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2017/08/31

2017年8月のお仕事

2017年8月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※8月31日更新)


[紙] 8月31日発売「BUBKA」2017年10月号にて、乃木坂46井上小百合×若月佑美インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 8月30日発売「月刊エンタメ」2017年10月号にて、「列島縦断 真夏のアイドル追っかけレポート 」欅坂46編を担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 8月29日、「リアルサウンド」にてUVERworldのアーティスト評「UVERworldはなぜ高水準の映像を生み出し続けるのか? 本気の“挑戦”と“遊び心”に迫る」が公開されました。

[WEB] 8月27日、「Red Bull Japan」オフィシャルサイトにてコラム「これを聴いて、たまった夏休みの宿題を片付けろ!!【深刻度別】おすすめファストチューン レベル1〜5」が公開されました。

[紙] 8月23日発売「BRODY」2017年10月号にて、乃木坂46松村沙友理インタビューを執筆しました。(Amazon

[紙] 8月23日発売「TV Bros.」2017年8月26日号にて、GLIM SPANKY『BIZARRE CARNIVAL』、DEAD CROSS『DEAD CROSS』アルバムレビューを執筆しました。

[WEB] 8月18日、「BARKS」にてリアム・ギャラガーのライブ評「リアム・ギャラガー、初の日本ソロ公演で高めたアルバムへの期待」が公開されました。

[WEB] 8月14日、「Red Bull Japan」オフィシャルサイトにてコラム「『SUMMER SONIC 2017』はこの10組に注目!」が公開されました。

[紙] 8月9日発売「TV Bros.」2017年8月12日号にて、Borisインタビュー、REX BROWN『SMOKE ON THIS...』アルバムレビューを執筆しました。

[WEB] 8月4日、「リアルサウンド」にてCrossfaithインタビュー「マンチェスターテロ事件から改めて考えたーーCrossfaithが語る、“音楽で表現すべきこと”」が公開されました。

[紙] 8月4日発売「日経エンタテインメント!」2017年9月号にて、ももいろクローバーZ玉井詩織インタビュー、欅坂46志田愛佳・菅井友香・守屋茜インタビュー、欅坂46サウンドプロデューサー田中博信インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 8月3日、「リアルサウンド」にて今井優子インタビュー「今井優子が語る、デビュー30年で迎えた“シンガーソングライターとしての進化”」が公開されました。

[WEB] 8月1日、「リアルサウンド」にてPassCodeのアーティスト評「PassCodeの“良質でラウド”な音楽性はなぜ成立? エンジニア、バンドメンバーなどから紐解く」が公開されました。

投稿: 2017 08 31 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

THEM CROOKED VULTURES『THEM CROOKED VULTURES』(2009)

FOO FIGHTERSのデイヴ・グロール、QUEENS OF THE STONE AGEのジョシュ・ホーミ、LED ZEPPELINのジョン・ポール・ジョーンズという世代を超えた人気ロックバンドのメンバーが結成したスーパーバンド、THEM CROOKED VULTURESが2009年に発表した現時点で唯一のアルバム。

このバンドの構想自体は2005年頃からあったようで、それぞれ忙しいメンバーだけになかなかスケジュールが合わず、いざ動き始めたのは2009年に入ってから。同年7月にレコーディングを開始し、8月にはシカゴで初ライブ。そのままヨーロッパをツアーしながらレコーディングを続け、同年11月に本作『THEM CROOKED VULTURES』がリリースされました。

このバンドではジョシュがボーカル&ギター、デイヴがドラム、ジョンがベースやキーボードなどさまざまな楽器を担当。ライブではサポートメンバーでギタリストがもう1人加わっています。

ジョシュとデイヴはQOTSAの3rdアルバム『SONGS FOR THE DEAF』(2002
年)で共演したほか、デイヴは同作のツアーでもドラムを担当。またジョンはFOO FIGHTERSの5thアルバム『IN YOUR HONOR』(2005年)にゲスト参加しており、デイヴを中心にそれぞれつながりがあったわけですが、とはいえこの3人が本当につながるなんて当時は考えてもみませんでした。

とはいえ、この3人でバンドをやるなら……と想像すると、ジョシュがボーカルの時点でどこかQOTSA的なものになるんだろうなと。そこに曲作りでどこまでデイヴやジョンのカラーが反映されるのか、それによってバンドの方向性がある程度固まるんだろうなと考えていましたが、本当にその通りの内容だったので、最初はちょっと肩透かしを食らったことを覚えています。

わかりやすく表現すれば、QOTSAからストーナーロック的な側面を排除し、ブルースベースのクラシックロック……CREAMやLED ZEPPELINなどの60〜70年代ハードロックをこの3人流に解釈したのがこのアルバム。「Elephants」「Reptiles」なんてツェッペリン的だし、「Scumbag Blues」はCREAMっぽいコーラスが入るし。でも、そこに1969年生まれのデイヴ、1973年生まれのジョシュの個性が加わることで単なるクラシックロックの焼き直しにならない、ロックンロールリバイバル以降のフレイバーが散りばめられたエバーグリーンなロックアルバムに昇華されているのではないでしょうか。

あと、本作を聴いてジョン・ポール・ジョーンズのマルチプレイヤーぶりに改めて驚かされたのをよく覚えています。アルバムではベースのほかにキーボード、ピアノ、クラヴィネット、オプティガン(メロトロンの光学式ディスク使用版)、マンドリンなどをプレイしており、こういった楽器の導入がツェッペリンを彷彿とさせるサウンドを現代に再降臨させることに成功しているのですから、ジョンジーさまさまですね。

ただ、アルバム自体はメリハリがあまりなく、ゆるゆると進行していく印象も。好きなことをただ好き放題やった結果なのでしょうが、全13曲で70分近いトータルランニングも影響しているんでしょうね。もちろんこれだけあればライブ1本フルでやるには十分なんですけど、そのライブも……2010年のフジロックで観たときは正直、そこまで盛り上がらなかったなぁと。もし2枚目が制作されることがあれば、よりバラエティに富んだ内容に期待したいところです。



▼THEM CROOKED VULTURES『THEM CROOKED VULTURES』
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投稿: 2017 08 31 12:00 午前 [2009年の作品, Foo Fighters, Led Zeppelin, Queens of The Stone Age, Them Crooked Vultures] | 固定リンク

2017/08/30

FOO FIGHTERS『THE COLOUR AND THE SHAPE』(1997)

デイヴ・グロールのソロ作としてスタートした前作『FOO FIGHTERS』(1995年)完成後、ツアーのためにNIRVANA後期のライブメンバーだったパット・スメア(G)、SUNNY DAY REAL ESTATEのネイト・メンデル(B)&ウィリアム・ゴールドスミス(Dr)を迎えてバンド編成で活動開始。この編成のまま、FOO FIGHTERSは次作のレコーディングに突入します。しかし、ウィリアムのプレイに納得できなかったことから、制作では大半の楽曲でデイヴがドラムを叩くことに。これによりウィリアムが脱退し、アルバム完成後には現在もバンドの屋台骨を支えるテイラー・ホーキンスが加入します。

こういいう困難を経て完成したのが、1997年5月発売の2ndアルバム『THE COLOUR AND THE SHAPE』。前作の全米23位を軽く超え、全米10位まで到達し、200万枚近いセールスを記録しました。

全体の作風としては前作の流れを引き継いでいるものの、“ひとりバンド”形態だった前作よりもはるかにバンド感が強まり、サウンドのダイナミックさも格段と高まっています。このへんは、プロデューサーにギル・ノートン(PIXIESなど)、ミックスにクリス・シェルドン(FEEDERTHERAPY?THE ALMIGHTYなど)を起用したことも大きいと思います。

グランジ的な手法を残しつつも、新たな可能性が見え隠れしているのも本作の特徴。例えば代表曲「Monkey Wrench」には当時ブレイクしていたGREEN DAYなどのポップパンクからの影響が感じられるし、「Hey, Johnny Park!」や「My Hero」のダイナミズムはスタジアムロックのそれだし、「Everlong」の構築感からはパンクやハードコアとも違うカラーが感じられます。つまり、前作『FOO FIGHTERS』で自らグランジブームに終止符を打ったデイヴが、自身のルーツにある音楽を新たな仲間たちと鳴らし始めた、“バンドFOO FIGHTERSとしての原点”がこの2作目なのかもしれません。

ドラマーが2人参加していたり、本作のツアー中にパット・スメアが脱退してしまったりと、時期的には非常に不安定なタイミングなのかもしれませんが、ここ日本ではアルバム発売から2ヶ月後の1997年7月、初開催となった『FUJI ROCK FESTIVAL '97』に出演し熱演を繰り広げた印象が強い、意外とポジティブな印象のある時期。そういった点においても、本作をお気に入りに挙げるリスナーは多いのではないでしょうか。



▼FOO FIGHTERS『THE COLOUR AND THE SHAPE』
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投稿: 2017 08 30 12:00 午前 [1997年の作品, Foo Fighters] | 固定リンク

2017/08/29

QUEENS OF THE STONE AGE『VILLAINS』(2017)

初の全米1位を獲得した前作『...LIKE CLOCKWORK』(2013年)から4年ぶりの新作となる、QUEENS OF THE STONE AGE通算7作目のスタジオアルバム。ジェイムズ・ラヴェル(UNKLE)をプロデューサーに迎えた前作から一転、今作ではマーク・ロンソンを起用しており、よりポップで艶やか、だけどしっかりロックという統一感の強い1枚に仕上がっています。

オープニングを飾る「Feet Don't Fail Me」のディスコテイストに最初こそ度肝を抜かれますが、よく聴けばしっかりロック色が保たれていることもわかるし、実は絶妙なバランス感で成り立っていることに気づかされます。続く「The Way You Used To Do」もポップセンス抜群のロックナンバーだし、「Domesticated Animals」のヘヴィだけどエモーショナルという曲調も文句なし。ギターやベースのサウンドしかり、ドラムの録音の仕方しかり、非常にロックンロールしております。うん、気持ちいい。

で、冒頭3曲を聴いて思ったのは、先にも述べたようにとても艶やか、つまりセクシーさが強まっているということ。ジョシュ・ホーミの歌声がより艶やかになっているというのもありますが、サウンドそのものに華があるんですよね。なんというか、ロックンロールって昔はこうだったよねっていうような、いかがわしさや胡散臭さも全部ひっくるめた、セクシーさ。少なくとも前作『...LIKE CLOCKWORK』にはなかった(もしくは非常に薄かった)要素だと思います。

エモの極み「Fortress」からガレージパンク「Head Like A Haunted House」、ダウナーなダンスナンバー「Un-Reborn Again」、ジョシュの甘い歌声が耳に優しい「Hideaway」、グルーヴィーなハードロック「The Evil Has Landed」、映画のサウンドトラックを思わせるドラマチックな「Villains Of Circumstance」と、とにかくバラエティに富んだ楽曲が並び、それらがQUEENS OF THE STONE AGEというバンド名のもとに寄り添うことで統一感を生み出している。このへんはマーク・ロンソンの手腕によるものなのかなと思いました。

なんだかんだで前作も大好きだった自分ですが(特に先日のフジロックでのライブを観て、よりポジティブな印象を受けました)、本作はそれ以上に好きな作品になりそうです。せっかくなので、本作を携えた来日公演をまたすぐにでも実施してもらいたいものですね。



▼QUEENS OF THE STONE AGE『VILLAINS』
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投稿: 2017 08 29 12:00 午前 [2017年の作品, Queens of The Stone Age] | 固定リンク

2017/08/28

SUEDE『NIGHT THOUGHTS』(2016)

SUEDEが2016年2月に発表した通算7作目、再始動後2作目となるオリジナルアルバム。前作『BLOODSPORTS』(2013年)は非常に“らしい”アルバムでしたが、そこに少々意図的なものも感じられたりして。力作だけど傑作とは言い難い1枚でした。もちろん、復帰作としては十分な内容だったし、特に3rdアルバム『COMING UP』(1996年)以降の彼らが好きという人なら間違いなく気に入ったはずです。

が、初期愛好家(苦笑)としては、やはり1st『SUEDE』(1993年)や2nd『DOG MAN STAR』(1994年)のカラー……あの耽美さがないとどうにも居心地の悪さを感じてしまうのも、また事実。確かに『COMING UP』も、続く『HEAD MUSIC』(1999年)もお気に入りだけど、“なぜ自分がSUEDEというバンドを好きになったか?”という原点に立ち返ると、どうしても初期にあったいかがわしさや耽美さを求めてしまうわけです。

で、この『NIGHT THOUGHTS』というアルバム。まずタイトルがお耽美。だって邦題が「夜の瞑想」ですよ? 悪いわけがない。もうこの時点でハードルクリア(安いな自分)。

