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2018年7月

2018年7月31日 (火)

2018年7月のお仕事

2018年7月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※7月30日更新)


[紙] 7月30日発売「ヘドバン Vol.19」にてリジー・ヘイル(HALESTOME)インタビュー、DEAFHEAVEN『Ordinary Corrupt Human Love』、BABYMETAL『Distortion』、BAND-MAID『start over』、PassCode『Ray』の各クロスレビュー、BULLET FOR MY VALENTINE『Gravity』、Crossfaith『EX_MACHINA』、HALESTORM『Vicious』、LOVEBITE『Battle Against Damnation』の各ディスクレビューを執筆しました。(Amazon

[WEB] 7月28日、「リアルサウンド」にてラストアイドルのアーティスト分析「ラストアイドル「好きで好きでしょうがない」“激情型”楽曲のインパクト MVストーリーとともに考察」が公開されました。

[紙] 7月24日発売「TV Bros.」2018年9月号にて、THE INTERNET『HIVE MIND』、COMPUTER MAGIC『SUPER RARE』、フレンズ『コン・パーチ!』の各ディスクレビューを執筆しました。(Amazon

[WEB] 7月18日、「リアルサウンド」にてましのみインタビュー「ましのみ、1stシングルで描いた“夏”の鮮明な情景「ただ浅いだけの恋愛を描いても退屈だと思った」」が公開されました。

[WEB] 7月15日、「リアルサウンド」にて新譜キュレーション記事「5FDP、Halestorm、Shinedown…モダンとクラシックが交差するアメリカンHR/HMの新たな潮流」が公開されました。

[WEB] 7月13日、「リアルサウンド」にて乃木坂46のライブ評「乃木坂46、6度目にして生まれ変わったバースデーライブ “シンクロニシティLIVE”の全貌を解説」が公開されました。

[紙] 7月10日発売「ぴあ Movie Special 2018 Summer」にて、元木聖也インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 7月5日、「BUBKA WEB」にてけやき坂46加藤史帆×齊藤京子×佐々木美玲インタビュー「幸せが集まる場所」の序文が公開されました。

[紙] 7月4日発売「日経エンタテインメント!」2018年8月号にて、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」を担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 7月3日発売「別冊カドカワ 総力特集 欅坂46 20180703」にて、欅坂46渡邉理佐巻頭インタビュー、菅井友香巻末インタビュー、青空とMARRY(菅井友香・守屋茜・渡辺梨加・渡邉理佐)インタビュー、AM1:27(鈴本美愉・小林由依・小池美波)インタビュー、長濱ねるインタビュー、バスルームトラベル(長濱ねる・小池美波・尾関梨香)インタビュー、ゆいちゃんず(今泉佑唯・小林由依)インタビュー、TAKAHIRO(振付師)インタビュー、野村裕紀(ライブ演出担当)インタビューなどを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 7月2日、「BUBKA WEB」にてけやき坂46井口眞緒インタビュー「私はここに就職した」の序文が公開されました。

[WEB] 7月2日、「BUBKA WEB」にてけやき坂46高本彩花×東村芽依インタビュー「ひらがなだけの何かを目指して」の序文が公開されました。

[WEB] 7月2日、「リアルサウンド」にてけやき坂46小坂菜緒・丹生明里・渡邉美穂インタビュー「けやき坂46 小坂菜緒×渡邉美穂×丹生明里 “2期生トリオ”が語る、激動の10カ月と自身の成長」が公開されました。

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また、6月に当サイトで紹介したアルバム(Spotify/Apple Musicで配信している作品のみ)から各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストを制作しました。題して『TMQ-WEB Radio 1806号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

VAN HALEN『BALANCE』(1995)

1995年1月にリリースされたVAN HALEN通算10枚目のスタジオアルバム。サミー・ヘイガー(Vo)参加作としては4作目にして、最後のオリジナル作品となります。

このバンドの興味深いところは、HR/HM冬の時代に突入した90年代前半〜半ばも好セールスを維持しているところ。グランジ前夜に発表された前作『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』(1991年)は全米1位を獲得しただけでなく、アメリカだけで300万枚を超えるセールスを記録。続く本作も全米No.1に輝き、同じく300万枚以上も売り上げています。ただ、前作以降は大きなシングルヒットには恵まれず、本作からは「Can't Stop Lovin' You」が全米30位、「Not Enought」が全米97位と低調で終わっています(リード曲「Don't Tell Me (What Love Can Do)」は全米メインストリームロックチャートで1位に輝いていますが)。

前作から80年代の派手なアリーナロック色に、若干マニアック(玄人好み)なテイストが加わり、意外と時代に呼応したスタイルを確立させていた彼ら。その作風は本作でも引き継がれており、例えば「Don't Tell Me (What Love Can Do)」でのダークな曲調は従来の持ち味であると同時に“グランジ以降”を思わせるものでもあります。

かと思えば、軽やかでポップなアメリカンハードロック「Can't Stop Lovin' You」があったり、じっくり聴かせるピアノバラード「Not Enought」もある。と同時に、本作には珍しくインストナンバーが3曲も含まれている。「Strung Out」は次曲「Not Enough」への伏線的な小楽曲ですが、「Doin' Time」はアレックス・ヴァン・ヘイレン(Dr)のプレイを前面に打ち出したパーカッシヴなインスト、続く「Baluchitherium」はバンドスタイルで演奏される本格的なインストゥルメンタルナンバーなのです。サミー・ヘイガー加入後は“歌モノ”のイメージがより強まっていましたが、3曲中2曲がインタールード的なものであるとはいえこうした楽曲が増えていることに、バンドとして変革期を迎えつつあるのかな、なんてことを当時考えたことを思い出しました。

