチャーと呼ばれてしたが)の線引きが曖昧になり始めた時期。WARRIOR SOULはメタル雑誌で紹介される機会が多かったものの、プロモーションの仕方さえ違えば先のFNMやレッチリ、あるいはALICE IN CHAINSやSOUNDGARDENのような方向で扱われていたのかもしれませんね。



▼WARRIOR SOUL『DRUGS, GOD AND THE NEW REPUBLIC』
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投稿: 2017 07 09 12:00 午前 [1991年の作品, Warrior Soul] | 固定リンク

2017/07/08

STONE SOUR『HYDROGRAD』(2017)

SLIPKNOTのフロントマン、コリィ・テイラー(Vo)による別バンド、STONE SOURの4年ぶり、通算6枚目のスタジオアルバム。前々作『HOUSE OF GOLD & BONES - PART 1』(2012年)および前作『HOUSE OF GOLD & BONES - PART 2』(2013年)が連作かつコンセプチュアルな作品だったこともあり、無駄に小難しさを与えてしまった印象もなきにしもあらずですが、そういうこと抜きにしてもよくできたヘヴィロックアルバムだったんですけどね。ただ、個人的には半年というスパンで2枚のアルバムを出す理由がいまいち掴めなかったというか。だったら2枚同時か2枚組にしてほしかったなと。1年ぐらい間が空けば1枚1枚をじっくり楽しめたと思うんですが、そこまで体に馴染む前に新しいのが出ちゃって、結局そこまで両方楽しめなかったというのが本音なので。

で、STONE SOURとしてはその後、HR/HMの名曲たちをまんまカバー(というかほぼコピー)した2枚のEP(『MEANWHILE IN BURBANK…』『STRAIGHT OUTTA BURBANK…』)を2015年に発表し、そこから1年半経った今年6月末にこの『HYDROGRAD』というオリジナルアルバムを発表したわけです。

えーっと、最初に聴いたときはとにかく驚きました。いや、驚いたというよりもぶったまげた、と言ったほうが正しいか。良い意味で予想を裏切ってくれた、清々しいまでにまっすぐなHR/HMアルバムなんですよこれが。

SLIPKNOTと比べれば存分にメロディアスなんだけど、やはり餅は餅屋というか、特に前2作にはヘヴィさや重苦しさがつきまとっていたわけです。ところが、HR/HMの名曲コピーに勤しんだこともあり、今作では自らのルーツに立ち返ったと言わんばかりに、シンプルでど直球なストリングスタイルのHR/HMを聴かせてくれるんです。もちろんアレンジにおける味付けには現代的なフレイバーが散りばめられていますが、それは許容範囲内。30〜40代のリスナーが進んで楽しめる要素が芯にしっかりあるから、問題なく楽しめるわけです。

コリィの歌唱スタイルやメロディの運び方、そしてメロディアスかつフラッシーなギタープレイ含め、ここにあるのは間違いなく80年代の黄金期の影響下にあるHR/HM。スタート時こそ90年代のオルタナロック〜グランジからの影響が強かったものの(もちろん本作にもその要素はしっかりありますが、それ以上に王道色のほうが強い)、ここで一気に開き直ったというか先祖返りしたというか。ホンモノが求められるこんな時代だからこそ、彼らのようなバンドがこういう音を鳴らしてくれるのは本当に嬉しい。これを聴いたからって、別にSTONE SOURがNICKELBACKになったとは誰も思わないって(笑)。

70分近くもある大作(全15曲入り)ですが、珍しく最後まで飽きずに楽しめる1枚でした。しかも日本盤にはさらにボーナストラックとして、VAN HALEN「Unchained」のカバーを追加。これも先のカバーEPの名残りですね。おまけとしては十分。ぜひ日本盤で購入することをオススメします。



▼STONE SOUR『HYDROGRAD』
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投稿: 2017 07 08 12:00 午前 [2017年の作品, Slipknot, Stone Sour] | 固定リンク

2017/07/07

RADIOHEAD『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』(2017)

