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2017/11/30

2017年11月のお仕事

2017年11月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※11月22日更新)


[WEB] 11月22日、「リアルサウンド」にてLittle Glee Monsterインタビュー「『紅白』初出演も決定! Little Glee Monsterが明かす『陸王』劇中歌起用の裏側&新作での挑戦」が公開されました。

[WEB] 11月21日、「リアルサウンド」にてGLAY HISASHIインタビュー「GLAY HISASHIが語る、“感覚”を信じた作品づくり「音楽がさらに自由に、みんなのものになった」」が公開されました。

[紙] 11月17日発売「月刊AKB48グループ新聞」11月号にて、乃木坂46「担当記者が振り返るドーム公演」座談会に参加しました。

[紙] 11月15日発売「TV Bros.」2017年11月19日号にて、SAM SMITH『THRILL OF IT ALL』、SONS OF APOLLO『PSYCHOTIC SYMPHONY』アルバムレビューを担当・執筆しました。

[WEB] 11月15日、「別冊カドカワDirect×SILENT SIREN」特設ページにてSILENT SIRENすぅ(Vo, G)インタビュー「SILENT SIREN・すぅ、変革のタイミングである“今”を語る」が公開されました。」」

[WEB] 11月9日、「リアルサウンド」にてCrossfaithのライブ評「Crossfaithが10周年ツアーで見せた“信念” 初日公演をいち早く分析」が公開されました。

[WEB] 11月7日、「リアルサウンド」での連載「日本ヘヴィメタル/ラウドロック今昔物語」にて第7回「浜田麻里からLOVEBITESまでーーガールズHR/HM、波乱万丈の30年史」が公開されました。

[WEB] 11月4日、「BUBKA」公式サイトにて雑誌「BUBKA」12月号掲載分けやき坂46佐々木久美&井口眞緒インタビュー『もうひとつの夏』の一部が公開されました。

[WEB] 11月2日、「BUBKA」公式サイトにて雑誌「BUBKA」12月号掲載分欅坂46小林由依インタビュー『ここには私がいる』の一部が公開されました。

[紙] 11月1日発売「TV Bros.」2017年11月4日号にて、米津玄師『BOOTLEG』、EUROPE『WALK THE EARTH』アルバムレビューを担当・執筆しました。

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また、10月に当サイトで紹介したアルバム(Spotifyで配信している作品のみ)から各2曲程度ピックアップして、50曲程度のプレイリストを制作しました。題して『TMQ-WEB Radio 1710号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。


投稿: 2017 11 30 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

2017/11/24

QUEEN『NEWS OF THE WORLD』(1977)

1977年10月発売の、QUEEN通算7作目のスタジオアルバム。それまで音を重ねまくり、アレンジも緻密に作り込まれた印象の強かったQUEENの作品ですが、本作ではその余韻を残しつつも、全体的にシンプルな方向へと移行しています。思えば発売されたのが1977年秋。本国イギリスではすでにSEX PISTOLSTHE CLASHTHE DAMNEDなどのロンドンパンク勢がブレイクし始めた時期で、少なからずそこからの影響があったのでは……なんて想像もできちゃうような、QUEEN流“シンプル・イズ・ベスト”な1枚です。

思えば、オープニングから「We Will Rock You」というシンプル以外の何ものでもないショートチューンから始まるわけですから。そのまま「We Are The Champions」へと続く流れは、ロックファンならご存知のとおり。彼らのライブを知る者ならば、オープニングからエンディング(意味、わかりますよね?)な構成は、結果として非常に大きな“掴み”になっています。そういえば、本作からはこの2曲が先行シングルとしてリリースされたわけで、アルバム冒頭をシングル曲が飾るという構成も、QUEENというバンドが認知されて以降のオリジナルアルバムとしてはこれが初の試み。アルバムアーティストという印象も少なからずあったバンドだけに、このへんは“対アメリカ”という思いもあったのではないでしょうか。

そして、そこからパンキッシュなファストチューン「Sheer Heart Attack」へとなだれ込む。あれ、3rdアルバムと同タイトル? そう、同作からのアウトテイクなんですね、これ。かと思えば「All Dead, All Dead」「Spread Your Wings」のような従来のQUEENらしい曲もあるんだけど、驚くのは中盤の「Fight From The Inside」(ロジャー・テイラーVo曲)と「Get Down, Make Love」じゃないでしょうか。80年代以降のブラックミュージック路線を先取りした「Fight From The Inside」と、どこかポストパンクの香りすらする「Get Down, Make Love」は、それ以前のQUEENのイメージからすると少々異色かもしれませんね。ただ、後者はその後NINE INCH NAILSがカバーするなど、隠れた人気の1曲なんですよね。僕もお気に入りの1曲です。

そして、ブライアン・メイが歌うブルージーなロックンロール「Sleeping On The Sidewalk」、牧歌的なアコースティックナンバー「Who Needs You」、6分半にわたるロックンロールエピック「It's Late」、フレディ・マーキュリーらしさに満ち溢れたクラシカルなピアノバラード「My Melancholy Blues」でエンディングを迎えます。

確かに、前作『A DAY AT THE RACES』(1976年)や前々作『A NIGHT AT THE OPERA』(1975年)あたりと比較すると、非常にラフでシンプルさが目立つ作風/楽曲群ですが、これがアメリカで当たったことでその後のQUEENの軸になっていくんですよね。それを良しとするか否かで、本作およびこれ以降のQUEENに対する評価が分かれるのかもしれません。個人的には産業ロック路線含め、このバンドの多面性が大好きなのでアリな1枚です。ていうか、どこが悪いのかわかりません。きっと、リアルタムで初期のQUEENに出会っていたら、こんなこと思いもしなかったんだろうけどね。



▼QUEEN『NEWS OF THE WORLD』
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投稿: 2017 11 24 12:00 午前 [1977年の作品, Queen] | 固定リンク

2017/11/23

METALLICA『MASTER OF PUPPETS: DELUXE EDITION』(2017)

1986年春に発表された、言わずと知れたMETALLICAの出世作(3rdアルバム)。前2作はインディーズのMegaforceからのリリースでしたが、本作からメジャーのElektraに移籍しての発表となり、当時全米29位まで上昇するという、MVも作らない、ラジオでもかかりにくい一介のスラッシュメタルバンドとしては異例の大ヒットを記録しました……なんていう、本作が当時いかに画期的だったかは、2003年5月に執筆した本作のレビューをご確認ください。

また、本作との出会いや1986年11月の初来日公演体験記などのエピソードが、11月24日発売の『ヘドバン Vol.16』に掲載されているので、そちらも併せてお読みいただけると幸いです。

さて、今回ここで紹介するのは、先日リリースされた『MASTER OF PUPPETS』の公式リマスター盤(これまで国内盤独自のリマスター盤は何度か発売済み)、未発表音源を豊富に収めた3枚組デラックスエディション、そしてCD10枚組+DVD2枚組+アナログ3枚組+カセットテープからなるデラックス・ボックスセットの3形態のうち、もっとも手軽に手に入って新規の音源も楽しめる3枚組デラックスエディションを紹介したいと思います。

実は僕自身、国内制作のリマスター盤を聴いておらず、手元にあるのは1986年に発表されたCBSソニー盤CDと、数年前にリイシューされたアナログ盤のみ。アナログ盤とCDでの音質や体感の違いについてはここでは省略しますが、あくまでオリジナル盤音源と比べて、最新のリマスタリングがどうかという視点で語っていきたいと思います。


【DISC 1:Remastered】

最初にヘッドフォンで聴いたときは、正直「そこまで音が良くなってるのかな?」と微妙に感じましたが、確かにオリジナル盤にあったモコモコした感触は払拭され、よりクリアになってる印象。スピーカーを通して聴くと、そのへんはよりわかりやすいと思います。

とにかく、ベースの音が非常に聴き取りやすいのが良いです。当時のミックスのせいなのか、『RIDE THE LIGHTNING』(1984年)と本作ってベースがギターのザクザク感に負けていて、ところどころ聴き取りにくかったんですよね。特に楽器をやる者からすると、とても耳コピしにくい。それが、リマスター盤では「ここまで音の粒が認識できるのか!」と驚かされるわけです。

あと、「Battery」冒頭のアコギの音の粒やクリア感にも違いが感じられる。「Welcome Home (Sanitarium)」も違いが顕著かな。ラウドな曲よりも、実は繊細さを伴う楽曲のほうがそのへんの変化に気づきやすいような気がします。

ただ、オリジナル盤にあった「4つの楽器がひとつの塊になって襲ってくる感」は減ったように感じます。音の分離が良くなったせいで、そういう迫力が弱くなったのかもしれませんね。これは、先日のWHITESNAKE『WHITESNAKE』(1987年)の30周年リマスターでも感じたことですが、やっぱり“その時代の音”というのが存在するわけで、それを無理に現代的に仕切りなおそうとすると、当時のマジックが消え去ってしまうのかな。そこだけは残念です。


【DISC 2:Demo, Rough Mix & Interview】

アルバム『MASTER OF PUPPETS』収録曲全8曲と、アウトテイク「The Money Will Roll Right In」、次作『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)の日本盤や同作からのシングルに収められたカバー「The Price」のデモバージョンが収録されています。音質的には決して良くはないですが、リハーサルスタジオであの名曲たちがどういう過程を経て完成にたどりついたのかが、よくわかると思います。

曲によってはボーカル抜きだったりしますが、例えば「Master Of Puppets」が初期は『KILL'EM ALL』(1983年)っぽいヒステリックな歌メロだったり、初期の「Welcome Home (Sanitarium)」が発表されたスタジオ版以上にプログレッシブな展開だったり、「The Prince」のベースがくっきりと聴き取れたり(笑)と、慣れ親しんだ名曲たちの違う表情に驚かされることは間違いありません。

あと、未発表曲の「The Money Will Roll Right In」は「The Thing That Should Not Be」や「For Whom The Bell Tolls」あたりに通ずるミドルヘヴィナンバー。歌メロが乗ってないバックトラックのみなので、途中で完成させることを諦めた1曲なのかな。正直、『...AND JUSTICE FOR ALL』に入っていたとしても不思議じゃないけど、まぁ“捨て曲”っちゃあ捨て曲ですよね。

あ、最後に『Metal Madness』誌でのクリフ・バートンのインタビューが20分近くにわたり収録されていますが、まぁオマケってことでひとつ。


【DISC 3:Live From“The Damage Inc. Tour”】

当時収録されたらさまざまな場所でのライブ音源がボックスセットには収められていますが、このディスクではそこから抜粋して当時のセットリストに沿って並べた“擬似ライブ”を体験できます。正直、初来日公演時は『MASTER OF PUPPETS』からの楽曲しか知らなかったので、ライブで演奏されたうち半分以上知らない曲だったし、それ以上にライブが衝撃的すぎて記憶が定かでない部分もあるのですが、こうやって聴くと「ああ、こんな感じだったかな……」とうっすら記憶がよみがえってくる部分もあったり。

