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カテゴリー「2017年の作品」の117件の記事

2021年8月 4日 (水)

CREEPER『ETERNITY, IN YOUR ARMS』(2017)

2017年3月24日にリリースされたCREEPERの1stアルバム。

2014年にイギリス・サウスハンプトンで結成された6人組バンド。2015年に早くもRoadrunner Recordsと契約し、2枚のEPを経て届けられたのがこのアルバムです。

サウンド的にはエモやポップパンクの影響下にあり、その個性的なヴィジュアル含めゴシックパンク/ホラーパンクのカテゴライズされる彼らですが、今作では非常にわかりやすいストレートなメロディックパンクを鳴らしています。どの曲も2〜3分程度の短尺ということもあり、全11曲で36分というトータルランニングも非常に納得がいくものがあります。

オープニングを飾る「Black Rain」といい、続く「Poison Pens」「Suzanne」といい、疾走感あふれるパンクサウンドに哀愁味の強いメロディが乗せられた楽曲構成は2000年代半ばに流行したエモ/エモパンクに通ずるものがあり、本作リリース時にMY CHEMICAL ROMANCEあたりと比較されたのも理解できます。「Hiding With Boys」あたりはMCRが演奏しても違和感なさそうですしね。

しかし、MCRと大きく違うのは、このバンドが英国出身だということ。メロディ運びはエモ以降のそれと重なるものがあるかもしれませんが、アレンジの随所からは古き良き英国音楽の香りがにじみ出ており、もうちょっと(良い意味で)品格や厳格さが感じられる気がするのです。もちろんMCRもそういったブリティッシュロック/ポップからの影響は多大に受けているでしょうけど、こちらは根っからのイングリッシュマンというイメージかな。歌詞含め、ひねくれ具合は英国人ならではという気がします。

本作はまだまだオリジナリティの確立までは到達していませんが、彼らが本当に意味で“化ける”のは続く2ndフルアルバム『SEX, DEATH & THE INFINITE VOID』(2020年)でのこと。この1stアルバムも全英18位と、新人にしては好記録を樹立していますが、続く2作目は英国文化ここにあり!と高らかに宣言するような内容で初のトップ5入(最高5位)を記録。その化けっぷりには度肝を抜かれますが、思えば本作における「Crickets」や「I Choose To Live」からはすでに次作への片鱗が感じられます。

本作でのポップパンク的スタイルが好きだったリスナーにはその後の変化は受け入れ難いものかもしれませんが、上記のような楽曲に唸らされた筆者としてはこの変化/進化は大歓迎でした(その変化の要因が、メンバー自身が死と直面したことだと知り、あとで驚いたわけですが)。

 


▼CREEPER『ETERNITY, IN YOUR ARMS』
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2021年7月28日 (水)

METAL CHURCH『CLASSIC LIVE』(2017)

2017年4月28日にリリースされたMETAL CHURCHのライブアルバム。本作の日本盤単品リリースは現在まで実現しておらず、代わりに最新オリジナルアルバム『DAMNED IF YOU DO』(2018年)デラックス盤にボーナスディスクとして付属。

本作は2016年に発表したマイク・ハウ(Vo)復帰作『XI』を携えたツアーにて披露された、1stアルバム『METAL CHURCH』(1984年)から5thアルバム『HANGING IN THE BALANCE』(1993年)までの楽曲からセレクトした9曲に、3rdアルバム『BLESSING IN DISGUISE』(1989年)収録の「Fake Healer」再録バージョン(ゲストボーカルにQUEENSRYCHEのトッド・ラ・トゥーレが参加)を加えた10曲で構成。まさに“CLASSIC”の名に相応しい内容となっています。

内訳的には下記のとおり。

1st『METAL CHURCH』(1984年):M-1
2nd『THE DARK』(1986年):M-5、M-6
3rd『BLESSING IN DISGUISE』(1989年)M-8、10
4th『THE HUMAN FACTOR』(1991年):M-2、4、9
5th『HANGING IN THE BALANCE』(1993年):M-3、7

