2017/12/12

U2『SONGS OF EXPERIENCE』(2017)

iTunesユーザーに無理やり送りつけ賛否両論を巻き起こした前作『SONGS OF INNOCENCE』(2014年)から3年ぶり、U2の通算14枚目となるスタジオアルバム。そのタイトルからからもわかるように前作と対となる作品で、本来はもっと早いタイミングにリリースされる予定でしたが、ボノ(Vo)の自転車事故による大怪我やその後のツアーなどもあって、結局通常のサイクル(にしてはいつもより早めですが)での発表となりました。

ロックバンドに憧れた頃の原点(ジョーイ・ラモーンジョー・ストラマーなど)を見つめ直した前作を“Innocence”と称するなら、“Experience”をタイトルに用いた今作はそこから40年近くにわたるU2の音楽探求史の現在地が示されたような1枚と言えるでしょう。いつになくボーカルにエフェクトを施した「Love Is All We Have Left」から「Lights Of Home」へと流れる緩やかなオープニングには驚かされますが、先行シングル「You're The Best Thing About Me」のようなポップサイド、90年代初頭の彼らを思わせる「Get Out Of Your Own Way」、「Vertigo」にも匹敵する骨太なロックンロール「American Soul」、80年代のルーツミュージック回帰期を彷彿とさせる「Summer Of Love」など、従来のU2の総決算といえるような楽曲がずらりと並びます。

後半も小気味良いギターリフの「Red Flag Day」を筆頭に、アコギのストロークと緩やかなリズムが気持ち良いロックンソウル「The Showman (Little More Better)」、ミニマムなサウンドが90年代中盤のテクノ3部作を思わせる「The Little Things That Give You Away」、作風的には2000年代のU2に近い「Landlady」、先行公開されていたリード曲「The Blackout」、これも2000年代の彼らの延長線上にあるミディアムスローの「Love Is Bigger Than Anything In Its Way」、13曲目だからこのタイトル?なソウルバラード「13 (There is A Light)」とU2らしい楽曲ばかり。約50分と通常の彼らの作品同様、とても聴きやすいバランスとなっています。

デラックスエディションにはこのほか、ボーナストラックが4〜5曲追加されるのですが、その大半がリミックスやバージョン違いなのでここでは割愛します。

前作と比較すると、例えばギターでがっつり引っ張るといった作風ではなく、リズムで遊びながら歌をじっくり聴かせる、そういうアルバムなのかなと思いました。また、テイストとしてエレクトロの要素がうっすら散りばめられているものの、やはりロックバンドとしての軸はブレておらず、90年代的なテイストが散見されつつも、あくまでそれも味付けといった印象。U2がU2であることを引き受けた……そんなアルバムなのかなと思いました。

たぶん、これを嫌いなU2ファンはいないんじゃないかな(難癖つけるめんどくさい輩はいるだろうけど)。そんな“らしい”アルバムです。



▼U2『SONGS OF EXPERIENCE』
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2017/12/10

THE ROLLING STONES『ON AIR (A BBC RECORDINGS)』(2017)

昨年の今頃は久しぶりのスタジオアルバム『BLUE & LONESOME』に歓喜していましたが、今年もやってくれました。純粋な新作ではないですが、『BLUE & LONESOME』にも通ずる初期の未発表音源集のリリースです。

本作はROLLING STONESが1963〜1965年に出演したイギリス・BBCラジオの諸番組から、貴重なライブ音源をコンパイルしたもの。18曲入りのCD1枚ものと全32曲入りのCD2枚ものの2形態が用意されており、ジャケットのカラーもそれぞれ異なります(1枚ものがオレンジ、2枚ものがイエロー)。

アルバムはまず、デビューシングル「Come On」からスタート。これは1963年の録音で、まぁ原曲に近い形で演奏されています。デビュー当時ならではの勢いというか荒々しさが感じられ、続く2曲目「(I Can’t Get No) Satisfaction」(1965年録音)含めヤンチャさが伝わってくる演奏かもしれません。ミック・ジャガーも1回目のサビラストで「Hey Hey Hey」って歌うところ、間違えてますしね(笑)。

初期のヒットシングル、例えば「It's All Over Now」「The Last Time」あたりも収められてはいるのですが、基本的にはアルバム曲やカバー曲が多い構成。それは、まだこの頃のストーンズがオリジナル曲量産期に入る前というのも大きいでしょう。また、録音状態も比較的良好な1965年と比べ、観客を入れたライブスタイルが意外と多い1964年や最初期の1963年のものは若干落ちる印象。もちろん同じ年の中でもまちまちだったりするので、一概には言い切れませんが……それでも、世に溢れているエアチェック音源やブート音源と比べたら比較にならないほど良好なので、普通に“準スタジオアルバム”、“準ライブアルバム”として楽しめるはずです。

ミックの歌い回しも若々しく、今のようなアクもなく(笑)、スルッと聴けてしまう。キース・リチャーズ&ブライアン・ジョーンズのギターも60年代後半のプレイと比較すると“曲に合わせたプレイ”を心がけているように感じられるものの、ビル・ワイマン&チャーリー・ワッツのリズム隊の鉄壁さはすでに完成の域に入りつつあったりと、いろんな意味で興味深い作品だと思います。

個人的にはDISC 2(デラックス盤のみ)の選曲がツボ。音は良くないけど「I Wanna Be Your Man」「Carol」のドライブ感といい、「If You Need Me」の泣かせる歌&演奏、『BLUE & LONESOME』にも通ずる「Confessin' The Blues」の泥臭さ、パンキッシュな「I Just Want to Make Love To You」など聴きどころ満載。音の良し悪しの落差はDISC 1以上ですが、そんなことお構いなしなアゲっぷりがたまらない。特に「I Just Want to Make Love To You」はこの時期だからこその疾走感ではないでしょうか。ホント最高。



▼THE ROLLING STONES『ON AIR (A BBC RECORDINGS)』
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2017/12/09

WEEZER『PACIFIC DAYDREAM』(2017)

恒例のセルフタイトルアルバム(前作は『ホワイト・アルバム』)から1年半ぶりとなる、通算11作目のオリジナルアルバム。本格的に再始動した2000年以降、その多才ぶりに驚かされるWEEZERおよびリヴァース・クオモですが、本作も当初は『ホワイト・アルバム』に続く『ブラック・アルバム』(要はセルフタイトルアルバム第5弾ですね)の制作にとりかかったところ、別の方向性の楽曲が次々と生まれてしまったことから、別のアルバムを作ることに。結果、生まれたのがこの『PACIFIC DAYDREAM』というわけです。

そのタイトルからもわかるように、まさに“ビーチでの白昼夢”をイメージさせる楽曲がずらりと並ぶ本作。“ビーチ”という視点は前作からの延長線上にあると思うし、実際メロディセンスの冴えわたりっぷりはいかにもリヴァースといったところ。言われているほど悪いとは思えないし、むしろ非常に“現代的”であり、時代にマッチしたメロ運びだと思いました。個人的にはツボ。いろいろ勉強しているんだろうなというのも伝わってきます。

で、問題になってくるのがそのサウンドメイキング。この春に先行シングルとして配信リリースされた「Feels Like Summer」を聴いて驚いたファンも少なくないでしょうが、バンドサウンドというよりはサンプリングや打ち込みなどを多用したアレンジで、従来の“轟音ギター+甘いメロディ”路線を好む方々からは難色を示す仕上がりかもしれません。

実際、アルバム全体がそういった方向性で統一されており、オープニングを飾る「Mexican Fender」などは従来のWEEZERに近いテイストながらも、3曲目「Feels Like Summer」や4曲目「Happy Hour」あたりは完全に“今”の音。ロックというよりも、ヒットチャートを賑わせるポップソングのテイストに近いものと言えるでしょう。が、これが言うほど悪くない。むしろ、めっちゃ好みの音だったりするし、それをWEEZER(リヴァース)がやっているという事実が面白い。

「Weekend Woman」などいつも以上にドリーミーな楽曲が多いのお、それこそ先の“ビーチでの白昼夢”というキーワードを考えれば納得。タフさや現実(=バンド形態でのストロングスタイル)感を排除して、とことんフワフワした空気を漂わせて終わる34分、最高じゃないですか。全米チャート的には最高23位と過去最低位を記録したものの、僕はこの路線を支持したい。だって、どうせ次はギトギトした路線に戻った『ブラック・アルバム』でしょ?(笑)

結局、こういう振り幅を見せてくれるバンドが好きなんですよね。だから、いつまで経ってもWEEZERのことが嫌いになれないのです。



▼WEEZER『PACIFIC DAYDREAM』
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投稿: 2017 12 09 12:00 午前 [2017年の作品, Weezer] | 固定リンク

2017/12/02

GRETA VAN FLEET『BLACK SMOKE RISING』(2017)

夏以降、都内のCDショップでよく目にしたジャケット。それがGRETA VAN FLEETに対する第一印象。その音を耳にしたのはもっとあとになってからで、Spotifyでランダム再生していたら、たまたま流れてきたのがこのEPの1曲目「Highway Tune」でした。まあ、皆さんの感想と一緒です。「なんだ、このツェッペリンまんまのバンドは!?」と。

アメリカ・ミシガン州出身の4人組バンドが、2017年春に発表した4曲入りEPが本作。メンバー4人中2人が10代というこのバンド、聴けばいわゆるHR/HMの流れとは異なるシーンから登場したのが伺えます。それは「Highway Tune」のMVに映るメンバーの姿、ルックスからもご理解いただけるんじゃないでしょうか。

彼らは登場する場所やタイミングさえ違えば、アイルランドのTHE STRYPESのようになっていたかもしれない。そう、表現方法こそ異なるものの、そのルーツは意外と近いものがあるんじゃないかと思うのです。それが古き良き時代のブルースやソウル、R&Bであり……ただ、GRETA VAN FLEETの場合は場所柄か、ガレージロックやパブロックからの洗礼を受けていない。その違いなんですよね。

もちろんLED ZEPPELINからも影響を受けているでしょう。しかし、そのままマネするわけではない。そのツェッペリンのルーツを聴いていたら、気づけば自分たちの曲も彼らに近づいていた。ホント、そんな単純な話なのかもしれません。

でも、彼らは単なるツェッペリンフォロワーではない。2017年によみがえったツェッペリンと言いたくなるような「Highway Tune」にみなぎる躍動感と、ジョシュ・キスカ(Vo)の21歳とは思えない存在感の歌声。確かにこの1曲のインパクトはものすごいものがあるけど、続く「Safari Song」は“ツェッペリン meets サザンロック”的な香があり、THE BLACK CROWESっぽいとも言える。3曲目「Flower Power」のアコースティックテイストなんて、まさにTHE BLACK CROWES寄りですしね。そしてラストのタイトルトラック「Black Smoke Rising」は、フォーマットこそロックですけど、もっとソウルの香りが強い。つまり、そういうことなんですね。

ハードロックサイドから語ろうとするならば、当サイト的にはここまでに挙がってきたアーティストに加えBE THE WOLFKADAVARRIVAL SONSあたりが好きな人なら気に入るんじゃないでしょうか。



▼GRETA VAN FLEET『BLACK SMOKE RISING』
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投稿: 2017 12 02 12:00 午前 [2017年の作品, Greta Van Fleet] | 固定リンク

2017/11/28

BUTCHER BABIES『LILITH』(2017)

前作『TAKE IT LIKE A MAN』から2年ぶりとなる、BUTCHER BABIESの3rdアルバム。デビュー作『GOLIATH』(2013年)でジョシュ・ウィルバー(LAMB OF GOD、TRIVIUM、VAMPSなど)、前作でローガン・メイダー(CAVALERA CONSPIRACY、SOULFLY、FEAR FACTORYなど)を迎え、それぞれに“濃い”ヘヴィロックアルバムを制作してきた彼女たちですが、本作ではTHE DELLINGER ESCAPE PLANやSUICIDE SILENCEなどで知られるスティーヴ・エヴェッツがプロデュースを担当しています。

前2作の路線を踏襲しつつも、ただ突っ走ったり激しくのたうち回ったりというだけではなく、よりエモーショナルさやセンチメンタルさが増した作風。もちろん従来の残虐さはところどころに残されているのですが、そこも非常に計算されたヘヴィさ、ラウドさといった印象を受けます。昨年秋、『KNOTFEST JAPAN』での初来日公演でみせた、エロでエネルギッシュでバカバカしいまでのラウドさを求めるリスナーには、もしかしたら本作は多少物足りなさを感じる内容かもしれません。

が、本作のタイトルが『LILITH』(ユダヤの伝承において男児を害すると信じられていた女性の悪霊のことであり、一方で“女性解放運動”の象徴としても知られるワード)であることからもわかるように、本作は過去2作以上に“女性性”が強められた結果がこの作風なのではないでしょうか。「そんなもの、このバンドに求めてないよ!」っていう声、聞こえてきそうですが……本当に? みんな、ライブであのオッパイに注目してなかったわけ? 嘘でしょ?

まあ冗談はさておき、バンドが今後さらなる飛躍を遂げるためという点においては、この変化/進化はすごく正しいのではないかと思います。だって残虐さゼロではないし、その残虐さとセンチメンタルさの比率が若干変わっただけで、両サイド自体はより研ぎ澄まされているわけですから。

それにドラマー交代が影響してかエンジニアのカラーが反映されているのか、リズムの1音1音が太くなった印象も受けますし。だからこそ、残虐さもセンチメンタルさもより際立ったものになったし、その両極端な“Too muchさ”がこのバンドらしいとも言えるわけで。そこにスペーシーかつドラマチックさが増したメロディ&アレンジが加わったことで、今後の新たな可能性も強く感じられる1枚に仕上がったのではないかと思います。エロというよりも、セクシーになったと言えばいいんでしょうかね。そんな1枚だと思います。

ちなみに、日本盤のみ2014年に発表されたEP『UNCOVERED』収録のカバー曲5曲(ZZ TOP、NAPOLEAN XIV、SUICIDAL TENDENCIES、THE OSMONDS、S.O.D.)をボーナストラックとして収録。お安い輸入盤はストリーミングで聴けないので、ぜひこの機会に日本盤の購入をオススメします。そして、本作を聴きまくって来年1月末に決定した初の単独来日公演に思いを馳せてみてはどうでしょう。



▼BUTCHER BABIES『LILITH』
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投稿: 2017 11 28 12:00 午前 [2017年の作品, Butcher Babies] | 固定リンク

2017/11/27

EVANESCENCE『SYNTHESIS』(2017)

EVANESCENCEの、2011年発売3rdアルバム『EVANESCENCE』から実に6年ぶりとなる新作は、なんと新曲+過去曲のオーケストラリアレンジバージョンからなる『SYNTHESIS』。しかもオーケストレーションはかのデヴィッド・キャンベル(あのベックの実父)が担当。これを純粋な新作と呼ぶには多少抵抗がありますが、バンド的には一応4thアルバムと銘打っているようなので、こちら側としてもそのつもりで接したいと思います。

デビューアルバム『FALLEN』(2003年)はエイミー・リー(Vo)と、ベン・ムーディー(G)やデヴィッド・ホッジス(Key)といった制作中および同作のツアー中に脱退したメンバーとの共作曲が大半で、それゆえに「次作がエイミーにとって正真正銘の勝負作」と言われてきましたが、2ndアルバム『THE OPEN DOOR』(2006年)も3rdアルバム『EVANESCENCE』もともに全米1位を記録。後者は時代柄か50万枚にも達しませんでしたが、前者は200万枚を超える成功を収めています。

で、本作なのですが、全16曲中インタールードやピアノインストを除けば13曲が歌モノ。内2曲が新曲で、ほかの11曲が過去曲のリメイクとなるわけです。内訳は『FALLEN』から3曲、『THE OPEN DOOR』から3曲、『EVANESCENCE』から5曲と、その大半が“エイミーとその仲間たち”体制になってからのものなんですね。なので、俗に言う「大ヒットした1stアルバムの遺産を食いつぶしやがって」的物言いは実は的外れなんじゃないかと。確かに「Bring Me To Life」や「My Immortal」といった大ヒット曲もピックアップされているものの、それはあくまで“ファンサービス”程度で、本当は『EVANESCENCE』で展開された世界観をより深化させたかったのではないでしょうか。

もちろん、『FALLEN』で作り上げられた世界観がその後の作品にも反映されているわけで、そういう意味では間違いなく遺産は食いつぶしています。が、本作はそういったヒット曲“だけ”に頼った内容ではないことも明らか。もし本気でそっちに走るなら、ありきたりに「通常のバンドサウンド+オーケストラ」なアレンジにしたはず。でも、そうならなかった、そうしなかったのは、間違いなく前作『EVANESCENCE』からの延長で「デジタル+オーケストラ」というテイストにチャレンジしたかったから。そういう意味では、本作は“バンド・EVANESCENCE”の新作ではなく“エイミー・リー featuring デヴィッド・キャンベル”のオリジナルアルバムと呼んだほうが正しいのかもしれません。

まあ6年待たされて新曲はたった2曲、しかもロックでもメタルでもない。そりゃあ肩透かしと思われても仕方ありません。が、このバンドのこういう側面に特化した作品もいつか聴いてみたいと一瞬でも考えたことがあるリスナーには、ある種理想に近い1枚なのでは。オーケストラの内側に存在する軸をあえてバンドサウンドにせずデジタルサウンドをしたのも、個人的にはアリ。頻繁に引っ張り出して聴く作品ではないかもしれませんが、深夜に若干ボリューム抑えめで、リラックスしながら聴きたいアルバムです。



▼EVANESCENCE『SYNTHESIS』
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投稿: 2017 11 27 12:00 午前 [2017年の作品, Evanescence] | 固定リンク

2017/11/26

SONS OF APOLLO『PSYCHOTIC SYMPHONY』(2017)

ヘヴィメタルが世界的に大きなヒットを飛ばした80年代後半になると、“スーパーグループ”と呼ばれるような組み合わせの新バンドがいくつか結成され話題になりました。MR. BIGなんてまさにそれでしょうし、BLUR MURDERBAD ENGLISHもそう呼べるでしょう。90年代に入りメタルシーンが低迷し始めると、解散したバンドのメンバーが集まって新しいバンドを組み始める。必然的にそれらは“スーパーバンド”と呼ばれても不思議じゃないメンツになっており、もはや「“スーパー”とは?」とスーパー感がごく当たり前になってしまったことで有り難みが薄れてしまった。それは2017年になった現在、より強まっているのではないでしょうか。

しかし、そんな自分ですら「そうきたか!」と思わせられた最新の“スーパーバンド”が、今回紹介するSONS OF APOLLO。マイク・ポートノイ(Dr)、デレク・シェリニアン(Key)、ロン・“バンブルフット”・サール(G)、ビリー・シーン(B)、ジェフ・スコット・ソート(Vo)という80〜90年代のHR/HMファンなら誰もが一度は名前を耳にしたことがあるであろう面々ばかり。マイクとデレクは90年代後半にDREAM THEATERで一緒だったし、ビリーは現在MR. BIGのみならずTHE WINERY DOGSではマイクと活動をともにしている。バンブルフットは元GUNS N' ROSESで現在はART OF ANARCHYのメンバーだし、ジェフは初期YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCEのシンガーで、一時はJOURNEYにも在籍していた。過去に在籍したバンドをカードに勝負することがあったら、間違いなく“勝てる”組み合わせです。

そんな彼らが組んだSONS OF APOLLOのデビューアルバム『PSYCHOTIC SYMPHONY』は、このメンツから想像できる音=プロヴレッシヴメタルが展開されています。DREAM THEATER的でもあり、昨今のヘヴィ/ラウドロック的でもある。ボーカルがジェフという時点でDREAM THEATERに似ないことはわかっていましたが、ここまでオリジナリティに満ちあふれた存在感を打ち出すかと、一聴して驚かされました。

80年代以降のDEEP PURPLE的な側面もあり、90年代以降のプログレメタルのカラーもしっかり受け継いでいる。それでいて現代にも通用するラウド感を持ち合わせているんだから、強いったらありゃしない。

楽曲もいきなり11分超の大作「God Of The Sun」から始まり、中盤に9分超えの「Labyrinth」を配置しながら、ラストは11分近いインストナンバー「Opus Maximus」で幕を降ろす。その間には4分前後のコンパクトな楽曲が配置されており(それでも十分に“プログレ”してるんですが)、とにかく情報量と聴きどころ詰め込みすぎな印象。すべてを理解するには、3回、4回と何度も聴き込む必要があります。

けど、最近のアルバムって数回聴いて「しばらくいいか」と思ってしまうようなものも少なくないので、こういう密度が高くて「もっと理解したい!」と思わせてくれる力作との出会いは正直嬉しくもあるんですよね。

5人の個性と技術が克明に打ち出されたこのデビュー作をもって、彼らは2018年に本格的なツアーを行うそうです。これ、ライブで観たら本当にどうなっちゃうんだろう……今からドキドキとワクワクが止まらない、そう久しぶりに感じさせてくれた1枚です。



▼SONS OF APOLLO『PSYCHOTIC SYMPHONY』
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投稿: 2017 11 26 12:00 午前 [2017年の作品, Dream Theater, Guns N' Roses, Mr. Big, Sons of Apollo, Yngwei Malmsteen] | 固定リンク

2017/11/23

METALLICA『MASTER OF PUPPETS: DELUXE EDITION』(2017)

1986年春に発表された、言わずと知れたMETALLICAの出世作(3rdアルバム)。前2作はインディーズのMegaforceからのリリースでしたが、本作からメジャーのElektraに移籍しての発表となり、当時全米29位まで上昇するという、MVも作らない、ラジオでもかかりにくい一介のスラッシュメタルバンドとしては異例の大ヒットを記録しました……なんていう、本作が当時いかに画期的だったかは、2003年5月に執筆した本作のレビューをご確認ください。

また、本作との出会いや1986年11月の初来日公演体験記などのエピソードが、11月24日発売の『ヘドバン Vol.16』に掲載されているので、そちらも併せてお読みいただけると幸いです。

さて、今回ここで紹介するのは、先日リリースされた『MASTER OF PUPPETS』の公式リマスター盤(これまで国内盤独自のリマスター盤は何度か発売済み)、未発表音源を豊富に収めた3枚組デラックスエディション、そしてCD10枚組+DVD2枚組+アナログ3枚組+カセットテープからなるデラックス・ボックスセットの3形態のうち、もっとも手軽に手に入って新規の音源も楽しめる3枚組デラックスエディションを紹介したいと思います。

実は僕自身、国内制作のリマスター盤を聴いておらず、手元にあるのは1986年に発表されたCBSソニー盤CDと、数年前にリイシューされたアナログ盤のみ。アナログ盤とCDでの音質や体感の違いについてはここでは省略しますが、あくまでオリジナル盤音源と比べて、最新のリマスタリングがどうかという視点で語っていきたいと思います。


【DISC 1:Remastered】

最初にヘッドフォンで聴いたときは、正直「そこまで音が良くなってるのかな?」と微妙に感じましたが、確かにオリジナル盤にあったモコモコした感触は払拭され、よりクリアになってる印象。スピーカーを通して聴くと、そのへんはよりわかりやすいと思います。

とにかく、ベースの音が非常に聴き取りやすいのが良いです。当時のミックスのせいなのか、『RIDE THE LIGHTNING』(1984年)と本作ってベースがギターのザクザク感に負けていて、ところどころ聴き取りにくかったんですよね。特に楽器をやる者からすると、とても耳コピしにくい。それが、リマスター盤では「ここまで音の粒が認識できるのか!」と驚かされるわけです。

あと、「Battery」冒頭のアコギの音の粒やクリア感にも違いが感じられる。「Welcome Home (Sanitarium)」も違いが顕著かな。ラウドな曲よりも、実は繊細さを伴う楽曲のほうがそのへんの変化に気づきやすいような気がします。

ただ、オリジナル盤にあった「4つの楽器がひとつの塊になって襲ってくる感」は減ったように感じます。音の分離が良くなったせいで、そういう迫力が弱くなったのかもしれませんね。これは、先日のWHITESNAKE『WHITESNAKE』(1987年)の30周年リマスターでも感じたことですが、やっぱり“その時代の音”というのが存在するわけで、それを無理に現代的に仕切りなおそうとすると、当時のマジックが消え去ってしまうのかな。そこだけは残念です。


【DISC 2:Demo, Rough Mix & Interview】

アルバム『MASTER OF PUPPETS』収録曲全8曲と、アウトテイク「The Money Will Roll Right In」、次作『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)の日本盤や同作からのシングルに収められたカバー「The Price」のデモバージョンが収録されています。音質的には決して良くはないですが、リハーサルスタジオであの名曲たちがどういう過程を経て完成にたどりついたのかが、よくわかると思います。

曲によってはボーカル抜きだったりしますが、例えば「Master Of Puppets」が初期は『KILL'EM ALL』(1983年)っぽいヒステリックな歌メロだったり、初期の「Welcome Home (Sanitarium)」が発表されたスタジオ版以上にプログレッシブな展開だったり、「The Prince」のベースがくっきりと聴き取れたり(笑)と、慣れ親しんだ名曲たちの違う表情に驚かされることは間違いありません。

あと、未発表曲の「The Money Will Roll Right In」は「The Thing That Should Not Be」や「For Whom The Bell Tolls」あたりに通ずるミドルヘヴィナンバー(ハードコアバンドFUNGのカバー)。歌メロが乗ってないバックトラックのみなので、途中で完成させることを諦めた1曲なのかな。正直、『...AND JUSTICE FOR ALL』に入っていたとしても不思議じゃないけど、まぁ“捨て曲”っちゃあ捨て曲ですよね。

あ、最後に『Metal Madness』誌でのクリフ・バートンのインタビューが20分近くにわたり収録されていますが、まぁオマケってことでひとつ。


【DISC 3:Live From“The Damage Inc. Tour”】

当時収録されたらさまざまな場所でのライブ音源がボックスセットには収められていますが、このディスクではそこから抜粋して当時のセットリストに沿って並べた“擬似ライブ”を体験できます。正直、初来日公演時は『MASTER OF PUPPETS』からの楽曲しか知らなかったので、ライブで演奏されたうち半分以上知らない曲だったし、それ以上にライブが衝撃的すぎて記憶が定かでない部分もあるのですが、こうやって聴くと「ああ、こんな感じだったかな……」とうっすら記憶がよみがえってくる部分もあったり。

まあ音質は決して褒められるものではありません。当時FM局放送用に残されたもの、ライブミキサーからライン収録されたもの、あるいはカセットテープで簡易録音されたものなど、そもそもリリースを想定して収録されたものではないですからね。今みたいに全公演ライン録音で収録して、ライブから数日後にネット配信する時代になるなんて、30年前は想像もできなかったわけですから。単にこの貴重な音源の数々を手軽に楽しめるようになった現実を素直に受け入れ、楽しむことにしましょう。


【総評】

まだ『MASTER OF PUPPETS』を聴いたことがない……という奇特な方は本サイト読者には少ないかと思われますが、万が一まだ聴いたことがないという場合に、今回の3枚組エディションはうってつけかもしれません。輸入盤なら、国内盤の新品を買うよりも安いですしね。あるいは、もっと安く済ませたいのなら、アルバム本編のリマスター盤のみの1枚ものを購入するのもあり。

そして、「いや、音が悪くてもオリジナルにこだわる!」という奇特な方は……中古盤でさらにお安く、2017年以前に発売されたバージョンを購入することをオススメします。それもありっちゃあありでしょう。

ということで、今夜はこの名盤を久しぶりに大音量で楽しみたいと思います。


※Spotifyはリマスター盤単品かボックスセットの二択だったので、ボックスセットのほうを貼っておきます。



▼METALLICA『MASTER OF PUPPETS: DELUXE EDITION』
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投稿: 2017 11 23 12:00 午前 [1986年の作品, 2017年の作品, Metallica] | 固定リンク

2017/11/18

WHITESNAKE『WHITESNAKE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』(2017)

1987年という年はHR/HMにとって象徴的な1年だったんだなと、あれから30年経った2017年に改めて感じさせられます。それは、今年に入って当時発表された名盤の30周年アニバーサリーエディションが次々とリリースされている事実からも伺えるはずです。MOTLEY CRUE『GIRLS, GIRLS, GIRLS』DEF LEPPARD『HYSTERIA』……記念盤の発売こそなかったものの、GUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION』も1987年リリース。当ブログ右カラムのカテゴリから〈1987年の作品〉をクリックしてもらえば、ここで取り上げた名盤の数々を振り返ることができるので、ぜひ一度チェックしてみてください。

