2017/08/17

DEAD CROSS『DEAD CROSS』(2017)

にしても、すごいバンドが誕生したものです。FAITH NO MOREのマイク・パットン(Vo)、元SLAYER/現SUICIDAL TENDENCIESのデイヴ・ロンバード(Dr)、THE LOCUST/RETOXのジャスティン・ピアソン(B)、同じくRETOXのマイク・クライン(G)というメタル/オルタナ/ハードコア界のそうそうたるメンツが一堂に会したスーパーバンド、DEAD CROSS。彼らのデビューアルバム『DEAD CROSS』が8月上旬にリリースされました(ここ日本では同月23日に発売)。

もともと2015年に結成された際にはTHE LOCUSTのゲイブ・セルビアンがボーカルでしたが(THE LOCUSTではドラマー)、翌2016年に脱退。新たにパットン先生が加入し、現在のサウンドスタイルが確立されたとのことです。

おそらくパットン先生が加わるまでは、意外とストレートなハードコアが展開されていたんだろうなと思うのですが、このアルバムで聴けるサウンドは単なるハードコアとは言い難い、非常に複雑怪奇なもの。カオティックハードコアとでも呼べばいいのでしょうか。単なる暴力的なエクストリームサウンドというよりも、どこか知的さがにじみ出た、まさしくカオスな世界観が展開されています。

パットン先生のボーカルはFAITH NO MORE以上に振り切れたものもあれば、そこから一転して冷静さを感じさせるものもあり、FAITH NO MOREやパットン関連作品愛好家なら一発で気にいるはず。ロンバードのドラムもオープニングの「Seizure And Desist」からツーバス&ブラストビート全開(この曲のボーカルオーケストレーションも最高)。SUICIDAL TENDENCIES『WORLD GONE MAD』(2016年)でのプレイよりも、SLAYERでパンキッシュな楽曲を叩くときのプレイに近いイメージと言えば共感いただけるでしょうか。要するに、ひたすらカッコイイということです。思えばパットンとロンバードは過去にFANTOMASでも活動をともにしたことがあるので、相性は悪くないんでしょうね。

ギターやベースに触れずじまいですが、決して空気なわけではないですよ。このドラムにこのベース、このギターという絶妙なプレイを聴かせてくれていますし。ただ、ここにパットン先生の声が乗ると……全部持っていっちゃうんですよね。それだけアクが強いというか唯一無二というか。まぁまずは、頭を空っぽにして楽しんでください。アレンジがどうだとか、この曲のここがこうだとか、BAUHAUS「Bela Lugosi's Dead」のカバーのアレンジがどうだとか、そういう小難しいことは数回無心で楽しんだあとにでも。ね?



▼DEAD CROSS『DEAD CROSS』
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2017/08/13

V.A.『SINGLES: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』(1992/2017)

1992年秋に全米公開された映画『シングルス(SINGLES)』のサウンドトラックアルバム。日本では先にサントラがリリースされ、映画は翌1993年春に公開されました(単館ではなかったものの公開劇場数は少なく、どこも小規模劇場での公開だったと記憶しています)。

シアトルを舞台にしたラブストーリーなのですが、当時のシアトルといえばグランジブームまっただ中。主人公のひとりであるクリフ(マット・ディロン)がロックバンドをやっていることなどもあり、劇中にはALICE IN CHAINSやクリス・コーネル(SOUNDGARDEN)、エディ・ヴェダー(PEARL JAM)なども登場します。

サントラは映画公開に先駆けて1992年6月にUS発売(日本では9月発売)。内容は当時人気のグランジバンドやシアトル出身のレジェンドたちの楽曲で大半が占められ、全13曲中11曲が当時未発表曲でした。リードトラックとしてALICE IN CHAINSの新曲「Would?」(同年9月発売の2ndアルバム『DIRT』にも収録)が公開されるやいなや、大反響を呼んだのをよく覚えています。

ALICE IN CHAINS、PEARL JAM、SOUNDGARDEN、MUDHONEYSMASHING PUMPKINSといった当時ど真ん中のバンドから、SCREAMING TREES、MOTHER LOVE BONEというグランジ黎明期のバンド、THE REPLACEMENTSのポール・ウェスターバーグ、HEARTのアン&ナンシー姉妹の別ユニットTHE LOVEMONGERS、ジミ・ヘンドリクスといったレジェントたちまで。さらにはクリス・コーネルのソロ曲まで含まれているのですから、当時のグランジシーンを振り返る、あるいはシアトルのロックシーン(メタルは除く)に触れるという点においては非常に重要な役割を果たすコンピレーションアルバムだと思います。

そのサントラ盤が、発売から25年を経た2017年に、未発表テイクや劇中で使用されたもののサントラ未収録だった楽曲を集めた2枚組デラックスエディションで再発。ディスク1は当時のままで、ディスク2にその貴重な音源がたっぷり収められています。

ここには、マット・ディロンが劇中で所属していたバンド・CITIZEN DICKの楽曲「Touch Me, I'm Dick」(MUDHONEY「Touch Me, I'm Sick」のパロディカバー)や、のちにSOUNDGARDENの楽曲として発表される「Spoonman」のクリス・コーネルソロバージョン、ALICE IN CHAINやSOUNDGARDENのライブ音源、TRULYやBLOOD CIRCUSの楽曲、マイク・マクレディ(PEARL JAM)のソロ曲などを収録。おまけ感の強いものから本気で貴重なテイクまで盛りだくさんの内容で、ここまでを含めて映画『シングルス』をしっかり振り返れるのかな?と改めて思いました。

映画自体は観ても観なくても大丈夫ですが(笑)、1992年という時代の節目を追体験したいのなら、NIRVANAやPEARL JAMのオリジナルアルバムだけではなく、ぜひ本作も聴いていただきたいと、あの当時をリアルタムで通過したオッサンは強く思うわけです。サントラと思ってバカにしたら、きっと痛い目を見るよ?

ちなみに、本作のデラックスエディションが発売されたのが5月19日(海外)。クリス・コーネルが亡くなったのがその前々日の17日ということもあり、真の意味での“グランジの終焉”を実感させる1枚になってしまったことも付け加えておきます。



▼V.A.『SINGLES: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』
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2017/08/12

EUROPE『THE FINAL COUNTDOWN 30TH ANNIVERSARY SHOW: LIVE AT THE ROUNDHOUSE』(2017)

1986年に発表されたEUROPEの3rdアルバムにして最大のヒット作『THE FINAL COUNTDOWN』のリリース30周年を記念して、2016年秋にヨーロッパで行われたアニバーサリーツアーから、11月12日のロンドン公演を収録したライブ作品。国内盤、輸入盤ともにDVD+2CD、Blu-ray+2CDというフォーマットで発売(音源パートのみ配信版も)。少々お高いですが、名作が1曲目からラストまで完全再現された、ここ日本では実現しなかったツアーの模様をたっぷり楽しむことができます。

本稿ではこのうち、ライブ音源のほうにスポットを当てて取り上げたいと思います。

ライブは2部構成となっており、前半12曲(CDでいうディスク1)が現時点での最新アルバム『WAR OF KINGS』(2015年)を、曲順はバラバラだけど全曲演奏(日本盤ボーナストラックとして追加収録されたインスト曲「Vasastan」含む)。で、後半11曲(CDディスク2)が『THE FINAL COUNTDOWN』完全再現となっています。

本作と通して久しぶりに『WAR OF KINGS』の楽曲に触れたのですが……音源よりもライブのほうが生き生きしているように感じました。再結成後のEUROPEは常に2nd『WINGS OF TOMORROW』(1985年)や3rd『THE FINAL COUNTDOWN』の再現およびそれに近いサウンドを求められ続けており、非常に不幸だなと感じているのですが……個人的には再結成後に発表された7th『SECRET SOCIETY』(2006年)や続く8th『LAST LOOK AT EDEN』(2009年)はかなりの良作だと思っているので、残念でなりません。

復帰一発目『START FROM THE DARK』(2004年)からもわかるように、再結成後のEUROPEのベースにあるのは、80年代のRAINBOWDEEP PURPLEだと思われます。その基本路線はそのままに、時にモダンに、時にプログレッシヴにと味付けを変えていますが、『WAR OF KINGS』では一周回って『START FROM THE DARK』でやりたかったことを新たなプロデューサーのデイヴ・コッブ(RIVAL SONSなど)を迎えて再構築した原点回帰の1枚だと思っていました。

改めてこのライブ音源を聴いて、その思いは間違ってなかったと確信できました。確かに80年代のジョーイ・テンペスト(Vo)と比べたら高音が出てないし、歌メロも平坦かもしれない。ジョン・ノーラム(G)のギターワークもレイドバックしすぎて面白みがないと感じるかもしれない。だけど、この歌声と、どこか“らしさ”を感じさせる歌メロを聴くと、僕はこのEUROPEも嫌いになれないし、むしろ(個人的趣味のせいもあり)この路線を愛せてしまうのです。

まぁ『WAR OF KINGS』スタジオアルバム自体については、別の機会に語るとして……。

気になる『THE FINAL COUNTDOWN』完全再現ですが、これはもう……言うまでもないでしょう。最近演奏されていないアルバムB面曲(「On The Loose」とか「Love Chaser」とか)が改めて聴けた喜びと、この慣れ親しんだ曲順。そして、何百万回聴こうが、半ばギャクと化そうが、「The Final Countdown」のイントロリフを聴けば、アガらずにはいられないのです。これは10代で80年代をリアルタイム通過したリスナーの性なのです。うん、今でも全曲歌えるもんな。

ダウンチューニングが気になるとか、ライブ前半パート(『WAR OF KINGS』全曲)との落差が気になるとかいろんな声があると思うけど、これが2017年現在のEUROPE。10月には早くも最新オリジナルアルバム『WALK THE EARTH』もリリースされるようで、こちらもおそらく『WAR OF KINGS』路線であることは間違いないと思うけど、それでも僕はこれからもEUROPEの新作を、再結成後の諸作とともに聴き続けると思います。



▼EUROPE『THE FINAL COUNTDOWN 30TH ANNIVERSARY SHOW: LIVE AT THE ROUNDHOUSE』
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投稿: 2017 08 12 12:00 午前 [2017年の作品, Europe] | 固定リンク

2017/08/11

ACCEPT『THE RISE OF CHAOS』(2017)

ACCEPT通算15枚目、再々結成後4枚目のスタジオアルバム。

現在のマーク・トーニロ(Vo)を含む編成としては、2010年の『BLOOD ON THE NATIONS』以降、2年おきに新作を発表していましたが、前作『BLIND RAGE』(2014年)発表後に再々結成後から不動だった布陣からハーマン・フランク(G)とステファン・シュヴァルツマン(Dr)が脱退(2人はそのまま、DESTRUCTIONのシュミーアと結成したPANZERの活動に専念するも、ハーマンはのちにPANZERも脱退)。新たにウヴェ・ルイス(G)とクリストファー・ウィリアムズ(Dr)を迎えツアーを続けます。

本作はマーク、ウヴェ、クリストファー、そしてオリジナルメンバーのウルフ・ホフマン(G)、ピーター・バルテス(B)の新編成で、過去3作同様にアンディ・スニープをプロデューサーに迎え制作。前作発表後のツアーを現編成で続けたことも幸いし、バンドのとしての一体感も非常に良い状態でレコーディングに臨めたのではないでしょうか。

サウンドは、どこをどう切り取ってもACCEPT以外の何者でもない、男臭いど直球のパワーメタル。トニーのボーカルは当初から前任のウド・ダークシュナイダーのそれに瓜二つだったので、古くからのファンが聴いても違和感なく楽しめるはずです。

楽曲もすべて4〜5分台でコンパクトにまとめられており、疾走感のある楽曲とミディアムテンポのヘヴィかつキャッチーな楽曲をバランス良く配置。おどろおどろしいイントロのファストチューン「Die By The Sword」や親しみやすいメロディを持つミドルナンバー「Koolaid」、ツーバス連打のパワーメタル「No Regrets」、自身を皮肉ったタイトルと王道のACCEPTサウンドの相性抜群の「Analog Man」、ドラマチックな作風の「What's Done Is Done」「Worlds Colliding」など、印象的な楽曲がずらりと並びます。

最初に聴いたときは「あれ、ちょっと一番地味かな?」と思ってしまいましたが、聴き返すと実はそんなことまったくなく、上記の楽曲以外にも良曲が豊富な内容であることに気づかされ、実は前作『BLIND RAGE』以上の良作だと実感させられました。さすがの一言。

確かに派手さは皆無ですが、老舗が守り続ける伝統の味がここには存在する。いろんな味を楽しみまくっている間に、ホンモノの味を一瞬忘れそうになりましたが、これこそ王道のヘヴィメタルそのもの。続けて楽しみたい1枚です。本作発表から約1ヶ月後の9月には、もう来日公演でこれらの曲をナマで楽しめるのだから、ぜひとも本作を聴いて会場に足を運びたいところですね。



▼UFO『WALK ON WATER』
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投稿: 2017 08 11 12:00 午前 [2017年の作品, Accept] | 固定リンク

2017/08/09

REX BROWN『SMOKE ON THIS...』(2017)

PANTERA、元DOWNなどで活躍したベーシスト、レックス・ブラウンによる初のソロアルバム。Wikiなどを目にすると、もともとはジャズベーシストで、メタル以外の音楽にも精通しているようで、それは本作の随所からも伺えます。

本作ではベースのみならず、ボーカルとギターにも挑戦。もちろんソングライティングにも携わっており、大半の楽曲をナッシュビル出身のギタリスト/ソングライターのランス・ハーヴィルと共作しています(全11曲中2曲のみレックス、ランスとプロデューサーのキャブレ・シャーマンによる共作)。

さて、気になるサウンドですが、PANTERAやDOWNから想像できるようなモダンなヘヴィメタルやダウナーなストーナーロックとは一線を画する、非常にオールドスタイルで土着的なハードロックが展開されています。PANTERAというとどうしても“BLACK SABBATH meets アメリカ南部サウンド”を想像するかと思われますが、確かに南部サウンドはここにも健在。しかし主軸になっているのはサバスよりもLED ZEPPELIN、さらにZZ TOPあたりからの影響も見え隠れします。

曲自体はツェッペリンのリフワークやサイケデリック臭漂うミディアムチューン、さらにZZ TOPっぽい“ハードロック寄りのサザンロック”、カントリーテイストのサイケバラードなどが主体。そういった要素に低音を効かせたギターリフと、ぶっきらぼうでしゃがれ声のレックスのボーカルが合わさることで、どこか懐かしさを覚えるのですが……ってこれ、要するにザック・ワイルドじゃん!と(笑)。そう考えたらとても腑に落ちました。ザックからサバス/オジー色を薄めると、こうなるんだろうな。

ただ、残念ながら本作は“ギター”アルバムではないかなと。派手なギターワークも、鳴った途端に瞬殺されるようなギターソロもここにはない。ランスはあくまでカントリーサイドからやってきて、自分の庭でギターを弾きまくる程度。レックスが過去に在籍したバンドを想定して聴いたら、肩透かしを喰らうかもしれません。

とはいえ、全体的には非常によくできた“枯れた”ハードロックアルバムだと思います。レックスが今後もこの路線を進んでいくのかは定かではありませんが、さらに先に進むためにはこのタイミングに自身のルーツを吐き出すことに意味があるのかなと。もしかしたら、今後の活動次第で本作の評価は大きく変わるかもしれませんね。

個人的には、気楽に聴けるハードロック作品として気に入っています。ザック・ワイルドのアーシーサイドが好きな人にはうってつけかも?



