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2018年5月31日 (木)

2018年5月のお仕事

2018年5月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※5月30日更新)


[WEB] 5月30日、「リアルサウンド」にて大阪☆春夏秋冬のアーティスト分析「大阪☆春夏秋冬、“型破り”なスタイルで急上昇? ライブアーティストへと至った軌跡を振り返る」が公開されました。

[WEB] 5月27日、「リアルサウンド」にて片平里菜のライブ評「片平里菜、原点を見つめ直し歩みを進めるーー5周年記念企画ライブで見せた渾身のパフォーマンス」が公開されました。

[紙] 5月24日発売「TV Bros.」2018年7月号にて、おとぎ話『眺め』、カマシ・ワシントン『Heaven And Earth』、コートニー・バーネット『Tell Me How You Really Feel』、chelmico『OK, Cheers!』『BANANA』の各ディスクレビューを執筆しました。(Amazon

[WEB] 5月21日、「Red Bull Japan」オフィシャルサイトにてインタビュー【1人3曲挙げてみて】cinema staffが夢中で追いかけた「90年代の音楽」が公開されました。

[WEB] 5月20日、「FLYING POSTMAN PRESS」オフィシャルサイトにてMAN WITH A MISSIONのJean-Ken Johnnyインタビューが公開されました。紙面に掲載されているものと同じ内容になります。

[紙] 5月20日から全国5都市の主要CDショップで配布開始の「FLYING POSTMAN PRESS」2018年6月号にて、MAN WITH A MISSIONのJean-Ken Johnnyインタビューを担当・執筆しました。

[WEB] 5月20日、「リアルサウンド」にて新譜キュレーション記事「Amorphis、Ihsahn、At The Gates……北欧エクストリームシーンを支える重鎮たち」が公開されました。

[WEB] 5月19日、「リアルサウンド」にてbrainchild'sのインタビュー「イエモン菊地英昭によるbrainchild's、第7期メンバーに聞く“サウンドの充実”」が公開されました。

[WEB] 5月18日、欅坂46モバイルファンクラブサイトにて『欅坂46 2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE』で代理センターを務めたメンバー9人(今泉佑唯、小池美波、小林由依、菅井友香、鈴本美愉、土生瑞穂、原田葵、守屋茜、渡邉理佐)による振り返り座談会が公開されました(こちらはモバイル会員のみ閲覧可能コンテンツです)。

[WEB] 5月15日、「リアルサウンド」にて小林太郎×NoBのインタビュー「小林太郎×NoBが語る、『仮面ライダーアマゾンズ』主題歌へ込めた熱い思い」が公開されました。

[紙] 5月15日発売「EX大衆」2018年6月号にて、欅坂46齋藤冬優花×鈴本美愉のインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 5月8日、「リアルサウンド」にてBABYMETALのアーティスト分析「BABYMETAL、なぜ新レーベル設立? 5B&Cooking Vinylとタッグ組んだ背景を考える」にコメントを寄与しました。

[紙] 5月7日発売「BURRN!」2018年6月号にて、SKINDREDベンジー・ウェッブのインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 5月5日、「リアルサウンド」にてLittle Glee Monsterのアーティスト分析「Little Glee Monsterが海外公演に挑戦する理由は? 単独アジアツアー発表を機に紐解く」にコメントを寄与しました。

[WEB] 5月4日、「リアルサウンド」にて乃木坂46のライブ評「乃木坂46と生駒里奈は新たなステージへ 西廣智一が卒業コンサートに感じたこと」が公開されました。

[紙] 5月2日発売「日経エンタテインメント!」2018年6月号にて、堂本剛インタビュー、欅坂46ライブレポート、欅坂46土生瑞穂インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

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また、4月に当サイトで紹介したアルバム(Spotifyで配信している作品のみ)から各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストを制作しました。題して『TMQ-WEB Radio 1804号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

投稿: 2018 05 31 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

SOUL ASYLUM『GRAVE DANCERS UNION』(1992)

アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス出身の4人組ギターロックバンド、SOUL ASYLUMが1992年10月にリリースした6thアルバムにして、最大のヒット作(日本では同年11月発売)。本作からシングルカットされた「Runaway Train」が1993年に入ってから全米5位を記録し、アルバムは最高11位まで上昇。200万枚を超えるヒット作となりました。

このバンド自体、実は本作リリース時点で結成10年を超えるキャリアの持ち主で、今作が6枚目のアルバムという事実からもそのへんの“苦節ウン年”的な空気を感じるかもしれません。

実際のところ、それまでトップ200内にチャートインすらしていなかった彼らがなぜ「Runaway Train」でいきなりブレイクできたのか。確かにグランジやオルタナティヴロックが主流だった時代ですし、彼らのような土着型のオルタナギターロックが受け入れられやすい環境は整っていたと思います。

が、実際のところはこの「Runaway Train」のMVに大きな理由が隠されています。「Runaway Train」=家を飛び出した若者を題材にしたこの楽曲のMVでは、アメリカで行方不明になっている少年少女の名前と顔写真が紹介され、何かしらの情報を求めていることが伝えられたのです。MVが単なる楽曲紹介のためのツールや、バンドや映像作家のための新たな表現手段だけで収まらず、ある種の社会貢献にもつながる可能性があることを、このMVは証明したわけです。

このMVがMTVを通じて大きな反響を呼び、曲の良さも相まって大ヒットに。事実、このMVの効果は絶大で、親元に無事戻った子供も少なくないそうですが、中には亡くなっていることが確認されたり、すさんだ家庭から距離を置いていた子供が無理やり元の場所に戻されるという不幸なケースもあったそう。必ずしも良いことばかりではないという、難しさも浮き彫りになりました。

と、「Runaway Train」の話題に終始しましたが、アルバム自体も適度なオルタナ感と土着的なカントリーロック感がミックスされた、“アダルトなオルタナロック”を展開。「Somebody To Shove」のような攻めのナンバーやヘヴィなミディアムチューン「April Fool」もあるものの、基本的にはアコギを多用したロック/ポップチューンが中心。「Runaway Train」が気に入ったなら、問題なく楽しめる1枚だと思います。

ちなみにSOUL ASYLUM、現在も細々と活動を継続中。2005年にはオリジナルメンバーのカール・ミューラー(B)が亡くなり、現在はTHE REPLACEMENTSやGUNS N' ROSESなどで活躍したトミー・スティンソンが在籍しています。また、2016年には実に21年ぶりの来日公演も実現したばかりです。



▼SOUL ASYLUM『GRAVE DANCERS UNION』
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投稿: 2018 05 31 12:00 午前 [1992年の作品, Soul Asylum] | 固定リンク

2018年5月30日 (水)

R.E.M.『MONSTER』(1994)

アメリカで1994年9月、日本では同年10月にリリースされたR.E.M.通算9枚目のスタジオアルバム。初の全米1位を獲得した前々作『OUT OF TIME』(1991年)、ディープな作風でグランジ層にも存分にアピールした前作『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』(1992年)はともに400万枚を超えるセールスを記録しましたが、それらに続く本作も全米1位、400万枚以上を売り上げ、人気を維持。また、「What's The Frequency, Kenneth?」(全米21位)、「Bang And Blame」(全米19位)、「Strange Currencies」(全米47位)というヒットシングルも生まれました。セールス的にはこのあたりが彼らのピークということになるのでしょうか。

ダークで穏やかな作風ながらも、バンド史上最高傑作と呼ぶにふさわしい内容だった前作『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』から一転、本作では当時の流行にあえて乗っかりにいったかのような荒々しくて激しいギターロックサウンドが展開されています。

しかし、そこはR.E.M.のこと。軸にあるメロディや歌詞で表現されるテーマには前作からの流れをしっかり感じることができます。オープニングの「What's The Frequency, Kenneth?」こそ高揚感が強く、ポップさもしっかり兼ね備えていますが、続くダウナー感漂う「Crush With Eyeliner」や「I Don't Sleep, I Dream」、打ち込みビートを取り入れた「King Of Comedy」と、歪んだギターを前面に打ち出しつつも、その世界観にはどこか前作と共通するものが存在しています。そう、ただ流行に乗っかってやっただけでは済まさない。若い奴には負けてられねえよ!と意気込みながらも、どこか余裕がつきまとう。それが R.E.M.というバンドの凄みなのかもしれませんね。

アッパーな「Star 69」やカントリー調バラード「Strange Currencies」を挟んで突入する後半戦では、オルガンサウンドを前面に打ち出したソウルフルな「Tongue」や、過去のヒットシングルにも通ずるマイナー調の前半とオルタナ色が強まるサビとの対比が興味深い「Bang And Blame」、若干後ろに引っ込んだボーカルが印象に残るギターロック「I Took Your Name」、カオティックなギターオーケストレーションとタンバリンを伴奏にマイケル・スタイプ(Vo)が歌う「Let Me In」、爆発しそうな勢いのフィードバックギターが心地よい「Circus Envy」と個性的な楽曲が並び、歪んだギターを軸にしたエモーショナルな「You」でエンディングを迎えます。

確かに荒々しさという点においては、ブレイクを果たした『DOCUMENT』(1987年)以降では飛び抜けていると思います。が、ただ激しいだけではなく、しっかり穏やかさも備わっている。『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』とは表現方法は異なるかもしれないけど、この2枚の間にはどこか共通するものが存在している。だから、本作を語る際には『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』は欠かせない、そんな1枚だと思っています。



▼R.E.M.『MONSTER』
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投稿: 2018 05 30 12:00 午前 [1994年の作品, R.E.M.] | 固定リンク

2018年5月29日 (火)

U2『ACHTUNG BABY』(1991)

1991年11月に発表された、U2通算7作目のオリジナルアルバム。『THE UNFORGETTABLE FIRE』(1984年)を機にアメリカのルーツミュージックへと傾倒し、続く『THE JOSHUA TREE』(1987年)、『RATTLE AND HUM』(1988年)でその傾向がピークへと到達したU2でしたが、90年代に突入すると同時にそのスタイルを激変させます。

これには80年代末からの世界情勢の変動が大きく影響していると言われています。ベルリンの壁崩壊、また米ソ冷戦状態の軟化、湾岸戦争勃発……こういった不安定な状況が、どこか軽薄でシニカルなスタンスを後押ししたと言っても過言ではないでしょう。

にしても、80年代からU2を聴いてきたリスナー……それこそU2といえば「New Year's Day」や「Sunday Bloody Sunday」というイメージを持っていた古くからのファンには、このダンスミュージック路線は驚き以上に失望を与えたのかもしれません。

しかし、本作はアメリカで1位、イギリスでも2位と高順位を記録し、特にアメリカでは『THE JOSHUA TREE』の1,000万枚に次ぐ800万枚というメガヒットを記録したのでした。つまり、U2の劇的変化は多くのリスナーにとっては好意的に受け入れられたということでしょう。

実際、楽曲の軸自体は“いかにもU2”なものが多く、メロディ自体はU2以外の何者でもないことは聴けばご理解いただけるかと思います。しかし、そのメロディをダンサブルなビートに乗せたり、「Zoo Station」みたいに“ドラム缶を叩くような”ドラムサウンドで表現したり、「The Fly」や「Mysterious Ways」のようにループさせたギターリフで曲を引っ張ったりと、それまでのU2からしたら非常に斬新なアレンジが随所に盛り込まれています。

とはいえ、「One」や「Who's Gonna Ride Your Wild Horses」みたいに80年代のU2を愛した人にもアピールするキャッチーな楽曲や、「Acrobat」のようにエモーショナルな楽曲もしっかり用意されているのですから、すべてがすべて変わってしまったわけではない。このバランス感が“ダンス3部作”と呼ばれる90年代のアルバムの中でも、特に優れているのが『ACHTUNG BABY』なんですよね。

「Zoo Station」で軽やかにスタートし、「Even Better Than The Real Thing」で加速する。中盤にキモとなる「The Fly」や「Mysterious Ways」が並び、終盤に進むにつれてダークさを増し、最後に「Love Is Blindness」で幕を降ろす構成も完璧。曲単位でも優れものですし、文句なしの1枚。個人的な趣味で言えば、『THE JOSHUA TREE』よりもお気に入りのアルバムです。



▼U2『ACHTUNG BABY』
(amazon:日本盤CD / 日本盤2CD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3 / MP3デラックス盤

投稿: 2018 05 29 12:00 午前 [1991年の作品, U2] | 固定リンク

2018年5月28日 (月)

INXS『WELCOME TO WHEREVER YOU ARE』(1992)

1992年8月にリリースされた、INXSにとって通算8枚目のスタジオアルバム。前々作『KICK』(1987年)および前作『X』(1990年)で本格的な全米ヒットを記録し、それまで低調だったイギリスでもついにブレイクを果たした彼らでしたが、90年代に入ると彼らのような派手なスタジアムロックバンドに対する風当たりが強くなり始めます。U2がダンスミュージックに傾倒し始め、DEPECHE MODEはよりオルタナ色を強めていったこの時期、INXSはというとキラキラしたダンサブルなスタジアムロックから少し違った方向へと進み始めます。

