SEPULTURA『CHAOS A.D.』(1993)
1993年秋に発表された、ブラジルのヘヴィメタルバンドSEPULTURAの5thアルバム。前作『ARISE』(1991年)で世界的に認知され始め、ここ日本でも初来日公演が実現したほか、アメリカではBillboard 200に初めてランクイン(最高119位)。また『ARISE』での成功を受けて、アメリカでは次作がメジャーのEpic Recordsから配給されることも決定。今作が勝負作になることは明白でした。
ですが、オールドスクールのスラッシュメタルを武器とした『ARISE』から一変、本作では“PANTERA以降”のモダンヘヴィネスサウンドに様変わり。プロデューサーもスラッシュ/デスメタルを得意とするスコット・バーンズから、モダンなバンドばかりを手がけるアンディ・ウォレスに替え、ミドルテンポ主体のグルーヴ感に満ち溢れた楽曲に挑戦しています。
確かにこの時期、METALLICAがブラックアルバム(1991年)で成功したのを機に、MEGADETHもANTHRAXもテンポを落として重さを重視したサウンドに移行しており、これが流行りであり主流と言ってしまえばそれまでかもしれません。事実、シーン中心にはNIRVANAやPEARL JAMなどのグランジ勢が君臨し、旧来のメタルはオールドスクール呼ばわりされて敬遠されていたのですから。そんな中メガヒットを遂げたMETALLICAや、メタル界の新星として人気を獲得したPANTERAの恩恵を受けようとするのは、致し方ないのかもしれません。
SEPULTURAの変化も確実にこの流れにあるものと思われますが、彼らがその他のバンドと一緒くたにされずに済んだのは、SEPULTURAというバンドがブラジル出身だという事実。例えば本作には「Kaiowas」というブラジルの民族音楽から影響を受けたインストゥルメンタルナンバーは、他のメタルバンドには真似できない武器であり、この実験が次作『ROOTS』(1996年)で開花するわけです。
もちろんそれ以外の楽曲も単なる“フォロワーの真似事”で終わっておらず、このバンドらしいパーカッシヴなドラミングをフィーチャーした「Refuse/Resist」「Terriory」は今聴いても最高だし、ブルドーザーが突進してくるかのような重量感をみせる「Slave New World」「Propaganda」、狂気すら感じさせる攻撃的な「Biotech Is Godzilla」はもちろん、本作において唯一メロディアスなカバー曲「The Hunt」(原曲はNEW MODEL ARMY)が良いアクセントになっていたりと、とにかく聴きどころ多し。下手なメタルもどきを聴くぐらいなら、ずっとこの音に浸っていたい。そう思わせるぐらいの気持ち良さが本作にはあると思います。
この10月(国内盤は11月)には本作と『ROOTS』の最新リマスター&ボーナスディスク付き仕様も発売。ぜひこの機会に、マックス・カヴァレラ(Vo, G)在籍時のSEPULTURAを振り返ってみてはいかがでしょう。

▼SEPULTURA『CHAOS A.D.』
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