SLAYER『HELL AWAITS』(1985)
1985年4月(US)に発表されたSLAYERの2ndアルバム。デビューアルバム『SHOW NO MERCY』(1983年)で衝撃のデビューを飾った彼らでしたが、リリース直後は大きなリアクションを得られることなく、一部のマニアの間で高評価を得るにとどまりました。
が、そんな彼らの評判を高めたのが1984年初夏に発表された3曲入りEP『HAUNTING THE CHAPEL』。同作に収録された「Chemical Warfare」は海を渡りヨーロッパで“世界最速”などと評されたことで、その名が広まっていきます。
その追い風に乗ろうと制作された2ndアルバム。デビューアルバムはどちらかというと3分分前後のシンプルなメタルチューンが中心でしたが、6分におよぶ「Chemical Warfare」で作り上げたスタイルを踏襲した本作は全7曲で37分という大作志向。7曲中3曲が6分超え、オープニングトラック「Hell Awaits」からしてイントロが非常に長く、歌に入るまでの展開が非常に練り込まれたアレンジなのです。
続く「Kill Again」も「At Dawn They Sleep」も同様のスタイルで、このアレンジは同時期にスラッシュメタルシーンを牽引したMETALLICAの2ndアルバム『RIDE THE LIGHTNING』(1984年)にも通ずるものがあります。初期衝動的な1stアルバムからテクニカルな2ndアルバムへと移行する成長過程も、この2組は非常に似てるんですよね(続く3rdアルバムで決定打を生み出すという点においても)。
トム・アラヤ(Vo, B)のヒステリックかつどこかサタニックなボーカルスタイルは本作でも健在。ただ、前作よりは若干抑えめかな。個人的には「At Dawn They Sleep」が大好きな1曲で、この曲のボーカル、ギターやベースのユニゾンプレイ、そしてデイヴ・ロンバード(Dr)のドラミング……特に終盤、4分30秒あたりから盛り上がり始め、5分58秒あたりから始まるツーバス連打のソロパートへの流れは本当に鳥肌モノだなと思うわけです。これが、次作『REIGN IN BLOOD』(1986年)の「Angel Of Death」へと続いていくわけですね。
サウンドプロダクションが『REIGN IN BLOOD』以降と比べて貧弱だったり、ミックスのバランスもイマイチだったり、ジャケットもアレだったり(笑)とインディーズならではの難点はあるものの、楽曲自体は我々が知るSLAYERのパブリックイメージにより近づいることから、80年代後半以降の彼らの雛形的作品だったと言えなくもないのかな。ただ、ギターリフのカッコよさ、おどろおどろしさ、えげつなさに関しては80年代の作品中でも随一じゃないかと確信しております。
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