このアルバム、一聴すると若干地味に聴こえるかもしれません。確かに「What You Need」や「New Sensation」のような突き抜けた派手さはないです。が、1曲1曲が鬼のようにめちゃめちゃ精密に作り込まれており、そういった楽曲がずらりと並ぶことで一種異様な空気感を作り上げています。

まず、オープニングの小楽曲「Questions」からしていつもと違う雰囲気を醸し出している。どこかワールドミュージック的でもあるこの曲から流れるように続くのは、ワイルドな「Heaven Sent」。派手さはあるけどこの並びで聴くとどこか地味に聴こえるから不思議です。でも90年代前半にこういった“ど真ん中”のアリーナロックを高らかに鳴らすことに、なんの迷いも感じない彼らの姿勢、素晴らしいです。

かと思うと、「Communication」や「Not Enough Time」のように落ち着いた大人の雰囲気のミディアムチューンがあったり、クラブミュージックに特化したダンスチューン「Taste It」もある。そして“大人なロック”「All Around」で前半を締めくくる。

後半は、どうしてこんな曲がこのタイミングに完成したんだ?と驚きを隠せない「Baby Don't Cry」からスタート。ストリングスやブラスを大々的にフィーチャーしたこの異色のポップチューンを、彼らはOASISが誕生する数年前にすでに完成させていたんですよね。そこから落ち着いた雰囲気のポップナンバー「Beautiful Girl」へとつなげ、ダンサブルな「Wishing Well」、キャッチーなメロのロック「Back On Line」、ハウス調のビートが新鮮な「Strange Desire」と続き、最後は宗教チックなダークさを持つスローチューン「Men And Women」でアルバムは終了します。

よく聴けば前作『X』からの流れをよりミニマムな方向へと推し進めた作品であることは理解できるのですが、『KICK』で得たものを血肉にしつつも新しい道を歩みだしたことが感じられるのではないでしょうか。そして、ロックなのにポップ、ポップなのにロックで頭からケツまで一切の無駄がない作風……個人的には、これ以上完璧に作り込まれたロックアルバムはないんじゃないか?と当時思ったほどです。

このアルバムがリリースされた頃に組んでいた自分のバンドで、メンバー間で「こういうバンドになりたい。このアルバムが理想」とよく話していたことをよく覚えています。今でもキャッチーなロックアルバムに触れるときは、心のどこかでこのアルバムを比較対象として聴いてしまっているところがあるかもしれません。本当に、それくらいお気に入りの1枚です。

なお、本作は全米では最高16位とトップ10入りを逃し、シングルヒットも「Not Enough Time」の28位、「Beautiful Girl」の46位が最高。一方、イギリスでは本作で初のチャート1位を獲得したほか、「Heaven Sent」(31位)、「Baby Don't Cry」(20位)、「Taste It」(21位)、「Beautiful Girl」(23位)と数多くのヒット曲を生み出しています。思えばBON JOVIのようなバンドがアメリカで苦戦した90年代、イギリスではアルバムやシングルがバカ売れしていたんですよね。この傾向についても、いつか改めて触れられたらと考えています。



▼INXS『WELCOME TO WHEREVER YOU ARE』
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投稿: 2018 05 28 12:00 午前 [1992年の作品, Inxs] | 固定リンク

2018年5月27日 (日)

DANGER DANGER『DAWN』(1995)

DANGER DANGERが1995年初夏に発表した、通算3作目のスタジオアルバム。ここ日本では1年近く遅れた1996年5月に、ようやくリリースされています。

本作の参加メンバーはブルーノ・ラヴェル(B, G)、スティーヴ・ウェスト(Dr)、そして新加入のポール・レイン(Vo)の3人。過去2作でフロントマンを務めたテッド・ポーリー(Vo)は1993年に解雇され、これに前後するようにアンディ・ティモンズ(G)とケイシー・スミス(Key)もバンドを脱退しています。

実はテッドを含む編成で『COCKROACH』と題したアルバムを制作していたものの、完成間際でクビに。新たにポールを迎えて録音し直していたところ、テッドから裁判を起こされたため、この『COCKROACH』はお蔵入りとなってしまいます(2001年にようやく、テッド版とポール版の2枚組で日の目を見ることになります)。

なので、この『DAWN』というアルバムは実質4作目になるわけですが、『COCKROACH』の中で試そうとしたモダンな作風……グランジ以降、モダン・ヘヴィネス未満な路線にフィーチャーし、大々的に展開されています。

DANGER DANGERと言われると、あのパーティロック路線が頭に思い浮かぶわけですが、本作ではそれとは真逆の、あの時代ならではのダークなスタイルが確立されているわけです。そりゃあファンから反感を買いますよね。

ところが、このアルバム。意外と良いんですよ。まず、ポール・レインの歌が素晴らしい。この人、1990年に『STICK IT IN YOUR EAR』というソロアルバムを発表しているんですが、これが名盤でして。当時日本盤も発売されており、僕も当時かなり聴きまくったものです。

その彼が、本作でも力強くしっかりと聴かせるボーカルを提供してくれたことで、アルバムの軸がしっかりしているように感じられる。ヘヴィでサイケデリックな楽曲が中心ですが、単なる亜流とは思えないくらいのクオリティなんじゃないかと思うのです。

個人的にはグルーヴィーな「Mother Mercy」や、サイケなミディアムチューン「Sorry」、アコースティックバラード「Goodbye」などがツボ。もちろんそれ以外の楽曲もよくできていると思います。DANGER DANGERというバンド名にキラキラ感を求める層には無縁のアルバムかと思いますが……「過去のイメージからしたら駄作」で終わらせないためにも、偏見なくヘヴィな音楽を楽しめるという人にはぜひ一度触れていただきたい良作だと思っています。



▼DANGER DANGER『DAWN』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 05 27 12:00 午前 [1995年の作品, Danger Danger] | 固定リンク

2018年5月26日 (土)

FIREHOUSE『3』(1995)

90年代初頭のグランジムーブメントによりメジャーシーンから一気に駆逐された、80年代後半から90年前後にデビューしたHR/HMバンド。そんな中、1990年にメジャーデビューしながらも90年代後半までかろうじて生き残ったのが、今回紹介するFIREHOUSE。彼らはデビューアルバム『FIREHOUSE』が全米21位、200万枚を超えるセールスを記録し、続く2ndアルバム『HOLD YOUR FIRE』(1992年)も全米23位、50万枚以上も売り上げまずまずの成功を収めています。

前作から約3年ぶりとなる3rdアルバム『3』は、グランジムーブメントもひと段落し始めた1995年4月に発売。アルバム自体は最高66位と過去2作には及びませんが、シングルカットしたバラード「I Live My Life For You」は全米26位とスマッシュヒットを記録。過去の名バラード「Love Of A Lifetime」(全米5位)、「When I Look Into Your Eyes」(全米8位)にも匹敵する1曲となり、ピュアHR/HMに厳しい時代を生き抜いたわけです。

では、アルバム時代もそんなピュアHR/HMなのかと言われると……グランジの影響が少なからず感じられる1枚なのです。

オープニングの「Love Is A Dangerous Thing」こそダイナミックなハードロックで、過去2作の作り込まれた作風とは異なる、時代に合わせたかのような生々しいサウンドメイキングでリスナーを良い意味で驚かせてくれます。が、続く「What's Wrong」は受け取り手によっては評価の分かれる、グランジ的なヘヴィチューンで別の意味で驚かせてくれるのです。このリフの刻み方は完全に“あっち側”の“それ”ですもんね。

でもね、アルバムの流れで聴くとそこまで悪くない……むしろ良いアクセントになっているんじゃないでしょうか。だって、“いかにも”な“それ”はこれ1曲だけなのですから。

そのほかの楽曲は、過去2作とはまた違ったタイプのアメリカンハードロック。とはいえ、聴けばそれがFIREHOUSEの楽曲だとちゃんとわかるものに仕上げられているのだから特に問題なし。「Trying To Make A Living」とか「Temptation」みたいなミドルテンポの楽曲は以前の彼らにもあったタイプだし、「Two Sides」は日本人が好みそうなメロを持った歌謡メタル系な1曲だしね。「I Live My Life For You」のほかにも「Here For You」「No One At All」というアコースティックバラードもあるし、HR/HMファンには「Get A Life」といったアップチューンも存在する。

あれ、もしかして過去2作よりも良いんじゃね?と感じる人も少なくないんじゃないでしょうかね。事実、僕は彼らの初期3作中で本作がもっとも好きなんですよね。サウンドの質感や楽曲のバラエティ含め、非常に好みのど真ん中を突いてくるので(1stアルバムは楽曲こそ完璧だけど、あのサウンドメイキングがどうにも苦手で)。

グランジの影響下にあるメタルやその色を取り込んで生き残ろうとしたバンドの作品は、当時こそクソだの邪道だのとバカにされましたが、あれから20年以上経った今だからこそひとつのHR/HM作品としてしっかり評価してもいいんじゃないか。そう思う今日この頃です。



▼FIREHOUSE『3』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 05 26 12:00 午前 [1995年の作品, Firehouse] | 固定リンク

2018年5月25日 (金)

CHEAP TRICK『CHEAP TRICK』(1997)

実はCHEAP TRICKには同じタイトルのアルバムが2枚存在していることをご存知でしょうか。それが意外にもセルフタイトルの『CHEAP TRICK』という点が非常に興味深く、しかも2作目のほうはデビュー作発売の20年後、1997年2月にここ日本で先行リリースされているという(海外では2ヶ月遅れの同年4月に発売されました)。

当時のCHEAP TRICKは、80年代後半のHR/HMブームに乗って本格的な再浮上を果たしたもののそれも長く続かず、90年代に入るとダークなグランジがもてはやされるタームに突入。が、本来なら毛嫌いされるはずのHR/HMシーンに括られてきたCHEAP TRICKは、グランジシーンから“オリジネーター”や“ルーツ”としてリスペクトされることになるのです。不思議なものです。

本作は彼らにとって通算13枚目のスタジオアルバム。前作『WOKE UP WITH A MONSTER』(1994年)は長年在籍したEpic Recordsから離れ、新たにWaner Brothersと契約して発表したものの、以前ほどの大きなヒットにつながらず、結局バンドはこれ1枚でWarnerから離れることに。結果、彼らはインディーズに活動の場を移し活動を継続します。

そうして彼らがまず最初に取り組んだのが、かのスティーヴ・アルビニをエンジニアに迎えてEPを制作すること。ここで制作した「Baby Talk」と「Brontosaurus」はグランジシーンでその名が知れ渡ったSub Pop Recordsから7インチシングルとしてリリースされています。

そのままアルビニを迎えてアルバムを作るかと思いきや、彼らは『ONE ON ONE』(1982年)などでエンジニアを務めたイアン・テイラーを迎えて完成させた作品を発表するわけです(実際にはアルビニとのコラボ以前から進められていたようですが)。

「Anytime」から始まる本作は、「You Let A Lotta People Down」などをはじめ全体的にダーク……というわけではなく、確かに重々しい空気もありつつ、基本的には彼ららしいポップさとロック感、ヘヴィさが混在したクールなロックアルバムに仕上げられています。

確かにサウンドの質感は90年代的な生々しさを伴っていますが、それがかえって70年代の彼らを彷彿とさせ、20年という長い時間を感じさせないフレッシュさすら散見されます。ポップな曲はとことんポップに、ヘヴィな曲はとことんヘヴィに。このメリハリの効き具合が前数作と比べるとかなり強まっており、そこは80年代の彼らとは大きな違いではないかと思います。

もちろん、彼らが時代に影響されている部分も少なからず存在し、「Anytime」や「You Let A Lotta People Down」「Baby No More」あたりはグランジからの影響がモロに出ています。けど、それが特に嫌味には感じられないのは、当時のグランジバンドがリスペクトを口にしたように、CHEAP TRICKというバンドのサウンドがいかに当時のバンドマンに影響を与えてきたかということを証明しているのではないでしょうか。

ややこしいタイトルやジャケット(1stアルバムをパロッたモノクロ感)、そして全キャリア中もっともグランジの影響が強いことなど、従来のファンからは評価がそこまで高くない1枚かもしれませんが、個人的には前作『WOKE UP WITH A MONSTER』以上に好きな作品です。

なお、日本盤には先のアルビニプロデュース曲2曲を追加収録。とはいえ、現在は廃盤状態にあり、デジタル配信&サブスクリプションサービスでも全オリジナルアルバム中本作のみ未配信のまま。ぜひなんらかの形で復活させてほしい1枚です。


▼CHEAP TRICK『CHEAP TRICK』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD

投稿: 2018 05 25 12:00 午前 [1997年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2018年5月24日 (木)

CHEAP TRICK『CHEAP TRICK』(1977)

1977年2月に海外でリリースされた、CHEAP TRICKの記念すべきデビューアルバム。当時はBillboardのアルバムチャート200位内にも入らない程度のセールスでしたが、現在においては彼らの歴史を振り返る上で非常に重要な1枚であると同時に、70年代後半のUSハードロック、およびパワーポップシーンにおいて大切なアルバムでもあります。

