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2017年12月31日 (日)

2017年12月のお仕事

2017年12月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※12月31日更新)


[WEB] 12月31日、「リアルサウンド」にて乃木坂46桜井玲香インタビュー「乃木坂46 桜井玲香が語る“大躍進の2017年”経たグループの今「そろそろ仕掛ける側にならなくちゃ」」が公開されました。

[WEB] 12月31日、「リアルサウンド」にてLittle Glee Monsterインタビュー「Little Glee Monsterが語る、紅白出場の喜びと3rdアルバムでの“音楽的挑戦”」が公開されました。

[WEB] 12月29日、「リアルサウンド」にてHi-STANDARDのライブ評「Hi-STANDARDが見せたパンクロックバンドしてのタフさ 『THE GIFT TOUR 2017』総括レポ」が公開されました。

[WEB] 12月27日、「DWANGO.JP NEWS」にてラストアイドルのイベント記事「ラストアイドルファミリーSPイベント大盛況「初めて楽しいバトルができました(笑)」」が公開されました。

[紙] 12月27日発売「TV Bros.」2017年12月29日号にて、大森靖子インタビュー「2017年アイドル超プレイバック」を担当・執筆、および「MUSIC OF THE YEAR: THE 5 BEST SONGS」に寄稿しました。

[紙] 12月27日発売「別冊カドカワDirecT 08」にて、SILENT SIRENすぅインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 12月25日、「リアルサウンド」にてCrossfaithのライブ評「『ACROSS THE FUTURE 2017』が提示した、ラウドロック/エクストリームミュージックの未来」が公開されました。

[WEB] 12月24日、「リアルサウンド」にて新譜キュレーション連載「西廣智一が選ぶ、2017年HR/HM/ラウドロックベスト10 暗いニュースの裏にあった傑作たち」が公開されました。

[紙] 12月22日発売「BRODY」2018年2月号にて、欅坂46志田愛佳×菅井友香対談、齋藤冬優花×長濱ねる×渡邉理佐鼎談を担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 12月20日から全国5都市の主要CDショップで配布開始の「FLYING POSTMAN PRESS」2018年1月号にて、片平里菜単独インタビューを担当・執筆しました。

[WEB] 12月18日、「リアルサウンド」にてラストアイドル インタビュー「ラストアイドルが語る、デビューにかける思い 「覚悟とか受け入れる強さが全然違う」」が公開されました。

[WEB] 12月16日、「リアルサウンド」にてNGT48中井りかインタビュー「NGT48 中井りか、“葛藤”を経て見つけた新たなアイドル像 「私は王道じゃなくて、邪道だから」」が公開されました。

[紙] 12月15日から都内で配布開始のTOKYO HEADLINE×MY FIRST STORYによる特別号「MFS HEADLINE」にて、バンドについての解説コラムを担当・執筆しました。

[WEB] 12月13日、「リアルサウンド」にてLOUDNESSのアーティスト分析「LOUDNESS、“2つの時代”のライブ音源に見る進化の軌跡 『8186 Now and Then』徹底解説」が公開されました。

[紙] 12月12日発売「週刊SPA!」12月19日号にて、「美女地図」欅坂46・渡辺梨加にコメントを寄せました。(Amazon

[紙] 12月11日発売「別冊カドカワDirecT 07」にて、欅坂46今泉佑唯×小林由依対談、けやき坂46柿崎芽実×加藤史帆×齊藤京子座談会、けやき坂46小坂菜緒、渡邉美穂インタビュー、ひらがな全国ツアー福岡公演レポート、ドラマ「Re:Mind」潜入記(一部)、巻末特集「再検証グランジムーブメント」全般を担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 12月10日から全国5都市の主要CDショップで配布開始の片平里菜×「FLYING POSTMAN PRESS」特別号にて、片平里菜単独インタビューとアルバム『愛のせい』全曲解説コメント取材を担当・執筆しました。

[紙] 12月9日、10日開催の「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017」にて販売の公式パンフレットにて、メンバー個別インタビューなどを担当・執筆しました。

[WEB] 12月8日、「リアルサウンド」にてLittle Glee Monsterのライブ評「Little Glee Monsterは前例のないボーカルグループへ “最高”を更新した全国ツアー最終公演」が公開されました。

[紙] 12月8日発売「乃木坂46×週刊プレイボーイ2017」にて、西野七瀬×与田祐希対談、生田絵梨花×久保史緒里対談、「ウワサの真相スペシャル2017」内の渡辺みり愛インタビュー、梅澤、大園、与田パートを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 12月7日、SPACE SHOWER MUSICオフィシャルサイトにて宇宙人(Cosmos People)インタビューが公開されました。

[紙] 12月6日発売「月刊MdN」2018年1月号にて、付録ブックレット「伊藤万理華が乃木坂46に残したクリエイティブ」内「伊藤万理華を形づくってきた乃木坂46の映像作品+α」の映像作品解説および伊藤万理華コメント取材を担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 12月4日から先行配布の片平里菜×「FLYING POSTMAN PRESS」特別号にて、片平里菜単独インタビューとアルバム『愛のせい』全曲解説コメント取材を担当・執筆しました。

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また、11月に当サイトで紹介したアルバム(Spotifyで配信している作品のみ)から各2曲程度ピックアップして、50曲程度のプレイリストを制作しました。題して『TMQ-WEB Radio 1711号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

投稿: 2017 12 31 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

2017年総括(1):洋楽アルバム編

2017年もあと半日で終わりということで、毎年恒例となった今年の総括を書いていこうと思います。

その年のお気に入りアルバムを洋楽10枚(+次点10枚)、邦楽10枚(+次点10枚)、2016年気になったアイドルソング10曲(次点なし)、そして今年印象に残ったライブ5本をピックアップしました。アルファベット順、五十音順に並べており、順位は付けていませんが特に印象に残った作品には「●」を付けています。

特にこの結果で今の音楽シーンを斬ろうとかそういった思いは一切ありません。ごく私的な、単純に気に入った/よく聴いたレベルでの「今年の10枚」です。

まずは洋楽アルバム編です。


■洋楽10枚(アルファベット順)

・Björk『UTOPIA』(amazon)(レビューはこちら

・CIGARETTES AFTER SEX『CIGARETTES AFTER SEX』(amazon

・CONVERGE『THE DUSK IN US』(amazon)(レビューはこちら

・DEPECHE MODE『SPIRIT』(amazon)(レビューはこちら

・KENDRICK LAMAR『DAMN.』(amazon

・KREATOR『GODS OF VIOLENCE』(amazon)(レビューはこちら

●MASTODON『EMPEROR OF SAND』(amazon)(レビューはこちら

・MIGOS『CULTURE』(amazon

・RIDE『WEATHER DIARIES』(amazon)(レビューはこちら

・SHOBALEADER ONE『ELEKTRAC』(amazon


<次点>
・BONOBO『MIGRATION』
・CODE ORANGE『FOREVER』(レビューはこちら
・DEAD CROSS『DEAD CROSS』(レビューはこちら
・FOO FIGHTERS『CONCRETE AND GOLD』(レビューはこちら
・KELELA『TAKE ME APART』
・LINKIN PARK『ONE MORE LIGHT』(レビューはこちら
・MACHINE GUN KELLY『BLOOM』
・PAUL DRAPER『SPOOKY ACTION』(レビューはこちら
・SLOWDIVE『SLOWDIVE』(レビューはこちら
・THUNDERCAT『DRUNK』


楽曲単位の年間ベストは年末売りの『TVブロス』に、HR/HMやラウド系にジャンル限定した年間ベストは『リアルサウンド』に掲載されていますが、こちらは洋楽オールジャンルになります。

ギリギリまでビョークにしようかMIGOSにしようかと悩んだのですが、年間を通してもっとも聴いたアルバムとなると、結局MASTODONだったんですよね。特に今年は、久しぶりに胸を張って「HR/HMが面白い!」と言えるアルバムばかりだったので、自分の気持ちに素直になろうと思い選出しました。

31日に入ってから10枚選んでみたものの、たぶん明日には次点と数枚入れ替わっていると思います。それくらい、他のアルバムも良かったので。

ちなみに、↓は上記20枚には選ばなかったものの、年末に手元に届いて「お? こ、これは……?」という予感の1枚。

邦楽アルバム編に続く)



▼MORBID ANGEL『KINGDOMS DISDAINED』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 12 31 11:02 午前 [2017年の作品, Björk, Cigarettes After Sex, Code Orange, Converge, Dead Cross, Depeche Mode, Foo Fighters, Kendrick Lamar, Kreator, Linkin Park, Mastodon, Migos, Paul Draper, Ride, Shobaleader One, Slowdive, 「1年のまとめ」] | 固定リンク

2017年総括(2):邦楽アルバム編

洋楽アルバム編に続いて、邦楽アルバム編。こちらのエントリーでは2017年もっとも気に入った邦楽アルバム10枚(+次点10枚)を紹介します。順位は付けませんが、特に印象に残った作品には「●」を付けています。


■邦楽10枚(アルファベット→五十音順)

・Cornelius『Mellow Waves』(amazon)(レビューはこちら

・DYGL『Say Goodbye to Memory Den』(amazon

・Hi-STANDARD『The Gift』(amazon)(レビューはこちら

・LOVEBITES『AWAKENING FROM ABYSS』(amazon)(レビューはこちら

・Maison book girl『image』(amazon

・ONE OK ROCK『Ambitions』(amazon)(レビューはこちら

・片平里菜『愛のせい』(amazon

・ドレスコーズ『平凡』(amazon)(レビューはこちら

●道重さゆみ『SAYUMINGLANDOLL~再生~オリジナルサウンドトラック』(amazon

・米津玄師『BOOTLEG』(amazon)(レビューはこちら


<次点>
・Boris『DEAR』(レビューはこちら
・coldrain『FATELESS』
・Creature Creature『Death is A Flower』
・HAWAIIAN6『Beyond The Reach』
・LOW IQ 01『Storie Noticed』
・Mondo Grosso『何度でも新しく生まれる』
・OUTRAGE『Raging Out』(レビューはこちら
・PUNPEE『MODERN TIMES』
・10-FEET『Fin』
・私立恵比寿中学『エビクラシー』


ギリギリまでブクガとCorneliusとハイスタのどれかで悩みに悩んだのですが、最終的には初志貫徹。問答無用で道重さんです。ごめんなさい、真面目な音楽評論とかそのへんを求めている方々。こういう管理人がやってるサイトなんです、19年前からずっと。

古いファンから散々叩かれまくったワンオク(傑作とかそういうことではなく、これが“起点”であって、本当の傑作は次だと思いますよ)、コンセプチュアルかつ新境地のドレスコーズ、国内HR/HMでは問答なしでトップクラスのLOVEBITESなど、本当に優れた作品ばかりでした。

ちなみに、今回も乃木坂46と欅坂46のアルバムは選外としました。理由は昨年述べたとおり、アルバム複数仕様によって曲がバラけてしまっていることで、“アルバム”として機能していないと感じたので。ただ、乃木坂と欅坂、どちらが好きだったか言われると、最初のインパクトでは欅坂でしたが、ずっと安心して楽しめたのは乃木坂のほう。前作以上の内容だと思います。

アイドルソング&印象的なライブ編に続く)



▼乃木坂46『生まれてから初めて見た夢』
(amazon:初回生産限定盤 / 初回仕様限定盤TYPE-A / 初回仕様限定盤TYPE-B / 通常盤

投稿: 2017 12 31 11:01 午前 [2017年の作品, Boris, Cornelius, DYGL, Hi-STANDARD, LOVEBITES, Maison book girl, ONE OK ROCK, Outrage, 「1年のまとめ」, ドレスコーズ, 片平里菜, 米津玄師, 道重さゆみ] | 固定リンク

2017年総括(3):アイドルソング&印象的なライブ編

このエントリーで最後。こちらではアイドルソング10曲と、2017年印象に残ったライブ5本を紹介したいと思います。順位は付けませんが、特に印象に残った楽曲には「●」を付けています。

まずはアイドルソング10選から


■アイドルソング10曲(アルファベット→五十音順)

・BiSH「プロミスザスター」

・Maison book girl「言選り」

・sora tob sakana「ribbon」

・task have fun「3WD」

・アイドルネッサンス「交感ノート」

・欅坂46「エキセントリック」

・私立恵比寿中学「なないろ」

・どうぶつビスケッツ×PPP「ようこそジャパリパークへ」

●乃木坂46「逃げ水」

・道重さゆみ「true love true real love(とぅるらとぅるりら)」


本来なら“道重さゆみ×大森靖子”という大好きなものを掛け合わせた「true love true real love(とぅるらとぅるりら)」を選んでもおかしくないのですが、昨日のレコード大賞を観て1年をいろいろ振り返りつつ、やっぱり2017年は乃木坂46の年だったなと思い返し、今年リリースされたシングルの中でもっとも好きな「逃げ水」を選出しました。これはもう、完全に私情入りまくりです(まあ道重さんを選んだ時点で私情以外のなにものでもないですが。笑)。

で、その私情を抜きにしてもBiSHの大躍進はものすごいものがあったし(実際、この曲は本当に大好きです)、ブクガの完成度も圧倒的だし、エビ中はもう言葉にならないし、sora tob sakanaやtask have fun、アイドルネッサンスはとにかく曲が良かった。あ、1曲「へっ、アイドル?」って曲が混ざってるが、気にするな。なんだかんだでお気に入りなんだから。

で、昨年3曲選んだ欅坂46は……シングル2曲に関しては、正直そこまでの衝撃はなかったかなと。むしろ、カップリングであり夏ツアーのオープニングを飾った「エキセントリック」が一番しっくりくる曲だったんじゃないかな。昨年の3曲がなかったら、今年のシングル2曲もかなりレベルの高い楽曲だと思ったんでしょうけど。

そして、乃木坂46。散々叩かれた「インフルエンサー」は僕、リリース前から「好き」と公言してきましたし、そこに関しては今も変わりません。クオリティが落ちたかどうかは正直僕にはわかりませんが(もはやファン目線とか冷静さとかそういう次元では語れない存在なので)、「ハロプロの一時期にこういうラテン系のダンスチューン、よくあったよなー、リリース当時は嫌いだったけど、結局体に馴染んで、ライブで聴くと楽しかったなー」ということを思い出したんですよ。なので、単純に好みってことなんでしょうね。なので、曲の良し悪しでは僕は語れません、ごめんなさい。


■印象的なライブ5選

・Theピーズ@日本武道館(6月9日)
・BOOM BOOM SATELLITES@新木場STUDIO COAST(6月18日)
・乃木坂46@明治神宮野球場(7月2日)
・THE YELLOW MONKEY@東京ドーム(12月9日)
・Hi-STANDARD@さいたまスーパーアリーナ(12月14日)

ライブはいろいろ悩んだけど、フェスものを省いて、単独ライブからセレクト。ピーズは武道館のアリーナ3列目で観ちゃったし、あの内容だったので問答なしに選出。ブンブンは説明はいらないでしょう。乃木坂46はドーム2日目も捨てがたいけど、「一度観たかったもの」という意味で神宮2日目をピックアップ。イエモン東京ドームは、出来は2日目だけど、あの独特の緊張感はあの日しか味わえないものだったので。そして、ハイスタ。演奏などは新潟のほうが上だったけど、“バンドらしさ”では圧倒的にさいたま。という5本になります。

ちなみに2017年に観たライブ/イベント/舞台の数は91本。2015年は130本だったので、だいぶ減ったなと。とはいえ、複数日行ってるフェスも1本とカウントしてるので、結局は100本程度は行ってる計算になるのですが。特に今年は仕事の都合で行けなかったライブが20数本はあるので、この数になってもしゃあないかなと。

そして、2016年末から実験的に、かつ意地になって始めた連続更新。おかげさまで2017年は無事やり遂げることができました。ディスクレビュー(雑誌掲載分含む)が390本、企画記事・ライブレポートが7本と約400本……たぶん、2000年代前半よりも更新してますね、これ(苦笑)。生き急いでるんでしょうか……まあ、来年もこのペースでいきますけどね!

