2017/03/22

STEPHEN PEARCY『SMASH』(2017)

5月13、14日に幕張メッセイベントホールで開催が決まった、L.A.メタル界隈のレジェンドたちが一堂に会する屋内フェス『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』。こちらの2日目ヘッドライナーとして出演するのがスティーヴン・パーシー、ウォーレン・デ・マルティーニ、フォアン・クルーシェ、カルロス・カヴァーゾによるRATT。もはやボビー・ブロッツァーのRATTはどこへやら(日本では確実に受け入れられないだろうけどね)。

そんな、あれこれ慌ただしくなり始めたRATT界隈から年始にスティーヴン・パーシーの4thソロアルバム『SMASH』がリリースされました。ソロとしては2008年の『UNDER MY SKIN』以来約9年ぶり、直近のリリースとなると2010年のRATT『INFESTATION』以来約7年ぶり。その間にスティーヴンも59歳になってしまいました……。

さて、アルバムはダークなスローナンバー「I Know I'm Crazy」からスタート。「全然声が出てないじゃん……」な低音ボイスに若干不安になりますが、2曲目「Ten Miles Wide」以降は我々がよく知る“Voice of RATT”を堪能することができます。安心した。

楽曲自体もメロディ、テンポ感含めRATTの延長線上にあるナンバーばかりで、往年の彼を知るHR/HMファンなら間違いなく楽しめる1枚だと思います。また「Shut Down Baby」「What Do Ya Think」「Summers End」みたいなLED ZEPPELIN風ヘヴィブルースも含まれており、同系統の楽曲が多い本作中で程よいアクセントとなっています。

そう、もともとRATTって決して楽曲の幅が広いタイプのバンドではなかったし、スティーヴン自体も幅広く何でも歌えるタイプのシンガーではないので、この金太郎飴的アルバムは聴く人によっては退屈と感じてしまう可能性もゼロではありません。RATTの全盛期を知らない若い子たちがこれを聴いてどう感じるのか、非常に気になるところです。

ちなみにレコーディングに参加しているのは、2005年からスティーヴンのソロバンドでの片腕的存在Erik Ferentions(G)、初期RATTやROUGH CUTTのメンバーだったMatt Thorn(B)、WHITE LIONやザック・ワイルドのPRIDE & GLORYにも在籍した経験を持つGreg D'Angelo(Dr)。ギタープレイからはRATTほどの強い個性は感じませんし、耳に残るフレーズも少ないのですが、楽曲のメロディ自体はクセになるものが多いのも事実。そういう意味では“Voice of RATT”の個性を存分に生かした、“Voice of RATT”のためだけに作られたアルバムと言えるでしょう。スティーヴンの歌を最良の形で楽しむ作品集。個のぶつかり合いを楽しむRATTとは異なる作風ではあるものの、これもまた“もうひとつのRATT”と言えるかもしれませんね。



▼STEPHEN PEARCY『SMASH』
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投稿: 2017 03 22 12:00 午前 [2017年の作品, Ratt, Stephen Pearcy] | 固定リンク

2017/03/09

BLACK STAR RIDERS『HEAVY FIRE』(2017)

元THE ALMIGHTYのリッキー・ウォリック(Vo, G)、元THIN LIZZYのスコット・ゴーハム(G)を中心に結成された、“THIN LIZZYの正統的後継バンド”BLACK STAR RIDERS。彼らが2015年の2ndアルバム『THE KILLER INSTINCT』に続いて発表したのが、本作『HEAVY FIRE』です。2月初頭に発表された今作は、すでにイギリスで初登場6位という好成績を残しています。

もともとは“フィル・ライノットのいないTHIN LIZZY”がライブ活動の延長で、オリジナル曲を発表する上でTHIN LIZZYの名前を使わないため、そして「THIN LIZZYの物語を次のステップに進めるため」に新た結成されたのがBLACK STAR RIDERSというバンド。現在はリッキー、スコットのほか、BROTHER CANEなどで活躍したデイモン・ジョンソン(G)、ヴィンス・ニールのソロプロジェクトやRATTに在籍したロビン・クレイン(B)、Y&TやMEGADETHなど数々のバンドで活動し、最近はRATTにも参加しているジミー・デグラッソ(Dr)という5人で活動しています。