もちろん、それ以外にはサミーのパワフルなボーカルやエディ・ヴァン・ヘイレン(G)の圧倒的ギタープレイが大々的にフィーチャーされた“歌モノ”ナンバーがずらりと並び、オープニングの「The Seventh Seal」からラストのドラマチックバラード「Feelin'」までの全12曲(トータル53分)、するっと聴けてしまいます。『5150』(1986年)以降の“VAN HAGAR”作品を好きなリスナーなら文句なしで楽しめる1枚だと思います。

ちなみに、本作のプロデュースを手がけたのはかのブルース・フェアバーン。輸入盤のみに採用されたあのジャケットのみならず、この組み合わせにも当時は驚かされたものです。



▼VAN HALEN『BALANCE』
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2018年7月30日 (月)

AEROSMITH『CLASSICS LIVE』(1986)

AEROSMITHが1986年春に発表した、通算2作目のライブアルバム。バンドは1984年頃にオリジナルメンバーが再び揃い、翌1985年秋に久しぶりのオリジナルアルバム『DONE WITH MIRRORS』を発表。こちらが全米36位というスマッシュヒットとなったことを受け、古巣のColumbia Recordsが急遽企画して発表したのがこのライブアルバムでした。

ということで、本作の制作にはメンバーは関わっておらず、レーベルに残っていた秘蔵ライブ音源の中からピックアップされたものと、この時点まで未発表だったスタジオ音源の計8曲で構成。トータルで36分強という、前のライブ盤『LIVE! BOOTLEG』(1978年)と比べたらボリューム的にも食い足りない内容なのです。

しかも、このライブ音源が曲者で。録音時期は1977年から1983年までと幅があり、どの曲がいつの録音かはクレジットされておりません。つまり、ジョー・ペリー(G)やブラッド・ウィットフォード(G)が復帰したのを受けて発売されているものの、2人が参加していない時期の音源も含まれているわけです。

現在わかっているだけでも、「Sweet Emotion」は1982年12月の録音とのことなので、ギタリストはジミー・クレスポとリック・ダフィーの時期ですね。これ、ファンなら聴けばオリジナルの2人が弾いてないこと、すぐわかると思いますよ。それくらい、フレージングが異なるので。

収録曲の大半は『LIVE! BOOTLEG』にも収録されている、ライブでの定番曲ばかり。ぶっちゃけ、流れとか構成とかまったく考えられていない、とりあえず人気曲を並べましたというもの。レコード会社の便乗してやろうっていう気持ち、見え見えですね。そんな中、「Three Mile Smile / Reefer Head Woman」という『LIVE! BOOTLEG』以降の貴重な音源も含まれているので、ファンはこちら目当てで購入してもいいのかなと。これ1曲のため購入となると、かなりハードル高いですけどね。

で、最後にボーナストラックのように1曲だけ収録されているスタジオ音源「Major Barbra」。これは2ndアルバム『GET YOUR WINGS』(1974年)の制作時にレコーディングされたアウトテイクとのこと。うん、地味ですね。ただでさえ、パッと聴いた印象が地味な『GET YOUR WINGS』にこの曲が入っていたら、さらに地味になっていたのではないかと。

決してサウンドも良くない(基本的にドラムの音がペタペタ過ぎて軽く、好みじゃないのです)このライブ作品、当時のエアロ復活!の流れもあってか、全米84位まで上昇。当時の最新アルバム『DONE WITH MIRRORS』を超えるミリオンセラー作品となってしまったのは、なんとも皮肉な話です。



▼AEROSMITH『CLASSICS LIVE』
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2018年7月29日 (日)

QUEEN『QUEEN』(1973)

本国イギリスで1973年7月、ここ日本では翌1974年3月に発売されたQUEENのデビューアルバム。全英24位、全米83位という成績を残したほか、「Keep Yourself Alive」「Liar」の2曲がシングルカットされています(2曲ともチャートインせず)。もっともイギリスではこのアルバム、発売当初はまったく話題にならず、次作『QUEEN II』(1974年)のヒットに引っ張られてランクイン。この24位という数字も1976年に入ってから到達したようです。

QUEENと聞いて我々がイメージする「大げさで起承転結のしっかりした曲調」「バラエティに富んだ楽曲群」「フレディ・マーキュリー(Vo)のボーカルスタイル」「ブライアン・メイ(G)のギターオーケストレーション」「オペラのようにオーバーダブされたコーラス」といった要素は、すでにこのデビューアルバムの中に存在しており、まだ完璧とまでは言わないものの、それでも「ああ、QUEENだ」と納得できる仕上がりにはなっています。

LED ZEPPELINDEEP PURPLEBLACK SABBATHなど、1曲の中にいろんな要素を詰め込み複雑な展開を見せるバンドはすでに存在していましたが、ブルースやジャズといった音楽からの影響が強いこれらのバンドと比べ、QUEENはもっと気品のある楽曲中心……という印象を受けます。爆発力という点においては、このデビュー作におけるQUEENはまだ先輩たちには及ばない点も確かに存在し、それがマイナスと受け取られてしまった。それがこのデビューアルバムが発売当時にウケなかった理由ではないか、と推測します。

ですが、派手さや豪快なロック感こそ少ないものの(いや、あるんですよ? 「Modern Time Rock 'N Roll」の勢いや「Son And Daughter」のブルースフィーリングは先輩たちにも負けてないし)、1曲1曲の“気品の高さ”や丁寧な作り込みは先人たちとは若干カラーが異なりますし、結局そこに活路を見出したQUEENは次作『QUEEN II』以降で本格的な成功を手にするわけですから。結局は、誰かの代わりとか“第二の○○”みたいな目で見ようとすると、本質を見失うってことなんでしょうね。だから、当時イギリスのメディアから「これが売れるなら、帽子でも食ってやるよ」なんて酷評も挙がったわけですから。

