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2017/10/31

2017年10月のお仕事

2017年10月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※10月31日更新)


[紙] 10月31日発売「BUBKA」2017年12月号にて、欅坂46小林由依、けやき坂46井口眞緒×佐々木久美インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 10月27日発売「東京ドーム公演記念 乃木坂46新聞」にて、乃木坂46生田絵梨花インタビューを担当・執筆しました。

[紙] 10月23日発売「BRODY」2017年12月号にて、乃木坂46衛藤美彩インタビュー、柳沢翔×湯浅弘章対談、伊藤衆人×福島真希対談を担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 10月22日、「リアルサウンド」にて新譜キュレーション記事「coldrain、Sons Of Texas、OUTRAGE……新旧メタルバンドが考える伝統の保守と進化」が公開されました。

[WEB] 10月21日、「リアルサウンド」にてHi-STANDARDのアーティスト評「Hi-STANDARD、『The Gift』は人とのつながり重視した“ギフト” チャート1位までの軌跡を追う」が公開されました。

[WEB] 10月20日、「NIKKEI STYLE」にて蔦谷好位置インタビュー「曲作りは「スピード感」と個の力(音楽P 蔦谷氏)」(「日経エンタテインメント!」2017年10月号掲載記事を再構成)が公開されました。

[紙] 10月18日発売「TV Bros.」2017年10月21日号にて、Hi-STANDARD『THE GIFT』、OUTRAGE『Raging Out』アルバムレビューを執筆しました。

[WEB] 10月14日、「別冊カドカワDirect×SILENT SIREN」特設ページにてSILENT SIRENすぅ(Vo, G)インタビュー「【すぅ(SILENT SIREN)インタビュー】攻めの新曲「ジャストミート」を語る」が公開されました。

[WEB] 10月11日、「NIKKEI STYLE」にて「乃木坂46 汗と涙でファンつかむ「アンダーライブ」」(「日経エンタテインメント!」2017年10月号掲載記事を再構成)が公開されました。

[紙] 10月4日発売「TV Bros.」2017年10月7日号にて、MARILYN MANSON『HEAVEN UPSIDE DOWN』アルバムレビューを執筆しました。

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また、9月に当サイトで紹介したアルバム(Spotifyで配信している作品のみ)から各2曲程度ピックアップして、50〜60曲程度のプレイリストを制作しました。題して『TMQ-WEB Radio 1709』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。


投稿: 2017 10 31 12:00 午後 [「仕事紹介」, 「音楽配信」] | 固定リンク

SEPULTURA『ARISE』(1991)

SEPULTURAが1991年春に発表した、通算4作目のスタジオアルバム。前作『BENEATH THE REMAINDS』(1989年)からRoadrunner Recordsに移籍し、プロデューサーにデスメタルシーンで名の知れたスコット・バーンズ(DEATH、OBITUARY、CANNIBAL CORPSE、DEICIDE、NAPALM DEATHなど)を迎えたことで、それまでブラックメタル寄りのデスメタル風だった彼らのサウンドスタイルやプロダクションが一気にスケールアップ。続く本作『ARISE』では初期のスタイルを軸にしつつも、より80年代のスラッシュメタル黄金期のサウンドを取り入れた疾走感ある楽曲を楽しむことができます。

オープニングの「Arise」から、もう突っ走りまくり。ギターリフはスラッシュメタルのそれというよりは、低音に頼らない単音を基調としたブラックメタル風。そのせいか若干音が薄い印象があるものの、息もつかせぬスピード感とマックス・カヴァレラ(Vo, G)のボーカルスタイルによってそれを一切感じさせない。さすがです。

続く「Dead Embryonic Cells」「Desperate City」あたりはスピードだけに頼ることなく、リフやソロを効果的に組み合わせたアレンジで「これぞスラッシュメタル」という存在感を提示。特に「Desperate City」に登場するツインリードと、その直後に訪れる転調&不穏なメロディを伴うギターソロは圧巻の一言です。正直、この3曲だけで完全に心を奪われるんじゃないでしょうか。

また、本作ではその後の作品への予兆を感じさせる「ハードコアパンク色」「インダストリアル臭」「ブラジル出身を前面に打ち出したサウンドスタイル」の3点も初登場。ハードコアスタイルはそれこそ「Arise」のストレートさや「Murder」の冒頭あたりからも存分に感じられるし、インダストリアルテイストはさまざまな楽曲のイントロに挿入されるSEがまさにそれ。そしてブラジルっぽさは、「Altered State」の冒頭でラテンパーカッションが使用されている点。以降の作品と比較すればその使い方もオマケ程度ですが、このへんがのちの彼らにとって大きなアイデンティティになるとは、まさかこの頃は想像もしていませんでした。

アルバム後半も先の「Altered State」や「Under Siege」といったトリッキーな楽曲や、ラストにふさわしいファストチューン「Infected Voice」など佳曲多し。最初から最後まであっという間に終わってしまう印象があるかな。いわゆるデスメタル/スラッシュ路線は本作が最後で、次作『CHAOS A.D.』(1993年)にて大変貌を遂げることになります。それについては同作のレビューをご覧ください。

ちなみに本作はイギリスで初のチャート40位入りを記録。アメリカでも初めてBillboardチャートにランクイン(119位)と、世界的な成功を収めます。ここ日本でも本作で認められた感があり、1992年には初来日も実現しています。



▼SEPULTURA『ARISE』
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投稿: 2017 10 31 12:00 午前 [1991年の作品, Sepultura] | 固定リンク

2017/10/30

SEX PISTOLS『NEVER MIND THE BOLLOCKS HERE'S THE SEX PISTOLS』(1977)

SEX PISTOLS唯一のオリジナル・スタジオアルバム。実は今から40年前の1977年10月28日にリリースされたんですね。つい先日知りました。THE DAMNEDの1stアルバム『DAMNED DAMNED DAMNED』が1977年2月、THE CLASHの1stアルバム『THE CLASH』が同年4月に発売されたことを考えると、実はピストルズのアルバムデビューってだいぶ遅いんですよね。とはいえ、初のシングル「Anarchy In The U.K.」は前年1976年11月末に発売(英パンクロック初のシングルと言われるTHE DAMNED「New Rose」の1ヶ月後)。その後、所属レーベルEMIから契約解除などのすったもんだがあったため、アルバムまで1年を要したわけですね。まあ、らしいっちゃあらしいですが。

これまでもいろんなところで発言してきたと思いますが、僕はこのSEX PISTOLSのアルバム、パンクロックの名盤とは思っておらず、むしろ「パンキッシュなハードロックの教科書的1枚」と認識しています。

クリス・トーマスによるプロデュースは完全にハードロック的なものだし、なによりもギターのスティーヴ・ジョーンズによるリフ作りやギタープレイ、アレンジの組み立て方は完全にハードロックそのもの。楽曲自体もピストルズ以降のパンクバンドにありがちなチープさはないし、同期のTHE DAMNEDやTHE CLASHと比べてもサウンド的にふくよかで太さが感じられる。

特に爆音で聴き比べたときに、ピストルズのサウンドは他2組と異なる音のきめ細やかさに気づかされるんです。そこもパンクロックとは異質だと思うし、結局ここから数年後に勃発するNew Wave Of British Heavy Metalシーンに一番近いのがこのピストルズ唯一のアルバムなんですよね。

それもあってなのか、80年代以降のハードロックバンドの中にはピストルズの楽曲をカバーするバンドが多いこと、多いこと。サウンド的というよりもスタイル的にパンキッシュなハードロックバンドほど、ピストルズを自然とカバーしている。そうなんです、結局ピストルズって音楽的にパンク云々ではなく、生き方やファッションがパンクそのものだったんですよね(その戦略的な部分も含めて)。つまり、ジョニー・ロットン(Vo)とシド・ヴィシャス(B)がその役割を担っていたと。だって、ジョニーは絶対にハードロックの人じゃないですもんね(笑)。

あと、本作の大半でベースを弾いているのはシド・ヴィシャスではなく、かといって前任のグレン・マトロックでもない、実はスティーヴ・ジョーンズその人だという事実も忘れてはなりません(シドは「Bodies」、グレンは「Anarchy In The U.K.」のみプレイ)。このへんも、本作をハードロックたらしめる要因なんじゃないでしょうか。

僕自身が本作を初めて聴いてから30年近く経ちましたが、聴き返せば聴き返すほど、時間が経てば経つほど、純粋に「ハードロックアルバム」としての愛情が深まっていく1枚です。



▼SEX PISTOLS『NEVER MIND THE BOLLOCKS HERE'S THE SEX PISTOLS』
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投稿: 2017 10 30 12:00 午前 [1977年の作品, Sex Pistols] | 固定リンク

2017/10/29

WILLIAM PATRICK CORGAN『OGILALA』(2017)

SMASHING PUMPKINSのフロントマン、ビリー・コーガンによる2ndソロアルバム。本作は本名である「ウィリアム・パトリック・コーガン」名義でのリリースとなります。

ソロアルバムはスマパン〜ZWANの解散を経て、2005年に発表した『THEFUTUREEMBRACE』以来12年ぶり。前作はヘヴィなサウンドのみならずニューウェイブやシューゲイザーなどさまざまなジャンルを打ち込み中心で表現した(ファンに求められているか否かは別として)意欲的内容でしたが、本作は本名名義での発表ということもあってか、非常にパーソナルな内容に仕上がっています。

そのパーソナルというのも、非常にわかりやすい形で表現されており、基本はアコースティックギターの弾き語りを軸にしており、そこに歪んでないエレキギターやピアノ、メロトロン、パーカッションなどが加わっています。とはいえ、そこまで音数は多くなく、むしろ全体的に“空白”を生かしたアレンジの楽曲がずらりと並びます。スマパンで言うなれば、「Disarm」「Thirty-Three」あたりに通ずると言えばわかりやすいでしょうか。

とはいえ、「Disarm」のようなドラマチックさはなく、「Thirty-Three」ほどのきらめきも……まったくないと言ったら嘘になりますが、その輝きは若さならではの生命力によるものとは違った、同時に影を感じさせるものといいましょうか。キュンとする切なさとは違う、郷愁感に似たものなのかもしれません。

ビリーの歌声も強く張り上げることなく、終始リラックスしたもので、聴き手側も肩の力を抜いて楽しめるんじゃないでしょうか。

ただ、統一感の強いカラーのせいなのか、「これ!」といったキメの1曲が見当たらないのがマイナスポイント。どれも平均点を軽く超えた仕上がりですが、抜きん出て素晴らしいと呼べるものを探すのは難しい。そういった意味では、非常に“雰囲気モノ”の1枚として全体の空気感を楽しむ作品と言えるでしょう。そんな楽しみ方があるのかどうかは別として。

90年代にあれだけ高性能ハードロック&ポップスを量産してきたビリー。00年代以降は本作に限らず、確かに「これ!」という1曲を生み出せていないんですよね。その才能はある人だと思うんですが……。

と思っていたら、本作ってビリーが脚本を手がけたショートフィルム『PILLBOX』のサウンドトラック的立ち位置の作品みたい。なるほど、サントラということで考えたらこの統一感も理解できるし、極端に目立ちすぎる曲が少ないというのも頷けるか……ってこれ、ショートフィルムが先かアルバムが先かで、捉え方も変わってくるような。本当はどっちが先なんでしょうね。

ちなみに本作には、元バンド名とのジェイムズ・イハが1曲(「Processional」)ギターとメロトロンでゲスト参加。実はアルバム未収録でもう1曲、共演曲があるとのこと。今後のリリースのみならず、再びステージでの共演含め、今後に期待しておきましょう。



▼WILLIAM PATRICK CORGAN『OGILALA』
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投稿: 2017 10 29 12:00 午前 [2017年の作品, Billy Corgan, Smashing Pumpkins] | 固定リンク

2017/10/28

EUROPE『WALK THE EARTH』(2017)

2017年10月に発表された、EUROPE通算11作目のスタジオアルバム。前作『WAR OF KINGS』(2015年)から2年7ヶ月ぶりの新作であり、再結成後6枚目のスタジオアルバムってことで、ついに80〜90年代の全盛期よりも活動歴が長くなってしまいました(解散前をアルバムデビューから数えると活動は10年に満たない計算ですが、再結成後は2004年の復帰1作目『START FROM THE DARK』から数えても13年)。

プロデューサーは前作から引き続き、デイブ・コッブ(RIVAL SONS、ZAC BROWN BANDなど)が担当。サウンド的にも前作の延長線上にあるもので、前作はメロディやバンドサウンドがイマイチ噛み合わないという若干とっ散らかった印象があったところを、今作ではそこをよりブラッシュアップすることで完成度の高い作品に仕上げることに成功しています。

前も書きましたが、そもそも再結成後のEUROPEは自分たちの“売れた”サウンド……いわゆる80年代後半の『THE FINAL COUNTDOWN』(1986年)や『OUT OF THIS WORLD』(1988年)みたいにキラキラしたハードロックから一歩引き、自分たちが本当に好きだった70〜80年代のDEEP PURPLEUFOTHIN LIZZYLED ZEPPELINRAINBOWからの影響がダイレクトに表れた、シンプルでわかりやすいハードロックを目指していました。復帰1作目『START FROM THE DARK』の時点で、すでに80年代のDEEP PURPLE的なサウンドを模倣していましたし、作品ごとに少しずつカラーを変えつつも、芯にある部分だけはブレずにここまで続いています。

特にここ3作……2012年の9th『BAG OF BONES』からはその傾向がより強くなり、ひたすら地味な方向へと続き進み続け、結果前作『WAR OF KINGS』とあわせて否定的に捉えるファンが多かったようです。いや、再結成以降の楽曲を全否定する往年のファンも少なくないようですね。

だけど、今回の『WALK THE EARTH』は本当にそこまでひどいアルバムだと思えないんですよね。自分が再結成後の作品に対して好意的というのもあるけど、それを抜きにしても本作はアルバムとして非常に優れている。メロもキャッチーだし、楽曲としてもフックのあるものが多い。以前はテンポ的に大半がミディアムテンポで似たようなものが多かったんだけど、今作はそこが非常に考えられており、そのせいもあって飽きがこない。新たなアンセムとなりうる表題曲「Walk The Earth」、比較的攻めのアップチューン「Kingdom United」や「Election Day」「GTO」「Whenever You're Ready」、サイケデリックなスローナンバー「Pictures」、ひたすら重いけどギターが泣きまくる「Wolves」、バラード寄りのミディアムナンバー「Turn To Dust」などなど、印象的な楽曲が多いんですよ。

ジョーイも歌でかなり頑張ってるし、ジョン・ノーラム(G)もソツないながらも耳に残るフレーズを増産してる。けど、何よりメロディが良いものが多い。結局そこなんですよね、このバンドは。今までは音にこだわるあまり、そこのバランスがうまく調整できていなかった。それを見事に乗り越えた今、EUROPEは再結成後で最強のポジションにいるんじゃないでしょうか。特に最近は2nd『WINGS OF TOMORROW』(1984年)や3rd『THE FINAL COUNTDOWN』完全再現ライブで古き良き時代の楽曲と真正面から向き合う時間が多かったのも、大きく影響したんじゃないかな。だとしたら、本当にやって正解だったと思います。

全10曲で40分弱というトータルランニングも、古き良き時代のロック的で素晴らしいし、エンディングもオールドスタイルで嫌いじゃない(そのあとに続くオマケ含め)。本当に第2の全盛期がそこまで迫ってきてるんじゃないでしょうか。そう信じています。

