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2018年4月30日 (月)

2018年4月のお仕事

2018年4月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※4月29日更新)


[WEB] 4月29日、「リアルサウンド」にて欅坂46のライブ評「欅坂46は壁を越えて進み続けるーーデビュー2周年ライブで手にした“強さと自信”」が公開されました。

[WEB] 4月28日、「リアルサウンド」にてONE OK ROCKのライブ評「ONE OK ROCK、国内での人気はもはや敵なし 4大ドームツアーで宣言した“第2章への道”」が公開されました。

[WEB] 4月26日、「リアルサウンド」にてTHE PINBALLSのアーティスト分析「THE PINBALLS、時代に捉われないバンドスタイル シンプルさで勝負するクリエイションに迫る」が公開されました。

[CD] 4月25日のSKINDREDのアルバム「BIG TINGS」日本盤にて、ライナーノーツを執筆しました。(Amazon

[WEB] 4月25日、「BARKS」にてDIR EN GREYのDie&Shinyaインタビュー「DIR EN GREY、結成20周年のシングル『人間を被る』」が公開されました。

[紙] 4月24日発売「TV Bros.」2018年6月号にて、春ねむり『春と修羅』、Serph『Aerialist』、トム・ミッシュ『Geography』の各ディスクレビューを執筆しました。(Amazon

[紙] 4月23日発売「ヘドバン Vol.18」にてX『Vanishing Vision』クロスレビュー、LOVEBITESライブレポート、A PERFECT CIRCLE『Eat The Elephant』、DIMMU BORGIR『Enonian』、HER NAME IN BLOOD『POWER』、MARY'S BLOOD『Revenant』、PHILIP H. ANSELMO & THE ILLEGALS『Choosing Mental Illness As a Virtue』、RITCHIE BLACKMORE'S RAINBOW『Memories in Rock II』の各ディスクレビューを執筆しました。(Amazon

[WEB] 4月22日、「リアルサウンド」にて大森靖子&ピエール中野インタビュー「大森靖子×ピエール中野、“アイドルとフェス”文化に新提案 「好きって気持ちだけは信用していい」」が公開されました。

[紙] 4月18日発売「別冊カドカワDirecT 11」にて、KAT-TUNインタビュー、KANインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 4月16日、「BARKS」にてブルーノ・マーズのライブレポート「ブルーノ・マーズ、これぞ“今もっとも世界が求めるアーティスト”のステージ」が公開されました。

[WEB] 4月11日、「リアルサウンド」にてNGT48インタビュー「NGT48 荻野由佳&小熊倫実&本間日陽が語る、3rdシングルでの挑戦と“きたりえイズムの継承”」が公開されました。

[紙] 4月9日発売「UTB+Vol.43」2018年5月号にて、けやき坂46加藤史帆×齊藤京子×佐々木久美、富田鈴花×松田好花の各インタビュー、けやき坂46「音ボケPOPS」番組密着レポート&潮紗理菜×柿崎芽実×佐々木久美インタビュー、けやき坂46「ゆうがたパラダイス」番組密着レポート&はんにゃ金田インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 4月5日、「BUBKA WEB」にて乃木坂46和田まあや×伊藤かりんインタビュー「秘密の処世術」の序文が公開されました。

[WEB] 4月5日、「リアルサウンド」にてLittle Glee Monsterのライブ評「Little Glee Monster、“様々な挑戦”が結実 アリーナツアー千秋楽を見て」が公開されました。

[WEB] 4月4日、「リアルサウンド」にてHER NAME IN BLOODインタビュー「HER NAME IN BLOODが語る、バンドの進化と新たな挑戦「シンプルな楽曲は強い武器になる」」が公開されました。

[紙] 4月4日発売「日経エンタテインメント!」2018年5月号にて、欅坂46小池美波×長濱ねる×土生瑞穂、上村莉菜×尾関梨香×織田奈那×鈴本美愉の各インタビュー、別冊付録「けやき坂46パーフェクトガイド」にてけやき坂46河田陽菜×小坂菜緒×渡邉美穂インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 4月2日、「BUBKA WEB」にて乃木坂46齋藤飛鳥×久保史緒里×山下美月インタビュー「『こっち側』の3人」の序文が公開されました。

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また、3月に当サイトで紹介したアルバム(Spotifyで配信している作品のみ)から各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストを制作しました。題して『TMQ-WEB Radio 1803号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

投稿: 2018 04 30 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

DURAN DURAN『SEVEN AND THE RAGGED TIGER』(1983)

昨日紹介したビリー・アイドルの『REBEL YELL』(1983年)と同時期にリリースされたのが、DURAN DURAN通算3枚目のスタジオアルバム。前作『RIO』(1982年)でついに全米での人気(最高6位)も確かなものとした彼らは、この3rdアルバムでその地位をより強固なものとしました。初の全英1位獲得に続き、アメリカでも最高8位を記録。「Union Of The Snake」(全米・全英ともに3位)、「New Moon On Monday」(全米10位、全英9位)、「The Reflex」(全米・全英ともに1位)というヒットシングルも人気の後押しに一役買ったことは確かで、今振り返ると1982〜1985年あたりがDURAN DURAN人気のピークだったことは間違いありません。

グレイス・ジョーンズやTHOMPSON TWINS、TALKING HEAD、FOREIGHERなどのプロデュース/エンジニアで知られるアレックス・サドキンをプロデューサーに迎えた唯一のアルバム(シングル「Is There Something I Should Know?」はミックスのみ。のちに別プロジェクトARCADIAで再びプロデュース担当)。前作『RIO』で聴けた“シンセをフィーチャーしたロックバンド”的サウンドをさらに進化させ、ここでは完全にシンセをメインに、ギターは前に出るよりもセンスの良いフレーズを随所に取り入れるという程度の活躍に収まっています。

が、この手法が1983年という時代に見事にフィットしたんでしょうね。「New Moon On Monday」や「Union Of The Snake」といったヒット曲はシンセの印象が強いですし、「(I’m Looking For) Cracks In The Pavement」「I Take The Dice」あたりもシンセポップ的な色合いが強い。じゃあギターは全然ダメかというとそんなことはなく、「The Reflex」しかり「Union Of The Snake」しかり、アンディ・テイラー(G)が軽快なカッティングストロークを聴かせてくれます(ここで鬱積したものが、のちのTHE POWER STATIONで爆発→脱退につながるんでしょうかね)。

サイモン・ル・ボン(Vo)ののっぺりしたボーカルも、このサウンドで聴くと不思議と欠点が目立たない。むしろ、セクシーにすら思えてくるんだから驚きです。シンガーとしては間違いなくこのアルバムとARCADIAでの活動時期が最高潮だったのではないでしょうか。事実、本作を携えたツアーの模様を収めたライブアルバム『ARENA』(1984年)でボーカルパフォーマンスも(スタジオで追加録音しているとはいえ)なかなかのものがありますし。

DURAN DURANの代表作は?と尋ねられたら、間違いなく『RIO』を挙げますが、もっとも完成度の高いアルバムは?と聞かれたら僕はこの『SEVEN AND THE RAGGED TIGER』を選びます。それくらい、バンドの熱量と時代が求めるものとがぴったり一致した1枚だと思うのです。



▼DURAN DURAN『SEVEN AND THE RAGGED TIGER』
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投稿: 2018 04 30 12:00 午前 [1983年の作品, Duran Duran] | 固定リンク

2018年4月29日 (日)

BILLY IDOL『REBEL YELL』(1983)

そして『反逆のアイドル』は今年で35周年……やっぱりこういう邦題文化って素敵。

パンクバンドGENERATION Xのフロントマンだったビリー・アイドルが、1983年11月に発表した2ndフルアルバム。「Rebel Yell」(全米46位、全英62位)、「Eyes Without A Face」(全米4位、全英18位)、「Flesh For Fantasy」(全米29位、全英54位)、「Catch My Fall」(全米50位)とヒット曲が多数生まれ、アルバム自体も全米6位、200万枚以上を売り上げる好成績を残しています(一方でイギリスでは36位止まり)。

前作『BILLY IDOL』(1982年)の延長線上にあるポップでわかりやすいロックを軸にした作風ですが、本作ではとにかくビリーの相方スティーヴ・スティーヴンス(G)の才能が一気に開花したことで、そのサウンドはより独創的なものへと進化しています。

それはオープニングを飾る「Rebel Yell」1曲取り上げてもおわかりいただけるかと思います。オープニングのフィンガーピッキングを用いたリフ、バッキングひとつとっても派手ですし、おもちゃの光線銃をフィーチャーした独特なギターソロなんて圧巻の一言。これがあるとないとでは大きく異なりますよね。

かと思えば、アダルトな雰囲気の「Eyes Without A Face」があったり、キャッチーな「Catch My Fall」があったり、ヘヴィなギターリフが印象的な「Flesh For Fantasy」があったり。さらに疾走感に満ち溢れたハードロック「Blue Highway」や「(Do Not) Stand In The Shadows」、ニューウェイブの影響下にある不思議なバラード「The Dead Next Door」もある。これを元パンクロッカーがやっているのかと思うと複雑な気持ちにもなりますが、隣に立つハードロックギタリストの影響が強いんだろうなと考えれば不思議と納得できるんですよね。

ビリーは決して器用なシンガーではありませんし、パンク出身ということもあってか、変に作り込まれた楽曲よりもシンプルな楽曲のほうがその歌声が映える気がします。そういう意味では、本作における「Eyes Without A Face」「Flesh For Fantasy」あたりがギリギリのラインなのかなと思ったり。あと、アクが強すぎるがあまり、極端にポップ過ぎてもダメという。

そのへんのことを相方がよく理解していたからこそ、こういう奇跡的な1枚を作ることができたんでしょうね。実際、スティーヴが抜けたあとの作品はいろいろやろうとして失敗してますし。難しいものですね。



▼BILLY IDOL『REBEL YELL』
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投稿: 2018 04 29 12:00 午前 [1983年の作品, Billy Idol, Steve Stevens] | 固定リンク

2018年4月28日 (土)

LENNY KRAVITZ『ARE YOU GONNA GO MY WAY』(1993)

あら、『自由への疾走』も今年で25周年ですか……意外と名盤が多いのね、1993年って。

ということで、今回紹介するのはレニー・クラヴィッツが1993年3月に発表した通算3枚目のオリジナルアルバム。前作『MAMA SAID』(1991年)からのシングル「It Ain't Over 'til It's Over」が全米2位を記録し、アルバムも全米で200万枚を超えるヒット作に。デビューアルバム『LET LOVE RULE』(1989年)時の“黒いジョン・レノン”なんていう(良くも悪くも)印象的なフレーズを払拭し、ようやくスターダムにのし上がり始めたタイミングに放たれた、決定打となった1枚がこの『ARE YOU GONNA GO MY WAY』でした。

前作にもスラッシュ(GUNS N' ROSES)をフィーチャーした「Always On The Run」のようなロックチューンはあったものの、あくまで“黒人によるハードロック”的な解釈が強かったように思いますが、本作では黒っぽさは残るものの、それ以上にインパクトの強いオールドスクールなロックが展開されています。

オープニングを飾る「Are You Gonna Go My Way」なんて完全にジミ・ヘンドリクスですし、そこから続く「Believe」でのメランコリックな世界観は中期LED ZEPPELINにも通ずるものがある。シンプルなリズムとリフのみで構成された「Come On And Love Me」はファンクロック、「Just Be A Woman」はビートルズチックなバラードと、とにかくクラシックロックの黄金パターンがこれでもか!と言わんばかりに詰め込まれているのです。

後半もLED ZEPPELINばりに豪快なハードロックをプリンスのごとくひたすらファルセットで歌う「Is There Any Love in Your Heart」や、ソウルフルなミディアムチューン「Black Girl」、前作における「It Ain't Over 'til It's Over」的なオシャレソウル、7分にもおよぶサイケデリックバラード「Sister」、緩やかなレゲエナンバー「Eleutheria」など、個性的な楽曲ばかり。聴いてるうちに過去の偉人たちの顔が思い浮かびますが、それらをすべてレニクラ流に消化して自分のものにした、いかにも“ヒップホップ以降”のロックアルバム。それがこのアルバムの強さなんじゃないでしょうか。