まあ音質は決して褒められるものではありません。当時FM局放送用に残されたもの、ライブミキサーからライン収録されたもの、あるいはカセットテープで簡易録音されたものなど、そもそもリリースを想定して収録されたものではないですからね。今みたいに全公演ライン録音で収録して、ライブから数日後にネット配信する時代になるなんて、30年前は想像もできなかったわけですから。単にこの貴重な音源の数々を手軽に楽しめるようになった現実を素直に受け入れ、楽しむことにしましょう。


【総評】

まだ『MASTER OF PUPPETS』を聴いたことがない……という奇特な方は本サイト読者には少ないかと思われますが、万が一まだ聴いたことがないという場合に、今回の3枚組エディションはうってつけかもしれません。輸入盤なら、国内盤の新品を買うよりも安いですしね。あるいは、もっと安く済ませたいのなら、アルバム本編のリマスター盤のみの1枚ものを購入するのもあり。

そして、「いや、音が悪くてもオリジナルにこだわる!」という奇特な方は……中古盤でさらにお安く、2017年以前に発売されたバージョンを購入することをオススメします。それもありっちゃあありでしょう。

ということで、今夜はこの名盤を久しぶりに大音量で楽しみたいと思います。


※Spotifyはリマスター盤単品かボックスセットの二択だったので、ボックスセットのほうを貼っておきます。



▼METALLICA『MASTER OF PUPPETS: DELUXE EDITION』
(amazon:国内盤3CD / 海外盤3CD / iTunes

投稿: 2017 11 23 12:00 午前 [1986年の作品, 2017年の作品, Metallica] | 固定リンク

2017/11/22

EXTREME『III SIDES TO EVERY STORY』(1992)

1992年秋に発表された、EXTREME通算3作目のオリジナルアルバム。1990年夏にリリースした前作『EXTREME II: PORNOGRAFFITTI』からのシングル「More Than Words」が全米1位、続く「Hole Hearted」も全米4位とヒット曲を連発し、アルバム自体も全米10位まで上昇し、200万枚以上も売り上げる結果に。続く本作はその成功を踏まえた、前作の延長線上にある内容になるかと思われました。

しかし、いざ届けられたアルバムはアナログ盤で2枚組に相当するコンセプチュアルな内容。確かに「More Than Words」的アコースティック/バラード路線も「Get The Funk Out」の流れを組むファンクメタル路線も引き継いでいるものの、よりやりたい放題でとっ散らかった作風と言えるような代物でした。

「Yours」「Mine」「The Truth」という3つの側面=III SIDESから構成された本作は、大雑把に言うと「Yours」がハードロック/ファンクロックサイド、「Mine」がメロウ/バラードサイド、「The Truth」はプログレッシヴロックサイド……といったところでしょうか。

「Yours」はヌーノ・ベッテンコート(G)のギタープレイが前面に打ち出されたファストナンバー「Warheads」からスタート。続く先行シングル「Rest In Peace」はファンキーでサイケデリックながらも歌メロがキャッチーな、いかにもシングル向きの1曲。ギターソロ終盤に登場するジミヘンの名フレーズ含め、彼らの遊び心が感じられる仕上がりです。「Politicalamity」「Cupid's Dead」は彼らのファンクロックサイドを強調させた楽曲で、それぞれ前作の延長線上にありながらもより深みを増した印象があります。そんな中で「Color Me Blind」はちょっと異色の1曲かな。ストレートなメロディアスハードロックなのですが、すごく引っかかりのある楽曲なんです。そういう意味では、彼らの新境地と言えるかもしれません。

続く「Mine」は、ギターレスのポップバラード「Seven Sundays」からスタート。これなんて、もろにQUEENですよね。そこから「Hole Hearted」の流れをくむ「Tragic Comic」続き、次の「Our Father」からの構成はまさに初期のQUEENのアルバム。大げさでドラマチックで、ロックの域を逸脱したポップさは、確かにハードロックを彼らに求める層にはちょっと疑問が残る楽曲群かもしれません。

で、そこをさらに激化させたのが「The Truth」サイド。全3曲から構成された「Everything Under The Sun」という組曲は、トータル22分におよぶ大作で、ストリングスや管楽器まで登場する……もはやハードロックの枠で語りたくなくなる壮大な交響曲です。「ああ、ヌーノはこれがやりたかったんだな」と、ここにたどり着いて納得させられました。つまり、メタルサイドもファンクサイドもポップサイドもちゃんと残して、それを序盤に詰め込んで、最後の最後に「ここからは好きにやらせてもらいます」と20分以上の組曲を投入する。見方次第では作り手のオナニーと受け取られてしまう可能性も高いですが、でもリスナーが求めるものもしっかり提供しているわけで、そこはちゃんとバランスが取れてると思うんですよね。

そういうオナニー的な部分が災いして、というわけではないでしょうが、本作は全米10位と前作同様の記録を残すものの、セールス的には50万枚止まり。というのも、世の中的にはNIRVANAをはじめとするグランジ勢がロックシーンを席巻し、ハードロック勢は“時代遅れ”として後ろに追いやられてしまったわけです。そんな状況下でもこれだけの数字を残せたのは、ある意味ラッキーだったのかもしれませんね。

ちなみに本作、収録時間の関係でCDバージョンだと「Mine」サイドラストナンバーの「Don't Leave Me Alone」がカット。アナログやカセット版には問題なく収録されているのですが……ということもあって、国内盤初版発売時は同曲のみが収められたオマケの8cmCDが付いていたりもしました。配信が主流になった今こそ、完全版で再発してほしいんですけどね。



▼EXTREME『III SIDES TO EVERY STORY』
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投稿: 2017 11 22 12:00 午前 [1992年の作品, Extreme] | 固定リンク

2017/11/21

MICHAEL MONROE『PEACE OF MIND』(1996)

スティーヴ・スティーヴンスとのJERUSALEM SLIM空中分解、続いて結成したDEMOLITION 23.もメンバー脱退などを経て気づけば4分の3がHANOI ROCKSという中途半端な形となり、こちらもあえなく空中分解。そんな失敗を繰り返した90年代前半を経て、マイケル・モンローはニューヨークから故郷フィンランドへと戻ることになります。

そんな状況下で、文字どおり“心の平穏”を求めるかのように制作されたのが、ソロ名義では3作目のスタジオアルバムとなる本作『PEACE OF MIND』。本来なら「“あの”マイケル・モンローの新作!」と大々的にプッシュされてもおかしくないのに、当時は意外とひっそりリリースされたことをよく憶えています。

全10曲で33分というCD全盛時代にしては短いトータルランニング、10曲中3曲がカバー(THE DAMNED「Machine Gun Etiquette」、MC5「Kick Out The Jams」、THE DEAD BOYS「Not Anymore」という、マイケルにしてはわかりやすすぎる選曲)という内容も特にプラスに働くことはなかったのも、そういった大プッシュされなかった理由でしょうし、それ以上に本作のレコーディングにおいてドラム以外の楽器をほぼマイケルが演奏したという事実が、スタープレイヤー揃いだったバンド時代と比較して地味だという理由で足を引っ張ったのかもしれません。事実、リリース当時は「サウンド的にもボーカル的にも派手さに欠けるなぁ……」と感じ、あまり聴き返さなかった記憶があります。

が、あれから21年経った今聴き返してみたら、意外と良いんですよね。ドラムは全部DEMOLITION 23.のジミー・クラークが叩いていおり、ベースやギターなどのベーシックトラックはマイケルがプレイ。数曲で地元のギタープレイヤーが参加していますが、基本はマイケルが自身の“タイム感”をもとに演奏してるわけだから、悪いわけがない。

オリジナル曲は全体的にミディアムテンポ中心で、オープニングの「Where's The Fire John?」や「Always Right」あたりは2ndソロ『NOT FAKIN' IT』(1989年)にも通ずるものがあるし、マイケルらしいセンチメンタリズムは「Loneliness Loves Me More」で表現されている。かと思うとDEMOLITION 23.時代に制作したと思われる「Relationship Wrecked」ではあの世界観がそのまま展開され、肩の力が抜けたパンクチューン「Rent Free」もある。うん、全体的に悪くないんですよね。突出した1曲はないんだけど、まったり楽しめる1枚という印象です。

で、問題なのは本編ラストのタイトルトラック「Peace Of Mind」。これ、いわゆるコラージュトラックなんですが……“心の平穏”というより“心の混沌”が表現された2分間なんですよね。ああ、そうか。本当の意味での平穏を取り戻すために、マイケルはここで混沌を吐き出さなくちゃいけなかったのか。バンド編成をとらずに大半の楽曲を自分で演奏したのは、そこに到達するための通過儀礼だったのか……そんなことを感じました。けど、ここでの吐露があったからこそ、続く『LIFE GETS YOU DIRTY』(1999年)で復活の狼煙が上げられたわけですもんね。

なお、本作は2000年にボーナストラック2曲を追加したリイシュー盤が海外でリリースされています。こちらにはスティヴ・ベイターズ(THE DEAD BOYS)がゲスト参加したRASPBERRIESのカバー「I Wanna Be With You」と、ソロ1stアルバム『NIGHTS ARE SO LONG』(1987年)収録曲「It's A Lie」のスティヴ・ベイターズ参加バージョンが追加されています。後者は今年発売されたマイケルのソロベスト『THE BEST』でも聴くことが可能です。

また、残念ながら本作はデジタル配信&ストリーミング配信されておりません。先の『THE BEST』には本作から「Where's The Fire John?」「Make It Go Away」、そしてボーナストラックの「It's A Lie (feat. Stiv Bators)」の3曲が収録されているので、まずはそこから触れてみてはどうでしょう。



▼MICHAEL MONROE『PEACE OF MIND』
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投稿: 2017 11 21 12:00 午前 [1996年の作品, Michael Monroe] | 固定リンク

2017/11/20

HANOI ROCKS『BACK TO MYSTERY CITY』(1983)

初めて聴いたHANOI ROCKSのアルバムが本作『BACK TO MYSTERY CITY』でした。1983年5月に発表された通算3作目のオリジナルアルバム。スタジオアルバムとしては、前作にあたるコンピレーション盤『SELF DESTRUCTION BLUES』(1982年)を含めれば4作目となります。

本作は間違いなく、彼らの名をワールドワイドに知らしめるきっかけとなった第一歩。事実、本作の高評価がのちのメジャー契約けとつながったわけですからね。

で、実際にその内容も過去3作から格段にレベルアップしています。プロデュースを手がけたのは、元MOTT THE HOOPLEのデイル・グリフィンとピート・オヴァレンド・ワッツ(デイルは昨年1月、オヴァレンドは今年1月にそれぞれ亡くなっております。ご冥福をお祈りします)。前作までにあった“バタ臭さ”や“B級臭”が一気に薄らぎ、とても“北欧出身のインディーグラムロックバンド”なんて感じさせない音に仕上げられています。