▼REX BROWN『SMOKE ON THIS...』
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投稿: 2017 08 09 12:00 午前 [2017年の作品, Down, Pantera, Rex Brown] | 固定リンク

2017/07/08

STONE SOUR『HYDROGRAD』(2017)

SLIPKNOTのフロントマン、コリィ・テイラー(Vo)による別バンド、STONE SOURの4年ぶり、通算6枚目のスタジオアルバム。前々作『HOUSE OF GOLD & BONES - PART 1』(2012年)および前作『HOUSE OF GOLD & BONES - PART 2』(2013年)が連作かつコンセプチュアルな作品だったこともあり、無駄に小難しさを与えてしまった印象もなきにしもあらずですが、そういうこと抜きにしてもよくできたヘヴィロックアルバムだったんですけどね。ただ、個人的には半年というスパンで2枚のアルバムを出す理由がいまいち掴めなかったというか。だったら2枚同時か2枚組にしてほしかったなと。1年ぐらい間が空けば1枚1枚をじっくり楽しめたと思うんですが、そこまで体に馴染む前に新しいのが出ちゃって、結局そこまで両方楽しめなかったというのが本音なので。

で、STONE SOURとしてはその後、HR/HMの名曲たちをまんまカバー(というかほぼコピー)した2枚のEP(『MEANWHILE IN BURBANK…』『STRAIGHT OUTTA BURBANK…』)を2015年に発表し、そこから1年半経った今年6月末にこの『HYDROGRAD』というオリジナルアルバムを発表したわけです。

えーっと、最初に聴いたときはとにかく驚きました。いや、驚いたというよりもぶったまげた、と言ったほうが正しいか。良い意味で予想を裏切ってくれた、清々しいまでにまっすぐなHR/HMアルバムなんですよこれが。

SLIPKNOTと比べれば存分にメロディアスなんだけど、やはり餅は餅屋というか、特に前2作にはヘヴィさや重苦しさがつきまとっていたわけです。ところが、HR/HMの名曲コピーに勤しんだこともあり、今作では自らのルーツに立ち返ったと言わんばかりに、シンプルでど直球なストリングスタイルのHR/HMを聴かせてくれるんです。もちろんアレンジにおける味付けには現代的なフレイバーが散りばめられていますが、それは許容範囲内。30〜40代のリスナーが進んで楽しめる要素が芯にしっかりあるから、問題なく楽しめるわけです。

コリィの歌唱スタイルやメロディの運び方、そしてメロディアスかつフラッシーなギタープレイ含め、ここにあるのは間違いなく80年代の黄金期の影響下にあるHR/HM。スタート時こそ90年代のオルタナロック〜グランジからの影響が強かったものの(もちろん本作にもその要素はしっかりありますが、それ以上に王道色のほうが強い)、ここで一気に開き直ったというか先祖返りしたというか。ホンモノが求められるこんな時代だからこそ、彼らのようなバンドがこういう音を鳴らしてくれるのは本当に嬉しい。これを聴いたからって、別にSTONE SOURがNICKELBACKになったとは誰も思わないって(笑)。

70分近くもある大作(全15曲入り)ですが、珍しく最後まで飽きずに楽しめる1枚でした。しかも日本盤にはさらにボーナストラックとして、VAN HALEN「Unchained」のカバーを追加。これも先のカバーEPの名残りですね。おまけとしては十分。ぜひ日本盤で購入することをオススメします。



▼STONE SOUR『HYDROGRAD』
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投稿: 2017 07 08 12:00 午前 [2017年の作品, Slipknot, Stone Sour] | 固定リンク

2017/07/07

RADIOHEAD『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』(2017)

今から20年前の1997年6月(本国イギリスで。日本では5月末に先行リリースされています)、RADIOEHADが『OK COMPUTER』というアルバムを発表してから今年で20年。おそらくこの20年間で、自分がもっとも再生したアルバムが本作であることは間違いないと思います(次点がMANIC STREET PREACHERSの『EVERYTHING MUST GO』かな。まぁこちらは前年1996年発売だけど、リリース当初は親しめず、しばらく経ってからドハマりしたので)。

『OK COMPUTER』については今から16年前、2001年6月にすでに紹介しているので、改めて書くまでもないかなと。あのとき、散々悩みながら「どうしてこのアルバムがすごいのか?」について書いたので。

で、今回紹介するのは、20周年を記念して先月発売された2枚組アルバム『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』について。これは『OK COMPUTER』をリマスタリングしたディスク1と、当時のシングルにバラして収められた『OK COMPUTER』制作時のアウトテイクと、音源としては初収録となる「I Promise」「Man Of War」「Lift」の3曲を含む11曲入りのディスク2から構成されています。

ディスク1の内容については改めて書くまでもないですが……そう、書くまでもないのに、そしてこれまでに何百回と聴いてきたのに、バカ正直に再生してしまうという(しかも「Airbag」から「The Tourist」までじっくり聴き入ってしまうという)。久しぶりに大音量で聴いてみたら……やっぱり良いアルバムでした。と同時に、このリマスター盤がとてもえげつない。音の分離がかなり良くなっているためか、オリジナル盤よりもきめ細やか。言い方は悪いけど、見たくなかったものまで見えてしまうくらいの生々しさを感じさせる仕上がりなのです。恐ろしい。

で、問題のディスク2。当時のライブでも披露されていた「I Promise」「Man Of War」「Lift」の3曲は、ファンならご存知のナンバー。特に「Lift」に関しては何度も「ついに正式レコーディングされるか?」という噂が上がり、昨年の最新作『A MOON SHAPED POOL』の際にもそんな噂が出たくらい、ファンの間では音源化が熱望されていた1曲なのです。

『OK COMPUTER』という完成され尽くした傑作のあとに、これらの未発表曲やアウトテイクをがっつり聴くと……このディスク2の方向性って、要はその前の2ndアルバム『THE BENDS』(1995年)からの単なるステップアップ作だったんだなと実感させられるわけです。

そういえばRADIOHEADは1枚目のアルバム『PABLO HONEY』(1993年)から『THE BENDS』に取り掛かった際にも、一度作った多くの新曲を“破棄”して新たに作り直しているんですよね。そこで“破棄”された楽曲群が『MY IRON LUNG EP』(1994年)や、『THE BENDS』からのシングルのカップリングに収められたわけです。ただ、『THE BENDS』のときと『OK COMPUTER』が違ったのは、『THE BENDS』の頃はツアーなどで時間がない中で納得にいかないものを作ってしまったからであって、『OK COMPUTER』の頃はある程度納得できるものを一度作ってから「もっといけるんじゃないの?」とさらに一歩踏み込んだ。その違いはすごく大きいと思うんです。

「I Promise」も「Man Of War」も「Lift」も、RADIOHEADが好きな人なら絶対に気にいる、彼ら以外の何者でもない良曲だけど、やっぱり『OK COMPUTER』という閉鎖的で神経症気味な作品集には似合わないんですよ。こういう形で聴かされると、それはより強く実感させられるわけで、やっぱり当時の彼らのジャッジは正しかったんだなと納得してしまいます。もし、ディスク2側の方向で進めていたら、きっとここまで大きくなってなかっただろうし、バンド自体もここまで長く続いていたかどうか……。

それにしても、ディスク2を聴くとTHE BEATLESからの影響がいかに強いかが伺えますね。本編における「Paranoid Android」における「Happiness Is A Warm Gun」リスペクトぶりだけじゃなく、アウトテイクからもポール・マッカートニー的センスが伺えたりしますし。そこからPINK FLOYD的方向が加わったことで今の『OK COMPUTER』が完成した……なんていうのは大袈裟かしら。

というわけで本作。『OK COMPUTER』が大好物な方なら間違いなく楽しめる、歴史的価値の高い作品集だと思います。またライト層は、ディスク2を「『THE BENDS』と『OK COMPUTER』の間に、本来発売されるはずだった幻の2.5枚目アルバム」という位置付けで聴くと、スッと入っていけるのではないでしょうか。なんにせよ、『OK COMPUTER』とあわせて聴いておくべき1枚だと思います。だって、ミュージックビデオまでしっかり制作されちゃってるんだから(しかも2本も)。



▼RADIOHEAD『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』
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2017/07/06

SLOWDIVE『SLOWDIVE』(2017)

間にKASABIANの新作を挟んだけど、再び「20年前後ぶり」の新作の話題に。

RIDEのニューアルバム『WEATHER DIARIES』が発売されるちょっと前に、SLOWDIVEの通算4作目にあたるスタジオアルバムも発表されました。題して『SLOWDIVE』。前作『PYGMALION』(1995年)から実に22年ぶり……笑うしかないね。まぁ前作リリース後に解散してしまったんだからしかたないんだけど。そんな彼らも2014年に再結成。同年にはフジロックで奇跡の初来日を果たしたんだけど……うん、あんまりいい思い出がない(苦笑)。

それだけに、このニューアルバムにもそこまで過度な期待はしてなかったんですが……どこからどう聴いてもSLOWDIVE以外の何者でもない、我々が求めるサウンドそのものでした。

もちろん単なる過去の焼き直しではないし、そもそも彼らはアルバムごとにそのスタイルを少しずつ変化させてきたので、本作はそのどれにも当てはならないとも言えるし、逆にどの要素も持ち合わせているとも言える。不思議なんだけど、ボーカルが乗った瞬間に「ああ、SLOWDIVEだわ(笑)」と妙に納得してしまう。それだけ強い個性と説得力がある音なのかなと、何度か聴き返して感じました。

耽美さは変わらずで、ディレイとディストーションから派生する全体を覆うサウンドエフェクト(幕がかかったようなミキシング)のせいで、その耽美さはより強度を増しています。楽曲も下手に難しいことをやろうとせず、シンプルで親しみやすいメロディを、よりシンプルなバンドアンサンブルで聴かせようとしている。結果、その世界に入っていきやすいんだけど、入ってからがさあ大変。底なし沼のように果てしなく広大な宇宙空間に産み落とされたような、なんとも言えない居心地の良さを(それでいて、ある種の居心地の悪さも)感じる。ああ、気持ち良い(気持ち悪い)……これがクセになって、何度も聴き返したくなるんです。

シューゲイザーというよりも、ドリームポップという表現が近い本作は、間違いなくか過去の名作群に並ぶ傑作のひとつ。先の2017年上半期ベストからは選外としましたが、限りなくベスト5に近いポジションの1枚です。たぶん今だったら、確実に5枚に入れてるだろうしね。

にしてもジザメリといいRIDEといい、このSLOWDIVEといい……みんな良くも悪くも“歳を取らない”んだよなぁ。シューゲイザーってそういう効果があるのかね。もしくは、そうだからこそ鳴らせる音というか。聴いてるこっちは10〜20代から40代になってるわけで、そりゃ居心地の悪さも感じるわけですよ(苦笑)。



▼SLOWDIVE『SLOWDIVE』
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投稿: 2017 07 06 12:00 午前 [2017年の作品, Slowdive] | 固定リンク

2017/07/05

KASABIAN『FOR CRYING OUT LOUD』(2017)

前作『48:13』(2014年)から3年ぶり、通算6枚目のオリジナルアルバム。先行シングル「You're In Love With A Psycho」のメジャー感が強いポップさに若干引きつつも、アルバムは別に全体がそういう作風というわけではなく、従来さしさもありつつ新しい挑戦もありで、思う存分楽しめました。

ブリットポップ以降のUKロックの系譜をしっかり引き継ぎつつ、現代的なヒップホップやエレクトロなど毎回流行もそこそこ取り入れてきた彼ら。このアルバムでもその貪欲さは薄れておらず、1曲目「Ill Ray (The King)」から“らしさ”と“新しさ”が全開です。続く「You're In Love With A Psycho」は最初に書いたとおりで、これもある種の“新しさ”なわけで、そこからアグレッシヴな「Twentyfourseven」へとつないでいく流れはさすがの一言。

そこから、再びポップでドリーミーな「Good Fight」へと続き、アコギの音色が心地よい「Wasted」、ブラスセクションを取り入れたアンセミックな「Comeback Kid」(サッカーっぽいなと思ったら、実際サッカーゲームのサントラに採用されたのね)、ブルージーなソウルナンバー「The Party Never Ends」、ディスコ調のダンスチューン「Are You Looking For Action?」(8分半の大作!)など聴き応えのある楽曲が続きます。

OASIS以降のUKギターロック感とブラックミュージックからの影響を伺わせるカラーは相変わらずなのですが、今回は時代がそうさせるのか、ちょっとミニマルな方向に向かってなくもないかなという気がして。いや、もともとそんなに音数を詰め込んで派手にカマすバンドではなかったけど、今作のテイストは昨今の流行に乗りつつ、そこで独自性を見せているように感じられました。

本当はアルバム全編、もっとギターリフでガツンと聴かせてほしいなという願望もあったけど(「Bless This Acid House」みたいな曲がもっと欲しかったと)、これはこれで全然アリ。ギターは自己主張の道具ではなくて、ここでは調味料のひとつでしかない。2017年という時代を考えれば、もはやこれが正解なんでしょうね。

ちなみに本作、初回限定盤には2016年の英・レスター「キング・パワー・スタジアム」でのライブをまとめたボーナスディスク付き。代表曲満載の全16曲、フルライブを楽しむことができます。意外と抜けてるヒット曲もあるので、そう考えるとこのバンドも長いこと活動してるんだなと思わせられたわけです(実際はまだ12、3年くらいなんだっけ)。なので、購入するなら迷わず2CD版で。



▼KASABIAN『FOR CRYING OUT LOUD』
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投稿: 2017 07 05 12:00 午前 [2017年の作品, Kasabian] | 固定リンク

2017/07/04

RIDE『WEATHER DIARIES』(2017)

ジザメリの19年ぶりにもひっくり返ったけど、RIDEの21年ぶり新作という現実にもただただ驚かされたわけでして。2015年のフジロックで、彼らの勇姿を観てアガったという人、少なくないはずです。その年の秋には単独再来日も実現し(僕はチケットを持っていながら、隣の駅にあるスタジオでずっと取材をしてたので行けず終い)、「もう1stアルバムや2ndアルバムの曲を中心にライブしてくれるだけで十分! この再結成、継続させてほしい……」と願っていたところ、なんとニューアルバムまで作ってしまったのだから驚きです。

先行公開された「Charm Assault」はしっかり従来のRIDEらしさが伴っており、それでいて末期(1996年のラストアルバム『TARANTULA』期)にも通ずるストロングスタイルのロック色もありで、「ああ、奴らはちゃんとあれもなかったことにせず、全部引き受けて先に進もうとしてるんだ」と思ったものです。さらに続けて公開された「Home Is A Feeling」は完全の初期RIDEそのもので、この2曲だけで「本当にRIDEが完全新作携えて戻ってきた!」と喜びの声を上げたのでした……この気持ち、共感してくれる人、多いですよね?

それから4ヶ月後、いよいよリリースされた通算5枚目のスタジオアルバム『WEATHER DIARIES』には、RIDEの“すべて”が詰まっています。それは名作と呼ばれる初期のシングル群や1stアルバム『NOWHERE』(1990年)、2ndアルバム『GOING BLANK AGAIN』(1992年)での「我々がイメージするRIDE像」をしっかり具現化しつつ、この21年の間にメンバー4人が培ってきた音楽的素養もしっかり反映されたものになっている。プロデューサーには英国クラブミュージック界の人気DJエロール・アルカン、ミキシングには『GOING BLANK AGAIN』などを手がけたお馴染みのアラン・モウルダーをそれぞれ迎え、しっかりと「2017年に鳴らされること」を意識して制作されています。

シューゲイザー、ドリームポップなどこのアルバムに対する表現はいろいろあると思います。実際そういう音だと思うし、アルバムまるごとセンチメンタリズムの塊ではあるんだけども、決して単なるノスタルジーでは終わらない、今の音として成立している。これを実現するためには、解散前みたいに「この曲は俺が書いた」「これはあいつが書いたからあいつが歌えばいい」といったいざこざは無用。初期の頃のように、4人がひとつとなって何かに取り組む。それが実現できるかできないかで、このアルバムを作るかどうかが決まったのではないでしょうか。で、実際本作はそういう作品になったと。ちゃんと「今のリスナーにモノ言わしてやろうぜ!」という気概も感じられるしね。

まさか2017年にRIDEの新作が、しかも傑作とちゃんと断言できるアルバムが聴けるなんて。2年前は想像もしてなかったなぁ。そして彼らはこのアルバムを携えて、8月に『SUMMER SONIC 2017』深夜の部『HOSTES CLUB ALL-NIGHTER』で2年ぶり日本へ戻ってきます。行かない理由はないよね。



▼RIDE『WEATHER DIARIES』
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投稿: 2017 07 04 12:00 午前 [2017年の作品, Ride] | 固定リンク

2017/07/03

THE JESUS & MARY CHAIN『DAMAGE AND JOY』(2017)

ろくでなしだとか穀潰しだとか、しょうもない人間は腐るほどいるけど、そういう奴って一度そうなってしまったら死ぬまでそのまんまというか……。

そんなことを、THE JESUS & MARY CHAINの19年ぶりに発表されたニューアルバム『DAMAGE AND JOY』を聴いて思ったわけです。

前作『MUNKI』がリリースされたのが1998年。このサイトの前身ホームページ(笑)が開設された年だったので、当時よく聴いたことをよく覚えています。毎回何も変わらず、いや、作品を重ねるごとにその濃度が少しずつ薄まっているような感覚がありながらも、リリースされたら毎回購入して聴いてきたリザメリの新作が、『MUNKI』を最後に途絶えるわけです。ところがその数年後の2007年になんとなく再始動。フェスなどでライブをポツポツやったりしてましたが、まさか新作を制作するなんて考えてもみなかった。穀潰し、やればできるじゃん。