今から20年前の1997年6月(本国イギリスで。日本では5月末に先行リリースされています)、RADIOEHADが『OK COMPUTER』というアルバムを発表してから今年で20年。おそらくこの20年間で、自分がもっとも再生したアルバムが本作であることは間違いないと思います(次点がMANIC STREET PREACHERSの『EVERYTHING MUST GO』かな。まぁこちらは前年1996年発売だけど、リリース当初は親しめず、しばらく経ってからドハマりしたので)。

『OK COMPUTER』については今から16年前、2001年6月にすでに紹介しているので、改めて書くまでもないかなと。あのとき、散々悩みながら「どうしてこのアルバムがすごいのか?」について書いたので。

で、今回紹介するのは、20周年を記念して先月発売された2枚組アルバム『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』について。これは『OK COMPUTER』をリマスタリングしたディスク1と、当時のシングルにバラして収められた『OK COMPUTER』制作時のアウトテイクと、音源としては初収録となる「I Promise」「Man Of War」「Lift」の3曲を含む11曲入りのディスク2から構成されています。

ディスク1の内容については改めて書くまでもないですが……そう、書くまでもないのに、そしてこれまでに何百回と聴いてきたのに、バカ正直に再生してしまうという(しかも「Airbag」から「The Tourist」までじっくり聴き入ってしまうという)。久しぶりに大音量で聴いてみたら……やっぱり良いアルバムでした。と同時に、このリマスター盤がとてもえげつない。音の分離がかなり良くなっているためか、オリジナル盤よりもきめ細やか。言い方は悪いけど、見たくなかったものまで見えてしまうくらいの生々しさを感じさせる仕上がりなのです。恐ろしい。

で、問題のディスク2。当時のライブでも披露されていた「I Promise」「Man Of War」「Lift」の3曲は、ファンならご存知のナンバー。特に「Lift」に関しては何度も「ついに正式レコーディングされるか?」という噂が上がり、昨年の最新作『A MOON SHAPED POOL』の際にもそんな噂が出たくらい、ファンの間では音源化が熱望されていた1曲なのです。

『OK COMPUTER』という完成され尽くした傑作のあとに、これらの未発表曲やアウトテイクをがっつり聴くと……このディスク2の方向性って、要はその前の2ndアルバム『THE BENDS』(1995年)からの単なるステップアップ作だったんだなと実感させられるわけです。

そういえばRADIOHEADは1枚目のアルバム『PABLO HONEY』(1993年)から『THE BENDS』に取り掛かった際にも、一度作った多くの新曲を“破棄”して新たに作り直しているんですよね。そこで“破棄”された楽曲群が『MY IRON LUNG EP』(1994年)や、『THE BENDS』からのシングルのカップリングに収められたわけです。ただ、『THE BENDS』のときと『OK COMPUTER』が違ったのは、『THE BENDS』の頃はツアーなどで時間がない中で納得にいかないものを作ってしまったからであって、『OK COMPUTER』の頃はある程度納得できるものを一度作ってから「もっといけるんじゃないの?」とさらに一歩踏み込んだ。その違いはすごく大きいと思うんです。

「I Promise」も「Man Of War」も「Lift」も、RADIOHEADが好きな人なら絶対に気にいる、彼ら以外の何者でもない良曲だけど、やっぱり『OK COMPUTER』という閉鎖的で神経症気味な作品集には似合わないんですよ。こういう形で聴かされると、それはより強く実感させられるわけで、やっぱり当時の彼らのジャッジは正しかったんだなと納得してしまいます。もし、ディスク2側の方向で進めていたら、きっとここまで大きくなってなかっただろうし、バンド自体もここまで長く続いていたかどうか……。

それにしても、ディスク2を聴くとTHE BEATLESからの影響がいかに強いかが伺えますね。本編における「Paranoid Android」における「Happiness Is A Warm Gun」リスペクトぶりだけじゃなく、アウトテイクからもポール・マッカートニー的センスが伺えたりしますし。そこからPINK FLOYD的方向が加わったことで今の『OK COMPUTER』が完成した……なんていうのは大袈裟かしら。