確かに本作にはTHIN LIZZYの“香り”がそこらじゅうから感じられます。それはリッキーの「どことなくフィル・ライノットに似た」男臭い歌声だったり、独特な節回しを含むメロディだったり、随所にフィーチャーされるツインリードギターだったり……それらがミックスされることでTHIN LIZZYっぽい“香り”になるのですが、あくまで“っぽい”止まり。そこにアイリッシュトラッド的な要素ではなく、アメリカンロック的な大らかなノリやブルース、フォークなどのテイストが加わることで独自の世界観が作り上げられています。

今作は前作同様、アメリカ・ナッシュビルでレコーディングを敢行。プロデューサーには前作から引き続きニック・ラスカリニクス(ALICE IN CHAINS 、DEFTONES、FOO FIGHTERSなど)を迎えて制作されており、そのへんも本作の方向性に大きな影響を与えているのかもしれません(それ以前にバンド内のアメリカ人比率が高いことも大きいと思いますが)。THIN LIZZYが本来持ち合わせていた音楽的“アイリッシュ訛り”が払拭され、よりワールドワイドで戦える音に昇華されています(もちろんこれは、THIN LIZZY元来のサウンドがワールドワイドで戦えないという意味ではありません。「クセが弱まったぶん、より幅広い人たちに聴いてもらえる体制が整った」ということです)。

王道THIN LIZZY調の「Testify Or Say Goodbye」みたいな曲を残しつつも、全体ではTHIN LIZZYテイストは調味料程度で、リッキーやスコットなどのメンバーが本来持つ個性がより強く出始めています。それを良しとするか、それともなしとするかで本作の評価は大きく分かれるかもしれません。個人的には全体のバランス感が絶妙で、過去2作以上にお気に入りな1枚です。



▼BLACK STAR RIDERS『HEAVY FIRE』
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投稿: 2017 03 09 12:00 午前 [2017年の作品, Almighty, The, Black Star Riders, Thin Lizzy] | 固定リンク

2017/03/08

JACK RUSSELL'S GREAT WHITE『HE SAW IT COMIN'』(2017)

2つの同じ名前のバンドが同時期に存在する……日本だったらまずありえないことですが、海外に目を向けるとこういった案件がいくつか存在します。最近だとドラマーのボビー・ブロッツァー以外は知らないメンバーからなるRATTと、スティーヴン・パーシー(Vo)、ウォーレン・デ・マルティーニ(G)、フォアン・クルーシェ(B)という“バンドの顔”が在籍するRATT。今も裁判で揉めてますよね。ちょっと前だと、バンドを首になったフロントマンのジェフ・テイトひとりが名乗るQUEENSRYCHEと、ジェフを首にして新たなフロントマンを迎えて活動を続けるQUEENSRYCHE。こっちはもっと厄介で、同じ年に同じ名前の2つのバンドがアルバムを発表してしまいました。結果、初期のヘヴィメタル路線へと回帰した後者がチャート的にも成功。ジェフ側はOPERATION: MINDCRIMEと名を変え、今も活動を続けています。

なぜこんな面倒な話題を書いたかというと、今日紹介するGREAT WHITEもそんな状況に陥っているからです。彼らはジャック・ラッセル(Vo)、マーク・ケンドール(G)、マイケル・ローディ(G, Key)、オーディ・デスブロウ(Dr)、トニー・モンタナ(B)という編成で80年代後半にいくつかのヒットを飛ばし、メンバーチェンジを繰り返しつつも活動を継続。2003年2月にはライブハウスの火災事故でメンバーを含む100名が亡くなり活動休止。2006年頃に活動再開しますが、2009年に怪我を理由にジャックが脱退。回復後もバンドに戻らず、JACK RUSSELL'S GREAT WHITE名義でバンド活動を再びスタートさせるのです。

この『HE SAW IT COMIN'』はそのJACK RUSSELL'S GREAT WHITEが2017年1月に発表した1stアルバム。ちなみにこちらのバンドには元GREAT WHITEのトニー・モンタナ(B)が加わり、現在はベースではなくリズムギターやキーボードを担当しています。

