SOUNDGARDEN『ULTRAMEGA OK』(1988)
1988年10月31日にリリースされたSOUNDGARDENの1stアルバム。日本盤は1994年3月、バンドの初来日にあわせて初CD化されています。
オリジナル盤はSST Recordsからのリリースですが、2017年に発売されたジャック・エンディノによるリミックス&1987年録音のデモ音源追加によるリイシュー盤からはSub Pop Recordsから発売されています。特に日本盤はオリジナルのアートワークが採用されており、シャープになった音像とともにカッコ良さが増したような印象を受けます(インディーズバンドらしいチープなオリジナルジャケットも好きですけどね)。
メジャー進出第1弾となる次作『LOUDER THAN LOVE』(1989年)の1年前に発表された本作は、クリス・コーネル(Vo, G)、キム・セイル(G)、ヒロ・ヤマモト(B, Vo)、マット・キャメロン(Dr)という編成でレコーディング。初期の代表曲といえる「Flower」からヘヴィな音像でスタートし、アグレッシヴなアップチューン「All Your Lies」、重苦しいミドルチューン「Beyond The Wheel」など、のちに本格的開花する“SOUNDGARDENらしさ”はすでにこの時点でほぼ完成の域に達しつつあることが確認できます。
クリスのハイトーンボイスも終始絶好調。キムのギターもヒロ&マットのリズム隊が繰り出すサウンドもうねりまくっており、カッコいいったらありゃしない。でも、これを聴いて彼らを“グランジ”という枠で括るのはちょっと違和感がありゃしないか?と思うのは自分だけでしょうか。
確かに「Mood For Trouble」や「He Didn't」あたりにはその香りを感じるものの、ヒロがボーカルをとる「Circle Of Power」やハウリン・ウルフのヘヴィロック風カバー「Smokestack Lightning」、「Nazi Driver」「Head Injury」あたりからはグランジというよりはハードコアパンクからの影響が伝わってきます。もちろん、それらがグランジのルーツになっているのは間違いない事実ですが、どうにもこうにもクリスがハイトーンで歌う以上はハードロック的なものに聴こえてしまう。その個性、クセの強さがSOUNDGARDENを初期の時点で特別なものへと確立させていた、その事実を確認できるという意味において、本作の果たす役割は非常に大きなものがあるのではないでしょうか。
にしても、2017年リイシュー盤の音質のクリアさには改めて驚かされます。それもあってか、オリジナル盤の音圧やチープさに慣れてしまっていた自分にとって、このリイシュー盤は“ほぼ新作”みたいな感覚で接することができたんですよね。現在ストリーミングなどで耳にすることができるのはこちらのリイシュー盤なので、「オリジナル盤を知ってこそ真のファン!」なんていう奇特な方はぜひ中古でSST盤を探してみてください。その違いに驚くはずなので(笑)。
なお、リイシュー盤に収められたボーナストラック(1987年レコーディング)は本アルバムのレコーディングセッションからの初期バージョンのようで、「Incessant Mace」に関してはアルバム本編の完成版(6:20程度)に対してロングバージョンデモ(7:50)も用意されているので、聴き比べてみても面白いかもしれません。また、どの曲もアレンジを煮詰める前のスタジオライブ的な側面もあるので、バンド最初期のエネルギーに満ちた演奏を存分に楽しめるはずです。
▼SOUNDGARDEN『ULTRAMEGA OK』
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