以上で2017年の総括は終了。今年もたくさんの素敵な音楽と出会うことができました。2018年も今年以上に素敵な音楽と出会えますように。



▼Theピーズ『ブッチーメリー SIDE C(2003-2005 selection)』
(amazon:国内盤CD / MP3

投稿: 2017 12 31 11:00 午前 [2017年の作品, BiSH, BOOM BOOM SATELLITES, Hi-STANDARD, Maison book girl, sora tob sakana, task have fun, YELLOW MONKEY, THE, 「1年のまとめ」, どうぶつビスケッツ×PPP, アイドルネッサンス, ピーズ, The, 乃木坂46, 欅坂46, 私立恵比寿中学, 道重さゆみ] | 固定リンク

LINKIN PARK『ONE MORE LIGHT LIVE』(2017)

LINKIN PARKが5月リリースの最新アルバ『ONE MORE LIGHT』を携えて行ったヨーロッパツアーから、オランダ・アムステルダム、ポーランド・クラクフ、ドイツ・ベルリン、イギリス・ロンドン&バーミンガムでのライブ音源をコンパイルした作品。彼らはこの夏に北米ツアーを行い(その一部公演ではONE OK ROCKがゲスト出演する予定だった)、そのまま11月には久しぶりの単独公演(こちらもゲストにワンオク参加予定だった)を実施するはずでした。

『ONE MORE LIGHT』は彼ら最大の武器であった“ヘヴィさ”を極限までそぎ落とし、“モダンなポップサウンド”を積極的に取り入れた実験作でした。もちろん、チェスター・ベニントンがあの声で歌えばそれがLINKIN PARKの楽曲になるのは当たり前の話で、どんなにポップになろうが聴けばそれがLINKIN PARKなのはすぐに理解できました。だからこそ、従来のファンはその違和感に対して反射的に「NO!」を突きつけたのかもしれません。

ツアーが始まる前、マイク・シノダは「LINKIN PARKはアルバムによってサウンドが変化していて、前作も新作とはまったく違うサウンドだったし、その前の作品も、その前も、違うサウンドだった。だから全時代のLINKIN PARKのサウンドをひとつのセットリストに織り交ぜるのは挑戦でもあるし、楽しいことでもある。「One Step Closer」のような昔の曲も、「Heavy」のような最新曲も、ひとつのショウですべてプレイするんだからね」との発言をオフィシャルインタビューで残しています。だからこそ、僕はこの新作を携えたツアーが本当に楽しみでしたし、普段はフェスでしか観ない彼らを初めて単独ツアーで観ようと思ったくらいでしたから。

このライブアルバムは68分程度にまとめられたもので、実際のフルライブから10曲程度間引いたもの。その内容は全16曲中『ONE MORE LIGHT』から8曲と、新作を生でどのように表現しようとしたかが伺えるものとなっています。また、「One Step Closer」や「Papercut」「Faint」「Somewhere I Belong」など初期のヘヴィ系ナンバーや「The Catalyst」といったファストチューンはオミットし、「Crawling」のピアノバージョンといった新作に寄せたアレンジの楽曲を積極的に収録。とはいえ、「Burn It Down」や「New Divide」「What I've Done」「In The End」「Numb」などおなじみの楽曲も多数含まれているので、従来のファンも楽しめる内容といえるでしょう。

けど、あえて上記のような選曲にしたのは、改めて『ONE MORE LIGHT』とは何だったのか?をリスナーに考えてもらう、意識してもらうためだったとも言えるわけで、初期ヘヴィ系ナンバーを排除したことで全体のトーンにも統一感が生まれたわけで。つまり、チェスター最後のツアーを完全版として残すことを選ばず、『ONE MORE LIGHT』の“その先”を見せようとしたのではないでしょうか。チェスター最後の置き土産の中にも、こういったバンドの意思がしっかり落とし込まれているところは、さすが先駆者だと思います。

にしても……これを聴いてしまうと、やっぱり生で体感したかったですよね、『ONE MORE LIGHT』ツアー。彼の死から5ヶ月ちょっと経ちましたが……改めて、ご冥福をお祈りしたいと思います。



▼LINKIN PARK『ONE MORE LIGHT LIVE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2017 12 31 12:00 午前 [2017年の作品, Linkin Park, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2017年12月30日 (土)

BORN OF OSIRIS『THE ETERNAL REIGN』(2017)

アメリカ・シカゴ出身のデスコア/プログレッシヴメタルバンド、BORN OF OSIRISの最新EP。本作は2007年に発売されたバンド初の一般流通音源『THE NEW REIGN』の発表10周年を記念して制作されたもので、『THE NEW REIGN』収録曲8曲を現メンバーで再録&再構築。さらに、当時の未発表曲「Glorious Day」も含まれており、単なる焼き直しでは終わらない現在進行形の彼らの姿が伝わってくる好盤に仕上がっています。

シンセを効果的に用いたプログレッシブメタルサウンドと、低音を効かせた2本のギターとリズム隊が織り成すジェントサウンド、その上に乗るデス声がミックスされることで生まれる不協和音的不穏な世界観。ドラマチックなのにホラー映画的な怖さが漂うそのテイストは、もはやお家芸と言えるでしょう。

昨今の楽曲と比べると、本作で展開されているサウンドはドラマチックさが薄く、むしろ不穏な空気感のほうが強い。そこが良いという人もいるし、近作から入った僕のような人間には新鮮にも映るので、もしかしたら評価が分かれる1枚かもしれません。

とはいえ、すでに10年前からBORN OF OSIRISはこのスタイルを確立させていたとう事実にまず驚かされますし、それを現代的に再構築することで完全に“今の音”、“今の楽曲”として再生されていることにも驚かされる。改めて、奥深いジャンルだなぁ……と感慨深さを覚えました。

そういえば、全体的にBMPが速めなのもこの頃の特徴でしょうか。最近の曲のほうがもっとテンポがスローで重々しいイメージがあるので。ちなみに、どの楽曲も2分台から3分台前半と短め。シンセも前面に出るというよりは味付け程度といった印象ですし、プログレッシヴメタルというよりはジェントを取り入れたメタルコアといったほうがわかりやすいかもしれませんね。

3rdアルバム『TOMORROW WE DIE ALIVE』(2013年)からこのバンドに入った身としては、最初はとっつきにくさがあった盤ですが、慣れていくとこの無感情な感じがクセになる(初収録の「Glorious Day」が、むしろ最近のスタイルに近いので、ここを入り口するとわかりやすかも)。改めてすごいことをやってきたバンドなんだなと気づかされました。その後の彼らの躍進を考えると、習作としては十分すぎる内容。温故知新という意味でも、ジェントというものを理解する上でも最適な1枚でしょう。



▼BORN OF OSIRIS『THE ETERNAL REIGN』
(amazon:海外盤CD / MP3

投稿: 2017 12 30 12:00 午後 [2017年の作品, Born of Osiris] | 固定リンク

CONVERGE『THE DUSK IN US』(2017)

前作『ALL WE LOVE WE LEAVE BEHIND』から実に5年ぶりの新作となる、CONVERGE通算9枚目のオリジナルアルバム。とはいえ、彼らはここ最近名作『YOU FAIL ME』(2004年)のリミックス盤『YOU FAIL ME REDUX』(2016年)や、同じく名盤『JANE DOE』(2001年)の再現ライブを収めた『JANE LIVE』(2017年)を連発していたので、そんなに待たされたという気がしていなかったし、特に今年に入ってからは「新作の準備をしている」的な発言もあったので、そこまで待たされることはないだろうと思っていたので……でも、まる5年も経ってたんですね。こうやって振り返ると、改めてその空白期間に驚きました。

1曲目「A Single Tear」のそのサウンドのクリアさに若干驚きを隠せませんでしたが、続く2曲目「Eye Of The Quarrel」、3曲目「Under Duress」からはいつもどおりのカオスなCONVERGEワールドが展開されており、ほっとひと安心。「Arkhipov Calm」でのたうち回るボーカル&ギター、「I Can Tell You About Pain」の冒頭で変拍子を刻むドラム、そこから無軌道に突っ走る展開など含め、「そうそう! これを待ってたんだよ!」と膝を叩きながらニヤニヤしたくなるノイジーなサウンドの洪水。最高じゃないですか。

ところが、アルバム中盤のタイトルトラック「The Dusk In Us」でその表情は一変。叙情的なアルペジオと囁くようなボーカル、ダークというよりも陰鬱と呼ぶ方がぴったりなその音世界は、それまでの高揚感にあふれる展開から一気に落とし穴に引きずり込まれたかのようで、背筋がゾッとします。

7分半におよぶこの曲がアルバム終盤ではなくど真ん中に置かれている意味を考えようとすると、いろんな想像が浮かんできて面白いんじゃないでしょうか。例えば、それまでのハイテンションを現実世界と表すなら、この表題曲で急にあの世に引きずり込まれた、とか……。にしても、この鬱展開。クセになりますね……。

7分半の臨死体験を経て、7曲目「Wildlife」から再びハイテンションが復活。続く「Murk & Marrow」もカオスそのものだし、キャッチーなベースラインでグイグイ引っ張るミドルヘヴィ「Trigger」、2分にも満たないエモーショナルハードコア「Broken By Light」、さらに激しさを増す1分少々の「Cannibals」と激しさが加速したところで、ラスト前「Thousands Of Miles Between Us」で再びハッとさせられる展開が登場。メロウさは先の「The Dusk In Us」以上で、ここではエモとかそういった表現では収まらないくらいの悲しさが押し寄せてきます。なんなんだ、この展開。そしてラストは不穏さをヘヴィな音像で強調した「Reptilian」で幕を降ろす。ただひたすら感情を揺さぶられまくる40数分。聴き終えたあとに軽くため息をつきながら、「そうだ、こういうアルバムをずっと待っていたんだ」という気持ちがよみがえってくる。そう、CONVERGEとは自分にとって何なのかを問いかけてくるのが、この最新アルバムではないでしょうか。

なんてカッコいいこと言ってますが、最初に聴いたときはとにかく震えました。震えまくり。そして二度、三度と聴き返していくうちに、このアルバムのカオスさはヘヴィさや速さ、無軌道さにあるのではなく、実は「The Dusk In Us」や「Thousands Of Miles Between Us」のような曲にこそ存在するのではないかという結論に達したのでした。これが、2017年という混沌の時代にCONVERGEが到達した結論なのだと。

そう思いたくなるくらいの力作。5年待った甲斐がありました。



▼CONVERGE『THE DUSK IN US』
(amazon:海外盤CD / iTunes

投稿: 2017 12 30 12:00 午前 [2017年の作品, Converge] | 固定リンク

2017年12月29日 (金)

VEIL OF MAYA『FALSE IDOL』(2017)

アメリカ・シカゴ出身のプログレッシヴメタル/ジェントバンド、VEIL OF MAYAの通算6枚目となるスタジオアルバム。僕自身が彼らを聴き始めたのが前作『MATRIARCH』(2015年)からで、ちょうど現シンガーのルーカス・マグヤーに交代したタイミングでした。

ギターリフの作り込みや低音7弦を使ったリフの刻み方はジェント系そのものですが、楽曲の展開や歌メロの持っていき方はプログレメタル、プログレッシヴデスメタルのそれに近いのかなと。演奏自体も非常にテクニカルですし、サウンドも7弦特有の音の歪みとシンセなど同期を用いたシンフォニックなテイストの融合が非常に気持ちよく、そこにデス声とクリーントーンを巧みに使い分けたルーカスのボーカルが乗ることで、聴きやすさが強まっているように思います。

こういった低音が効いていて音数の多いバンドの場合、雑で生々しい録音よりも、実は本作みたいに透き通るほどにクリアな音像のほうが細かな音の粒まで楽しめて、合っていると思うんですよね。

ただ、このバンドの場合難点もありまして。1曲1曲が短いあまりに、せっかく派手でテクニカルなプレイを随所にフィーチャーしていたり、面白いアレンジを聴かせてくれたりしても、お腹いっぱいになる前に終わってしまう。腹7分目までいかず5分目くらい。プログレッシヴと名がつく以上(いや自らは言ってないのかな)もっと1曲が長くても全然不思議じゃないのに。確かに、最近の傾向としてより短い方向に行きがちなのはわかるんだけど、ちょっと物足りないというか……短いなりに1曲の中に要点を凝縮しているのならいいけど、それすらぼやけてしまうケースも見受けられて、そこが本当に勿体ないと思うのです(刹那的な爆発を求めるライブハウスでのパフォーマンスにはぴったりなんでしょうけどね)。

だったら、もっと盛大に……それこそ今の3曲分を1曲に凝縮させた長尺曲を5〜6曲作ってアルバム1枚にまとめ込んだほうが、このバンドの場合は個性が際立つんじゃないかと思うんですけど、いかがでしょう? なんか、“物わかりの良すぎるPERIPHERY”って感じで、このままではさらに一歩抜きん出るのが難しいような気がするんですよね。せっかく良い曲書いて良い演奏ができて良い歌が歌えるんだから、そこを最大限に使いこなさないと……ねえ?

この手のバンドの中ではかなり個性があるほうだと思っているので、この先の突然変異に期待したいと思います。



▼VEIL OF MAYA『FALSE IDOL』
(amazon:海外盤CD / MP3

投稿: 2017 12 29 12:00 午後 [2017年の作品, Veil of Maya] | 固定リンク

ENTOMBED『WOLVERINE BLUES』(1993)

1993年秋にリリースされた、スウェーデンのデスメタルバンドENTOMBEDによる3rdアルバム。日本やヨーロッパはEarache Recordsから(日本盤は当時TOY'S FACTORY流通)発表された本作ですが、アメリカではCARCASS 『HEARTWORK』SEPULTURA 『CHAOS A.D.』CATHEDRAL 『THE ETHEREAL MIRROR』同様にSony / Columbia Recordsからメジャー流通された奇跡の1枚です。つうか、ENTOMBEDの中でもこのアルバムがメジャーから発表されたというのが、非常に興味深い事実なんじゃないでしょうか。

もともとデスメタルバンドとしてスタートした彼らですが、この3作目『WOLVERINE BLUES』の頃から自身のスタイルを「Death 'N' Roll」と呼び始め、スピードよりグルーヴ感を重視したサウンドへと移行し始めたタイミング。実際、PANTERA以降のグルーヴメタル/ヘヴィサウンドに通ずる方向性や、MOTORHEADあたりに通ずるヘヴィさ/ガレージロック感は確かにほかのデスメタルバンドと比較しても新しいものがあったと、当時は感じたものです。

今でこそデスメタルってボーカルのデスボイスがより過激になり、正直何歌ってるかわからなかったりすることも多いのですが、この頃ってまだ平和だったというか、普通に“ハードコア発、スラッシュメタル経由”だから何を歌っているか聞き取りやすいんですよね。特に本作でのL-G・ペトロフのボーカルはメロディアスとすら思えるくらい、この手のバンドにしてはキャッチーですから。

グルーヴィーなロックンロール「Hollowman」やダイナミックなドラミングが印象的な「Eyemaster」、2分少々のミディアムショートチューン「Wolverine Blues」、疾走感を伴った「Out Of Hand」など、聴き応えのある楽曲が目白押しで、全10曲でトータル35分程度という長さも手伝って非常に聴き易い、親しみ易い1枚ではないかと思います。

初期のスタイルが好きな人はここまでがギリギリという声もあるみたいですし、逆に以降の「Death 'N' Roll」スタイルが好みという人は過去作はここがギリギリ許せるという意見も耳にします。バンド的には転換期であり過渡期にある1枚かもしれませんが、歴史的観点からいうと非常に重要な作品だと言えるのではないでしょうか。個人的には今でもよく聴く1枚です。



▼ENTOMBED『WOLVERINE BLUES』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2017 12 29 12:00 午前 [1993年の作品, Entombed] | 固定リンク

2017年12月28日 (木)

MOTÖRHEAD『BASTARDS』(1993)

1993年秋にリリースされたMOTÖRHEAD通算11枚目のスタジオアルバム。前2作(1991年の『1916』、1992年の『MARCH OR DIE』)がメジャーのEpic Recordsからのリリースで、前者は健闘したものの後者がほぼプロモーションされなかったことにレミー(Vo, B)らメンバーは激怒。結局レーベルから離脱し、ドイツのレーベルZYX Musicから本作を発表したのでした。が、レーベルの特性もあってか、当時は日本とドイツ周辺のヨーロッパ諸国でしかリリースされず、アメリカなどで発表されたのは2000年代に入ってからでした。

前作『MARCH OR DIE』がミドルテンポの楽曲を中心とした、従来の彼らからしたら“らしくない”作風だったのに反し、本作ではスピード違反で捕まるんじゃないかってくらい飛ばしまくってます。冒頭の「On Your Feet Or On Your Knees」での爆走ロケンローぶりにガッツポーズを取ったかと思うと、続く「Burner」はミッキー・ディー(Dr)のツーバスドラムを効果的に活用したスピードメタル! さらに「Death Or Glory」「I Am The Sword」とスピードナンバーが連発され、前年からの鬱憤がここで一気に吐き出されるかのような展開を見せます。

かと思えば、ミドルテンポの心地よいロックンロール「Born To Raise Hell」があったり、らしくないようで非常に“らしい”仕上がりのバラード「Don't Let Daddy Kiss Me」があったりと、中盤あたりから“遊び”が見え隠れします。

そんな飛ばしまくりの前半から一変、後半はノリノリのロックンロールとメタリックなミドルナンバー、バラード調の「Lost In The Ozone」などがバランス良く飛び出す構成。冒頭4曲のノリを考えると若干落ち着いた印象を受けますが、実はこのバランス感こそ本作の聴きやすさにつながっているのではないかと思っています。

特に序盤はMOTÖRHEADにしては非常にメタリックな仕上がりですが、そこに当時の彼ら(特にレミー)の怒りが表現されているということなのでしょう……そういえば今、リリース当時に頭2曲を狂ったようにリピートしまくったことをふと思い出しました。あの当時の自分の心境にもぴったりな1枚だったのかもしれませんね。

ちなみに彼らは本作を携え、翌1994年初夏に再来日。関東は確かクラブチッタで2日くらいやった記憶があり、僕も1日だけ足を運びました。決して満杯とないえないフロアにがっかりしたものの、本作からの楽曲や名曲の数々に大満足したことは今でもよく覚えています。

“あの日”からもう2年。今日はこのアルバムを爆音で楽しみたいと思います。



▼MOTÖRHEAD『BASTARDS』
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投稿: 2017 12 28 12:00 午後 [1993年の作品, Motorhead, 「R.I.P.」] | 固定リンク