僕がこのアルバムを初めて聴いたのは、彼らが「The Flame」(1988年)で初の全米No.1を獲得して、しばらくしてから。すでにほとんどのアルバムがCD化され、その流れで手にしました。当時のCDは「Hot Love」から勢いよく始まり、中盤に「Mandocello」「The Ballad of T.V. Violence (I'm Not the Only Boy)」「Elo Kiddies」と重めの曲が並び、ラストは「Oh, Candy」で軽やかに終わる。そんなイメージのアルバムでした。もちろん、この曲順が正しいと思い込んでいたのです。

が、実はこのアルバム、アナログ盤の各面表記が「A面/B面」ではなく、「Side 1 / Side A」となっており、初CD化の際にレーベル側が間違えて「Side A」のほう(本来のB面)のほうから始まる構成に変わってしまっていたのでした。アナログ時代に触れていなかったぶん、このCDでの曲順がすべてだと思っていた僕は、そんな事情をもっとあとになってから知ることになるのでした。

ちなみに1998年のリマスター化に際し、もとの曲順……「Elo Kiddies」から始まり「The Ballad of T.V. Violence (I'm Not the Only Boy)」で終わる構成に戻っており、サブスクリプションサービスで聴けるバージョンもこちらに準拠。ですが、昨年9月にデビュー40周年を記念して発売された日本限定の紙ジャケ版では初CD化の「Hot Love」始まりが再現されており、ややこしいことになっております(笑)。ここ20年くらいで、正しく修正された曲順にようやく慣れ親しんできたところに、自分にとってオリジナルなこの曲順で聴くと……「もう、やめてー!」と思ってしまうわけです(笑)。

ですが、曲順が入れ替わろうとこのアルバムに対する印象や評価って、意外と変わらないんですよね。不思議です。

10代の頃は疾走感の強い「Hot Love」や「He's a Whore」のような楽曲を好んでいましたが、聴き込むうちに本作の魅力はミディアム&ヘヴィな楽曲こそがキモなんじゃないかと思うようになりました。なので、初CD化バージョン(オリジナルじゃないほう……ってややこしい。笑)の中盤、「Mandocello」「The Ballad of T.V. Violence (I'm Not the Only Boy)」「Elo Kiddies」の流れは本当に好きなんですよね。もちろん、「Elo Kiddies」で始まって「The Ballad of T.V. Violence (I'm Not the Only Boy)」で終わるバージョンも気に入ってますけど。

1stアルバムの時点で捨て曲なし、どの曲もメロウで個性的。ここまで完成されていたのに、当時まったくヒットしなかったのが不思議でなりません。まあ、早すぎたって言えば早すぎたのかもしれませんが。そんな彼らが本国より先に、ここ日本でヒットするわけですから世の中捨てたもんじゃないですね。



▼CHEAP TRICK『CHEAP TRICK』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 05 24 12:00 午前 [1977年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2018年5月23日 (水)

ZZ TOP『AFTERBURNER』(1985)

ZZ TOPが1985年10月に発表した、通算9作目のオリジナルアルバム。前作『ELIMINATOR』(1983年)が1000万枚を超えるメガヒット作となり、大きな期待を寄せられる中リリースされた今作は、それでも500万枚以上を売り上げる大ヒットを記録。「Sleeping Bag」(全米8位)、「Stages」(全米21位)、「Rough Boy」(全米22位)、「Velcro Fly」(全米35位)というヒットシングルも生まれました。

前作から顕著に表れ始めたデジタルビートを導入したサウンドメイキングは、本作でさらに激化。アルバムオープニングを飾る「Sleeping Bag」は当時の流行だったオーケストラヒットを取り入れた、もはやロックバンドが打ち出すサウンドとは思えないダンサブルなものへと変化/進化していました。

僕が初めて触れたZZ TOPのアルバムが本作なのですが、正直「これ……ロックなの?」と思ったことを、今でもよく覚えています。そりゃあ「Sleeping Bag」「Stages」と続いて、若干生バンド感が増した(それでも本作の中では、という比率の話)「Woke Up With Wood」あたりでようやく「あ、やっぱりロックバンドなんだ」とうっすらと実感し始めるという……なんじゃそりゃ。

確かに楽曲の構成自体はブルースベースのロックンロールなんですよね。上に挙げた「Sleeping Bag」や「Woke Up With Wood」なんて完全にブルージーなロックナンバーですから。装飾に惑わされてはいけません……とはいえ、この機械的なドラムサウンドを聴いたら、誰でも最初はそう思えないかもしれませんよね。

かと思えば、「Rough Boy」みたいなAOR調バラードもあるし、キラキラしたシンセとダンサブルなビートが印象的な「I Got The Message」や「Velcro Fly」みたいな曲もある。ロックというよりもポップスじゃん、と。

だけど、本作の軸になるのはやっぱり「Can't Stop Rockin'」や「Planet Of Woman」「Delirious」のような疾走感の強いロックンロールなんですよね。リズムのエフェクトのみならずギターのエフェクトもどこか機械的で、しかもシンセも多用してるからどうしてもそう思えないかもしれないけど……完全にロックンロールです。本当に。

まあ、売れる音ですよね。リリースから30数年経った今聴くと若干のダサさすら感じられますが、当時はこういったデジタルな要素が新しかったし、ZZ TOPみたいに埃っぽいサウンドのロックバンドがこういった最先端にトライすること自体が“ロック”だったのかもしれない。

ちなみに彼ら、ライブでもちゃんとこのサウンドを再現してくれるから素晴らしい。一度だけ生で観たことがあるけど、そのときも本作のヒット曲をそのままの形で聴かせてくれたし。プロとして徹底していて素晴らしいと思いましたし、改めて良曲揃いのアルバムだなとも再認識しました。



▼ZZ TOP『AFTERBURNER』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 05 23 12:00 午前 [1985年の作品, ZZ Top] | 固定リンク

2018年5月22日 (火)

CHARLIE SEXTON『PICTURES FOR PLEASURE』(1985)

1985年、弱冠16歳でメジャーデビューを果たしたアメリカ人シンガー&ギタリストのチャーリー・セクストンによる1stアルバム。本国アメリカでは最高15位まで上昇したほか、ここ日本でもアイドル的人気で大きな成功を収めました。また、デビューシングル「Beat's So Lonely」は全米17位にランクインし、日本でもMTVやラジオでのヘヴィローテーションが後押しし、スマッシュヒットを記録しています。

本作のプロデュースを手がけたのが、ビリー・アイドルなどとの仕事で知られるキース・フォーシー。キースはプロデュースのみならずプログラミングや、ソングライティングでも本作に華を添えており、そのサウンドの質感はどこかビリー・アイドルの諸作品にも通ずるものがあります。

当時もそうでしたが、まず音楽雑誌『ミュージックライフ』などでそのヴィジュアルを目にして、そのあとで楽曲を耳にしたわけでして……その甘いルックスとは相反して、歌声は年齢のわりに渋みがある低音という。このギャップもまたカッコいいんですよね。しかも長身で髪を立てて……って、この1985年という時代を考えると、日本にはBOØWYがいたわけで、そことの共通項も見え隠れしたりして。そりゃウケるわけですね。

ギタープレイは、まあ確かにうまい。適度なテクニックを兼ね備えており、だけど派手すぎない。あんまり派手に弾きまくるとハードロックの人だと思われちゃうしね。この人、もともとはブルースとかカントリーとかそっち側の人ですから。なのに、このニューウェイヴがかったビートロックをやらされてしまうあたり、いかにも80年代的といいますか……まあそれがよかったんだけどさ。

今聴くと、曲によってはちょっとトゥー・マッチかなと思えたり、ちょっとチープかなと感じたりしてしまうんですが、それでも「Impressed」や「Beat's So Lonely」、「Hold Me」といったあたりはリリースから30数年経った今でもカッコいいと思える。「Restless」あたりもアレンジがアレンジだったら、今でも通用する1曲なんじゃないでしょうか。

ちなみに現在のチャーリーは、ご存知の方も多いと思いますがボブ・ディランのバンドでギタリストを担当しています。一時離れたという話も耳にしましたが、今年のフジロックではバンドメンバーとして来日してくれるのでしょうか。

なお、本作はサブスクリプションサービス未配信。CDもほぼ廃盤状態で、何年かに一度廉価版や紙ジャケで再発されたりするので、タイミングよく見つけた場合は迷わず購入することをオススメします。



▼CHARLIE SEXTON『PICTURES FOR PLEASURE』
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投稿: 2018 05 22 12:00 午前 [1985年の作品, Charlie Sexton] | 固定リンク

2018年5月21日 (月)

INXS『LISTEN LIKE THIEVES』(1985)

海外で1985年10月にリリースされた、INXS通算5枚目のスタジオアルバム。前作では“時の人”ナイル・ロジャースをプロデューサーのひとりに迎え「Original Sin」などのヒットシングルを生み出しましたが、今作ではSEX PISTOLSやROXY MUSIC、QUEENなどを手がけてきたイギリス人プロデューサー、クリス・トーマスとともに制作。全米11位という過去最高位を叩き出し、200万枚以上を売り上げるヒット作となりました。また、シングル「What You Need」は初の全米トップ10入り(最高5位)を記録したほか、「This Time」(全米81位)、「Listen Like Thieves」(全米54位)というスマッシュヒットも生まれました。

“ファンクがかったニューウェイヴサウンド”を信条としていた彼らでしたが、前作ではそのファンキーさがナイル・ロジャースの功績によりさらにニューヨーク寄りの音となっていました。が、今回は大御所イギリス人プロデューサーとの作業というのも影響してか、豪快なハードロックやパンクロック的なカラーも表出し始めています。それがまさにヒット曲「What You Need」であり、同じくシングルカットされた「This Time」や「Listen Like Thieves」でもあるわけです。

ほかにも「Kiss The Dirt (Falling Down The Mountain)」や「Biting Bullets」あたりもロック色が強まっていますが、ところどころにニューウェイヴの香りも感じられます。このバランス感は、本作から2年後に発表される大傑作『KICK』(1987年)で本格的に開花することになります。そういう意味では、本作は『KICK』の習作と捉えることもできそうです。

にしても、全体的にどの楽曲もコンパクトにまとまっているところにも、次作との共通項が見え隠れしていて興味深くないですか? 「Same Direction」のみ5分近くありますが、大半は2〜3分前後ですからね。

アメリカでシングルカットされた3曲のみシリアスさが強い印象で、それ以外はどこか陽気さすら感じられるのも興味深いポイント。そういった意味では、先の3曲が若干浮き気味な気がしないでもないですが、このアンバランスさも今となっては愛おしく感じられるのですから不思議なものです。だって、マイケル・ハッチェンス(Vo)を含む編成での新作やライブは、今後望めないわけですからね……。

個人的には「What You Need」「Listen Like Thieves」「Kiss The Dirt (Falling Down The Mountain)」という冒頭3曲の流れと、「This Time」を経て「Three Sisters」「Same Direction」「One X One」「Red Red Sun」の後半〜エンディングの流れが非常に気に入っています。



▼INXS『LISTEN LIKE THIEVES』
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投稿: 2018 05 21 12:00 午前 [1985年の作品, Inxs] | 固定リンク

2018年5月20日 (日)

TEARS FOR FEARS『SONGS FROM THE BIG CHAIR』(1985)

海外で1985年2月に発表された、TEARS FOR FEARSの2ndアルバム。日本盤は同作からのリカットシングルにちなんで『シャウト』のタイトルでリリースされました。本国イギリスでは1stアルバム『THE HURTING』に続く2作連続1位こそ逃したものの最高2位まで上昇、アメリカでは初の1位を獲得し、500万枚以上を売り上げる大ヒット作となりました。また、本作からは「Shout」「Everybody Wants To Rule The World」の2曲が全米1位を記録(イギリスでは前者が4位、後者は2位)。ほかにも「Head Over Heels」(全英12位、全米3位)、「Mothers Talk」(全英14位、全米27位)、「I Believe」(全英23位)と数多くのヒットシングルが生まれています。

全8曲と曲数こそ少ないものの、6分強の楽曲が3曲もあったりして、意外と聴きごたえがあるのが本作の特徴。かつ、シングルのイメージが強いバンドですが、アルバム自体は結構コンセプチュアルというか、特にアナログでいうB面(M-5以降)はちょっと組曲っぽくなっていたりと、アルバムアーティストとしてのこだわりが感じられる作りになっています。

シンプルなサビを繰り返すだけの印象が強い「Shout」ですが、アレンジが非常に凝っていて、単純にバンドサウンドとしてカッコいい。実は「Mothers Talk」あたりも同じで、シンプルなフレーズを繰り返しつつも、バンドアンサンブルで非常に遊びまくっているんですよね。

かと思うと、「Everybody Wants To Rule The World」もメロディのメリハリの付け方がえげつないくらいに優れている。「Head Over Heels」のメロの起伏の付け方も同じようなセンスが感じられ、ちゃんと聴き込めばこれらがなぜ当時ヒットしたのかが改めて納得できるはずです。