アメリカでは12位と過去最高順位に達し、200万枚以上を売り上げた。イギリスでは初の1位も獲得しており、ここ日本でもアホほど売れました。表題曲はこれまでさまざまなテレビCMに使用されてきたので、どれだけ売れたのかと思いきや、実はアメリカではBillboard Hot 100入りしていないという事実にびっくり(方やイギリスでは最高4位を記録)。アルバムのヒットに反して、シングルは「Believe」(全米60位、全英30位)、「Heaven Help」(全米80位、全英20位)と意外に低調なのも興味深いですね。



▼LENNY KRAVITZ『ARE YOU GONNA GO MY WAY』
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投稿: 2018 04 28 12:00 午前 [1993年の作品, Lenny Kravitz] | 固定リンク

2018年4月27日 (金)

BLUR『MODERN LIFE IS RUBBISH』(1993)

このアルバムも今年で25周年。1993年5月にリリースされた、BLUR通算2作目のスタジオアルバム。マンチェスタームーブメントの恩恵を受け、デビューアルバム『LEISURE』(1991年)が全英7位、同作からのシングル「There's No Other Way」が全英8位と新人ながらも好成績を残したものの、この2ndアルバムでは大胆な方向転換に取り掛かり、“Very British”な作品を完成させます。

まだブリットポップ前夜の1枚ではあるのですが、このアルバムがブリットポップを象徴する1枚だという声も多く、そういう意味では本作が発表されたところでブリットポップムーブメントは始まっていたと言えるでしょう。

事実、ここに含まれている楽曲群は“いかにも小難しいイギリス人が書きそうな、ポップでキャッチーなのにどこかひねくれている”ものばかり。だけど、ところどころに引っ掛かりがあるせいか何度も聴きたくなる中毒性が高い。自分がBLURの作品中このアルバムがもっとも好きなのは、そういったところに理由があるのかもしれません。

名曲中の名曲「For Tomorrow」からスタートし、そこから軽やかなピアノが心地よいアップチューン「Advert」、ヘヴィさが際立つ「Pressure Of Julian」、BLURらしいポップさが際立つ「Star Shaped」と、序盤からクセの強い曲がズラリ。デーモン・アルバーン(Vo)の淡々としたボーカルと耳に残るグレアム・コクソン(G, Vo)のコーラス、そのグレアムによる鋭いギタープレイは全編にわたり聴き応えがあります。

中盤以降も「Chemical World」を筆頭に、途中インタールードを挟みつつ独自のテンポ感で進行。「Oily Water」みたいなサイケ色強めのミディアムチューンもあれば、イントロのギターフレーズが印象的な「Villa Rosie」、シンプルなギターリフがただひたすらカッコいい「Coping」、ダウナーさが際立つ「Resigned」と、1曲1曲の個性/クセが強い楽曲ばかり。当初はXTCのアンディ・パートリッジをプロデューサーに迎えて制作していたというのも、なるほど頷ける内容です(のちに方向性の違いで解任)。

聴く者を選ばずわかりやすさをとことん追求したOASISとは相反し、英国民の心に訴えかけるマニアックなサウンドを追求したBLUR。この両巨頭が1年後にここ日本を巻き込む一大ムーブメントを作り上げるなんて、このアルバムを初めて聴いた頃は想像もできなかったはず。それくらい、最初は地味な印象しかなかったので……だって、前作とこのアルバムの間に発表されたシングル「Popscene」みたいなアップテンポなロックナンバー皆無で、ミディアム中心にジリジリ攻める内容は派手なロック好きな自分には少々ストイックすぎて……。でも、気づけばこのアルバムがクセになって手放せなくなっていた。そんなスルメ的な名作です。



▼BLUR『MODERN LIFE IS RUBBISH』
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投稿: 2018 04 27 12:00 午前 [1993年の作品, Blur] | 固定リンク

2018年4月26日 (木)

SUEDE『SUEDE』(1993)

本国イギリスで1993年3月末、日本では同年4月頭にリリースされたSUEDEのデビューアルバム。前年に発表されたシングル「The Drowners」(全英49位)、「Metal Mickey」(同17位)のスマッシュヒットや、バイセクシャルをイメージさせるブレット・アンダーソン(Vo)の発言などもあり、バンドは急速に注目度を高め、アルバム直前のシングル「Animal Nitrate」はついに全英7位まで上昇。続くアルバムも当然のように全英1位に輝き、いきなり大ヒット作となったのでした。また、同作からは続いて「So Young」もシングルカットされ、全英22位にランクインしています。

ブリットポップ勃発直前に、こういった時代錯誤なグラムロック的バンドがシーンに登場するというのがいかにもイギリスらしく、当時ロックシーンのど真ん中にいたNIRVANAPEARL JAMのようなアメリカ産ロックバンドとは違った異端ぶりを発揮。そりゃあ食いつきますよね、僕。大好物ですもの、こういうバンド。

70年代のデヴィッド・ボウイやROXY MUSIC、80年代のU2(初期3部作に限定)やTHE SMITHSという我々がイメージするUKロック(厳密にはU2はUKじゃないけど)の延長線上にあり、のちに爆発的人気を博すBLURやOASISとは異なる“お家芸”を90年代初頭というマンチェスタームーブメント末期にドロップする心意気。時にヘヴィに、時に耽美にと変化するねちっこいバンドサウンドと同性愛や近親姦、獣姦などスキャンダラスなテーマを扱う歌詞。なのにキャッチーでわかりやすいメロディと、至るところに散りばめられている毒。ブレットの中性的な歌声と、バーナード・バトラー(G)の“裏メロ”と呼びたくなるくらいに歌いまくるギタープレイなど、特徴的なポイントを多数持ち合わせており、時代の変わり目に突如咲いた徒花のわりにアホほど売れた……いや、単なる徒花ではなかったことは、次作以降で証明されていくわけですが。

シングル曲の出来はもちろんのこと、それ以外の楽曲も本当に素晴らしい。「She's Not Dead」や「Pantomime Horse」、「Sleeping Pills」「The Next Life」など本当に捨て曲なし。シングル曲はミドルテンポのロックチューンばかりですが、アルバムでたっぷり聴ける繊細なバラードナンバーもこのバンドの大きな魅力と言えます。次作以降、そういった面をシングルでも切っていくことで、そういった要素はさらに広く伝わっていくことになるのですが、まあスキャンダラスさを打ち出すという意味においてはデビュー作からのシングルの切り方としては間違ってなかったのかもしれませんね。

とにかく名盤。文句なしの名盤。もちろん、2ndアルバム『DOG MAN STAR』(1994年)も3rdアルバム『COMING UP』(1996年)も名盤ですけど、この輝きや存在感はデビュー作ならではのもので、別格ではないでしょうか。

リリースから今年で25年。先日、レアトラックを多数収録した4CD+DVDのボックスセットも発売されたばかりですが、こちらとしてはもっと気軽に90年代の作品が聴ける環境を作ってほしいなと思っているのですが。意外ですよね、ベスト盤以外の再結成前の諸作品が配信されていないのって。



▼SUEDE『SUEDE』
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投稿: 2018 04 26 12:00 午前 [1993年の作品, Suede] | 固定リンク

2018年4月25日 (水)

THE POLICE『SYNCHRONICITY』(1983)

乃木坂46通算20枚目のシングル『シンクロニシティ』発売および大ヒット、おめでとうございます。

ということで、今日はこのタイトルを最初に知ったとき、オッさんリスナー誰もが思い出したであろうTHE POLICEの5thアルバムにして最終作となった『SYNCHRONICITY』を紹介したいと思います。

アルバムを出すごとに本国イギリス以上にアメリカで大きなヒットを飛ばし始めたTHE POLICE。前作『GHOST IN THE MACHINE』(1981年)はついに全米2位、300万枚ものヒット作となりました(イギリスでは当然のように1位獲得)。また、同作からは「Every Little Thing She Does Is Magic」(全英1位/全米3位)というヒットシングルも生まれ、あとはどのタイミングで全米1位を獲得するのかと、誰もが注目しているところでした。

そんな中、先行シングル「Every Breath You Take」に続いて1983年6月に発表されたのが、本作『SYNCHRONICITY』。「Every Breath You Take」はイギリスのみならずアメリカでも初の1位を獲得し、しかも8週連続1位という偉業を成し遂げました。アルバムのほうもこれに続いて全米1位を獲得。さらに「Wrapped Around Your Finger」(全英7位/全米8位)、「Synchronicity II」(全英17位/全米16位)、「King Of Pain」(全英17位/全米3位)とヒットシングルが多数生まれ、結果アメリカでは800万枚を超えるメガヒット作となったのでした。

パンクにレゲエをミックスしたシンプルなバンドサウンドからスタートしたTHE POLICEが、7年程度でたどり着いた到達点。テクニカルなバンドアンサンプルを多用した「Synchronicity I」のようなロックチューンから民族音楽的な「Walking In Your Footsteps」、アンディ・サマーズ(G)が歌う国籍を感じさせない「Mother」、ラテンポップロックと読んでも差し支えない「Miss Gradenko」、ギターがパワフルなハードロック「Synchronicity II」など、楽曲としてはかなりバラエティに富んだ印象の強いアルバムです。

そこから、スティング(Vo, B)の淡々とした歌い出しがストーカーまがいな歌詞と妙にマッチする「Every Breath You Take」で後半戦に突入。以降、「King Of Pain」「Wrapped Around Your Finger」とヒット曲が続き、アナログ盤はジャジーさすら感じさせるレゲエソング「Tea In The Sahara」で幕を下ろします。そこにCDやカセットではさらに、「Murder By Numbers」というのちのスティングのソロ活動につながる1曲が追加されています。

スティング、アンディ・サマーズ、スチュワート・コープランド(Dr)と創作意欲も演奏技術も優れた、エゴの強いミュージシャンが作り出した終着点。いろんな意味で、バンドとしても臨界点に突入していたんでしょうね。本作を携えたワールドツアーを終えると、バンドは活動休止に突入。スティングはジャズに傾倒したソロアルバム『THE DREAM OF THE BLUE TURTLES』(1985年)を発表し、THE POLICEに次ぐ成功を収めます。そして1986年、再びスタジオ入りした3人でしたが、結局過去のヒット曲「Don't Stand So Close To Me」のリメイクバージョン1曲を残したのみで、THE POLICEは長い沈黙に入るのでした。



▼THE POLICE『SYNCHRONICITY』
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投稿: 2018 04 25 12:00 午前 [1983年の作品, Police, The] | 固定リンク

2018年4月24日 (火)

MANIC STREET PREACHERS『RESISTANCE IS FUTILE』(2018)

MANIC STREET PREACHERS通算13枚目のスタジオアルバム。ってそんなに出してたのかと改めて驚かされます。まあ、バンドがデビューして早27年。2年に1枚ペースで出している計算ですよね。ところが本作、スタジオ新作としては実に3年9ヶ月ぶりと過去最長インターバルなんですよね。とはいえ、ここ数年は4thアルバム『EVERYTHING MUST GO』(1996年)の20周年盤や8thアルバム『SEND AWAY THE TIGERS』(2007年)の10周年盤なんかも出てたので、そんなに間隔が空いたような印象も受けず。不思議なものです。

前々作『REWIND THE FILM』(2013)と前作『FUTUROLOGY』(2014)は同時進行で制作された、対となる連作でした。なので、作風的にも前者はオーガニックでアダルト、後者はエレクトロ色強めで攻めるという違いがありましたが、今作はどうかというと……従来のMANICS節はそのままに、若干落ち着いた印象があることから、『REWIND THE FILM』をよりロックサイドに寄せたイメージを受けました。

昨年末から「International Blue」「Distant Colours」「Dylan & Caitlin」「Liverpool Revisited」といったデジタルシングルを小出しにして話題作りに専念してきた彼ら。確かに、長期にわたりこうしたプロモーションを続けるのは今の風潮に合ったやり方と言えるでしょう。特に、90年代のMANICSはシングル切りまくりでヒット曲を連発させてきたバンド。2000年代後半以降こそヒットシングルに恵まれないものの、こうして「良い曲、たくさんありますよ?」とアピールするのは、このバンドの場合間違ってない気がします。