ARCH ENEMY『WILL TO POWER』(2017)

ARCH ENEMY通算10作目のスタジオアルバム。前作『WAR ETERNAL』(2014年)から3代目シンガーのアリッサ・ホワイト=グラズが参加し、前任のアンジェラ・ゴソウに負けず劣らずのパワフルなスクリームを聴かせてくれましたが、本作ではその個性がより色濃く表れた意欲作ではないでしょうか。

マイケル・アモット(G)が本来持つメロディセンスとデスメタルならではの攻撃性、衝動性がバランスよく合わさることで生まれたメロディックデスメタルというジャンルが、アンジェラ加入後の4thアルバム『WAGES ON SIN』(2001年)で新たな可能性を見せ、そこからさまざまな変化/進化を繰り返し、新たなシンガー・アリッサを得て、気づけばバンド結成から20年が過ぎた。そんな結成20周年の2016年には初期メンバーによるBLACK EARTHも期間限定で始動し、初期3作の楽曲をたっぷり演奏する機会を得た。そういった進化と原点回帰の果てにたどりついたのが、節目となる10作目の本作であることは想像に難しくありません。

各楽曲は聴けばそれがARCH ENEMYの楽曲だとわかるような、トレードマークとなるメロディやフレーズが散りばめられたものばかり。アリッサのボーカルもところどころで女性的な側面を見せていたり、また曲によっては完全なクリーントーンで歌唱していたりと、節目を経て形式ばった呪縛から逃れようといろんなチャレンジを見せています。

確かに目新しさといったら、先のクリーントーンをフィーチャーしたバラード「Reason To Believe」や、イェンス・ヨハンソン(Key / STRATOVARIUS)が参加したネオクラシカル系の「Dream Of Retribution」くらいかもしれません。それ以外の楽曲には「どこかで聴いたことがある……」と思わせるようなものが多いですし。でも、見方を変えればそれって「メロデス、ひいてはARCH ENEMYがHR/HMとしてスタンダードの域に達した」とも受け取れるのではないでしょうか。“ブルータルなデスメタルに正統派メタルのメロディを加える” というある種の邪道が、20年続けたことで正統派に転化した瞬間。それがこのアルバムで展開されていると受け取れば、本作での安定感は納得いくものだと思います。

残念なのは、新加入のジェフ・ルーミス(G / 元NEVERMORE)の才能がギターソロだけにしか反映されていないこと。マイケルも認めるその才能がソングライティング面にも発揮されたとき、このバンドは今度こそ次のフェーズに突入するのかなと。まあ節目に今回のような作品を作らざるを得なかった事情もあるのかもしれませんけど……んなことはないか(苦笑)。とにかく、そこに関しては次を楽しみに待つことにします。

あと、本作で気になるのは国内盤と海外盤で曲順が異なること。国内盤は失踪メタルナンバー「The Race」から唐突に始まる感じが素敵なのですが、海外盤は国内盤12曲目(本編ラスト)収録の短編インスト「Set Flame To The Night」をオーバーチュアーとして使用し、そこから「The Race」になだれ込むのです。この構成も悪くないし、むしろこっちを意識して最初は作ったはずなのに、なんで国内盤はこんなことになってしまったんでしょうね。そこも残念でなりません。

……なんてマイナスポイントもいくつか挙げましたが、総合的にはここ数作で一番気に入っているし、珍しく長期間にわたりヘヴィローテーションしている1枚です。



▼ARCH ENEMY『WILL TO POWER』
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投稿: 2017 12 28 12:00 午前 [2017年の作品, Arch Enemy] | 固定リンク

2017年12月27日 (水)

ROBERT PLANT『CARRY FIRE』(2017)

前作『LULLABY AND THE CEASELESS ROAR』(2014年)から3年ぶりとなる、ロバート・プラント通算11枚目のオリジナルアルバム(他アーティストとのコラボ作除く)。THE SENSATIONAL SPACE SHIFTERSと銘打ったバックバンドを従えて制作されており、ロバート自身がプロデュースも担当しています

大半の楽曲はバンドメンバーとの連名で制作されており、1曲のみアーセル・ヒッキーのカバー「Bluebirds Over The Mountain」(クリッシー・ハインドとのデュエット)を収録。この選曲も、オールドスタイルのロックンロールが大好きなロバートらしいんじゃないでしょか。

全体的な作風はアコースティック&民族音楽を基盤にした、非常に穏やかで聴きやすいもの。とはいえ、そんな中でもロバートは彼らしいやり方でロックンロールしております。激しければロック、アップテンポならロックというわけではない、70歳間近の彼らしいやり方は非常に好感が持てるスタイルだと思いました。

また、声を張り上げることなく、けだるさとセクシーさが同居したロバートの歌い方も、このサウンド/アレンジにぴったり。ジミー・ペイジとのコラボ作にも近い印象を受けるものの、実は意外と尖った部分が見受けられず、じわじわとボディブローのように効いてくるのが本作の特徴かもしれません。

突出した1曲が引っ張るタイプではなく、リズムで引っ張りつつ全体の雰囲気を聴かせるアルバム。特にここ数作はそういう傾向はあったのですが、本作は楽曲のテイスト、ボーカルパフォーマンス含めてその極みではないでしょうか。これを聴いちゃうと、まだ前作のほうが派手だったなと改めて思っちゃいますものね。

正直若いリスナーにどこまで響くかはわからないし、LED ZEPPELINのファンといってもハードロック再度が好きな人には多少退屈に響くかもしれません。でも、だからこそこういう「一時代を築き上げたロックアーティストが提唱する、枯れの美学」に学ぶものは多いのではないでしょうか。ロックがつまらないと言われて久しいですが、本当の意味での「面白み」や「退屈さ」とはなんなのを、このアルバムを通じて自分なりに考えてみるのも良いかもしれません。



▼ROBERT PLANT『CARRY FIRE』
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投稿: 2017 12 27 12:00 午後 [2017年の作品, Robert Plant] | 固定リンク

JIMMY PAGE / ROBERT PLANT『NO QUARTER』(1994)

1993年にデヴィッド・カヴァーデイル(WHITESNAKE)と「COVERDALE・PAGE」というユニットを組んだものの、アルバムは小ヒット、ライブもここ日本でしか実現せず、短命に終わり途方に暮れていたジミー・ペイジ。翌1994年年に入るとMTV「Unplugged」の特別企画として、盟友ロバート・プラントと「Unledded」(=LED ZEPPELINではない)と題したスペシャルライブを実施しました。ここでツェッペリンの名曲群を新たな解釈でアレンジして披露し、さらに新たに書き下ろされた新曲も含まれていたことで、「ツェッペリン復活か?」とざわざわし始めます。そして同年11月、この音源を編集したライブアルバム『NO QUARTER』がリリースされたわけです。

本作で取り上げられたツェッペリンナンバーは「Nobody's Fault But Mine」「Thank You」「No Quarter」「Friends」「Since I've Been Loving You」「The Battle of Evermore」「That's The Way」「Gallows Pole」「Four Sticks」「Kashmir」の計10曲。「Thank You」や「Since I've Been Loving You」あたりは原曲に近いロックアレンジで再現されていますが、「Nobody's Fault But Mine」はフォーキーなアレンジに、「No Quarter」はキーボードレスで歌とギターのみで表現されるなど、新たな解釈が加えられています。

またEGYPTIAN ENSEMBLEの参加により「Friends」「The Battle of Evermore」、そして先の「Nobody's Fault But Mine」などはよりエキゾチックなテイストが増し、「Kashmir」にはLONDON METROPOLITAN ORCHESTRAの参加により原曲が持つドラマチックさが増強されております。

アコースティックテイストの楽曲(『LED ZEPPELIN III』および『同 IV』収録曲)が多数選出されていることからこういう方向性になったのかと思われますが、もともとこの手のテイストはジミー・ペイジの好物ですし、ロバート・プラントも自身の作品にこういうテイストを積極的に取り入れていたので、なるべくしてなった作風なのかもしれません。

これに合わせて新たに制作された新曲群「Yallah」「City Don't Cry」「Wonderful One」「Wah Wah」は、非常に時代性が強い作風。エキゾチックさにサンプリング/ループなど現代的要素をミックスされたサウンドは、「もしツェッペリンがその後も続いていたら、こんなことにも挑戦していたかも」と納得させられるもの。かといって、初期の楽曲のような絶対的な強さは皆無。そこは仕方ないかな……と当時も妙に納得してしまった記憶があります。

アルバム自体、全米4位・全英7位とそこそこの成功を収めたことで、2人はこの活動を継続。1998年には全曲新曲で構成されたオリジナルアルバム『WALKING INTO CLARKSDALE』もリリースします。



▼JIMMY PAGE / ROBERT PLANT『NO QUARTER』
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投稿: 2017 12 27 12:00 午前 [1994年の作品, Jimmy Page, Jimmy Page / Robert Plant, Led Zeppelin, Robert Plant] | 固定リンク

2017年12月26日 (火)

ASKING ALEXANDRIA『ASKING ALEXANDRIA』(2017)

前作『THE BLACK』(2016年)から1年9ヶ月ぶりとなる、ASKING ALEXANDRIA通算5作目のスタジオアルバム。スマッシュヒットを記録した3rdアルバム『FROM DEATH TO DESTINY』(2013年)まで参加したダニー・ワースノップ(Vo)がバンドに復帰してから初の新作となります。

前作『THE BLACK』ではボーカルが変わったこともあり、『FROM DEATH TO DESTINY』あたりで確立されつつあったメタルコア+メロウなハードロック的スタイルを一度捨て、より攻撃的なメタルコアスタイルに回帰していました。それはそれで正しい選択だったと思いますし、2代目シンガーのデニス・シャフォロストーブのルックスと相まって若返った印象もありました。ああ、もっと攻めていくんだなと。

ところが、デニスはあっけなく脱退。しかもダニーが古巣に戻るっていうんですから……まあ、当然“『FROM DEATH TO DESTINY』の続き”を期待するわけですよね。

で、早くも完成した本作ですが、予想以上にダニー色の強いメロディアスハードロックアルバムに仕上がったなと。正直1曲目「Alone In A Room」のド直球ぶりにはびっくりを通り越して、「ええ……」という不安すら覚えました。が、2曲目「Into The Fire」以降はスクリームも適度にフィーチャーしたヘヴィサウンドも、要所要所で登場。とはいえ、あくまでメロディと楽曲の良さで勝負していくという覚悟が随所に感じられ、これはこれですごいアルバムだなと思いました。

なんていうんでしょう、メタルコア出身バンドがハードロックに歩み寄るのではなく、ハードロックバンドが現代的なテイストを飲み込んでいくといったほうが近いような、そういう印象を受けるのです。もちろん、そんなの結果論でしかないのですが、それでも僕的には今回のアルバムは“こちら側の住人”の作品なんじゃないかと。

まあ、そんな解釈はこの際どうでもいいか。とにかく、偏見を捨てて一度触れてみてほしい。細かなジャンル分けすらどうでもよくなる、とにかく優れたハードロックアルバム。それで十分じゃないですか。初期からのファンにとってはもはや別モノでしょうし、応援するに値するのかわかりませんが、だったら“こちら側の住人”が彼らに歩み寄ればいいのではないか。そんな気がします。

早くこの楽曲群を生で聴きたいですね。そこで印象が変わりそうな楽曲がいくつもあるので。ダニーが『THE BLACK』の楽曲を歌うのかどうかも含め、来日に期待しておきます。



▼ASKING ALEXANDRIA『ASKING ALEXANDRIA』
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投稿: 2017 12 26 12:00 午後 [2017年の作品, Asking Alexandria] | 固定リンク

BIG BROTHER & THE HOLDING COMPANY『CHEAP THRILLS』(1968)

昨日のGRETA VAN FLEETを聴いているとき、あるアーティストのことを思い浮かべました。それが今回紹介するジャニス・ジョプリン。彼女がBIG BROTHER & THE HOLDING COMPANYやKOZMIC BLUES BANDでやっていたことが、実はLED ZEPPELINよりも近いんじゃないかと。そういう意味では、THE BLACK CROWESとジャニスの中間くらいに位置するんじゃないでしょうか。

ということで、久しぶりに引っ張り出したこのアルバム。1968年という、ほぼ半世紀前(!)のアルバムです。ジャニスはこのBIG BROTHER & THE HOLDING COMPANYのシンガーとして、前1967年にバンド名と同タイトルのオリジナルアルバムでデビュー(当初はインディーズからのリリースで、のちにメジャーで再発)。続く本作『CHEAP THRILLS』で正式にメジャーデビューを果たし、全米1位を獲得するほどの大ブレイクを果たします。

非常にライブ感の強いアルバムで、オープニングの「Combination Of The Two」なんて完全にスタジオライブ音源なんじゃないかと。その思いに拍車をかけるのが、「Summertime」のカバー。ジャズのスタンダードとして知られるこの曲をブルースロック調にアレンジし、そこにジャニスのファルセットを効かせたセクシーなボーカルが乗る。完璧としか言いようがない名演じゃないでしょうか。

また、本作にはほかにも「Piece Of My Heart」「Ball And Chain」といったカバー曲が収録されており、それらは彼女の代表的ナンバーとして知られています。特に後者はのちのライブアルバムなどでのおなじみかもしれませんね。本作でもこの曲のみライブテイクで収録されており、10分近い名演を楽しむことができます(観客の声援が入っているのでおわかりですよね)

このアルバムを聴くと、一度でいいから生でジャニスの歌を体験したかったと思う人は少なくないはず。そんなこと、絶対に叶いっこないと知っていながらも、そう願わずにいられなくなる。そんな優れものの名作です。現行のCDはボーナストラック4曲が追加されていますが、オリジナルリリースは全7曲(A面4曲、B面3曲)で40分欠けるくらいの長さというのも聴きやすくて良かった。いや、この濃厚な内容なんだもん、それくらいの長さでちょうどいいんですよね。

ジャニスのカタログとしては、のちの復刻版などを除けば、このあとにKOZMIC BLUES BAND名義でのアルバム(1969年)、そして死後の1971年に発表されたソロアルバム『PEARL』のみ。まあ、その『PEARL』も未完成のまま強行リリースされたものですけど。とにかく、彼女の凄みを味わいたいなら、まずはこの『CHEAP THRILLS』を入り口にしてみてはどうでしょう。



▼BIG BROTHER & THE HOLDING COMPANY『CHEAP THRILLS』
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投稿: 2017 12 26 12:00 午前 [1968年の作品, Big Brother and the Holding Company, Janis Joplin] | 固定リンク

2017年12月25日 (月)

WHAM!『MUSIC FROM THE EDGE OF HEAVEN』(1986)

ジョージ・マイケルが亡くなってから、本日でまる1年。というころで、今日は予定外にもう1本更新しようと思います。

本作『MUSIC FROM THE EDGE OF HEAVEN』はジョージ・マイケル&アンドリュー・リッジリーによるポップユニット、WHAM!が1986年初夏にリリースした3枚目にして最後のオリジナルアルバム。リリース時にはすでにグループは解散(ラストライブ終了)済みでしたので、そこまで大々的にプッシュされた1枚というわけではありませんでした。

というのも本作は当初、北米とここ日本でしかリリースされていないイレギュラーなオリジナル作品だったのです。WHAM!は解散に際して新録曲3曲(リードシングルとして発表された「The Edge Of Heaven」と、「Battlestations」「Where Did Your Heart Go?」)と初期シングルの最新リミックス「Wham Rap '86」の4曲を用意し、イギリス本国でのシングル限定盤にはこれらすべてを収録。北米&日本限定の『MUSIC FROM THE EDGE OF HEAVEN』に先駆けてリリースされたベストアルバム『THE FINAL』(1986年)にはこのうち新録3曲がすべて収録されていたため、わざわざ『MUSIC FROM THE EDGE OF HEAVEN』をリリースする必要はなかったわけです(ちなみに日本では『THE FINAL』も同時期にリリース済み)。まあ、いろんなしがらみがあったんでしょうね(ジャケットの投げやり感からも伝わってきますが)。

そういう不幸な立ち位置の3rdアルバム。全8曲入りということで、上記の4曲以外には1985年のヒットシングル「I'm Your Man」のリミックス(シングルや12インチ盤未収録バージョン)、「Blue」のライブ・イン・チャイナ、冬の定番曲「Last Christmas」、そしてアルバムに先行して発表されたジョージのソロシングル「A Different Corner」という寄せ集め感が否めない選曲。ただ、こうやって聴いてみると当時のジョージが目指していた方向性や、ここから翌年にかけて本格化するソロアーティストとしての指針が見えてきます。

特に“Cool Side”と題されたアナログB面(M-5〜8)のうち、「Last Christmas」を除く3曲(「A Different Corner」「Blue」「Where Did Your Heart Go?」)あたりに次への布石が感じられる気がするのですが(もちろんA面に配置された「Battlestations」にも)。寄せ集めとはいえ、極甘だった前作『MAKE IT BIG』(1984年)をちょっとビターにしたこの感じ、実は嫌いじゃないです。

今ではストリーミングサービスを通じて、世界各国で試聴可能な本作も、つい最近本国イギリスでデジタル販売が開始されたとのこと。ジョージが亡くなったあとというのがなんとも切ないですが、今日は久しぶりにWHAM!三昧で過ごしてみようかと思います。



▼WHAM!『MUSIC FROM THE EDGE OF HEAVEN』
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投稿: 2017 12 25 12:00 午後 [1986年の作品, George Michael, Wham!, 「R.I.P.」] | 固定リンク

GRETA VAN FLEET『FROM THE FIRES』(2017)

今春デビューし、ここ日本でも夏前後から話題になり始めたアメリカ・ミシガン州出身の4人組バンド、GRETA VAN FLEETが前EP『BLACK SMOKE RISING』に続く新作『FROM THE FIRES』を11月にリリースしました。全8曲から構成される本作、一見フルアルバムのようですが、どうやら“ダブルEP”ということになっているようです。

どういうことかと言いますと、前作『BLACK SMOKE RISING』に収録された4曲に、新たにレコーディングされた4曲を加えた内容……ということで、“ダブル”だと。そういえば『BLACK SMOKE RISING』の単体での配信、ある時期からストップしましたしね。まあ、こっちで全部聴けるから問題ないんですが。

ダブルEPなんて名前が付けられると、4曲入りCD2枚組なのかって話ですが、そんなこともなく、ちゃんと1枚にまとめられ、曲順も新たに考えられたものになっています。ちなみに、新曲はM2「Edge Of Darkness」、M4「A Change Is Gonna Come」、M6「Meet On The Ledge」、M7「Talk On The Street」。このうち「A Change Is Gonna Come」はサム・クック、「Meet On The Ledge」はFAIRPORT CONVENTIONのカバーとなります。このあたりのセレクトも、前回のレビューで書いたようにTHE BLACK CROWESに通ずるものがある気がしませんか?