というわけで本作。『OK COMPUTER』が大好物な方なら間違いなく楽しめる、歴史的価値の高い作品集だと思います。またライト層は、ディスク2を「『THE BENDS』と『OK COMPUTER』の間に、本来発売されるはずだった幻の2.5枚目アルバム」という位置付けで聴くと、スッと入っていけるのではないでしょうか。なんにせよ、『OK COMPUTER』とあわせて聴いておくべき1枚だと思います。だって、ミュージックビデオまでしっかり制作されちゃってるんだから(しかも2本も)。



▼RADIOHEAD『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』
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投稿: 2017 07 07 12:00 午前 [1997年の作品, 2017年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2017/07/06

SLOWDIVE『SLOWDIVE』(2017)

間にKASABIANの新作を挟んだけど、再び「20年前後ぶり」の新作の話題に。

RIDEのニューアルバム『WEATHER DIARIES』が発売されるちょっと前に、SLOWDIVEの通算4作目にあたるスタジオアルバムも発表されました。題して『SLOWDIVE』。前作『PYGMALION』(1995年)から実に22年ぶり……笑うしかないね。まぁ前作リリース後に解散してしまったんだからしかたないんだけど。そんな彼らも2014年に再結成。同年にはフジロックで奇跡の初来日を果たしたんだけど……うん、あんまりいい思い出がない(苦笑)。

それだけに、このニューアルバムにもそこまで過度な期待はしてなかったんですが……どこからどう聴いてもSLOWDIVE以外の何者でもない、我々が求めるサウンドそのものでした。

もちろん単なる過去の焼き直しではないし、そもそも彼らはアルバムごとにそのスタイルを少しずつ変化させてきたので、本作はそのどれにも当てはならないとも言えるし、逆にどの要素も持ち合わせているとも言える。不思議なんだけど、ボーカルが乗った瞬間に「ああ、SLOWDIVEだわ(笑)」と妙に納得してしまう。それだけ強い個性と説得力がある音なのかなと、何度か聴き返して感じました。

耽美さは変わらずで、ディレイとディストーションから派生する全体を覆うサウンドエフェクト(幕がかかったようなミキシング)のせいで、その耽美さはより強度を増しています。楽曲も下手に難しいことをやろうとせず、シンプルで親しみやすいメロディを、よりシンプルなバンドアンサンブルで聴かせようとしている。結果、その世界に入っていきやすいんだけど、入ってからがさあ大変。底なし沼のように果てしなく広大な宇宙空間に産み落とされたような、なんとも言えない居心地の良さを(それでいて、ある種の居心地の悪さも)感じる。ああ、気持ち良い(気持ち悪い)……これがクセになって、何度も聴き返したくなるんです。

シューゲイザーというよりも、ドリームポップという表現が近い本作は、間違いなくか過去の名作群に並ぶ傑作のひとつ。先の2017年上半期ベストからは選外としましたが、限りなくベスト5に近いポジションの1枚です。たぶん今だったら、確実に5枚に入れてるだろうしね。

にしてもジザメリといいRIDEといい、このSLOWDIVEといい……みんな良くも悪くも“歳を取らない”んだよなぁ。シューゲイザーってそういう効果があるのかね。もしくは、そうだからこそ鳴らせる音というか。聴いてるこっちは10〜20代から40代になってるわけで、そりゃ居心地の悪さも感じるわけですよ(苦笑)。



▼SLOWDIVE『SLOWDIVE』
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投稿: 2017 07 06 12:00 午前 [2017年の作品, Slowdive] | 固定リンク

2017/07/05

KASABIAN『FOR CRYING OUT LOUD』(2017)

前作『48:13』(2014年)から3年ぶり、通算6枚目のオリジナルアルバム。先行シングル「You're In Love With A Psycho」のメジャー感が強いポップさに若干引きつつも、アルバムは別に全体がそういう作風というわけではなく、従来さしさもありつつ新しい挑戦もありで、思う存分楽しめました。