同じ頃、JUDAS PRIESTも二番煎じ呼ばわりされ成功からは程遠いポジションにいましたが、結局そういったバンドたちがのちのシーンを大きく変えていったのですから、わからないものです。

以下、QUEENファンとして。正直、のちの名作群と比べると本作の印象が薄いのは確か。1曲1曲はよくできているし、「Great King Rat」や「Liar」「Son And Daughter」「Jesus」あたりは本当に気に入っているんだけど、アルバムとしてまとまったときのインパクトの弱さは間違いなくあるなと。それだけ、以降のアルバムのクオリティが異常だってことでもあるんですけどね。それに、本作での挫折がなければ次の『QUEEN II』は生まれなかったかもしれないわけですから。



▼QUEEN『QUEEN』
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2018年7月28日 (土)

DAVID BOWIE『1. OUTSIDE』(1995)

1995年9月に発表された、デヴィッド・ボウイ通算19枚目のスタジオアルバム。TIN MACHINEでの失敗を経て、前作『BLACK TIE WHITE NOISE』(1993年)で再びソロアーティストとして活動再開したボウイは、早くも多作モードに突入。70年代後半のベルリン三部作(『LOW』『HEROES』『LODGER』)で共作したブライアン・イーノと18年ぶりにタッグを組み、コンセプチュアルかつモダンな作品を完成させます。

全19曲で75分という収録内容は、アナログ時代なら2枚組の大作と受け取られましたが、CD主流の90年代半ばではこのボリュームすらもどこか「当たり前」と思わされてしまうところがあったり、なかったり。まあこういったストーリー性の高い作品も、盤を裏返したり取り替えたりしなくても80分近くぶっ通し再生できてしまうCDならではと言えるでしょう。時代の恩恵受けまくりです。

前作でみせたジャジーなテイストを残しつつも、ここで全体を覆うのはエレクトリックでインダストリアルで不穏な空気感。NINE INCH NAILSのようなアーティストがもてはやされていた中では、この取捨選択は“流行りに乗っかった”と言われてしまいがちですが、じっくり腰を据えて聴くと流行りの一言では済まされない、徹底的に作り込まれたディープな世界観を楽しむことができます。

そういえば、この頃のボウイは海外ドラマ『ツイン・ピークス』の劇場版『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』に出演するなど、役者としても活躍していた時代。また、そういったダークでサイコな作品が世界的にウケている、そういうものが求められていることを考えると、ボウイがこのコンセプトアルバムの世界に飛び込んだのは納得できるものがあるのではないでしょうか。そういえば、本作からのシングル「The Hearts Filthy Lesson」が映画『セブン』のエンディングテーマに採用されたのも、今となってはなるほどと思ってしまいます。

のちにPET SHOP BOYSがリミックスしたダンスバージョンがヒットした「Hallo Spaceboy」は、ヘヴィな原曲もカッコいいですし、前作の延長線上にある「A Small Plot Of Land」や「The Motel」にもゾクゾクさせられる。かと思えばデジロック調の「No Control」があったり、ベルリン三部作にも通ずるスペーシーな「Wishful Beginning」もあるし、まんまNINな「I'm Deranged」もあり、最後はどこかピースフルな「Strangers When We Meet」で幕を降ろす……いや、本当はここで終わらず、このコンセプト作品は5部作となるはずだったんですけどね。アルバムタイトルのナンバリングはその名残り。でも、本作が思うほどヒットしなかったことから、続編は後回しに。結果、次章となるはずだった『2. INSIDE』は制作されることなく、ボウイはこの世を去るのでした。

ボウイ亡き今、このアルバムを冷静に語ることは難しいのかもしれませんが、個人的にはリリース当時から大好きでした。何も彼が時代に擦り寄るのは今に始まったことでもないですしね。それに、このダークさは今みたいな時代こそ評価されるべきとも思うのですが、いかがでしょう。



▼DAVID BOWIE『1. OUTSIDE』
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2018年7月27日 (金)

PET SHOP BOYS『ACTUALLY』(1987)

1987年9月に発売された、PET SHOP BOYSの2ndアルバム。デビューアルバム『PLEASE』(1986年)が英米で大ヒットし、シングル「West End Girls」が英米ともに1位を記録するなど、デビューから好調な出足となった彼らは、早くも2作目に着手します。

前作は過去のストックはメジャーデビュー前に発表したシングル曲を焼き直ししたものも多く含まれていたため、本格的に個性が発揮されるのはこの2枚目から……と思っていたリスナーも少なくなかったはず。

当時高校生だった僕はというと……そんなことまったく考えもせず、単純にリードシングル「It's A Sin」(全英1位、全米9位)のドラマチックさにヤラれて発売日にCDを手にしただけでした。

デビュー作にあった冷たさが若干薄らいだ気がするこのアルバムは、インディーズ時代の発表済みの「One More Chance」のリ・レコーディングバージョンからスタート。「あれ、まだストックあったの?」なんてことは当時思いもしなかったけど、前とはちょっと毛色が違うな、とここで気づくわけです。

そして2曲目「What Have I Done To Deserve This?」(全英&全米2位)はメジャーキーの朗らかなポップチューン。デュエット相手のダスティ・スプリングフィールドの名前はここで初めて知りました。そんなリスナーです。

頭2曲に「前と違う……」とがっかりしながらも、続くテクノポップ調の「Shopping」やひんやりしたエレポップ「Rent」に「そうそう、これこれ!」と膝を打ち、5曲目「Hit Music」の軽薄さに再び落胆。1曲ごとに気持ちが揺さぶられ、忙しいたらありゃしない。

