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2017/10/19

『LOUD PARK 17』DAY 2@さいたまスーパーアリーナ(2017年10月15日)

Loudpark17_b昨日のエントリーに続いて、こちらでは『LOUD PARK 17』2日目公演について書いていきたいと思います。なんのことかわからない人は、このひとつ前のエントリーをごらんください。


<DAY 2:10月15日(日)>

寝不足でラウパー初日に臨み、このまま帰宅して再びたまアリに戻ってくるようなことしたら、絶対に初日よりもひどい時間に起きるだろうなと思い、この日はさいたま新都心にて一泊。ライブ終了後20分以内には宿に着いて、さすがに笑いました。

で、15日。11時チェックアウトだったので、ギリギリまでホテルにいてOUTRAGEから始めようかなと思っていたのですが、10時半になった途端にシークレットアクトがBLACK EARTHだと知り、焦ってチェックアウトして会場へ。ドアtoドアで10分ちょっとで会場に着き、後半のみ観ることができました。よかった。


BLACK EARTH
ちょっと前のエントリーに書きましたが、BLACK EARTHとは初期ARCH ENEMYの面々が勢ぞろいしたスペシャルバンド。もともとは2年前のラウパーでのARCH ENEMYのステージに初代ボーカルのヨハン・リーヴァとクリストファー・アモット(G)がゲスト参加したことがきっかけで、昨年春に同編成でジャパンツアー敢行。先頃そのツアーの模様がDVD+CD化されたこともあり、今回のシークレットゲスト出演となったようです。「なんでシークレットにするんだよ! 名前出したほうが客入るし! なんなら行ったのに!」という人も多いようですが……僕はこの試み、嫌いじゃないです。フェスって「人で選ぶ」んじゃなくて、最終的には「器で選ぶ」ようになったら成功した証拠だと思うので……って話は置いておいて。残念ながら「Bury Me An Angel」も「Dead Inside」も観れませんでしたが、「Beast Of Man」の途中からなんとか会場入り。初のヨハンは……あれ、昔よりもデス声じゃん! いいじゃん!と自分の予想を裏切る仕上がり。後日、昨年のツアーのDVD+CDも購入しましたが、この20年近くでかなり鍛え上げられたんですね。納得。ラストの「Fields Of Desolation」、終盤のツインリードで思わず泣きそうに。ああ、早起きしてよかった……(いや、実際は早起きじゃないんだけど)。

OUTRAGE
久しぶりにライブで観るOUTRAGE。直近の新作『Raging Out』の出来が素晴らしかっただけにどうしても観たかったわけですが、オープニングから「My Final Day」「Madness」の連発にノックアウト。さらに新作から「Doomsday Machine」「Hammer Down and Go」と冒頭の2曲をやられて、勝手にガッツポーズ。「Death Trap」や「Under Control Of Law」といった初期の楽曲、現編成が復活して最初の1曲「Rise」と彼らが何者かを存分に理解できる選曲が続き、ラストは「Megalomania」でクライマックス。確かに短くて物足りなさはあったけど、代表曲&新曲を詰め込んだコンパクトな内容はフェスに最適だと思いました。いやぁ、良かった。

LOUDNESS
本当なら次のAPOCALYPTICAも観るつもりだったのですが、ここでBLACK EARTHのTシャツ買いに行ったり仕事をしたりと、いろいろ野暮用に。結局、ラストの「Nothing Elese Matters」の終盤を観たのみなので、レポートは割愛します。で、LOUDNESS。高崎晃さんが出てきてサウンドチェックをするのですが、すでにギターの音が他のバンドよりもデカイ(笑)。まぁ直前がAPOCALYPTICAだから余計にそう感じるのかもね……と思っていたら、オープニングのインストナンバー「Fire of Spirit」の時点で耳が……本当に音デカかった(苦笑)。さすがに昨日からの耳疲れもあったので、耳栓を使用してライブに。序盤は2000年代以降のモダンヘヴィネス系楽曲が並び、「The Sun Will Rise Again」「Metal Mad」といった比較的メロウな楽曲もあったのですが……後半の「Crazy Nights」「In The Mirror」「Crazy Doctor」「S.D.I.」といった80年代の楽曲とどうしても比較してしまい……リフは最近の楽曲もカッコ良いのに、メロが弱いんだよなと改めて感じてしまったわけです。まあこのメロが現代的と言われてしまったら返す言葉もないのですが、僕としてはやはり……うん。そこだけが本当に勿体ないと思うんです。あと、『LIGHTNING STRIKES』30周年のバックドロップを使ってるのに肝心の同作からの代表曲がなかったり、二井原さんのルックスが完全にMETALLICAのジェイムズになっていたりでいろいろ驚きました。

DEVIN TOWNSEND PROJECT
デヴィン・タウンゼンドを観るのは、たぶん90年代後半のSTRAPPING YOUNG LADだったかソロだったかで来たとき以来。だからほぼ20年ぶりでした。最近のアルバムもほとんど聴いてなかったんだけど、なるほど、こういう音なのね、と感心して観てました。かなりプログレッシヴメタルっぽい雰囲気で、デヴィンの声もかなりよく出ているし、キーボードの人以外みんなスキンヘッドなところ含め、いろいろ気になりました。昨年リリースされた最新作、聴いてみます。

BLACK STAR RIDERS
今年発売された3rdアルバム『HEAVY FIRE』もなかなか良かったし、そもそもTHE ALMIGHTYTHIN LIZZYも好きなので、ここは観ておかないと。リッキー・ウォリック(Vo, G)含むトリプルギター編成は見応えあるし、音はそれまでの出演バンドと比べれば軽いんだけど、今の自分の耳には優しい存在。リッキーの男臭いボーカル、スコット・ゴーハム(G)のソロプレイ含め、ブリティッシュ&アイリッシュハードロックの王道感が強く出ていて好印象でした。オリジナル曲に含めて、THIN LIZZY「The Boys Are Back In Town」のカバーも飛び出し、これもまったく違和感なし。そこに、真の意味でTHIN LIZZYを継承したことを強く感じました。もし今度単独来日したら、もっとじっくり観てみたい。そう素直に思えました。

CRADLE OF FILTH
昔から聴いてるのに、気づいたらライブを観るのは初めて? 自分でも意外でした。女性ボーカルも随所にフィーチャーした、シンフォニックなブラックメタルなんでしょうけど、前日のEMPERORとは完全なる別モノ。本人たちも「ブラックメタルというよりはエクストリームメタル」と言ってるようですし、現在は独自のスタイルを築き上げたってことなんでしょうね。ダニ・フィルス(Vo)の高音デスボイスは圧巻の一言で、「ああ、これ本当に自前で出してるんだ」と感心してしまいました。変な話ですが。選曲はリリースされたばかりのニューアルバム『CRYPTORIANA – THE SEDUCTIVENESS OF DECAY』からは1曲のみで、『NYMPHETAMINE』(2004年)からの曲多め。アルバムを全部聴いてるわけではないので知らない曲もあったものの、そのドラマチックな曲構成には完璧に惹きつけられました。これはぜひ単独でも観てみたいかも。

MESHUGGAH
もしかして彼らをライブで観るのって、2008年の『LOUD PARK 08』での初来日公演以来? っていうか、それ以降って来日してないですよね? 前回の来日からの9年間で新作、2枚しか出してないですし。その彼らも、45分のセットで7曲を披露……したのですが、不思議なことに、彼らの楽曲(主にギターの音)を聴いてると……眠くなるんですよね。いや、彼らのことは大好きなんですが、ずっと聴いてると寝落ちしそうになるという。そういえば、前回の来日公演でもたったまま寝そうになったわ……特にミドルテンポの楽曲に多いのですが、そやって周波数的なものが影響することってあるんでしょうか。たまたま自分の波長的に、彼らのギターサウンドがそこに合致してしまうとか。名前は出せませんけど、同系統のテンポ感&サウンドを持つ他のバンドのライブでも寝落ちしそうになったこと、何度もあるのですよ。これ、誰かに科学的検証をしてほしいです。と、ライブとは全然関係ない話になってしまいましたが、後半テンポアップしてからはまた目が覚め、彼らのライブにのめり込んでいったのでした……演奏は最高でした。文句なし。またすぐに来てください、マジで。今度は寝ないように頑張るので。

SABATON
2年前の『LOUD PARK 15』で初来日を果たした彼ら。大きさ含め完全に戦車そのもののドラムセット(戦車の上にドラムセットがある)や、古今東西の戦という戦を題材にした楽曲の数々、そしてカッコ良いんだけどどこかコミカルで親しみやすいルックスやパフォーマンス、今回も最高以外の何モノでもなかったです。前回からギタリストが1人交代していますが、基本やることは変わらず。終盤、最新アルバム『THE LAST STAND』収録曲で日本の戦を題材にした「Shiroyama」が披露され、『サイレントヒル』などのゲーム音楽を手がける作曲家・山岡晃さんがギターでゲスト参加。おそらくその場にいた多くのメタルファンが「誰?」と思ったでだろうリアクション、忘れません。そんなサプライズも含め、前回以上の盛り上がりを見せたSABATON。いい加減に単独来日を決めていただきたい。絶対に彼ら、“新世代のACCEPT”としてもっと人気を集めるはずだし、なんならメディアがもっとだ偉大的に取り上げるべき。それくらいのことをしてほしいですよね、今後のためにも……。

GENE SIMMONS BAND
KISSのジーン・シモンズが初のソロツアーを開始すると聞いたときは、これまでに出した2枚のソロアルバムからの曲が半分、残りはKISSの自分ボーカルの曲なんだろうなと思っていたら、予想に反して“ほぼKISS”、あるいは“演奏のうまいメンバーを集めた、ひとりKISS”だったという(笑)。「Deuce」「Parasite」という初期KISSナンバー2連発にのけぞり、「I Love It Loud」で大合唱……のはずが、実はこの会場にいる大半のメタルキッズは、そこまでKISSを通ってないんだなということに気づくわけです。コーラス、ちょっと違うぞって……。まあそれは良しとして、その後も「Cold Gin」なんていうおなじみのジーン曲が続くのですが、驚いたのは「Do You Love Me」というポール・スタンレー曲や「Shout It Out Loud」みたいにポールとジーンが歌パートを分け合う曲まで披露されたこと。バンドメンバーが優秀なので、しっかりポール役もこなせるわけですね。後半は「ヘヴィメタルの前にKISSあり」とジーン自らの宣言にギョッとした「War Machine」(火吹きなし)や、最新アルバム『MONSTER』収録曲の「Wall Of Sound」といったレア曲も登場。『LOVE GUN』収録の「Got Love For Sale」も意外な選曲で驚かされました。「Watchin' You」「She」をライブで久々に聴けたのも、ファンとしては嬉しいかぎり。ラストはおなじみの「Rock And Roll All Nite」なのですが……ここでファンをステージに上げてお祭り騒ぎ。これ、先日のDURAN DURAN来日公演におけるCHICでも同じ場面に遭遇したのですが……盛り上げ役でステージに上がってる一般の皆さん、写メ撮りまくり(苦笑)。大スターと同じ舞台に立てる喜びは痛いほど理解できるのですが、演奏してるメンバーとツーショット撮影始めたりするの、はっきり言ってみっともないですよ。ケータイがなかった時代は、みんなもっと一緒に盛り上げることに徹していた記憶があるんですが……時代なんですかね。悪くは言いたくないんだけど、やっぱりあれだけは受け入れられないっていうか苦手です。というわけで、最後の最後で苦い気分でライブを見終えることに。