そして、楽曲自体のクオリティ(主にアレンジ面)が格段に向上。オープニングのアコギ&フルートによるインスト「Strange Boys Play Weird Openings」から名曲「Malibu Beach Nightmare」へと続く構成は、ロック史屈指の名演と断言したいし、なによりその「Malibu Beach Nightmare」の名曲ぶりといったら……グラムロックとパンクの良さを絶妙にブレンドし、さらに自分たちのオリジナルへと昇華させたその技量に、改めて驚かされます。

そのほかにも「Mental Beat」や名バラード「Until I Get You」、ポップでキャッチーな「Ice Cream Summer」、ライブのクライマックスに相応しい「Back To Mystery City」など、今聴いても最高にクールな名曲が豊富。パンクロックのオリジネーターへのリスペクトも込められた「Tooting Bec Wreck」もあれば、どこかニューウェーブテイストの「Lick Summer Love」、ドラマチックなコード進行&アレンジが日本人好みな「Beating Gets Faster」もある。次作にして最初の解散前ラストアルバムとなってしまった『TWO STEPS FROM THE MOVE』(1984年)が第1期HANOI ROCKSの完成形だとすると、本作で表現されているのはそのプロトタイプであり、A級とB級の間にいる彼らのアンバランスさが色濃く表現されているんじゃないでしょうか。そして、そこが味わい深いし、すごく興味を惹かれるんですよね。

ハードロックでもないしパンクロックでもない、グラムロックでもない彼らの微妙な立ち位置がこのアルバムを聴けば理解できる。そんなオリジナリティに満ち溢れた傑作です。



▼HANOI ROCKS『BACK TO MYSTERY CITY』
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投稿: 2017 11 20 12:00 午前 [1983年の作品, Hanoi Rocks, Mott The Hoople] | 固定リンク

2017/11/19

AC/DC『BACK IN BLACK』(1980)

大ヒットした1979年のアルバム『HIGHWAY TO HELL』に続く、AC/DC通算7枚目のスタジオアルバム(1980年夏発売)。前作から引き続き、プロデュースをジョン・マット・ラングが担当。と、ここまで書くと前作の延長線上にある作風かと想像してしまいがちですが、前作との間にひとつの大事件が発生します。それがフロントマン、ボン・スコットの急逝(1980年2月)でした。バンドの顔ともいえるボンが亡くなったことで、本来はその歩みを止めてもおかしくないところを、AC/DCは前作からまる1年というハイペースで本作『BACK IN BLACK』を完成させるのでした。

新たに加入したシンガーは、イギリス生まれのブライアン・ジョンソン(元GEORDIE)。ボンの歌声はどこか気だるさや色っぽさ(エロさ)も感じられる独特の個性でしたが、ブライアンの歌声はもっと硬質。極論を言ってしまえば、ロックンロールシンガーからヘヴィメタルシンガーに交代したというくらい、バンドの顔が急に変わってしまったわけです。

当然、バンドが作り出すサウンド自体もブライアンの特性を生かしたものにシフトチェンジ。キャッチーで軽やかなイメージのあった『HIGHWAY TO HELL』とは異なり、この『BACK IN BLACK』ではヘヴィでソリッドなハードロックを奏でております。もう1曲目「Hells Bells」からして異質ですよね、それまでのAC/DCを考えれば。冒頭の鐘の音は、亡くなったボンへの鎮魂を意味するのでしょう(確実に『HIGHWAY TO HELL』へのアンサーと思われます)。そして不穏なギターリフから徐々にヒートアップして、いつになくシリアスな表情で、そしてヒステリックなサウンドで新生AC/DCの誕生を高らかに宣言する。こんなにもドラマチックで、聴き手をたぎらせるオープニング、そうはないですよね。

「Shoot To Thrill」のようなロックンロールもあるんだけど、やはりそれまでとはどこか違う。いや、ギターリフを聴けば間違いなくAC/DCなんだけど、やはり新しさを感じさせる。アナログB面1曲目のタイトルトラック「Back In Black」の、音の隙間を効果的に生かしたリフ&リズムワークはHR/HM史に残る名演のひとつです。かと思えば、前作からヒットした「Highway To Hell」の意思を受け継ぐ「You Shook Me All Night Long」もあるんだから……本当、すごいアルバムだと思います。

1曲1曲を抜き出して語るよりも、アルバムをひとつの音の塊として語りたい。『BACK IN BLACK』はそんな作品だと思います。HR/HMの教科書と言ってもいいくらい、まずはこれから聴け!と突きつけたいくらい、「知らなきゃモグリでしょ?」って言いたくなる1枚です。

ブライアン・ジョンソン(Vo)、アンガス・ヤング(G)、マルコム・ヤング(G)、クリフ・ウィリアムズ(B)、フィル・ラッド(Dr)。第二の黄金期を築き上げたこの布陣は、今後再び揃うことはありません。ブライアンの耳の不調によるツアー離脱、マルコムの認知症によるバンド活動休止、フィルの逮捕、クリフの引退……そして……残念でなりません。過去3回の来日中2度、この編成によるステージを観ることができたのは、もしかしたら幸運だったのかもしれませんね。



▼AC/DC『BACK IN BLACK』
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投稿: 2017 11 19 12:00 午前 [1980年の作品, AC/DC, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2017/11/18

WHITESNAKE『WHITESNAKE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』(2017)

1987年という年はHR/HMにとって象徴的な1年だったんだなと、あれから30年経った2017年に改めて感じさせられます。それは、今年に入って当時発表された名盤の30周年アニバーサリーエディションが次々とリリースされている事実からも伺えるはずです。MOTLEY CRUE『GIRLS, GIRLS, GIRLS』DEF LEPPARD『HYSTERIA』……記念盤の発売こそなかったものの、GUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION』も1987年リリース。当ブログ右カラムのカテゴリから〈1987年の作品〉をクリックしてもらえば、ここで取り上げた名盤の数々を振り返ることができるので、ぜひ一度チェックしてみてください。

そんな1987年の名盤のひとつ、WHITESNAKE最大のヒット作である『WHITESNAKE』(ヨーロッパ圏では『1987』というタイトル)が先日、“30TH ANNIVERSARY EDITION”と銘打って新規リマスタリング&未発表テイクを追加した2枚組仕様とCD4枚組+DVDからなるボックスセットで新規リリースされました。「あれ、このアルバムって昔も“○○TH ANNIVERSARY EDITION”発売されてなかったっけ?」とお気付きのあなた、正解。本作は2007年に“20TH ANNIVERSARY EDITION”と銘打ったCD+DVDが発表済みで、その際にも音源のほうはリマスタリングされていました。

ところが今回、WHITESNAKEが新たにワーナーグループと契約したことで、その第1弾アイテムとしてこの30周年盤がリリースになったわけです。一体何枚買わせるんですか、同じアルバムを(苦笑)。

実は当ブログでも今年2月に本作および20周年盤について執筆しており、これまでに発表された曲順が異なるいくつものバージョン違いにも触れております。作品の素晴らしさについては、そちらを改めてご確認ください。

ちなみに気になる曲順ですが……各仕様ともCDのDISC 1は『WHITESNAKE』20周年盤から、スタジオていく部分のM-1〜M-11(「Still Of The Night」から「Don't Turn Away」まで)を収録。オリジナルのUS盤や日本盤の曲順が復活することなく、残念ながらあの違和感ありまくりの20周年盤と同じです。もうそこは諦めるしかないのかな。

ということで、今回のエントリでは2枚組CDおよびボックスセットで新たに聴ける音源について触れていきたいと思います。


【DISC 2(2枚組仕様およびボックスセット共通)】

「SNAKESKIN BOOTS [LIVE ON TOUR 1987-1988]」と題したこのディスクは、レーベルの説明によると「87年から88年にかけて行なわれたワールド・ツアーの未発表ライヴ音源を収録。デイヴィッド・カヴァデールに加え、エイドリアン・ヴァンデンバーグ、ヴィヴィアン・キャンベル、ルディ・サーゾ、トミー・アルドリッジ、ドン・エイリー(おそらく間違い)というラインナップでのパフォーマンスとなっている。全曲未発表音源」とのこと。当時のヘッドライナーツアーをほぼほぼまるっと音源化したものなんですが、すげえ聴き覚えがあるな……あれ、MCでデヴィッド・カヴァーデイルが「ウタッテ、トキオーッ!」って叫んでるよ……これ、1988年6月に実現したジャパンツアーの音源ですよね? 残念ながら僕、このツアーは生で観られなくて、後日TOKYO FMで深夜にオンエアされた代々木オリンピックプール(現在の国立代々木第一体育館)公演の音源をエアチェック(死語)して、カセットで聴きまくったんだよな。だからめっちゃ聴き覚えがあるわけですね。MCや音源と異なるアレンジやギターソロに違和感を覚えながらも、必死に追いつこうとした高2の夏……懐かしいですね。

この音源が当時オンエアされたものと同じかどうかは不明ですが、それにしては音が悪い……エアチェック音源のほうがもっとクリアで各パートの分離が良かった記憶があるんですが、それって時間が経ったことで美化されてるんですかね? なんにせよ、もっとクオリティの高いもの(音質や歌・演奏含め)は残されていなかったんでしょうか。こうやって当時の貴重な音源を今楽しめるのは嬉しいのですが、そこだけが残念でなりません。

ライブの最後に演奏されたZZ TOPのカバー「Tush」とかトミー・アルドリッジのドラムソロパートとかいろいろカットされているので完全盤ではないものの、まぁオマケとしては十分かなと。


【DISC 3(ボックスセットのみ)】

「87 EVOLUTIONS(DEMOS AND REHEARSALS)」と題されたこのディスクは、「『白蛇の紋章~サーペンス・アルバス』に収録されている楽曲のデモ音源やリハーサル音源など、それぞれの楽曲の原型とも言える貴重な音源ばかりを収録。全て未発表音源の貴重なテイクだ。こちらも全曲未発表音源」とのことで、デヴィッドとジョン・サイクス(G)がいかにしてあの名曲たちを完成させていったかが垣間見れる貴重な音源集。「Give Me All Your Love」が最初スローテンポのブルースロックだったり、「Is This Love」が今みたいなAORっぽくなかったり、「Straight For The Heart」もテンポがユルめでカッコ良かったり、「Don't Turn Away」が最初はもっとアップテンポだったりと、いろんな発見があるのは面白いですね。ただ、「Crying In The Rain」以外は歌とギターだけによるラフなものなので、過剰な期待は禁物ですが。


【ディスク4(ボックスセットのみ)】

「87 VERSIONS(2017 REMIX)」と銘打った本ディスクは、「今回の30周年記念作品の発売にあたり、新たにリミックスを行なったシングル曲4曲に加え、当時日本のみで発売されていたEP『87 VERSIONS』に収録されていた音源や、貴重なラジオ・ミックスなどを収録。2017リミックスは今回が初出の音源となる」ということで、ディスク1に未収録の“あの当時レコーディングされ公式リリースされた音源”を網羅したものとなっています。気になる最新リミックスですが、このアルバム特有のリバーブ感が取り除かれ、非常に生々しいミックスに生まれ変わっています。ただ、それによりドラムサウンドの厚みがなくなったり、ギターの音が細くなったりなどの弊害も。ボーカルも前に出すぎていて、メタルアルバムのミックスというよりは現代的なロック/ポップスのミックスという印象。あと、原曲にはなかった音やコーラスが追加されていたりと、印象もだいぶ異なるかな。「Still Of The Night」はあの仰々しさが薄れてしまったし、「Here I Go Again」もダイナミックさが激減したけど、逆に「Is This Love」は今回のバージョンのほうが気に入ったかな(フェードアウトせずに終わるのも、なお良し)。「Give Me All Your Love」は評価が分かれるところかもしれませんが、これはこれで好き。原曲とどっちが良いかと問われたら、原曲を選びますが(苦笑)。