そんな1987年の名盤のひとつ、WHITESNAKE最大のヒット作である『WHITESNAKE』(ヨーロッパ圏では『1987』というタイトル)が先日、“30TH ANNIVERSARY EDITION”と銘打って新規リマスタリング&未発表テイクを追加した2枚組仕様とCD4枚組+DVDからなるボックスセットで新規リリースされました。「あれ、このアルバムって昔も“○○TH ANNIVERSARY EDITION”発売されてなかったっけ?」とお気付きのあなた、正解。本作は2007年に“20TH ANNIVERSARY EDITION”と銘打ったCD+DVDが発表済みで、その際にも音源のほうはリマスタリングされていました。

ところが今回、WHITESNAKEが新たにワーナーグループと契約したことで、その第1弾アイテムとしてこの30周年盤がリリースになったわけです。一体何枚買わせるんですか、同じアルバムを(苦笑)。

実は当ブログでも今年2月に本作および20周年盤について執筆しており、これまでに発表された曲順が異なるいくつものバージョン違いにも触れております。作品の素晴らしさについては、そちらを改めてご確認ください。

ちなみに気になる曲順ですが……各仕様ともCDのDISC 1は『WHITESNAKE』20周年盤から、スタジオていく部分のM-1〜M-11(「Still Of The Night」から「Don't Turn Away」まで)を収録。オリジナルのUS盤や日本盤の曲順が復活することなく、残念ながらあの違和感ありまくりの20周年盤と同じです。もうそこは諦めるしかないのかな。

ということで、今回のエントリでは2枚組CDおよびボックスセットで新たに聴ける音源について触れていきたいと思います。


【DISC 2(2枚組仕様およびボックスセット共通)】

「SNAKESKIN BOOTS [LIVE ON TOUR 1987-1988]」と題したこのディスクは、レーベルの説明によると「87年から88年にかけて行なわれたワールド・ツアーの未発表ライヴ音源を収録。デイヴィッド・カヴァデールに加え、エイドリアン・ヴァンデンバーグ、ヴィヴィアン・キャンベル、ルディ・サーゾ、トミー・アルドリッジ、ドン・エイリー(おそらく間違い)というラインナップでのパフォーマンスとなっている。全曲未発表音源」とのこと。当時のヘッドライナーツアーをほぼほぼまるっと音源化したものなんですが、すげえ聴き覚えがあるな……あれ、MCでデヴィッド・カヴァーデイルが「ウタッテ、トキオーッ!」って叫んでるよ……これ、1988年6月に実現したジャパンツアーの音源ですよね? 残念ながら僕、このツアーは生で観られなくて、後日TOKYO FMで深夜にオンエアされた代々木オリンピックプール(現在の国立代々木第一体育館)公演の音源をエアチェック(死語)して、カセットで聴きまくったんだよな。だからめっちゃ聴き覚えがあるわけですね。MCや音源と異なるアレンジやギターソロに違和感を覚えながらも、必死に追いつこうとした高2の夏……懐かしいですね。

この音源が当時オンエアされたものと同じかどうかは不明ですが、それにしては音が悪い……エアチェック音源のほうがもっとクリアで各パートの分離が良かった記憶があるんですが、それって時間が経ったことで美化されてるんですかね? なんにせよ、もっとクオリティの高いもの(音質や歌・演奏含め)は残されていなかったんでしょうか。こうやって当時の貴重な音源を今楽しめるのは嬉しいのですが、そこだけが残念でなりません。

ライブの最後に演奏されたZZ TOPのカバー「Tush」とかトミー・アルドリッジのドラムソロパートとかいろいろカットされているので完全盤ではないものの、まぁオマケとしては十分かなと。


【DISC 3(ボックスセットのみ)】

「87 EVOLUTIONS(DEMOS AND REHEARSALS)」と題されたこのディスクは、「『白蛇の紋章~サーペンス・アルバス』に収録されている楽曲のデモ音源やリハーサル音源など、それぞれの楽曲の原型とも言える貴重な音源ばかりを収録。全て未発表音源の貴重なテイクだ。こちらも全曲未発表音源」とのことで、デヴィッドとジョン・サイクス(G)がいかにしてあの名曲たちを完成させていったかが垣間見れる貴重な音源集。「Give Me All Your Love」が最初スローテンポのブルースロックだったり、「Is This Love」が今みたいなAORっぽくなかったり、「Straight For The Heart」もテンポがユルめでカッコ良かったり、「Don't Turn Away」が最初はもっとアップテンポだったりと、いろんな発見があるのは面白いですね。ただ、「Crying In The Rain」以外は歌とギターだけによるラフなものなので、過剰な期待は禁物ですが。


【ディスク4(ボックスセットのみ)】

「87 VERSIONS(2017 REMIX)」と銘打った本ディスクは、「今回の30周年記念作品の発売にあたり、新たにリミックスを行なったシングル曲4曲に加え、当時日本のみで発売されていたEP『87 VERSIONS』に収録されていた音源や、貴重なラジオ・ミックスなどを収録。2017リミックスは今回が初出の音源となる」ということで、ディスク1に未収録の“あの当時レコーディングされ公式リリースされた音源”を網羅したものとなっています。気になる最新リミックスですが、このアルバム特有のリバーブ感が取り除かれ、非常に生々しいミックスに生まれ変わっています。ただ、それによりドラムサウンドの厚みがなくなったり、ギターの音が細くなったりなどの弊害も。ボーカルも前に出すぎていて、メタルアルバムのミックスというよりは現代的なロック/ポップスのミックスという印象。あと、原曲にはなかった音やコーラスが追加されていたりと、印象もだいぶ異なるかな。「Still Of The Night」はあの仰々しさが薄れてしまったし、「Here I Go Again」もダイナミックさが激減したけど、逆に「Is This Love」は今回のバージョンのほうが気に入ったかな(フェードアウトせずに終わるのも、なお良し)。「Give Me All Your Love」は評価が分かれるところかもしれませんが、これはこれで好き。原曲とどっちが良いかと問われたら、原曲を選びますが(苦笑)。

そして、日本限定リリースだったミニアルバム『87 VERSIONS』の音源ですが、リマスタリングが施されているかは不明。つうか「Looking For Love」と「You're Gonna Break My Heart Again」に関してはディスク1とかぶり。そこは気を遣えよ、ちゃんと仕事しろよと力説したい。それ以外は、Geffen時代のベストアルバムで聴けた「Here I Go Again」ラジオミックスと、シングルのみで発表された「Give Me All Your Love」のリミックス(ヴィヴィアン・キャンベルのギターソロに差し替えられたバージョン)も収録されております。まあこのディスクの主役は最新リミックスの4曲ですね。どうせなら、アルバムまるまる1枚をこの音で聴いてみたいという気もしましたが(それはそれで、別モノとして楽しめるかもしれないので)。

というわけで、今回の最新バージョン。初めて本作に触れるビギナーは2枚組仕様で十分です。ボックスはマニア向け。とはいえ、そのマニアならいろいろ突っ込みたくなるんじゃないかと察しますが……。

以下、オマケ。今回の最新リマスタリング音源を使って、1987年発売当時の国内盤およびUS盤の曲順でプレイリストを作りました。「Crying In The Rain」から「Bad Boys」への曲間の違いはあるものの、やっぱりこのトラックリストに強い親しみがあるだけに、ぜひ現行のトラックリストと聴き比べてみることをオススメします。



▼WHITESNAKE『WHITESNAKE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』
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投稿: 2017 11 18 12:00 午前 [1987年の作品, 2017年の作品, Whitesnake] | 固定リンク

2017/10/29

WILLIAM PATRICK CORGAN『OGILALA』(2017)

SMASHING PUMPKINSのフロントマン、ビリー・コーガンによる2ndソロアルバム。本作は本名である「ウィリアム・パトリック・コーガン」名義でのリリースとなります。

ソロアルバムはスマパン〜ZWANの解散を経て、2005年に発表した『THEFUTUREEMBRACE』以来12年ぶり。前作はヘヴィなサウンドのみならずニューウェイブやシューゲイザーなどさまざまなジャンルを打ち込み中心で表現した(ファンに求められているか否かは別として)意欲的内容でしたが、本作は本名名義での発表ということもあってか、非常にパーソナルな内容に仕上がっています。

そのパーソナルというのも、非常にわかりやすい形で表現されており、基本はアコースティックギターの弾き語りを軸にしており、そこに歪んでないエレキギターやピアノ、メロトロン、パーカッションなどが加わっています。とはいえ、そこまで音数は多くなく、むしろ全体的に“空白”を生かしたアレンジの楽曲がずらりと並びます。スマパンで言うなれば、「Disarm」「Thirty-Three」あたりに通ずると言えばわかりやすいでしょうか。

とはいえ、「Disarm」のようなドラマチックさはなく、「Thirty-Three」ほどのきらめきも……まったくないと言ったら嘘になりますが、その輝きは若さならではの生命力によるものとは違った、同時に影を感じさせるものといいましょうか。キュンとする切なさとは違う、郷愁感に似たものなのかもしれません。

ビリーの歌声も強く張り上げることなく、終始リラックスしたもので、聴き手側も肩の力を抜いて楽しめるんじゃないでしょうか。

ただ、統一感の強いカラーのせいなのか、「これ!」といったキメの1曲が見当たらないのがマイナスポイント。どれも平均点を軽く超えた仕上がりですが、抜きん出て素晴らしいと呼べるものを探すのは難しい。そういった意味では、非常に“雰囲気モノ”の1枚として全体の空気感を楽しむ作品と言えるでしょう。そんな楽しみ方があるのかどうかは別として。

90年代にあれだけ高性能ハードロック&ポップスを量産してきたビリー。00年代以降は本作に限らず、確かに「これ!」という1曲を生み出せていないんですよね。その才能はある人だと思うんですが……。

と思っていたら、本作ってビリーが脚本を手がけたショートフィルム『PILLBOX』のサウンドトラック的立ち位置の作品みたい。なるほど、サントラということで考えたらこの統一感も理解できるし、極端に目立ちすぎる曲が少ないというのも頷けるか……ってこれ、ショートフィルムが先かアルバムが先かで、捉え方も変わってくるような。本当はどっちが先なんでしょうね。

ちなみに本作には、元バンド名とのジェイムズ・イハが1曲(「Processional」)ギターとメロトロンでゲスト参加。実はアルバム未収録でもう1曲、共演曲があるとのこと。今後のリリースのみならず、再びステージでの共演含め、今後に期待しておきましょう。



▼WILLIAM PATRICK CORGAN『OGILALA』
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投稿: 2017 10 29 12:00 午前 [2017年の作品, Billy Corgan, Smashing Pumpkins] | 固定リンク

2017/10/28

EUROPE『WALK THE EARTH』(2017)

2017年10月に発表された、EUROPE通算11作目のスタジオアルバム。前作『WAR OF KINGS』(2015年)から2年7ヶ月ぶりの新作であり、再結成後6枚目のスタジオアルバムってことで、ついに80〜90年代の全盛期よりも活動歴が長くなってしまいました(解散前をアルバムデビューから数えると活動は10年に満たない計算ですが、再結成後は2004年の復帰1作目『START FROM THE DARK』から数えても13年)。

プロデューサーは前作から引き続き、デイブ・コッブ(RIVAL SONS、ZAC BROWN BANDなど)が担当。サウンド的にも前作の延長線上にあるもので、前作はメロディやバンドサウンドがイマイチ噛み合わないという若干とっ散らかった印象があったところを、今作ではそこをよりブラッシュアップすることで完成度の高い作品に仕上げることに成功しています。

前も書きましたが、そもそも再結成後のEUROPEは自分たちの“売れた”サウンド……いわゆる80年代後半の『THE FINAL COUNTDOWN』(1986年)や『OUT OF THIS WORLD』(1988年)みたいにキラキラしたハードロックから一歩引き、自分たちが本当に好きだった70〜80年代のDEEP PURPLEUFOTHIN LIZZYLED ZEPPELINRAINBOWからの影響がダイレクトに表れた、シンプルでわかりやすいハードロックを目指していました。復帰1作目『START FROM THE DARK』の時点で、すでに80年代のDEEP PURPLE的なサウンドを模倣していましたし、作品ごとに少しずつカラーを変えつつも、芯にある部分だけはブレずにここまで続いています。

特にここ3作……2012年の9th『BAG OF BONES』からはその傾向がより強くなり、ひたすら地味な方向へと続き進み続け、結果前作『WAR OF KINGS』とあわせて否定的に捉えるファンが多かったようです。いや、再結成以降の楽曲を全否定する往年のファンも少なくないようですね。

だけど、今回の『WALK THE EARTH』は本当にそこまでひどいアルバムだと思えないんですよね。自分が再結成後の作品に対して好意的というのもあるけど、それを抜きにしても本作はアルバムとして非常に優れている。メロもキャッチーだし、楽曲としてもフックのあるものが多い。以前はテンポ的に大半がミディアムテンポで似たようなものが多かったんだけど、今作はそこが非常に考えられており、そのせいもあって飽きがこない。新たなアンセムとなりうる表題曲「Walk The Earth」、比較的攻めのアップチューン「Kingdom United」や「Election Day」「GTO」「Whenever You're Ready」、サイケデリックなスローナンバー「Pictures」、ひたすら重いけどギターが泣きまくる「Wolves」、バラード寄りのミディアムナンバー「Turn To Dust」などなど、印象的な楽曲が多いんですよ。

ジョーイも歌でかなり頑張ってるし、ジョン・ノーラム(G)もソツないながらも耳に残るフレーズを増産してる。けど、何よりメロディが良いものが多い。結局そこなんですよね、このバンドは。今までは音にこだわるあまり、そこのバランスがうまく調整できていなかった。それを見事に乗り越えた今、EUROPEは再結成後で最強のポジションにいるんじゃないでしょうか。特に最近は2nd『WINGS OF TOMORROW』(1984年)や3rd『THE FINAL COUNTDOWN』完全再現ライブで古き良き時代の楽曲と真正面から向き合う時間が多かったのも、大きく影響したんじゃないかな。だとしたら、本当にやって正解だったと思います。

全10曲で40分弱というトータルランニングも、古き良き時代のロック的で素晴らしいし、エンディングもオールドスタイルで嫌いじゃない(そのあとに続くオマケ含め)。本当に第2の全盛期がそこまで迫ってきてるんじゃないでしょうか。そう信じています。

なお、日本盤は初回限定盤のみに『LOUD PARK 13』でのパフォーマンスの模様を完全収録。こちらもあわせてチェックしておきたいアイテムです(輸入盤付属のDVDは内容が異なり、『EUROPE AT ABBEY ROAD』と題した今作のレコーディングドキュメントらしきものが収められているようです)。



▼EUROPE『WALK THE EARTH』
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投稿: 2017 10 28 12:00 午前 [2017年の作品, Europe] | 固定リンク

2017/10/25

MARILYN MANSON『HEAVEN UPSIDE DOWN』(2017)

前作『THE PALE EMPEROR』(2015年)から約2年10ヶ月ぶりに発表された、MARILYN MANSON通算10作目のオリジナルフルアルバム。プロデュースは前作からバンドに携わるようになった、映画音楽をメインに手がけるタイラー・ベイツが担当しており、曲作りも前作同様にタイラーがすべてを手掛けております。残念ながら、トゥイギー・ラミレズ(B)は今作も制作には携わっていないようです。

今回はマンソンの名を良くも悪くも一躍有名にした名盤『ANTICHRIST SUPERSTAR』(1996年)『MECHANICAL ANIMALS』(1998年)をミックスしたような、ヘヴィかつグラマラスな内容。前作が地味で落ち着いていて、どこかデヴィッド・ボウイ的なソロアルバムテイストだったこともあり、このある種の原点回帰は喜ばしい限り。とはいえ、完全に過去2作を踏襲したものかと言われると……ニュアンス的なものといいましょうか、サウンドの方向性や質感が過去2作のそれを踏まえたもの、という言い方が正しいのかもしれません。

どの曲もダークで攻撃的ではあるものの、基本となるのはミディアム〜スローナンバー。ダークの質感は90年代のものというより、現代的と呼んだほうがいいのかな。そしてメロディは非常にキャッチーで、そのへんは『ANTICHRIST SUPERSTAR』というよりは『MECHANICAL ANIMALS』に近い……んだけど、あそこまで作り込まれたポップ感はないかも。どこか突き放した感の強いメロディという点では、前作の延長線上にあると思います。

とはいえ、近年でもっともわかりやすい内容だし、我々がイメージするMARILYN MANSON像にもっとも近い1枚かな。ヘヴィでグラマラスでゴシック、そしてポップ。思えばあれから20年経ってるんだもの、マンソンだってあと2年もすれば50代に突入ですよ。そこも踏まえつつ、本作は時代が求める音と真正面から向き合きながら、自身の加齢ともしっかり向き合った意欲作なんじゃないかと思います。

あと、個人的には今後の彼に「Saturnalia」みたいなBAUHAUS路線(路線っつうか、まんまですが。笑)にもどんどんトライしてもらいたいな。今のテイストとすごく合ってると思うので、下手に過去の遺産を引っ張り出すよりも、こっち側で極端に地味でダークな作品にトライするのもありかと。

最近はライブ中、事故に遭遇したりと踏んだり蹴ったりのマンソン先生。このアルバムを携えて、また元気に竹馬に乗る姿を日本のファンにも見せてほしいところです。

P.S.
……なんてことを書いた数時間後に、トゥイギー・ラミレズ解雇というニュースが。理由が理由だけに……嗚呼。



▼MARILYN MANSON『HEAVEN UPSIDE DOWN』
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投稿: 2017 10 25 12:00 午前 [2017年の作品, Marilyn Manson] | 固定リンク

2017/10/24

OUTRAGE『Raging Out』(2017)

昨年末に連日更新を再開した際、自分のなかでひとつだけ基準を設けていました。それは「新譜、旧譜にかかわらず海外作品のみを取り上げる」ということ。過去の更新時にはそういった線引きはなかったのですが、どうしても国内アーティストは仕事で扱うことも多く、そこと内容が被ってしまうケースが多かったので、そこは差別化しようと思ったわけです。

が、そういうことも言ってられないくらい、これは絶対にここでも書かなくちゃいけないと強く思わせてくれた国内アーティストの新作に出会ってしまった。それが今回紹介するOUTRAGEのニューアルバム『Raging Out』でした。

カバー曲とオリジナルアルバムから構成された前作『GENESIS I』(2015年)から2年ぶり、オリジナルフルアルバムとしては『OUTRAGED』(2013年)から4年ぶりとなる新作。『GENESIS I』にはオリジナル曲5曲が収められていたし、今年2月に発表されたベストアルバム『XXX BOX』にも新曲が3曲含まれていましたが、やっぱり彼らに関してはフルアルバムで楽しみたい派なので、ずっと今回みたいなアルバムを待っていたのですが……いやはや、期待以上の出来で驚かされましたよ。

初のミニアルバム『OUTRAGE』から30周年という記念すべきタイミングに届けられた本作は、彼らのルーツが克明に刻み込まれた、ある意味では集大成的な内容。例えばオープニングを飾る「Doomsday Machine」なんて、ギターの泣きメロとブルドーザーのごとくパワフルなバンドサウンドが一体となって押し寄せてくる、黄金のパワーメタルチューン。歌メロの泣きっぷりも半端ないし、聴いてるだけで鳥肌が立ってくる。

かと思えば、“いかにも”なスラッシュナンバー「Hammer Down and Go」もあるし、METALLICA的なミディアムテンポ感に泣きメロとサイケデリックサウンドを掛け合わせた「Wake」も、どこからどう聴いてもMOTORHEADな「Hysteric Creatures」もある。正直彼らが“スラッシュ以前のルーツ”をこのタイミングにここまで見せてくれたことにも、とても驚かされました。

しかし、それが単なる焼き直しや懐古厨では終わっておらず、しっかり“今”の彼らの音として聴かせてくれる。彼らがどこからスタートして、今はどこにたどり着き、そして31年目以降どこに向かっていきたいのか、その指針となる“攻め”の1枚じゃないでしょうか。じゃなきゃ、ドラマチックなイントロから疾走感あるスラッシュナンバーで幕開けを飾る“黄金パターン”を崩してまで、「Doomsday Machine」のような楽曲でオープニングを飾ろうなんて思いませんもの。

若いファンも、そして往年のメタルファンもを納得させる、問答無用の1枚。『THE FINAL DAY』(1991年)や『LIFE UNTIL DEAF』(1995年)と並ぶ、彼らの代表作となるべき傑作の誕生です。



▼OUTRAGE『Raging Out』
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投稿: 2017 10 24 12:00 午前 [2017年の作品, Outrage] | 固定リンク

2017/10/22

TRIVIUM『THE SIN AND THE SENTENCE』(2017)

前作『SILENCE IN THE SNOW』(2015年)から2年ぶりに発表された、TRIVIUM通算8枚目のスタジオアルバム。彼らは大半のアルバムを2年間隔で発表してくれる働き者で、創作意欲に満ち溢れているグループなんだろうなと想像しています。中にはツアーに2年近くかけるバンドもいるというのに……あえて名前は出しませんが(笑)。

彼らは出世作となった2ndアルバム『ASCENDANCY』(2005年)と3rdアルバム『THE CRUSADE』(2006年)で同じプロデューサーを起用して以降、4th『SHOGUN』(2008年)から毎作プロデューサーを変えています。そこ結果なのか、以降のアルバムは毎回作風が少しずつ変化しているし、良い意味で『ASCENDANCY』で付いたイメージを払拭しようと奮闘しています。もしくは、アルバムごとに新たなことに挑戦しようと思い、そのスタイルにもっとも合ったプロデューサーを起用しているのかもしれませんが。

そんな本作でプロデュースを手がけるのは、LAMB OF GODの諸作やHATEBREEDGOJIRA、日本のVAMPSなどのプロデューサーとして知られるジョシュ・ウィルバー。実は彼、前作『SILENCE IN THE SNOW』ではミックスも手がけているので、正確では初顔合わせではありません。それもあってかわかりませんが、新作を初めて聴いたとき、久しぶりに「前作の延長線上にある内容、もしくは前作をブラッシュアップさせつつ、より攻撃的にした作風だなぁ」と感じました。前作でより正統派ヘヴィメタルバンド的側面を強めた彼らでしたが、新作ではそのカラーにブラックメタル的な攻撃性が加わることで、『SILENCE IN THE SNOW』を「モダンでヤワになった」と不満に感じていた人にも「おっ?」と思わせる内容に仕上がっているのではないでしょうか。

実はそのへん、新ドラマーのアレックス・ベントが加わったことも大きいのかなと。彼がどういうタイプのプレイヤーかは詳しく知らないのですが、きっと彼の個性が大きく反映されたビート感やアレンジなんだと思います。加えて、ちょうど昨年秋に1stアルバム『EMBER TO INFERNO』(2003年)のリイシュー盤がリリースされ、そこにアルバム前の初期音源も豊富に追加されたことから、バンドの原点を見直した可能性もあるのかなと。

とはいえ、基本的には『SILENCE IN THE SNOW』でやろうとしていたことのブラッシュアップ版のイメージが強く、前作が生理的に苦手という人には今回もダメかもしれませんが。まぁ、そもそも「『THE CRUSADE』以降のTRIVIUMってこういうバンドだったよね?」という気がするのですが、いかがでしょう? 特に『IN WAVES』(2011年)以降の彼らはメロディの質的にB級を脱したと思っていますし、サウンド的にも今作はモダンと王道の間を行き来するバランス感が絶妙。うん、前作よりも好き。前作も最初は良いね!と思っていたのに、しばらく経ったら聴く頻度が減っていたんですよ。単純に僕個人の好みの問題でしょうけど、ちょっと刺激が足りなかったのかな、と。なので、今作みたいなバランス感は大歓迎です。久しぶりに「ライブでたっぷり聴いてみたい!」と思える新曲ばかりなので、次こそは必ず来日公演に足を運ぼうと思っております。



▼TRIVIUM『THE SIN AND THE SENTENCE』
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投稿: 2017 10 22 12:00 午前 [2017年の作品, Trivium] | 固定リンク

2017/10/16

L.A.GUNS『THE MISSING PEACE』(2017)

2017年10月にリリースされた、L.A.GUNS通算11作目のオリジナルアルバム。2012年の『HOLLYWOOD FOREVER』以来5年ぶりの新作なのですが、本作は単なる新作とは意味合いが異なります。なんと、バンド創始者であるトレイシー・ガンズ(G)がフィリップ・ルイス(Vo)と15年ぶりにタッグを組んだ、初期からのファンにとっては念願の1枚なわけです。

どこかダークな雰囲気だった前作から、どことなく初期の彼らを思わせるサウンドへとシフトチェンジした本作。1stアルバム『L.A.GUNS』(1988年)のアートワークをオマージュしたジャケットからも伺えますが、それもそのはず、プロデュースをトレイシー・ガンズ本人が手がけているのですから。

ラフだけどタイトという絶妙なオープニングトラック「All The Same To Me」から始まり、先行トラックとして公開済みの2曲目「Speed」で一気にテンポアップ。DEEP PURPLE「Highway Star」から引用した歌詞やソロパートが含まれたこの曲は、モロに1stアルバムの頃の彼らを現代によみがえらせたような1曲。「No Mercy」とかあのへんの疾走チューンですね。これ、ライブで聴いたらカッコイイだろうなぁ……と思ったら、先日の『LOUD PARK 2017』でも披露されてましたね。ドライブ感の強いアレンジは、まさに今後のライブでも大きな武器になりそうです。

その後もヘヴィ&ダークな「A Drop Of Bleach」、タイトルはROLLING STONESだけど音はL.A.GUNSそのものな「Sticky Fingers」、オルガンをフィーチャーしたムーディーなバラード「Christine」、軽快なロックンロール「Baby Gotta Fever」で前半終了。後半戦もグルーヴィーでソウルフルなミドルチューン「Kill It Or Die」、初期というよりは最近のL.A.GUNSっぽい「Don't Bring A Knife To A Gunfight」、8分の6拍子による男臭いバラード「The Flood's The Fault Of The Rain」、パンキッシュなアップチューン「The Devil Made Me Do It」、1stアルバムに入ってそうな悲しげなヘヴィバラード「The Missing Peace」、アコギによるセンチメンタルな雰囲気からそのままハードな世界観へと延長していく「Gave It All Away」でアルバムは終了します。

こうやって通して聴くと、確かに要所要所で1stアルバムの香りや、音楽的進化を見せた2ndアルバム『COCKED & LOADED』(1989年)や3rdアルバム『HOLLYWOOD VAMPIRES』(1991年)の要素も含みつつも、しっかり“今のL.A.GUNS”を表現してくれているように思いました。思ったほどワイルドに疾走するタイプの曲は少なく、年相応に(笑)落ち着いたミドルテンポの楽曲が多かったり、後半にバラードタイプの楽曲が思ってた以上に含まれていたりと、なんだかんだでみんな大人になる=年をとるんだな、と改めて思いました。当たり前ですけど。

にしても本作。単なる同窓会で終わらなくてよかった。願わくば、このままの編成で活動を続けてほしいものです。



▼L.A.GUNS『THE MISSING PEACE』
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投稿: 2017 10 16 12:00 午前 [2017年の作品, L.A.Guns] | 固定リンク

2017/10/09

KADAVAR『ROUGH TIMES』(2017)

ドイツ・ベルリン出身のトリオバンドKADAVARによる通算4作目のスタジオアルバム。2010年結成とキャリアはまだ浅いのですが、それに反して音はかなり濃厚です。僕自身は2013年発売の2ndアルバム『ABRA KADAVAR』は去年、ストリーミングサービスで触れていたのですが、“今のバンド”とは思えないほどにレイドバックした不可思議なサウンドにギョッとしたことをよく覚えています。

そういった感じで、改めて新鮮な気持ちで接した彼らの新作。サウンド、演奏ともに70年代ハーロドック/サイケデリックロック的なスタイルで、録音も当時を再現したかのようなヴィンテージ感が感じられ、再生方法によっては本当に“今のバンド”だって気づかないんじゃないでしょうか。