でも、「It Couldn't Happen Here」で後半に入ると自分が彼らに求めるディープな世界観が次々と展開されていくのです。多少の起伏はありながらも、自分の思う“PET SHOP BOYSらしさ”がキープされており、ラストの「King's Cross」で大団円を迎える。最終的に「……うん、良いアルバム!」と納得させられてしまう、そんな1枚だったと記憶しています。

あれから30年以上経った今聴くと、メジャーキーの楽曲や軽薄なダンスチューン、さらには同時期にシングルリリースされたエルヴィル・プレスリーのカバー「Always On My Mind」(全英1位、全米4位)の能天気さも嫌いになれない……というか、むしろ気に入っている自分がいる。それは、このバンドの本質がデビュー作にあったものだけではないことを、以降発表される作品群から学んだことも大きいと思います。

昨年から彼らのカタログがリマスター&ボーナストラック多数追加で次々にリイシューされていますが、このアルバムも今年3月に2枚組で再発されたばかり。この機会に、彼らの名盤の数々にたっぷり触れてみてはいかがでしょう。

ちなみに、今でもこのアルバムが彼らの作品群の中で一番のお気に入りです。



▼PET SHOP BOYS『ACTUALLY』
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2018年7月26日 (木)

DEPECHE MODE『VIOLATOR』(1990)

1990年3月にリリースされたDEPECHE MODE通算7枚目のスタジオアルバム。前作『MUSIC FOR THE MASSES』(1987年)がアメリカでウケたこともあり、同作のワールドツアーは大成功のうちに幕を下ろし、そのライブの音源を収めた2枚組ライブアルバム『101』(1989年)もスマッシュヒットに。

続く新作に先駆けて、バンドは1989年夏に新作シングル「Personal Jesus」を発表。この曲が全英13位、全米28位という好成績の残し、翌年春発売のアルバム『VIOLATOR』は全英2位、全米7位という大ヒットを記録しました。また、同作からは「Enjoy The Silence」(全英6位、全米8位)、「Policy Of Truth」(全英16位、全米15位)、「World In My Eyes」(全英17位、全米52位)といったヒットシングルも次々に生まれ、アルバム自体もアメリカで300万枚以上を売り上げる最大のヒット作となりました。

全体的に激しさや感情の揺さぶりが少ない作風で、終始ダークで穏やかな雰囲気の中進行していくものの、メロディ自体は非常にポップ。何度か聴いているうちに口ずさめてしまう楽曲ばかりで、それが上記のシングルヒットに結びついたことは想像に難しくありません。

また、楽曲自体はダークでもサウンドはどこか温かみのあるもので、完全なるデジタルというよりはアナログシンセなどのふくよかさが好影響を及ぼしているようです。「Personal Jesus」などで用いたギターサウンドも、その一因と言えるでしょう。

こういった要素は、のちに始まるオルタナロック/グランジの最盛期にもつながっていき、バンドはより大きな人気を獲得することになります。

そして、デイヴ・ガーン(Vo)の歌声もより艶を増し、いよいよ本格的なカリスマ化が進みます。これも彼らに人気に拍車をかけることになり、単なる“イギリスのエレポッップバンド”から“世界を代表するアリーナバンド”へと成長していくわけです。前作で提示した“大衆のための音楽”(=『MUSIC FOR THE MASSES』)が、ここでついに現実のものとなったのです。

リリースから30年近く経った今聴き返しても、サウンドに古臭さを感じることもなく、楽曲自体がどれも優れている。この手の音楽ってテクノロジーの進化とともに時代的劣化が否めないところもあるのですが、このアルバムと続く『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』(1993年)にそれを感じないのは“ロック的”だからなのかもしれません。



▼DEPECHE MODE『VIOLATOR』
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2018年7月25日 (水)

DEF LEPPARD『SPOTIFY SINGLES』(2018)

今年10月に名盤『HYSTERIA』(1987年)再現ライブで3年ぶりの来日を果たすDEF LEPPARD。彼らの動向が今年に入ってから、かなり活発化しているのはご存知のとおりでしょう。1月にUniversal Records時代のカタログがすべてデジタルリリース&ストリーミング配信開始、6月には初期4作にボーナスディスクをつけたボックスセットを発売。そして今回、「Spotify」限定でEPをリリース。それが今回紹介する『SPOTIFY SINGLES』です。

この『SPOTIFY SINGLES』は2016年頃から始まったサービスで、ニューヨークにあるSpotify Studioでさまざまなアーティストが自身の楽曲とカバー曲を1曲ずつレコーディングするという企画。過去にはテイラー・スウィフトやエド・シーラン、CHVRCHES、SUPERORGANISMなどが参加し、最近も日本からもCorneliusが参加して話題を集めたばかりです。

この企画にHR/HM系バンドが参加することは珍しく、調べてみたらGRETA VAN FLEETくらいしか見当たりませんでした。なので、積極的にこういった企画に加わることを考えると、今のDEF LEPPARDのスタンスがある程度見えてくるのではないでしょうか。

DEF LEPPARDがレコーディングしたのは、『HYSTERIA』からタイトルトラックの「Hysteria」と、同郷イギリスのDEPECHE MODEのヒット曲「Personal Jesus」という意外なセレクト。前者はアルバム再現ライブをやっていること、代表曲のひとつということを考えれば頷ける話で、アレンジ的にもダウンチューニングされた現在のライブバージョンをそのままレコーディングしています。

で、問題は後者。DEF LEPPARDが取り上げるカバー曲といえば、過去に発表したカバーアルバム『YEAH!』(2006年)では自身のルーツに当たるアーティストばかりで、同時代に活躍する世代の近いアーティストの曲はあまり音源に残していないはず。ライブではOASISNIRVANAなどをワンフレーズだけカバーすることもありましたけどね。そういった意味でも、この音源は非常に貴重なものと言えるでしょう。