MICHAEL SCHENKER FEST
大好きなKISSのジーンをあんな気持ちで見終えるなんて。ここはもう、“神”に最後のひと盛り上げをしてもらうしかない。そんな気持ちでした。とはいえ、僕はそこまでシェンカーに思い入れがある人間ではなく、ちょっと前のエントリーでも書いたように、リアルタイムで聴き始めたのはMcAULEY SCHENKER GROUPから。代表作はそれなりに聴いてるし、代表曲はほぼ知ってる。だけど世代なのか、マイケル・シェンカーというギタリストにはそこまで惹かれなかったんですよね。僕よりもひとつ上の世代が熱心に聴いている印象。そもそも僕、ギター云々よりもやっぱりボーカルや曲が魅力的であることが大前提で、そこにすごいギタリストが参加してたら尚良しって人間なので。なんて予防線を張ってから話を進めますが……

いや、すげえ良かった! ああ、神ってこういうことか、と初めて実感&納得しました。2曲目「Into The Arena」のプレイだけでもう圧巻……散々音源では聴いてきたこの曲も、生で観ると&聴くとまったく違う印象を受けるんだから不思議。この曲、こういう表情を持っていたのかって。ああ、これ好きだわ、このギターじゃなきゃダメだわ、って。もうね、この1曲だけでノックアウトでした。その後、ゲイリー・バーデンやグラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーが順番に出てくるのですが、ゲイリーはさておき(笑)、グラハムは無駄に声がデカイし、今年の12月で70歳だというのにあの声量&高音にはただただ驚くばかり。それに続くロビンもまた声が出ていて……この人、こんなに歌うまかったんだ、と見直しました。さらに圧巻だったのは「Save Yourself」。もともと大好きな曲なんですが、シェンカーのギターが泣きまくり(歌いまくり)のところを、それを邪魔せず、なおかつ自己主張するロビンのボーカルにうっとり。すげえです。

で、さらにさらに鳥肌ものだったのが、UFO「Rock Bottom」でのシェンカーのギターソロ。中盤に5分くらい弾きまくってたんだけど、もうね、ずっと聴いてたいと思った。ああ、やっぱりどんなアーティストも生で観ないと答え出せないな、って改めて実感させられました。この人は音源じゃなくて、ライブの人なんだね。20数年前にUFOで観たときは正直そこまで惹かれなかったんだけど(それもあって、以降そこまで熱心に聴いてこなかったんですが)、この日の彼は水を得た魚のように胸に突き刺さるフレーズを、次々に叩き込んでくるわけです。

この時点で終演予定の21:30をゆうに超えており、最後に全出演者がステージに揃って終わるかと思いきや、シェンカーの「One more?」の一言でダメ押しの「Doctor Doctor」! 結局2時間近いほぼフルスケールのショーを見せてくれたわけですよ。本当にありがたい!(セットリストには、さらに「Lights Out」も載っていたので、時間が許せばそれもあったのかも……ゴクリ)

こうして最後の最後、シェンカーに全部持っていかれた今年のラウパー。2日目はマイケル(・アモット)に始まりマイケル(・シェンカー)で終わった、なんとも清々しい1日でした。今年は『OZZFEST』も『KNOTFEST』もなさそうですし、5月に予定されていた『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』も中止になっちゃったしで、メタルファンにとってはなんだかなーな1年でしたが、僕自身はこの2日間ですべてが報われた気持ちです。確かに今年は1ステージ(3rdステージの「EXTREME STAGE」が)減ったため、出演者数は減ってしまいましたし、それなのに例年と同じチケット代はちょっと無理があるんじゃないの?という声も理解できます。でも、それでも元を取った!と思えるだけのパフォーマンスをたくさん観ることができたので、個人的には満足しております。

往年の大物がたくさん出てくれるのはありがたいですが、ニューカマーにも注目する機会を与えてほしいですし、もっと言えば日本のフェスなのに日本のバンドの扱いがあまりよろしくなかったりなど気になる点もたくさんあるのですが、もう12回もやったんだから、そろそろ変化が必要な気もします。そういう意味では、今回のシークレットアクトはその一環だったのかもしれませんね。もし来年も開催されるのでしたら、そのへんもっとテコ入れしていただきたいなと勝手に思っております。



▼MICHAEL SCHENKER『MICHAEL SCHENKER FEST LIVE: TOKYO INTERNATIONAL FORUM HALL A』
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投稿: 2017 10 19 12:00 午前 [2017年のライブ, Arch Enemy, Black Earth, Black Star Riders, Cradle of Filth, Devin Townsend Project, Gene Simmons, Graham Bonnet, KISS, LOUD PARK, Loudness, McAuley Schenker Group, Meshuggah, Michael Schenker, Michael Schenker Group, Outrage, Sabaton] | 固定リンク

2017/10/18

『LOUD PARK 17』DAY 1@さいたまスーパーアリーナ(2017年10月14日)

Loudpark172年ぶりに『LOUD PARK』に行ってきました。2015年は2日目のみの参加でしたが、今回は本当に久しぶりの2日通しでの参加。いつ以来だろうと振り返ってみたら、なんと2009年(JUDAS PRIESTSLAYERがヘッドライナー)以来だったみたいです(笑)。2011年から1日のみ開催が2年続きましたが、それもあってか1日のみ参加というのも結構あったんですよね。

というわけで、せっかくなので久しぶりにメモ程度のレポを残しておこうかと思います。基本はSNS等でつぶやいたコメントが基になっていますので、がっつりしたレポートは各メディアでの本格的なレポートにてご確認ください(笑)。

では、このエントリーでは初日について書いていきたいと思います。


<DAY 1:10月14日(土)>

当日朝6時まで原稿を書いていたため、オープニングアクトAldiousからの参加は断念。せめてL.A.GUNSは観たい……ということで、頑張って9時台に起床。ギリギリ12時開始のL.A.GUNSには間に合いました。


L.A.GUNS
1曲目が3rdアルバム『HOLLYWOOD VAMPIRES』のオープニングトラック「Over The Edge」で面喰らう。勢いよく始めるかと思ったら、このエモいヘヴィロックからかよ、と。ステージをよく見ると、左に昔のトレイシー・ガンズっぽいコスプレしたギタリスト、右に……アメリカ南部のモダンヘヴィネス系バンドにいそうなむさ苦しいギタリスト。あれ、どっちがトレイシーだ?……残念ながら右側でした(笑)。以降は新作『THE MISSING PEACE』から「Speed」やったり1stアルバムから「No Mercy」やったりしましたが、「Killing Machine」みたいな曲もあったりで、特に初期にこだわった感じではなし。あ、2nd『COCKED & LOADED』の曲が多かったです。ラストは「Rip And Tear」。あれ、「Sex Action」は? ということで、個人的には物足りないセトリでした(もともとのセトリには中盤に「Sex Action」、入ってたんですけどね)。

ANTHEM
いきなり「Bound To Break」始まりはズルい! そりゃあ盛り上がりますよ。以降は新し目の曲が続き、中盤「Hunting Time」から怒涛の流れ。ラストは“ANTHEM版「Painkiller」”こと「Onslaught」で締めくくり。短かったけど、久しぶりに堪能できました。

BRUJERIA
あのBRUJERIAが来日!ってだけでも大興奮。そりゃあ開始前から、観客の熱も上がりますよね。メンバーは当然覆面なんですが、ベースの方がどう見てもNAPALM DEATHの……いやなんでもないです(笑)。ゴリゴリ&大音量のグラインドコアと、サークルモッシュで暴れる血気盛んなオーディエンス、それを遠目で眺める自分。ああ、ラウパーに帰ってきたんだなと改めて実感しました。MCは基本スペイン語(という設定)ですが、ところどころに英語が混じっているのに苦笑。“Fuck ドナルド・トランプ”コールで会場の気持ちがひとつになったり、このバンドらしいマリファナコールにニヤニヤしたりと、改めて面白いバンドだなと思いました。

WINGER
たぶん生で観るのは『IN THE HEART OF THE YOUNG』(1990年)のツアー以来だから……いやいや、深く考えるのはやめましょう。メンバーは3枚目『PULL』(1993年)からの編成なので、キーボードは抑えめでギター中心のサウンドメイキング。キップ・ウィンガー(Vo, B)に白髪が混じっていて時の流れを感じさせますが、演奏や歌自体はそこまで衰えを感じさせず。序盤は最近の楽曲〜代表曲〜新曲〜代表曲みたいな流れで、セットリストのバランスはまずまず。中盤に結成30周年に触れてからはデビューアルバム『WINGER』からの楽曲が連発されるのですが、「Heading For A Heartbreak」みたいなシンセ曲ではキップがシンセを弾きながら歌い、ギターのジョン・ロスがベースにシフトするんですね。なるほど納得です。あ、このジョンのギタープレイがレブ・ビーチとはまた違ったタイプのバカテクで好印象。本当に演奏がうまいバンドですね。ただ、BRUJERIAの後という出番はいただけません。最初、音が小さくでビックリしたし(実際BRUJERIAがデカすぎて、WINGERは序盤から音を作っていった感じ。終盤にはその音のバランスの良さに驚きました)。後半の「Heading For A Heartbreak」「Can't Get Enuff」「Madalaine」「Seventeen」の流れ、最高でした。が、スピーカーので音が途中で飛んだり、レブのギターソロでアンプが飛んだりとハプニングも連発。そこだけが勿体なかったです。