なお、日本盤は初回限定盤のみに『LOUD PARK 13』でのパフォーマンスの模様を完全収録。こちらもあわせてチェックしておきたいアイテムです(輸入盤付属のDVDは内容が異なり、『EUROPE AT ABBEY ROAD』と題した今作のレコーディングドキュメントらしきものが収められているようです)。



▼EUROPE『WALK THE EARTH』
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投稿: 2017 10 28 12:00 午前 [2017年の作品, Europe] | 固定リンク

2017/10/27

GEORGE MICHAEL『LISTEN WITHOUT PREJUDICE VOL. 1』(1990)

1990年9月にリリースされたジョージ・マイケルの2ndソロアルバム。1987年秋に発表された初のソロアルバム『FAITH』WHAM!時代の延長線上にありながらも、より大人になった彼の姿を端的に表現した鉄壁な内容で、全世界で2000万枚以上もの売り上げを記録しました。そこから3年、続いて発表された本作はより大人になって落ち着いた世界観が表現されており、“ポップスター=ジョージ・マイケル”をイメージしていたリスナーにとっては面食らうほど地味に映った1枚でした。

作風的には前作における「Father Figure」や「One More Try」「Kissing A Fool」のようにソウルフルでジャジーなアダルト路線と、「I Want Your Sex (Part. 1)」や「Monkey」でのダンサブルな路線(ただし、「Freedom! '90」や「Soul Free」で聴けるように、もっと当時に時代の流行に沿ったダンスサウンド)を軸にしている点は変わらないのですが、そこにもっとクラシカルな要素(「They Won't Go When I Go」「Mother's Pride」)やフォーキーなスタイル(「Something To Save」「Waiting For That Day」「Heal The Pain」)が加わることで、より“大人のソウル”というイメージが強化。これにより派手さがまったくなくなり(そもそも『FAITH』も言うほど派手な内容ではありませんでしたが)、いまだにWHAM!時代を引きずっているリスナーには(先に書いたように)ひたすら地味でとっつきにくい内容だったようです。事実、「あれ、ここまで地味かよ……」と当時10代だった僕も最初は若干引きましたから。

けど、これがね。クセになるんですよ。噛めば噛むほど味がじわじわ染み出してくるように。展開されるサウンドの世界観には前作以上に統一感が感じられるし、何よりもジョージの歌が心地よい。あと、地味地味言うけど、曲によってはブラスがフィーチャーされるなど派手に感じられる部分も含まれているんですよ。ちょっと全体の空気に飲まれすぎて、スルーしがちですけど。

前作からはシングルヒット連発で、全米No.1が4曲連続で飛び出しましたが、本作からはリードシングル「Praying For Time」が全米1位を獲ったのみで、「Freedom! '90」が全米8位、それ以外は「Waiting For That Day」が全米27位、「Mother's Pride」が全米46位止まり。アルバムもアメリカでは最高2位で、200万枚程度に落ち着いています(逆にイギリスでは1位に輝き、前作以上の売り上げを記録)。ちょうど時代の変わり目というのもあったんでしょうけど、いくらクオリティが高い内容でもまだまだ派手さが求められる時代だったのかなぁ、今振り返ると。

でも、だからこそアルバムタイトルどおりに“偏見なしに聴いてほしい”1枚なんですよね、本作って。そういう意味じゃ、ジョージの思いは聴衆が求めるイメージに完勝できなかったのかもしれませんが……残念です。

あ、タイトルに“VOL. 1”とありますが、実は翌1991年に続編アルバム『LISTEN WITHOUT PREJUDICE VOL. 2』のリリースが予定されていましたが、所属レーベルとの裁判沙汰により発売中止に。つい最近、発売25周年記念でリリース予定だったデラックス盤が2年遅れてようやく発売されました。残念ながらジョージが亡くなって1年近く経ってからというタイミングですが……。

なお、そのデラックス盤には1996年10月に実施された『MTV UNPLUGGED』の模様などを収めたボーナスディスク付き。こちらについては、後日改めて紹介したいと思います。



▼GEORGE MICHAEL『LISTEN WITHOUT PREJUDICE VOL. 1』
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投稿: 2017 10 27 12:00 午前 [1990年の作品, George Michael] | 固定リンク

2017/10/26

SLIPKNOT『SLIPKNOT』(1999)

1999年夏にリリースされた、SLIPKNOTの記念すべきデビューアルバム(その3年前、彼らは『MATE. FEED. KILL. REPEAT.』という自主制作盤を発表していますが、メンバー的にもかなり異なることもあり、現在は同作のことをデモ音源集のような呼び方をしてるみたいです)。日本でもアメリカに数ヶ月遅れてリリースされ、2000年2月には早くも初来日が実現しています(当時は大阪BIG CATと渋谷CLUB QUATTROという、今じゃ考えられないキャパで公演を実施)。

ボーカル、ギター×2、ベース、ドラム、パーカッション×2、ターンテーブル、サンプラーという異色の9人編成で、メンバー全員がお揃いのツナギに猟奇的なマスク姿という個性的なルックスでまず目を引くと、次第にその中身(音)のほうにも注目が集まり始めます。なにせアルバムのプロデューサーがKORNSEPULTURAAT THE DRIVE-INLIMP BIZKITで名を馳せたロス・ロビンソンだっていうんですから、そりゃあモダンメタル、ヘヴィロック好きならピンと来るわけですよ。

で、実際初めて聴いたとき……確かにスピード感はすごいんだけど、音数のわりに音が軽いなぁと。正直、最初はそこまでピンとこなかったんです。とはいえ、「(sic)」の狂気性、ドラムンベースをフィーチャーした「Eyeless」の振り切れ方は素直にカッコ良いと思いました。でも、このバンドの本質はそこだけじゃないんですよね。

それは4曲目「Wait And Bleed」や8曲目「Purity」のように、クリーントーンで歌われるメロディアスな楽曲もこのバンドの大きな武器だってこと。初めて「Wait And Bleed」を聴いたときは「こんなにセンチメンタルなメロディを、こんな気の振れたバンドが歌っても大丈夫なん? イメージ違いすきない?」と不安にもなりましたが(なぜお前が不安になる)、アルバムを通して聴いていくうちに「ああ、このアンバランスさが良いんだな」と気づかされたわけです。

音の濁り方はKORNの1stあたりに比較的近いんですが、とにかくドラムの音が軽い。METALLICA『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)までとは言わないものの、正直重さを求めている輩には軽すぎるんですわ。けど、この突き抜けるような疾走感には実はこの音が正解なんですよね。たぶん次作品『IOWA』(2001年)の音じゃダメなわけ。今ならよくわかります。

先に挙げた楽曲に加え「Surfacing」「Spit It Out」など、今でもライブで披露される機会の多い代表曲がずらりと並ぶ、「まずこれから聴け!」ってくらい彼らを知るうえで欠かせない1枚。間違いなくその後のヘヴィロック/メタル/ラウドロックにとって教科書的な役割を果たしたはずです。すでに発売から18年経ってるけど、今聴いても新鮮な驚きの多い傑作です。



▼SLIPKNOT『SLIPKNOT』
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投稿: 2017 10 26 12:00 午前 [1999年の作品, Slipknot] | 固定リンク

2017/10/25

MARILYN MANSON『HEAVEN UPSIDE DOWN』(2017)

前作『THE PALE EMPEROR』(2015年)から約2年10ヶ月ぶりに発表された、MARILYN MANSON通算10作目のオリジナルフルアルバム。プロデュースは前作からバンドに携わるようになった、映画音楽をメインに手がけるタイラー・ベイツが担当しており、曲作りも前作同様にタイラーがすべてを手掛けております。残念ながら、トゥイギー・ラミレズ(B)は今作も制作には携わっていないようです。

今回はマンソンの名を良くも悪くも一躍有名にした名盤『ANTICHRIST SUPERSTAR』(1996年)『MECHANICAL ANIMALS』(1998年)をミックスしたような、ヘヴィかつグラマラスな内容。前作が地味で落ち着いていて、どこかデヴィッド・ボウイ的なソロアルバムテイストだったこともあり、このある種の原点回帰は喜ばしい限り。とはいえ、完全に過去2作を踏襲したものかと言われると……ニュアンス的なものといいましょうか、サウンドの方向性や質感が過去2作のそれを踏まえたもの、という言い方が正しいのかもしれません。

どの曲もダークで攻撃的ではあるものの、基本となるのはミディアム〜スローナンバー。ダークの質感は90年代のものというより、現代的と呼んだほうがいいのかな。そしてメロディは非常にキャッチーで、そのへんは『ANTICHRIST SUPERSTAR』というよりは『MECHANICAL ANIMALS』に近い……んだけど、あそこまで作り込まれたポップ感はないかも。どこか突き放した感の強いメロディという点では、前作の延長線上にあると思います。

とはいえ、近年でもっともわかりやすい内容だし、我々がイメージするMARILYN MANSON像にもっとも近い1枚かな。ヘヴィでグラマラスでゴシック、そしてポップ。思えばあれから20年経ってるんだもの、マンソンだってあと2年もすれば50代に突入ですよ。そこも踏まえつつ、本作は時代が求める音と真正面から向き合きながら、自身の加齢ともしっかり向き合った意欲作なんじゃないかと思います。

あと、個人的には今後の彼に「Saturnalia」みたいなBAUHAUS路線(路線っつうか、まんまですが。笑)にもどんどんトライしてもらいたいな。今のテイストとすごく合ってると思うので、下手に過去の遺産を引っ張り出すよりも、こっち側で極端に地味でダークな作品にトライするのもありかと。

最近はライブ中、事故に遭遇したりと踏んだり蹴ったりのマンソン先生。このアルバムを携えて、また元気に竹馬に乗る姿を日本のファンにも見せてほしいところです。

P.S.
……なんてことを書いた数時間後に、トゥイギー・ラミレズ解雇というニュースが。理由が理由だけに……嗚呼。



▼MARILYN MANSON『HEAVEN UPSIDE DOWN』
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投稿: 2017 10 25 12:00 午前 [2017年の作品, Marilyn Manson] | 固定リンク

2017/10/24

OUTRAGE『Raging Out』(2017)

昨年末に連日更新を再開した際、自分のなかでひとつだけ基準を設けていました。それは「新譜、旧譜にかかわらず海外作品のみを取り上げる」ということ。過去の更新時にはそういった線引きはなかったのですが、どうしても国内アーティストは仕事で扱うことも多く、そこと内容が被ってしまうケースが多かったので、そこは差別化しようと思ったわけです。

が、そういうことも言ってられないくらい、これは絶対にここでも書かなくちゃいけないと強く思わせてくれた国内アーティストの新作に出会ってしまった。それが今回紹介するOUTRAGEのニューアルバム『Raging Out』でした。

カバー曲とオリジナルアルバムから構成された前作『GENESIS I』(2015年)から2年ぶり、オリジナルフルアルバムとしては『OUTRAGED』(2013年)から4年ぶりとなる新作。『GENESIS I』にはオリジナル曲5曲が収められていたし、今年2月に発表されたベストアルバム『XXX BOX』にも新曲が3曲含まれていましたが、やっぱり彼らに関してはフルアルバムで楽しみたい派なので、ずっと今回みたいなアルバムを待っていたのですが……いやはや、期待以上の出来で驚かされましたよ。

初のミニアルバム『OUTRAGE』から30周年という記念すべきタイミングに届けられた本作は、彼らのルーツが克明に刻み込まれた、ある意味では集大成的な内容。例えばオープニングを飾る「Doomsday Machine」なんて、ギターの泣きメロとブルドーザーのごとくパワフルなバンドサウンドが一体となって押し寄せてくる、黄金のパワーメタルチューン。歌メロの泣きっぷりも半端ないし、聴いてるだけで鳥肌が立ってくる。

かと思えば、“いかにも”なスラッシュナンバー「Hammer Down and Go」もあるし、METALLICA的なミディアムテンポ感に泣きメロとサイケデリックサウンドを掛け合わせた「Wake」も、どこからどう聴いてもMOTORHEADな「Hysteric Creatures」もある。正直彼らが“スラッシュ以前のルーツ”をこのタイミングにここまで見せてくれたことにも、とても驚かされました。

しかし、それが単なる焼き直しや懐古厨では終わっておらず、しっかり“今”の彼らの音として聴かせてくれる。彼らがどこからスタートして、今はどこにたどり着き、そして31年目以降どこに向かっていきたいのか、その指針となる“攻め”の1枚じゃないでしょうか。じゃなきゃ、ドラマチックなイントロから疾走感あるスラッシュナンバーで幕開けを飾る“黄金パターン”を崩してまで、「Doomsday Machine」のような楽曲でオープニングを飾ろうなんて思いませんもの。

若いファンも、そして往年のメタルファンもを納得させる、問答無用の1枚。『THE FINAL DAY』(1991年)や『LIFE UNTIL DEAF』(1995年)と並ぶ、彼らの代表作となるべき傑作の誕生です。



▼OUTRAGE『Raging Out』
(amazon:国内盤CD+DVD / 国内盤CD / iTunes

投稿: 2017 10 24 12:00 午前 [2017年の作品, Outrage] | 固定リンク

2017/10/23

FIVE FINGER DEATH PUNCH『WAR IS THE ANSWER』(2009)

アメリカ・ラスヴェガス出身の5人組バンドFIVE FINGER DEATH PUNCHが2009年秋に発表した2ndアルバム。本作はBillboardアルバムランキングにて最高7位を記録し、100万枚以上を売り上げる出世作となりました(チャート的には以降の作品のほうが上位入りしてますが、セールス的には本作がもっとも売れた作品)。

いわゆる“2000年代のメタルコア”以降のサウンドの持ち主で、非常に“現代のアメリカ的なヘヴィメタル”と呼ぶことができると思います。事実、本作もヘヴィだけど適度にハネたリズムを持ち合わせており、聴けば「PANTERAスタート、LINKIN PARK経由」みたいな印象を受けるんじゃないでしょうか。

しかし、彼らが他のUSメタルコア勢と若干異なったのは、アイヴァン・ムーディー(Vo)の歌唱力と、ハンガリー出身のゾルタン・バソリー(G)の個性が反映されたメロディセンス。アイヴァンはデスボイスだけでなく、メロウなパートでも野太くて嫌味のない、男臭い歌声をしっかり聞かせており、特に「Far From Home」や「Walk Away」といったスローナンバーでその魅力を全力でアピールしています。

楽曲も先に挙げたようなグルーヴメタル的要素を軸にしつつも、至るところから王道ハーロドック的な臭いがプンプンしてくる“新しいのにどこか懐かしい”作風。1曲1曲がコンパクト(基本3分前後)なのも良いし、とにかくスルスル聴き進められるんだけど、聴き流しできないようなフックもそこらじゅうに仕掛けられている。歌メロやギターちょっとしたフレーズやソロプレイからは泣きの要素も感じられ、叙情的なバラードもあればギターが泣きまくりのインストナンバーも登場するので、ヘヴィさ一辺倒なモダンメタルに苦手意識を持っている高齢メタルファンにも引っかかるんじゃないでしょうか。

さらに、そういった層にうってつけなのが、「Bad Company」のカバー。そうです、かのBAD COMPANYのデビューアルバムに収録されていた、あのミディアムテンポのブルースロックナンバーです。リリース当時、MVの影響もあってこの曲はそこそこのヒットになったらしく、事実僕もこのMVを観て聴いてみようと思ったのでした。

ちなみにこのMVは、彼らがイラクに駐在している米兵のために行ったツアーの様子を、ドキュメンタリータッチにまとめたもの。アルバムタイトルである『WAR IS THE ANSWER』というタイトル含め、いろいろ考えさせられるものがありますね……。

