CARCASS『HEARTWORK』(1993)
CARCASSが1993年秋に発表した、通算4枚目のスタジオアルバム。当時の編成はジェフ・ウォーカー(Vo, B)、ビル・スティアー(G, Vo)、ケン・オーウェン(Dr)に現ARCH ENEMYのマイケル・アモット(G)。もともとはアモットを除く3人編成でグラインドコア/ゴアグラインドバンドとして活躍していたものの、前作『NECROTICISM - DESCANTING THE INSALUBRIOUS』(1991年/邦題は『屍体愛好癖』)からアモットが加わったことでツインギター編成になり、ギターリフで巧みに構築されたメタリックなバンドサウンドと、ギターソロをフィーチャーしたヘヴィメタル的方向性にシフトチェンジ。前作でも聴けたそのメロウな要素がより強化されたのが、本作『HEARTWORK』なわけです。
今となってはメロディックデスメタルというカテゴリーは、メタルファンの間で当たり前のように定着していますが、当時は“メロデス”なんて呼び名はまだ存在しておらず、単にCARCASSがデスメタル寄りのグラインドコアだったことから“メロディアスな要素が強いデスメタル”と認識されてしまったわけです。
確かに表題曲(名曲!)や「This Mortal Coil」あたりで聴けるツインリードは完全にヘヴィメタルのそれだし、メロディアスなギターソロも完全にあっち側。時折ブラストビートなんかも飛び込んでくるものの、ボーカルさえ歌メロをしっかり歌っていたらIRON MAIDENあたりにも通ずるものがあるんじゃないでしょうか。
『NECROTICISM - DESCANTING THE INSALUBRIOUS』が大好きだった自分からすると、この変化には正直最初こそ拒否反応を示しましたが、聴き込めば聴き込むほどにハマッていく自分がいたのも確か。「Heartwork」のリードなんて完全にコピーしてたもんなぁ。
グラインドコアから出発したバンドが、プログレッシヴなエクストリームメタル路線へと移行し、そこからさらに正統派HR/HM(例えばTHIN LIZZYやIRON MAIDENなど)側のカラーを強めていった。本作はアルバムごとに変化と進化を繰り返してきたCARCASSがアモットという個性を手にしたことで(それに呼応するかのごとく、ビルのプレイもHR/HM化したことで)到達した、ひとつの到達点だったのかもしれません。
結局アモットは本作発表後にバンドを脱退。翌1994年には念願の初来日が実現するのでした。アモット自身は自身のハードロック志向を追求するバンドSPIRITUAL BEGGARSを結成し、1996年には『HEARTWORK』でのメロデス路線をさらに極めるためのプロジェクト(のちのバンド)ARCH ENEMYを立ち上げることになります。
一方のCARCASSは3年後に5thアルバム『SWANSONG』を発表するのですが、それについてはまた別の機会に。
あ、ちなみに僕、ビル・スティアー派です。好きなギタリストを3人挙げろと言われたら、そのうちの1人に間違いなくビルをピックアップします。
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