しかもイギリスの詩人エドワード・ヤングの詩集『夜想詩』からインスパイアされた本作は、完全なるコンセプトアルバム。1曲目「When You Are Young」からラストの「The Fur & The Feathers」まで、ほぼ曲間なしで展開されていく構成は圧巻の一言です。楽曲自体も『DOG MAN STAR』と『COMING UP』の中間、いや、若干『DOG MAN STAR』側に寄った、作り手やリスナーの心のダークサイドをえぐるような力強さ、優しさ、儚さ、悲しさが凝縮されている。耽美な曲やひたすら耽美に、パワフルなロックチューンはひたすらパワフルに。いろんな意味で振り切れた、まさに「これぞSUEDE!」と宣言したくなる1枚なのです。

正直、再結成を遂げたバンドが全盛期を超える、あるいはそこに匹敵するような作品を作ることは、今や誰も望んでいないというか、なかば諦めているんじゃないかと思うんです。「いいよいいよ、君たちはそこにいてくれるだけで。ちゃんとライブさえやってくれたらいいんだよ」と、どこか新作発表から逃げているところはあるはずなんです。でも、SUEDEは「どうせ復活したんだから」と、好き放題やった。しかも、その好き放題が我々が望むベクトルと見事に一致した。こんなに素晴らしい結果はないんじゃないでしょうか。

ブレット・アンダーソン(Vo)の歌声もマッチョ化した後期のそれとは異なり、曲によっては初期の艶やかな声を聞かせてくれるし、リチャード・オークス(G)のプレイもどこか前任バーナード・バトラーのそれと重なる瞬間がある。これまでは完全に別モノとして捉えていたけど、ここまでシンクロするなんて、ただただ驚きです。

これからSUEDEを聴いてみようという人にもまっ先にオススメできる1枚。ぜひ初期3作と一緒にこの最新作も聴いてほしいと思います。



▼SUEDE『NIGHT THOUGHTS』
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投稿: 2017 08 28 12:00 午前 [2016年の作品, Suede] | 固定リンク

2017/08/27

MANSUN『SIX』(1998)

ポール・ドレイパーのソロアルバムが日本でもようやく9月6日にリリースされるということで(すでに聴きましたが、“あの”ポール・ドレイパーでした。後日改めて紹介します)、このへんで改めて彼が在籍したバンド、MANSUNを振り返ってみたいと思います。デビューアルバム『ATTACK OF THE GREY LANTERN』(1997年)については過去に紹介しているので、今回はそれに続く傑作(にして問題作)『SIX』を取り上げてみたいと思います。

ブリットポップ末期の1997年2月に発表されたMANSUNの1stアルバム『ATTACK OF THE GREY LANTERN』は全英1位を獲得。80年代初頭に流行った“ニューロマンティック”の90年代版として“ROMO”なんてレッテルを貼られた彼らでしたが、それも納得というか頷いてしまうようなサウンドだったんですよね。うん、仕方ない。

ところが、彼らは2枚目のアルバムを発表するまでの1年半で急激に“化ける”のです。まず本作1曲目のアルバムタイトルトラック「Six」のイカれっぷりといったら……約8分におよぶこの大作の中には数曲分のアイデアが詰め込まれていて、曲調も起承転結を無視した無理やりな展開を繰り広げる(シングルやMVでは半分の4分にエディットされて魅力半減ですが)。プログレッシヴロック的なんだけど、そこまでの美意識を感じさせないいびつさが気持ち良いような悪いような。けど、間違いなくクセになる。

そこから2曲目「Negative」を筆頭に、ストレートだけどどこかフックが仕込まれた楽曲、本当にジェットコースターみたいに目まぐるしい展開を繰り返す楽曲、具体的に例えようがなくて不思議としかいいようがない楽曲が続くのです。で、気づいたらラストの「Being A Girl」で締めくくられる(この曲も8分もある相当変態チック)。70分もある超大作ですけど、不思議と長く感じない。ただ、情報量だけは通常の70分もあるアルバムの数倍、いや数十倍ですけどね。

全体的に言えるのは、“Very British”。アメリカじゃ絶対にウケないであろう、英国人ならではのヒネクレ加減が最高潮な1枚です。彼ら自身はもともとそういう傾向にあったわけで、それはこれまでに発表してきたシングルやアルバムからもうっすら感じられたのですが、ここで一気に爆発したという。きっと時代がそうさせたんでしょうね。いや、投げやりに言ってるわけじゃなくて、本当にそう思うんです。

ブリットポップ晩年と言われる1997年にはBLURが無題アルバム(『BLUR』)を発表してブリットポップを殺し、RADIOHEADがその後のシーンの指針となる『OK COMPUTER』をドロップし、OASISはラディズムを強めながらも大作志向へと移行した『BE HERE NOW』で格の違いを見せつけた。そうなったとき、若手は何をすればいいのかといったら己の個性を爆発させるしかない。それすらできないバンドはすぐ消え去っていったわけですから、このMANSUNの変貌は間違ってなかったと言えるんじゃないかな。

がしかし、ここでやりすぎてしまったが故に彼らはその後の作品で方向性を見失い、バンド自体が短命に終わってしまった。それだけが残念というか心残りです。

にしても、リリースから19年経った今聴いても本当に無茶苦茶なアルバムだと思いますよ(もちろん褒め言葉)。初期のMUSEが好きで、まだMANSUNを聴いたことがない人がいたら、ぜひ本作を手始めにチェックしてみてほしいな。で、そこからポールのソロ作にも触れてもらえたら嬉しいです。



▼MANSUN『SIX』
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投稿: 2017 08 27 12:00 午前 [1998年の作品, Mansun] | 固定リンク

2017/08/26

RADIOHEAD『AMNESIAC』(2001)

2000年9月にリリースされたRADIOHEADの4thアルバム『KID A』は、傑作であると同時に当時の“ロック”リスナーおよび『OK COMPUTER』(1997年)を求めるファンには賛否を呼ぶ問題作でした。だって、音そのものはロックであることを放棄しているにも関わらず、聴けばやっぱりそれがRADIOHEADそのものだと理解できる不思議な作品だったんですから。僕もリリース当時、「ここにギターマジックはないけど、概念としては立派な“ロック”だ」というようなことを書きました。今改めて読み返しても、その考えは1ミリもブレていません。

しかし、この『KID A』発売から約8ヶ月後に早くも次のアルバム『AMNESIAC』がリリースされると聞いたとき、しかもそのアルバムで再びギターロックに回帰するという噂を耳にしたときは、ちょっと興奮したことを覚えています。いやいや、お前言ってることブレブレだろ?と突っ込まれようが、あのとき感じた正直な気持ちに嘘はつけません。『KID A』を通過したRADIOHEADが今、ギターロックで何を、どう鳴らすのか。気にならないわけがないじゃないですか。

しかし、実際に完成したアルバムを聴くとギターロック的楽曲はほんの数曲。ぶっちゃけ、「I Might Be Wrong」と「Knives Out」ぐらいじゃないですか。オープニングの「Packt Like Sardines In A Crushed Tin Box」は『KID A』の流れを汲みつつよりミニマル化してるし、続く「Pyramid Song」はピアノとストリングスを軸にしたスローナンバーだし。そもそも頭2曲にギター入ってないし。

本作自体、『KID A』と同タイミングに制作されたものですし、そりゃあ作風的に似ても仕方ないわな。ただ、あえてギターロック的楽曲は『KID A』からは外して『AMNESIAC』に回したのは、なんとなく理解できる気がします。完全に感覚的な話になるけど、『OK COMPUTER』の後に続くのは『AMNESIAC』ではなく『KID A』じゃなくちゃいけなかったんだと。逆じゃダメだったんですよね。まぁリスナー的には逆のほうが入りやすいんだけど。

正直『KID A』ほどの衝撃は受けなかったし、当時ナップスターに新曲がバンバン流出してたので先にそっちで聴いてしまっていたのもあったけど、確かに入り込みやすさは今作のほうが数段上だと思います。あと、いくら概念的に『KID A』がロックだと力説しても、もはや『AMNESIAC』はロックに括らなくてもいいんじゃないか、そういう気さえしてきます。

そう考えると、『KID A』リリース時のインタビューでトム・ヨークが発した「ロックなんか退屈だ。僕は退屈だと思う。だってホントに、ゴミ音楽じゃないか!」という言葉の重みが、本作ではより増すんですよね。面白いことに。

『KID A』リリースからあまり間隔が空いてないせいか、本作に対する評価ってそこまで高くない気がするのですが、実は『KID A』を語る上では欠かせない重要な存在だと感じています。



▼RADIOHEAD『AMNESIAC』
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投稿: 2017 08 26 12:00 午前 [2001年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2017/08/25

RAGE AGAINST THE MACHINE『RAGE AGAINST THE MACHINE』(1992)

RAGE AGAINST THE MACHINEのデビューアルバム『RAGE AGAINST THE MACHINE』がリリースされて、今年で25周年なんだそうです。ということは、20周年でデラックスエディションが発売のが今から5年も前のことなんですね。改めて時の流れの早さに驚かされます。

本作が最初にリリースされたのが、1992年秋のこと。僕は確か『BURRN!』のレビューで彼らのことを知ったんだと記憶しています。確か点数的には70点台でそこまで高くなかったと記憶しているし、当時はようやくRED HOT CHILI PEPPERSがブレイクして、ファンクやヒップホップにメタル的手法を取り入れたバンドが少しずつ認められつつあったタイミングだったのかな。まだ彼らのようなバンドを“ミクスチャー”とか“クロスオーバー”とか曖昧な表現でカテゴライズしていた時期だったと思います。

正直、僕も当時このアルバムを聴いてはいるのですが、ぶっちゃけハマらなかったんですよ。なぜならメロディらしいメロディがない、本当にヒップホップ寄りのアプローとだったから。バックトラックはめちゃくちゃカッコイイのに、歌メロがないという。今思えば、本当に恥ずかしい限りです。

で、彼らに本格的に興味を持ち始めたのは、それから4年後に2ndアルバム『EVIL EMPIRE』(1996年)がリリースされてから。あのアルバムで一気にハマり、改めて1stを聴き返したら「なんだよ、カッコイイじゃないか!」と今更気づかされたわけです。

彼らを語る上で、サウンド以上に歌詞で綴られている政治的観点は非常に重要だと思います。が、ここ日本に住んでいると完全には理解しきれない問題が多いのもまた事実。それは言語の問題以上に、我々がいかに海外の情勢に無関心かということにもつながるわけで、このバンドが歌っていることを突き詰めれば突き詰めるほど、自分の無知さが恥ずかしくなるのです。

ここでそういったポイントについて説明していくと、正直この何倍ものテキストが必要になるので、そのへんは歌詞や対訳を確認しつつ、気になった項目をググっていくことをお勧めします(あくまで役割放棄じゃないですよ、これは)。

サウンドに関しては何も言うことなく、ただひたすらカッコイイだけ。彼らの成功があったから、その後ラップを取り入れたヘヴィロックバンドがバンバン現れるわけですからね。どうしてもザック・デ・ラ・ロッチャ(Vo)のカリスマ的佇まいとボーカル、そしてトム・モレロ(G)の変態的なギタープレイにばかり注目しがちですが、僕はティム・マコーフォード(B)とブラッド・ウィルク(Dr)の鉄壁なリズム隊にこそこのバンドのすごさがあるのではないかと認識しています。それがすでにこのデビュー作の時点でほぼ完成されていることに驚かされるわけです。だって、リリース時はメタルが死に絶えNIRVANAPEARL JAMが一時代を築いていたタイミングですからね。あの時期にこういうバンドがひっそりと誕生していたという事実がまたすごいと思うわけです。

本格的にハマった2ndはもちろんのこと、実質的ラスト作となった3rd『THE BATTLE OF LOS ANGELES』(1999年)も、カバーアルバム『RENEGADES』(2000年)も大好きですが、どれか1枚挙げろと言われたら僕は迷わすこの1stアルバムをピックアップします。

彼らは2000年に一度解散し、その後復活して再び2011年に活動を止めています。ぶっちゃけ、今こそ彼らのようなバンドが求められているのに、それでも復活しないのには何か大きな意味があるんじゃないか……そんなことを昨年後半からずっと考えています。ホント、今なんですけどね……。



▼RAGE AGAINST THE MACHINE『RAGE AGAINST THE MACHINE』
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投稿: 2017 08 25 01:00 午前 [1992年の作品, Rage Against The Machine] | 固定リンク

2017/08/24

ROLLING STONES『STICKY FINGERS』(1971)

