JUDAS PRIEST『JUGULATOR』(1997)
1990年に発表した傑作『PAINKILLER』に関する活動を1991年に終えたJUDAS PRIESTDでしたが、翌1992年にバンドの存続を左右するような大きな出来事が起こります。それがロブ・ハルフォード(Vo)脱退……ご存知のとおり、ロブはバンド脱退後にFIGHTというモダンヘヴィネスに特化したバンドをプリーストのドラマー、スコット・トラヴィスらと結成します。ロブが『PAINKILLER』を経て、のちにブレイクするPANTERAのメンバーらとつるみ、よりモダンな方向へとシフトしていったのも理解できるのですが、とはいえ旧来のHR/HMの権化みたいな存在がそっち側に行ってしまうことには、王道メタルを愛するリスナーには正直受け入れがたい事実だったと思います。
そんな窮地に立たされたプリーストですが、グレン・ティプトン(G)とK.K.ダウニング(G)のソングライティングチームはボーカリスト不在のまま曲作りを継続。1996年に入るとスコット・トラヴィスを呼び戻して、イアン・ヒル(B)との4人でバックトラックのレコーディングを開始します。そして、バンドはオーディションの結果、ついに後任シンガーとしてティム・“リッパー”・オーウェンズの加入を発表し、1997年10月に前作『PAINKILLER』から実に7年ぶりとなる通算13作目のスタジオアルバム『JUGULATOR』をリリースしたのでした。
古巣のColumbiaから離れ、新たにCMC International(EU)やSPV(US)と契約して発表された本作ですが(ここ日本では当時、新興メタルフェーベルとして名を馳せたゼロ・コーポレーションから発売。同社がなくなってからは、2001年にビクターから再発)、まず気になるのがロブの後任ティムのボーカルですよね。これに関してはロブらしさを受け継ぎつつ(実際似てますしね)、よりモダンでドスの効いた歌い方もできる新たな武器としては、合格点が与えられるのではないでしょうか。特にライブになると、新旧の楽曲を違和感なく聴かせてくれるので、そこについて非難されることは少なかったと記憶しています。
しかし、本作の最大の問題点/衝撃ポイントはそこではなく、むしろ“『PAINKILLER』の続き”として展開されたそのサウンド/楽曲についてでしょう。現代的な質感はそのままに、軸となるのは前作におけるスラッシュメタルから“(METALLICAの)ブラックメタル以降”、あるいは“PANTERA以降”と呼ばれるミドルテンポ中心のグルーヴメタル/モダンヘヴィネスへと変化しており、当時は「今さらこれをプリーストがやる必要があるのか?」と疑問に感じました。
というのも、1997年後半というとすでに“PANTERA以降”はひと世代前的な感覚もあり、むしろシーンの主流はKORNやLIMP BIZKITなど“ヒップホップ以降のヘヴィロック”に移り始めていたからです。いってしまえば、メンバーが曲作りや後任シンガー探しに時間をかけすぎたばかりに、本来やろうとしていたこととシーンに求められるものに時差ができてしまったわけです。これはもう不幸としかいいようがありませんね。
もちろん、アルバム自体の質は非常に高く、変拍子を導入したオープニングのタイトルトラック「Jugulator」をはじめ、サビでシンガロングできそうな「Death Row」、MVも制作された「Burn In Hell」などは今聴いても良いと思える。だけど……すべてが良いかと言われると、正直疑問なのも事実。全10曲で58分というトータルランニングが語るように、1曲1曲が長い。特にラストの「Cathedral Spires」は9分超えの大作なんですが、アレンジ次第ではもう少しコンパクトにできたはずだし、もっと名曲と呼べるものにできたはず。ベースは良いのに、練りこみが甘い。そう、全体的に勿体なさが目立つ1枚なんですよね。
では、これをロブが歌っていたらどうなっていたか……いや、ロブが歌ったとしても結果は一緒だったかな。これがあと3〜4年早かったら、きっとアルバム自体に対する評価も、受け取る側の印象も大きく変わったのかもしれません。
ちなみに本作と続く『DEMOLITION』(2001年)はロブが歌っていないせいか、はたまたインディーズからのリリースだったせいか、2001年に再発されて以降廃盤状態が続いています。当然、デジタル配信もストリーミング配信もされておらず、手軽に聴けない状況にある不幸な作品なのですよ。もっと簡単に楽しめる状況になれば、本作はもう少しポジティブな評価が得られるんじゃないでしょうか……そう願ってやみません。
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