そして、日本限定リリースだったミニアルバム『87 VERSIONS』の音源ですが、リマスタリングが施されているかは不明。つうか「Looking For Love」と「You're Gonna Break My Heart Again」に関してはディスク1とかぶり。そこは気を遣えよ、ちゃんと仕事しろよと力説したい。それ以外は、Geffen時代のベストアルバムで聴けた「Here I Go Again」ラジオミックスと、シングルのみで発表された「Give Me All Your Love」のリミックス(ヴィヴィアン・キャンベルのギターソロに差し替えられたバージョン)も収録されております。まあこのディスクの主役は最新リミックスの4曲ですね。どうせなら、アルバムまるまる1枚をこの音で聴いてみたいという気もしましたが(それはそれで、別モノとして楽しめるかもしれないので)。

というわけで、今回の最新バージョン。初めて本作に触れるビギナーは2枚組仕様で十分です。ボックスはマニア向け。とはいえ、そのマニアならいろいろ突っ込みたくなるんじゃないかと察しますが……。

以下、オマケ。今回の最新リマスタリング音源を使って、1987年発売当時の国内盤およびUS盤の曲順でプレイリストを作りました。「Crying In The Rain」から「Bad Boys」への曲間の違いはあるものの、やっぱりこのトラックリストに強い親しみがあるだけに、ぜひ現行のトラックリストと聴き比べてみることをオススメします。



▼WHITESNAKE『WHITESNAKE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』
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投稿: 2017 11 18 12:00 午前 [1987年の作品, 2017年の作品, Whitesnake] | 固定リンク

2017/11/17

RICHIE SAMBORA『STRANGER IN THIS TOWN』(1991)

『NEW JERSEY』(1988年)リリース後の2年近くにわたるワールドツアーを終えたBON JOVIは、そのまま長いオフ期間に突入。1990年8月にはジョン・ボン・ジョヴィが初のソロアルバム『BLAZE OF GROLY』を発表したことで、ファンは「ああ、しばらく活動再開はないかな?」と残念に感じたのではないでしょうか。それと前後して、相方のリッチー・サンボラ(G)は映画『フォード・フェアレーンの冒険』サウンドトラックに、初のソロトラック「The Wind Cries Mary」(ジミ・ヘンドリクス「風の中のマリー」のカバー)を提供。さらにそのまま本格的なソロ活動へと移行していき、1991年9月に1stソロアルバム『STRANGER IN THIS TOWN』を発表します。

同作は、アーシーでカントリー寄りの方向性だったジョンのソロとは異なり、『NEW JERSEY』でのブルージーなハードロックをよりモダンに、かつダークに仕上げた内容。リッチーはソングライティングやギターのみならず、ボーカリストとしても大活躍しています。もともとBON JOVIのライブでシンガーとしての力量を遺憾なく発揮してきた彼だけに、いわゆる“ギタリストのソロアルバム”ではなく“シンガーソングライターのソロアルバム”になったのは頷ける話です。

レコーディングにはBON JOVIのメンバーであるデヴィッド・ブライアン(Key)とティコ・トーレス(Dr)に加え、KING CRIMSONなどで知られるジョン・レヴィンやランディ・ジャクソンなどのベーシスト、さらに1曲のみエリック・クラプトンがギターで参加。楽曲は先にも書いたようにリッチーがメインで書き、曲によってデズモンド・チャイルドなどの職業ライターが加わっており、そのへんもパーソナルな仕上がりだったジョンのソロと比較してよりBON JOVI寄りと言えるでしょう。

なので、『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)から『KEEP THE FAITH』(1992年)あたりまでのBON JOVIが好きなリスナーなら間違いなく気に入る内容だと思います。だって、中には『NEW JERSEY』のアウトテイク「Rosie」まで含まれているんですから。

もともと、リッチーはそこまで癖や個性が強いギタリストというイメージがあまりなく、曲に合った印象的なソロプレイ(というかフレーズ)を残してきた人。あくまで“曲ありき”のプレイヤーだと思うので、こういった楽曲がしっかり作り込まれたアルバムでこそ彼の魅力が光るんじゃないかと思うのです。そういう意味では、ソロデビュー作がこういう内容になったのは正解だったのかなと。ただし、シンガーとしては……ここまでめいっぱい歌っているのを聴いて思ったのは、うまいけどジョンのように強烈な個性はないかなと。やっぱりこの人は、強いフロントマンの隣に立ってこそ自らの魅力を発揮させるギタリストなんだと思いました。だからこそ、今の状況は残念でならないのですが……。

のちにBON JOVIのライブでも披露されてきた「Stranger In This Town」やシングルカットもされた「Ballad Of Youth」、クラプトンが参加した「Mr. Bluesman」、アコースティックバラードの名曲「The Answer」など、とにかく楽曲の出来は文句なし。ジョンの『BLAZE OF GLORY』との比較含め、ぜひあわせて聴いてもらいたい1枚です。



▼RICHIE SAMBORA『STRANGER IN THIS TOWN』
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投稿: 2017 11 17 12:00 午前 [1991年の作品, Bon Jovi, Eric Clapton, Richie Sambora] | 固定リンク

2017/11/16

JON BON JOVI『BLAZE OF GLORY』(1990)

1990年8月にリリースされた、ジョン・ボン・ジョヴィBON JOVI)初のソロアルバム。本作は当時公開されたアメリカ映画『YOUNG GUNS II』(邦題『ヤングガン2』)にインスパイアされて制作したもの。当初、映画サイドはBON JOVIの「Wanted Dead Or Alive」を劇中で使用したいと申し出たのですが、これに対してジョンは新曲を多数用意し、このうち「Blaze Of Glory」と「Billy Get Your Guns」のみが劇中で使用されることになりました。

海外盤ジャケットを観ておわかりのとおり、本作はアルバムを通して『YOUNG GUNS II』の世界観が描かれており、先の「Wanted Dead Or Alive」や『NEW JERSEY』(1988年)で表現してきた“カウボーイソング”が一気に開花しております。

そもそもBON JOVIの楽曲使用を申請されたのに、なぜジョンのソロだったのかと申しますと、この時期BON JOVIは2年近くにわたるワールドツアーを終えたばかりで、バンドとしての動きが一切ないタイミング。ぶっちゃけ、バンド内の状況も決して良好とは言い難いものであり、それもあってジョンはソロという“もうひとつの手段”を試してみたんでしょうね。

なもんで、楽曲自体はすべてジョンひとりで書かれたもの。メロディセンスはさすがですが、ちょっとシンプルかつコンパクトなものが多いかな。そういった楽曲をプロデューサーのダニー・コーチマーや、ケニー・アロノフ(Dr)、ランディ・ジャクソン(B)、ジェフ・ベック(G)といった名手たちと色付けしていくのですが、BON JOVIのような高性能ハードロック色皆無の、完全にレイドバックしたカントリー寄りのアメリカンロックが完成するわけです。もうこれ、完全にジョンが憧れるブルース・スプリングスティーンですね。もしくはジョン・メレンキャンプとか、ああいった“枯れた”ロックを奏でる人たち。納得です。

ゲストも豪華でキース・リチャーズのバンドでおなじみのワディ・ワクテル(G)やRATTのロビン・クロスビー(G)をはじめ、エルトン・ジョン(Piano, Vo)、リトル・リチャード(Piano, Vo)などなど。エルトンは「Dyin' Ain't Much Of A Livin'」でジョンとハモっているし(聴けばすぐにわかりますよね)、リトル・リチャードは「You Really Got Me Now」でジョンとデュエットしており、ホンイキの歌声を聴かせてくれてます。

中でも、ジェフ・ベックの存在感が別格すぎ。ミック・ジャガーのソロアルバムでもかなり好き放題弾いてましたが、本作でもやってくれてます。この人、ロッド・スチュワートといい、やっぱり存在感のあるフロントマンと一緒に何か作ると、自分のソロとはまた違った個性を発揮するんですよね。本当に面白い存在です。

あと、久しぶりに聴いて思ったのですが、「Santa Fe」って「Always」以降のBON JOVIピアノバラードに通ずる世界観がすでに存在するんですよね。思えば「Always」もジョン単独で書いた曲だし、改めて腑に落ちるものがありました。

アルバムは全米3位で200万枚以上のセールス、シングル「Blaze Of Glory」は全米1位を記録し、今でもBON JOVIのライブで披露される機会が多い1曲になりました。この成功があったから、数年後の「Always」(1994年)そして『THESE DAYS』(1995年)につながっていくわけです。




▼JON BON JOVI『BLAZE OF GLORY』
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投稿: 2017 11 16 12:00 午前 [1990年の作品, Bon Jovi, Jeff Beck, Jon Bon Jovi, Ratt] | 固定リンク

2017/11/15

YES『BIG GENERATOR』(1987)

YESで最初に取り上げるアルバムが本作なのは、何かいろいろ間違っている気がしますが……うん、気にしないで進めます。

YESが1987年初秋に発表した、通算12枚目のスタジオアルバム。初期のプログレッシヴロック路線からサンプリングなどデジタル要素を駆使した前作『90125』(1984年)へと移行し、アルバムは全米5位、同作からのシングル「Owner Of A Lonely Heart」が初の全米1位を獲得と新たな全盛期を迎えた彼らが、トレヴァー・ホーンからバンドメンバーのトレヴァー・ラビン(G)にプロデューサーを変更して制作されたのが今作です。

古くからのファンからは否定的な声も上がった『90125』ですが、それは本作も同様だったようです。もっとも、70年代の彼らを通過していない(本作が発売された当時もその頃のYESを知らなかった)僕にとっては、この『BIG GENERATOR』こそが初めてリアルタムで接するYESの新作だったのです(『90125』はもっとあとになってから聴いた記憶が)。

MTVなどでMVを目にした先行シングル「Love Will Find A Way」や「Rhythm Of Love」の印象が強かったためか、プログレというよりもギターロックというイメージで本作に接したのですが、どうやらそれは間違いではなかったようでした。例えばASIAGTRなどのような“古き良き時代のプログレをエッセンスに、テクノロジーを適度に駆使したハードポップ/ハードロック”に近い印象で、ところどころにYESらしい“こだわり”がちょっとだけ散りばめられている、決してプログレロックアルバムとは呼べない1枚でした。だからこそ、僕のような人間にとってはとっかかりとして良かったのかもしれません。