ブリットポップ以降のUKロックの系譜をしっかり引き継ぎつつ、現代的なヒップホップやエレクトロなど毎回流行もそこそこ取り入れてきた彼ら。このアルバムでもその貪欲さは薄れておらず、1曲目「Ill Ray (The King)」から“らしさ”と“新しさ”が全開です。続く「You're In Love With A Psycho」は最初に書いたとおりで、これもある種の“新しさ”なわけで、そこからアグレッシヴな「Twentyfourseven」へとつないでいく流れはさすがの一言。

そこから、再びポップでドリーミーな「Good Fight」へと続き、アコギの音色が心地よい「Wasted」、ブラスセクションを取り入れたアンセミックな「Comeback Kid」(サッカーっぽいなと思ったら、実際サッカーゲームのサントラに採用されたのね)、ブルージーなソウルナンバー「The Party Never Ends」、ディスコ調のダンスチューン「Are You Looking For Action?」(8分半の大作!)など聴き応えのある楽曲が続きます。

OASIS以降のUKギターロック感とブラックミュージックからの影響を伺わせるカラーは相変わらずなのですが、今回は時代がそうさせるのか、ちょっとミニマルな方向に向かってなくもないかなという気がして。いや、もともとそんなに音数を詰め込んで派手にカマすバンドではなかったけど、今作のテイストは昨今の流行に乗りつつ、そこで独自性を見せているように感じられました。

本当はアルバム全編、もっとギターリフでガツンと聴かせてほしいなという願望もあったけど(「Bless This Acid House」みたいな曲がもっと欲しかったと)、これはこれで全然アリ。ギターは自己主張の道具ではなくて、ここでは調味料のひとつでしかない。2017年という時代を考えれば、もはやこれが正解なんでしょうね。

ちなみに本作、初回限定盤には2016年の英・レスター「キング・パワー・スタジアム」でのライブをまとめたボーナスディスク付き。代表曲満載の全16曲、フルライブを楽しむことができます。意外と抜けてるヒット曲もあるので、そう考えるとこのバンドも長いこと活動してるんだなと思わせられたわけです(実際はまだ12、3年くらいなんだっけ)。なので、購入するなら迷わず2CD版で。



▼KASABIAN『FOR CRYING OUT LOUD』
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投稿: 2017 07 05 12:00 午前 [2017年の作品, Kasabian] | 固定リンク

2017/07/04

RIDE『WEATHER DIARIES』(2017)

ジザメリの19年ぶりにもひっくり返ったけど、RIDEの21年ぶり新作という現実にもただただ驚かされたわけでして。2015年のフジロックで、彼らの勇姿を観てアガったという人、少なくないはずです。その年の秋には単独再来日も実現し(僕はチケットを持っていながら、隣の駅にあるスタジオでずっと取材をしてたので行けず終い)、「もう1stアルバムや2ndアルバムの曲を中心にライブしてくれるだけで十分! この再結成、継続させてほしい……」と願っていたところ、なんとニューアルバムまで作ってしまったのだから驚きです。

先行公開された「Charm Assault」はしっかり従来のRIDEらしさが伴っており、それでいて末期(1996年のラストアルバム『TARANTULA』期)にも通ずるストロングスタイルのロック色もありで、「ああ、奴らはちゃんとあれもなかったことにせず、全部引き受けて先に進もうとしてるんだ」と思ったものです。さらに続けて公開された「Home Is A Feeling」は完全の初期RIDEそのもので、この2曲だけで「本当にRIDEが完全新作携えて戻ってきた!」と喜びの声を上げたのでした……この気持ち、共感してくれる人、多いですよね?