勇ましさがありつつもどこかドリーミーという黄金MANICS節を効かせたキラーチューン「People Give In」から幕を開けるこのアルバムは、以降上記のシングル曲が連発し、すでに馴染み深いアルバムのような錯覚を与えてくれます。そんな名曲群の合間に登場する「Vivian」の、サビに絡みつく裏メロギターソロがまた気持ち良いのなんの。

後半は初出の新曲目白押しで、これがまた良いんです。グッとロック度の増した「Sequels Of Forgotten Wars」を筆頭に、ゆったりとしたリズムとアンセム度の強いシンガロングが耳に残る「Hold Me Like A Heaven」、前作からの余韻を感じさせる「In Eternity」、久しぶりに攻撃的なギターリフが聴けるパンキッシュな「Broken Algorithms」、これも王道感満載なキラーチューン「A Song For The Sadness」、かなり落ち着いた印象のラストチューン「The Left Behind」と完璧な流れ。全12曲捨て曲なしの、完璧なまでに真っ当な“MANICSのロック/ポップアルバム”と断言できます。もはやこれは焼き直しとかそういう次元ではなく、MANICSがMANICSであることを、次の時代に継承しようとする生き様の表れなのです。

どこにも無理矢理さや肩肘張った感じがなく、すごくナチュラルに良曲が並ぶ。そんな曲が1曲あるだけでもすごいのに、それが12曲並ぶのですから……彼らはここにきて、キャリア何度目かの黄金期に突入したのかもしれませんね。ここまで吹っ切れていると、本当に気持ちよく楽しめるんですよ。

「International Blue」のMV然り、アートワーク然り、日本を強くイメージさせる作品ですので、ぜひ1日も早く日本に戻ってきてもらいたいところです。いやあ、アルバム曲をライブで聴くのが今から楽しみだ。



▼MANIC STREET PREACHERS『RESISTANCE IS FUTILE』
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投稿: 2018 04 24 12:00 午前 [2018年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

2018年4月23日 (月)

SIGUE SIGUE SPUTNIK『FLAUNT IT』(1986)

1986年3月にリリースされた、SIGUE SIGUE SPUTNIKのデビューアルバム。元GENERATION X(ビリー・アイドルが在籍したパンクバンド)のトニー・ジェイムス(G)が在籍するということ以上に、80年代半ばにおいてもどこか時代錯誤に感じられた奇抜なファッションと、単調なデジタルビートを基盤にしたチープな音楽性で良くも悪くも話題となったバンドですが、デビューシングル「Love Missile F1-11」は全英3位を記録。続く2ndシングル「21st Century Boy」は全英20位と順位を落とすものの(そりゃそうでしょう、デビュー曲とほぼ同じ曲調ですし)、アルバムは全英10位とまずまずの成功を収めます。

僕も当時、『ミュージックライフ』などの音楽誌で彼らのことを知り、あの馬鹿馬鹿しいまでのルックスに惹かれ、さらにMTVなどで「Love Missile F1-11」のMVを観て(初めて音を聴いて)いろんな意味で衝撃を受けるわけです。「これがフューチャーロック、フューチャーパンクか……」と感銘を受け……るわけないですよね、さすがの中坊でも(苦笑)。

でもね、この曲が癖になるんですよ。単調なデジタルビートにエフェクトかけまくりのボーカル、オールドスタイルのギタープレイ。気づけば、何度もリピートしていた自分がいて……たぶん、実家に7インチシングル、残ってるんじゃないかな?

で、アルバム。さすがに自腹で購入せずレンタルで済ませましたが(笑)、まずはそのジャケットに驚かされるんじゃないでしょうか。妙な日本語が散りばめられていたり、どこかで見たことのあるロボットが描かれていたり……彼らにとっての“近未来”とは日本、いや、東京そのものなんでしょうかね。で、オープニングの「Love Missile F1-11」がバージョン違いで日本語が入ってきたりでさらに驚かされ、2曲目「Atari Baby」で早くもテンポを落とすものの、続く「Sex Bomb Boogie」以降はしばらく同じテンポ感、同じビート感、同じ曲調が延々と続きます……続くのです(苦笑)。

こうやってアルバム通して聴くと、実は「Love Missile F1-11」ってよく作り込まれた楽曲だったんだなと、改めて実感させられます。そして、いろんなところで言われていると思いますが、FRANKIE GOES TO HOLLYWOODにも通ずる“ハリボテ”も強かったりして、そのニセモノ感が受け入れられるかどうかで評価も大きく変わるバンド/アルバムかもしれません。

が、そこまでの高評価が似合わないのも、このバンドらしいというか。名盤というよりは迷盤として語り継がれるのが、彼らにはぴったりかもしれませんね。

とはいえ、音楽史的には非常に意味の大きい1枚なんですよね。だって、このアルバムがなかったら、その後の布袋寅泰の『GUITARYTHM』シリーズもなかったでしょうし、かのロマンポルシェ。も生まれなかったでしょうから(それは言い過ぎ?)。



▼SIGUE SIGUE SPUTNIK『FLAUNT IT』
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投稿: 2018 04 23 12:00 午前 [1986年の作品, Sigue Sigue Sputnik] | 固定リンク

2018年4月22日 (日)

THE DAMNED『EVIL SPIRITS』(2018)

結成から40年を超えたTHE DAMNEDの、前作『SO, WHO'S PARANOID?』(2008年)以来10年ぶりの新作(通算11枚目)。前作も7年ぶりでしたし、そもそもライブで求められるのは初期の楽曲中心でしょうから、新作が求められているのかどうか微妙ですが……ここは素直に音を評価してみたいと思います。

現在のメンバーはデイヴ・ヴァニアン(Vo)、キャプテン・センシブル(G, Vo)のオリジナルメンバーのほか、モンティ・オキシモロン(Key)、ポール・グレイ(B)、ピンチ(Dr)。ベースのポールは80年代初頭に在籍したことがあり、昨年前任のスチュ・ウェストと入れ替わりで再加入したばかり。

プロデューサーはデヴィッド・ボウイなどでおなじみのトニー・ヴィスコンティ。サウンド的には80年代以降のサイケデリックロックやゴシックロックの延長線上にある、およそパンクロックとは呼びがたいもの。1stアルバム『DAMNED DAMNED DAMNED』(1977年)や3rdアルバム『MACHINE GUN ETIQUETTE』(1979年)の路線を期待して臨むと痛い目を見ることでしょう。

とはいえ、彼らが今やパンクロック主体で活動していないことは、その動向を追っていればなんとなくわかっているはず。なので、そういう広い心でアルバムに臨むと……あれ、意外と良いんじゃない? と思えてくるから不思議です。

THE DOORSあたりを彷彿とさせるサイケガレージロック「Standing On The Edge Of Tomorrow」を筆頭に、序盤はスルスル聴き進められるはず。かと思うと、どこか土臭い壮大さのある“聴かせる”ミディアムナンバー「Look Left」、小気味良いシャッフルビートの「Sonar Deceit」「Daily Liar」、ジャジーなピアノバラードからドラマチックな展開を見せる映画のサントラみたいな「I Don't Care」と、意外とバラエティに富んだ楽曲群がずらりと並びます。

正直、僕は90年代以降のTHE DAMNEDをちゃんと聴いてきたわけではありませんが、これは80年代諸作品に非常に近い作風で、僕個人としてはなかなか聴き応えのある1枚だと思いました。デイヴ・ヴァニアンの落ち着いたトーンの歌声も気持ち良いですし、なによりも全体を覆うオルガンサウンドの気持ち良さといったら。初期パンクの固定観念さえ切り離せれば、普通に気持ちよく楽しめる1枚だと思いました。

なぜかホラー映画のサウンドトラックを聴いてるような、不思議な感覚に陥る作風・構成。アルバムジャケットもそれっぽいですもんね。単純に自分がホラーマニアだからか、この“架空のサウンドトラック”は新しさ皆無ながらも自分のツボにハマる、なかなかの好盤でした。



▼THE DAMNED『EVIL SPIRITS』
(amazon:海外盤CD / MP3

投稿: 2018 04 22 12:00 午前 [2018年の作品, Damned, The] | 固定リンク

2018年4月21日 (土)

HAREM SCAREM『VOICE OF REASON』(1995)

カナダ出身の4人組バンドHAREM SCAREMの3rdアルバム。前作『MOOD SWING』(1993年)がここ日本で高く評価されたこともあり、続く今作にも大きな期待が寄せられましたが、いざ完成したアルバムは大方の期待を裏切るような作風でした。

グランジやモダンヘヴィネス系がロックシーンに台頭し、メロディアスでビッグプロダクションがぴったりな“産業ハードロック”が時代遅れと言われ始めた時期に登場した『MOOD SWING』は、そういったガヤを吹き飛ばすほど完成度の高い1枚でした。特にここ日本では後追いで発売されたデビューアルバムも人気を博し、HAREM SCAREMといえばこの2枚!みたいなイメージが出来上がったタイミングに届けられた、待望のニューアルバム……きっと多くのファンが「HAREM SCAREMよ、おまえもか!」と落胆したんでしょうね。

『MOOD SWING』と比べたらだいぶ落ち着いた、全体を覆うダークめな空気感は確かに90年代前半特有のものだったのかもしれません。しかし、別に彼らはグランジのおこぼれをもらおうと思ってこういうサウンドにシフトチェンジしたわけではなく、あくまでこの要素も自分たちのルーツの中に存在しているものとして、前作と違うものを目指した結果がこれだっただけなんじゃなかろうか。今にしてもるとそう思うわけです。

さて、本当にこのアルバムは“HAREM SCAREMらしくない”作品なのでしょうか?

僕、そこが常々疑問だったんです。だってこれ、めっちゃ良いアルバムじゃないですか? 確かに『MOOD SWING』は完璧なまでに時代と逆行した、80年代に思いを馳せた完全無欠のハードロックアルバムだったと思います。では、今作はどうかというと、逆に時代に寄り添いつつ自分たちがやりたいことに全力でトライした。やろうとしたこと自体は『MOOD SWING』もこの『VOICE OF REASON』もほぼ同じだったはずなんです。ただ、作品をまとめ上げるうえでのベクトルがまったく逆だっただけ。それによって、当時グランジのように粗暴なサウンドに拒否反応を示していた従来のHR/HMリスナーから敬遠されてしまった。そういう不幸な1枚だったのではないでしょうか。

オープニングを飾る「Voice Of Reason」からシングルカットされた「Blue」、さらに冒頭のピアノの音色が醸し出す切なさが半端ない「Warming A Frozen Rose」という流れも非常に気持ち良いし、なによりもその「Blue」はHAREM SCAREMらしさに満ち溢れた完成度の高い1曲ですし。アルバム後半も「Breathing Sand」を筆頭に、どこかシアトリカルなテイストが感じられる楽曲が多く、本当に聴き応えのある作品。イントロこそダークだけど、「Candle」もメロディアスかつダイナミックな1曲ですし……なんでこれが嫌われなくちゃいけないんだろう……。

1stアルバム『HAREM SCAREM』(1991年)と2枚目『MOOD SWING』のインパクトが強かった、しかもその2枚のイメージが強かったおかげで、3枚目のトライが受け入れられなかった。すべて時代のせいなのか、それとも……今こそ再評価してほしい1枚です。あと、デジタル配信もぜひお願いします!