マニアやコアファンが何と言おうと、先に挙げたシングル曲は最高にカッコ良いし、そのほかにも「Shoot High, Aim Low」「Almost Like Love」みたいにイカす曲も豊富。個人的には『90125』よりもこっちのほうが“ロック”していて、気に入っています。トレヴァー・ラビンのギターワークも、トニー・ケイ(Key)のシンセもカッコ良いですしね。

あと、BEACH BOYSを彷彿とさせるハーモニーが要所要所でフィーチャーされているのも、個人的好みの理由かもしれません(「Love Will Find A Way」で使用されているブルースハープもね)。適度にプログレで適度にハードロック、だけどポップスとしては外さない。結局前作ほどのヒットには恵まれなかったし、本作が原因でジョン・アンダーソン(Vo)がバンドを脱退したとか曰く付きの1枚ですが、そういったこと関係なしに今でもよく聴くアルバムです。



▼YES『BIG GENERATOR』
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投稿: 2017 11 15 12:00 午前 [1987年の作品, Yes] | 固定リンク

2017/11/14

GTR『GTR』(1986)

ASIAを脱退したスティーヴ・ハウ(G)が、元GENESISのスティーヴ・ハケット(G)と結成した、プログレ界の新たな“スーパーグループ”GTR。彼らが1986年夏に発表した唯一のスタジオアルバムが本作『GTR』です。

ボーカルにはのちにPHENOMENAやマイク・オールドフィールドの作品に参加するマックス・ベーコン、ベースには同じくマイク・オールドフィールド流れのフィル・スポルディング、ドラムには元MARILLIONで幅広いジャンルでも活躍するセッションプレイヤーのジョナサン・ムーバーを迎えていますが、ギタリスト2名以外の知名度はそこまで高いものではありません。だからこそ、どんなサウンドになるのか未知数だったところもあると思うんです。

僕はMTVで先行シングル「When The Heart Rules The Mind」を観て(聴いて)、そのASIA譲りのドラマチックなハードロック調サウンドに心惹かれ、アルバムに手を出しました。シンガーのマックス・ベーコンが高音を張り上げて歌うタイプだったので、HR/HMリスナーにもかなり親しみやすかったんじゃないでしょうか。僕自身、ASIA以上にそっちの感覚で楽しめましたし。

それに、シンセはあくまで味付け程度で若干後ろに引っ込め、ギター2本を軸にした“適度にプログレッシヴ”なアレンジは、産業ロックやプログレポップとは呼び難いもの。いや、そんなことないか。とにかく、ボーカルとギターが豪快で、全体のトーンにも統一感が感じられる。しかも途中に登場するギターインスト(それぞれスティーヴ・ハウ、スティーヴ・ハケットによる2分程度の作品)がアルバム中で良いアクセントとなっているのも、また良いんですよね。

大半の楽曲はハウ&ハケットのペンによるもので、曲によってマックスや他メンバーが携わっているんですが、2曲目の「The Hunter」のみASIAのジェフ・ダウンズによる作品。かといって、ASIAっぽいかと言われると、全然そんなことないんですけどね。ちなみに、後年ASIAもこの曲をセルフカバーしているので、聴き比べてみてはいかがでしょう。ASIA版はジョン・ペインの歌声のせいもあって、全然印象が異なりますから。

YESらしさも、(ポップになる前の)GENESISらしさも混在しつつ、プログレッシヴなハードロックとして機能するクオリティの高い1枚。残念ながら全米11位と、ASIAほどの成功を収めることなく、バンドはこの1作で解散を迎えてしまいました。あのまま続いていたらどんな作品を作っていたのか想像もつきませんが、30年以上経った今も忘れ去られることなくこうやって本作を楽しめるのは、このバンドにとってはある意味幸せなことなのかもしれませんね。



▼GTR『GTR』
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投稿: 2017 11 14 12:00 午前 [1986年の作品, Asia, GTR] | 固定リンク

2017/11/13

ASIA『ASIA』(1982)

KING CRIMSON/元UKのジョン・ウェットン(Vo, B)、元YESのスティーヴ・ハウ(G)、元EMERSON, LAKE & PALMERのカール・パーマー(Dr)、元THE BUGGLES/元YESのジェフ・ダウンズ(Key)が結成した“スーパーバンド”ASIAが、1982年初春に発表したデビューアルバム。イギリスの老舗プログレバンド出身の4人が一堂に会してどんな音楽を奏でるのかと思いきや、いきなり「Heat Of The Moment」みたいなポップロックを完成させたんですから、そりゃあ当時リアルタイムで聴いてたプログレファンには「裏切りだ!」って思うくらいショックだったんじゃないかと察します。

リアルタイムでは1985年の3rd『ASTRA』から入ったので、1枚目と2枚目『ALPHA』(1983年)は完全に後追い。たぶん中学3年か高校1年のときに聴いたのが最初じゃないかな。HR/HMに慣れた自分が聴いても楽しめる、プログレのテイストを残した“ポップでキャッチーでコンパクト”なロックチューンが並ぶデビュー作は、特にお気に入りでした。まず、オープニング「Heat Of The Moment」のシンセにやられて、耳障りの良いメロディに心が持っていかれた。そこから、よりプログレチックなポップロック「Only Time Will Tell」、アレンジこそプログレ風だけどサウンド自体はハードロック寄りの「Sole Survivor」、この冒頭3曲が特に大好きでした。

昨日のSTYXじゃないけど、こういうプログレポップって仰々しいプログレッシヴロックが好きな人からしたら、本当にどう映るんでしょうね。いや、特に答えはいらないですが。残念ながら自分はHR/HMを入り口に上記のようなUKプログレバンドに接し、さらにはSTYXやASIAのようなバンドも貪欲に聴いてきたクチなので、どれも偏見なく楽しめるんですよね。節操ないと言われたらそれまでですが。

こういう、各プレイヤーの技量を最良の形(なのかな?)でアレンジに組み込み、プレイヤーが陥りがちな“オナニー的プレイ”を排除してコンパクトに、かつポップに組み立てた楽曲は本家プログレよりも気楽に楽しめると同時に、曲の至るところにフックが仕込まれているから、変に聴き流すこともできない。気づいたらメロディの親しみやすさを通り越して、各プレイヤーのこだわりのプレイまで聴き込んでいる自分がいる。特にこの1stアルバムに関してはそいういうことが多いような気がします。

「Time Again」の“これぞ!”といった仰々しさも好きだし、「Wildest Dreams」のハードロック的壮大さも好きだし、「Without You」のAORバラードも嫌いになれない。とにかくよく出来たアルバムですよ。リリースから今年で35年? 驚きました。ロックとしてもポップスとしても機能する、本当に高性能な1枚です。



▼ASIA『ASIA』
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投稿: 2017 11 13 12:00 午前 [1982年の作品, Asia] | 固定リンク

2017/11/12

STYX『KILROY WAS HERE』(1983)

1983年2月にリリースされた、STYXの11thアルバム。オープニングを飾る「Mr. Robot」の、ボコーダー越しの〈ドモアリガット、ミスターロボットー〉ってフレーズを覚えているオーバー40の皆様ならご存知の作品かもしれません。もしくは、この曲だけは知ってるけどアルバムは聴いたことがない、そんな人のほうが多いのかな。実際、僕もアルバム自体は20歳を超えてから初めて聴きましたから。

実は自分の小遣いで生まれて初めて買った洋楽シングルが、先の「Mr. Robot」でした。中学に上がる前だったから、まだ小学生だったかもしれませんね。MTVで知ったとかそういうことではなく、当時何かのCMソングに使用されていて、あのフレーズが気に入ったというのと、小2から6年間エレクトーンを習っていたので、もともとYMO以降のテクノポップに興味があったというのもあります。で、この曲ばかりをひたすら聴きまくったわけです。なので、僕の中ではその後数年間「STYX=Mr. Robot」だったわけです。

STYX自体は、本作リリース後のツアーをもって活動休止。なので、僕が本格的に洋楽ロックを聴き始めてから1990年の復活まで新作は一切発表しておらず、むしろソロアーティストとしてのデニス・デ・ヤング(Vo, Key)やトミー・ショウ(Vo, G)のほうに馴染みがあるくらい。トミーなんて“DAMN YANKEESの人”ってイメージのほうが強いですからね。

そのDAMN YANKEESの初来日公演で、トミーがSTYX時代の曲をいくつか披露しており、そこで初めて初期のベスト盤を聴いたのかな。オリジナルアルバムは名盤と言われる10th『PARADISE THEATER』(1981年)が最初だった記憶が。それで、しばらくしてから本作『KILROY WAS HERE』を手にしたのでした。

近未来SFをモチーフにしたコンセプトアルバムということで、シンセを全面的に使用したプログレロック/プログレポップ/産業ロックが展開されている本作。テクノポップ調なのは先の「Mr. Robot」程度で、以降はSTYXらしいバラードやハードロック、プログレポップが次々と飛び出します。ボーカルもデニスやトミーのほか、ジェイムズ・ヤング(Vo, G)も歌っているのかな。メンバー5人全員にアルバム内のストーリーに沿った役名が与えられていて、どこかミュージカルチック。しかも日本語フレーズ同様に東洋風のメロディやフレーズもところどころに取り入れられており、我々日本人には比較的親しみやすい作風なんじゃないでしょうか。

本作に関しては、ぜひ国内盤の歌詞カード対訳を目にしながら聴いてみてほしいですね。それによって、アルバムの印象も少しは変わると思うので。

というのも、何も知らずに聴いたら……プログレのわりに音が軽くてそこまで複雑じゃないし、むしろJOURNEYやNIGHT RANGERのほうが近いんじゃないかと思うほど。まあこれがアメリカンプログレポップと言われたらそれまでなんですが、普段HR/HMに慣れてしまっている耳にはちょっと軽く聴こえてしまうのも事実。やれ産業ロックだなんだと、そういう偏見を捨てて純粋に“ドラマチックな近未来コンセプトアルバム”として接したら絶対に楽しめる1枚だと思います。楽曲単位でも優れたものが多いですし、そのへんのバンドに興味がある人はぜひ一度チェックしてみてはいかがでしょう。



▼STYX『KILROY WAS HERE』
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投稿: 2017 11 12 12:00 午前 [1983年の作品, Styx] | 固定リンク

2017/11/11

BOSTON『THIRD STAGE』(1986)

2ndアルバム『DON'T LOOK BACK』(1978年)以降は8年周期(2013年の最新作『LIFE, LOVE & HOPE』は11年ぶりでしたが。笑)でアルバムを発表することでおなじみのBOSTON。彼らが最初に前作から“8年ぶり”に発表した、1986年秋発売の3rdアルバムが本作『THIRD STAGE』。リリースにそれだけかかってしまって理由には、トム・シュルツ(G, etc)の完璧主義ぶりにより制作に時間がかかることと、それによる前レーベルからの契約不履行による訴え、およびそれに伴う裁判に時間を要したことも関係しているのですが(本作以降は完全にマイペースに作っているからなんでしょうね)。