それから4ヶ月後、いよいよリリースされた通算5枚目のスタジオアルバム『WEATHER DIARIES』には、RIDEの“すべて”が詰まっています。それは名作と呼ばれる初期のシングル群や1stアルバム『NOWHERE』(1990年)、2ndアルバム『GOING BLANK AGAIN』(1992年)での「我々がイメージするRIDE像」をしっかり具現化しつつ、この21年の間にメンバー4人が培ってきた音楽的素養もしっかり反映されたものになっている。プロデューサーには英国クラブミュージック界の人気DJエロール・アルカン、ミキシングには『GOING BLANK AGAIN』などを手がけたお馴染みのアラン・モウルダーをそれぞれ迎え、しっかりと「2017年に鳴らされること」を意識して制作されています。

シューゲイザー、ドリームポップなどこのアルバムに対する表現はいろいろあると思います。実際そういう音だと思うし、アルバムまるごとセンチメンタリズムの塊ではあるんだけども、決して単なるノスタルジーでは終わらない、今の音として成立している。これを実現するためには、解散前みたいに「この曲は俺が書いた」「これはあいつが書いたからあいつが歌えばいい」といったいざこざは無用。初期の頃のように、4人がひとつとなって何かに取り組む。それが実現できるかできないかで、このアルバムを作るかどうかが決まったのではないでしょうか。で、実際本作はそういう作品になったと。ちゃんと「今のリスナーにモノ言わしてやろうぜ!」という気概も感じられるしね。

まさか2017年にRIDEの新作が、しかも傑作とちゃんと断言できるアルバムが聴けるなんて。2年前は想像もしてなかったなぁ。そして彼らはこのアルバムを携えて、8月に『SUMMER SONIC 2017』深夜の部『HOSTES CLUB ALL-NIGHTER』で2年ぶり日本へ戻ってきます。行かない理由はないよね。



▼RIDE『WEATHER DIARIES』
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投稿: 2017 07 04 12:00 午前 [2017年の作品, Ride] | 固定リンク

2017/07/03

THE JESUS & MARY CHAIN『DAMAGE AND JOY』(2017)

ろくでなしだとか穀潰しだとか、しょうもない人間は腐るほどいるけど、そういう奴って一度そうなってしまったら死ぬまでそのまんまというか……。

そんなことを、THE JESUS & MARY CHAINの19年ぶりに発表されたニューアルバム『DAMAGE AND JOY』を聴いて思ったわけです。

前作『MUNKI』がリリースされたのが1998年。このサイトの前身ホームページ(笑)が開設された年だったので、当時よく聴いたことをよく覚えています。毎回何も変わらず、いや、作品を重ねるごとにその濃度が少しずつ薄まっているような感覚がありながらも、リリースされたら毎回購入して聴いてきたリザメリの新作が、『MUNKI』を最後に途絶えるわけです。ところがその数年後の2007年になんとなく再始動。フェスなどでライブをポツポツやったりしてましたが、まさか新作を制作するなんて考えてもみなかった。穀潰し、やればできるじゃん。

で、完成したのがこのアルバム。どこからどう聴いてもジザメリの音。何も変わってない。いや、ちょっと変わったか。でも基本的には当時のまんま。全14曲入りだけど、3分の1くらいは過去に別の形で発表された楽曲をジザメリ流に焼き直したもの。それでもいいんだ、こうやって“ジザメリの新曲”として楽しめるんなら。

やたらと女性ボーカルが目立つのも本作の特徴かな。6曲に4人の女性シンガーがフィーチャーされていて、その中にはジム&ウィリアム・リード兄弟の実妹リンダやイゾベル・キャンベル(元BELLE AND SEBASTIAN)、スカイ・フェレイラといった面々が含まれています。やさぐれてるのにどこか甘いジザメリ従来の個性が、これによってより深み(いや、深くはないか)を増しており、非常に親しみなったような印象を受けます。

……と、好意的に書いてみたけど、何度も書くように基本的には何も変わってません。「ああ、ジザメリだ」と。

でも、それでいいじゃない。このバンドに関しては。リード兄弟がぶつかりながらもバンドを続けてくれるのなら、それでいい。別に甘やかしてるわけじゃなくて……だって、ダメな奴らなんだから。もうね、とことんダメっぷりを見せ続けてほしい。たぶん本作が駄作だったとしても、個人的には同じことを書いてたと思うのね。でも、良かったの。最低で最高だったの。もうそれで十分。

結局、僕らは中学生の頃に初めて聴いた『PSYCHOCANDY』(1985年)の呪縛から、ずっと逃れられないんです。でも、それでいいじゃない。僕らもダメな奴らなんだから。



