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2018年6月27日 (水)

IHSAHN『ÁMR』(2018)

ノルウェーが誇る伝説のブラックメタルバンドEMPEROR。そのフロントマンであるイーサーン(Vo, G)による通算7作目のソロアルバム。前作『ARKTIS.』(2016年)からちょうど2年ぶりの新作となります。

4作目の『EREMITA』(2012年)以降の作品同様、本作もドラム以外のパートをほぼイーサーンひとりで担当し、そのドラムのみトビアス・アンダーソンが叩いております。また、本作では2曲目「Arcana Imperii」のみギターソロでフレドリック・オーケソン(OPETH)、「Where You Are Lost And I Belong」のドラム打ち込みをAngell Solberg Tveitanなる人物が担当しています。

これまでの作品同様、ブラックメタル的スタイルを残しつつも、シンフォニックメタルやプログレッシヴロック的手法も大々的に取り入れられており、EMPEROR後期の延長線上にありながらも、その作風をさらにモダンにしたスタイルが展開されている、と言ったほうが正しいのでしょうか。イーサーンのボーカルこそデスボイスとクリーンボイスが混在する手法で、そこにEMPERORの名残が感じられるかもしれませんが、例えば2000年代半ば以降のOPETHあたりが好きな人になら間違いなくアピールする1枚だと思います。

冒頭の2曲「Lend Me The Eyes Of Millennia」「Arcana Imperii」やラストの「Wake」は“EMPERORのイーサーン”をイメージさせる作風ですが、「Sárm」や「Twin Black Angels」のエモーショナルさ/穏やかさはどこか往年のプログレを彷彿とさせ、本作の中でも程よいフックになっています。こういう楽曲で全体に起伏をつけているからこそから、ダークでアグレッシヴな「Wake」が最後に来ることでドラマチックさが強調される。そんな印象を受けました。

ギターの歪み方もブラックメタルのそれとは一線を画するし、ドラムのチューニングもふくよかさを感じさせ、とてもメタルのそれとは思えない。また、要所要所にフィーチャーされるストリングスサウンドも非常に効果的で、イーサーンのクリーンボイスによるハーモニーとの相性も抜群です。そういった健やかな要素が、暗雲立ち込めるブラックメタル・マナーの合間に飛び出すことで、ハッと現実に引き戻される感覚。そこが気持ち良いんですよね。

11曲で60分近くあった前作『ARKTIS.』と比べて、本作は全9曲で約43分(デラックス盤ボーナストラック「Alone」を除く)というトータルランニングも聴きやすさ、聴いたときの心地よさに拍車をかけている気がします。彼のソロ作はどれも好きですが、今の自分に一番フィットするという点においては、今作は過去のアルバムの中で一番好きな作品。個人的な年間ベストに入れておきたい、2018年における重要な1枚です。



▼IHSAHN『ÁMR』
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投稿: 2018 06 27 12:00 午前 [2018年の作品, Emperor, Ihsahn, Opeth] | 固定リンク