▼HAREM SCAREM『VOICE OF REASON』
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投稿: 2018 04 21 12:00 午前 [1995年の作品, Harem Scarem] | 固定リンク

2018年4月20日 (金)

EXTREME『WAITING FOR THE PUNCHLINE』(1995)

1995年1月にリリースされた、EXTREME通算4作目のスタジオアルバム。大ブレイクのきっかけとなった2ndアルバム『PORNOGRAFFITTI』(1990年)が全米10位(200万枚超)、続く3rdアルバム『III SIDES TO EVERY STORY』(1992年)も全米10位(50万枚超)とそれなりの成功を収めますが、時代の潮流がHR/HMからグランジ的なものへと移行したことから人気も下降気味に。そういった中で、この4thアルバムの制作途中でポール・ギアリー(Dr)が脱退するというハプニングもあり、バンドとして苦境に立たされる中なんとか完成まで漕ぎ着けた1枚といえるでしょう。

とはいえ、アルバム自体はそういったネガティブな要素を吹き飛ばすような内容……でもないか(苦笑)。ええ、過去3作にあった“陽”の要素は完全に影を潜め、ひたすらダークな空気で覆われたヘヴィでザラついた作風なのです。それこそ、彼らの代名詞的な要素であった、ファンクメタルの要素も皆無。ダンサブルなカラーは若干あるものの、ファンクのそれとは一線を画するものですし。なので、このバンドに何を求めるかによっては、本作の評価は大きく異なるかもしれません。

もちろん、1枚のロックアルバムとしては非常に聴き応えのある強力なもので、例えば過去2作がAEROSMITHQUEEN的な溌剌とした“パッション命!”なアルバムだとしたら、本作はLED ZEPPELINあたりが持ち合わせた、音楽的実験と向き合いながら己の内面をサウンドで構築していく作法が用いられているような気がします。

それもあってか、サウンドプロダクションも80年代的なふくよかなものとは異なり、90年代前半らしいドライ&デッドな質感。ヌーノ・ベッテンコート(G)のギターサウンドのざらつき加減は好き嫌いが分かれそうですが、このアルバムに関して言えば非常にマッチしたものだと思うんです。プレイ自体も彼らしいテクニカルさを随所に織り交ぜているものの、派手になりすぎない“加減のわかった”奏法ですし。

ポールの後任として加入したのは、のちにDREAM THEATERに加入することになるマイク・マンジーニ。本作ではシングルカットされた「Hip Today」や「Leave Me Alone」「No Respect」の3曲のみに参加していますが、「Hip Today」でのシンプルながらも随所に派手なフィルをフィーチャーしたドラミングはキラリと光るものがあるし、なによりも「No Respect」の派手さは圧巻。特にヌーノの流麗なアコースティックギタープレイを味わえるから「Leave Me Alone」へ、そのまま「No Respect」へと続く構成は本作のハイライトと言えるでしょう。

ゲイリー・シェローン(Vo)のボーカルもこういったダークめのサウンドに合っていると思うし、何気にEXTREMEにおける裏名盤なんじゃないでしょうか。『PORNOGRAFFITTI』と双璧をなす、陽と陰を表す2作品だと思います。



▼EXTREME『WAITING FOR THE PUNCHLINE』
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投稿: 2018 04 20 12:00 午前 [1995年の作品, Extreme] | 固定リンク

2018年4月19日 (木)

FM『ATOMIC GENERATION』(2018)

90年代のブリティッシュHR/HMファンの間では、おそらくTHUNDERと同系統のバンドとして評価されているFM。THUNDER同様、彼らも90年代半ばに一度解散を経験していますが、2007年の再結成以降、『METROPOLIS』(2010年)を機に定期的に新作を発表してくれています。

今作『ATOMIC GENERATION』は彼らにとって通算10作目にあたる、記念すべき1枚。オリジナルアルバムとしては『HEROES AND VILLAINS』(2015年)から3年ぶりとなりますが、その間にデビューアルバム『INDISCREET』(1986年)の再録アルバム『INDISCREET 30』(2016年)を挟んでいるので、意外とそこまで時間が経っていない印象があります。

初期2枚(『INDISCREET』と1989年の2ndアルバム『TOUGH IT OUT』)は産業ハードロック的な印象を持っていましたが、3作目の『TAKIN' IT TO THE STREET』(1991年)あたりから伝統的なブリティッシュハードロックに傾倒し始め、個人的にも「『TOUGH IT OUT』は素晴らしかったけど、これはこれで良いかも」と好意的に受け入れていました。

今回の『ATOMIC GENERATION』も、比較的『TAKIN' IT TO THE STREET』以降の路線に近いのですが、単なる「王道の継承」というよりは「80年代的なAOR/産業ハードロックのルーツ部分も残しつつ、王道ブリティッシュハードロックと融合させていく」という独自のスタンスを取っているように感じられます。

特に、序盤5曲の流れは適度にハードで心地よいメロディを兼ね備えた、大人のハードロックを楽しむことができます。THUNDERと比較されがちだけど、このへんは例えばJOURNEYFOREIGNERあたりにも通ずるものがあるんじゃないでしょうか。

かと思うと、6曲目「Playing Tricks On Me」でブラスセクションをフィーチャーしたソウルフルなミディアムナンバーをぶち込んできます。ここまでくると、もはやハードロックというよりはサンタナあたりのアダルトなAORと呼んでも違和感ないくらいの作風。続く「Make The Best Of What You Got」も若干黒っぽさを表出させたロックンロールで、サビに入る前までの流れにFOREIGNERをちょっと思い浮かべたり。「Follow Your Heart」もその系統ですよね。

で、9曲目にしてこのアルバム初のバラード「Do You Love Me Enough」が登場。大人の渋みを感じさせる落ち着いたトーンで、コーラスの入れ方も絶妙。そこから大きなノリの「Stronger」、切ないアコースティックバラード「Love Is The Law」で締めくくる。この余韻を残す終わり方も、なかなかだと思いました。

正直、再結成後の彼らの作品はそこまで真剣に聴いてこなかったし、ピンとくるアルバムもそこまでありませんでした。が、これは全体のバランス含めてすごく良いんじゃないでしょうか。派手さは皆無ですが、じっくり腰を据えて向き合うことができるスルメ系な1枚。入門編としても最適だと思いますよ。



▼FM『ATOMIC GENERATION』
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投稿: 2018 04 19 12:00 午前 [2018年の作品, FM] | 固定リンク

2018年4月18日 (水)

FAIR WARNING『FAIR WARNING』(1992)

ドイツ出身のメロディアスハードロックバンドFAIR WARNINGが、1992年に発表したデビューアルバム。ドイツ本国では同年3月、日本では半年遅れて9月にリリースされましたが、音専誌などで高く評価されたことから翌1993年には初来日公演も実現。本国以上にここ日本で強い支持を誇る、“ビッグ・イン・ジャパン”的な存在のひとつです。

もちろん、それだからといって一発屋だとか作品が一過性のものだとか、そんなことはまったくなく、リリースから25年以上経った今聴いても非常に優れたハードロックアルバムであることには間違いありません。

昨日紹介したPINK CREAM 69同様、このバンドもいわゆるジャーマンメタル的なカラーを持ち合わせない存在のひとつで、ウレ・リトゲン(B)とヘルゲ・エンゲルケ(G)の書くヨーロッパのバンドらしい哀愁味強めのメロディを武器に、それらを非常に卓越したバンドアンサンブルとフロントマンであるトミー・ハート(Vo)の圧倒的なボーカルで表現することにより生まれるマジックで、このデビュー作は埋め尽くされている。それがすべてだと思います。

「Out On The Run」や「The Heat Of Emotion」(かのジノ・ロートによる書き下ろし曲)といったメロウなアップチューン、「When Love Fails」「One Step Closer」「Take A Look At The Future」をはじめとする聴き応えのあるミディアムナンバー、そして「The Call Of The Heart」「Long Gone」「Take Me Up」などこのバンドにとって大きな武器のひとつであるメロディアスなバラードなど、どこをどう切り取っても名曲ばかり。

かと思えば、「The Eyes Of Rock」みたいにメジャーキーの疾走ナンバー、シンセを味付けに加えることでキラキラ度が増す「Hang On」のような楽曲もあり、同系統の楽曲一辺倒では終わらない。ヨーロッパを基盤にしたバンドにアメリカンフレイバーを散りばめるという点においては、先に名前を挙げたPINK CREAM 69と共通する要素も多々ありますが、ボーカリストのカラーが違うと印象もここまで変わるんだな、ということを強く実感できるはず。僕はアンディ・デリスタイプのシンガーが好きだったので、最初こそFAIR WARNINGには苦手意識があったけど、ちゃんとアルバムを聴くとその曲の良さに気づかされ、いつの間にか苦手意識もなくなっていました。

そういった意味ではこのバンド、同郷の大先輩であるSCORPIONSの80年代以降のスタンスに近いものがあるのかもしれません。そう考えると、『LOVE AT FIRST STING』(1984年)以降のSCORPIONSとの共通点も見えてくるのではないでしょうか。

その後も名作と呼ばれる作品を数々発表していますが、トータルとしての完成度の高さはこのデビュー作が随一だと思っています。



▼FAIR WARNING『FAIR WARNING』
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投稿: 2018 04 18 12:00 午前 [1992年の作品, Fair Warning] | 固定リンク

2018年4月17日 (火)

PINK CREAM 69『ONE SIZE FITS ALL』(1991)

ドイツ出身のハードロックバンド、PINK CREAM 69が1991年2月に発表した2ndアルバム。日本では同年5月に発表されており、今作にて日本デビューを飾りました。

当時のメンバーはアンディ・デリス(Vo, G/現HELLOWEEN)、アルフレッド・コフラー(G)、デニス・ワード(B)、コスタ・ツァフィリオ(Dr)で、アンディとアルフレッドのみドイツ人。デニスはアメリカ人、コスタはスイス人という、ドイツ出身ながらも編成は多国籍なバンドでした。それも影響してか、そのサウンドは当時主流だったクサメロによるジャーマンメタルとは一線を画する、アメリカンハードロックに近いものでした。

確か僕は当時、本作のオープニングを飾る「Livin' My Life For You」をラジオで最初に聴き、それでしばらくしてから発売された国内盤を手に取ったのかな。日本人好みのメロディと適度な疾走感とハードなサウンドに、当時すでにブレイクしていたFIREHOUSEや、80年代のDOKKENあたりにも通ずる魅力を感じたことをよく覚えています。

アルバム自体も、とてもドイツ出身バンドとは思えないくらいジャーマンメタルとはかけ離れたもので、ヘヴィメタル調のサウンドに不思議なハーモニーを乗せた「Hell's Gone Crazy」や、どこかWINGERあたりに似たものを感じる「Do You Like It Like That」、プログレッシヴなパワーバラードといった印象の「Ballerina」とひと癖もふた癖もある楽曲がずらりと並びます。

後半もリフがひたすらカッコいいアグレッシヴな「Signs Of Danger」を筆頭に、不思議な変拍子を取り入れた「Walkin' Out To Heaven」、演奏力の高さがキラリと光る「Piggy Back Bitch」、アコースティックギターの切ないメロディが耳に残るバラード「Where The Eagle Learns To Fly」などなど、印象的な楽曲が目白押し。アメリカンなカラーもありつつ、歌メロにヨーロッパのバンドらしい泣きの要素や湿り気の強いメロディも至るところに散りばめられており、そこがこのバンドの独特な魅力確立に一役買っています。

セルフタイトルのデビューアルバムもあとから国内盤がリリースされ、追って聴くと本作に勝るとも劣らない名盤だったわけですが、個人的にはこの2枚目のほうが好きだったりします。それはアンディが参加した3作品中もっとも「アンディ・デリス色の強いアルバム」だからなのかな。実際、のちの参加するHELLOWEENにも通ずる要素がいろんな曲から感じられますし。自分がアンディ加入後のHELLOWEENが好きなのは、そういう理由もあるのかもしれませんね。

現在は別のシンガーを加え、独自のスタンスで活動を続けるPINK CREAM 69。今も悪いわけじゃないけど、個人的にはあまり引っかからないのは、上記のような理由も大きいんでしょう。

追伸。AppleMusicやSpotifyでは1stと3rd『GAMES PEOPLE PLAY』(1993年)は配信されているのに、この2ndは未配信というのは、何故なんでしょうね。勿体ない。



▼PINK CREAM 69『ONE SIZE FITS ALL』
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投稿: 2018 04 17 12:00 午前 [1991年の作品, Helloween, Pink Cream 69] | 固定リンク

2018年4月16日 (月)

ENUFF Z'NUFF『TWEAKED』(1995)