▼THE JESUS & MARY CHAIN『DAMAGE AND JOY』
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投稿: 2017 07 03 12:00 午前 [2017年の作品, Jesus & Mary Chain, The] | 固定リンク

2017/07/02

DEPECHE MODE『SPIRIT』(2017)

前作『DELTA MACHNE』(2013年)からちょうど4年ぶりとなる、通算14枚目のスタジオアルバム。90年代以降、この4年というサイクルは正確に保たれているようで、その合間にはライブ作品の発表だったり再発だったりと、何かしらアイテムが発売されているので、実は思っている以上に4年を長く感じないという。これでリリースのたびに来日公演があったら、もっと短く感じるんでしょうけどね……。

さて、今回のアルバムでは近作とは異なるテイストが感じられます。非常にダークで重々しいく、どこか宗教じみた匂いが感じられる。おそらく多くのファンが、1993年の大ヒット作『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』を思い浮かべるかもしれません。確かに僕も最初に聴いたとき、最初にイメージしたのは同作でした。ただ、どこか救いのない空気の漂う『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』と大きく異なるのは、本作には“望み”や“希望”のような一筋の光が感じられる点。確かに20数年前のあの時期と比べたら、今のDEPECHE MODEは非常に落ち着いていますし、人としても達観した部分も多いですし。

『PLAYING THE ANGEL』(2005年)から3作連続でプロデュースを手がけたベン・ヒリアーのもとを離れ、今作では新たにSIMIAN MOBILE DISCOのジェイムズ・フォードがプロデュース。ひんやりとしたロックテイストの冒頭2曲「Going Backwards」「Where's The Revolution」のインパクトは絶大で、そのあとにブルージーな「The Worst Crime」、エレクトロ+インダストリアル調な「Scum」と、とにかくダークでヘヴィでクールな楽曲が続きます。ただ、先にも書いたように『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』ほどの“重苦しさ”はなく、そこが繰り返し楽しめる要因になっているのかなと。

にしても今回のアルバム、非常に挑発的な内容ですよね。「Revolution」「Crime」「Scum」「Poison」「Poorman」など曲名に使われているワードしかり、現在のアメリカ政権を揶揄したかのような歌詞しかり。そういえば「Where's The Revolution」のMVも政治的ですし。かと思えば、終盤にはデヴィッド・ボウイに捧げた「No More (This Is The Last Time)」があったり、ラストナンバーがマーティン・ゴアのボーカル曲「Fail」だったり(マーティンのボーカルナンバーはもう1曲「Eternal」も)。アルバムのトーンは終始救いようがないくらいに暗いのですが、でも聴き終えたときに絶望感は一切感じない。それが全体を覆う“攻め”の姿勢によるものなのか、あるいはある種の“悟り”なのか。そのへんが、近作とはちょっと違うなと感じたのでした。

エレクトロでインダストリアルな作風なのに、しっかりロックしている。いや、ロックというよりもブルースに近いかも。もともと好きなアーティストの新作ということで好意的ではありますが、このブルース感が強まったことでより好きになれた1枚です。



▼DEPECHE MODE『SPIRIT』
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投稿: 2017 07 02 12:00 午前 [2017年の作品, Depeche Mode] | 固定リンク

2017/07/01

2017年上半期総括

恒例となった上半期ベスト。ひとまず7月1日現在の10枚を紹介したいと思います。バランスとしては洋楽5枚、邦楽5枚というセレクトになります。


DEPECHE MODE『SPIRIT』(amazon)(レビューはこちら

THE JESUS & MARY CHAIN『DAMAGE AND JOY』(amazon)(レビューはこちら

KREATOR『GODS OF VIOLENCE』(amazon)(レビューはこちら

MASTODON『EMPEROR OF SAND』(amazon)(レビューはこちら

RIDE『WEATHER DIARIES』(amazon)(レビューはこちら

Cornelius『Mellow Waves』(amazon)(レビューはこちら

Maison book girl『image』(amazon

Mondo Grosso『何度でも新しく生まれる』(amazon

ONE OK ROCK『Ambitions』(amazon)(レビューはこちら

ドレスコーズ『平凡』(amazon)(レビューはこちら

投稿: 2017 07 01 12:00 午後 [2017年の作品, Cornelius, Depeche Mode, Jesus & Mary Chain, The, Kreator, Maison book girl, Mastodon, Mondo Grosso, ONE OK ROCK, Ride, 「1年のまとめ」, ドレスコーズ] | 固定リンク