『THE HUMAN FACTOR』からの楽曲が最も多く、『BLESSING IN DISGUISE』からのライブテイクが「Badlands」のみというのが不満っちゃあ不満ですが、マイク加入前の『THE DARK』から「Watch The Children Pray」「Start The Fire」のマイク歌唱バージョンを楽しめるとう点ではお得感が強いかなと。せっかくならもっと曲数を増やしてほしかったな、と思うのですが、当時のツアーでは旧曲をこれくらいしかやっていなかった可能性も大なので、まあ仕方ないのかな。ほかにも良い曲、たくさんあるんですけどね。

今のMETAL CHURCHの姿をライブ音源を通じて体験するというよりは、過去の名曲群を今のライブサウンドで聴くというくらいのスタンスなのかな。さすがにイマドキ、CDにライブ音源9曲+ボートラでスタジオ再録1曲はモノ足りなさすぎますよ。

そういう意味では『DAMNED IF YOU DO』のレビューにも書いたように、『DAMNED IF YOU DO』のオマケ程度でこのライブベストを楽しむのがもっとも正しい聴き方なのかな?という気も。あとは、2019年8月の25年ぶり再来日公演の余韻を味わったり、同ライブに行けなかったことを悔しがりながら聴くのもアリかと(笑)。

……なんてこと言って、実はそのライブがマイク・ハウ在籍時最後の来日になるとは、当時は思いもしませんでしたが……。

マイク・ハウの冥福をお祈りいたします。

 


▼METAL CHURCH『CLASSIC LIVE』
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2020年12月17日 (木)

SOUNDGARDEN『ULTRAMEGA OK』(1988)

1988年10月31日にリリースされたSOUNDGARDENの1stアルバム。日本盤は1994年3月、バンドの初来日にあわせて初CD化されています。

オリジナル盤はSST Recordsからのリリースですが、2017年に発売されたジャック・エンディノによるリミックス&1987年録音のデモ音源追加によるリイシュー盤からはSub Pop Recordsから発売されています。特に日本盤はオリジナルのアートワークが採用されており、シャープになった音像とともにカッコ良さが増したような印象を受けます(インディーズバンドらしいチープなオリジナルジャケットも好きですけどね)。

メジャー進出第1弾となる次作『LOUDER THAN LOVE』(1989年)の1年前に発表された本作は、クリス・コーネル(Vo, G)、キム・セイル(G)、ヒロ・ヤマモト(B, Vo)、マット・キャメロン(Dr)という編成でレコーディング。初期の代表曲といえる「Flower」からヘヴィな音像でスタートし、アグレッシヴなアップチューン「All Your Lies」、重苦しいミドルチューン「Beyond The Wheel」など、のちに本格的開花する“SOUNDGARDENらしさ”はすでにこの時点でほぼ完成の域に達しつつあることが確認できます。

クリスのハイトーンボイスも終始絶好調。キムのギターもヒロ&マットのリズム隊が繰り出すサウンドもうねりまくっており、カッコいいったらありゃしない。でも、これを聴いて彼らを“グランジ”という枠で括るのはちょっと違和感がありゃしないか?と思うのは自分だけでしょうか。

確かに「Mood For Trouble」や「He Didn't」あたりにはその香りを感じるものの、ヒロがボーカルをとる「Circle Of Power」やハウリン・ウルフのヘヴィロック風カバー「Smokestack Lightning」、「Nazi Driver」「Head Injury」あたりからはグランジというよりはハードコアパンクからの影響が伝わってきます。もちろん、それらがグランジのルーツになっているのは間違いない事実ですが、どうにもこうにもクリスがハイトーンで歌う以上はハードロック的なものに聴こえてしまう。その個性、クセの強さがSOUNDGARDENを初期の時点で特別なものへと確立させていた、その事実を確認できるという意味において、本作の果たす役割は非常に大きなものがあるのではないでしょうか。