OPETH
グラインドコア(BRUJERIA)、AOR的ハードロック(WINGER)からの流れだと、プログレッシヴロック的志向のOPETHはよりソフトに感じられました。長尺の楽曲を演奏で起伏をつけていくのはWINGERにも通ずるものがあるのですが、いかんせんタイプが違う。最近の楽曲は特にソフト志向なので、途中で眠気も……が、ラストの13分超におよぶ「Deliverance」でデス声登場。大好きなアルバムのタイトルトラックに大興奮ですよ。ここで一気に気持ちが持ち返しました。なんにせよ、長丁場のフェスに寝不足で挑むのはよくないですね(苦笑)。

OVERKILL
ここ10年くらい、出すアルバムがことごとく力作でキラーチューンも多い彼ら。実際のライブも往年の代表曲以上に新曲で盛り上がっていたのが印象的でした。にしても、このバンドも35年近いキャリアの持ち主(しかも一度も解散、活動休止なし)なのに、このテンションの高さには驚かされます。初めてライブを観たのはもう30年近く前ですが、基本的に印象はまったく変わらず。逆に観客の彼らに対する盛り上がりは、年々高くなってるように感じました。ラストの「Fuck You」含め、「ああ、そうそうこれ。スラッシュメタルだね!」っていう最高のステージでした。

ALICE COOPER
アリスも2008年以来の来日以来9年ぶり。1990年の初来日以降、毎回観てますが、一番時間が短かったにも関わらず正直今回が一番良かったと思いました。1曲目の「Brutal Planet」には驚いたものの、以降はいつもどおりヒット曲連発。まさか序盤に「Poison」を持ってくるとは思ってもみませんでしたし、「Feed My Frankenstein」ではジャンボマックス(死語)ばりの巨大アリスが登場して爆笑(しかも歌声も身長に合わせてか低くなってる!)。おなじみのギロチンショーもあり、ラストは「I'm Eighteen」「School's Out」で大団円。オールドスクールなロックンロールや60分に凝縮されたショーはラウパーっぽくないのかもしれませんが、それでも最高と言わざるをえない究極のエンタテインメントショーでした。

EMPEROR
二度目の来日となる今回は、2ndアルバム『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』発売20周年を記念した完全再現ライブを披露。緑を基調とした照明はジャケットの世界観そのもので、この日出演したバンドの中でもサウンド的にはかなりオールドスクールなブラックメタルに括られるものの、存在感や説得力はほかにはない特別なものが感じられました。最初こそ「うおー!」と盛り上がっていたものの、気づいたら無言になっており、その世界観にじっくりと浸る自分がいるという。イーサーン(Vo, G)の知的な感じも素敵でしたし、あの佇まいがそのまま音になったかのような、プログレッシヴなブラックメタルサウンドは20年経った今も有効であることも強く実感させられました。アルバムを曲順どおりに再現し終えると、そこからは「Curse You All Men!」「I Am The Black Wizards」「Inno A Satana」と代表曲を連発。「I Am The Black Wizards」まではスタンド席でじっくり観ていたのですが、「Inno A Satana」が始まった瞬間我慢できずにアリーナまで走ったのはここだけの話です(笑)。

SLAYER
2年ぶりのSLAYERですが、前回はラウパーのほうが日程的に観られなかったため、STUDIO COASTでの単独公演を観たのでした。最新作『REPENTLESS』を軸にしたセットリストは前回に似た感じですが、なぜでしょう、今回のほうが良かった気がします。いや、もっと言うと……ここ10数年観た中で一番良かったんじゃないでしょうか。ゲイリー・ホルト(G)が加わって時間が経ち、編成としてもかなり安定したのもありますし、『REPENTLESS』の楽曲が今のバンドに馴染んだというのもあるんでしょうけど、なんていうか……僕らがよく知ってる“あの”SLAYERが戻ってきたといいましょうか……非常に抽象的な表現で申し訳ないですが、そうなんですよ。完全に戻ってるんですよ、今のSLAYER。帝王って言葉がぴったりな、あのSLAYERに。セットリストもよかったなぁ。90分のセットで20曲くらい詰め込まれていて、特に終盤、「Seasons In The Abyss」から「Hell Awaits」「South Of Heaven」「Raining Blood」「Chemical Warfare」「Angel Of Death」という怒涛の流れは文句なしでした。ぶっちゃけ、首がもげましたもん(笑)。



▼SLAYER『REPENTLESS』
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投稿: 2017 10 18 12:00 午前 [2017年のライブ, Alice Cooper, ANTHEM, Brujeria, Emperor, L.A.Guns, LOUD PARK, Opeth, Overkill, Slayer, Winger] | 固定リンク

2017/10/17

ARCH ENEMY『BLACK EARTH』(1996)

今やスウェーデンが誇る人気メロディックデスメタルバンドに成長したARCH ENEMYが、1996年に発表したデビューアルバム。当初このバンドは1枚こっきりのプロジェクトとして誕生したのですが、本作に対する評価が日本で高かったこと、また翌1997年に実現した初来日公演(CATHEDRALジャパンツアーへの帯同)での高評価が後押しし、本格的なバンドとして継続。以降、フロントマン(からフロントウーマンへ)の交代などありましたが、現在に至るまで日本をはじめヨーロッパなどで人気を博しています。

メロディックデスメタル自体、ARCH ENEMYの首謀者であるマイケル・アモット(G)がCARCASS時代の名作『HEARTWORK』(1993年)で提示したスタイルが原型などと言われていますが、このARCH ENEMYでマイケルはひとつの完成形を見せたと言っていいかもしれません。

レコーディングメンバーはマイケルのほか、実弟のクリストファー・アモット(G)、現在もバンドに在籍するダニエル・アーランドソン(Dr)、そしてヨハン・リーヴァ(Vo, B)。ヨハンはベース兼任となっています(クレジットにもこう書いてあります)が、実際にはマイケルが弾いていたようです。

さて。最近のARCH ENEMYSか知らない人には、男性ボーカルが歌っている事実に驚くかもしれませんが、この頃このバンドに出会った人間からすると、のちのアンジェラ・ゴソウ嬢の加入のほうが衝撃だったわけですよ。だって、先に音だけ聴かされて「いいボーカル入ったなぁ」と思ってたら、それが女性だと後日発表されたわけですから。まあ、そのへんの話についてはまた改めて。

で、本作ですが、やっぱり今聴いても良いですね。最近の楽曲ほど洗練されておらず、野暮ったさすら漂う楽曲の数々からはパンキッシュさすら感じられます。それもこれも、ヨハンのボーカルによるものが大きいのではないでしょうか。やれ下手だの言われていましたが、あの当時のデスメタルってこれでも十分に許された雰囲気もありましたよね? あれ、そんなことなかったっけ?

ちなみに、僕は最初にこのアルバムを聴いたときは、オープニングの「Bury Me An Angel」にこそのめり込みましたが、それ以外はちょっと拒絶反応があったかも……ぶっちゃけ、このバンドのことを本気で良いなと思ったのは3枚目の『BURNING BRIDGES』(1999年)からで、それ以降に聴き返したら「あれ、やっぱり良いじゃん」と思えるようになった口なので。

「Bury Me An Angel」は言うに及ばす、続く「Dark Insanity」もカッコ良いし、ヘヴィなミドルチューン「Eureka」も「Idolatress」もMETALLICA以降のHR/HMが持つカッコ良さが独自の解釈でしっかり昇華されている。かと思うと「Demoniality」みたいにドゥーミーなインストがあったり、アコースティックテイストの叙情的なインスト「Time Capsule」からクライマックスの「Fields Of Desolation」(エンディングのツインリードに鳥肌!)へと続いていくエンディングもあって……あれ、これ名盤じゃん(笑)。

ご存知のとおり、ヨハン、マイケル、クリストファー、ダニエル、そして現在もメンバーのシャーリー・ダンジェロ(B)という『BURNING BRIDGES』時のメンバーが昨年、『BLACK EARTH』発売20周年を記念してARCH ENEMY名義ではない“BLACK EARTH”名義で日本公演を敢行。その模様を収めたライブDVD+CDを先日発売し、さらには『LOUD PARK 2017』2日目にシークレットアクトとしてサプライズ出演を果たしたばかり。幸い僕も数曲のみですが、彼らの勇姿を目にすることができました。残念ながら冒頭の「Bury Me An Angel」には間に合わなかったものの、ラストナンバー「Fields Of Desolation」はしっかり堪能できたので、本当に幸せでした……。

ARCH ENEMY自体、最新作『WILL TO POWER』も素晴らしかったですし、こうして初期メンバーで遊んだりもできるという意味では、現在非常に充実した状況なんでしょうね。まあ何はともあれ、このデビューアルバムは彼らの原点であると同時にメロディックデスメタルを語る上では欠かせない重要作なので、最近の彼らしか知らない人はもちろんのこと、90年代のメタルシーンがすっぽり抜けているという人にもぜひ聴いてもらいたい1枚です。

なお、本作は現在までに何度か再発されていますが、2010年代に入ってからリマスタリング&ボーナストラックを多数追加した新エディションも流通しております。ジャケットがオリジナルとは異なりますが、こちらのほうがオリジナル版よりもはるかに音の分離が良いので(特にギターが)、これから購入しようと考えている方はぜひ新エディションの購入をオススメします。



▼ARCH ENEMY『BLACK EARTH』
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▼ARCH ENEMY『BLACK EARTH (REMASTERED AND EXPANDED EDITION)』
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投稿: 2017 10 17 12:00 午前 [1996年の作品, Arch Enemy, Black Earth, Carcass] | 固定リンク

2017/10/16

L.A.GUNS『THE MISSING PEACE』(2017)

2017年10月にリリースされた、L.A.GUNS通算11作目のオリジナルアルバム。2012年の『HOLLYWOOD FOREVER』以来5年ぶりの新作なのですが、本作は単なる新作とは意味合いが異なります。なんと、バンド創始者であるトレイシー・ガンズ(G)がフィリップ・ルイス(Vo)と15年ぶりにタッグを組んだ、初期からのファンにとっては念願の1枚なわけです。

どこかダークな雰囲気だった前作から、どことなく初期の彼らを思わせるサウンドへとシフトチェンジした本作。1stアルバム『L.A.GUNS』(1988年)のアートワークをオマージュしたジャケットからも伺えますが、それもそのはず、プロデュースをトレイシー・ガンズ本人が手がけているのですから。

ラフだけどタイトという絶妙なオープニングトラック「All The Same To Me」から始まり、先行トラックとして公開済みの2曲目「Speed」で一気にテンポアップ。DEEP PURPLE「Highway Star」から引用した歌詞やソロパートが含まれたこの曲は、モロに1stアルバムの頃の彼らを現代によみがえらせたような1曲。「No Mercy」とかあのへんの疾走チューンですね。これ、ライブで聴いたらカッコイイだろうなぁ……と思ったら、先日の『LOUD PARK 2017』でも披露されてましたね。ドライブ感の強いアレンジは、まさに今後のライブでも大きな武器になりそうです。