1971年4月に発表された、ROLLING STONESの代表作の1枚(イギリスで9枚目、アメリカで11枚目のスタジオアルバム)。ブライアン・ジョーンズ(G)の死後最初にしてミック・テイラー(G)加入後初、そして新たに設立した「Rolling Stones Records」からの第1弾アルバム。先行シングル「Brown Sugar」の大ヒット(全英2位、全米1位)もあり、アルバムも英米で1位を獲得。輝かしい70年代の幕開けを飾るのでした。

『BEGGARS BANQUET』(1968年)、『LET IT BLEED』(1969年)あたりで顕著になり始めたアメリカ南部サウンドへの傾倒がより強まり、ライ・クーダー(G)やニッキー・ホプキンス(Piano)、ビリー・プレストン(Organ)らそうそうたるゲストミュージシャンの参加もあって、過去2作以上に“強く”て“濃い”内容に仕上がっています。

この時期のストーンズを聴いていつも感心するのは、アコースティックギターの効果的な使い方について。例えば「Wild Horses」や「Dead Flowers」のような楽曲のみならず、「Brown Sugar」みたいなロックンロールナンバーの後ろでもしっかりアコギのストロークが鳴っていたりする。それにより、楽曲の持つ大陸的なおおらかさがより強まって聞こえるのではないでしょうか。ロックだからエレキだけ鳴らしておけば良い、そのほうがカッコイイという捉え方もあるでしょうけど、ストーンズのこのアンサンブルを聴くと「本当のカッコ良さとは何か?」をいつも考えさせられます。

で、そういう「Brown Sugar」に続くのが、“引きずる”ようなアレンジのヘヴィブルース「Sway」。もう最高にカッコ良いオープニングじゃないですか。個人的に本作でもっとも好きなのがこの「Sway」で、さらにアコースティックバラード「Wild Horses」を挟んで始まる「Can't You Hear Me Knocking」、「You Gotta Move」という流れも最高。かと思えばアナログB面はブラスと鋭角的ギターサウンドの絡みがカッコ良い「Bitch」、ブルースというよりもゴスペルチックな「I Got The Blues」、ダークな「Sister Morphine」、朗らかな「Dead Flowers」、壮大なバラード「Moonlight Mile」とどれも粒ぞろい。全10曲、本当に捨て曲なしの1枚だと思います。

そういえば、数年前に実施された本作収録曲をすべて演奏するツアー(完全再現ではなく、曲順は変えている)の模様が、まもなく映像作品としてリリースされるようですね。音源はちょっと前にiTunesなどでデジタル配信されたので聴いていましたが、映像で観るとまた印象が変わるのかしら。



▼ROLLING STONES『STICKY FINGERS』
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投稿: 2017 08 24 12:00 午前 [1971年の作品, Rolling Stones] | 固定リンク

2017/08/23

REEF『GLOW』(1997)

ブリットポップ全盛のイギリスで、無骨でオールドスクールなハードロックとダンサブルなビートを取り入れたデビュー作『REPLENISH』(1995年)が全英トップ10入りを果たすなど、いきなり好成績を残したREEF。彼らが1997年1月に発表したのが、今回紹介する2ndアルバム『GLOW』です。

デビューアルバムでは古臭さとモダンさがミックスされた、非常に“イマドキ”感を匂わせた存在で、当時は音源自体は好きだったけどそこまでのめり込むほどではなかったんですが……この2ndアルバムに先駆けてリリースされたシングル「Place Your Hands」によって、それまでの印象を一新されてしまったのでした。

本作のプロデュースを手がけたのは、THE BLACK CROWESの諸作品やPRIMAL SCREAM『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP』(1994年)、RIDE『CARNIVAL OF LIGHT』(1994年)などで知られるジョージ・ドラクリアス。アルバム全体はこれらのアーティスト、作品から想像できるアーシーで生々しい、ストロングスタイルのロックアルバムに仕上げられています。

デビューアルバムではどこか線の細さが感じられたゲイリー・ストリンガー(Vo)の歌声も、「Place Your Hands」を聴けばわかるように非常に骨太に進化しているし、「Consideration」のようなゴスペルバラードではファルセットを駆使した艶やかな声も聞かせてくれる。楽曲自体もどれもよく練り込まれたものばかりで、「Yer Old」みたいな高速ナンバーから、『STICKY FINGERS』(1971年)期のROLLING STONESを彷彿とさせる「Summer's In Bloom」、モダンなダンスミュージック色を導入した「Robot Riff」など単なるロックンロールアルバムでは済まされない、バラエティ豊かな1枚となっています。このへんはうまく時流に乗った、と受け取ることもできるでしょうけど、デビュー作の時点で持ち合わせていたモダンさが単に後退しただけでなく、見えないところでエッセンスとして効いていると理解するのが正解かもしれません。

「Place Your Hands」(全英6位)や「Come Back Brighter」(全英8位)など4曲のシングルヒットを生み出した本作は、アルバム自体も初の全英1位を獲得。当時のムーブメントの影響もあるとはいえ、こういう土着的なロックは90年代後半のイギリスで受け入れられたという事実は今考えると、非常に興味深いものがありますね。



▼REEF『GLOW』
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投稿: 2017 08 23 12:00 午前 [1997年の作品, Reef] | 固定リンク

2017/08/22

BLUR『BLUR』(1997)

昨日のOASIS『BE HERE NOW』発売に先駆けること半年、1997年2月に発表されたのがBLURの通算5作目となるオリジナルアルバム『BLUR』。セルフタイトルであると同時に“無題アルバム”でもある本作は、過去4作、特に2ndアルバム『MODERN LIFE IS RUBBISH』(1993年)から3作続いた“ブリットポップ3部作”から打って変わり、USオルタナロック寄りに振り切れたローファイサウンド満載の1枚となっています。

前作までにあったイギリス人らしいひねくれたポップ感、ピアノやストリングス、ブラスなどを大々的に導入したゴージャスなサウンドはここには皆無。1曲目「Beetlebum」はシーケンスされるシンプルかつ風変わりなギターリフの上で、デーモン・アルバーン(Vo)の内向的なボーカル&歌詞が乗る、ある種“グランジ以降”のサイケなオルタナロックに仕上げられています。最初に聴いたときの驚き、異物感はハンパなかったけど、よく聴けば間違いなくBLURの楽曲そのもの。そこから強烈な爆発力を持つ「Song 2」へと続く構成には、過去のBLURのイメージは一切感じられない。デーモンが本作の発売をもって「ブリットポップは死んだ」と宣言したのもうなずける内容かもしれません。

その後もユルくてダウナー、時々ラフでアッパーな楽曲が続いていきます。「Country Sad Ballad Man」や「On Your Own」あたりからはPAVEMENTやベックからの影響がところどころに感じられるし、こういった作風は前作『THE GREAT ESCAPE』(1995年)とは完全に別モノだし、同じバンドの作品とは思えないほど。前作では存在感が希薄だったグレアム・コクソン(G)のギタープレイも前面に押し出され、デーモンのセンスとグレアムの90年代後半ならではのセンスが存分に発揮された奇跡的な1枚と言えるでしょう。

とはいえ、完全にブリティッシュテイストを捨ててしまったかといえば、そうでもなく。「M.O.R.」あたりにはデヴィッド・ボウイやブライアン・イーノといった諸先輩方からの影響も見え隠れするし(実際、影響という意味でか、クレジットには2人の名前も)、「Look Inside America」の節回しは“ブリットポップ期”のBLURそのもの。散々“別モノ”と書いてきたものの、実はしっかりつながっていたんですね。冒頭2曲のインパクトが強すぎるがゆえに、そこを見逃してしまいがちなリスナーも実は多かったりするんじゃないでしょうか。

ここでの変化が、のちにデーモンをGORILLAZまで導いた……というのは言い過ぎかもしれませんが、間違いなくその導火線のひとつとなった、デーモン的にも、BLURというバンド的にも、そして90年代後半の音楽シーン的にも非常に重要な作品の1枚と言えるはずです。



▼BLUR『BLUR』
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投稿: 2017 08 22 12:00 午前 [1997年の作品, Blur] | 固定リンク

2017/08/21

OASIS『BE HERE NOW』(1997)

1997年8月21日に世界同時リリースされた、OASIS通算3作目のオリジナルアルバム。前作『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』(1995年)が本国イギリスのみならず、アメリカでも大ヒット。これを受けて制作された本作もイギリスで1位、アメリカでも2位という好成績を残しています。全世界待望の新作は、ここ日本でもバカ売れ。当初こそ前作を超えるセールスを記録しましたが、実際のアルバムは前作のメガヒットに対するプレッシャーが見え隠れする、非常に“Too Much”な1枚なのでした。

なにせ本作は、全12トラックで71分という超大作。先行シングル「D'You Know What I Mean?」は大ヒット曲「Wonderwall」に似たコード進行のミディアムヘヴィナンバーなのですが、これが約8分という長尺曲。ちなみにこの曲が本アルバムのオープニングトラックなのですから、初めて聴いたときはちょっと面食らってしまうわけです。

かと思うと、続く「My Big Mouth」は攻撃的なハードロックだし、ノエルが歌う「Magic Pie」はサイケデリックなミディアムナンバー(この曲も7分超え)だし。メガヒットした前作とは傾向が異なると同様していると、4曲目にいかにもOASISらしいメジャーバラード「Stand By Me」(約6分)が登場して、若干安心するという。

その後も5〜6分と若干長めの曲がずらりと並び、ジョニー・デップがスライドギターでゲスト参加したヘヴィブルース「Fade In-Out」、1stアルバム『DEFINITELY MABYE』(1994年)収録の「Slide Away」にも匹敵する泣きのバラード「Don't Go Away」、軽快というよりも能天気なタイトルトラック「Be Here Now」、OASIS版「All You Need Is Love」+「Hey Jude」な9分超の大作「All Around The World」(アルバムラストのリプライズを付け加えれば11分超え)など、1曲1曲を取り上げれば魅力的な楽曲が多いのですが……とにかく全体的に長すぎて、1曲目からラストまで通して聴こうという気になかなかなれないのが難点。最初から「アナログでいうところの2枚組」アルバムと納得ずくで聴けばいいのかもしれないけど、にしても……1曲が長いからなぁ。

というわけで、リリース当時は最初こそ「OASISの新作!」と喜んで何度も聴き返しましたが、半年もすれば自然と手が伸びなくなったのは言うまでもありません。

で、あれから20年経った今。現在来日中のリアム・ギャラガーは自身のライブで本作から「D'You Know What I Mean?」と「Be Here Now」の2曲を取り上げているんです。非常に謎な選曲ですが、リリース20周年って意味合いもあるんでしょうか。本当に謎すぎます。

それで、久しぶりに聴き返した本作。1曲の中にあれこれ詰め込もうとした結果、どんどん長くなっていったということなんでしょうね。その諦めの悪さがよろしくない方向に作用してしまった惜しいアルバムだなと、再認識しました。

が、先に書いたように曲単位では印象的なものも多いので、このタイミングにじっくり聴き込んでみるのもいいかもしれませんね。

なお、本作は昨年リマスタリング&3枚組仕様で再発されています。本編がただでさえ長いのに、ボーナスディスク2枚て……まぁこちらはマニア向けってことで(ただ、「Stay Young」などシングルカップリング曲に魅力的なナンバーも多いので、気が向いたらチェックしてみるとよいかも)。



▼OASIS『BE HERE NOW』
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投稿: 2017 08 21 12:00 午前 [1997年の作品, Oasis] | 固定リンク

2017/08/20

TRAVIS『THE MAN WHO』(1999)

グラスゴー出身の4人組バンド、TRAVISが1999年5月(日本では6月)に発表した通算2作目のスタジオアルバム。1stアルバム『GOOD FEELING』(1997年)の時点でノエル・ギャラガーのお気に入りだったりOASISのツアーに帯同したりで、いきなり全英9位まで上昇。デビュー作ですでに成功を収めたと言えるTRAVISはさらなる高みを目指し、続く2ndアルバムでRADIOHEAD『OK COMPUTER』(1997年)を手がけたナイジェル・ゴドリッチをプロデューサーに迎えます。

こうして完成した『THE MAN WHO』は、先の『OK COMPUTER』にも通ずる内向的な作風へとシフトチェンジすることに成功。アルバムは全英1位に輝き、「Writing To Reach You」(全英14位)、「Driftwood」(全英13位)、「Why Does It Always Rain On Me?」(全英10位)、「Turn」(全英8位)と4曲ものシングルヒットを生み出しました。アルバム自体もイギリスだけで250万枚以上ものセールスを記録。彼らの出世作であり、最大のヒット作となりました。

