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2018年2月27日 (火)

ANTHRAX『PERSISTENCE OF TIME』(1990)

1990年8月に発表された、ANTHRAX通算5作目のスタジオアルバム。1987年発表の3rdアルバム『AMONG THE LIVING』で疾走感があり複雑にリフが絡み合う大作志向へとシフトチェンジし、その路線を推し進めた4thアルバム『STATE OF EUPHORIA』(1988年)でチャート的にも成功(全米30位、全英12位)を収めた彼ら。しかし、『STATE OF EUPHORIA』は楽曲の出来にムラがあったことも否めず、今でもライブで演奏される楽曲となるとTRUSTのカバー曲「Antisocial」くらいという。意外と印象が薄い1枚なんですよね。

そんな評価を受けてかどうかわかりませんが、続く『PERSISTENCE OF TIME』では外野の酷評を払拭するかのような、ひたすらヘヴィで重苦しいヘヴィメタルアルバムを作り上げるわけです。

全11曲(日本盤ボーナストラックを除く)で約60分という長尺の作品で、冒頭4曲すべてが7分前後の楽曲という非常に冒険的な内容なのですが、その4曲がとにかく素晴らしい。初期のようなファストナンバー皆無で、重さにこだわったアレンジと音作りが施されているのに、不思議と疾走感を感じさせる「Time」と「Blood」というオープニング2曲。時計が秒針を刻む音から始まる「Time」と、その秒針をバスドラの連打で表現したかのようなエンディングからそのまま「Blood」へとなだれ込む構成は、圧巻の一言です。

そこから、ひたすら重苦しい「Keep It In The Family」、緊張感の強い「In My World」と続くのですが、この息苦しさ、重苦しさがとにかく気持ちいい。どの曲も長尺なのに、長さを一切感じさせない工夫が施されたアレンジはさすがですし、何よりもドラムの音色とベースのゴリゴリ感、そしてギターのザクザクした質感、ときどきおどろおどろしさすら感じさせるジョーイ・ベラドナ(Vo)のボーカルと、すべてが完璧な状態で噛み合っている。まさに、ANTHRAXのベストワークと呼ぶにふさわしい内容ではないでしょうか。

もちろん、5曲目以降の楽曲も素晴らしいものばかり。狂ったように疾走する「Grindlock」も初期の彼らとはひと味違った作風だし、ダークでムーディーなインスト「Inro To Reality」から「Belly Of The Beast」へと続く組曲構成も最高。さらに、ジョー・ジャクソンの名曲をひたすらスラッシーにアレンジしたライブの定番曲「Got The Time」、クライマックスに向けてのたうちまわる「H8 Red」、ヘヴィなイントロからスピーディーな展開を見せる「One Man Stands」、ラストを飾るにふさわしいスピードナンバー「Discharge」と最後まで飽きさせない構成。時代がこういう重々しさを求めたというのもあると思いますが、『AMONG THE LIVING』で得た経験がベストな形で表現された傑作だと思っています。

初期のスラッシュメタル的側面を排除して、このヘヴィでグルーヴィーな作風をよりモダンな方向へとシフトさせたのが、続く『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)だと考えると、その進化も非常に納得がいくし、そういう方向を選んだ彼らの選択も間違いではないと思えてくる……そんな1枚ではないでしょうか。



▼ANTHRAX『PERSISTENCE OF TIME』
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投稿: 2018 02 27 12:00 午前 [1990年の作品, Anthrax] | 固定リンク