ジャックのボーカルは80〜90年代のよりもトーンは低めながらも、一聴して“あのGREAT WHITEの声”とわかるもの。すでに50代半ばですもの、そりゃ枯れまくっているわけですが、逆にそれがGREAT WHITEが80年代後半から徐々に深めていったブルーステイストのHRサウンドにはぴったりとマッチしています。楽曲自体も派手さは皆無で、従来のGREAT WHITEっぽい楽曲も数曲(オープニングの「Sign Of The Times」、リズミカルなブギー「My Addiction」、アコースティックバラード「Anything For You」、リフでぐいぐい引っ張るストレートなハードロック「Blame It On The Night」)あるにはありますが、その他の曲はもっとAOR調というか……曲によってはFREEやBAD COMPANY、あるいはFORINGNERなどをイメージさせられるし、ファンキーなソウルナンバー「Don't Let Me Go」、グラマラスなブリティッシュロック「He Saw It Comin'」みたいな曲もあって、アルバムとしてはとてもバラエティに富んだ仕上がりとなっています。そういう意味では、THUNDERの最新アルバム『RIP IT UP』にも近い雰囲気があるかもしれません。

特にリードギターのロビー・ロックナーが適度にテクニカルなフレーズを散りばめており、それが地味になりがちなアルバムに適度なフックを作っています。いわゆるブルースギタリストとは異なる、正統派ハードロックギタリストを要するJACK RUSSELL'S GREAT WHITEが今後、どういう方向に向かっていくのか。本家GREAT WHITEよりも拡散方向に進みつつあることがわかっただけでも、このアルバムは大きな収穫と言えるのではないでしょうか。大絶賛するまでの作品ではないかもしれませんが、リラックスしながら聴くには最適な1枚かと思います。

ちなみに、本家GREAT WHITEはこの1月から新作制作のためスタジオ入り。マイケル・ワグナーをプロデューサーに迎え、2012年の『ELATION』に続くアルバムを今年中に発表するようです。



▼JACK RUSSELL'S GREAT WHITE『HE SAW IT COMIN'』
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投稿: 2017 03 08 12:00 午前 [2017年の作品, Great White] | 固定リンク

2017/03/07

TOKYO MOTOR FIST『TOKYO MOTOR FIST』(2017)

80年代末にシーンに登場しながらも中ヒット止まりだった2つのアメリカンHRバンド、DANGER DANGERとTRIXTER。両者は解散やメンバーチェンジなどを経て、2017年現在も存続しており、前者は2014年9月にデビュー25周年記念の来日公演を行い、後者は2015年にアルバム『HUMAN ERA』を発表しています。

そんな2バンドから、DANGER DANGERのフロントマンであるテッド・ポーリー(Vo)と、TRIXTERのメインソングライター兼プロデューサーでもあるスティーヴ・ブラウン(G)が、90年代にRAINBOWに在籍したグレッグ・スミス(B)とチャック・バーギー(Dr)と新バンドTOKYO MOTOR FISTを結成。2017年2月に待望の1stアルバム『TOKYO MOTOR FIST』をリリースしました。

80年代末から90年代初頭にデビューしたUSバンドの中では印象的な美メロ楽曲が多かったTRIXTER。個人的にも彼らの1枚目(1990年の『TRIXTER』)と2枚目(1992年の『HEAR!』)は今でも気に入っている作品です。このTOKYO MOTOR FISTでは楽曲のソングライティングのみならず、プロデュースからミックス、エンジニアリングまですべての制作作業をスティーヴが担当。楽曲の軸のみなら“TRIXTERの新作”と呼んでも差し支えない内容かと思います。しかし、そこに“いかにもアメリカン”な適度に枯れて適度に湿り気のある声を持つテッドのボーカルが加わることで、TRIXTERはもちろんDANGER DANGERとも違う別のバンドとして成立するわけです。