OASISの大ヒット曲「Wonderwall」に似たコード進行のイントロを持つ「Writing To Reach You」を筆頭に、スロー/ミディアムテンポで癒しのメロディを持つ楽曲が満載。「As You Are」のように歌とギターの激しさでエモーショナルさを表現した楽曲があったり、「Turn」みたいにどこかMANIC STREET PREACHERにも通ずる質感の楽曲もあったりするのですが、基本的には落ち着いたテンポ、落ち着いた曲調でアルバムは進行していきます。

強い個性やクセもなく、スルッと聴けてしまうフラン・ヒーリィ(Vo, G)の歌声は、当時のUKロック勢の中では決して目立ったものではないものの、何度聴いても飽きがこないという意味ではこの作風に合っているんでしょうね。逆にOASISの影響下にあるような『GOOD FEELING』的作風を続けていたら、さすがに厳しかったかも……と。

OASISにもRADIOHEADにも、そしてBLURにもなれなかったTRAVISですが、この『THE MAN WHO』で踏み入れた世界をどんどん突き詰めていくことで唯一無二の存在になれた。このアルバムの成功がなかったら、その後COLDPLAYSNOW PATROLがブレイクすることもなかったんじゃないか……と言ったら大袈裟でしょうか。

今年でリリースから18年という中途半端なタイミングながら、この9月には本作の限定コレクターズボックスが発売。さらに、マンチェスターとロンドンで『THE MAN WHO』完全再現ライブも実施されるようです。もう2年待てなかったのか?と思いましたが、その頃には次のアルバムが完成しているでしょうし、同様のツアーも行えないでしょうから、タイミング的には良かったのかもしれませんね。



▼TRAVIS『THE MAN WHO』
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投稿: 2017 08 20 12:00 午前 [1999年の作品, Travis] | 固定リンク

2017/08/19

MANIC STREET PREACHERS『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』(2010)

MANIC STREET PREACHERSが2009年5月に発表した9thアルバム『JOURNAL FOR PLAGUE LOVERS』はスティーヴ・アルビニをエンジニアに迎え、今でも“4人目のメンバー”であるリッチー・ジェイムズが残した詩を用いて制作した、15年ぶりの「4人で制作した」新作でした。同作はコマーシャル的成功を一切無視しつつも、この15年間に彼らが血肉として得た知識・技術も取り入れられており、シングルカット一切なしでも全英3位という好成績を残しました。

それから1年4ヶ月で届けられたのが、今回紹介する通算10枚目のスタジオアルバム『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』です。本作は前作にも携わった、MANICSではおなじみのデイヴ・エリンガとバンドがプロデュース。リリース時には「マスコミへの最後の一撃」というメッセージが印象的でしたが、その内容は前々作『SEND AWAY THE TIGERS』(2007年)や大ヒット作『EVERYTHING MUST GO』(1996年)の延長線上にあるサウンド、楽曲目白押しで、決して革新的なものではありませんでした。

10年前に『SEND AWAY THE TIGERS』を聴いた僕は、当時のレビューで「素晴らしいロックアルバムだけど、過渡期を感じさせる」と書きました。悪くないんだけど、良すぎもしない。MANICSにしては普通のアルバムだったのです。

では、この『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』も同じ流れにあるだけに、そういう普通のアルバムなのかというと、実はそうじゃなかったりする。全部が全部、“突き抜けて”いるんです。確かに『SEND AWAY THE TIGERS』にもそういう曲はいくつかあったけど、決してすべてではなかった。が、『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』では1曲1曲の濃度が濃い。ポップな曲もロック度強めで表現されていたり、どこかモータウンを感じさせるカラーがあるのにそれをハードロック調で表現していたりと、どの曲からも過剰さが感じられるのです。

この過剰さって、実はQUEENに通ずるものがあるんじゃないか……実は最初の本作を聴いたときに思い浮かべたのが、まさしくQUEENでした。嫌われ者が国民的バンドにまで成長するという過程もQUEENそのものですしね。

『SEND AWAY THE TIGERS』では覚悟が足りなかった……とは言いませんが、続く『JOURNAL FOR PLAGUE LOVERS』で過去を清算したことで、ようやく過渡期を抜けることができたんでしょうね。と、僕が勝手に解釈している作品です。

そういえば、ニッキーは当時のインタビューで「『SEND AWAY THE TIGERS』が俺たちにとっての(AEROSMITHの)『PERMANENT VACATION』なら、次のアルバム(『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』)は俺たちの『PUMP』になる」というようなことを言ってましたが、完成したアルバムを聞くとあながちそれも間違っていなかったようですね。そういう意味では『SEND AWAY THE TIGERS』は当時のMANICSにとって必要な踏み台だったんでしょうね。

とにかく捨て曲なし、どれもシングルカットできるようなポップでキャッチーで、それでいてどこかソリッドさもある良曲ばかり。そうそう、90年代半ば以降のMANICSってそんなバンドだったよね、という当たり前の事実を思い出させてくれる2000年代の名盤です。



▼MANIC STREET PREACHERS『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』
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投稿: 2017 08 19 12:00 午前 [2010年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

2017/08/18

THE VERVE『URBAN HYMNS』(1997)

THE VERVEが1997年9月に発表した、通算3作目のオリジナルアルバム。1995年に一度解散しながらも、1997年に4人編成→5人編成で再結成。先行シングル「Bittersweet Symphony」の大ヒット(全英2位)に続いて、アルバム自体も初の全英1位獲得。続く2ndシングル「The Drugs Don't Work」は初のシングル全英1位に輝き、アルバム12週連続1位に。イギリス本国だけでも300万枚以上、全世界でトータル1000万枚以上を売り上げる最大のヒット作になりました。

サイケデリックな色合いが強かった1stアルバム『A STORM IN HEAVEN』(1993年)、当時主流だったブリットポップの流れにありながらも初期のサイケさとのちに通ずるディープさを提示し始めた2nd『A NORTHERN SOUL』(1995年)に続く今作では、「The Rolling People」「Catching The Butterfly」のようにサイケ路線の楽曲を残しつつも、OASIS以降の流れを感じさせる歌モノバラード「Sonnet」「The Drugs Don't Work」、そして壮大なストリングス(ROLLING STONES「The Last Time」のアンドリュー・オールダムによるオケストラカバーからのサンプリング)とシンプルな打ち込みリズムからなる「Bittersweet Symphony」など、とにかく“聴かせる”“歌わせる”要素が極限まで高まった、時代に求められた1枚に仕上がっています。

「人生とは“ほろ苦い”交響曲なんだ」と冒頭で掲げ、決まりきった枠になんかはまるなと歌う「Bittersweet Symphony」は発表から20年経った今もまったく色褪せてないし、むしろ2017年という今聴いたほうが歌詞の意味に重みを感じるのではないでしょうか。リチャード・アシュクロフト(Vo)がいろんな障害にぶつかりながらもまっすぐ歩き続けるMVは、まさにそのまんまの内容ですね。

「Bittersweet Symphony」のみならず、自身のドラッグ体験だけでなく実父が薬を使って延命したものの結局治ることなく死んでしまった経験などを綴った(と、当時のインタビューなどを読んで解釈しています)「The Drugs Don't Work」、リチャードが生きる上での信条が伺える「Lucky Man」など、曲の美しさ以上に歌詞にもこのバンドの哲学が至るところから感じられ、そこも彼らが単なる“流行りのブリットポップ”とは一線を画するバンドだったことが理解できるのではないでしょうか。

彼らは1999年に二度目の解散をし、2000年代後半にオリジナルメンバー4人で再々結成。2008年夏に4thアルバム『FORTH』を発表し、それと前後するように『SUMMER SONIC』で、最初で最後の来日公演が実現しました。そして2009年には3度目の解散。現在はリチャードがソロアーティストとして活動しており、昨年も久しぶりに来日公演を行ったばかりです。

何度聴いても、「Bittersweet Symphony」「Sonnet」の冒頭2曲で泣きそうになってしまうのは、20年前このアルバムを聴いていたタイミングに経験した負の出来事を思い出してしまうからでしょうか。音楽にはそういう力があるといいますが、と同時に音楽にはそういった悲しみを癒してくれる力もあるはず。最初こそ涙腺が緩むものの、アルバムを聴き終えた頃にはすっきりした気持ちになっている。“都会の賛美歌”を意味する『URBAN HYMNS』は自分にとってそういう1枚です。

なお、今年9月には本作のリリース20周年を記念したスペシャルエディションが発売に。アルバム本編がリマスタリングされるほか、当時の貴重なライブ音源をまとめたボーナスディスク付き2枚組仕様や、シングルB面曲など貴重な音源とMVやレア映像をまとめたボックスセットなどもリリースされるようです。これから購入を考えているという人は、そちらをチェックしてみてはいかがでしょう。



▼THE VERVE『URBAN HYMNS』
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投稿: 2017 08 18 12:00 午前 [1997年の作品, Verve, The] | 固定リンク

2017/08/17

DEAD CROSS『DEAD CROSS』(2017)

にしても、すごいバンドが誕生したものです。FAITH NO MOREのマイク・パットン(Vo)、元SLAYER/現SUICIDAL TENDENCIESのデイヴ・ロンバード(Dr)、THE LOCUST/RETOXのジャスティン・ピアソン(B)、同じくRETOXのマイク・クライン(G)というメタル/オルタナ/ハードコア界のそうそうたるメンツが一堂に会したスーパーバンド、DEAD CROSS。彼らのデビューアルバム『DEAD CROSS』が8月上旬にリリースされました(ここ日本では同月23日に発売)。

もともと2015年に結成された際にはTHE LOCUSTのゲイブ・セルビアンがボーカルでしたが(THE LOCUSTではドラマー)、翌2016年に脱退。新たにパットン先生が加入し、現在のサウンドスタイルが確立されたとのことです。

おそらくパットン先生が加わるまでは、意外とストレートなハードコアが展開されていたんだろうなと思うのですが、このアルバムで聴けるサウンドは単なるハードコアとは言い難い、非常に複雑怪奇なもの。カオティックハードコアとでも呼べばいいのでしょうか。単なる暴力的なエクストリームサウンドというよりも、どこか知的さがにじみ出た、まさしくカオスな世界観が展開されています。

パットン先生のボーカルはFAITH NO MORE以上に振り切れたものもあれば、そこから一転して冷静さを感じさせるものもあり、FAITH NO MOREやパットン関連作品愛好家なら一発で気にいるはず。ロンバードのドラムもオープニングの「Seizure And Desist」からツーバス&ブラストビート全開(この曲のボーカルオーケストレーションも最高)。SUICIDAL TENDENCIES『WORLD GONE MAD』(2016年)でのプレイよりも、SLAYERでパンキッシュな楽曲を叩くときのプレイに近いイメージと言えば共感いただけるでしょうか。要するに、ひたすらカッコイイということです。思えばパットンとロンバードは過去にFANTOMASでも活動をともにしたことがあるので、相性は悪くないんでしょうね。

ギターやベースに触れずじまいですが、決して空気なわけではないですよ。このドラムにこのベース、このギターという絶妙なプレイを聴かせてくれていますし。ただ、ここにパットン先生の声が乗ると……全部持っていっちゃうんですよね。それだけアクが強いというか唯一無二というか。まぁまずは、頭を空っぽにして楽しんでください。アレンジがどうだとか、この曲のここがこうだとか、BAUHAUS「Bela Lugosi's Dead」のカバーのアレンジがどうだとか、そういう小難しいことは数回無心で楽しんだあとにでも。ね?