この手のバンドに偏見を持っている人にこそ知ってもらいたいバンドのひとつ。だって、近作ではロブ・ハルフォード(JUDAS PRIEST)と共演も果たしてしまっているんですから(まあロブのことだし、って返しはなしな)。



▼FIVE FINGER DEATH PUNCH『WAR IS THE ANSWER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2017 10 23 12:00 午前 [2009年の作品, Five Finger Death Punch] | 固定リンク

2017/10/22

TRIVIUM『THE SIN AND THE SENTENCE』(2017)

前作『SILENCE IN THE SNOW』(2015年)から2年ぶりに発表された、TRIVIUM通算8枚目のスタジオアルバム。彼らは大半のアルバムを2年間隔で発表してくれる働き者で、創作意欲に満ち溢れているグループなんだろうなと想像しています。中にはツアーに2年近くかけるバンドもいるというのに……あえて名前は出しませんが(笑)。

彼らは出世作となった2ndアルバム『ASCENDANCY』(2005年)と3rdアルバム『THE CRUSADE』(2006年)で同じプロデューサーを起用して以降、4th『SHOGUN』(2008年)から毎作プロデューサーを変えています。そこ結果なのか、以降のアルバムは毎回作風が少しずつ変化しているし、良い意味で『ASCENDANCY』で付いたイメージを払拭しようと奮闘しています。もしくは、アルバムごとに新たなことに挑戦しようと思い、そのスタイルにもっとも合ったプロデューサーを起用しているのかもしれませんが。

そんな本作でプロデュースを手がけるのは、LAMB OF GODの諸作やHATEBREEDGOJIRA、日本のVAMPSなどのプロデューサーとして知られるジョシュ・ウィルバー。実は彼、前作『SILENCE IN THE SNOW』ではミックスも手がけているので、正確では初顔合わせではありません。それもあってかわかりませんが、新作を初めて聴いたとき、久しぶりに「前作の延長線上にある内容、もしくは前作をブラッシュアップさせつつ、より攻撃的にした作風だなぁ」と感じました。前作でより正統派ヘヴィメタルバンド的側面を強めた彼らでしたが、新作ではそのカラーにブラックメタル的な攻撃性が加わることで、『SILENCE IN THE SNOW』を「モダンでヤワになった」と不満に感じていた人にも「おっ?」と思わせる内容に仕上がっているのではないでしょうか。

実はそのへん、新ドラマーのアレックス・ベントが加わったことも大きいのかなと。彼がどういうタイプのプレイヤーかは詳しく知らないのですが、きっと彼の個性が大きく反映されたビート感やアレンジなんだと思います。加えて、ちょうど昨年秋に1stアルバム『EMBER TO INFERNO』(2003年)のリイシュー盤がリリースされ、そこにアルバム前の初期音源も豊富に追加されたことから、バンドの原点を見直した可能性もあるのかなと。

とはいえ、基本的には『SILENCE IN THE SNOW』でやろうとしていたことのブラッシュアップ版のイメージが強く、前作が生理的に苦手という人には今回もダメかもしれませんが。まぁ、そもそも「『THE CRUSADE』以降のTRIVIUMってこういうバンドだったよね?」という気がするのですが、いかがでしょう? 特に『IN WAVES』(2011年)以降の彼らはメロディの質的にB級を脱したと思っていますし、サウンド的にも今作はモダンと王道の間を行き来するバランス感が絶妙。うん、前作よりも好き。前作も最初は良いね!と思っていたのに、しばらく経ったら聴く頻度が減っていたんですよ。単純に僕個人の好みの問題でしょうけど、ちょっと刺激が足りなかったのかな、と。なので、今作みたいなバランス感は大歓迎です。久しぶりに「ライブでたっぷり聴いてみたい!」と思える新曲ばかりなので、次こそは必ず来日公演に足を運ぼうと思っております。



▼TRIVIUM『THE SIN AND THE SENTENCE』
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投稿: 2017 10 22 12:00 午前 [2017年の作品, Trivium] | 固定リンク

2017/10/21

CARCASS『HEARTWORK』(1993)

CARCASSが1993年秋に発表した、通算4枚目のスタジオアルバム。当時の編成はジェフ・ウォーカー(Vo, B)、ビル・スティアー(G, Vo)、ケン・オーウェン(Dr)に現ARCH ENEMYのマイケル・アモット(G)。もともとはアモットを除く3人編成でグラインドコア/ゴアグラインドバンドとして活躍していたものの、前作『NECROTICISM - DESCANTING THE INSALUBRIOUS』(1991年/邦題は『屍体愛好癖』)からアモットが加わったことでツインギター編成になり、ギターリフで巧みに構築されたメタリックなバンドサウンドと、ギターソロをフィーチャーしたヘヴィメタル的方向性にシフトチェンジ。前作でも聴けたそのメロウな要素がより強化されたのが、本作『HEARTWORK』なわけです。

今となってはメロディックデスメタルというカテゴリーは、メタルファンの間で当たり前のように定着していますが、当時は“メロデス”なんて呼び名はまだ存在しておらず、単にCARCASSがデスメタル寄りのグラインドコアだったことから“メロディアスな要素が強いデスメタル”と認識されてしまったわけです。

確かに表題曲(名曲!)や「This Mortal Coil」あたりで聴けるツインリードは完全にヘヴィメタルのそれだし、メロディアスなギターソロも完全にあっち側。時折ブラストビートなんかも飛び込んでくるものの、ボーカルさえ歌メロをしっかり歌っていたらIRON MAIDENあたりにも通ずるものがあるんじゃないでしょうか。

『NECROTICISM - DESCANTING THE INSALUBRIOUS』が大好きだった自分からすると、この変化には正直最初こそ拒否反応を示しましたが、聴き込めば聴き込むほどにハマッていく自分がいたのも確か。「Heartwork」のリードなんて完全にコピーしてたもんなぁ。

グラインドコアから出発したバンドが、プログレッシヴなエクストリームメタル路線へと移行し、そこからさらに正統派HR/HM(例えばTHIN LIZZYIRON MAIDENなど)側のカラーを強めていった。本作はアルバムごとに変化と進化を繰り返してきたCARCASSがアモットという個性を手にしたことで(それに呼応するかのごとく、ビルのプレイもHR/HM化したことで)到達した、ひとつの到達点だったのかもしれません。

結局アモットは本作発表後にバンドを脱退。翌1994年には念願の初来日が実現するのでした。アモット自身は自身のハードロック志向を追求するバンドSPIRITUAL BEGGARSを結成し、1996年には『HEARTWORK』でのメロデス路線をさらに極めるためのプロジェクト(のちのバンド)ARCH ENEMYを立ち上げることになります。

一方のCARCASSは3年後に5thアルバム『SWANSONG』を発表するのですが、それについてはまた別の機会に。

あ、ちなみに僕、ビル・スティアー派です。好きなギタリストを3人挙げろと言われたら、そのうちの1人に間違いなくビルをピックアップします。



▼CARCASS『HEARTWORK』
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投稿: 2017 10 21 12:00 午前 [1993年の作品, Arch Enemy, Carcass] | 固定リンク

2017/10/20

EMPEROR『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』(1997)

先ごろ『LOUD PARK 17』で二度目の来日が実現したEMPERORが、1997年に発表した2ndアルバム。『LOUD PARK 17』では本作発売20周年を祝して、本作『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』完全再現ライブが披露され、好評を博しました。

僕自身、EMPERORのアルバムに触れたのは彼らが解散してかなり時間が経ってから。いわゆるメロディックデスメタルには興味を持っていたものの、ブラックメタルまで行ってしまうとエクストリームすぎ、一部の“飛び道具”的存在以外には触れてきませんでした。そんな自分が本格的に彼らに興味を持ったのは3年前、EMPERORの1stアルバム『IN THE NIGHTSIDE ECLIPSE』(1994年)がリリース20周年を記念してスペシャルエディションで再発されたとき。ちょうどこの年には彼らの初来日も実現したタイミングでした。ここで過去作をすべて聴きあさり、特に2nd〜4th(ラスト)アルバム『PROMETHEUS: THE DISCIPLINE OF FIRE AND DEMISE』(2001年)をよく聴きました。

ホント、その程度のライトリスナーであることを先に告白してから、先に進みたいと思います。

今回の再来日に際して、久しぶりにこの『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』を何度も聴き返したのですが、自分的にこんなにも“どんずば”だったんだということを再確認できました。ブラックメタルならではのブラストビートやトレモロリフ、個性的なダミ声ボーカルが登場するものの、本作はそれだけでは終わらない、もっとプログレッシヴな作風です。

またクラシックの要素がかなり強調されており、ボーカルも強弱を表現するかのように時にデスボイス、時にクリーントーンと巧みに使い分けられている。シンセも効果的に用いられ、パートによってはヘヴィメタルならではのドラマチックな展開や、王道中の王道ヘヴィリフ、またそれらを見事に組み合わせた聴きごたえのあるアレンジで、聴き手を飽きさせません。この手のバンドの楽曲は意外と単調になりがちで、そういった楽曲が連なることでアルバムをまるまる1枚聴くのは厳しかったりもするのですが、本作に関しては(いや、特にEMPERORに関しては)そんなことはまったくなく、この緩急に富んだ作品をじっくりと楽しむことができるはずです。

また、ブラックメタルというと“あえて”酷い録音状態で作品を残す傾向がありますが、このアルバムに関しては「できることなら、もっとクリアな音でも聴いてみたい!」と思ったのも本音。現状リマスター盤が流通していますが、もっとクリアにできたんじゃないの……と思ってしまいます。が、それだともはやブラックメタルではなくなってしまうんじゃないか、とも思うわけで、実はこれくらいのバランスが正解なのかなという気も。難しいところですね。

アルバム本編は全8曲で44分程度、現在はボーナストラック3曲が追加されていますが、まずはボートラなしで8曲を一気に聴いてみることをオススメします。メロデスに耐性があって、クラシカルでドラマチックなエクストリームメタルもイケるという人にはうってつけの1枚だと思います。



▼EMPEROR『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』
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投稿: 2017 10 20 12:00 午前 [1997年の作品, Emperor] | 固定リンク

2017/10/19

『LOUD PARK 17』DAY 2@さいたまスーパーアリーナ(2017年10月15日)

Loudpark17_b昨日のエントリーに続いて、こちらでは『LOUD PARK 17』2日目公演について書いていきたいと思います。なんのことかわからない人は、このひとつ前のエントリーをごらんください。


<DAY 2:10月15日(日)>

寝不足でラウパー初日に臨み、このまま帰宅して再びたまアリに戻ってくるようなことしたら、絶対に初日よりもひどい時間に起きるだろうなと思い、この日はさいたま新都心にて一泊。ライブ終了後20分以内には宿に着いて、さすがに笑いました。

で、15日。11時チェックアウトだったので、ギリギリまでホテルにいてOUTRAGEから始めようかなと思っていたのですが、10時半になった途端にシークレットアクトがBLACK EARTHだと知り、焦ってチェックアウトして会場へ。ドアtoドアで10分ちょっとで会場に着き、後半のみ観ることができました。よかった。


BLACK EARTH
ちょっと前のエントリーに書きましたが、BLACK EARTHとは初期ARCH ENEMYの面々が勢ぞろいしたスペシャルバンド。もともとは2年前のラウパーでのARCH ENEMYのステージに初代ボーカルのヨハン・リーヴァとクリストファー・アモット(G)がゲスト参加したことがきっかけで、昨年春に同編成でジャパンツアー敢行。先頃そのツアーの模様がDVD+CD化されたこともあり、今回のシークレットゲスト出演となったようです。「なんでシークレットにするんだよ! 名前出したほうが客入るし! なんなら行ったのに!」という人も多いようですが……僕はこの試み、嫌いじゃないです。フェスって「人で選ぶ」んじゃなくて、最終的には「器で選ぶ」ようになったら成功した証拠だと思うので……って話は置いておいて。残念ながら「Bury Me An Angel」も「Dead Inside」も観れませんでしたが、「Beast Of Man」の途中からなんとか会場入り。初のヨハンは……あれ、昔よりもデス声じゃん! いいじゃん!と自分の予想を裏切る仕上がり。後日、昨年のツアーのDVD+CDも購入しましたが、この20年近くでかなり鍛え上げられたんですね。納得。ラストの「Fields Of Desolation」、終盤のツインリードで思わず泣きそうに。ああ、早起きしてよかった……(いや、実際は早起きじゃないんだけど)。

OUTRAGE
久しぶりにライブで観るOUTRAGE。直近の新作『Raging Out』の出来が素晴らしかっただけにどうしても観たかったわけですが、オープニングから「My Final Day」「Madness」の連発にノックアウト。さらに新作から「Doomsday Machine」「Hammer Down and Go」と冒頭の2曲をやられて、勝手にガッツポーズ。「Death Trap」や「Under Control Of Law」といった初期の楽曲、現編成が復活して最初の1曲「Rise」と彼らが何者かを存分に理解できる選曲が続き、ラストは「Megalomania」でクライマックス。確かに短くて物足りなさはあったけど、代表曲&新曲を詰め込んだコンパクトな内容はフェスに最適だと思いました。いやぁ、良かった。

LOUDNESS
本当なら次のAPOCALYPTICAも観るつもりだったのですが、ここでBLACK EARTHのTシャツ買いに行ったり仕事をしたりと、いろいろ野暮用に。結局、ラストの「Nothing Elese Matters」の終盤を観たのみなので、レポートは割愛します。で、LOUDNESS。高崎晃さんが出てきてサウンドチェックをするのですが、すでにギターの音が他のバンドよりもデカイ(笑)。まぁ直前がAPOCALYPTICAだから余計にそう感じるのかもね……と思っていたら、オープニングのインストナンバー「Fire of Spirit」の時点で耳が……本当に音デカかった(苦笑)。さすがに昨日からの耳疲れもあったので、耳栓を使用してライブに。序盤は2000年代以降のモダンヘヴィネス系楽曲が並び、「The Sun Will Rise Again」「Metal Mad」といった比較的メロウな楽曲もあったのですが……後半の「Crazy Nights」「In The Mirror」「Crazy Doctor」「S.D.I.」といった80年代の楽曲とどうしても比較してしまい……リフは最近の楽曲もカッコ良いのに、メロが弱いんだよなと改めて感じてしまったわけです。まあこのメロが現代的と言われてしまったら返す言葉もないのですが、僕としてはやはり……うん。そこだけが本当に勿体ないと思うんです。あと、『LIGHTNING STRIKES』30周年のバックドロップを使ってるのに肝心の同作からの代表曲がなかったり、二井原さんのルックスが完全にMETALLICAのジェイムズになっていたりでいろいろ驚きました。

DEVIN TOWNSEND PROJECT
デヴィン・タウンゼンドを観るのは、たぶん90年代後半のSTRAPPING YOUNG LADだったかソロだったかで来たとき以来。だからほぼ20年ぶりでした。最近のアルバムもほとんど聴いてなかったんだけど、なるほど、こういう音なのね、と感心して観てました。かなりプログレッシヴメタルっぽい雰囲気で、デヴィンの声もかなりよく出ているし、キーボードの人以外みんなスキンヘッドなところ含め、いろいろ気になりました。昨年リリースされた最新作、聴いてみます。