日本では1994年11月に、海外では翌1995年にリリースされたENUFF Z'NUFFの4thオリジナルアルバム。1994年5月に発売された、初期のデモ音源をまとめた『1985』は当初企画アルバム扱いでしたが、のちにこちらが4thアルバムとして認識されているようになり、この『TWEAKED』が5thアルバムに繰り下げとなっています。

メジャーのAtlantic Recordsからデビューし、2枚のアルバムを発表後、3枚目の『ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE』(1993年)をArista Recordsからリリースするも、1枚で契約終了。『1985』からインディーズに拠点を移し、この『TWEAKED』もインディーズからのリリースとなりました。

それもあってなのか、本作のサウンドは過去3枚と比較すると非常にチープで生々しいプロダクションです。もちろん、80年代的なビッグプロダクションが時代遅れになっていたというのもあるでしょうが、それにしてももう少しどうにかできなかったのかなと思うものの、今作が今後リマスターなりされる機会もまずないでしょうから、これはこういうものとして受け取ることにしましょう。

内容についてですが、録り下ろしオリジナル作品として前作にあたる『ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE』に多少孕んでいたグランジなどダークなロックからの影響は本作にも見え隠れしますが、当時言われたほどグランジ的なカラーは今聴くと感じられない気がしていて。むしろ、2ndアルバム『STRENGTH』(1991年)にあったダークさに近いようなイメージかもしれません。要するに、このカラーって彼らが本来持ち合わせていたもの……例えばビートルズにおけるジョン・レノンの色だったり、CHEAP TRICKのヘヴィさだったり、そういうものと同質なんじゃないかなと。

そして、ダークかつヘヴィだからといってポップではない、なんてこともなく。どの曲にも彼ららしいメロディアスさがしっかり混在していますし、中には「My Dear Dream」や「We're All Alright」「It's 2 Late」みたいな極上のポップチューンも含まれている。すべてがすべて、この3曲のようではないけれど、それでもENUFF Z'NUFFというバンドの本質的な部分はしっかり感じられる。いや、むしろこのバンドが本来どういうルーツを持つバンドなのかが、初期3作、さらにはデモ音源集『1985』以上に色濃く刻まれているのではないか。その後彼らが進んだ道を認識すればするほど、この『TWEAKED』という作品は非常に重要な1枚だったのではないかと思うわけです。

冒頭の「Stoned」から重々しいですが、そんな中にもキラリと光るメロディアスさとセンスがしっかり感じられる。曲によっては従来のグラマラスさに加え、ブルースフィーリングあふれるナンバーも混在しており、内向的な作風に花を添えています。『STRENGTH』を好むようなリスナーにはうってつけの1枚ではないでしょうか(だからこそ、サウンドプロダクションがもう少し……ね。苦笑)。

最後に、ジャケットについても。本作は2タイプのジャケットが存在しており、初版はアイルランドの葬儀の様子をとらえた写真が用いられており、作品本来がもつダークさと相まって不気味さを醸し出しています。が、のちの再発では不気味かつサイケなイラストが用いられており、こちらもこちらでどうかと思うもの。僕は初版のジャケが気に入っています。



▼ENUFF Z'NUFF『TWEAKED』
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2018年4月15日 (日)

DIZZY MIZZ LIZZY『DIZZY MIZZ LIZZY』(1994)

ティム・クリステンセン(Vo, G)率いる、デンマーク出身のトリオバンドDIZZY MIZZ LIZZYによるデビューアルバム。本国では1994年3月に、ここ日本では1995年1月に発表された本作は、特にここ日本では収録曲「Glory」が高く評価されたこともあり、10万枚を超えるヒット作となりました。

ハードロックからの影響を感じさせつつも、グランジ以降のオルタナロック色が強いバンドアンサンブル、北欧のバンドらしく哀愁味漂うメロディが混在する独特のスタイルは、同時期に活躍したアメリカやイギリスのバンドにはないもの。なおかつ、ハードロックファンをも魅了するこのスタイルは、グランジは受け付けなかった日本のロックファンからもそれなりに評価されたようでした。

確かに「Glory」1曲を聴いただけでは、HR/HMファンが喜びそうなメロディ、フレーズが目白押しかと思います。実際、90年代を代表する名曲のひとつではることには間違いありませんが、このバンドの本質って実はこの曲よりも「Waterline」や「Barbedwired Baby's Dream」「67 Seas In Your Eyes」あたりから感じられる独特なバンドアンサンブルだと思うのです。

そういえば、同じトリオ編成ということで、当時RUSHあたりと比較する声があったのも、今となっては懐かしいですね。もちろん、音楽性はまったく異なりますけど、言わんとしてることは理解できます。ポール・マッカートニーみたいな名ソングライターと、LED ZEPPELINやRUSHみたいに独自のグルーヴ感を生み出すバンドが合体したような存在なわけですからね。

アルバムのオープニングを飾る「Waterline」のシンコペーションを効かせたバンドプレイやパートによってテンポ感が変化するアレンジ、「67 Seas In Your Eyes」あたりで自然に飛び込んでくる変拍子、「Silverflame」のサビでみせる独特なメロディの刻み方、などなど。ソングライティング力の高さはもちろんのこと、バンドとしての演奏力の高さやアレンジ力に優れている点など特筆すべきポイントがたくさんありまして。要するに、「Glory」1曲だけでは語りきれない魅力があるからこそ、このバンドは現在に至るまで長きにわたり愛され続けているわけです。

ソングライティングに関しては、特にティム・クリステンセンという稀代のソングライターによるところも大きく、90年代末にこのバンドが解散して以降もソロアーティストとして日本でも高評価を獲得し続けている事実からも、その実力が伺えるのではないでしょうか。

とにかく、捨て曲なしの約55分(日本盤ボーナストラック除く)、頭からラストまでぶっ続けて聴いてその魅力をたっぷり堪能してほしいと思います。



▼DIZZY MIZZ LIZZY『DIZZY MIZZ LIZZY』
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投稿: 2018 04 15 12:00 午前 [1994年の作品, Dizzy Mizz Lizzy] | 固定リンク

2018年4月14日 (土)

D-A-D『NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS』(1989)

デンマークの4人組ハードロックバンド、D-A-Dが海外で1989年3月、ここ日本では同年12月に発表された世界デビューアルバム(本国では通算3作目)。もともとはDISNEYLAND AFTER DARKというバンド名でしたが、ワールドワイドデビューを機に現在のD-A-Dに改名。ぶっちゃけ、記号性の強い今の表記のほうがカッコいいですけどね。

デンマーク出身のバンドなんですが、サウンド的にはAC/DCっぽいストロングスタイルのハードロックとパンク以降の疾走感、どこかウェスタンを彷彿とさせるカラッとしたギターサウンド、そこに北欧らしい湿り気の強いメロディが乗るというアンバランスさがこのアルバムの魅力。オープニングナンバー「Sleeping My Day Away」や「Point Of View」といったマイナーキーの楽曲に、そういった泣きの要素が強く反映されており、リリース当時ここ日本でも「Sleeping My Day Away」はラジオヒットした記憶があります。

かと思うと、上にも書いたように「Jihad」や「Rim Of Hell」「Girl Nation」で聴けるAC/DC的なロックンロール、「ZCMI」「True Believer」みたいなマカロニウエスタンテイストのアップチューン、メタリックな「Ill Will」みたいな硬派な楽曲も複数存在する。というか、このバンド本来の持ち味って実はこっち側なんじゃないかなと思うのです。とはいえそこは、次作『RISKIN' IT ALL』(1991年)を聴いて改めて実感するわけですが。

フロントマンのイエスパ・ビンザー(Vo, G)のしゃがれ声、スティグ・ペダーセン(B)の2弦しか張ってないベース(とヘルメット姿。笑)と音のみならずビジュアルでも楽しませてくれた彼ら。「Sleeping My Day Away」はアメリカでもそこそこ当たったらしく、このアルバム自体も全米116位まで上昇したとのこと。つまり、世界でもっとも売れたD-A-Dのアルバムということになるようです。

もちろん素晴らしい作品なんですが、これが当たってしまったがために、その後も“第二の「Sleeping My Day Away」”を求められ続けてしまう不幸が続くわけですが、彼らはそんなこと御構いなしに活動を継続。一度も解散することなく、2014年には結成30周年を迎え、今もヨーロッパを中心にライブを続けているようです。

90年代半ば、グランジからモロに影響を受けたアルバム『HELPYOURSELFISH』(1995年)も当時はびっくりしたけど、今聴くと非常に良いんですよ。ここ日本ではしばらくリリースが途絶えていますが、『NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS』を起点にして久しぶりに彼らのアルバムを掘ってみたいと思います。



▼D-A-D『NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS』
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投稿: 2018 04 14 12:00 午前 [1989年の作品, D-A-D] | 固定リンク

2018年4月13日 (金)

HARDCORE SUPERSTAR『BAD SNEAKERS AND A PINA COLADA』(2000)

海外で2000年3月、日本で同年4月に発表された、スウェーデン出身の4人組ハードロックバンドHARDCORE SUPERSTARのワールドワイドデビューアルバム(本国では通算2作目)。ここ日本では90年代末にBACKYARD BABIESTHE HELLACOPTERSといった北欧出身のハードロック/ガレージロックバンドに大きな注目が集まったことにより、当初はその流れで語られることの多いバンドでした。が、そのスタイル的には80年代のLAメタル(ヘアメタル)バンドに近いのかなと。

とはいえ、本作では北欧のバンドらしい哀愁味に満ち溢れたメロディアス、かつハイテンションなハードロックを鳴らしています。オープニングナンバー「Hello / Goodbye」の無駄に高いテンションと勢いは、このアルバムを突破口に世界へ羽ばたいていこうとするバンドの強い意思すら感じられます。

かと思えば、HANOI ROCKSあたりにも通ずるマイナーキーの「Liberation」があったり、ポップで親しみやすくシンガロングしたくなるミディアムナンバー「Someone Special」もある。彼らがなぜここ日本ですぐ受け入れられたのか、なるほど納得といった気がします。

プロデュースはバンド自体によるものですが、楽曲アレンジ含め非常によく練られたものが多い気がします。が、本作収録曲の多くが、本国のみで発表したインディーズアルバム『IT'S ONLY ROCK 'N' ROLL』(1998年)にて発表済みの楽曲ばかりという事実があり、それをリレコーディングするうえでより練りこまれていったと取るのが正解のようです。だからデビュー盤なのにクオリティが高いんですね。

ノリの良さとメロディのキャッチーさ、全13曲で45分未満というトータルランニング、2000年という年代を考えるといささか時代錯誤なメンバーのルックス&ファッション、すべてが奇跡のようにマッチした1枚。だからこそ、彼らは続く『THANK YOU (FOR LETTING US BE OURSELVES)』(2001年)以降、決定打を生み出せずにだいぶ苦労を重ねるわけですが。

なお、日本盤のみボーナストラックとしてHANOI ROCKSの名曲「Don't You Ever Leave Me」のカバーを追加収録。若干チープな録音なので、アルバムの流れで聴くと最後にショボンとしてしまいますが、もちろん曲自体は名曲なのでオマケ程度で楽しんでもらえると。



▼HARDCORE SUPERSTAR『BAD SNEAKERS AND A PINA COLADA』
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投稿: 2018 04 13 12:00 午前 [2000年の作品, Hardcore Superstar] | 固定リンク

2018年4月12日 (木)

ANDY McCOY『THE WAY I FEEL』(2017)

昨日のHANOI ROCKSからの続きです。俄然気になるアンディ・マッコイの動向をいろいろ調べてみました。

そういえば、2010年前後にGREASE HELMETというバンドに参加して、2012年にアルバムを1枚発表していましたね。当時、レーベルからしっかりアルバムをいただいていました。DEEP PURPLE「Speed King」のカバーとかやってましたよね。メンバーにAMORPHISのメンバーがいたりと、非常に謎な布陣でしたが、まあアンディのことだし長続きはしないだろうなと思っていましたが……。

で、実は昨年5月にソロ曲「The Way I Feel」をひっそりとリリースしていました。このシングル、CDは300枚限定ですでに完売。現在はiTunesやAmazonでデジタル購入できるほか、Spotifyなどのストリーミングサービスでも聴くことができます。

で、さっそく聴いてみましたが……うん、どこからどう切り取ってもアンディ・マッコイそのもの。HANOI ROCKS時代から彼が発揮してきたメロディセンスがここでも見事に活かされており、一度聴いただけで口ずさめそうなわかりやすい楽曲に仕上がっています。

どこかいなたさがあって、哀愁味があふれんばかりの切ないメロディは、やっぱりこの人ならではのもの。マイケル・モンローのそれともちょっと違うんですよね。初期HANOI ROCKSのレパートリーと言われても不思議じゃないこの曲を聴けば、確実に「ANDY McCOY is back!」と思えるはずです。

この曲でアンディはギターとボーカルを担当。ネット上でいろいろ調べてみると、この「The Way I Feel」はまもなくリリース予定のソロアルバムからのリード曲ということらしいです(当初は昨年秋リリース予定とのことでしたが、どうやら遅れているようですね)。

ちなみに、サックスには元HANOI ROCKSのベーシスト、サミ・ヤッファの実兄Jone Takamäkiが参加しているとのこと。アルバムにはどんなメンツが参加しているのかも気になります。



▼ANDY McCOY『THE WAY I FEEL』
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なお、アンディは2016年末にもHIMのフロントマン、ヴィレ・ヴァロとコラボした「Xmas Song feat. Ville Valo」をリリース済み。こちらも“これぞアンディ・マッコイ!”という仕上がりなので、併せてチェックしてみることをオススメします!