過去にはMARILYN MANSONカバーしたこの曲。DEF LEPPARDバージョンのアレンジも比較的原曲に忠実で、コーラスの入れ方含め同曲に対する愛情が感じられるものになっています。もともと半分電子ドラムのような編成のバンドということもあり、こういったエレクトロ調の楽曲をカバーするのはDEF LEPPARDに合っているのかもしれません。終盤のギターソロの応酬のみ、彼らなりのこだわりが見え隠れし、そこも微笑ましいかな。

こういった選曲ができるのも、90年代半ばに周りから迷作、駄作と叩かれた『SLANG』(1996年)を経験したからこそ。そう思えば、あれも重要な歴史だと言えるのではないでしょうか(僕は彼らの歴史に欠かせない重要作だと思っていますが)。

たった2曲という物足りなさこそあるものの、こういった企画ならぜひほかのバンドにも挑戦してもらいたいところ。どんなカバー曲を取り上げ、どんなアレンジを施すのか、センスが試されますしね(そもそもDEF LEPPARDのカバーアレンジにセンスがあるのかという問題もあるけど、それは見なかったことにします)。



▼DEF LEPPARD『HYSTERIA』
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2018年7月24日 (火)

BON JOVI『THE CIRCLE』(2009)

2009年11月にリリースされた、BON JOVI通算11作目のスタジオアルバム。前作『LOST HIGHWAY』(2007年)ではカントリー色を強調した作風で19年ぶりの全米1位を獲得しましたが、続く本作もアメリカで初登場1位を記録。セールス的にはそれまでずっと保ってきたミリオンを初めて割り、50万枚程度(全世界で300万枚)にとどまっています。また、大きなヒットシングルも生まれず、リードトラック「We Weren't Born To Follow」が最高68位に達したのみでした。

では、このアルバムは前作までと比べて駄作なのかというと、まったくそういうこともなく。むしろ、『LOST HIGHWAY』で離れてしまったハードロックファンを少しでも引き戻す魅力が詰め込まれているのではないか、と思っています。

当時のインタビューで、リッチー・サンボラ(G)はこのアルバムについて「ロックンロールに回帰したアルバム。至るところに大合唱できるようなコーラスがあって、“これぞBON JOVI”って内容なんだ。でも、単なる焼き直しじゃなくて、しっかりフレッシュなものだよ」と述べています。ホント、この言葉がすべてなんですよ、このアルバム。

全体のトーンとしては若干暗めで、そこは過去の作品でいうと『BOUNCE』(2002年)に近いかもしれません。が、本作がそこで終わらないのは、闇を抜け出そうとする光が見つけられるところ。ダークな世相を反映しつつも、そこから立ち上がろうとする力が『BOUNCE』以上に強く、トーンは落ち着いているもののポジティヴなイメージを受ける。そこが本作最大に魅力ではないでしょうか。

正直、“いかにもBON JOVI”と言えるような80〜90年代の彼らに近い楽曲は少ないです(ゼロではない)。というよりも、むしろ“これからのBON JOVI”をアピールするような作風と言えるでしょう。実際、今となっては最新作『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』(2016年)ってこの『THE CIRCLE』に比較的近い印象を受けますし。そう考えると、本作から“BON JOVIのジョン・ボン・ジョヴィ(Vo)ソロ作品化”が始まっていたのかな、と。『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』とトーンが近いという点も、そこを踏まえると納得できるんじゃないかな。

また、今作はバラードが全12曲中1曲しかないのもポイント。さらに、近作では当たり前となったボーナストラックも皆無で、トータル52、3分で聴きやすさに拍車をかけてくれます。

コーラスの被せ方やギターフレーズがどことなくU2を彷彿とさせる部分も多々あり、シリアスなテイストもU2っぽいといえば確かにそれっぽい。思えば『KEEP THE FAITH』(1992年)の時点でU2との酷似が取り沙汰されましたが、そんな次元じゃないですね(笑)。これぞ戦うロック。前作が区切りの10作目だとしたら、コテコテのハードロックとも枯れたパワーポップとも大人なカントリーロックとも違う、新しいBON JOVIをここからまた始めたということなんでしょう。リリース当時は印象が薄かったけど、今となっては何度も聴き返す1枚です。



▼BON JOVI『THE CIRCLE』
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2018年7月23日 (月)

BLACK SABBATH『VOL.4』(1972)

1972年9月に海外で発表された、BLACK SABBATH通算4作目のオリジナルアルバム。前作『MASTER OF REALITY』(1971年)は素晴らしい作品でしたが、全8曲で歌モノが6曲(残り2曲のインストもそれぞれ30秒、1分半程度の短尺)でトータル34分という、それ以前の彼らの作品と比べれば短いもので、急ごしらえで発表した感も拭えませんでした。すでにこの頃から、オジー・オズボーン(Vo)などメンバーのドラッグ癖が悪化していたのも関係していたのでしょう。

当然、この4作目の制作期間も決して良好なものだったわけではなく、そういったドラッグの影響は作られる楽曲やサウンドにも少なからず影響を与えています。

本作は全10曲収録、うち2曲がインスト(それぞれ2分、3分を欠けるものの単独の楽曲として成立する長さ)。トータルで42分程度と『MASTER OF REALITY』以前のボリュームにまで復活。その中身に目を向けると、バンドとして変化を求め始めた時期だったのかな……と感じます。

オープニングの「Wheels Of Confusion」は8分にもおよぶ大作で、展開に次ぐ展開でとにかくスリリング。初期からの大作志向がここで完成したかのような印象すら受けます。とにかくカッコいい。