BLACK STAR RIDERS
今年発売された3rdアルバム『HEAVY FIRE』もなかなか良かったし、そもそもTHE ALMIGHTYTHIN LIZZYも好きなので、ここは観ておかないと。リッキー・ウォリック(Vo, G)含むトリプルギター編成は見応えあるし、音はそれまでの出演バンドと比べれば軽いんだけど、今の自分の耳には優しい存在。リッキーの男臭いボーカル、スコット・ゴーハム(G)のソロプレイ含め、ブリティッシュ&アイリッシュハードロックの王道感が強く出ていて好印象でした。オリジナル曲に含めて、THIN LIZZY「The Boys Are Back In Town」のカバーも飛び出し、これもまったく違和感なし。そこに、真の意味でTHIN LIZZYを継承したことを強く感じました。もし今度単独来日したら、もっとじっくり観てみたい。そう素直に思えました。

CRADLE OF FILTH
昔から聴いてるのに、気づいたらライブを観るのは初めて? 自分でも意外でした。女性ボーカルも随所にフィーチャーした、シンフォニックなブラックメタルなんでしょうけど、前日のEMPERORとは完全なる別モノ。本人たちも「ブラックメタルというよりはエクストリームメタル」と言ってるようですし、現在は独自のスタイルを築き上げたってことなんでしょうね。ダニ・フィルス(Vo)の高音デスボイスは圧巻の一言で、「ああ、これ本当に自前で出してるんだ」と感心してしまいました。変な話ですが。選曲はリリースされたばかりのニューアルバム『CRYPTORIANA – THE SEDUCTIVENESS OF DECAY』からは1曲のみで、『NYMPHETAMINE』(2004年)からの曲多め。アルバムを全部聴いてるわけではないので知らない曲もあったものの、そのドラマチックな曲構成には完璧に惹きつけられました。これはぜひ単独でも観てみたいかも。

MESHUGGAH
もしかして彼らをライブで観るのって、2008年の『LOUD PARK 08』での初来日公演以来? っていうか、それ以降って来日してないですよね? 前回の来日からの9年間で新作、2枚しか出してないですし。その彼らも、45分のセットで7曲を披露……したのですが、不思議なことに、彼らの楽曲(主にギターの音)を聴いてると……眠くなるんですよね。いや、彼らのことは大好きなんですが、ずっと聴いてると寝落ちしそうになるという。そういえば、前回の来日公演でもたったまま寝そうになったわ……特にミドルテンポの楽曲に多いのですが、そやって周波数的なものが影響することってあるんでしょうか。たまたま自分の波長的に、彼らのギターサウンドがそこに合致してしまうとか。名前は出せませんけど、同系統のテンポ感&サウンドを持つ他のバンドのライブでも寝落ちしそうになったこと、何度もあるのですよ。これ、誰かに科学的検証をしてほしいです。と、ライブとは全然関係ない話になってしまいましたが、後半テンポアップしてからはまた目が覚め、彼らのライブにのめり込んでいったのでした……演奏は最高でした。文句なし。またすぐに来てください、マジで。今度は寝ないように頑張るので。

SABATON
2年前の『LOUD PARK 15』で初来日を果たした彼ら。大きさ含め完全に戦車そのもののドラムセット(戦車の上にドラムセットがある)や、古今東西の戦という戦を題材にした楽曲の数々、そしてカッコ良いんだけどどこかコミカルで親しみやすいルックスやパフォーマンス、今回も最高以外の何モノでもなかったです。前回からギタリストが1人交代していますが、基本やることは変わらず。終盤、最新アルバム『THE LAST STAND』収録曲で日本の戦を題材にした「Shiroyama」が披露され、『サイレントヒル』などのゲーム音楽を手がける作曲家・山岡晃さんがギターでゲスト参加。おそらくその場にいた多くのメタルファンが「誰?」と思ったでだろうリアクション、忘れません。そんなサプライズも含め、前回以上の盛り上がりを見せたSABATON。いい加減に単独来日を決めていただきたい。絶対に彼ら、“新世代のACCEPT”としてもっと人気を集めるはずだし、なんならメディアがもっとだ偉大的に取り上げるべき。それくらいのことをしてほしいですよね、今後のためにも……。

GENE SIMMONS BAND
KISSのジーン・シモンズが初のソロツアーを開始すると聞いたときは、これまでに出した2枚のソロアルバムからの曲が半分、残りはKISSの自分ボーカルの曲なんだろうなと思っていたら、予想に反して“ほぼKISS”、あるいは“演奏のうまいメンバーを集めた、ひとりKISS”だったという(笑)。「Deuce」「Parasite」という初期KISSナンバー2連発にのけぞり、「I Love It Loud」で大合唱……のはずが、実はこの会場にいる大半のメタルキッズは、そこまでKISSを通ってないんだなということに気づくわけです。コーラス、ちょっと違うぞって……。まあそれは良しとして、その後も「Cold Gin」なんていうおなじみのジーン曲が続くのですが、驚いたのは「Do You Love Me」というポール・スタンレー曲や「Shout It Out Loud」みたいにポールとジーンが歌パートを分け合う曲まで披露されたこと。バンドメンバーが優秀なので、しっかりポール役もこなせるわけですね。後半は「ヘヴィメタルの前にKISSあり」とジーン自らの宣言にギョッとした「War Machine」(火吹きなし)や、最新アルバム『MONSTER』収録曲の「Wall Of Sound」といったレア曲も登場。『LOVE GUN』収録の「Got Love For Sale」も意外な選曲で驚かされました。「Watchin' You」「She」をライブで久々に聴けたのも、ファンとしては嬉しいかぎり。ラストはおなじみの「Rock And Roll All Nite」なのですが……ここでファンをステージに上げてお祭り騒ぎ。これ、先日のDURAN DURAN来日公演におけるCHICでも同じ場面に遭遇したのですが……盛り上げ役でステージに上がってる一般の皆さん、写メ撮りまくり(苦笑)。大スターと同じ舞台に立てる喜びは痛いほど理解できるのですが、演奏してるメンバーとツーショット撮影始めたりするの、はっきり言ってみっともないですよ。ケータイがなかった時代は、みんなもっと一緒に盛り上げることに徹していた記憶があるんですが……時代なんですかね。悪くは言いたくないんだけど、やっぱりあれだけは受け入れられないっていうか苦手です。というわけで、最後の最後で苦い気分でライブを見終えることに。

MICHAEL SCHENKER FEST
大好きなKISSのジーンをあんな気持ちで見終えるなんて。ここはもう、“神”に最後のひと盛り上げをしてもらうしかない。そんな気持ちでした。とはいえ、僕はそこまでシェンカーに思い入れがある人間ではなく、ちょっと前のエントリーでも書いたように、リアルタイムで聴き始めたのはMcAULEY SCHENKER GROUPから。代表作はそれなりに聴いてるし、代表曲はほぼ知ってる。だけど世代なのか、マイケル・シェンカーというギタリストにはそこまで惹かれなかったんですよね。僕よりもひとつ上の世代が熱心に聴いている印象。そもそも僕、ギター云々よりもやっぱりボーカルや曲が魅力的であることが大前提で、そこにすごいギタリストが参加してたら尚良しって人間なので。なんて予防線を張ってから話を進めますが……

いや、すげえ良かった! ああ、神ってこういうことか、と初めて実感&納得しました。2曲目「Into The Arena」のプレイだけでもう圧巻……散々音源では聴いてきたこの曲も、生で観ると&聴くとまったく違う印象を受けるんだから不思議。この曲、こういう表情を持っていたのかって。ああ、これ好きだわ、このギターじゃなきゃダメだわ、って。もうね、この1曲だけでノックアウトでした。その後、ゲイリー・バーデンやグラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーが順番に出てくるのですが、ゲイリーはさておき(笑)、グラハムは無駄に声がデカイし、今年の12月で70歳だというのにあの声量&高音にはただただ驚くばかり。それに続くロビンもまた声が出ていて……この人、こんなに歌うまかったんだ、と見直しました。さらに圧巻だったのは「Save Yourself」。もともと大好きな曲なんですが、シェンカーのギターが泣きまくり(歌いまくり)のところを、それを邪魔せず、なおかつ自己主張するロビンのボーカルにうっとり。すげえです。

で、さらにさらに鳥肌ものだったのが、UFO「Rock Bottom」でのシェンカーのギターソロ。中盤に5分くらい弾きまくってたんだけど、もうね、ずっと聴いてたいと思った。ああ、やっぱりどんなアーティストも生で観ないと答え出せないな、って改めて実感させられました。この人は音源じゃなくて、ライブの人なんだね。20数年前にUFOで観たときは正直そこまで惹かれなかったんだけど(それもあって、以降そこまで熱心に聴いてこなかったんですが)、この日の彼は水を得た魚のように胸に突き刺さるフレーズを、次々に叩き込んでくるわけです。

この時点で終演予定の21:30をゆうに超えており、最後に全出演者がステージに揃って終わるかと思いきや、シェンカーの「One more?」の一言でダメ押しの「Doctor Doctor」! 結局2時間近いほぼフルスケールのショーを見せてくれたわけですよ。本当にありがたい!(セットリストには、さらに「Lights Out」も載っていたので、時間が許せばそれもあったのかも……ゴクリ)

こうして最後の最後、シェンカーに全部持っていかれた今年のラウパー。2日目はマイケル(・アモット)に始まりマイケル(・シェンカー)で終わった、なんとも清々しい1日でした。今年は『OZZFEST』も『KNOTFEST』もなさそうですし、5月に予定されていた『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』も中止になっちゃったしで、メタルファンにとってはなんだかなーな1年でしたが、僕自身はこの2日間ですべてが報われた気持ちです。確かに今年は1ステージ(3rdステージの「EXTREME STAGE」が)減ったため、出演者数は減ってしまいましたし、それなのに例年と同じチケット代はちょっと無理があるんじゃないの?という声も理解できます。でも、それでも元を取った!と思えるだけのパフォーマンスをたくさん観ることができたので、個人的には満足しております。

往年の大物がたくさん出てくれるのはありがたいですが、ニューカマーにも注目する機会を与えてほしいですし、もっと言えば日本のフェスなのに日本のバンドの扱いがあまりよろしくなかったりなど気になる点もたくさんあるのですが、もう12回もやったんだから、そろそろ変化が必要な気もします。そういう意味では、今回のシークレットアクトはその一環だったのかもしれませんね。もし来年も開催されるのでしたら、そのへんもっとテコ入れしていただきたいなと勝手に思っております。



▼MICHAEL SCHENKER『MICHAEL SCHENKER FEST LIVE: TOKYO INTERNATIONAL FORUM HALL A』
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投稿: 2017 10 19 12:00 午前 [2017年のライブ, Arch Enemy, Black Earth, Black Star Riders, Cradle of Filth, Devin Townsend Project, Gene Simmons, Graham Bonnet, KISS, LOUD PARK, Loudness, McAuley Schenker Group, Meshuggah, Michael Schenker, Michael Schenker Group, Outrage, Sabaton] | 固定リンク

2017/10/18

『LOUD PARK 17』DAY 1@さいたまスーパーアリーナ(2017年10月14日)

Loudpark172年ぶりに『LOUD PARK』に行ってきました。2015年は2日目のみの参加でしたが、今回は本当に久しぶりの2日通しでの参加。いつ以来だろうと振り返ってみたら、なんと2009年(JUDAS PRIESTSLAYERがヘッドライナー)以来だったみたいです(笑)。2011年から1日のみ開催が2年続きましたが、それもあってか1日のみ参加というのも結構あったんですよね。

というわけで、せっかくなので久しぶりにメモ程度のレポを残しておこうかと思います。基本はSNS等でつぶやいたコメントが基になっていますので、がっつりしたレポートは各メディアでの本格的なレポートにてご確認ください(笑)。

では、このエントリーでは初日について書いていきたいと思います。


<DAY 1:10月14日(土)>

当日朝6時まで原稿を書いていたため、オープニングアクトAldiousからの参加は断念。せめてL.A.GUNSは観たい……ということで、頑張って9時台に起床。ギリギリ12時開始のL.A.GUNSには間に合いました。


L.A.GUNS
1曲目が3rdアルバム『HOLLYWOOD VAMPIRES』のオープニングトラック「Over The Edge」で面喰らう。勢いよく始めるかと思ったら、このエモいヘヴィロックからかよ、と。ステージをよく見ると、左に昔のトレイシー・ガンズっぽいコスプレしたギタリスト、右に……アメリカ南部のモダンヘヴィネス系バンドにいそうなむさ苦しいギタリスト。あれ、どっちがトレイシーだ?……残念ながら右側でした(笑)。以降は新作『THE MISSING PEACE』から「Speed」やったり1stアルバムから「No Mercy」やったりしましたが、「Killing Machine」みたいな曲もあったりで、特に初期にこだわった感じではなし。あ、2nd『COCKED & LOADED』の曲が多かったです。ラストは「Rip And Tear」。あれ、「Sex Action」は? ということで、個人的には物足りないセトリでした(もともとのセトリには中盤に「Sex Action」、入ってたんですけどね)。

ANTHEM
いきなり「Bound To Break」始まりはズルい! そりゃあ盛り上がりますよ。以降は新し目の曲が続き、中盤「Hunting Time」から怒涛の流れ。ラストは“ANTHEM版「Painkiller」”こと「Onslaught」で締めくくり。短かったけど、久しぶりに堪能できました。

BRUJERIA
あのBRUJERIAが来日!ってだけでも大興奮。そりゃあ開始前から、観客の熱も上がりますよね。メンバーは当然覆面なんですが、ベースの方がどう見てもNAPALM DEATHの……いやなんでもないです(笑)。ゴリゴリ&大音量のグラインドコアと、サークルモッシュで暴れる血気盛んなオーディエンス、それを遠目で眺める自分。ああ、ラウパーに帰ってきたんだなと改めて実感しました。MCは基本スペイン語(という設定)ですが、ところどころに英語が混じっているのに苦笑。“Fuck ドナルド・トランプ”コールで会場の気持ちがひとつになったり、このバンドらしいマリファナコールにニヤニヤしたりと、改めて面白いバンドだなと思いました。

WINGER
たぶん生で観るのは『IN THE HEART OF THE YOUNG』(1990年)のツアー以来だから……いやいや、深く考えるのはやめましょう。メンバーは3枚目『PULL』(1993年)からの編成なので、キーボードは抑えめでギター中心のサウンドメイキング。キップ・ウィンガー(Vo, B)に白髪が混じっていて時の流れを感じさせますが、演奏や歌自体はそこまで衰えを感じさせず。序盤は最近の楽曲〜代表曲〜新曲〜代表曲みたいな流れで、セットリストのバランスはまずまず。中盤に結成30周年に触れてからはデビューアルバム『WINGER』からの楽曲が連発されるのですが、「Heading For A Heartbreak」みたいなシンセ曲ではキップがシンセを弾きながら歌い、ギターのジョン・ロスがベースにシフトするんですね。なるほど納得です。あ、このジョンのギタープレイがレブ・ビーチとはまた違ったタイプのバカテクで好印象。本当に演奏がうまいバンドですね。ただ、BRUJERIAの後という出番はいただけません。最初、音が小さくでビックリしたし(実際BRUJERIAがデカすぎて、WINGERは序盤から音を作っていった感じ。終盤にはその音のバランスの良さに驚きました)。後半の「Heading For A Heartbreak」「Can't Get Enuff」「Madalaine」「Seventeen」の流れ、最高でした。が、スピーカーので音が途中で飛んだり、レブのギターソロでアンプが飛んだりとハプニングも連発。そこだけが勿体なかったです。