にしても、2017年リイシュー盤の音質のクリアさには改めて驚かされます。それもあってか、オリジナル盤の音圧やチープさに慣れてしまっていた自分にとって、このリイシュー盤は“ほぼ新作”みたいな感覚で接することができたんですよね。現在ストリーミングなどで耳にすることができるのはこちらのリイシュー盤なので、「オリジナル盤を知ってこそ真のファン!」なんていう奇特な方はぜひ中古でSST盤を探してみてください。その違いに驚くはずなので(笑)。

なお、リイシュー盤に収められたボーナストラック(1987年レコーディング)は本アルバムのレコーディングセッションからの初期バージョンのようで、「Incessant Mace」に関してはアルバム本編の完成版(6:20程度)に対してロングバージョンデモ(7:50)も用意されているので、聴き比べてみても面白いかもしれません。また、どの曲もアレンジを煮詰める前のスタジオライブ的な側面もあるので、バンド最初期のエネルギーに満ちた演奏を存分に楽しめるはずです。

 


▼SOUNDGARDEN『ULTRAMEGA OK』
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2020年12月15日 (火)

SCOUR『RED』(2017)

2017年11月3日にリリースされたSCOURの2nd EP。日本盤未発売。

SCOURは元PANTERA、現在はSUPERJOINT、PHILIP H. ANSELMO & THE ILLIGALS、EN MINORなどで活躍するフィル・アンセルモ(Vo)が2016年にスタートさせたエクストリームメタルバンド。メンバーはデレク・エングマン(G/ex. CATTLE DECAPITATION)、チェイス・フレイザー(G/ANIMOSITY)、ジョン・ジャーヴィス(B/当時はPIG DESTROYER、AGORAPHOBIC NOSEBLEED)、そして前作に参加したジェシー・スコベル(Dr/STRONG INTENTION)からアダム・ジャーヴィス(Dr/MISERY INDEX、PIG DESTROYER)へとメンバーチェンジしたものの、デスメタル/グラインドコアなどのエクストリームメタル界隈の名手たちが一堂に会しており、表現されるサウンドも初期デスメタルやブラックメタル直系のブルータルなもの。その手のファンにはたまらないものと言えるでしょう。

1年前に発表されたデビューEP『SCOUR』(2016年)から間髪入れずに発表された今作は、基本的に前作の延長線上にある1枚。いや、そのまま勢いで完成させたというのが正しいのかな。強烈なブラストビートと痙攣を超えたギターのトレモロリフにはさらに磨きがかかっており、オープニングの「Red」から「Barricade」までの4曲連続は息をする間も惜しむほどの“圧”で聴き手を圧倒させます。

かと思うと、5曲目「Sentenced」は映画のサウンドトラックを思わせるような仰々しさ満点のインストゥルメンタルで、「このタイミングにこういう曲を配置するのか、となるとラストナンバーはどうなる?」とワクワクしていると、最後の最後「Shank」で再び高速ビートのデスメタルを浴びせられ、全6曲で15分半という驚異的に濃厚な時間が幕を下ろします。

前作はお披露目的な意味も大きかったと思いますし、とりあえずやりたいことをやってみたというイメージの1枚でしたが、続く今作ではバンドとしての軸がガッチリと固まった印象を受けました。単なるプロジェクトではなく、パーマネントなバンドとして続けていく……そんな強い意思が込められたのが、この燃えたぎるような炎の赤をタイトルに関した本作最大の特徴ではないでしょうか。

なんてことを言いながら、今作から続く3rd EP『BLACK』(2020年)までに3年ものスパンを要することになるんですけどね(笑)。

 


▼SCOUR『RED』
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2019年11月 4日 (月)

CYHRA『LETTERS TO MYSELF』(2017)

2017年10月にリリースされた、CYHRAのデビューアルバム。

CYHRAとは、AMARANTHEでクリーンボーカル・パートを担当していたジェイク・E(Vo)と元IN FLAMESのイェスパー・ストロムブラード(G)が新たに結成したバンド(プロジェクト)で、もともとジェイクはAMARANTHE在籍時からソロアルバムを計画しており、イェスパーもIN FLAMES脱退後にソロアルバムを制作しようとしていたところ、久しぶりに会った2人はそれぞれのソロについて話し合ったところ「じゃあ、一緒にやればいいじゃん」ということになったんだとか。やろうとしていたことが一致したわけですね。