前2作リリース時は小学生だった自分にとって、最初に触れたBOSTONのアルバム(=新譜)がこの『THIRD STAGE』でした。とにかく彼ら、MVを作らないもんだから当然MTVで曲が流れないし、『ベストヒットUSA』でチャートにランクインしてもワンフレーズ程度しかオンエアされない。よって、ラジオでオンエアされたヒット曲「Amanda」(全米1位)をエアチェック(懐かしい。笑)して聴くくらいしかできなかった。つまり、自分にとって当時のBOSTONはビジュアルもわからない、何人組かもわからない“未知の存在”だったのです。

しばらくして、地元の貸しレコード店に『THIRD STAGE』のアナログ盤が入荷して、中学生の少ない小遣いの中からちょっと高い新譜料金でレンタルして、ようやくアルバムまるまる聴けたわけですが……正直、当時はその良さがさっぱりわからなかった。バラードナンバー「Amanda」の良さはわかるのですが、全体的に古臭いというか“枯れた”空気が漂っている。彼らに派手な HR/HMを求めたのがそもそも間違いだったわけですが、正直「TOTOとかCHICAGOみたいだな」と思ったのをよく覚えています。

で、それから8年後の1994年。ようやく4枚目のアルバム『WALK ON』が発売され、それを機に過去3作をCDで買いそろえたのです。当時20代半ばに差し掛かろうというタイミングで、ここでHR/HM以外にもいろんな音楽を通過してきた耳にようやくBOSTONのサウンドが馴染んだのでした。

その頃にはQUEENが一番好きなバンドとなっていた自分なら、このギターオーケストレーションや組曲的な作風、ようやく理解できた。確かにAOR寄りのアメリカンロックなんだけど、この作り込みには正直狂気を感じました。当時15歳の自分には早すぎですよ、そりゃあ。

ハードロック的な豪快さは前2作のほうが勝りますが、本作ではジャンルの枠を超越した“BOSTONならではの、BOSTONにしかできない音”が成立している。もはや無法地帯ですわ。CDで聴くと曲の切れ目がわからず、あっという間にラストまで到達している、そんな不思議なアルバムです。



▼BOSTON『THIRD STAGE』
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投稿: 2017 11 11 12:00 午前 [1986年の作品, Boston] | 固定リンク

2017/11/10

NIGHT RANGER『7 WISHES』(1985)

1985年春に発表されたNIGHT RANGERの3rdアルバム。前作『MIDNIGHT MADNESS』(1983年)が全米15位のヒット作となり、また同作から「Sister Christian」(全米5位)、「When You Close Your Eyes」(全米14位)とバラード/ミディアムナンバーのヒットシングルが誕生したこともあり、続く本作もその傾向を踏まえた作風に仕上げられています。

オープニングを飾る「Seven Wishes」のずっしりしたリズムとギタープレイは本当にお気に入りで、中高生の頃何十回、何百回と聴き返したことか。かと思えば「This Boy Needs To Rock」みたいな疾走ハードロックもあるし、ちょっとダークな「I Need A Woman」もある。ブラッド・ギルス(G)とジェフ・ワトソン(G)の派手なギタープレイはもちろんなんだけど、本作をカラフルに彩っているアラン・フィッツジェラルド(Key)のシンセも聴き逃せない。ギター一辺倒のヘヴィな作風になってもおかしくないところを、シンセが乗ることで適度にソフィスティケイトしてくれているんですよね。そこが良くも、そして人によっては悪くも“NIGHT RANGERらしい”わけですが。

そういったハードな曲もありつつ、ポップなミディアムチューン「Four In The Morning」(全米19位)やドラマチックなバラード「Sentimental Street」(全米8位)、「Goodbye」(全米17位)もある。実は本作からシングルカットされたのはこの3曲のみで、いわゆるハードロックサイドの楽曲(前作までで言えば「(You Can Still) Rock In America」「Don't Tell Me You Love Me」タイプ)のシングルカットが皆無だったんですね。シングルカットはある程度レコード会社側の思惑が働いているでしょうから、バンドの意思が100%反映されたものではないとはいえ、これはないですよね。だって、“ハードポップ”バンドじゃなくて“ハードロック”バンドなんですから。

結局、こういったシングルの傾向が彼らに“バラードバンド”というレッテルを貼ることになってしまい、80年代半ば以降の一大HR/HMブームに乗ることができず、89年に解散してしまうわけです。

とはいえ本作、キャリア中唯一の全米トップ10入り(10位)を果たしており、ミリオンセールスも記録しています。先月の来日公演で久しぶりに彼らのライブを観ましたが(東京公演2日目)、いきなり「This Boy Needs To Rock」「Seven Wishes」の2連発で始まり、同作から計5曲も披露してくれたのは嬉しかったなあ。以来、このアルバムを20年ぶりくらいに聴きまくってました。



▼NIGHT RANGER『7 WISHES』
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投稿: 2017 11 10 12:00 午前 [1985年の作品, Night Ranger] | 固定リンク

2017/11/09

CHEAP TRICK『LAP OF LUXURY』(1988)

1988年春に発表された、CHEAP TRICK通算10作目のスタジオアルバム。70年代末の大ヒット以降、チャート的にもセールス的にも恵まれてこなかった彼ら。オリジナルベーシストのトム・ピーターソン脱退などのメンバーチェンジなどを経て、再びロビン・ザンダー(Vo, G)、リック・ニールセン(G)、バーニー・カルロス(Dr)、そしてトムというオリジナル編成にて制作されたのが本作『LAP OF LUXURY』です。

80年代中盤以降、彼らはいくつかのヒット映画のサウンドトラックに楽曲を提供しており(『トップ・ガン』での「Mighty Wings」や、ロビンがソロで楽曲提供した『オーバー・ザ・トップ』の「In This Country」など)、それらの楽曲では非常に“産業ハードロック”的なカラーを見せ従来のファンをがっかりさせていました。実は、本作『LAP OF LUXURY』はその延長線上にある作風で、初期の彼らをイメージして触れるとがっかりするかもしれません。

しかし、作品の完成度はなかなかのもので、THE BEATLESの影響下にあるアメリカンハードロックアルバムとしては非常に高水準といえるでしょう。それもそのはず、大半の楽曲に職業ソングライターが携わっており、全米No.1を記録した「The Flame」なんてメンバーが作詞作曲に関わっていないんですから。他にもチャーリー・セクストンがデビューアルバムに収録した「Space」や、エルヴィル・プレスリーの名曲「Don't Be Cruel」(邦題「冷たくしないで」)のカバーまで収録。レーベル側の「とにかく(当時の)HR/HMブームに直接ぶつけて、彼らのルーツであるCHEAP TRICKを復活させる!」という意思が強く感じられる内容なわけです。

ちなみに全10曲中バンドメンバーのみで書かれた楽曲は、シングルカットもされた「Never Had A Lot To Lose」のみ(ロビン&トムによるもの)。この曲が今でもひんぱんにライブで披露されるのは、そういった意図も含まれているんでしょうか。

でもね、上にも書いたようにひとつのハードロックアルバムとしてはどの曲も優れているし、濃いファン目線でも「こういうCHEAP TRICKも悪くないかな」と思える楽曲がいくつか含まれているので、これはこれでアリなんじゃないでしょうか。実際、当時は繰り返し聴きまくりましたし。逆に、この時代があったからこそ90年代に入ってから『WOKE UP WITH A MONSTER』(1994年)で“らしさ”を取り戻せたわけですしね。

ちなみに本作、アルバムとしても『DREAM POLICE』(1979年)以来のチャートTOP20入り(全米16位)、ミリオンセールスを達成。シングルでも「The Flame」(全米1位)のほか、「Don't Be Cruel」(全米4位)、「Ghost Town」(全米33位)、「Never Had A Lot To Lose」(全米75位)と複数のヒット曲を生み出しており、レーベル側の思惑は見事達成しました。



▼CHEAP TRICK『LAP OF LUXURY』
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投稿: 2017 11 09 12:00 午前 [1988年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2017/11/08

DOKKEN『UNDER LOCK AND KEY』(1985)

1985年秋にリリースされた、DOKKEN通算3作目のスタジオアルバム。前作『TOOTH AND NAIL』(1984年)がアメリカでのHR/HM人気に後押しされ、全米49位にランクイン。100万枚を超えるヒット作になったことで、1年2ヶ月という短いインターバルで制作・発表されのが本作『UNDER LOCK AND KEY』です。

プロデューサーを前作でのトム・ワーマン(CHEAP TRICKMOTLEY CRUEなど)からニール・カーノン(QUEENSRYCHELYNCH MOBなど)&マイケル・ワグナー(ACCEPTSKID ROWWHITE LION)へと交代して制作された本作は、疾走感と鋭さが際立った前作とは相反し、メロディアスさと親しみやすいテンポ感(ミディアムテンポ中心)を重視した意欲作に仕上がっています。

ジョージ・リンチ(G)のカミソリギターは相変わらずですが、本作ではそこに“曲に合わせた押し引き”が加わり、あくまで楽曲重視でプレイしていることが伝わってきます。1曲目「Unchain The Night」からその傾向は強く、ドン・ドッケン(Vo)の歌をじっくり聴かせつつ、ギターソロになったらいっきに爆発するというメリハリの効いたアレンジは本作ならではと言えるでしょう。

とにかくドンの歌とメロディ、ハーモニーなどのコーラスワークが素晴らしい。名曲「In My Dreams」は言うまでもなく、続くバラード「Slippin' Away」でも引き続き美しいハーモニーを堪能することができます。

前作や前々作『BREAKING THE CHAINS』(1983年)にあったもっさり感=B級感は一気に払拭され、急にメジャー感が強くなったのは、そういった戦略によるものなんでしょうね。ただ、ここでやりすぎたがために、ジョージら楽器隊の鬱憤が爆発。その衝動が次作にしてラストアルバムとなってしまった『BACK FOR THE ATTACK』(1987年)につながったのかもしれません。

シングルカットされた「The Hunter」「It's Not Love」「In My Dreams」以外にも、先の「Unchain The Night」や「Slippin' Away」「Jaded Heart」「Don't Lie To Me」「Will The Sun Rise」と憂のあるメロディのミディアム/スローナンバー満載。で、そういったノリを良い意味で壊してくれるのが、アナログでいうと各面ラストを飾る「Lightnin' Strikes Again」(M-5)と「Til The Livin' End」(M-10)のファストナンバー2曲。とはいえ、悪い意味で浮くことはなく、他の楽曲とバランスが取れた非常にメロウな仕上がりです。若干かっちりと作り込みすぎな気もしますが、それはこのサウンドプロダクションのせいかもしれませんね。

本作はHR/HMファンがイメージする“DOKKENらしさ”が体現されてた、安定感の強い1枚ではないでしょうか。初心者が最初に聴くなら、まず本作をオススメします。



▼DOKKEN『UNDER LOCK AND KEY』
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投稿: 2017 11 08 12:00 午前 [1985年の作品, Dokken] | 固定リンク

2017/11/07

WHITE LION『PRIDE』(1987)