OPETH
グラインドコア(BRUJERIA)、AOR的ハードロック(WINGER)からの流れだと、プログレッシヴロック的志向のOPETHはよりソフトに感じられました。長尺の楽曲を演奏で起伏をつけていくのはWINGERにも通ずるものがあるのですが、いかんせんタイプが違う。最近の楽曲は特にソフト志向なので、途中で眠気も……が、ラストの13分超におよぶ「Deliverance」でデス声登場。大好きなアルバムのタイトルトラックに大興奮ですよ。ここで一気に気持ちが持ち返しました。なんにせよ、長丁場のフェスに寝不足で挑むのはよくないですね(苦笑)。

OVERKILL
ここ10年くらい、出すアルバムがことごとく力作でキラーチューンも多い彼ら。実際のライブも往年の代表曲以上に新曲で盛り上がっていたのが印象的でした。にしても、このバンドも35年近いキャリアの持ち主(しかも一度も解散、活動休止なし)なのに、このテンションの高さには驚かされます。初めてライブを観たのはもう30年近く前ですが、基本的に印象はまったく変わらず。逆に観客の彼らに対する盛り上がりは、年々高くなってるように感じました。ラストの「Fuck You」含め、「ああ、そうそうこれ。スラッシュメタルだね!」っていう最高のステージでした。

ALICE COOPER
アリスも2008年以来の来日以来9年ぶり。1990年の初来日以降、毎回観てますが、一番時間が短かったにも関わらず正直今回が一番良かったと思いました。1曲目の「Brutal Planet」には驚いたものの、以降はいつもどおりヒット曲連発。まさか序盤に「Poison」を持ってくるとは思ってもみませんでしたし、「Feed My Frankenstein」ではジャンボマックス(死語)ばりの巨大アリスが登場して爆笑(しかも歌声も身長に合わせてか低くなってる!)。おなじみのギロチンショーもあり、ラストは「I'm Eighteen」「School's Out」で大団円。オールドスクールなロックンロールや60分に凝縮されたショーはラウパーっぽくないのかもしれませんが、それでも最高と言わざるをえない究極のエンタテインメントショーでした。

EMPEROR
二度目の来日となる今回は、2ndアルバム『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』発売20周年を記念した完全再現ライブを披露。緑を基調とした照明はジャケットの世界観そのもので、この日出演したバンドの中でもサウンド的にはかなりオールドスクールなブラックメタルに括られるものの、存在感や説得力はほかにはない特別なものが感じられました。最初こそ「うおー!」と盛り上がっていたものの、気づいたら無言になっており、その世界観にじっくりと浸る自分がいるという。イーサーン(Vo, G)の知的な感じも素敵でしたし、あの佇まいがそのまま音になったかのような、プログレッシヴなブラックメタルサウンドは20年経った今も有効であることも強く実感させられました。アルバムを曲順どおりに再現し終えると、そこからは「Curse You All Men!」「I Am The Black Wizards」「Inno A Satana」と代表曲を連発。「I Am The Black Wizards」まではスタンド席でじっくり観ていたのですが、「Inno A Satana」が始まった瞬間我慢できずにアリーナまで走ったのはここだけの話です(笑)。

SLAYER
2年ぶりのSLAYERですが、前回はラウパーのほうが日程的に観られなかったため、STUDIO COASTでの単独公演を観たのでした。最新作『REPENTLESS』を軸にしたセットリストは前回に似た感じですが、なぜでしょう、今回のほうが良かった気がします。いや、もっと言うと……ここ10数年観た中で一番良かったんじゃないでしょうか。ゲイリー・ホルト(G)が加わって時間が経ち、編成としてもかなり安定したのもありますし、『REPENTLESS』の楽曲が今のバンドに馴染んだというのもあるんでしょうけど、なんていうか……僕らがよく知ってる“あの”SLAYERが戻ってきたといいましょうか……非常に抽象的な表現で申し訳ないですが、そうなんですよ。完全に戻ってるんですよ、今のSLAYER。帝王って言葉がぴったりな、あのSLAYERに。セットリストもよかったなぁ。90分のセットで20曲くらい詰め込まれていて、特に終盤、「Seasons In The Abyss」から「Hell Awaits」「South Of Heaven」「Raining Blood」「Chemical Warfare」「Angel Of Death」という怒涛の流れは文句なしでした。ぶっちゃけ、首がもげましたもん(笑)。



▼SLAYER『REPENTLESS』
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投稿: 2017 10 18 12:00 午前 [2017年のライブ, Alice Cooper, ANTHEM, Brujeria, Emperor, L.A.Guns, LOUD PARK, Opeth, Overkill, Slayer, Winger] | 固定リンク

2017/10/17

ARCH ENEMY『BLACK EARTH』(1996)

今やスウェーデンが誇る人気メロディックデスメタルバンドに成長したARCH ENEMYが、1996年に発表したデビューアルバム。当初このバンドは1枚こっきりのプロジェクトとして誕生したのですが、本作に対する評価が日本で高かったこと、また翌1997年に実現した初来日公演(CATHEDRALジャパンツアーへの帯同)での高評価が後押しし、本格的なバンドとして継続。以降、フロントマン(からフロントウーマンへ)の交代などありましたが、現在に至るまで日本をはじめヨーロッパなどで人気を博しています。

メロディックデスメタル自体、ARCH ENEMYの首謀者であるマイケル・アモット(G)がCARCASS時代の名作『HEARTWORK』(1993年)で提示したスタイルが原型などと言われていますが、このARCH ENEMYでマイケルはひとつの完成形を見せたと言っていいかもしれません。

レコーディングメンバーはマイケルのほか、実弟のクリストファー・アモット(G)、現在もバンドに在籍するダニエル・アーランドソン(Dr)、そしてヨハン・リーヴァ(Vo, B)。ヨハンはベース兼任となっています(クレジットにもこう書いてあります)が、実際にはマイケルが弾いていたようです。

さて。最近のARCH ENEMYSか知らない人には、男性ボーカルが歌っている事実に驚くかもしれませんが、この頃このバンドに出会った人間からすると、のちのアンジェラ・ゴソウ嬢の加入のほうが衝撃だったわけですよ。だって、先に音だけ聴かされて「いいボーカル入ったなぁ」と思ってたら、それが女性だと後日発表されたわけですから。まあ、そのへんの話についてはまた改めて。

で、本作ですが、やっぱり今聴いても良いですね。最近の楽曲ほど洗練されておらず、野暮ったさすら漂う楽曲の数々からはパンキッシュさすら感じられます。それもこれも、ヨハンのボーカルによるものが大きいのではないでしょうか。やれ下手だの言われていましたが、あの当時のデスメタルってこれでも十分に許された雰囲気もありましたよね? あれ、そんなことなかったっけ?

ちなみに、僕は最初にこのアルバムを聴いたときは、オープニングの「Bury Me An Angel」にこそのめり込みましたが、それ以外はちょっと拒絶反応があったかも……ぶっちゃけ、このバンドのことを本気で良いなと思ったのは3枚目の『BURNING BRIDGES』(1999年)からで、それ以降に聴き返したら「あれ、やっぱり良いじゃん」と思えるようになった口なので。

「Bury Me An Angel」は言うに及ばす、続く「Dark Insanity」もカッコ良いし、ヘヴィなミドルチューン「Eureka」も「Idolatress」もMETALLICA以降のHR/HMが持つカッコ良さが独自の解釈でしっかり昇華されている。かと思うと「Demoniality」みたいにドゥーミーなインストがあったり、アコースティックテイストの叙情的なインスト「Time Capsule」からクライマックスの「Fields Of Desolation」(エンディングのツインリードに鳥肌!)へと続いていくエンディングもあって……あれ、これ名盤じゃん(笑)。

ご存知のとおり、ヨハン、マイケル、クリストファー、ダニエル、そして現在もメンバーのシャーリー・ダンジェロ(B)という『BURNING BRIDGES』時のメンバーが昨年、『BLACK EARTH』発売20周年を記念してARCH ENEMY名義ではない“BLACK EARTH”名義で日本公演を敢行。その模様を収めたライブDVD+CDを先日発売し、さらには『LOUD PARK 2017』2日目にシークレットアクトとしてサプライズ出演を果たしたばかり。幸い僕も数曲のみですが、彼らの勇姿を目にすることができました。残念ながら冒頭の「Bury Me An Angel」には間に合わなかったものの、ラストナンバー「Fields Of Desolation」はしっかり堪能できたので、本当に幸せでした……。

ARCH ENEMY自体、最新作『WILL TO POWER』も素晴らしかったですし、こうして初期メンバーで遊んだりもできるという意味では、現在非常に充実した状況なんでしょうね。まあ何はともあれ、このデビューアルバムは彼らの原点であると同時にメロディックデスメタルを語る上では欠かせない重要作なので、最近の彼らしか知らない人はもちろんのこと、90年代のメタルシーンがすっぽり抜けているという人にもぜひ聴いてもらいたい1枚です。

なお、本作は現在までに何度か再発されていますが、2010年代に入ってからリマスタリング&ボーナストラックを多数追加した新エディションも流通しております。ジャケットがオリジナルとは異なりますが、こちらのほうがオリジナル版よりもはるかに音の分離が良いので(特にギターが)、これから購入しようと考えている方はぜひ新エディションの購入をオススメします。



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2017/10/16

L.A.GUNS『THE MISSING PEACE』(2017)

2017年10月にリリースされた、L.A.GUNS通算11作目のオリジナルアルバム。2012年の『HOLLYWOOD FOREVER』以来5年ぶりの新作なのですが、本作は単なる新作とは意味合いが異なります。なんと、バンド創始者であるトレイシー・ガンズ(G)がフィリップ・ルイス(Vo)と15年ぶりにタッグを組んだ、初期からのファンにとっては念願の1枚なわけです。

どこかダークな雰囲気だった前作から、どことなく初期の彼らを思わせるサウンドへとシフトチェンジした本作。1stアルバム『L.A.GUNS』(1988年)のアートワークをオマージュしたジャケットからも伺えますが、それもそのはず、プロデュースをトレイシー・ガンズ本人が手がけているのですから。

ラフだけどタイトという絶妙なオープニングトラック「All The Same To Me」から始まり、先行トラックとして公開済みの2曲目「Speed」で一気にテンポアップ。DEEP PURPLE「Highway Star」から引用した歌詞やソロパートが含まれたこの曲は、モロに1stアルバムの頃の彼らを現代によみがえらせたような1曲。「No Mercy」とかあのへんの疾走チューンですね。これ、ライブで聴いたらカッコイイだろうなぁ……と思ったら、先日の『LOUD PARK 2017』でも披露されてましたね。ドライブ感の強いアレンジは、まさに今後のライブでも大きな武器になりそうです。

その後もヘヴィ&ダークな「A Drop Of Bleach」、タイトルはROLLING STONESだけど音はL.A.GUNSそのものな「Sticky Fingers」、オルガンをフィーチャーしたムーディーなバラード「Christine」、軽快なロックンロール「Baby Gotta Fever」で前半終了。後半戦もグルーヴィーでソウルフルなミドルチューン「Kill It Or Die」、初期というよりは最近のL.A.GUNSっぽい「Don't Bring A Knife To A Gunfight」、8分の6拍子による男臭いバラード「The Flood's The Fault Of The Rain」、パンキッシュなアップチューン「The Devil Made Me Do It」、1stアルバムに入ってそうな悲しげなヘヴィバラード「The Missing Peace」、アコギによるセンチメンタルな雰囲気からそのままハードな世界観へと延長していく「Gave It All Away」でアルバムは終了します。

こうやって通して聴くと、確かに要所要所で1stアルバムの香りや、音楽的進化を見せた2ndアルバム『COCKED & LOADED』(1989年)や3rdアルバム『HOLLYWOOD VAMPIRES』(1991年)の要素も含みつつも、しっかり“今のL.A.GUNS”を表現してくれているように思いました。思ったほどワイルドに疾走するタイプの曲は少なく、年相応に(笑)落ち着いたミドルテンポの楽曲が多かったり、後半にバラードタイプの楽曲が思ってた以上に含まれていたりと、なんだかんだでみんな大人になる=年をとるんだな、と改めて思いました。当たり前ですけど。

にしても本作。単なる同窓会で終わらなくてよかった。願わくば、このままの編成で活動を続けてほしいものです。



▼L.A.GUNS『THE MISSING PEACE』
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2017/10/15

GAMMA RAY『INSANITY AND GENIUS』(1993)

1993年秋にリリースされた、GAMMA RAY通算3作目のスタジオアルバム。ラルフ・シーパース(Vo)在籍時最後のオリジナル作品となりますが、個人的には本作が彼らのキャリア中もっとも好きだったりします。

例えばデビュー作『HEADING FOR TOMORROW』(1990年)は良くも悪くもHELLOWEEN時代を引きずっているように感じられたし、続く2ndアルバム『SIGH NO MORE』(1991年)は今聴くとそこまで悪くないんですが、リリース当時はそこまで良いと思えず……正直、この頃から彼らに対してあまり期待しなくなっていたのも事実。

ところが、この3枚目。新たなリズム隊、ヤン・ルバック(B)&トーマス・ナック(Dr)が加入したことで、全体的に若返ったような印象があります。楽曲にも勢いというか、全体的にパッションが強く感じられるものが多く、オープニングの「Tribute To The Past」から2曲目「No Return」、3曲目「Last Before The Storm」と怒涛の流れで、もうこの3曲だけでお腹いっぱい。楽曲的にもHELLOWEEN的というよりも、そのルーツでもあるJUDAS PRIESTあたりからの影響が強く感じられ、ようやくGAMMA RAYならではのオリジナリティを掴めたのかなと(もちろん1枚目の時点でも十分オリジナリティはありましたが、ここで確固たるものを掴んだと思うのです)。

4曲目からはバラエティに富んだ楽曲が並び、怪しげなイントロが印象的なミドルチューン「The Cave Principle」、シングルカットもされ文字どおりギターが狂ったようにのたうちまわる「Future Madhouse」、バンド名にもなったBIRTH CONTROLのカバー「Gamma Ray」(ダンサブルでクセになる1曲)、勇ましいアッパーチューン「Insanity & Genius」、静と動の対比が素晴らしいバラード「18 Years」、ディルク・シュレヒター(G/現在はB)がボーカルを務めるこれぞヘヴィメタルな「Your Tørn Is Over」、カイ・ハンセンが久しぶりにボーカルを担当したドラマチックな「Heal Me」、ラストにふさわしい軽快なメタルナンバー「Brothers」と、とにかく捨て曲なし。前作に対するメディアでの低評価を払拭する、「パワー」「スピード」「ドラマチック」などの要素を強調した力作だと思っています。

だからこそ、この先がどうなるのか楽しみにしていたのですが、ラルフがJUDAS PRIESTの新ボーカリストオーディションを受けるために脱退(結局、選ばれませんでしたが)。以後、カイがボーカルを兼任することになるのでした。

ちなみに本作、GAMMA RAY結成25周年企画として昨年、アニバーサリーエディションとして2枚組仕様で再発。DISC 2には初期の楽曲をカイのボーカルを含む現編成で再録したテイクや、JUDAS PRIEST「Exiter」のカバーなどが収録されています。ラルフも変な欲を出さずに、このバンドで“ロブ・ハルフォードの後任”ではなく“新世代のロブ・ハルフォード”を目指せばよかったのに。勿体ないなぁ。



▼GAMMA RAY『INSANITY AND GENIUS』
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投稿: 2017 10 15 12:00 午前 [1993年の作品, Gamma Ray] | 固定リンク

2017/10/14

METAL CHURCH『THE HUMAN FACTOR』(1991)

1991年春にリリースされたMETAL CHURCH通算4作目のスタジオアルバム。前作『BLESSING IN DISGUISE』(1989年)からボーカルがマイク・ハウに代わり新編成となって2作目、レーベルも新たに「Epic Records」に移籍して発表された気合いの1枚です(結局、Epicからは本作のみでしたが)。