前作の時点では「Highway Tune」や「Safari Song」などからロバート・プラントジミー・ペイジ……つまりLED ZEPPELINをイメージしたのですが、こうやって8曲通して聴いて思ったのは、ツェッペリン的なインプロビゼーションを前面に打ち出すわけではなく、単純に「良い曲を、うまいボーカリストと味のあるギタリストが表現する」といった方法論なのかなと。確かにツェッペリンっぽさはあるんだけど、それはほんの一部分にすぎず、むしろブルースやソウルをロック的手法で表現しただけ。まあ、現時点でまだライブを生で観ていないので、あまり断言するのもなんですけどね。

最初のEPの時点では過剰な期待を寄せてしまいましたが、本作を聴いて改めて冷静な気持ちになれました。いや、だからといって本作が駄作という意味ではありません。ぶっちゃけ、今年聴いたロックアルバム(正確にはアルバムじゃないけど)の中でも飛び抜けて良いですし。ちゃんとした評価は、いずれ登場するであろう真のフルアルバムまで取っておこうという話です。

余談ですが、このバンドのリリース方法を見ていると、今後はこうやって新曲ができたらその都度EPとして発表して、まとまったら1枚にまとめるという過去の日本のアルバム制作方法に近づいていくのかな……いや、そもそもアルバムという概念自体がなくなるんじゃないか。そんなことをふと考えてしまいました。



▼GRETA VAN FLEET『FROM THE FIRES』
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投稿: 2017 12 25 12:00 午前 [2017年の作品, Greta Van Fleet] | 固定リンク

2017年12月24日 (日)

CHEAP TRICK『CHRISTMAS CHRISTMAS』(2017)

今年6月に発売されたオリジナルアルバム『WE'RE ALL ALRIGHT!』からたった4ヶ月というハイペースで届けられた本作は、CHEAP TRICK初の全曲クリスマスソングで構成されたアルバム。全12曲中オリジナル曲は3曲(M-1「Merry Christmas Darlings」、M-11「Our Father Of Life」、M-12「Christmas Christmas」)と、その内容はカバーアルバムと呼んでも差し支えないものですが、だからといってスルーするには勿体ないほどの完成度。これ、季節を問わず聴いておきたい強力なパワーポップアルバムですよ。

カバーで取り上げられているのは「Silent Night(きよしこの夜)」といったトラディショナルナンバーもありますが、それ以外はRAMONESやTHE KINKS、WIZZARD、SLADE、チャック・ベリー、ハリー・ニルソン、チャールズ・ブラウンなどその筋の人なら知らない者はいない大物ばかり。どれもポップでパワフルな「CHEAP TRICKらしい」アレンジに仕上げられており、本当に“企画モノ”で終わらせるには惜しい、いや、贅沢すぎる内容なんです。

1曲目「Merry Christmas Darlings」のアレンジなんて“いかにも”ですし、「I Wish It Was Christmas Today」「Run Rudolph Run」の疾走感あふれるロッキンぶり、「Merry Xmas Everybody」での力強いビートとパワフルなボーカル、「Please Come Home For Christmas」での渋みを増したスタイル、あのスタンダードをCHEAP TRICKスタイルでカバーするとこうなるんだと思わずニヤリ笑ってしまう「Silent Night」、そしてパンキッシュに突っ走る「Christmas Christmas」……うん、捨て曲なし(当たり前ですが)。

原曲は知らなくても、例えばキース・リチャーズのカバーでおなじみの「Run Rudolph Run」、BON JOVIも取り上げた「Please Come Home For Christmas」など、他アーティストのカバーで耳にしたことがある曲がひとつはあるはず。そういったカバーとの比較も面白いけど、ここは……昨年の『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLO』から多作ぶりの目立つCHEAP TRICKの何度目かの絶頂期を素直に楽しみたいと思います。このアルバムを聴きながら街に繰り出せば、きっとひとりでも寂しくないはず!(笑)

最後に余談ですが……季節モノというのもあるけど、本作が国内リリースされないこのご時世……悲しいものがありますね。こういうアルバムほど、原曲がこうで、とかライナーノーツで専門家の方が解説してくれるのが楽しいのに。



▼CHEAP TRICK『CHRISTMAS CHRISTMAS』
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投稿: 2017 12 24 12:00 午後 [2017年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

CODE ORANGE『FOREVER』(2017)

アメリカ・ペンシルベニア州出身のハードコアバンドCODE ORANGEによる、通算3枚目のフルアルバム。今作からRoadrunner Recordsに移籍し、Billboard 200でも最高62位という好成績を残しています。とはいえ、メジャー感の強い方向性ではないですし、インディーズからメジャーに移籍したからといってそのサウンドが大幅に変わったわけではないので、それだけ彼らが注目され始めたという証拠でしょう。

2008年の結成時はまだ中高生だったというメンバーも、すでに20代半ばから後半に差し掛かり、本作ではそれまでのカオティックなサウンドにより磨きをかけつつも、より深みを増したハードコアサウンドを聴かせてくれます。スピードよりも重さを重視したそのサウンド&アレンジは、とにかく気持ち良いものばかり。先が読めない展開という点においては初期の作品ほどではないものの、適度に取り入れたエレクトロ/インダストリアルサウンドとの相性も相まって、どこか感情を殺したかのようなひんやりした音像が楽しめます。そういった意味では、少々ポストロック的な要素も感じられるかもしれません。特に終盤の2曲「Hurt Goes On」「dream2」にはそのカラーが濃く表れているのではないでしょうか。

ちなみに本作のプロデュースを手がけたのは、過去2作から引き続きCONVERGEのギタリストであるカート・バルーと、数々のエクストリームミュージックに携わってきたウィル・イップ。エンジニアやミキシングで携わったウィルの手腕によるものか、前作よりも若干音が整理されいてる印象もあります。が、この手のサウンドにおいての話なので、誤差範囲内と言われてしまえばそこまでですが(笑)。

カートとの相性は今さら言うまでもなく、とにかくCONVERGEなどの世界観が好きなら気に入ること間違いなし。特に本作はスピードを抑えめにしたぶん、後ろから後頭部を100kgくらいあるハンマーで不意打ちされるくらいのインパクトとずっしり感があるので、とにかく大音量で楽しんでほしい1枚です。

実はこのアルバム、今年の1月に発売されてすぐに購入し、ずっとヘヴィローテーション中だったのですが、どうにもこうにも言語化するのが難しく。そうこうしてるうちに、SYSTEM OF A DOWNのサマーツアーでサポートを務めたり、THE DILLINGER ESCAPE PLANのラストライブに出演予定だったり、来年のグラミー賞にて「Best Metal Performance」部門にノミネートされたりと、相当話題になり始めています。なのに、ここまで日本盤化の話なし。勿体ないったらありゃしない。

個人的には間違いなく今年を代表する1枚に選ぶ作品なので、まだ聴いたことがないという人は、ぜひ年末のこのタイミングにチェックしてみてください。



▼CODE ORANGE『FOREVER』
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投稿: 2017 12 24 12:00 午前 [2017年の作品, Code Orange, Converge] | 固定リンク

2017年12月23日 (土)

I SEE STARS『NEW DEMONS』(2013)

アメリカ・ミシガン州出身のピコリーモ/エレクトロニコアバンド、I SEE STARSが2013年秋に発表した通算4作目のオリジナルアルバム。本作はBillboard 200で28位を記録した、彼らの出世作となった1枚です。事実、僕もこのアルバムで初めて彼らの音に触れたので、非常に印象に残っています。

ポストハードコア/メタルコアサウンドに電子音やサンプリングなどをミックスしたピコリーモ/エレクトロニコアは、ここ日本だとFear, and Loathing in Las Vegasあたりが人気ですが、このアルバムはそういった国内バンドのファンにも存分にアピールする内容と言えます。つい先日、日本のCrossfaithが主催するイベント『ACROSS THE FUTURE』で来日したばかりですが、Crossfaithやcoldrain目当てで来場したオーディエンスにも存分にアピールし、大きな盛り上がりを見せました。

ポップでメロウなクリーンボーカルを主軸にしつつ、重々しくて汚らしい(笑)なグロウルもフィーチャーされており、ギターもエッジの立ったヘヴィなサウンドが気持ち良く、エレクトロ要素が苦手なラウドファンにもとっつきやすいテイストだと思います。

が、このバンドの場合、そこにEDMや8ビット風サウンド、あるいはヒップホップやレゲエなどの味付けが加えられることで、ほかのメタルコアバンドとは一線を画する個性を見せてくれる。そこで好みが分かれてしまうのは仕方ないのですが、そこで敬遠してしまうには勿体ない完成度なんですよね。

例えば、昨日紹介した近年のBRING ME THE HORIZONが気に入っている人なら、意外と入っていきやすいと思いますし、なんなら若干ヘヴィめの音が平気なEDMファンにも受け入れられるであろう要素も豊富に存在する。あるいは、「Murder Mitten」のような楽曲はドラマチックなメタルが好きな人にも響くものがあるかもしれない。そういういろんな可能性を秘めた、全方位に向けたメタルコア/ラウドロックアルバムと言えるかもしれません。

とにかく頭6曲の流れが完璧すぎるし、それ以降も一瞬たりとも気が抜けない完成度の高さ。繊細な音も含まれているものの、まずは限りなく大音量で楽しみたい1枚です。

残念ながら、このアルバムを最後にリズムギターのジミー・グレガーソンとシンセ/スクリーム担当のザック・ジョンソンが脱退。バンドにとってかなりの痛手となりましたが、2016年には5thアルバム『TREEHOUSE』を発表しています。チャート的には最高93位と大きく順位を落としてしまいましたが、ヘヴィさが減退してクリーン&エレクトロ/ダンス色が濃くなった意欲作だと思うので、特にBMTHの『THAT'S THE SPIRIT』が好きな人は試してみてはどうでしょう。



▼I SEE STARS『NEW DEMONS』
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投稿: 2017 12 23 12:00 午前 [2013年の作品, I See Stars] | 固定リンク

2017年12月22日 (金)

BRING ME THE HORIZON『SEMPITERNAL』(2013)

2013年春にリリースされた、BRING ME THE HORIZON(以下、BMTH)の4thアルバム。本作の制作途中でギタリストのジョナ・ウィーンホーフェンが脱退し、それと替わるようにキーボーディストのジョーダン・フィッシュが正式加入。これまでのツインギター編成からシングルギター+キーボードという、メタルコアバンドとしてはちょっと異色のバンド編成となりました。

正直、このメンバーチェンジに不安を覚えたファンは少なくなかったはずです。だって、確実にそのサウンドに変化を及ぼすわけですから。しかし、この変化こそがBMTHをさらに一段上へとステップアップさせるための重要なトピックとなったのでした。

初期こそデスコアなんてジャンルで括られた彼らですが、前作『THERE IS A HELL, BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN, LET'S KEEP IT A SECRET.』(2010年)で若干その片鱗を見せていたプログレッシヴな方向性が続く本作『SEMPITERNAL』でさらに進化し、シンセなどエレクトロの要素が加わったことでモダンな色合いを強めることになります。

そのカラーが顕著に表れたのが、リードトラック「Sleepwalking」や「Go To Hell, For Heaven's Sake」「And The Snakes Start To Sing」あたりではないでしょうか。ヘヴィさを保ちながらもシンセやサンプリングなどの装飾を施すことで、不思議とポップにも感じられるこのアレンジは、メタルコアバンドがモダンな要素を取り入れるとこうなるという見本的な仕上がりに。これらの楽曲および本作の成功が、続く大ヒット作『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)へとつながったことは想像に難しくありません。

もちろん、従来のメタリックで攻撃的でファストな要素も失ったわけではありません。「The House Of Wolves」「Antivist」はアレンジこそ以前よりシンプルですが、間違いなく過去のBMTHの延長線上にありますし、全体を覆うエッジの立った作風は、前作の流れを汲むものだと思います。

そういった楽曲と先の「Sleepwalking」や、ドラマチックなアレンジの「Crooked Young」「Hospital For Souls」が並ぶ本作は、一気に振り切ってポップになった『THAT'S THE SPIRIT』とヘヴィでプログレッシヴな前作(タイトルが長いので省略)の中間に位置する、このバンドの歴史を語る上で非常に重要な1枚と言えます。つまり、過去と現在をつなぐ、非常にバランスの良い内容ではないかと。新作は苦手だけど、このアルバムは受け入れられるという初期からのファンも少なくない気がしますが、いかがでしょう?

本作や『THAT'S THE SPIRIT』が、以降のメタルコアシーンに与えた影響は計り知れないものがあります。もちろん、BMTHだけではなく、同系統のバンドが同じタイミングにいくつかいたからこそ、メタルコア/ラウドロックシーンに新たな扉が開かれたわけですが……そういった史実を抜きにしても、本作は非常に優れた、ラウドロック/メタルファンが聴くべき傑作だと断言します。



▼BRING ME THE HORIZON『SEMPITERNAL』
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投稿: 2017 12 22 12:00 午前 [2013年の作品, Bring Me The Horizon] | 固定リンク

2017年12月21日 (木)

SYSTEM OF A DOWN『STEAL THIS ALBUM!』(2002)

SYSTEM OF A DOWN(以下、SOAD)が2002年晩秋にリリースした、通算3作目のスタジオアルバム。初の全米No.1を獲得した前作『TOXICITY』(2001年)から1ヶ月ちょっとで発売されるという異例の自体で驚かされましたが、これにはしっかりした理由があるのです。

『TOXICITY』リリースから数ヶ月経った2002年初頭、同作のデモ音源がネット上に出回るというトラブルが生じました。これらは『TOXICITY II』と題し、『TOXICITY』本編に未収録の楽曲も含まれたファンいはヨダレものの内容でした。これにご立腹だったSOADメンバーは未発表の新曲16曲で構成された新作『STEAL THIS ALBUM!』(=本作)を正式リリースしたわけです。

録音時期自体は確かに『TOXICITY』と同時期のものばかりで、ある意味ではアウトテイク集とも受け取れるわけですが、そのクオリティはそんな冗談も言えないくらい高いもの。アルバムとしてのトータリティは若干希薄ですが、1曲1曲の完成度は『TOXICITY』収録曲に勝るとも劣らないものばかりです。

どこかシリアス度が高く感じられるのは、たまたまなんでしょうか。実際、歌詞は前作の流れにあるもので、当時のアメリカ社会や近代文化に対する批判が、彼らならではの皮肉とユーモアを交えて表現されています。サウンド含め、そこに「遊びが少ない」と感じる人もいるかもしれませんが、とはいえ本作はごまんといるSOADフォロワーなんて目じゃないくらいにレベルが高いアルバムなのは間違いありません。

どうしてもアルバムの構成・流れを意識して楽しむアルバムが多いイメージのSOADだけに、本作は肩ひじ張らず、リラックスして楽しめる1枚かもしれません(といって、別に脱力系アルバムという意味ではないですよ。上に書いたように、シリアステイストの楽曲が多いですし)。

本作のアートワーク、CD-Rにマジックでバンド名、アルバムタイトルを殴り書きという荒っぽいもので、実際にはCD盤面にこの文字がプリントされたものだけで、いわゆるブックレットは一切付いておりません(日本盤のみ独自解説&歌詞・対訳が掲載されたブックレット付き)。アルバムタイトル含め、このへんは先のブートレッグに対する彼らならではの皮肉なんでしょうね。