その後もヘヴィ&ダークな「A Drop Of Bleach」、タイトルはROLLING STONESだけど音はL.A.GUNSそのものな「Sticky Fingers」、オルガンをフィーチャーしたムーディーなバラード「Christine」、軽快なロックンロール「Baby Gotta Fever」で前半終了。後半戦もグルーヴィーでソウルフルなミドルチューン「Kill It Or Die」、初期というよりは最近のL.A.GUNSっぽい「Don't Bring A Knife To A Gunfight」、8分の6拍子による男臭いバラード「The Flood's The Fault Of The Rain」、パンキッシュなアップチューン「The Devil Made Me Do It」、1stアルバムに入ってそうな悲しげなヘヴィバラード「The Missing Peace」、アコギによるセンチメンタルな雰囲気からそのままハードな世界観へと延長していく「Gave It All Away」でアルバムは終了します。

こうやって通して聴くと、確かに要所要所で1stアルバムの香りや、音楽的進化を見せた2ndアルバム『COCKED & LOADED』(1989年)や3rdアルバム『HOLLYWOOD VAMPIRES』(1991年)の要素も含みつつも、しっかり“今のL.A.GUNS”を表現してくれているように思いました。思ったほどワイルドに疾走するタイプの曲は少なく、年相応に(笑)落ち着いたミドルテンポの楽曲が多かったり、後半にバラードタイプの楽曲が思ってた以上に含まれていたりと、なんだかんだでみんな大人になる=年をとるんだな、と改めて思いました。当たり前ですけど。

にしても本作。単なる同窓会で終わらなくてよかった。願わくば、このままの編成で活動を続けてほしいものです。



▼L.A.GUNS『THE MISSING PEACE』
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投稿: 2017 10 16 12:00 午前 [2017年の作品, L.A.Guns] | 固定リンク

2017/10/15

GAMMA RAY『INSANITY AND GENIUS』(1993)

1993年秋にリリースされた、GAMMA RAY通算3作目のスタジオアルバム。ラルフ・シーパース(Vo)在籍時最後のオリジナル作品となりますが、個人的には本作が彼らのキャリア中もっとも好きだったりします。

例えばデビュー作『HEADING FOR TOMORROW』(1990年)は良くも悪くもHELLOWEEN時代を引きずっているように感じられたし、続く2ndアルバム『SIGH NO MORE』(1991年)は今聴くとそこまで悪くないんですが、リリース当時はそこまで良いと思えず……正直、この頃から彼らに対してあまり期待しなくなっていたのも事実。

ところが、この3枚目。新たなリズム隊、ヤン・ルバック(B)&トーマス・ナック(Dr)が加入したことで、全体的に若返ったような印象があります。楽曲にも勢いというか、全体的にパッションが強く感じられるものが多く、オープニングの「Tribute To The Past」から2曲目「No Return」、3曲目「Last Before The Storm」と怒涛の流れで、もうこの3曲だけでお腹いっぱい。楽曲的にもHELLOWEEN的というよりも、そのルーツでもあるJUDAS PRIESTあたりからの影響が強く感じられ、ようやくGAMMA RAYならではのオリジナリティを掴めたのかなと(もちろん1枚目の時点でも十分オリジナリティはありましたが、ここで確固たるものを掴んだと思うのです)。

4曲目からはバラエティに富んだ楽曲が並び、怪しげなイントロが印象的なミドルチューン「The Cave Principle」、シングルカットもされ文字どおりギターが狂ったようにのたうちまわる「Future Madhouse」、バンド名にもなったBIRTH CONTROLのカバー「Gamma Ray」(ダンサブルでクセになる1曲)、勇ましいアッパーチューン「Insanity & Genius」、静と動の対比が素晴らしいバラード「18 Years」、ディルク・シュレヒター(G/現在はB)がボーカルを務めるこれぞヘヴィメタルな「Your Tørn Is Over」、カイ・ハンセンが久しぶりにボーカルを担当したドラマチックな「Heal Me」、ラストにふさわしい軽快なメタルナンバー「Brothers」と、とにかく捨て曲なし。前作に対するメディアでの低評価を払拭する、「パワー」「スピード」「ドラマチック」などの要素を強調した力作だと思っています。

だからこそ、この先がどうなるのか楽しみにしていたのですが、ラルフがJUDAS PRIESTの新ボーカリストオーディションを受けるために脱退(結局、選ばれませんでしたが)。以後、カイがボーカルを兼任することになるのでした。

ちなみに本作、GAMMA RAY結成25周年企画として昨年、アニバーサリーエディションとして2枚組仕様で再発。DISC 2には初期の楽曲をカイのボーカルを含む現編成で再録したテイクや、JUDAS PRIEST「Exiter」のカバーなどが収録されています。ラルフも変な欲を出さずに、このバンドで“ロブ・ハルフォードの後任”ではなく“新世代のロブ・ハルフォード”を目指せばよかったのに。勿体ないなぁ。



▼GAMMA RAY『INSANITY AND GENIUS』
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投稿: 2017 10 15 12:00 午前 [1993年の作品, Gamma Ray] | 固定リンク

2017/10/14

METAL CHURCH『THE HUMAN FACTOR』(1991)

1991年春にリリースされたMETAL CHURCH通算4作目のスタジオアルバム。前作『BLESSING IN DISGUISE』(1989年)からボーカルがマイク・ハウに代わり新編成となって2作目、レーベルも新たに「Epic Records」に移籍して発表された気合いの1枚です(結局、Epicからは本作のみでしたが)。

聴いてもらえばわかるように、どこをどう切り取っても“ザ・ヘヴィメタル”なアルバム。いわゆるスラッシュメタル界隈から登場したバンドですし、初期のアルバムはその延長線上にあるサウンドでしたが、前作あたりで示した新境地(大作志向など)が本作で一気に開花。また、新たな挑戦も至るところに散りばめられており、とにかく聴きごたえのある作品に仕上げられています。

オープニングの「The Human Factor」や3曲目「The Final Word」にような疾走感のあるメタルチューンには、スラッシュというよりもパワーメタルと呼ぶにふさわしい貫禄が漂ってますし、「In Mourning」「In Harm's Way」のようなバラードタイプの楽曲も深みを増している。しかし、本作でもっとも注目すべきなのはリード曲としてMVも制作された「Date With Poverty」の存在でしょう。

ヘヴィだけど非常にグルーヴィーなリズムは、本作から半年後に発表されるMETALLICAブラックアルバムにも通ずるものがあり、その後の流行を先取りした1曲と言えるでしょう。しかし、スラッシュメタルの延長線上から登場した彼らがこういった楽曲をプレイすることに対し、当時は賛否あったのも事実。「メタルバンドのリズムがハネてどうするんだよ!」というごもっともな意見をよく耳にしましたし、実際この年を境にメタル勢の人気はグランジ勢やRED HOT CHILI PEPPERSなどに取って代わられるわけですから、見方によっては寝返ったと思われちゃうのかなと(でも、そういったバンドのブレイク作より早く、本作はリリースされたわけですが)。

とはいえ、メタルファン的には劇的な展開の「Agent Green」やスラッシーな「Flee From Reality」「The Fight Song」、ヘヴィなミドルチューン「Betrayed」など、とにかく聴きどころの多い1枚であり、本作をMETAL CHURCHの代表作に挙げる人も少なくないようです(もっとも、デヴィッド・ウェイン時代こそ真のMETAL CHURCHというリスナーにはマイク・ハウ時代は認められないのかもしれませんし、このバンドの本質を考えたら1986年の2nd『THE DARK』こそが名盤という声も理解できるのですが)。

本作リリース後、彼らはJUDAS PRIESTアリス・クーパーMOTORHEAD、DANGEROUS TOYSと『OPERATION ROCK 'N' ROLL TOUR』というパッケージツアーに参加するのですが、湾岸戦争のあおりを受けてツアーは失敗。ブラックアルバム発表後のMETALLICAのツアーにもサポート参加するのですが、うまく起動させることができずインディー落ちしてしまいます。ホント、時代に翻弄されまくり。勿体ないですね。



▼METAL CHURCH『THE HUMAN FACTOR』
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投稿: 2017 10 14 12:00 午前 [1991年の作品, Metal Church] | 固定リンク

2017/10/13

WINGER『PULL』(1993)

1993年春にリリースされた、WINGER通算3作目のスタジオアルバム。デビュー作『WINGER』(1988年)、2nd『IN THE HEART OF THE YOUNG』(1990年)がともにミリオンヒットとなり、シングルヒットも連発させた彼らでしたが、1991年以降HR/HMの人気が下降線をたどり、代わりにグランジやモダンヘヴィネス系バンドが台頭し始めたなか、WINGER自体にも大きな変化が訪れます。それは、キーボーディスト&ギタリストのポール・テイラーの脱退でした。

長期にわたるツアー生活に疲弊したポールがバンドを離れると、バンドはキップ・ウィンガー(Vo, B)、レブ・ビーチ(G)、ロッド・モーゲンスタイン(Dr)の3人でレコーディングに突入。プロデューサーは過去2作を手がけたボー・ヒルから、DEF LEPPARDなどで知られるマイク・シプリーに変更し、時流に合わせたタフさを取り入れつつもWINGERらしいキャッチーでプログレッシヴなサウンドを作り上げていきます。

ベーシックトラックをキーボードレスの編成で制作したためか、本作は過去2作以上にギターオリエンテッドなアルバムに仕上がっています。特にアコースティックギターの使い方が非常に効果的で、オープニング曲「Blind Revolution Mad」の冒頭や、「Down Incognito」「Spell I'm Under」「The Lucky One」「Who's The One」などではアコギが曲の軸になっており、バンドとしての新たな挑戦として受け取ることがでいます。特に「Down Incognito」ではブルースハープもフィーチャーされており、産業ハードロック的イメージからの脱却を図っているかのようです。

また、「Spell I'm Under」のようなプログレッシヴなバラードでは、以前ならシンセを前面に打ち出すことでプログレハード的テイストが強まっていたところを、アコギをはじめとするギターサウンドを軸にしたことでよりヘヴィさが増している。「Blind Revolution Mad」にしろ「In My Veins」にしろ演奏自体は非常にテクニカルでプログレッシヴな部類の楽曲なんですが、生々しさと音の太さが過去以上。ダウンチューニングを採用した「Junkyard Dog (Tears On Stone)」なんて、完全にALICE IN CHAINS以降のグルーヴメタル/グランジの影響が感じられますし。

けどね、こういった楽曲を他のバンドがやったらきっと“グランジ/モダンヘヴィネスの二番煎じ”で済まされるところを、キップ・ウィンガーが歌うことでかろうじて“らしさ”を保てているから、WINGERの作品として成立している。こういうときにこそ、改めて個性的なフロントマン/シンガーを要することの重要さを実感させられるのではないでしょうか。

確かに全体的に地味ですし、世間的な評価も高いほうではない。けど、あの時代の空気感を切り取った意欲作として、僕はお気に入りの1枚に挙げることが多いんですよね。むしろ最近のラウドロックやヘヴィ系が好きな人なら、案外いけるんじゃないかと思うのですが……いかがでしょう?