派手ではないもののどっしりとボトムを支えるリズム隊のプレイ、能天気なアメリカ人というよりはどこか影のあるメロとアレンジ、そして重厚なコーラスワークと、ここで聴けるのはDEF LEPPARDやFIREHOUSEにも通ずる正統派ハードロックサウンドそのもの。「Pickin' Up The Pieces」「Love Me Insane」「Shameless」の頭3曲なんてまさにそれなんだけど、かといってボーカルがハイトーンすぎずに程よい温度感を保っている。バラードナンバー「Don't Let Me Go」も歌い上げすぎていないから、気持ち良く聴けてしまうんです。

かと思うと、「Put Me To Shame」みたいにマイナーキーの泣きメロHRもあれば、引きずるようなヘヴィさを持つ「Done To Me」もあるし、AOR調のミディアムナンバー「Get You Off My Mind」もある。そして最後はアップテンポの美メロナンバー「Fallin' Apart」で幕を降ろすわけです。どの曲も3〜4分程度でコンパクト、ひたすらメロディの気持ちよさにヤられて、気がついたら11曲41分があっという間に終わっている。で、また最初から聴き返しているという、そんなスルメ的魅力の1枚です。

聴く人によっては「ボーカルはもっと声を張り上げてないと」と難をつけるかもしれませんが、僕としてはこれくらいの温度感がちょうどよく感じられる。むしろ、これくらいだから何度も何度もリピートしたくなってしまうんです。決して2017年的な作品ではないけど、逆にこの時代にこういったサウンドと真正面から向き合ったテッド&スティーヴの2人に賞賛を送りたいくらい。それぞれのメインバンドとうまく並行して、2枚目3枚目と良質な作品を発表し続けてほしいものです。



▼TOKYO MOTOR FIST『TOKYO MOTOR FIST』
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投稿: 2017 03 07 12:00 午前 [2017年の作品, Danger Danger, Tokyo Motor Fist, Trixter] | 固定リンク

2017/03/05

OVERKILL『THE GRINDING WHEEL』(2017)

OVERKILLってすごく勤勉なバンドだと思う。1984年の最初のEP『OVERKILL』をリリースして以降、1〜2年に1枚ペースでアルバムを発表していて、21世紀に入ってからもそのペースはほぼ変わることなく、2〜3年に必ず1枚発表しているんだから。その結果、先月リリースされたニューアルバム『THE GRINDING WHEEL』が通算18枚目のオリジナルアルバムになるわけですから。

80〜90年代はそれほど熱心に聴いていたわけではなく、来日すれば観に行く、たまたま海外の滞在先でライブがあったから観に行ってみた、とかそのレベル。いや、それってかなり好きだったんじゃないの?と今気づいたわけですが……(苦笑)。本格的にハマッたのは、実は10年に満たないくらい。アルバムでいうと……15th『IRONBOUND』(2010年)くらいかな。そこから毎回新譜が出たらすぐに買い、気づけば旧譜もライブ盤、コンピ含めすべて揃えていたという。今はそれくらいには好きです。いや大好きです。

そんな彼らの新作。特に今回は長尺の楽曲が多いなと。オープニングの「Mean, Green, Killing Machine」からして7分半ですし、全10曲(ボーナストラックのカバー2曲を除く)中6分を超える楽曲が半数、それ以外もほぼ5分超えで、さらに頭とケツの「The Grinding Wheel」の2曲は7分超えですから。もちろんこれまでの彼らにはそういった作品はなくはなかったので(2012年の16th『THE ELECTRIC AGE』がまさにそんな感じかな。古くは1989年の4th『THE YEARS OF DECAY』なんてのもありましたし)特に問題はないのですが、今作は単にそういった作品の延長線上にあるものとはちょっと違うんですよね。

複雑な展開を持つ、いかにも80年代的スラッシュ「Mean, Green, Killing Machine」で聴き手を圧倒させたかと思えば、「Goddamn Trouble」「Our Finest Hour」でエンジンがフルスロットルに。特に後者の爆走っぷりは、これこそOVERKILLと叫びたくなるようなもの。確かに長尺曲3連発は人によってはキツいかもしれないけど、個人的にはこれで掴みはOK。「ああ俺、OVERKILLの新作聴いてるよ……」と悦に浸れるわけです。