ちなみに、彼らが次のアルバム『MEZMERIZE』(2005年)をリリースするのは、本作の発表から3年半後のこと。『MEZMERIZE』も同時期にもう1枚、『HYPNOTIZE』(2005年)というアルバムを制作しており、『MEZMERIZE』発売から半年後にリリースしています。一回スタジオに入るとものすごい勢いで楽曲を完成させ、一度にアルバム2枚分ものマテリアルを生み出してしまう。彼らは2017年中にリリースされるのではと噂されている通算6枚目のアルバムを現在制作しているようですが(まだ希望を捨ててないですよ、あと10日残ってますし。笑)、もしかしたら次も6枚目、7枚目と間隔を空けずに発表してくれるのかもしれませんね(だと嬉しいな)。



▼SYSTEM OF A DOWN『STEAL THIS ALBUM!』
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投稿: 2017 12 21 12:00 午前 [2002年の作品, System of a Down] | 固定リンク

2017年12月20日 (水)

MACHINE HEAD『BURN MY EYES』(1994)

1994年夏にリリースされた、MACHINE HEADのデビューアルバム。当時のメンバーはロブ・フリン(Vo, G)、ローガン・メイダー(G)、アダム・デュース(B)、クリス・コントス(Dr)。Billboard 200に入るようなヒット作ではないものの、その後のHR/HMシーンにおいて非常に重要な1枚として現在まで愛され続けています。

もともろロブは80年代後半から90年代初頭まで活動したスラッシュメタルバンド、VIO-LENCEのギタリストで、バンド解散後にローガンやアダムらと結成したのがMACHINE HEAD。ストレートなスラッシュメタルをやるかと思いきや、そこは時流に乗ったというか、METALLICA“ブラックアルバム”PANTERA以降の流れを汲むグルーヴィーで重々しいヘヴィメタルを展開しております。

なぜこのアルバムが“一時代を築いた”なんて言われているのか、それは起伏に富んだ楽曲アレンジもさることながら、ロブ&ローガンによるギターワークではないでしょうか。オープニングトラック「Davidian」のギターリフや、ハーモニクスなどを交えたプレイや音色は、例えばPANTERAにおけるダイムバッグ・ダレルのそれ同様に、当時のギターキッズたちが夢中になるようなものでした。特にグランジ以降、派手なギターソロを排除したシンプルなギタープレイが主流になっていましたが、カート・コバーン(NIRVANA)が亡くなった1994年春前後に登場したHR/HMの重要作品……本作『BURN MY EYES』やSEPULTURA 『CHAOS A.D.』やPANTERA『FAR BEYOND DRIVEN』、CARCASS 『HEARTWORK』あたりからは、派手なギタープレイを主軸に置いた新たなスタイルのHR/HMを感じることができるはずです。

楽曲のバラエティは次作以降、さらに幅広くかつクオリティが向上していくのですが、本作でのトーンの統一感やヘヴィさ、全体に漂う閉塞感などは以降の作品には感じられないものかもしれません。このへんはもしかしたら、グランジ一色だったロックシーンに対するアンチテーゼという意味もあったのかもしれません(勝手な想像ですが)。

PANTERAともMETALLCIAとも違うヘヴィさ、ダミ声だけど意外とメロウなロブのボーカル、そしてギター弾きなら真似したくなるリフワークやソロ。リリースから20数年経った今聴いても独創的ですし、「Davidian」や「Old」「None But My Own」「The Rage To Overcome」「Block」あたりは思わずコピーしたくなるくらいカッコいい。特に3rdアルバム『THE BURNING RED』(1999年)以降はアルバムごとに変化を繰り返しているバンドですが、軸になる部分はすでにこの時点から存在している。ぜひその原点をここで確認してみてください。



▼MACHINE HEAD『BURN MY EYES』
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投稿: 2017 12 20 12:00 午前 [1994年の作品, Machine Head] | 固定リンク

2017年12月19日 (火)

V.A.『JUDGEMENT NIGHT: MUSIC FROM THE MOTION PICTURE』(1993)

1993年公開のアメリカのアクション映画『ジャッジメント・ナイト』のサウンドトラックとして、同年秋にリリースされたのが本作。映画自体は未見ですが(ずいぶん前に地上波で深夜に放送されていたようですが、完全に忘れてました)、ここではその内容はどうでもよく。いや、ぶっちゃけ音楽ファン的には映画以上にサントラのほうが重要視されている作品ではないでしょうか。

本作は、曲ごとにヘヴィ/オルタナティヴロックバンドがヒップホップアーティストとコラボレートするという、およそ映画の内容とは関係のない構成。ロックファン的には参加バンドが気になるところですが、このセレクトがかなり謎でして。

以下にコラボレーションの詳細を記します(前者がロック系、後者がヒップホップ系アーティスト)


HELMET / HOUSE OF PAIN
TEENAGE FANCLUB / DE LA SOUL
LIVING COLOUR / RUN DMC
・BIOHAZARD / ONYX
SLAYER / ICE-T
FAITH NO MORE / BOO-YAA T.R.I.B.E.
・SONIC YOUTH / CYPRESS HILL
MUDHONEY / SIR MIX-A-LOT
DINOSAUR JR. / DEL THE FUNKY HOMOSAPIEN
THERAPY? / FATAL
PEARL JAM / CYPRESS HILL


SLAYERのような大御所メタルバンドやHELMET、FAITH NO MOREといったヘヴィなオルタナティヴバンド、LIVING COLOURみたいな黒人ハードロックバンドもいれば、MUDHONEYやPEARL JAMといったグランジ勢もいる。かと思うと、まだアメリカでは無名に等しいアイルランドのTHERAPY?まで参加しているんだから、本当に謎です。

実際に収録されている楽曲も、それぞれの個性が出た面白いものが多数。1曲目のHELMET / HOUSE OF PAINによる「Just Another Victim」からしてカッコ良いし、続く脱力系なTEENAGE FANCLUB / DE LA SOULの「Fallin'」も意外と悪くない。LIVING COLOUR / RUN DMCの「Me, Myself & My Microphone」なんてそもそも両者黒人なんだから相性が悪いわけがない(しまもRUN DMCはAEROSMITHとの“前科”もあるしね)。

本作の山場となるのが4曲目のBIOHAZARD / ONYX「Judgement Night」と、5曲目 のSLAYER / ICE-T「Disorder」、そして6曲目のFAITH NO MORE / BOO-YAA T.R.I.B.E.「Another Body Murdered」かな。「Judgement Night」は完全にヒップホップに寄せていて、そこにハードなギターが乗るという。こちらの組合せも非常に自然なものですし、そりゃあこうなるわなと。

で、SLAYER / ICE-Tという組み合わせですよ。ICE-T自身もBODY COUNTというハードコアバンドをやってますし、この組み合わせだったらそりゃあロック寄りになるでしょうね……っていうか、完全にSLAYERの土俵にICE-Tが踏み込んでるし。曲自体はEXPLOITEDのカバー(「War」「UK '82」「Disorder」のメドレー)で、このへんの試みがパンク/ハードコアのカバーアルバム『UNDISPUTED ATTITUDE』(1996年)につながったのかもしれませんね。

FAITH NO MORE / BOO-YAA T.R.I.B.E.という組み合わせも、実際に曲を聴いてしまうと何ら違和感がなく、むしろマイク・パットン先生の土俵ですね、これ。FAITH NO MOREのアルバムにそのまま入っていたとしても、別に不思議じゃない仕上がり。いやあ、面白い。

確かに全部が全部、成功しているとは言い切れないコラボアルバムではありますが、ここでの実験が翌年以降のメタル/ラウドシーンに大きな影響を与えた……というのは言い過ぎでしょうか? でも、それくらい意味のある実験でしたし、重要な作品だと思うんですよね。

ちなみに、数年後に映画『スポーン』のサウンドトラックで、今度はロックバンドとダンス/エレクトロ系アーティストのコラボレーションが実践されましたが、こちらは成功とは言い難い仕上がりでした。柳の下に二匹目のドジョウはいなかったわけですね。わかります。



▼V.A.『JUDGEMENT NIGHT: MUSIC FROM THE MOTION PICTURE』
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投稿: 2017 12 19 12:00 午前 [1993年の作品, Compilation Album, Dinosaur Jr., Faith No More, Helmet, Living Colour, Mudhoney, Pearl Jam, Run D.M.C., Slayer, Therapy?] | 固定リンク

2017年12月18日 (月)

KORN『KORN』(1994)

1994年秋にリリースされた、KORNの1stアルバム。KORNっていわゆるラップメタル/ニューメタルと呼ばれるヘヴィ系バンドのハシリ的存在だったのかなと、今になってみて思うのですが、実は当時はそういう感覚がまったくなかったんですよね。

自分の肌感覚的には「周りのバンドマン、国内メタル系アーティストがざわざわ騒ぎだし、よく名前を挙げるバンド」という存在でした、KORNって。たぶんPANTERAが1992年に一気にブレイクして、それに続くようにSEPULTURAがグルーヴィーでヘヴィなアルバム『CHAOS A.D.』を1993年にリリースして……その間には、メタルというよりはハードコアサイドにいたBIOHAZARDのようなバンドや、ちょっと変態チックなオルタナバンドFAITH NO MOREもいた。結局、KORNはその延長線上から誕生した印象だったんですよね。

そうそう、1993年にはもう1枚、重要な作品があった。映画『JUDGEMENT NIGHT』のサウンドトラック。あそこでメタル/ヘヴィ系バンドとヒップホップアーティストがコラボレーションしたことは、KORNの誕生(デビュー)にも大きく影響しているんじゃないかなと。そういう土壌ができつつあったところにデビューしたわけですから。

で、実際にこのアルバムを当時聴いたとき……1曲目「Blind」のオープニングに鳥肌を立て、一発でハマったことをよく憶えています。が、それもこの1曲だけで、実のところ他の曲に関しては理解できるものと理解が追いつかないものが半々ぐらい。正確に理解/評価できていたかと言われると、非常に微妙なのです。

そりゃあ、今のKORNと比べたら本作でやってることは多少難易度が高いかもしれません。だからこそ3枚目の『FOLLOW THE LEADER』(1998年)が出たときは「やたらと聴きやすくなったな」と驚いたんですが。

7弦ギターを使った独特のサウンドと、スラップを多用しバキバキいうベース、METALLICA 『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)での電子音的ドラムサウンドをさらにデッドにして進化させたようなリズム、そして変幻自在なジョナサン・デイヴィス(Vo)の、歌とも叫びとも取れる表現方法。あの頃、みんながこのアルバムに嫉妬したし、みんなが真似したがった。本当にズルいアルバムだと思います。

久しぶりにじっくり聴いてみたけど、20年前に感じた難易度はそこまで感じなくなっていました。ああ、当時は考えすぎてたのか、それともこういう音に慣れてしまったのか。ただただ、大きな音で聴くと気持ち良いアルバム。今はそれで十分かなと思います。

そういえば、リリース当初は本作、歌詞も対訳も付いてなかったんですよね。それが、2011年の国内盤再発の際に、聞き取りによる歌詞とその対訳が付くようになったので、それだけのためにも国内盤を購入する意味があると思いますよ。



▼KORN『KORN』
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投稿: 2017 12 18 12:00 午前 [1994年の作品, Korn] | 固定リンク

2017年12月17日 (日)

LIMP BIZKIT『THREE DOLLAR BILL, Y'ALL$』(1997)

1997年夏にリリースされた、LIMP BIZKITのデビューアルバム。このバンドのブレイクによりRAGE AGAINST THE MACHINEが「(ラップメタルという括りで)一緒にされたくない」とリンプの存在を否定したり、あるいはニューメタルと揶揄された後続たちに道を切り開いた張本人などと攻撃されたり、いろいろ大変な目に遭っているのですが、このデビュー作と続く2ndアルバム『SIGNIFICANT OTHER』(1999年)は誰が何と言おうと傑作中の傑作。この事実だけは変えようがありません。

ロス・ロビンソンのプロデュース、アンディ・ウォレスのミキシングという、ヘヴィロック/ニューメタルのお手本的な組み合わせにより完成した本作は、メタリックなバンドサウンドにヒップホップ的手法(DJ/サンプリングの導入や、ファンク的なハネたリズム感など)という意味では確かにRAGE AGAINST THE MACHINEの延長線上にあるのかもしれませんが、それはあくまで“サウンド的”に近いというだけ。歌われている内容や姿勢はまったく別モノなので、本当は比較対象ではないんですけどね。それはKORNもしかり。むしろ、そういったシリアスな姿勢とは相反する、非常にパーティロック的なカラーを前面に打ち出したからこそ、最終的に揶揄の対象になってしまったんでしょうね。

とはいえ、フレッド・ダースト(Vo)のボーカルや佇まいは(特にこの頃は)カリスマがかってましたし、ウェス・ボーランド(G)のギターも驚異の沙汰かと言わんばかりに暴れまくっているし、バンドサウンドもジャズの香りがしたりでかなり高度だったりする。どこかサイケデリックな香りもするし、ヒステリックかつカオティックなアレンジと演奏は、聴いているだけでテンションが上がる。うん、無条件にカッコいいじゃないですか。

彼らはKORN主催の移動フェス『FAMILY VALUES TOUR』に参加したことで知名度を上げ、本作からシングルカットされたジョージ・マイケルのカバー「Faith」がMTVでヘヴィローテーションされたことでスマッシュヒット。アルバムも全米22位まで上昇し、最終的に200万枚を超えるヒット作となりました。そういった地道なヒットがあったからこそ、続く『SIGNIFICANT OTHER』がいきなり全米No.1を獲ったわけです(そして、その1位に皆納得したという)。その「Faith」のアレンジも最高にイカしてるし、けどそれ以上にオリジナル曲はもっとイカしてる。その後腐るほど登場したこの手のバンドとは比較にならない完成度ですよ。

にしても、もう本作リリースから20年経ってしまったんですね……ここから時代が何周もしていることに、改めて驚かされます。けど、色褪せない1枚。まだ聴いたことがないのなら、悪いことはいいません。頭を空っぽにして、爆音で楽しんでください。



▼LIMP BIZKIT『THREE DOLLAR BILL, Y'ALL$』
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投稿: 2017 12 17 12:00 午前 [1997年の作品, Limp Bizkit] | 固定リンク

2017年12月16日 (土)

MR. MISTER『WELCOME TO THE REAL WORLD』(1985)

80年代半ばに活躍したアメリカの4人組バンド、MR. MISTERが1985年秋にリリースした2ndアルバム。デビュー作に当たる『I WEAR THE FACE』(1984年)が全米170位とヒットし損ねたのに対し、本作は全米1位を獲得したほか、シングルカットされた「Broken Wings」「Kyrie」がともに全米1位、「Is It Love」が全米8位にランクインし、名実ともにトップバンドの仲間入りを果たすきっかけを作った出世作となりました。

もともとスタジオミュージシャンたちが集まったAOR寄りバンドPAGESの一員だったリチャード・ペイジ(Vo, B)とスティーヴ・ジョージ(Key)により結成されたMR. MISTERは、ギターよりもシンセを前面に打ち出したポップ寄りのロックバンドでした。ドラムサウンドもどこか人工的で、トリガーなどを使ってかなりエフェクトが加えられている(あるいは打ち込みが採用されている)。ギターも適度にハードでエッジが効いているものの、ボーカルより前に出ることはない。各プレイヤーが自分の役割を心得ているあたり、スタジオミュージシャンの集まりなんだなと実感しました。

本作のプロデュースを手がけているのはポール・デヴィリアーズという人で、YESのライブアルバム『9012LIVE: THE SOLOS』(1985年)や『BIG GENERATOR』(1987年)のエンジニアを務めたり、KING CRIMSONに携わっている人とのこと。クリムゾンは別として、いわゆる“90125 YES”関係というのを知ってからこの『WELCOME TO THE REAL WORLD』を聴くと、意外と頷けるものがあるのではないでしょうか。

あと、リリースは本作よりもあとですが、DEF LEPPARD『HYSTERIA』(1987年)にも通ずるものがありますよね。サウンドプロダクションをもっと派手に(リバーブ深めに)したら、かなり近いものがあるんじゃないかと。楽曲の質感もどこか近いものがあるし、90125 YES 〜 MR. MISTER 〜 DEF LEPPARDと並べてみると、実はMR. MISTERを中心にみんなつながるんじゃないかと。そんなことにも気づかせてくれる1枚です。

まあとにかく、後半のヒットシングル畳み掛けは圧巻です。前半のヒンヤリとしたアーバンポップ/ロックも独特の色があるけど、やはり「Kyrie」「Broken Wings」の強さといったら。特にこの2曲は今聴いても色褪せない魅力があるなと思いました。

結果として彼らは次作『GO ON...』(1987年)で再び失速。1989年に制作していたものの、未発表のまま解散してしまった4thアルバム『PULL』も2010年にWEB限定で発表され、最近では国内初リリースも実現しました。この2枚も決して駄作ではないので、本作が気に入ったらぜひチェックしてみてはどうでしょう。

ちなみに、MR. MISTER解散後、ギターのスティーヴ・ファリスは一時期WHITESNAKEのツアーに参加。ドラムのパット・マステロットは90年代以降のKING CRIMSONに参加し、レコーディングやツアーで活躍しているのはご存知のとおり。リチャード・ペイジもソロアーティストとして、またリンゴ・スターのツアーメンバーとして活動中です。