比較的キャッチーな「Tomorrow's Dream」があったかと思うと、オジーが朗々と歌うピアノバラード「Changes」でびっくり。文字どおり、本当に変化を求めていたんでしょうね。ただ、そこに体も気持ちも付いていけないメンバーもいたりして、なかなかうまくいかない。そんな時期だったのかなと。

実験的なインスト「FX」に続くのは、グルーヴィーかつダンサブルなヘヴィロック「Supernaut」。このリフとリズムが一丸となる感じがとにかく気持ちいい。かと思えば、王道のサバス流ヘヴィロック「Snowblind」や「Cornucopia」もある。「Snowblind」はこれぞドラッグソングと断言できる1曲ですね……。

トニー・アイオミ(G)のアコースティックプレイを存分に堪能できるインスト「Laguna Sunrise」で小休止したあとは、サバスにしては珍しい陽気なイントロを持つ「St. Vitus' Dance」。どことなくストレートなロックンロール風で、ここらへんも新境地と言えるのでは。そしてラストは、ドゥーミーさとグルーヴィーさが融合したヘヴィチューン「Under The Sun」で締めくくり。

サバス本来の“らしさ”を維持しつつも、バンドとしてもっと幅を広げようとする努力が垣間見られる、そんな1枚ではないでしょうか。前作『MASTER OF REALITY』や本作を指して「もっともサバスらしい作品」なんて声も少なくもないですし、中には大ヒット作の2ndアルバム『PARANOID』(1970年)や原点的なデビュー作『BLACK SABBATH』(1970年)のほうが「らしい」という声もあるでしょう。ただ、個人的にはこの初期4枚にオジー時代のサバスの“すべて”が詰まっている……そう思っているのですが、いかがでしょうか。



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2018年7月22日 (日)

LED ZEPPELIN『LED ZEPPELIN IV』(1971)

1971年11月にリリースされたLED ZEPPELIN通算4作目のスタジオアルバム。4枚目のアルバムということで『LED ZEPPELIN IV(4)』と名付けられていますが、実はこのタイトルは正式なものではありません。正しくはタイトルが付けられていない“無題”アルバムであり、アルバム内に描かれた4つのシンボルマークから『FOUR SYMBOLS』などと呼ばれることもあります。

前作『LED ZEPPELIN III』(1970年)で新境地と言えるトラッドミュージック/アコースティックサイドを強調した作風で、それ以前のハードロックサイドのファンを驚かせた彼ら。続く本作でもトラッド色の強い楽曲は含まれているものの、バランス的にはよりハードロック的なものに回帰しています。

ただ、そのハードロック的な路線もより拡大方向に向かっており、オープニングを飾る「Black Dog」こそ印象的なギターリフとヘヴィなドラムで引っ張るという“らしさ”を見せつつ、続く「Rock And Roll」は文字どおりシンプルな3コードのロックンロールを展開。ただ、そこはこのバンドのこと、シンプルながらもラウドなサウンド(特にドラムのビシバシ感、ハンパなし)で自己流のロックンロールを作り上げています。

前作の延長線上にあるトラッドナンバー「The Battle Of Evermore」もこういった流れで聴くと非常に印象深いものになっていますし、そこから名曲「Stairway To Heaven」へと続く流れは、構成としても完璧なんじゃないでしょうか。「Stairway To Heaven」については、今さら説明は必要ないでしょう。この起承転結のきっちり作り込まれたアレンジとロバート・プラント(Vo)のボーカルワーク、ジミー・ペイジ(G)のアコギ/エレキを使い分けたギターアンサンブル、地味ながらも「これがなくちゃこの曲の意味がない」くらい重要なジョン・ポール・ジョーンズ(B, Key)のメロトロン、そして後半から入ってくるジョン・ボーナム(Dr)のスイングするドラム。8分にもわたる大作ですが、長さをまったく感じさせない名演だと思います。

この4曲でアナログA面となっており、B面は落ち着いたテンポ/空気感の「Misty Mountain Hop」から緩やかにスタート。そこからパーカッシヴなリズムがグルーヴィーで強烈な「Four Sticks」、アコースティックナンバー「Going To California」、ひたすらヘヴィな大作「When The Levee Breaks」で締めくくり。全8曲と曲数は少ないものの、42分という程よいボリューム。完璧なまでにコントロールされた、非常に「計算づく」の1枚だと思います。

衝動的なデビューアルバム『LED ZEPPELIN』(1969年)と、その流れを継ぐ『LED ZEPPELIN II』(1969年)。バンドとしてのスケールアップを図るために新機軸を打ち出した『LED ZEPPELIN III』。この3作での経験がここにすべて落とし込まれた、そんな初期の集大成的傑作だと思います。

ちなみに、本作は全米だけで2000万枚以上を超える売り上げを誇り、当然彼らの作品の中でもっとも売れたアルバムでもあります。さらに本作からは「Black Dog」と「Rock And Roll」がシングルカットされ、それぞれ全米15位、全米47位を記録しております。そして、本作リリースの2ヶ月前(1971年9月)には待望の初来日公演も実現。ひと足先に本作からの新曲群も披露されました。



▼LED ZEPPELIN『LED ZEPPELIN IV』
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2018年7月21日 (土)

CATS IN BOOTS『KICKED & KLAWED』(1989)

聖飢魔IIのギタリストとして活躍していたジェイル大橋こと大橋隆志が1987年にバンドを脱退し、旧友・畑江康弘(B)とともに渡米。ロサンゼルスでジョエル・エリス(Vo)、ランディ・メアース(Dr)ともに結成した4人組バンドCATS IN BOOTSの、最初で最後のフルアルバム。メジャーのEMIと契約し、日本で1989年9月、海外で同年10月にリリースされています。

