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2018年2月28日 (水)

2018年2月のお仕事

2018年2月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※2月28日更新)


[WEB] 2月28日、「BUBKA」オフィシャルサイトにて「渡邉理佐×小林由依 静かなる美グラビア&インタビュー『Silent Beauty 欅坂46』」冒頭パートが公開されました。

[紙] 2月28日発売「BUBKA」2018年4月号にて、欅坂46小林由依×渡邉理佐対談、欅坂46佐藤詩織インタビュー、けやき坂46柿崎芽実×佐々木美玲対談、伊藤万理華インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 2月26日、「Red Bull Japan」オフィシャルサイトにてコラム「“今、海外にもっとも近い存在”サバプロの魅力とは?」が公開されました。

[紙] 2月23日発売「BRODY」2018年4月号にて、乃木坂46高山一実×若月佑美対談、山下美月×与田祐希対談、伊藤万理華インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 2月23日、「リアルサウンド」にてcoldrainのライブ評「coldrain、バンドのさらなる未来を期待させる頼もしい姿 武者修行の成果発揮した武道館公演を見て」が公開されました。

[紙] 2月21日発売「TV Bros.」2018年2月24日号にて、Nulbarich『H.O.T』、MICHAEL SCHENKER FEST『RESURRECTION』アルバムレビューを担当・執筆しました。

[WEB] 2月13日、「リアルサウンド」にてけやき坂46のライブ評「けやき坂46は“無謀な挑戦”に打ち勝った 西廣智一が武道館3Daysを分析」が公開されました。

[WEB] 2月9日、「リアルサウンド」にてLittle Glee Monsterのライブ評「Little Glee Monsterが横アリ公演で見せた、ポジティブな空気に満ちたステージ」が公開されました。

[紙] 2月8日発売「ヘドバン Vol.17」にて「世界がうらやむ/世界に誇れるニッポンのメタル・アルバム100選」、LINKIN PARK『One More Light Live』、ROYAL HUNT『Cast In Stone』、SAXON『THUNDERBOLT』の各ディスクレビューを執筆しました。(Amazon

[紙] 2月7日発売「TV Bros.」2018年2月10日号にて、BLACK LABEL SOCIETY『GRIMMEST HITS』アルバムレビューを担当・執筆しました。

[WEB] 2月6日、「リアルサウンド」にてましのみのインタビュー「ましのみが語る、音楽で生きていくことへの決意 「私にしかできないことをやらないと意味がない」」が公開されました。

[WEB] 2月5日、「リアルサウンド」にてNGT48のライブ評「NGT48の未来は青空のようだーーTDC単独コンサートを振り返る」が公開されました。

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また、1月に当サイトで紹介したアルバム(Spotifyで配信している作品のみ)から各1〜2曲程度ピックアップして、40曲程度のプレイリストを制作しました。題して『TMQ-WEB Radio 1801号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。


投稿: 2018 02 28 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

MICHAEL SCHENKER FEST『LIVE: TOKYO INTERNATIONAL FORUM HALL A』(2017)

オリジナルアルバム『RESURRECTION』をリリースするマイケル・シェンカーの最新プロジェクトMICHAEL SCHENKER FEST。このアルバム制作のきっかけとなったのが、2016年に行われたMICHAEL SCHENKER FEST名義でのライブです。初夏にヨーロッパのフェスへ出演するのを機にスタートしたこのプロジェクトは、そのまま8月に日本上陸。僕が来日を知った頃にはすでにチケットはソールドアウトしており、残念ながらこのときは観ることができませんでした。が、翌2017年10月には『LOUD PARK 17』の2日目ヘッドライナーとして再びMICHAEL SCHENKER FESTとして来日。このときは僕も無事観ることができ、前回とは異なるセットリストで楽しませてくれました。

今回紹介するのは、2016年8月24日の東京国際フォーラム ホールA公演の模様を完全収録したもの。国内盤は2枚組CDとDVD&Blu-ray、海外盤は2CD+DVDのセットと2CD単品、Blu-ray単品がそれぞれ発売されています。Blu-rayのクリアな映像で楽しめるのはありがたいですが、僕は安価で音源と映像が楽しめる海外盤2CD+DVDのセットを購入しました。

言うまでもなく、MICHAEL SCHENKER FESTはゲイリー・バーデン、グラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーというMSG(MICHAEL SCHENKER GROUPおよびMcAULEY SCHENKER GROUP)に在籍した3人のシンガーが一堂に会して、それぞれが在籍した期間の楽曲を披露していくというスタイル(デレク・セント・ホルムスやレイ・ケネディといった人たちはこの際無視しておきましょう)。2016年も2017年も同様の形で、その登場順は在籍順(ゲイリー→グラハム→ロビン)となっており、在籍期間や制作アルバムの枚数などにより披露する楽曲数も異なります(当然のようにゲイリーが一番多く、1枚のみのグラハムは3曲のみ。とはいえロビンも自身の楽曲は3曲のみで、そこにUFOの楽曲を歌うことで歌唱曲数を増やしています)。

バックを支えるのはクリス・グレン(B)、テッド・マッケンナ(Dr)のMICHAEL SCHENKER GROUP組と、スティーヴ・マン(G, Key)というMcAULEY SCHENKER GROUP組。下手にポール・レイモンドやサイモン・フィリップスに声をかけないところがさすがです。

さて、長々と解説を書いてきましたが……これまで熱心にMSGを聴いてこなかった僕でも知っている曲ばかりだし、各ボーカリストもそれぞれ味わい深さ(特にゲイリー)や圧倒的な存在感(特にグラハム)や意外な現役感(主にロビン)をアピールする素晴らしい歌唱を聴かせてくれる。が、何よりすごいのがマイケル・シェンカーのギターでしょう。『LOUD PARK 17』のレポートにも書きましたが、とにかくこの人のギタープレイは今がベストじゃないかと思っていしまうほど生き生きとしている。プレイスタイル的にも音色的にも非常にバランスが良く、MSG初期の楽曲と「Love Is Not A Game」みたいな80年代後期のポップメタルが並んでも、ギタープレイ的には違和感を受けることは皆無。冒頭のインストナンバー「Into The Arena」からして圧巻だし、「Captain Nemo」や「Save Yourself」のソロワークも決してダレることなく、適度な緊張感が備わっている。だからこそ、ラストのUFO「Doctor Doctor」の泣きのフレーズとは相反して、シンガー衆(主にゲイリーとグラハム)のお気楽な歌いっぷりの落差に苦笑してしまうのですが。まあ自分の持ち曲じゃねえし知らねーよ、ってとこなんでしょうか。その一方で、一生懸命歌おうとするロビンの献身ぶりは涙なしで観ること(聴くこと)ができません(若干誇張してますが)。

Spotifyでは配信されていない本作の音源ですが、Apple Musicでは無事聴くことができるので、まだ買おうか迷っている人はぜひ一度チェックしてみてください。それで気に入ったら、ぜひ映像版にも手を出してみることをオススメします。オールドファンはもちろんのこと、若年層にもこの素晴らしいギタリストのことを2018年というこのタイミングにしっかり知ってほしいので。

そして、本作が気に入ったら迷わずオリジナルアルバム『RESURRECTION』のチェックもお忘れなく。ひと足先に聴かせてもらいましたが、“らしさ”満載の素晴らしい出来ですので。このアルバムを提げて、ぜひ3年連続でFESTでの来日にも期待したいですね。

ということで、明日は続いてMICHAEL SCHENKER FESTのオリジナルアルバム『RESURRECTION』について触れたいと思いますので、お楽しみに。



▼MICHAEL SCHENKER FEST『LIVE: TOKYO INTERNATIONAL FORUM HALL A』
(amazon:国内盤2CD / 国内盤DVD / 国内盤Blu-ray / 海外盤2CD / 海外盤2CD+DVD / 海外盤Blu-ray / MP3

投稿: 2018 02 28 12:00 午前 [2017年の作品, Graham Bonnet, McAuley Schenker Group, Michael Schenker, Michael Schenker Fest, Michael Schenker Group] | 固定リンク

2018年2月27日 (火)

ANTHRAX『PERSISTENCE OF TIME』(1990)

1990年8月に発表された、ANTHRAX通算5作目のスタジオアルバム。1987年発表の3rdアルバム『AMONG THE LIVING』で疾走感があり複雑にリフが絡み合う大作志向へとシフトチェンジし、その路線を推し進めた4thアルバム『STATE OF EUPHORIA』(1988年)でチャート的にも成功(全米30位、全英12位)を収めた彼ら。しかし、『STATE OF EUPHORIA』は楽曲の出来にムラがあったことも否めず、今でもライブで演奏される楽曲となるとTRUSTのカバー曲「Antisocial」くらいという。意外と印象が薄い1枚なんですよね。

そんな評価を受けてかどうかわかりませんが、続く『PERSISTENCE OF TIME』では外野の酷評を払拭するかのような、ひたすらヘヴィで重苦しいヘヴィメタルアルバムを作り上げるわけです。

全11曲(日本盤ボーナストラックを除く)で約60分という長尺の作品で、冒頭4曲すべてが7分前後の楽曲という非常に冒険的な内容なのですが、その4曲がとにかく素晴らしい。初期のようなファストナンバー皆無で、重さにこだわったアレンジと音作りが施されているのに、不思議と疾走感を感じさせる「Time」と「Blood」というオープニング2曲。時計が秒針を刻む音から始まる「Time」と、その秒針をバスドラの連打で表現したかのようなエンディングからそのまま「Blood」へとなだれ込む構成は、圧巻の一言です。

そこから、ひたすら重苦しい「Keep It In The Family」、緊張感の強い「In My World」と続くのですが、この息苦しさ、重苦しさがとにかく気持ちいい。どの曲も長尺なのに、長さを一切感じさせない工夫が施されたアレンジはさすがですし、何よりもドラムの音色とベースのゴリゴリ感、そしてギターのザクザクした質感、ときどきおどろおどろしさすら感じさせるジョーイ・ベラドナ(Vo)のボーカルと、すべてが完璧な状態で噛み合っている。まさに、ANTHRAXのベストワークと呼ぶにふさわしい内容ではないでしょうか。

もちろん、5曲目以降の楽曲も素晴らしいものばかり。狂ったように疾走する「Grindlock」も初期の彼らとはひと味違った作風だし、ダークでムーディーなインスト「Inro To Reality」から「Belly Of The Beast」へと続く組曲構成も最高。さらに、ジョー・ジャクソンの名曲をひたすらスラッシーにアレンジしたライブの定番曲「Got The Time」、クライマックスに向けてのたうちまわる「H8 Red」、ヘヴィなイントロからスピーディーな展開を見せる「One Man Stands」、ラストを飾るにふさわしいスピードナンバー「Discharge」と最後まで飽きさせない構成。時代がこういう重々しさを求めたというのもあると思いますが、『AMONG THE LIVING』で得た経験がベストな形で表現された傑作だと思っています。

初期のスラッシュメタル的側面を排除して、このヘヴィでグルーヴィーな作風をよりモダンな方向へとシフトさせたのが、続く『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)だと考えると、その進化も非常に納得がいくし、そういう方向を選んだ彼らの選択も間違いではないと思えてくる……そんな1枚ではないでしょうか。



▼ANTHRAX『PERSISTENCE OF TIME』
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投稿: 2018 02 27 12:00 午前 [1990年の作品, Anthrax] | 固定リンク

2018年2月26日 (月)

SLAYER『HELL AWAITS』(1985)

1985年4月(US)に発表されたSLAYERの2ndアルバム。デビューアルバム『SHOW NO MERCY』(1983年)で衝撃のデビューを飾った彼らでしたが、リリース直後は大きなリアクションを得られることなく、一部のマニアの間で高評価を得るにとどまりました。

が、そんな彼らの評判を高めたのが1984年初夏に発表された3曲入りEP『HAUNTING THE CHAPEL』。同作に収録された「Chemical Warfare」は海を渡りヨーロッパで“世界最速”などと評されたことで、その名が広まっていきます。