▼WINGER『PULL』
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投稿: 2017 10 13 12:00 午前 [1993年の作品, Winger] | 固定リンク

2017/10/12

McAULEY SCHENKER GROUP『PERFECT TIMING』(1987)

UFOを除くマイケル・シェンカーの作品を最初に取り上げるのが本作でいいのか、という疑問をひとり感じているのですが、仕方ないです。だって、リアルタイムで初めてちゃんと聴いたマイケル・シェンカー関連のニューアルバムがこのMcAULEY SCHENKER GROUPの1stアルバム『PERFECT TIMING』(1987年)なんですから。

マイケル・シェンカーはつくづくシンガーに恵まれないギタリストでした。ゲイリー・バーデンは決してうまいタイプではないし、続くグラハム・ボネットはアルバム1枚のみと短命だったし、すると再びゲイリー・バーデンが出戻りするし。もっと華があって歌唱力のあるHR/HM系シンガーが入ったらアメリカでもブレイクできるんじゃないか……きっとそんなことを考えたことあるHR/HMファン、少なくないはずです。

そんなマイケルがロビン・マッコーリーという新たなシンガーを迎え、バンド名もMICHAEL SCHENKER GROUPの“ワンマンバンド体制”からMcAULEY SCHENKER GROUPという“二頭体制”へと改正。しかも海外では本格的なHR/HMブームに突入し、話題性十分で鳴り物入りの再デビューを飾ったわけでした。

リードシングルとなった1曲目「Gimme Your Love」を初めて聴いたとき、正直MSCにそこまで詳しくない自分でさえも「これは違うんじゃないか……」と若干モヤモヤした気持ちを抱えたものですが、とはいえ曲自体はよくできたアリーナロックで、ロビン・マッコーリーもこういった派手でキラキラした音に合った湿り気のある歌声なので気持ちよく楽しめたわけです。

で、アルバムを通して聴くと、確かに時流に合わせた産業ロック的な楽曲もいくつかあるものの、マイケルらしい泣きメロを持つ楽曲も含まれており(本作からの2ndシングル「Love Is Not A Game」はまさにそれ)、また初期MSGを思わせるロックンロールナンバー「No Time For Losers」やストレートな疾走HRナンバー「Get Out」、ファンキーなギターストロークが楽しめる「Don't Stop Me Now」など佳曲多し。楽曲クレジットを見ると、ベーシストのロッキー・ニュートンが関わった曲にポップなものが多いようで(シングル2曲やパワーバラード「Time」)、特に「Gimme Your Love」なんてマイケルがソングライティングに関わってないですからね。そういう意味でも、こちらのMSGは完全なる“バンド”だったのかもしれませんね。

それ以前のMSGと比較すると完全に別モノかもしれませんが、これはこれで意外と楽しめるんですよね。今から30年前のあの時代だったからこそ作り上げることができた、偶然の1枚。だけど侮るなかれ(全米95位とヒットはしなかったけど)。

あと、MICHAEL SCHENKER GROUPの音源はストリーミングサービスにもデジタル配信にもあるのに、なんでMcAULEY SCHENKER GROUPのアルバムは1枚もないんでしょうね……本当に勿体ない。本作とか続く『SAVE YOURSELF』(1989年)は聴いておいて間違いないアルバムなので、ぜひ配信のほうもお願いしたいものです。



▼McAULEY SCHENKER GROUP『PERFECT TIMING』
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投稿: 2017 10 12 12:00 午前 [1987年の作品, McAuley Schenker Group, Michael Schenker] | 固定リンク

2017/10/11

GENE SIMMONS『ASSHOLE』(2004)

KISSジーン・シモンズが2004年に発表した通算2作目のソロアルバム。前作『GENE SIMMONS』(1978年)は当時のKISSのメンバー4人が同時にソロアルバムを発表するという、いわば企画チックな側面がありましたが、本作はフルメイクKISSが復活して以降、枠にハマったサウンドスタイルでの活動に対するある種の捌け口として制作された、完全にジーンの(良くも悪くも)自己満足的アルバムです。だって、このタイトルですもの……(苦笑)。

……と、言い切ってしまっていいものかアレですけど、その理由は聴いてもらえば理解していただけるんじゃないかと。とにかく、内容が“ごった煮”なんです。90年代前半のKISSが見せたラウド&オルタナティヴ路線を軸にしつつも、70年代のKISSらしい豪快なハードロックあり、ダンスあり、ヒップホップあり、AOR的歌モノあり、シンフォニック風変わりなポップソングあり、ベックにも通ずるダウナーなオルタナフォークあり……ね? これだけ聞いたらカテゴライズ不能でしょ? そもそも、ジーン・シモンズという策士はそういう奴ですからね。頭が良い(商才に長けている)んですよ。

けど、それがときには仇となることもある。それがまさに、このアルバムなんじゃないでしょうか。ぶっちゃけ、ジーン・シモンズというラベルがなければこんなアルバム、“焦点ずれまくりのオナニー的作品”と切り捨てられるのが関の山でしょうし。けど、“あの”ジーン・シモンズが26年ぶりにソロアルバムを作りました、と知らされてから聴けばなんとなく納得できてしまう……気がする。うん、不思議です。

KISS的なハードロック“のみ”を求める人には、本作はところどころ厳しい1枚かもしれません。が、KISSでジーンが書く/歌う曲が好きという人、1枚目のソロアルバムも気に入っているという人なら問題なく楽しめるんじゃないかと。確かにTHE PRODIGY「Firestarter」のカバーやら、ボブ・ディランやフランク・ザッパとの共作曲やらトリッキーな楽曲も含まれていますが、全体的にはヘヴィな曲よりもフォーキーでポップな楽曲のほうが印象に残るという、そんな“いかにもな”ソロアルバムです。思えばこの人、KISSの前身バンド・WICKED LESTERでもフォーキーな音楽をやってましたしね。

また、先の「Firestarter」ではデイヴ・ナヴァロ(JANE'S ADDICTION)がギターを弾いていたり、他にも現KISSのエリック・シンガー(Dr)、元KISSのブルース・キューリック(G)や、リッチー・コッツェン(G)、ドゥイージル・ザッパ(G)など興味深いゲストプレイヤーも多数参加しているので、プレイ面も問題なく楽しめるはず。

ちなみに、『LOUD PARK 2017』にGENE SIMMONS BAND名義で出演するジーン。残念ながら直近のツアーでは本作からの楽曲は1曲も披露されていないようで、KISSの楽曲が中心とのこと。ソロ曲は1枚目から「Radioactive」のみみたいですね。だったらそっちを取り上げたらよかった……と全部書き終えてから後悔しているところですが、本作は本作で言うほど悪くないので、チャンスがあったらぜひ聴いてみてください。珍味らしい味わい深さ満載なので。



▼GENE SIMMONS『ASSHOLE』
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投稿: 2017 10 11 12:00 午前 [2004年の作品, Gene Simmons, Jane's Addiction, KISS, Prodigy, The, Richie Kotzen] | 固定リンク

2017/10/10

SLAYER『LIVE: DECADE OF AGGRESSION』(1991)

SLAYERの結成10周年を記念して、1991年秋に発表された2枚組ライブアルバム。DISC 1には1991年7月、フロリダでのライブから11曲が収録され、DISC 2には1990年10月のロンドン公演および1991年3月のカリフォルニア公演からの抜粋10曲が収められています。

タイミング的には1990年秋に5thアルバム『SEASONS IN THE ABYSS』を発表した直後で、内容的にも同作の楽曲を軸にしつつも過去の代表曲が余すところなく収められたグレイテストヒッツ的選曲になっています。特にDISC 1はショートサイズのライブをまるまる収めたようなセットリストで、当時のツアーの1曲目「Hell Awaits」からラストナンバー「Angel Of Death」まで、息つく間もないほど怒涛の展開。“SLAYERとはなんぞや?”という人に対して“This is SLAYER!”と提示するにはぴったりの1枚かと思います。

派手なキメ曲が並ぶDISC 1に対し、DISC 2の曲順にはそこまでのストーリー性は感じられませんが、ライブの要所要所には欠かせない楽曲が揃った通好みの選曲。緩急飛んだ曲順で、途中に挿入されるごく初期の楽曲にみられるヤケクソ感は今聴いても最高としか言いようがありません。そして最後の最後を締めくくるのが、初期の名曲中の名曲「Chemical Warfare」ですから。ここで一気に昇天しなかったら嘘ですよね。

ちょうど1990年12月に実現した初来日公演も「Hell Awaits」からスタートしており、曲順こそ異なるものの当時演奏された楽曲はほぼ収録されているんじゃないかと。3分の1くらいは今でも演奏される機会の多い曲ばかりですし、なによりも当時の勢いに乗ったSLAYERのライブ演奏を追体験するのは最適のアイテムだと思うので、これからSLAYERを聴いてみようという人(特に今年の『LOUD PARK 2017』でSLAYERを初体験するビギナー)は、最新作『REPENTLESS』(2015年)とあわせてチェックすることをオススメします。

なお、本作はトム・アラヤ(Vo, B)、ケリー・キング(G)、ジェフ・ハンネマン(G)、デイヴ・ロンバード(Dr)というオリジナル編成によるもの。本作リリース後にデイヴが脱退し、オリジナル編成は10年近く崩れることになります。そして、ジェフが亡くなったのでこの編成でのライブはもう二度と見られないわけです……そう思うと、この頃をリアルタムで体験している人たちにはいろいろとこみ上げてくるものがあるんじゃないでしょうか。

ちなみに、本作の1991年当時の日本盤(日本フォノグラム製で、ジャケットも現行のバージョンとは異なる)にはボーナストラックとして、 DISC 2に「Skeltons Of Society」「At Dawn They Sleep」の2曲を追加収録(M-6「Born Of Fire」のあとに追加)。中古市場で現在もよく見かけるし安価で手に入るので、どうせならこちらを探してみるといいんじゃないかと思います。