AC/DCやROSE TATTOO、INXSSTEELHEARTなどに携わってきたマーク・オピッツをプロデューサーに迎えた本作。ジェイル大橋と聞くと聖飢魔IIでの「FIRE AFTER FIRE」や「アダムの林檎」といった正統派メタルチューンのイメージが強いのですが、ここでは大橋が本気でやりたかった、あの時代ならではのスタイルによる「当時のLAの空気感をそのまま表したかのようなルーズでスリージーなハードロック」が展開されています。

オープニングの「Shot Gun Sally」を筆頭に、とにかくスリリングでひたすらカッコいいハードロックばかり。日本人臭はまったく感じられず、言われなければ絶対に「80年代にヒットし損ねたLA出身のB級バンド」と信じてしまうはずです(まあそれも間違いではないのですが)。

今聴いても、どの曲にもキャッチーさが感じられ、いろんなところからフックが感じられる。ちょっとDEVOを思わせるリフの「Long, Long Way From Home」とか、VAN HALEN的なハードブギー「Nine Lives (Save Me)」、どことなくサイケデリックなロッカバラード「Every Sunrise」、AEROSMITHをLAメタル風にしたような「Judas Kiss」など、印象に残る曲も多数だし、とにかくアルバムとしてのテンポ感が良いんですね。

もしあの時代のUSハードロックバンドが好きならば、絶対に気に入る1枚だと思います。騙されたと思って、ぜひチェックしてみてください。

ちなみに彼ら、いきなりアルバム8枚契約と鳴り物入りでデビューを果たし、ラジオやMTVでのオンエアも好調だったにも関わらず、翌1990年には解散。国籍が違えばそれだけ価値観も異なるわけですからね。難しいものです。

当時は今と異なり日本人臭さがにじみ出てしまえば、間違いなく海外で受け入れられなかったし、メジャー契約もできていなかったでしょう。LOUDNESSだって、『THUNDER IN THE EAST』(1985年)や『LIGHTNING STRIKES』(1986年)だったからこそ、アメリカで受け入れられたわけですから。これはこれで大正解だと思います。



▼CATS IN BOOTS『KICKED & KLAWED』
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2018年7月20日 (金)

VAIN『NO RESPECT』(1989)

デイヴィ・ヴェイン(Vo)率いるサンフランシスコ出身の5人組バンド、VAINが1989年夏頃にリリースしたメジャーデビューアルバム。爬虫類的な佇まい&アクションで見る者の目を惹くデイヴィ・ヴェインですが、その声も非常に個性的で、本作の聴きどころのひとつもそんなフロントマンのカリスマ性であることは間違いありません。

本作のプロデュースを手がけたのはポール・ノースフィールド(RUSHASIAQUEENSRYCHESTEELHEARTなど)で、全米154位の小ヒットを記録しています。実はデイヴィ自身もベイエリアではそこそこ名の知れたレコーディングプロデューサーで、かのDEATH ANGELのデビュー前のデモレコーディングなども手がけています。

そんな彼ですから、本作にもコ・プロデューサーとして名を連ねています。なんというか、カリスマ性もありながら、職人的な作業も得意とする。いわば、全部自分が関わっておきたい、自分が作るものには全部自分が目を通しておきたい、そんなワンマン主義なところがある人なのかもしれません。

そんなデビューアルバムですが、意外にも直線的で適度にヘヴィなハードロックが満載。あれ、作る作品自体は結構まともなものなんですね。

オープニングを飾る「Secrets」やMVも制作された「Beat The Bullet」など、どの曲も適度なキャッチーさと、適度なヘヴィさ&軽やかさが共存しており、スラスラと聴き進めてしまう。ある意味ではAC/DC的と言えるかもしれませんが、あそこまでクセも強くないのが弱点かもしれません。

あと、12曲あるうち似たタイプの楽曲が少なくないことも、デビュー作にしては弱点かもしれません。冒頭数曲の強さは申し分ないのですが、後半に進むに連れて印象に残る曲があまり見受けられないのは、50数分もあるアルバムをすべて聴くにはちょっと厳しいかも。

そんなだから、終盤にバラードタイプの「Without You」があったり、最後の最後に軽快な疾走ロックンロール「Ready」が飛び込んでくると、ちょっとホッとするのですが。なんとなく、最初と最後に救われる。そんなアルバムです。

そういえば当時、TBS『PURE ROCK』で「Beat The Bullet」のMVをよく目にしたなあ。個人的にはこの1曲のインパクトだけでも十分でしたけどね。

そんなVAIN、90年代前半に解散してしまうものの、すぐに再結成して現在も活動中。昨年2017年には新作『ROLLING WITH THE PUNCHES』も発表しております。機会があったらこのへんもしっかり聴いてみたいと思います。



▼VAIN『NO RESPECT』
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2018年7月19日 (木)

FASTER PUSSYCAT『WAKE ME WHEN IT'S OVER』(1989)

海外で1989年8月末、日本では1ヶ月遅れ同年9月末に発売されたFASTER PUSSYCATの2ndアルバム。全米トップ100入り(最高97位)を果たし50万枚以上のセールスを記録したデビューアルバム『FASTER PUSSYCAT』(1987年)からはチャートインするようなヒットシングルは生まれませんでしたが、今作では彼ららしいバラードナンバー「House Of Pain」が全米28位のヒットとなり、アルバムも全米48位&50万枚以上のセールスを記録しました。

プロデュースを手がけたのはBANG TANGO、LOVE/HATE、CINDERELLAなどを手がけるジョン・ジャンセン。薄っぺらくてグラマラスでスリージーなサウンドが良くも悪くも個性につながった前作から一変、本作では骨太で重心の低いハードロックサウンドが楽しめます。

