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2017/10/03

MAD SEASON『ABOVE』(1995)

ALICE IN CHAINSのレイン・ステイリー(Vo)、PEARL JAMのマイク・マクレディ(G)、SCREAMING TREESのバレット・マーティン(Dr)、THE WALKABOUTSのジョン・ベイカー・サウンダーズ(B)により1994年に結成されたグランジ界のスーパーバンドMAD SEASON。その彼らが1995年春に発表した、唯一のスタジオアルバムが本作『ABOVE』(邦題は『生還』)です。

PEARL JAMのギタリスト&ソングライターのひとりと、ALICE IN CHAINSの空気感・世界観をその歌声で一気に作り上げるフロントマン。この2人の邂逅が一体何を生み出すのか、そりゃあ当時相当気になったものです。そもそも、ALICE IN CHAINS自体がその頃は活動が不安定な時期でしたから、余計にね(その不安定の原因はレインその人なんですけど)。

アルバムのオープニングを飾る「Wake Up」は、7分半にもわたるブルージーな1曲。これ1曲で、MAD SEASONがPEARL JAMでもALICE IN CHAINSでもないことが証明されるわけですが、劇的な展開をするでもなく、今にも消えそうな炎がゆらゆらと燃えるかのようなスタイルといえばいいのでしょうか。そのサウンドの上を、あの爬虫類的なレインの歌声がうごめき回るわけです。しかも、ALICE IN CHAISほど攻撃的ではなく、それでいて生き物なのか作り物なのか正体不明な存在感を醸し出しながら。

1曲、1曲と聴き進めるうちに、楽曲自体はPEARL JAMのメンバーが作っていることはなんとなく理解できるようになりました。しかし、レインという個性的なシンガーの声が乗ることにより、新たな何かがそこに誕生する。レインも自身のバンドより肩の力を抜いて、脱力気味で気持ち良さげに歌っており、時々力強く声を張り上げたりもしますが、それもあくまで味付け程度。決して音数が多くないバンドアンサンブルとともに、主旋律に被さるハーモニーが不協和音と美しい和音の間を行き来する。派手さは皆無ながらも、なぜか心のど真ん中を突いてくる。それがMAD SEASONが持つ不思議な魅力なんだと思います。

また、このバンドのサウンドを分析することで、改めてALICE IN CHAINSはジェリー・カントレル(G, Vo)が作る楽曲こそがバンドの骨格なんだという事実、そしてPEARL JAMはエディ・ヴェダー(Vo)という稀代のシンガーが歌うことでPEARL JAMとして成立するんだというごく当たり前のことに気づかされるわけです。

アルバム中盤、「Lifeless Dead」あたりから“いかにも”な曲が登場することで、ああそうだった、彼らはグランジシーンから登場したんだったということを思い出す。MAD SEASONはそれくらい、あのシーンの末期から誕生した異端児だったのです。本当はこのアルバムに続く新作を、このメンバーで聴きたかったけど、それも今では叶わぬ夢。1999年にはジョンが、2002年にはレインが亡くなっているため、オリジナル編成での復活は実現不可能に。2015年にはクリス・コーネルダフ・マッケイガンを迎えたスペシャル編成での復活がありましたが、そのクリスも……。つくづく不運な宿命を持ったバンドだったんですね。



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投稿: 2017 10 03 12:00 午前 [1995年の作品, Alice in Chains, Mad Season, Pearl Jam] | 固定リンク