▼DEAD CROSS『DEAD CROSS』
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投稿: 2017 08 17 12:00 午前 [2017年の作品, Dead Cross, Faith No More, Slayer, Suicidal Tendencies] | 固定リンク

2017/08/16

HELMET『MEANTIME』(1992)

HELMETが1992年初夏に発表した2ndアルバムにして、メジャーデビュー作。本作でこのバンドはブレイクしたと言っても過言ではありませんが、そのブレイクの裏側には2つの大きな要因が隠されていました。

ひとつは、彼らも以前から属していたインディロック村から飛び出した、グランジシーンの本格ブレイク。NIRVANAを筆頭に、ハードなギターとパンキッシュなバンドアレンジを施したサウンドが一世を風靡し、メディアは“第二のNIRVANA”を見つけようと躍起になっていた時期でした。

そしてもうひとつは、グランジが駆逐したメタル村からの新たな動き。前年の1991年、METALLICAがそれまでのスラッシュメタルサウンドを捨ててスローでヘヴィなサウンドを軸にした5thアルバム『METALLICA』を発表し、翌1992年初頭にPANTERAがそこにグルーヴ感を加えた傑作『VULGAR DISPLAY OF POWER』をリリース。この2作以降、メタル村では同作とグランジを下地に新たな道を模索し始めます。

そんな絶妙なタイミングに発表されたのが、このHELMETのアルバム『MEANTIME』でした。本作には上記2つの要素がすべて含まれており、かつ作為か感じられないナチュラルな作風だった。しかも、全体に漂う知的さも功を奏し、ネクストブレイクが期待されるバンドとして各メディアで紹介されるようになりました。

かのスティーヴ・アルビニが録音し、NIRVANA『NEVERMIND』を手がけたアンディ・ウォレスがミックスしたオープニング曲「In The Meantime」、ザクザクしたギターリフとキャッチーな歌メロが気持ちよい「Unsung」を筆頭に、聴き応えのあるナンバーばかり。のちにBATTLESを結成するジョン・ステニアー(Dr)のカンカン鳴るスネアも特徴的で、ギターやベースとシンクロするプレイはその後の片鱗を感じさせます。

また、ペイジ・ハミルトン(Vo, G)による時にがなり、時にメロウに歌うボーカルスタイルもオルタナロックともハードコアとも受け取れるもので、幅広い層から支持される要因に。ギターにしてもソロを強調するよりもリフに次ぐリフの応酬で、ギターサウンドそのものを音の塊として提供する姿勢が感じられます。そこもPANTERA以降のメタル村から受け入れられた要素だったように思います。

結局チャート的には全米68位、50万枚止まりで大きなヒットにはつながりませんでしたが、HELMETの登場は確実にその後のヘヴィ/ラウドシーンに一石を投じたはず。グランジ側にしろメタル側にしろ、当時を振り返る際に忘れてはならない1枚です。



▼HELMET『MEANTIME』
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投稿: 2017 08 16 12:00 午前 [1992年の作品, Helmet] | 固定リンク

2017/08/15

FOO FIGHTERS『FOO FIGHTERS』(1995)

1994年4月、カート・コバーン(Vo, G)の自殺によりNIRVANAは事実上の解散。メンバーのデイヴ・グロール(Dr)はNIRVANAのツアー中などに書き溜めた楽曲を同年秋からレコーディング。ドラムのみならずギター、ベース、そしてボーカルまですべてをデイヴ自身が手がけた純粋なソロアルバムを完成させました。そしてそれは、FOO FIGHTERSというバンド名のもと、1995年初夏に正式リリースされたのでした。

確かにデイヴはNIRVANA時代にもシングルのカップリングに曲を提供したり、歌ったりしていましたが、正直そこまで印象に残るものではなく。なので、こういったプロジェクトを立ち上げたと知り、ぶっちゃけ「大丈夫かよ?」と不安視したのをよく覚えています。

が、完成したアルバムは“NIRVANAのフォーマット”をうまく用いつつ、アメリカンハードロック的な“陽”の空気に満ちた作品集でした。冒頭2曲(「This Is A Call」「I'll Stick Around」)の突き抜け感、ポップでキャッチーな「Big Me」。正直、この3曲を聴いただけで完敗でした。「やるじゃん、デイヴ」と。

ただ、聴き進めるうちに、やはり心のどこかでNIRVANAと比較してしまう自分がいたのも事実。「カートならこんなアレンジにしないだろうな」とか「カートならこんなギターフレーズにしてたはず」とか「カートならここはこう歌てったんじゃ」とか。

いやいや、歌ってるのカートじゃないし。カートまったく関係ないから!

でも、当時は無理だったんですよ。亡くなってから1年ちょっとしか経っておらず、NIRVANAの時間が止まったのと相反して、SOUNDGARDEN『SUPERUNKNOWN』でバカ売れし、PEARL JAM『VITALOGY』という新たな傑作を世に放った1994年。いろんな場面でカートの不在を実感し、そのたびに遺作となった『IN UTERO』(1993年)ばかり聴いていたものです。

というわけで、FOO FIGHTERSのデビュー作を素直な気持ちで聴けるようになったのは、2ndアルバム『THE COLOUR AND THE SHAPE』(1997年)がリリースされてから。完全な“バンド”となった同作で、ようやく僕らもNIRVANAの呪縛から解き放たれた気がします。

今や完璧なスタジアムロックバンドにまで成長したFOO FIGHTERSですが、その原点は間違いなく本作。現在の質感とは異なるものの、デイヴ自身もNIRVANAの呪縛、グランジの呪縛から解き放たれようと必死で本作と向き合ったんでしょうね。完全には抜けきれてないこのアルバムを聴くと、なぜひとりで全部作らなくちゃいけなかったのかが、なんとなく理解できたりして。

実質1stアルバムではあるものの、その後の活動スタンスを考えたら本作は“プレデビュー盤”という位置付けがぴったりかもしれませんね。



▼FOO FIGHTERS『FOO FIGHTERS』
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投稿: 2017 08 15 12:00 午前 [1995年の作品, Foo Fighters, Nirvana] | 固定リンク

2017/08/14

NIRVANA『NEVERMIND』(1991)

NIRVANAが1991年9月に発表した通算2作目にしてメジャーデビューアルバム。発売直後はそれほど大きな話題となりませんでしたが、年明け1992年くらいから一気に注目が集まり、気づけば全米1位、全英5位まで上昇。アメリカでは現在までに1000万枚以上、全世界で3000万枚以上も売り上げたメガヒット作であり、同作と同時期に発表されたPEARL JAMのデビューアルバム『TEN』とともに“グランジムーブメント”を一気にブレイクさせた起爆剤です。

思えばNIRVANAを前年末〜同年初頭くらいに知り、西新宿を何度もさまよってついに見つけた1stアルバム『BLEACH』(1989年)を聴くも、そのチープなサウンドと、やりたいことが整理しきれていない作風にギョッとしたのですが、まさかそれから1年経たずに2枚目のアルバムが到着し、その作品にグッと心をわし摑みにされるなんて、当時は考えてもみませんでした。

とにかく1曲目「Smells Like Teen Spirit」からラストの「Something In The Way」まで(さらにその後のシークレットトラック「Endless, Nameless」まで)、一寸の隙もない完璧なハードロックアルバム(と、あえて呼ばせてもらう)。スタイルとしてはパンクなんだろうし、本作がアメリカで初めて1位を獲ったパンク作品というのも頷ける。けど、展開されている楽曲そのものはハードロックだと思うんです。カート・コバーンには悪いけど。

そもそも本作のサウンドメイキングは完全にハードロックのそれだし、前作発表後にバンドに加わったデイヴ・グロール(Dr)の豪快でパワフルなドラミングはHR/HMそのもの。そんな彼がNIRVANA解散後、FOO FIGHTERSで徐々にハードロック色を強めていったのも納得ですね。

だからリリース当時、無条件で本作に手を出し絶賛したメタルファンは少なくなかった。少なくともリリース直後(1991年秋〜冬)、自分の周りにいたメタラーはみんなこのアルバムを気に入っていたよ。

でも、売れに売れて、“グランジ”なるものがそれ以前のメタルシーンを駆逐したことで、状況は一変しちゃったんだけどね。そういう意味では1992年以降しばらくは旧来のメタルファンにとって踏み絵的な作品だったのかもしれない。今じゃそんなことまったくないんだけどさ。

歌詞については、国内盤に付属の対訳やネット上に溢れている翻訳サイトにてご確認を。実際どれが正しい歌詞なのかは不明だし、そもそもが難解なものばかりなので、どこまでカートの意図したものに近いかは不明ですが。

ここで展開された音、歌、歌詞、そしてカートの生き様。あれから26年経った今触れてみても、何かを突き動かすほどのパワーと可能性を秘めた強烈な作品だと思います。本当、僕がここで改めて語るまでないけどね。

最後に余談。当時僕はこのアルバムをまず輸入盤で購入。その後、友人が国内盤を購入したので、ライナーノーツを読みに彼の家に行って、本作を聴いていたんですが……「Something In The Way」終了後に10分の空白があり、そのあとにシークレットトラック「Endless, Nameless」が始まるんだけど、当時の僕はこれにびっくりして。だって、自分が持ってる輸入盤にはこの曲、入ってなかったんだもん。てっきり日本盤だけのボーナストラックなのかと思ってたら、実はファーストプレスにはこのシークレットトラックは未収録だったとのこと。

というわけで、現在我が家には輸入盤ファーストプレス(シークレットトラックなし)、のちに購入した国内盤(シークレットトラックあり)、1992年前半イギリス滞在中に現地で購入したカセットテープ(シークレットトラックなし)、2011年にリリースされたリマスター盤デラックスエディション、そしてアナログ盤の5仕様が存在します(苦笑)。これから聴こうって人は、リマスター化された1枚モノか、貴重なデモ音源や当時シングルなどで聴くことができた定番曲などをまとめた2枚組デラックスエディションをオススメしておきます。



▼NIRVANA『NEVERMIND』
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投稿: 2017 08 14 12:00 午前 [1991年の作品, Nirvana] | 固定リンク

2017/08/13

V.A.『SINGLES: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』(1992/2017)

1992年秋に全米公開された映画『シングルス(SINGLES)』のサウンドトラックアルバム。日本では先にサントラがリリースされ、映画は翌1993年春に公開されました(単館ではなかったものの公開劇場数は少なく、どこも小規模劇場での公開だったと記憶しています)。

シアトルを舞台にしたラブストーリーなのですが、当時のシアトルといえばグランジブームまっただ中。主人公のひとりであるクリフ(マット・ディロン)がロックバンドをやっていることなどもあり、劇中にはALICE IN CHAINSやクリス・コーネル(SOUNDGARDEN)、エディ・ヴェダー(PEARL JAM)なども登場します。

サントラは映画公開に先駆けて1992年6月にUS発売(日本では9月発売)。内容は当時人気のグランジバンドやシアトル出身のレジェンドたちの楽曲で大半が占められ、全13曲中11曲が当時未発表曲でした。リードトラックとしてALICE IN CHAINSの新曲「Would?」(同年9月発売の2ndアルバム『DIRT』にも収録)が公開されるやいなや、大反響を呼んだのをよく覚えています。

ALICE IN CHAINS、PEARL JAM、SOUNDGARDEN、MUDHONEYSMASHING PUMPKINSといった当時ど真ん中のバンドから、SCREAMING TREES、MOTHER LOVE BONEというグランジ黎明期のバンド、THE REPLACEMENTSのポール・ウェスターバーグ、HEARTのアン&ナンシー姉妹の別ユニットTHE LOVEMONGERS、ジミ・ヘンドリクスといったレジェントたちまで。さらにはクリス・コーネルのソロ曲まで含まれているのですから、当時のグランジシーンを振り返る、あるいはシアトルのロックシーン(メタルは除く)に触れるという点においては非常に重要な役割を果たすコンピレーションアルバムだと思います。

そのサントラ盤が、発売から25年を経た2017年に、未発表テイクや劇中で使用されたもののサントラ未収録だった楽曲を集めた2枚組デラックスエディションで再発。ディスク1は当時のままで、ディスク2にその貴重な音源がたっぷり収められています。

ここには、マット・ディロンが劇中で所属していたバンド・CITIZEN DICKの楽曲「Touch Me, I'm Dick」(MUDHONEY「Touch Me, I'm Sick」のパロディカバー)や、のちにSOUNDGARDENの楽曲として発表される「Spoonman」のクリス・コーネルソロバージョン、ALICE IN CHAINやSOUNDGARDENのライブ音源、TRULYやBLOOD CIRCUSの楽曲、マイク・マクレディ(PEARL JAM)のソロ曲などを収録。おまけ感の強いものから本気で貴重なテイクまで盛りだくさんの内容で、ここまでを含めて映画『シングルス』をしっかり振り返れるのかな?と改めて思いました。

映画自体は観ても観なくても大丈夫ですが(笑)、1992年という時代の節目を追体験したいのなら、NIRVANAやPEARL JAMのオリジナルアルバムだけではなく、ぜひ本作も聴いていただきたいと、あの当時をリアルタムで通過したオッサンは強く思うわけです。サントラと思ってバカにしたら、きっと痛い目を見るよ?