「○○に似てる」という表現はとても簡単だと思いますが、むしろそういう先入観なしで聴いたほうが純粋に楽しめる作品だと思います。ジャンル的には確かにオールドスタイルのハードロックに、スペーシーなサイケデリックテイストをまぶしたもので、アレンジも決して凝りに凝ったものではない。なんでしょう、素材の味を活かすために余計な味付けを加えないこだわりといいましょうか、そういうシンプルさが本作からは伝わってきます。

また、彼らのサウンドってストーナーロックにも通ずるものがあるなと。BLACK SABBATH的という意味ではなく、80年代以降のストーナーロックと呼ばれるバンドたちの系譜にあるという点で、共通点が多いと思うのです。あ、あと(「○○に似てる」という表現はしないと言っておきながらアレですが)、BUDGIEあたりに似たプログレ感も感じられますよね。ゴリゴリしたハードロックを軸にしながらも、どこかプログレッシブというところも共通しているし。その感覚をもっとヨーロピアン、そう、ドイツ寄りにするとKADAVARみたいな音になるのかなと。そう思いました。

にしても、このビジュアル……MV含め、これを全部モノクロで編集して、音もモノラルに変換したら、完全に勘違いしちゃいますね。どういった生活を送ったら、この音に到達するのか。ぜひ機会があったら聞いてみたいものです。

ちなみに、日本盤にはボーナストラックとしてTHE BEATLES「Helter Skelter」のカバーを追加収録。このセレクト、普通っちゃあ普通ですけど、アルバムを通して聴くとこのカバーが一番メジャー感の強い曲というのもまた笑えます(微笑ましいという意味で)。



▼KADAVAR『ROUGH TIMES』
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投稿: 2017 10 09 12:00 午前 [2017年の作品, Kadavar] | 固定リンク

2017/10/05

JOSH TODD & THE CONFLICT『YEAR OF THE TIGER』(2017)

BUCKCHERRYが2015年夏に発表した7thアルバム『ROCK 'N' ROLL』はそれまでの生々しいまでにパンキッシュなロックンロールとは異なる、文字通りの“ロックンロール”に立ち返った作品集で、個人的には好みだったものの、世間的には不評だったようです。それもあってなのか、今春にはオリジナルメンバーにしてジョシュ・トッド(Vo)とバンドを維持し続けてきたキース・ネルソン(G)、そして復活後にドラマーとして加入したイグザビエル・ムリエルがBUCKCHERRYを脱退。サポートメンバーを迎えて夏のツアーを乗り切ったようですが、どう考えても存続は難しいのではないでしょうか。

そんなタイミングに、ジョシュとスティーヴィー・D(G)がバンドと並行してレコーディングを続けてきたプロジェクトが、この9月にデビューアルバムをリリース。最終的にはJOSH TODD & THE CONFLICTというバンドとして、しばらくはこちらの活動に専念するようです。

ご存知のとおり、ジョシュはBUCKCHERRYが一度解散した際、ソロ名義で『YOU MADE ME』(2003年)というアルバムを1枚だけ発表しています。同作はBUCKCHERRYのイメージを引き継ぎつつも(そりゃそうだ、彼の声こそがバンドの持ち味のひとつだったんだから)、ニューメタル以降のヘヴィ&ラウドなサウンドを取り入れたモダンな仕上がり。正直、BUCKCHERRYよ再び……と思っていたファンには厳しい内容だったと思います。

そこを踏まえつつ、今回の新バンドのデビューアルバムと向き合ったのですが、思った以上に“俺たちのBUCKCHERRY”な仕上がりだったので肩透かしを食らったというか。いや、嬉しかったんですけどね。

ヘヴィな要素は要所要所から感じられつつも、本作で展開されているのはハードドライヴィングでパンキッシュなロックンロール。『ROCK 'N' ROLL』でBUCKCHERRに少し足りなかったものがここで解消されている気がしました。もしかしたらその“足りなかったもの”は、レーベル的にはアウトなものであり、そこに嫌気がさしてキースは脱退したんじゃ……なんて邪推したくなるくらい、“これをBUCKCHERRYでやれよ!”と思ってしまう内容なのです。

攻めもあれば、「Rain」みたいにヘヴィなバラードもあれば、「Good Enough」のようにダークなアコースティックナンバーもある。ダンスミュージックとハードコアをミックスしたような「The Conflict」、ファンキーなヘヴィロック「Atomic」、さらにプリンスの「Erotic City」のカバーまであるんだから(過去にBUCKCHERRYがプリンスの「Cream」をカバーしてたのはジョシュの趣味だったのかしら)、ファンが聴きたかったBUCKCHERRYをジョシュとスティーヴィーの2人が具現化してくれたと言っても過言ではないでしょう。

きっとJOSH TODD & THE CONFLICTのライブではBUCKCHERRYの楽曲も披露されることでしょう。シングルギターバンドなので完全な再現は難しいし、演奏できる曲も限られるかもしれませんが、ひとまずジョシュがまだまだ前のめりでロックし続けたいという意思が強く感じられるこのバンドの成功を陰ながら祈りたいと思います。



▼JOSH TODD & THE CONFLICT『YEAR OF THE TIGER』
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投稿: 2017 10 05 12:00 午前 [2017年の作品, Buckcherry, Josh Todd, Josh Todd & The Conflict] | 固定リンク

2017/10/04

ALICE COOPER『PARANORMAL』(2017)

アリス・クーパー通算27作目のスタジオアルバム。全米22位と大健闘した前作『WELCOME 2 MY NIGHTMARE』(2011年)から6年ぶりのオリジナルアルバムとなりますが、その間にジョニー・デップやジョー・ペリー(AEROSMITH)と組んだHOLLYWOOD VAMPIRESのアルバム『HOLLYWOOD VAMPIRES』が2015年に発表されているので、新作としてはそこまで久しぶりという印象もなかったりするのですが、そこは御大が本気で臨んだオリジナルアルバム。当然、心して向き合うわけです。

全10曲で34分というトータルランニングにまず驚かされるのですが、1曲目「Paranormal」を聴いて、その不穏な空気感とメリーゴーランドのように展開していくアレンジに「これぞ!」と膝を叩きたくなるくらいワクワクするわけです。確かに『WELCOME 2 MY NIGHTMARE』も良い作品だと思いましたが、個人的にはちょっと長すぎかな、というのと曲調の幅が広すぎて散漫に感じてしまったので、もうそりゃあここで大きな期待を重ねるわけです。

で、2曲目「Dead Flies」以降は1曲目とは若干異なるテイスト……70年代初頭、ALICE COOPERというバンド名義だった時代のガレージロックサウンドが展開されていきます。正直1曲目を聴いた時点で求めていた路線ではなかったものの、これはこれで……僕、1989年に『TRASH』で復活して以降の作品で、それほど高く評価されていない『THE LAST TEMPTATION』(1994年)が一番好きだったりするので、本作の路線は個人的に大々的に支持したいくらいなので、本作の路線はアリだと思っています。

この路線に着地したのって、例えばHOLLYWOOD VAMPIRESからの流れだったり、本作のドラムをU2のラリーが担当していたり、オリジナルメンバーのデニス・ダナウェイ(B)、ニール・スミス(Dr)、マイケル・ブルース(G)で録音するなどのアイデアが生まれたからなんでしょうかね。ゲストプレイヤーとしてZZ TOPのビリー・ギボンズ(G)や DEEP PURPLEのロジャー・グローヴァー(B)、そしてスティーヴ・ハンター(G)といった豪華なのか地味なのか微妙な布陣が参加していますが、それによって特に派手に仕上がることもなく。それでいいんでしょうけどね、本作の場合は。

また本作は永久仕様としてボーナスディスクが付いており、そちらにデニス、ニール、マイケルのオリメンが参加した新曲2曲と、「No More Mr.Nice Guy」「Under My Wheels」「Billion Dollar Babies」「Feed My Frankenstein」「Only Women Bleed」「School's Out」と往年(+90年代前半)の代表曲のライブテイクを聴くことができます。新曲2曲はちょっとユルユルかな……というシンプルなロックンロール。本編に入れるには軽すぎるし、ちょっとしたお遊びとして楽しむには十分かな。このボーナスディスクの内容を足しても70分には満たないし、全部1枚にまとめられるじゃんと思う人も多いみたいだけど、やっぱりアリス自身はディスク1の10曲で完結させたいという思いがつy買ったんじゃないかな。オリメンとの2曲はEPみたいな扱いで、アルバム本編とは別という。アルバム本編でも9曲目「Rats」がオリメンで演奏された楽曲だけど、こっちはもっとソリッドな仕上がりで、本編の流れに沿っているので収録を決めたと。そういうことなんでしょう。

とうわけで、本気で支持したいこのアルバム。全米32位と前作には及びませんでしたが、僕は大好きですよ。非常にライブ向きですし。

そういえば、まもなく『LOUD PARK 2017』で久しぶりに来日しますね。前回の来日は2008年3月。単独公演とは違ってフルセットを楽しめるわけではありませんし、そうなると新曲もどれだけ削られるのかわかりませんが、今は素直に久しぶりの新作と久しぶりの来日に対して、素直に酔いしれたいと思います。



▼ALICE COOPER『PARANORMAL』
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投稿: 2017 10 04 12:00 午前 [2017年の作品, Alice Cooper, Deep Purple, U2, ZZ Top] | 固定リンク

2017/10/02

MATT CAMERON『CAVEDWELLER』(2017)

SOUNDGARDENPEARL JAMのドラマーとして知られるマット・キャメロンがキャリア初となるソロアルバムをリリースしました。

本作ではプロデューサーとしてのみならず、ソングライターやシンガー、ギタリスト、ベーシストなどとしてマルチな才能を発揮しておりますが、ドラムは叩いておらず、デヴィッド・ボウイのアルバム『★ (BLACKSTAR)』(2016年)でプレイしていたマーク・ジュリアナと、同じく『★』に参加したティム・ルフェーブル(B)がリズム隊を担当しているそうです(ティムは一部楽曲のみで、他はマットが演奏)。

どんな音になるのかと思いドキドキしながら再生してみると、序盤は意外と普通のロック……と言っては語弊があるかな。まぁあれです、マットの現在のメインバンドであるPEARL JAMからイメージできる、オーソドックスなロックとでも言えばいいんでしょうか。SOUNDGARDENほどハード&ヘヴィではなく、どこか内向的な空気が漂う落ち着いたアメリカンロック。うーん、うまく言語化できませんが、PEARL JAMが好きな人なら気にいるサウンドだと思います。

曲によってはアコースティックギターが前面に打ち出されていたり、かと思えばシンセを軸にした楽曲もある。ちょっとフュージョンぽいインスト曲「Into The Fire」、アバンギャルドなギターソロが登場する「One Special Lady」、もっともSOUNDGARDEN的と言えなくもないラストナンバー「Unneccesary」と個性的な楽曲もあるにはあるけど、あくまで中心となるのは歌。そのへんはPEARL JAMのイメージから外れないと思います。マットの歌声も悪くないし、変に声を張り上げることなく大人な雰囲気。どの曲も2〜3分台で、全9曲でトータル29分という非常に聴きやすいトータルランニングも良いと思います。

なお、「One Special Lady」後半に登場するギターソロをプレイしているのは、アラン・ヨハネスというチリ出身のマルチプレイヤー。調べてみるとこの人、クリス・コーネルのソロアルバム『EUPHORIA MORNING』(1999年)とか、元PEARL JAMのドラマー、ジャック・アイアンズのソロアルバム『ATTENTION DIMENSION』(2004年)とかにも参加している、シアトル界隈ともそれなりに縁がある人みたいですね。

アルバム後半が意外とニューウェイブの香りをさせるあたりに意外性はあるものの、最初にも書いたように全体的には“PEARL JAMのメンバーが作ったソロ作品”らしい内容で、極端に逸脱はしてないはず。プログレポップが好きな人は、特に「Into The Fire」「Real And Imagined」あたりは気にいるんじゃないでしょうか。僕はこの2曲と、先に挙げた「One Special Lady」の3曲が気に入っています。

ちなみに本作、CDでのリリースは今のところないみたいです。各配信サイトでのダウンドロード販売やストリーミング、そしてPEARL JAMオフィシャルショップで販売されているアナログ盤(一部、Amazonでも販売予定)で聴くことができます。



▼MATT CAMERON『CAVEDWELLER』
(amazon:海外盤アナログ / MP3

投稿: 2017 10 02 12:00 午前 [2017年の作品, Matt Cameron, Pearl Jam, Soundgarden] | 固定リンク

2017/09/26

KXM『SCATTERBRAIN』(2017)

DOKKEN、現LYNCH MOBのジョージ・リンチ(G)、KING'S Xのダグ・ピニック(Vo, B)、KORNのレイ・ルジアー(Dr)が2013年に結成したトリオバンドKXM(「K」はKORN、「X」はKING'S X、「M」はLYNCH MOBからそれぞれ取ってるんだとか)の2ndアルバム。2014年にセルフタイトルの1stアルバムをリリースしており、僕も発売当時購入して聴いている……はずなのですが、実はどんな曲があったかまったく思い出せず。改めて引っ張り出して聴いてみたら、確か当時も「KING'S Xのファンはまあまあ気に入るかもしれないけど、ジョージ・リンチ=DOKKENな人には受け付けないだろうな」なんて感じたことを思い出しました。

悪くないんだけど、どこか退屈。突き抜けるようなサウンド/スタイルでもないので、それは仕方ないにしても、せめて“これ!”という1曲があればなと思ったのでした。

で、あれから3年経った忘れた頃に2枚目です。懲りずに続けるんですね。

期待せずにこの新作も聴いてみたのですが……1曲目「Scatterbrain」が……あれ……意外と良くないか、これ。確かに作風は前作の延長線上にあるんだけど、たぶんこの3人に求められていることがガッチリとハマってる。スリリングなプレイと浮遊感の強い歌メロ、うん、気持ち良い。決して強力な“これ!”ではないかもしれないけど、限りなく“これ!”に近い1曲だと思います。ジョージのギターも非常にモダンで、どこかジェフ・ベックっぽいし。まあ結局のところ、ジョージ・リンチ=DOKKENな人には今回もダメなんでしょうね。

そんなことを考えながらアルバムを聴き進めていくと……あれ、退屈……? 2曲目「Breakout」、3曲目「Big Sky County」と同じテンポで、抑揚があまりない楽曲が続くから余計にそう感じてしまうんですよね(「Breakout」はそこまで悪くないんだけど、「Big Sky County」がちょっとだけ退屈だからそう感じてしまうのか)。ただ、4曲目「Calypso」みたいにパーカッシヴなリズムで遊んでいたり、5曲目「Not A Single Word」みたいにアップテンポなパートを含む楽曲があると、変化が感じられて素直に楽しめるんですけど。BLACK SABBATHみたいな「Obsession」、サイケデリックな「Noises In The Sky」あたりでまたミディアムテンポ(しかも比較的同テンポ)に戻ってしまい(しかも連発)、ちょっとつらくなるという。

とにかくこのアルバム、曲順が悪い。曲調が似たり寄ったりなのは今に始まったことじゃないし(ただ、1曲1曲の質は前作よりも上がってるように感じました)、たくさん聴かせたい(全13曲入り)という意思は尊重してあげたいんだけど、やっぱりトータル66分は長いよ。せめてミディアムテンポの曲を3曲減らして10曲入りにして50分前後に収めてくれたら、もうちょっと聴きやすかったんだろうなあ。キラリと光る楽曲が散見されるだけに、今のままだったら非常に勿体ないと思うんです。普通に通して聴いたらみんな最後までたどり着けないって。

後半にもファンキーな「It's Never Enough」とか、リフで変化を付けてる「True Decievers」「Stand」、ツーバス全開でちょっとKING CRIMSONチックな「Together」とか魅力的に感じられる楽曲があっただけに、もうちょっと前半〜中盤の構成を考えてくれたらなぁ。そういう意味でも、非常に惜しい1枚です。



▼KXM『SCATTERBRAIN』
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投稿: 2017 09 26 12:00 午前 [2017年の作品, King's X, Korn, KXM, Lynch Mob] | 固定リンク

2017/09/25

LIVING COLOUR『SHADE』(2017)

2017年9月にリリースされた、LIVING COLOUR通算6枚目のオリジナルアルバム。再結成後3作目、前作『THE CHAIR IN THE DOORWAY』からは実に8年ぶりの新作となります。

ヴァーノン・リード(G)は本作について「ブルースのパイオニア、ロバート・ジョンソンのスピリットから影響を受けている。ブルースとメタルのブレンドが新しい方向性への指針となった」、コリー・グローヴァー(Vo)も「『SHADE』は最終的な結果として、ブルースを解釈したのではなく解体したものとなった」とそれぞれ語っています。

確かにブルースの影響下にあるコード進行、テイストを持った楽曲も多いですが、そこはメンバーが言うとおり、あくまで“LIVING COLOURとしてブルースを独自の解釈で表現したら、結果として今までの自分たちらしいハードロックもありつつ、これまでになかったタイプの楽曲も生まれた”といった程度の影響というのが正しいでしょう。ブルースの一言でちょっと後ずさりして聴き逃してしまったとしたら、非常にもったいない1枚ですよ、これは。

冒頭の「Freedom Of Expression (F.O.X.)」を聴けば、本作がいつもどおりのLIVING COLOURだとご理解いただけるはず。ブラックテイストをまぶした豪快なハードロックは、彼らのイメージそのままですしね。それは続く「Preachin' Blues」もしかり。たしかにブルースの影響下にある楽曲ですが、この流れで聴けば何ら違和感ないし、逆にLIVING COLOURがこういうテイストの楽曲をやるんだ、とちょっと新鮮に感じられるんじゃないでしょうか。

ところが、リードトラックとなっている3曲目「Come On」には少し驚かされるかもしれません。RED HOT CHILI PEPPERSあたりがやりそうなこの曲、途中でエレクトロっぽいテイストも飛び出すのですから。ただ、これも味付け程度で、前面に打ち出すことはないのでご安心を。

以降はファンク、ブルース、ハードロック、そしてときどきヒップホップが入り乱れたLIVING COLOURらしい展開が続きます。クリストファー・ウォレス「Who Shot Ya?」のカバーや、マーヴィン・ゲイ「Inner City Blues」のカバーも、両方とも原曲のテイストを残しつつ、しっかりLIVING COLOUR色に染め上げられており、好印象。“泣きのブルース”を彼ら流に仕上げたラストナンバー「Two Sides」もグッとくる仕上がりで(この曲のみ、ロバート・ジョンソンというよりもジミヘンのイメージが強いかも)、アルバムとして非常によくまとまった1枚だと思います。

正直、再結成後のアルバムはこれ1枚として聴いてなかったので不安があったのですが、そんな心配無用でした。80〜90年代の彼らが気に入っているリスナー、そして初期〜中期のレッチリが好きな人なら間違いなくツボに入りまくりの力作ではないでしょうか。



▼LIVING COLOUR『SHADE』
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投稿: 2017 09 25 12:00 午前 [2017年の作品, Living Colour] | 固定リンク

2017/09/21

Spotifyでプレイリストを作ってみました

先月からレビューページにSpotifyのリンクを貼り付けているのですが、せっかくなので何か面白いことできないかと思い、このサイトならではのプレイリストを作ってみることにしました。

まずは、8月に当サイトで紹介したアルバム(Spotifyで配信している作品のみ)から各2曲程度ピックアップして、50〜60曲程度のプレイリストを制作しました。題して『TMQ-WEB Radio 1708』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

今後も毎月、1ヶ月のまとめ的なプレイリストを作っていけたらと思います。

あるいは、こういうプレイリストがあったらもっと面白いんじゃないか?みたいな企画も、その都度思いついたら作っていきたいな。例えば、毎年1月にやってる成人企画とか、ちょっと前に書いた職業ライターまとめ企画とか。

で、上の『TMQ-WEB Radio』を作る前に、遊びで昨日のDURAN DURANの日本武道館公演のセットリストに沿ったプレイリストも作っております。大阪公演に行くって人は、こちらで雰囲気を掴んでもらえたら嬉しいです。

以上、珍しく告知エントリーでした。

投稿: 2017 09 21 10:00 午前 [2017年の作品, 「音楽配信」] | 固定リンク

2017/09/16

FOO FIGHTERS『CONCRETE AND GOLD』(2017)

FOO FIGHTERS待望のニューアルバムが昨日リリースされました。本作は2014年11月発売の8thアルバム『SONIC HIGHWAYS』から3年ぶりに発表される新作で、THE BIRD AND THE BEEのメンバーにして、シーアやアデル、P!NK、リリー・アレンなどポップス系プロデューサーとしても知られるグレッグ・カースティンと共同制作したもの。それ自体がすでに実験なのに、本作は事前に“MOTORHEAD meets『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』”などと比喩されていたもんですから、そりゃあ期待が高まるってものですよ。

かなり早い段階で本作からの先行シングル「Run」が公開されていましたが、この1曲のみではその真偽は確認できず。で、リリースに先駆けて雑誌レビュー用にこのアルバムを聴くことができたので、今日はその際のメモを元に全曲解説をしていけたらと思います。


M1. T-Shirt
ギター弾き語りかと思いきや、大袈裟でスケールの大きなバラードへと変化。1分半程度の短い曲で、どこかQUEENのアルバムを彷彿とさせる。

M2. Run

1曲目から間髪入れずに突入。じわじわと盛り上がる構成と、ヘヴィかつグルーヴィーなサウンド&アレンジに新たな可能性も。とにかくスケールが大きい1曲。

M3. Make It Right [ジャスティン・ティンバーレイク参加曲]
「Run」同様グルーヴィーな楽曲だが、こちらはリズムの1音1音がとにかく重い。コーラスの入れ方が非常にポップで、単なるハードロック/ヘヴィロックバンドにはできない取り組みでは? リズムの抜け感、エフェクトのかけ方もインパクトが強く個性的。

M4. The Sky Is A Neighborhood [アリソン・モスハート参加曲]

“ヘヴィロック版ジョン・レノン”みたいな、強いサイケ感を持つミディアムヘヴィナンバー。ストリングスの入り方、コーラスの重ね方が非常にキャッチー。と同時に、音の抜き方、空白の使い方などアレンジが絶妙。

M5. La Dee Da [アリソン・モスハート参加曲]
歪みまくったベースによるイントロが、どこかQUEENS OF THE STONE AGEっぽい。ヘヴィなガレージロックかと思いきや、ピアノの音色やキャッチーなメロディが合わさることで気持ちよさ急増。拍の取り方が倍になる(テンポが速くなる)と、一気にハードコア感が増す。ここまで実験的要素が強く、ひたすらヘヴィなのにしっかりポップさが保たれているのがFOO FIGHTERSらしいのか、それとも今作のプロデューサーの手腕によるものなのか。

M6. Dirty Water [イナラ・ジョーンズ参加曲]
いきなり爽やかな曲調に(笑)。どこかボッサ調でもあり、ファルセット+オクターブ下の地声で歌う優しい声が耳に残る。複数のコーラスが重なることで生まれるハーモニーの心地よさに驚かされる瞬間も。FOO FIGHTERSらしいのに今までにないような感触もあり……と思ったら、後半でしっかり激しくなる攻めの1曲。女性コーラスが入る(M4〜6)ので、歌の豊かさはこれまで以上では。

M7. Arrows
メロディの流れ、コードの使い方に80年代ハードロック的カラーが。すごくストレートなメロディアスHR。が、どこかビートルズ的でもあり。5thアルバム『IN YOUR HONOR』(2005年)で試した実験の延長線上?

M8. Happy Ever After (Zero Hour)
後期ビートルズ(主にポール・マッカートニー)がやっていたようなアコースティックナンバーのFOO FIGHTERS的解釈。攻めまくりのアルバム前半と、この曲以降の流れのコントラストが素敵すぎ。

M9. Sunday Rain [ポール・マッカートニー参加曲]
完全にビートルズ(笑)。ジョンぽくもありポールぽくもあり、でもジョージぽくもある(笑)。そんな1曲でポール本人がドラムを叩くのも興味深い。テイラー・ホーキンスのボーカルもどこかポールに似てる(意識して真似てる?)。

M10. The Line

前曲のアウトロ?この曲のイントロ?のジャジーなピアノからダークな歌い出し。が、全体を覆うアンセム感がさすがの一言。どんなにアンダーグラウンドな方向に進もうとしても、デイヴ・グロール持ち前のポップネストプロデューサーの仕事ぶりでうまく調和されてしまうのは、もはやこのバンド最高の強みでは。

M11. Concrete And Gold [ショーン・ストックマン参加曲]
ダウナーなヘヴィバラード。どこかNIRVANA時代を思い浮かべてしまう1曲。かと思えば壮大なコーラス&ハーモニーがかぶさり、まるでQUEENの現代的解釈のようでもある。NIRVANAっぽいとはいえ、どこかポジティブさに満ちている気も。これこそデイヴの人柄そのものなのでは。ある種、このアルバムにおける究極の1曲。


以上となります。

確かに本作には“MOTORHEAD meets『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』”的なカラーが満載でした。が、個人的には“LED ZEPPELIN+MOTORHEAD×『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』”が正解なのではないかと思います。単なるハードコア(MOTORHEAD)で終わらず、しっかり大衆性を持った王道ハードロック(LED ZEPPELIN)のカラーも維持しながら、新たな実験にも挑んでいる(『SGT. PEPPER'S〜』)。実験要素は足し算ではなく、今回は掛け算なのかなと思いこういう表現をしてみました。

と同時に、これは矛盾するかもしれませんが……本作は“引き算のアルバム”でもあるなと感じました。それはプロデュース方法によるものが大きいのかもしれませんが、音数が多いにも関わらず、しっかり“抜き”の技術が多用されている。そのバランス感が本当に絶妙で、過去のFOO FIGHTERSのアルバムにはなかったものじゃないかと思うのです(これまでも“抜き”はあったけど、それは0か100かくらい大きなものとして使用されていたように思います)。

発売後改めて何度か聴いてみて思ったのは、もしかしたらFOO FIGHTERSは80年代以降のQUEENみたいな存在になろうとしているのではないか、あるいはそうなれるのではないかということ。それくらい大衆性とアーティスティックな実験要素を両立させながら、どんどん大きくなっているんだから。今、周りを見渡してもこんな“ハードロック”バンドなかなかいませんよ。

デイヴのソロプロジェクトから始まったこのバンドが、スタートから20数年でここに到達するとは……ただただ驚きです。そして、こんなアルバムだからこそロック低迷の今、バカ売れしてほしいと願っております。



▼FOO FIGHTERS『CONCRETE AND GOLD』
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投稿: 2017 09 16 12:00 午前 [2017年の作品, Foo Fighters, Paul McCartney] | 固定リンク

2017/09/14

ESKIMO CALLBOY『THE SCENE』(2017)

ドイツ出身のスクリーモ/エレクトロニコアバンドの4thアルバム。2014年発売の2ndアルバム『WE ARE THE MESS』は聴いていたのですが、続く3rdアルバム『CRYSTALS』(2015年)の未聴のままで今作に触れてみました。

まず、本作ではサウンド/楽曲が非常に整理されているなという印象が強い。以前の彼らが持っていたハチャメチャな雰囲気が一掃され、全体的にシリアスな空気が漂っている。どこかBRING ME THE HORIZONの最新作『THAT'S THE SPIRT』(2015年)の空気感に通ずるものがあり、あの作品の成功に影響を受けたのは明白かと思います。

また、もろもろ整理されたことで非常に聴きやすくなったのも本作の特徴。どの曲もキャッチーだし、耳障りの良いメロディとシンガロングしたくなるサビメロを持ち合わせている。アクセントとしてしっかりEDMの要素も取り入れているものの、そのへんは以前ほど濃いものではない。例えば4曲目「Banshee」でのゴリゴリしたサウンドに、色付け程度でシンセのシーケンスサウンドが乗る程度。正直、このくらいの取り入れ方だったら同じようなバンドは他にもたくさんいるよね、と。

