THE BEATLES『THE BEATLES (THE WHITE ALBUM)』(1968)
1968年11月に発表された、THE BEATLES通算10作目のオリジナルアルバム(のちに公式作品化された『MAGICAL MYSTERY TOUR』を除くと9枚目)。彼らにとって初の2枚組作品で、全30曲が93分にわたり収録されています。また、ジョン・レノン&ポール・マッカートニーの楽曲のみならず、ジョージ・ハリスンが4曲、リンゴ・スターも1曲書き下ろしており、特にレノン&マッカートニーとハリスンノ個性が色濃く表れた意欲作、いや、異色作に仕上がっています。
「ホワイト・アルバム」の愛称で知られる本作は、オリジナルアルバムでいうと前作『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』の次の作品ということで、タイミング的にはライブ活動を停止してスタジオワークに没頭していた時期。前作はロックバンドのフォーマットにこだわらない、サイケデリック感を強調したポップアルバムでしたが、今作ではロックバンド感が復活。冒頭の「Back In The U.S.S.R.」や「Birthday」はライブを想定したかのようなドライブ感を味わえます。かと思えば、「Happiness Is A Warm Gun」みたいに1曲の中に複数の楽曲が存在するかのようなアレンジのロックチューンがあったり、「Helter Skelter」のようなハードロックまで存在する。もう、本当にやりたい放題。才能の爆発ってこういうことを言うんでしょうかね。
(本作収録の「Revolution 1」とはバージョンが異なりますが、同時期の作品ということで)
もちろん、ポップな楽曲も健在で、ポールによる「Ob-La-Di,Ob-La-Da」「Blackbird」、ジョンによる「Julia」みたいな楽曲もある。かと思うと、完全なるコラージュナンバー「Revolution 9」があったりで、もう支離滅裂。アルバムとしての構成がどこまで生かされているのか、怪しいったらありゃしない。
そんな中で、個性を一気に開花させているのがジョージ。エリック・クラプトンをリードギターに迎えた「While My Guitar Gently Weeps」や美しいアコースティック感とサイケデリックさが混在する「Long, Long, Long」など、オリジナリティあふれる楽曲を多数用意し、レノン&マッカートニーの暴走に追いつこうとしています。
いわゆるシングルヒットナンバーは皆無だし(国によっては「Ob-La-Di,Ob-La-Da」と「While My Guitar Gently Weeps」が両A面でシングルカットされたようですが)、全部を理解しようとすると頭が混乱するけど、実は過去50〜60年のロック史/ポップミュージック史のすべてがここに凝縮されているんじゃないか、ここに青写真が存在するんじゃないかと思うわけで。誰も彼もが好き放題すればこれができるってわけではないし、もちろん狙って作れるものでもない。あの時代に、あの4人の個性が爆発したからこそ奇跡的に生まれた。そんないびつな作品集なんじゃないでしょうか。
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