そして、アルバム後半のジャジーなノリ……「I Believe」から「Broken」への流れや、その「Broken」のエンディングから「Head Over Heels」へとつなげる構成、さらに「Head Over Heels」から再び「Broken」へと戻る組曲的構成は本当に面白い(特に後半の「Broken」はライブテイクを使うというこだわりぶり)。ヒット曲をたっぷり聴きたいという方にも、ジャジーでプログレッシヴなバンドアンサンブルを楽しみたいという方にも打って付けの1枚ではないでしょうか。

とにかく本作は中学生の頃、レンタルで借りたLPからダビングしたカセットが擦り切れるほど聴き倒したアルバムで、大人になってからは当時シングルや12インチ盤でしか聴けなかった別テイクを含むリマスターCDやボックスセットを購入して、定期的に再生しています。たぶん僕の人生の中で10本指に入るくらいリピートしたアルバムのひとつじゃないでしょうか。



▼TEARS FOR FEARS『SONGS FROM THE BIG CHAIR』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 05 20 12:00 午前 [1985年の作品, Tears For Fears] | 固定リンク

2018年5月19日 (土)

KISS『DYNASTY』(1979)

昨日のQUEENで「70年代末からのディスコブーム」について少々触れましたが、この波はロックバンドにも大きな影響を与えました。QUEENの大ヒットの前にも、THE ROLLING STONESが1978年に「Miss You」という全米No.1ヒットを生み出しており、それに続いて1979年にはKISSが「I Was Made For Lovin' You」というヒット曲(全米11位)を発表しております。

ということで、今回紹介するのはそのKISSのヒット曲が収録された1979年5月発売の7thアルバム『DYNASTY』(邦題『地獄からの脱出』)です。

1977年の『LOVE GUN』以来の新作となった本作は、間にライブアルバム『ALIVE II』(1977年)、ベストアルバム『DOUBLE PLATINUM』(1978年)、そしてメンバー4人のソロアルバム4作品を挟んで発表された2年ぶりのオリジナルアルバム。ヴィニー・ポンシアを迎えて制作され、全米9位を記録するヒット作となりました。

ディスコビートを導入したのは「I Was Made For Lovin' You」のほか、ピーター・クリスが歌う「Dirty Livin'」の2曲のみ。ポール・スタンレーが歌うミディアムテンポの「Sure Know Something」「Magic Touch」もソウルテイスト強めで、黒っぽさという点においては先の2曲の枠に入るものかもしれません。

が、それ以外の楽曲はKISSらしいポップなロックンロール満載の通常運転モード。アルバム2曲目にTHE ROLLING STONESの「2,000 Man」カバーが飛び出したり(ボーカルはエース・フレーリー)、いかにもジーン・シモンズらしい「Charisma」「X-Ray Eyes」、エース・フレーリーの頑張りが生かされた「Hard Times」「Save Your Love」といったナンバーを楽しむことができます。

こうやって振り返ると、流行に乗ったのはポールひとりだったことが伺えます。あ、ピーターもか。でもピーター、このアルバムでは自身が歌う「Dirty Livin'」以外ではドラムを叩いておらず、代わりにアントン・フィグが参加しています。結局本作をもってバンドを脱退するわけですが(1980年発売の次作『UNMASKED』にもドラマーとしてクレジットされていますが正しくは不参加。こちらもアントン・フィグがすべてプレイしています)、結局はソロアルバムが大きな引き金になってしまったんでしょうね。

また、エースVo曲が3曲も含まれているという点も非常に興味深いところ。エースは続く『UNMASKED』でも3曲歌ってますが、結局ピーターが歌わないなら……ってことなんでしょうか。そんなエースも、数作後にはバンドを離れるわけですが。

ディスコに走ったりピーターがあまり参加していなかったりとネガティブ要素が強い印象がありますが楽曲自体は“らしさ”満載なので、偏見なしに聴いてもらいたい1枚です。



▼KISS『DYNASTY』
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投稿: 2018 05 19 12:00 午前 [1979年の作品, KISS] | 固定リンク

2018年5月18日 (金)

QUEEN『THE GAME』(1980)

海外で1980年6月末、日本で同年7月下旬に発表されたQUEEN通算8作目のオリジナルアルバム。70年代を総括するようなベスト盤的ライブアルバム『LIVE KILLERS』(1979年)を経て、80年代最初に発表された本作からは「Crazy Little Things Called Love」(全英2位、全米1位)、「Another One Bites The Dust」(全英7位、全米1位)という2曲の全米No.1ヒットを生み出し、アルバム自体も初の全米1位を獲得(もちろん全英でも1位)。さらに「Save Me」(全英11位)、「Play The Game」(全英14位、全米42位)、「Need Your Loving Tonight」(全米44位)というスマッシュヒットシングルも誕生しています。

シンセサイザーを全面的に取り入れた壮大なバラード「Play The Game」からスタートする本作は、我々がイメージする“80年代のQUEEN”の雛形となった記念碑的作品集。トータルの流れを意識したアルバム作りよりも、単曲として親しみやすい楽曲を詰め合わせたバラエティパック的な作風が、今作から特化し始めます。

それは、全米No.1を獲得した2枚のシングル「Crazy Little Things Called Love」「Another One Bites The Dust」を聴けばおわかりいただけることかと思います。前者はエルヴィス・プレスリーをイメージさせるカントリーチックなロックンロール、後者は70年代末から流行していたディスコビートを導入したファンクチューンなのですから。もちろん「Play The Game」や「Save Me」といった彼ららしい壮大なバラードも含まれていますが、どの曲も3分前後でシンプルなものばかり。「Dragon Attack」みたいなファンクナンバーや、ポップでキャッチーなロックチューン「Need Your Loving Tonight」「Coming Soon」、のちにアクセル・ローズ(GUNS N' ROSES)がライブでサビの一節を歌ったことで広く知られるようになる泣きのバラード「Sail Away Sweet Sister」など、とにかく1曲1曲が際立った作風に仕上げられています。

興味深いのは、大ヒットとなった「Another One Bites The Dust」を書いたのがジョン・ディーコン(B)だという事実。これまでも毎回アルバムに1〜2曲は提供してきた彼ですが、このヒットに付与したことはとても大きかったように思います。

ハードロックバンドというよりは、よりポピュラリティを得たアリーナロックバンドによるシングルヒット集の趣きが強い1枚ですが、この方向性はのちにスタートするMTVともリンクして“80年代のQUEEN”のスタイルはどんどん確立されていくことになります。

ちなみに、QUEENがアメリカでアルバム1位を獲得したのは、本作が最初で最後。オリジナルアルバムのトップ10入りも、結果本作がラストとなってしまうのでした。



▼QUEEN『THE GAME』
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投稿: 2018 05 18 12:00 午前 [1980年の作品, Queen] | 固定リンク

2018年5月17日 (木)

WHITESNAKE『GOOD TO BE BAD』(2008)

2008年4月にリリースされた、WHITESNAKE通算10作目のスタジオアルバム。1978年秋に発表された4曲入りEP『SNAKEBITE』がWHITESNAKE名義での最初の音源なので、この『GOOD TO BE BAD』はバンドデビュー30周年を記念する1枚でもあるわけですね。

と同時に、1997年の9thアルバム『RESTLESS HEART』を携えたツアーを最後に、何度かにわたり復活した90年代のWHITESNAKEに終止符を打ったデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)が、実に11年ぶりに発表したWHITESNAKE名義のアルバムとなります。とはいえ、『RESTLESS HEART』はソロアルバムとして制作されたものを無理矢理バンド名義で発表したものなので、純粋なバンドの新作としては1989年の『SLIP OF THE TONGUE』以来、19年ぶりということになるのでしょうか……うん、音楽的にもそう言い切って間違いないと思います。

本作制作時のメンバーはデヴィッドのほか、新たな片腕として作曲にも全面的に携わったダグ・アルドリッチ(G)、WINGERとの兼任で参加するレブ・ビーチ(G)、ユーライア・ダフィー(B)、日本ではB'zでの活動で知られるクリス・フレイジャー(Dr)、ティモシー・ドゥルーリー(Key)という布陣。2006年リリースのライブアルバム『LIVE... IN THE SHADOW OF THE BLUES』でのライブ音源や同作のために制作された新曲(「Ready To Rock」「If You Want Me」「All I Want Is You」「Dog」)でのラインナップから、トミー・アルドリッジ(Dr)のみ交代しただけです。

『LIVE... IN THE SHADOW OF THE BLUES』収録の新曲の時点で、意外とデヴィッドとダグの相性が悪くないように感じていた人には、この『GOOD TO BE BAD』は納得の1枚ではないでしょうか。

「Best Years」という「あの素晴らしい日々よ、もう一度」的な意味を持つダイナミックなナンバーからスタートするこのアルバムは、もうそのまんま、1987年のメガヒット作『WHITESNAKE』を軸に、その前後(1984年の『SLIDE IT IN』、1989年の『SLIP OF THE TONGUE』)の良作までを含む、ブルースロックというよりはHR/HM路線のWHITESNAKEを現代によみがえらせようとした内容と言えるでしょう。

聴き進めると「あれ、このメロディ聴いたことある」とか「この節回し、あの曲に似てない?」とか思い当たる元ネタが思い浮かびますし、「具体的にここが似てるわけじゃないけど、この曲はあの曲の雰囲気を再現したかったんだな」という楽曲も少なくありません。そういった楽曲が、加齢とともに声域が狭まり始めたデヴィッドに合わせて、結構なダウンチューニングで演奏されています。なので、サウンドの重量感や低音の質感は非常に現代的。“今の音”としては文句なしだと思います。アレンジも非常に適度なブルースフィーリングをテクニカルな演奏で表現しており、決して“古臭さ”は感じないはずです。

しかし、名作『WHITESNAKE』の煌びやかさまでは時代の違いか再現することができず、なおかつダグの作曲能力の限界か“突出した1曲”が存在しない。「All For Love」とか「Summer Rain」とか悪くないけど、大半は平均点か“B+”程度の仕上がりといった印象。安心して聴けるけど、年間ベストに選ぶような1枚ではないかな……という、古くからのファンにとってはどっちつかずの微妙な立ち位置な気がします。

ですが、もし『WHITESNAKE』をまだ聴いたことがないという奇特なHR/HMリスナーがいたとして、本作からWHITESNAKEに触れたとしたら……その人にとっては名盤になりうる可能性の高い、とも言えるでしょう。なので、聴き手によって評価がガラリと変わる1枚かもしれませんね。

なお、本作は2011年に『STILL GOOD TO BE BAD』と題した、『LIVE... IN THE SHADOW OF THE BLUES』収録の新曲4曲をクリス・フレイジャーが叩き直したバージョンを追加し、曲順もいじった15曲入りCDと、MVやスタジオアコースティックライブ映像などを収めたDVDからなる2枚組仕様も日本のみでリリースされました。



▼WHITESNAKE『GOOD TO BE BAD』
(amazon:日本盤CD / 日本盤CD+DVD / 海外盤CD / 海外盤2CD

投稿: 2018 05 17 12:00 午前 [2008年の作品, Whitesnake] | 固定リンク

2018年5月16日 (水)

WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE』(1989)

1989年11月にリリースされた、WHITESNAKE通算8作目のスタジオアルバム。1987年春に発表された前作『WHITESNAKE』からのシングル「Here I Go Again」は全米1位、「Is This Love」が全米2位という大ヒットとなり、アルバム自体も全米2位、全英8位まで上昇。アメリカだけで800万枚以上ものセールスの大出世作となりました。これを受けて、『WHITESNAKE』を携えたツアーでのバンドメンバー……エイドリアン・ヴァンデンバーグ(G)、ヴィヴィアン・キャンベル(G)、ルディ・サーゾ(B)、トミー・アルドリッジ(Dr)でレコーディングに突入しようとしたところ、ヴィヴィアンが脱退。代わりに加入したのがスティーヴ・ヴァイというゲテモノギタリストだったことから、当時はかなりの大騒ぎとなりました。

曰く「ブルースベースのハードロックバンドに、ブルースが弾けないキワモノギタリストが加入した」と。確かにそうかもしれませんが、そもそも前作『WHITESNAKE』の時点でWHITESNAKEはブルースという軸のひとつを放棄していたような気もするのですが……まあ、いいでしょう。

曲作りは基本的にデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)とエイドリアンの2人で進め、さてスタジオに入りましょうというときにエイドリアンの腱鞘炎が発覚。完治までレコーディングを待てなかったカヴァーデイルは、エイドリアンのデモをもとにヴァイがすべてのギターパートを担当。エイドリアンがプレイしたベースの部分は残しつつも、ところどころにヴァイらしい派手なオカズが挿入された、“ギターオリンピック”的なサウンドが展開されてしまいます。

リリース当時、やれギターがうるさいだのなんだの叩かれましたが、ちゃんと聴くとそもそも楽曲のベースの部分がしっかり作り込まれていない、つまり詰めが甘いのではないかと気付くんじゃないでしょうか。例えばキー設定が高すぎて、デヴィッドはただわめいているように聴こえるし、それによってリズム隊も軽く聴こえてしまう。そこにあんなギターが乗るもんだから、ねぇ。エイドリアン、もうちょっとどうにかならなかったのかと。