その追い風に乗ろうと制作された2ndアルバム。デビューアルバムはどちらかというと3分分前後のシンプルなメタルチューンが中心でしたが、6分におよぶ「Chemical Warfare」で作り上げたスタイルを踏襲した本作は全7曲で37分という大作志向。7曲中3曲が6分超え、オープニングトラック「Hell Awaits」からしてイントロが非常に長く、歌に入るまでの展開が非常に練り込まれたアレンジなのです。

続く「Kill Again」も「At Dawn They Sleep」も同様のスタイルで、このアレンジは同時期にスラッシュメタルシーンを牽引したMETALLICAの2ndアルバム『RIDE THE LIGHTNING』(1984年)にも通ずるものがあります。初期衝動的な1stアルバムからテクニカルな2ndアルバムへと移行する成長過程も、この2組は非常に似てるんですよね(続く3rdアルバムで決定打を生み出すという点においても)。

トム・アラヤ(Vo, B)のヒステリックかつどこかサタニックなボーカルスタイルは本作でも健在。ただ、前作よりは若干抑えめかな。個人的には「At Dawn They Sleep」が大好きな1曲で、この曲のボーカル、ギターやベースのユニゾンプレイ、そしてデイヴ・ロンバード(Dr)のドラミング……特に終盤、4分30秒あたりから盛り上がり始め、5分58秒あたりから始まるツーバス連打のソロパートへの流れは本当に鳥肌モノだなと思うわけです。これが、次作『REIGN IN BLOOD』(1986年)の「Angel Of Death」へと続いていくわけですね。

サウンドプロダクションが『REIGN IN BLOOD』以降と比べて貧弱だったり、ミックスのバランスもイマイチだったり、ジャケットもアレだったり(笑)とインディーズならではの難点はあるものの、楽曲自体は我々が知るSLAYERのパブリックイメージにより近づいることから、80年代後半以降の彼らの雛形的作品だったと言えなくもないのかな。ただ、ギターリフのカッコよさ、おどろおどろしさ、えげつなさに関しては80年代の作品中でも随一じゃないかと確信しております。



▼SLAYER『HELL AWAITS』
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投稿: 2018 02 26 12:00 午前 [1985年の作品, Slayer] | 固定リンク

2018年2月25日 (日)

DEPECHE MODE『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』(1993)

1993年春にリリースされた、DEPECHE MODE通算8枚目のスタジオアルバム。前作『VIOLATOR』(1990年)が全英2位、全米7位を記録し、特にアメリカでは「Enjoy The Silence」(全米8位)や「Policy Of Truth」(全米15位)などのシングルヒットも手伝って、アルバムは300万枚を超える最大のヒット作となりました。

“大衆のための音楽”と題しながら非常にマニアックな世界観を提示した『MUSIC FOR THE MASSES』(1987年)から『VIOLATOR』への流れは非常に完璧なものだったと思いますし、そこからDEPECHE MODEがどこへ進んでいくのか、誰もが気にしていたと思います。そんな期待を背に、3年ぶりに完成させたアルバムはどこか宗教じみた世界観を持つ、非常にダークな作風でした。

オープニングを飾る「I Feel You」はタイミング的にも、オルタナティヴロックやグランジを彷彿とさせるダークなロックをエレクトロスタイルで表現したもので、リリース当時は「ここまでやるか!」と正直驚いたものです。特に、デイヴ・ガーン(Vo)が同曲のMVで見せたそのヴィジュアルの変化(ロングヘアーに無精髭)と合間って、よりそういった印象が強まったんじゃないでしょうか。

ところが、そういった印象の楽曲はこれ1曲のみ。以降はエレクトロサウンドと生音を適度にミックスした、彼ららしいサウンドが……いや、らしくない部分もあるけど……展開されています。が、先に触れたように本作は全体的にどこか宗教じみた空気が感じられる。それはゴスペルテイストの「Condemnation」、タイトルもまんまな「Judas」における『THE JOSHUA TREE』期のU2みたいな世界観、ストリングスを大々的にフィーチャーした「One Caress」などによる影響が大きいのかもしれません。

実際、歌詞にもそういった宗教観などが反映されており、そのへんも本作の重々しさを作り出す要因につながっているのでしょう。ただ、宗教的な雰囲気とはいうものの、それは敬虔さとは異なり、どちらかというと禁忌を侵すほうが近いのかなと。デイヴのロックスター然とした退廃的なヴィジュアルも、宗教的な意味で“禁忌を侵す”のと同時に、従来のDEPECHE MODEのイメージを壊すという意味で“禁忌を侵す”のかもしれない。そういう危うさをはらんだ、あのタイミングにしか生み出せなかった奇跡の1枚だと思います。従来のファンからは賛否両論あるようですが、個人的には大好きな作品のひとつです。

とはいえ、本作は初めて全英&全米1位を獲得。セールス的には前作には及ばなかったものの、それでもアメリカでは100万枚を超えるセールスを記録し、「I Feel You」(全英8位、全米37位)、「Walking In My Shoes」(全英14位、全米69位)、「Condemnation」(全英9位)、「In Your Room」(全英8位)とシングルヒットも多数生まれました。

本作で禁忌を侵したことがきっかけなのかはわかりませんが、バンドはアラン・ワイルダー(Key, Dr)の脱退、そしてデイヴの二度にわたる自殺未遂と存続の危機を迎えることになります。



▼DEPECHE MODE『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』
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投稿: 2018 02 25 12:00 午前 [1993年の作品, Depeche Mode] | 固定リンク

2018年2月24日 (土)

NINE INCH NAILS『THE DOWNWARD SPIRAL』(1994)

1994年3月(US/日本では4月)にリリースされた、NINE INCH NAILSの2ndフルアルバム。デビュー作『PRETTY HATE MACHINE』(1989年)から4年半ぶりとなりますが、その間には所属レーベルとの裁判の長期化などが影響し、EP『BROKEN』(1992年)やリミックスEP『FIXED』(1992年)を発表するにとどまりました。

満を持してリリースされた『THE DOWNWARD SPIRAL』は、トレント・レズナーという男の狂気と破壊性、耽美さと変態性、そして死生観などが濃厚に反映された強烈な1枚に仕上がっています。

前作同様にデジタルビートを軸にしつつも、『BROKEN』で得たハードロック的手法も至るところに多用されており、オープニング曲「Mr. Self Destruct」や「Heresy」のディストーションギターはまさにその応用編と呼ぶにふさわしい出来。かと思えば「Piggy」のように少ない音数で狂気を表現したり、疾走感のある変拍子ビートで突き進む「March Of The Pigs」、変態性を前面に打ち出したミディアムテンポのダンスチューン「Closer」と、とにかく個性的な楽曲が満載です。冒頭5曲を聴くだけで、NINおよびトレントが『PRETTY HATE MACHINE』を起点にかなり遠くまでたどり着いたことが伺えるはずです。

もちろん、その後もヒップホップとインダストリアルビートを掛け合わせた「Ruiner」、アコースティックの要素を効果的に用いたインダストリアルメタル「The Becoming」、そして「A Warm Place」からエンディングへと突き進むダウナーで内省的な構成……最後にたどり着く「Hurt」。最後の一行、“I would find a way”とともに爆発するギターとバンドサウンド。破壊と再生。終末と誕生。いろんなことをイメージさせるこの終盤の流れは、ただただ圧巻の一言です。

正直、発売当時このアルバムを初めて聴いたとき、一度通して聴いたあとしばらく手を伸ばすことができませんでした。それくらい衝撃的で、あとからボディブローのようにジワジワ効いてくる内容なのです。特に、日本盤で対訳を読みながら聴いたりした日には……いろいろ思いを馳せてしまい、反芻〜消化するまでにかなりの時間を要することになると思います。

そのくらい情報量が多いし、濃密だし、思いや念がびっしり詰まった65分。移動中や“ながら”聴きなんかではなく、家でスピーカーの前に座って大音量で、あるいは音楽の邪魔になるものを排除した状態で、ヘッドフォンにてこのアルバムと向き合ってほしいと思います。

本当、なんて神がかっているんだろう……この時点でもNINの来日は実現していません(だって初来日は2000年に入ってからですから)。もしこのタイミングでの来日が実現していたら……日本のロックの、いろんなものが変わったのかもしれませんね。まあ、今さらの「たら・れば」話でしかありませんが。

個人的にはRADIOHEAD『OK COMPUTER』(1997年)と同じぐらい、20代の自分に大きな影響を及ぼした大切なアルバムです。



▼NINE INCH NAILS『THE DOWNWARD SPIRAL』
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投稿: 2018 02 24 12:00 午前 [1994年の作品, Nine Inch Nails] | 固定リンク

2018年2月23日 (金)

LED ZEPPELIN『LED ZEPPELIN III』(1970)

デビュー年の1969年にアルバムを2枚(1月に『LED ZEPPELIN』、10月に『LED ZEPPELIN II』)発表したLED ZEPPELINが、1970年10月(US)にリリースした通算3作目のスタジオアルバム。前作『LED ZEPPELIN II』でついに全米&全英No.1を獲得し、一躍トップバンドの仲間入りを果たした彼らが新たに放った本作では、従来のブルースベースのハードロックと、トラッドミュージックを基盤にしたアコースティックナンバーから成る異色の構成が展開されています。

本作の曲作りはほとんど電気が通ってないような場所で、ロバート・プラントジミー・ペイジが膝を突き合わせて行われたなんて話がありますが、それが嘘じゃないくらい前2作にはなかったタイプの楽曲が多数含まれています。もちろんアコースティックギターはこれまでのアルバムでも効果的に使用されていましたが、本作ではアコギが軸になる楽曲が半数を締めるのですから、“ハードロックバンドLED ZEPPELIN”を求めるリスナーは当時面食らったのではないでしょうか。

もちろん、アルバムオープニングには“これぞ!”と言いたくなる鉄壁のハードロックナンバー「Immigrant Song」がありますが、2曲目にいきなりストリングスをフィーチャーしたトラッド調のアコースティックナンバー「Friends」がくるとさすがに驚きますよね。サイケな色を残しつつ、そのままダイナミックなロックチューン「Celebration Day」へと続く流れはカッコいいですし、そこから前作の延長線上にある長尺のブルースロック「Since I've Been Loving You」、ヘヴィなリズムが気持ち良い「Out On The Tiles」とは流れ、アナログA面は終了します。ここまで聴いた限りでは、前作までの色を残しつつも少し新しいことをしたいんだろうな、ぐらいにしか感じないかもしれませんね。

で、問題となるのがアナログB面(M-6〜10)の5曲。ブルースシンガーのレッドベリーもカバーしたトラディショナルナンバー「Gallows Pole」、アコースティックバラード「Tangerine」、穏やかなミディアムナンバー「That's The Way」、軽やかなリズムと細かなギターフレーズが気持ち良いブルース「Bron-Y-Aur Stomp」、ブルースの名曲「Shake 'Em On Down」を独自にカバーした「Hats Off To [Roy] Harper」と、そのどれもがアコギ主体の楽曲なのです。ハードロック的な要素は皆無。今となってはツェッペリンがそういうバンドだと理解できているので、こういった作品があったとしても別に驚きはしませんが、もし本作のリリース当時に10代で、リアルタムで出会っていたら……きっとこのアルバム、「うわっ、糞アルバム作りやがって!」と拒否してたかもしれません。それくらい前2作のインパクトが強かったし、このバンドのパブリックイメージを固めてしまったんですよね。

でも、ここで思いっきり音楽性の幅を広げたことで、続く傑作『LED ZEPPELIN IV』(1971年)が完成するわけですが……それはまた次の機会に。

あ、今ですか? もちろん好きなアルバムですよ、彼らのアルバムの中で7番目ぐらいに(笑)。



▼LED ZEPPELIN『LED ZEPPELIN III』
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投稿: 2018 02 23 12:00 午前 [1970年の作品, Led Zeppelin] | 固定リンク

