THE ROLLING STONES『DIRTY WORK』(1986)
THE ROLLING STONESが1986年春に発表したスタジオアルバム(本国イギリスでは18枚目、アメリカでは20枚目)。前作『UNDERCOVER』(1983年)から2年半ぶりの新作で、全英・全米ともに4位を獲得。シングルカットされた「Harlem Shuffle」(BOB & EARLのカバー)は全米5位、全英13位、「One Hit (To the Body)」は全米28位、全英80位と、それまでの記録と比較すると本国イギリスでは低調な結果でした。
ミック・ジャガー&キース・リチャーズの確執などがありながらも、1985年初頭にスタジオ入りしたストーンズでしたが、ミックのソロアルバム『SHE'S THE BOSS』リリースで作業が一時中断。これに業を煮やしたキースは、ミック抜きでセッションを継続し、最終的にキースが中心となって本作は完成したという話です(ど真ん中にキースが居座ったアートワークが象徴的)。
そうそう、「One Hit (To the Body)」でのミックVSキース的バトルが見られるMVも当時はドキリとしたものです。ちなみにこの曲では、ジミー・ペイジがギターで参加しているとのこと。それっぽいギターソロのことかな。キースっぽくないし、ロニー・ウッドのそれでもないですものね。そういえば、ミックのソロアルバムにはジェフ・ベックが参加し、その後こちらにジミー・ペイジが参加したというのもどこか因縁めいたものを感じるというか。
全10曲中2曲がカバーで、ひとつは先に挙げた「Harlem Shuffle」、もうひとつはキースが歌う「Too Rude」(HALF PINTのカバー)。残り8曲がオリジナル曲になるわけですが、ジャガー&リチャーズによる楽曲は3曲のみ。それ以外はジャガー/リチャーズ/ロニーで4曲、ジャガー/リチャーズ/チャック・リーヴェル(当時のキーボーディスト)で1曲という内訳。ミックの名前は入っているものの、結局キースとロニーで完成させ、それをミックが歌ったということなのでしょうか。このへんにも、当時の力関係が見え隠れします。
そういうこともあってか、メンバーの間では非常に評価の低い作品だったりします。ベストアルバムでも「Harlem Shuffle」がセレクトされることがあるか、あるいは1曲も選ばれないかという有様。いや、個人的にはとても好きなアルバムですよ。『UNDERCOVER』をリリースから1年以上経って後追いで聴いた世代なので、リアルタイムではこの『DIRTY WORK』が初めて経験した“ストーンズの新作”でしたし。
「Jumpin' Jack Flash」や「Street Fighting Man」を彷彿とさせるイントロの「One Hit (To the Body)」や、それに続く「Fight」のカッコよさは今聴いてもさすがだと思います(このへんの楽曲が、のちのキースのソロアルバム『TALK IS CHEAP』につながっていくわけですし)。「Harlem Shuffle」のクールさは言わずもがな、ミックのソロにも通ずるモダンなダンスチューン「Winning Ugly」もこの並びで聴くと悪くない。ただ、「Back To Zero」はやりすぎだと思いますけどね。そこからロックンロールな「Dirty Work」「Had It With You」、キースの歌うバラード「Sleep Tonight」で軌道修正。最後の最後に、アルバム完成間際に亡くなった“6人目のストーンズ”イアン・スチュワートへ捧げるシークレットトラックで終了するという。確かに散漫さゼロではないけど、そこまで酷評される内容ではないんじゃないかと。
結局、ミックは再びソロ活動に戻り2ndアルバム『PRIMITIVE COOL』(1987年)を制作。キースも初ソロアルバム『TALK IS CHEAP』(1988年)を作るし、ストーンズはもうダメかと思ったところで、1989年に奇跡の大復活を遂げるわけです。
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