▼SLAYER『LIVE: DECADE OF AGGRESSION』
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▼SLAYER『LIVE: DECADE OF AGGRESSION(日本フォノグラム盤)』
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投稿: 2017 10 10 12:00 午前 [1991年の作品, Slayer] | 固定リンク

2017/10/09

KADAVAR『ROUGH TIMES』(2017)

ドイツ・ベルリン出身のトリオバンドKADAVARによる通算4作目のスタジオアルバム。2010年結成とキャリアはまだ浅いのですが、それに反して音はかなり濃厚です。僕自身は2013年発売の2ndアルバム『ABRA KADAVAR』は去年、ストリーミングサービスで触れていたのですが、“今のバンド”とは思えないほどにレイドバックした不可思議なサウンドにギョッとしたことをよく覚えています。

そういった感じで、改めて新鮮な気持ちで接した彼らの新作。サウンド、演奏ともに70年代ハーロドック/サイケデリックロック的なスタイルで、録音も当時を再現したかのようなヴィンテージ感が感じられ、再生方法によっては本当に“今のバンド”だって気づかないんじゃないでしょうか。

「○○に似てる」という表現はとても簡単だと思いますが、むしろそういう先入観なしで聴いたほうが純粋に楽しめる作品だと思います。ジャンル的には確かにオールドスタイルのハードロックに、スペーシーなサイケデリックテイストをまぶしたもので、アレンジも決して凝りに凝ったものではない。なんでしょう、素材の味を活かすために余計な味付けを加えないこだわりといいましょうか、そういうシンプルさが本作からは伝わってきます。

また、彼らのサウンドってストーナーロックにも通ずるものがあるなと。BLACK SABBATH的という意味ではなく、80年代以降のストーナーロックと呼ばれるバンドたちの系譜にあるという点で、共通点が多いと思うのです。あ、あと(「○○に似てる」という表現はしないと言っておきながらアレですが)、BUDGIEあたりに似たプログレ感も感じられますよね。ゴリゴリしたハードロックを軸にしながらも、どこかプログレッシブというところも共通しているし。その感覚をもっとヨーロピアン、そう、ドイツ寄りにするとKADAVARみたいな音になるのかなと。そう思いました。

にしても、このビジュアル……MV含め、これを全部モノクロで編集して、音もモノラルに変換したら、完全に勘違いしちゃいますね。どういった生活を送ったら、この音に到達するのか。ぜひ機会があったら聞いてみたいものです。

ちなみに、日本盤にはボーナストラックとしてTHE BEATLES「Helter Skelter」のカバーを追加収録。このセレクト、普通っちゃあ普通ですけど、アルバムを通して聴くとこのカバーが一番メジャー感の強い曲というのもまた笑えます(微笑ましいという意味で)。



▼KADAVAR『ROUGH TIMES』
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投稿: 2017 10 09 12:00 午前 [2017年の作品, Kadavar] | 固定リンク

2017/10/08

MOTHER LOVE BONE『APPLE』(1990)

1990年7月にリリースされた、シアトル出身の5人組ロックバンドMOTHER LOVE BONEのメジャーデビュー作にして唯一のオリジナルアルバム。のちにグランジと呼ばれるようになるシアトル産オルナタティヴロックバンドでは、SOUNDGARDEN(1989年9月発売の『LOUDER THAN LOVE』)に次ぐ、ALICE IN CHAINS(1990年8月発売の『FACELIFT』)より先の、2番目のメジャーデビュー組となります。

このバンドは元GREEN RIVERのブルース・フェアウェザー(G)、ストーン・ゴッサード(G)、ジェフ・アメン(B)、元SKIN YARDのグレッグ・ギルモア(Dr)、元MALFUNKSHUNのアンドリュー・ウッド(Vo)が1988年にシアトルで結成。ちなみにGREEN RIVERの上記3人以外のメンバーはMUDHONEYを結成しており、SKIN YARDにはグレッグの前にSOUNDGARDENのマット・キャメロンが在籍していたり、NIRVANAの1stアルバム『BLEACH』(1989年)などのプロデューサーとして知られるジャック・エンディノ(G)が参加していたことでも知られています。そう考えると、MOTHER LOVE BONEって当時のシアトルシーンではスーパーバンドなんですよね。まぁ“スーパー”の規模感がかなり小さいですけど。

サウンド的には、古き良き時代の土着的アメリカンハードロックにちょっとファンキーさを加えたもの。時期的にRED HOT CHILI PEPPERSのブレイク前夜ですが、あちらより“ハネて”おらず、むしろハードロックファンには受け入れやすいスタイルじゃないかと思います。

楽曲の半数以上をストーンとジェフが単独で書いており、今聴いてみると2人がこのバンドのあとに結成するPEARL JAMとの共通点がいろいろ見え隠れします。GREEN RIVERを解散したあと、2人がどういう音楽をやりたかったのか、この時点である程度固まっていたわけですね。歴史的資料としても非常に価値の高い1枚です。

が、それ以上にシンガー、フロントマンとしてのアンドリューの個性の強さに目が(耳が)行くわけで、特に当時の動画を目にするとアンドリューという人はその後勃発するグランジシーンの人というよりも、それ以前のHR/HM文脈で語れる人、もしくは同時代のレッチリやFAITH NO MOREと並ぶ存在になれた逸材だったのではないでしょうか。残念ながら、今となっては限られた映像しか残されていないため、正しくは「その片鱗を感じる」という程度なんですが……本当に勿体ない。

実はこのアルバム、本来は1990年3月に発売が予定されていましたが、発売予定日の数日前にアンドリューがオーバードーズにより脳死状態に陥り、数日後の3月19日に死亡。これを受けてバンドも解散し、7月にリリースされた頃にはすでにMOTHER LOVE BONEはこの世に存在しなかったのです。彼らが伝説のバンド、アンドリューが伝説のシンガーと呼ばれるのはそういった所以があるのですが、なんとも不運なバンドですよね。

ちなみに本作リリースから2年後の1992年には『MOTHER LOVE BONE』と題したコンピレーションアルバムもリリースされています。こちらには『APPLE』収録曲全曲と、『APPLE』より前に発売されたEP『SHINE』(1989年)収録曲のすべてがまとめられているので、今から購入するならこちらのコンピ盤のほうがいいかもしれません。



▼MOTHER LOVE BONE『APPLE』
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▼MOTHER LOVE BONE『MOTHER LOVE BONE』
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投稿: 2017 10 08 12:00 午前 [1990年の作品, Mother Love Bone, Pearl Jam] | 固定リンク

2017/10/07

CHRIS CORNELL『EUPHORIA MORNING』(1999)

1997年に突如解散を発表したSOUNDGARDEN。そのフロントマンであったクリス・コーネルが1999年に発表した初のソロアルバムが本作。2001年には元RAGE AGAINST THE MACHINE組と新バンド・AUDIOSLAVEを結成するため、続く2ndソロアルバムは同バンドの活動が止まった2007年になってしまい、そういう意味でも本作はあの時期のクリスの嗜好を知れる格好の題材でした。

SOUNDGARDENのメインソングライターであったクリスなわけですから、ソロアルバムとはいえバンド時代のテイストは少なからず感じられるはず。そう思ってリリース当時、初めて本作に接したのですが、結果は聴いてもらったとおり。ハードロックもグランジもここにはあらず、もっと穏やかな、言ってしまえばAOR的な香りすらする落ち着いた作風でした。

SOUNDGARDEN時代の盟友マット・キャメロン(Dr)が1曲のみドラムを担当していますが、基本的にはプロデュースを担当したナターシャ・シュナイダー&アラン・ヨハネス(後者は今年発表されたマット・キャメロンのソロアルバムにも参加)周りの人たちで構成。大半の楽曲はジョシュ・フリースがドラムを叩き、それ以外のベーシックトラックはクリス、ナターシャ、アランらが担当しているため、いわゆるバンド感は皆無。アコースティック主体で、よりパーソナルな印象を受ける内容に仕上げられています。

3年後に発表されるAUDIOSLAVEのデビューアルバムでは、そのクリスの声の衰えにショックを受けましたが、このアルバムの時点ではまだ“SOUNDGARDENのクリス・コーネル”そのもの。声を張り上げて歌うような楽曲はバンド時代ほど多くはありませんが、適度に力強く歌いながらも、基本は彼の魅力がもっとも伝わりやすい低・中音域をメインにしたナンバーが中心で、非常に聴いていて気持ちよいものばかり。そういった点では“いかにもソロアルバム”といった印象で、もっと言ってしまえばそれ以上でもそれ以下でもないという……悪い言い方をしてしまうと、印象に残りにくい作品かもしれません。

もちろん、じっくり聴き込めば1曲1曲の完成度の高さに驚かされるわけですが、パッと聴きではそこまでダイレクトに伝わるような即効性はないので、注意が必要かも。とはいえ、SOUNDGARDEN時代のアコースティックベースの楽曲が気に入っていた人なら、一発で気にいるはずです。

久しぶりに引っ張り出して聴いてみましたが、SOUNDGARDENの解散前ラストアルバム『DOWN ON THE UPSIDE』(1996年)からの流れで聴くと、実は意外と入っていきやすいのかも、という1枚です。

ちなみに本作、2015年に再リリースされた際にはタイトルを『EUPHORIA MOURNING』と綴りを変更。当初はこちらの綴りで発表したかったものの、『EUPHORIA MORNING』のほうが良いタイトルじゃないかということで、こちらに決定した経緯があるようです。



▼CHRIS CORNELL『EUPHORIA MORNING』
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投稿: 2017 10 07 12:00 午前 [1999年の作品, Chris Cornell, Soundgarden] | 固定リンク

2017/10/06

DOKKEN『DYSFUNCTIONAL』(1995)

1994年に再結成を果たしたDOKKENが、翌1995年春に海外で発表した通算5作目のスタジオアルバム。ここ日本では前年末に『DOKKEN』というアルバムタイトルで、曲順を変え一部の収録曲を差し替えてリリースされていた作品です。

もともとはドン・ドッケン(Vo)のソロアルバムとして制作を進めていた作品なのですが、契約の際に元Geffen Records、当時Columbia Recordsの名物A&Rだったジョン・カロドナーからジョージ・リンチ(G)にギターを弾かせたらどうか、そしてこのアルバムをDOKKEN名義で出したほうが売れるんじゃないかなどと言い寄られ、結果としてジェフ・ピルソン(B)、ミック・ブラウン(Dr)、ジョージという黄金期メンバーが揃い、DOKKEN再結成が実現。“メタル冬の時代”だった1995年という時代にメジャーレーベルのColumbiaから晴れてリリースされたわけです。