そう、このバンドならではの“絶対的な個性”が本作ではメロディセンス以外に感じられないんですよね。もちろん、そこが強いバンドが最終的に生き残るとは思うんですが、サウンドメイキングに関しては“絶対的な個性”は薄まっているんじゃないかなと。そこがすごく勿体ない気がするんですが、これってこの手のバンドが必ず通る鬼門なのかもしれないですね。

曲単位でも『THAT'S THE SPIRT』を意識したナンバーがいくつか見受けられるのは、微笑ましいといえばそれまでだけど、もうあのアルバムも2年前のヒット作であり、BMTH自身も次に進むべき道を現在模索してる最中だと思うんですよ。うん、そういう意味では本作でやっていることは、少なくともあと1年早くやるべきでしたよね。全体的な出来が良いだけに、非常に勿体ない。本当にその一言です。

なんて否定的なことばかり書いてますが、基本的にアルバムとしての出来は素晴らしいです。平均以上の仕上がり。80点以上あげてもいいとさえ思ってる。けど、90点の壁を超えられないのは、先に触れた“絶対的な個性”の部分ね。もしかしたら次のアルバムでさらに化けるのかも……と期待しておきます。



▼ESKIMO CALLBOY『THE SCENE』
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投稿: 2017 09 14 12:00 午前 [2017年の作品, Eskimo Callboy] | 固定リンク

2017/09/07

MOTORHEAD『UNDER COVER』(2017)

MOTORHEADが遺したカバー曲を1枚にまとめたコンピレーションアルバム。それぞれ録音時期もプロデューサーも異なるものの、ご機嫌なロックンロールクラシックをレミーの歌とMOTORHEADのダーティーな演奏で楽しむことができる企画盤です。

全11曲中、もっとも古い作品は1992年発表の「Cat Scratch Fever」(オリジナルはテッド・ニュージェント)と「Hellraiser」(オリジナルはオジー・オズボーン)の2曲(アルバム『MARCH OR DIE』収録)。もっとも「Hellraiser」はレミー(Vo, B)も作曲クレジットに加わっており、カバーというよりは作者が同時期に同じ曲を発表したという認識なんですけどね(オジー版は1991年秋発売のアルバム『NO MORE TEARS』収録)。

また、本作には2015年のラストアルバム『BAD MAGIC』制作時に録音された未発表音源「Heroes」(原曲はデヴィッド・ボウイ)が収録されており、そこに関してはポイントは高いかなと。ほぼ原曲どおりのアレンジですが、それでもMOTORHEADが演奏するだけでこんなにも変わるんだと、驚かされるよりも笑ってしまう1曲。他にもROLLING STONESのカバーが2曲もあったり、RAINBOWのカバー「Starstruck」ではSAXONのビフ・バイフォードとデュエットしてたり、最後にMETALLICA「Whiplash」で締めくくったりと、なかなかツッコミどころ満載の1枚です。フォロワーの曲をルーツになった本家がカバーするって、面白い試みですよね。

レミー亡き今、きっと今後も未発表音源が小出しにリリースされるのかもしれませんが、その先駆けとなった本作は企画や意図的には面白かったと思います。だってレミーの死後、孤高の存在と妙にリスペクトされ始めたMOTORHEADというバンドが、実は節操ない存在だったことがこの1枚で証明されるようなもんですから(笑)。僕はそれは決していけないことだとは思ってないし、だからこそ彼らは非常に身近な存在に感じられたんですけどね。



▼MOTORHEAD『UNDER COVER』
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投稿: 2017 09 07 12:00 午前 [2017年の作品, Motorhead] | 固定リンク

2017/09/06

PAUL DRAPER『SPOOKY ACTION』(2017)

MANSUNのフロントマン、ポール・ドレイパーの初ソロアルバム。MANSUNが2003年に解散してから10年くらいは表舞台で活動することはほとんどなかったものの、数年前から新曲を発表し、昨年2枚のEPを発表。アルバムもそろそろかなと思っていたところ、ようやくこの8月に海外でリリースされました(日本盤はボーナストラック4曲を追加し、9月6日発売)。

オープニング曲「Don't Poke The Bear」を最初に聴いたとき、その声の変貌っぷりに驚かされたものです。まぁ、まずその前に、歌に入るまでに約3分要することにも驚かされましたが(笑)。ポールの声は想像していた以上に野太くなっており、「そりゃあずっと裏方やってたわけだし、仕方ないか……」とちょっとだけ落胆したのも事実。

が、曲が進むにつれて、“あのMANSUNの”ポール・ドレイパーが戻ってくる……つまり1曲目の歌声は曲に合わせた歌唱法だったと気付かされます。もちろん、解散から14年も経っているわけですから、多少声が変わっていてもおかしくないのですが、聴けば聴くほど「ああ、自分は今ポール・ドレイパーの新作を聴いているんだ」と納得でき、どんどん嬉しくなってくるんです。

と同時に、ポールの声がどこかデヴィッド・シルヴィアンに似ているなと。これはMANSUN時代からちょっと感じていいたことでもあるのですが、特に今作ではネチっこい節回しや影のあるメロディのせいかもあってその要素が強まっているように感じました。ああ、だから自分はMANSUNが好きだったのかな、とデビュー作を最初に聴いてから20年以上経ってそこに気づいたのでした。

サウンド的にはどこか懐かしいシンセの音色を含みつつも、“あのMANSUNの”ポール(しつこい)が鳴らしていることが頷ける煌びやかで艶やかなもの。バンドサウンドを軸にしていることから、MANSUNファンにもとっつきやすい内容だと思います。ただ、MANSUNとの大きな違いはドミニク・チャドの変態的なギタープレイがないこと。では、それによって本作が劣っているのかといえばそんなことはなく、最初から最後まで心置きなく楽しめる1枚だと思っています。

ニューウェイブ以降の流れにある現代的なプログレを好むリスナー、例えばPORCUPINE TREEやスティーヴン・ウィルソンあたりが好きな人なら絶対に気に入るアルバムだと思うんです。だって、本作のリリース元「KSCOPE」自体がスティーヴン・ウィルソンも昨年まで在籍した、“ポスト・プログレッシヴ・サウンド”を謳っているレーベルですし。日本盤にはそのスティーヴン・ウィルソンが参加した「No Ideas feat. Steven Wilson」がボーナストラックとして収録されているので(初出は昨年発売のEP)、ぜひこの機会に日本盤をチェックしてみてはいかがでしょうか。



▼PAUL DRAPER『SPOOKY ACTION』
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投稿: 2017 09 06 12:00 午前 [2017年の作品, Mansun, Paul Draper] | 固定リンク

2017/08/29

QUEENS OF THE STONE AGE『VILLAINS』(2017)

初の全米1位を獲得した前作『...LIKE CLOCKWORK』(2013年)から4年ぶりの新作となる、QUEENS OF THE STONE AGE通算7作目のスタジオアルバム。ジェイムズ・ラヴェル(UNKLE)をプロデューサーに迎えた前作から一転、今作ではマーク・ロンソンを起用しており、よりポップで艶やか、だけどしっかりロックという統一感の強い1枚に仕上がっています。

オープニングを飾る「Feet Don't Fail Me」のディスコテイストに最初こそ度肝を抜かれますが、よく聴けばしっかりロック色が保たれていることもわかるし、実は絶妙なバランス感で成り立っていることに気づかされます。続く「The Way You Used To Do」もポップセンス抜群のロックナンバーだし、「Domesticated Animals」のヘヴィだけどエモーショナルという曲調も文句なし。ギターやベースのサウンドしかり、ドラムの録音の仕方しかり、非常にロックンロールしております。うん、気持ちいい。

で、冒頭3曲を聴いて思ったのは、先にも述べたようにとても艶やか、つまりセクシーさが強まっているということ。ジョシュ・ホーミの歌声がより艶やかになっているというのもありますが、サウンドそのものに華があるんですよね。なんというか、ロックンロールって昔はこうだったよねっていうような、いかがわしさや胡散臭さも全部ひっくるめた、セクシーさ。少なくとも前作『...LIKE CLOCKWORK』にはなかった(もしくは非常に薄かった)要素だと思います。

エモの極み「Fortress」からガレージパンク「Head Like A Haunted House」、ダウナーなダンスナンバー「Un-Reborn Again」、ジョシュの甘い歌声が耳に優しい「Hideaway」、グルーヴィーなハードロック「The Evil Has Landed」、映画のサウンドトラックを思わせるドラマチックな「Villains Of Circumstance」と、とにかくバラエティに富んだ楽曲が並び、それらがQUEENS OF THE STONE AGEというバンド名のもとに寄り添うことで統一感を生み出している。このへんはマーク・ロンソンの手腕によるものなのかなと思いました。

なんだかんだで前作も大好きだった自分ですが(特に先日のフジロックでのライブを観て、よりポジティブな印象を受けました)、本作はそれ以上に好きな作品になりそうです。せっかくなので、本作を携えた来日公演をまたすぐにでも実施してもらいたいものですね。



▼QUEENS OF THE STONE AGE『VILLAINS』
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投稿: 2017 08 29 12:00 午前 [2017年の作品, Queens of The Stone Age] | 固定リンク

2017/08/17

DEAD CROSS『DEAD CROSS』(2017)

にしても、すごいバンドが誕生したものです。FAITH NO MOREのマイク・パットン(Vo)、元SLAYER/現SUICIDAL TENDENCIESのデイヴ・ロンバード(Dr)、THE LOCUST/RETOXのジャスティン・ピアソン(B)、同じくRETOXのマイク・クライン(G)というメタル/オルタナ/ハードコア界のそうそうたるメンツが一堂に会したスーパーバンド、DEAD CROSS。彼らのデビューアルバム『DEAD CROSS』が8月上旬にリリースされました(ここ日本では同月23日に発売)。

もともと2015年に結成された際にはTHE LOCUSTのゲイブ・セルビアンがボーカルでしたが(THE LOCUSTではドラマー)、翌2016年に脱退。新たにパットン先生が加入し、現在のサウンドスタイルが確立されたとのことです。

おそらくパットン先生が加わるまでは、意外とストレートなハードコアが展開されていたんだろうなと思うのですが、このアルバムで聴けるサウンドは単なるハードコアとは言い難い、非常に複雑怪奇なもの。カオティックハードコアとでも呼べばいいのでしょうか。単なる暴力的なエクストリームサウンドというよりも、どこか知的さがにじみ出た、まさしくカオスな世界観が展開されています。

パットン先生のボーカルはFAITH NO MORE以上に振り切れたものもあれば、そこから一転して冷静さを感じさせるものもあり、FAITH NO MOREやパットン関連作品愛好家なら一発で気にいるはず。ロンバードのドラムもオープニングの「Seizure And Desist」からツーバス&ブラストビート全開(この曲のボーカルオーケストレーションも最高)。SUICIDAL TENDENCIES『WORLD GONE MAD』(2016年)でのプレイよりも、SLAYERでパンキッシュな楽曲を叩くときのプレイに近いイメージと言えば共感いただけるでしょうか。要するに、ひたすらカッコイイということです。思えばパットンとロンバードは過去にFANTOMASでも活動をともにしたことがあるので、相性は悪くないんでしょうね。

ギターやベースに触れずじまいですが、決して空気なわけではないですよ。このドラムにこのベース、このギターという絶妙なプレイを聴かせてくれていますし。ただ、ここにパットン先生の声が乗ると……全部持っていっちゃうんですよね。それだけアクが強いというか唯一無二というか。まぁまずは、頭を空っぽにして楽しんでください。アレンジがどうだとか、この曲のここがこうだとか、BAUHAUS「Bela Lugosi's Dead」のカバーのアレンジがどうだとか、そういう小難しいことは数回無心で楽しんだあとにでも。ね?



▼DEAD CROSS『DEAD CROSS』
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投稿: 2017 08 17 12:00 午前 [2017年の作品, Dead Cross, Faith No More, Slayer, Suicidal Tendencies] | 固定リンク

2017/08/13

V.A.『SINGLES: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』(1992/2017)

1992年秋に全米公開された映画『シングルス(SINGLES)』のサウンドトラックアルバム。日本では先にサントラがリリースされ、映画は翌1993年春に公開されました(単館ではなかったものの公開劇場数は少なく、どこも小規模劇場での公開だったと記憶しています)。

シアトルを舞台にしたラブストーリーなのですが、当時のシアトルといえばグランジブームまっただ中。主人公のひとりであるクリフ(マット・ディロン)がロックバンドをやっていることなどもあり、劇中にはALICE IN CHAINSやクリス・コーネル(SOUNDGARDEN)、エディ・ヴェダー(PEARL JAM)なども登場します。

サントラは映画公開に先駆けて1992年6月にUS発売(日本では9月発売)。内容は当時人気のグランジバンドやシアトル出身のレジェンドたちの楽曲で大半が占められ、全13曲中11曲が当時未発表曲でした。リードトラックとしてALICE IN CHAINSの新曲「Would?」(同年9月発売の2ndアルバム『DIRT』にも収録)が公開されるやいなや、大反響を呼んだのをよく覚えています。

ALICE IN CHAINS、PEARL JAM、SOUNDGARDEN、MUDHONEYSMASHING PUMPKINSといった当時ど真ん中のバンドから、SCREAMING TREES、MOTHER LOVE BONEというグランジ黎明期のバンド、THE REPLACEMENTSのポール・ウェスターバーグ、HEARTのアン&ナンシー姉妹の別ユニットTHE LOVEMONGERS、ジミ・ヘンドリクスといったレジェントたちまで。さらにはクリス・コーネルのソロ曲まで含まれているのですから、当時のグランジシーンを振り返る、あるいはシアトルのロックシーン(メタルは除く)に触れるという点においては非常に重要な役割を果たすコンピレーションアルバムだと思います。

そのサントラ盤が、発売から25年を経た2017年に、未発表テイクや劇中で使用されたもののサントラ未収録だった楽曲を集めた2枚組デラックスエディションで再発。ディスク1は当時のままで、ディスク2にその貴重な音源がたっぷり収められています。

ここには、マット・ディロンが劇中で所属していたバンド・CITIZEN DICKの楽曲「Touch Me, I'm Dick」(MUDHONEY「Touch Me, I'm Sick」のパロディカバー)や、のちにSOUNDGARDENの楽曲として発表される「Spoonman」のクリス・コーネルソロバージョン、ALICE IN CHAINやSOUNDGARDENのライブ音源、TRULYやBLOOD CIRCUSの楽曲、マイク・マクレディ(PEARL JAM)のソロ曲などを収録。おまけ感の強いものから本気で貴重なテイクまで盛りだくさんの内容で、ここまでを含めて映画『シングルス』をしっかり振り返れるのかな?と改めて思いました。

映画自体は観ても観なくても大丈夫ですが(笑)、1992年という時代の節目を追体験したいのなら、NIRVANAやPEARL JAMのオリジナルアルバムだけではなく、ぜひ本作も聴いていただきたいと、あの当時をリアルタムで通過したオッサンは強く思うわけです。サントラと思ってバカにしたら、きっと痛い目を見るよ?

ちなみに、本作のデラックスエディションが発売されたのが5月19日(海外)。クリス・コーネルが亡くなったのがその前々日の17日ということもあり、真の意味での“グランジの終焉”を実感させる1枚になってしまったことも付け加えておきます。



▼V.A.『SINGLES: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』
(amazon:国内盤 / 海外盤CD / 海外盤2CDデラックス盤

投稿: 2017 08 13 12:00 午前 [1992年の作品, 2017年の作品, Alice in Chains, Chris Cornell, Heart, Mudhoney, Pearl Jam, Smashing Pumpkins, Soundgarden] | 固定リンク

2017/08/12

EUROPE『THE FINAL COUNTDOWN 30TH ANNIVERSARY SHOW: LIVE AT THE ROUNDHOUSE』(2017)

1986年に発表されたEUROPEの3rdアルバムにして最大のヒット作『THE FINAL COUNTDOWN』のリリース30周年を記念して、2016年秋にヨーロッパで行われたアニバーサリーツアーから、11月12日のロンドン公演を収録したライブ作品。国内盤、輸入盤ともにDVD+2CD、Blu-ray+2CDというフォーマットで発売(音源パートのみ配信版も)。少々お高いですが、名作が1曲目からラストまで完全再現された、ここ日本では実現しなかったツアーの模様をたっぷり楽しむことができます。

本稿ではこのうち、ライブ音源のほうにスポットを当てて取り上げたいと思います。

ライブは2部構成となっており、前半12曲(CDでいうディスク1)が現時点での最新アルバム『WAR OF KINGS』(2015年)を、曲順はバラバラだけど全曲演奏(日本盤ボーナストラックとして追加収録されたインスト曲「Vasastan」含む)。で、後半11曲(CDディスク2)が『THE FINAL COUNTDOWN』完全再現となっています。

本作と通して久しぶりに『WAR OF KINGS』の楽曲に触れたのですが……音源よりもライブのほうが生き生きしているように感じました。再結成後のEUROPEは常に2nd『WINGS OF TOMORROW』(1985年)や3rd『THE FINAL COUNTDOWN』の再現およびそれに近いサウンドを求められ続けており、非常に不幸だなと感じているのですが……個人的には再結成後に発表された7th『SECRET SOCIETY』(2006年)や続く8th『LAST LOOK AT EDEN』(2009年)はかなりの良作だと思っているので、残念でなりません。

復帰一発目『START FROM THE DARK』(2004年)からもわかるように、再結成後のEUROPEのベースにあるのは、80年代のRAINBOWDEEP PURPLEだと思われます。その基本路線はそのままに、時にモダンに、時にプログレッシヴにと味付けを変えていますが、『WAR OF KINGS』では一周回って『START FROM THE DARK』でやりたかったことを新たなプロデューサーのデイヴ・コッブ(RIVAL SONSなど)を迎えて再構築した原点回帰の1枚だと思っていました。

改めてこのライブ音源を聴いて、その思いは間違ってなかったと確信できました。確かに80年代のジョーイ・テンペスト(Vo)と比べたら高音が出てないし、歌メロも平坦かもしれない。ジョン・ノーラム(G)のギターワークもレイドバックしすぎて面白みがないと感じるかもしれない。だけど、この歌声と、どこか“らしさ”を感じさせる歌メロを聴くと、僕はこのEUROPEも嫌いになれないし、むしろ(個人的趣味のせいもあり)この路線を愛せてしまうのです。

まぁ『WAR OF KINGS』スタジオアルバム自体については、別の機会に語るとして……。

気になる『THE FINAL COUNTDOWN』完全再現ですが、これはもう……言うまでもないでしょう。最近演奏されていないアルバムB面曲(「On The Loose」とか「Love Chaser」とか)が改めて聴けた喜びと、この慣れ親しんだ曲順。そして、何百万回聴こうが、半ばギャクと化そうが、「The Final Countdown」のイントロリフを聴けば、アガらずにはいられないのです。これは10代で80年代をリアルタイム通過したリスナーの性なのです。うん、今でも全曲歌えるもんな。

ダウンチューニングが気になるとか、ライブ前半パート(『WAR OF KINGS』全曲)との落差が気になるとかいろんな声があると思うけど、これが2017年現在のEUROPE。10月には早くも最新オリジナルアルバム『WALK THE EARTH』もリリースされるようで、こちらもおそらく『WAR OF KINGS』路線であることは間違いないと思うけど、それでも僕はこれからもEUROPEの新作を、再結成後の諸作とともに聴き続けると思います。



▼EUROPE『THE FINAL COUNTDOWN 30TH ANNIVERSARY SHOW: LIVE AT THE ROUNDHOUSE』
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投稿: 2017 08 12 12:00 午前 [2017年の作品, Europe] | 固定リンク

2017/08/11

ACCEPT『THE RISE OF CHAOS』(2017)

ACCEPT通算15枚目、再々結成後4枚目のスタジオアルバム。

現在のマーク・トーニロ(Vo)を含む編成としては、2010年の『BLOOD ON THE NATIONS』以降、2年おきに新作を発表していましたが、前作『BLIND RAGE』(2014年)発表後に再々結成後から不動だった布陣からハーマン・フランク(G)とステファン・シュヴァルツマン(Dr)が脱退(2人はそのまま、DESTRUCTIONのシュミーアと結成したPANZERの活動に専念するも、ハーマンはのちにPANZERも脱退)。新たにウヴェ・ルイス(G)とクリストファー・ウィリアムズ(Dr)を迎えツアーを続けます。

本作はマーク、ウヴェ、クリストファー、そしてオリジナルメンバーのウルフ・ホフマン(G)、ピーター・バルテス(B)の新編成で、過去3作同様にアンディ・スニープをプロデューサーに迎え制作。前作発表後のツアーを現編成で続けたことも幸いし、バンドのとしての一体感も非常に良い状態でレコーディングに臨めたのではないでしょうか。

サウンドは、どこをどう切り取ってもACCEPT以外の何者でもない、男臭いど直球のパワーメタル。トニーのボーカルは当初から前任のウド・ダークシュナイダーのそれに瓜二つだったので、古くからのファンが聴いても違和感なく楽しめるはずです。

楽曲もすべて4〜5分台でコンパクトにまとめられており、疾走感のある楽曲とミディアムテンポのヘヴィかつキャッチーな楽曲をバランス良く配置。おどろおどろしいイントロのファストチューン「Die By The Sword」や親しみやすいメロディを持つミドルナンバー「Koolaid」、ツーバス連打のパワーメタル「No Regrets」、自身を皮肉ったタイトルと王道のACCEPTサウンドの相性抜群の「Analog Man」、ドラマチックな作風の「What's Done Is Done」「Worlds Colliding」など、印象的な楽曲がずらりと並びます。

最初に聴いたときは「あれ、ちょっと一番地味かな?」と思ってしまいましたが、聴き返すと実はそんなことまったくなく、上記の楽曲以外にも良曲が豊富な内容であることに気づかされ、実は前作『BLIND RAGE』以上の良作だと実感させられました。さすがの一言。

確かに派手さは皆無ですが、老舗が守り続ける伝統の味がここには存在する。いろんな味を楽しみまくっている間に、ホンモノの味を一瞬忘れそうになりましたが、これこそ王道のヘヴィメタルそのもの。続けて楽しみたい1枚です。本作発表から約1ヶ月後の9月には、もう来日公演でこれらの曲をナマで楽しめるのだから、ぜひとも本作を聴いて会場に足を運びたいところですね。



▼UFO『WALK ON WATER』
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投稿: 2017 08 11 12:00 午前 [2017年の作品, Accept] | 固定リンク

2017/08/09

REX BROWN『SMOKE ON THIS...』(2017)

PANTERA、元DOWNなどで活躍したベーシスト、レックス・ブラウンによる初のソロアルバム。Wikiなどを目にすると、もともとはジャズベーシストで、メタル以外の音楽にも精通しているようで、それは本作の随所からも伺えます。

本作ではベースのみならず、ボーカルとギターにも挑戦。もちろんソングライティングにも携わっており、大半の楽曲をナッシュビル出身のギタリスト/ソングライターのランス・ハーヴィルと共作しています(全11曲中2曲のみレックス、ランスとプロデューサーのキャブレ・シャーマンによる共作)。

さて、気になるサウンドですが、PANTERAやDOWNから想像できるようなモダンなヘヴィメタルやダウナーなストーナーロックとは一線を画する、非常にオールドスタイルで土着的なハードロックが展開されています。PANTERAというとどうしても“BLACK SABBATH meets アメリカ南部サウンド”を想像するかと思われますが、確かに南部サウンドはここにも健在。しかし主軸になっているのはサバスよりもLED ZEPPELIN、さらにZZ TOPあたりからの影響も見え隠れします。

曲自体はツェッペリンのリフワークやサイケデリック臭漂うミディアムチューン、さらにZZ TOPっぽい“ハードロック寄りのサザンロック”、カントリーテイストのサイケバラードなどが主体。そういった要素に低音を効かせたギターリフと、ぶっきらぼうでしゃがれ声のレックスのボーカルが合わさることで、どこか懐かしさを覚えるのですが……ってこれ、要するにザック・ワイルドじゃん!と(笑)。そう考えたらとても腑に落ちました。ザックからサバス/オジー色を薄めると、こうなるんだろうな。

ただ、残念ながら本作は“ギター”アルバムではないかなと。派手なギターワークも、鳴った途端に瞬殺されるようなギターソロもここにはない。ランスはあくまでカントリーサイドからやってきて、自分の庭でギターを弾きまくる程度。レックスが過去に在籍したバンドを想定して聴いたら、肩透かしを喰らうかもしれません。

とはいえ、全体的には非常によくできた“枯れた”ハードロックアルバムだと思います。レックスが今後もこの路線を進んでいくのかは定かではありませんが、さらに先に進むためにはこのタイミングに自身のルーツを吐き出すことに意味があるのかなと。もしかしたら、今後の活動次第で本作の評価は大きく変わるかもしれませんね。

個人的には、気楽に聴けるハードロック作品として気に入っています。ザック・ワイルドのアーシーサイドが好きな人にはうってつけかも?