で、完成したのがこのアルバム。どこからどう聴いてもジザメリの音。何も変わってない。いや、ちょっと変わったか。でも基本的には当時のまんま。全14曲入りだけど、3分の1くらいは過去に別の形で発表された楽曲をジザメリ流に焼き直したもの。それでもいいんだ、こうやって“ジザメリの新曲”として楽しめるんなら。

やたらと女性ボーカルが目立つのも本作の特徴かな。6曲に4人の女性シンガーがフィーチャーされていて、その中にはジム&ウィリアム・リード兄弟の実妹リンダやイゾベル・キャンベル(元BELLE AND SEBASTIAN)、スカイ・フェレイラといった面々が含まれています。やさぐれてるのにどこか甘いジザメリ従来の個性が、これによってより深み(いや、深くはないか)を増しており、非常に親しみなったような印象を受けます。

……と、好意的に書いてみたけど、何度も書くように基本的には何も変わってません。「ああ、ジザメリだ」と。

でも、それでいいじゃない。このバンドに関しては。リード兄弟がぶつかりながらもバンドを続けてくれるのなら、それでいい。別に甘やかしてるわけじゃなくて……だって、ダメな奴らなんだから。もうね、とことんダメっぷりを見せ続けてほしい。たぶん本作が駄作だったとしても、個人的には同じことを書いてたと思うのね。でも、良かったの。最低で最高だったの。もうそれで十分。

結局、僕らは中学生の頃に初めて聴いた『PSYCHOCANDY』(1985年)の呪縛から、ずっと逃れられないんです。でも、それでいいじゃない。僕らもダメな奴らなんだから。



▼THE JESUS & MARY CHAIN『DAMAGE AND JOY』
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投稿: 2017 07 03 12:00 午前 [2017年の作品, Jesus & Mary Chain, The] | 固定リンク

2017/07/02

DEPECHE MODE『SPIRIT』(2017)

前作『DELTA MACHNE』(2013年)からちょうど4年ぶりとなる、通算14枚目のスタジオアルバム。90年代以降、この4年というサイクルは正確に保たれているようで、その合間にはライブ作品の発表だったり再発だったりと、何かしらアイテムが発売されているので、実は思っている以上に4年を長く感じないという。これでリリースのたびに来日公演があったら、もっと短く感じるんでしょうけどね……。

さて、今回のアルバムでは近作とは異なるテイストが感じられます。非常にダークで重々しいく、どこか宗教じみた匂いが感じられる。おそらく多くのファンが、1993年の大ヒット作『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』を思い浮かべるかもしれません。確かに僕も最初に聴いたとき、最初にイメージしたのは同作でした。ただ、どこか救いのない空気の漂う『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』と大きく異なるのは、本作には“望み”や“希望”のような一筋の光が感じられる点。確かに20数年前のあの時期と比べたら、今のDEPECHE MODEは非常に落ち着いていますし、人としても達観した部分も多いですし。

『PLAYING THE ANGEL』(2005年)から3作連続でプロデュースを手がけたベン・ヒリアーのもとを離れ、今作では新たにSIMIAN MOBILE DISCOのジェイムズ・フォードがプロデュース。ひんやりとしたロックテイストの冒頭2曲「Going Backwards」「Where's The Revolution」のインパクトは絶大で、そのあとにブルージーな「The Worst Crime」、エレクトロ+インダストリアル調な「Scum」と、とにかくダークでヘヴィでクールな楽曲が続きます。ただ、先にも書いたように『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』ほどの“重苦しさ”はなく、そこが繰り返し楽しめる要因になっているのかなと。

にしても今回のアルバム、非常に挑発的な内容ですよね。「Revolution」「Crime」「Scum」「Poison」「Poorman」など曲名に使われているワードしかり、現在のアメリカ政権を揶揄したかのような歌詞しかり。そういえば「Where's The Revolution」のMVも政治的ですし。かと思えば、終盤にはデヴィッド・ボウイに捧げた「No More (This Is The Last Time)」があったり、ラストナンバーがマーティン・ゴアのボーカル曲「Fail」だったり(マーティンのボーカルナンバーはもう1曲「Eternal」も)。アルバムのトーンは終始救いようがないくらいに暗いのですが、でも聴き終えたときに絶望感は一切感じない。それが全体を覆う“攻め”の姿勢によるものなのか、あるいはある種の“悟り”なのか。そのへんが、近作とはちょっと違うなと感じたのでした。

エレクトロでインダストリアルな作風なのに、しっかりロックしている。いや、ロックというよりもブルースに近いかも。もともと好きなアーティストの新作ということで好意的ではありますが、このブルース感が強まったことでより好きになれた1枚です。



▼DEPECHE MODE『SPIRIT』
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投稿: 2017 07 02 12:00 午前 [2017年の作品, Depeche Mode] | 固定リンク

2017/07/01

2017年上半期総括

恒例となった上半期ベスト。ひとまず7月1日現在の10枚を紹介したいと思います。バランスとしては洋楽5枚、邦楽5枚というセレクトになります。


DEPECHE MODE『SPIRIT』(amazon)(レビューはこちら

THE JESUS & MARY CHAIN『DAMAGE AND JOY』(amazon)(レビューはこちら

KREATOR『GODS OF VIOLENCE』(amazon)(レビューはこちら

MASTODON『EMPEROR OF SAND』(amazon)(レビューはこちら

RIDE『WEATHER DIARIES』(amazon)(レビューはこちら

Cornelius『Mellow Waves』(amazon)(レビューはこちら

Maison book girl『image』(amazon

Mondo Grosso『何度でも新しく生まれる』(amazon

ONE OK ROCK『Ambitions』(amazon)(レビューはこちら

ドレスコーズ『平凡』(amazon)(レビューはこちら

投稿: 2017 07 01 12:00 午後 [2017年の作品, Cornelius, Depeche Mode, Jesus & Mary Chain, The, Kreator, Maison book girl, Mastodon, Mondo Grosso, ONE OK ROCK, Ride, 「1年のまとめ」, ドレスコーズ] | 固定リンク

MR. BIG『DEFYING GRAVITY』(2017)

苦しい環境下で最善を尽くした前作『...THE STORIES WE COULD TELL』(2014年)から3年ぶりに発表された、MR. BIG通算9作目のスタジオアルバム。ツアーではパーキンソン病で体が思うように動かなくなってきたパット・トーピー(Dr)に替わり、マット・スターがサポートで参加。もちろんパットもパーカッションとコーラスでライブに加わり、新たな5人編成というスタイルでツアーを完遂します。

で、そこから今作に向かっていくわけですが、今回のプロデューサーは初期4作を手がけてきたケヴィン・エルソン。バンドとしても来年で結成30周年を迎えることもあり、ここで改めて原点に戻ろうという思いがあったのかもしれません。ドラムトラックは前作のようにプログラミングではなく、パットが方向性を指示しながらマットがプレイ。楽曲制作にはもちろんメンバー4人が中心となり、これまで同様の外部ライターを迎えて書き下ろされていくのですが……。

なんですか、この突き抜け方は!? 1曲目「Open Your Eyes」のオープニングでは、1stアルバム『MR. BIG』(1989年)のオープニングに収められていたエンジニアの声がそのまま流用され驚いたところで、そのまま軽やかにスタート。かと思えば、続いて爽やかなパワーポップチューン「Defying Gravity」が飛び出す。さらに、ブギーのリズムが気持ち良い「Everybody Needs A Little Trouble」、カントリー調のミディアムナンバー「Damn I'm In Love Again」、ど頭のギター&ベースによるテクニカルなフレーズに驚かされる「Mean To Me」、どこか影のあるソウルバラード「Nothin' Bad ('Bout Feelin' Good)」と良曲が続くこの構成……再結成後の2枚(『WHAT IF...』『...THE STORIES WE COULD TELL』)がバンドの原点である「ブルージーでソウルフルなHR」に立ち返ったかと思っていたら、今作ではその一歩先にある『LEAN INTO IT』(1991年)で見せた“開け方”が存在する。そう、バンドが今回目指した“原点”は最大のヒット作となった『LEAN INTO IT』期に立ち返ることだったのかもしれません。

事実、本作には「To Be With You」が全米1位を獲得した時期を振り返る「1992」という楽曲も存在します。これなんてメロディに「Green-Tinted Sixties Mind」の匂いが感じられますしね。もちろん、すべてがあの頃の焼き直しではありません。あのアルバムから26年後のエリック・マーティン(Vo)、ポール・ギルバート(G)、ビリー・シーン(B)、そしてパット・トーピーの姿がここには存在するのですから。

唯一、難癖をつけるとしたら……やはり1曲目はギター&ベースのユニゾンバリバリのファストチューンでキメてほしかったな、と。まぁそれをやらないからこそ、「2017年のMR. BIG」なわけで、それも重々理解できるんですけど……たぶん、それをやらないというのも彼らなりの意地なのかもしれません。本当はそんな意地、捨ててほしかったんですけどね。

まぁ苦言は本当にそれくらいで、あとはもうひたすら楽しくて聴き応えのある、いかにもこのバンドらしい作品集だと思います。そして、このアルバムに触れてから過去2作を聴き返すと、また違った聴こえ方をしてくるから本当に不思議。30周年を前にネクストレベルに到達しそうな、そんな力作。ここ日本だけでなく、久しぶりに海外でもヒットしてほしいな。



▼MR. BIG『DEFYING GRAVITY』
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投稿: 2017 07 01 12:00 午前 [2017年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/06/30

NICKELBACK『FEED THE MACHINE』(2017)

前作『NO FIXED ADDRESS』(2014年)でユニバーサル傘下の「Republic」と契約したものの、たった1枚で移籍することになったNICKELBACK。2年半年ぶり、通算9作目のスタジオアルバムとなる本作『FEED THE MACHINE』は「BMG(BMG Rights Management GmbH)」から、Warner Musicのディストリビューションで今年6月16日に世界同時発売されました。これにより、前々作まで在籍したRoadrunnerと同じWarner Musicに戻ったという解釈もできるわけですね。

さて、今年2月には先行トラックとしてアルバムタイトルトラック「Feed The Machine」が公開済みでしたが、前作での若干ソフトで実験的な作風から一変、6thアルバム『DARK HORSE』(2008年)あたりで聴けたヘヴィでガッツのあるサウンドに先祖返りしております。続く2曲目「Coin For The Ferryman」もバスドラがドコドコするところにギターもザクザクとリフを刻む、これぞヘヴィロック!と叫びたくなるスタイルで、もうこの2曲だけで「勝利!」と実感。さらに3曲目にはこのバンドならではのメロウなバラード「Song On Fire」も飛び出し、明らかに「リスナーがイメージするNICKELBACK」が展開されています。

ヘヴィながらもファンキーでリズミカルな「Must Be Nice」、若干ダークで重みのあるバラード調の「After The Rain」、グルーヴィーなギターリフが気持ち良い「For The River」、壮大さすら感じさせるパワーバラード「Home」、ゴリゴリな「The Betrayal (Act III)」、某アイドルグループのファンが喜びそうなタイトルの美メロHRチューン「Silent Majority」(本作でもっともお気に入りの1曲)、カントリーテイストのパワーバラード「Every Time We're Together」があったりと……あれ、バラード多くね?

確かにバラードタイプの楽曲、多いです。だけど、アートワークからもわかるように、本作は全体的にダークな作風。バラードタイプの楽曲ですら、ダークかつヘヴィなテイストで、実はそこまでバラードが多いと気にならないんです。メタリックな楽曲が2曲、3曲と続くと本当に重苦しくて、何度も聴くにはちょっとつらくなってしまうんですが、こうやって適度にバラードタイプの楽曲が挿入されることで“歌モノHR”として気持ち良く楽しめるわけです。全11曲で44分程度というトータルランニングも近作同様で、この長さならヘヴィな作風でも繰り返し聴けてしまう。

もしここ数作で「NICKELBACK、日和ったなぁ」とがっかりしていた人がいたら、迷わず本作を手に取ってほしいです。間違いなく、「あの頃のNICKELBACK」がここにいるはずですから。しかも、あの頃よりもさらにパワーアップした姿で。



▼NICKELBACK『FEED THE MACHINE』
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投稿: 2017 06 30 12:00 午前 [2017年の作品, Nickelback] | 固定リンク

2017/06/28

Cornelius『Mellow Waves』(2017)

前作『SENSOUS』からすでに11年も経っていたことに、まず驚かされました。確かに最近ニューアルバムは出てなかったけど、METAFIVEでの活動をはじめ、Salyuを筆頭に他アーティストとのコラボもあったし、『デザインあ』やら『FANTASMA』リマスター盤やらとリリースアイテムもそこそこあり、この11年でいろいろ楽しませてもらっていたのも事実。けど、こうやって久しぶりにアルバム単位で新しい音源が届けられることが、ファンとしては一番嬉しいものです。

先行7インチアナログが2枚(『あなたがいるなら』『いつか / どこか』)発表されていたので、今作の方向性はなんとなく把握できてはいたけど、前作ではサウンドのみならず歌詞までをもミニマルなものへと昇華していたところを、今作ではそのミニマルな言葉から“思い”がにじみ出ているように感じられました。坂本慎太郎が作詞で参加した2曲(「あなたがいるなら」「未来の人へ」。『いつか / どこか』カップリングでアルバム未収録の「悪くない。この感じ」を含めれば3曲)は特にその傾向が強く、そこに引っ張られるかのように、小山田の歌詞もシンプルな単語を羅列して言葉遊びをしつつも、そこから“人肌”感が伝わってきます。それは今回の小山田自身の歌声にも通ずるものがあり、何度も繰り返し聴きたくなる優しさに満ち溢れている。本作をどうライブで表現するのか、今からフジロックが楽しみでなりません。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼Cornelius『Mellow Waves』
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投稿: 2017 06 28 12:00 午後 [2017年の作品, Cornelius] | 固定リンク

2017/06/25

CHEAP TRICK『WE'RE ALL ALRIGHT!』(2017)

昨年春に発表された前作『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLOW』が7年ぶりの新作ということでびっくりしたわけですが、続く本作『WE'RE ALL ALRIGHT!』はなんと前作から1年2ヶ月という短いスパンで制作〜リリースされたことで、さらに驚かされたわけです。だって、昨年11月には来日公演までしてさ、またしばらく見納め(聴き納め)かなと思っていたのに……特に大御所クラスになると新作のスパンが5年前後になっても不思議じゃないので、この予想外の新作にはただただ嬉しい限りです。

本作は新曲に加え、過去に制作されたものの未発表だった楽曲を新たにレコーディングしたもので、見方によっては「2017年のCHEAP TRICKによる、純然たる新作」とは言い難いかもしれません。が、ファンにとってはそういう細かいことはどうでもよく、今のCHEAP TRICKが本作で鳴らされているような音/楽曲に再び挑戦してくれている事実が単純に嬉しいし、素敵だと思うわけです。

比較的落ち着いたイメージの強かった前作とは相反し、今作は終始アグレッシブ。初期の「元気よく、勢いのあるパワーポップ/ロック」路線に寄った作風。アップテンポの楽曲がズラリと並び、ロビン・ザンダー(Vo)もがなるように歌っています。ポップな作風の楽曲にしても“枯れ”よりも“若々しさ”が前面に打ち出されており、そこに「ああ、自分は今CHEAP TRICKの新作を聴いているんだ」と強く実感できることでしょう(と、前作のレビューと同じことを書いてしまいますが)。

大半の曲が2分台〜3分台半ばというのも、初期の彼ららしく、アルバム本編10曲で33分程度というランニングタイムも納得。ちなみに本作には3曲追加したデラックスエディション(日本盤の通常仕様はこちら)も用意されていますが、それでも全13曲で44分程度(さらに日本盤はボーナストラックでライブテイク2曲を追加。これは正直蛇足かな)。最近のロックアルバムが少しずつではありますが、こういう40分前後という昔ながらの作風に戻りつつあるのはちょっと興味深い話ですね。

個人的にはデラックス盤に追加された3曲(THE MOVEのカバー「Blackberry Way」、『DREAM POLICE』を思わせる「Like A Fly」、メロウでサイケなミディアムバラード「If You Still Want My Love」)も本編10曲に負けず劣らずの出来だと思うので、ぜひこちらの仕様をオススメしたいと思います。