このコラムでは日本のみでリリースされた『DOKKEN』ではなく、正式な5thアルバムとして発表された『DYSFUNCTIONAL』について触れていきたいと思います。

『DOKKEN』も『DYSFUNCTIONAL』も、名作『BREAKING THE CHAINS』(1981年)、『UNDER LOCK AND KEY』(1985年)に関わったマイケル・ワグナーがプロデュース。そう聞けば誰もが「往年のDOKKENよ、再び」と思うことでしょう。しかし、完成したアルバムはそのイメージとは程多いもの。もともとはドンのソロアルバムだったことを考えれば、まぁ頷けなくもないのですが……非常に内向的でダーク、モノトーンなサウンドとHR/HM的なハイトーンボーカルなしという……そうですね、時代的なものもあって、どこかグランジ風と言えると思います。

実際「What Price」なんて“HR版THE DOORS”みたいですし。先行発売された『DOKKEN』では1曲目だったこの曲を初めて聴いたときは、正直顔が“無”になったこと、今でもよく覚えています。

ところが、US版だとこの曲はラスト前の10曲目。このポジションで聴くと不思議と悪くない。とはいえ、US版はそもそも1曲目が「Inside Looking Out」という時点でDOKKENらしくないので、どっちもどっちなんですが。

至るところからPEARL JAMSOUNDGARDENあたりからの影響が感じられるオルタナHR/HM的作風に、突如飛び込んでくるジョージのフラッシーなギターソロ。この噛み合ってない感じがまた居心地の悪さを生み出していて、最高です(悪い意味で)。いかにもDOKKENらしいアコースティックバラード「Nothing Left To Say」もありますし、なぜかシングルヒットした7分以上もあるダークなロックンロール「Too High To Fly」、LED ZEPPELIN風ハードロック「Long Way Home」、サイケなミディアムバラード「The Maze」もある。1曲1曲はそこまで悪くないんだけど、アルバムとして並んだときに醸し出される違和感。なんだろう、やっぱり曲順が悪いんだろうか。

ミックスの途中みたいなサウンドだった日本限定アルバムより、僕はしっかり音が整理され、後から新しいソロなども加えられたUS版のほうがまだ幾分気に入っています。80年代のアルバムと比べれば聴く頻度は低いものの、それでも年に1、2回は引っ張り出して聴きたくなる。そんな珍味的な魅力を持つアルバムではないでしょうか。そこまで嫌いになれないんだよね、これ。



▼DOKKEN『DYSFUNCTIONAL』
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投稿: 2017 10 06 12:00 午前 [1995年の作品, Dokken] | 固定リンク

2017/10/05

JOSH TODD & THE CONFLICT『YEAR OF THE TIGER』(2017)

BUCKCHERRYが2015年夏に発表した7thアルバム『ROCK 'N' ROLL』はそれまでの生々しいまでにパンキッシュなロックンロールとは異なる、文字通りの“ロックンロール”に立ち返った作品集で、個人的には好みだったものの、世間的には不評だったようです。それもあってなのか、今春にはオリジナルメンバーにしてジョシュ・トッド(Vo)とバンドを維持し続けてきたキース・ネルソン(G)、そして復活後にドラマーとして加入したイグザビエル・ムリエルがBUCKCHERRYを脱退。サポートメンバーを迎えて夏のツアーを乗り切ったようですが、どう考えても存続は難しいのではないでしょうか。

そんなタイミングに、ジョシュとスティーヴィー・D(G)がバンドと並行してレコーディングを続けてきたプロジェクトが、この9月にデビューアルバムをリリース。最終的にはJOSH TODD & THE CONFLICTというバンドとして、しばらくはこちらの活動に専念するようです。

ご存知のとおり、ジョシュはBUCKCHERRYが一度解散した際、ソロ名義で『YOU MADE ME』(2003年)というアルバムを1枚だけ発表しています。同作はBUCKCHERRYのイメージを引き継ぎつつも(そりゃそうだ、彼の声こそがバンドの持ち味のひとつだったんだから)、ニューメタル以降のヘヴィ&ラウドなサウンドを取り入れたモダンな仕上がり。正直、BUCKCHERRYよ再び……と思っていたファンには厳しい内容だったと思います。

そこを踏まえつつ、今回の新バンドのデビューアルバムと向き合ったのですが、思った以上に“俺たちのBUCKCHERRY”な仕上がりだったので肩透かしを食らったというか。いや、嬉しかったんですけどね。

ヘヴィな要素は要所要所から感じられつつも、本作で展開されているのはハードドライヴィングでパンキッシュなロックンロール。『ROCK 'N' ROLL』でBUCKCHERRに少し足りなかったものがここで解消されている気がしました。もしかしたらその“足りなかったもの”は、レーベル的にはアウトなものであり、そこに嫌気がさしてキースは脱退したんじゃ……なんて邪推したくなるくらい、“これをBUCKCHERRYでやれよ!”と思ってしまう内容なのです。

攻めもあれば、「Rain」みたいにヘヴィなバラードもあれば、「Good Enough」のようにダークなアコースティックナンバーもある。ダンスミュージックとハードコアをミックスしたような「The Conflict」、ファンキーなヘヴィロック「Atomic」、さらにプリンスの「Erotic City」のカバーまであるんだから(過去にBUCKCHERRYがプリンスの「Cream」をカバーしてたのはジョシュの趣味だったのかしら)、ファンが聴きたかったBUCKCHERRYをジョシュとスティーヴィーの2人が具現化してくれたと言っても過言ではないでしょう。

きっとJOSH TODD & THE CONFLICTのライブではBUCKCHERRYの楽曲も披露されることでしょう。シングルギターバンドなので完全な再現は難しいし、演奏できる曲も限られるかもしれませんが、ひとまずジョシュがまだまだ前のめりでロックし続けたいという意思が強く感じられるこのバンドの成功を陰ながら祈りたいと思います。



▼JOSH TODD & THE CONFLICT『YEAR OF THE TIGER』
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投稿: 2017 10 05 12:00 午前 [2017年の作品, Buckcherry, Josh Todd, Josh Todd & The Conflict] | 固定リンク

2017/10/04

ALICE COOPER『PARANORMAL』(2017)

アリス・クーパー通算27作目のスタジオアルバム。全米22位と大健闘した前作『WELCOME 2 MY NIGHTMARE』(2011年)から6年ぶりのオリジナルアルバムとなりますが、その間にジョニー・デップやジョー・ペリー(AEROSMITH)と組んだHOLLYWOOD VAMPIRESのアルバム『HOLLYWOOD VAMPIRES』が2015年に発表されているので、新作としてはそこまで久しぶりという印象もなかったりするのですが、そこは御大が本気で臨んだオリジナルアルバム。当然、心して向き合うわけです。

全10曲で34分というトータルランニングにまず驚かされるのですが、1曲目「Paranormal」を聴いて、その不穏な空気感とメリーゴーランドのように展開していくアレンジに「これぞ!」と膝を叩きたくなるくらいワクワクするわけです。確かに『WELCOME 2 MY NIGHTMARE』も良い作品だと思いましたが、個人的にはちょっと長すぎかな、というのと曲調の幅が広すぎて散漫に感じてしまったので、もうそりゃあここで大きな期待を重ねるわけです。

で、2曲目「Dead Flies」以降は1曲目とは若干異なるテイスト……70年代初頭、ALICE COOPERというバンド名義だった時代のガレージロックサウンドが展開されていきます。正直1曲目を聴いた時点で求めていた路線ではなかったものの、これはこれで……僕、1989年に『TRASH』で復活して以降の作品で、それほど高く評価されていない『THE LAST TEMPTATION』(1994年)が一番好きだったりするので、本作の路線は個人的に大々的に支持したいくらいなので、本作の路線はアリだと思っています。

この路線に着地したのって、例えばHOLLYWOOD VAMPIRESからの流れだったり、本作のドラムをU2のラリーが担当していたり、オリジナルメンバーのデニス・ダナウェイ(B)、ニール・スミス(Dr)、マイケル・ブルース(G)で録音するなどのアイデアが生まれたからなんでしょうかね。ゲストプレイヤーとしてZZ TOPのビリー・ギボンズ(G)や DEEP PURPLEのロジャー・グローヴァー(B)、そしてスティーヴ・ハンター(G)といった豪華なのか地味なのか微妙な布陣が参加していますが、それによって特に派手に仕上がることもなく。それでいいんでしょうけどね、本作の場合は。

また本作は永久仕様としてボーナスディスクが付いており、そちらにデニス、ニール、マイケルのオリメンが参加した新曲2曲と、「No More Mr.Nice Guy」「Under My Wheels」「Billion Dollar Babies」「Feed My Frankenstein」「Only Women Bleed」「School's Out」と往年(+90年代前半)の代表曲のライブテイクを聴くことができます。新曲2曲はちょっとユルユルかな……というシンプルなロックンロール。本編に入れるには軽すぎるし、ちょっとしたお遊びとして楽しむには十分かな。このボーナスディスクの内容を足しても70分には満たないし、全部1枚にまとめられるじゃんと思う人も多いみたいだけど、やっぱりアリス自身はディスク1の10曲で完結させたいという思いがつy買ったんじゃないかな。オリメンとの2曲はEPみたいな扱いで、アルバム本編とは別という。アルバム本編でも9曲目「Rats」がオリメンで演奏された楽曲だけど、こっちはもっとソリッドな仕上がりで、本編の流れに沿っているので収録を決めたと。そういうことなんでしょう。

とうわけで、本気で支持したいこのアルバム。全米32位と前作には及びませんでしたが、僕は大好きですよ。非常にライブ向きですし。

そういえば、まもなく『LOUD PARK 2017』で久しぶりに来日しますね。前回の来日は2008年3月。単独公演とは違ってフルセットを楽しめるわけではありませんし、そうなると新曲もどれだけ削られるのかわかりませんが、今は素直に久しぶりの新作と久しぶりの来日に対して、素直に酔いしれたいと思います。



▼ALICE COOPER『PARANORMAL』
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投稿: 2017 10 04 12:00 午前 [2017年の作品, Alice Cooper, Deep Purple, U2, ZZ Top] | 固定リンク

2017/10/03

MAD SEASON『ABOVE』(1995)