MR. BIG『DEFYING GRAVITY』(2017)

苦しい環境下で最善を尽くした前作『...THE STORIES WE COULD TELL』(2014年)から3年ぶりに発表された、MR. BIG通算9作目のスタジオアルバム。ツアーではパーキンソン病で体が思うように動かなくなってきたパット・トーピー(Dr)に替わり、マット・スターがサポートで参加。もちろんパットもパーカッションとコーラスでライブに加わり、新たな5人編成というスタイルでツアーを完遂します。

で、そこから今作に向かっていくわけですが、今回のプロデューサーは初期4作を手がけてきたケヴィン・エルソン。バンドとしても来年で結成30周年を迎えることもあり、ここで改めて原点に戻ろうという思いがあったのかもしれません。ドラムトラックは前作のようにプログラミングではなく、パットが方向性を指示しながらマットがプレイ。楽曲制作にはもちろんメンバー4人が中心となり、これまで同様の外部ライターを迎えて書き下ろされていくのですが……。

なんですか、この突き抜け方は!? 1曲目「Open Your Eyes」のオープニングでは、1stアルバム『MR. BIG』(1989年)のオープニングに収められていたエンジニアの声がそのまま流用され驚いたところで、そのまま軽やかにスタート。かと思えば、続いて爽やかなパワーポップチューン「Defying Gravity」が飛び出す。さらに、ブギーのリズムが気持ち良い「Everybody Needs A Little Trouble」、カントリー調のミディアムナンバー「Damn I'm In Love Again」、ど頭のギター&ベースによるテクニカルなフレーズに驚かされる「Mean To Me」、どこか影のあるソウルバラード「Nothin' Bad ('Bout Feelin' Good)」と良曲が続くこの構成……再結成後の2枚(『WHAT IF...』『...THE STORIES WE COULD TELL』)がバンドの原点である「ブルージーでソウルフルなHR」に立ち返ったかと思っていたら、今作ではその一歩先にある『LEAN INTO IT』(1991年)で見せた“開け方”が存在する。そう、バンドが今回目指した“原点”は最大のヒット作となった『LEAN INTO IT』期に立ち返ることだったのかもしれません。

事実、本作には「To Be With You」が全米1位を獲得した時期を振り返る「1992」という楽曲も存在します。これなんてメロディに「Green-Tinted Sixties Mind」の匂いが感じられますしね。もちろん、すべてがあの頃の焼き直しではありません。あのアルバムから26年後のエリック・マーティン(Vo)、ポール・ギルバート(G)、ビリー・シーン(B)、そしてパット・トーピーの姿がここには存在するのですから。

唯一、難癖をつけるとしたら……やはり1曲目はギター&ベースのユニゾンバリバリのファストチューンでキメてほしかったな、と。まぁそれをやらないからこそ、「2017年のMR. BIG」なわけで、それも重々理解できるんですけど……たぶん、それをやらないというのも彼らなりの意地なのかもしれません。本当はそんな意地、捨ててほしかったんですけどね。

まぁ苦言は本当にそれくらいで、あとはもうひたすら楽しくて聴き応えのある、いかにもこのバンドらしい作品集だと思います。そして、このアルバムに触れてから過去2作を聴き返すと、また違った聴こえ方をしてくるから本当に不思議。30周年を前にネクストレベルに到達しそうな、そんな力作。ここ日本だけでなく、久しぶりに海外でもヒットしてほしいな。



▼MR. BIG『DEFYING GRAVITY』
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投稿: 2017 07 01 12:00 午前 [2017年の作品, Mr. Big] | 固定リンク