2018年2月22日 (木)

JEFF BECK GROUP『ROUGH AND READY』(1971)

ジェフ・ベックが1971年10月、JEFF BECK GROUP(以下、JBG)名義で発表したアルバム。60年代にロッド・スチュワート(Vo)、ロニー・ウッド(B)、ニッキー・ホプキンス(Key)らと同名義で『TRUTH』(1968年)、『BECK-OLA』(1969年)の2作を発表したベック先生ですが、今作ではメンバーを一新。ボブ・テンチ(Vo)、クライヴ・チャーマン(B)、マックス・ミドルトン(Key)、そしてコージー・パウエル(Dr)という布陣で制作した、第2期JBGのデビューアルバムとなります。

第1期JBGはロッド・スチュワートの派手なボーカルを軸に、のちのLED ZEPPELINにも通ずるブルースロック/ハードロックの手法が取られましたが、本作ではハードロック的な色合いは残しつつも、それ以上にソウルやフュージョンをイメージさせる濃厚なロックが展開されています。

オープニングを飾る「I Got The Feeling」のグルーヴ感からして、まずそれまでとは違うなと感じさせますよね。ベック御大のファンキーなカッティング、1音1音が重いながらもグルーヴィーなコージーのドラミング、そしてソウルフルなボブ・テンチの歌声。コード使いを含むアレンジもハードロックのそれとは一線を画するもので、スリリングさと気持ち良さが同時に体感できる。

そういえば、90年代後半にKULA SHAKERREEFのようなバンドが登場したとき、僕はこの曲を思い浮かべたんですよね。すごく通ずるものがあると思うのですが、いかがでしょうか。

もちろん、それ以降もヘヴィさとファンキーさ、そこにちょっとのおしゃれさを混ぜ合わせた独特のロックサウンドが展開されていくわけです。とにかくコージーのドラムが重い! ベック先生のギターはベック先生以外の何者でもないのですが、それでも本作ではボブ・テンチという個性的なシンガーの存在感も強く、良い意味で両者の存在感を示し合うバトルが繰り広げられているのかなと。その緊張感が、先に触れたスリリングさにもつながっていると思うんです。

久しぶりに聴いてみて、まずリリースから46年も経っている事実にまず驚かされるのですが(自分が生まれた年にこんなすごいアルバムが発表されていたとは)、それ以上に今聴いてもまったく古びていないという事実がすごいことなんじゃないかと。ベックのオリジナル曲はもちろんですが、マックス・ミドルトンによる大作「Max's Tune」の存在感もなかなかのもの。全編通して捨て曲なし、一瞬たりとも聴き逃せないこの傑作にまだ触れたことがないという人は、なんて幸せなんでしょう。だって、これからこのアルバムを通して至福の時間を味わえるのですから。



▼JEFF BECK GROUP『ROUGH AND READY』
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投稿: 2018 02 22 12:00 午前 [1971年の作品, Cozy Powell, Jeff Beck, Jeff Beck Group] | 固定リンク

2018年2月21日 (水)

BUDDY GUY『DAMN RIGHT, I'VE GOT THE BLUES』(1991)

昨日のジョニー・ウィンターと同時期によく聴いた1枚。そうですね、たぶんこの頃の僕は確実にブルースにかぶれていたんだと思います。そりゃそうか、1990年2月にROLLING STONES初来日公演に立会い、同年末にはエリック・クラプトンの武道館公演、翌1991年12月にはジョージ・ハリスン&クラプトンの東京ドーム公演に足を運んでいたのですから。あと、1990年にスティーヴィー・レイ・ヴォーンが亡くなったのを機に彼の音にも触れ始めたり、ロバート・ジョンソンの音源が初CD化されたからと手を伸ばしてみたり……若気の至りですね(苦笑)。

そんな中、1991年に発表されたバディ・ガイ通算7枚目のスタジオアルバム『DAMN RIGHT, I'VE GOT THE BLUES』にも手を出したわけですね、当時。THE STONE ROSESで知られるSilvertone Records移籍第1弾アルバムとなった本作は、初の全米トップ200入り(最高136位)を記録。翌年の第34回グラミー賞では最優秀コンテンポラリー・ブルース・アルバム賞を受賞し、自身初のグラミー受賞を果たしたそうです(Wiki情報によると)。

さて、このアルバムですが、とにかくゲストが豪華なのですよ。前作から9年も間隔が空いたこともあり(その間、レーベル契約はなかったとのこと)、久しぶりの新作を祝すようにマーク・ノップラー(DIRE STRAITS)、ジェフ・ベック、エリック・クラプトンがゲストギタリストとして参加。ドラマーにはリッチー・ヘイワード(LITTLE FEAT)を起用するなど、全体的にロック色の強い骨太なブルースアルバムに仕上がっています。

自身の楽曲はもちろんのこと、ブルース/ソウルアーティストのスタンダートナンバー(「Five Long Years」や「Mustang Sally」「Early In The Morning」など)も積極的に取り上げられており、そういった点では親しみやすい内容かもしれません。僕もジェフ・ベックが参加した「Mustang Sally」を耳にしたのをきっかけに、本作を手にしたのですから。

クラプトンとベックがそれぞれ良い味を出しているし、個々のプレイの違いを聴き比べられるという点でも非常に興味深い1枚だと思います。そして、リッチー・ヘイワードのずっしりとしたドラミングも聴き応えがあり、そのへんもロックリスナーにはとっつきやすさにつながっているのではないでしょうか。

……なんて、本作の“おまけ”についてばかり書いてきましたが、本作のキモはもちろんバディ・ガイの歌とギタープレイ。特にボーカルワークに関しては特筆に値するものがあり、ヘタな若手ソウルシンガーを聴くよりも意味があるんじゃないかと思わせられるほど。ギタープレイにしても「There's Something On Your Mind」で聴けるあの絶妙なトーンは、とてもじゃないけど真似できないなと思ってしまいます。

そういえば、当時よくバンドで「Mustang Sally」を本作のアレンジでカバーしたっけ。そうですね、完全にかぶれまくってましたね……良い思い出です。

最近のバディ・ガイは、数年前にリリースした2枚組アルバム『RHYTHM & BLUES』(2013年)が全米27位にランクインし話題になったばかり。同作にはキッド・ロックやキース・アーバン、スティーヴン・タイラージョー・ペリー&ブラッド・ウィットフォード(AEROSMITH)、ゲイリー・クラーク・Jr.あたりもゲスト参加しているので、こちらもロックリスナーには親しみやすい作品集かもしれませんね。まあ、まずはこの『DAMN RIGHT, I'VE GOT THE BLUES』から入っていくことをオススメしますが。



▼BUDDY GUY『DAMN RIGHT, I'VE GOT THE BLUES』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 02 21 12:00 午前 [1991年の作品, Buddy Guy, Eric Clapton, Jeff Beck] | 固定リンク

2018年2月20日 (火)

JOHNNY WINTER『LET ME IN』(1991)

ジョニー・ウィンターが1991年6月(US)に発表した通算15作目のスタジオアルバム。ジョニー・ウィンターというと70年代のスタジ諸作品やライブアルバムが代表作に挙げられたり、まずはそこから聴くのが筋だろいうと言われていますが、ひねくれ者だった10代の僕はいきなりこの当時の新作『LET ME IN』を手に取ったのでした。まあ10代の自分からすれば、古臭い録音よりも最新のクリアな音と脂の乗った今のプレイのほうが聴くに値するんじゃないか、そう思ったわけです。

で、この『LET ME IN』ですが。アルバート・コリンズやジョン・リー・フッカーらが所属したVirgin参加のブルース/ソウルレーベル「Point Blank Records」移籍第1弾アルバムで、レコーディングにはDr.ジョン(Piano)らが参加。ブルースレーベルに所属したことで、落ち着いた方向性へとシフトするかと思いきや(もちろんそういうアコースティックナンバーも含まれていますが)、全体としてはブルースを下地にした、いかにもジョニー・ウィンターらしい豪快なロックが展開されています。

オープニングの「Illustrated Man」から自由奔放なギタープレイと力強いボーカルを響かせるジョニー。続く「Barefootin’」では気持ち良いスライドプレイも楽しめるし、「Life Is Hard」では年相応な渋みを増したギタープレイが堪能できる。「Hey You」ではブルースハープとの掛け合いもカッコいいし、小気味良いシャッフルビートが心地よい「You’re Humbuggin’ Me」やスリリングなバンドアンサンブルが最高な「Got To Find My Baby」など、とにかく聴きどころが多いのが本作の特徴。ブルースベースのアルバムで全13曲49分と聞くと長すぎるイメージがあるかもしれませんが、まったくそんなことなく、スルスルと聴き進めることができるはずです。

オリジナル曲はもちろんのこと、「Shame Shame Shame」などオールドロックファンなら一度は耳にしたことがある名曲カバーも含まれているので、そういった点でも楽しめる1枚かもしれません。

個人的なオススメは、前半のハイライトといえる「Life Is Hard」と、それまでの空気をガラッと変える「Got To Find My Baby」や「Let Me In」といったところかな。「Got To Find My Baby」は当時自分のバンドでもカバーしていたので、すごく印象に残っている1曲でもあります。

先にも書いたように、どうしても初期の作品に注目が集まりがちなジョニー・ウィンターですが、本作は後期作品の中でも特に充実した楽曲とプレイが楽しめる作品集だと思います。言うなれば、後期の代表作。そう言い切ってしまってもおかしくないと思いますよ。ここ最近、ゲイリー・ムーアクラプトンなどをピックアップしてきましたが、そのへんの作品が好きな人なら間違いなくお気に入りの1枚になることでしょう。



▼JOHNNY WINTER『LET ME IN』
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投稿: 2018 02 20 12:00 午前 [1991年の作品, Johnny Winter] | 固定リンク

2018年2月19日 (月)

ERIC CLAPTON『JOURNEYMAN』(1989)

エリック・クラプトンが1989年11月に発表した、ソロ名義で通算11枚目のオリジナルアルバム。前2作を手がけたフィル・コリンズから、大御所ラス・タイトルマンにプロデューサーを変更して制作された最初のアルバムで、重厚なハードロックから彼のルーツであるブルース、さらにはAORにも通ずる大人の色香漂うモダンなポップロックまで、まるでそれまでのキャリアを総括するかのようにバラエティに富んだ、非常に聴き応えのある1枚に仕上がっています。

とはいえ本作はクラプトン単独書き下ろし曲が皆無で、大半が職業作家による楽曲やジョージ・ハリスン書き下ろし曲「Run So Far」(ジョージは同曲のレコーディングにも参加)、さらにはエルヴィス・プレスリー「Hound Dog」やレイ・チャールズ「Hard Times」といったスタンダード曲のカバー、ボ・ディドリー「Before You Accuse Me」のブルースカバーなどで締められています。そんな中でクラプトンはソングライティングにおいて、シングルカットもされたミック・ジョーンズ(FOREIGNER)との共作「Bad Love」、当時は若手ブルースギタリストとして頭角を現し始めていたロバート・クレイとの共作「Old Love」の2曲に携わったのみ。

じゃあクラプトン色が薄いのかといわれると、実はそんなこともなく。ギタープレイはもちろんのこと、ボーカルワークでも存在感の強さを証明しています。実際、本作はセールス的にも成功を収めており、「Bad Love」はここ日本でもCMソングに起用されて馴染み深い1曲となっています。

また、本作に収録された楽曲が過去のソロ曲やCREAM〜DEREK AND THE DOMINOS時代の名曲たちと混ざり合ったときの自然さときたら……本作に続いて発表されたライブアルバム『24 NIGHTS』(1991年)でもこの『JOURNEYMAN』からの楽曲が軸になっていることからも、本作はクラプトンの80年代後半以降における代表作のひとつになったことが伺えるのではないでしょうか。

