LIMP BIZKIT『THREE DOLLAR BILL, Y'ALL$』(1997)
1997年夏にリリースされた、LIMP BIZKITのデビューアルバム。このバンドのブレイクによりRAGE AGAINST THE MACHINEが「(ラップメタルという括りで)一緒にされたくない」とリンプの存在を否定したり、あるいはニューメタルと揶揄された後続たちに道を切り開いた張本人などと攻撃されたり、いろいろ大変な目に遭っているのですが、このデビュー作と続く2ndアルバム『SIGNIFICANT OTHER』(1999年)は誰が何と言おうと傑作中の傑作。この事実だけは変えようがありません。
ロス・ロビンソンのプロデュース、アンディ・ウォレスのミキシングという、ヘヴィロック/ニューメタルのお手本的な組み合わせにより完成した本作は、メタリックなバンドサウンドにヒップホップ的手法(DJ/サンプリングの導入や、ファンク的なハネたリズム感など)という意味では確かにRAGE AGAINST THE MACHINEの延長線上にあるのかもしれませんが、それはあくまで“サウンド的”に近いというだけ。歌われている内容や姿勢はまったく別モノなので、本当は比較対象ではないんですけどね。それはKORNもしかり。むしろ、そういったシリアスな姿勢とは相反する、非常にパーティロック的なカラーを前面に打ち出したからこそ、最終的に揶揄の対象になってしまったんでしょうね。
とはいえ、フレッド・ダースト(Vo)のボーカルや佇まいは(特にこの頃は)カリスマがかってましたし、ウェス・ボーランド(G)のギターも驚異の沙汰かと言わんばかりに暴れまくっているし、バンドサウンドもジャズの香りがしたりでかなり高度だったりする。どこかサイケデリックな香りもするし、ヒステリックかつカオティックなアレンジと演奏は、聴いているだけでテンションが上がる。うん、無条件にカッコいいじゃないですか。
彼らはKORN主催の移動フェス『FAMILY VALUES TOUR』に参加したことで知名度を上げ、本作からシングルカットされたジョージ・マイケルのカバー「Faith」がMTVでヘヴィローテーションされたことでスマッシュヒット。アルバムも全米22位まで上昇し、最終的に200万枚を超えるヒット作となりました。そういった地道なヒットがあったからこそ、続く『SIGNIFICANT OTHER』がいきなり全米No.1を獲ったわけです(そして、その1位に皆納得したという)。その「Faith」のアレンジも最高にイカしてるし、けどそれ以上にオリジナル曲はもっとイカしてる。その後腐るほど登場したこの手のバンドとは比較にならない完成度ですよ。
にしても、もう本作リリースから20年経ってしまったんですね……ここから時代が何周もしていることに、改めて驚かされます。けど、色褪せない1枚。まだ聴いたことがないのなら、悪いことはいいません。頭を空っぽにして、爆音で楽しんでください。

▼LIMP BIZKIT『THREE DOLLAR BILL, Y'ALL$』
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