ちなみに、本作のデラックスエディションが発売されたのが5月19日(海外)。クリス・コーネルが亡くなったのがその前々日の17日ということもあり、真の意味での“グランジの終焉”を実感させる1枚になってしまったことも付け加えておきます。



▼V.A.『SINGLES: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』
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投稿: 2017 08 13 12:00 午前 [1992年の作品, 2017年の作品, Alice in Chains, Chris Cornell, Heart, Mudhoney, Pearl Jam, Smashing Pumpkins, Soundgarden] | 固定リンク

2017/08/12

EUROPE『THE FINAL COUNTDOWN 30TH ANNIVERSARY SHOW: LIVE AT THE ROUNDHOUSE』(2017)

1986年に発表されたEUROPEの3rdアルバムにして最大のヒット作『THE FINAL COUNTDOWN』のリリース30周年を記念して、2016年秋にヨーロッパで行われたアニバーサリーツアーから、11月12日のロンドン公演を収録したライブ作品。国内盤、輸入盤ともにDVD+2CD、Blu-ray+2CDというフォーマットで発売(音源パートのみ配信版も)。少々お高いですが、名作が1曲目からラストまで完全再現された、ここ日本では実現しなかったツアーの模様をたっぷり楽しむことができます。

本稿ではこのうち、ライブ音源のほうにスポットを当てて取り上げたいと思います。

ライブは2部構成となっており、前半12曲(CDでいうディスク1)が現時点での最新アルバム『WAR OF KINGS』(2015年)を、曲順はバラバラだけど全曲演奏(日本盤ボーナストラックとして追加収録されたインスト曲「Vasastan」含む)。で、後半11曲(CDディスク2)が『THE FINAL COUNTDOWN』完全再現となっています。

本作と通して久しぶりに『WAR OF KINGS』の楽曲に触れたのですが……音源よりもライブのほうが生き生きしているように感じました。再結成後のEUROPEは常に2nd『WINGS OF TOMORROW』(1985年)や3rd『THE FINAL COUNTDOWN』の再現およびそれに近いサウンドを求められ続けており、非常に不幸だなと感じているのですが……個人的には再結成後に発表された7th『SECRET SOCIETY』(2006年)や続く8th『LAST LOOK AT EDEN』(2009年)はかなりの良作だと思っているので、残念でなりません。

復帰一発目『START FROM THE DARK』(2004年)からもわかるように、再結成後のEUROPEのベースにあるのは、80年代のRAINBOWDEEP PURPLEだと思われます。その基本路線はそのままに、時にモダンに、時にプログレッシヴにと味付けを変えていますが、『WAR OF KINGS』では一周回って『START FROM THE DARK』でやりたかったことを新たなプロデューサーのデイヴ・コッブ(RIVAL SONSなど)を迎えて再構築した原点回帰の1枚だと思っていました。

改めてこのライブ音源を聴いて、その思いは間違ってなかったと確信できました。確かに80年代のジョーイ・テンペスト(Vo)と比べたら高音が出てないし、歌メロも平坦かもしれない。ジョン・ノーラム(G)のギターワークもレイドバックしすぎて面白みがないと感じるかもしれない。だけど、この歌声と、どこか“らしさ”を感じさせる歌メロを聴くと、僕はこのEUROPEも嫌いになれないし、むしろ(個人的趣味のせいもあり)この路線を愛せてしまうのです。

まぁ『WAR OF KINGS』スタジオアルバム自体については、別の機会に語るとして……。

気になる『THE FINAL COUNTDOWN』完全再現ですが、これはもう……言うまでもないでしょう。最近演奏されていないアルバムB面曲(「On The Loose」とか「Love Chaser」とか)が改めて聴けた喜びと、この慣れ親しんだ曲順。そして、何百万回聴こうが、半ばギャクと化そうが、「The Final Countdown」のイントロリフを聴けば、アガらずにはいられないのです。これは10代で80年代をリアルタイム通過したリスナーの性なのです。うん、今でも全曲歌えるもんな。

ダウンチューニングが気になるとか、ライブ前半パート(『WAR OF KINGS』全曲)との落差が気になるとかいろんな声があると思うけど、これが2017年現在のEUROPE。10月には早くも最新オリジナルアルバム『WALK THE EARTH』もリリースされるようで、こちらもおそらく『WAR OF KINGS』路線であることは間違いないと思うけど、それでも僕はこれからもEUROPEの新作を、再結成後の諸作とともに聴き続けると思います。



▼EUROPE『THE FINAL COUNTDOWN 30TH ANNIVERSARY SHOW: LIVE AT THE ROUNDHOUSE』
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2017/08/11

ACCEPT『THE RISE OF CHAOS』(2017)

ACCEPT通算15枚目、再々結成後4枚目のスタジオアルバム。

現在のマーク・トーニロ(Vo)を含む編成としては、2010年の『BLOOD ON THE NATIONS』以降、2年おきに新作を発表していましたが、前作『BLIND RAGE』(2014年)発表後に再々結成後から不動だった布陣からハーマン・フランク(G)とステファン・シュヴァルツマン(Dr)が脱退(2人はそのまま、DESTRUCTIONのシュミーアと結成したPANZERの活動に専念するも、ハーマンはのちにPANZERも脱退)。新たにウヴェ・ルイス(G)とクリストファー・ウィリアムズ(Dr)を迎えツアーを続けます。

本作はマーク、ウヴェ、クリストファー、そしてオリジナルメンバーのウルフ・ホフマン(G)、ピーター・バルテス(B)の新編成で、過去3作同様にアンディ・スニープをプロデューサーに迎え制作。前作発表後のツアーを現編成で続けたことも幸いし、バンドのとしての一体感も非常に良い状態でレコーディングに臨めたのではないでしょうか。

サウンドは、どこをどう切り取ってもACCEPT以外の何者でもない、男臭いど直球のパワーメタル。トニーのボーカルは当初から前任のウド・ダークシュナイダーのそれに瓜二つだったので、古くからのファンが聴いても違和感なく楽しめるはずです。

楽曲もすべて4〜5分台でコンパクトにまとめられており、疾走感のある楽曲とミディアムテンポのヘヴィかつキャッチーな楽曲をバランス良く配置。おどろおどろしいイントロのファストチューン「Die By The Sword」や親しみやすいメロディを持つミドルナンバー「Koolaid」、ツーバス連打のパワーメタル「No Regrets」、自身を皮肉ったタイトルと王道のACCEPTサウンドの相性抜群の「Analog Man」、ドラマチックな作風の「What's Done Is Done」「Worlds Colliding」など、印象的な楽曲がずらりと並びます。

最初に聴いたときは「あれ、ちょっと一番地味かな?」と思ってしまいましたが、聴き返すと実はそんなことまったくなく、上記の楽曲以外にも良曲が豊富な内容であることに気づかされ、実は前作『BLIND RAGE』以上の良作だと実感させられました。さすがの一言。

確かに派手さは皆無ですが、老舗が守り続ける伝統の味がここには存在する。いろんな味を楽しみまくっている間に、ホンモノの味を一瞬忘れそうになりましたが、これこそ王道のヘヴィメタルそのもの。続けて楽しみたい1枚です。本作発表から約1ヶ月後の9月には、もう来日公演でこれらの曲をナマで楽しめるのだから、ぜひとも本作を聴いて会場に足を運びたいところですね。



▼UFO『WALK ON WATER』
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投稿: 2017 08 11 12:00 午前 [2017年の作品, Accept] | 固定リンク

2017/08/10

UFO『WALK ON WATER』(1995)

70年代から活躍する(途中二度の解散はありましたが)イギリスのハードロックバンド、UFOが1995年に発表した通算14枚目のスタジオアルバム。1978年に脱退したマイケル・シェンカー(G)が復帰し、フィル・モグ(Vo)、ピート・ウェイ(B)、アンディ・パーカー(Dr)、ポール・レイモンド(G, Key)、そしてマイケルという黄金期のメンバーが再集結して制作された1枚です。

プロデューサーは『LIGHTS OUT』(1977年)、『OBSESSION』(1978年)、ライブアルバム『STRANGERS IN THE NIGHT』(1979年)を手がけたロン・ネヴィソン。気心知れた布陣での制作、しかも1994年に実施したジャパンツアーの手応えなどもあり、比較的ポジティブな雰囲気の中制作されたことは、本作を聴けばご理解いただけるかと思います。

本作発表時点でフィルは47歳、ピートが43歳、マイケルも40歳と肉体的に全盛期を過ぎたと言われてもおかしくない年齢。もはや派手で前のめりなハードロックは期待できない……前年の来日公演を観ている自分ですら、そう感じていたのですから、古くからのファンなら本作にことをもっと期待してなかったんじゃないかと思います。

しかし、実際に完成したアルバムは……確かに若さは感じられないし、落ち着きまくった作風の1枚です。が、がっちりとタイトなリズムの上にフィルの味わい深い独特のボーカルと、ついこないだまでアコースティック路線を突き進んでいたとは思えないほどに攻めまくりなマイケルのギターワークがしっかりフィーチャーされている。古き良き時代の、地味だけどジワジワと客居さが伝わってくる王道ブリティッシュハードロックが全編にわたり展開されているのです。

もちろん、当時のマイケルらしくアコギを取り入れた楽曲もいくつか見受けられますが、それがメインになることはなく、あくまで楽曲の味付け程度で収まっている。これを「大人になったUFO」と捉えるか「枯れて日和ったUFO」と捉えるかで、本作の評価は大きく分かれるかもしれません。

1995年という時代のせいか、どこかヘヴィでグランジ寄りなオープニング曲「A Self Made Man」にはギョッとさせられるものの、続く哀愁のミディアムチューン「Venus」やアップテンポの「Pushed To The Limit」、ファンキーさと泣きメロが融合された「Running On Empty」など聴きどころ多数。

オリジナル新曲8曲のあとに、アルバム本編を締めくくるのが往年の名曲「Doctor, Doctor」の再録バージョンというのもまた泣かせるし、日本盤はさらに「Lights Out」再録バージョンも収録。この手の再録はほとんどがヌルくなるケースが多いですが、ここで聴ける2曲はあの頃のカッコよさはそのままに、渋みが加わった説得力の強いテイクに仕上がっています。新曲群と並んでも違和感なく楽しめるので、これはこれでアリだと思います。

残念ながら本作、現在は国内盤も海外盤(日本盤とはジャケ違い)も廃盤状態。すでにマイケルも脱退し、ピートも引退状態ですが、現在のUFOを語る上ではとても重要な1枚だと思っているので、ぜひとも再発していただきたいものです。



▼UFO『WALK ON WATER』
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投稿: 2017 08 10 12:00 午前 [1995年の作品, Michael Schenker, UFO] | 固定リンク

2017/08/09

REX BROWN『SMOKE ON THIS...』(2017)

PANTERA、元DOWNなどで活躍したベーシスト、レックス・ブラウンによる初のソロアルバム。Wikiなどを目にすると、もともとはジャズベーシストで、メタル以外の音楽にも精通しているようで、それは本作の随所からも伺えます。

本作ではベースのみならず、ボーカルとギターにも挑戦。もちろんソングライティングにも携わっており、大半の楽曲をナッシュビル出身のギタリスト/ソングライターのランス・ハーヴィルと共作しています(全11曲中2曲のみレックス、ランスとプロデューサーのキャブレ・シャーマンによる共作)。

さて、気になるサウンドですが、PANTERAやDOWNから想像できるようなモダンなヘヴィメタルやダウナーなストーナーロックとは一線を画する、非常にオールドスタイルで土着的なハードロックが展開されています。PANTERAというとどうしても“BLACK SABBATH meets アメリカ南部サウンド”を想像するかと思われますが、確かに南部サウンドはここにも健在。しかし主軸になっているのはサバスよりもLED ZEPPELIN、さらにZZ TOPあたりからの影響も見え隠れします。

曲自体はツェッペリンのリフワークやサイケデリック臭漂うミディアムチューン、さらにZZ TOPっぽい“ハードロック寄りのサザンロック”、カントリーテイストのサイケバラードなどが主体。そういった要素に低音を効かせたギターリフと、ぶっきらぼうでしゃがれ声のレックスのボーカルが合わさることで、どこか懐かしさを覚えるのですが……ってこれ、要するにザック・ワイルドじゃん!と(笑)。そう考えたらとても腑に落ちました。ザックからサバス/オジー色を薄めると、こうなるんだろうな。

ただ、残念ながら本作は“ギター”アルバムではないかなと。派手なギターワークも、鳴った途端に瞬殺されるようなギターソロもここにはない。ランスはあくまでカントリーサイドからやってきて、自分の庭でギターを弾きまくる程度。レックスが過去に在籍したバンドを想定して聴いたら、肩透かしを喰らうかもしれません。

とはいえ、全体的には非常によくできた“枯れた”ハードロックアルバムだと思います。レックスが今後もこの路線を進んでいくのかは定かではありませんが、さらに先に進むためにはこのタイミングに自身のルーツを吐き出すことに意味があるのかなと。もしかしたら、今後の活動次第で本作の評価は大きく変わるかもしれませんね。

個人的には、気楽に聴けるハードロック作品として気に入っています。ザック・ワイルドのアーシーサイドが好きな人にはうってつけかも?