他人が書いた曲とはいえ、重厚なハードロック「Pretending」やソウルフルなバラード「Running On Faith」、産業ロックテイストのミドルナンバー「No Alibis」は良曲と呼べるし、特に前2曲は当時のライブにおいても重要な役割を果たすキラーチューンだったと思います。また、フィル・コリンズがドラムで参加した疾走感の強い「Bad Love」、ライブでは終盤にエモーショナルなギターソロが長尺で展開される「Old Love」、のちの“アンプラグド”でおなじみとなる「Before You Accuse Me」と、印象深い楽曲が満載。「Hard Times」での“枯れ”感や「Lead Me On」で聴かせるアダルト感も、のちの「Tears In Heaven」や「Change The World」に通ずるものがあるのではないでしょうか。

クラプトンのソロ作というとどうしても70年代の諸作品をまず最初に挙げる傾向が強いですが、80年代育ちの自分としてはそこに本作も付け加えたいと思うくらい、大好きな1枚です。この当時のクラプトンを深く知りたければ、本作と先のライブ盤『24 NIGHTS』、そしてメガヒット作『UNPLUGGED』(1992年)の3作品を聴けば間違いないはずです。



▼ERIC CLAPTON『JOURNEYMAN』
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投稿: 2018 02 19 12:00 午前 [1989年の作品, Eric Clapton, George Harrison] | 固定リンク

2018年2月18日 (日)

GEORGE HARRISON『CLOUD NINE』(1987)

ジョージ・ハリスンが1987年11月に発表した、通算11枚目のソロアルバム。本作からは「All Those Years Ago」(1981年/全米2位、全英13位)以来となるヒットシングル「Got My Mind Set On You」(全米1位、全英2位)、「When We Was Fab」(全米23位、全英25位)が生まれ、アルバム自体も全米8位、全英10位のヒット作となりました。特にアメリカではセールス100万枚を突破し、これは1970年の大作『ALL THINGS MUST PASS』に次ぐ記録となります。

アルバムとしては前作『GONE TROPPO』(1982年)から5年もの間隔が空いていますが、実際その当時のジョージは音楽業界からなかば引退状態にあったとのこと。ですが80年代後半からマドンナ主演映画『上海サプライズ』への楽曲提供をはじめ、1988年にジェフ・リン、ボブ・ディラン、トム・ペティ、ロイ・オービソンと覆面バンドTRAVELING WILBURYSを始動させたあたりから音楽活動が本格化。TRAVELING WILBURYSで活動をともにしたジェフ・リンをプロデューサーに迎え、新たなソロアルバムを制作することになるのでした。

本作は僕が積極的に洋楽を聴き初めてから初めてのジョージのソロアルバム。リアルタイムで亡くなった報道と立ち会ったジョン・レノンや、大きなヒットこそなかったものの常に新作を提供し続けたポール・マッカートニーと比べ、どうしても影の薄い“FAB 4”のひとりがジョージでした(あれ、もうひとりは……)。

そんなですから、初めて「Got My Mind Set On You」を聴いたときは、正直グッときたことを覚えています。いや、別にビートルズをリアルタイムで聴いてきた世代でもないですし、70年代のジョージの活躍も知らない世代でもない、完全な後追いの小僧ですよ。だけど、そんな僕でも「ああ、ジョージが帰ってきた!」なんて思ってしまうほど、この極上のポップチューンは当時16歳だった自分の胸に響きまくったわけです。

アルバム自体もブルージーな「Cloud 9」やビートルズ時代を彷彿とさせるアレンジの「This Is Love」「When We Was Fab」「Someplace Else」があったり、ゲストプレイヤーとしてエリック・クラプトンやエルトン・ジョン、リンゴ・スターなどが参加していたりと、とにかく豪華。いわゆる“パブリックイメージとしてのジョージ・ハリスン”と“にわかファンがなんとなく思い浮かべる「ビートルズのジョージ」”を見事に具現化したサウンド&アレンジには、さすがジェフ・リン!と思わずにはいられません。ホント、この人が舵取りをしなかったらこんなアルバムにはならなかったんでしょうね。

まあ、そのへんもあって本作が旧来のファンからは叩かれる対象になっているのも理解できます。が、本作がジョージ生前最後のオリジナルアルバムとなってしまった今となっては、そんな物言いはどうでもよく。やっぱり誰がなんと言おうと、よくできたポップ/ロックアルバムだと思うのです。

それ以前の作品と比較すれば、確かにジョージのカラーは若干薄めです。が、本作がなかったらのちの「Free As A Bird」も「Real Love」もなかったんだろうなと考えると、やはり彼のキャリア上重要な1枚であることには間違いありません。

まあとにかく、一度はそういった雑音をシャットアウトして、本作と向き合ってみることをオススメします。高1の秋、自分が初めてこのアルバムと向き合ったときみたいに。



▼GEORGE HARRISON『CLOUD NINE』
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投稿: 2018 02 18 12:00 午前 [1987年の作品, Eric Clapton, George Harrison] | 固定リンク

2018年2月17日 (土)

GARY MOORE『STILL GOT THE BLUES』(1990)

1990年春にリリースされた、ゲイリー・ムーア通算9作目のオリジナルアルバム。活動後期のブルース路線を確立させた記念すべき1枚であり、実は彼のソロアルバム中もっともヒットしたアルバムのようです。本作はイギリスでダブルプラチナム、アメリカでもゴールドディスク認定。特にアメリカでは最高83位と唯一トップ100入り。実はシングル「Still Got The Blues (For You)」も全米97位と、アメリカで最大のヒット曲なのでした。

前々作『WILD FRONTIER』(1987年)でアイルランド民謡を取り入れたスタイルが高評価を獲得したかと思えば、続く『AFTER THE WAR』(1989年)ではより雑多なハードロックを展開したゲイリー・ムーア。実は前作の時点でこのブルース路線は表出し始めており、「The Messiah Will Come Again」のカバーはそのきっかけになった1曲ではないかと思うのです。

で、本作。ブルースとはいっても、そこはハードロックギタリスト観点でのブルースということで、サウンド的には“ブリティッシュビート経由のブルースロック”という表現がもっとも適切かもしれません。例えばエリック・クラプトンあたりのブルースカバーと比べれば、その音は非常に派手でダイナミック。確かに『AFTER THE WAR』までのゲイリーのプレイと比較すれば地味ではあるのですが、だからといって悪いわけではない。むしろ、彼がこの路線に活路を見出した意味がこういった“味を求める”プレイ、その1音1音にしっかり刻み込まれているように感じられます。だからこそ「Still Got The Blues」「Midnight Blues」などで聴ける泣きのソロプレイには、ぐっと惹きつけられるものがあるのです。

CD収録曲全12曲(アナログは全9曲)中、往年のブルースナンバーのカバーは6曲。残り6曲のうち1曲がジョージ・ハリスン「That Kind Of Woman」のカバー(もともとジョージがエリック・クラプトンに提供した楽曲。本作のカバーではジョージもスライドギターやコーラスで参加)で、5曲が書き下ろしブルース/ブルースロックナンバーとなります。オープングの「Moving On」の疾走感強めなロックンロールや「Texas Strut」のブギー感は、ブルースをベースにしたロックということで厳密にはブルースとは言い難いのかもしれませんが、こういった楽曲があることでHR/HMリスナーにもとっつきやすさがあったと思うのです。事実、本作リリース当時18歳だった僕もこのバランス感のおかげですんなり入っていけましたしね。

また、随所に導入されているブラスサウンドもカッコいいったらありゃしない。「Oh Pretty Woman」や「King Of The Blues」のゴージャスさは、確実にこのブラスセクションのおかげでしょう。かと思えば、「As The Years Go Passing By」では色気あるサックスの音色に続々してしまいますし(同曲でのドン・エイリーによるハモンドオルガン、ニッキー・ホプキンスのピアノも最高ったらありゃしない)。

そしてなにより、ゲイリーのボーカル。ここまで艶やかな歌を聴かせる人だったかと、リリース当時は驚かされたものです。まあそれまでのハードロック路線では、声を張り上げて歌うことが多かったですからね。エモーショナルな楽曲はもちろんのこと、若干トーンの落ち着いた「As The Years Go Passing By」や「Midnight Blues」あたりでのボーカルワークは、地味だけどなにげに本作のハイライトのひとつだと思っているのですが、いかがでしょう。

ラストの「Stop Messin' Around」までまったくダレることなく、適度な緊張感を保ったまま楽しめる1枚。特に『WILD FRONTIER』や『AFTER THE WAR』あたりの作品ではバンドアレンジと打ち込みサンドが混在していたことで、統一感が若干足りないという難点がこのでは完全に解消されているのですから。まあ、できたらこのスタイルでハードロックアルバムをもう1枚聴きたかった、なんて贅沢な不満も当時は持ちましたが、今となってはそれすら叶わないわけですからね……。

年に数回、思い出したかのように深夜、音量小さめでまったり聴きたくなる。そんな大切な1枚です。今年も2月に入り、「ああ、そろそろゲイリー・ムーアの命日(2月6日)だな」なんてことも思い出し、珍しく連日聴いております。



▼GARY MOORE『STILL GOT THE BLUES』
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投稿: 2018 02 17 12:00 午前 [1990年の作品, Gary Moore, George Harrison] | 固定リンク

2018年2月16日 (金)

TESTAMENT『PRACTICE WHAT YOU PREACH』(1989)

TESTAMENTが1989年8月(US)にリリースした、通算3作目のスタジオアルバム。過去2作(1987年の『THE LEGACY』、1988年の『THE NEW ORDER』)がどちらかというとテクニカルな真性スラッシュメタルアルバムという印象でしたが、この3作目で一気に化けた(変化を遂げた)印象が強く、僕のようにこのアルバムからTESTAMENTを知ったというリスナーは当時少なくなかったはずです。

アルバム冒頭を飾るタイトルトラック「Practice What You Preach」はMVも制作され、当時MTV「Headbangers Ball」で大プッシュされていた記憶が。スピードで押し切る疾走スラッシュというよりも、ある程度アップテンポだけどグルーヴ感も強く、なにより歌メロがキャッチーということで「がなるだけのスラッシュは苦手」というメタルファンにも受け入れられたんじゃないでしょうか。実際、かなり正統派メタルに近づいた印象もありますし。

で、この曲だけでなく、続くストレートな「Perilous Nation」やミドルテンポの「Envy Life」など、スラッシュの色合いはところどころに残しつつも、パワフルな正統派メタルと呼ぶにふさわしい仕上がりなんですよね。その極め付けとして、タイトルがまんまな「The Ballad」まであるし。

もちろん、「Blessed In Contempt」や「Nightmare (Coming Back To You)」みたいなスラッシュ寄りの楽曲も少ないけど存在している。だけど、やっぱり本作の主力になるのは「Practice What You Preach」や「Greenhouse Effect」みたいな楽曲なわけです。そう考えると、本作を経て1枚(1990年の『SOULS OF BLACK』)を挟んで、『THE RITUAL』(1992年)でその路線の究極形にたどり着くのも頷ける話なわけです。

あと、このバンドの面白みはアレックス・スコルニク(G)の変態的なギタープレイ&フレーズの数々でしょう。どの曲からも「え、そんな音階弾くの?」っていうフックになるプレイが飛び出してくるし、特にラストのインスト曲「Confusion Fusion」はその極め付けの1曲。過去2作にもその要素は存分に含まれていたものの、彼の才能が完全に開花したのは本作なんじゃないかと確信しています。

最近のハードコアな路線ももちろん大好きですよ。でも、ちょっとヤワいくらいに聞こえるこの時代のアルバムも捨てたもんじゃないなと思うのですが、いかがでしょう?