1987年初夏に発表された、WHITE LIONの通算2作目にしてメジャーデビューアルバム。前作『FIGHT TO SURVIVE』(1985年)はここ日本ではビクターから発売されましたが、本国アメリカではインディーズレーベルからのリリースということもあり、彼らの存在が本格的に知られるようになるのは本作『PRIDE』からでした。

本作はリリース時こそそこまで大きな話題となりませんでしたが、AEROSMITHKISSオジー・オズボーンAC/DCといったビッグネームのオープニングアクトとしてツアーを回ること、そして追ってシングルカットされた「Wait」のMTVでのヘヴィローテーションされたことで、アルバムは全米11位まで上昇。シングル「Wait」は翌1988年に全米8位を記録し、以降も「Tell Me」(全米58位)、「When The Children Cry」(全米3位)とヒット曲を連発することになります。

マイケル・ワグナーをプロデューサーに迎えた本作は、VAN HALENに通ずる軽快なアメリカンハードロックと、DOKKEN的な湿り気の強いヨーロッパ風ハードロック両方の良さを兼ね備えた、独特なサウンドを持つ良質なハードロックアルバム。ポップな「Wait」「Tell Me」、アコースティックバラード「When The Children Cry」に目が行きがちですが、「Hungry」や「Lady Of The Valley」のようなマイナー調でドラマチックなハードロックナンバー、「Sweet Little Loving」「All You Need Is Rock 'N' Roll」みたいな能天気なロックンロールにこそ彼ら本来の持ち味があるのではないかと思っています。

また、それらの楽曲上でテクニカルなギタープレイを披露しているヴィト・ブラッタ(G)のセンスも忘れてはなりません。WHITE LION解散後しばらくして第一線から退いてしまったようですが、今でも彼のトリッキーかつメロウなプレイは斬新だし、「Wait」のようなシンプルでポップな楽曲であそこまで印象的なギターソロを残せたのは彼ならではと言えるでしょう。あの曲での彼のギタープレイはオープニングのアルペジオからバッキング、ソロまですべてが完璧。個人的には80年代のアメリカンHR/HM史における名演のひとつとして、語り継いでいきたいものだと思っています。

そして、これらの楽曲を歌うマイク・トランプのヘタウマボーカルもこのバンドに欠かせない要素。うますぎてもダメ、下手くそだけどノリ一発!でもなんですよね、たぶん彼らの曲って。純粋なアメリカ人ではない、デンマーク人の彼がこういった楽曲を歌うからこその魅力は間違いなくあったはずです。

ちなみに彼らのアルバムでは、ほかにも4thアルバムにしてラスト作となってしまった『MANE ATTRACTION』(1991年)も名盤だと思っています。全然ヒットしませんでしたけどね。こちらについても、いずれ語れたらと思います。

なお、本作『PRIDE』ってデジタル配信されてないんですね。AppleMusicが始まったことはカタログにあったような記憶があるのですが(ベスト盤だったのかしら)。しかも、彼らのカタログ中もっともヒットした作品が唯一配信されていないというのは不幸以外の何ものでもないですよ? 契約的にいろんな問題があるんでしょうけど、勿体ないったらありゃしない。

SpotifyやAppleMusicでは『PRIDE』収録曲が多数含まれたベストアルバム『DEFINITIVE ROCK: WHITE LION』が配信中(M-3〜8の6曲。ライブテイクのM-19〜22、25〜28、30も収録曲)なので、スタジオ/ライブ音源問わずアルバムどおりの曲順でプレイリストを作れば雰囲気はつかめるはずです。この記事用にSpotifyで同様のプレイリストを作ってみたので、ご参考まで。



▼WHITE LION『PRIDE』
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投稿: 2017 11 07 12:00 午前 [1987年の作品, White Lion] | 固定リンク

2017/11/06

GREAT WHITE『ONCE BITTEN...』(1987)

1987年初夏にリリースされたGREAT WHITEの3rdフルアルバム。L.A.メタルの枠で括られることの多い彼らですが、他の同ジャンルのバンドと比較するとブルースフィーリングとメタリックさが程よくミックスされた個性的なサウンドを信条に活動し続け、本作『ONCE BITTEN...』でようやく本格的な成功を収めます。同作からは「Rock Me」(全米60位)、「Save Your Love」(全米57位)とシングルヒットも生まれ、アルバムは最高23位まで上昇し、100万枚以上を売り上げ、続く最大のヒット作『...TWICE SHY』(1989年)への橋渡し的1枚となりました。

それ以降の作品と比べたら、本作はまだメタリックな色合いも残っており、オープニングナンバー「Lady Red Light」はいきなり激しいギターの早弾きからスタートします。キラキラしたシンセも取り入れられ、ちょうどタイミング的にはBON JOVIの3rdアルバム『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)のヒット後というのもあるんでしょうね。

かと思うと、次々作『HOOKED』(1991年)路線にも通ずる軽快なロックンロール「Gonna Getcha」もある。「何がしたいねん!」とツッコミを入れていると、有無を言わせぬブルースロックナンバー「Rock Me」の登場で前2曲のことなんでどうでもよくなってしまいます(苦笑)。ジャック・ラッセル(Vo)のブルースフィーリングに満ち溢れたボーカルワークに息を飲むだけでなく、アルバム冒頭でテクニカルなプレイを披露していたマーク・ケンドール(G)もここでは味わい深いギタープレイで聴き手をノックアウトさせるのですから。ちょうど時期的にLED ZEPPELIN再評価熱が高まっていたこともあって、WHITESNAKEやGREAT WHITEは良くも悪くも比較対象としてよく話題に上がっていたのを覚えています。

この7分以上におよぶ大作が終わると、従来の彼ららしい佳曲「All Over Now」で再び“普通のハードロック”タイムに突入。オープニングのアコギで「おっ!?」と思わせるも、途中から“普通のハードロック”へと変化する「Mistreater」、テクノロジーとブルースフィーリングをミックスしたハードロック「Never Change Heart」、ツーバスがドコドコ鳴り響くメタリックなファストチューン「Fast Road」、ヘヴィなリフが印象的な「On The Edge」と、「Rock Me」路線よどこへ……という構成が続きます。が、これはこれで悪くないので良しとしましょう。

そして、ラストは泣きのバラード「Save Your Love」でしっとり締めくくり。この曲の美しさときたら……「Rock Me」でのZEP路線にも通ずるものがありますが、結局本作ではそれっぽいのってこの2曲だけなんですよね。まあこの2曲が成功したからこそ、のちの路線があるわけですけど。そういう意味では、現在のGREAT WHITEを考える上で過渡期の1枚ということになるんでしょうか。メロディアスで適度にブルージーなハードロックという視点においては非常に優れた1枚だと思いますが、ZEP的ブルースハードロック路線を求める人にとっては少々物足りない内容に映るかもしれませんので、購入の際にはご注意を。



▼GREAT WHITE『ONCE BITTEN...』
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投稿: 2017 11 06 12:00 午前 [1987年の作品, Great White] | 固定リンク

2017/11/05

RATT『OUT OF THE CELLAR』(1984)

1984年春に発表された、RATTの記念すべきメジャーデビューアルバム。デビューと同時に本作からのシングル「Round And Round」が全米12位のヒット曲となり、アルバムも全米7位まで上昇、300万枚以上を売り上げる最大のヒット作となりました。

1983年にQUIET RIOTDEF LEPPARDがチャート上でメガヒットを遂げ、それに続くようにMOTLEY CRUEなどアメリカ産の新世代HR/HMバンドが次々とセールス的に成功を収めるという好状況の中、鳴り物入りでデビューを果たしたのがRATTとBON JOVIでした。2組はほぼ同時期にデビューを飾り、RATTが早くから成功を収めたことでBON JOVIは一歩遅れをとる形となってしまいます(ま、2年後には一気に逆転してしまうんですけどね)。

昨日のQUIET RIOTの項でも触れましたが、この時期のバンドがヒットするのに必要不可欠だったのが、MTVでの露出。つまり、それまでラジオヒットを重要視していた制作サイドは「いかに人の目を惹きつけるミュージックビデオを制作するか」に注力するようになるわけです。キャッチーな曲&音作りという点においてはラジオが主戦場だった時代となんら変わらないのですが、そこにヴィジュアルの強みが加わることは、派手で個性的な存在が多かったL.A.出身のハードロックバンド=L.A.メタルバンドにとっては好都合だったわけですね。

「Round And Round」のMVを観ればわかるように、RATTはヴィジュアル的にも“派手すぎず、ケバすぎず”と非常に親しみやすいルックスでした。しかもウォーレン・デ・マルティーニ(G)のようなグッドルッキンなメンバーがいたことで、女性人気的にはかなり高かったと記憶しています。

また、サウンドのほうもポップなメロディを持つ楽曲が多いものの、そのサウンドはヘヴィでザクザクしたギターサウンドが主体。ウォーレン&ロビン・クロスビーのリフワーク&ソロプレイは当時のギターキッズにはヨダレものの美味しい要素満載でしたし、ラジオライクなポップナンバー(「Round And Round」「Scene Of The Crime」)、ヘヴィなミディアムナンバー(「Wanted Man」)、ライブ映えする疾走チューン(「She Wants Money」「The Morning After」「I'm Insane」)、アコースティックギターを導入したドラマチックな楽曲(「Back For More」)など楽曲も親しみやすいものばかり。HR/HMマニアはもちろんのこと、そちら側に詳しくないライト層にも存分にアピールする作風は、前年のQUIET RIOTやDEF LEPPARDにも匹敵するものです。

結局彼らは本作を超えるヒット作を生み出すことはできませんでしたが、1984年から1990年にかけて残した5枚のオリジナルアルバムは(賛否あるでしょうけど)僕的にはどれも非常に優れた作品です。



▼RATT『OUT OF THE CELLAR』
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投稿: 2017 11 05 12:00 午前 [1984年の作品, Ratt] | 固定リンク

2017/11/04

QUIET RIOT『METAL HEALTH』(1983)

1983年春に発表された、QUIET RIOTの記念すべき全米デビューアルバム。彼らは70年代、ランディ・ローズを含む編成で『QUIET RIOT』(1977年)、『QUIET RIOT II』(1978年)の2枚を日本でのみ発表していますが、ワールドワイドデビューという意味ではこの『METAL HEALTH』が1stアルバムになるわけです。

時代背景的には、ちょうどこの頃からアメリカでHR/HMがウケ始め、このQUIET RIOTとDEF LEPPARDが全米チャートの上位にランクイン。『METAL HEALTH』は当時としては異例の全米1位を獲得し、600万枚以上を売り上げました。ちなみに、DEF LEPPARDも1983年に発表した3rdアルバム『PYROMANIA』が全米2位に輝き、現在までに1000万枚以上ものセールスを記録していることはご存知のとおり。この2バンドの大成功が、後続たちへ道を切り開いたと言っても過言ではありません(もちろん、それ以外の要素も存在しますが、話が長くなるのでここでは割愛させてください)。