▼CHEAP TRICK『WE'RE ALL ALRIGHT!』
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投稿: 2017 06 25 12:00 午前 [2017年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2017/06/14

THE BEATLES『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』(1967/2017)

THE BEATLESが今から50年前の1967年5月26日(UK。USでは6月2日)にリリースした、通算8枚目のオリジナルアルバム。前年をもってライブ活動を停止した彼らが、ライブでの披露を前提とせず、ひとつのスタジオ作品としてとことん作り込んだ最初の作品が本作でした。

……なんて説明は今さらいりませんよね。

思えばビートルズの諸作品が初CD化されたのが、本作がリリースされてから20年後の1987年。それ以前は当然のようにアナログ盤だったわけで、今みたいに「これが正規のオリジナルアルバム」という概念が国によって異なったり、アルバム未収録のシングル曲を集めた編集盤がたくさん出ていたりで、正直どれから聴いていいかわからなかったというのが中学生時代の自分。結果、オリジナルアルバムではない編集盤を最初に手に取ったわけですが、高校に入ったと同時にこのCD化。当然周りの自称・ビートルマニアな友人から『PLEASE PLEASE ME』や『WITH THE BEATLES』のCDを借りて、カセットにダビングして聴いていたのです。

で、ちょうど夏くらいにこの『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』がようやくCD化。当時の音楽誌などで「ビートルズの最高傑作」なんて触れ込みもあり、最初に買うならこれにしようと、夏休みのバイト代から本作を購入。つまり、僕が初めて購入したビートルズのCDが本作だったわけです。

いわゆるヒットシングル皆無、初期の「She Loves You」や「Help」とも違うし、「Yesterday」や「Let It Be」ともちょっと違う。今ならサイケデリックがなんちゃら〜と言語化できるけど、あの当時は「Lucy In The Sky With Diamond」の浮遊感も「Within You Without You」のインドっぽさも、どこかコミカルな「When I'm Sixty-Four」の魅力にも、そしてラストの「A Day In The Life」のすごさも理解できておらず。ただ、オープニングの「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」のガレージロック感?にはカッコ良さを見出し、そこを何度もリピートしていたものです。

その後、何度も聴き返すうちにメロディが頭に入ってきて、気づいたらアルバムをまるごとリピートして聴き返していた。けど、周りのロック仲間には勧めることなく、ひとり家で聴いていた……そんなアルバムでした。

初版のCDは今でも家にあるし、その後の最新リマスター盤も購入。そしてつい先日、本作の最新ステレオミックス盤+未発表テイクからなる50周年記念エディションも発売。つまり、初めて聴いてから30年近くもの歳月が流れたわけです。ひぃ。

最初のリマスター盤のときにも音の分離の良さに驚かされましたが、今回はそれに加えて低音がかなり効いたミックスに。ドラムとベース(特にバスドラの鳴り)の質感・バランスがより現代的になったことによって、とても50年前の音とは思えない仕上がりに変わったように感じました。「A Day In The Life」冒頭のアコギの繊細な鳴りなんて、すごく今っぽいしね。

と同時にこのアルバムの音、現代のテクノロジーで真似ようと思っても再現できないんじゃないだろうか……と思わせられる、改めて奇跡の音なんじゃないかなと久しぶりに聴き返して実感しました。

僕が購入したのは、2枚組仕様のほう。さすがに“ハコ”のほうは断念しました。ディスク2にはアルバムの未発表テイクをたんまり収録。『ANTHOLOGY』シリーズの延長として楽しみましたが、どういう過程を経て完成品となっていくのかが伺えて、それはそれとして面白かったです。音もスタジオ盤より生々しさが強まっていて、個人的には好み。ですが、もちろん万人にはオススメしませんけど。

あと、ラストに収録されている「Strawberry Fields Forever」(こちらは2015年発売『THE BEATLES 1』リマスター盤のステレオミックス)と「Penny Lane」(こちらは最新ステレオミックス)はやっぱり素晴らしいと思います。『THE BEATLES 1』リマスター盤は今でもよく聴いてますが、今後もこの『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』デラックス盤とあわせて聴き続けることでしょう。というか、聴き続けます。はい。

と、今回はほぼ思い出話でお届けしました……。



▼THE BEATLES『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』
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投稿: 2017 06 14 12:00 午前 [1967年の作品, 2017年の作品, Beatles, The] | 固定リンク

2017/06/11

WARRANT『LOUDER HARDER FASTER』(2017)

LAメタル末期にデビューしたWARRANTの、前作『ROCKAHOLIC』(2011年)から6年ぶりに発表された通算9枚目のオリジナルアルバム。前作からジェイニー・レイン(Vo/2011年死去)を除くオリジナルメンバーに、元LYNCH MOBのロバート・メイソン(Vo)を加えた編成で活動しており、今作が現編成2作目となります。

“よりデカく、より激しく、より速く”というタイトル通りの内容といったところでしょうか。純粋にハードロックアルバムとして優れた内容だと思いますし、歌も演奏も曲も申し分なし。例えば本作が1988年前後にリリースされていたら、きっと100万枚を超えるヒット作になっていたんだろうな、と思うのです。

とはいえ、本作はそこまで古臭さを感じさせないし、別に2017年という現代に鳴っていても特に大きな違和感はないかなと。いやウソです。やっぱり時代の流れは感じてしまいます。メロディの節々に“あの頃”のWARRANTをしっかり感じさせつつ、“我々の知るWARRANTではない何か”も存在する。でも、それは決して近代的なものではなく、古き良き時代のHR/HMそのものという……つまり、良くも悪くもどこかで“止まってしまっている”のです。

WARRANTというバンドもまた、90年代初頭のグランジの勢いに当てられ、当時は『DOG EAT DOG』(1992年)をはじめとしたダークな作品をいくつか発表しています。しかし、ここ最近の彼らはよりストレートなハードロックに回帰しており、そのへんの時代とうまく寄り添う行為は今は亡きジェイニーの画策だったんだろうなと思うわけです。

で、そのジェイニーを欠いたバンドがごく普通のハードロックを鳴らすというところに大きな意味があるんじゃないかと。きっと初期のパーティロック路線も策士ジェイニーによるアイデアだったかもしれないわけで、そう考えると他のプレイヤーたちは本来こういったド直球のハードロックをやりたかったんだろうな、と。丁寧だけど抑揚があまりないジェイニーとは異なる“歌える”シンガー(前任のジェイミー・セント・ジェイムズしかり、ロバートしかり)を迎えたのも、その思いを具現化するためだったんじゃないかと……まるでデヴィッド・リー・ロスからサミー・ヘイガーに移行したVAN HALENみたいですね。

結局、キャラの強い(もしくは賢く商才に長けた)フロントマンで成功したバンドが“音楽”に目覚めると、こういう方向に進みたくなるのは自然な流れなのかな。もちろんこれはこれで間違いじゃないし、実際完成したアルバムもなかなかの力作だと思いますが……残念ながら「我々が知るWARRANTのニューアルバム」ではないな、と。ただ、そういった枕詞を無視すれば、純粋にカッコ良いHRアルバムとして愛聴できそうです。抑揚がないとか散々貶してるジェイニーですが、なんだかんだで初期3作に対する思いが強いので、こういう評価になってしまいました。このバンドに対して「初期のほうが〜」という思い入れがない人なら、間違いなく満足できる1枚だと思います。



▼WARRANT『LOUDER HARDER FASTER』
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投稿: 2017 06 11 12:00 午前 [2017年の作品, Warrant] | 固定リンク

2017/06/10

HAREM SCAREM『UNITED』(2017)

今年で結成30周年を迎えるカナダのHRバンド、HAREM SCAREMが4月にリリースした通算14作目のスタジオアルバム。2008年に一度解散し、2013年に再結成を果たした彼らは同年に名作2ndアルバム『MOOD SWING』のリテイクアルバム『MOOD SWING II』を発表し、翌2014年には新曲のみのオリジナルアルバム『THIRTEEN』を制作と再始動後も順調に活動を重ねています。

3rdアルバム『VOICE OF REASON』(1995年)でダークなサウンドに傾倒し始め日本のファンをがっかりさせ、5th『BIG BANG THEORY』(1998年)あたりからパワーポップ寄りの楽曲にも着手し始めたHAREM SCAREMですが、再結成後は多くのファンが望む“1st〜2ndアルバム路線”を踏まえつつ大人になったバンドの姿を見せています。この最新作でもその方向性は変わっておらず、むしろその純度がより高くなっているように感じられました。

前作『THIRTEEN』も決して悪いアルバムではなかったし、むしろ好きな作品ではあったんですが、今作はとにかく1曲1曲の完成度が無駄に高い。アルバムによっては1曲くらい「う〜ん、個人的に好みじゃなけど、こういう曲が好きなリスナーもいるしな……」という曲が入っていてもおかしくないところを、今作はどの曲も両手をあげて大歓迎したくなる良曲ばかり。適度にハードで適度にポップ、そしてメロディやサウンドから爽快感が感じられるハードロックと表現すればいいのでしょうか……90年代の彼ら(主に1st〜2ndあたり)に感じられた“ビッグプロデュース”はそこにはなく、地に足のついた等身大のサウンドで、ファンが求めるサウンドと「大人になった今だから表現できるサウンド」をバランス良く融合させている。そこには攻めのハードロックもあれば、パワーポップ調のゆるやかな楽曲もあり、無駄にバラードで水嵩を増すようなこともしない。11曲全45分という適度な長さも功を奏し、何度もリピートしたくなる極上のハードロックアルバムに仕上げられているのです。

イントロの時点で若干ダークで激し目の楽曲なのかと不安にさせておいて、メインリフが入ると豪快かつ爽快感のあるキャッチーなハードロックで聴き手を喜ばせてくれる「United」から、続く「Here Today Gone Tomorrow」「Gravity」と、とにかく頭から心を鷲掴みにされっぱなし。その後もこのテンションを崩すことなく、ドラマチックなラストナンバー「Indestructible」で締めくくる。個人的には2000年代に入ってからの彼らのアルバムでもっとも気に入っています。こういう良質なアルバムがジャンルの分け隔てなく、もっといろんなリスナーに「いいね!」と言ってもらえるような時代が戻ってくるといいな。



▼HAREM SCAREM『UNITED』
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投稿: 2017 06 10 12:00 午前 [2017年の作品, Harem Scarem] | 固定リンク

2017/06/09

THE CHARLATANS『DIFFERENT DAYS』(2017)

THE CHARLATANS通算13枚目のオリジナルアルバム。ドラマーのジョン・ブルックスが2013年8月に脳腫瘍で急逝し、悲しみを乗り越えて制作された前作『MODERN NATURE』(2015年)が全英7位と、久しぶりのTOP10ヒットとなった彼ら。そこから2年を経て届けられる今作には、ジョニー・マーやポール・ウェラー、スティーヴン・モリス(NEW ORDER)、アントン・ニューコム(THE BRIAN JONESTOWN MASSACRE)といったアーティスト仲間に加え、推理作家のイアン・ランキンとカート・ワグナー、ティム・バージェス(Vo)の長年の友人である女優のシャロン・ホーガンがゲスト参加しています。

作風としては、全体的に前作の延長線上にある1枚と言えるでしょう。が、冒頭の低音ボーカルを生かした穏やかなスローチューン「Hey Sunrise」にはきっと驚かされるはず。今回は内省的な作品なのか!?と思いきや、続く「Solutions」でアップテンポに。しかし、どこか物悲しさが伴うメロディや空気感は1曲目から変わらず、ちょっと心配になっているとエンディングの日本語ナレーションにハッとさせられ、そのままタイトルトラックに突入。若干穏やかながらも、ようやくこのバンドらしさが出てきたなと。先行シングル「Plastic Machinery」あたりでやっと、“俺たちのシャーラタンズ”が戻ってきた!とガッツポーズをとってしまうのではないでしょうか。

エレクトロの要素を取り入れた「Not Forgotten」や「Over Again」など、後半に進むにつれてダンサブルさが増していき、グワーッと盛り上がったところで、アコースティックの小楽曲「The Setting Sun」とポール・ウェラーがゲスト参加したスローなサイケチューン「Spinning Out」とダウナー2連発。予期してなかったこのエモさに心を一気に持っていかれてしまいます。

確かに穏やかさがより強まったように感じられますが、それもこのバンド本来の持ち味。その風味がより濃くなったと思えば、なんら違和感なく楽しめるはずです。まぁ今さら彼らに「Weirdo」みたいにアドレナリン溢れまくりなアッパーなダンスチューンを求めるのは筋違いだと思いますし、この進化(というか深化かしら)はバンドの成長としてまったく正しい歩み方だと思いました。



▼THE CHARLATANS『DIFFERENT DAYS』
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投稿: 2017 06 09 12:00 午前 [2017年の作品, Charlatans, The] | 固定リンク

2017/06/08

HARRY STYLES『HARRY STYLES』(2017)

「人は見かけによらない」。いや、「人を見た目で判断してはいけない」のほうが正しいかな。自分にとってこの言葉が最適なのが、今回紹介するONE DIRECTIONのハリー・スタイルズが発表したこの初ソロアルバム。多くの“外野”同様、筆者自身も彼のことをボーイズアイドルグループの一員という偏見で見ていたけど、それによって彼が本来持ち合わせていた才能にまったく気づけなかったとは。ホント、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

本作収録曲の大半はジャマイカで書かれたとのこと。そのせいもあってか、「新しい時代の兆し」と命名された1stシングル「Sign of the Times」含め、どの曲もオーガニックで、どこかサイケデリックな香りがする。時にそれはKULA SHAKERが醸し出すインドテイストのロック/ポップソングのようでもあり、不思議と耳に、体に馴染んでいく。うん、シンプルに気持ち良いサウンドと歌なんですよ。

特に頭2曲(「Meet Me in the Halfway」「Sign of the Times」)で内省的な雰囲気を与えつつ、続く「Carolina」では中期ビートルズ的なサイケデリックロックでさらに自分の懐へと惹きつける。いわゆる「ボーイズアイドルグループがやりそうな仰々しいラブバラード」は皆無で、それこそ本作が1Dメンバーによるものだと知らなかったら、超個性的な男性シンガーがデビューしたと歓喜していたのかも……そう思うと、本当に先入観ってよくないですね。ごめんなさい。

歌詞も単なるラブソングから一歩踏み込んで、自身の内面と対峙するかのようにディープなものばかり。ロビー・ウィリアムズしかりジャスティン・ティンバーレイクしかり……もっと言えばジョージ・マイケルもしかり……彼らは大ブレイクしたグループを飛び出して個を主張することで、思いもしない方向へと到達し、新たな支持層を獲得してきましたが、きっとこのハリーも先人たち同様にここから一気に確変するはず。ロックもポップもソウルも全部飲み込んだこのアルバムは、間違いなくその最初の一歩になるはずです。

※このレビューは本作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを、加筆・修正して掲載しております。



▼HARRY STYLES『HARRY STYLES』
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投稿: 2017 06 08 12:00 午前 [2017年の作品, Harry Styles] | 固定リンク

2017/05/21

LINKIN PARK『ONE MORE LIGHT』(2017)

LINKIN PARKの3年ぶり新作『ONE MORE LIGHT』リリースに先駆けて、本サイトでは1stアルバム『HYBRID THEORY』から前作『THE HUNTING PARTY』までの全6作品を紹介してきましたが、ようやく真打登場です。

リードトラック「Heavy feat. Kiiara」を筆頭に、新曲が公開されるたびに今まで以上に賛否を呼び集めたLINKIN PARK。もはやバンドという形態すら放棄してるし、聴く人が聴けば「流行・売れ線に走りやがって」と思うことでしょう。そういう方はこんな駄文など読むのをすぐ止めて、自分が正しいと思う音楽を今後も聴き続けることをオススメします。ぶっちゃけ、時間の無駄ですから。

「Heavy feat. Kiiara」自体「いい曲じゃん。何が悪いの?」と思っていた自分のような人間にとって……いや、そもそもLINKIN PARK=『HYBRID THEORY』みたいな強いこだわりや固定観念がない人間には、今回も前と違うことやってるのね、程度のリアクションしかなく、アルバムはどうなってるんだろうな〜と呑気に考えていたのですが。やっぱり叩かれますよね、特に今回は。だって、すでにロックですらないんですから。

過去のレビュー6本のまとめ的記事として、本作のリリース日にリアルサウンドさんのほうに下記のコラムを寄稿しました。この『ONE MORE LIGHT』に関しても、基本的にはそちらにすべて書かれているのであわせて読んでいただけるとありがたいです。