ALICE IN CHAINSのレイン・ステイリー(Vo)、PEARL JAMのマイク・マクレディ(G)、SCREAMING TREESのバレット・マーティン(Dr)、THE WALKABOUTSのジョン・ベイカー・サウンダーズ(B)により1994年に結成されたグランジ界のスーパーバンドMAD SEASON。その彼らが1995年春に発表した、唯一のスタジオアルバムが本作『ABOVE』(邦題は『生還』)です。

PEARL JAMのギタリスト&ソングライターのひとりと、ALICE IN CHAINSの空気感・世界観をその歌声で一気に作り上げるフロントマン。この2人の邂逅が一体何を生み出すのか、そりゃあ当時相当気になったものです。そもそも、ALICE IN CHAINS自体がその頃は活動が不安定な時期でしたから、余計にね(その不安定の原因はレインその人なんですけど)。

アルバムのオープニングを飾る「Wake Up」は、7分半にもわたるブルージーな1曲。これ1曲で、MAD SEASONがPEARL JAMでもALICE IN CHAINSでもないことが証明されるわけですが、劇的な展開をするでもなく、今にも消えそうな炎がゆらゆらと燃えるかのようなスタイルといえばいいのでしょうか。そのサウンドの上を、あの爬虫類的なレインの歌声がうごめき回るわけです。しかも、ALICE IN CHAISほど攻撃的ではなく、それでいて生き物なのか作り物なのか正体不明な存在感を醸し出しながら。

1曲、1曲と聴き進めるうちに、楽曲自体はPEARL JAMのメンバーが作っていることはなんとなく理解できるようになりました。しかし、レインという個性的なシンガーの声が乗ることにより、新たな何かがそこに誕生する。レインも自身のバンドより肩の力を抜いて、脱力気味で気持ち良さげに歌っており、時々力強く声を張り上げたりもしますが、それもあくまで味付け程度。決して音数が多くないバンドアンサンブルとともに、主旋律に被さるハーモニーが不協和音と美しい和音の間を行き来する。派手さは皆無ながらも、なぜか心のど真ん中を突いてくる。それがMAD SEASONが持つ不思議な魅力なんだと思います。

また、このバンドのサウンドを分析することで、改めてALICE IN CHAINSはジェリー・カントレル(G, Vo)が作る楽曲こそがバンドの骨格なんだという事実、そしてPEARL JAMはエディ・ヴェダー(Vo)という稀代のシンガーが歌うことでPEARL JAMとして成立するんだというごく当たり前のことに気づかされるわけです。

アルバム中盤、「Lifeless Dead」あたりから“いかにも”な曲が登場することで、ああそうだった、彼らはグランジシーンから登場したんだったということを思い出す。MAD SEASONはそれくらい、あのシーンの末期から誕生した異端児だったのです。本当はこのアルバムに続く新作を、このメンバーで聴きたかったけど、それも今では叶わぬ夢。1999年にはジョンが、2002年にはレインが亡くなっているため、オリジナル編成での復活は実現不可能に。2015年にはクリス・コーネルダフ・マッケイガンを迎えたスペシャル編成での復活がありましたが、そのクリスも……。つくづく不運な宿命を持ったバンドだったんですね。



▼MAD SEASON『ABOVE』
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投稿: 2017 10 03 12:00 午前 [1995年の作品, Alice in Chains, Mad Season, Pearl Jam] | 固定リンク

2017/10/02

MATT CAMERON『CAVEDWELLER』(2017)

SOUNDGARDENPEARL JAMのドラマーとして知られるマット・キャメロンがキャリア初となるソロアルバムをリリースしました。

本作ではプロデューサーとしてのみならず、ソングライターやシンガー、ギタリスト、ベーシストなどとしてマルチな才能を発揮しておりますが、ドラムは叩いておらず、デヴィッド・ボウイのアルバム『★ (BLACKSTAR)』(2016年)でプレイしていたマーク・ジュリアナと、同じく『★』に参加したティム・ルフェーブル(B)がリズム隊を担当しているそうです(ティムは一部楽曲のみで、他はマットが演奏)。

どんな音になるのかと思いドキドキしながら再生してみると、序盤は意外と普通のロック……と言っては語弊があるかな。まぁあれです、マットの現在のメインバンドであるPEARL JAMからイメージできる、オーソドックスなロックとでも言えばいいんでしょうか。SOUNDGARDENほどハード&ヘヴィではなく、どこか内向的な空気が漂う落ち着いたアメリカンロック。うーん、うまく言語化できませんが、PEARL JAMが好きな人なら気にいるサウンドだと思います。

曲によってはアコースティックギターが前面に打ち出されていたり、かと思えばシンセを軸にした楽曲もある。ちょっとフュージョンぽいインスト曲「Into The Fire」、アバンギャルドなギターソロが登場する「One Special Lady」、もっともSOUNDGARDEN的と言えなくもないラストナンバー「Unneccesary」と個性的な楽曲もあるにはあるけど、あくまで中心となるのは歌。そのへんはPEARL JAMのイメージから外れないと思います。マットの歌声も悪くないし、変に声を張り上げることなく大人な雰囲気。どの曲も2〜3分台で、全9曲でトータル29分という非常に聴きやすいトータルランニングも良いと思います。

なお、「One Special Lady」後半に登場するギターソロをプレイしているのは、アラン・ヨハネスというチリ出身のマルチプレイヤー。調べてみるとこの人、クリス・コーネルのソロアルバム『EUPHORIA MORNING』(1999年)とか、元PEARL JAMのドラマー、ジャック・アイアンズのソロアルバム『ATTENTION DIMENSION』(2004年)とかにも参加している、シアトル界隈ともそれなりに縁がある人みたいですね。

アルバム後半が意外とニューウェイブの香りをさせるあたりに意外性はあるものの、最初にも書いたように全体的には“PEARL JAMのメンバーが作ったソロ作品”らしい内容で、極端に逸脱はしてないはず。プログレポップが好きな人は、特に「Into The Fire」「Real And Imagined」あたりは気にいるんじゃないでしょうか。僕はこの2曲と、先に挙げた「One Special Lady」の3曲が気に入っています。

ちなみに本作、CDでのリリースは今のところないみたいです。各配信サイトでのダウンドロード販売やストリーミング、そしてPEARL JAMオフィシャルショップで販売されているアナログ盤(一部、Amazonでも販売予定)で聴くことができます。



▼MATT CAMERON『CAVEDWELLER』
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投稿: 2017 10 02 12:00 午前 [2017年の作品, Matt Cameron, Pearl Jam, Soundgarden] | 固定リンク

2017/10/01

PRINCE『SIGN O' THE TIMES』(1987)

1987年春に発表された、プリンス通算9作目のスタジオアルバム。“PRINCE & THE REVOLUTION”名義で発表された『PURPLE RAIN』(1984年)、『AROUND THE WORLD IN A DAY』(1985年)、『PARADE』(1986年)を経て、ソロ名義では1982年の『1999』以来4年半ぶりのアルバム。しかも同作以来の2枚組作品(『1999』はアナログ2枚組でしたが、CD化の際に1枚に。『SIGN O' THE TIMES』はCDでも初の2枚組)でした。

世代的に『PURPLE RAIN』からプリンスの音楽に触れ、「曲はカッコ良いのに声が気持ち悪い」と思っていた、あの頃10代前半だったリスナー、多かったんじゃないでしょうか。まさに自分がそうで、『AROUND THE WORLD IN A DAY』は苦手意識のほうが勝ってしまいしばらく放置(高校生くらいまで)。が、『PARADE』収録の「Kiss」のファルセットはなぜかイケて、ハマってしまったクチでした(もっともアルバム自体は当時、そこまでのめり込めませんでしたが)。

で、『SIGN O' THE TIMES』。先行シングルのタイトルトラックの淡々とした曲調、まずこれにヤラレました。もはやこの頃になると声の気色悪さはほとんど気にならず、むしろこの声じゃないとダメ!とすら思えるように。確か、レンタルではなく初めて購入したプリンスのアルバムが本作だったと記憶しています。

全16曲、約80分というボリュームは当時の自分にとっては相当なものがありました。だって、情報量が多すぎて……単なるファンクや R&Bだけでなく、ポップやロック、ハードロック、ヒップホップ、サイケ、ソウルetc…いろんな要素詰まりまくりで、すべてを理解するには相当の時間を要したことを、今でもよく覚えています。ぶっちゃけ、今でも完全に理解しきれているかと言われたら微妙ですが、少なくとも20代になってしばらく経ってから、このアルバムの本当の凄味に気づいたんじゃないでしょうか。

本来は3枚の別々のアルバムだったものを、 THE REVOLUTION解散などを経てひとつの作品にまとめ込んだのが本作。これまでも1枚のアルバムの中にいろんな要素を詰め込んむ人ではありましたが、本作が過去の作品の比じゃなほどに雑多なのは、そういった理由もあるのかもしれません。にしても、やりすぎだろ!と思っちゃうほどに遊びまくり実験しまくり、なのに自然とするする聴けてしまう。

プリンスの声色も曲によってカラフルに変わっており、時には爬虫類系の声色で歌い、時にはファルセットでセクシーに歌い、ある時にはエフェクトかけまくりの歌声を披露する。もはや自身の声すらも楽器のひとつとして、自身の楽曲を最高の形で演出する。そういった意味では、この人はシンガーというよりも音楽家だったんだなと。

昔はハードでロック色が強く、パーティ感もにじませていたディスク2を気に入っておりましたが、最近はもっぱらいディスク1にやられまくり。やっぱりタイトルトラックの無機質感(密室ファンク!)といい、そこからパーティチューン「Play In The Sunshine」を経て「Forever In My Life」まで続く怒涛の流れは、本当に圧巻。これがあるから、ディスク2がより映えるということにも、改めて気づかされました。

本作をプリンスの最高傑作に挙げるファンも多いようですが、それも納得の内容。本作と続く『LOVESEXY』(1988年)、そしてその間にリリースされる予定だった『THE BLACK ALBUM』(1987年12月発売予定だったものの、直前に発売中止。1994年にようやく日の目を見ました)の3作は本当に神がかっていたんだなと、今さらながら時間しているところです。

ただ、ひとつだけ難点を挙げるとしたら、曲ごとに録音レベル(音量)が異なること。1曲目「Sign O' The Times」を基準に聴き始めると、続く「Play In The Sunshine」で急に音量が小さくなるし、その後も変動を繰り返し続けるという。まあこれすらも、聴き手を惹きつけるための戦略なのかな、なんて邪推してしまうわけですが(そんなことないでしょうけどね)。



▼PRINCE『SIGN O' THE TIMES』
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投稿: 2017 10 01 12:00 午前 [1987年の作品, Prince] | 固定リンク