▼TESTAMENT『PRACTICE WHAT YOU PREACH』
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投稿: 2018 02 16 12:00 午前 [1989年の作品, Testament] | 固定リンク

2018年2月15日 (木)

SLAYER『SHOW NO MERCY』(1983)

本国アメリカで1983年12月にリリースされた、SLAYERの記念すべき1stアルバム。スラッシュメタルという観点でいうと、METALLICA『KILL 'EM ALL』(1983年7月発売)から5ヶ月遅れて、ANTHRAXの『FISTFUL OF METAL』(1984年1月発売)に1ヶ月先駆けて発表されており、USスラッシュ勢の中でもかなり初期の作品に入ると思います。

現在のスピード感と比較すれば、速いは速いけど、まだまだヘヴィメタルの範疇における速さかなという印象。それ以上に、どこから影響を受けたがわかりやすい構造を持つ楽曲群が次作『HELL AWAITS』(1985年)以降とも異なり、非常に微笑ましく感じられます。そういったところは、METALLICAの『KILL 'EM ALL』にも通ずるものがありますね。

METALLICA同様に、IRON MAIDENみたいに複雑な展開を持つ楽曲からの影響が強いながらも、METALLICAほどパンクの色は感じられない。むしろVENOMあたりのスピード感と、そのVENOMやMERCYFUL FATEの影響下にある悪魔主義的側面が歌詞やおどろおどろしいサウンドに表出しているところは、METALLICAやANTHRAXといったMOTÖRHEAD色の強いバンドと異なる点ではないでしょうか(ジャケットのイラストしかり)。

ただ、トム・アラヤ(Vo, B)の吐き捨てるような、それでいて時にヒステリックなハイトーンも飛びたすボーカルスタイルは、同時代を生きたジェイムズ・ヘットフィールドと共通するものが感じられ、非常に面白いと思うんです。これがNWOBHM以降なのか、はたまた別の(それこそハードコアあたりからの)影響なのか。

「Metal Storm / Face The Slayer」といった組曲(アルバム最長の約5分)があるものの、基本的には3分前後のストレートな楽曲が中心。アルバム冒頭を飾る2曲「Evil Has No Boundaries」「The Antichrist」なんて、80年代後半以降のSLAYERと比較したら完全に別モノに聴こえてきますからね。『HELL AWAITS』までの間に一体どんな変化を迎えたのか、気になるところです。

が、その答えは意外と簡単でして。本作から半年後の1984年6月発売のEP『HAUNTING THE CHAPEL』が果たした役割が非常に大きかったわけです。同作に収録された「Chemical Warfare」が、SLAYERが進む道を決定付けたと言っても過言ではないでしょう。そこについては、また別の機会に。



▼SLAYER『SHOW NO MERCY』
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投稿: 2018 02 15 12:00 午前 [1983年の作品, Slayer] | 固定リンク

2018年2月14日 (水)

THE FACELESS『IN BECOMING A GHOST』(2017)

LA出身の4人組テクニカルデスメタルバンド、THE FACELESSの2017年12月に発売された4thアルバム。本作はシンフォニックブラックメタルバンドABIGAIL WILLIAMSのフロントマン、ケン・ソーセロン(Vo)を迎えて制作された初めてのアルバムで、すでにオリジナルメンバーはリードギターのマイケル・キーン以外残っていない状況です。

実は、ジャケ写に釣られて初めて聴いたバンドですが、非常に面白いですね。Wikiを見ると、彼らのジャンルはテクニカルデスメタルだとかブラッケンドデスメタル(ブラックメタルのテイストが強いデスメタル)なんて言われているようですが、聴けばなるほどと。プログレッシヴメタルにデスメタルの要素を乗せ、そこにブラックメタル的な風合いを散りばめた結果、どこかゴシックメタル調にも感じられると。そりゃ嫌いになれるわけがない。

ケン・ソーセロンによるデスボイスに加え、マイケル・キーンはクリーンボーカルを担当。バランス的にはメロウなクリーンボイスもかなり多めに登場し、インダストリアル調サウンドやゴシックロック風アレンジが加わることによって、怪しさが倍増。それをプログレッシヴメタル的な変拍子や不協和音、音数の多い細かなテクニカルプレイで表現するわけで、意外とスルスルと楽しめてしまう。むしろ、メインであるはずのデス声のほうが味付けにすら感じられ、ブラックメタルやデスメタルに苦手意識があるリスナーでも比較的楽に楽しめる作品ではないでしょうか。

で、個人的に気になるのがDEPECHE MODEのカバー「Shake The Disease」。エレポップ調の原曲を、ブラストビート&トレモロリフで味付けした狂気に満ちたアレンジで蘇らせています。しかも、プログレメタル的プレイも追加されたかと思うと、マイケル・キーンによるデイヴ・ガーンばりのバリトンボーカルを響かせる。デスボイスもしっかり含まれており、その緩急含め非常に面白い仕上がりになっていると思いますよ。

全体を通して聴くと、プログレ的でもあるけどそれ以上にシンフォニックなタッチが多いなと気づかされます。そこが聴きやすさにもつながってるんじゃないでしょうか。ブラッケンドデスメタルなんて仰々しいカテゴライズがあるものの、その中身は意外と聴きやすいもの。ジャケの狂気性や雰囲気に騙されずに、ぜひ気軽に触れてみてはどうでしょう。個人的にはかなり点数の高い1枚でした。



▼THE FACELESS『IN BECOMING A GHOST』
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投稿: 2018 02 14 12:00 午前 [2017年の作品, Faceless, The] | 固定リンク

2018年2月13日 (火)

MANSUN『LITTLE KIX』(2000)

2000年8月にリリースされたMANSUNの3rdアルバム。全英チャート1位を獲得したデビューアルバム『ATTACK OF THE GREY LANTERN』(1997年)、全英6位の2ndアルバム『SIX』(1998年)と比べて、本作は最高12位と過去2作に及ばなかったものの、シングルは「I Can Only Disappoint U」が最高8位、「Electric Man」が最高23位、「Fool」が最高28位とそこそこの結果を残しています。

KING CRIMSON的で先行きがまったく読めない、破天荒な展開の楽曲群がずらりと並ぶ傑作『SIX』から一変、本作ではTHE POLICEやGENESISなどで知られる“80年代の顔”的プロデューサーのヒュー・パジャムを迎えて制作。そういった要素から想像できるポップな要素は確かに存在するものの、前作とは違ったテイストのプログレポップ/ロックアルバムに仕上がっています。

ポール・ドレイパー(Vo, G)がプロデュースに携わっていないという点も興味深い本作は、全体的に穏やかな空気の中、ジワリジワリと音が近づいてくるようなイメージ。1曲目「Butterfly (A New Beginning)」や3曲目「Comes As No Surprise」はまさにその好例で、どこか80年代以降のPINK FLOYDに通ずるものがあります(そういえば本作、デヴィッド・ギルモアのスタジオで制作されたんですよね。そこにも不思議なつながりを感じたりします)。

かと思えば、後期THE POLICEにも通ずる「I Can Only Disappoint U」があったり、いかにもシングル的なポップチューン「Electric Man」があったりしますが、特に聴き手をグイグイとアゲていくような楽曲は皆無。穏やかさと優しさ、そこと表裏一体の妖しさが一体となってゆっくり、ゆっくりと押し寄せてくる。気づいたら目の前にまで迫っているか、あるいはシンクロしている。そんな不思議なアルバムなんじゃないかと思います。

従来のファンからは過去2作との違いやラブソングが多いなどを理由にかなり否定的な声が多い本作ですが、そのラブソングも失恋ソングばかり。そういう点においては、やっぱりこのバンドらしく一本ネジが飛んでる印象も受けます。やっぱりMANSUNはどこまでいってもMANSUNなんだ、と。

リリースから18年経ちましたが、ポール・ドレイパーが初のソロ作『SPOOKY ACTION』(2017年)をリリースした今このアルバムを聴くと、どこか共通項が見え隠れする。実はそんな重要な1枚なんじゃないかという気がしますが、いかがでしょう?



▼MANSUN『LITTLE KIX』
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投稿: 2018 02 13 12:00 午前 [2000年の作品, Mansun] | 固定リンク

2018年2月12日 (月)

MANIC STREET PREACHERS『REWIND THE FILM』(2013)

MANIC STREET PREACHERSが2013年9月に発表した通算11枚目のスタジオアルバム。前作『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』(2010年)から3年ぶりの新作にあたるのですが、その3年の間にはシングルコレクションアルバム『NATIONAL TREASURE - THE COMPLETE SINGLES』(2011年)、デビューアルバム『GENERATION TERRORISTS』(1992年)の20周年記念盤(2012年)があったので、実は意外とそこまで空いた感がなかったんですよね。

本作発売前に、まずリードトラックとしてアルバムタイトル曲「Rewind The Film」がYouTubeで公開されたのですが、6分半ある穏やかなこの曲を聴いてまず驚かされるわけです。だって、曲の序盤をジェームズ・ディーン・ブラッドフィールド(Vo, G)ではなく、ゲストシンガーのリチャード・ハーレイ(元LONGPIGS)が歌っているんですから……「あれ?」と思うわけです。しかも曲調的にも大ヒットした『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』(1998年)の延長線上にある、“非常にエモくて、それでいてどこか枯れた”スタイルなんですから。しかも、正式な1stシングル「Show Me The Wonder」にしてもブラスをフィーチャーしつつも、全編アコースティックテイストだし。「ロックバンド・MANIC STREET PREACHERS」を求めるリスナーには、不安要素しかないですよね。

本作制作にあたりバンドはアルバム2枚分以上の楽曲を作り、結果としてテイストの異なる2枚のアルバムにまとめることを決めたそうで、その1枚目がこの全編穏やかでアコースティック色の強い『REWIND THE FILM』なわけです。歌詞も黙想的かつ内省的で、サウンドも無駄な装飾を限りなくそぎ落とし、ディストーションを一切必要としない。メロディ自体は間違いなくあのマニックスなんだけど、それまでとまったく違って聞こえる。これこそが、デビュー20周年を経て次の20年に向けて新たに歩みだしたバンドの出した答えだったと。そういう冒険作なわけですね。

にしても、自らもう若くないことを認め、同時に昔に戻りたいと吐露するこの作風は『GENERATION TERRORISTS』以上の衝撃的内容ですよ。結成時は20代のうちに大成功して解散することを求めていたバンドが、気づけば40代に突入して、ブヨブヨに太ったり髪が薄くなったりした姿を晒し続けながら、20代の頃のヒット曲を歌い続ける。その反動が本作だと考えれば、非常に納得がいくし、それはそれでパンクなんじゃないか……という気がします。現実の残酷さを余すところなく晒すという意味での、パンクですけどね。

あともうひとつ。本作は『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』で表現すべき世界観の究極形だったのかなと。30前後では表現できなかった旨みや深みが完璧な形で表現された、究極の“負け犬の遠吠え”……うん、だから嫌いになれないんですよ、このアルバム。

約1年後にリリースされる、本作と対になるアルバム『FUTUROLOGY』(2014年)を並べることで、本作の魅力はより増すことになるとは、発売当時考えてもみなかったけどね。



▼MANIC STREET PREACHERS『REWIND THE FILM』
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投稿: 2018 02 12 12:00 午前 [2013年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

2018年2月11日 (日)

VINCE NEIL『CARVED IN STONE』(1995)

1995年9月に発表された、ヴィンス・ニール通算2作目のソロアルバム。MOTLEY CRUEをクビになったあとにリリースした初ソロ作『EXPOSED』(1993年)は、モトリー時代の良質かつ“ファンが求める”部分を煮詰めたかのような、かなり優れたハードロックアルバムでした。スティーヴ・スティーヴンスという華のある凄腕ギタリストが参加したことも、成功の大きな要因だったでしょう。

しかし、同作を携えたツアー終了後にスティーヴは脱退。新たにブレント・ウッズを迎えて再度ツアーに出るも、今度はもうひとりのギタリストであるデイヴ・マーシャルも脱退してしまいます。そういった苦境の中、制作されたのが本作『CURVED IN STONE』です。