そんなだから、リメイクした「Fool For Your Loving」も浮きまくり。この曲までキーを上げてしまい、原曲の雰囲気壊しまくりです。前作での「Here I Go Again」も「Crying In The Rain」も原曲どおりのキーだったからこそあの世界観をよりゴージャスにすることができたのに……嗚呼、全部空回り。

ただ、そんなアルバムの中にも「これは!」と呼べる楽曲がいくつか存在します。そこだけは声を大にして伝えておきたい。それが「Now You're Gone」や「The Deeper The Love」といった前作の延長線上にあるポップ路線と、「Judgment Day」と「Sailing Ships」の大作路線。特に「Judgment Day」は今でもライブで頻繁に演奏されており、いわば「WHITESNAKE版(LED ZEPPELINの)『Kashmir』」みたいな楽曲として愛されています(ホントかな)。で、「Sailing Ships」は……これは以前取り上げた『STARKERS IN TOKYO』(1997年)のアコースティックバージョンが素晴らしいので、こちらを聴いてもらえば(スタジオ版じゃないのかと)。スタジオ版は後半のボーカルキーが上がるところがちょっとね。悪くないんだけど、やりすぎ感が強くて。

と、ここまで書いたら「これは駄作なんじゃないか?」とお思いかもしれません。そう、駄作かもしれませんが……嫌いになれないのも事実。何気によく聴くんですよ、このアルバム。リリースタイミングが大学受験間際だったこともあり、受験の往復や勉強の合間によく聴いたし、浪人中もなんだかんだで聴いたので、そういう記憶が強いのかもしれません。だからこそ、嫌いになれない。少なくとも自分の中では「そこそこ」の1枚です。

なお、WHITESNAKEは本作をリリースした1年後の1990年秋、ワールドツアーの終焉をもってバンド活動を休止してしまいます。

あ、もうひとつ。『SLIDE IT IN』(1984年)や『WHITESNAKE』同様、本作には複数のバージョンが存在するので、そちらについても記しておきます。


<1889年バージョン>
01. Slip Of The Tongue
02. Cheap An' Nasty
03. Fool For Your Loving
04. Now You're Gone
05. Kittens Got Claws
06. Wings Of The Storm
07. The Deeper The Love
08. Judgment Day
09. Slow Poke Music
10. Sailing Ships


↑こちらは下↓のジャケットで発売された、オリジナルバージョン。僕はこの曲順に慣れ親しんでいたので、20年後に発表された20周年バージョンおよび現行のリマスターバージョンの曲順はなんとなく馴染めずにいます。



▼WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE (ORIGINAL EDITION)』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD


で、こちら↓が現行バージョン。2曲目に「Judgment Day」の時点であり得ない。後半の侘び寂びの無さもあり得ない。戻してくれ、頼むから。


<2009年バージョン>
01. Slip Of The Tongue
02. Judgment Day
03. Fool For Your Loving
04. Now You're Gone
05. Kitten's Got Claws
06. Cheap An' Nasty
07. The Deeper The Love
08. Slow Poke Music
09. Wings Of The Storm
10. Sailing Ships
11. Sweet Lady Luck [Single B-Side]
12. Now You're Gone [U.S. Single Remix]
13. Fool For Your Loving [Vai Voltage Mix]
14. Judgment Day [Live... In the Shadow of the Blues]
15. Slip Of The Tongue [Live at Donington 1990]
16. Kitten's Got Claws [Live at Donington 1990]


再発版はシングルのみ収録のトラックや複数のライブ盤からのライブ音源も混ざっていて、なんだか忙しいので困ります。ホント、作り手の気まぐれで10数年経ってから曲順変えるのやめてほしい。お前にとってそれが正解でも、俺たちの思い出まで修正できないんだから。

というわけで、僕はリマスター盤もプレイリストでオリジナルの曲順に戻して再生してます。本作はまだストリーミング配信されてないみたいだけど、どうせじきに配信始まるはずだから、その際にはぜひオリジナルバージョンでの再生をオススメします!(まだ一度も聴いてない人にとっては、それこそこれもお節介かしらね)



▼WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE (NEW EDITION)』
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投稿: 2018 05 16 12:00 午前 [1989年の作品, Steve Vai, Whitesnake] | 固定リンク

2018年5月15日 (火)

CONFUSION MASTER『AWAKEN』(2018)

ドイツ出身の4人組ドゥームメタル/ストーナーロックバンド、CONFUSION MASTERの1stアルバム。CYNESS、WOJCZECHといったジャーマンデス/グラインドバンドの元&現役メンバーを中心に2015年に結成された、と聞くとスーパーバンドのように感じられますが、筆者がそのへんのドイツのバンドに疎いため、まったく有り難みが感じられません。ごめんなさい。

CONFUSION MASTERという名前でドゥーム/ストーナーをやる……ってだけで、なんとなくBLACK SABBATHをイメージしてしまうメタラーは多いかと思いますが、それ正解。資料には「“Electric Sabbath Action Doom”を標榜する」とあり、正直“Electric Sabbath Action Doom”の意味はまったくわかりませんが、なんとなく伝わってくるものだけはあるので、まあそういうことなのでしょう。

アルバムはいきなり11分近くもあるドゥーミーな「Witch Pollution」から始まり、続く「Nothern Midnight Ghoul Dance」も約11分。ともにサバスのようなスリリングな展開はなく、引きずるようなミドルテンポを維持したまま演奏で変化を付けていくスタイル。聴く人が聴けば退屈……ってことになるんでしょうが、これがね、大音量で聴いていると気持ち良いのなんの。ダンスミュージックを聴き続けて高揚感が増すのと同じ作用なのか、変な高揚感に包まれてトリップしてしまう……ような気がします(笑)。

もちろん、短い曲もあります。3曲目のシャフルビートの効いた「Reaper's Fist」は約7分(笑)、5曲目「In The Shadown Of The Bong」も約7分(笑)、6曲目「False Dawn」は約8分と多少長めですが(笑)、アルバムを締めくくる7曲目「Awaken」は約5分と本作で最短の楽曲です。

あ、1曲飛ばしましたけど、4曲目「Goner Colony」は本作最長の11分9秒ですので、ご確認ください(笑)。

ひたすらひとつのリフで引っ張り、リズムやギターソロで変化をつけていく。もちろんオジー・オズボーンを彷彿とさせるヘロヘロボーカルも良い味出してますし、時にはセリフのようなボーカルもフィーチャーされ、ちゃんと緩急をつけています。

どこか宗教じみているところも、元祖サバスのそれをさらに極化させたみたいで、もしかしたら聴き手を選ぶことになるかもしれない。けど、大音量で聴き続けているうちに妙に癖になる。ストーナーやドゥームってそういうところ、ありますよね。

このバンド(プロジェクト)が今後どこまで続くかわかりませんが、5月21日からはジャパンツアーも行われるようなので、気になった方はぜひ会場に足を運んでみてはいかがでしょう。僕は時間的余裕があったら、ぜひ生で観てみようと思ってます。



▼CONFUSION MASTER『AWAKEN』
(amazon:国内盤CD / 海外盤2LP+CD / MP3

投稿: 2018 05 15 12:00 午前 [2018年の作品, Confusion Master] | 固定リンク

2018年5月14日 (月)

SEPTIC TANK『ROTTING CIVILISATION』(2018)

CATHEDRAL、元WITH THE DEADのフロントマン、リー・ドリアンが新たにスタートさせたハードコアバンド(プロジェクト)SEPTIC TANKのデビューアルバム。メンバーはリー(Vo)のほか、CATHEDRALでの相方ギャズことギャリー・ジェニングス(G)、CATHEDRAL最後の数年間在籍した元REPULSIONのスコット・カールソン(B)、レコーディングエンジニアのジェイミー“ゴメス”アレリャーノ(Dr)という編成。

もともとは90年代半ば、リーとギャズ、当時ツアーメンバーとしてCATHEDRALに参加していたスコットの3人に、元TROUBLEのバリー・スターンを加えた編成でスタジオに入って遊びでハードコアナンバーをプレイしたのがきかっけ。その後、2005年にバリーが亡くなってしまいましたが、90年代に作った楽曲をレコーディングしようと2011年頃に現メンバーで集結。2012年に4曲入りEP『THE SLAUGHTER EP』を発表しましたが、それから5年後の2017年に再集結して、この1stアルバムを完成させました。

全18曲で40分に満たないその内容は、文字通りハードコア。1〜2分台の楽曲が大半で、最短で58秒、最長でも4分。リーはグロウルなどに頼ることなく、現在のボーカルスタイルで(ときにダミ声を多用しつつ)歌いきっています。ギャズのギターも冴えまくりで、ひたすらカッコいいリフとソロを聴かせてくれるし、リズム隊のツボを心得た軽快なプレイも最高。ベースの歪み具合も非常に好みですし、メタル/パンク/ハードコア/デスメタルとかそういったジャンルを超越した、最高にイカしたナンバーをがっつり楽しむことができるはずです。

それにしても、2018年に再びリーとギャズがタッグを組んでバンドをするなんて、CATHEDRAL解散時に誰が想像したことでしょう。20年以上にわたり苦楽をともにした仲間ですもん、こうやって一緒に音を出せば常に最高のものを提供してくれる。でも、それが想像もしてなかったスタイルだったりするもんだから、さらに驚くわけですよ(事前にEPはあったけどさ)。

リー・ドリアンとハードコア/グラインドというと初期NAPALM DEATHを思い浮かべる人もいるかと思いますが、そこは切り離してから接したほうが得策かと。完全にど真ん中のハードコアパンクですので。そっちの素養がないメタラーの方にはちょっと厳しいかもしれませんが、必ず引っかかるところはあるはずですので、ぜひ一度トライしてみてください。

なお、日本盤には先に発売された『THE SLAUGHTER EP』からの4曲をボーナストラックとして追加収録。より生々しくて邪悪なサウンドは、アルバム音源とは違った味わいがあるはずですので、ぜひ日本盤を手に取ることをオススメします。



▼SEPTIC TANK『ROTTING CIVILISATION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 05 14 12:00 午前 [2018年の作品, Cathedral, Septic Tank] | 固定リンク

2018年5月13日 (日)

SKINDRED『BIG TINGS』(2018)

2018年4月にリリースされたSKINDREDの通算7作目のスタジオアルバム。前作『VOLUME』(2015年)発売後、2016年春と2017年秋の2度にわたり来日公演を行い、前者ではCrossfaithをはじめとする国内勢らと共演、後者では『LOUD PARK』という国内最大級のメタルフェスでパフォーマンスしました。これまでSiMやCrossfaithなどの国内ラウドロックバンドと共演することが多く、そちら側のリスナーにはある程度知られていたものの、生粋のメタルファンには「レゲエメタル? そんな邪道」と若干敬遠されていたところもあったのではないでしょうか。それが、あのライブパフォーマンスを観て、いや見せられてしまったら、みんなイチコロですよね。

また、特に彼らのアルバムはアルバムごとに国内でのリリース先がコロコロ変わり、情報が得難いことも少なくありませんでしたが、今回は前作から引き続き国内盤はビクターから発売。前作での来日も好評だったので、きっと今回も……期待しています(笑)。

さて、国内盤を購入した方ならすでにご存知かもしれませんが、本作のライナーノーツを筆者が担当させていただきました。実は、このライナー執筆後にメンバーのベンジー・ウェッブ(Vo)にインタビューする機会を得まして、そちらが『BURRN!』6月号に掲載中です。ライナーでは拾いきれなかった情報(メンバーの脱退やレコーディングに関して)も多数フィーチャーされておりますので、ぜひ併せてチェックしていただけると幸いです。

ということで、以上の資料を読んでいただければ、本作の素晴らしさは十分伝わると思うので、今回はこれにて……というわけにはいかないですよね(苦笑)。まだ聴いてない!っていう人は、『VOLUME』のレビューを読んでからこちらを読んでいただいて……。

基本的には、路線は前作から大きくは変わっていません。ただ、若干ストレートな作風かな?といった程度の変化はありまして、それがメタルファンにとっては聴きやすさにつながっているのではないでしょうか。特にリードトラックの「Machine」はAC/DCを彷彿とさせる軽快なロックンロールですし、ゲストボーカルでREEFのゲイリー・ストリンガー、ギターソロで元MOTÖRHEAD、現PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONSのフィル・キャンベルが参加しているので、よりとっつきやすいと思います。

それ以外の楽曲もレッチリほどファンクというわけでもなく、レゲエ要素も味付けとして曲の幅を広げることに成功してますし。前作が好きなら間違いなく気にいる1枚ですし、前作を聴いてなくても存分に楽しめる入門編的な1枚ではないかと断言します。はい。

なお、日本盤のみボーナストラックとしてマックス・ロメロというレゲエシンガーの代表曲「Chase The Devil」をパンキッシュにカバーしております。パンクとレゲエはもともと地続きな存在ですし、このアレンジは納得の一言。残念ながら配信バージョンでは聴けないので、気になる方はぜひ国内盤を購入いただけますと(クドイですね。笑)。

インタビュー時にはまだ来日は決まっていないという話でしたが、ぜひこの際また10月に来日していただいて、そのタイミングに小箱での単独公演も……お願いします!