ところが、5曲目「The Long Road」あたりから様相が変わり始めます。シンガロングできそうなイントロのメロディやギターフレーズ、スラッシュというよりは王道HM感の強い曲調&アレンジ、そこから通常運転的スラッシュアレンジへとなだれ込む構成は圧巻の一言。さらにドゥーミーさを持ち合わせたミドルヘヴィなイントロから転調してテンポアップする「Let's All Go To Hades」や「Come Heavy」にはBLACK SABBATHからの影響が感じられるし、ラストの「The Grinding Wheel」はサバスはサバスでもDIOサバス的な匂いのドラマチックさがあるし。そう、全体的に“ヘヴィメタル”が高いんです。

メタルバンドに対して何を言っているんだ?と思われるかもしれませんが、そこがそれ以前の作品と本作の大きな違い。OVERKILLらしい豪快なヤケクソ感は本作でも健在ですが、本作にはそこにレジェンドたちの功績を讃えるようなエッセンスが散りばめられており、それが絶妙な化学反応を起こしているように感じられるのです。それは、アルバム本編に続くボーナストラック2曲……THIN LIZZY「Emerald」と、日本盤のみ収録のIRON MAIDEN「Sanctuary」の両カバーが並ぶことで、より明確になります。さらにアルバムタイトル……これってJUDAS PRIEST『BRITISH STEEL』の自己解釈ってことでよろしいですよね?

スラッシュメタルバンドにありがちな「リフの数を増やして次々に展開していく長尺曲」ではなく、正統派ヘヴィメタルバンドが過去に生み出してきたスタイルをOVERKILL流に解釈した結果。それがこの力作『THE GRINDING WHEEL』なんじゃないでしょうか。ホント、大好きな1枚です。



▼OVERKILL『THE GRINDING WHEEL』
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投稿: 2017 03 05 12:00 午前 [2017年の作品, Overkill] | 固定リンク

2017/02/27

KREATOR『GODS OF VIOLENCE』(2017)

ドイツの大御所スラッシュメタルバンドKREATORの約5年ぶり、通算14枚目のスタジオアルバム。今年で35周年という、アメリカのMETALLICA、SLAYTERあたりと並ぶ活動歴を持つ彼らですが、サウンド的にはスラッシュ一辺倒ではなく、時代の流行りに乗った時期もありました(ゴシック/インダストリアル調のミドルナンバーが中心だった1992年の6thアルバム『RENEWAL』、1997年の8thアルバム『OUTCAST』あたりが顕著)。しかし2001年に現在の編成で制作された10thアルバム『VIOLENT REVOLUTION』を機に、再びスラッシュサウンドへと回帰。以降は常に評価の高い作品を送り続けています。

ミレ・ペトロッツァ(Vo, G)とユルゲン“ヴェンター”レイル(Dr)の創設メンバー2名にサミ・ウリ・シルニヨ(G)、クリスチャン・ギースラー(B)という、おそらく現時点で最強の布陣で制作された最新作『GODS OF VIOLENCE』は、21世紀に入ってからもっとも長いインターバルで発表されたアルバム。なにせこの約5年の間に彼ら、二度も来日してますからね(2014年の『LOUD PARK 14』、2016年の『THRASH DOMINATION 16』)。そもそも2014年の時点で実に9年ぶりの来日公演だったわけで、いかに前作『PHANTOM ANTICHRIST』(2012年)とそれに伴う活動が充実していたかってことですよね。

そんないい流れで制作された『GODS OF VIOLENCE』は、現編成での集大成というだけでなく、ゴシックロックへと傾倒した時期までもを含む、全キャリアを総括したかのような内容。単なるスラッシュ一辺倒で終わっておらず、パワーメタル的な色合いもあれば、メロディにはどこかゴシックロックを思わせるテイストもあり(アートワークの観点では、ブックレット内の写真は完全にゴスの流れにあるものでしたが)、さらにはケルト民謡やTHIN LIZZYあたりにも通ずるアイリッシュ民謡などの要素も散りばめられています。特にサミによるギターソロは非常にメロディアスで、単なるスラッシュメタルでは終わらないオリジナリティが感じられます。