本作ではプロデューサーにTHE DUST BROTHERS(BEASTIE BOYSベックのプロデュースでおなじみの2人組ユニット)を迎えて制作。HR/HM畑以外の人と組むことがファンに不安要素となりましたが、その不安は見事的中。ポジティブな空気に満ち溢れていた前作とは相反し、ダークなテイストで統一された異色作に仕上げられています。

ヒップホップを得意とするプロデュースチームだけに、サンプリングを駆使した「Breakin' In The Gun」からスタートする本作に、きっとHR/HMファンなら誰もが動揺するはず。そこから“グランジ以降”のダークかつグルーヴィーな「The Crawl」や「Black Promises」「Writing On The Wall」のような曲が続くのですから、モトリーの『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)『DR. FEELGOOD』(1989年)路線を求めるリスナーは拒絶反応を起こすのも仕方ありません。

本家モトリーが『MOTLEY CRUE』(1994年)というダークな作品で業業的に失敗したにも関わらず、ヴィンスも同じ過ちを犯す……いや、ヴィンス的には「時代の最先端に乗れてる? 俺、イケてる?」と思ってのことだったのかもしれません。とはいえ、BLACK SABBATHのヴィンス流解釈と受け取れる「Make U Feel」、“テクニカルなグランジ”と受け取れば納得のいく「One Less Mouth To Feed」、泣きのヘヴィバラード「The Rift」など、意外と良い曲が多いのも本作の特徴。『EXPOSED』と比較してしまうからダメなのであって、1枚の「ダークなハードロックアルバム」として受け取ればそこまで悪くはないんですけどね。あ、そうなると序盤に含まれているヒップホップテイストの「Breakin' In The Gun」や「One Way」、陽気なイギー・ポップのカバー「Lust For Life」は邪魔になりますが(苦笑)。

ちなみに本作、日本盤と海外盤とでは収録曲順が一部異なるようです。日本盤初出時にアルバム中盤に「Lust For Life」、ラストにCHICAGOのカバー「25 Or 6 To 4」が含まれており、「The Rift」の次に当時ガンに侵されていた(のちに逝去)愛娘スカイラーに捧げた美しいバラード「Skylar's Song」が収録されていました(このへんの事情も本作のダークな作風に少なからず影響を与えているのでしょうか)。しかし、のちの海外盤では「Skylar's Song」が5曲目に入っていたり、中盤の曲順が一部異なっていたりして、日本盤に慣れた耳で聴くとちょっとチグハグな印象を受けます。SpotifyやAppleMusicなどは海外盤と同じ曲順なので、初めて聴く人は特にそのへん意識しなくても大丈夫かと(笑)。

あ、最後に。CHICAGOのカバー「25 Or 6 To 4」が非常に素晴らしい出来なので、ぜひこのへんのボーナストラックを何らかの形で正式再発してもらいたいところです。



▼VINCE NEIL『CARVED IN STONE』
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投稿: 2018 02 11 12:00 午前 [1995年の作品, Motley Crue, Vince Neil] | 固定リンク

2018年2月10日 (土)

SAMMY HAGAR『I NEVER SAID GOODBYE』(1987)

1987年初夏にリリースされた、サミー・ヘイガー通算9枚目のスタジオアルバム。当時はすでにVAN HALENのフロントマンとして活躍していたタイミングで、バンド活動に専念するためソロ活動はストップさせていたのですが、当時ソロ契約していたGeffen Recordsとの契約が残っていることから制作期間10日という急ごしらえで本作を完成させました。

プロデューサーはサミーのほか、VAN HALENでの相方であるエディ・ヴァン・ヘイレン、そしてデヴィッド・ソナーという布陣。エディは演奏面においてはベーシストに徹し、ギタープレイは「Eagles Fly」1曲のみ。それ以外のギターはすべてサミーが担当し、ほかにはジェシー・ハームス(Key)、デヴィッド・ローサー(Dr)というサミーのソロ活動で気心の知れた面々が参加しています(一部楽曲では、かのオマー・ハキムが叩いています)。

大ヒットした前作『VOA』(1984年)では“これぞアメリカンロック”的ポジティブかつ豪快なハードロックを聴かせてくれたサミーですが、今作のソングライティング面はVAN HALENでの経験がかなり反映されているように感じます。シングルヒットもした「Give To Live」(全米23位)や「Eagles Fly」(全米82位)には“VAN HALEN以降”の香りがしますし(「Give To Live」はのちにVAN HALENが発表する「When It's Love」と同系統ですし)、「When The Hummer Falls」「Hands And Knees」あたりに漂うハードエッジなスタイルは『5150』(1986年)にも通ずるものがありますし。

かと思えば、前作までの流れを汲む陽気な「Boys' Night Out」や「Returning Home」みたいな曲もあるし、ブルージーなスタイルが『OU812』(1988年)にも通ずる「Standin' At The Same Old Crossroads」みたいな曲、そこからメドレーのように続くブギー調の「Privacy」もある。半ばやっつけで作ったソロアルバムではあるんだけど、本作で試したことがちゃんと次のVAN HALENのアルバムにつながっていることを考えると、本作はサミーとエディにとって遊びかつ実験の場であったのかもしれませんね。そう考えると、本作に収められた「Give To Live」や「Eagles Fly」がのちのVAN HALENのツアーでも(弾き語りで)披露されたことも納得がいくというか。

そういえば、Geffen時代に発表したサミーの一連のソロアルバム、デジタル配信されていないんですよね。3月にはこういう企画でCD国内盤が再発されるようですが、この機会にストリーミング配信も……と懇願するのは僕だけでしょうか。



▼SAMMY HAGAR『I NEVER SAID GOODBYE』
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投稿: 2018 02 10 12:00 午前 [1987年の作品, Sammy Hagar, Van Halen] | 固定リンク

2018年2月 9日 (金)

DAVID LEE ROTH『SKYSCRAPER』(1988)

1988年1月にリリースされた、デヴィッド・リー・ロスの2ndアルバム。VAN HALEN脱退後に発表された初のソロアルバム『EAT 'EM AND SMILE』(1986年)は同作の数ヶ月前に発表されたサミー・ヘイガー初参加アルバム『5150』(1986年)には及ばなかったものの、全米4位/100万枚という結果を残しました。

ただ、『EAT 'EM AND SMILE』からは全米トップ10に入るようなキャッチーなシングルが生まれなかったのも事実。スティーヴ・ヴァイ(G)やビリー・シーン(B)といった凄腕ストリングス隊のテクニックを活かしたハードロックナンバーと、“ダイヤモンド・デイヴ”の愛称にふさわしいジョービズ臭プンプンのスタンダードナンバーを並列させたことで、VAN HALENの大ヒット曲「Jump」のようなポップ色の強い楽曲が入る余地がなかったのです。

となると、続く2枚目のアルバムでの命題は必然的に「『Jump』にも匹敵するヒットシングルを生み出すこと」となるわけです。それが、今作における「Just Like Paradise」(全米6位)だったんでしょうね。

また、今作からバンドにはブレット・タグルというキーボーディストが正式参加。「The Bottom Line」のような前作の延長線上にあるアップテンポなハードロックも少なからず収録されているものの、どの曲にもキーボードが加えられており、全体的にソフトな印象を受けます。ステーヴ・ヴァイのギターは相変わらず暴れまくっているように聴こえるものの、前作と比較したら若干落ち着いたように受け取れる。ビリー・シーンのベースに至っては曲のボトムを支えることに終始し、テクニカルなソロプレイは一瞬フィーチャーされるのみ。そういった状況にストレスを感じたビリーは、本作完成後にバンドを脱退しています。結局、ビリーを含む編成での来日公演は実現しなかったんですよね(まあこの脱退があったおかげで、MR. BIGが結成されるわけですが)。

ポップで軽やかなロックナンバー「Knucklebones」からスタートする本作は、前作における「Yankee Rose」と比較してしまうと肩透かしを食らうかもしれません。が、全編キャッチーで親しみやすいオリジナル曲でまとめられた作風は、あの当時デイヴが目指した「ヒット曲でもVAN HALENに勝つ」という目標を達成させるためには必要な方向性だったんでしょうね。小ヒットに終わったダンサブルな「Stand Up」やスティーヴのギターアレンジが素晴らしいバラード「Damn Good」、地味でダークだけどこの編成じゃなければ生まれなかった隠れた名曲「Hina」など、異色ながらも聴きどころの多い作品ではないでしょうか。初期衝動がすべてだった『EAT 'EM AND SMILE』とは別ベクトルで、いかにもデイヴらしいアルバムだと思いますし、今でも嫌いになれない1枚です。



▼DAVID LEE ROTH『SKYSCRAPER』
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2018年2月 8日 (木)

OZZY OSBOURNE『BLACK RAIN』(2007)

2007年5月にリリースされた、オジー・オズボーン通算10枚目のスタジオアルバム(2005年のカバーアルバム『UNDER COVER』を除けば、オリジナル作品としては9枚目)。2001年の『DOWN TO EARTH』では制作後期に盟友ザック・ワイルド(G)が参加し、曲作りやベーシックトラックでのギタープレイは叶わずソロのみを加えるにとどまりましたが、今作では全10曲中8曲にソングライターとして名を連ね、ギターも全編にわたりザックらしいプレイを聴かせてくれます。

正直『DOWN TO EARTH』が自分的に厳しい内容だったので、発売当時は『OZZMOSIS』(1995年)以来12年ぶりの新作くらいの勢いで聴きまくりました。とはいえ、何度も聴いていると……オジーのアルバムを楽しんでいるというよりも、BLACK LABEL SOCIETYの新作を聴いているような錯覚に陥る瞬間が多々あるのですが。

チューニングもザックらしいダウンチューニングで、音の太さも(プロデューサーのケヴィン・チャーコによるものがあるとはいえ)いかにもザックっぽい。そういった全編ヘヴィな雰囲気の中にも、オジー&ザックらしいポップでキャッチーなメロディがしっかり備わっている。だからこそ「I Don't Wanna Stop」のような楽曲もしっかりポップに響くわけです。

かと思えば、「Lay Your World On Me」みたいに異色のサイケチューンがあったり、若干ヒップホップ的な色合いも見られる「The Almighty Dollar」もある。攻撃的なアップチューン「11 Silver」やグルーヴィーな「Civilize The Universe」、美しいピアノバラード「Here For You」、ダークだけどどこか80年代のオジーを彷彿とさせる「Trap Door」など、意外と多彩な楽曲群が揃っている。新しさを取り入れつつも、しっかりこれまでのオジーの作風を踏まえて制作されているわけです。

オジー本人は本作を「大ヒット作『NO MORE TEARS』(1991年)に続く作品」と捉えてるようですが、それはちょっと違うかな、と。確かにバラエティ豊かな点においては『NO MORE TEARS』と共通する点もあるのですが、あっちが原色豊富なカラフルさだとすれば、この『BLACK RAIN』はモノトーンとセピアが入り混じったような印象。ビビッドさは『NO MORE TEARS』のほうが上かなと思います。が、それも制作された時期や時代が反映されてこそなので、“2007年版『NO MORE TEARS』”と考えればあながち間違ってはいないのかもしれません。

現時点では、これがオジー&ザックのコンビによるラスト作ですが、もう1枚くらいこのコンビの作品を聴いてみたいなぁ。きっと今のザックなら、さらにバランス感の取れた作品を作ってくれるでしょうから。




▼OZZY OSBOURNE『BLACK RAIN』
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2018年2月 7日 (水)

IRON MAIDEN『SEVENTH SON OF A SEVENTH SON』(1988)

1988年春に発表された、IRON MAIDEN通算7枚目のスタジオアルバム。おりしも世界的なメタルブームの最中にリリースされたこともあり、同作はブルース・ディッキンソン(Vo)加入後初(通算3作目)のアルバム『THE NUMBER OF THE BEAST』(1982年)以来となる全英1位を獲得。しかし、アメリカでは最高12位止まりで、50万枚程度と中ヒットに終わってしまいました。