▼REX BROWN『SMOKE ON THIS...』
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投稿: 2017 08 09 12:00 午前 [2017年の作品, Down, Pantera, Rex Brown] | 固定リンク

2017/07/08

STONE SOUR『HYDROGRAD』(2017)

SLIPKNOTのフロントマン、コリィ・テイラー(Vo)による別バンド、STONE SOURの4年ぶり、通算6枚目のスタジオアルバム。前々作『HOUSE OF GOLD & BONES - PART 1』(2012年)および前作『HOUSE OF GOLD & BONES - PART 2』(2013年)が連作かつコンセプチュアルな作品だったこともあり、無駄に小難しさを与えてしまった印象もなきにしもあらずですが、そういうこと抜きにしてもよくできたヘヴィロックアルバムだったんですけどね。ただ、個人的には半年というスパンで2枚のアルバムを出す理由がいまいち掴めなかったというか。だったら2枚同時か2枚組にしてほしかったなと。1年ぐらい間が空けば1枚1枚をじっくり楽しめたと思うんですが、そこまで体に馴染む前に新しいのが出ちゃって、結局そこまで両方楽しめなかったというのが本音なので。

で、STONE SOURとしてはその後、HR/HMの名曲たちをまんまカバー(というかほぼコピー)した2枚のEP(『MEANWHILE IN BURBANK…』『STRAIGHT OUTTA BURBANK…』)を2015年に発表し、そこから1年半経った今年6月末にこの『HYDROGRAD』というオリジナルアルバムを発表したわけです。

えーっと、最初に聴いたときはとにかく驚きました。いや、驚いたというよりもぶったまげた、と言ったほうが正しいか。良い意味で予想を裏切ってくれた、清々しいまでにまっすぐなHR/HMアルバムなんですよこれが。

SLIPKNOTと比べれば存分にメロディアスなんだけど、やはり餅は餅屋というか、特に前2作にはヘヴィさや重苦しさがつきまとっていたわけです。ところが、HR/HMの名曲コピーに勤しんだこともあり、今作では自らのルーツに立ち返ったと言わんばかりに、シンプルでど直球なストリングスタイルのHR/HMを聴かせてくれるんです。もちろんアレンジにおける味付けには現代的なフレイバーが散りばめられていますが、それは許容範囲内。30〜40代のリスナーが進んで楽しめる要素が芯にしっかりあるから、問題なく楽しめるわけです。

コリィの歌唱スタイルやメロディの運び方、そしてメロディアスかつフラッシーなギタープレイ含め、ここにあるのは間違いなく80年代の黄金期の影響下にあるHR/HM。スタート時こそ90年代のオルタナロック〜グランジからの影響が強かったものの(もちろん本作にもその要素はしっかりありますが、それ以上に王道色のほうが強い)、ここで一気に開き直ったというか先祖返りしたというか。ホンモノが求められるこんな時代だからこそ、彼らのようなバンドがこういう音を鳴らしてくれるのは本当に嬉しい。これを聴いたからって、別にSTONE SOURがNICKELBACKになったとは誰も思わないって(笑)。

70分近くもある大作(全15曲入り)ですが、珍しく最後まで飽きずに楽しめる1枚でした。しかも日本盤にはさらにボーナストラックとして、VAN HALEN「Unchained」のカバーを追加。これも先のカバーEPの名残りですね。おまけとしては十分。ぜひ日本盤で購入することをオススメします。



▼STONE SOUR『HYDROGRAD』
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投稿: 2017 07 08 12:00 午前 [2017年の作品, Slipknot, Stone Sour] | 固定リンク

2017/07/07

RADIOHEAD『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』(2017)

今から20年前の1997年6月(本国イギリスで。日本では5月末に先行リリースされています)、RADIOEHAD『OK COMPUTER』というアルバムを発表してから今年で20年。おそらくこの20年間で、自分がもっとも再生したアルバムが本作であることは間違いないと思います(次点がMANIC STREET PREACHERSの『EVERYTHING MUST GO』かな。まぁこちらは前年1996年発売だけど、リリース当初は親しめず、しばらく経ってからドハマりしたので)。

『OK COMPUTER』については今から16年前、2001年6月にすでに紹介しているので、改めて書くまでもないかなと。あのとき、散々悩みながら「どうしてこのアルバムがすごいのか?」について書いたので。

で、今回紹介するのは、20周年を記念して先月発売された2枚組アルバム『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』について。これは『OK COMPUTER』をリマスタリングしたディスク1と、当時のシングルにバラして収められた『OK COMPUTER』制作時のアウトテイクと、音源としては初収録となる「I Promise」「Man Of War」「Lift」の3曲を含む11曲入りのディスク2から構成されています。

ディスク1の内容については改めて書くまでもないですが……そう、書くまでもないのに、そしてこれまでに何百回と聴いてきたのに、バカ正直に再生してしまうという(しかも「Airbag」から「The Tourist」までじっくり聴き入ってしまうという)。久しぶりに大音量で聴いてみたら……やっぱり良いアルバムでした。と同時に、このリマスター盤がとてもえげつない。音の分離がかなり良くなっているためか、オリジナル盤よりもきめ細やか。言い方は悪いけど、見たくなかったものまで見えてしまうくらいの生々しさを感じさせる仕上がりなのです。恐ろしい。

で、問題のディスク2。当時のライブでも披露されていた「I Promise」「Man Of War」「Lift」の3曲は、ファンならご存知のナンバー。特に「Lift」に関しては何度も「ついに正式レコーディングされるか?」という噂が上がり、昨年の最新作『A MOON SHAPED POOL』の際にもそんな噂が出たくらい、ファンの間では音源化が熱望されていた1曲なのです。

『OK COMPUTER』という完成され尽くした傑作のあとに、これらの未発表曲やアウトテイクをがっつり聴くと……このディスク2の方向性って、要はその前の2ndアルバム『THE BENDS』(1995年)からの単なるステップアップ作だったんだなと実感させられるわけです。

そういえばRADIOHEADは1枚目のアルバム『PABLO HONEY』(1993年)から『THE BENDS』に取り掛かった際にも、一度作った多くの新曲を“破棄”して新たに作り直しているんですよね。そこで“破棄”された楽曲群が『MY IRON LUNG EP』(1994年)や、『THE BENDS』からのシングルのカップリングに収められたわけです。ただ、『THE BENDS』のときと『OK COMPUTER』が違ったのは、『THE BENDS』の頃はツアーなどで時間がない中で納得にいかないものを作ってしまったからであって、『OK COMPUTER』の頃はある程度納得できるものを一度作ってから「もっといけるんじゃないの?」とさらに一歩踏み込んだ。その違いはすごく大きいと思うんです。

「I Promise」も「Man Of War」も「Lift」も、RADIOHEADが好きな人なら絶対に気にいる、彼ら以外の何者でもない良曲だけど、やっぱり『OK COMPUTER』という閉鎖的で神経症気味な作品集には似合わないんですよ。こういう形で聴かされると、それはより強く実感させられるわけで、やっぱり当時の彼らのジャッジは正しかったんだなと納得してしまいます。もし、ディスク2側の方向で進めていたら、きっとここまで大きくなってなかっただろうし、バンド自体もここまで長く続いていたかどうか……。

それにしても、ディスク2を聴くとTHE BEATLESからの影響がいかに強いかが伺えますね。本編における「Paranoid Android」における「Happiness Is A Warm Gun」リスペクトぶりだけじゃなく、アウトテイクからもポール・マッカートニー的センスが伺えたりしますし。そこからPINK FLOYD的方向が加わったことで今の『OK COMPUTER』が完成した……なんていうのは大袈裟かしら。

というわけで本作。『OK COMPUTER』が大好物な方なら間違いなく楽しめる、歴史的価値の高い作品集だと思います。またライト層は、ディスク2を「『THE BENDS』と『OK COMPUTER』の間に、本来発売されるはずだった幻の2.5枚目アルバム」という位置付けで聴くと、スッと入っていけるのではないでしょうか。なんにせよ、『OK COMPUTER』とあわせて聴いておくべき1枚だと思います。だって、ミュージックビデオまでしっかり制作されちゃってるんだから(しかも2本も)。



▼RADIOHEAD『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』
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投稿: 2017 07 07 12:00 午前 [1997年の作品, 2017年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2017/07/06

SLOWDIVE『SLOWDIVE』(2017)

間にKASABIANの新作を挟んだけど、再び「20年前後ぶり」の新作の話題に。

RIDEのニューアルバム『WEATHER DIARIES』が発売されるちょっと前に、SLOWDIVEの通算4作目にあたるスタジオアルバムも発表されました。題して『SLOWDIVE』。前作『PYGMALION』(1995年)から実に22年ぶり……笑うしかないね。まぁ前作リリース後に解散してしまったんだからしかたないんだけど。そんな彼らも2014年に再結成。同年にはフジロックで奇跡の初来日を果たしたんだけど……うん、あんまりいい思い出がない(苦笑)。

それだけに、このニューアルバムにもそこまで過度な期待はしてなかったんですが……どこからどう聴いてもSLOWDIVE以外の何者でもない、我々が求めるサウンドそのものでした。

もちろん単なる過去の焼き直しではないし、そもそも彼らはアルバムごとにそのスタイルを少しずつ変化させてきたので、本作はそのどれにも当てはならないとも言えるし、逆にどの要素も持ち合わせているとも言える。不思議なんだけど、ボーカルが乗った瞬間に「ああ、SLOWDIVEだわ(笑)」と妙に納得してしまう。それだけ強い個性と説得力がある音なのかなと、何度か聴き返して感じました。

耽美さは変わらずで、ディレイとディストーションから派生する全体を覆うサウンドエフェクト(幕がかかったようなミキシング)のせいで、その耽美さはより強度を増しています。楽曲も下手に難しいことをやろうとせず、シンプルで親しみやすいメロディを、よりシンプルなバンドアンサンブルで聴かせようとしている。結果、その世界に入っていきやすいんだけど、入ってからがさあ大変。底なし沼のように果てしなく広大な宇宙空間に産み落とされたような、なんとも言えない居心地の良さを(それでいて、ある種の居心地の悪さも)感じる。ああ、気持ち良い(気持ち悪い)……これがクセになって、何度も聴き返したくなるんです。

シューゲイザーというよりも、ドリームポップという表現が近い本作は、間違いなくか過去の名作群に並ぶ傑作のひとつ。先の2017年上半期ベストからは選外としましたが、限りなくベスト5に近いポジションの1枚です。たぶん今だったら、確実に5枚に入れてるだろうしね。

にしてもジザメリといいRIDEといい、このSLOWDIVEといい……みんな良くも悪くも“歳を取らない”んだよなぁ。シューゲイザーってそういう効果があるのかね。もしくは、そうだからこそ鳴らせる音というか。聴いてるこっちは10〜20代から40代になってるわけで、そりゃ居心地の悪さも感じるわけですよ(苦笑)。



▼SLOWDIVE『SLOWDIVE』
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投稿: 2017 07 06 12:00 午前 [2017年の作品, Slowdive] | 固定リンク

2017/07/05

KASABIAN『FOR CRYING OUT LOUD』(2017)

前作『48:13』(2014年)から3年ぶり、通算6枚目のオリジナルアルバム。先行シングル「You're In Love With A Psycho」のメジャー感が強いポップさに若干引きつつも、アルバムは別に全体がそういう作風というわけではなく、従来さしさもありつつ新しい挑戦もありで、思う存分楽しめました。

ブリットポップ以降のUKロックの系譜をしっかり引き継ぎつつ、現代的なヒップホップやエレクトロなど毎回流行もそこそこ取り入れてきた彼ら。このアルバムでもその貪欲さは薄れておらず、1曲目「Ill Ray (The King)」から“らしさ”と“新しさ”が全開です。続く「You're In Love With A Psycho」は最初に書いたとおりで、これもある種の“新しさ”なわけで、そこからアグレッシヴな「Twentyfourseven」へとつないでいく流れはさすがの一言。

そこから、再びポップでドリーミーな「Good Fight」へと続き、アコギの音色が心地よい「Wasted」、ブラスセクションを取り入れたアンセミックな「Comeback Kid」(サッカーっぽいなと思ったら、実際サッカーゲームのサントラに採用されたのね)、ブルージーなソウルナンバー「The Party Never Ends」、ディスコ調のダンスチューン「Are You Looking For Action?」(8分半の大作!)など聴き応えのある楽曲が続きます。

OASIS以降のUKギターロック感とブラックミュージックからの影響を伺わせるカラーは相変わらずなのですが、今回は時代がそうさせるのか、ちょっとミニマルな方向に向かってなくもないかなという気がして。いや、もともとそんなに音数を詰め込んで派手にカマすバンドではなかったけど、今作のテイストは昨今の流行に乗りつつ、そこで独自性を見せているように感じられました。

本当はアルバム全編、もっとギターリフでガツンと聴かせてほしいなという願望もあったけど(「Bless This Acid House」みたいな曲がもっと欲しかったと)、これはこれで全然アリ。ギターは自己主張の道具ではなくて、ここでは調味料のひとつでしかない。2017年という時代を考えれば、もはやこれが正解なんでしょうね。

ちなみに本作、初回限定盤には2016年の英・レスター「キング・パワー・スタジアム」でのライブをまとめたボーナスディスク付き。代表曲満載の全16曲、フルライブを楽しむことができます。意外と抜けてるヒット曲もあるので、そう考えるとこのバンドも長いこと活動してるんだなと思わせられたわけです(実際はまだ12、3年くらいなんだっけ)。なので、購入するなら迷わず2CD版で。



▼KASABIAN『FOR CRYING OUT LOUD』
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投稿: 2017 07 05 12:00 午前 [2017年の作品, Kasabian] | 固定リンク

2017/07/04

RIDE『WEATHER DIARIES』(2017)

ジザメリの19年ぶりにもひっくり返ったけど、RIDEの21年ぶり新作という現実にもただただ驚かされたわけでして。2015年のフジロックで、彼らの勇姿を観てアガったという人、少なくないはずです。その年の秋には単独再来日も実現し(僕はチケットを持っていながら、隣の駅にあるスタジオでずっと取材をしてたので行けず終い)、「もう1stアルバムや2ndアルバムの曲を中心にライブしてくれるだけで十分! この再結成、継続させてほしい……」と願っていたところ、なんとニューアルバムまで作ってしまったのだから驚きです。

先行公開された「Charm Assault」はしっかり従来のRIDEらしさが伴っており、それでいて末期(1996年のラストアルバム『TARANTULA』期)にも通ずるストロングスタイルのロック色もありで、「ああ、奴らはちゃんとあれもなかったことにせず、全部引き受けて先に進もうとしてるんだ」と思ったものです。さらに続けて公開された「Home Is A Feeling」は完全の初期RIDEそのもので、この2曲だけで「本当にRIDEが完全新作携えて戻ってきた!」と喜びの声を上げたのでした……この気持ち、共感してくれる人、多いですよね?

それから4ヶ月後、いよいよリリースされた通算5枚目のスタジオアルバム『WEATHER DIARIES』には、RIDEの“すべて”が詰まっています。それは名作と呼ばれる初期のシングル群や1stアルバム『NOWHERE』(1990年)、2ndアルバム『GOING BLANK AGAIN』(1992年)での「我々がイメージするRIDE像」をしっかり具現化しつつ、この21年の間にメンバー4人が培ってきた音楽的素養もしっかり反映されたものになっている。プロデューサーには英国クラブミュージック界の人気DJエロール・アルカン、ミキシングには『GOING BLANK AGAIN』などを手がけたお馴染みのアラン・モウルダーをそれぞれ迎え、しっかりと「2017年に鳴らされること」を意識して制作されています。

シューゲイザー、ドリームポップなどこのアルバムに対する表現はいろいろあると思います。実際そういう音だと思うし、アルバムまるごとセンチメンタリズムの塊ではあるんだけども、決して単なるノスタルジーでは終わらない、今の音として成立している。これを実現するためには、解散前みたいに「この曲は俺が書いた」「これはあいつが書いたからあいつが歌えばいい」といったいざこざは無用。初期の頃のように、4人がひとつとなって何かに取り組む。それが実現できるかできないかで、このアルバムを作るかどうかが決まったのではないでしょうか。で、実際本作はそういう作品になったと。ちゃんと「今のリスナーにモノ言わしてやろうぜ!」という気概も感じられるしね。

まさか2017年にRIDEの新作が、しかも傑作とちゃんと断言できるアルバムが聴けるなんて。2年前は想像もしてなかったなぁ。そして彼らはこのアルバムを携えて、8月に『SUMMER SONIC 2017』深夜の部『HOSTES CLUB ALL-NIGHTER』で2年ぶり日本へ戻ってきます。行かない理由はないよね。



▼RIDE『WEATHER DIARIES』
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投稿: 2017 07 04 12:00 午前 [2017年の作品, Ride] | 固定リンク

2017/07/03

THE JESUS & MARY CHAIN『DAMAGE AND JOY』(2017)

ろくでなしだとか穀潰しだとか、しょうもない人間は腐るほどいるけど、そういう奴って一度そうなってしまったら死ぬまでそのまんまというか……。

そんなことを、THE JESUS & MARY CHAINの19年ぶりに発表されたニューアルバム『DAMAGE AND JOY』を聴いて思ったわけです。

前作『MUNKI』がリリースされたのが1998年。このサイトの前身ホームページ(笑)が開設された年だったので、当時よく聴いたことをよく覚えています。毎回何も変わらず、いや、作品を重ねるごとにその濃度が少しずつ薄まっているような感覚がありながらも、リリースされたら毎回購入して聴いてきたリザメリの新作が、『MUNKI』を最後に途絶えるわけです。ところがその数年後の2007年になんとなく再始動。フェスなどでライブをポツポツやったりしてましたが、まさか新作を制作するなんて考えてもみなかった。穀潰し、やればできるじゃん。

で、完成したのがこのアルバム。どこからどう聴いてもジザメリの音。何も変わってない。いや、ちょっと変わったか。でも基本的には当時のまんま。全14曲入りだけど、3分の1くらいは過去に別の形で発表された楽曲をジザメリ流に焼き直したもの。それでもいいんだ、こうやって“ジザメリの新曲”として楽しめるんなら。

やたらと女性ボーカルが目立つのも本作の特徴かな。6曲に4人の女性シンガーがフィーチャーされていて、その中にはジム&ウィリアム・リード兄弟の実妹リンダやイゾベル・キャンベル(元BELLE AND SEBASTIAN)、スカイ・フェレイラといった面々が含まれています。やさぐれてるのにどこか甘いジザメリ従来の個性が、これによってより深み(いや、深くはないか)を増しており、非常に親しみなったような印象を受けます。

……と、好意的に書いてみたけど、何度も書くように基本的には何も変わってません。「ああ、ジザメリだ」と。

でも、それでいいじゃない。このバンドに関しては。リード兄弟がぶつかりながらもバンドを続けてくれるのなら、それでいい。別に甘やかしてるわけじゃなくて……だって、ダメな奴らなんだから。もうね、とことんダメっぷりを見せ続けてほしい。たぶん本作が駄作だったとしても、個人的には同じことを書いてたと思うのね。でも、良かったの。最低で最高だったの。もうそれで十分。

結局、僕らは中学生の頃に初めて聴いた『PSYCHOCANDY』(1985年)の呪縛から、ずっと逃れられないんです。でも、それでいいじゃない。僕らもダメな奴らなんだから。



▼THE JESUS & MARY CHAIN『DAMAGE AND JOY』
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投稿: 2017 07 03 12:00 午前 [2017年の作品, Jesus & Mary Chain, The] | 固定リンク

2017/07/02

DEPECHE MODE『SPIRIT』(2017)

前作『DELTA MACHNE』(2013年)からちょうど4年ぶりとなる、通算14枚目のスタジオアルバム。90年代以降、この4年というサイクルは正確に保たれているようで、その合間にはライブ作品の発表だったり再発だったりと、何かしらアイテムが発売されているので、実は思っている以上に4年を長く感じないという。これでリリースのたびに来日公演があったら、もっと短く感じるんでしょうけどね……。

さて、今回のアルバムでは近作とは異なるテイストが感じられます。非常にダークで重々しいく、どこか宗教じみた匂いが感じられる。おそらく多くのファンが、1993年の大ヒット作『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』を思い浮かべるかもしれません。確かに僕も最初に聴いたとき、最初にイメージしたのは同作でした。ただ、どこか救いのない空気の漂う『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』と大きく異なるのは、本作には“望み”や“希望”のような一筋の光が感じられる点。確かに20数年前のあの時期と比べたら、今のDEPECHE MODEは非常に落ち着いていますし、人としても達観した部分も多いですし。

『PLAYING THE ANGEL』(2005年)から3作連続でプロデュースを手がけたベン・ヒリアーのもとを離れ、今作では新たにSIMIAN MOBILE DISCOのジェイムズ・フォードがプロデュース。ひんやりとしたロックテイストの冒頭2曲「Going Backwards」「Where's The Revolution」のインパクトは絶大で、そのあとにブルージーな「The Worst Crime」、エレクトロ+インダストリアル調な「Scum」と、とにかくダークでヘヴィでクールな楽曲が続きます。ただ、先にも書いたように『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』ほどの“重苦しさ”はなく、そこが繰り返し楽しめる要因になっているのかなと。

にしても今回のアルバム、非常に挑発的な内容ですよね。「Revolution」「Crime」「Scum」「Poison」「Poorman」など曲名に使われているワードしかり、現在のアメリカ政権を揶揄したかのような歌詞しかり。そういえば「Where's The Revolution」のMVも政治的ですし。かと思えば、終盤にはデヴィッド・ボウイに捧げた「No More (This Is The Last Time)」があったり、ラストナンバーがマーティン・ゴアのボーカル曲「Fail」だったり(マーティンのボーカルナンバーはもう1曲「Eternal」も)。アルバムのトーンは終始救いようがないくらいに暗いのですが、でも聴き終えたときに絶望感は一切感じない。それが全体を覆う“攻め”の姿勢によるものなのか、あるいはある種の“悟り”なのか。そのへんが、近作とはちょっと違うなと感じたのでした。

エレクトロでインダストリアルな作風なのに、しっかりロックしている。いや、ロックというよりもブルースに近いかも。もともと好きなアーティストの新作ということで好意的ではありますが、このブルース感が強まったことでより好きになれた1枚です。



▼DEPECHE MODE『SPIRIT』
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投稿: 2017 07 02 12:00 午前 [2017年の作品, Depeche Mode] | 固定リンク

2017/07/01

2017年上半期総括

恒例となった上半期ベスト。ひとまず7月1日現在の10枚を紹介したいと思います。バランスとしては洋楽5枚、邦楽5枚というセレクトになります。


DEPECHE MODE『SPIRIT』(amazon)(レビューはこちら

THE JESUS & MARY CHAIN『DAMAGE AND JOY』(amazon)(レビューはこちら

KREATOR『GODS OF VIOLENCE』(amazon)(レビューはこちら

MASTODON『EMPEROR OF SAND』(amazon)(レビューはこちら

RIDE『WEATHER DIARIES』(amazon)(レビューはこちら

Cornelius『Mellow Waves』(amazon)(レビューはこちら

Maison book girl『image』(amazon

Mondo Grosso『何度でも新しく生まれる』(amazon

ONE OK ROCK『Ambitions』(amazon)(レビューはこちら

ドレスコーズ『平凡』(amazon)(レビューはこちら

投稿: 2017 07 01 12:00 午後 [2017年の作品, Cornelius, Depeche Mode, Jesus & Mary Chain, The, Kreator, Maison book girl, Mastodon, Mondo Grosso, ONE OK ROCK, Ride, 「1年のまとめ」, ドレスコーズ] | 固定リンク

MR. BIG『DEFYING GRAVITY』(2017)

苦しい環境下で最善を尽くした前作『...THE STORIES WE COULD TELL』(2014年)から3年ぶりに発表された、MR. BIG通算9作目のスタジオアルバム。ツアーではパーキンソン病で体が思うように動かなくなってきたパット・トーピー(Dr)に替わり、マット・スターがサポートで参加。もちろんパットもパーカッションとコーラスでライブに加わり、新たな5人編成というスタイルでツアーを完遂します。

で、そこから今作に向かっていくわけですが、今回のプロデューサーは初期4作を手がけてきたケヴィン・エルソン。バンドとしても来年で結成30周年を迎えることもあり、ここで改めて原点に戻ろうという思いがあったのかもしれません。ドラムトラックは前作のようにプログラミングではなく、パットが方向性を指示しながらマットがプレイ。楽曲制作にはもちろんメンバー4人が中心となり、これまで同様の外部ライターを迎えて書き下ろされていくのですが……。

なんですか、この突き抜け方は!? 1曲目「Open Your Eyes」のオープニングでは、1stアルバム『MR. BIG』(1989年)のオープニングに収められていたエンジニアの声がそのまま流用され驚いたところで、そのまま軽やかにスタート。かと思えば、続いて爽やかなパワーポップチューン「Defying Gravity」が飛び出す。さらに、ブギーのリズムが気持ち良い「Everybody Needs A Little Trouble」、カントリー調のミディアムナンバー「Damn I'm In Love Again」、ど頭のギター&ベースによるテクニカルなフレーズに驚かされる「Mean To Me」、どこか影のあるソウルバラード「Nothin' Bad ('Bout Feelin' Good)」と良曲が続くこの構成……再結成後の2枚(『WHAT IF...』『...THE STORIES WE COULD TELL』)がバンドの原点である「ブルージーでソウルフルなHR」に立ち返ったかと思っていたら、今作ではその一歩先にある『LEAN INTO IT』(1991年)で見せた“開け方”が存在する。そう、バンドが今回目指した“原点”は最大のヒット作となった『LEAN INTO IT』期に立ち返ることだったのかもしれません。

事実、本作には「To Be With You」が全米1位を獲得した時期を振り返る「1992」という楽曲も存在します。これなんてメロディに「Green-Tinted Sixties Mind」の匂いが感じられますしね。もちろん、すべてがあの頃の焼き直しではありません。あのアルバムから26年後のエリック・マーティン(Vo)、ポール・ギルバート(G)、ビリー・シーン(B)、そしてパット・トーピーの姿がここには存在するのですから。

唯一、難癖をつけるとしたら……やはり1曲目はギター&ベースのユニゾンバリバリのファストチューンでキメてほしかったな、と。まぁそれをやらないからこそ、「2017年のMR. BIG」なわけで、それも重々理解できるんですけど……たぶん、それをやらないというのも彼らなりの意地なのかもしれません。本当はそんな意地、捨ててほしかったんですけどね。

まぁ苦言は本当にそれくらいで、あとはもうひたすら楽しくて聴き応えのある、いかにもこのバンドらしい作品集だと思います。そして、このアルバムに触れてから過去2作を聴き返すと、また違った聴こえ方をしてくるから本当に不思議。30周年を前にネクストレベルに到達しそうな、そんな力作。ここ日本だけでなく、久しぶりに海外でもヒットしてほしいな。



▼MR. BIG『DEFYING GRAVITY』
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投稿: 2017 07 01 12:00 午前 [2017年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/06/30

NICKELBACK『FEED THE MACHINE』(2017)

前作『NO FIXED ADDRESS』(2014年)でユニバーサル傘下の「Republic」と契約したものの、たった1枚で移籍することになったNICKELBACK。2年半年ぶり、通算9作目のスタジオアルバムとなる本作『FEED THE MACHINE』は「BMG(BMG Rights Management GmbH)」から、Warner Musicのディストリビューションで今年6月16日に世界同時発売されました。これにより、前々作まで在籍したRoadrunnerと同じWarner Musicに戻ったという解釈もできるわけですね。

さて、今年2月には先行トラックとしてアルバムタイトルトラック「Feed The Machine」が公開済みでしたが、前作での若干ソフトで実験的な作風から一変、6thアルバム『DARK HORSE』(2008年)あたりで聴けたヘヴィでガッツのあるサウンドに先祖返りしております。続く2曲目「Coin For The Ferryman」もバスドラがドコドコするところにギターもザクザクとリフを刻む、これぞヘヴィロック!と叫びたくなるスタイルで、もうこの2曲だけで「勝利!」と実感。さらに3曲目にはこのバンドならではのメロウなバラード「Song On Fire」も飛び出し、明らかに「リスナーがイメージするNICKELBACK」が展開されています。

ヘヴィながらもファンキーでリズミカルな「Must Be Nice」、若干ダークで重みのあるバラード調の「After The Rain」、グルーヴィーなギターリフが気持ち良い「For The River」、壮大さすら感じさせるパワーバラード「Home」、ゴリゴリな「The Betrayal (Act III)」、某アイドルグループのファンが喜びそうなタイトルの美メロHRチューン「Silent Majority」(本作でもっともお気に入りの1曲)、カントリーテイストのパワーバラード「Every Time We're Together」があったりと……あれ、バラード多くね?