結果、ジェイクは正式にAMARANTHEを脱退。イェスパーとのプロジェクトを本格化させ、ドラマーにアレックス・ランデンバーグ(ANNIHILATOR、LUCA TURILLI'S RHAPSODYなど)、ベーシストにIN FLAMES時代の盟友ピーター・イワースを迎え、この4人を軸にアルバム制作を開始。楽曲はジェイク&イェスパーが手がけ、イェスパーはギターのベーシックパートとメロディパート(ソロではなく)を中心にプレイし、ソロパートに関しては当時SHININGのメンバーだったオウゲ・ヴァロヴィルタがゲストプレイヤーとして演奏しています(その後、オウゲは正式メンバーとしてバンドに加入)。

AMARANTHEのメロディアスパートを担うフロントマンと、IN FLAMESのメンバー2人が参加していること、またアルバムジャケットの禍々しいアートワークから、聴く前は何となくメロデスからデスメタルの要素を差し引いたスタイルを想像したリスナーは少なくなかったはず……ってそれ、メロデスじゃなくてメロディアスなヘヴィメタルじゃんってツッコミはなしね(笑)。事実、僕も試聴するまではメロデスな方向を想像していたので。

で、公開されたリードトラック「Karma」はまさにその想像どおりの音。いや、純粋にカッコいい。ただ、バックトラックにメロデス的な要素は思ったよりもないよね。むしろ、後期IN FLAMESに寄ってるのかな。

アルバムを購入して、いざほかの楽曲も聴き進めていくと……あれ、めちゃめちゃカッコいいじゃん、これ。「Heartrage」も「Here To Save You」もすげえいい曲。だけどこれ、イェスパーの存在意義はどこにあるんだろう……と正直思ってしまいました。メロディにしろアレンジにしろ、明らかにAMARANTHEの流れを汲むものだし、ソロに関してはすべてオウゲが弾いているわけで。リフメイカーぶりは……うん、まあ確かにね。そこのみなのかなあ。抜群に優れた、モダンなメロディック・ヘヴィメタル作品だけにどこか歯がゆさが残ります。

長期的なツアー生活から距離を置きたくて始めたこのプロジェクト。イェスパーにとってこのCYHRAは安息の地になったのかなあ……なんてことを思いながら聴いていると、リリース半年後にピーターが脱退。ライブではベーストラックを同期で流していたそうですが、そのうちに今度はイェスパーがツアーを離脱。30数本程度のツアーでもダメだったか。

CYHRAはまもなく2ndアルバム『NO HALOS IN HELL』をリリース予定ですが、イェスパーはレコーディングに参加しているので、バンド脱退自体はまだのようです。が、ライブに関しては……ちょっと期待できないかも。もう一度、彼の勇姿を日本でも観てみたいんだけどねえ。

 


▼CYHRA『LETTERS TO MYSELF』
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2019年10月15日 (火)

MYRKUR『MARERIDT』(2017)

MYRKURが2017年9月にリリースした2ndアルバム。

MYRKURとはデンマーク出身で現在ニューヨークを拠点に音楽活動を続ける女性アーティスト、アマリエ・ブルーンによるブラックメタル/ダークフォーク・プロジェクト。浮遊感のあるヨーロッパ民謡の要素とギターのトレモロリフが印象的なブラックメタルの要素を掛け合わせた独創的なサウンドの上に、透明感の強いソプラノボイスが乗るというスタイルで、そこにときどき絶叫も飛び込んでくるという……まあとにかく、ダークでゴシックでフォーキーで、それでいてブラックメタルという「好きな人にはたまらない」世界が展開されているわけです。ここ日本でも、この『MARERIDT』がリリースされた頃に一部で話題になりましたよね。

