ALCEST『KODAMA』(2016)
フランス出身の2人組“ブラックメタル+シューゲイザー=ブラックゲイズ”バンド、ALCESTが2016年秋に発表した5thアルバム。僕個人は前作『SHELTER』(2014年)で初めて彼らの音に触れたのですが、同作はそれ以前のブラックメタル的要素が減退し、よりポジティブで多幸感にあふれたサウンドが印象的な作品でした。バンドとしての進化を強くイメージさせた『SHELTER』から、次に彼らがどこへ進んでいくのか。それが端的に示されたのがこの『KODAMA』というアルバムになるわけです。
本作のタイトルは日本語の“木霊”のことで、作品自体も日本びいきの彼らが大ファンの宮崎駿作品『もののけ姫』からインスパイアされ制作。前作を覆っていた穏やかな空気感とは異なり、また初期のブラックメタル的路線とも異なる……その中間とまではいきませんが、ブラックゲイズ路線を一歩推し進めた内容と言えるかもしれません。
1曲目「Kodama」こそ穏やかさと激しさが同居した、非常にプログレッシブなサウンドが展開されますが、2曲目「Eclosion」ではスクリームなどブラックメタル的テイストが復活。その後もブラストビートを用いた「Oiseaux De Proie」などが登場しますが、それは「一周回って、こういう表現もありだよね」的な使い方で、原点回帰でも後退でもなんでもない。『SHELTER』という快作があったからこそたどり着けた、新たな地平と言えるのではないでしょうか。
いわゆるシューゲイザーともドリームポップとも違う、ヒリヒリと張り詰めた空気感と穏やかな空気感が交互に現れる長尺の楽曲が大多数を占める(全6曲中、7分超えが4曲。内2曲は9分前後)にもかかわらず、非常に練った構成・アンサンブルで聴く者を飽きさせないのはさすがの一言。ポストロックをメタル的解釈で表現した本作は、どこか映画のサウンドトラック的な表情も感じられます。
いわゆるシューゲイザーではもの足りないというメタルヘッズは、こういった方向からシューゲイザーの世界に触れてみてはどうでしょう。それこそ、彼らは初期の作品はもっとブラックメタル色が強いので、もっともバランスの取れた本作を起点にALCESTの音に触れてみることをオススメします。
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