確かにバラードタイプの楽曲、多いです。だけど、アートワークからもわかるように、本作は全体的にダークな作風。バラードタイプの楽曲ですら、ダークかつヘヴィなテイストで、実はそこまでバラードが多いと気にならないんです。メタリックな楽曲が2曲、3曲と続くと本当に重苦しくて、何度も聴くにはちょっとつらくなってしまうんですが、こうやって適度にバラードタイプの楽曲が挿入されることで“歌モノHR”として気持ち良く楽しめるわけです。全11曲で44分程度というトータルランニングも近作同様で、この長さならヘヴィな作風でも繰り返し聴けてしまう。

もしここ数作で「NICKELBACK、日和ったなぁ」とがっかりしていた人がいたら、迷わず本作を手に取ってほしいです。間違いなく、「あの頃のNICKELBACK」がここにいるはずですから。しかも、あの頃よりもさらにパワーアップした姿で。



▼NICKELBACK『FEED THE MACHINE』
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投稿: 2017 06 30 12:00 午前 [2017年の作品, Nickelback] | 固定リンク

2017/06/28

Cornelius『Mellow Waves』(2017)

前作『SENSOUS』からすでに11年も経っていたことに、まず驚かされました。確かに最近ニューアルバムは出てなかったけど、METAFIVEでの活動をはじめ、Salyuを筆頭に他アーティストとのコラボもあったし、『デザインあ』やら『FANTASMA』リマスター盤やらとリリースアイテムもそこそこあり、この11年でいろいろ楽しませてもらっていたのも事実。けど、こうやって久しぶりにアルバム単位で新しい音源が届けられることが、ファンとしては一番嬉しいものです。

先行7インチアナログが2枚(『あなたがいるなら』『いつか / どこか』)発表されていたので、今作の方向性はなんとなく把握できてはいたけど、前作ではサウンドのみならず歌詞までをもミニマルなものへと昇華していたところを、今作ではそのミニマルな言葉から“思い”がにじみ出ているように感じられました。坂本慎太郎が作詞で参加した2曲(「あなたがいるなら」「未来の人へ」。『いつか / どこか』カップリングでアルバム未収録の「悪くない。この感じ」を含めれば3曲)は特にその傾向が強く、そこに引っ張られるかのように、小山田の歌詞もシンプルな単語を羅列して言葉遊びをしつつも、そこから“人肌”感が伝わってきます。それは今回の小山田自身の歌声にも通ずるものがあり、何度も繰り返し聴きたくなる優しさに満ち溢れている。本作をどうライブで表現するのか、今からフジロックが楽しみでなりません。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼Cornelius『Mellow Waves』
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投稿: 2017 06 28 12:00 午後 [2017年の作品, Cornelius] | 固定リンク

2017/06/25

CHEAP TRICK『WE'RE ALL ALRIGHT!』(2017)

昨年春に発表された前作『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLOW』が7年ぶりの新作ということでびっくりしたわけですが、続く本作『WE'RE ALL ALRIGHT!』はなんと前作から1年2ヶ月という短いスパンで制作〜リリースされたことで、さらに驚かされたわけです。だって、昨年11月には来日公演までしてさ、またしばらく見納め(聴き納め)かなと思っていたのに……特に大御所クラスになると新作のスパンが5年前後になっても不思議じゃないので、この予想外の新作にはただただ嬉しい限りです。

本作は新曲に加え、過去に制作されたものの未発表だった楽曲を新たにレコーディングしたもので、見方によっては「2017年のCHEAP TRICKによる、純然たる新作」とは言い難いかもしれません。が、ファンにとってはそういう細かいことはどうでもよく、今のCHEAP TRICKが本作で鳴らされているような音/楽曲に再び挑戦してくれている事実が単純に嬉しいし、素敵だと思うわけです。

比較的落ち着いたイメージの強かった前作とは相反し、今作は終始アグレッシブ。初期の「元気よく、勢いのあるパワーポップ/ロック」路線に寄った作風。アップテンポの楽曲がズラリと並び、ロビン・ザンダー(Vo)もがなるように歌っています。ポップな作風の楽曲にしても“枯れ”よりも“若々しさ”が前面に打ち出されており、そこに「ああ、自分は今CHEAP TRICKの新作を聴いているんだ」と強く実感できることでしょう(と、前作のレビューと同じことを書いてしまいますが)。

大半の曲が2分台〜3分台半ばというのも、初期の彼ららしく、アルバム本編10曲で33分程度というランニングタイムも納得。ちなみに本作には3曲追加したデラックスエディション(日本盤の通常仕様はこちら)も用意されていますが、それでも全13曲で44分程度(さらに日本盤はボーナストラックでライブテイク2曲を追加。これは正直蛇足かな)。最近のロックアルバムが少しずつではありますが、こういう40分前後という昔ながらの作風に戻りつつあるのはちょっと興味深い話ですね。

個人的にはデラックス盤に追加された3曲(THE MOVEのカバー「Blackberry Way」、『DREAM POLICE』を思わせる「Like A Fly」、メロウでサイケなミディアムバラード「If You Still Want My Love」)も本編10曲に負けず劣らずの出来だと思うので、ぜひこちらの仕様をオススメしたいと思います。



▼CHEAP TRICK『WE'RE ALL ALRIGHT!』
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投稿: 2017 06 25 12:00 午前 [2017年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2017/06/14

THE BEATLES『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』(1967/2017)

THE BEATLESが今から50年前の1967年5月26日(UK。USでは6月2日)にリリースした、通算8枚目のオリジナルアルバム。前年をもってライブ活動を停止した彼らが、ライブでの披露を前提とせず、ひとつのスタジオ作品としてとことん作り込んだ最初の作品が本作でした。

……なんて説明は今さらいりませんよね。

思えばビートルズの諸作品が初CD化されたのが、本作がリリースされてから20年後の1987年。それ以前は当然のようにアナログ盤だったわけで、今みたいに「これが正規のオリジナルアルバム」という概念が国によって異なったり、アルバム未収録のシングル曲を集めた編集盤がたくさん出ていたりで、正直どれから聴いていいかわからなかったというのが中学生時代の自分。結果、オリジナルアルバムではない編集盤を最初に手に取ったわけですが、高校に入ったと同時にこのCD化。当然周りの自称・ビートルマニアな友人から『PLEASE PLEASE ME』や『WITH THE BEATLES』のCDを借りて、カセットにダビングして聴いていたのです。

で、ちょうど夏くらいにこの『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』がようやくCD化。当時の音楽誌などで「ビートルズの最高傑作」なんて触れ込みもあり、最初に買うならこれにしようと、夏休みのバイト代から本作を購入。つまり、僕が初めて購入したビートルズのCDが本作だったわけです。

いわゆるヒットシングル皆無、初期の「She Loves You」や「Help」とも違うし、「Yesterday」や「Let It Be」ともちょっと違う。今ならサイケデリックがなんちゃら〜と言語化できるけど、あの当時は「Lucy In The Sky With Diamond」の浮遊感も「Within You Without You」のインドっぽさも、どこかコミカルな「When I'm Sixty-Four」の魅力にも、そしてラストの「A Day In The Life」のすごさも理解できておらず。ただ、オープニングの「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」のガレージロック感?にはカッコ良さを見出し、そこを何度もリピートしていたものです。

その後、何度も聴き返すうちにメロディが頭に入ってきて、気づいたらアルバムをまるごとリピートして聴き返していた。けど、周りのロック仲間には勧めることなく、ひとり家で聴いていた……そんなアルバムでした。

初版のCDは今でも家にあるし、その後の最新リマスター盤も購入。そしてつい先日、本作の最新ステレオミックス盤+未発表テイクからなる50周年記念エディションも発売。つまり、初めて聴いてから30年近くもの歳月が流れたわけです。ひぃ。

最初のリマスター盤のときにも音の分離の良さに驚かされましたが、今回はそれに加えて低音がかなり効いたミックスに。ドラムとベース(特にバスドラの鳴り)の質感・バランスがより現代的になったことによって、とても50年前の音とは思えない仕上がりに変わったように感じました。「A Day In The Life」冒頭のアコギの繊細な鳴りなんて、すごく今っぽいしね。

と同時にこのアルバムの音、現代のテクノロジーで真似ようと思っても再現できないんじゃないだろうか……と思わせられる、改めて奇跡の音なんじゃないかなと久しぶりに聴き返して実感しました。

僕が購入したのは、2枚組仕様のほう。さすがに“ハコ”のほうは断念しました。ディスク2にはアルバムの未発表テイクをたんまり収録。『ANTHOLOGY』シリーズの延長として楽しみましたが、どういう過程を経て完成品となっていくのかが伺えて、それはそれとして面白かったです。音もスタジオ盤より生々しさが強まっていて、個人的には好み。ですが、もちろん万人にはオススメしませんけど。

あと、ラストに収録されている「Strawberry Fields Forever」(こちらは2015年発売『THE BEATLES 1』リマスター盤のステレオミックス)と「Penny Lane」(こちらは最新ステレオミックス)はやっぱり素晴らしいと思います。『THE BEATLES 1』リマスター盤は今でもよく聴いてますが、今後もこの『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』デラックス盤とあわせて聴き続けることでしょう。というか、聴き続けます。はい。

と、今回はほぼ思い出話でお届けしました……。



▼THE BEATLES『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』
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投稿: 2017 06 14 12:00 午前 [1967年の作品, 2017年の作品, Beatles, The] | 固定リンク

2017/06/11

WARRANT『LOUDER HARDER FASTER』(2017)

LAメタル末期にデビューしたWARRANTの、前作『ROCKAHOLIC』(2011年)から6年ぶりに発表された通算9枚目のオリジナルアルバム。前作からジェイニー・レイン(Vo/2011年死去)を除くオリジナルメンバーに、元LYNCH MOBのロバート・メイソン(Vo)を加えた編成で活動しており、今作が現編成2作目となります。

“よりデカく、より激しく、より速く”というタイトル通りの内容といったところでしょうか。純粋にハードロックアルバムとして優れた内容だと思いますし、歌も演奏も曲も申し分なし。例えば本作が1988年前後にリリースされていたら、きっと100万枚を超えるヒット作になっていたんだろうな、と思うのです。

とはいえ、本作はそこまで古臭さを感じさせないし、別に2017年という現代に鳴っていても特に大きな違和感はないかなと。いやウソです。やっぱり時代の流れは感じてしまいます。メロディの節々に“あの頃”のWARRANTをしっかり感じさせつつ、“我々の知るWARRANTではない何か”も存在する。でも、それは決して近代的なものではなく、古き良き時代のHR/HMそのものという……つまり、良くも悪くもどこかで“止まってしまっている”のです。

WARRANTというバンドもまた、90年代初頭のグランジの勢いに当てられ、当時は『DOG EAT DOG』(1992年)をはじめとしたダークな作品をいくつか発表しています。しかし、ここ最近の彼らはよりストレートなハードロックに回帰しており、そのへんの時代とうまく寄り添う行為は今は亡きジェイニーの画策だったんだろうなと思うわけです。

で、そのジェイニーを欠いたバンドがごく普通のハードロックを鳴らすというところに大きな意味があるんじゃないかと。きっと初期のパーティロック路線も策士ジェイニーによるアイデアだったかもしれないわけで、そう考えると他のプレイヤーたちは本来こういったド直球のハードロックをやりたかったんだろうな、と。丁寧だけど抑揚があまりないジェイニーとは異なる“歌える”シンガー(前任のジェイミー・セント・ジェイムズしかり、ロバートしかり)を迎えたのも、その思いを具現化するためだったんじゃないかと……まるでデヴィッド・リー・ロスからサミー・ヘイガーに移行したVAN HALENみたいですね。

結局、キャラの強い(もしくは賢く商才に長けた)フロントマンで成功したバンドが“音楽”に目覚めると、こういう方向に進みたくなるのは自然な流れなのかな。もちろんこれはこれで間違いじゃないし、実際完成したアルバムもなかなかの力作だと思いますが……残念ながら「我々が知るWARRANTのニューアルバム」ではないな、と。ただ、そういった枕詞を無視すれば、純粋にカッコ良いHRアルバムとして愛聴できそうです。抑揚がないとか散々貶してるジェイニーですが、なんだかんだで初期3作に対する思いが強いので、こういう評価になってしまいました。このバンドに対して「初期のほうが〜」という思い入れがない人なら、間違いなく満足できる1枚だと思います。



▼WARRANT『LOUDER HARDER FASTER』
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投稿: 2017 06 11 12:00 午前 [2017年の作品, Warrant] | 固定リンク

2017/06/10

HAREM SCAREM『UNITED』(2017)

今年で結成30周年を迎えるカナダのHRバンド、HAREM SCAREMが4月にリリースした通算14作目のスタジオアルバム。2008年に一度解散し、2013年に再結成を果たした彼らは同年に名作2ndアルバム『MOOD SWING』のリテイクアルバム『MOOD SWING II』を発表し、翌2014年には新曲のみのオリジナルアルバム『THIRTEEN』を制作と再始動後も順調に活動を重ねています。

3rdアルバム『VOICE OF REASON』(1995年)でダークなサウンドに傾倒し始め日本のファンをがっかりさせ、5th『BIG BANG THEORY』(1998年)あたりからパワーポップ寄りの楽曲にも着手し始めたHAREM SCAREMですが、再結成後は多くのファンが望む“1st〜2ndアルバム路線”を踏まえつつ大人になったバンドの姿を見せています。この最新作でもその方向性は変わっておらず、むしろその純度がより高くなっているように感じられました。

前作『THIRTEEN』も決して悪いアルバムではなかったし、むしろ好きな作品ではあったんですが、今作はとにかく1曲1曲の完成度が無駄に高い。アルバムによっては1曲くらい「う〜ん、個人的に好みじゃなけど、こういう曲が好きなリスナーもいるしな……」という曲が入っていてもおかしくないところを、今作はどの曲も両手をあげて大歓迎したくなる良曲ばかり。適度にハードで適度にポップ、そしてメロディやサウンドから爽快感が感じられるハードロックと表現すればいいのでしょうか……90年代の彼ら(主に1st〜2ndあたり)に感じられた“ビッグプロデュース”はそこにはなく、地に足のついた等身大のサウンドで、ファンが求めるサウンドと「大人になった今だから表現できるサウンド」をバランス良く融合させている。そこには攻めのハードロックもあれば、パワーポップ調のゆるやかな楽曲もあり、無駄にバラードで水嵩を増すようなこともしない。11曲全45分という適度な長さも功を奏し、何度もリピートしたくなる極上のハードロックアルバムに仕上げられているのです。

イントロの時点で若干ダークで激し目の楽曲なのかと不安にさせておいて、メインリフが入ると豪快かつ爽快感のあるキャッチーなハードロックで聴き手を喜ばせてくれる「United」から、続く「Here Today Gone Tomorrow」「Gravity」と、とにかく頭から心を鷲掴みにされっぱなし。その後もこのテンションを崩すことなく、ドラマチックなラストナンバー「Indestructible」で締めくくる。個人的には2000年代に入ってからの彼らのアルバムでもっとも気に入っています。こういう良質なアルバムがジャンルの分け隔てなく、もっといろんなリスナーに「いいね!」と言ってもらえるような時代が戻ってくるといいな。



▼HAREM SCAREM『UNITED』
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投稿: 2017 06 10 12:00 午前 [2017年の作品, Harem Scarem] | 固定リンク

2017/06/09

THE CHARLATANS『DIFFERENT DAYS』(2017)

THE CHARLATANS通算13枚目のオリジナルアルバム。ドラマーのジョン・ブルックスが2013年8月に脳腫瘍で急逝し、悲しみを乗り越えて制作された前作『MODERN NATURE』(2015年)が全英7位と、久しぶりのTOP10ヒットとなった彼ら。そこから2年を経て届けられる今作には、ジョニー・マーやポール・ウェラー、スティーヴン・モリス(NEW ORDER)、アントン・ニューコム(THE BRIAN JONESTOWN MASSACRE)といったアーティスト仲間に加え、推理作家のイアン・ランキンとカート・ワグナー、ティム・バージェス(Vo)の長年の友人である女優のシャロン・ホーガンがゲスト参加しています。

作風としては、全体的に前作の延長線上にある1枚と言えるでしょう。が、冒頭の低音ボーカルを生かした穏やかなスローチューン「Hey Sunrise」にはきっと驚かされるはず。今回は内省的な作品なのか!?と思いきや、続く「Solutions」でアップテンポに。しかし、どこか物悲しさが伴うメロディや空気感は1曲目から変わらず、ちょっと心配になっているとエンディングの日本語ナレーションにハッとさせられ、そのままタイトルトラックに突入。若干穏やかながらも、ようやくこのバンドらしさが出てきたなと。先行シングル「Plastic Machinery」あたりでやっと、“俺たちのシャーラタンズ”が戻ってきた!とガッツポーズをとってしまうのではないでしょうか。

エレクトロの要素を取り入れた「Not Forgotten」や「Over Again」など、後半に進むにつれてダンサブルさが増していき、グワーッと盛り上がったところで、アコースティックの小楽曲「The Setting Sun」とポール・ウェラーがゲスト参加したスローなサイケチューン「Spinning Out」とダウナー2連発。予期してなかったこのエモさに心を一気に持っていかれてしまいます。

確かに穏やかさがより強まったように感じられますが、それもこのバンド本来の持ち味。その風味がより濃くなったと思えば、なんら違和感なく楽しめるはずです。まぁ今さら彼らに「Weirdo」みたいにアドレナリン溢れまくりなアッパーなダンスチューンを求めるのは筋違いだと思いますし、この進化(というか深化かしら)はバンドの成長としてまったく正しい歩み方だと思いました。



▼THE CHARLATANS『DIFFERENT DAYS』
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投稿: 2017 06 09 12:00 午前 [2017年の作品, Charlatans, The] | 固定リンク

2017/06/08

HARRY STYLES『HARRY STYLES』(2017)

「人は見かけによらない」。いや、「人を見た目で判断してはいけない」のほうが正しいかな。自分にとってこの言葉が最適なのが、今回紹介するONE DIRECTIONのハリー・スタイルズが発表したこの初ソロアルバム。多くの“外野”同様、筆者自身も彼のことをボーイズアイドルグループの一員という偏見で見ていたけど、それによって彼が本来持ち合わせていた才能にまったく気づけなかったとは。ホント、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

本作収録曲の大半はジャマイカで書かれたとのこと。そのせいもあってか、「新しい時代の兆し」と命名された1stシングル「Sign of the Times」含め、どの曲もオーガニックで、どこかサイケデリックな香りがする。時にそれはKULA SHAKERが醸し出すインドテイストのロック/ポップソングのようでもあり、不思議と耳に、体に馴染んでいく。うん、シンプルに気持ち良いサウンドと歌なんですよ。

特に頭2曲(「Meet Me in the Halfway」「Sign of the Times」)で内省的な雰囲気を与えつつ、続く「Carolina」では中期ビートルズ的なサイケデリックロックでさらに自分の懐へと惹きつける。いわゆる「ボーイズアイドルグループがやりそうな仰々しいラブバラード」は皆無で、それこそ本作が1Dメンバーによるものだと知らなかったら、超個性的な男性シンガーがデビューしたと歓喜していたのかも……そう思うと、本当に先入観ってよくないですね。ごめんなさい。

歌詞も単なるラブソングから一歩踏み込んで、自身の内面と対峙するかのようにディープなものばかり。ロビー・ウィリアムズしかりジャスティン・ティンバーレイクしかり……もっと言えばジョージ・マイケルもしかり……彼らは大ブレイクしたグループを飛び出して個を主張することで、思いもしない方向へと到達し、新たな支持層を獲得してきましたが、きっとこのハリーも先人たち同様にここから一気に確変するはず。ロックもポップもソウルも全部飲み込んだこのアルバムは、間違いなくその最初の一歩になるはずです。

※このレビューは本作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを、加筆・修正して掲載しております。



▼HARRY STYLES『HARRY STYLES』
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投稿: 2017 06 08 12:00 午前 [2017年の作品, Harry Styles] | 固定リンク

2017/05/21

LINKIN PARK『ONE MORE LIGHT』(2017)

LINKIN PARKの3年ぶり新作『ONE MORE LIGHT』リリースに先駆けて、本サイトでは1stアルバム『HYBRID THEORY』から前作『THE HUNTING PARTY』までの全6作品を紹介してきましたが、ようやく真打登場です。

リードトラック「Heavy feat. Kiiara」を筆頭に、新曲が公開されるたびに今まで以上に賛否を呼び集めたLINKIN PARK。もはやバンドという形態すら放棄してるし、聴く人が聴けば「流行・売れ線に走りやがって」と思うことでしょう。そういう方はこんな駄文など読むのをすぐ止めて、自分が正しいと思う音楽を今後も聴き続けることをオススメします。ぶっちゃけ、時間の無駄ですから。

「Heavy feat. Kiiara」自体「いい曲じゃん。何が悪いの?」と思っていた自分のような人間にとって……いや、そもそもLINKIN PARK=『HYBRID THEORY』みたいな強いこだわりや固定観念がない人間には、今回も前と違うことやってるのね、程度のリアクションしかなく、アルバムはどうなってるんだろうな〜と呑気に考えていたのですが。やっぱり叩かれますよね、特に今回は。だって、すでにロックですらないんですから。

過去のレビュー6本のまとめ的記事として、本作のリリース日にリアルサウンドさんのほうに下記のコラムを寄稿しました。この『ONE MORE LIGHT』に関しても、基本的にはそちらにすべて書かれているのであわせて読んでいただけるとありがたいです。

Linkin Parkがアップデートした“自身の理論” 新作『One More Light』をバンドの変遷から紐解く(リアルサウンド)

さて。じゃあここでは何を書こうかといいますと……当然のように、毎回試聴会に参加するときはメモを残すのですが、今回もそのメモを晒してみようかと思います。過去にはMETALLICAやMASTODONなどで試みてますね。はい、今回もまったく一緒です。

基本的にはリアルサウンドさんのコラムの中に完璧なレビューを書いたので、そちらで十分なんですけど、こちらは副読本的ポジションでいいのかなと。はい。

M-1. Nobody Can Save Me
ゆったりとしたミドルテンポのロック。おおらかさ、優しさの中にエレクトロの香りも。オープニングからここまで多幸感を強く匂わせるLINKIN PARKのアルバムは初めてでは。若干EDMの匂いも。

M-2. Good Goodbye (feat. Pusha T & Stormzy)
先行公開曲その3。ヒップホップ色の強いダウナーなビート。バンドサウンドを完全放棄した、楽曲至上主義。

M-3. Talking To Myself
出だしがキラキラしたエレクトロサウンドだが、そのまま力強いバンドサウンドへ。歌に入るとダウナーなヒップホップのテイストも飛び出し、サビで再びロックバンドの主張強まる。まさに“ハイブリッド”な1曲。

M-4. Battle Symphony
先行公開曲その2。賛美歌をエレクトロで表現したかのような癒しのメロディ。気持ち良く楽しめるナンバー。

M-5. Invisible
先行公開曲その4。若干抑揚を抑えたメロディが前曲との対比を強める(リードボーカルはマイク)。ポップソングとしての究極型。ピアノのアウトロ含め最高。

M-6. Heavy (feat. Kiiara)
先行公開曲その1。公開と同時に今までにない賛否を呼んだ、現代的ダウナーR&BをLINKIN PARK流に解釈した1曲。にしても、これのどこが悪い? ロックじゃない? 冗談じゃない、LINKIN PARKはこの曲でしっかり“ロック”してるじゃないか。女性シンガー・キアーラとの歌声の絡みも絶妙。

M-7. Sorry For Now
現代的なヒップホップ+R&B×ロックをLINKIN PARK流に解釈した楽曲、その2。これもマイクのボーカルか。チェスターのエモーショナルなボーカルとはひと味違ったこのカラーも、今や完全にバンドの個性。落ちサビでチェスターも加わり、より2人の個性を際立たせている。

M-8. Halfway Right
アルバム全体に一本筋が通るように流れるビート感の統一性は圧巻。この曲も本当によくできたポップソングといった印象。そこにシンガロングパートが加わると、ゴスペルのごとく一気にスケールが大きくなる。チェスターらしいメロディ運びは、やっぱりLINKIN PARKそのもの。

M-9. One More Light
終始癒しの音色が響き渡るバラード。チェスターの声とブラッド・デルソンのギターを前面に打ち出した、まさにこのアルバムの肝。

M-10. Sharp Edges
アコースティックギターをフィーチャーした軽やかなナンバー。前曲で夜明けを迎え、ここで完全に朝になり活動し始める、そんな生命力を感じさせるラストにふさわし1曲。

※総評
これこそ『HYBRID THEORY』というタイトルがぴったりのアルバムでは。前作『THE HUNTING PARTY』が「バンドのルーツにあるアンダーグラウンドなラウドミュージックを、大人になった6人が今の解釈で表現したもの」だとしたら、今作は「現在シーンのど真ん中にあるサウンドを、6人が今の感性で表現したもの」。また前作が薄暗い地下室をイメージさせる1枚なら、今作は深夜から夜明けを迎える数時間を捉えたような構成。対極にある作品だからこそ、方向性も表現方法もまったく異なるのは納得。散々ロックが売れない、ロックは終わったと叩かれるのなら、ロックバンドが「“ロック以外の音楽”を使ってロックを表現」してもいいんじゃないか。このアルバムはそのとっかかりになるような気がする。



▼LINKIN PARK『ONE MORE LIGHT』
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投稿: 2017 05 21 12:00 午前 [2017年の作品, Linkin Park] | 固定リンク

2017/05/20

AT THE DRIVE-IN『IN.TER.A.LIA』(2017)

通算3枚目にしてメジャーデビュー作となった『RELATIONSHIP OF COMMAND』(2000年)リリースから半年後の2001年春、突如の無期限活動停止を発表し、事実上の解散状態となったAT THE DRIVE-IN。その彼らが10年後の2011年に再始動を発表し、翌2012年に『FUJI ROCK FESTIVAL '12』で12年ぶりの再来日を果たしたのですが、その際のライブを観た僕は正直、最初こそ興奮したものの、曲が進むにつれて気持ちが醒めていって……ああ、2000年のサマソニで初体験したあの無軌道さとそこから受けた興奮を求めちゃ残酷だよな……と現実に引き戻されたのでした。

が、昨年のサマソニで再来日した際には、あのフジロックでの醒めた感覚は一切なく、最初から最後まで興奮状態のままステージを楽しむことができました。もちろん、2000年のライブと比べるのは反則だという気持ちをどこかに抱えたまま。だけど、純粋に楽しいライブだったのを今でもよく覚えています。

その後、ライブ活動のみならず本格的に新作制作に動き出した彼ら。ついに2017年5月、待望の4thアルバム『IN.TER.A.LIA』がここにリリースされました。

確かにここで聴けるサウンド、楽曲はTHE MARS VOLTAのそれとも、そしてSPARTAのそれとも違う、どこからどう聴いてもAT THE DRIVE-INのサウンド、楽曲とわかるものです。とはいえ、『RELATIONSHIP OF COMMAND』ほどのテンションや狂気性は感じられないのも事実。そこを今の彼らに求めるのも酷とは頭でわかっているのですが、それでも「『RELATIONSHIP OF COMMAND』に続く新作」という事実があるだけに比較してしまいたくなってしまうわけです。

先にライブから彼らに接したからか、余計に無軌道さや狂気性を求めてしまうのかもしれません。しかし、あれからすでに17年もの月日が流れている。普通に活動を続けていたら、その間に4、5枚はアルバムを発表していたかもしれない。そう考えれば、『RELATIONSHIP OF COMMAND』から『IN.TER.A.LIA』という作品に到達した意味も理由も理解できるかもしれません。

事前に公開済みだった「Governed By Contagions」を最初に聴いたときは、正直「まぁこんなもんかな?」くらいにしか感じなかったのに、アルバムの流れで聴くとすごくグッとくる。そして、どこからどう聴いてもAT THE DRIVE-INそのものだと気づかされる。ツアーで過去の楽曲と向き合ったことで、バンドが改めて「AT THE DRIVE-INとはなんだったのか?」という命題と真剣に対峙した。と同時に、メンバーそれぞれがTHE MARS VOLTAやSPARTAで得た経験も血肉になっている。その結果、「どこか懐かしいのに、新しさも感じさせる」という過去と現代のハイブリッド感が生まれたのかもしれません。

比較したくないと言いながらアレですが……『RELATIONSHIP OF COMMAND』よりもするする聴き進められる。内容もコンパクト(40分強)で、各曲が思った以上にシンプルというところは、2017年という時代にぴったりとフィットしてるんじゃないでしょうか。うん、大好きです。購入してから何度も何度も聴き返してます。



▼AT THE DRIVE-IN『IN.TER.A.LIA』
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投稿: 2017 05 20 12:00 午前 [2017年の作品, At The Drive-In] | 固定リンク

2017/05/17

DRAGONFORCE『REACHING INTO INFINITY』(2017)

ベストアルバムを挟んで3年ぶりに発表される、通算7枚目のオリジナルアルバム。2014年に加入したジー・アンザローネ(Dr)を含む編成で初のスタジオアルバムであると同時に、今のところヴァジーム・プルジャーノフ(Key)が参加した最後のアルバムということになります(ヴァジームは本作に伴うプロモーション活動およびワールドツアーには不参加)。

全体的に、ここ数作と比べて非常にメロディが質が高まっているように感じました。とはいえ、このバンド特有の“ノリ”に関して言えば、序盤こそ「あれっ、若干落ち着いた?」と感じるものの、アルバムが進むほどその“濃さ”が徐々にあらわになっていきます。そして後半はいつもどおりのドラフォ節炸裂で、サーカスばりのテクニカルプレイも満載。変わったようで変わってない、変わってないようで変わった。聴き方次第でいろんな表情が感じられる1枚かもしれません。

特に終盤にかけて収録される長尺楽曲「The Edge Of The World」(11分超え)の構成は、さすがの一言。こkまで長いとぶっちゃけ途中で飽きてしまいがちですが、起承転結しっかりしていて、最後まで安心して楽しむことができます。

日本盤のみボーナストラックとして、ZIGGYが80年代後半に爆発的にヒットさせた名曲「GLORIA」のカバーが収録されていますが、往年のJ-POP/J-ROCKとメロスピとの相性は抜群。イントロやAメロのアレンジ、そしてAメロの歌詞が英語になっていて最初は気づかないかもしれませんが、Bメロからサビにかけての流れでようやく気付かされるという。こういった楽曲を自然と演奏してしまうあたり、改めて日本人向きのバンドだと納得させられました。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼DRAGONFORCE『REACHING INTO INFINITY』
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投稿: 2017 05 17 12:00 午後 [2017年の作品, DragonForce, ZIGGY] | 固定リンク

2017/05/10

ゲスの極み乙女。『達磨林檎』(2017)