聴いてもらえばわかるように、どこをどう切り取っても“ザ・ヘヴィメタル”なアルバム。いわゆるスラッシュメタル界隈から登場したバンドですし、初期のアルバムはその延長線上にあるサウンドでしたが、前作あたりで示した新境地(大作志向など)が本作で一気に開花。また、新たな挑戦も至るところに散りばめられており、とにかく聴きごたえのある作品に仕上げられています。

オープニングの「The Human Factor」や3曲目「The Final Word」にような疾走感のあるメタルチューンには、スラッシュというよりもパワーメタルと呼ぶにふさわしい貫禄が漂ってますし、「In Mourning」「In Harm's Way」のようなバラードタイプの楽曲も深みを増している。しかし、本作でもっとも注目すべきなのはリード曲としてMVも制作された「Date With Poverty」の存在でしょう。

ヘヴィだけど非常にグルーヴィーなリズムは、本作から半年後に発表されるMETALLICAブラックアルバムにも通ずるものがあり、その後の流行を先取りした1曲と言えるでしょう。しかし、スラッシュメタルの延長線上から登場した彼らがこういった楽曲をプレイすることに対し、当時は賛否あったのも事実。「メタルバンドのリズムがハネてどうするんだよ!」というごもっともな意見をよく耳にしましたし、実際この年を境にメタル勢の人気はグランジ勢やRED HOT CHILI PEPPERSなどに取って代わられるわけですから、見方によっては寝返ったと思われちゃうのかなと(でも、そういったバンドのブレイク作より早く、本作はリリースされたわけですが)。

とはいえ、メタルファン的には劇的な展開の「Agent Green」やスラッシーな「Flee From Reality」「The Fight Song」、ヘヴィなミドルチューン「Betrayed」など、とにかく聴きどころの多い1枚であり、本作をMETAL CHURCHの代表作に挙げる人も少なくないようです(もっとも、デヴィッド・ウェイン時代こそ真のMETAL CHURCHというリスナーにはマイク・ハウ時代は認められないのかもしれませんし、このバンドの本質を考えたら1986年の2nd『THE DARK』こそが名盤という声も理解できるのですが)。

本作リリース後、彼らはJUDAS PRIESTアリス・クーパーMOTORHEAD、DANGEROUS TOYSと『OPERATION ROCK 'N' ROLL TOUR』というパッケージツアーに参加するのですが、湾岸戦争のあおりを受けてツアーは失敗。ブラックアルバム発表後のMETALLICAのツアーにもサポート参加するのですが、うまく起動させることができずインディー落ちしてしまいます。ホント、時代に翻弄されまくり。勿体ないですね。



▼METAL CHURCH『THE HUMAN FACTOR』
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投稿: 2017 10 14 12:00 午前 [1991年の作品, Metal Church] | 固定リンク

2017/10/13

WINGER『PULL』(1993)

1993年春にリリースされた、WINGER通算3作目のスタジオアルバム。デビュー作『WINGER』(1988年)、2nd『IN THE HEART OF THE YOUNG』(1990年)がともにミリオンヒットとなり、シングルヒットも連発させた彼らでしたが、1991年以降HR/HMの人気が下降線をたどり、代わりにグランジやモダンヘヴィネス系バンドが台頭し始めたなか、WINGER自体にも大きな変化が訪れます。それは、キーボーディスト&ギタリストのポール・テイラーの脱退でした。

長期にわたるツアー生活に疲弊したポールがバンドを離れると、バンドはキップ・ウィンガー(Vo, B)、レブ・ビーチ(G)、ロッド・モーゲンスタイン(Dr)の3人でレコーディングに突入。プロデューサーは過去2作を手がけたボー・ヒルから、DEF LEPPARDなどで知られるマイク・シプリーに変更し、時流に合わせたタフさを取り入れつつもWINGERらしいキャッチーでプログレッシヴなサウンドを作り上げていきます。

ベーシックトラックをキーボードレスの編成で制作したためか、本作は過去2作以上にギターオリエンテッドなアルバムに仕上がっています。特にアコースティックギターの使い方が非常に効果的で、オープニング曲「Blind Revolution Mad」の冒頭や、「Down Incognito」「Spell I'm Under」「The Lucky One」「Who's The One」などではアコギが曲の軸になっており、バンドとしての新たな挑戦として受け取ることがでいます。特に「Down Incognito」ではブルースハープもフィーチャーされており、産業ハードロック的イメージからの脱却を図っているかのようです。

また、「Spell I'm Under」のようなプログレッシヴなバラードでは、以前ならシンセを前面に打ち出すことでプログレハード的テイストが強まっていたところを、アコギをはじめとするギターサウンドを軸にしたことでよりヘヴィさが増している。「Blind Revolution Mad」にしろ「In My Veins」にしろ演奏自体は非常にテクニカルでプログレッシヴな部類の楽曲なんですが、生々しさと音の太さが過去以上。ダウンチューニングを採用した「Junkyard Dog (Tears On Stone)」なんて、完全にALICE IN CHAINS以降のグルーヴメタル/グランジの影響が感じられますし。

けどね、こういった楽曲を他のバンドがやったらきっと“グランジ/モダンヘヴィネスの二番煎じ”で済まされるところを、キップ・ウィンガーが歌うことでかろうじて“らしさ”を保てているから、WINGERの作品として成立している。こういうときにこそ、改めて個性的なフロントマン/シンガーを要することの重要さを実感させられるのではないでしょうか。

確かに全体的に地味ですし、世間的な評価も高いほうではない。けど、あの時代の空気感を切り取った意欲作として、僕はお気に入りの1枚に挙げることが多いんですよね。むしろ最近のラウドロックやヘヴィ系が好きな人なら、案外いけるんじゃないかと思うのですが……いかがでしょう?



▼WINGER『PULL』
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投稿: 2017 10 13 12:00 午前 [1993年の作品, Winger] | 固定リンク

2017/10/12

McAULEY SCHENKER GROUP『PERFECT TIMING』(1987)

UFOを除くマイケル・シェンカーの作品を最初に取り上げるのが本作でいいのか、という疑問をひとり感じているのですが、仕方ないです。だって、リアルタイムで初めてちゃんと聴いたマイケル・シェンカー関連のニューアルバムがこのMcAULEY SCHENKER GROUPの1stアルバム『PERFECT TIMING』(1987年)なんですから。

マイケル・シェンカーはつくづくシンガーに恵まれないギタリストでした。ゲイリー・バーデンは決してうまいタイプではないし、続くグラハム・ボネットはアルバム1枚のみと短命だったし、すると再びゲイリー・バーデンが出戻りするし。もっと華があって歌唱力のあるHR/HM系シンガーが入ったらアメリカでもブレイクできるんじゃないか……きっとそんなことを考えたことあるHR/HMファン、少なくないはずです。

そんなマイケルがロビン・マッコーリーという新たなシンガーを迎え、バンド名もMICHAEL SCHENKER GROUPの“ワンマンバンド体制”からMcAULEY SCHENKER GROUPという“二頭体制”へと改正。しかも海外では本格的なHR/HMブームに突入し、話題性十分で鳴り物入りの再デビューを飾ったわけでした。

リードシングルとなった1曲目「Gimme Your Love」を初めて聴いたとき、正直MSCにそこまで詳しくない自分でさえも「これは違うんじゃないか……」と若干モヤモヤした気持ちを抱えたものですが、とはいえ曲自体はよくできたアリーナロックで、ロビン・マッコーリーもこういった派手でキラキラした音に合った湿り気のある歌声なので気持ちよく楽しめたわけです。

で、アルバムを通して聴くと、確かに時流に合わせた産業ロック的な楽曲もいくつかあるものの、マイケルらしい泣きメロを持つ楽曲も含まれており(本作からの2ndシングル「Love Is Not A Game」はまさにそれ)、また初期MSGを思わせるロックンロールナンバー「No Time For Losers」やストレートな疾走HRナンバー「Get Out」、ファンキーなギターストロークが楽しめる「Don't Stop Me Now」など佳曲多し。楽曲クレジットを見ると、ベーシストのロッキー・ニュートンが関わった曲にポップなものが多いようで(シングル2曲やパワーバラード「Time」)、特に「Gimme Your Love」なんてマイケルがソングライティングに関わってないですからね。そういう意味でも、こちらのMSGは完全なる“バンド”だったのかもしれませんね。

それ以前のMSGと比較すると完全に別モノかもしれませんが、これはこれで意外と楽しめるんですよね。今から30年前のあの時代だったからこそ作り上げることができた、偶然の1枚。だけど侮るなかれ(全米95位とヒットはしなかったけど)。

あと、MICHAEL SCHENKER GROUPの音源はストリーミングサービスにもデジタル配信にもあるのに、なんでMcAULEY SCHENKER GROUPのアルバムは1枚もないんでしょうね……本当に勿体ない。本作とか続く『SAVE YOURSELF』(1989年)は聴いておいて間違いないアルバムなので、ぜひ配信のほうもお願いしたいものです。



▼McAULEY SCHENKER GROUP『PERFECT TIMING』
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投稿: 2017 10 12 12:00 午前 [1987年の作品, McAuley Schenker Group, Michael Schenker] | 固定リンク

2017/10/11

GENE SIMMONS『ASSHOLE』(2004)

KISSジーン・シモンズが2004年に発表した通算2作目のソロアルバム。前作『GENE SIMMONS』(1978年)は当時のKISSのメンバー4人が同時にソロアルバムを発表するという、いわば企画チックな側面がありましたが、本作はフルメイクKISSが復活して以降、枠にハマったサウンドスタイルでの活動に対するある種の捌け口として制作された、完全にジーンの(良くも悪くも)自己満足的アルバムです。だって、このタイトルですもの……(苦笑)。

……と、言い切ってしまっていいものかアレですけど、その理由は聴いてもらえば理解していただけるんじゃないかと。とにかく、内容が“ごった煮”なんです。90年代前半のKISSが見せたラウド&オルタナティヴ路線を軸にしつつも、70年代のKISSらしい豪快なハードロックあり、ダンスあり、ヒップホップあり、AOR的歌モノあり、シンフォニック風変わりなポップソングあり、ベックにも通ずるダウナーなオルタナフォークあり……ね? これだけ聞いたらカテゴライズ不能でしょ? そもそも、ジーン・シモンズという策士はそういう奴ですからね。頭が良い(商才に長けている)んですよ。

けど、それがときには仇となることもある。それがまさに、このアルバムなんじゃないでしょうか。ぶっちゃけ、ジーン・シモンズというラベルがなければこんなアルバム、“焦点ずれまくりのオナニー的作品”と切り捨てられるのが関の山でしょうし。けど、“あの”ジーン・シモンズが26年ぶりにソロアルバムを作りました、と知らされてから聴けばなんとなく納得できてしまう……気がする。うん、不思議です。

KISS的なハードロック“のみ”を求める人には、本作はところどころ厳しい1枚かもしれません。が、KISSでジーンが書く/歌う曲が好きという人、1枚目のソロアルバムも気に入っているという人なら問題なく楽しめるんじゃないかと。確かにTHE PRODIGY「Firestarter」のカバーやら、ボブ・ディランやフランク・ザッパとの共作曲やらトリッキーな楽曲も含まれていますが、全体的にはヘヴィな曲よりもフォーキーでポップな楽曲のほうが印象に残るという、そんな“いかにもな”ソロアルバムです。思えばこの人、KISSの前身バンド・WICKED LESTERでもフォーキーな音楽をやってましたしね。

また、先の「Firestarter」ではデイヴ・ナヴァロ(JANE'S ADDICTION)がギターを弾いていたり、他にも現KISSのエリック・シンガー(Dr)、元KISSのブルース・キューリック(G)や、リッチー・コッツェン(G)、ドゥイージル・ザッパ(G)など興味深いゲストプレイヤーも多数参加しているので、プレイ面も問題なく楽しめるはず。

ちなみに、『LOUD PARK 2017』にGENE SIMMONS BAND名義で出演するジーン。残念ながら直近のツアーでは本作からの楽曲は1曲も披露されていないようで、KISSの楽曲が中心とのこと。ソロ曲は1枚目から「Radioactive」のみみたいですね。だったらそっちを取り上げたらよかった……と全部書き終えてから後悔しているところですが、本作は本作で言うほど悪くないので、チャンスがあったらぜひ聴いてみてください。珍味らしい味わい深さ満載なので。



▼GENE SIMMONS『ASSHOLE』
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投稿: 2017 10 11 12:00 午前 [2004年の作品, Gene Simmons, Jane's Addiction, KISS, Prodigy, The, Richie Kotzen] | 固定リンク

2017/10/10

SLAYER『LIVE: DECADE OF AGGRESSION』(1991)

SLAYERの結成10周年を記念して、1991年秋に発表された2枚組ライブアルバム。DISC 1には1991年7月、フロリダでのライブから11曲が収録され、DISC 2には1990年10月のロンドン公演および1991年3月のカリフォルニア公演からの抜粋10曲が収められています。

タイミング的には1990年秋に5thアルバム『SEASONS IN THE ABYSS』を発表した直後で、内容的にも同作の楽曲を軸にしつつも過去の代表曲が余すところなく収められたグレイテストヒッツ的選曲になっています。特にDISC 1はショートサイズのライブをまるまる収めたようなセットリストで、当時のツアーの1曲目「Hell Awaits」からラストナンバー「Angel Of Death」まで、息つく間もないほど怒涛の展開。“SLAYERとはなんぞや?”という人に対して“This is SLAYER!”と提示するにはぴったりの1枚かと思います。

派手なキメ曲が並ぶDISC 1に対し、DISC 2の曲順にはそこまでのストーリー性は感じられませんが、ライブの要所要所には欠かせない楽曲が揃った通好みの選曲。緩急飛んだ曲順で、途中に挿入されるごく初期の楽曲にみられるヤケクソ感は今聴いても最高としか言いようがありません。そして最後の最後を締めくくるのが、初期の名曲中の名曲「Chemical Warfare」ですから。ここで一気に昇天しなかったら嘘ですよね。

ちょうど1990年12月に実現した初来日公演も「Hell Awaits」からスタートしており、曲順こそ異なるものの当時演奏された楽曲はほぼ収録されているんじゃないかと。3分の1くらいは今でも演奏される機会の多い曲ばかりですし、なによりも当時の勢いに乗ったSLAYERのライブ演奏を追体験するのは最適のアイテムだと思うので、これからSLAYERを聴いてみようという人(特に今年の『LOUD PARK 2017』でSLAYERを初体験するビギナー)は、最新作『REPENTLESS』(2015年)とあわせてチェックすることをオススメします。

なお、本作はトム・アラヤ(Vo, B)、ケリー・キング(G)、ジェフ・ハンネマン(G)、デイヴ・ロンバード(Dr)というオリジナル編成によるもの。本作リリース後にデイヴが脱退し、オリジナル編成は10年近く崩れることになります。そして、ジェフが亡くなったのでこの編成でのライブはもう二度と見られないわけです……そう思うと、この頃をリアルタムで体験している人たちにはいろいろとこみ上げてくるものがあるんじゃないでしょうか。

ちなみに、本作の1991年当時の日本盤(日本フォノグラム製で、ジャケットも現行のバージョンとは異なる)にはボーナストラックとして、 DISC 2に「Skeltons Of Society」「At Dawn They Sleep」の2曲を追加収録(M-6「Born Of Fire」のあとに追加)。中古市場で現在もよく見かけるし安価で手に入るので、どうせならこちらを探してみるといいんじゃないかと思います。