▼MR. MISTER『WELCOME TO THE REAL WORLD』
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投稿: 2017 12 16 12:00 午前 [1985年の作品, Mr. Mister] | 固定リンク

2017年12月15日 (金)

EURYTHMICS『REVENGE』(1986)

1986年初夏に発表された、EURYTHMICSの5thアルバム。『SWEET DREAMS (ARE MADE OF THIS)』(1983年)でのブレイクを筆頭に、『TOUCH』(1984年)、『BE YOURSELF TONIGHT』(1985年)と作品を重ねるごとにサウンドを進化させてきた彼ら。初期のヒンヤリとしたデジタルテイストからソウル路線へと移行した前作『BE YOURSELF TONIGHT』がアメリカでも好意的に受け入れられましたが、続く本作『REVENGE』ではその成功に甘んじることなく、さらに進化させたスタイルを提示しました。

前作でのソウルテイストを残しつつ、全体的にロックバンド感を強めたのが本作の特徴。ブラックフィーリングをハードロック的なテイストがミックスされたオープニング曲「Missionary Man」(全米14位)を筆頭に、アコースティックギターをフィーチャーしたポップチューン「Thorn In My Side」(全英5位)、ど真ん中を突いた王道ポップロック「When Tomorrow Comes」と、序盤から名曲が並びます。

デジタルとバンドサウンドが融合したアリーナロック「The Last Time」、哀愁漂うバラード「The Miracle Of Love」で前半を締めくくると、打ち込み色が強いポップロック「Let's Go!」から後半に突入。時代を感じさせるポップソング「Take Your Pain Away」「A Little Of You」、若干ダークでヒンヤリしたブラックテイストのロックチューン「In This Town」、落ち着いた雰囲気のスローナンバー「I Remember You」という流れでアルバムは終了します。

序盤に良い曲が固まっているため、後半の印象が若干薄い作品ではありますが、初期の冷徹そうなイメージを覆す、非常に人間味にあふれた1枚と言えるでしょう。アニー・レノックス(Vo)も「Missionary Man」でこそ初期のイメージを踏襲しつつも、「When Tomorrow Comes」あたりでは完全に陽の空気が充満していますしね。

ちなみに、本作を携えたワールドツアーで1987年春に来日した際、僕も代々木体育館に観に行きました。うん、完全にロックバンドのライブでした。カッコ良かった。この頃って、DURAN DURAN『NOTORIOUS』で黒人ロック/ファンクバンドに近づこうとしてたし、意外とそういうタイミングだったのかもしれませんね。

とはいえ、本作は前作、前々作ほどの大きな成功を収めることができず、彼らは次作『SAVAGE』(1987年)で再びデジタルビートを導入した密室路線へと回帰するのでした。



▼EURYTHMICS『REVENGE』
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投稿: 2017 12 15 12:00 午前 [1986年の作品, Eurythmics] | 固定リンク

2017年12月14日 (木)

STING『THE DREAM OF THE BLUE TURTLES』(1985)

THE POLICEの活動休止を経て、1985年6月に発表されたスティング初のソロアルバム。「If You Love Somebody Set Them Free」(全米3位)や「Fortress Around Your Heart」(全米8位)、「Russians」(全米16位)、「Love Is the Seventh Wave」(全米17位)とシングルヒットを連発したおかげもあり、アルバムも全米2位まで上昇し、300万枚以上を売り上げる大ヒット作となりました。

本作はオマー・ハキム(Dr)、ダリル・ジョーンズ(B)、ケニー・カークランド(Key)、ブランフォード・マルサリス(Sax)といったジャズ/フュージョン界で名の知られたミュージシャンたちと制作(本作でスティングはギターをプレイ)。そのサウンドもジャズテイストを強めたポップ/ロックサウンドで、“THE POLICEのスティング”らしい内容に仕上がっています。

クールでジャジーなオープニングトラック「If You Love Somebody Set Them Free」にいきなり驚かされるものの、ポップなレゲエソング「Love Is the Seventh Wave」や重厚な「Russians」などを聴くと、「ああ、“あの”スティングだ」と納得させられる。その後もジャズやフュージョンからの影響が強い楽曲がたびたび登場しますが、THE POLICEを通過していれば特に違和感なく楽しめるのではないでしょうか。

確かに派手なギターリフも激しいリズムも、ロックバンドならではの緊張感もここでは希薄です。それを良しとするか否かで本作の評価は分かれるかもしれません。が、ポップアルバムとして接するのであれば、本作は非常にクオリティの高い1枚だと断言できます。曲もしっかり作り込まれているし、各プレイヤーの存在感の強いプレイも圧巻の一言だし。それはそれで緊張感が感じられるのですが、それはロックバンドならではのアレとは別モノ。比較するのはやめておきましょう。

ちなみに5曲目「Shadows In The Rain」は、THE POLICEの3rdアルバム『ZENYATTA MONDATTA』(1980年)のセルフカバー。こちらは原曲と聴き比べてみることをオススメします。スティングがソロで何をやりたかったのかが、明白ですから。

このアルバムも中学生の頃に死ぬほど聴き込んだ1枚。残念ながらこの当時のライブは生で観ることはできませんでしたが、当時の様子はライブビデオなどで確認することができます。



▼STING『THE DREAM OF THE BLUE TURTLES』
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投稿: 2017 12 14 12:00 午前 [1985年の作品, Police, The, Sting] | 固定リンク

2017年12月13日 (水)

SIMPLE MINDS『ONCE UPON A TIME』(1985)

1985年秋にリリースされた、SIMPLE MINDSの7thアルバム。同年初頭に映画『ブレックファーストクラブ』のサウンドトラックからシングルカットされたオリジナルアルバム未収録曲「Don't You (Forget About Me)」が初の全米No.1を記録し(これが初のUSシングルチャートイン曲)、その勢いをうまく引き継ぎながら発表されたのが、この出世作となるアルバムでした。結果、アルバムから「Alive And Kicking」(全米3位)、「Sanctify Yourself」(全米14位)、「All The Things She Said」(全米28位)とヒット曲を連発し、アルバム自体も最高10位まで上昇しました。

プロデュースを手がけたのはジミー・アイオヴィン(U2、ブルース・スプリングスティーンなど)とボブ・クリアマウンテン(ブライアン・アダムスなど)という“ザ・80年代”な組み合わせ。それまでのスティーヴ・リリィホワイトやジョン・レッキー、ピーター・ウォルッシュなどの“いかにもUK”な人選と比較すれば、彼らがこのアルバムでアメリカ制覇を狙っていたことは明らか。実際、それまでのニューウェイヴがかったサウンドから、本作はより大陸志向の壮大なロックを奏でています。

女性ボーカルをフィーチャーしたアレンジや、大きなノリ、U2のエッジ(G)を思わせるギターストロークなど、彼らがどこを狙っているか、聴いてるだけでジワジワ伝わってくる。そこにニューロマンティックなどの“2ndブリティッシュ・インヴェンジョン”勢を思わせるテイストも加味し、「そりゃあ、アメリカ人い気に入られるよ」ってな楽曲を作り上げる。オープニングトラックの「Once Upon A Time」を筆頭に、そういう楽曲がずらりと並ぶのですから、嫌いになれるわけがない。

切なさを伴う「All The Things She Said」やダンサブルな「Ghostdancing」、本作の軸にして壮大な1曲「Alive And Kicking」、ポップで親しみやすい「oh Jungleland」や「Sanctify Yourself」、ニューウェイヴの色合いを引きずる「I Wish You Were Here」、不思議なリズム感の「Come A Long Way」と、1曲1曲の濃さがとにかくすごい。全8曲で40分という聴きやすさもあって、何度も聴き返したくなる1枚です。ホント、中学生の頃よく聴き込んだアルバムで、リリース当時はアナログ盤だったのですが、高校生になってから改めてCDで買い直したほどお気に入りの作品です。

2015年にはリリース30周年を記念したリマスター&デラックス盤も発売。2枚組使用にはシングルのカップリング曲やダンスリミックス、先の「Don't You (Forget About Me)」などが収録されたボーナスディスクが付いているので、これから購入するならこちらをオススメします。



▼SIMPLE MINDS『ONCE UPON A TIME』
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投稿: 2017 12 13 12:00 午前 [1985年の作品, Simple Minds] | 固定リンク

2017年12月12日 (火)

U2『SONGS OF EXPERIENCE』(2017)

iTunesユーザーに無理やり送りつけ賛否両論を巻き起こした前作『SONGS OF INNOCENCE』(2014年)から3年ぶり、U2の通算14枚目となるスタジオアルバム。そのタイトルからからもわかるように前作と対となる作品で、本来はもっと早いタイミングにリリースされる予定でしたが、ボノ(Vo)の自転車事故による大怪我やその後のツアーなどもあって、結局通常のサイクル(にしてはいつもより早めですが)での発表となりました。

ロックバンドに憧れた頃の原点(ジョーイ・ラモーンジョー・ストラマーなど)を見つめ直した前作を“Innocence”と称するなら、“Experience”をタイトルに用いた今作はそこから40年近くにわたるU2の音楽探求史の現在地が示されたような1枚と言えるでしょう。いつになくボーカルにエフェクトを施した「Love Is All We Have Left」から「Lights Of Home」へと流れる緩やかなオープニングには驚かされますが、先行シングル「You're The Best Thing About Me」のようなポップサイド、90年代初頭の彼らを思わせる「Get Out Of Your Own Way」、「Vertigo」にも匹敵する骨太なロックンロール「American Soul」、80年代のルーツミュージック回帰期を彷彿とさせる「Summer Of Love」など、従来のU2の総決算といえるような楽曲がずらりと並びます。

後半も小気味良いギターリフの「Red Flag Day」を筆頭に、アコギのストロークと緩やかなリズムが気持ち良いロックンソウル「The Showman (Little More Better)」、ミニマムなサウンドが90年代中盤のテクノ3部作を思わせる「The Little Things That Give You Away」、作風的には2000年代のU2に近い「Landlady」、先行公開されていたリード曲「The Blackout」、これも2000年代の彼らの延長線上にあるミディアムスローの「Love Is Bigger Than Anything In Its Way」、13曲目だからこのタイトル?なソウルバラード「13 (There is A Light)」とU2らしい楽曲ばかり。約50分と通常の彼らの作品同様、とても聴きやすいバランスとなっています。

デラックスエディションにはこのほか、ボーナストラックが4〜5曲追加されるのですが、その大半がリミックスやバージョン違いなのでここでは割愛します。

前作と比較すると、例えばギターでがっつり引っ張るといった作風ではなく、リズムで遊びながら歌をじっくり聴かせる、そういうアルバムなのかなと思いました。また、テイストとしてエレクトロの要素がうっすら散りばめられているものの、やはりロックバンドとしての軸はブレておらず、90年代的なテイストが散見されつつも、あくまでそれも味付けといった印象。U2がU2であることを引き受けた……そんなアルバムなのかなと思いました。

たぶん、これを嫌いなU2ファンはいないんじゃないかな(難癖つけるめんどくさい輩はいるだろうけど)。そんな“らしい”アルバムです。



▼U2『SONGS OF EXPERIENCE』
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投稿: 2017 12 12 12:00 午前 [2017年の作品, U2] | 固定リンク

2017年12月11日 (月)

KATMANDU『KATMANDU』(1991)

FASTWAYの初代ボーカリスト、デイヴ・キングとASIAの2代目ギタリスト、マンディ・メイヤーを中心に結成された4人組バンドKATMANDU。彼らが1991年初頭に発表した唯一のアルバムが本作です。

当時、伊藤政則氏が自身のラジオで大プッシュし、「Ready For The Common Man」がよくオンエアされたのをよく憶えています。また、MVを流す番組では「When The Rain Comes」もオンエアされ、所属レーベルのSonyが本格的にプッシュする新人だったことが、こういった事実からも伺えると思います。

マンディ・メイヤーはその後GOTTHARDを結成しますが、本作からはその片鱗も伺えます。アルバムは全体的にデイヴ・キングのソウルフルなボーカルを効果的に生かしたブルースフィーリングの強い、それでいてメロディアスなハードロック。オープニングの「The Way You Meke Me Feel」の豪快なサウンドから、そのあたりは伺えることでしょう。が、本作はそれにとどまらず、U2のカバー「God, Part II」(キーを上げることでワイルドなハードロックに昇華)、ポップなメロディが印象的な「Love Hurts」、アコースティックギターとオルガンの音色が心地良いバラード「Sometimes Again」と佳曲が続きます。

そして、前半のハイライトとなる「When The Rain Comes」。ソウルやブルースのテイストが強く打ち出されており、デイヴの歌唱力もあってかどこかLED ZEPPELINやジャニス・ジョプリンを彷彿とさせます。それに、KINGDOM COMEほどカクカクしておらずグルーヴィー。「Sometimes Again」から「When The Rain Comes」、さらにアコースティック小楽曲「Heart And Soul」の流れは、例えば当時のGREAT WHITEにも通ずるものがあると思うのです。

後半は日本でも人気の高い「Ready For The Common Man」からスタート。つい最近国内ソニーから発売されたHR/HMコンピにもこの曲が収録されていましたね。ゴスペルを思わせるアカペラコーラスから始まるこの曲は、確かに日本人が好きそうな“メロディアスさ”と“ドラマチックさ”が詰まった1曲だと思います。ただ、個人的にはそこまで評価は高い曲ではなく……ごめんなさい。完全に好みの問題ですよね。もちろん、良く曲だとは思いますが、それよりも「When The Rain Comes」のほうが好きだと感じるのは、単純に楽器弾きの性なのでしょうか。

そして、終盤に向けてもかなり佳曲が多く、正統派ハードロック「Only The Good Die Young」、パワーバラード「Let The Heartache Begin」、マイナーコードのミディアムチューン「Medicine Man」、ハネ気味のリズムが気持ち良い「Pull Together」、パーカッションとギターリフの絡みがカッコ良いアップチューン「Warzone」と、とにかく1曲1曲がしっかり作り込まれており、非常に聴き応えのある1枚です。

残念ながら、彼らは本作リリースからしばらくして解散。アルバム後には来日公演も実現しましたが、僕は行ってません。

本作はしばらく廃盤状態。当然、デジタル配信やストリーミングでアルバムをまるまる聴くことはできません。が、「When The Rain Comes」と「Ready For The Common Man」のみコンピ盤で聴けるので、下に貼っておきますね。アルバム自体は中古CDショップですぐに見つけられると思うので、上に挙げたようなバンドやBLUE MURDERあたりが好きな人、GOTTHARDのファンは機会があったらチェックしてほしいと思います。



▼KATMANDU『KATMANDU』
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投稿: 2017 12 11 12:00 午前 [1991年の作品, Katmandu] | 固定リンク

2017年12月10日 (日)

THE ROLLING STONES『ON AIR (A BBC RECORDINGS)』(2017)

昨年の今頃は久しぶりのスタジオアルバム『BLUE & LONESOME』に歓喜していましたが、今年もやってくれました。純粋な新作ではないですが、『BLUE & LONESOME』にも通ずる初期の未発表音源集のリリースです。

本作はROLLING STONESが1963〜1965年に出演したイギリス・BBCラジオの諸番組から、貴重なライブ音源をコンパイルしたもの。18曲入りのCD1枚ものと全32曲入りのCD2枚ものの2形態が用意されており、ジャケットのカラーもそれぞれ異なります(1枚ものがオレンジ、2枚ものがイエロー)。

アルバムはまず、デビューシングル「Come On」からスタート。これは1963年の録音で、まぁ原曲に近い形で演奏されています。デビュー当時ならではの勢いというか荒々しさが感じられ、続く2曲目「(I Can’t Get No) Satisfaction」(1965年録音)含めヤンチャさが伝わってくる演奏かもしれません。ミック・ジャガーも1回目のサビラストで「Hey Hey Hey」って歌うところ、間違えてますしね(笑)。

初期のヒットシングル、例えば「It's All Over Now」「The Last Time」あたりも収められてはいるのですが、基本的にはアルバム曲やカバー曲が多い構成。それは、まだこの頃のストーンズがオリジナル曲量産期に入る前というのも大きいでしょう。また、録音状態も比較的良好な1965年と比べ、観客を入れたライブスタイルが意外と多い1964年や最初期の1963年のものは若干落ちる印象。もちろん同じ年の中でもまちまちだったりするので、一概には言い切れませんが……それでも、世に溢れているエアチェック音源やブート音源と比べたら比較にならないほど良好なので、普通に“準スタジオアルバム”、“準ライブアルバム”として楽しめるはずです。

ミックの歌い回しも若々しく、今のようなアクもなく(笑)、スルッと聴けてしまう。キース・リチャーズ&ブライアン・ジョーンズのギターも60年代後半のプレイと比較すると“曲に合わせたプレイ”を心がけているように感じられるものの、ビル・ワイマン&チャーリー・ワッツのリズム隊の鉄壁さはすでに完成の域に入りつつあったりと、いろんな意味で興味深い作品だと思います。

個人的にはDISC 2(デラックス盤のみ)の選曲がツボ。音は良くないけど「I Wanna Be Your Man」「Carol」のドライブ感といい、「If You Need Me」の泣かせる歌&演奏、『BLUE & LONESOME』にも通ずる「Confessin' The Blues」の泥臭さ、パンキッシュな「I Just Want to Make Love To You」など聴きどころ満載。音の良し悪しの落差はDISC 1以上ですが、そんなことお構いなしなアゲっぷりがたまらない。特に「I Just Want to Make Love To You」はこの時期だからこその疾走感ではないでしょうか。ホント最高。