QUIET RIOTはL.A.メタルにカテゴライズされたバンドですが、聴いてもらえばわかるように「適度にハードで適度にポップ」という絶妙なバランス感で成り立つ楽曲&サウンドが魅力。しかもカバー曲(SLADEのヒット曲「Cum On Feel The Noize」)をシングルカットすることで、ラジオヒットやMTVでのヘヴィローテーションに後押しされチャート的にも成功を収め(全米5位)、HR/HMファン以外にも浸透していったわけです。これは先のDEF LEPPARDも同様で、MTVのスタートによってミュージックビデオ(つまりヴィジュアル)が重要視される時代が到来したことで、見た目が派手なHR/HMバンド側に風向きが変わっていったわけですね。

「Cum On Feel The Noize」のみならず、派手なパーティソング「Slick Black Cadillac」、ハードだけどメロディアスで口ずさみたくなる「Metal Health (Bang Your Head)」、泣きメロを伴った疾走ナンバー「Breathless」、ヘヴィメタル寄りのファストチューン「Run For Cover」、穏やかなミディアムチューン「Don't Wanna Let You Go」、故ランディ・ローズに捧げるピアノバラード「Thunderbird」など、とにかくキャッチーで親しみやすい曲が豊富。B級感皆無で、一聴して「こりゃあ売れるわ」と頷ける内容です。

彼らの場合、このデビュー作の出来が良すぎたのが不幸だったといいましょうか、続く『CONDITION CRITICAL』(1984年)以降、一気に失速してしまいます。今みたいに3年に1枚でも許される時代ならまだしも、当時は毎年のようにアルバムを発表していた時代ですから、ツアー三昧で曲作りも追いつかなかったんでしょうね。そういった意味でも、大成功は収めたものの不運なバンドだったのかもしれませんね。



▼QUIET RIOT『METAL HEALTH』
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投稿: 2017 11 04 12:00 午前 [1983年の作品, Quiet Riot] | 固定リンク

2017/11/03

KISS『CREATURES OF THE NIGHT』(1982)

1982年秋に発表された、KISS通算10作目のスタジオアルバム。70年代末のディスコ路線を経て、前作『MUSIC FROM “THE ELDER”』(1981年)ではオーケストラを導入したコンセプトアルバムにチャレンジし、往年のヒット作ほどの評価を得ることなく、どんどん先細りしつつあったKISSが、起死回生の一撃として制作したのがこの『CREATURES OF THE NIGHT』です。

聴いてもらえばわかるように、本作では70年代のロックンロール路線ともディスコとも異なる、骨太でメタリックなサウンドへとシフトチェンジ。楽曲制作にはアダム・ミッシェルやのちにバンドに加わるヴィニー・ヴィンセント(G)、さらには当時はまだ無名だったブライアン・アダムス&ジム・ヴァランスのコンビも関わっており、それまでのシンプルでわかりやすいポップなスタイルから時代の流行に合わせたメタル路線がずらりと並んでいます。

また、演奏面でも前作から加入したエリック・カー(Dr)と、エース・フレーリー(G)に代わってレコーディングに参加したヴィニー・ヴィンセントの個性が存分に生かされた硬質で豪快なハードロックを楽しむことができます。ちなみに、クレジットやジャケットにはエースの名前や姿があるものの、実際のレコーディングには一切携わっていないとのこと。結果、本作リリース後にエースはバンドを離れています。

豪快なドラミングとマイナー調のメロディが心地よいポール・スタンレー(Vo, G)歌唱曲「Creatures Of The Night」からスタートすると、以降はジーン・シモンズ(Vo, B)歌唱曲とほぼ交互にメロウな楽曲(ポール歌唱)とワイルドなヘヴィチューン(ジーン歌唱)が並びます。“空耳アワー”でおなじみの「Danger」やヘヴィバラード「I Still Love You」、今でもライブでは定番の「I Love It Loud」やジーンの“火吹き曲”としておなじみの「War Machine」など聴きどころ満載。全9曲中ジーン歌唱曲が5曲というのも、作風を考えれば納得です。

当時、本作は全米45位と決して大きな成功を収めることはできませんでしたが、KISSは次作『LICK IT UP』(1983年)ではついにメイクを落として素顔になり、ヘヴィメタル路線を追求していき『ANIMALIZE』(1984年)や『ASYLUM』(1985年)などでセールスや人気を復調させていきます。その間にはヴィニー脱退〜マーク・セント・ジョン加入&脱退〜ブルース・キューリック加入と紆余曲折があるんですけどね。

ちなみに本作、素顔で再びヒットを飛ばした1985年にリミックス&ジャケットを当時の編成(ポール、ジーン、エリック、ブルース)に変えて再発。しばらくオリジナル盤は廃盤状態でしたが、現在はリミックス盤が廃盤となり、オリジナル盤が復活しております。



▼KISS『CREATURES OF THE NIGHT』
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投稿: 2017 11 03 12:00 午前 [1982年の作品, KISS, Vinnie Vincent Invasion] | 固定リンク

2017/11/02

MOTLEY CRUE『SHOUT AT THE DEVIL』(1983)

1983年秋に発表された、MOTLEY CRUEの2ndアルバムにしてその名を世に知らしめた出世作。ちょうどアメリカのHR/HMブームと重なったこともあり、本作は全米17位という高順位を記録し、現在までにアメリカだけで400万枚以上を売り上げる最初のヒットアルバムとなりました。

1982年にアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年にインディーズから発表されたアルバムをリミックス&曲順を変えたもの)でメジャーデビューを果たした彼らでしたが、当初は“間違った方向のグラムロック”的なイロモノ/キワモノと捉えられていたようです。ですが、楽曲自体はキャッチーだったこともあり、それが全米77位という小ヒットにつながったのでしょう。

続く今作では、プロデューサーにCHEAP TRICKなどで知られるトム・ワーマンを迎えて制作。どこか軽さとB級感が伴っていた前作から一変し、本作では硬派でメタリックなサウンドと楽曲を聴かせてくれます。

オープニングSE「In The Beginning」からタイトルトラック「Shout At The Devil」へと流れていく構成は、リリースから35年近く経った今聴いても最高に震えますし、その表題曲のカッコ良さたるや……活動後期〜末期のヴィンス・ニール(Vo)がこれくらい歌えていたら、もっと伝説に……(以下略)。

シングルカットされた「Looks That Kill」や「Too Fast To Fall In Love」のキャッチーさ、「Bastard」「Red Hot」みたいな攻め攻めのメタルチューン、「God Bless The Children Of The Beast」「Danger」みたいに泣きメロを伴うバラード(のちの「Home Sweet Home」とは異なる、ヘヴィメタルバラード)、そしてTHE BEATLES「Helter Skelter」のヘヴィメタル版カバーなど、とにかく今聴いてもカッコ良いし、2017年でも前々通用するハードロックナンバー満載の1枚だと思います。

完璧さを求めるのであれば、最大のヒット作となった5th『DR. FEELGOOD』(1989年)のほうが上かもしれませんが、適度な隙があってA級とB級の間にいるこの感じは、それ以前にもそれ以降にも同じような作品がないだけに、本当なら比較のしようがないのですが……うん、個人的には彼らのキャリア中でもっとも好きな1枚です。

90年前後になると、古くからのファンの間で本作と『DR. FEELGOOD』、どっちが名盤か?なんて議論もあったのですが、結局はこの『SHOUT AT THE DEVIL』と『DR. FEELGOOD』がその後のモトリーにとって、良くも悪くもベースになってしまったような気がします。まぁ『DR. FEELGOOD』でやりすぎてしまった、というのもあるのかもしれませんが……。

ヴィンスの声が出まくりなのはもちろん(笑)、トミー・リー(Dr)のドラミングもミック・マーズ(G)のリフワーク&ソロプレイも、ニッキー・シックス(B)のソングライティングもすべてが冴えまくった、「こりゃ売れるわ」という1枚。もはや叶いはしませんが、一度は本作の完全再現ライブなんてのも観てみたかったもんですね。



▼MOTLEY CRUE『SHOUT AT THE DEVIL』
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投稿: 2017 11 02 12:00 午前 [1983年の作品, Motley Crue] | 固定リンク

2017/11/01

AEROSMITH『ROCK IN A HARD PLACE』(1982)

AEROSMITHが1982年夏に発表した通算7枚目のスタジオアルバム。前作『NIGHT IN THE RUTS』(1979年)制作途中でジョー・ペリー(G)が脱退し、さらに本作制作前にはもうひとりのギタリスト、ブラッド・ウィットフォード(G)も脱退して、オリジナルメンバーはスティーヴン・タイラー(Vo)、トム・ハミルトン(B)、ジョーイ・クレイマー(Dr)のみとなってしまいました。ジョーの後釜にはジミー・クレスポ、ブラッドの後任にはリック・デュファイを迎えて完成させたのが、この『ROCK IN A HARD PLACE』という作品です。

プロデュースには前々作『DRAW THE LINE』(1977年)までのバンドの代表作に携わったジャック・ダグラス、そしてジョン・ボン・ジョヴィ(BON JOVI)のいとこトニー・ボンジョヴィが携わり、大半の楽曲をスティーヴンとジミーの共作で完成させています。前作『NIGHT IN THE RUTS』はメンバーのドラッグ問題やジョーの制作への関与が希薄だったこともあり、3曲もカバー曲が含まれていましたが、本作は全10曲中カバーが1曲。しかもジャズのスタンダード「Cry Me A River」をセレクトするという、非常に興味深い内容となっています。

いわゆる世間の評価的には本作、あまり高くないのですが、改めて聴いてみると悪くないんですよ。むしろ前作『NIGHT IN THE RUTS』や、オリジナル編成が復活した次作『DONE WITH MIRRORS』(1985年)よりも楽曲制作面で工夫が施されているんじゃないかと思っています。起死回生を狙った攻めのファストチューン「Jailbait」は単調と言われたらそれまでですが、僕は嫌いじゃないし、続く「Lightning Strikes」もシンセを導入した非常にキャッチーな作風でなかなかの出来だと思いますし。先の「Cry Me A River」のカバーも非常に“らしく”て好印象。当時のテクノロジーを彼らなりに駆使したインタールード「Prelude To Joanie」から続く「Joanie's Butterfly」の流れも実はかなり彼ららしい仕上がりなんですよね。

そしてワイルドなタイトルトラック「Rock In A Hard Place (Cheshire Cat)」は初期のエアロを彷彿とさせるし、ヘヴィな「Jig Is Up」、ブルースハープをフィーチャーしたブルージーなバラード「Push Comes To Shove」と、昔からのファンなら絶対に響く曲が豊富なのに、結局「ジョーがいない、ブラッドがいない」という理由で正当な評価が下されない。本当に勿体ない、不遇の1枚だと思っています。

もちろん、本作を『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)『ROCKS』(1976年)といった傑作たちと並べて「これは名作です」なんて無理矢理宣言するつもりはありません。ただ、オリメンじゃないからといってスルーするには出来が悪くないなんじゃないか、と言いたいだけ。変なレッテルに惑わされず、まずは無心で本作と接してみることをオススメします。



▼AEROSMITH『ROCK IN A HARD PLACE』
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投稿: 2017 11 01 12:00 午前 [1982年の作品, Aerosmith] | 固定リンク