もはや初期の『PLEASURE TO KILL』(1986年)や『EXTREME AGGRESSION』(1989年)の頃とは別モノと考えるのが正しいのかもしれませんが、これも間違いなくKREATOR。スタートから35年を経て進化した形が、この『GODS OF VIOLENCE』なのです。そういう意味では彼ら、(そのサウンドや辿った道は若干異なるものの)意外とANTHRAXに近いのかもしれませんね。

ちなみに本作、本国ドイツで初のチャート1位を獲得。オーストリアでも4位、フィンランドで7位、スイスで13位、スウェーデンで19位、さらにアメリカでも118位と、それぞれ過去最高位を記録しています。もちろんチャートの数字がすべてではありませんが、この内容のすごさや充実度を示す意味でも多少は参考にできる結果ではないでしょうか。

なお、本作の限定盤には2014年の『WACKEN OPEN AIR 2014』でのライブ映像が収められたDVD付き(日本盤のみBlu-ray仕様も用意)。さらに日本盤のみスペシャル盤として、その『WACKEN OPEN AIR 2014』のライブCDが追加された3枚組仕様も発売されています。この『WACKEN OPEN AIR 2014』、10thアルバム『VIOLENT REVOLUTION』以降の楽曲が全14曲中10曲と2001年以降のベスト盤的内容(『PHANTOM ANTICHRIST』リリース後なので、同作からの楽曲が半数を占めますが)。そこに超初期の「Endless Pain」「Pleasure To Kill」「Tormentor」といった激スラッシュ、中期の「Phobia」が違和感なく並ぶというのも興味深いところ。結局そういうことなんですよね。



▼KREATOR『GODS OF VIOLENCE』
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投稿: 2017 02 27 12:00 午前 [2017年の作品, Kreator] | 固定リンク

2017/02/24

THUNDER『RIP IT UP』(2017)

THUNDERは本当に勤勉なバンドだ。20年前と比べたらアルバムのリリースサイクルなんて3年くらいが当たり前となった昨今、ちゃんと2年に1枚のペースで新作を届けてくれるんだから。

というわけで、2015年2月に発表された通算10枚目のオリジナルアルバム『WONDER DAYS』が久々のヒット作となったTHUNDERが、ちょうど2年ぶりにリリースしたのが本作『RIP IT UP』。2年ぶりとは言いながらも、実は昨年3月には2枚組ライブCD+ライブ映像からなる大作『ALL YOU CAN EAT』も発表しているので、実質1年ぶりの感覚なんですよね。何なんでしょうね、この真面目さは。古き良き(もしくは悪しき?苦笑)イギリス人なんでしょうね、彼らは。

前作制作時はベン・マシューズ(G, Key)が病気療養中でレコーディングに参加できかったため、キーボード類はルーク・モーリー(G)がすべて担当していたようですが、今作では晴れてベンも復帰し、ルーク、ダニー・ボウズ(Vo)、ゲイリー・ジェイムズ(Dr)、クリス・チャイルズ(B)という、『THE THRILL OF IT ALL』(1997年)を携えたツアーから不動のメンバーが揃ったわけです(もちろん、前作完成後のツアーにはベンも参加済みですが)。

今作『RIP IT UP』、基本ラインは『WONDER DAYS』から……いや、従来のTHUNDERのスタイルからこれっぽっちもズレていません。しかし、『WONDER DAYS』に感じられた攻めの姿勢やみずみずしさは若干後退し、より貫禄と渋みが増した印象があります。では地味な作品なのかというと、そんなこともない。オープニングを飾る「No One Gets Out Alive」にしろバラードナンバー「Right From The Start」にしろ、メロディはとてもキャッチーで親しみやすい。だけど、全体を覆う空気感はよりアダルトなものになったイメージが強いんです。

とはいえ、グラムロック時代のデヴィッド・ボウイを彷彿とさせる「Rip It Up」、独特のグルーヴ感を持つミドルチューン「Heartbreak Hurricane」、地を這うようなベースラインとシャッフル気味のリズムが気持ち良い「In Another Life」、力強いビートとTHUNDERらしいギターリフのコンビネーションがクールな「The Enemy Inside」のように印象的な楽曲も多く、簡単に「枯れた」とか「AOR調になった」という言葉では片づけられない魅力もたっぷり詰め込まれています。