▼THE ROLLING STONES『ON AIR (A BBC RECORDINGS)』
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投稿: 2017 12 10 12:00 午前 [2017年の作品, Rolling Stones] | 固定リンク

2017年12月 9日 (土)

WEEZER『PACIFIC DAYDREAM』(2017)

恒例のセルフタイトルアルバム(前作は『ホワイト・アルバム』)から1年半ぶりとなる、通算11作目のオリジナルアルバム。本格的に再始動した2000年以降、その多才ぶりに驚かされるWEEZERおよびリヴァース・クオモですが、本作も当初は『ホワイト・アルバム』に続く『ブラック・アルバム』(要はセルフタイトルアルバム第5弾ですね)の制作にとりかかったところ、別の方向性の楽曲が次々と生まれてしまったことから、別のアルバムを作ることに。結果、生まれたのがこの『PACIFIC DAYDREAM』というわけです。

そのタイトルからもわかるように、まさに“ビーチでの白昼夢”をイメージさせる楽曲がずらりと並ぶ本作。“ビーチ”という視点は前作からの延長線上にあると思うし、実際メロディセンスの冴えわたりっぷりはいかにもリヴァースといったところ。言われているほど悪いとは思えないし、むしろ非常に“現代的”であり、時代にマッチしたメロ運びだと思いました。個人的にはツボ。いろいろ勉強しているんだろうなというのも伝わってきます。

で、問題になってくるのがそのサウンドメイキング。この春に先行シングルとして配信リリースされた「Feels Like Summer」を聴いて驚いたファンも少なくないでしょうが、バンドサウンドというよりはサンプリングや打ち込みなどを多用したアレンジで、従来の“轟音ギター+甘いメロディ”路線を好む方々からは難色を示す仕上がりかもしれません。

実際、アルバム全体がそういった方向性で統一されており、オープニングを飾る「Mexican Fender」などは従来のWEEZERに近いテイストながらも、3曲目「Feels Like Summer」や4曲目「Happy Hour」あたりは完全に“今”の音。ロックというよりも、ヒットチャートを賑わせるポップソングのテイストに近いものと言えるでしょう。が、これが言うほど悪くない。むしろ、めっちゃ好みの音だったりするし、それをWEEZER(リヴァース)がやっているという事実が面白い。

「Weekend Woman」などいつも以上にドリーミーな楽曲が多いのお、それこそ先の“ビーチでの白昼夢”というキーワードを考えれば納得。タフさや現実(=バンド形態でのストロングスタイル)感を排除して、とことんフワフワした空気を漂わせて終わる34分、最高じゃないですか。全米チャート的には最高23位と過去最低位を記録したものの、僕はこの路線を支持したい。だって、どうせ次はギトギトした路線に戻った『ブラック・アルバム』でしょ?(笑)

結局、こういう振り幅を見せてくれるバンドが好きなんですよね。だから、いつまで経ってもWEEZERのことが嫌いになれないのです。



▼WEEZER『PACIFIC DAYDREAM』
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投稿: 2017 12 09 12:00 午前 [2017年の作品, Weezer] | 固定リンク

2017年12月 8日 (金)

PANTERA『COWBOYS FROM HELL』(1990)

1990年夏にAtlantic Records傘下のAtco Recordsからリリースされた、PANTERAのメジャーデビューアルバム(インディーズからの4枚を含むと、通算5作目)。プロデュースを手がけたのは、OVERKILLMETAL CHURCHといったスラッシュ勢のほか、SOUNDGARDENMOTHER LOVE BONEといったグランジバンドにも携わってきたテリー・デイト。聴けばそれとわかる“テリー・デイトらしいサウンド”が展開されています。

メジャー2作目の『VULGAR DISPLAY OF POWER』(1992年)で一気に知名度を上げたPANTERAですが、すでに本作リリース後には一部ミュージシャンの間では注目のバンドとして彼らの名前が挙がっていました。それがMOTLEY CRUE(主にトミー・リー)やSKID ROWなどといった当時のメジャーど真ん中のハードロックバンドから、というのがまた面白い事実でして、僕も彼らのインタビューなどでPANTERAの名前を知りこの『COWBOYS FROM HELL』を手に取ったほど。影響力というのはつくづくすごいなと思わされる一例ですね。

80年代後半のMETALLICAを筆頭とした新たなヘヴィメタルの波は、確かに1990年前後に変革の時期を迎えつつありました。HR/HMブーム自体が過渡期に突入したというのもありますが、単にお行儀の良いバンドに飽き飽きしていたという風潮も大きかったのでしょう。実際、この1990年という年にはSLAYER『SEASONS IN THE ABYSS』を発表したほかMEGADETH『RUST IN PEACE』を、ANTHRAXが『PERSISTENCE OF TIME』を、JUDAS PRIESTが『PAINKILLER』を、ALICE IN CHAINSがメジャーデビュー作『FACELIFT』をリリースしています。旧来のスタイルと新たな姿勢が融合しつつあった、絶妙なタイミングだったんでしょうね。

そんな中登場したのがPANTERA。しかもそのサウンドは、のちのMETALLICAがブラックアルバムで示すグルーヴメタル路線で、『VULGAR DISPLAY OF POWER』以降の作品みたいにヘヴィ一辺倒というわけではなく適度にメロディアスで緩急もしっかりしている。そう、この『COWBOYS FROM HELL』というアルバム自体も旧来のスタイルと新たな姿勢が交差する、1990年という時代にマッチした作風だったのです。

フィル・アンセルモ(Vo)も以降のようにただがなり立てるだけではなく、しっかり歌メロを表現している(笑)。ドスの利かせ方もまだ徹底する前で、どこか優しさすら感じられるのですから、本当に不思議です。「Cowboys From Hell」や「Primal Concrete Sledge」なんてサビでシンガロングできますし、「Cemetery Gates」は王道のヘヴィメタルバラードですからね。さらに、ダイムバッグ・ダレル(G / 当時はダイヤモンド・ダレル名義)のギタープレイはすでに当時から光るものがあるし、リズム隊が生み出すグルーヴィーなリズムもそれ以前のHR/HMとは異なる“ハネた”ものが多い。今思えばですけど、このあとに新たな時代が訪れることを、このアルバムで予言していたわけですね。そういう点において、非常に歴史的価値の高い1枚ではないでしょうか。

とはいえ、本作がリリースされた当時はそこまで“すごいアルバム”だと自信を持って言えなかったし、ましてや続く『VULGAR DISPLAY OF POWER』であんな化け方をするとも思わなかった。そして、彼らがその後のメタルシーンを一変させてしまう力を持っていたなんて……見る目がなかったのか、それとも彼ら自身が本作発表後の1年ちょっとで激変したのか。まあそのどっちもなんでしょうね。とにかく、純粋にHR/HMアルバムとして優れた作品だと思います。『VULGAR DISPLAY OF POWER』以降、特に『FAR BEYOND DRIVEN』(1994年)以降のハードコア色が強いテイストが苦手という人でも、この『COWBOYS FROM HELL』は存分に楽しめると思いますよ。



▼PANTERA『COWBOYS FROM HELL』
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投稿: 2017 12 08 12:00 午前 [1990年の作品, Pantera] | 固定リンク

2017年12月 7日 (木)

DEF LEPPARD『SLANG: DELUXE EDITION』(2014)

というわけで、昨日のDEF LEPPARD 『SLANG』(1996年)レビューからの続きとなります。今回は前回以上に長いテキストとなっておりますので、そのつもりでお読みください。

本作は2014年初頭、バンドが自身のレーベルから発表した2枚組アルバム。当時はすでに、それまで在籍していたメジャーレーベルの「Mercury / Island」から離れており、彼らの旧譜をバンドが思ったような形で再発できない(例えばiTunes StoreやSpotifyなどの配信/ストリーミングサービスに、自由に提供できないなど)という問題が生じていた時期で、そんな中2012年後半にこの『SLANG』のマスター音源および当時録音したアウトテイクが彼らの手元に戻ることになった。そういう紆余曲折を経て、オリジナル盤発売から18年を経て『SLANG』セッションの全貌がここに明らかにされたわけです(ちなみに、今年リリース30周年を迎えた名盤『HYSTERIA』のデラックス盤は、原盤権を持つUniversalからのリリース。要はカタログとして売れる/売れないかの判断で『SLANG』を手放したんでしょうね)。

上記のような経緯を経て、バンドとしては久しくオリジナルアルバムがリリースされない時期に突如発表された『SLANG』のデラックスエディション。当然、発売されてすぐに手に入れましたが、いやぁこれが……聴き応えたっぷりで、オリジナル盤を持っている人でも間違いなく楽しめる1作なのです。

ディスク1にはリマスタリングされた『SLANG』本編に、1996年当時の日本盤ボーナストラックだった「Move With Me Slowly」、『SLANG』からのシングルにも収められた「Truth? (Original Version)」や「Burn Out」、ベストアルバム『VAULT: DEF LEPPARD GREATEST HITS (1980-1995)』(1995年)のボーナストラック「Can't Keep Away From The Flame」、7thアルバム『EUPHORIA』(1999年)からのシングルに収められた「World Collide」を追加収録。本編以降の楽曲はすべて『SLANG』セッションから生まれたもので、特に「Truth? (Original Version)」はデジタルテイストの強いアルバム本編の「Truth?」とは異なり、よりグランジ色が強い作風であることに驚かされます。また「Burn Out」は演奏スタイルこそ『SLANG』的ですが、楽曲の持つテイストは『ADRENALIZE』(1992年)以前の作風に近い。かと思えば、「World Collide」は変拍子を用いたミディアムスローのヘヴィチューンで、SOUNDGARDENあたりからの影響が伺えます。「Can't Keep Away From The Flame」はギター弾き語りの小楽曲なので、これは90年代前半にヒットしたシングル曲「Two Steps Behind」の延長線上で制作したものなんでしょう。

で、問題はディスク2。こちらには『SLANG』オリジナル盤収録曲のデモバージョンが満載なのです。「Turn to Dust (Phil Verse Vocal)」はデジタル的な味付けを省いた、より生々しさが前面に打ち出されたバージョン。歌詞や節回しが一部異なっているほか、ボーカルの一部をフィル・コリン(G)が担当しています。普通にロックバンドの楽曲としてカッコイイと思いませんが、この曲?

続く「Raise Your Love」はタイトルだけでは気づきませんが、これこそアルバムタイトル曲「Slang」のデモバージョン。ヒップホップ的手法のアレンジが施される前の、ワイルドなロックアレンジもこれはこれでカッコ良いし、何よりもサビがまったく異なる。正式発表された「Slang」はタイトさが目立ちますが、この緩やかさとダイナミックさを兼ね備えたアレンジも悪くないのですよ。

「All I Want Is Everything (1st Draft)」は比較的原曲に近く、初期の段階からほぼ完成形だったことが伺えます。まあこの曲、正式版自体がシンプルそのものですからね。続く「Work It Out (1st Draft)」も「Breath A Sigh (Rough Mix)」「Deliver Me (Rough Mix)」も同様。アルバム序盤のエキセントリックな楽曲と比べたら、このへんの楽曲は最初から完成形が見えていたってことなんでしょうね。

で、見慣れないタイトルの「Black Train」。こちらは「Gift Of Flesh」のデモバージョンで、ハードロックバンド的なダイナミックさが加えられた「Gift Of Flesh」よりもラフでユルい雰囲気が漂っています。また、サビ前からサビのメロディが完成版とは異なり、このシンプルさこそ当時の彼らが目指していたものなのだと理解できははずです。以降は「Blood Runs Cold (Rough Mix)」「Where Does Love Go When It Dies (1st Draft)」と再び完成版に近いテイクが続き、最後の「Pearl Of Euphoria (Rough Mix)」では過剰なエフェクトが加えられる前の生々しさを体感でき、改めてこっちのバージョンもいいなと思ったり。

ディスク2はまだまだ続き、ヴィヴィアン・キャンベル(G)のペンによる未発表曲「All on Your Touch (2012 Revisit)」や、「Deliver Me」の初期バージョン「Anger ("Deliver Me" 1st Draft)」(サビメロや歌詞が異なる)、ヴィヴィアンによる未発表デモトラック「Move On Up」、「Gift Of Flesh」のフィル・コリンVoバージョンなど貴重なテイクがたっぷり収められています。

こうやって完成した『SLANG』から通して聴くと、好き放題やり尽くしたと思われた『SLANG』というアルバムも実は最終的に“従来のDEF LEPPARDらしさ”を残そうとして微調整していたんだな、という事実にも気づかされます。もちろん「Truth?」や「Slang」のように過剰に突き抜けた楽曲もあるにはあるのですが、全体的にはやっぱり「DEF LEPPARDのアルバム」なんだと。その一言に尽きると思います。

こういうアウトテイク集って作品によってはまったく面白くなかったりするのですが、『SLANG』みたいな実験作および問題作だとやっぱり面白いもんだなと再確認できたので、このリリースの意味は非常に大きいものがあると思います。もし『SLANG』というアルバムに多少でも興味を持っていたら、迷わず手にしてみることをオススメします。



▼DEF LEPPARD『SLANG: DELUXE EDITION』
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投稿: 2017 12 07 12:00 午前 [1996年の作品, 2014年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2017年12月 6日 (水)

DEF LEPPARD『SLANG』(1996)

1996年5月にリリースされた、DEF LEPPARD通算6枚目のスタジオアルバム。前作『ADRENALIZE』(1992年)から4年ぶりの新作となるわけですが、その4年間に新曲+シングルBサイド集アルバム『RETRO ACTIVE』(1993年)やベストアルバム『VAULT: DEF LEPPARD GREATEST HITS (1980-1995)』(1995年)のリリースを挟んだので、意外と久しぶりという気がしなかったことを今でもよく覚えています(まあ、それも「彼らにしては」という大前提が入りますが)。

『ADRENALIZE』リリース後にスティーヴ・クラーク(1991年逝去)の後任としてヴィヴィアン・キャンベルが加入した彼らが最初に制作したスタジオアルバムがこの『SLANG』になるわけですが、本作は当時からいろんな意味で問題作として紹介されてきました。

まず、完全にロバート・ジョン・マット・ラングの手を離れ、すべての楽曲をメンバーのみで制作。プロデュースも基本はセルフプロデュースという形に近く(パートナーに以前から携わるエンジニア、ピート・ウッドロフを迎えている)、完全に「当時やりたかったことを試した」実験作と言える内容。時代背景的には『ADRENALIZE』発売前後から勃発したグランジムーブメントを経て、1995年前後のOASIS vs BLURなどのブリットポップムーブメントという、完全にHR/HMが時代遅れとして扱われたタイミングなわけで、当のDEF LEPPARDも完全に“過去の遺産”的扱いを受けていました。

そんな彼らが、純粋に「グランジ、シンプルでカッコいいじゃん!」「ブリットポップ、わかるよ。だって俺らもイギリス人だし!」と感じたことをそのまま音に反映させた。つまり、元来持ち合わせているポップセンスはそのままに、オーバープロダクションが持ち味だった彼らのスタイルを180度真逆の「無駄を削ぎ落としたシンプルさ」「人工甘味料を排除し、素材をそのまま生かした味付け」へと昇華させたのがこの『SLANG』だったのです。

グランジやブリットポップのみならず、当時流行り始めていたインダストリアルロックのテイストまで取り入れた「Truth?」に、まずリスナーはびっくりしたことでしょう。「え、NINE INCH NAILS?」と苦笑いしつつ、“LED ZEPPELIN+インダストリアルロック”な「Turn To Dust」、ヒップホップの香りがするポップチューン「Slang」、グランジ的なシンプルな構成とモノトーンな味付けの「All I Want Is Everything」、グランジというよりもU2に近いものを感じる「Work It Out」、どこか当時流行のR&Bバラードに通ずるものがある「Breathe A Sigh」と、とにかく前半は驚きの連続。「Photograph」「Pour Some Sugar On Me」「Love Bites」を求める従来のファンを、まるで拒絶するかのような楽曲の数々に、そりゃあ虚説反応を示したくもなりますよね。

しかし後半になると、音は完全にグランジだけど彼ららしいメロディを持つ「Deliver Me」やもっとも従来のDEF LEPPARDに近い(けど味付けは現代的)「Gift Of Flesh」を筆頭に、音数に少なさに改めて驚かされるバラード「Blood Runs Cold」、サウンド的には『ADRENALIZE』以前の作品に入っていたとしても許容範囲ないなスローナンバー「Where Does Love Go When It Dies」、そしてドゥーミーなツェッペリン的ミディアムヘヴィナンバー「Pearl Of Euphoria」と、作風こそ現代的ですが意外と従来のDEF LEPPARDに近いものが感じられる楽曲たちが並びます。

そう考えると、序盤に新たな挑戦を並べて旧来のファンを振り落としていき、進めば進むほど彼らが本来持ち合わせるカラーへと戻っていく……そんな「聴く者を試す」1枚となっているのではないでしょうか。それくらい、当時の彼らは以前の自分たちの色を払拭させたかった、偏見なしに音で評価してほしかったのかもしれません。それがやりすぎだったとしても……。