▼SKINDRED『BIG TINGS』
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投稿: 2018 05 13 12:00 午前 [2018年の作品, Motorhead, Phil Campbell And The Bastard Sons, Reef, Skindred] | 固定リンク

2018年5月12日 (土)

NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)

昨日のMEATHOOK SEEDを聴いて、急に思い出したのが今回紹介するNAILBOMB。名のあるメタル/ラウド系バンドのメンバーが集まって作ったプロジェクト、90年代前半という微妙なタイミングでのインダストリアルメタルへの接近など共通項がいくつかあってか、自分の中で同じ枠に入れていた2組なんですよね。

NAILBOMBは当時SEPULTURAに在籍していたマックス・カヴァレラ(Vo, G)と、当時FUDGE TUNNELの一員だったアレックス・ニューポート(Vo, G)が立ち上げたプロジェクト。本作『POINT BLANK』は1994年3月(日本盤は4月)にリリースされた唯一のオリジナルアルバムで、レコーディングには同じくSEPULTURAのアンドレアス・キッサー(G)、イゴール・カヴァレラ(Dr)、FEAR FACTORYのディーノ・カザレス(G)がゲスト参加しています。

サウンド的には当時のSEPULTURAが持っていたモダンヘヴィネス的な重さよりも、もっと直線的でパンキッシュなメタルサウンドに、インダストリアル調のサンプリングや打ち込みビートなどをミックスしたもので、感覚的にはMINISTRYに近いものがあるかも。

最初に「MEATHOOK SEEDと同じ枠」と書いたものの、手法は一緒でも出てくる音が異なるものというのが面白い。もちろんそれは「NAPALM DEATHOBITUARY」と「SEPULTURA+FUDGE TUNNEL」という違いによるものであって、違うのは当たり前の話なんですけど。だけど、なぜか同じ枠で括りたくなってしまう理由、同意してもらえますかね?

SEPULTURAのスラッシュメタル/モダンヘヴィネスとも異なる、どこか単調でパンキッシュなスタイルはカヴァレラがのちに結成するCAVALERA CONSPIRACYにちょっと近いものがあったりすると思うのですが、いかがでしょう? もちろん、完全に一致しているわけではないですけど、カヴァレラがこのNAILBOMBでアレックス・ニューポートと試したことが10数年後に再びCAVALERA CONSPIRACYでトライされたと考えたとき、その間の出来事やバンドの経緯を踏まえると合点がいくのではないでしょうか。

あと、MEATHOOK SEEDを久々聴いたときは新鮮さが得られたのに、このNAILBOMBでは同じような感覚が得られなかったのはなぜなんでしょうね。それも不思議……って、CAVALERA CONSPIRACYがあったからか。納得(苦笑)。

NAILBOMBは本作リリース後にライブを行なっており、翌1995年にはライブアルバム『PROUD TO COMMIT COMMERCIAL SUICIDE』を発表しています。なお、こちらにはライブ音源のほかにスタジオ音源2曲が追加収録されているので、新曲目当てで聴いてみてもいいかもしれません。



▼NAILBOMB『POINT BLANK』
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投稿: 2018 05 12 12:00 午前 [1994年の作品, Fudge Tunnel, Nailbomb, Sepultura] | 固定リンク

2018年5月11日 (金)

MEATHOOK SEED『EMBEDDED』(1993)

NAPALM DEATHのギタリスト、ミッチ・ハリスがOBTUARYのトレヴァー・ペレス(G)とドナルド・ターディ(Dr)とともに立ち上げたプロジェクト、MEATHOOK SEEDが1993年3月(日本では同年6月)にリリースした1stアルバム。トレヴァーは本プロジェクトではボーカルを担当、ミッチはギターのほかベースやプログラミングを担当しています。

グラインドコアバンドのギタリストとデスメタルのオリジネーターのひとつが合体したことで、どんなグロい音のアルバムができるのかと思いきや、本作で彼らが挑戦したのはインダストリアルメタルでした。とはいえ、両バンドの名残もところどころに見え隠れするのですが、適度なインダストリアル感とアンビエント感をフィーチャーした、1993年という時代ならではの音に仕上げられています。

確かにデスメタルっぽくもあるのですが、それよりも本作で主張しているのは「HELMEL以降のヘヴィサウンド」のアップデート。ミディアムテンポ中心のグルーヴメタル的なノリは確かにHELMETっぽいですし、ボーカルもデス声一辺倒ではなく、ノーマルトーンで歌い叫んでいる楽曲もあったりと、1993年という時代性を考えると非常に“らしい”作風だと思っています。

実際、リアルタイムで本作と初めて接したときも、NAPALM DEATH絡みでインダストリアルメタルという事前知識があったにも関わらず「……あれ、HELMET? ヘヴィすぎないPANTERA?」なんて思ってしまったのですから。

正直、当時ですら「これは新しいのか?」と疑問に思ったものです。が、あれから25年経った今聴いてみると……あれ、意外と古びてない? ていうか、この手のサウンドってある時点で止まってしまっている? なんて思ってしまったのですが……そんなことないですよね?

いや、僕自身も20数年ぶりに引っ張り出して聴いているのですが、本当に今聴いても恐ろしいくらいマッチするというか、普通に楽しめたんですね。こういったカオティックでヘヴィなバンド、今もたくさんいますけど、なんだかんだでオリジナリティの塊だったんだな、このアルバム……と2018年に再認識しているところです。

ちなみに本作、全11曲中10曲が2〜4分台とコンパクトな楽曲ばかりなのですが、ラストの1曲「Sea Of Tranquility」のみ13分台という大作でして。まあ大作というか、この1曲こそがインダストリアル/アンビエント/トランス路線の本領発揮しまくりなナンバーなのですよ。結局、この1曲の特異性とそれ以外の楽曲との乖離している感じが、本作のアンバランスさを示しているようで、そこが当時がっつりのめり込めなかった理由なのかな、とも思ったり。

MEATHOOK SEEDとしては1999年にもう1枚、『BASIC INSTRUCTIONS BEFORE LEAVING EARTH (B.I.B.L.E.)』というアルバムをリリースしていますが、こちらに関しては僕は未聴のまま。なお、同作はミッチ以外1stアルバム『EMBEDDED』とは異なる編成になっております。



▼MEATHOOK SEED『EMBEDDED』
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投稿: 2018 05 11 12:00 午前 [1993年の作品, Meathook Seed, Napalm Death, Obituary] | 固定リンク

2018年5月10日 (木)

RIOT V『ARMOR OF LIGHT』(2018)

前作『UNLEASH THE FIRE』(2014年)からRIOT V名義で活動を再開させたRIOT。彼らの通算16作目、RIOT Vとしては2作目となるニューアルバムが本作『ARMOR OF LIGHT』です。今回もジャケット、最高ですね(笑)。

オリジナルメンバーのマーク・リアリ(G)を失い、マイク・フリンツ(G)とドン・ヴァン・スタヴァン(B)を中心に再編成されたRIOT Vですが、前作から新加入のトッド・マイケル・ホール(Vo)がいよいよ本作で本領発揮か?という素晴らしいボーカルを聴かせてくれます。

サウンド的には『THUNDERSTEEL』(1988年)以降の路線ではあるのですが、本作はスピード感以上にドラマチックさに重点を置いたのが功を奏し、1曲1曲が聴き応えのある仕上がりに。オープニングの「Victory」から「End Of The World」へと続く泣きメロ満載のファストチューン連発に思わずガッツポーズしたかと思うと、『THUNDERSTEEL』期を思わせるスラッシーな「Messiah」が飛び出したりと、とにかく気をつかせぬ展開の連続です。

どの曲にもしっかり“RIOTらしさ”が感じられつつも、そことも違う“何か新しいもの”が始まろうとしている感覚が前作以上に強まっている。そこは、『UNLEASH THE FIRE』発表前後のツアーを経て強めた絆によるものが大きいのかもしれません。RIOT時代に築き上げたスタイルを引き継ぎつつも、「RIOT V」という新しい名前を得たことによる新たな道を切り開くことも重要な命題であるわけですから。

マイク・フリンツとニック・リー(G)からなるツインリードソロも随所に盛り込まれておりますが、どれも自然な形で飛び込んでくる。そう、無理してる感がないんですね。“RIOTらしさ”を意識しすぎて「どこかに入れないと」みたいな感じではないから、こちらも素直に向き合える。なおかつ、トッド・マイケル・ホールの高音域の伸びの良さと力強さが本当に気持ちよく、バックのパワフルな演奏にまったく負けていない。逆に考えると、ここまで歌えるシンガーがいるからこそ、ツインリードも随所に盛り込めるし、演奏もどこまでもドカドカと派手にやれるわけですね。

7曲目「Armor Of Light」までひたすら突っ走り、8曲目「Set The World Alight」でようやくミディアムテンポのメロウナンバーが登場するのですが、続く9曲目「San Antonio」で再度ファストチューンに。その後は10曲目にミドルヘヴィ調の「Caught In The Witches Eye」、11曲目にシャッフルナンバー「Ready To Shine」ときて、本編ラストは再び疾走系の「Raining Fire」で終了。日本盤にはボーナストラックとしてミドルナンバー「Unbelief」と、名曲「Thundersteel」の再録バージョンが追加されています。

……あれ、バラードとかないんだ……というのが、最初に聴き終えたときの素直な感想。これだけしっかりした曲が書くことができて、しっかり歌えるシンガーがいるんだから、1曲くらい朗々と歌い上げるメタルバラードがあってもいいのに。とにかくファストチューンが多すぎて、後半のミディアムナンバーが登場するまで変化に乏しいというのもあって、できればそういう1曲が欲しかったなと。そこだけが残念でした。

ボーナストラック「Unbelief」もバラードとは違うけど変わったタイプの楽曲なので、アルバム本編に入っていたらちょっと印象が変わったかも。とにかく、オッサンが60分近く聴くにはちょっとカロリー高いかな、というのが本音です。だからといって、別に悪い作品というわけではないので勘違いないように。

なお、デラックス盤には2015年の『KEEP IT TRUE FESTIVAL』でのライブ音源13曲を収めたボーナスディスク付き。過去の名曲群を現編成で楽しめる貴重な音源なので、ぜひこちらをチェックしてみることをオススメします。



▼RIOT V『ARMOR OF LIGHT』
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投稿: 2018 05 10 12:00 午前 [2018年の作品, Riot, Riot V] | 固定リンク

2018年5月 9日 (水)

JESUS JONES『PASSAGES』(2018)

JESUS JONES待望のニューアルバム(通算6枚目)がようやく到着。前作『LONDON』(2001年)は日本盤が発売されることもなく(ぶっちゃけ、内容も地味だったこともあり)ファン以外の間では大して話題になりませんでしたが、その後何度か来日公演も実現しており、それなりに成功を収めたようです(そうです、僕は一度も行ってません。というか行けませんでした)。

数年前からリリースが噂され、昨年初頭に「2017年初夏」とアナウンスされたものの、結局そこから1年を経た今年4月に発売。前作から17年ぶりのニューアルバム、今回も日本盤リリースはありません!

まあ、そんな細かいことはどうでもいいです。この際ちゃんと聴けるだけで十分ですから。

昨年から先行シングルやYouTubeでのMV公開があったので数曲は耳にすることができていたわけですが、基本的には前作『LONDON』の延長線上にある“ベーシックなバンドサウンドに適度なエレクトロ要素を取り入れた、90年代前半のスタイルとは真逆のスタイル”。ですが、前作よりもエレクトロ色が若干復活しており、90年代前半の名作ほどではないものの“あの頃の香り”が多少は感じられる力作に仕上がっています。

確かに『DOUBT』(1991年)ほど派手ではないし、『PERVERSE』(1993年)ほど煌びやかではないかもしれない。でも、そのどちらのアルバムにも通ずるキャッチーは間違いなく存在する。それは前作『LONDON』にも間違いなくあったものなのですが、その『LONDON』以上にJESUS JONESらしさが強まっている気がするのは自分だけでしょうか?