▼ANDY McCOY『XMAS SONG feat. VILLE VALO』
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投稿: 2018 04 12 12:00 午前 [2017年の作品, Andy McCoy, Hanoi Rocks] | 固定リンク

2018年4月11日 (水)

HANOI ROCKS『STREET POETRY』(2007)

2007年9月にリリースされた、HANOI ROCKS通算7枚目のスタジオアルバム(コンピレーション盤『SELF DESTRUCTION BLUES』を除く)。“再生”(=再結成)後3枚目のアルバムとなりますが、本作を最後にバンドは再解散することになります。

前作『ANOTHER HOSTILE TAKEOVER』(2005年)で固まったマイケル・モンロー(Vo, Sax)、アンディ・マッコイ(G)、コニー・ブルーム(G)、A.C.ことアンディ・クリステル(B)、ラク(Dr)という第二の黄金期と呼べる布陣での2作目(ただし、ラクは2008年に脱退。その後、解散までジョージ・アトラジックが参加)。前作発表後にじっくりツアーを体験したこともあり、本作は過去2作のスタジオ盤と比べるとより肩の力が抜けた、80年代のHANOI ROCKSが持っていた特有の“ユルさ”が復活しているように思います。そう、この感覚こそ我々がこのバンドに求める魅力であり、ソロ活動後のマイケル・モンローの硬派なハードロック的手法と絶妙なバランスでミックスされることで、2000年代のHANOI ROCKSのスタイルがついに完成した、と言い切ってもあながち間違いではないのかもしれません。

リードシングル「Fashion」での、隙間の多い緩やかなロックサウンドはまさに我々がよく知るHANOI ROCKSそのもの。この曲がフィンランドのチャートで1位を獲得したというのも頷ける話です。

もちろん、「Hypermobile」「Highwired」みたいな硬質なハードロックナンバーも多数含まれていますが、それと同じくらい「Power Of Persuasion」「Teenage Revolution」「This One’s For Rock 'N' Roll」「Walkin' Away」「Tootin' Star」といった初期を思わせるロックンロールも混在。こういう曲があることで、アルバム内の緩急の差が非常に面白いことになっている。

さらに、日本盤には「Self Destruction Blues」のセルフカバーも収録。マイケルがソロでカバーしたバージョンに近い、当時のライブテイクをもとにしたバージョンは非常にカッコいいもので、このアルバムにも見事にフィットしています。

良い意味で隙間だらけなのに、ある意味では寸分の隙もない、完璧なまでの“HANOI ROCKSのロックンロールアルバム”。そりゃあこんな究極のアルバムを完成させてしまったら、あとはもうこのクオリティを維持して、同じことを続けるのみになってしまうか……活動終了はメンバーのみならず、古くからのファンにとっても納得の結果だったと言えるかもしれません。

マイケルは今もソロでバリバリ活躍してくれていますが、アンディは……もっと表舞台に出てきてくれてもいいのに。それだけが心残りです。あ、コニー&A.C.は80〜90年代に活動をともにしたELECTRIC BOYSを復活させ、現在もスウェーデンを基盤に活動中。日本デビュー盤『FUNK-O-METAL CARPET RIDE』(1989年)は当時よく聴いたので、ぜひ一度生で観てみたいものです。



▼HANOI ROCKS『STREET POETRY』
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投稿: 2018 04 11 12:00 午前 [2007年の作品, Hanoi Rocks] | 固定リンク

2018年4月10日 (火)

GUNS N' ROSES『LIVE ERA '87-'93』(1999)

1999年11月にリリースされた、GUNS N' ROSES唯一の公式ライブアルバム。同時期にバンドとして8年ぶりの新曲「Oh My God」が映画『エンド・オブ・デイズ』に提供されたことから、同タイミングにあわせて発表されたのがこの2枚組ライブ盤です。バンドの公式リリースとしては、1994年に映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のためにレコーディングされた「Sympathy For The Devil」(ご存知THE ROLLING STONESのカバー)以来5年ぶりのことでした。もっとも、この時点でスラッシュ(G)もダフ・マッケイガン(B)も脱退しており、バンドにはアクセル・ローズ(Vo)しか残っていない状態でしたが。

アルバムタイトルからもわかるように、本作はメジャーデビュータイミングの1987年から『USE YOUR ILLUSION I』および『同 II』(ともに1991年)を携えたツアーが終わる1993年まで、約7年間のライブテイクをひとつにまとめたもの。最古の音源はDISC 2冒頭の「Out Ta Get Me」で1987年6月のロンドン公演のもので、ほかにも1988年12月の東京公演(「You're Crazy」「Used To Love Her」)といった日本のファンには嬉しいテイクも含まれています。

が、それ以外はほぼ『USE YOUR ILLUSION』ツアーの音源。つまり、スティーヴン・アドラー(Dr)時代は3曲のみ、それ以外はマット・ソーラム(Dr)が叩いたものなわけです。また、イジー・ストラドリン(G)が在籍した1991年までの音源となると、上記の3曲に加えDISC 1の「Mr. Brownstone」「Dust N' Bones」「My Michelle」の計6曲のみ。まあ80年代の音源が良い状態で残されていなかったといえばそれまでですが、もうちょっと聴きたかったような。むしろ、マット・ソーラム期は以前日本でも発売されていた1992年2月の東京ドーム公演の映像などで散々聴き込んだので、もうお腹いっぱいなんですけどね。

セットリスト的には90年代前半のガンズのアリーナセットを軸に、滅多に演奏されない貴重なテイク、イジーを欠いた今演奏されることのない楽曲など、面白いものも含まれていますが、まあすべて想像の範囲内といったところでしょうか。それでも、2000年代以降のガンズしか知らないリスナーにはレアと思えるような曲も多いでしょうけど。

個人的には「Dust N' Bones」(当然イジーがリードボーカル)、90年代に「November Rain」をプレイする前にアクセルがよくピアノで弾き語りしていた「It's Alright」(BLACK SABBATHカバー)、「Pretty Tied Up」あたりは最近のライブであまり演奏されてないので、聴く価値があるかなと。あと、日本盤のみDISC 1に追加収録された「Coma」も貴重っちゃあ貴重かも。最近は演奏される機会も増えてますけど、90年代は本当にレアだったので。

ちなみにガンズは1988年春、ここ日本限定で『LIVE FROM THE JUNGLE』と題したミニアルバム(EP)を発表しています。すでに廃盤となっているこのCDには、当時のシングルに収められていたライブテイクなどがまとめられており、「It's So Easy」「Knockin' On Heaven's Door」「Whole Lotta Rosie」(AC/DCカバー)、そしてスタジオライブ音源に歓声を被せた擬似ライブ音源として「Shadow Of Your Love」「Move To The City」の計5曲を楽しむことができます(「Move To The City」は『GN’R LIES』と同テイク)。今やレア盤として高額がつけられていますが、もし入手できる環境・状況にありましたらぜひチェックしてみてください。安定感バッチリな『LIVE ERA '87-'93』のテイクと聴き比べると、バンドがたどった成長を感じ取れるはずなので。



▼GUNS N' ROSES『LIVE ERA '87-'93』
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2018年4月 9日 (月)

THE ROLLING STONES『BLACK AND BLUE』(1976)

1976年4月発売の、THE ROLLING STONES通算13枚目(イギリスにて/アメリカでは通算15枚目)のスタジオアルバム。1974年末にミック・テイラー(G)が脱退し、新メンバーオーディションとレコーディングを同時進行することになり、それにより本作にはハーヴィ・マンデルやウェイン・パーキンス、そしてロン・ウッドという複数のギタリストが参加しています(実際のセッションにはジェフ・ベックやローリー・ギャラガーも参加したという話)。

ストーンズのアルバムとしては全8曲と、もっとも曲数が少ないのが本作の特徴。だからといって短い作品という意味ではなく、トータルで41分少々……つまり、長尺の楽曲が多く含まれているということになります。

例えば、オープニングを飾る「Hot Stuff」はワンコードでシンプルなリフを繰り返す、非常にダンサブルなファンクチューン。こういったテイストは「Hey Negrita」にも含まれており、本作の楽曲の大半がスタジオセッションからひねり出されたものであることが伺えます。

ブラックミュージックからの影響が強く打ち出された楽曲が並ぶ点においては、過去の諸作品と一緒なのですが、それでも本作が以前のアルバムと趣が異なるのは、どこか洗練された印象があるところではないでしょうか。モダンなソウルやAORなどとの共通点も見え隠れするこの作りは、続く『SOME GIRLS』(1978年)におけるディスコサンドやパンクロックへの傾倒という、予感させる同時代性を意識した作風。そう考えるとミック・ジャガー(Vo)主導作なのかなと思ってしまいがちですが、実は本作に関してはキース・リチャーズ(G)主導作品なんですよね。まあ、このジャムセッションから生まれたような楽曲が大半を占めるアルバムを聴けば、それも頷ける話ですよね。

また、本作はレゲエやラテンからの影響も強く、「Cherry Oh Baby」みたいにストレートなレゲエソングのカバーも収録。さらに、「Melody」はジャズ、シングルカットされた「Fool To Cry」や7分にも及ぶバラード「Memory Motel」はニューソウルとの共通点も感じられ、デビューから10数年を経てバンドが新たな領域に突入したことを強くアピールしています。

もちろん、お得意のロックナンバーも「Hand Of Fate」や「Crazy Mama」といった楽曲で表現されているのですが、どちらも軽快さより重さやダルさが強調されており、これが本作の持つ独特なテイストを引き立てることに成功しています。どこか明るくなりきれない、この不思議なタッチはもうひとりのギタリスト不在によるものなのか、それとも当時のキースのモードによるものなのか(おそらく後者でしょう)。その前もその後も、二度と再現できていない唯一無二の世界観は、個人的にもかなり気に入っています。ストーンズの全作品中でも5本指に入る、地味だけと強烈な1枚。



▼THE ROLLING STONES『BLACK AND BLUE』
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2018年4月 8日 (日)

JACK WHITE『BOARDING HOUSE REACH』(2018)

2018年3月発売の、ジャック・ホワイト通算3作目のソロアルバム。前作『LAZARETTO』(2014年)から約4年ぶりの新作となりますが、その間には2枚組アコースティック&レアトラックアルバム『ACOUSTIC RECORDINGS 1998-2016』(2016年)が挟まれているので、実質2年ぶりくらいの感覚なんでしょうか。

とはいえ、純粋な新曲ばかりのアルバムは4年ぶりなので、ファンならずとも“待望の”という表現がぴったりな1枚かと思います。

THE WHITE STRIPES時代から一貫して、ジャック・ホワイトが作り出すサウンドにはブラックミュージックからの影響は間違いなく含まれていましたが、今作は彼の作品中でもっとも“黒っぽい”仕上がり。それもそのはず、本作にはドラムやベース、オルガンなどでゲスト参加しているメンツがビヨンセやQ-TIP、ジョン・レジェンド、マライア・キャリー、カニエ・ウエスト、リル・ウェイン、ジェイ・Z、FISHBONE、SOULIVEなどなど、ソウルやファンク、R&B、ヒップホップ系アーティストをサポートするミュージシャンばかりなのです。こういった外的要素が、彼の生み出す楽曲をより“黒っぽく”仕上げたことは想像に難しくないはずです。

また、アルバムを聴いていて非常に興味深かったのは、これまでの彼の作品はそういった要素(=ルーツ)をテイストとしてロックンロールを展開してきたのに対し、今回に限ってはロックが“テイスト側”で、表現しようとしているものがジャック・ホワイトなりのブラックミュージックなのではないか……そう思わずにはいられないぐらい、芯からドス黒さに満ち溢れていのです。

さらに本作でのジャックは、スライ・ストーンやプリンスといった鬼才たちの姿とイメージが重なる瞬間が多々ある。彼が今回のアルバムで目指したのは、そういった先人たちの偉業を引き継いで未来につなぐことだったのではないでしょうか……なんていうのは、ちょっと大げさかしら?