Linkin Parkがアップデートした“自身の理論” 新作『One More Light』をバンドの変遷から紐解く(リアルサウンド)

さて。じゃあここでは何を書こうかといいますと……当然のように、毎回試聴会に参加するときはメモを残すのですが、今回もそのメモを晒してみようかと思います。過去にはMETALLICAやMASTODONなどで試みてますね。はい、今回もまったく一緒です。

基本的にはリアルサウンドさんのコラムの中に完璧なレビューを書いたので、そちらで十分なんですけど、こちらは副読本的ポジションでいいのかなと。はい。

M-1. Nobody Can Save Me
ゆったりとしたミドルテンポのロック。おおらかさ、優しさの中にエレクトロの香りも。オープニングからここまで多幸感を強く匂わせるLINKIN PARKのアルバムは初めてでは。若干EDMの匂いも。

M-2. Good Goodbye (feat. Pusha T & Stormzy)
先行公開曲その3。ヒップホップ色の強いダウナーなビート。バンドサウンドを完全放棄した、楽曲至上主義。

M-3. Talking To Myself
出だしがキラキラしたエレクトロサウンドだが、そのまま力強いバンドサウンドへ。歌に入るとダウナーなヒップホップのテイストも飛び出し、サビで再びロックバンドの主張強まる。まさに“ハイブリッド”な1曲。

M-4. Battle Symphony
先行公開曲その2。賛美歌をエレクトロで表現したかのような癒しのメロディ。気持ち良く楽しめるナンバー。

M-5. Invisible
先行公開曲その4。若干抑揚を抑えたメロディが前曲との対比を強める(リードボーカルはマイク)。ポップソングとしての究極型。ピアノのアウトロ含め最高。

M-6. Heavy (feat. Kiiara)
先行公開曲その1。公開と同時に今までにない賛否を呼んだ、現代的ダウナーR&BをLINKIN PARK流に解釈した1曲。にしても、これのどこが悪い? ロックじゃない? 冗談じゃない、LINKIN PARKはこの曲でしっかり“ロック”してるじゃないか。女性シンガー・キアーラとの歌声の絡みも絶妙。

M-7. Sorry For Now
現代的なヒップホップ+R&B×ロックをLINKIN PARK流に解釈した楽曲、その2。これもマイクのボーカルか。チェスターのエモーショナルなボーカルとはひと味違ったこのカラーも、今や完全にバンドの個性。落ちサビでチェスターも加わり、より2人の個性を際立たせている。

M-8. Halfway Right
アルバム全体に一本筋が通るように流れるビート感の統一性は圧巻。この曲も本当によくできたポップソングといった印象。そこにシンガロングパートが加わると、ゴスペルのごとく一気にスケールが大きくなる。チェスターらしいメロディ運びは、やっぱりLINKIN PARKそのもの。

M-9. One More Light
終始癒しの音色が響き渡るバラード。チェスターの声とブラッド・デルソンのギターを前面に打ち出した、まさにこのアルバムの肝。

M-10. Sharp Edges
アコースティックギターをフィーチャーした軽やかなナンバー。前曲で夜明けを迎え、ここで完全に朝になり活動し始める、そんな生命力を感じさせるラストにふさわし1曲。

※総評
これこそ『HYBRID THEORY』というタイトルがぴったりのアルバムでは。前作『THE HUNTING PARTY』が「バンドのルーツにあるアンダーグラウンドなラウドミュージックを、大人になった6人が今の解釈で表現したもの」だとしたら、今作は「現在シーンのど真ん中にあるサウンドを、6人が今の感性で表現したもの」。また前作が薄暗い地下室をイメージさせる1枚なら、今作は深夜から夜明けを迎える数時間を捉えたような構成。対極にある作品だからこそ、方向性も表現方法もまったく異なるのは納得。散々ロックが売れない、ロックは終わったと叩かれるのなら、ロックバンドが「“ロック以外の音楽”を使ってロックを表現」してもいいんじゃないか。このアルバムはそのとっかかりになるような気がする。



▼LINKIN PARK『ONE MORE LIGHT』
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投稿: 2017 05 21 12:00 午前 [2017年の作品, Linkin Park] | 固定リンク

2017/05/20

AT THE DRIVE-IN『IN.TER.A.LIA』(2017)

通算3枚目にしてメジャーデビュー作となった『RELATIONSHIP OF COMMAND』(2000年)リリースから半年後の2001年春、突如の無期限活動停止を発表し、事実上の解散状態となったAT THE DRIVE-IN。その彼らが10年後の2011年に再始動を発表し、翌2012年に『FUJI ROCK FESTIVAL '12』で12年ぶりの再来日を果たしたのですが、その際のライブを観た僕は正直、最初こそ興奮したものの、曲が進むにつれて気持ちが醒めていって……ああ、2000年のサマソニで初体験したあの無軌道さとそこから受けた興奮を求めちゃ残酷だよな……と現実に引き戻されたのでした。

が、昨年のサマソニで再来日した際には、あのフジロックでの醒めた感覚は一切なく、最初から最後まで興奮状態のままステージを楽しむことができました。もちろん、2000年のライブと比べるのは反則だという気持ちをどこかに抱えたまま。だけど、純粋に楽しいライブだったのを今でもよく覚えています。

その後、ライブ活動のみならず本格的に新作制作に動き出した彼ら。ついに2017年5月、待望の4thアルバム『IN.TER.A.LIA』がここにリリースされました。

確かにここで聴けるサウンド、楽曲はTHE MARS VOLTAのそれとも、そしてSPARTAのそれとも違う、どこからどう聴いてもAT THE DRIVE-INのサウンド、楽曲とわかるものです。とはいえ、『RELATIONSHIP OF COMMAND』ほどのテンションや狂気性は感じられないのも事実。そこを今の彼らに求めるのも酷とは頭でわかっているのですが、それでも「『RELATIONSHIP OF COMMAND』に続く新作」という事実があるだけに比較してしまいたくなってしまうわけです。

先にライブから彼らに接したからか、余計に無軌道さや狂気性を求めてしまうのかもしれません。しかし、あれからすでに17年もの月日が流れている。普通に活動を続けていたら、その間に4、5枚はアルバムを発表していたかもしれない。そう考えれば、『RELATIONSHIP OF COMMAND』から『IN.TER.A.LIA』という作品に到達した意味も理由も理解できるかもしれません。

事前に公開済みだった「Governed By Contagions」を最初に聴いたときは、正直「まぁこんなもんかな?」くらいにしか感じなかったのに、アルバムの流れで聴くとすごくグッとくる。そして、どこからどう聴いてもAT THE DRIVE-INそのものだと気づかされる。ツアーで過去の楽曲と向き合ったことで、バンドが改めて「AT THE DRIVE-INとはなんだったのか?」という命題と真剣に対峙した。と同時に、メンバーそれぞれがTHE MARS VOLTAやSPARTAで得た経験も血肉になっている。その結果、「どこか懐かしいのに、新しさも感じさせる」という過去と現代のハイブリッド感が生まれたのかもしれません。

比較したくないと言いながらアレですが……『RELATIONSHIP OF COMMAND』よりもするする聴き進められる。内容もコンパクト(40分強)で、各曲が思った以上にシンプルというところは、2017年という時代にぴったりとフィットしてるんじゃないでしょうか。うん、大好きです。購入してから何度も何度も聴き返してます。



▼AT THE DRIVE-IN『IN.TER.A.LIA』
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投稿: 2017 05 20 12:00 午前 [2017年の作品, At The Drive-In] | 固定リンク

2017/05/17

DRAGONFORCE『REACHING INTO INFINITY』(2017)

ベストアルバムを挟んで3年ぶりに発表される、通算7枚目のオリジナルアルバム。2014年に加入したジー・アンザローネ(Dr)を含む編成で初のスタジオアルバムであると同時に、今のところヴァジーム・プルジャーノフ(Key)が参加した最後のアルバムということになります(ヴァジームは本作に伴うプロモーション活動およびワールドツアーには不参加)。

全体的に、ここ数作と比べて非常にメロディが質が高まっているように感じました。とはいえ、このバンド特有の“ノリ”に関して言えば、序盤こそ「あれっ、若干落ち着いた?」と感じるものの、アルバムが進むほどその“濃さ”が徐々にあらわになっていきます。そして後半はいつもどおりのドラフォ節炸裂で、サーカスばりのテクニカルプレイも満載。変わったようで変わってない、変わってないようで変わった。聴き方次第でいろんな表情が感じられる1枚かもしれません。

特に終盤にかけて収録される長尺楽曲「The Edge Of The World」(11分超え)の構成は、さすがの一言。こkまで長いとぶっちゃけ途中で飽きてしまいがちですが、起承転結しっかりしていて、最後まで安心して楽しむことができます。

日本盤のみボーナストラックとして、ZIGGYが80年代後半に爆発的にヒットさせた名曲「GLORIA」のカバーが収録されていますが、往年のJ-POP/J-ROCKとメロスピとの相性は抜群。イントロやAメロのアレンジ、そしてAメロの歌詞が英語になっていて最初は気づかないかもしれませんが、Bメロからサビにかけての流れでようやく気付かされるという。こういった楽曲を自然と演奏してしまうあたり、改めて日本人向きのバンドだと納得させられました。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼DRAGONFORCE『REACHING INTO INFINITY』
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投稿: 2017 05 17 12:00 午後 [2017年の作品, DragonForce, ZIGGY] | 固定リンク

2017/05/10

ゲスの極み乙女。『達磨林檎』(2017)

本来なら昨年11月に先行配信、12月にパッケージが発売されていたはずの本作が、約半年の延期を経てついにリリース。昨年の時点でMVが公開されていた2曲以外は、ようやく正式な形で聴くことができるようになったわけですが、そのきらびやかさと多幸感に満ち溢れたサウンドに驚かされるリスナーも多いのではないでしょうか。

どこかひねくれたイメージのある彼らですが、その資質は残しつつも、それ以上にパーっとまばゆい光が広がるようなポップさは過去随一。前作『両成敗』が全体を覆うロック度の高さでグイグイ引っ張る作風だとしたら、今作は時に訪れる穏やかさと、ところどころに散りばめられた毒の量のバランス比が絶妙です。

特に後者が少し控えめなことで穿った見方をされてしまいそうですが、それは本作を純粋に「音楽」として受け取ってほしい、楽しんでほしいという思いの表れではないかと推測。こんな状況だからこそ、歌詞やサウンドの偏った解釈はいくらでもできる。でも、そんなネガティブさもを凌駕する“突き抜け感”は今こそ正当に評価されるべきだと力説したい1枚です。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



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投稿: 2017 05 10 12:00 午後 [2017年の作品, ゲスの極み乙女。] | 固定リンク

2017/04/25

INCUBUS『8』(2017)

いろいろびっくりしました。まず6年ぶりという事実にも驚かされたし、通算8枚目(インディーズ盤含む)という事実にも、そしてその音と携わったアーティストにも。

INCUBUSがユニバーサル(Island Records)に移籍したと伝えられたのが2015年のこと。彼らはその年に4曲入りEP『TRUST FALL (SIDE A)』をリリースしており、その後第2弾EPもしくはアルバムがリリースされるのではと噂されていたけど、結局その年も、そして翌年も大きな動きはなく過ぎていったのでした。

ところが、2017年に入ってすぐにきたるニューアルバムからの新曲「Nimble Bastard」が公開。これがダイナミックなサウンドとワイルドなテイストのロックンロールで、聴いて一発で気に入ったわけです。聞けば、この曲はかのデイヴ・サーディ(SLAYER、MARILYN MANSON、OASISなど)と制作したもので、続くニューアルバムもデイヴのプロデュースになるという。どんなアルバムになるのか、ただただ楽しみに待っていたところ……。

いきなりSKRILLEXがアディショナル・プロデュースおよびミックスで参加することになり、ここに完成したのが今回紹介する『8』になるわけです。

近年はメンバーのマイク・アインジガー(G)もEDM方面でソングライターやギタリストとして活躍していることもあり、SKRILLEXとも当然面識があるだろうし、そもそもSKRILLEXことソニー・ムーアはFROM FIRST TO LASTのフロントマンということで、INCUBUSにも憧れていたことから、このコラボレーションは必然だったのかもしれません。

アルバムの根幹となる楽曲群は、穏やかさを軸に新たな可能性を提示した前作『IF NOT NOW, WHEN?』(2011年)とも異なる、バラエティに飛んだハードロック/ラウドロックが中心。リズムひとつ取っても軽快さよりも、ビートの1音1音のヘヴィさが聴き手にズシリと響きわたるようなものばかり。じゃあ陰鬱としているのかというと、そんなことはまったくなく、するする聴けて、気づけばアルバムを聴き終えているという聴きやすさが伴っています。トータル11曲(日本盤ボーナストラック除く)で40分というランニングタイムも程よく聴けてしまう要因だと思います。

そして、そんな楽曲群をより聴きやすくしながらも、強烈なインパクトを耳に残す一因となっているのが、SKRILLEXによるミックスでしょう。このビート感(主に音色やサウンドアプローチ)は明らかに昨今のダンスミュージックからもののだと思うし、しかもそれをロック畑出身のSKRILLEXが手がけているんだから、そりゃ絶妙なバランス感で成り立つビートが完成するわけですよ。このヘヴィさは『MAKE YOURSELF』(1999年)の頃とも、『A CROW LEFT OF THE MURDER…』(2004年)の頃とも明らかに質感が違うもの。そりゃ曲のアプローチも違うんだから、全然異なるものになるわけですよ。

冒頭2曲(「No Fun」「Nimble Bastard」。後者はシングルバージョンと異なり、SKRILLEXが新たにミックスしたもの。上記のMVはミューミックス音源を用いたものです)のストレートで豪快なロックンロールから、サイケ色を散りばめたフォーキーなヘヴィロック「State Of The Art」、SMASHING PUMPKINSやSTONE TEMPLE PILOTSを彷彿とさせる「Glitterbomb」、これぞ王道INCUBUSナンバーな歌モノ「Undefeated」、ダウナーなモダンR&B「Loneliest」とどんどん表情を変えていく。かと思えば、コミカルなインタールード「When I Became A Man」を挟んで、キラキラ感のあるロック「Familiar Faces」、90年代のインターネットユーザーには懐かしい効果音から豪快なヘヴィロックへと続く「Love In A Time Of Surveillance」、そして唯一SKRILLEXが絡んでないシリアスなインスト「Make No Sound In The Digital Forest」から締めにふさわしいグランジ風ミドルヘヴィな「Throw Out The Map」で終了。いやいや、カッコ良いじゃないですか。

今年でメジャーデビュー20周年。INCUBUSはまだまだいけるよということを示すには最適な1枚というだけでなく、こういうロックがヒットチャートに必要とされなくなりつつある2017年において、今後のシーンを左右する重要な作品かもしれません。



▼INCUBUS『8』
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投稿: 2017 04 25 12:00 午前 [2017年の作品, Incubus] | 固定リンク

2017/04/24

MUTATION『MUTATION III - DARK BLACK』(2017)

2013年に2枚のオリジナルアルバムをメールオーダーで発表した、ジンジャー・ワイルドハートのソロプロジェクトMUTATION。その後しばらく音沙汰がなかったものの、2016年末に再始動が伝えられます。しかも、今回はジンジャーとスコット・リー・アンドリューズ(EXIT INTERNATIONAL)の2人体制ユニットとして復活。実はこのEXIT INTERNATIONALについては知識がまったくなかったのですが、なにやら“ノイジー・ディスコ・パンク・バンド”とのこと。検索してみると、こんな感じらしく。

なるほど。

さて。約3年ぶりに届けられる通算3枚目のオリジナルアルバム『MUTATION III - DARK BLACK』ですが、基本路線は過去2作と一緒。ただ、今作は過去にも増してシンプルかつコンパクトな仕上がりとなっています。無軌道で先読み不可能な展開というMUTATION当初の魅力が、この3年の間に消え去ってしまったのは残念ですが、相変わらず薄皮が何枚もかかったスピーカーから爆音で鳴らされるノイズは健在。実はこの変化、ジンジャーよりもスコットの色合いが強いのかなと、先のEXIT INTERNATIONALの楽曲を聴いて感じた次第です。このシンプルさ、まさにそれですものね。

また、コンパクトさは楽曲の長さ(ほぼ2分台から3分台前半)がそのままアルバムのトータルランニングに影響し、全10曲で26分半というツッコミどころ満載の長さとなっております。過去2作が同じ10曲入りでそれぞれ38分程度だったことを考えると、いかに今回無駄を削ぎ落としたかが伺えます(いや、あの複雑怪奇な展開はまったく無駄じゃなかったけど)。あと、本作は1曲目「”.”」が7秒というのも大きい要因ですね。これ、曲じゃなくて単なるインタールード(というより話し声)なんですが。