なぜアメリカでヒットしなかったのか。それは本作が開き直ったと言わんばかりに“Very British”なアルバムだったからかもしれません。確かにシングルヒットを意識したポップな「Can I Play With Madness」(全英3位)のようなが曲が含まれてはいるものの、このコンパクトなポップメタルでさえも非常にブリティッシュメタルそのものな構造を持っている1曲ですし、そりゃあアメリカでウケないのも仕方ないのかなと。

また、本作は全8曲を通して物語が進行するようなコンセプチュアルな構造で、1曲目「Moonchild」からラスト「Only The Good Die Young」までがつながっていて、ラストからオープニングにループするようなプログレッシヴロック的構成もブリティッシュロックそのものと言えるかもしれません。シングル志向の強かったアメリカでウケないのは仕方ないのかなと。

とはいえ、イギリスでは本作から4曲ものシングルヒットが生まれています。先の「Can I Play With Madness」に続いて、「The Evil That Men Do」(全英5位)、「The Clairvoyant」(全英6位)、「Infinite Dreams」(全英6位)とそのどれもがトップ10入り。エイドリアン・スミス(G)ががっつりソングライティングに携わった「Moonchild」「Can I Play With Madness」「The Evil That Men Do」をはじめ全体的にポップでメロウな楽曲が多いですが、しっかりメイデンらしさは保たれており、そんな中にスティーヴ・ハリス(B)の本領発揮な10分にもおよぶタイトルトラックが入ったりとバランスは絶妙。前作『SOMEWHERE IN TIME』(1986年)が好きな人なら間違いなく気に入る1枚だと思います。

ちなみにメイデンは本作を携えたツアー終了後、活動休止期間に突入。ブルースやエイドリアンはソロ活動に突入します。そういうこともあって、本作のジャパンツアーは実現せず。そういうこともあって、作品としての評価は高いものの生で聴いてないぶん、思い入れが薄いファンも少なくないようです。ですが、僕はメイデンの作品中もっとも好きな1枚なんですよね。なにせ、初めて買ったメイデンのCDが本作だったので、そういったところでも思い入れが強い作品です。



▼IRON MAIDEN『SEVENTH SON OF A SEVENTH SON』
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2018年2月 6日 (火)

CANE HILL『TOO FAR GONE』(2018)

アメリカ・ルイジアナ州ニューオリンズ出身の4人組メタルコアバンド、CANE HILLの2ndアルバム。デビューアルバム『SMILE』(2016年)発表後はBULLET FOR MY VALENTINEASKING ALEXANDRIA、ATREYUなどのヘッドラインツアーでサポートアクトを務めたほか、『VANS WARPED TOUR』に参加して実力/知名度を高めていったようです。

人気インディーレーベル「Rise Records」から発表された本作は、基本的に前作の延長線上にある内容ですが、激しさはそのままに、よりキャッチーさが増したように感じられます。

ミドルテンポ中心でグルーヴィーな作風は90年代後半以降のヘヴィロックからの影響が強く感じられるし、なおかつALICE IN CHAINSSTONE TEMPLE PILOTSあたりのグランジバンドが持っていた危うさや、カオティックハードコアバンドらしい狂気性も備えている。ハーモニーのかまし方こそ90年代後半以降のバンドっぽいですが、僕はそこになんとなく「グランジの突然変異」的な色合いを感じました。

でもね、今AICやSTPの名前を挙げてみたものの、実は具体的に「このバンドっぽい」とか「誰それのパクリ」みたいな明確さが見えてこないのも、実はこのバンドの特徴なんじゃないかと思っていて。確かにKORNTOOLなど90年代後半のシーンを席巻したバンドたちからの影響は、テイストとしていたるところから感じられるのだけど、直接的に「ここが誰っぽい!」という表現は少なく、そこが現代的な味付けで上手にミックスされているからこそ、「CANE HILLらしさ」が確立できているのではないでしょうか。

だから、もし1998年や2001年にこのバンドと出会っていたとしたら、「めっちゃ新しい音のバンドが出てきた!」と大喜びして聴きまくっていたんじゃないかな。

と同時に、現時点において「CANE HILLらしさ」はできているものの、「他のバンドとはここが違う!」という絶対的な個性がまだ見つけられていないという現実もあるわけで。同系統のサウンドを持つバンドたちと比べたら頭ひとつ抜きん出た印象はあるものの、そこからさらに上に行くにはそういった個性を見つけることがこのバンドには必要なんじゃないか、と思いました。

そのためには、まずは多くの人にもっと知ってもらうこと、聴いてもらうこと、観てもらうことが急務かな。本当は今年日本で初開催が決まった『VANS WARPED TOUR』に出演するといいんじゃないかと思うんですよね。

まあ個人的には、不思議とクセになる1枚なので、これからも頻繁に聴くことになると思います。



▼CANE HILL『TOO FAR GONE』
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投稿: 2018 02 06 12:00 午前 [2018年の作品, Cane Hill] | 固定リンク

2018年2月 5日 (月)

OF MICE & MEN『DEFY』(2018)

カリフォルニアのオレンジ・カウンティ出身のメタルコアバンド、OF MICE & MEN通算5作目のオリジナルアルバム。

前々作『RESTORING FORCE』(2014年)が全米4位、前作『COLD WORLD』(2016年)が全米20位とそれなりに大きな成功を収めていた彼らでしたが、アルバム発表から数ヶ月後にフロントマンのオースティン・カーライルが脱退。ATTACK ATTACK!時代から声や風貌に色気のあるフロントマンだっただけに、彼の脱退はバンドにとってかなりの痛手だったはずです。きっと新たなフロントマンを迎えることも考えたことでしょう。しかしバンドはアーロン・ポーリー(B, Vo)がリードボーカルを兼任する形で、残された4人で活動を継続。前作から1年4ヶ月というハイペースで新作を完成させました。

もともとアーロン自身、OF MICE & MEN加入以前はJAMIE'S ELSEWHEREというポストハードコアバンドでボーカリストとして活躍していたので、この兼任にはなんの問題もないはず。事実、オースティン脱退後も4人で『COLD WORLD』を携えたツアーを行っていたのですから。

なのに……なんでしょう、この至るところから感じるこの不思議な感覚は。

アルバムのプロデューサーは過去2作を手がけたデヴィッド・ベンデス(BEARTOOTH、coldrain、Crossfaith、WE CAME AS ROMANCEなど)から替わり、大御所ハワード・ベンソン(HOOBASTANKMY CHEICAL ROMANCESEPULTURAなど)が担当。適度にヘヴィで、スクリームを多用しつつも歌メロがキャッチーでしっかり作り込まれているメタルコア路線は過去2作から引き継がれており、ボーカルが変わったことで受ける違和感はほとんどないはずです。

アッパーな曲もミドルテンポのヘヴィな楽曲も、ひたすら聴きやすいしライブ映えするものばかり。PINK FLOYDのカバー「Money」も原曲まんまなのですが、ヘヴィな音像で表現することで他のオリジナル曲の中に混ざってもしっかり馴染んでいます。例えば、国内のラウドロックと呼ばれるカテゴリーのバンドが好きなリスナーなら間違いなく気に入る1枚でしょう。

だけど、上に書いたとおり、従来のファンだったらちょっとした「あれっ?」を感じるかもしれません。アーロンのクリーントーンも決して悪いわけじゃない。メタルコアとしては十分に魅力的なんです。でも、オースティンという絶対的な前任者と比較してしまうと若干劣る……いや、劣ってはいないですね。なんていうか、味気ないんですよね。それが、最初に書いた“色気”があるか/ないかの違いなのかもしれません。

アルバムとしては非常に優れた内容ですし、これはこれで高評価に値する作品だと思います。が、自分がこのバンドのどこに魅力を見出していたか?と考えると……ね? だから、現編成に対する正当な評価はこの次のアルバムが出るまで持ち越しかな。もう1枚聴けば、本作に対して感じた「あれっ?」が消え去ると信じています。



▼OF MICE & MEN『DEFY』
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投稿: 2018 02 05 12:00 午前 [2018年の作品, Of Mice & Men] | 固定リンク

2018年2月 4日 (日)

2018年1月後半〜2月前半出演DJイベント

たまには出演イベントの告知を。

日付変わって本日1月30日(火)、月末恒例のレギュラーイベント『俺夜』1月号にてDJします。新年会イベントにはインタビューなど仕事で参加できなかったため、2018年最初のDJとなります。場所は三軒茶屋32016(地図)。僕の出番は23時前後から40分程度です。けやき坂46武道館公演を終えてからそのまま向かいますので、22時過ぎには会場についている予定です。おヒマな方、ご近所にお住いの方はぜひ爆音でロックやメタルを楽しみながら一緒に飲みましょう。


【イベント名】俺夜1月号
【日時】2018年1月30日(火)20:00〜24:30(終電くらいまで)
【会場】三軒茶屋32016(東京都世田谷区世田谷区三軒茶屋2-14-12 三元ビル5F:地図
【料金】1000円(1ドリンク付)


また、今週末2月4日(日)夕方からは、『AIN'T IT FUN』時代からお世話になってきたイベント『Teenage of the year』に俺夜クルーとして参加予定です。場所は吉祥寺伊千兵衛です(地図)。出番は短いですが、最高に楽しいイベントなのでぜひ遊びに来ていただけると。


【イベント名】Teenage of the year
【日時】2018年2月4日(日)16:00〜22:00
【会場】吉祥寺伊千兵衛(東京都 武蔵野市吉祥寺本町1-29-6:地図
【料金】2500円(1ドリンク付)

投稿: 2018 02 04 12:00 午後 [「DJ / イベント出演」] | 固定リンク

BLACK VEIL BRIDES『VALE』(2018)

セルフタイトル作『BLACK VEIL BRIDES』(2014年)から3年3ヶ月ぶりとなる、BLACK VEIL BRIDES通算5作のオリジナルアルバム。2010年のデビュー以来、ほぼ1〜2年間隔でアルバムを量産し続けてきた彼らですが、今回は意外と間が空いたなという印象。とはいえ、その間にフロントマンのアンディ・ビアサックがANDY BLACK名義での初ソロ作『THE SHADOW SIDE』(2016年)を発表したりサマソニで来日したりしてたので、アンディ自身はかなり働いてたわけです。

勝負作となった前作『BLACK VEIL BRIDES』はかなりヘヴィな仕上がりで、個人的にもお気に入りの1枚だったのですが、国内盤がリリースされなかったためここ日本では一部で地味な盛り上がりをしたのみ。結局来日公演も実現しなかったんじゃないかな。思えば初来日公演が東日本大震災で中止になったりと、ここ日本では踏んだり蹴ったりのイメージが強いバンドですが、だからこそもうちょっと丁寧に応援してあげてほしい気がします。

ですが、今作も今のところ国内盤リリースの予定なし。そういえばANDY BLACKのアルバムも国内盤未発売でしたもんね。だったらということで、ここでしっかり紹介しておきたいと思います。

デビュー時の、初期MOTLEY CRUEを彷彿とさせるヴィジュアルとゴス/メタルコアの影響下にあるサウンドから徐々に正統派HR/HM路線へと移行していったBVBですが、本作はハードなギターリフを取り入れつつもボーカルラインは非常にポップというバランス感に優れた楽曲集に仕上げられています。イメージ的にはAVENGED SEVENFOLD(A7X)に近いのかな。あそこまでメタリックで大作路線ではないですが、聴きやすさ・とっつきやすさという点においては共通するものが多いと思います。これが現代的なアメリカンHR/HMのスタンダードということなんでしょうかね。

もともとアンディのキーがそこまで高くはないので、ロー&ミドルを軸にした歌メロのおかげでどうしてもメタルっぽくは聞こえなかったのですが、今作に関してはそこにポップ&キャッチーさが強まったことでより親しみやすさが増した気がします。ギターリフや全体の音像こそHR/HM的ではあるものの、ここ日本だったらJ-POPやアニソンの範疇にも収まってしまうのではないか、というくらいキャッチー。ゴリゴリのメタルはちょっと……という人にもオススメできる1枚だと思います。