本作のプロデュースを担当したのは、MASTER MUSICIANS OF BUKKAKEのメンバーでSUNN O)))やEARTH、WOLVES IN THE THRONE ROOMなどを手がけてきたランダル・ダン。アマリエはボーカルのほかピアノ、ギター、バイオリンなどに加えスウェーデンの民族楽器ニッケルハルパ(フィドルやハーディガーディに似た擦弦楽器)をプレイしており、ドラムにはプロデューサーつながりなのか、WOLVES IN THE THRONE ROOMのアーロン・ウェーバーが参加しています。また、ゲストアーティストとしてチェルシー・ウルフが「Funeral」と「Kvindelil」(こちらはデラックス盤のみ収録)の2曲でボーカリストとしてフィーチャーされております。

ブラックメタルというよりも、ブラックゲイズやダークサイドなドリームポップにケルト民謡などの要素をミックスするとこうなる……と表現したほうがわかりやすいかな(そもそもアンチクライスト的な退廃感ゼロですし)。とにかくダークはダークだけど想像以上にメロディアスで、なおかつ民族音楽や宗教音楽のような幻想的、耽美な世界観が展開される楽曲の数々は、かろうじてメタルの範疇に入るものの、視点を変えたらケイト・ブッシュをダークでラウドなサウンドスケープで表現したらここまでたどり着くんじゃないか?なんていう地平線も見えてきそうな。いや、ちょっと違うかな。

何にせよ、ありそうでなかったジャンルだなと思いました。けど、まったく新しいとは思わない。なんとなく聴いたことがある気がするけど、実は初めて耳にするくらい。でも、そこがいいんでしょうね。この、若干既視感がある空気感が。なので、僕自身はスッと入っていけました。

……って、急に思い出した。あれだ、80年代のゴス(ポジパン寄り)だ。あの感覚に近いんだ。そこに北欧ブラックメタル的なひんやりした熱(反語)とヒーリングミュージックという水と油がものすごい回転数でミキサーにかけられたような。だから80年代に青春時代を過ごし、V系を通過したメタラーには当たり前のように受け入れられるんだね。納得です。

ちょっと心がささくれ立っていて、癒しよりも混沌が欲しいとき、僕はこのアルバムをよく聴いています。むしろ、そのほうが本当の意味での平穏が感じられるから。間違ってないですよね?

 


▼MYRKUR『MARERIDT』
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2019年7月24日 (水)

PARADISE LOST『MEDUSA』(2017)

PARADISE LOSTが2017年9月に発表した、通算15作目のオリジナルアルバム。

90年代の諸作品はほぼリアルタイムで聴いてきたものの、オルタナティヴロック化した8thアルバム『BELIEVE IN NOTHING』(2001年)を最後にしばらく遠ざかっていた彼ら。たまたま前作『THE PLAGUE WITHIN』(2015年)を手にしたのをきっかけに、再び彼らをちゃんと追うようになっていたのですが、前作といい今作といいかなり良いんじゃないでしょうか。

スタイル/サウンド的にはゴシックメタルというよりはデス/ドゥームメタル度がより増している本作。とにかくどの曲もスロー&ミディアムテンポで、地を這うようなギターリフとリズムの上をニック・ホルムス(Vo)がグロウルとクリーンボイスを巧みに使い分ける。いや、なんならグロウルの度合いのほうが確実に上ですよね。『BELIEVE IN NOTHING』を最後に彼らから離れていた身としては、そりゃあ最初に前作を聴いたときはビックリしました……。

1曲の中で同じテンポ感で進むというよりは、起承転結をつけながら曲調が変化していくスタイル……ドゥームメタルの始祖なんて言われているBLACK SABBATHのそれに近い形、といえばわかってもらえるでしょうか。あるいはCATHEDRALのようと言えば。

実際、本作でPARADISE LOSTが試みていることといえば、前作で展開したスタイルをより後退/退化させ、バンド初期のスタイルに回帰していくこと。いや、そこすらを通り越して、ルーツであるサバスにまで立ち返ってしまっているのは良くも悪くも興味深いところです。