▼SLAYER『LIVE: DECADE OF AGGRESSION』
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▼SLAYER『LIVE: DECADE OF AGGRESSION(日本フォノグラム盤)』
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投稿: 2017 10 10 12:00 午前 [1991年の作品, Slayer] | 固定リンク

2017/10/09

KADAVAR『ROUGH TIMES』(2017)

ドイツ・ベルリン出身のトリオバンドKADAVARによる通算4作目のスタジオアルバム。2010年結成とキャリアはまだ浅いのですが、それに反して音はかなり濃厚です。僕自身は2013年発売の2ndアルバム『ABRA KADAVAR』は去年、ストリーミングサービスで触れていたのですが、“今のバンド”とは思えないほどにレイドバックした不可思議なサウンドにギョッとしたことをよく覚えています。

そういった感じで、改めて新鮮な気持ちで接した彼らの新作。サウンド、演奏ともに70年代ハーロドック/サイケデリックロック的なスタイルで、録音も当時を再現したかのようなヴィンテージ感が感じられ、再生方法によっては本当に“今のバンド”だって気づかないんじゃないでしょうか。

「○○に似てる」という表現はとても簡単だと思いますが、むしろそういう先入観なしで聴いたほうが純粋に楽しめる作品だと思います。ジャンル的には確かにオールドスタイルのハードロックに、スペーシーなサイケデリックテイストをまぶしたもので、アレンジも決して凝りに凝ったものではない。なんでしょう、素材の味を活かすために余計な味付けを加えないこだわりといいましょうか、そういうシンプルさが本作からは伝わってきます。

また、彼らのサウンドってストーナーロックにも通ずるものがあるなと。BLACK SABBATH的という意味ではなく、80年代以降のストーナーロックと呼ばれるバンドたちの系譜にあるという点で、共通点が多いと思うのです。あ、あと(「○○に似てる」という表現はしないと言っておきながらアレですが)、BUDGIEあたりに似たプログレ感も感じられますよね。ゴリゴリしたハードロックを軸にしながらも、どこかプログレッシブというところも共通しているし。その感覚をもっとヨーロピアン、そう、ドイツ寄りにするとKADAVARみたいな音になるのかなと。そう思いました。

にしても、このビジュアル……MV含め、これを全部モノクロで編集して、音もモノラルに変換したら、完全に勘違いしちゃいますね。どういった生活を送ったら、この音に到達するのか。ぜひ機会があったら聞いてみたいものです。

ちなみに、日本盤にはボーナストラックとしてTHE BEATLES「Helter Skelter」のカバーを追加収録。このセレクト、普通っちゃあ普通ですけど、アルバムを通して聴くとこのカバーが一番メジャー感の強い曲というのもまた笑えます(微笑ましいという意味で)。



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投稿: 2017 10 09 12:00 午前 [2017年の作品, Kadavar] | 固定リンク

2017/10/08

MOTHER LOVE BONE『APPLE』(1990)

1990年7月にリリースされた、シアトル出身の5人組ロックバンドMOTHER LOVE BONEのメジャーデビュー作にして唯一のオリジナルアルバム。のちにグランジと呼ばれるようになるシアトル産オルナタティヴロックバンドでは、SOUNDGARDEN(1989年9月発売の『LOUDER THAN LOVE』)に次ぐ、ALICE IN CHAINS(1990年8月発売の『FACELIFT』)より先の、2番目のメジャーデビュー組となります。

このバンドは元GREEN RIVERのブルース・フェアウェザー(G)、ストーン・ゴッサード(G)、ジェフ・アメン(B)、元SKIN YARDのグレッグ・ギルモア(Dr)、元MALFUNKSHUNのアンドリュー・ウッド(Vo)が1988年にシアトルで結成。ちなみにGREEN RIVERの上記3人以外のメンバーはMUDHONEYを結成しており、SKIN YARDにはグレッグの前にSOUNDGARDENのマット・キャメロンが在籍していたり、NIRVANAの1stアルバム『BLEACH』(1989年)などのプロデューサーとして知られるジャック・エンディノ(G)が参加していたことでも知られています。そう考えると、MOTHER LOVE BONEって当時のシアトルシーンではスーパーバンドなんですよね。まぁ“スーパー”の規模感がかなり小さいですけど。

サウンド的には、古き良き時代の土着的アメリカンハードロックにちょっとファンキーさを加えたもの。時期的にRED HOT CHILI PEPPERSのブレイク前夜ですが、あちらより“ハネて”おらず、むしろハードロックファンには受け入れやすいスタイルじゃないかと思います。

楽曲の半数以上をストーンとジェフが単独で書いており、今聴いてみると2人がこのバンドのあとに結成するPEARL JAMとの共通点がいろいろ見え隠れします。GREEN RIVERを解散したあと、2人がどういう音楽をやりたかったのか、この時点である程度固まっていたわけですね。歴史的資料としても非常に価値の高い1枚です。

が、それ以上にシンガー、フロントマンとしてのアンドリューの個性の強さに目が(耳が)行くわけで、特に当時の動画を目にするとアンドリューという人はその後勃発するグランジシーンの人というよりも、それ以前のHR/HM文脈で語れる人、もしくは同時代のレッチリやFAITH NO MOREと並ぶ存在になれた逸材だったのではないでしょうか。残念ながら、今となっては限られた映像しか残されていないため、正しくは「その片鱗を感じる」という程度なんですが……本当に勿体ない。

実はこのアルバム、本来は1990年3月に発売が予定されていましたが、発売予定日の数日前にアンドリューがオーバードーズにより脳死状態に陥り、数日後の3月19日に死亡。これを受けてバンドも解散し、7月にリリースされた頃にはすでにMOTHER LOVE BONEはこの世に存在しなかったのです。彼らが伝説のバンド、アンドリューが伝説のシンガーと呼ばれるのはそういった所以があるのですが、なんとも不運なバンドですよね。

ちなみに本作リリースから2年後の1992年には『MOTHER LOVE BONE』と題したコンピレーションアルバムもリリースされています。こちらには『APPLE』収録曲全曲と、『APPLE』より前に発売されたEP『SHINE』(1989年)収録曲のすべてがまとめられているので、今から購入するならこちらのコンピ盤のほうがいいかもしれません。



▼MOTHER LOVE BONE『APPLE』
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▼MOTHER LOVE BONE『MOTHER LOVE BONE』
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投稿: 2017 10 08 12:00 午前 [1990年の作品, Mother Love Bone, Pearl Jam] | 固定リンク

2017/10/07

CHRIS CORNELL『EUPHORIA MORNING』(1999)

1997年に突如解散を発表したSOUNDGARDEN。そのフロントマンであったクリス・コーネルが1999年に発表した初のソロアルバムが本作。2001年には元RAGE AGAINST THE MACHINE組と新バンド・AUDIOSLAVEを結成するため、続く2ndソロアルバムは同バンドの活動が止まった2007年になってしまい、そういう意味でも本作はあの時期のクリスの嗜好を知れる格好の題材でした。

SOUNDGARDENのメインソングライターであったクリスなわけですから、ソロアルバムとはいえバンド時代のテイストは少なからず感じられるはず。そう思ってリリース当時、初めて本作に接したのですが、結果は聴いてもらったとおり。ハードロックもグランジもここにはあらず、もっと穏やかな、言ってしまえばAOR的な香りすらする落ち着いた作風でした。

SOUNDGARDEN時代の盟友マット・キャメロン(Dr)が1曲のみドラムを担当していますが、基本的にはプロデュースを担当したナターシャ・シュナイダー&アラン・ヨハネス(後者は今年発表されたマット・キャメロンのソロアルバムにも参加)周りの人たちで構成。大半の楽曲はジョシュ・フリースがドラムを叩き、それ以外のベーシックトラックはクリス、ナターシャ、アランらが担当しているため、いわゆるバンド感は皆無。アコースティック主体で、よりパーソナルな印象を受ける内容に仕上げられています。

3年後に発表されるAUDIOSLAVEのデビューアルバムでは、そのクリスの声の衰えにショックを受けましたが、このアルバムの時点ではまだ“SOUNDGARDENのクリス・コーネル”そのもの。声を張り上げて歌うような楽曲はバンド時代ほど多くはありませんが、適度に力強く歌いながらも、基本は彼の魅力がもっとも伝わりやすい低・中音域をメインにしたナンバーが中心で、非常に聴いていて気持ちよいものばかり。そういった点では“いかにもソロアルバム”といった印象で、もっと言ってしまえばそれ以上でもそれ以下でもないという……悪い言い方をしてしまうと、印象に残りにくい作品かもしれません。

もちろん、じっくり聴き込めば1曲1曲の完成度の高さに驚かされるわけですが、パッと聴きではそこまでダイレクトに伝わるような即効性はないので、注意が必要かも。とはいえ、SOUNDGARDEN時代のアコースティックベースの楽曲が気に入っていた人なら、一発で気にいるはずです。

久しぶりに引っ張り出して聴いてみましたが、SOUNDGARDENの解散前ラストアルバム『DOWN ON THE UPSIDE』(1996年)からの流れで聴くと、実は意外と入っていきやすいのかも、という1枚です。

ちなみに本作、2015年に再リリースされた際にはタイトルを『EUPHORIA MOURNING』と綴りを変更。当初はこちらの綴りで発表したかったものの、『EUPHORIA MORNING』のほうが良いタイトルじゃないかということで、こちらに決定した経緯があるようです。



▼CHRIS CORNELL『EUPHORIA MORNING』
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投稿: 2017 10 07 12:00 午前 [1999年の作品, Chris Cornell, Soundgarden] | 固定リンク

2017/10/06

DOKKEN『DYSFUNCTIONAL』(1995)

1994年に再結成を果たしたDOKKENが、翌1995年春に海外で発表した通算5作目のスタジオアルバム。ここ日本では前年末に『DOKKEN』というアルバムタイトルで、曲順を変え一部の収録曲を差し替えてリリースされていた作品です。

もともとはドン・ドッケン(Vo)のソロアルバムとして制作を進めていた作品なのですが、契約の際に元Geffen Records、当時Columbia Recordsの名物A&Rだったジョン・カロドナーからジョージ・リンチ(G)にギターを弾かせたらどうか、そしてこのアルバムをDOKKEN名義で出したほうが売れるんじゃないかなどと言い寄られ、結果としてジェフ・ピルソン(B)、ミック・ブラウン(Dr)、ジョージという黄金期メンバーが揃い、DOKKEN再結成が実現。“メタル冬の時代”だった1995年という時代にメジャーレーベルのColumbiaから晴れてリリースされたわけです。

このコラムでは日本のみでリリースされた『DOKKEN』ではなく、正式な5thアルバムとして発表された『DYSFUNCTIONAL』について触れていきたいと思います。

『DOKKEN』も『DYSFUNCTIONAL』も、名作『BREAKING THE CHAINS』(1981年)、『UNDER LOCK AND KEY』(1985年)に関わったマイケル・ワグナーがプロデュース。そう聞けば誰もが「往年のDOKKENよ、再び」と思うことでしょう。しかし、完成したアルバムはそのイメージとは程多いもの。もともとはドンのソロアルバムだったことを考えれば、まぁ頷けなくもないのですが……非常に内向的でダーク、モノトーンなサウンドとHR/HM的なハイトーンボーカルなしという……そうですね、時代的なものもあって、どこかグランジ風と言えると思います。

実際「What Price」なんて“HR版THE DOORS”みたいですし。先行発売された『DOKKEN』では1曲目だったこの曲を初めて聴いたときは、正直顔が“無”になったこと、今でもよく覚えています。

ところが、US版だとこの曲はラスト前の10曲目。このポジションで聴くと不思議と悪くない。とはいえ、US版はそもそも1曲目が「Inside Looking Out」という時点でDOKKENらしくないので、どっちもどっちなんですが。

至るところからPEARL JAMSOUNDGARDENあたりからの影響が感じられるオルタナHR/HM的作風に、突如飛び込んでくるジョージのフラッシーなギターソロ。この噛み合ってない感じがまた居心地の悪さを生み出していて、最高です(悪い意味で)。いかにもDOKKENらしいアコースティックバラード「Nothing Left To Say」もありますし、なぜかシングルヒットした7分以上もあるダークなロックンロール「Too High To Fly」、LED ZEPPELIN風ハードロック「Long Way Home」、サイケなミディアムバラード「The Maze」もある。1曲1曲はそこまで悪くないんだけど、アルバムとして並んだときに醸し出される違和感。なんだろう、やっぱり曲順が悪いんだろうか。

ミックスの途中みたいなサウンドだった日本限定アルバムより、僕はしっかり音が整理され、後から新しいソロなども加えられたUS版のほうがまだ幾分気に入っています。80年代のアルバムと比べれば聴く頻度は低いものの、それでも年に1、2回は引っ張り出して聴きたくなる。そんな珍味的な魅力を持つアルバムではないでしょうか。そこまで嫌いになれないんだよね、これ。



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投稿: 2017 10 06 12:00 午前 [1995年の作品, Dokken] | 固定リンク

2017/10/05

JOSH TODD & THE CONFLICT『YEAR OF THE TIGER』(2017)

BUCKCHERRYが2015年夏に発表した7thアルバム『ROCK 'N' ROLL』はそれまでの生々しいまでにパンキッシュなロックンロールとは異なる、文字通りの“ロックンロール”に立ち返った作品集で、個人的には好みだったものの、世間的には不評だったようです。それもあってなのか、今春にはオリジナルメンバーにしてジョシュ・トッド(Vo)とバンドを維持し続けてきたキース・ネルソン(G)、そして復活後にドラマーとして加入したイグザビエル・ムリエルがBUCKCHERRYを脱退。サポートメンバーを迎えて夏のツアーを乗り切ったようですが、どう考えても存続は難しいのではないでしょうか。

そんなタイミングに、ジョシュとスティーヴィー・D(G)がバンドと並行してレコーディングを続けてきたプロジェクトが、この9月にデビューアルバムをリリース。最終的にはJOSH TODD & THE CONFLICTというバンドとして、しばらくはこちらの活動に専念するようです。

ご存知のとおり、ジョシュはBUCKCHERRYが一度解散した際、ソロ名義で『YOU MADE ME』(2003年)というアルバムを1枚だけ発表しています。同作はBUCKCHERRYのイメージを引き継ぎつつも(そりゃそうだ、彼の声こそがバンドの持ち味のひとつだったんだから)、ニューメタル以降のヘヴィ&ラウドなサウンドを取り入れたモダンな仕上がり。正直、BUCKCHERRYよ再び……と思っていたファンには厳しい内容だったと思います。

そこを踏まえつつ、今回の新バンドのデビューアルバムと向き合ったのですが、思った以上に“俺たちのBUCKCHERRY”な仕上がりだったので肩透かしを食らったというか。いや、嬉しかったんですけどね。

ヘヴィな要素は要所要所から感じられつつも、本作で展開されているのはハードドライヴィングでパンキッシュなロックンロール。『ROCK 'N' ROLL』でBUCKCHERRに少し足りなかったものがここで解消されている気がしました。もしかしたらその“足りなかったもの”は、レーベル的にはアウトなものであり、そこに嫌気がさしてキースは脱退したんじゃ……なんて邪推したくなるくらい、“これをBUCKCHERRYでやれよ!”と思ってしまう内容なのです。

攻めもあれば、「Rain」みたいにヘヴィなバラードもあれば、「Good Enough」のようにダークなアコースティックナンバーもある。ダンスミュージックとハードコアをミックスしたような「The Conflict」、ファンキーなヘヴィロック「Atomic」、さらにプリンスの「Erotic City」のカバーまであるんだから(過去にBUCKCHERRYがプリンスの「Cream」をカバーしてたのはジョシュの趣味だったのかしら)、ファンが聴きたかったBUCKCHERRYをジョシュとスティーヴィーの2人が具現化してくれたと言っても過言ではないでしょう。