あと、本作にはデヴィン・タウンゼンド、フィル・キャンベル(MOTORHEAD)、ジェイミー・オリバー(UK SUBS)などがゲスト参加しているようです。4曲目「Devolution」にはデヴィンがフィーチャリングされているようですが……まぁ確かにそれっぽい曲かなと。いや、自信ないです。だってノイズまみれだから(苦笑)。他にもゲストが多数参加しているようなので、きっと日本盤が6月に発売された際には、クレジットなどで明らかになるはずです。ちなみに僕は、年明けにPledgeMusicでダウンロード購入したので、音しか情報がない状況でつい最近まで過ごしてきました。

にしてもこのアルバム。終盤に進むにつれてそのノイズ度がどんどん増していくんですよね。曲の切れ目もわからないぐらいだし、ラストの「Deterioration」なんてもう、スピーカーの音割れまくり。正直自分が何を聴いているのかわからなくなります。

しかし、過去2作同様に本作も何度か聴き返すうちにやみつきに……なるんでしょうかね。個人的には2ndアルバムが一番難易度が高いと思ってたけど、ここまでど直球を投げられると逆にこれはこれでハードル高いような気が。ま、過去のアルバムみたいに数年後には理解できるようになるかもしれませんね。

そういえばMUTATIONはこの秋、来日の噂もあるんだとか。耳栓必須ですな、そりゃ。



▼『MUTATION III - DARK BLACK』
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(PledgeMusic:配信音源

投稿: 2017 04 24 12:00 午前 [2017年の作品, Ginger Wildheart, Mutation] | 固定リンク

2017/04/13

DEEP PURPLE『INFINITE』(2017)

これがラストアルバム?と噂される、DEEP PURPLE通算20枚目のスタジオアルバム。前作『NOW WHAT?!』(2013年)から4年ぶりと、思っていた以上に間が空いてないんですね(その前の『RAPTURE OF THE DEEP』(2005年)から『NOW WHAT?!』の間隔8年も空いてたので)。

正直言えば、2000年代のパープルをそこまで真面目に聴いてきたわけではありません。リアルタイムでしっかり聴き込んでいたのは、リッチー・ブラックモア最終作『THE BATTLE RAGES ON…』(1993年)までで、スティーヴ・モーズ初参加作『PURPENDICULAR』(1996年)はぶっちゃけ熱心に聴いたほうではなく、その後も新作が出るたびに聴いたり聴かなかったり……という付き合い方でした。

今作に関しては、昨年末に先行公開されたアルバムのオープニングトラック「Time For Bedlam」の仰々しいイントロ&アウトロと、そこに挟まる“80年代以降のパープル”というアンバランスさが妙に引っかかり、ずっと気になっていたんです。「リリースされたら、ちゃんと聴こう」って。

で、発売された本作。どの楽曲も聴けば「あ、パープルだ」という要素が散りばめられたものばかり。それこそ70年代、80年代の彼らが好きな人、その頃の諸作品に触れた人なら必ず引っかかりのある1枚だと思います。オールドスタイルのロックンロールやブギーを軸にしつつも、重みのあるビート、プログレッシヴハードロック的アレンジなど、このバンドの歴史を総括するような楽曲がずらりと並び、そこにスティーヴ・モーズ(G)のツボを押さえたギタープレイと、ハードロックというよりはプログレチックなドン・エイリー(Key)のオルガン/シンセ/ピアノが加わることで、“古臭いのにどこか新鮮”という最初に「Time For Bedlam」を聴いて感じた“引っかかり”を楽しめるはずです。

ただ、イアン・ギランのボーカルに関しては……71歳という高齢のわりに健闘していると思いますが、やはり往年のシャウトは期待できないわけで。一定のトーンで歌われるボーカルのせいで、タイトな演奏とは相反する緩さが生じてしまっています。が、そこを差し引いて考えればなかなか良くできたハードロックアルバムとして楽しむことができるんじゃないでしょうか。いや、冗談抜きで、とてもリラックスして楽しめる1枚です。まさかパープルの作品とこういう向き合い方をする日が来るなんて、思ってもみなかったけど。

長年活動が続くロックバンドの加齢問題は、このDEEP PURPLEに限らずたくさんあります。JUDAS PRIESTやSCORPIONSも一時期引退を示唆していましたし。パープルが本当にこのアルバムとそれに伴うワールドツアーで活動を終了させるのかは現時点では不明ですが、仮にもしこのアルバムで最後だとしても誰も文句は言わないはずです。それに見合った優れた作品を作り上げたわけですから。


▼DEEP PURPLE『INFINITE』
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投稿: 2017 04 13 12:00 午前 [2017年の作品, Deep Purple] | 固定リンク

2017/04/01

NIGHT RANGER『DON'T LET UP』(2017)

NIGHT RANGER通算11枚目(“MOON RANGER”呼ばわりの1995年発売『FEEDING OFF THE MOJO』を含めたら12枚目)のスタジオアルバム『DON'T LET UP』。2011年の『SOMEWHERE IN CALIFORNIA』、2014年の『HIGH ROAD』と同じラインナップ……ジャック・ブレイズ(Vo, B)、ケリー・ケイギー(Vo, Dr)、ブラッド・ギルス(G)、ジョエル・ホークストラ(G)、エリック・レヴィー(Key)の5人で制作し、やっとバンドとしても固まってきたかなという2014年夏、『HIGH ROAD』リリースからしばらくしてジョエルが脱退し、WHITESNAKEに加入というニュースが流れます。バンドは一時期ライブにサポートメンバーとして参加したケリ・ケリー(VINCE NEIL、RATT、WARRANT、L.A.GUNSなど)を加えてライブを続け、ケリはそのまま正式加入。前作から3年の歳月をかけ完成させたのが、本作『DON'T LET UP』となるわけです。

とはいえ、昨年にはケリを含む編成でのライブアルバム&映像作品『35 YEARS AND A NIGHT IN CHICAGO』もリリースされていたので、そちらに触れていた人にはこの編成の移行はすんなり行くものだったのかもしれません。僕もたまたま、今年に入ってからその映像作品を観る機会があり、最初こそ違和感があったものの、見終える頃には不思議とケリの存在に馴染んでしまっていたのをよく覚えています。

さて、気になる新作ですが……『SOMEWHERE IN CALIFORNIA』以降の流れを組む、“これぞNIGHT RANGER”な仕上がり。ハードドライヴィングなロックチューン「Somehow Someway」からスタートするところは、若干の落ち着きを見せた前作『HIGH ROAD』よりも期待度を高めてくれるはず。「Truth」のような『HIGH ROAD』の流れにあるポップチューンもありますが、パワフルなビートとツインリードギターのミックスが気持ち良い「Running Out Of Time」、ギターがのたうちまわるハードロック「Day And Night」、ギターのフレーズやボーカルの泣きメロがNIGHT RANGERとしては新鮮なタイトルトラック「Don't Let Up」、疾走感あふれる「Say What You Want」など、基本的にはハードロック路線の作風です。

しかし、先の「Don't Let Up」のようにメロディはどれも親しみやすくキャッチーなものばかり。その極め付けが、ビートルズを彷彿とさせるハーモニーが心地よい「We Can Work It Out」でしょう。バラートとまではいかないものの、穏やかなテンポ感とアコースティックギターを用いたアレンジがバンドの軸にある“グッド・メロディ”を浮き彫りにし、これもNIGHT RANGERの持ち味のひとつだと再認識させてくれます。こういう曲が再びヒットチャートを賑わせる時代が訪れるといいな……と純粋に思わせてくれる1曲です。

さらに、アルバムラストを飾るのはアコースティック調のバラード「Nothing Left Of Yesterday」。こういったパワーバラードもこのバンドの大きな武器のひとつなのは紛れもない事実で、しばらく新曲としては封印されていたこの要素をアルバムの最後に持ってくるあたりに、今のNIGHT RANGERの好調ぶり、自信の強さが表れているように感じます。

例えば「Don't Tell Me You Love Me」や「(You Can Still) Rock In America」「Sister Christian」「Sentimental Street」などのような“決定的な1曲”はこのアルバムには存在しないかもしれない。しかし、それに匹敵する高レベルの楽曲がずらりと並ぶ、平均点以上のアルバムなのには違いありません。過去にとらわれることなく、本作が正当に評価されることを望みます。



▼NIGHT RANGER『DON'T LET UP』
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投稿: 2017 04 01 12:00 午前 [2017年の作品, Night Ranger] | 固定リンク

2017/03/31

MASTODON『EMPEROR OF SAND』(2017)

2014年リリースの『ONCE MORE 'ROUND THE SUN』に続く、MASTODON通算7枚目のスタジオアルバム。本国アメリカでは前作が全米6位という過去最高位を記録したほか、2015年春にここ日本でも初の単独来日公演も実現するなど、かなり良好なタイミングに発表される今作は、「死刑宣告を受けた砂漠の放浪者が、無慈悲にも流れ落ちていく砂時計を前に“生と死”と向き合っていく」というコンセプチュアルなテーマが設けられたアルバムとなっています。がしかし、そこはMASTODONのこと。単なるコンセプトアルバムにはなっておらず、曲単体でも十分に楽しめる極上のHR/HM作品集に仕上げられています。

実は本作の日本盤にて筆者がライナーノーツを執筆しているため、本作をひと足早くフルで聴くことができました。詳細な内容やアルバムの解釈についてはライナーノーツに譲るとして(なのでぜひ日本盤で、対訳含めて堪能してみてください)、ここでは最初に聴いた際の各楽曲の感想メモを紹介していきたいと思います。

M-1「Sultan's Curse」
変幻自在なリズムと硬質なギターリフが固まりとなり、うねりを伴いながら突進してくる。アルバムのオープニングにふさわしい1曲。

M-2「Show Yourself」
キャッチーなメロディを持つ、親しみやすいヘヴィロック。のたうちまわるかのごとく暴れまくるギターソロが耳に残る。

M-3「Precious Stones」
不思議な音色&和音からなるギターリフと疾走感のあるバンドサウンド、どこかひんやりとしたハーモニー、随所に絡むツインリード。どれを取ってもカッコいいし、それらが交わったときに生まれる絶妙な緊張感が最高。

M-4「Steambreather」
聴き手をどこか不安な気持ちにさせる音使いと、その合間に登場するのたうちまわるギターソロが印象的。

M-5「Roots Remain」
グランジにも通ずる不穏なメロディと、手数の多いドラミングからなる前のめりなリズム。と同時に壮大さも兼ね備えており、ドラマチックな展開をしていく。

M-6「Word to the Wise」
4分の6拍子と4拍子を行き来する複雑さ、歌メロの裏で主張するギターソロ、さらに曲が進むにつれてのたうちまわり方が増す。壮大さは前曲からの流れあり。

M-7「Ancient Kingdom」
ギターリフとリズムで曲を引っ張る、独特のグルーヴ感。ボーカルは淡々としているのに、演奏で緩急をつけるアレンジは圧巻の一言。しかし、そのボーカルも曲後半に進むにつれ熱を帯びていく。

M-8「Clandestiny」
メロディを奏でるようなギターリフと、それと相反する歌メロが乗ることで生まれる化学反応。これぞMASTODONという1曲では。

M-9「Andromeda」
不穏さがさらに増すもスペーシーなメロディ/アレンジも含まれており、全体的な壮大さは保ったまま。天にも昇るようなギターフレーズと、叫び伝えるボーカルは絶品。

M-10「Scorpion Breath」
突進していくような前のめりさ、スリリングさを持つスピード感。前曲から続く断末魔のような叫び。いよいよ物語はクライマックスを迎えようとしていることが、この曲からも伝わってくる。

M-11「Jaguar God」
アコースティックギターの音色から始まる、もの悲しげなバラード。曲は徐々に激しさを増していき、5分近く進んだところで一気に豹変。その凶暴さをみせる。これぞプログレッシヴメタルと呼べる叙情的大作。ただひたすらドラマチック。

以上、いかがでしたでしょうか。これまでのMASTODONが好きな人なら絶対にお気に入りの1枚になることは間違いないでしょう。先に曲単位で取り上げても素晴らしいと書きましたが、ここまできたら本作はアルバム全編を通して聴いてほしいな。そしてライブも、できることならアルバムまるごと、11曲通しで演奏してほしい。そんな欲すら生まれてしまう傑作だと思います。



▼MASTODON『EMPEROR OF SAND』
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投稿: 2017 03 31 12:00 午前 [2017年の作品, Mastodon] | 固定リンク

2017/03/22

STEPHEN PEARCY『SMASH』(2017)

5月13、14日に幕張メッセイベントホールで開催が決まった、L.A.メタル界隈のレジェンドたちが一堂に会する屋内フェス『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』。こちらの2日目ヘッドライナーとして出演するのがスティーヴン・パーシー、ウォーレン・デ・マルティーニ、フォアン・クルーシェ、カルロス・カヴァーゾによるRATT。もはやボビー・ブロッツァーのRATTはどこへやら(日本では確実に受け入れられないだろうけどね)。

そんな、あれこれ慌ただしくなり始めたRATT界隈から年始にスティーヴン・パーシーの4thソロアルバム『SMASH』がリリースされました。ソロとしては2008年の『UNDER MY SKIN』以来約9年ぶり、直近のリリースとなると2010年のRATT『INFESTATION』以来約7年ぶり。その間にスティーヴンも59歳になってしまいました……。

さて、アルバムはダークなスローナンバー「I Know I'm Crazy」からスタート。「全然声が出てないじゃん……」な低音ボイスに若干不安になりますが、2曲目「Ten Miles Wide」以降は我々がよく知る“Voice of RATT”を堪能することができます。安心した。

楽曲自体もメロディ、テンポ感含めRATTの延長線上にあるナンバーばかりで、往年の彼を知るHR/HMファンなら間違いなく楽しめる1枚だと思います。また「Shut Down Baby」「What Do Ya Think」「Summers End」みたいなLED ZEPPELIN風ヘヴィブルースも含まれており、同系統の楽曲が多い本作中で程よいアクセントとなっています。

そう、もともとRATTって決して楽曲の幅が広いタイプのバンドではなかったし、スティーヴン自体も幅広く何でも歌えるタイプのシンガーではないので、この金太郎飴的アルバムは聴く人によっては退屈と感じてしまう可能性もゼロではありません。RATTの全盛期を知らない若い子たちがこれを聴いてどう感じるのか、非常に気になるところです。

ちなみにレコーディングに参加しているのは、2005年からスティーヴンのソロバンドでの片腕的存在Erik Ferentions(G)、初期RATTやROUGH CUTTのメンバーだったMatt Thorn(B)、WHITE LIONやザック・ワイルドのPRIDE & GLORYにも在籍した経験を持つGreg D'Angelo(Dr)。ギタープレイからはRATTほどの強い個性は感じませんし、耳に残るフレーズも少ないのですが、楽曲のメロディ自体はクセになるものが多いのも事実。そういう意味では“Voice of RATT”の個性を存分に生かした、“Voice of RATT”のためだけに作られたアルバムと言えるでしょう。スティーヴンの歌を最良の形で楽しむ作品集。個のぶつかり合いを楽しむRATTとは異なる作風ではあるものの、これもまた“もうひとつのRATT”と言えるかもしれませんね。



▼STEPHEN PEARCY『SMASH』
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投稿: 2017 03 22 12:00 午前 [2017年の作品, Ratt, Stephen Pearcy] | 固定リンク

2017/03/09

BLACK STAR RIDERS『HEAVY FIRE』(2017)

元THE ALMIGHTYのリッキー・ウォリック(Vo, G)、元THIN LIZZYのスコット・ゴーハム(G)を中心に結成された、“THIN LIZZYの正統的後継バンド”BLACK STAR RIDERS。彼らが2015年の2ndアルバム『THE KILLER INSTINCT』に続いて発表したのが、本作『HEAVY FIRE』です。2月初頭に発表された今作は、すでにイギリスで初登場6位という好成績を残しています。

もともとは“フィル・ライノットのいないTHIN LIZZY”がライブ活動の延長で、オリジナル曲を発表する上でTHIN LIZZYの名前を使わないため、そして「THIN LIZZYの物語を次のステップに進めるため」に新た結成されたのがBLACK STAR RIDERSというバンド。現在はリッキー、スコットのほか、BROTHER CANEなどで活躍したデイモン・ジョンソン(G)、ヴィンス・ニールのソロプロジェクトやRATTに在籍したロビン・クレイン(B)、Y&TやMEGADETHなど数々のバンドで活動し、最近はRATTにも参加しているジミー・デグラッソ(Dr)という5人で活動しています。