本来なら昨年11月に先行配信、12月にパッケージが発売されていたはずの本作が、約半年の延期を経てついにリリース。昨年の時点でMVが公開されていた2曲以外は、ようやく正式な形で聴くことができるようになったわけですが、そのきらびやかさと多幸感に満ち溢れたサウンドに驚かされるリスナーも多いのではないでしょうか。

どこかひねくれたイメージのある彼らですが、その資質は残しつつも、それ以上にパーっとまばゆい光が広がるようなポップさは過去随一。前作『両成敗』が全体を覆うロック度の高さでグイグイ引っ張る作風だとしたら、今作は時に訪れる穏やかさと、ところどころに散りばめられた毒の量のバランス比が絶妙です。

特に後者が少し控えめなことで穿った見方をされてしまいそうですが、それは本作を純粋に「音楽」として受け取ってほしい、楽しんでほしいという思いの表れではないかと推測。こんな状況だからこそ、歌詞やサウンドの偏った解釈はいくらでもできる。でも、そんなネガティブさもを凌駕する“突き抜け感”は今こそ正当に評価されるべきだと力説したい1枚です。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼ゲスの極み乙女。『達磨林檎』
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投稿: 2017 05 10 12:00 午後 [2017年の作品, ゲスの極み乙女。] | 固定リンク

2017/04/25

INCUBUS『8』(2017)

いろいろびっくりしました。まず6年ぶりという事実にも驚かされたし、通算8枚目(インディーズ盤含む)という事実にも、そしてその音と携わったアーティストにも。

INCUBUSがユニバーサル(Island Records)に移籍したと伝えられたのが2015年のこと。彼らはその年に4曲入りEP『TRUST FALL (SIDE A)』をリリースしており、その後第2弾EPもしくはアルバムがリリースされるのではと噂されていたけど、結局その年も、そして翌年も大きな動きはなく過ぎていったのでした。

ところが、2017年に入ってすぐにきたるニューアルバムからの新曲「Nimble Bastard」が公開。これがダイナミックなサウンドとワイルドなテイストのロックンロールで、聴いて一発で気に入ったわけです。聞けば、この曲はかのデイヴ・サーディ(SLAYER、MARILYN MANSON、OASISなど)と制作したもので、続くニューアルバムもデイヴのプロデュースになるという。どんなアルバムになるのか、ただただ楽しみに待っていたところ……。

いきなりSKRILLEXがアディショナル・プロデュースおよびミックスで参加することになり、ここに完成したのが今回紹介する『8』になるわけです。

近年はメンバーのマイク・アインジガー(G)もEDM方面でソングライターやギタリストとして活躍していることもあり、SKRILLEXとも当然面識があるだろうし、そもそもSKRILLEXことソニー・ムーアはFROM FIRST TO LASTのフロントマンということで、INCUBUSにも憧れていたことから、このコラボレーションは必然だったのかもしれません。

アルバムの根幹となる楽曲群は、穏やかさを軸に新たな可能性を提示した前作『IF NOT NOW, WHEN?』(2011年)とも異なる、バラエティに飛んだハードロック/ラウドロックが中心。リズムひとつ取っても軽快さよりも、ビートの1音1音のヘヴィさが聴き手にズシリと響きわたるようなものばかり。じゃあ陰鬱としているのかというと、そんなことはまったくなく、するする聴けて、気づけばアルバムを聴き終えているという聴きやすさが伴っています。トータル11曲(日本盤ボーナストラック除く)で40分というランニングタイムも程よく聴けてしまう要因だと思います。

そして、そんな楽曲群をより聴きやすくしながらも、強烈なインパクトを耳に残す一因となっているのが、SKRILLEXによるミックスでしょう。このビート感(主に音色やサウンドアプローチ)は明らかに昨今のダンスミュージックからもののだと思うし、しかもそれをロック畑出身のSKRILLEXが手がけているんだから、そりゃ絶妙なバランス感で成り立つビートが完成するわけですよ。このヘヴィさは『MAKE YOURSELF』(1999年)の頃とも、『A CROW LEFT OF THE MURDER…』(2004年)の頃とも明らかに質感が違うもの。そりゃ曲のアプローチも違うんだから、全然異なるものになるわけですよ。

冒頭2曲(「No Fun」「Nimble Bastard」。後者はシングルバージョンと異なり、SKRILLEXが新たにミックスしたもの。上記のMVはミューミックス音源を用いたものです)のストレートで豪快なロックンロールから、サイケ色を散りばめたフォーキーなヘヴィロック「State Of The Art」、SMASHING PUMPKINSやSTONE TEMPLE PILOTSを彷彿とさせる「Glitterbomb」、これぞ王道INCUBUSナンバーな歌モノ「Undefeated」、ダウナーなモダンR&B「Loneliest」とどんどん表情を変えていく。かと思えば、コミカルなインタールード「When I Became A Man」を挟んで、キラキラ感のあるロック「Familiar Faces」、90年代のインターネットユーザーには懐かしい効果音から豪快なヘヴィロックへと続く「Love In A Time Of Surveillance」、そして唯一SKRILLEXが絡んでないシリアスなインスト「Make No Sound In The Digital Forest」から締めにふさわしいグランジ風ミドルヘヴィな「Throw Out The Map」で終了。いやいや、カッコ良いじゃないですか。

今年でメジャーデビュー20周年。INCUBUSはまだまだいけるよということを示すには最適な1枚というだけでなく、こういうロックがヒットチャートに必要とされなくなりつつある2017年において、今後のシーンを左右する重要な作品かもしれません。



▼INCUBUS『8』
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投稿: 2017 04 25 12:00 午前 [2017年の作品, Incubus] | 固定リンク

2017/04/24

MUTATION『MUTATION III - DARK BLACK』(2017)

2013年に2枚のオリジナルアルバムをメールオーダーで発表した、ジンジャー・ワイルドハートのソロプロジェクトMUTATION。その後しばらく音沙汰がなかったものの、2016年末に再始動が伝えられます。しかも、今回はジンジャーとスコット・リー・アンドリューズ(EXIT INTERNATIONAL)の2人体制ユニットとして復活。実はこのEXIT INTERNATIONALについては知識がまったくなかったのですが、なにやら“ノイジー・ディスコ・パンク・バンド”とのこと。検索してみると、こんな感じらしく。

なるほど。

さて。約3年ぶりに届けられる通算3枚目のオリジナルアルバム『MUTATION III - DARK BLACK』ですが、基本路線は過去2作と一緒。ただ、今作は過去にも増してシンプルかつコンパクトな仕上がりとなっています。無軌道で先読み不可能な展開というMUTATION当初の魅力が、この3年の間に消え去ってしまったのは残念ですが、相変わらず薄皮が何枚もかかったスピーカーから爆音で鳴らされるノイズは健在。実はこの変化、ジンジャーよりもスコットの色合いが強いのかなと、先のEXIT INTERNATIONALの楽曲を聴いて感じた次第です。このシンプルさ、まさにそれですものね。

また、コンパクトさは楽曲の長さ(ほぼ2分台から3分台前半)がそのままアルバムのトータルランニングに影響し、全10曲で26分半というツッコミどころ満載の長さとなっております。過去2作が同じ10曲入りでそれぞれ38分程度だったことを考えると、いかに今回無駄を削ぎ落としたかが伺えます(いや、あの複雑怪奇な展開はまったく無駄じゃなかったけど)。あと、本作は1曲目「”.”」が7秒というのも大きい要因ですね。これ、曲じゃなくて単なるインタールード(というより話し声)なんですが。

あと、本作にはデヴィン・タウンゼンド、フィル・キャンベル(MOTORHEAD)、ジェイミー・オリバー(UK SUBS)などがゲスト参加しているようです。4曲目「Devolution」にはデヴィンがフィーチャリングされているようですが……まぁ確かにそれっぽい曲かなと。いや、自信ないです。だってノイズまみれだから(苦笑)。他にもゲストが多数参加しているようなので、きっと日本盤が6月に発売された際には、クレジットなどで明らかになるはずです。ちなみに僕は、年明けにPledgeMusicでダウンロード購入したので、音しか情報がない状況でつい最近まで過ごしてきました。

にしてもこのアルバム。終盤に進むにつれてそのノイズ度がどんどん増していくんですよね。曲の切れ目もわからないぐらいだし、ラストの「Deterioration」なんてもう、スピーカーの音割れまくり。正直自分が何を聴いているのかわからなくなります。

しかし、過去2作同様に本作も何度か聴き返すうちにやみつきに……なるんでしょうかね。個人的には2ndアルバムが一番難易度が高いと思ってたけど、ここまでど直球を投げられると逆にこれはこれでハードル高いような気が。ま、過去のアルバムみたいに数年後には理解できるようになるかもしれませんね。

そういえばMUTATIONはこの秋、来日の噂もあるんだとか。耳栓必須ですな、そりゃ。



▼『MUTATION III - DARK BLACK』
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(PledgeMusic:配信音源

投稿: 2017 04 24 12:00 午前 [2017年の作品, Ginger Wildheart, Mutation] | 固定リンク

2017/04/13

DEEP PURPLE『INFINITE』(2017)

これがラストアルバム?と噂される、DEEP PURPLE通算20枚目のスタジオアルバム。前作『NOW WHAT?!』(2013年)から4年ぶりと、思っていた以上に間が空いてないんですね(その前の『RAPTURE OF THE DEEP』(2005年)から『NOW WHAT?!』の間隔8年も空いてたので)。

正直言えば、2000年代のパープルをそこまで真面目に聴いてきたわけではありません。リアルタイムでしっかり聴き込んでいたのは、リッチー・ブラックモア最終作『THE BATTLE RAGES ON…』(1993年)までで、スティーヴ・モーズ初参加作『PURPENDICULAR』(1996年)はぶっちゃけ熱心に聴いたほうではなく、その後も新作が出るたびに聴いたり聴かなかったり……という付き合い方でした。

今作に関しては、昨年末に先行公開されたアルバムのオープニングトラック「Time For Bedlam」の仰々しいイントロ&アウトロと、そこに挟まる“80年代以降のパープル”というアンバランスさが妙に引っかかり、ずっと気になっていたんです。「リリースされたら、ちゃんと聴こう」って。

で、発売された本作。どの楽曲も聴けば「あ、パープルだ」という要素が散りばめられたものばかり。それこそ70年代、80年代の彼らが好きな人、その頃の諸作品に触れた人なら必ず引っかかりのある1枚だと思います。オールドスタイルのロックンロールやブギーを軸にしつつも、重みのあるビート、プログレッシヴハードロック的アレンジなど、このバンドの歴史を総括するような楽曲がずらりと並び、そこにスティーヴ・モーズ(G)のツボを押さえたギタープレイと、ハードロックというよりはプログレチックなドン・エイリー(Key)のオルガン/シンセ/ピアノが加わることで、“古臭いのにどこか新鮮”という最初に「Time For Bedlam」を聴いて感じた“引っかかり”を楽しめるはずです。

ただ、イアン・ギランのボーカルに関しては……71歳という高齢のわりに健闘していると思いますが、やはり往年のシャウトは期待できないわけで。一定のトーンで歌われるボーカルのせいで、タイトな演奏とは相反する緩さが生じてしまっています。が、そこを差し引いて考えればなかなか良くできたハードロックアルバムとして楽しむことができるんじゃないでしょうか。いや、冗談抜きで、とてもリラックスして楽しめる1枚です。まさかパープルの作品とこういう向き合い方をする日が来るなんて、思ってもみなかったけど。

長年活動が続くロックバンドの加齢問題は、このDEEP PURPLEに限らずたくさんあります。JUDAS PRIESTやSCORPIONSも一時期引退を示唆していましたし。パープルが本当にこのアルバムとそれに伴うワールドツアーで活動を終了させるのかは現時点では不明ですが、仮にもしこのアルバムで最後だとしても誰も文句は言わないはずです。それに見合った優れた作品を作り上げたわけですから。



▼DEEP PURPLE『INFINITE』
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投稿: 2017 04 13 12:00 午前 [2017年の作品, Deep Purple] | 固定リンク

2017/04/01

NIGHT RANGER『DON'T LET UP』(2017)

NIGHT RANGER通算11枚目(“MOON RANGER”呼ばわりの1995年発売『FEEDING OFF THE MOJO』を含めたら12枚目)のスタジオアルバム『DON'T LET UP』。2011年の『SOMEWHERE IN CALIFORNIA』、2014年の『HIGH ROAD』と同じラインナップ……ジャック・ブレイズ(Vo, B)、ケリー・ケイギー(Vo, Dr)、ブラッド・ギルス(G)、ジョエル・ホークストラ(G)、エリック・レヴィー(Key)の5人で制作し、やっとバンドとしても固まってきたかなという2014年夏、『HIGH ROAD』リリースからしばらくしてジョエルが脱退し、WHITESNAKEに加入というニュースが流れます。バンドは一時期ライブにサポートメンバーとして参加したケリ・ケリー(VINCE NEIL、RATT、WARRANT、L.A.GUNSなど)を加えてライブを続け、ケリはそのまま正式加入。前作から3年の歳月をかけ完成させたのが、本作『DON'T LET UP』となるわけです。

とはいえ、昨年にはケリを含む編成でのライブアルバム&映像作品『35 YEARS AND A NIGHT IN CHICAGO』もリリースされていたので、そちらに触れていた人にはこの編成の移行はすんなり行くものだったのかもしれません。僕もたまたま、今年に入ってからその映像作品を観る機会があり、最初こそ違和感があったものの、見終える頃には不思議とケリの存在に馴染んでしまっていたのをよく覚えています。

さて、気になる新作ですが……『SOMEWHERE IN CALIFORNIA』以降の流れを組む、“これぞNIGHT RANGER”な仕上がり。ハードドライヴィングなロックチューン「Somehow Someway」からスタートするところは、若干の落ち着きを見せた前作『HIGH ROAD』よりも期待度を高めてくれるはず。「Truth」のような『HIGH ROAD』の流れにあるポップチューンもありますが、パワフルなビートとツインリードギターのミックスが気持ち良い「Running Out Of Time」、ギターがのたうちまわるハードロック「Day And Night」、ギターのフレーズやボーカルの泣きメロがNIGHT RANGERとしては新鮮なタイトルトラック「Don't Let Up」、疾走感あふれる「Say What You Want」など、基本的にはハードロック路線の作風です。

しかし、先の「Don't Let Up」のようにメロディはどれも親しみやすくキャッチーなものばかり。その極め付けが、ビートルズを彷彿とさせるハーモニーが心地よい「We Can Work It Out」でしょう。バラートとまではいかないものの、穏やかなテンポ感とアコースティックギターを用いたアレンジがバンドの軸にある“グッド・メロディ”を浮き彫りにし、これもNIGHT RANGERの持ち味のひとつだと再認識させてくれます。こういう曲が再びヒットチャートを賑わせる時代が訪れるといいな……と純粋に思わせてくれる1曲です。

さらに、アルバムラストを飾るのはアコースティック調のバラード「Nothing Left Of Yesterday」。こういったパワーバラードもこのバンドの大きな武器のひとつなのは紛れもない事実で、しばらく新曲としては封印されていたこの要素をアルバムの最後に持ってくるあたりに、今のNIGHT RANGERの好調ぶり、自信の強さが表れているように感じます。

例えば「Don't Tell Me You Love Me」や「(You Can Still) Rock In America」「Sister Christian」「Sentimental Street」などのような“決定的な1曲”はこのアルバムには存在しないかもしれない。しかし、それに匹敵する高レベルの楽曲がずらりと並ぶ、平均点以上のアルバムなのには違いありません。過去にとらわれることなく、本作が正当に評価されることを望みます。



▼NIGHT RANGER『DON'T LET UP』
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投稿: 2017 04 01 12:00 午前 [2017年の作品, Night Ranger] | 固定リンク

2017/03/31

MASTODON『EMPEROR OF SAND』(2017)

2014年リリースの『ONCE MORE 'ROUND THE SUN』に続く、MASTODON通算7枚目のスタジオアルバム。本国アメリカでは前作が全米6位という過去最高位を記録したほか、2015年春にここ日本でも初の単独来日公演も実現するなど、かなり良好なタイミングに発表される今作は、「死刑宣告を受けた砂漠の放浪者が、無慈悲にも流れ落ちていく砂時計を前に“生と死”と向き合っていく」というコンセプチュアルなテーマが設けられたアルバムとなっています。がしかし、そこはMASTODONのこと。単なるコンセプトアルバムにはなっておらず、曲単体でも十分に楽しめる極上のHR/HM作品集に仕上げられています。

実は本作の日本盤にて筆者がライナーノーツを執筆しているため、本作をひと足早くフルで聴くことができました。詳細な内容やアルバムの解釈についてはライナーノーツに譲るとして(なのでぜひ日本盤で、対訳含めて堪能してみてください)、ここでは最初に聴いた際の各楽曲の感想メモを紹介していきたいと思います。

M-1「Sultan's Curse」
変幻自在なリズムと硬質なギターリフが固まりとなり、うねりを伴いながら突進してくる。アルバムのオープニングにふさわしい1曲。

M-2「Show Yourself」
キャッチーなメロディを持つ、親しみやすいヘヴィロック。のたうちまわるかのごとく暴れまくるギターソロが耳に残る。

M-3「Precious Stones」
不思議な音色&和音からなるギターリフと疾走感のあるバンドサウンド、どこかひんやりとしたハーモニー、随所に絡むツインリード。どれを取ってもカッコいいし、それらが交わったときに生まれる絶妙な緊張感が最高。

M-4「Steambreather」
聴き手をどこか不安な気持ちにさせる音使いと、その合間に登場するのたうちまわるギターソロが印象的。

M-5「Roots Remain」
グランジにも通ずる不穏なメロディと、手数の多いドラミングからなる前のめりなリズム。と同時に壮大さも兼ね備えており、ドラマチックな展開をしていく。

M-6「Word to the Wise」
4分の6拍子と4拍子を行き来する複雑さ、歌メロの裏で主張するギターソロ、さらに曲が進むにつれてのたうちまわり方が増す。壮大さは前曲からの流れあり。

M-7「Ancient Kingdom」
ギターリフとリズムで曲を引っ張る、独特のグルーヴ感。ボーカルは淡々としているのに、演奏で緩急をつけるアレンジは圧巻の一言。しかし、そのボーカルも曲後半に進むにつれ熱を帯びていく。

M-8「Clandestiny」
メロディを奏でるようなギターリフと、それと相反する歌メロが乗ることで生まれる化学反応。これぞMASTODONという1曲では。

M-9「Andromeda」
不穏さがさらに増すもスペーシーなメロディ/アレンジも含まれており、全体的な壮大さは保ったまま。天にも昇るようなギターフレーズと、叫び伝えるボーカルは絶品。

M-10「Scorpion Breath」
突進していくような前のめりさ、スリリングさを持つスピード感。前曲から続く断末魔のような叫び。いよいよ物語はクライマックスを迎えようとしていることが、この曲からも伝わってくる。

M-11「Jaguar God」
アコースティックギターの音色から始まる、もの悲しげなバラード。曲は徐々に激しさを増していき、5分近く進んだところで一気に豹変。その凶暴さをみせる。これぞプログレッシヴメタルと呼べる叙情的大作。ただひたすらドラマチック。

以上、いかがでしたでしょうか。これまでのMASTODONが好きな人なら絶対にお気に入りの1枚になることは間違いないでしょう。先に曲単位で取り上げても素晴らしいと書きましたが、ここまできたら本作はアルバム全編を通して聴いてほしいな。そしてライブも、できることならアルバムまるごと、11曲通しで演奏してほしい。そんな欲すら生まれてしまう傑作だと思います。



▼MASTODON『EMPEROR OF SAND』
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投稿: 2017 03 31 12:00 午前 [2017年の作品, Mastodon] | 固定リンク

2017/03/22

STEPHEN PEARCY『SMASH』(2017)

5月13、14日に幕張メッセイベントホールで開催が決まった、L.A.メタル界隈のレジェンドたちが一堂に会する屋内フェス『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』。こちらの2日目ヘッドライナーとして出演するのがスティーヴン・パーシー、ウォーレン・デ・マルティーニ、フォアン・クルーシェ、カルロス・カヴァーゾによるRATT。もはやボビー・ブロッツァーのRATTはどこへやら(日本では確実に受け入れられないだろうけどね)。

そんな、あれこれ慌ただしくなり始めたRATT界隈から年始にスティーヴン・パーシーの4thソロアルバム『SMASH』がリリースされました。ソロとしては2008年の『UNDER MY SKIN』以来約9年ぶり、直近のリリースとなると2010年のRATT『INFESTATION』以来約7年ぶり。その間にスティーヴンも59歳になってしまいました……。

さて、アルバムはダークなスローナンバー「I Know I'm Crazy」からスタート。「全然声が出てないじゃん……」な低音ボイスに若干不安になりますが、2曲目「Ten Miles Wide」以降は我々がよく知る“Voice of RATT”を堪能することができます。安心した。

楽曲自体もメロディ、テンポ感含めRATTの延長線上にあるナンバーばかりで、往年の彼を知るHR/HMファンなら間違いなく楽しめる1枚だと思います。また「Shut Down Baby」「What Do Ya Think」「Summers End」みたいなLED ZEPPELIN風ヘヴィブルースも含まれており、同系統の楽曲が多い本作中で程よいアクセントとなっています。

そう、もともとRATTって決して楽曲の幅が広いタイプのバンドではなかったし、スティーヴン自体も幅広く何でも歌えるタイプのシンガーではないので、この金太郎飴的アルバムは聴く人によっては退屈と感じてしまう可能性もゼロではありません。RATTの全盛期を知らない若い子たちがこれを聴いてどう感じるのか、非常に気になるところです。

ちなみにレコーディングに参加しているのは、2005年からスティーヴンのソロバンドでの片腕的存在Erik Ferentions(G)、初期RATTやROUGH CUTTのメンバーだったMatt Thorn(B)、WHITE LIONやザック・ワイルドのPRIDE & GLORYにも在籍した経験を持つGreg D'Angelo(Dr)。ギタープレイからはRATTほどの強い個性は感じませんし、耳に残るフレーズも少ないのですが、楽曲のメロディ自体はクセになるものが多いのも事実。そういう意味では“Voice of RATT”の個性を存分に生かした、“Voice of RATT”のためだけに作られたアルバムと言えるでしょう。スティーヴンの歌を最良の形で楽しむ作品集。個のぶつかり合いを楽しむRATTとは異なる作風ではあるものの、これもまた“もうひとつのRATT”と言えるかもしれませんね。



▼STEPHEN PEARCY『SMASH』
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投稿: 2017 03 22 12:00 午前 [2017年の作品, Ratt, Stephen Pearcy] | 固定リンク

2017/03/09

BLACK STAR RIDERS『HEAVY FIRE』(2017)

元THE ALMIGHTYのリッキー・ウォリック(Vo, G)、元THIN LIZZYのスコット・ゴーハム(G)を中心に結成された、“THIN LIZZYの正統的後継バンド”BLACK STAR RIDERS。彼らが2015年の2ndアルバム『THE KILLER INSTINCT』に続いて発表したのが、本作『HEAVY FIRE』です。2月初頭に発表された今作は、すでにイギリスで初登場6位という好成績を残しています。

もともとは“フィル・ライノットのいないTHIN LIZZY”がライブ活動の延長で、オリジナル曲を発表する上でTHIN LIZZYの名前を使わないため、そして「THIN LIZZYの物語を次のステップに進めるため」に新た結成されたのがBLACK STAR RIDERSというバンド。現在はリッキー、スコットのほか、BROTHER CANEなどで活躍したデイモン・ジョンソン(G)、ヴィンス・ニールのソロプロジェクトやRATTに在籍したロビン・クレイン(B)、Y&TやMEGADETHなど数々のバンドで活動し、最近はRATTにも参加しているジミー・デグラッソ(Dr)という5人で活動しています。

確かに本作にはTHIN LIZZYの“香り”がそこらじゅうから感じられます。それはリッキーの「どことなくフィル・ライノットに似た」男臭い歌声だったり、独特な節回しを含むメロディだったり、随所にフィーチャーされるツインリードギターだったり……それらがミックスされることでTHIN LIZZYっぽい“香り”になるのですが、あくまで“っぽい”止まり。そこにアイリッシュトラッド的な要素ではなく、アメリカンロック的な大らかなノリやブルース、フォークなどのテイストが加わることで独自の世界観が作り上げられています。

今作は前作同様、アメリカ・ナッシュビルでレコーディングを敢行。プロデューサーには前作から引き続きニック・ラスカリニクス(ALICE IN CHAINS 、DEFTONES、FOO FIGHTERSなど)を迎えて制作されており、そのへんも本作の方向性に大きな影響を与えているのかもしれません(それ以前にバンド内のアメリカ人比率が高いことも大きいと思いますが)。THIN LIZZYが本来持ち合わせていた音楽的“アイリッシュ訛り”が払拭され、よりワールドワイドで戦える音に昇華されています(もちろんこれは、THIN LIZZY元来のサウンドがワールドワイドで戦えないという意味ではありません。「クセが弱まったぶん、より幅広い人たちに聴いてもらえる体制が整った」ということです)。

王道THIN LIZZY調の「Testify Or Say Goodbye」みたいな曲を残しつつも、全体ではTHIN LIZZYテイストは調味料程度で、リッキーやスコットなどのメンバーが本来持つ個性がより強く出始めています。それを良しとするか、それともなしとするかで本作の評価は大きく分かれるかもしれません。個人的には全体のバランス感が絶妙で、過去2作以上にお気に入りな1枚です。



▼BLACK STAR RIDERS『HEAVY FIRE』
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投稿: 2017 03 09 12:00 午前 [2017年の作品, Almighty, The, Black Star Riders, Thin Lizzy] | 固定リンク

2017/03/08

JACK RUSSELL'S GREAT WHITE『HE SAW IT COMIN'』(2017)

2つの同じ名前のバンドが同時期に存在する……日本だったらまずありえないことですが、海外に目を向けるとこういった案件がいくつか存在します。最近だとドラマーのボビー・ブロッツァー以外は知らないメンバーからなるRATTと、スティーヴン・パーシー(Vo)、ウォーレン・デ・マルティーニ(G)、フォアン・クルーシェ(B)という“バンドの顔”が在籍するRATT。今も裁判で揉めてますよね。ちょっと前だと、バンドを首になったフロントマンのジェフ・テイトひとりが名乗るQUEENSRYCHEと、ジェフを首にして新たなフロントマンを迎えて活動を続けるQUEENSRYCHE。こっちはもっと厄介で、同じ年に同じ名前の2つのバンドがアルバムを発表してしまいました。結果、初期のヘヴィメタル路線へと回帰した後者がチャート的にも成功。ジェフ側はOPERATION: MINDCRIMEと名を変え、今も活動を続けています。

なぜこんな面倒な話題を書いたかというと、今日紹介するGREAT WHITEもそんな状況に陥っているからです。彼らはジャック・ラッセル(Vo)、マーク・ケンドール(G)、マイケル・ローディ(G, Key)、オーディ・デスブロウ(Dr)、トニー・モンタナ(B)という編成で80年代後半にいくつかのヒットを飛ばし、メンバーチェンジを繰り返しつつも活動を継続。2003年2月にはライブハウスの火災事故でメンバーを含む100名が亡くなり活動休止。2006年頃に活動再開しますが、2009年に怪我を理由にジャックが脱退。回復後もバンドに戻らず、JACK RUSSELL'S GREAT WHITE名義でバンド活動を再びスタートさせるのです。

この『HE SAW IT COMIN'』はそのJACK RUSSELL'S GREAT WHITEが2017年1月に発表した1stアルバム。ちなみにこちらのバンドには元GREAT WHITEのトニー・モンタナ(B)が加わり、現在はベースではなくリズムギターやキーボードを担当しています。

ジャックのボーカルは80〜90年代のよりもトーンは低めながらも、一聴して“あのGREAT WHITEの声”とわかるもの。すでに50代半ばですもの、そりゃ枯れまくっているわけですが、逆にそれがGREAT WHITEが80年代後半から徐々に深めていったブルーステイストのHRサウンドにはぴったりとマッチしています。楽曲自体も派手さは皆無で、従来のGREAT WHITEっぽい楽曲も数曲(オープニングの「Sign Of The Times」、リズミカルなブギー「My Addiction」、アコースティックバラード「Anything For You」、リフでぐいぐい引っ張るストレートなハードロック「Blame It On The Night」)あるにはありますが、その他の曲はもっとAOR調というか……曲によってはFREEやBAD COMPANY、あるいはFORINGNERなどをイメージさせられるし、ファンキーなソウルナンバー「Don't Let Me Go」、グラマラスなブリティッシュロック「He Saw It Comin'」みたいな曲もあって、アルバムとしてはとてもバラエティに富んだ仕上がりとなっています。そういう意味では、THUNDERの最新アルバム『RIP IT UP』にも近い雰囲気があるかもしれません。