にしても、オープニングの「Fearless Sky」からいきなり8分半って、ハードル高すぎじゃないですか?(汗) 完全にビギナー置いてけぼりですよ。ですが、ここを乗り越えられたら(気に入ったら)、あとは至福の時が待っているわけですから、いわば踏み絵なわけですね(たぶん違うと思うが)。

基本的にはグロウルでグイグイ押し切るデス/ドゥームスタイルですが、中には「The Longest Winter」のようにクリーントーンでメロディアスに歌い、アクセントとしてグロウルを挿入するスタイルもある(タイトルトラック「Medusa」もその類かな)。

曲によってピアノを効果的に用いており、そのあたりに妙な気品の高さやゴシック感が表れている……と感じたのは僕だけでしょうか。あとは、グレッグ・マッキントッシュ(G, Key)による官能的なギターソロがたまらないですね。サバスにおけるトニー・アイオミ(G)とはまた違った個性が発揮されており、こういったところがゴシックメタルバンドたる所以なのでしょうか。

サバスもライブ活動を止め、CATHEDRALも活動を止めた今。この手の伝統的スタイルをPARADISE LOSTに求めるのは果たして正しいのか間違っているのか……前者であってほしいな、と今は願っています。

 


▼PARADISE LOST『MEDUSA』
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2019年1月21日 (月)

MARK SLAUGHTER『HALFWAY THERE』(2017)

SLAUGHTERのフロントマン、マーク・スローター(Vo, G)が2017年5月にリリースした2ndソロアルバム。

マークはSLAUGHTERでの『BACK TO REALITY』(1999年)を最後に、まとまった音源をリリースしておらず、その後2015年に発表されたマーク初のソロアルバム『REFLECTIONS IN A REAR VIEW MIRROR』まではトリビュートアルバムなどに参加するのみにとどまりました。そう考えると、ここ数年のソロ活動は往年のファンには嬉しい限りです。

前作はインディーズからのリリースだったものの、続く本作はデヴィッド・エルフソン(MEGADETH)が新たに設立したレーベル・EMP Label Groupから発売。前作同様にプロデュース、およびドラム以外のほとんどの楽器をマークが担当。ドラムは前作とは異なるジョシュア・セス・イーガンが、一部の楽曲でベースをジェイミー・ミラードが担当います(ジョシュアはP!NKなどの作品でプレイしている方のようです)。

基本的にSLAUGHTERでやっていてもおかしくないようなハードロックあり、SLAUGHTERではできないような“いかにもソロシンガーが歌いそうな”ロック/ポップチューンありだった前作の延長線上にある1枚ですが、個人的には前作以上にハードロック色が強まっているような印象を受けました。

例えばオープニングを飾る「Hey You」なんて、そのままSLAUGHTERでプレイしても何ら違和感のない良曲ですし、続く「Devoted」なんてSLAUGHTERにはないタイプのメタリックなヘヴィチューンですし。さらに「Conspiracy」や「Reckless」ではグランジ以降のヘヴィロックが展開されていたりと、なかなか攻めまくりじゃないですか。なんでバンドでやらないんでしょうね(笑)。

かと思えば、往年の名バラードを彷彿とさせるアルバムタイトルトラックやビートルズチックなハーモニーが含まれたポップな「Turn It」、若干AORっぽさもにじみ出ている「Not Here」、モロにジョン・レノンからの影響が強いサイケ調の「Arms Full Of Empty」もある。このへんを聴いちゃうと、なるほど、ここまで含めてやりたいんだな、そりゃあソロになるか……と納得させられます。

マークのボーカルは往年のハイトーンこそ期待できないものの、中音域を中心に味わい深い歌声を聴かせてくれます。確かにあの超高音こそが彼の持ち味でしたが、これはこれで悪くないし、ところどころで“あの”SLAUGHTERっぽさが感じられる。あんなバケモノみたいなハイトーンを20年後も求めるのは酷ってものですよ。

あ、あと本作での聴きどころのひとつは、マークのギタープレイでもあるわけで。これがなかなかの腕前でして、そりゃバンドじゃなくて全部自分で表現してみたいって思いたくなるわな。特に「Devoted」や「Supernatural」、「Arms Full Of Empty」あたりからは高度なテクニックや独特のセンスを存分に感じ取れるはずです。

きっと「なんでSLAUGHTERで……」と思ってしまうのって、結局過去の名曲を聴きたいだけなのかな、とふと思ってしまいました。こうやってアーティストとして、前向きに新しいことにトライしているのを受け入れてあげてもいいんじゃないかな。その中で、ボーナスとして過去の名曲が飛び出したら、それは儲けものってことでいいじゃないの。ね?