確かに本作にはTHIN LIZZYの“香り”がそこらじゅうから感じられます。それはリッキーの「どことなくフィル・ライノットに似た」男臭い歌声だったり、独特な節回しを含むメロディだったり、随所にフィーチャーされるツインリードギターだったり……それらがミックスされることでTHIN LIZZYっぽい“香り”になるのですが、あくまで“っぽい”止まり。そこにアイリッシュトラッド的な要素ではなく、アメリカンロック的な大らかなノリやブルース、フォークなどのテイストが加わることで独自の世界観が作り上げられています。

今作は前作同様、アメリカ・ナッシュビルでレコーディングを敢行。プロデューサーには前作から引き続きニック・ラスカリニクス(ALICE IN CHAINS 、DEFTONES、FOO FIGHTERSなど)を迎えて制作されており、そのへんも本作の方向性に大きな影響を与えているのかもしれません(それ以前にバンド内のアメリカ人比率が高いことも大きいと思いますが)。THIN LIZZYが本来持ち合わせていた音楽的“アイリッシュ訛り”が払拭され、よりワールドワイドで戦える音に昇華されています(もちろんこれは、THIN LIZZY元来のサウンドがワールドワイドで戦えないという意味ではありません。「クセが弱まったぶん、より幅広い人たちに聴いてもらえる体制が整った」ということです)。

王道THIN LIZZY調の「Testify Or Say Goodbye」みたいな曲を残しつつも、全体ではTHIN LIZZYテイストは調味料程度で、リッキーやスコットなどのメンバーが本来持つ個性がより強く出始めています。それを良しとするか、それともなしとするかで本作の評価は大きく分かれるかもしれません。個人的には全体のバランス感が絶妙で、過去2作以上にお気に入りな1枚です。



▼BLACK STAR RIDERS『HEAVY FIRE』
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投稿: 2017 03 09 12:00 午前 [2017年の作品, Almighty, The, Black Star Riders, Thin Lizzy] | 固定リンク

2017/03/08

JACK RUSSELL'S GREAT WHITE『HE SAW IT COMIN'』(2017)

2つの同じ名前のバンドが同時期に存在する……日本だったらまずありえないことですが、海外に目を向けるとこういった案件がいくつか存在します。最近だとドラマーのボビー・ブロッツァー以外は知らないメンバーからなるRATTと、スティーヴン・パーシー(Vo)、ウォーレン・デ・マルティーニ(G)、フォアン・クルーシェ(B)という“バンドの顔”が在籍するRATT。今も裁判で揉めてますよね。ちょっと前だと、バンドを首になったフロントマンのジェフ・テイトひとりが名乗るQUEENSRYCHEと、ジェフを首にして新たなフロントマンを迎えて活動を続けるQUEENSRYCHE。こっちはもっと厄介で、同じ年に同じ名前の2つのバンドがアルバムを発表してしまいました。結果、初期のヘヴィメタル路線へと回帰した後者がチャート的にも成功。ジェフ側はOPERATION: MINDCRIMEと名を変え、今も活動を続けています。

なぜこんな面倒な話題を書いたかというと、今日紹介するGREAT WHITEもそんな状況に陥っているからです。彼らはジャック・ラッセル(Vo)、マーク・ケンドール(G)、マイケル・ローディ(G, Key)、オーディ・デスブロウ(Dr)、トニー・モンタナ(B)という編成で80年代後半にいくつかのヒットを飛ばし、メンバーチェンジを繰り返しつつも活動を継続。2003年2月にはライブハウスの火災事故でメンバーを含む100名が亡くなり活動休止。2006年頃に活動再開しますが、2009年に怪我を理由にジャックが脱退。回復後もバンドに戻らず、JACK RUSSELL'S GREAT WHITE名義でバンド活動を再びスタートさせるのです。

この『HE SAW IT COMIN'』はそのJACK RUSSELL'S GREAT WHITEが2017年1月に発表した1stアルバム。ちなみにこちらのバンドには元GREAT WHITEのトニー・モンタナ(B)が加わり、現在はベースではなくリズムギターやキーボードを担当しています。

ジャックのボーカルは80〜90年代のよりもトーンは低めながらも、一聴して“あのGREAT WHITEの声”とわかるもの。すでに50代半ばですもの、そりゃ枯れまくっているわけですが、逆にそれがGREAT WHITEが80年代後半から徐々に深めていったブルーステイストのHRサウンドにはぴったりとマッチしています。楽曲自体も派手さは皆無で、従来のGREAT WHITEっぽい楽曲も数曲(オープニングの「Sign Of The Times」、リズミカルなブギー「My Addiction」、アコースティックバラード「Anything For You」、リフでぐいぐい引っ張るストレートなハードロック「Blame It On The Night」)あるにはありますが、その他の曲はもっとAOR調というか……曲によってはFREEやBAD COMPANY、あるいはFORINGNERなどをイメージさせられるし、ファンキーなソウルナンバー「Don't Let Me Go」、グラマラスなブリティッシュロック「He Saw It Comin'」みたいな曲もあって、アルバムとしてはとてもバラエティに富んだ仕上がりとなっています。そういう意味では、THUNDERの最新アルバム『RIP IT UP』にも近い雰囲気があるかもしれません。

特にリードギターのロビー・ロックナーが適度にテクニカルなフレーズを散りばめており、それが地味になりがちなアルバムに適度なフックを作っています。いわゆるブルースギタリストとは異なる、正統派ハードロックギタリストを要するJACK RUSSELL'S GREAT WHITEが今後、どういう方向に向かっていくのか。本家GREAT WHITEよりも拡散方向に進みつつあることがわかっただけでも、このアルバムは大きな収穫と言えるのではないでしょうか。大絶賛するまでの作品ではないかもしれませんが、リラックスしながら聴くには最適な1枚かと思います。

ちなみに、本家GREAT WHITEはこの1月から新作制作のためスタジオ入り。マイケル・ワグナーをプロデューサーに迎え、2012年の『ELATION』に続くアルバムを今年中に発表するようです。



▼JACK RUSSELL'S GREAT WHITE『HE SAW IT COMIN'』
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投稿: 2017 03 08 12:00 午前 [2017年の作品, Great White] | 固定リンク

2017/03/07

TOKYO MOTOR FIST『TOKYO MOTOR FIST』(2017)

80年代末にシーンに登場しながらも中ヒット止まりだった2つのアメリカンHRバンド、DANGER DANGERとTRIXTER。両者は解散やメンバーチェンジなどを経て、2017年現在も存続しており、前者は2014年9月にデビュー25周年記念の来日公演を行い、後者は2015年にアルバム『HUMAN ERA』を発表しています。

そんな2バンドから、DANGER DANGERのフロントマンであるテッド・ポーリー(Vo)と、TRIXTERのメインソングライター兼プロデューサーでもあるスティーヴ・ブラウン(G)が、90年代にRAINBOWに在籍したグレッグ・スミス(B)とチャック・バーギー(Dr)と新バンドTOKYO MOTOR FISTを結成。2017年2月に待望の1stアルバム『TOKYO MOTOR FIST』をリリースしました。

80年代末から90年代初頭にデビューしたUSバンドの中では印象的な美メロ楽曲が多かったTRIXTER。個人的にも彼らの1枚目(1990年の『TRIXTER』)と2枚目(1992年の『HEAR!』)は今でも気に入っている作品です。このTOKYO MOTOR FISTでは楽曲のソングライティングのみならず、プロデュースからミックス、エンジニアリングまですべての制作作業をスティーヴが担当。楽曲の軸のみなら“TRIXTERの新作”と呼んでも差し支えない内容かと思います。しかし、そこに“いかにもアメリカン”な適度に枯れて適度に湿り気のある声を持つテッドのボーカルが加わることで、TRIXTERはもちろんDANGER DANGERとも違う別のバンドとして成立するわけです。

派手ではないもののどっしりとボトムを支えるリズム隊のプレイ、能天気なアメリカ人というよりはどこか影のあるメロとアレンジ、そして重厚なコーラスワークと、ここで聴けるのはDEF LEPPARDやFIREHOUSEにも通ずる正統派ハードロックサウンドそのもの。「Pickin' Up The Pieces」「Love Me Insane」「Shameless」の頭3曲なんてまさにそれなんだけど、かといってボーカルがハイトーンすぎずに程よい温度感を保っている。バラードナンバー「Don't Let Me Go」も歌い上げすぎていないから、気持ち良く聴けてしまうんです。

かと思うと、「Put Me To Shame」みたいにマイナーキーの泣きメロHRもあれば、引きずるようなヘヴィさを持つ「Done To Me」もあるし、AOR調のミディアムナンバー「Get You Off My Mind」もある。そして最後はアップテンポの美メロナンバー「Fallin' Apart」で幕を降ろすわけです。どの曲も3〜4分程度でコンパクト、ひたすらメロディの気持ちよさにヤられて、気がついたら11曲41分があっという間に終わっている。で、また最初から聴き返しているという、そんなスルメ的魅力の1枚です。

聴く人によっては「ボーカルはもっと声を張り上げてないと」と難をつけるかもしれませんが、僕としてはこれくらいの温度感がちょうどよく感じられる。むしろ、これくらいだから何度も何度もリピートしたくなってしまうんです。決して2017年的な作品ではないけど、逆にこの時代にこういったサウンドと真正面から向き合ったテッド&スティーヴの2人に賞賛を送りたいくらい。それぞれのメインバンドとうまく並行して、2枚目3枚目と良質な作品を発表し続けてほしいものです。



▼TOKYO MOTOR FIST『TOKYO MOTOR FIST』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 03 07 12:00 午前 [2017年の作品, Danger Danger, Tokyo Motor Fist, Trixter] | 固定リンク

2017/03/05

OVERKILL『THE GRINDING WHEEL』(2017)

OVERKILLってすごく勤勉なバンドだと思う。1984年の最初のEP『OVERKILL』をリリースして以降、1〜2年に1枚ペースでアルバムを発表していて、21世紀に入ってからもそのペースはほぼ変わることなく、2〜3年に必ず1枚発表しているんだから。その結果、先月リリースされたニューアルバム『THE GRINDING WHEEL』が通算18枚目のオリジナルアルバムになるわけですから。

80〜90年代はそれほど熱心に聴いていたわけではなく、来日すれば観に行く、たまたま海外の滞在先でライブがあったから観に行ってみた、とかそのレベル。いや、それってかなり好きだったんじゃないの?と今気づいたわけですが……(苦笑)。本格的にハマッたのは、実は10年に満たないくらい。アルバムでいうと……15th『IRONBOUND』(2010年)くらいかな。そこから毎回新譜が出たらすぐに買い、気づけば旧譜もライブ盤、コンピ含めすべて揃えていたという。今はそれくらいには好きです。いや大好きです。

そんな彼らの新作。特に今回は長尺の楽曲が多いなと。オープニングの「Mean, Green, Killing Machine」からして7分半ですし、全10曲(ボーナストラックのカバー2曲を除く)中6分を超える楽曲が半数、それ以外もほぼ5分超えで、さらに頭とケツの「The Grinding Wheel」の2曲は7分超えですから。もちろんこれまでの彼らにはそういった作品はなくはなかったので(2012年の16th『THE ELECTRIC AGE』がまさにそんな感じかな。古くは1989年の4th『THE YEARS OF DECAY』なんてのもありましたし)特に問題はないのですが、今作は単にそういった作品の延長線上にあるものとはちょっと違うんですよね。

複雑な展開を持つ、いかにも80年代的スラッシュ「Mean, Green, Killing Machine」で聴き手を圧倒させたかと思えば、「Goddamn Trouble」「Our Finest Hour」でエンジンがフルスロットルに。特に後者の爆走っぷりは、これこそOVERKILLと叫びたくなるようなもの。確かに長尺曲3連発は人によってはキツいかもしれないけど、個人的にはこれで掴みはOK。「ああ俺、OVERKILLの新作聴いてるよ……」と悦に浸れるわけです。

ところが、5曲目「The Long Road」あたりから様相が変わり始めます。シンガロングできそうなイントロのメロディやギターフレーズ、スラッシュというよりは王道HM感の強い曲調&アレンジ、そこから通常運転的スラッシュアレンジへとなだれ込む構成は圧巻の一言。さらにドゥーミーさを持ち合わせたミドルヘヴィなイントロから転調してテンポアップする「Let's All Go To Hades」や「Come Heavy」にはBLACK SABBATHからの影響が感じられるし、ラストの「The Grinding Wheel」はサバスはサバスでもDIOサバス的な匂いのドラマチックさがあるし。そう、全体的に“ヘヴィメタル”が高いんです。

メタルバンドに対して何を言っているんだ?と思われるかもしれませんが、そこがそれ以前の作品と本作の大きな違い。OVERKILLらしい豪快なヤケクソ感は本作でも健在ですが、本作にはそこにレジェンドたちの功績を讃えるようなエッセンスが散りばめられており、それが絶妙な化学反応を起こしているように感じられるのです。それは、アルバム本編に続くボーナストラック2曲……THIN LIZZY「Emerald」と、日本盤のみ収録のIRON MAIDEN「Sanctuary」の両カバーが並ぶことで、より明確になります。さらにアルバムタイトル……これってJUDAS PRIEST『BRITISH STEEL』の自己解釈ってことでよろしいですよね?

スラッシュメタルバンドにありがちな「リフの数を増やして次々に展開していく長尺曲」ではなく、正統派ヘヴィメタルバンドが過去に生み出してきたスタイルをOVERKILL流に解釈した結果。それがこの力作『THE GRINDING WHEEL』なんじゃないでしょうか。ホント、大好きな1枚です。



▼OVERKILL『THE GRINDING WHEEL』
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投稿: 2017 03 05 12:00 午前 [2017年の作品, Overkill] | 固定リンク

2017/03/01

ドレスコーズ『平凡』(2017)

とんでもなく“非凡”なアルバムの完成! しかも、デジタルダウンロードやストリーミングが主流になるつつあるこの時代に、アルバムを丸ごと通して楽しむことを前提としたコンセプトアルバムとして仕上げられている(しかもそれを作ったのが、かの志磨遼平だっていう)んだから、痛快っちゃあありゃしない。音源を聴く前の、本人解説の時点で思わずガッツポーズをとってしまったほどですよ。

完成したアルバムには、昨今の高速四つ打ちダンスロックに対するアンチテーゼかと思うような、いびつでドス黒く、それでいて我々日本人のアンデンティティが色濃く表れたダンスチューンがずらりと並ぶ。個性の塊でしかない異端なミュージシャンを携え、ある意味“異端であることが当たり前すぎるくらい”な志磨遼平が銘打つ『平凡』。もしかしたらこれがのちにひとつの指標として捉えられたとき、本当に“平凡”なものになってしまうのかもしれない。そんな怖さとドキドキ感がダイレクトに伝わる今作を、誤解を恐れずに“ドレスコーズ版『REMAIN IN LIGHT』(言わずと知れたTALKING HEADの名盤)”と呼びたいです。

デヴィッド・バーン役もブラアン・イーノ役もすべてひとりでこなす志磨遼平、恐るべし。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼ドレスコーズ『平凡』
(amazon:国内盤CD+DVD(初回限定盤) / 国内盤CD+DVD(通常盤)

投稿: 2017 03 01 12:00 午後 [2017年の作品, ドレスコーズ] | 固定リンク

2017/02/27

KREATOR『GODS OF VIOLENCE』(2017)

ドイツの大御所スラッシュメタルバンドKREATORの約5年ぶり、通算14枚目のスタジオアルバム。今年で35周年という、アメリカのMETALLICA、SLAYTERあたりと並ぶ活動歴を持つ彼らですが、サウンド的にはスラッシュ一辺倒ではなく、時代の流行りに乗った時期もありました(ゴシック/インダストリアル調のミドルナンバーが中心だった1992年の6thアルバム『RENEWAL』、1997年の8thアルバム『OUTCAST』あたりが顕著)。しかし2001年に現在の編成で制作された10thアルバム『VIOLENT REVOLUTION』を機に、再びスラッシュサウンドへと回帰。以降は常に評価の高い作品を送り続けています。

