U2『ACHTUNG BABY』(1991)
1991年11月に発表された、U2通算7作目のオリジナルアルバム。『THE UNFORGETTABLE FIRE』(1984年)を機にアメリカのルーツミュージックへと傾倒し、続く『THE JOSHUA TREE』(1987年)、『RATTLE AND HUM』(1988年)でその傾向がピークへと到達したU2でしたが、90年代に突入すると同時にそのスタイルを激変させます。
これには80年代末からの世界情勢の変動が大きく影響していると言われています。ベルリンの壁崩壊、また米ソ冷戦状態の軟化、湾岸戦争勃発……こういった不安定な状況が、どこか軽薄でシニカルなスタンスを後押ししたと言っても過言ではないでしょう。
にしても、80年代からU2を聴いてきたリスナー……それこそU2といえば「New Year's Day」や「Sunday Bloody Sunday」というイメージを持っていた古くからのファンには、このダンスミュージック路線は驚き以上に失望を与えたのかもしれません。
しかし、本作はアメリカで1位、イギリスでも2位と高順位を記録し、特にアメリカでは『THE JOSHUA TREE』の1,000万枚に次ぐ800万枚というメガヒットを記録したのでした。つまり、U2の劇的変化は多くのリスナーにとっては好意的に受け入れられたということでしょう。
実際、楽曲の軸自体は“いかにもU2”なものが多く、メロディ自体はU2以外の何者でもないことは聴けばご理解いただけるかと思います。しかし、そのメロディをダンサブルなビートに乗せたり、「Zoo Station」みたいに“ドラム缶を叩くような”ドラムサウンドで表現したり、「The Fly」や「Mysterious Ways」のようにループさせたギターリフで曲を引っ張ったりと、それまでのU2からしたら非常に斬新なアレンジが随所に盛り込まれています。
とはいえ、「One」や「Who's Gonna Ride Your Wild Horses」みたいに80年代のU2を愛した人にもアピールするキャッチーな楽曲や、「Acrobat」のようにエモーショナルな楽曲もしっかり用意されているのですから、すべてがすべて変わってしまったわけではない。このバランス感が“ダンス3部作”と呼ばれる90年代のアルバムの中でも、特に優れているのが『ACHTUNG BABY』なんですよね。
「Zoo Station」で軽やかにスタートし、「Even Better Than The Real Thing」で加速する。中盤にキモとなる「The Fly」や「Mysterious Ways」が並び、終盤に進むにつれてダークさを増し、最後に「Love Is Blindness」で幕を降ろす構成も完璧。曲単位でも優れものですし、文句なしの1枚。個人的な趣味で言えば、『THE JOSHUA TREE』よりもお気に入りのアルバムです。

▼U2『ACHTUNG BABY』
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