DEF LEPPARD『SLANG』(1996)
1996年5月にリリースされた、DEF LEPPARD通算6枚目のスタジオアルバム。前作『ADRENALIZE』(1992年)から4年ぶりの新作となるわけですが、その4年間に新曲+シングルBサイド集アルバム『RETRO ACTIVE』(1993年)やベストアルバム『VAULT: DEF LEPPARD GREATEST HITS (1980-1995)』(1995年)のリリースを挟んだので、意外と久しぶりという気がしなかったことを今でもよく覚えています(まあ、それも「彼らにしては」という大前提が入りますが)。
『ADRENALIZE』リリース後にスティーヴ・クラーク(1991年逝去)の後任としてヴィヴィアン・キャンベルが加入した彼らが最初に制作したスタジオアルバムがこの『SLANG』になるわけですが、本作は当時からいろんな意味で問題作として紹介されてきました。
まず、完全にロバート・ジョン・マット・ラングの手を離れ、すべての楽曲をメンバーのみで制作。プロデュースも基本はセルフプロデュースという形に近く(パートナーに以前から携わるエンジニア、ピート・ウッドロフを迎えている)、完全に「当時やりたかったことを試した」実験作と言える内容。時代背景的には『ADRENALIZE』発売前後から勃発したグランジムーブメントを経て、1995年前後のOASIS vs BLURなどのブリットポップムーブメントという、完全にHR/HMが時代遅れとして扱われたタイミングなわけで、当のDEF LEPPARDも完全に“過去の遺産”的扱いを受けていました。
そんな彼らが、純粋に「グランジ、シンプルでカッコいいじゃん!」「ブリットポップ、わかるよ。だって俺らもイギリス人だし!」と感じたことをそのまま音に反映させた。つまり、元来持ち合わせているポップセンスはそのままに、オーバープロダクションが持ち味だった彼らのスタイルを180度真逆の「無駄を削ぎ落としたシンプルさ」「人工甘味料を排除し、素材をそのまま生かした味付け」へと昇華させたのがこの『SLANG』だったのです。
グランジやブリットポップのみならず、当時流行り始めていたインダストリアルロックのテイストまで取り入れた「Truth?」に、まずリスナーはびっくりしたことでしょう。「え、NINE INCH NAILS?」と苦笑いしつつ、“LED ZEPPELIN+インダストリアルロック”な「Turn To Dust」、ヒップホップの香りがするポップチューン「Slang」、グランジ的なシンプルな構成とモノトーンな味付けの「All I Want Is Everything」、グランジというよりもU2に近いものを感じる「Work It Out」、どこか当時流行のR&Bバラードに通ずるものがある「Breathe A Sigh」と、とにかく前半は驚きの連続。「Photograph」や「Pour Some Sugar On Me」「Love Bites」を求める従来のファンを、まるで拒絶するかのような楽曲の数々に、そりゃあ虚説反応を示したくもなりますよね。
しかし後半になると、音は完全にグランジだけど彼ららしいメロディを持つ「Deliver Me」やもっとも従来のDEF LEPPARDに近い(けど味付けは現代的)「Gift Of Flesh」を筆頭に、音数に少なさに改めて驚かされるバラード「Blood Runs Cold」、サウンド的には『ADRENALIZE』以前の作品に入っていたとしても許容範囲ないなスローナンバー「Where Does Love Go When It Dies」、そしてドゥーミーなツェッペリン的ミディアムヘヴィナンバー「Pearl Of Euphoria」と、作風こそ現代的ですが意外と従来のDEF LEPPARDに近いものが感じられる楽曲たちが並びます。
そう考えると、序盤に新たな挑戦を並べて旧来のファンを振り落としていき、進めば進むほど彼らが本来持ち合わせるカラーへと戻っていく……そんな「聴く者を試す」1枚となっているのではないでしょうか。それくらい、当時の彼らは以前の自分たちの色を払拭させたかった、偏見なしに音で評価してほしかったのかもしれません。それがやりすぎだったとしても……。
ちなみに僕、当時からこのアルバムに関しては両手を上げて絶賛する派です。本作を携えた来日でも、武道館公演を複数観てますし、ジョー・エリオット(Vo)がライブでNIRVANA「Come As You Are」やOASIS「Live Forever」の弾き語りをしたのを観て微笑ましい気持ちになったことも、昨日のことのように覚えています。
なお、DEF LEPPARDは2014年に本作『SLANG』のデラックスエディションを自身のレーベルから発表しており、そこには『SLANG』収録曲の未発表バージョンなどが多数含まれています。正直、このバージョンだけでエントリー1本分語れるので、次回は続編としてこのデラックス版について紹介したいと思います。
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