▼REX BROWN『SMOKE ON THIS...』
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投稿: 2017 08 09 12:00 午前 [2017年の作品, Down, Pantera, Rex Brown] | 固定リンク

2017/08/08

LIVING COLOUR『VIVID』(1988)

1988年春に発表された、アメリカの4人組ハードロックバンドによるデビューアルバム。エド・ステイシアム(RAMONES、TALKING HEADS、MOTORHEADなど)が全体のプロデュースを手がけたほか、自身のソロアルバム『PRIMITIVE COOL』(1987年)にヴァーノン・リード(G)が参加したことがきっかけとなり、ミック・ジャガーのプロデュース曲が2曲(「Glamour Boys」「Which Way To America」)含まれているほか、「Broken Hearts」ではブルースハープでゲスト参加も果たしております。

メンバー全員が黒人ということで、当時は“黒いツェッペリン”などと呼ばれておりましたが、メタリックなギターリフとファンキーで跳ね気味なリズムのミックスはまさにその例えにぴったり。まだRED HOT CHILI PEPPERSのブレイク前夜で、いわゆる“ミクスチャー”と呼ばれるようになるバンド群(FAITH NO MOREJANE'S ADDICTIONなど)が日の目を浴びる前のタイミング。そんな中で、LIVING COLOURは当時のHR/HMブームに(幸か不幸か)乗ることができ、その結果アルバムは全米6位、シングル「Cult Of Personality」は全米13位、「Glamour Boys」も全米31位と好成績を残しました。

個人的には、アルバムのオープニングを飾るヒット曲「Cult Of Personality」にこのバンドの個性が集約されているんじゃないかと思うほど、先の“黒いツェッペリン”的要素が存分に楽しめます。もちろん、それ以降の楽曲もよりファンキーさを強めたもの、よりハードロック色を強調したものが次々と飛び出し、またコリー・グローヴァー(Vo)のボーカルもヘヴィメタル特有のハイトーンでなく、かといってR&Bシンガーのようにひたすらうますぎるわけでもない、適度なソウルフルさを持ったロックボーカリストといった印象。これがファンキーだけどハードロック的タイトさを持つリズム隊とリフワーク/ソロワークが個性的なギタープレイの上に乗ることで、当時ほかには見られなかった個性的なサウンドを確立することができたわけです。

と同時に、このバンドにはパンクの香りも漂っており、そこが「黒人だから」「リズムが跳ねてるから」と同じくらいメタルファンから敬遠される要因のひとつになっている気がします。特に旧来のメタルファンってノンポリのイメージが強いですしね!(ひどい偏見)

そうそう、本作収録の「Funny Vibe」にはPUBLIC ENEMYのチャック・Dとフレイヴァー・フレイヴがゲスト参加しています。この3年後にANTHRAXがPUBLIC ENEMYと「Bring The Noise」でコラボすることを考えると、かなり時代を先取りしていたハードロックバンドと解釈することもできそうですね。



▼LIVING COLOUR『VIVID』
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投稿: 2017 08 08 12:00 午前 [1988年の作品, Living Colour, Mick Jagger, Public Enemy] | 固定リンク

2017/08/07

RUSSIAN CIRCLES『GUIDANCE』(2016)

アメリカ出身の3ピースインストゥルメンタルバンド、RUSSIAN CIRCLESの通算6枚目となるオリジナルアルバム。なんとなく名前だけは知っていたものの(名前のインパクトというか、妙なカッコ良さにどこか惹かれていました)、実はちゃんと聴くのはこのアルバムが初めて。ポストロックとメタルの中間……そんなイメージで本作と接してみたのですが、あながち間違っていなかったようです。

3ピースながらも、レコーディングではギターをオーバーダブしており(ライブではルーパーを使ってどんどん音を重ねているようです)、そのオーケストレーションの緩急で曲に抑揚をつけている。また、ドラムのタイトさや1ヒットの重さやバスドラの踏み具合、歪みまくったギターの“壁”はどこかヘヴィメタリックで、“モダンだけどプログレッシヴなメタル”(例えばMASTODONあたり)が好きな人でもとっつきやすい印象があります。

1曲1曲が独立しているというよりは、曲間がほぼなく、1枚通してスッと聴けてしまう。また、自然と次の曲へとつないでいく構成は本当にプログレのそれで、特に頭3曲(「Asa」「Vorel」「Mota」)の流れは圧巻。それは4曲目「Afrika」以降も同様で、アルバム1枚で1曲と言われても信じてしまうほど違和感を感じさせない構成は、さすがとしか言いようがありません。

スリリングなアレンジとヘヴィな音像、そしてときどき訪れる癒しの空気。どこかMOGWAIにも通ずるところがありますが、こちらのほうがよりヘヴィメタル的解釈が強い。そういう点においては、例えばTOOLあたりが好きな人にも好まれるような気が。ちなみに本作のプロデューサーはCONVERGEのギタリスト、カート・バーロウ。そう聞いて、非常に納得してしまう人も多いんじゃないでしょうか。

また彼ら、この春からスタートしたMASTODONの全米ツアーに帯同していました。この組み合わせを知ったとき、すごく腑に落ちたというか「そのパッケージツアー、日本にも持ってこいよ!」と叫びたくなってしまったほど。やはり、集まるところには集まるわけですね。



▼RUSSIAN CIRCLES『GUIDANCE』
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投稿: 2017 08 07 12:00 午前 [2016年の作品, Russian Circles] | 固定リンク

2017/08/06

MOGWAI『ATOMIC: A SOUNDTRACK BY MOGWAI』(2016)

MOGWAIが2016年4月に発表した、全編インストゥルメンタル曲からなるサウンドトラックアルバム。これは広島への原爆投下から70年というタイミングにあわせ、2015年に英・BBCで放送されたドキュメンタリー作品『ATOMIC: LIVING IN DREAD AND PROMISE』でMOGWAIが手がけた劇中曲をリワークしたものです。

作品を制作するきっかけとなったのは、バンドメンバーが来日中に広島の平和記念公園を訪れたこと。この訪問に多大なるインスピレーションを受けた彼らは、同じく原子力をテーマとしたドキュメンタリー作品のサウンドトラックにその感情をぶつけます。

残念ながらこのドキュメンタリー作品をフルで見られてはいないのですが(ネット上には字幕なしの映像が上がってますが)、作品自体はあくまでイギリス人の視点による反原発を取り扱ったものだそうです。昨年の来日公演では本作を演奏する際に、スクリーンにこの映像が流されたようですね。

僕自身、8月6日生まれということもあって広島のことについては他人事と思えず、初めて平和記念公園を訪れた際には何とも言えない気持ちになって、しばらく何も話せなくなってしまったのですが(なので、数年前に再び訪れた際にはかなり冷静に観察することができました)、そういうこともあってこのアルバムを聴くときもちょっと尋常じゃない気持ちになってしまいます。

あくまで個人的な感想ですが、前作にあたるオリジナルアルバム『RAVE TAPES』(2014年)も悪くなかったけど、趣味やパーソナルな思い入れからすると本作はちょっと特別なものだったりするのです。

言葉がないぶん、その音の強弱や厚みの違いで表情の変化を読み取ることになる。原子力に関係するキーワードがそれぞれ曲名に用いられたことにより、そこを深読みすることで聴き手のイマジネーションが掻き立てられる。特に7曲目「Little Boy」や10曲目「Fat Man」は、日本人なら何か感じるものがあるのではないでしょうか。

レビューや感想と呼ぶにはおこがましい文章ですが、このアルバムを前にすると僕は本当に何も言えなくなってしまうのです。いや、言葉が出るよりも前に、まずは耳を傾けたくなってしまう。そういう大切な1枚なのです。

今日くらいは静かに、いや可能な限りの爆音で、このアルバムに耳を傾けてみてはどうでしょう。



▼MOGWAI『ATOMIC: A SOUNDTRACK BY MOGWAI』
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投稿: 2017 08 06 12:00 午前 [2016年の作品, Mogwai] | 固定リンク

2017/08/05

MICK JAGGER『PRIMITIVE COOL』(1987)

1987年9月にリリースされた、ミック・ジャガー2枚目のソロアルバム。前年春にROLLING STONESとしての新作『DIRTY WORK』を発表したものの、ミックはツアーに取り掛かることなる今作の制作に取りかかります。ソロ1作目『SHE'S THE BOSS』(1985年)がミリオンヒットになったこともあり、味をしめたんでしょうかね。

ミック、ビル・ラズウェル、ナイル・ロジャースという異色ながらも個性的にならざるを得ない布陣がプロデュースに携わった前作から、今回はミック、キース・ダイヤモンド(ドナ・サマーやマイケル・ボルトン、シーナ・イーストン、ビリー・オーシャンなどを手がけたR&B寄りのプロデューサー兼ソングライター)、そしてEURYTHMICSのデイヴ・スチュワーというこれまた個性的な組み合わせで制作。レコーディングには前作にも全面的に参加したジェフ・ベックに加え、オマー・ハキム(Dr)、サイモン・フィリップス(Dr)、ダグ・ウィンビッシュ(B)、ヴァーノン・リード(G)、ビル・エヴァンス(Sax)、デヴィッド・サンボーン(Sax)など豪華な面々がレコーディングに参加しております。

作風的にはストーンズのポップサイドをより煮詰めたような『SHE'S THE BOSS』から、今回はよりロック色が強まり、しかもメインストリームでスタジアムロック的なテイストが強まっています。リードシングルとして中ヒットした(MVが酷い。笑)「Let's Work」(全米39位、全英31位)こそ打ち込み主体のダンスポップでしたが、アルバムオープニングの「Throwaway」を筆頭にブラックミュージックのテイストを散りばめたハードロックナンバーがずらりと並びます。思えば1987年はBON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)のメガヒットを機に、WHITESNAKE『WHITESNAKE』DEF LEPPARD『HYSTERIA』GUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION』などがチャート上位を占めた時期。少なからずミックもこういった流行を意識したのでしょうけど、そこは“腐っても”ミック・ジャガー。結局はこういった“ストーンズの匂いを感じさせるスタジアムロック”が限度だったねしょうね。

結果、本作は全米41位、全英26位という微妙な結果で終了します。翌年にはキースの初ソロアルバム『TALK IS CHEAP』も世に放たれ、いよいよストーンズも終わりか……と思わせておいてからの、1989年の本格的復活へと続いていくという。その復活作『STEEL WHEELS』とこのミックのソロアルバム『PRIMITIVE COOL』、実は非常に共通点が多いと思うのは気のせいでしょうか? 最近この2作をよく聴くのですが、改めて『PRIMITIVE COOL』で得た知識や経験が『STEEL WHEELS』に反映されていると実感しています。

大きなヒットにはつながらなかったけど、“いかにも80年代後半”な産業ロック的サウンドは意外と悪くない。もちろん好き嫌いがはっきり分かれる作品だと思いますが、もし『STEEL WHEELS』が苦手じゃなかったら手にしてみてもいい1枚かもしれませんよ。

なお、本作発表後にミックはソロツアーをここ日本で行うため、初来日。1988年3月、東京ドーム2公演を含む東名阪5公演で17万人を動員しました。ちなみにアルバム2作に参加したジェフ・ベックはツアーには不参加。代わりにジョー・サトリアーニがリードギターを担当するという、驚きの展開になったことも記憶に残っています。



▼MICK JAGGER『PRIMITIVE COOL』
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投稿: 2017 08 05 12:00 午前 [1987年の作品, Jeff Beck, Mick Jagger] | 固定リンク

2017/08/04

KEITH RICHARDS『TALK IS CHEAP』(1988)

1988年秋にリリースされた、キース・リチャーズ初のソロアルバム。ミックの初ソロアルバム『SHE'S THE BOSS』(1985年)に遅れること3年半、ついにキースまでもがソロアルバムを制作したということで、正直このときには「ああ、ストーンズ復活はもうないかもない」と、当時はまだライトなファンだった自分ですら思ったのですから、さらにコアな古参ファンにとって本作は“最後通告”みたいな作品だったんじゃないかな……なんて、今になって思うわけです。

ちょうどこのアルバムを作ることになる前、キースはチャック・ベリーのドキュメンタリー映画『ヘイル!ヘイル!ロックンロール』制作を手伝っており、これが後押しする形で“自分のソロバンドを作る”という考えに至るわけです。キースはスティーヴ・ジョーダンをパートナーに迎え、THE X-PENSIVE WINOSという自身のバンドを結成。そのまま本作『TALK IS CHEAP』を制作し、アルバム発表後にはソロツアーまで敢行するのでした。

全体の作風としては、“いかにもキースらしい”ロックンロールとソウルへの愛がぎっしり詰まった、オールドスタイルな1枚。そのへんがミックのソロと正反対なのが面白いし、そういう2人が揃うことでストーンズが成立しているんだなということにも気づかされるわけです。

この時点でのROLLING STONESの最新作『DIRTY WORK』(1986年)で聴けるストレートなロックンロール路線を、よりブラッシュアップさせた楽曲群はどれも「それ、ストーンズでやってくれよ!」と言いたくなるようなものばかり。ただ、ここにあるのはミック成分ゼロなので、ストーンズに持ち込んだらまた違った感じになるんでしょうけどね。

とはいえ、1曲目「Big Enough」にはいきなり驚かされるというか。ブーツィー・コリンズがベースで参加したファンキーなこの曲は、ストーンズでは絶対に再現できないものですし(だって、ビル・ワイマンがベースですからね)、その後続くシンプルなロックンロール&ソウルの数々は、キースだからこそ表現できるものばかり。

セールス的にはそれほど大ヒットには至らなかったし(全米24位、全英37位)シングルヒットも生まれなかったけど、あの時点でキースがこれを吐き出さなかったら、翌年のストーンズ再合流はなかったのかも……なんて考えるのは、都合よすぎでしょうか?