ちなみに僕、当時からこのアルバムに関しては両手を上げて絶賛する派です。本作を携えた来日でも、武道館公演を複数観てますし、ジョー・エリオット(Vo)がライブでNIRVANA「Come As You Are」やOASIS「Live Forever」の弾き語りをしたのを観て微笑ましい気持ちになったことも、昨日のことのように覚えています。

なお、DEF LEPPARDは2014年に本作『SLANG』のデラックスエディションを自身のレーベルから発表しており、そこには『SLANG』収録曲の未発表バージョンなどが多数含まれています。正直、このバージョンだけでエントリー1本分語れるので、次回は続編としてこのデラックス版について紹介したいと思います。



▼DEF LEPPARD『SLANG』
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投稿: 2017 12 06 12:00 午前 [1996年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2017年12月 5日 (火)

DIO『HOLY DIVER』(1983)

ロニー・ジェイムス・ディオがBLACK SABBATH脱退を経て結成した、自身のリーダーバンドDIO。そのディオがサバス時代の盟友ヴィニー・アピス(Dr)、ディオとRAINBOWで活動をともにしたジミー・ベイン(B)、のちにDEF LEPPARDに加入するヴィヴィアン・キャンベル(G)という編成で1983年に制作したのが、DIO名義でのデビューアルバム『HOLY DIVER』です。

展開されているサウンドは、直近のサバスでのアルバム『HEAVEN AND HELL』(1980年)や『MOB RULES』(1981年)をよりメタリックにしたもの。もちろん、ディオが在籍した時代のRAINBOWの作風にも近いものがありますが、基本的にはサバスでの2枚のアルバムでの経験がそのまま活かされていると言っていいでしょう。

また、歌われている歌詞もディオがRAINBOWやサバスで表現してきた、中世のファンタジックな世界観が軸になっており、彼が描いたこういった幻想的な詩世界は後続のHR/HMバンドたちの大きな影響を与えました。一方で、(アートワーク含む)こういったテイストが他ジャンルから揶揄の対象になったのもまた事実で、これを受け入れられるかられないかでDIOの楽しみ方は大きく変わってしまうかもしれません。

とはいえ、そのサウンドやディオのボーカルは歌詞の内容とは関係なく、パワフルな王道HR/HMとして純粋に楽しめるはずです。ディオの演歌じみたボーカルは言うまでもなく、それ以上に特筆すべきなのがヴィヴィアンのよる若々しいギタープレイでしょう。DEF LEPPARD以降しか知らないリスナーにとっては、ここで表現されているアグレッシヴなプレイは驚きの対象かもしれませんが(まあ、最近のDIOトリビュートから始まったLAST IN LINEとかありますけどね)、1曲目「Stand Up And Shout」での前のめりなギターリフはリリースから35年近く経った今聴いてもカッコ良いの一言。続くヘヴィなミドルチューン「Holy Diver」やキャッチーな「Caught In The Middle」でのギターソロは必聴です。

また、楽曲自体が意外とバラエティに富んでいて、優れものばかりなのも本作の特筆すべきポイント。シンセを前面に打ち出した「Rainbow In The Dark」や、アコースティックギターをフィーチャーしたヘヴィメタルバラード「Don't Talk To Strangers」(ヘヴィになってからの展開、およびヴィヴィアンの攻めのギターソロも含め最高です)など、聴きどころ満載なのです。人によって好みはあるのかもしれませんが、基本的には捨て曲なしの1枚だと思っています。だからこそ、DIOは本作を再現するツアーも2000年代半ばに行ったのでしょうし(その模様は、2006年発売のライブアルバム『HOLY DIVER LIVE』で確認できます)。

2010年5月16日にディオが亡くなり、残念ながら今後新作を期待できないDIOですが、だからこそ彼が残した名作の数々をこういう形で後世に伝えていけたらなと……そう思いながら、今夜もこのアルバムを爆音で聴くわけです。



▼DIO『HOLY DIVER』
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投稿: 2017 12 05 12:00 午前 [1983年の作品, Dio] | 固定リンク

2017年12月 4日 (月)

BLACK SABBATH『PARANOID』(1970)

1970年2月にアルバム『BLACK SABBATH』でデビューしたBLACK SABBATHが、早くも同年9月に発表した2ndアルバム。本作でついに全英1位を獲得したほか、アメリカでも最高12位まで上昇。シングル「Paranoid」は全英4位、全米61位を記録しました。さらに、アメリカのみでシングルカットした「Iron Man」も52位にランクインするなど、この手のバンドとしてはなかなかの成績を残しており、アメリカのみで400万枚以上を売り上げる最大のヒット作となりました。

僕がサバスを聴き始めた頃にはすでにオジー・オズボーンロニー・ジェイムズ・ディオもおらず、グレン・ヒューズやらレイ・ギランやらトニー・マーティンやらでフロントマンが二転三転していた頃。ぶっちゃけ、ちゃんとリアルタイムで追い始めたのは1989年の『HEADLESS CROSS』からでした。

なので、最初に聴いたサバスナンバーはオジーがライブアルバムでカバーする「Paranoid」や「Iron Man」から。そういうこともあって、アルバムとしてはもっとも親しみやすい1枚かもしれません。

実際、「War Pigs」「Paranoid」「Planet Caravan」「Iron Man」「Electric Funeral」「Fairies Wear Boots」など多くのHR/HMバンドにカバーされてきた名曲ばかりがズラリと並び、初めて聴いたときもまったく初めてという印象はありませんでした。ただ、曲によってはカバーのほうがヘヴィだったりする楽曲の数々が、オジー・オズボーンという稀代の名シンガーが歌うことで、ヘヴィなギターリフやグルーヴィーなバンドアレンジとは相反して非常にポップに聞こえるから、あら不思議。それが本作を“軽く”させているひとつの要因と言ってしまえばそれまでですが、それは決して悪いことではなく、最終的に大ヒットにつながっているのですから結果オーライではないでしょうか。

また、本作以降バンドのドラッグ癖(主にオジー)が悪化することで、作風もよりヘヴィでダークになっていくので、1stアルバムから続いたブルースベースのハードロックにひと区切りをつけたという意味では分岐点的1枚とも言えるでしょう。

まあとにかく。ダウナーなイントロの「War Pigs」から始まる構成や、3曲目でいきなりアコースティックテイストのサイケデリックナンバー「Planet Caravan」が飛び出したり、そこから続く「Iron Man」の脱力感あふれるイントロなど、のちのドゥームメタルやグランジなどにも通ずる要素がそこらじゅうに散りばめられていて、本作が HR/HMのみならずロックの幅広いサブジャンルに影響を与えてきたことも頷けます。

ちなみに、個人的な推し曲はラストの「Fairies Wear Boots」。オリジナルはもちろんですが、ザック・ワイルドがプレイするバージョンも非常にカッコイイのでぜひ機会があったら聴いてみてください。



▼BLACK SABBATH『PARANOID』
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投稿: 2017 12 04 12:00 午前 [1970年の作品, Black Sabbath] | 固定リンク

2017年12月 3日 (日)

JUDAS PRIEST『REDEEMER OF SOULS』(2014)

2014年夏にリリースされた、JUDAS PRIEST通算17枚目のスタジオアルバム。初の2枚組スタジオアルバムかつ初のコンセプトアルバムだった前作『NOSTRADAMUS』(2008年)から6年ぶりの新作にして、K.K.ダウニング(G)に代わってリッチー・フォークナー(G)加入後初の新作となります。また本作は全米6位と初のトップ10入り、全英12位と『DEFENDERS OF THE FAITH』(1984年)以来30年ぶりにトップ20入りを果たしました。

前作『NOSTRADAMUS』とそれに伴うツアーそして、1980年の『BRITISH STEEL』再現ツアーを経て2011年に最後のツアーを行うことを発表していた彼らですが、そのツアー開始前にK.K.がバンド脱退を発表。結局2011年のツアーにはリッチーが加わり事なきを得たのですが……このときのツアー(2012年2月の来日公演)はZepp Tokyoと武道館の2公演を観たのですが、正直バンドが若返ったなと思ったし、このリッチーという新たな才能を手にした彼らがこのまま活動を終えてしまうのは勿体ないと感じました。

結局、彼らはツアー終了から2年を経てオリジナルアルバムを完成させます。気づけば前作から6年経っていたものの、ここ数年のモヤモヤを払拭するには必要な歳月だったのかもしれません。

ロブ・ハルフォード(Vo)復帰後最初のアルバム『ANGEL OF RETRIBUTION』(2005年)はもちろん今でも良いアルバムだと思っていますが、ロブの衰えが災いしてか、90年代のモダンヘヴィ路線が合わずに中途半端に原点回帰してしまったがために、若干焦点がブレた内容になってしまったのかなと。続く『NOSTRADAMUS』はコンセプトアルバムという前提がなければ、正直個人的にはまったく響かない内容でした。ホント、印象に残ったのは数曲のみでしたし。

ところが。今回の『REDEEMER OF SOULS』は開き直ったかと言いたくなるくらいに、“クラシックJUDAS PRIEST”が展開されている。1曲目の「Dragonaut」の疾走感、そしてシャッフルビートを取り入れた「Redeemer Of Souls」、ツインリードギターが気持ち良い王道HR/HMチューン「Halls Of Valhalla」と、本作で何を表現したいのかがこの3曲だけで十分に理解できてしまうのです。確かに「Redeemer Of Souls」のサビメロの、1オクターブ下で歌うロブの声を聴いて寂しい気持ちにもなりはしますが、基本的には今の彼に合った曲作り、メロディ作りがなされているので、前2作に漂っていた違和感は基本的に感じられない。聴けばすぐに「今、自分はJUDAS PRIESTの新作を体験している!」と実感できる、非常に即効性の強い1枚に仕上がっていると思いました。

ぶっちゃけ、本作で表現されているのは彼らの名盤と呼ばれる『BRITISH STEEL』や『SCREAMING FOR VENGENCE』(1982年)、『DEFENDERS OF THE FAITH』あたりの作風で、そこに若干『PAINKILLER』のテイストも散りばめられている……つまり、上に書いたように誰もが「今、自分はJUDAS PRIESTの新作を体験している!」と感じられるような“わかりやすさ”で構築されているのです。それもこれも、頭の固くなった爺さんたちの中に1人加わった若者、リッチー・フォークナーの影響が大きいのではないか……そう思うのですが、いかがでしょう?

どの楽曲も平均点以上の仕上がりですし、「そうそう、これこそHR/HMだよね!」とガッツポーズを取りたくなる王道ナンバーばかり。基本的に4〜5分台(「Halls Of Valhalla」のみ6分超え)というのも聴きやすさに直結しているのかもしれませんね。

ただ、全13曲で60分超え、しかもデラックスエディションには5曲入りのEPが追加され、トータル90分近くといことで、1曲1曲の印象が弱まってしまうのが難点かな。なんだかんだでツアーではここから数曲しか披露されないわけですし、勿体ないとしか言いようがない……最近の「デラックスエディション商法」(通常盤に加えて、4〜5曲多い仕様を同時発売)には首をかしげることが多いのですが、せめてやるなら「全曲捨て曲なし!」な内容にしてもらいたいものです……。

ということで、年明け2018年春には待望の18thアルバム『FIREPOWER』のリリースも決定したJUDAS PRIEST。本作『REDEEMER OF SOULS』を軽く超える、何度目かの黄金期かと言いたくなるような傑作の完成に期待しています。



▼JUDAS PRIEST『REDEEMER OF SOULS』
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投稿: 2017 12 03 12:00 午前 [2014年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2017年12月 2日 (土)

GRETA VAN FLEET『BLACK SMOKE RISING』(2017)

夏以降、都内のCDショップでよく目にしたジャケット。それがGRETA VAN FLEETに対する第一印象。その音を耳にしたのはもっとあとになってからで、Spotifyでランダム再生していたら、たまたま流れてきたのがこのEPの1曲目「Highway Tune」でした。まあ、皆さんの感想と一緒です。「なんだ、このツェッペリンまんまのバンドは!?」と。

アメリカ・ミシガン州出身の4人組バンドが、2017年春に発表した4曲入りEPが本作。メンバー4人中2人が10代というこのバンド、聴けばいわゆるHR/HMの流れとは異なるシーンから登場したのが伺えます。それは「Highway Tune」のMVに映るメンバーの姿、ルックスからもご理解いただけるんじゃないでしょうか。

彼らは登場する場所やタイミングさえ違えば、アイルランドのTHE STRYPESのようになっていたかもしれない。そう、表現方法こそ異なるものの、そのルーツは意外と近いものがあるんじゃないかと思うのです。それが古き良き時代のブルースやソウル、R&Bであり……ただ、GRETA VAN FLEETの場合は場所柄か、ガレージロックやパブロックからの洗礼を受けていない。その違いなんですよね。

もちろんLED ZEPPELINからも影響を受けているでしょう。しかし、そのままマネするわけではない。そのツェッペリンのルーツを聴いていたら、気づけば自分たちの曲も彼らに近づいていた。ホント、そんな単純な話なのかもしれません。

でも、彼らは単なるツェッペリンフォロワーではない。2017年によみがえったツェッペリンと言いたくなるような「Highway Tune」にみなぎる躍動感と、ジョシュ・キスカ(Vo)の21歳とは思えない存在感の歌声。確かにこの1曲のインパクトはものすごいものがあるけど、続く「Safari Song」は“ツェッペリン meets サザンロック”的な香があり、THE BLACK CROWESっぽいとも言える。3曲目「Flower Power」のアコースティックテイストなんて、まさにTHE BLACK CROWES寄りですしね。そしてラストのタイトルトラック「Black Smoke Rising」は、フォーマットこそロックですけど、もっとソウルの香りが強い。つまり、そういうことなんですね。

ハードロックサイドから語ろうとするならば、当サイト的にはここまでに挙がってきたアーティストに加えBE THE WOLFKADAVARRIVAL SONSあたりが好きな人なら気に入るんじゃないでしょうか。



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投稿: 2017 12 02 12:00 午前 [2017年の作品, Greta Van Fleet] | 固定リンク

2017年12月 1日 (金)

LED ZEPPELIN『LED ZEPPELIN II』(1969)

1969年1月にアルバム『LED ZEPPELIN』でデビューを果たしたLED ZEPPELINが、同年10月に早くも発表した2ndアルバム。前作は全英6位、全米7位止まりでしたが、続く本作でついに英米で1位を獲得。シングルカットされた「Whole Lotta Love」も全米4位を記録、カップリングの「Living Loving Maid (She's Just A Woman)」までもが全米65位まで上昇し、現在までにアメリカのみで1200万枚以上を売り上げた、まさしく大ヒット作となりました。

ビギナーからの「ツェッペリンでまず最初に聴くならどのアルバム?」という質問は、コアなロックファンになればなるほどよくされたのではないでしょうか。そしてその際に多くの人が、必ず「2ndか4枚目」という無難な答えをしていたはずです。事実、僕自身も最初に聴いたツェッペリンのアルバムは本作でしたから(当時レンタル店に2ndと4th、ライブ盤しかCDを置いておらず、2nd以外はレンタル中だったのでこれを借りたのでした)。

ブルースを基盤にしたハードロックという点においては前作のほうが初期衝動性が高いのかもしれませんが、続く本作ではその衝動をより高い完成度にまで昇華させた、一寸の隙もない完全無敵のハードロックアルバムに仕上がっています。1曲目の「Whole Lotta Love」から、冒頭のジミー・ペイジによるギターリフとロバート・プラントによるパワフルなボーカルが冴えまくり、中盤のサイケデリックなインストパートと続くギターソロでのタイトなドラミングを聴けばいかにジョン・ボーナムというドラマーが素晴らしいかを理解できるはずです。

さらに「What Is And What Should Never Be」や「The Lemon Song」での強弱を生かしたドライブ感あふれるジョン・ポール・ジョーンズのベースプレイ、「Thank You」での彼のオルガンプレイなど、本当に聴きどころが多い1枚です。

アルバム後半もロック界屈指の名ギターリフを含む「Heartbreaker」や、本作中もっともポップな「Living Loving Maid (She's Just A Woman)」、アコースティックギターを使ってうまく強弱を表現した「Ramble On」、ギターとドラムのためにあると言っても過言ではないインスト「Moby Dick」、プログレッシヴなブルースロック「Bring It On Home」と、とにかく捨て曲なし。全体的に前作以上にキャッチーでメジャー感が強まっているのは、当時ノリノリでイケイケだったバンドの状態を表しているかのようですね。

……ん、誰ですか、ブルースの名曲からパクりまくりじゃん!とか言ってるのは? それ間違ってないけど謹んでください! 確かに既存のブルースナンバーからの引用が多いのがツェッペリンの(良くも悪くも)個性ではあるのですが、それも「サンプリング文化のはしり」と考えれば納得……でき……いや、なんでもないです。

冗談はさておき。初めてこのアルバムと出会ってから今年で30年。す聴き飽きてしばらく距離を置いていた時期もありますが、こうやって久しぶりに引っ張り出して聴くと、やっぱり良いなと思える。いろいろ言われながらも、やっぱりロックやHR/HMにとってひとつのお手本となるアルバムなんですよね。



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投稿: 2017 12 01 12:00 午前 [1969年の作品, Led Zeppelin] | 固定リンク