改めて、マイク・エドワーズ(Vo, G)のソングライターとしての非凡さもここで再確認することもできたし、何よりもその歌声の変わらなさには驚かされます(よく聴けば若干老けた感はありますが、それも誤差範囲内)。そこに“らしい”メロディと“らしい”サウンドメイクが組み合わさることで生まれるマジックが、確実にここにはある。残念ながら『ALREADY』(1997年)にはそこが希薄だったと思うのです(あれはあれで悪くなかったけど)。

中盤の地味なエレクトロ路線は、間違いなく“あの”JESUS JONESそのもの。『LONDON』で肩を落とした90年代のファンも、きっと今回は気に入ってくれるのではないか……そう願っております。

ちなみに、僕はかなり好きです。下手したら『LOQUIDIZER』(1989年)よりも好き……っていうのは言い過ぎか(苦笑)。『DOUBT』と『PERVERSE』が同じくらい好きで、『LOQUIDIZER』がちょっと落ちるというようなリスナーの言うことなので、参考にならないかもしれませんが(笑)。



▼JESUS JONES『PASSAGES』
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投稿: 2018 05 09 12:00 午前 [2018年の作品, Jesus Jones] | 固定リンク

2018年5月 8日 (火)

KYLIE MINOGUE『GOLDEN』(2018)

カイリー・ミノーグ通算14作目のスタジオアルバム。前作は季節モノのクリスマスアルバム『KYLIE CHRISTMAS』(2015年)でしたが、完全なるオリジナルアルバムとなるとその前の『KISS ME ONCE』(2014年)以来4年ぶりとなります。

個人的にはその前の『APHRODITE』(2010年)の出来が素晴らしいと思っていただけに、続く『KISS ME ONCE』にはいまいちピンとくるものがなく、聞く頻度は今までで一番低かったような記憶が。それもあってか(また季節モノの企画盤色が強いせいもあってか)『KYLIE CHRISTMAS』は聴かずじまいでした。

というわけで、個人的には正真正銘の4年ぶりの新作となる今作。エレクトロ路線を極めまくった『APHRODITE』と、そこから一歩進んで当時主流だったテイストを取り入れた『KISS ME ONCE』から外れ、ようやく新機軸にたどり着いた印象です。

オープニングを飾る先行シングル「Dancing」を一聴すればおわかりいただけるように、いきなりのカントリー路線です。もちろん、ただのレイドバックではなく、基盤になるのはモダンなビート&サウンドスケープであり、そこにナッシュビルテイストの歌メロと枯れたカントリーギターやバンジョーが乗る。もちろんこれは先人たちが今までに試してきたスタイルではありますが、今年50歳になろうとするカイリーが現在の自分にフィットしたカラーを見つけるという意味では非常に最適なものを持ってきたなという印象。うん、合っているんですよねこれが。

タイトルトラック「Golden」冒頭で聴けるファルセット然り、全体的に落ち着いたトーンのボーカル然り、セクシーさとは異なるアダルト感が増しているし、ギターやバンジョーが前面に打ち出されていることでいつも以上にロッキンなカイリーが楽しめるという点においても(カイリーにしては)新鮮さが感じられる。カントリーという手垢が付いたジャンルをピックアップしているにも関わらず、しっかりモダンさも備わっています。

しかも収録曲の大半が3分前後という曲の長さも非常に現代的。モダンなポップスとしても高性能だと思うし、アメリカではチャート上では低調(64位)だったものの、今後のシングルヒット次第ではさらにヒットしそうな予感。何がどんなきっかけで当たるかわからない今だからこそ、いろんな可能性を秘めた力作だと思います。リリースからここ1ヶ月ぐらい、何気に日常で流れていることの多い1枚です。



▼KYLIE MINOGUE『GOLDEN』
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投稿: 2018 05 08 12:00 午前 [2018年の作品, Kylie Minogue] | 固定リンク

2018年5月 7日 (月)

THIRTY SECONDS TO MARS『AMERICA』(2018)

前作『LOVE, LUST, FAITH AND DREAMS』(2013年)から5年ぶりに発表された、THIRTY SECONDS TO MARSの通算5作目のスタジオアルバム。初の全米TOP10入り(6位)を記録した前作を上回る、初登場2位という高ランキングを記録した最新作ですが、その内容に驚いたリスナーも多かったのではないでしょうか。

いわゆるオルタナティヴロックの延長線上にある親しみやすいサウンドに、スタジアムロックの壮大さやその時代にフィットしたモダンなポップテイストを散りばめたスタイルで、作品を重ねるごとにそのモダンさが強まっている彼らですが、本作はその極みと言えるような内容に仕上げられています。

オープニングを飾るのは、昨年夏に先行公開されていた「Walk On Water」。昨今のヒットチャートを賑わせているエレクトロテイストのポップロックは前作の延長線上にある楽曲ですが、その振り切れ方はそれ以上。続く「Dangerous Night」に至ってはプロデューサーにかのZEDDを迎えた意欲作で、ポップさの冴えっぷりは言うまでもなく、音数を抑えたアレンジなどかなりモダンさが際立つ仕上がりです。

さらにはエイサップ・ロッキー(A$AP ROCKY)をフィーチャーした「One Track Mind」やホールジー(HALSEY)とのデュエット曲「Love Is Madness」などは、もはやロックバンドの枠を超えた作風。では「ロックではない」からダメかというと、まったくそんなことはなく、非常によく作り込まれた良曲なのです。

かと思えば、ゴスペルを彷彿とさせる壮大なロックバラード「Great Wide Open」やアコギ弾き語りによる「Remedy」なども存在している。確かに全体を覆う世界観はロックバンドのそれとは異なるものかもしれません。しかし、今や世界的に「(いわゆるヒットチャート上で)ロックは死んだ」なんて言われている状況下で、ロックバンドがその時代と対峙して今のメインストリームで戦おうとしている姿を、僕は全面的に支持したいと思っています。

昨年のLINKIN PARKの新作『ONE MORE LIGHT』を聴いたあとと同じ気持ちになった、THIRTY SECONDS TO MARSの新作。『AMERICA』というシンプルなタイトルに込めた思いと、そのアメリカをイメージさせるキーワードがいくつか並ぶだけのシンプルなアルバムジャケット(海外盤はそのキーワードと色が異なる10種類のジャケットが用意されています)。日本のリスナーにはぜひその歌詞の意味を理解しつつこのサウンドを楽しんでほしいので、5月23日リリースの国内盤を手にとってもらえたらと思います(日本盤のみ、エイサップ・ロッキー抜きの「One Track Mind」も収録されているので)。



▼THIRTY SECONDS TO MARS『AMERICA』
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投稿: 2018 05 07 12:00 午前 [2018年の作品, Thirty Seconds To Mars] | 固定リンク

2018年5月 6日 (日)

ARCTIC MONKEYS『WHATEVER PEOPLE SAY I AM, THAT'S WHAT I'M NOT』(2006)

“ポストパンク・リバイバル”や“ガレージロック・リバイバル”の流れから登場したと言われるARCTIC MONKEYSの、2006年1月に発表されたデビューアルバム。本国イギリスで初登場1位を獲得しただけでなく、170万枚を超える大ヒットを記録し、アメリカでも24位まで上昇する出世作となりました。

前年秋に発表されたデビューシングル「I Bet You Look Good on the Dancefloor」が全英1位を記録した時点で、本作のヒットも約束されたようなものでしたが、いやはや、予想以上の出来でした。

「I Bet You Look Good on the Dancefloor」で感じられた勢いは本作にも満ち溢れており、冒頭を飾る「The View From The Afternoon」での性急なリズムはまさにあの頃流行していたポストパンク・リバイバルにも通ずるものがあります。そこから「I Bet You Look Good on the Dancefloor」へと続く構成、デビューアルバムとしては完璧なオープニングだと思います。

かと思えば、踊らせシンガロングさせるミディアムテンポの「Fake Tales Of San Francisco」があったり、グルーヴィーだけど前のめりな「Dancing Shoes」、ひたすら突っ走る「You Probably Couldn't See For The Lights But You Were Staring Straight At Me」「Still Take You Home」と、アルバム前半はあっという間で過ぎ去っていきます。

スローテンポで落ち着いた雰囲気の「Riot Van」を挟んで後半に突入すると、ダンサブルなミドルチューン「Red Light Indicateds Doors Are Secured」、若干クールダウンしたポップな「Mardy Bum」、独特のグルーヴ感で引っ張る「Perhaps Vampires In A Bit Strong But...」、序盤のアコースティック調から途中でテンポアップするパンキッシュな「When The Sun Goes Down」など個性的な楽曲がずらりと並び、ラストはメロウなミドルナンバー「A Certain Romance」で締めくくります。

若さと勢いが前面に打ち出された、まさにこの瞬間でないと作り得なかったデビューアルバム。このバンドは次作以降、アルバムごとに変化を遂げていきますが、軸にあるメロディアスさや個性的なソングライティングのセンスはすでにこの時点で完成されていたと言っても過言ではないでしょう。

本作リリース時点で平均年齢20歳以下。大半の楽曲が2〜3分台で、13曲通して聴いても40分強。こういうストレートなデビューアルバムを聴くと、「いやあ、若いっていいね。ステキ!」と素直に思ってしまうものですね。



▼ARCTIC MONKEYS『WHATEVER PEOPLE SAY I AM, THAT'S WHAT I'M NOT』
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投稿: 2018 05 06 12:00 午前 [2006年の作品, Arctic Monkeys] | 固定リンク

2018年5月 5日 (土)

THE ROLLING STONES『BEGGARS BANQUET』(1968)

今から半世紀(50年)前の作品なんですね……今聴いてもそんな感覚を受けないのは、単にここ30年くらい聴きまくって慣れてしまったからなのか、それとも自分の耳がおかしいからなのか……。

1968年12月に発表された、THE ROLLING STONE通算7枚目(イギリスにて/アメリカでは9枚目)のスタジオアルバム。前作『THEIR SATANIC MAJESTIES REQUEST』(1967年)で試みたサイケデリック路線がひと段落し、次の一手が待たれていた1968年5月、バンドはその後50年にわたり演奏し続けることになる名曲中の名曲「Jumpin' Jack Flash」をシングルリリースします。全英1位、全米3位という好成績を残したこの曲を起点に、再びロックンロール路線へと回帰していった彼らが黒人音楽へと再度接近します。

よりアメリカ南部的サウンドへと寄ったサウンドは、全体的にアコースティックの香りが強いもので、70年代前半の諸作品と比較すると非常に落ち着いた作風。が、どこか狂気じみた世界観が展開されているのも本作の魅力であり、それはオープニングを飾る「Sympathy For The Devil」や「Street Fighting Man」のような楽曲から強く感じ取れるはずです。

とにかく1曲目の「Sympathy For The Devil」から強烈。ドラムではなくパーカッションによるビートが全体を引っ張り、そこに切り込むキース・リチャーズ(G)の鋭いギターソロは、どこかハードロック的。かと思うと、ブライアン・ジョーンズのスライドギターが良い味を出しているブルースナンバー「No Expectations」や、ミック・ジャガー(Vo)とキースのハーモニーが絶妙なカントリーナンバー「Dear Doctor」、アコギとスライドギター、ハーモニカの相性も抜群なブルース「Parachute Woman」など、とにかく全体的にブルーステイストに満ち溢れています。

かと思うと「Street Fighting Man」みたいなアンセミックな楽曲があったり、70年代のストーンズのプロトタイプ的な「Stray Cat Blues」や、序盤をキースがメインに歌う「Salt Of The Earth」といった印象的な楽曲が含まれていたりと、とにかく粒ぞろい。

全体を通して聴いたときの印象はどこか地味なんだけど、それはエレキよりもアコギの印象が強いからかもしれません。しかし、その味付けが功を奏し、60年代後半の不安定な世の中を表現しているように感じ取ることもできたりで。とにかくあの時代にもっともフィットした1枚かもしれません。

そして、60年代末から70年代へと続く狂騒への入り口となった、忌まわしき1枚とも言えるかもしれません。ストーンズがバンドとして一歩大人に近づいた、歴史的にも重要な作品です。



▼THE ROLLING STONES『BEGGARS BANQUET』
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投稿: 2018 05 05 12:00 午前 [1968年の作品, Rolling Stones] | 固定リンク

2018年5月 4日 (金)

BLOC PARTY『SILENT ALARM』(2005)

イギリス出身の4人組バンド、BLOC PARTYが2005年2月に発表した1stアルバム。2004年から2005年初頭にかけて発表されたシングル「Banquet」(全英51位)、「Little Thoughts」(同38位)、「Helicopter」(同26位)、「So Here We Are」(同5位)のヒットを受けて、アルバムはいきなり全英3位という大成功を収めました。

“ポストパンク・リバイバル”と呼ばれるムーブメントの末期に誕生した彼らですが、当初はどこか胡散臭さを感じていました。性急なビートとラッセル・リサック(G)が生み出すカラフルなギターアンサンブル、そして真っ直ぐすぎてあまり抑揚が感じられないケリー・オケレケ(Vo, G)の歌声。例えば、同時期に活躍していたFRANZ FERDINANDあたりと比べてしまうと、クセは強いのに個性がいまいち足りないような気がしてしまって……。

だけど、いざアルバムを聴くと非常によく作り込まれている。先に挙げたようなシングル曲はもちろんのこと、アルバム全体を通してするっと聴けてしまう。そう、ポストパンクの手法を取り入れてはいるものの、基本的にはポップなんですよ。だから聴きやすい。本作が『NME』が選ぶ2005年度年間アルバムランキング1位に選ばれたのも、頷ける話といいますか。

この手のバンドにありがちなリズムの軽さも、スルスルと聴けてしまう要因のひとつかもしれません。で、この感覚って何かに似ているな……と考えてみると、わかりました。ここ10年くらいの間に登場した日本の“四つ打ち”主体のロックバンドのそれに近いんです。ああ、なるほどなあ。即効性は確かに強いけど、味わい深さはちょっと足りない。どこか共通するものがありますよね?