▼MARK SLAUGHTER『HALFWAY THERE』
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2018年11月11日 (日)

TEARS FOR FEARS『RULE THE WORLD: THE GREATEST HITS』(2017)

2017年11月に発売された、TEARS FOR FEARS通算3作目のコンピレーションアルバム(アーティスト主導の作品のみ買うカウント)。2枚目の『SATURNINE MARTIAL & LUNATIC』(1996年)がシングルのカンプリング曲やレアトラックをまとめたものだったので、純粋なグレイテスト・ヒッツとしては『TEARS ROLL DOWN (GREATEST HITS 82-92)』(1992年)以来25年ぶりになります。また、本作はイギリスで最高12位まで上昇と、4thアルバム『ELEMENTAL』(1993年)以来24年ぶりのトップ20入り作品となりました。

収録された全16曲中、11曲が前作『TEARS ROLL DOWN (GREATEST HITS 82-92)』にも収録されていることから、前のベストを持っている人は購入を躊躇してしまいがちですが、その11曲のうち「Shout」「Change」「Pale Shelter」「Mothers Talk」が別バージョン(前2曲はシングル&ラジオエディション、「Pale Shelter」は初期シングルバージョン、「Mothers Talk」はUS向けリミックスバージョン)なので、若干新鮮な気分を味わえるかもしれません。

となると、注目すべきポイントは残り5曲ということになるのでしょうか。

5曲すべてが『TEARS ROLL DOWN (GREATEST HITS 82-92)』以降にリリースされた楽曲ばかりで、うち2曲(「I Love You But I'm Lost」「Stay」)は本作のために用意された新曲。「Break It Down Again」はローランド・オーザバル(Vo, G)ソロ体制になった4thアルバム『ELEMENTAL』から、「Raoul And The Kings Of Spain」は5thアルバム『RAOUL AND THE KINGS OF SPAIN』(1995年)から、そして「Closest Thing To Heaven」がローランド&カート・スミス(Vo, B)体制が復活した最初のアルバムにして最新オリジナルアルバム(6作目)『EVERYBODY LOVES A HAPPY ENDING』(2004年)からの各シングルとなります。

既発の3曲はそれぞれ全英20位、31位、40位とそこそこの記録を残しているので、ここに収録されるのは納得かなと。むしろ、80年代のTEARS FOR FEARSしか知らないリスナーにとってはほぼ新曲みたいなものなので、ここで聴けるのはある意味(バンドにとっても、そして新たな発見となるリスナーにとっても)ラッキーかもしれません。特に『EVERYBODY LOVES A HAPPY ENDING』は日本リリースがなかっただけに、ぜひこの機会にその片鱗に触れてみることをオススメします(残念ながら、Apple Musicでは「Raoul And The Kings Of Spain」と「Closest Thing To Heaven」は国内試聴不可。Spotifyは問題なく聴くことができます)。

で、本作最大の聴きどころは『EVERYBODY LOVES A HAPPY ENDING』以来の新曲ということになるのでしょうか。リードシングルとして先行発売された「I Love You But I'm Lost」はどこか1stアルバム『THE HURTING』(1983年)の頃を彷彿とさせつつも、しっかり現代的なポップスとして通用するようなアレンジが施されている。やや音数が多いのが前時代的に映るかもしれませんが、比較的良曲ではないかと思います。

もう一方の「Stay」は正反対で、音数の少ない浮遊感漂う1曲。現代的なアプローチという点においてはこちらのほうが勝るのかなと。コード使いや節回しからも“らしさ”が感じられますし。まあ、「アルバムの中の1曲」という印象の地味曲ですよね。悪くはないです。

