MANIC STREET PREACHERS『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』(2010)
MANIC STREET PREACHERSが2009年5月に発表した9thアルバム『JOURNAL FOR PLAGUE LOVERS』はスティーヴ・アルビニをエンジニアに迎え、今でも“4人目のメンバー”であるリッチー・ジェイムズが残した詩を用いて制作した、15年ぶりの「4人で制作した」新作でした。同作はコマーシャル的成功を一切無視しつつも、この15年間に彼らが血肉として得た知識・技術も取り入れられており、シングルカット一切なしでも全英3位という好成績を残しました。
それから1年4ヶ月で届けられたのが、今回紹介する通算10枚目のスタジオアルバム『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』です。本作は前作にも携わった、MANICSではおなじみのデイヴ・エリンガとバンドがプロデュース。リリース時には「マスコミへの最後の一撃」というメッセージが印象的でしたが、その内容は前々作『SEND AWAY THE TIGERS』(2007年)や大ヒット作『EVERYTHING MUST GO』(1996年)の延長線上にあるサウンド、楽曲目白押しで、決して革新的なものではありませんでした。
10年前に『SEND AWAY THE TIGERS』を聴いた僕は、当時のレビューで「素晴らしいロックアルバムだけど、過渡期を感じさせる」と書きました。悪くないんだけど、良すぎもしない。MANICSにしては普通のアルバムだったのです。
では、この『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』も同じ流れにあるだけに、そういう普通のアルバムなのかというと、実はそうじゃなかったりする。全部が全部、“突き抜けて”いるんです。確かに『SEND AWAY THE TIGERS』にもそういう曲はいくつかあったけど、決してすべてではなかった。が、『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』では1曲1曲の濃度が濃い。ポップな曲もロック度強めで表現されていたり、どこかモータウンを感じさせるカラーがあるのにそれをハードロック調で表現していたりと、どの曲からも過剰さが感じられるのです。
この過剰さって、実はQUEENに通ずるものがあるんじゃないか……実は最初の本作を聴いたときに思い浮かべたのが、まさしくQUEENでした。嫌われ者が国民的バンドにまで成長するという過程もQUEENそのものですしね。
『SEND AWAY THE TIGERS』では覚悟が足りなかった……とは言いませんが、続く『JOURNAL FOR PLAGUE LOVERS』で過去を清算したことで、ようやく過渡期を抜けることができたんでしょうね。と、僕が勝手に解釈している作品です。
そういえば、ニッキーは当時のインタビューで「『SEND AWAY THE TIGERS』が俺たちにとっての(AEROSMITHの)『PERMANENT VACATION』なら、次のアルバム(『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』)は俺たちの『PUMP』になる」というようなことを言ってましたが、完成したアルバムを聞くとあながちそれも間違っていなかったようですね。そういう意味では『SEND AWAY THE TIGERS』は当時のMANICSにとって必要な踏み台だったんでしょうね。
とにかく捨て曲なし、どれもシングルカットできるようなポップでキャッチーで、それでいてどこかソリッドさもある良曲ばかり。そうそう、90年代半ば以降のMANICSってそんなバンドだったよね、という当たり前の事実を思い出させてくれる2000年代の名盤です。

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