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2018年4月 5日 (木)

NIRVANA『IN UTERO』(1993)

1993年9月にリリースされた、NIRVANA通算3作目のオリジナルアルバムにして最終作。天文学的メガヒット作となった前作『NEVERMIND』(1991年)はメジャーデビュー作ということもあり、もともとカート・コバーン(Vo, G)自身も「売れるアルバムを作る」という意識のもと制作されたことで、ああいう“ダークでカオス”と“ポップでキャッチー”が共存した奇跡的な1枚に仕上がりました。

しかし、あそこまでバカ売れするとは当の本人も想像してなかったんでしょうね。結果的にあの1枚が大きな足枷となり、バンドの活動のみならずカート自身の精神をも蝕んでいくことになります。

そういった混沌を経て、カートとバンドがたどり着いた結論がアンダーグラウンドへの回帰。プロデューサーにUSオルタナ/インディ界の鬼才スティーヴ・アルビニを迎えて制作されたのが、この異色作『IN UTERO』なわけです(ちなみに、アルビニはプロデューサーとクレジットされることを嫌い、本作でもエンジニアとして記されています)。

アルバムの収録曲数が一緒だったり構成が比較的近いことから、ある程度は『NEVERMIND』を意識した作風に仕上げられています。が、冒頭からギターが奏でる不協和音であることから、「Smells Like Teen Spirit」の二番煎じを狙って作られたものではないことは明白。歌メロは淡々としているものの、そこかしこにメロディメイカーとしてのカートの才能がにじみ出ており、ぶっきらぼうで聴く者を選ぶ作風ながらも軸にはポップさがしっかり残されていることも伺えます。

まあとにかく、冒頭3曲(「Serve The Servants」「Scentless Apprentice」「Heart-Shaped Box」)を聴けば、このアルバムでカートがやりたかったことはなんとなく伺えるのではないでしょうか。「Smells Like Teen Spirit」的フォーマットで作られた楽曲に「Rape Me」なんてタイトルを付けたり、シンプルなリズムにノイズと呟き&絶叫を乗せた「Milk It」みたいな曲があったりと、確かにパッと聴いたところキャッチーさは皆無かもしれません。ですが、メロディ自体は上で述べたとおり、意外とキャッチーさを兼ね備えている。そういった意味では、1stアルバム『BLEACH』(1989年)に通ずるものがあると言えます(それも「アンダーグラウンドへの回帰」の意味するところかもしれませんが)。

聴いていて前向きになれるような音楽ではないです。仮に『NEVERMIND』が街中で流れていたとしてもどこか馴染んでしまうと思いますが、こと『IN UTERO』に関しては違和感しか残さないし、拒絶以外の言葉は思い浮かびません。

そんな“試される”1枚ですが、当時の人気・勢いもあって本作は全米初登場1位を記録。『NEVERMIND』の全米1000万枚には及ばないものの、それでも500万枚以上を売り上げている不思議な作品なのです。

“NIRVANAらしさ”という点においては『NEVERMIND』の右に出るアルバムはないと思いますが、“カート・コバーンらしさ”という点ではこの『IN UTERO』がもっとも色濃い作品なのかもしれません。そういった意味でも、NIRVANAおよびカートを理解する上で『NEVERMIND』と『IN UTERO』は切っても切り離せない関係と言えるでしょう(もちろん、『BLEACH』も同じくらい重要ですけどね)。

本作のリリースから約半年を経た1994年4月5日、カートは自ら命を絶つことですべてに終止符を打つことになります。このアルバムが何かを予兆していた、なんてことは言いたくないですが、当時の彼の精神状態が反映された作品という意味ではいろいろ感じることの多い1枚かもしれません。



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投稿: 2018 04 05 12:00 午前 [1993年の作品, Nirvana] | 固定リンク