もちろん、これは両者を非難しているわけではありません。バンドがオーディエンスと戦っていくために、どこに軸を置くかというだけの話ですので。事実、BLOC PARTYの場合、このデビューアルバムでの教訓を軸に、続く2ndアルバム『A WEEKEND IN THE CITY』(2007年)で一気にその才能が花開くわけですから。

あの頃感じた胡散臭さは、今は完全に払拭されている。リリースから13年を経て久しぶりに聴き返したこのアルバムも、先に挙げたようなリズムの弱さは否めないものの、楽曲の良さは今も色褪せていないわけですから。

そして、このアルバムを聴くと2005年前後、あの時代ならではの空気感が一気によみがえります。これこそが音楽の醍醐味。ホント面白い時代でしたね……。



▼BLOC PARTY『SILENT ALARM』
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投稿: 2018 05 04 12:00 午前 [2005年の作品, Bloc Party] | 固定リンク

2018年5月 3日 (木)

THE LIBERTINES『THE LIBERTINES』(2004)

THE LIBERTINESが本国イギリスで2004年8月末、日本で同年9月初頭にリリースした、通算2作目のオリジナルアルバム。前作『UP THE BRACKET』(2002年)やそこまでに発表されたシングル、およびそれに伴う活動で各方面に衝撃を与え続けた彼らですが、このアルバムが発表される頃にはすでにバンド内は崩壊状態で、ピート・ドハーティ(Vo, G)は10日あまりでレコーディングから離脱。以降、ライブにも参加することなるバンドはこのアルバムを発表し、同年末には正式に解散するのでした。

そんなネガティブ要素プンプンの本作ですが、1stアルバムの勢い任せの部分が後退したおかげで、楽曲の良さ……ピートとカール・バラー(G, Vo)のソングライターとしての力量がより見えやすくなったのではないでしょうか。

事実、オープニングを飾る「Can't Stand Me Now」のポップさは何者にも変えがたい素晴らしさがあるし、「Music When The Lights Go Out」や「Road To Ruin」のようなミィアムチューンにもじっくり聴かせる何かが存在している。もちろん、前作にもその要素は十分に含まれていたのですが、本作には切羽詰まった環境の中にもアーティストとしての急成長が見られ、そういったアンバランスさがこのアルバムの魅力を強めているような気がします。

かと思えば、「Arbeit Macht Frei」や「The Saga」のように1分少々の突っ走りまくるパンクロックもあるし、ガレージロックやパブロックからはもちろん、それ以前のルーツロックからの影響も至るところから感じられる。このバンドが単なるポッと出のパンクスではなく、音楽的にしっかりした土台を持つミュージシャン/アーティストであることが伺える側面ではないでしょうか。

でも、リリース当時はそんなこと、冷静に考えられなかったんですよね。リリース直前に敢行された『FUJI ROCK FESTIVAL '04』のステージでは、ピートを欠いた編成でカールが歌っていましたし、若干落ち着いたその作風に「もはや登場時の衝撃を求めるのは残酷かな?」と落胆したりと、彼らが何かするたび、何か発表するたびにネガティブな要素を感じてしまっていたのですから。

だから、彼らが3rdアルバム『ANTHEMS FOR DOOMED YOUTH』(2015年)を発表したあとのほうが、この2枚目に対する正当な評価が下せるようになった気がします。うん、今はデビューアルバムと同じくらい好きな作品ですし、なんなら聴く頻度は全3作中もっとも多い1枚ですから。

ピートの過去のドラッグ癖や犯罪歴が災いして、なかなか来日は難しいと思いますが、いつの日かまたこの4人が日本のステージに立つ姿を観てみたいものです。



▼THE LIBERTINES『THE LIBERTINES』
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投稿: 2018 05 03 12:00 午前 [2004年の作品, Libertines, The] | 固定リンク

2018年5月 2日 (水)

SLAYER『WORLD PAINTED BLOOD』(2009)

2009年11月にリリースされた、SLAYER通算10作目のオリジナルアルバム。パンクカバー集『UNDISPUTED ATTITUDE』(1996年)を含めると、11枚目のスタジオアルバムとなります。また、本作は同年10月に開催された『LOUD PARK 09』にSLAYERがヘッドライナーとして出演したこともあってか、海外より1週間ほど早い10月末に先行リリースされています(とはいえ、ラウパー開催までには発売が間に合わなかったんですが)。

本作は、3rdアルバム『REIGN IN BLOOD』(1986年)から続いたリック・ルービン体制最後の作品。ここ数作リックはプロデュースそのものには携わってはいなかったものの、エグゼクティブプロデューサーとしては名を連ねていました。本作でAmerican Recordingsとの契約が終了することもあり、リックとの共同作業もここで一旦途切れたわけです。

今作ではMETALLICA『DEATH MAGNETIC』(2008年)SLIPKNOT『VOL. 3: THE SUBLIMINAL VERSES』(2004年)などで知られるグレッグ・フィドルマンをプロデューサーに迎え、スタジオでセッションを重ねながらレコーディングを敢行。セッションに次ぐセッションを経て仕上げられていった楽曲群は、どこかライブ感を重視した雰囲気を醸し出しており、生々しさという点においてはここ数作の中ではダントツだと思います。もともとグレッグがそういったタイプのエンジニアというのも大きいんでしょうね。

オープニングトラック「World Painted Blood」こそ仰々しいイントロを持つ大作ですが、それ以外の楽曲は基本的に2〜3分台のショートチューンが中心。ドラムの音作りが若干軽めなせいもあってか、そこがパンクロック的な抜けの良さと通ずるものがあります。そういった点こそSLAYERにしては異質に感じられますが、楽曲そのものはいつもどおりの残虐で暴力的なヘヴィメタルそのもの。まさに“世界を血で染める”というアルバムタイトルどおり、血生臭い1枚と言えるでしょう。

キャッチーさという点においては、前作『CHRIST ILLUSION』(2006年)やその後の『REPENTLESS』(2015年)に譲りますが、ハードコア度は『DIVINE INTERVENTION』(1994年)に匹敵するものがある気がします。要するに、SLAYERはいつも最高っていうことです(笑)。

これがトム・アラヤ(Vo, B)、ケリー・キング(G)、ジェフ・ハンネマン(G)、デイヴ・ロンバード(Dr)のオリジナル編成最後のアルバムになってしまうなんて、発売当時は考えたこともなかったし、そもそもジェフ最後の作品になるとは誰が想像したでしょう。アルバムとしての印象は全キャリア中でも薄いほうかもしれませんが、ことジェフとの思い出となると非常に重要な1枚なのかもしれません。

今日は5月2日。午後から思い出したかのように引っ張り出し、爆音で聴いております。みんなもこのアルバムを聴いて、ジェフ・ハンネマンという素晴らしいギタリストがいたことを、今日くらいはしっかり思い出してほしいな……。

そしてSLAYERは5月10日、サンディエゴからフェアウェルツアーをスタートさせます。このツアーがいつまで続くのかはわかりませんが、もう一度あの勇姿を目に焼き付けておきたいところです。



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投稿: 2018 05 02 03:00 午後 [2009年の作品, Slayer] | 固定リンク

THE HIVES『LEX HIVES』(2012)

スウェーデンの爆走ガレージロックバンド、THE HIVESが2012年6月に発表した通算5作目のフルアルバム。相変わらずリリース間隔の長いバンドではありますが、本作は前作『THE BLACK AND BLUE ALBUM』(2007年)から約5年という過去最長のインターバルを経て発売された1枚でした。

バンドのセルフプロデュース作品ですが、ミックスにデイヴ・サーディ(MARILYN MANSONSLAYEROASISなど)をはじめ3名のエンジニアを迎えた意欲作に仕上げられており、確かに曲によって若干カラーの異なる味付けがされているように感じられます(ボーカル処理が独特ですよね、今作)。

とはいえ、そこはTHE HIVESというバンドの個性を壊すことはない、誤差範囲内といいますか。基本はいつもどおりの、ご機嫌なガレージロックが展開されています。だって、全12曲(日本盤およびデジタル版は、ここにボーナストラックを追加)、全31分があっという間に過ぎていきますからね。

1曲目「Come On!」からして1分少々で突っ走り、そのまま「Go Right Ahead」へと突入。「I Want More」のようにAC/DC的な重々しいミディアムチューンもあるものの、基本は軽やかに突き進み、適度にパンキッシュさを感じさせるクールなロックンロールが展開されているわけですから、好きな人にはたまらない1枚だと思います。

ある種、金太郎飴的な作品を作る続けるバンドとも言えるわけですが、だからこそ作品を無闇に作りまくらない(3〜5年に1枚ペース)なのかもしれませんね。だって今の時代、1〜2年の1枚のペースでこの手の作品を作り続けたら正直飽きられそうな気がしますし。

そうそう、本作で特出すべき点として、日本盤とデジタル版にのみ追加収録されている2曲が挙げられるのではないでしょうか。この「High School Shuffle」と「Insane」のみバンドのセルフプロデュースではなく、QUEENS OF THE STONE AGEのジョシュ・ホーミがプロデュースを手がけているのですから。

ま、だからといって基本姿勢は崩していません(笑)。基本姿勢は崩していませんが、どことなくサイケデリックな雰囲気があったりと、ちょっとだけQUEENS OF THE STONE AGEの香りも……しないことはない……かな? 実際、どことなくスモーキーさを感じさせるそのサウンドには、両者共通するものがありますし。納得の組み合わせといったところでしょうか。

本作リリースから、間もなく6年が経とうとしていますが、いまだ新作リリースの情報なし。2015年に単発で「Blood Red Moon」という新曲を発表しましたが、これがまた枯れまくりの渋い作品でして……次のアルバム、どうなるんでしょうね。

「また同じじゃん!」とか文句言わないので、早く新しい音を聴かせてください。お願いします!



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投稿: 2018 05 02 12:00 午前 [2012年の作品, Hives, The, Queens of The Stone Age] | 固定リンク

2018年5月 1日 (火)

FRANKIE GOES TO HOLLYWOOD『LIVERPOOL』(1986)

FRANKIE GOES TO HOLLYWOODが1986年11月に発表した、通算2作目にして最後のオリジナルアルバム。イギリスではトリプルプラチナムを記録する大ヒットとなったデビューアルバム『WELCOME TO THE PREASUREDOME』(1984年)に比べると全体的に地味なこともあり、全英5位、全米88位という成績にとどまりました。

トレヴァー・ホーンによるダンサブルな打ち込みサウンド、カバー曲が半数近くを締めるデビューアルバムは2枚組という大ボリューム(けど、トータルでは60数分程度)で、リリース当時はアナログ盤で聴くことが躊躇われましたが、今作は全8曲で43分と非常にコンパクト。しかも全曲オリジナル曲とくれば、バンドの気合いの入れようが伝わってくることでしょう。

実際、カッコいい“ロック”アルバムなんですよ。そう、サウンド的にもダイナミックなバンドサウンドを前面に打ち出していて、本当にロックなの。ここには「Relax」も「Two Tribes」もなければ、そういった楽曲にあった下世話さも皆無。急に本格派志向になっていてびっくりしちゃうという。あれだね、ニセモノだの徒花だの罵られた結果、いっちょ本気出してやろうぜ!とバンドの底力を見せようと思ったんでしょうね。

悪くないんですよ。本当に。オープニングの「Warriors Of The Wasteland」から「Rage Hard」へと続くハードでシリアスな世界観は、1986年という不安定な情勢(フィリピンのエドゥサ革命、アメリカによりリビア爆撃、チェルノブイリの原発事故、米ソ首脳会談など)の中で聴くには非常にぴったりでしたし。

でもね、このシリアスなトーンがずーっと続くわけ。3曲目「Kill The Pain」も同系統だし、打ち込みを取り入れた「Maximum Joy」も一緒。唯一、「Watching The Wildlife」あたりは若干ポップさが感じられるけど、それでもトーンとしては暗め。結局、ラストの7分半におよぶバラード「Is Anybody Out There?」まで、ずーっとシリアスでダークめなトーンで統一されているのです。

でもさ。これ、ファンが求めていた路線じゃないよね?

そもそも、固定ファンがどれだけいたのかも疑問ですが、トレヴァー・ホーンのもとを離れてバンドとして自活していこうとした結果がこのアルバムなのだとしたら、ちょっと焦点がズレてましたね、と言わざるを得ない。けど、完成したアルバムの出来がそこそこ良いもんだから、中途半端にけなせない。そういう迷作・珍作なのかもしれませんね。

あ、僕は当時から大好きです。大体、多勢が良くないものを好む傾向は、この頃から始まっていたのかもしれませんね。

偏見を捨てて、一度は触れてみてほしい1枚です。



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投稿: 2018 05 01 12:00 午前 [1986年の作品, Frankie Goes To Hollywood] | 固定リンク