MARILYN MANSON『THE PALE EMPEROR』(2015)
2015年1月に発表された、MARILYN MANSON通算9作目のスタジオフルアルバム。今作から新たなパートナーとして、映画音楽(特にアクションやホラー)を中心に手がけてきたアーティスト、タイラー・ベイツを迎えて制作。全作曲とドラム以外の大半の楽器を彼が手がけ、ドラマーはTHE DILLINGER ESCAPE PLANなどで活躍したギル・シャロンが担当しています。つまり、“永遠の相棒”ことトゥイギー・ラミレズ(B)が本作には不参加なのです(彼は本作制作時、別の活動で忙しかったんだとか)。
正直、最初に聴いたときの感想は「非常に地味」。これはマンソン自身が作曲にノータッチというのも大きいのでしょうが、楽曲自体が過去のマンソンの作品と比べて非常にブルーステイストが強いというのも大きいのかもしれません。
そのシンプルさが、例えば90年代のもっとも派手だった時期の作品と比べて違和感を生み出しているのは確か。では、本作が駄作なのかと言われると、それもちょっと違う。落ち着いた印象だけど、これも間違いなくMARILYN MANSONの作品なんですよね。
マンソンはかつて『EAT ME, DRINK ME』(2007年)というアルバムを発表していますが、同作はそれまでの彼の作品の中でももっとも“ソロアルバム”的趣向が強かったもの。ジョン・5という片腕的スーパーギタリストが抜けたあとの作品というのもあって、やはり地味というイメージが強い1枚でした。
で、今作『THE PALE EMPEROR』はその『EAT ME, DRINK ME』を聴いたときの印象に、非常に似ているのです。もちろんあの頃と状況はまったく別ですし、やろうとしていることも異なるはず。なのに、こんなにもイメージが近いのは、きっとマンソン自身が現在進もうと考えている方向が、『EAT ME, DRINK ME』のときと似ているのかも……なんて思ったりして。考えすぎでしょうかね。
マンソンが初組み合わせのソングライター、しかも映画音楽を手がける作曲家が書いた楽曲を歌うという企画。それ自体は非常に面白い試みです。もし本作が、何か架空の映画やショートムービーのサウンドトラック、あるいはイメージソング集として制作されていたら、また評価は変わったかもしれません。けど、そんな妄想を抜きにしても本作は“意外とクセになる”良盤だと思います。
デラックス盤にはボーナストラックが3曲追加されており、それぞれアルバム本編に収録された「Third Day Of A Seven Day Binge」「The Mephistopheles Of Los Angeles」「Odds of Even」のアコースティックバージョンになります。こっちを聴くと、実はマンソンはこれがやりたくて本作を作ったんじゃ……なんてことを邪推したくなりました。それくらい、オマケにしておくには勿体ない仕上がりかなと。
それと、本作のオープニングトラック「Killing Strangers」は昨年秋にNHK BSプレミアで放送されたドラマ『獄門島』のテーマソングとして使用されました。僕もこの番組は観ましたが、リメイクされた『獄門島』の世界観にぴったりだったと思います。歌詞のテーマ的にも、あの物語に合うものがあるんですよね。
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