特にリードギターのロビー・ロックナーが適度にテクニカルなフレーズを散りばめており、それが地味になりがちなアルバムに適度なフックを作っています。いわゆるブルースギタリストとは異なる、正統派ハードロックギタリストを要するJACK RUSSELL'S GREAT WHITEが今後、どういう方向に向かっていくのか。本家GREAT WHITEよりも拡散方向に進みつつあることがわかっただけでも、このアルバムは大きな収穫と言えるのではないでしょうか。大絶賛するまでの作品ではないかもしれませんが、リラックスしながら聴くには最適な1枚かと思います。

ちなみに、本家GREAT WHITEはこの1月から新作制作のためスタジオ入り。マイケル・ワグナーをプロデューサーに迎え、2012年の『ELATION』に続くアルバムを今年中に発表するようです。



▼JACK RUSSELL'S GREAT WHITE『HE SAW IT COMIN'』
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投稿: 2017 03 08 12:00 午前 [2017年の作品, Great White] | 固定リンク

2017/03/07

TOKYO MOTOR FIST『TOKYO MOTOR FIST』(2017)

80年代末にシーンに登場しながらも中ヒット止まりだった2つのアメリカンHRバンド、DANGER DANGERとTRIXTER。両者は解散やメンバーチェンジなどを経て、2017年現在も存続しており、前者は2014年9月にデビュー25周年記念の来日公演を行い、後者は2015年にアルバム『HUMAN ERA』を発表しています。

そんな2バンドから、DANGER DANGERのフロントマンであるテッド・ポーリー(Vo)と、TRIXTERのメインソングライター兼プロデューサーでもあるスティーヴ・ブラウン(G)が、90年代にRAINBOWに在籍したグレッグ・スミス(B)とチャック・バーギー(Dr)と新バンドTOKYO MOTOR FISTを結成。2017年2月に待望の1stアルバム『TOKYO MOTOR FIST』をリリースしました。

80年代末から90年代初頭にデビューしたUSバンドの中では印象的な美メロ楽曲が多かったTRIXTER。個人的にも彼らの1枚目(1990年の『TRIXTER』)と2枚目(1992年の『HEAR!』)は今でも気に入っている作品です。このTOKYO MOTOR FISTでは楽曲のソングライティングのみならず、プロデュースからミックス、エンジニアリングまですべての制作作業をスティーヴが担当。楽曲の軸のみなら“TRIXTERの新作”と呼んでも差し支えない内容かと思います。しかし、そこに“いかにもアメリカン”な適度に枯れて適度に湿り気のある声を持つテッドのボーカルが加わることで、TRIXTERはもちろんDANGER DANGERとも違う別のバンドとして成立するわけです。

派手ではないもののどっしりとボトムを支えるリズム隊のプレイ、能天気なアメリカ人というよりはどこか影のあるメロとアレンジ、そして重厚なコーラスワークと、ここで聴けるのはDEF LEPPARDやFIREHOUSEにも通ずる正統派ハードロックサウンドそのもの。「Pickin' Up The Pieces」「Love Me Insane」「Shameless」の頭3曲なんてまさにそれなんだけど、かといってボーカルがハイトーンすぎずに程よい温度感を保っている。バラードナンバー「Don't Let Me Go」も歌い上げすぎていないから、気持ち良く聴けてしまうんです。

かと思うと、「Put Me To Shame」みたいにマイナーキーの泣きメロHRもあれば、引きずるようなヘヴィさを持つ「Done To Me」もあるし、AOR調のミディアムナンバー「Get You Off My Mind」もある。そして最後はアップテンポの美メロナンバー「Fallin' Apart」で幕を降ろすわけです。どの曲も3〜4分程度でコンパクト、ひたすらメロディの気持ちよさにヤられて、気がついたら11曲41分があっという間に終わっている。で、また最初から聴き返しているという、そんなスルメ的魅力の1枚です。

聴く人によっては「ボーカルはもっと声を張り上げてないと」と難をつけるかもしれませんが、僕としてはこれくらいの温度感がちょうどよく感じられる。むしろ、これくらいだから何度も何度もリピートしたくなってしまうんです。決して2017年的な作品ではないけど、逆にこの時代にこういったサウンドと真正面から向き合ったテッド&スティーヴの2人に賞賛を送りたいくらい。それぞれのメインバンドとうまく並行して、2枚目3枚目と良質な作品を発表し続けてほしいものです。



▼TOKYO MOTOR FIST『TOKYO MOTOR FIST』
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投稿: 2017 03 07 12:00 午前 [2017年の作品, Danger Danger, Tokyo Motor Fist, Trixter] | 固定リンク

2017/03/05

OVERKILL『THE GRINDING WHEEL』(2017)

OVERKILLってすごく勤勉なバンドだと思う。1984年の最初のEP『OVERKILL』をリリースして以降、1〜2年に1枚ペースでアルバムを発表していて、21世紀に入ってからもそのペースはほぼ変わることなく、2〜3年に必ず1枚発表しているんだから。その結果、先月リリースされたニューアルバム『THE GRINDING WHEEL』が通算18枚目のオリジナルアルバムになるわけですから。

80〜90年代はそれほど熱心に聴いていたわけではなく、来日すれば観に行く、たまたま海外の滞在先でライブがあったから観に行ってみた、とかそのレベル。いや、それってかなり好きだったんじゃないの?と今気づいたわけですが……(苦笑)。本格的にハマッたのは、実は10年に満たないくらい。アルバムでいうと……15th『IRONBOUND』(2010年)くらいかな。そこから毎回新譜が出たらすぐに買い、気づけば旧譜もライブ盤、コンピ含めすべて揃えていたという。今はそれくらいには好きです。いや大好きです。

そんな彼らの新作。特に今回は長尺の楽曲が多いなと。オープニングの「Mean, Green, Killing Machine」からして7分半ですし、全10曲(ボーナストラックのカバー2曲を除く)中6分を超える楽曲が半数、それ以外もほぼ5分超えで、さらに頭とケツの「The Grinding Wheel」の2曲は7分超えですから。もちろんこれまでの彼らにはそういった作品はなくはなかったので(2012年の16th『THE ELECTRIC AGE』がまさにそんな感じかな。古くは1989年の4th『THE YEARS OF DECAY』なんてのもありましたし)特に問題はないのですが、今作は単にそういった作品の延長線上にあるものとはちょっと違うんですよね。

複雑な展開を持つ、いかにも80年代的スラッシュ「Mean, Green, Killing Machine」で聴き手を圧倒させたかと思えば、「Goddamn Trouble」「Our Finest Hour」でエンジンがフルスロットルに。特に後者の爆走っぷりは、これこそOVERKILLと叫びたくなるようなもの。確かに長尺曲3連発は人によってはキツいかもしれないけど、個人的にはこれで掴みはOK。「ああ俺、OVERKILLの新作聴いてるよ……」と悦に浸れるわけです。

ところが、5曲目「The Long Road」あたりから様相が変わり始めます。シンガロングできそうなイントロのメロディやギターフレーズ、スラッシュというよりは王道HM感の強い曲調&アレンジ、そこから通常運転的スラッシュアレンジへとなだれ込む構成は圧巻の一言。さらにドゥーミーさを持ち合わせたミドルヘヴィなイントロから転調してテンポアップする「Let's All Go To Hades」や「Come Heavy」にはBLACK SABBATHからの影響が感じられるし、ラストの「The Grinding Wheel」はサバスはサバスでもDIOサバス的な匂いのドラマチックさがあるし。そう、全体的に“ヘヴィメタル”が高いんです。

メタルバンドに対して何を言っているんだ?と思われるかもしれませんが、そこがそれ以前の作品と本作の大きな違い。OVERKILLらしい豪快なヤケクソ感は本作でも健在ですが、本作にはそこにレジェンドたちの功績を讃えるようなエッセンスが散りばめられており、それが絶妙な化学反応を起こしているように感じられるのです。それは、アルバム本編に続くボーナストラック2曲……THIN LIZZY「Emerald」と、日本盤のみ収録のIRON MAIDEN「Sanctuary」の両カバーが並ぶことで、より明確になります。さらにアルバムタイトル……これってJUDAS PRIEST『BRITISH STEEL』の自己解釈ってことでよろしいですよね?

スラッシュメタルバンドにありがちな「リフの数を増やして次々に展開していく長尺曲」ではなく、正統派ヘヴィメタルバンドが過去に生み出してきたスタイルをOVERKILL流に解釈した結果。それがこの力作『THE GRINDING WHEEL』なんじゃないでしょうか。ホント、大好きな1枚です。



▼OVERKILL『THE GRINDING WHEEL』
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投稿: 2017 03 05 12:00 午前 [2017年の作品, Overkill] | 固定リンク

2017/03/01

ドレスコーズ『平凡』(2017)

とんでもなく“非凡”なアルバムの完成! しかも、デジタルダウンロードやストリーミングが主流になるつつあるこの時代に、アルバムを丸ごと通して楽しむことを前提としたコンセプトアルバムとして仕上げられている(しかもそれを作ったのが、かの志磨遼平だっていう)んだから、痛快っちゃあありゃしない。音源を聴く前の、本人解説の時点で思わずガッツポーズをとってしまったほどですよ。

完成したアルバムには、昨今の高速四つ打ちダンスロックに対するアンチテーゼかと思うような、いびつでドス黒く、それでいて我々日本人のアンデンティティが色濃く表れたダンスチューンがずらりと並ぶ。個性の塊でしかない異端なミュージシャンを携え、ある意味“異端であることが当たり前すぎるくらい”な志磨遼平が銘打つ『平凡』。もしかしたらこれがのちにひとつの指標として捉えられたとき、本当に“平凡”なものになってしまうのかもしれない。そんな怖さとドキドキ感がダイレクトに伝わる今作を、誤解を恐れずに“ドレスコーズ版『REMAIN IN LIGHT』(言わずと知れたTALKING HEADの名盤)”と呼びたいです。

デヴィッド・バーン役もブラアン・イーノ役もすべてひとりでこなす志磨遼平、恐るべし。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼ドレスコーズ『平凡』
(amazon:国内盤CD+DVD(初回限定盤) / 国内盤CD+DVD(通常盤)

投稿: 2017 03 01 12:00 午後 [2017年の作品, ドレスコーズ] | 固定リンク

2017/02/27

KREATOR『GODS OF VIOLENCE』(2017)

ドイツの大御所スラッシュメタルバンドKREATORの約5年ぶり、通算14枚目のスタジオアルバム。今年で35周年という、アメリカのMETALLICA、SLAYTERあたりと並ぶ活動歴を持つ彼らですが、サウンド的にはスラッシュ一辺倒ではなく、時代の流行りに乗った時期もありました(ゴシック/インダストリアル調のミドルナンバーが中心だった1992年の6thアルバム『RENEWAL』、1997年の8thアルバム『OUTCAST』あたりが顕著)。しかし2001年に現在の編成で制作された10thアルバム『VIOLENT REVOLUTION』を機に、再びスラッシュサウンドへと回帰。以降は常に評価の高い作品を送り続けています。

ミレ・ペトロッツァ(Vo, G)とユルゲン“ヴェンター”レイル(Dr)の創設メンバー2名にサミ・ウリ・シルニヨ(G)、クリスチャン・ギースラー(B)という、おそらく現時点で最強の布陣で制作された最新作『GODS OF VIOLENCE』は、21世紀に入ってからもっとも長いインターバルで発表されたアルバム。なにせこの約5年の間に彼ら、二度も来日してますからね(2014年の『LOUD PARK 14』、2016年の『THRASH DOMINATION 16』)。そもそも2014年の時点で実に9年ぶりの来日公演だったわけで、いかに前作『PHANTOM ANTICHRIST』(2012年)とそれに伴う活動が充実していたかってことですよね。

そんないい流れで制作された『GODS OF VIOLENCE』は、現編成での集大成というだけでなく、ゴシックロックへと傾倒した時期までもを含む、全キャリアを総括したかのような内容。単なるスラッシュ一辺倒で終わっておらず、パワーメタル的な色合いもあれば、メロディにはどこかゴシックロックを思わせるテイストもあり(アートワークの観点では、ブックレット内の写真は完全にゴスの流れにあるものでしたが)、さらにはケルト民謡やTHIN LIZZYあたりにも通ずるアイリッシュ民謡などの要素も散りばめられています。特にサミによるギターソロは非常にメロディアスで、単なるスラッシュメタルでは終わらないオリジナリティが感じられます。

もはや初期の『PLEASURE TO KILL』(1986年)や『EXTREME AGGRESSION』(1989年)の頃とは別モノと考えるのが正しいのかもしれませんが、これも間違いなくKREATOR。スタートから35年を経て進化した形が、この『GODS OF VIOLENCE』なのです。そういう意味では彼ら、(そのサウンドや辿った道は若干異なるものの)意外とANTHRAXに近いのかもしれませんね。

ちなみに本作、本国ドイツで初のチャート1位を獲得。オーストリアでも4位、フィンランドで7位、スイスで13位、スウェーデンで19位、さらにアメリカでも118位と、それぞれ過去最高位を記録しています。もちろんチャートの数字がすべてではありませんが、この内容のすごさや充実度を示す意味でも多少は参考にできる結果ではないでしょうか。

なお、本作の限定盤には2014年の『WACKEN OPEN AIR 2014』でのライブ映像が収められたDVD付き(日本盤のみBlu-ray仕様も用意)。さらに日本盤のみスペシャル盤として、その『WACKEN OPEN AIR 2014』のライブCDが追加された3枚組仕様も発売されています。この『WACKEN OPEN AIR 2014』、10thアルバム『VIOLENT REVOLUTION』以降の楽曲が全14曲中10曲と2001年以降のベスト盤的内容(『PHANTOM ANTICHRIST』リリース後なので、同作からの楽曲が半数を占めますが)。そこに超初期の「Endless Pain」「Pleasure To Kill」「Tormentor」といった激スラッシュ、中期の「Phobia」が違和感なく並ぶというのも興味深いところ。結局そういうことなんですよね。



▼KREATOR『GODS OF VIOLENCE』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+BD / 国内盤2CD+BD / 国内盤2CD+DVD / 海外盤CD / 海外盤CD+DVD

投稿: 2017 02 27 12:00 午前 [2017年の作品, Kreator] | 固定リンク

2017/02/24

THUNDER『RIP IT UP』(2017)

THUNDERは本当に勤勉なバンドだ。20年前と比べたらアルバムのリリースサイクルなんて3年くらいが当たり前となった昨今、ちゃんと2年に1枚のペースで新作を届けてくれるんだから。

というわけで、2015年2月に発表された通算10枚目のオリジナルアルバム『WONDER DAYS』が久々のヒット作となったTHUNDERが、ちょうど2年ぶりにリリースしたのが本作『RIP IT UP』。2年ぶりとは言いながらも、実は昨年3月には2枚組ライブCD+ライブ映像からなる大作『ALL YOU CAN EAT』も発表しているので、実質1年ぶりの感覚なんですよね。何なんでしょうね、この真面目さは。古き良き(もしくは悪しき?苦笑)イギリス人なんでしょうね、彼らは。

前作制作時はベン・マシューズ(G, Key)が病気療養中でレコーディングに参加できかったため、キーボード類はルーク・モーリー(G)がすべて担当していたようですが、今作では晴れてベンも復帰し、ルーク、ダニー・ボウズ(Vo)、ゲイリー・ジェイムズ(Dr)、クリス・チャイルズ(B)という、『THE THRILL OF IT ALL』(1997年)を携えたツアーから不動のメンバーが揃ったわけです(もちろん、前作完成後のツアーにはベンも参加済みですが)。

今作『RIP IT UP』、基本ラインは『WONDER DAYS』から……いや、従来のTHUNDERのスタイルからこれっぽっちもズレていません。しかし、『WONDER DAYS』に感じられた攻めの姿勢やみずみずしさは若干後退し、より貫禄と渋みが増した印象があります。では地味な作品なのかというと、そんなこともない。オープニングを飾る「No One Gets Out Alive」にしろバラードナンバー「Right From The Start」にしろ、メロディはとてもキャッチーで親しみやすい。だけど、全体を覆う空気感はよりアダルトなものになったイメージが強いんです。

とはいえ、グラムロック時代のデヴィッド・ボウイを彷彿とさせる「Rip It Up」、独特のグルーヴ感を持つミドルチューン「Heartbreak Hurricane」、地を這うようなベースラインとシャッフル気味のリズムが気持ち良い「In Another Life」、力強いビートとTHUNDERらしいギターリフのコンビネーションがクールな「The Enemy Inside」のように印象的な楽曲も多く、簡単に「枯れた」とか「AOR調になった」という言葉では片づけられない魅力もたっぷり詰め込まれています。

確かに『WONDER DAYS』のような即効性は弱めかもしれない。だけど、聴けば聴き込んだだけ味わいが増す。思えば中期以降のTHUNDERのアルバムってそういう作品が多くなかったでしたっけ。そういう意味では、本作ではいろんな経験を得た彼らが『WONDER DAYS』という何度目かのデビュー作を経てたどり着いた、等身大の1枚なのかもしれません。

人によってはそれを退屈と呼ぶかもしれない。しかし、退屈な曲なんてこれっぽっちもない。聴けば聴くほどボディブローのように効いてくる、そんな“地味にスゴイ”アルバムだと思います。

なお、本作もボーナスディスクを追加した特殊仕様を多数用意。海外盤と共通なのは、昨年行われた数百人規模でのレアライブを収めた2枚組アルバム『LIVE AT THE 100 CLUB』が付属した3枚組仕様が用意されていること。ここに日本盤のみ、アルバム未収録の新曲4曲入りEP『BROKEN MIRROR』付き4枚組(!)仕様も存在。とりあえず『LIVE AT THE 100 CLUB』は必聴盤ですので、悪いことはいいません、ちょっとでも興味があるなら3枚組仕様もしくは4枚組仕様の購入をオススメします。

※追記
最新のUKアルバムチャートにて、『RIP IT UP』が初登場3位にランクイン。前作『WONDER DAYS』を超えたのはもちろんのこと、1992年の2ndアルバム『LAUGHIN' ON JUDGEMENT DAY』の2位に次ぐ快挙を成し遂げました。



▼THUNDER『RIP IT UP』
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投稿: 2017 02 24 12:00 午前 [2017年の作品, Thunder] | 固定リンク

2017/02/21

FIREWIND『IMMORTALS』(2017)

2009年からオジー・オズボーンの片腕としてツアーやアルバム『SCREAM』(2010年)に参加しているガスG.。彼のメインバンドとなるのがこのFIREWINDであることは以前から知っていましたし、『SCREAM』を聴く前はいわゆる“クサメタル”系ギタリストがオジーと組むことに違和感を覚えたのですが、いざ完成したアルバムはそれまでの流れを汲む、非常にオジーらしいモダンな内容でした。

そういうこともあって、一度このFIREWINDも聴いてみなくちゃと思っていたものの、なかなか手が伸びず。気づけば2017年を迎えていたわけですが、このたび無事タイミングが合い(笑)、FIREWINDの通算8枚目のオリジナルアルバム『IMMORTALS』を聴くことができました。

オリジナル作品としては2012年の『FEW AGAINST MANY』から5年ぶりの新作となりますが、今作ではボーカルが新加入のヘニング・バッセに変更。初めて聴くので、あえて過去と比較することなく楽しめるかなと思ったのですが……今回の新作って、コンセプトアルバムだったんですね。買ってから気づきました(笑)。

まぁ変な先入観を捨てて、いざアルバムを聴いたわけですが……オープニングの「Hands Of Time」の“王道クラシカル”感にいきなり当てられ早くもおなかいっぱいに(苦笑)。3曲目「Ode To Leonidas」のオープニングのセリフとか、4曲目「Back On The Throne」の仰々しいシンセイントロにハードルの高さを少しだけ感じましたが、いざ曲が始まると普通にカッコいい。あれ、意外とイケるじゃん、自分。

正直、僕はネオクラシカルやクサメタルに苦手意識があったのですが、このアルバムに関しては思っていた以上にスルスル楽しめた。その一番の要因は、ボーカルとギターにかるのかなと思いました。この手のバンドにありがちな、線の細いハイトーンボイスではなく、適度にドスの効いた太い声はスラッシュ以降や昨今のラウドの流れを楽しむ自分にも親しみやすいし、なによりガスG.のギターが非常に面白い。クラシカルなプレイもあれば、オジーのアルバムで聴けたヘヴィなプレイもある。どうやら2015年に発表さいたソロアルバム『BRAND NEW REVOLUTION』はオジー寄りのヘヴィロック的作風だったようですが、両要素を巧みに使い分け、かつ適度に融合させることができるあたりに、本作の勝因があるのではないかと思っています。2分に満たない攻めのインストナンバー「Immortals」を聴けば、その考えはより強まるばかりです。

もちろんクサメタルファンにとっては最高の1枚でしょうが、普段ラウドロックばかりを聴いてるような自分にも十分楽しめるアルバムなのは間違いなし。この手のサウンドもたまに聴くと、本当に新鮮ですね。



▼FIREWIND『IMMORTALS』
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投稿: 2017 02 21 12:00 午前 [2017年の作品, Firewind] | 固定リンク

2017/01/25

ぼくのりりっくのぼうよみ『Noah's Ark』(2017)

2ndアルバムにしてこの圧倒感。アルバムの主役が現役大学1年生の10代とは思えないほどの深みを持つ……いや、10代という若さがあるからこそ生み出せる深みと言ったほうが正解なのかもしれない。新年早々こんな衝撃と感慨深さを与えてくれる1枚の誕生に、彼の倍以上生きているオッサンは「2017年、始まったな」と思わずにはいられないよ。

「ノアの方舟」と題された今作は“救い”をテーマに進行する、非常にトータル性の高い作品集。単なるヒップホップの枠には収まりきらない、若い世代がリアルに感じる雑多なサウンドに、洪水のように溢れ出るものの非常に詩的で、一言一句がボディブロウのように効いてくるリリックが乗ることで生まれる不思議な高揚感と刹那感(と、ほんのちょっとの絶望感)に満ち溢れています。

もし今自分が彼と同世代だったら、きっとこの世界観に己を投影しすぎてこじらしてしまうんじゃないか……こんなに最高なアルバムと共生できる現代の10代が、ただただ羨ましい。今後日本の音楽を語る際に「『Noah's Ark』以降」と表現されるべき、テン年代の重要作品と断言させてください。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼ぼくのりりっくのぼうよみ『Noah's Ark』
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投稿: 2017 01 25 12:00 午後 [2017年の作品, ぼくのりりっくのぼうよみ] | 固定リンク

2017/01/21

HALESTORM『REANIMATE 3.0: THE COVERS EP』(2017)

紅一点のリジー・ヘイル(Vo)率いる4人組ハードロックバンド、HALESTORMの6曲入りカバーEP(ミニアルバム)第3弾。HALESTORMはこれまでに2011年、2013年にそれぞれ『REANIMATE: THE COVERS EP』『REANIMATE 2.0: THE COVERS EP』と題したカバーEPを発表しており、第1弾ではSKID ROW、LADY GAGA、TEMPLE OF THE DOG、GUNS N' ROSES、HEART、THE BEATLESを、第2弾ではJUDAS PRIEST、DAFT PUNK、AC/DC、パット・ベネター、FLEETWOOD MAC、MARILYN MANSONを取り上げてきました。

さて、今回はどんな選曲なのでしょう。

01. Still Of The Night [原曲:WHITESNAKE(1987)]

02. Damn I Wish I Was Your Lover [原曲:ソフィーB.ホーキンス(1992)]

03. I Hate Myself For Loving You [原曲:JOAN JETT AND THE BLACKHERATS(1988)]

04. Heathens [原曲:Twenty One Pilots(2016)]

05. Fell On Black Day [原曲:SOUNDGARDEN(1994)]

06. Ride The Lightning [原曲:METALLICA(1984)]

今回も非常にバラエティに富んだ選曲です。毎回思っていたのですが、ピックアップする楽曲が80年代後半〜90年代前半に集中しているんですよね。これはリジー・ヘイル含め、メンバーの多くがこの時代に一番ロックに夢中になっていたということなんでしょうかね。自分もちょうど10代後半から20代前半にかけてのタイミングで、そのどれもがドンピシャだったりするので興味深く聴かせてもらってます。

毎回そうなのですが、今回も原曲アレンジに忠実なカバーが実践されています。1曲目「Still Of The Night」からまんまですもんね。ただ、この曲の場合7分近くある壮大さが4分半とコンパクトに凝縮されており、オープニングがいきなり歌から始まったり、中盤のシンフォニックなインストパートが省かれていたりと、WHITESNAKEファンからしたら「おいおい……(苦笑)」と突っ込みたくなる解釈。本作で唯一いただけないポイントでした。

ただ、それ以外はどれも楽しく聴けたし、サビのリズムに変化をつけた「I Hate Myself For Loving You」やTwenty One Pilotsを女性が歌うとこうなるのかっていう「Heathens」、歌も演奏もまんまな「Fell On Black Days」「Ride The Lightning」あたりはもはやニヤニヤして聴いてしまいました。

本作で唯一、大胆な解釈でカバーされているのがソフィーB.ホーキンスの「Damn I Wish I Was Your Lover」。原曲は打ち込み&浮遊感のあるシンセがメインなのですが、原曲の持つキャッチーなメロディを生かしつつ完全にギターリフ中心のハードロックへと昇華させているのはさすがだと思います。個人的には本作の中でもベストテイクだと断言させていただきます。

オリジナルアルバムまでのツナギとして制作されるこのカバーEPシリーズ、今後も忘れた頃にまた発表してほしいものです。その前に……次は『INTO THE WILD LIFE』(2015年)に続く4thアルバムですね。こちらも楽しみに待ちたいと思います。



▼HALESTORM『REANIMATE 3.0: THE COVERS EP』
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投稿: 2017 01 21 12:00 午前 [2017年の作品, Halestorm] | 固定リンク

2017/01/11

ONE OK ROCK『Ambitions』(2017)

初のオリコン1位を獲得した前作『35xxxv』から約2年ぶりに発表される、通算8枚目のオリジナルアルバム。リードトラックとして配信リリース&MVが公開された「Taking Off」や「Always coming back」を聴いて、前作で片鱗が見え隠れした「海外で流行している現在進行形のエモやポストハードコア」をより極めた作品と予想したファンも多いことでしょうが、その一言では片付けられない強烈な1枚に仕上がっています。

ミドルテンポの楽曲が軸で、先に挙げた要素を随所に織り交ぜつつも、聴けば「これぞワンオク!」と納得のいくものばかり。一聴するとどこかひんやりとした印象を受ける作風ながらも、その芯にはメラメラと燃える青白い炎が見え隠れする、聴くたびに新たな発見があるスルメ的魅力も備わっています。アヴリル・ラヴィーン(「Listen feat. Avril Lavigne」)や5 SECONDS OF SUMMER(「Take what you want feat. 5 Seconds Of Summer」)のゲスト参加も話題になるでしょうが、それ以上に1曲1曲の持つ熱量とエモさが勝る、今後のワンオクにとって間違いなく分岐点となる記念碑的作品集。個人的にはこの変化/進化を前向きに捉え、支持したいと思います。

なお、本作は海外向けにオール英語詞&一部楽曲差し替え対応したインターナショナル盤も同時制作&リリース。ALL TIME LAWのアレックスをフィーチャーした「Jaded feat. Alex Gaskarth」や、「Hard To Love」「American Girls」といった楽曲は本作のみで聴くことができるので、購入の際にはご注意を。

※このレビューは本作リリース時、『激ロック』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼ONE OK ROCK『Ambitions』
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投稿: 2017 01 11 12:00 午後 [2017年の作品, ONE OK ROCK] | 固定リンク