確かに『WONDER DAYS』のような即効性は弱めかもしれない。だけど、聴けば聴き込んだだけ味わいが増す。思えば中期以降のTHUNDERのアルバムってそういう作品が多くなかったでしたっけ。そういう意味では、本作ではいろんな経験を得た彼らが『WONDER DAYS』という何度目かのデビュー作を経てたどり着いた、等身大の1枚なのかもしれません。

人によってはそれを退屈と呼ぶかもしれない。しかし、退屈な曲なんてこれっぽっちもない。聴けば聴くほどボディブローのように効いてくる、そんな“地味にスゴイ”アルバムだと思います。

なお、本作もボーナスディスクを追加した特殊仕様を多数用意。海外盤と共通なのは、昨年行われた数百人規模でのレアライブを収めた2枚組アルバム『LIVE AT THE 100 CLUB』が付属した3枚組仕様が用意されていること。ここに日本盤のみ、アルバム未収録の新曲4曲入りEP『BROKEN MIRROR』付き4枚組(!)仕様も存在。とりあえず『LIVE AT THE 100 CLUB』は必聴盤ですので、悪いことはいいません、ちょっとでも興味があるなら3枚組仕様もしくは4枚組仕様の購入をオススメします。

※追記
最新のUKアルバムチャートにて、『RIP IT UP』が初登場3位にランクイン。前作『WONDER DAYS』を超えたのはもちろんのこと、1992年の2ndアルバム『LAUGHIN' ON JUDGEMENT DAY』の2位に次ぐ快挙を成し遂げました。



▼THUNDER『RIP IT UP』
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投稿: 2017 02 24 12:00 午前 [2017年の作品, Thunder] | 固定リンク

2017/02/21

FIREWIND『IMMORTALS』(2017)

2009年からオジー・オズボーンの片腕としてツアーやアルバム『SCREAM』(2010年)に参加しているガスG.。彼のメインバンドとなるのがこのFIREWINDであることは以前から知っていましたし、『SCREAM』を聴く前はいわゆる“クサメタル”系ギタリストがオジーと組むことに違和感を覚えたのですが、いざ完成したアルバムはそれまでの流れを汲む、非常にオジーらしいモダンな内容でした。

そういうこともあって、一度このFIREWINDも聴いてみなくちゃと思っていたものの、なかなか手が伸びず。気づけば2017年を迎えていたわけですが、このたび無事タイミングが合い(笑)、FIREWINDの通算8枚目のオリジナルアルバム『IMMORTALS』を聴くことができました。

オリジナル作品としては2012年の『FEW AGAINST MANY』から5年ぶりの新作となりますが、今作ではボーカルが新加入のヘニング・バッセに変更。初めて聴くので、あえて過去と比較することなく楽しめるかなと思ったのですが……今回の新作って、コンセプトアルバムだったんですね。買ってから気づきました(笑)。

まぁ変な先入観を捨てて、いざアルバムを聴いたわけですが……オープニングの「Hands Of Time」の“王道クラシカル”感にいきなり当てられ早くもおなかいっぱいに(苦笑)。3曲目「Ode To Leonidas」のオープニングのセリフとか、4曲目「Back On The Throne」の仰々しいシンセイントロにハードルの高さを少しだけ感じましたが、いざ曲が始まると普通にカッコいい。あれ、意外とイケるじゃん、自分。

正直、僕はネオクラシカルやクサメタルに苦手意識があったのですが、このアルバムに関しては思っていた以上にスルスル楽しめた。その一番の要因は、ボーカルとギターにかるのかなと思いました。この手のバンドにありがちな、線の細いハイトーンボイスではなく、適度にドスの効いた太い声はスラッシュ以降や昨今のラウドの流れを楽しむ自分にも親しみやすいし、なによりガスG.のギターが非常に面白い。クラシカルなプレイもあれば、オジーのアルバムで聴けたヘヴィなプレイもある。どうやら2015年に発表さいたソロアルバム『BRAND NEW REVOLUTION』はオジー寄りのヘヴィロック的作風だったようですが、両要素を巧みに使い分け、かつ適度に融合させることができるあたりに、本作の勝因があるのではないかと思っています。2分に満たない攻めのインストナンバー「Immortals」を聴けば、その考えはより強まるばかりです。

