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2018年2月17日 (土)

GARY MOORE『STILL GOT THE BLUES』(1990)

1990年春にリリースされた、ゲイリー・ムーア通算9作目のオリジナルアルバム。活動後期のブルース路線を確立させた記念すべき1枚であり、実は彼のソロアルバム中もっともヒットしたアルバムのようです。本作はイギリスでダブルプラチナム、アメリカでもゴールドディスク認定。特にアメリカでは最高83位と唯一トップ100入り。実はシングル「Still Got The Blues (For You)」も全米97位と、アメリカで最大のヒット曲なのでした。

前々作『WILD FRONTIER』(1987年)でアイルランド民謡を取り入れたスタイルが高評価を獲得したかと思えば、続く『AFTER THE WAR』(1989年)ではより雑多なハードロックを展開したゲイリー・ムーア。実は前作の時点でこのブルース路線は表出し始めており、「The Messiah Will Come Again」のカバーはそのきっかけになった1曲ではないかと思うのです。

で、本作。ブルースとはいっても、そこはハードロックギタリスト観点でのブルースということで、サウンド的には“ブリティッシュビート経由のブルースロック”という表現がもっとも適切かもしれません。例えばエリック・クラプトンあたりのブルースカバーと比べれば、その音は非常に派手でダイナミック。確かに『AFTER THE WAR』までのゲイリーのプレイと比較すれば地味ではあるのですが、だからといって悪いわけではない。むしろ、彼がこの路線に活路を見出した意味がこういった“味を求める”プレイ、その1音1音にしっかり刻み込まれているように感じられます。だからこそ「Still Got The Blues」「Midnight Blues」などで聴ける泣きのソロプレイには、ぐっと惹きつけられるものがあるのです。

CD収録曲全12曲(アナログは全9曲)中、往年のブルースナンバーのカバーは6曲。残り6曲のうち1曲がジョージ・ハリスン「That Kind Of Woman」のカバー(もともとジョージがエリック・クラプトンに提供した楽曲。本作のカバーではジョージもスライドギターやコーラスで参加)で、5曲が書き下ろしブルース/ブルースロックナンバーとなります。オープングの「Moving On」の疾走感強めなロックンロールや「Texas Strut」のブギー感は、ブルースをベースにしたロックということで厳密にはブルースとは言い難いのかもしれませんが、こういった楽曲があることでHR/HMリスナーにもとっつきやすさがあったと思うのです。事実、本作リリース当時18歳だった僕もこのバランス感のおかげですんなり入っていけましたしね。

また、随所に導入されているブラスサウンドもカッコいいったらありゃしない。「Oh Pretty Woman」や「King Of The Blues」のゴージャスさは、確実にこのブラスセクションのおかげでしょう。かと思えば、「As The Years Go Passing By」では色気あるサックスの音色に続々してしまいますし(同曲でのドン・エイリーによるハモンドオルガン、ニッキー・ホプキンスのピアノも最高ったらありゃしない)。

そしてなにより、ゲイリーのボーカル。ここまで艶やかな歌を聴かせる人だったかと、リリース当時は驚かされたものです。まあそれまでのハードロック路線では、声を張り上げて歌うことが多かったですからね。エモーショナルな楽曲はもちろんのこと、若干トーンの落ち着いた「As The Years Go Passing By」や「Midnight Blues」あたりでのボーカルワークは、地味だけどなにげに本作のハイライトのひとつだと思っているのですが、いかがでしょう。

ラストの「Stop Messin' Around」までまったくダレることなく、適度な緊張感を保ったまま楽しめる1枚。特に『WILD FRONTIER』や『AFTER THE WAR』あたりの作品ではバンドアレンジと打ち込みサンドが混在していたことで、統一感が若干足りないという難点がこのでは完全に解消されているのですから。まあ、できたらこのスタイルでハードロックアルバムをもう1枚聴きたかった、なんて贅沢な不満も当時は持ちましたが、今となってはそれすら叶わないわけですからね……。

年に数回、思い出したかのように深夜、音量小さめでまったり聴きたくなる。そんな大切な1枚です。今年も2月に入り、「ああ、そろそろゲイリー・ムーアの命日(2月6日)だな」なんてことも思い出し、珍しく連日聴いております。



▼GARY MOORE『STILL GOT THE BLUES』
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