ミレ・ペトロッツァ(Vo, G)とユルゲン“ヴェンター”レイル(Dr)の創設メンバー2名にサミ・ウリ・シルニヨ(G)、クリスチャン・ギースラー(B)という、おそらく現時点で最強の布陣で制作された最新作『GODS OF VIOLENCE』は、21世紀に入ってからもっとも長いインターバルで発表されたアルバム。なにせこの約5年の間に彼ら、二度も来日してますからね(2014年の『LOUD PARK 14』、2016年の『THRASH DOMINATION 16』)。そもそも2014年の時点で実に9年ぶりの来日公演だったわけで、いかに前作『PHANTOM ANTICHRIST』(2012年)とそれに伴う活動が充実していたかってことですよね。

そんないい流れで制作された『GODS OF VIOLENCE』は、現編成での集大成というだけでなく、ゴシックロックへと傾倒した時期までもを含む、全キャリアを総括したかのような内容。単なるスラッシュ一辺倒で終わっておらず、パワーメタル的な色合いもあれば、メロディにはどこかゴシックロックを思わせるテイストもあり(アートワークの観点では、ブックレット内の写真は完全にゴスの流れにあるものでしたが)、さらにはケルト民謡やTHIN LIZZYあたりにも通ずるアイリッシュ民謡などの要素も散りばめられています。特にサミによるギターソロは非常にメロディアスで、単なるスラッシュメタルでは終わらないオリジナリティが感じられます。

もはや初期の『PLEASURE TO KILL』(1986年)や『EXTREME AGGRESSION』(1989年)の頃とは別モノと考えるのが正しいのかもしれませんが、これも間違いなくKREATOR。スタートから35年を経て進化した形が、この『GODS OF VIOLENCE』なのです。そういう意味では彼ら、(そのサウンドや辿った道は若干異なるものの)意外とANTHRAXに近いのかもしれませんね。

ちなみに本作、本国ドイツで初のチャート1位を獲得。オーストリアでも4位、フィンランドで7位、スイスで13位、スウェーデンで19位、さらにアメリカでも118位と、それぞれ過去最高位を記録しています。もちろんチャートの数字がすべてではありませんが、この内容のすごさや充実度を示す意味でも多少は参考にできる結果ではないでしょうか。

なお、本作の限定盤には2014年の『WACKEN OPEN AIR 2014』でのライブ映像が収められたDVD付き(日本盤のみBlu-ray仕様も用意)。さらに日本盤のみスペシャル盤として、その『WACKEN OPEN AIR 2014』のライブCDが追加された3枚組仕様も発売されています。この『WACKEN OPEN AIR 2014』、10thアルバム『VIOLENT REVOLUTION』以降の楽曲が全14曲中10曲と2001年以降のベスト盤的内容(『PHANTOM ANTICHRIST』リリース後なので、同作からの楽曲が半数を占めますが)。そこに超初期の「Endless Pain」「Pleasure To Kill」「Tormentor」といった激スラッシュ、中期の「Phobia」が違和感なく並ぶというのも興味深いところ。結局そういうことなんですよね。



▼KREATOR『GODS OF VIOLENCE』
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投稿: 2017 02 27 12:00 午前 [2017年の作品, Kreator] | 固定リンク

2017/02/24

THUNDER『RIP IT UP』(2017)

THUNDERは本当に勤勉なバンドだ。20年前と比べたらアルバムのリリースサイクルなんて3年くらいが当たり前となった昨今、ちゃんと2年に1枚のペースで新作を届けてくれるんだから。

というわけで、2015年2月に発表された通算10枚目のオリジナルアルバム『WONDER DAYS』が久々のヒット作となったTHUNDERが、ちょうど2年ぶりにリリースしたのが本作『RIP IT UP』。2年ぶりとは言いながらも、実は昨年3月には2枚組ライブCD+ライブ映像からなる大作『ALL YOU CAN EAT』も発表しているので、実質1年ぶりの感覚なんですよね。何なんでしょうね、この真面目さは。古き良き(もしくは悪しき?苦笑)イギリス人なんでしょうね、彼らは。

前作制作時はベン・マシューズ(G, Key)が病気療養中でレコーディングに参加できかったため、キーボード類はルーク・モーリー(G)がすべて担当していたようですが、今作では晴れてベンも復帰し、ルーク、ダニー・ボウズ(Vo)、ゲイリー・ジェイムズ(Dr)、クリス・チャイルズ(B)という、『THE THRILL OF IT ALL』(1997年)を携えたツアーから不動のメンバーが揃ったわけです(もちろん、前作完成後のツアーにはベンも参加済みですが)。

今作『RIP IT UP』、基本ラインは『WONDER DAYS』から……いや、従来のTHUNDERのスタイルからこれっぽっちもズレていません。しかし、『WONDER DAYS』に感じられた攻めの姿勢やみずみずしさは若干後退し、より貫禄と渋みが増した印象があります。では地味な作品なのかというと、そんなこともない。オープニングを飾る「No One Gets Out Alive」にしろバラードナンバー「Right From The Start」にしろ、メロディはとてもキャッチーで親しみやすい。だけど、全体を覆う空気感はよりアダルトなものになったイメージが強いんです。

とはいえ、グラムロック時代のデヴィッド・ボウイを彷彿とさせる「Rip It Up」、独特のグルーヴ感を持つミドルチューン「Heartbreak Hurricane」、地を這うようなベースラインとシャッフル気味のリズムが気持ち良い「In Another Life」、力強いビートとTHUNDERらしいギターリフのコンビネーションがクールな「The Enemy Inside」のように印象的な楽曲も多く、簡単に「枯れた」とか「AOR調になった」という言葉では片づけられない魅力もたっぷり詰め込まれています。

確かに『WONDER DAYS』のような即効性は弱めかもしれない。だけど、聴けば聴き込んだだけ味わいが増す。思えば中期以降のTHUNDERのアルバムってそういう作品が多くなかったでしたっけ。そういう意味では、本作ではいろんな経験を得た彼らが『WONDER DAYS』という何度目かのデビュー作を経てたどり着いた、等身大の1枚なのかもしれません。

人によってはそれを退屈と呼ぶかもしれない。しかし、退屈な曲なんてこれっぽっちもない。聴けば聴くほどボディブローのように効いてくる、そんな“地味にスゴイ”アルバムだと思います。

なお、本作もボーナスディスクを追加した特殊仕様を多数用意。海外盤と共通なのは、昨年行われた数百人規模でのレアライブを収めた2枚組アルバム『LIVE AT THE 100 CLUB』が付属した3枚組仕様が用意されていること。ここに日本盤のみ、アルバム未収録の新曲4曲入りEP『BROKEN MIRROR』付き4枚組(!)仕様も存在。とりあえず『LIVE AT THE 100 CLUB』は必聴盤ですので、悪いことはいいません、ちょっとでも興味があるなら3枚組仕様もしくは4枚組仕様の購入をオススメします。

※追記
最新のUKアルバムチャートにて、『RIP IT UP』が初登場3位にランクイン。前作『WONDER DAYS』を超えたのはもちろんのこと、1992年の2ndアルバム『LAUGHIN' ON JUDGEMENT DAY』の2位に次ぐ快挙を成し遂げました。



▼THUNDER『RIP IT UP』
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投稿: 2017 02 24 12:00 午前 [2017年の作品, Thunder] | 固定リンク

2017/02/21

FIREWIND『IMMORTALS』(2017)

2009年からオジー・オズボーンの片腕としてツアーやアルバム『SCREAM』(2010年)に参加しているガスG.。彼のメインバンドとなるのがこのFIREWINDであることは以前から知っていましたし、『SCREAM』を聴く前はいわゆる“クサメタル”系ギタリストがオジーと組むことに違和感を覚えたのですが、いざ完成したアルバムはそれまでの流れを汲む、非常にオジーらしいモダンな内容でした。

そういうこともあって、一度このFIREWINDも聴いてみなくちゃと思っていたものの、なかなか手が伸びず。気づけば2017年を迎えていたわけですが、このたび無事タイミングが合い(笑)、FIREWINDの通算8枚目のオリジナルアルバム『IMMORTALS』を聴くことができました。

オリジナル作品としては2012年の『FEW AGAINST MANY』から5年ぶりの新作となりますが、今作ではボーカルが新加入のヘニング・バッセに変更。初めて聴くので、あえて過去と比較することなく楽しめるかなと思ったのですが……今回の新作って、コンセプトアルバムだったんですね。買ってから気づきました(笑)。

まぁ変な先入観を捨てて、いざアルバムを聴いたわけですが……オープニングの「Hands Of Time」の“王道クラシカル”感にいきなり当てられ早くもおなかいっぱいに(苦笑)。3曲目「Ode To Leonidas」のオープニングのセリフとか、4曲目「Back On The Throne」の仰々しいシンセイントロにハードルの高さを少しだけ感じましたが、いざ曲が始まると普通にカッコいい。あれ、意外とイケるじゃん、自分。

正直、僕はネオクラシカルやクサメタルに苦手意識があったのですが、このアルバムに関しては思っていた以上にスルスル楽しめた。その一番の要因は、ボーカルとギターにかるのかなと思いました。この手のバンドにありがちな、線の細いハイトーンボイスではなく、適度にドスの効いた太い声はスラッシュ以降や昨今のラウドの流れを楽しむ自分にも親しみやすいし、なによりガスG.のギターが非常に面白い。クラシカルなプレイもあれば、オジーのアルバムで聴けたヘヴィなプレイもある。どうやら2015年に発表さいたソロアルバム『BRAND NEW REVOLUTION』はオジー寄りのヘヴィロック的作風だったようですが、両要素を巧みに使い分け、かつ適度に融合させることができるあたりに、本作の勝因があるのではないかと思っています。2分に満たない攻めのインストナンバー「Immortals」を聴けば、その考えはより強まるばかりです。

もちろんクサメタルファンにとっては最高の1枚でしょうが、普段ラウドロックばかりを聴いてるような自分にも十分楽しめるアルバムなのは間違いなし。この手のサウンドもたまに聴くと、本当に新鮮ですね。



▼FIREWIND『IMMORTALS』
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投稿: 2017 02 21 12:00 午前 [2017年の作品, Firewind] | 固定リンク

2017/01/25

ぼくのりりっくのぼうよみ『Noah's Ark』(2017)

2ndアルバムにしてこの圧倒感。アルバムの主役が現役大学1年生の10代とは思えないほどの深みを持つ……いや、10代という若さがあるからこそ生み出せる深みと言ったほうが正解なのかもしれない。新年早々こんな衝撃と感慨深さを与えてくれる1枚の誕生に、彼の倍以上生きているオッサンは「2017年、始まったな」と思わずにはいられないよ。

「ノアの方舟」と題された今作は“救い”をテーマに進行する、非常にトータル性の高い作品集。単なるヒップホップの枠には収まりきらない、若い世代がリアルに感じる雑多なサウンドに、洪水のように溢れ出るものの非常に詩的で、一言一句がボディブロウのように効いてくるリリックが乗ることで生まれる不思議な高揚感と刹那感(と、ほんのちょっとの絶望感)に満ち溢れています。

もし今自分が彼と同世代だったら、きっとこの世界観に己を投影しすぎてこじらしてしまうんじゃないか……こんなに最高なアルバムと共生できる現代の10代が、ただただ羨ましい。今後日本の音楽を語る際に「『Noah's Ark』以降」と表現されるべき、テン年代の重要作品と断言させてください。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼ぼくのりりっくのぼうよみ『Noah's Ark』
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投稿: 2017 01 25 12:00 午後 [2017年の作品, ぼくのりりっくのぼうよみ] | 固定リンク

2017/01/21

HALESTORM『REANIMATE 3.0: THE COVERS EP』(2017)

紅一点のリジー・ヘイル(Vo)率いる4人組ハードロックバンド、HALESTORMの6曲入りカバーEP(ミニアルバム)第3弾。HALESTORMはこれまでに2011年、2013年にそれぞれ『REANIMATE: THE COVERS EP』『REANIMATE 2.0: THE COVERS EP』と題したカバーEPを発表しており、第1弾ではSKID ROW、LADY GAGA、TEMPLE OF THE DOG、GUNS N' ROSES、HEART、THE BEATLESを、第2弾ではJUDAS PRIEST、DAFT PUNK、AC/DC、パット・ベネター、FLEETWOOD MAC、MARILYN MANSONを取り上げてきました。

さて、今回はどんな選曲なのでしょう。

01. Still Of The Night [原曲:WHITESNAKE(1987)]

02. Damn I Wish I Was Your Lover [原曲:ソフィーB.ホーキンス(1992)]

03. I Hate Myself For Loving You [原曲:JOAN JETT AND THE BLACKHERATS(1988)]

04. Heathens [原曲:Twenty One Pilots(2016)]

05. Fell On Black Day [原曲:SOUNDGARDEN(1994)]

06. Ride The Lightning [原曲:METALLICA(1984)]

今回も非常にバラエティに富んだ選曲です。毎回思っていたのですが、ピックアップする楽曲が80年代後半〜90年代前半に集中しているんですよね。これはリジー・ヘイル含め、メンバーの多くがこの時代に一番ロックに夢中になっていたということなんでしょうかね。自分もちょうど10代後半から20代前半にかけてのタイミングで、そのどれもがドンピシャだったりするので興味深く聴かせてもらってます。

毎回そうなのですが、今回も原曲アレンジに忠実なカバーが実践されています。1曲目「Still Of The Night」からまんまですもんね。ただ、この曲の場合7分近くある壮大さが4分半とコンパクトに凝縮されており、オープニングがいきなり歌から始まったり、中盤のシンフォニックなインストパートが省かれていたりと、WHITESNAKEファンからしたら「おいおい……(苦笑)」と突っ込みたくなる解釈。本作で唯一いただけないポイントでした。

ただ、それ以外はどれも楽しく聴けたし、サビのリズムに変化をつけた「I Hate Myself For Loving You」やTwenty One Pilotsを女性が歌うとこうなるのかっていう「Heathens」、歌も演奏もまんまな「Fell On Black Days」「Ride The Lightning」あたりはもはやニヤニヤして聴いてしまいました。

本作で唯一、大胆な解釈でカバーされているのがソフィーB.ホーキンスの「Damn I Wish I Was Your Lover」。原曲は打ち込み&浮遊感のあるシンセがメインなのですが、原曲の持つキャッチーなメロディを生かしつつ完全にギターリフ中心のハードロックへと昇華させているのはさすがだと思います。個人的には本作の中でもベストテイクだと断言させていただきます。

オリジナルアルバムまでのツナギとして制作されるこのカバーEPシリーズ、今後も忘れた頃にまた発表してほしいものです。その前に……次は『INTO THE WILD LIFE』(2015年)に続く4thアルバムですね。こちらも楽しみに待ちたいと思います。



▼HALESTORM『REANIMATE 3.0: THE COVERS EP』
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投稿: 2017 01 21 12:00 午前 [2017年の作品, Halestorm] | 固定リンク

2017/01/11

ONE OK ROCK『Ambitions』(2017)

初のオリコン1位を獲得した前作『35xxxv』から約2年ぶりに発表される、通算8枚目のオリジナルアルバム。リードトラックとして配信リリース&MVが公開された「Taking Off」や「Always coming back」を聴いて、前作で片鱗が見え隠れした「海外で流行している現在進行形のエモやポストハードコア」をより極めた作品と予想したファンも多いことでしょうが、その一言では片付けられない強烈な1枚に仕上がっています。

ミドルテンポの楽曲が軸で、先に挙げた要素を随所に織り交ぜつつも、聴けば「これぞワンオク!」と納得のいくものばかり。一聴するとどこかひんやりとした印象を受ける作風ながらも、その芯にはメラメラと燃える青白い炎が見え隠れする、聴くたびに新たな発見があるスルメ的魅力も備わっています。アヴリル・ラヴィーン(「Listen feat. Avril Lavigne」)や5 SECONDS OF SUMMER(「Take what you want feat. 5 Seconds Of Summer」)のゲスト参加も話題になるでしょうが、それ以上に1曲1曲の持つ熱量とエモさが勝る、今後のワンオクにとって間違いなく分岐点となる記念碑的作品集。個人的にはこの変化/進化を前向きに捉え、支持したいと思います。

なお、本作は海外向けにオール英語詞&一部楽曲差し替え対応したインターナショナル盤も同時制作&リリース。ALL TIME LAWのアレックスをフィーチャーした「Jaded feat. Alex Gaskarth」や、「Hard To Love」「American Girls」といった楽曲は本作のみで聴くことができるので、購入の際にはご注意を。

※このレビューは本作リリース時、『激ロック』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼ONE OK ROCK『Ambitions』
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投稿: 2017 01 11 12:00 午後 [2017年の作品, ONE OK ROCK] | 固定リンク