もちろんクサメタルファンにとっては最高の1枚でしょうが、普段ラウドロックばかりを聴いてるような自分にも十分楽しめるアルバムなのは間違いなし。この手のサウンドもたまに聴くと、本当に新鮮ですね。



▼FIREWIND『IMMORTALS』
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投稿: 2017 02 21 12:00 午前 [2017年の作品, Firewind] | 固定リンク

2017/01/21

HALESTORM『REANIMATE 3.0: THE COVERS EP』(2017)

紅一点のリジー・ヘイル(Vo)率いる4人組ハードロックバンド、HALESTORMの6曲入りカバーEP(ミニアルバム)第3弾。HALESTORMはこれまでに2011年、2013年にそれぞれ『REANIMATE: THE COVERS EP』『REANIMATE 2.0: THE COVERS EP』と題したカバーEPを発表しており、第1弾ではSKID ROW、LADY GAGA、TEMPLE OF THE DOG、GUNS N' ROSES、HEART、THE BEATLESを、第2弾ではJUDAS PRIEST、DAFT PUNK、AC/DC、パット・ベネター、FLEETWOOD MAC、MARILYN MANSONを取り上げてきました。

さて、今回はどんな選曲なのでしょう。

01. Still Of The Night [原曲:WHITESNAKE(1987)]

02. Damn I Wish I Was Your Lover [原曲:ソフィーB.ホーキンス(1992)]

03. I Hate Myself For Loving You [原曲:JOAN JETT AND THE BLACKHERATS(1988)]

04. Heathens [原曲:Twenty One Pilots(2016)]

05. Fell On Black Day [原曲:SOUNDGARDEN(1994)]

06. Ride The Lightning [原曲:METALLICA(1984)]

今回も非常にバラエティに富んだ選曲です。毎回思っていたのですが、ピックアップする楽曲が80年代後半〜90年代前半に集中しているんですよね。これはリジー・ヘイル含め、メンバーの多くがこの時代に一番ロックに夢中になっていたということなんでしょうかね。自分もちょうど10代後半から20代前半にかけてのタイミングで、そのどれもがドンピシャだったりするので興味深く聴かせてもらってます。

毎回そうなのですが、今回も原曲アレンジに忠実なカバーが実践されています。1曲目「Still Of The Night」からまんまですもんね。ただ、この曲の場合7分近くある壮大さが4分半とコンパクトに凝縮されており、オープニングがいきなり歌から始まったり、中盤のシンフォニックなインストパートが省かれていたりと、WHITESNAKEファンからしたら「おいおい……(苦笑)」と突っ込みたくなる解釈。本作で唯一いただけないポイントでした。

ただ、それ以外はどれも楽しく聴けたし、サビのリズムに変化をつけた「I Hate Myself For Loving You」やTwenty One Pilotsを女性が歌うとこうなるのかっていう「Heathens」、歌も演奏もまんまな「Fell On Black Days」「Ride The Lightning」あたりはもはやニヤニヤして聴いてしまいました。

本作で唯一、大胆な解釈でカバーされているのがソフィーB.ホーキンスの「Damn I Wish I Was Your Lover」。原曲は打ち込み&浮遊感のあるシンセがメインなのですが、原曲の持つキャッチーなメロディを生かしつつ完全にギターリフ中心のハードロックへと昇華させているのはさすがだと思います。個人的には本作の中でもベストテイクだと断言させていただきます。

オリジナルアルバムまでのツナギとして制作されるこのカバーEPシリーズ、今後も忘れた頃にまた発表してほしいものです。その前に……次は『INTO THE WILD LIFE』(2015年)に続く4thアルバムですね。こちらも楽しみに待ちたいと思います。



▼HALESTORM『REANIMATE 3.0: THE COVERS EP』
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投稿: 2017 01 21 12:00 午前 [2017年の作品, Halestorm] | 固定リンク