きっとJOSH TODD & THE CONFLICTのライブではBUCKCHERRYの楽曲も披露されることでしょう。シングルギターバンドなので完全な再現は難しいし、演奏できる曲も限られるかもしれませんが、ひとまずジョシュがまだまだ前のめりでロックし続けたいという意思が強く感じられるこのバンドの成功を陰ながら祈りたいと思います。



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投稿: 2017 10 05 12:00 午前 [2017年の作品, Buckcherry, Josh Todd, Josh Todd & The Conflict] | 固定リンク

2017/10/04

ALICE COOPER『PARANORMAL』(2017)

アリス・クーパー通算27作目のスタジオアルバム。全米22位と大健闘した前作『WELCOME 2 MY NIGHTMARE』(2011年)から6年ぶりのオリジナルアルバムとなりますが、その間にジョニー・デップやジョー・ペリー(AEROSMITH)と組んだHOLLYWOOD VAMPIRESのアルバム『HOLLYWOOD VAMPIRES』が2015年に発表されているので、新作としてはそこまで久しぶりという印象もなかったりするのですが、そこは御大が本気で臨んだオリジナルアルバム。当然、心して向き合うわけです。

全10曲で34分というトータルランニングにまず驚かされるのですが、1曲目「Paranormal」を聴いて、その不穏な空気感とメリーゴーランドのように展開していくアレンジに「これぞ!」と膝を叩きたくなるくらいワクワクするわけです。確かに『WELCOME 2 MY NIGHTMARE』も良い作品だと思いましたが、個人的にはちょっと長すぎかな、というのと曲調の幅が広すぎて散漫に感じてしまったので、もうそりゃあここで大きな期待を重ねるわけです。

で、2曲目「Dead Flies」以降は1曲目とは若干異なるテイスト……70年代初頭、ALICE COOPERというバンド名義だった時代のガレージロックサウンドが展開されていきます。正直1曲目を聴いた時点で求めていた路線ではなかったものの、これはこれで……僕、1989年に『TRASH』で復活して以降の作品で、それほど高く評価されていない『THE LAST TEMPTATION』(1994年)が一番好きだったりするので、本作の路線は個人的に大々的に支持したいくらいなので、本作の路線はアリだと思っています。

この路線に着地したのって、例えばHOLLYWOOD VAMPIRESからの流れだったり、本作のドラムをU2のラリーが担当していたり、オリジナルメンバーのデニス・ダナウェイ(B)、ニール・スミス(Dr)、マイケル・ブルース(G)で録音するなどのアイデアが生まれたからなんでしょうかね。ゲストプレイヤーとしてZZ TOPのビリー・ギボンズ(G)や DEEP PURPLEのロジャー・グローヴァー(B)、そしてスティーヴ・ハンター(G)といった豪華なのか地味なのか微妙な布陣が参加していますが、それによって特に派手に仕上がることもなく。それでいいんでしょうけどね、本作の場合は。

また本作は永久仕様としてボーナスディスクが付いており、そちらにデニス、ニール、マイケルのオリメンが参加した新曲2曲と、「No More Mr.Nice Guy」「Under My Wheels」「Billion Dollar Babies」「Feed My Frankenstein」「Only Women Bleed」「School's Out」と往年(+90年代前半)の代表曲のライブテイクを聴くことができます。新曲2曲はちょっとユルユルかな……というシンプルなロックンロール。本編に入れるには軽すぎるし、ちょっとしたお遊びとして楽しむには十分かな。このボーナスディスクの内容を足しても70分には満たないし、全部1枚にまとめられるじゃんと思う人も多いみたいだけど、やっぱりアリス自身はディスク1の10曲で完結させたいという思いがつy買ったんじゃないかな。オリメンとの2曲はEPみたいな扱いで、アルバム本編とは別という。アルバム本編でも9曲目「Rats」がオリメンで演奏された楽曲だけど、こっちはもっとソリッドな仕上がりで、本編の流れに沿っているので収録を決めたと。そういうことなんでしょう。

とうわけで、本気で支持したいこのアルバム。全米32位と前作には及びませんでしたが、僕は大好きですよ。非常にライブ向きですし。

そういえば、まもなく『LOUD PARK 2017』で久しぶりに来日しますね。前回の来日は2008年3月。単独公演とは違ってフルセットを楽しめるわけではありませんし、そうなると新曲もどれだけ削られるのかわかりませんが、今は素直に久しぶりの新作と久しぶりの来日に対して、素直に酔いしれたいと思います。



▼ALICE COOPER『PARANORMAL』
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投稿: 2017 10 04 12:00 午前 [2017年の作品, Alice Cooper, Deep Purple, U2, ZZ Top] | 固定リンク

2017/10/03

MAD SEASON『ABOVE』(1995)

ALICE IN CHAINSのレイン・ステイリー(Vo)、PEARL JAMのマイク・マクレディ(G)、SCREAMING TREESのバレット・マーティン(Dr)、THE WALKABOUTSのジョン・ベイカー・サウンダーズ(B)により1994年に結成されたグランジ界のスーパーバンドMAD SEASON。その彼らが1995年春に発表した、唯一のスタジオアルバムが本作『ABOVE』(邦題は『生還』)です。

PEARL JAMのギタリスト&ソングライターのひとりと、ALICE IN CHAINSの空気感・世界観をその歌声で一気に作り上げるフロントマン。この2人の邂逅が一体何を生み出すのか、そりゃあ当時相当気になったものです。そもそも、ALICE IN CHAINS自体がその頃は活動が不安定な時期でしたから、余計にね(その不安定の原因はレインその人なんですけど)。

アルバムのオープニングを飾る「Wake Up」は、7分半にもわたるブルージーな1曲。これ1曲で、MAD SEASONがPEARL JAMでもALICE IN CHAINSでもないことが証明されるわけですが、劇的な展開をするでもなく、今にも消えそうな炎がゆらゆらと燃えるかのようなスタイルといえばいいのでしょうか。そのサウンドの上を、あの爬虫類的なレインの歌声がうごめき回るわけです。しかも、ALICE IN CHAISほど攻撃的ではなく、それでいて生き物なのか作り物なのか正体不明な存在感を醸し出しながら。

1曲、1曲と聴き進めるうちに、楽曲自体はPEARL JAMのメンバーが作っていることはなんとなく理解できるようになりました。しかし、レインという個性的なシンガーの声が乗ることにより、新たな何かがそこに誕生する。レインも自身のバンドより肩の力を抜いて、脱力気味で気持ち良さげに歌っており、時々力強く声を張り上げたりもしますが、それもあくまで味付け程度。決して音数が多くないバンドアンサンブルとともに、主旋律に被さるハーモニーが不協和音と美しい和音の間を行き来する。派手さは皆無ながらも、なぜか心のど真ん中を突いてくる。それがMAD SEASONが持つ不思議な魅力なんだと思います。

また、このバンドのサウンドを分析することで、改めてALICE IN CHAINSはジェリー・カントレル(G, Vo)が作る楽曲こそがバンドの骨格なんだという事実、そしてPEARL JAMはエディ・ヴェダー(Vo)という稀代のシンガーが歌うことでPEARL JAMとして成立するんだというごく当たり前のことに気づかされるわけです。

アルバム中盤、「Lifeless Dead」あたりから“いかにも”な曲が登場することで、ああそうだった、彼らはグランジシーンから登場したんだったということを思い出す。MAD SEASONはそれくらい、あのシーンの末期から誕生した異端児だったのです。本当はこのアルバムに続く新作を、このメンバーで聴きたかったけど、それも今では叶わぬ夢。1999年にはジョンが、2002年にはレインが亡くなっているため、オリジナル編成での復活は実現不可能に。2015年にはクリス・コーネルダフ・マッケイガンを迎えたスペシャル編成での復活がありましたが、そのクリスも……。つくづく不運な宿命を持ったバンドだったんですね。



▼MAD SEASON『ABOVE』
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投稿: 2017 10 03 12:00 午前 [1995年の作品, Alice in Chains, Mad Season, Pearl Jam] | 固定リンク

2017/10/02

MATT CAMERON『CAVEDWELLER』(2017)

SOUNDGARDENPEARL JAMのドラマーとして知られるマット・キャメロンがキャリア初となるソロアルバムをリリースしました。

本作ではプロデューサーとしてのみならず、ソングライターやシンガー、ギタリスト、ベーシストなどとしてマルチな才能を発揮しておりますが、ドラムは叩いておらず、デヴィッド・ボウイのアルバム『★ (BLACKSTAR)』(2016年)でプレイしていたマーク・ジュリアナと、同じく『★』に参加したティム・ルフェーブル(B)がリズム隊を担当しているそうです(ティムは一部楽曲のみで、他はマットが演奏)。

どんな音になるのかと思いドキドキしながら再生してみると、序盤は意外と普通のロック……と言っては語弊があるかな。まぁあれです、マットの現在のメインバンドであるPEARL JAMからイメージできる、オーソドックスなロックとでも言えばいいんでしょうか。SOUNDGARDENほどハード&ヘヴィではなく、どこか内向的な空気が漂う落ち着いたアメリカンロック。うーん、うまく言語化できませんが、PEARL JAMが好きな人なら気にいるサウンドだと思います。

曲によってはアコースティックギターが前面に打ち出されていたり、かと思えばシンセを軸にした楽曲もある。ちょっとフュージョンぽいインスト曲「Into The Fire」、アバンギャルドなギターソロが登場する「One Special Lady」、もっともSOUNDGARDEN的と言えなくもないラストナンバー「Unneccesary」と個性的な楽曲もあるにはあるけど、あくまで中心となるのは歌。そのへんはPEARL JAMのイメージから外れないと思います。マットの歌声も悪くないし、変に声を張り上げることなく大人な雰囲気。どの曲も2〜3分台で、全9曲でトータル29分という非常に聴きやすいトータルランニングも良いと思います。

なお、「One Special Lady」後半に登場するギターソロをプレイしているのは、アラン・ヨハネスというチリ出身のマルチプレイヤー。調べてみるとこの人、クリス・コーネルのソロアルバム『EUPHORIA MORNING』(1999年)とか、元PEARL JAMのドラマー、ジャック・アイアンズのソロアルバム『ATTENTION DIMENSION』(2004年)とかにも参加している、シアトル界隈ともそれなりに縁がある人みたいですね。

アルバム後半が意外とニューウェイブの香りをさせるあたりに意外性はあるものの、最初にも書いたように全体的には“PEARL JAMのメンバーが作ったソロ作品”らしい内容で、極端に逸脱はしてないはず。プログレポップが好きな人は、特に「Into The Fire」「Real And Imagined」あたりは気にいるんじゃないでしょうか。僕はこの2曲と、先に挙げた「One Special Lady」の3曲が気に入っています。

ちなみに本作、CDでのリリースは今のところないみたいです。各配信サイトでのダウンドロード販売やストリーミング、そしてPEARL JAMオフィシャルショップで販売されているアナログ盤(一部、Amazonでも販売予定)で聴くことができます。



▼MATT CAMERON『CAVEDWELLER』
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投稿: 2017 10 02 12:00 午前 [2017年の作品, Matt Cameron, Pearl Jam, Soundgarden] | 固定リンク

2017/10/01

PRINCE『SIGN O' THE TIMES』(1987)

1987年春に発表された、プリンス通算9作目のスタジオアルバム。“PRINCE & THE REVOLUTION”名義で発表された『PURPLE RAIN』(1984年)、『AROUND THE WORLD IN A DAY』(1985年)、『PARADE』(1986年)を経て、ソロ名義では1982年の『1999』以来4年半ぶりのアルバム。しかも同作以来の2枚組作品(『1999』はアナログ2枚組でしたが、CD化の際に1枚に。『SIGN O' THE TIMES』はCDでも初の2枚組)でした。

世代的に『PURPLE RAIN』からプリンスの音楽に触れ、「曲はカッコ良いのに声が気持ち悪い」と思っていた、あの頃10代前半だったリスナー、多かったんじゃないでしょうか。まさに自分がそうで、『AROUND THE WORLD IN A DAY』は苦手意識のほうが勝ってしまいしばらく放置(高校生くらいまで)。が、『PARADE』収録の「Kiss」のファルセットはなぜかイケて、ハマってしまったクチでした(もっともアルバム自体は当時、そこまでのめり込めませんでしたが)。

で、『SIGN O' THE TIMES』。先行シングルのタイトルトラックの淡々とした曲調、まずこれにヤラレました。もはやこの頃になると声の気色悪さはほとんど気にならず、むしろこの声じゃないとダメ!とすら思えるように。確か、レンタルではなく初めて購入したプリンスのアルバムが本作だったと記憶しています。

全16曲、約80分というボリュームは当時の自分にとっては相当なものがありました。だって、情報量が多すぎて……単なるファンクや R&Bだけでなく、ポップやロック、ハードロック、ヒップホップ、サイケ、ソウルetc…いろんな要素詰まりまくりで、すべてを理解するには相当の時間を要したことを、今でもよく覚えています。ぶっちゃけ、今でも完全に理解しきれているかと言われたら微妙ですが、少なくとも20代になってしばらく経ってから、このアルバムの本当の凄味に気づいたんじゃないでしょうか。

本来は3枚の別々のアルバムだったものを、 THE REVOLUTION解散などを経てひとつの作品にまとめ込んだのが本作。これまでも1枚のアルバムの中にいろんな要素を詰め込んむ人ではありましたが、本作が過去の作品の比じゃなほどに雑多なのは、そういった理由もあるのかもしれません。にしても、やりすぎだろ!と思っちゃうほどに遊びまくり実験しまくり、なのに自然とするする聴けてしまう。

プリンスの声色も曲によってカラフルに変わっており、時には爬虫類系の声色で歌い、時にはファルセットでセクシーに歌い、ある時にはエフェクトかけまくりの歌声を披露する。もはや自身の声すらも楽器のひとつとして、自身の楽曲を最高の形で演出する。そういった意味では、この人はシンガーというよりも音楽家だったんだなと。

昔はハードでロック色が強く、パーティ感もにじませていたディスク2を気に入っておりましたが、最近はもっぱらいディスク1にやられまくり。やっぱりタイトルトラックの無機質感(密室ファンク!)といい、そこからパーティチューン「Play In The Sunshine」を経て「Forever In My Life」まで続く怒涛の流れは、本当に圧巻。これがあるから、ディスク2がより映えるということにも、改めて気づかされました。

本作をプリンスの最高傑作に挙げるファンも多いようですが、それも納得の内容。本作と続く『LOVESEXY』(1988年)、そしてその間にリリースされる予定だった『THE BLACK ALBUM』(1987年12月発売予定だったものの、直前に発売中止。1994年にようやく日の目を見ました)の3作は本当に神がかっていたんだなと、今さらながら時間しているところです。

ただ、ひとつだけ難点を挙げるとしたら、曲ごとに録音レベル(音量)が異なること。1曲目「Sign O' The Times」を基準に聴き始めると、続く「Play In The Sunshine」で急に音量が小さくなるし、その後も変動を繰り返し続けるという。まあこれすらも、聴き手を惹きつけるための戦略なのかな、なんて邪推してしまうわけですが(そんなことないでしょうけどね)。



▼PRINCE『SIGN O' THE TIMES』
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投稿: 2017 10 01 12:00 午前 [1987年の作品, Prince] | 固定リンク