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2018年3月30日 (金)

RICHIE KOTZEN『MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION』(1994)

1994年11月に発表されたリッチー・コッツェン通算4作目のソロアルバム。1992年にPOISONに加入し、翌年『NATIVE TONGUE』(1993年)を発表するものの、のちに脱退してしまうリッチーが、新たに取り組んだのがトリオ編成のバンドで、自身がボーカルを担当して『NATIVE TONGUE』路線のR&Bがかったロックアルバムを制作することでした。

メジャーのGeffen Recordsと契約して発表した最初の作品となる本作は、プロデュースをPOISONの『NATIVE TONGUE』やMR. BIG『ACTUAL SIZE』(2001年)などで知られるリッチー・ズィトーが担当。ちなみにリッチー・ズィトーはほかにCHEAP TRICKの復活作『LAP OF LUXURY』(1988年)BAD ENGLISHのデビュー作『BAD ENGLISH』(1989年)HEART『BRIGADE』(1990年)など産業ロック色の強い作品を中心に手がけており、これだけ知ると聴くのが不安になってくるのですが、今作ではリッチー・コッツェンの魅力を存分に活かした生々しい1枚に仕上げられています。

全体的にはハードロックというよりも、ブルースやR&Bをベースにした黒っぽいアメリカンロックに近い印象。リッチーの歌声も渋みにみちたものだし、ドラムのアトマ・アナーもHR/HMよりもフュージョンやソウルのそれに近いイメージがあります。が、いざギターソロに突入するとリッチー・コッツェンらしい速弾きがバシバシ登場。それをカッコいいと受け取るか、「こういう音なのに……邪魔!」と受け取るかで好き嫌いが分かれそうな気もします。

もともと速弾き/テクニカル系プレイヤー中心レーベルShrapnel出身という偏見が強かったので、個人的にも彼がPOISONに加入したときは「あんなヘタクソ集団に加わって大丈夫かよ?」と心配になったものですが(もちろんPOISONに対する心配です。おっと失礼)、結果はご存知のとおり。過去のPOISONにない魅力を引き出した、非常にブルージーでソウルフルなカッコいい1枚に仕上がっていました。

また、リッチーがポール・ギルバートの後釜としてMR. BIGに加入したときは、POISONやその後のソロ活動の成果もあり、「意外と合ってるんじゃない?」という好意的な声と「いやいや、ボーカリスト2人もいらないっしょ?」という否定的な声両方があったと記憶していますが、僕個人としてはリッチー在籍時に残された2枚は悪くないと思っています(好きか嫌いかはまた別ですが)。

そんな、何かと偏見を持たれやすいギタリスト/シンガーのリッチーの、本当の魅力が遺憾なく発揮された最初の作品がこのアルバム。これがなければ、のちの『WAVE OF EMOTION』(1996年/こちらも名盤)も生まれることはなかったでしょうし、THE WINERY DOGSというバンドも誕生しなかったはずです。そういう意味でも、本作は彼のキャリアを語る上で非常に重要かつ欠かせない1枚なのです。

ソウルフルなゴスペル風コーラスや隙間の多いバンドアンサンブル、そこを無理矢理埋めようとする音数の多いギターソロ。このアンバランスさを面白がれたなら、本作は絶対にあなたにとって大切な1枚になるはずです。ソウルの名曲「Reach Out I'll Be There」でさえ、あんなに弾きまくるリッチーの執念、僕は嫌いじゃないです。むしろこのアルバム、大好きなんですよ。だから、先日この企画で低価格再販されて非常に喜んでおります。あとは、普通に配信やストリーミングでも聴けるようになったら最高ですね!(→2020年4月追記:ストリーミング配信、スタートしました!)

 


▼RICHIE KOTZEN『MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

 

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