キースは現在までにソロアルバムを3枚(本作と1992年の『MAIN OFFENDER』、2015年の『CROSSEYED HEART』)制作していますが、初心者には本作が一番聴きやすいかもしれませんね。



▼KEITH RICHARDS『TALK IS CHEAP』
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投稿: 2017 08 04 12:00 午前 [1988年の作品, Keith Richards, Rolling Stones] | 固定リンク

2017/08/03

ROLLING STONES『DIRTY WORK』(1986)

ROLLING STONESが1986年春に発表したスタジオアルバム(本国イギリスでは18枚目、アメリカでは20枚目)。前作『UNDERCOVER』(1983年)から2年半ぶりの新作で、全英・全米ともに4位を獲得。シングルカットされた「Harlem Shuffle」(BOB & EARLのカバー)は全米5位、全英13位、「One Hit (To the Body)」は全米28位、全英80位と、それまでの記録と比較すると本国イギリスでは低調な結果でした。

ミック・ジャガー&キース・リチャーズの確執などがありながらも、1985年初頭にスタジオ入りしたストーンズでしたが、ミックのソロアルバム『SHE'S THE BOSS』リリースで作業が一時中断。これに業を煮やしたキースは、ミック抜きでセッションを継続し、最終的にキースが中心となって本作は完成したという話です(ど真ん中にキースが居座ったアートワークが象徴的)。

そうそう、「One Hit (To the Body)」でのミックVSキース的バトルが見られるMVも当時はドキリとしたものです。ちなみにこの曲では、ジミー・ペイジがギターで参加しているとのこと。それっぽいギターソロのことかな。キースっぽくないし、ロニー・ウッドのそれでもないですものね。そういえば、ミックのソロアルバムにはジェフ・ベックが参加し、その後こちらにジミー・ペイジが参加したというのもどこか因縁めいたものを感じるというか。

全10曲中2曲がカバーで、ひとつは先に挙げた「Harlem Shuffle」、もうひとつはキースが歌う「Too Rude」(HALF PINTのカバー)。残り8曲がオリジナル曲になるわけですが、ジャガー&リチャーズによる楽曲は3曲のみ。それ以外はジャガー/リチャーズ/ロニーで4曲、ジャガー/リチャーズ/チャック・リーヴェル(当時のキーボーディスト)で1曲という内訳。ミックの名前は入っているものの、結局キースとロニーで完成させ、それをミックが歌ったということなのでしょうか。このへんにも、当時の力関係が見え隠れします。

そういうこともあってか、メンバーの間では非常に評価の低い作品だったりします。ベストアルバムでも「Harlem Shuffle」がセレクトされることがあるか、あるいは1曲も選ばれないかという有様。いや、個人的にはとても好きなアルバムですよ。『UNDERCOVER』をリリースから1年以上経って後追いで聴いた世代なので、リアルタイムではこの『DIRTY WORK』が初めて経験した“ストーンズの新作”でしたし。

「Jumpin' Jack Flash」や「Street Fighting Man」を彷彿とさせるイントロの「One Hit (To the Body)」や、それに続く「Fight」のカッコよさは今聴いてもさすがだと思います(このへんの楽曲が、のちのキースのソロアルバム『TALK IS CHEAP』につながっていくわけですし)。「Harlem Shuffle」のクールさは言わずもがな、ミックのソロにも通ずるモダンなダンスチューン「Winning Ugly」もこの並びで聴くと悪くない。ただ、「Back To Zero」はやりすぎだと思いますけどね。そこからロックンロールな「Dirty Work」「Had It With You」、キースの歌うバラード「Sleep Tonight」で軌道修正。最後の最後に、アルバム完成間際に亡くなった“6人目のストーンズ”イアン・スチュワートへ捧げるシークレットトラックで終了するという。確かに散漫さゼロではないけど、そこまで酷評される内容ではないんじゃないかと。

結局、ミックは再びソロ活動に戻り2ndアルバム『PRIMITIVE COOL』(1987年)を制作。キースも初ソロアルバム『TALK IS CHEAP』(1988年)を作るし、ストーンズはもうダメかと思ったところで、1989年に奇跡の大復活を遂げるわけです。



▼ROLLING STONES『DIRTY WORK』
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投稿: 2017 08 03 12:00 午前 [1986年の作品, Jimmy Page, Rolling Stones] | 固定リンク

2017/08/02

IRON MAIDEN『THE BOOK OF SOULS』(2015)

IRON MAIDENが2015年9月にリリースした、通算16枚目のスタジオアルバム。ブルース・ディッキンソン(Vo)復帰後5作目にあたるだけでなく、現在の6人編成(デイヴ・マーレイ、やニック・ガース、エイドリアン・スミスのトリプルギター編成)になってから5枚目ということにもなるわけで、気づけばこの編成が過去最長という事実にも驚かされます。

前作『THE FINAL FRONTIER』(2010年)から5年ぶりの新作にあたるわけですが、そのブランクを埋めるかのように本作はバンド史上初の2枚組スタジオアルバムとなっております。それだけたくさんの曲が入っているのかと思いきや、そこはこのバンドのこと。全11曲で92分という過去最長のスタジオアルバムをを完成させたわけです。

2006年の14thアルバム『A MATTER OF LIFE AND DEATH』以降、それまで以上に大作主義に移行し始めたメイデンですが、本作では6分台2曲、7分台1曲、8分台1曲、そして10分超3曲(うち1曲は18分超!)と、もはややりすぎ!と突っ込みたくなるほどの内容です。こうなると、シングルカットできる曲も限られてきますし、宣伝的にも困るんじゃないかと思うんですが、そもそも本気でバカ売れさせる気だったら、もうちょっと短い曲を増やすなどコマーシャルな方向に走っても不思議じゃない(それでも「Speed Of Light」みたいに“いかにも”なシングル向け楽曲も用意されてますが)。けど、もはやこのバンドにとってそういう必要がないレベルにまで到達しているわけで(CDが売れなくてもツアーでカバーできるし、そもそも過去のカタログセールスである程度補完できるでしょうし)。

彼らもすでに60歳前後。ニコ・マクブレイン(Dr)に関しては現在65歳だし、最年少のブルースですら現在58歳(8月7日で59歳)なわけでして。ヘヴィメタルアーティストとして彼らに“残された時間”は限られているわけです。場合によっては、今作がラストと言われても別におかしくない状況なわけですよ。だって、本作後にブルースの舌癌が発覚して、リリースが半年近く遅れたわけですからね。昨今の音楽界を考えれば、いつ誰が同じような状況に陥っても不思議じゃない。

そんなですもん、そりゃあやりたい方向性で好き放題やるわけですよね。それが10年くらい前の前々作『A MATTER OF LIFE AND DEATH』から顕著になりだした、と個人的には認識しております。

プログレッシブロック的で何度か聴くにはちょっとキツかった『A MATTER OF LIFE AND DEATH』、新しさも感じられた『THE FINAL FRONTIER』に続く本作ですが、本作はどちらかというと『A MATTER OF LIFE AND DEATH』寄りの作風なのかな。しかも1曲目「If Eternity Should Fail」からいきなり8分半の大作が登場するのですが……これが意外と良い。この曲、ブルースが書いたものなんですよね(他にもブルースはラストの超大作「Empire Of The Clouds」も制作)。てっきりスティーヴ・ハリス(B)かと思ってましたが、違った。つまり、スティーヴ以外のメンバーのクリエイティビティがそれだけ増している時期だった、だったらみんなに好き放題させようと。その結果がこれですよ。

世間的には「長すぎる」「長い曲がダラダラしすぎ」「これが最高傑作とは言い難い」という声をよく耳にします。ほぼ同意です。ただ、ダラダラは言い過ぎでしょ。そこまでダラダラはしてないよ。ただ、最初にアルバムを通して聴いたときは、ちょっと厳しいなとは思いました。だけど、しばらく経ってから聴き返すと、意外と悪くない。さらに何度か聴き込んでいくと、かなり計算されているなと気づかされる。ねえ、これ良いアルバムですよ?

確かに、ここから2〜3曲間引けば全体的に締まりのある作品集になったし、最高傑作に近い内容になったのではないかとも思う。だけど、あえてそれをしないのがIRON MAIDENだって、みんな知ってるんじゃないかな。そんなバンドだから、幾多の困難を乗り越えて40年以上も続いているわけですし。

昨年の来日公演は残念ながら行くことができませんでしたが、ぜひ再び本作を携えたツアーで戻ってきてほしい……いや、本作を携えてなくてもいいので、もう一度日本でその勇姿を見せてください。お願いします。



▼SABATON『THE LAST STAND』
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投稿: 2017 08 02 12:00 午前 [2015年の作品, Iron Maiden] | 固定リンク

2017/08/01

SABATON『THE LAST STAND』(2016)

スウェーデン出身のパワーメタルバンド、SABATONが2016年8月に発表した通算8作目のオリジナルアルバム。前作『HEROES』(2014年)が本国で初のチャート1位を獲得し、イギリスでも過去最高の59位にランクイン。翌2015年10月には『LOUD PARK 15』で初来日を果たし、その圧巻のパフォーマンス(戦車を象った大型セットなどの演出含む)でここ日本のファンを虜にしたのも記憶に新しいと思います。実は自分もそのひとりで、それまでなぜかスルーしていたものの、あの日のライブで完全にノックアウト。帰り道、気づけば彼らの音源を可能な限り揃えていたのでした。

続く本作も本国スウェーデンで1位に輝き、イギリスでは17位という好成績を残しています。また、フィンランドとスイスで1位、ドイツ、オーストリア、ポーランドでは2位にランクイン。本作『THE LAST STAND』を携えた2016年の『Wacken Open Air』では初のヘッドライナーも務めるほどで、もはやヨーロッパ/北欧ではトップクラスの人気といっても過言ではありません。

彼らは世界中で過去に起こった戦争や争い、そこに携わった兵士たちをモチーフに作品作りを続けており、本作でも「Sparta」が紀元前の“テルモピュライの戦い”がテーマになっていたり、他にも神聖ローマ帝国によるローマ略奪を歌った「The Last Stand」、バノックバーンの戦い(イングランド対スコットランド)がテーマの「Blood Of Bannockburn」と歴史的に古いものから、第一次大戦や第二次大戦がテーマの楽曲(「The Last Battle」など)、日本の西南戦争・城山の戦いを歌った「Shiroyama」(ジャケットに武士が登場するのも、その影響か)のほか、1988年のアフガニスタン・3234高地の戦いを扱った「Hill 3234」と、近代史もピックアップされています。

……と、ここまで書いていて「もしかして、それを理由に難しいと感じて触れることに躊躇してしまうのでは?」と気づきました。ああ、それって以前の自分じゃないか、って。まさに自分も、そういった小難しさが先に立って、彼らの音を聴くまでに至らなかったのですが、皆さんそんな心配は無用です。北欧メタル、パワーメタル、クサメタルなどなど……そういったワードにピンときた人なら大丈夫。ここには男臭くてカッコイイ、みんなで大合唱できるようなパワフルなヘヴィメタルが満載ですから。

シンセを適度に用いた楽曲の数々は、時に壮大さを感じさせ、時に哀愁味を強め、時にポップでキャッチー、しかもシンガロングしたくなる。1曲1曲は4分前後とコンパクトで、変に演奏で引っ張った長尺曲に走ることもない。全11曲で37分程度というトータルランニングも潔い。ライブDVD付き仕様にはJUDAS PRIEST「All Guns Blazing」、IRON MAIDEN「Afraid To Shoot Strangers」などのカバーも収録。これらもすべて、戦にちなんだ選曲となっているのはさすがです。

本作リリースから1年強。いよいよ今年10月に『LOUD PARK 17』で再来日するSABATON。前回の来日からギタリストのチェンジがあったものの、今回も初来日と変わらぬハイパーアクティブなステージを見せてくれることでしょう。楽しみ楽しみ。



▼SABATON『THE LAST STAND』
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投稿: 2017 08 01 12:00 午前 [2016年の作品, Sabaton] | 固定リンク