MINISTRY『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』(1989)
MINISTRYが1989年に発表した通算4作目のスタジオアルバム。初期はニューウェイブやエレクトロニックボディミュージックの流れにあるサウンドが特徴でしたが、1988年の3rdアルバム『THE LAND OF RAPE AND HONEY』あたりからインダストリアル色が強まり、続く本作ではそこにメタリックな要素が加わり、のちの方向性が定まることになります。
リリース当初はここ日本でも一部のマニアにしか知られていなかった彼らが、一躍ここ日本のメタルファンの間で注目を集めることになったのは、1991年初頭に行われたMEGADETHの来日公演の開演前SEに、本作の冒頭2曲「Thieves」「Burning Inside」が使用されたことから。僕も当時、中野サンプラザでMEGADETHを観ていますが、確かに客入れ時に流れていたこの2曲が異常にカッコよかったことをよく憶えています。当時は今のようにインターネットもなく、それがMINISTRYというバンド(ユニット)の楽曲だと知るのは数ヶ月後、音楽誌『BURRN!』を読んでからでした。
反復する性急なデジタルビートの上に、ザクザクと気持ち良いスラッシュメタル風ギターリフが乗る。ボーカルもメロディを歌うのではなく、がなるように叫び散らすだけ。タイミング的にはちょうどNINE INCH NAILSに注目が集まり始め(彼らはGUNS N' ROSESとの共演などにより、1989年に発表したデビュー作『PRETTY HATE MACHINE』でプチブレイク)、日本でもSOFT BALLETがボディミュージックを極め、デジタルサウンドを本格的に取り入れる前のTHE MAD CAPSULE MARKETSがメジャーデビューした時期。そういう時代背景を考えると、この時期にMINISTRYが日本で“見つかった”のは興味深いところです。
本作の魅力は、スラッシーな楽曲一辺倒ではないところ。冒頭3曲はその系統の楽曲ですが、「Cannibal Song」はゴスやニューウェイブのカラーが感じられるし、「Breathe」はパーカッシブなドラムパターンが印象的。終盤の「Faith Collapsing」はダークなミドルチューンだし、ラストの「Dream Song」なんてどこか宗教じみた世界観が展開されている。「Thieves」「Burning Inside」のカラーを求めて本作に手を出したメタルファンにはちょっと厳しい内容かもしれませんが、のちのゴシックメタルなどにも通ずる世界観が繰り広げられていると考えれば、意外と入っていきやすいのではないでしょうか。
メタル度という点においては、次作『PSALM 69: THE WAY TO SUCCEED AND THE WAY TO SUCK EGGS』(1992年)より劣るものの、やはり冒頭2曲の完璧さを考えたら、まずは本作から聴いてほしい。そう力説したくなるほど、お気に入りの1枚です。

▼MINISTRY『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』
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