でも、時代性や昨今の音楽シーンの状況を考えると、この『BOARDING HOUSE REACH』というアルバムでの試みはあながち間違ってないのかもしれませんね。ぜひこのアルバムをライブで演奏する際には、SLY & THE FAMILY STONEやPRINCE & THE REVOLUTIONみたいなスタイルで表現してもらいたい。そう思わずにはいられないくらい、このアルバムの中には過去と未来をつなぐ大切なものが詰まっている。そんな、とんでもない異形のアルバムだと断言させてください。

いやはや、すげえアルバムですわ。



▼JACK WHITE『BOARDING HOUSE REACH』
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投稿: 2018 04 08 12:00 午前 [2018年の作品, Jack White] | 固定リンク

2018年4月 7日 (土)

THE BLACK CROWES『AMORICA』(1994)

1994年11月にリリースされた、THE BLACK CROWES通算3作目のスタジオアルバム。前作『THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』(1992年)が全米初登場1位を獲得し、200万枚以上を売り上げるヒット作となりましたが、バンドはそういった現実に浮かれることなく、より独自の道を突き進むことになります。

ジャムセッションをもとに制作し、そこから曲を煮詰めるわけでもなく、ライブならではのフリーキーな雰囲気をそのまま残した前作での路線は、そのまま本作にも引き継がれています。が、前作はゴスペルコーラス隊をフィーチャーしたり、どことなくLED ZEPPELIN的なハードロックテイストが強まっていたりと、HR/HMファンでもなんとなく入っていける要素が感じられたのですが、本作はサザンロック/ジャムバンド色を前面に押し出したことにより、“こっち側”のリスナーにはちょっと取っ付きにくい内容になってしまった印象もあります。

だからといって内容が悪いかと言われると、まったくそんなこともなく。パーカッシヴなテイストを強めたオープニングトラック「Gone」や、なんとなくラテンの匂いもする(ちょっとサンタナ的といいますか)「High Head Blues」は単純に気持ちよく聴けるし、前作までのカラーが引き継がれたソウルフルな「A Conspiracy」は単純に良曲。シンプルなリフの積み重ねとスライドギターによるソロでグイグイ引っ張っていく「Cursed Diamond」、単なるアコースティックバラードでは終わらない、どことなくダークな色合いが見え隠れする「Nonfiction」と、アルバム序盤から非常に濃厚な構成なのです。

もちろん、後半もよりディープな展開を見せていきます。ハードロック的なサウンドで構築された「She Gave Good Sunflower」、メロディがちょい難解な「P.25 London」、サイケデリック風味のバラード「Ballad In Urgency」、淡々としたサザンロック風バラード「Wiser Time」、デルタブルースからの影響が強い「Downtown Money Waster」、1stアルバム『SHAKE YOUR MONEY MAKER』(1990年)から持つ彼ららしさがそのまま引き継がれた「Descending」と、後半に進むにつれてじっくり聴かせる系の楽曲が増えていきます。

確かにアルバムとしての完成度は過去2作よりも若干劣るかもしれません。が、THE BLACK CROWESがどんなライブバンドなのか、それがもっとも体現できているのがこの3作目なのではないでしょうか。

ジャケットのインパクトが強すぎて、ちょっと手にしにくい1枚かもしれませんが、この猥雑さ含め『AMORICA』というアルバムを構築していると考えると、なんとなく納得できるものがあったりして。



▼THE BLACK CROWES『AMORICA』
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2018年4月 6日 (金)

ALICE IN CHAINS『JAR OF FLIES』(1994)

1994年1月に発表された、ALICE IN CHAINSの7曲入りEP。1992年9月に発表した2ndアルバム『DIRT』が全米最高6位、400万枚を超える大ヒット作となったものの、1993年にマイク・スター(B)が脱退。これを受けて、オジー・オズボーンのフェアウェルツアーを終えたマイク・アイネズが新たに加わり、映画『ラスト・アクション・ヒーロー』のサウンドトラックに新曲「What the Hell Have I」「A Little Bitter」を提供。さらに同年10月には初来日公演が実現し、バンドとして(表向きは)最高潮の中で制作された最新作がこの『JAR OF FLIES』でした。

事実、『DIRT』の大ヒットを受けて、本作はアメリカBillboard 200にて初の1位を獲得(アルバム扱い)。300万枚以上売り上げるヒット作となりました。

『DIRT』ではとにかくヘヴィでダークさを追求し、かっちり作り込んだ世界観を提供したALICE IN CHAINSですが、今作ではもっとルーズで温かみのあるサウンドを楽しむことができます。そもそも彼らは1stアルバム『FACELIFT』(1990年)と『DIRT』との間に4曲(隠しトラックを含めると5曲)入りEP『SAP』(1992年)を発表しており、ここでフルアルバムでは表現しきれない繊細なアコースティックサウンドを提供。この『JAR OF FLIES』も『SAP』の延長線上にある作風で、冒頭2曲「Rotten Apple」「Nutshell」こそ『DIRT』にも通ずるダークさがありますが、音像自体はもっと穏やかで柔らかいもの。この感触からも、『DIRT』とは異なる方向性の作品であることが伺えます。

また、「I Stay Away」や「No Excuses」あたりは、のちに制作される3rdアルバム『ALICE IN CHAINS』(1995年)のテイストにも通ずるものがあるし、中でも「I Stay Away」や「Don't Follow」が持つポジティブな美しさは、フルアルバムを聴いただけでは伝わってこない側面を強く感じることができるはずです。

かと思えば、「Swing On This」のようなジャムの延長から生まれたような楽曲があったり、彼ららしいひんやりしたギターオーケストレーションと、弦楽器とアコギが生み出す温かみとのコントラストが興味深いインスト「Whale & Wasp」もある。たった7曲、30分程度の短い作品集ですが、ヘヴィでダークで怪奇な印象の強いこのバンドが“ただそれだけではない”ことを証明する上で非常に重要な1枚と言えるでしょう。日本盤に付けられた『アナザー・サイド・オブ・アリス』という邦題、最初に目にしたときは「……ないわーっ!」って思ったけど、今振り返るとあながち間違いではないんですよね。

個人的には初来日公演の中野サンプラザ2日目、紗幕がかかる中でオープニングに演奏された、当時はまだ未発表曲だった「Nutshell」の印象が特に強く。そこから「Junkhead」で静寂を切り裂く構成含め、レイン・ステイリー(Vo)を含む唯一の来日は今でも忘れられません。



▼ALICE IN CHAINS『JAR OF FLIES』
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投稿: 2018 04 06 12:00 午前 [1994年の作品, Alice in Chains] | 固定リンク

2018年4月 5日 (木)

NIRVANA『IN UTERO』(1993)

1993年9月にリリースされた、NIRVANA通算3作目のオリジナルアルバムにして最終作。天文学的メガヒット作となった前作『NEVERMIND』(1991年)はメジャーデビュー作ということもあり、もともとカート・コバーン(Vo, G)自身も「売れるアルバムを作る」という意識のもと制作されたことで、ああいう“ダークでカオス”と“ポップでキャッチー”が共存した奇跡的な1枚に仕上がりました。

しかし、あそこまでバカ売れするとは当の本人も想像してなかったんでしょうね。結果的にあの1枚が大きな足枷となり、バンドの活動のみならずカート自身の精神をも蝕んでいくことになります。

そういった混沌を経て、カートとバンドがたどり着いた結論がアンダーグラウンドへの回帰。プロデューサーにUSオルタナ/インディ界の鬼才スティーヴ・アルビニを迎えて制作されたのが、この異色作『IN UTERO』なわけです(ちなみに、アルビニはプロデューサーとクレジットされることを嫌い、本作でもエンジニアとして記されています)。

アルバムの収録曲数が一緒だったり構成が比較的近いことから、ある程度は『NEVERMIND』を意識した作風に仕上げられています。が、冒頭からギターが奏でる不協和音であることから、「Smells Like Teen Spirit」の二番煎じを狙って作られたものではないことは明白。歌メロは淡々としているものの、そこかしこにメロディメイカーとしてのカートの才能がにじみ出ており、ぶっきらぼうで聴く者を選ぶ作風ながらも軸にはポップさがしっかり残されていることも伺えます。

まあとにかく、冒頭3曲(「Serve The Servants」「Scentless Apprentice」「Heart-Shaped Box」)を聴けば、このアルバムでカートがやりたかったことはなんとなく伺えるのではないでしょうか。「Smells Like Teen Spirit」的フォーマットで作られた楽曲に「Rape Me」なんてタイトルを付けたり、シンプルなリズムにノイズと呟き&絶叫を乗せた「Milk It」みたいな曲があったりと、確かにパッと聴いたところキャッチーさは皆無かもしれません。ですが、メロディ自体は上で述べたとおり、意外とキャッチーさを兼ね備えている。そういった意味では、1stアルバム『BLEACH』(1989年)に通ずるものがあると言えます(それも「アンダーグラウンドへの回帰」の意味するところかもしれませんが)。

聴いていて前向きになれるような音楽ではないです。仮に『NEVERMIND』が街中で流れていたとしてもどこか馴染んでしまうと思いますが、こと『IN UTERO』に関しては違和感しか残さないし、拒絶以外の言葉は思い浮かびません。

そんな“試される”1枚ですが、当時の人気・勢いもあって本作は全米初登場1位を記録。『NEVERMIND』の全米1000万枚には及ばないものの、それでも500万枚以上を売り上げている不思議な作品なのです。

“NIRVANAらしさ”という点においては『NEVERMIND』の右に出るアルバムはないと思いますが、“カート・コバーンらしさ”という点ではこの『IN UTERO』がもっとも色濃い作品なのかもしれません。そういった意味でも、NIRVANAおよびカートを理解する上で『NEVERMIND』と『IN UTERO』は切っても切り離せない関係と言えるでしょう(もちろん、『BLEACH』も同じくらい重要ですけどね)。

本作のリリースから約半年を経た1994年4月5日、カートは自ら命を絶つことですべてに終止符を打つことになります。このアルバムが何かを予兆していた、なんてことは言いたくないですが、当時の彼の精神状態が反映された作品という意味ではいろいろ感じることの多い1枚かもしれません。



▼NIRVANA『IN UTERO』
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2018年4月 4日 (水)

STEELHEART『STEELHEART』(1990)

海外で1990年5月、日本では同年4月に先行リリースされたSTEELHEARTのデビューアルバム。本国アメリカでは「I'll Never Let You Go」(全米23位)のスマッシュヒットによって、アルバム自体はリリースから1年がかりで最高40位まで上昇しましたが、ここ日本では「She's Gone」(全米59位)がラジオで大プッシュされたこともあり、発売直後に大ヒット。同年に実施された初来日公演も大好評だったことをよく覚えています。

