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2018年2月24日 (土)

NINE INCH NAILS『THE DOWNWARD SPIRAL』(1994)

1994年3月(US/日本では4月)にリリースされた、NINE INCH NAILSの2ndフルアルバム。デビュー作『PRETTY HATE MACHINE』(1989年)から4年半ぶりとなりますが、その間には所属レーベルとの裁判の長期化などが影響し、EP『BROKEN』(1992年)やリミックスEP『FIXED』(1992年)を発表するにとどまりました。

満を持してリリースされた『THE DOWNWARD SPIRAL』は、トレント・レズナーという男の狂気と破壊性、耽美さと変態性、そして死生観などが濃厚に反映された強烈な1枚に仕上がっています。

前作同様にデジタルビートを軸にしつつも、『BROKEN』で得たハードロック的手法も至るところに多用されており、オープニング曲「Mr. Self Destruct」や「Heresy」のディストーションギターはまさにその応用編と呼ぶにふさわしい出来。かと思えば「Piggy」のように少ない音数で狂気を表現したり、疾走感のある変拍子ビートで突き進む「March Of The Pigs」、変態性を前面に打ち出したミディアムテンポのダンスチューン「Closer」と、とにかく個性的な楽曲が満載です。冒頭5曲を聴くだけで、NINおよびトレントが『PRETTY HATE MACHINE』を起点にかなり遠くまでたどり着いたことが伺えるはずです。

もちろん、その後もヒップホップとインダストリアルビートを掛け合わせた「Ruiner」、アコースティックの要素を効果的に用いたインダストリアルメタル「The Becoming」、そして「A Warm Place」からエンディングへと突き進むダウナーで内省的な構成……最後にたどり着く「Hurt」。最後の一行、“I would find a way”とともに爆発するギターとバンドサウンド。破壊と再生。終末と誕生。いろんなことをイメージさせるこの終盤の流れは、ただただ圧巻の一言です。

正直、発売当時このアルバムを初めて聴いたとき、一度通して聴いたあとしばらく手を伸ばすことができませんでした。それくらい衝撃的で、あとからボディブローのようにジワジワ効いてくる内容なのです。特に、日本盤で対訳を読みながら聴いたりした日には……いろいろ思いを馳せてしまい、反芻〜消化するまでにかなりの時間を要することになると思います。

そのくらい情報量が多いし、濃密だし、思いや念がびっしり詰まった65分。移動中や“ながら”聴きなんかではなく、家でスピーカーの前に座って大音量で、あるいは音楽の邪魔になるものを排除した状態で、ヘッドフォンにてこのアルバムと向き合ってほしいと思います。

本当、なんて神がかっているんだろう……この時点でもNINの来日は実現していません(だって初来日は2000年に入ってからですから)。もしこのタイミングでの来日が実現していたら……日本のロックの、いろんなものが変わったのかもしれませんね。まあ、今さらの「たら・れば」話でしかありませんが。

個人的にはRADIOHEAD『OK COMPUTER』(1997年)と同じぐらい、20代の自分に大きな影響を及ぼした大切なアルバムです。



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