先にA7Xほど大作主義ではないと書きましたが、そんな本作にも1曲だけ、8分半におよぶドラマチックな大作「Dead Man Walking (Overture II)」が収録されています。この曲もヘヴィメタル的というよりはアニソン的なシンフォニックさに近いイメージも。適度なゴシックテイストやハードさを取り入れつつも、根がポップな人たちなのかもしれないですね。

ANDY BLACKのアルバムよりは激しく、かといって前作よりはポップ。過去の作品と比較するなら、3枚目の『WRETCHED AND DIVINE: THE STORY OF THE WILD ONES』(2013年)がもっとも近いかもしれません。なので、同作がお気に入りという人には入っていきやすいでしょうし、前作みたいなヘヴィ路線でハマった人にはちょっとヤワに感じられる1枚かもしれません。バランス取るのって本当に難しいですね。

さて、ここまでキャッチーなアルバムを作ったのですから、あとは来日に期待したいところ。国内盤は出ていないものの、ANDY BLACKのときみたいにサマソニやラウパーなどフェスでの来日に期待しておきましょう。



▼BLACK VEIL BRIDES『VALE』
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投稿: 2018 02 04 12:00 午前 [2018年の作品, Black Veil Brides] | 固定リンク

2018年2月 3日 (土)

SKID ROW『B-SIDE OURSELVES』(1992)

SKID ROWが1992年秋に発表した5曲入りカバーEP。前年初夏に発表した2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』が全米チャート初登場1位という快挙に輝き、同作を携えたツアーも1年以上継続。そのファイナルを控えたタイミングでのリリースだったのですが、収録曲の大半は過去のシングルにカップリングで収録されたものばかり。ですが、こうやって彼らのルーツナンバーを彼らのサウンドで楽しめるというのは、ファンにとっては少なからず嬉しいものがあるのではないかと思います。

カバーされているのは、RAMONESKISSJUDAS PRIESTRUSHジミ・ヘンドリックスと、彼らのサウンドからすれば何にひねりもないセレクト。RUSHに多少こだわりが感じられたりしますが、ピックアップしたのが1stアルバムからというあたりにこだわりがあまり感じられないのでは……という話も(苦笑)。まあ、いいじゃないですか、微笑ましくて。

とにかく、どの曲も原曲に忠実で素直なアレンジ。オープニングのRAMONES「Psycho Therapy」(ボーカルはベースのレイチェル・ボラン)も若干ヘヴィにはなっているものの、基本的なアレンジはまんま。KISS「C'mon And Love Me」は原曲にあったアコースティカルな色合いが消えてしまったものの、メロの良さは完全に生かされており、これはこれでグッド。プリースト「Delivering The Goods」はご本家ロブ・ハルフォードがゲスト参加したライブテイクをそのまま収録。そりゃあまんまですよね(笑)。

で、RUSH「What You're Doing」ですが、実はこれを聴くと「なぜ『SLAVE TO THE GRIND』というアルバムが完成したのか?」という、その理由の片鱗が見えてくるんじゃないかという気がするんです。そして、ここから次作『SUBHUMAN RACE』(1995年)へとつながっていく理由もね。結局、こういうグルーヴィーなハードロックをJUDAS PRIEST的方法論で表現したかったんですね。

最後のジミヘン「Little Wing」のみ、本作で初出のカバー。これも、まぁまんまっちゃあまんまですが、ギタリスト2人が本家に無理やり近づこうと頑張っております。残念ながらそこには到達できてないのですが、いい線いってるんじゃないかなと。これを聴くと、『SLAVE TO THE GRIND』での泣きのバラード(「Quicksand Jesus」「「In A Darkened Room」「Wasted Time」」のルーツも垣間見えるという。なるほどですね。

たった5曲、20分にも満たないEPですが、もしあの当時のSKID ROWがのちのGUNS N' ROSESみたいにフルカバーアルバムを作ったとしたら、ほかにどんなアーティストを取り上げたんでしょうね。



▼SKID ROW『B-SIDE OURSELVES』
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投稿: 2018 02 03 12:00 午前 [1992年の作品, Jimi Hendrix, Judas Priest, KISS, Ramones, Rush, Skid Row] | 固定リンク

2018年2月 2日 (金)

KISS『KISS』(1974)

アメリカ本国で1974年2月に発売された、KISSの記念すべきデビューアルバム。もともとKISSはポール・スタンレー(Vo, G)とジーン・シモンズ(Vo, G)が在籍したWICKED LESTERというバンドが前身としてあり、そこにエース・フレーリー(G, Vo)、ピーター・クリス(Dr, Vo)という“歌えるプレイヤー”を迎えたことで完成。『WITH THE BEATLES』をパロッたデビューアルバムのジャケットからもわかるように、“ハードロック版ビートルズ”をどこかで目指していたところがあったんでしょうね。

今でこそハードロックの権化だとかグランジの元祖だとかいろいろ言われていますが、このアルバムで展開されているのは若干ハードだけど軽やかなロックンロール。ジョン・レノンポール・マッカートニーのように、大半の楽曲でポール・スタンレーとジーン・シモンズがメインボーカルを務め、2人のツインボーカルがあったり4人のハーモニーがあったり、さらにピーター・クリスもいい味わいの歌声を聴かせてくれたりと、それ以前のハードロックバンドでは考えられないフレキシブルなボーカルスタイルを見せてくれます(初期の時点ではエースはまだ歌ってないわけですね)。

それにしても、こうやって曲目を眺めてみると「Strutter」「Firehouse」「Cold Gin」「Deuce」「Black Diamond」などなど、今でもライブで披露される機会の多い楽曲ばかり。つまり、KISSにとっては変わらぬ原点なわけですね、このアルバムは。もちろん、その都度その都度で軸になるアルバムというのは他にも生まれてはいますが、最終的にはここにたどり着く、そういう帰着点でもある。それはKISSというロックバンドにとってだけでなく、多くのロックバンドにとっても原点回帰的重要さを持つ1枚と言えるかもしれません。それくらい、「演奏がシンプルでカッコイイ」「メロディとハーモニーがキャッチー」「キャラの立つ歌声」など参考になるポイントが多いのですから。

ちなみに本作には「Love Theme From Kiss」というインストナンバーもあれば、それに続くハードブギー「1000,000 Years」もあり(後半のギターソロのカッコ良さといったら!)、そこから強弱がしっかりしたアレンジの「Black Diamond」(かつてYOSHIKIもクラシックアレンジでカバーしましたが、完全にX JAPAN「紅」などの雛形となった1曲ですよね)へと続く最高の流れが終盤に待ち構えています。軽やかな前半とは一線を画するヘヴィな後半は一聴の価値が大アリ。たった35分という短い時間の中にロックバンドのカッコ良さが凝縮された本作を聴かずして、KISSの魅力は語れません。

AEROSMITHがルーツロックからの影響を色濃く表したデビュー作だったのに対し、KISSはポップさをとことん追求しているあたり、両者のカラーの違いが1stアルバムの時点で浮き彫りになっているのも面白いところです。



▼KISS『KISS』
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投稿: 2018 02 02 12:00 午前 [1974年の作品, KISS] | 固定リンク

2018年2月 1日 (木)

V.A.『KISS MY ASS: CLASSIC KISS REGROOVED』(1994)

1994年6月にリリースされた、KISSのトリビュートアルバム。ちょうどKISS結成20周年を記念して、当時のメンバーも制作に携わった1枚で、レニー・クラヴィッツガース・ブルックスANTHRAXGIN BLOSSOMSTOAD THE WET SPROCKETDINOSAUR JR.EXTREMETHE LEMONHEADSTHE MIGHTY MIGHTY BOSSTONESといったメタル/オルタナ/カントリーなどKISSに影響を受けた幅広いジャンルのアーティストに加え、ここ日本からもYOSHIKI(X JAPAN)が参加。さらに、メイナード・キーナン(TOOL)、トム・モレロ&ブラッド・ウィルク(RAGE AGAINST THE MACHINE)、ビリー・グールド(FAITH NO MORE)からなるスペシャルユニットSHANDI'S ADDICTION(JANE'S ADDICITONをKISSの楽曲「Shandi」にひっかけてもじったもの)まで参加しております。

まあKISS愛に溢れた……というよりは、各アーティストが平常運転でKISSの楽曲をカバーしたといったほうが正しいのかもしれませんね。だって、1曲目の「Deuce」からレニー・クラヴィッツ、直球勝負でカバーしつつも彼らしく味付けしてますから。ちなみにこの曲、ハーモニカでスティーヴィー・ワンダーもゲスト参加してます。

かと思えば、KISSご本家が演奏で加わったガース・ブルックス「Hard Luck Woman」は、カバーというよりもコピー。本家がいつもどおりに演奏して、ポール・スタンレーがハーモニーで加わっているんだから、そりゃあ“まんま”になっても仕方ないですよね(笑)。ANTHRAXの「She」も平常運転、というか途中まで“まんま”すぎて、後半に彼らならではのこだわりのアレンジが加わるという。この時期の彼らは、ボーカルがジョン・ブッシュ時代なので、こういったジーン・シモンズ色の強い曲はピッタリですね。

そういえば、1994年というとグランジブーム末期というタイミングで、KISSから影響を受けたと公言するグランジバンドも少なくありませんでした。そういうこともあって、GIN BLOSSOMS、TOAD THE WET SPROCKET、DINOSAUR JR.あたりのグランジ/オルタナロックバンドのKISSカバーは良い味を醸し出しています。GIN BLOSSOMS「Christine Sixteen」こそストレートなカバーですが、TOAD THE WET SPROCKET「Rock And Roll All Nite」のアコースティックスローカバー、DINOSAUR JR.「Goin' Blind」のヘヴィで泣きまくり、かつ脱力系なカバーは完璧すぎるほどの素晴らしい仕上がり。1994年という時代感を見事に反映した、本作の中でもベストテイクと言えるでしょう。

そして、本作中もっとも異色のカバーがSHANDI'S ADDICTION「Calling Dr. Love」。トム・モレロの変態ギターを存分に活かしたテイクで、参加メンバーの各バンドの個性が見事に反映されたアレンジは、最高の一言。のちのヘヴィロック/ラウドロック一大革命を先取った1曲と言えるかもしれません。

その他にも、EXTREMEらしくファンクロック的“ハネた”ミディアムナンバーへと昇華させた「Strutter」、あの有名なツインリードギターをブラスで再現した爆笑モノのTHE MIGHTY MIGHTY BOSSTONES「Detroit Rock City」、いかにもYOSHIKI、というかまんまX JAPANな「Black Diamond」のオーケストラバージョン、ボーナストラックとして追加されたドイツのバンドDIE ÄRZTEの「Unholy」ドイツ語カバー(途中でディスコな“あの曲”も飛び出したり)など、聴きどころ満載。トリビュートアルバムとしては、かなり力の入った1枚ではないでしょうか。そりゃまあ、アーティスト本人が尽力してるんだもんね。

ちなみに本作、今のようにKISSがメイク時代に戻る前の作品ながらも、全米19位まで上昇。50万枚を超えるヒット作となりました。今思えば、このへんの成功が数年後のオリメン&メイク復活の布石になったんでしょうね。

なお、本作はストリーミング配信はおろか、デジタル配信自体が行われておりません。勿体ないったらありゃしない。



▼V.A.『KISS MY ASS: CLASSIC KISS REGROOVED』
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投稿: 2018 02 01 12:00 午前 [1994年の作品, Anthrax, Compilation Album, Dinosaur Jr., Extreme, Faith No More, Garth Brooks, Gin Blossoms, KISS, Lemonheads, the, Lenny Kravitz, Mighty Mighty Bosstones, the, Rage Against The Machine, Toad the Wet Sprocket, Tool, X JAPAN] | 固定リンク