今でもここ日本では、STEELHEART=「She's Gone」のイメージで語られる機会の多いバンドですが、アルバムを聴くと「She's Gone」タイプの楽曲はこれ1曲のみで、全体的にはカラッとしたアメリカンHR/HMだという事実に気づかされるはずです。

もちろん、だからといって「She's Gone」以外の楽曲のクオリティが低いかと言われるとまったくそんなことはなく、むしろあの時代ならではの空気感をまとった良質のデビュー作だと断言できます。

オープニングの「Love Ain't Easy」からパワフルで聴き応えがあるし、何よりも全米ヒットした「I'll Never Let You Go」の素晴らしさときたら……「She's Gone」よりも「I'll Never Let You Go」を好むアメリカ人の国民性、そして演歌的で圧倒的歌唱力で歌い上げる泣きのバラードを好む日本人の国民性、その両方を兼ね備えている。両国で高く評価されたのは、こういった理由が大きかったんでしょうね。

とはいえ、「She's Gone」的な楽曲は2ndアルバム『TANGLED IN REINS』(1992年)以降は登場せず。同系統の楽曲を求めるリスナーにとっては、その後の活動はどう響いたのでしょうか……。

さて、本題に戻りましょう。とにかくこのバンドはフロントマンにしてリーダーのマイク・マティアヴィッチ(現ミレンコ・マティアヴィッチ)の圧倒的な歌唱力によるところが大きく。先のバラード2曲はもちろんのこと、カラッとしたアメリカンロック「Everybody Loves Eileen」、WHITESNAKE的なブルーズロック「Sheila」、アップテンポで攻撃的な正統派メタル「Rock'n Roll (I Just Wanna)」など高音域のみならず低音〜中音域を効果的に用いてさまざまなタイプの楽曲を見事に歌い切る、その実力とセンスがこの良作をより素晴らしいものへとレベルアップさせています。

実は作品単位でいうと、続く『TANGLED IN REINS』のほうがよりアメリカンハードロック的で好みなんですが、インパクトという点では間違いなく本作が数段上。残念ながらSpotifyやAppleMusicでは配信されていませんが、昨年9年ぶりの新作を発表したり27年ぶりの来日が実現したりと現役感をアピールしたばかりなので、ぜひメジャー時代の1stアルバム、2ndアルバムのデジタルリリースにも期待したいところです。



▼STEELHEART『STEELHEART』
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投稿: 2018 04 04 12:00 午前 [1990年の作品, Steelheart] | 固定リンク

2018年4月 3日 (火)

EUROPE『LAST LOOK AT EDEN』(2009)

2009年9月にリリースされた、EUROPE通算8作目のオリジナルアルバム。『START FROM THE DARK』(2004年)から数えると、再結成後3枚目のスタジオ作品になります。『START FROM THE DARK』でEUROPEの新しい形を提示しつつ、続く『SECRET SOCIETY』(2006年)ではより進化したモダンなスタイルを確立しようとしましたが、この『LAST LOOK AT EDEN』では『START FROM THE DARK』で試したスタイルをよりクラシカルなサウンド(70年代ハードロック的アプローチ)で表現。以降、最新作『WALK THE EARTH』(2017年)まで続くスタイルの礎となった、起死回生の1枚と言えるのではないでしょうか。

『START FROM THE DARK』で旧知のプロデューサー、ケヴィン・エルソンを迎え、続く『SECRET SOCIETY』ではセルフプロデュースに挑戦したEUROPEは、続く今作でH.E.A.TやAVATARなどを手がけるトビアス・リンデルを迎えて制作。リリース当時、最初にリードトラック「Last Look At Eden」を耳にしたときは、「ようやく吹っ切れたな」と思ったことを今でも覚えています。

確かに、多くのリスナーが彼らに求めるスタイルとは真逆かもしれません。そりゃあみんな『WINGS OF TOMORROW』(1984年)や『THE FINAL COUNTDOWN』(1986年)の頃のスタイルに戻ってほしいと思っていることでしょう。けど、それがやりたかったら、この再結成はなかったんでしょうね。5人がEUROPEという冠の下で今やりたいこと、やれることが「自分たちのルーツに正直になること」だったんだと考えると、この『LAST LOOK AT EDEN』に到達することは非常に納得のいく話だと思います。

特に本作ではストリングスによるオーケストレーションを大々的にフィーチャーした楽曲が多く、その味付けが70年代的仰々しいハードロックサウンドに見事フィットしている。ミドルテンポのヘヴィチューン「Last Look At Eden」や「No Stone Unturned」や「Only Young Twice」、そしてバラードの「New Love In Town」はその最良の結果ではないかと思います。

もちろんそれだけではなく、「The Beast」みたいなアップチューンもあるし、80年代後半の彼らをどこか感じさせる「Gonna Get Ready」もある。「Run With The Angels」みたいにダークな異色作も含まれていますが、このへんは評価がわかれる1曲かもしれませんね。そして、ラストはジョン・ノーラム(G)のメロウでエモーショナルなギタープレイが存分に活かされたバラード「In My Time」で締めくくり。個人的には全体を通して非常に満足の1枚で、再結成後でも1、2を争う良盤だと思っています。

なお、本作は再結成後唯一、本国スウェーデンでチャート1位を獲得。『THE FINAL COUNTDOWN』、『OUT OF THIS WORLD』(1988年)に続く通算3枚目のNo.1アルバムという意味でも、彼らのキャリアにおける重要作品と言えるのではないでしょうか。

もちろん、本作以降すべての作品が良い作品だとは言いません。しかし、再結成から3作目でここにたどり着けたからこそ、EUROPEは80年代に活動していた頃よりも長くバンドを続けられている。それは間違いない事実であり、僕はこの現実を素直に受け入れたいと思います。



▼EUROPE『LAST LOOK AT EDEN』
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投稿: 2018 04 03 12:00 午前 [2009年の作品, Europe] | 固定リンク

2018年4月 2日 (月)

THE RASMUS『DARK MATTERS』(2017)

フィンランド出身の4人組バンドTHE RASMUSが2017年10月に発表した、通算9作目のスタジオアルバム。ワールドワイドデビューを果たした『DEAD LETTERS』(2004年)から数えると、5枚目のアルバムということになります。今作『DARK MATTERS』リリース後の昨年11月には実に11年ぶりの来日公演も実現しており、新作同様久しぶりに彼らの名前を耳にしたという日本のリスナーも少なくないかもしれませんね。

かくいう僕も、『DARK MATTERS』のリリースを知ったときに「まだ活動していたんだ!」と思ったくらい。一応アルバムが発売されたら毎回ちゃんと聴いてきましたが、前作『THE RASMUS』(2012年)からもう5年も経っていたんですね。というか、2012年に『THE RASMUS』というアルバムを聴いていた事実すら、遥か彼方のことのように思えて、体感的には10年ぶりくらいのイメージだったことを正直に告白しておきます。

さて、今回のアルバムですが、どこからどう聴いてもTHE RASMUSな1枚。当たり前の話ですが。どういうことかというと、「穏やかでダークでメロウ、そして適度にハード」という彼らのパブリックイメージどおりの内容なのです。

オープニングの「Paradise」を聴くと、もはやHR/HMの範疇では語りきれないバンドに進化したなと思いきや、「Wonderman」あたりではしっかりとヘヴィな側面も見せている。でも、本作の軸になるのは現代のヒットチャートの中心にあるR&Bやクラブミュージック的なアプローチ。それらを彼らなりに解釈し、あくまで味付けとして取り入れることでモダンなカラーを強めることに成功しています。

もともと“そっち側”との親和性の高いスタイルでしたし、久しぶりの新作でこういったアプローチをとったとしても何ら違和感はなく、不思議と「今までもこうだったじゃん」と勘違いしてしまうほど。「Nothing」や「Empire」といった楽曲はもっとも振り切った作風ですが、しっかり聴き込めばメロディそのものはスマッシュヒットを記録した日本デビュー作『DEAD LETTERS』の頃と何も変わってないことに気づかされるはずです。

ただ、彼らのメロディに備わっているダークな要素が、R&Bやヒップホップ的なアプローチを導入することで若干薄らいでいるのも確か。と同時に、その影響により聴きやすさがさらに増しているという事実もあるので、従来のファンからしたら一長一短かもしれません。

アプローチこそHR/HMの範疇からかなり外れていますが、だからこそいろんなところにまで届いてほしい1枚。全10曲で35分程度(ボーナストラック2曲を除く)という短さも非常に現代的で聴きやすいですしね。



▼THE RASMUS『DARK MATTERS』
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投稿: 2018 04 02 12:00 午前 [2017年の作品, Rasmus, The] | 固定リンク

2018年4月 1日 (日)

DEAD BY APRIL『DEAD BY APRIL』(2009)

海外では2009年5月、日本では同年10月にリリースされた、スウェーデンのメタルコアバンドDEAD BY APRILのデビューアルバム。このちょっとあとには同じスウェーデンからAMARANTHEがデビューしたりと、2010年代初頭の同国からの新たな波が感じさせられたのも、今となっては懐かしいですね。

ツインギター編成、そしてフロントマンのJimmie Strimmelがひとりでスクリーム&クリーンボーカルを担当するという5人編成で制作されたのはこのデビュー作のみで、その後はギター1本の4人組体制だったり、新たにクリーンボーカル専任メンバーが加わったフロント2名体制だったりと、メンバーチェンジが慌ただしいのがこのバンドの特徴かもしれません(そんな特徴はいらないですが。苦笑)。このデビュー作、リリース直後に輸入盤を購入し、適度にヘヴィ、かつ非常にメロディアスで聴きやすいこともあって、当時よく愛聴した記憶があります。また、のちに国内盤がリリースされ、ボーナストラックが追加されジャケットが差し替えられたこちらのエディションもレーベルからサンプルをいただいたことを覚えています。

なぜ、このタイミングにこのアルバムを引っ張り出したか?と言いますと……はい、4月なので(笑)。こういうタイミングでもないと、きっと触れることもなかったでしょうから。たまにはこういうのもいいですよね。

久しぶりに聴いてみましたが、やっぱりメロディが親しみやすいのが良いですね。適度にシンセをフィーチャーしたりデジタル加工したりしつつも、基本的にはギターとドラムが織り成すザクザク感の心地よさと、スクリームとクリーントーンを巧みに使い分けるボーカル、そして日本人の琴線に触れる切ないメロディライン。ヘヴィメタルと言ってしまえば確かにヘヴィメタルだけど、ギターリフでグイグイ引っ張るよりもギターとドラムが一丸となって生み出すグルーヴ感はメタルコアそのもの。そこにLINKIN PARKEVANESCENCE以降のバンドらしいメロディの強さを加えることによって、あの時代ならではの空気感を作り上げていた。そういうバンドだったんだなと、改めて実感しています。

もちろん、DEAD BY APRIL以前も以降も、この手のバンドはたくさん存在します。そんな中でも、メロディセンスが優れていたという点において、このDEAD BY APRILはほかの同系統バンドよりも頭ひとつ抜き出ていたのではないでしょうか。ぶっちゃけ、スクリームパートを排除してもう少し穏やかなサウンドにしたら、ヒットチャートを賑わすようなポップスとしても通用するような高品質の楽曲ばかりですし。

実は2ndアルバム『INCOMPARABLE』(2011年)まではしっかり聴いていたものの、以降の2作品(2014年の『LET THE WORLD KNOW』、2017年の『WORLDS COLLIDE』)は聴いていなかったので、これを機にほかの作品にもしっかり触れてみようと思います。

なお、2013年に脱退し『LET THE WORLD KNOW』『WORLDS COLLIDE』に不参加だったJimmie Strimmelは、『WORLDS COLLIDE』リリース後にはバンドに復帰。昨年秋には『WORLDS COLLIDE』収録曲数曲をJimmieがスクリームパートのみ歌い直した4曲入りEPやアコースティックEPもリリースされているようです。



▼DEAD BY APRIL『DEAD BY APRIL』
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投稿: 2018 04 01 12:00 午前 [2009年の作品, Dead By April] | 固定リンク