というわけで、数(要素)は少ないけど現在進行形であることを提示してくれたこのベストアルバム。本来ならTEARS FOR FEARSはこのアルバムを携えて今年1月からツアーを行う予定でしたが、「予期せぬ健康上の懸念と医師の指示」を理由に来年1月まで延期。その間には『EVERYBODY LOVES A HAPPY ENDING』以来となるオリジナルアルバムのリリースもアナウンスされていましたが、こちらに関しては今年4月以降音沙汰がないので、おそらく来年以降まで持ち越しかなと。ベスト盤で聴ける新曲に特別落胆させられることもなかったので、まあ気長に待ちたいと思います。



▼TEARS FOR FEARS『RULE THE WORLD: THE GREATEST HITS』
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2018年9月24日 (月)

NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS『WHO BUILT THE MOON?』(2017)

リアム・ギャラガーについて書いたのだから、ここはフェアにノエル・ギャラガーの新作についても書いておかねばいけませんね。

ということで、2017年11月にリリースされたNOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS名義による3作目のアルバムです。ノエルはさすがOASISのメインソングライター(そして「Don't Look Back In Anger」の歌い手)ということもあってか、ここまでの3作すべて全英1位を獲得しています。が、シングルは「Holy Mountain」(全英31位)、「It's A Beautiful World」(同77位)、「She Taught Me How To Fly」(同71位)と、リアム同様低調です。

レコーディングは相変わらず豪華で、ジェイソン・フォークナーがベースギターでほぼ全面参加しているほか、ポール・ウェラーがオルガンで、ジョニー・マーがギター&ハーモニカでゲスト参加しております。

打ち込みを積極的に導入しつつも、ベースになるのはやはりロックバンドによる生演奏。そのバンド感をしっかり活かしつつ、派手なロックンロールナンバーやグルーヴィーなソウルチューン、涙腺を刺激するバラードなど、いかにも“OASISのノエル”らしい仕事ぶりで従来のリスナーを楽しませてくれます。

特にこの新作では、プロデューサーのデヴィッド・ホルムスの影響もあってか、ロックンロール色よりもダンス色が強まっているような。「It's A Beautiful World」なんて、その色が顕著に表れた例ですよね。そこに中期〜後期OASISのサイケでリアが加わることで、「まだOASISが続いていたら、こんなスタイルのアルバムも作っちゃったのかも……」と思わされたり。それが良いか悪いかは別として。

ただ、考えてみたらノエルってOASIS在籍時からTHE CHEMICAL BROTHERSやゴールディとコラボしたり、昨年もGORILLAZのアルバムに参加したりと、意外とそっち方面にも積極的に踏み込んでいるんですよね。そりゃあ、こんな音に前向きだったとしても当たり前といいますか。ファンならそのへん、わかってあげたいという気持ちも無きにしも非ず。

従来のリスナー/ファンからは本作、過去2作ほど評価は高くないようですね。実際、セールス的にもどんどん落ちているようですし。が、個人的にはやっと“OASISの幻影を払拭できた”意欲作ではないかと考えています。もちろん“OASISらしさ”は自然とそこに残っているのですが、意識せずにそこを消すことをしなくても今のノエルがちゃんとにじみ出る。それが3作重ねることでようやく無意識でできるようになった。そんな過渡期にある1枚なのではないでしょうか。

個人的にはマンチェスター出身の自分のルーツをストレートに表した「She Taught Me How To Fly」と、“消せないものは消せないんだ”と実感させられる「The Man Who Built The Moon」が好き。ボーナストラックの「Dead In The Water」もOASIS時代のシングルカップリング曲の“隠れた名曲”感があって、お気に入りです。

そういえば、このアルバムのツアーからOASIS時代の盟友ゲム・アーチャー(G)が参加しているんですよね。サマソニ、観ておけばよかったかな(日程的に無理だったけど)。



▼NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS『WHO BUILT THE MOON?』
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