演奏も決して上手ではないという印象だった彼らも、そのイメージを払拭しようと本作ではかなりプレイに力を入れたようで、そういったネガティブな部分があまり目に/耳に入ってきません。むしろオープニングの「Where There's A Whip, There's A Way」「Little Dove」での音の太さとタフさがにじみ出たプレイからは、同時期にリリースされたAEROSMITH『PUMP』MOTLEY CRUE『DR. FEELGOOD』的な匂いすら感じられます。

最初にラジオだったかMTVだったかで先行シングルの「Poison Ivy」を聴いたとき、ぶっちゃけカバー曲だと思ったんですよ。それくらい、彼らにしては良くできた楽曲だと思ったから(実際、そういうタイトルの楽曲ありますしね)。ところが、アルバムを購入して気づいたのですが、これオリジナル曲なんですよね。びっくりしました。で、続く「House Of Pain」を聴いてもっとびっくりするわけですが。こんな素敵な曲が作れるんだ、作れるようなバンドになったんだ、と。

その後も「Gonna Walk」や「Pulling Weeds」など、リズムでかなり遊んでいる曲が並びます。で、思うわけですよ……「これ、ちゃんとライブで演奏できるのかな?」って(苦笑)。それくらい“出来過ぎ感”が強すぎる内容だったので。彼らの場合、褒めることや感心することを通り過ぎると心配になってくるんですよね……なぜでしょうか。

思えばこの頃から、80年代後半を覆っていた軽やかな空気を求める感覚は、どんどんヘヴィなものを欲するようになっていくわけで、1989年ってその転換期だったのかなと思っています。先に挙げたようなバンドのヒット作がまさにその幕開けを飾り、1991年にMETALLICAブラックアルバムという“ヘヴィロックの教科書”を完成させてしまう。そこから、ハードロックバンドもヘヴィメタルバンドもそっち側に寄せていき、そんなことをしている間にシアトルからは新たな刺客が現れたと。そんな微妙な時期に生まれた、時代の徒花によるまさしく“時代の徒花”らしい1枚。パーティ感の強い「Slip Of The Tongue」「Tattoo」ですらヘヴィさを伴っているんですから、本当に面白い時代に生まれた名(迷?)作です。



▼FASTER PUSSYCAT『WAKE ME WHEN IT'S OVER』
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2018年7月18日 (水)

MOTLEY CRUE『DECADE OF DECADENCE '81-'91』(1991)

1991年10月にリリースされた、MOTLEY CRUEの結成&デビュー10周年記念コンピレーションアルバム。初の全米No.1獲得&600万枚を超えるメガヒットとなった5thアルバム『DR. FEELGOOD』(1989年)に続くアイテムということもあってか、本作は全米2位&200万枚以上もの売り上げを記録しました。

気になる内容はといいますと、この10年間に発表された5枚のオリジナルアルバムから2曲ずつピックアップして収録+コンピレーションアルバムや映画のサントラに提供したアルバム未収録曲や本作のために録り下ろした新曲&カバー3曲を加えた全15曲で構成。こう聞くとベストアルバム的な印象を受けるかもしれませんが、まあだいたい正解です。

1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年)からは「Live Wire」「Piece Of Your Action」の2曲をセレクト。しかしこの2曲、インディーズバージョンともメジャーバージョンとも異なる、新たにリミックスされた“第3のバージョン”なのです。2作目以降の音に近づけようとして、かなりエフェクトがかけられてますが……ちょっと“トゥー・マッチ”すぎます。

2ndアルバム『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)からは「Shout At The Devil」と「Looks That Kill」を選出。こちらは本作用にリマスタリングされたのみで、原曲と大きく変わりません。で、3rdアルバム『THEATRE OF PAIN(1985年)からは「Home Sweet Home」「Smokin' In The Boys Room」の2曲。無難ですね。

こちらは前者のみ「Home Sweet Home '91」と題したリミックスバージョンとなっておりますが、リミックスとは名ばかりで、ボーカル&ギター以外のバックトラックが再録音されているのです。トミー・リー(Dr, Piano)のピアノはよりアコースティック色が強くなり、リズム隊はボブ・ロックの手によって“『DR. FEELGOOD』以降”のサウンドに生まれ変わっています。また、コーラスパートも一部追加録音されているようで、サビに厚みが加わっています。こちらの再録バージョンは本作からシングルカットされ、チャート上では原曲(全米89位)を超える全米37位を記録しました。

4thアルバム『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)からは「Girls, Girls, Girls」と「Wild Side」の2曲で、特に手を加えた形跡なし。で、5thアルバム『DR. FEELGOOD』(1989年)からは「Dr. Feelgood」と「Kickstart My Heart」の2曲が選ばれ、後者は1990年7月のUSツアーからライブ音源が採用されています。この曲だけライブってどうなのよ?っていう考えもありますが、当時ライブアルバム未制作だったこのバンドにとっては、貴重なテイクだったかなと。

以上10曲、セレクトからも単なるグレイテストヒッツではないことが伺えます。それだったら『DR. FEELGOOD』からもっと曲を増やすでしょうし。

で、本作はここからが本編といっても過言ではないわけでして。サントラやコンピ収録の「Teaser」「Rock 'N' Roll Junkie」は『DR. FEELGOOD』の流れからレコーディングされたものなので、どちらもボブ・ロックがプロデュースしたもの。前者はDEEP PURPLEでも活躍したギタリスト、トミー・ボーリンのカバーです。後者はニッキー・シックス(B)のリフとミック・マーズ(G)のカッティングがカッコいい1曲です。

新たにレコーディングされた新曲「Primal Scream」なんですが(本作からの1stシングルで、全米63位を記録)、メロディがキャッチーではない地味な曲という印象。ですがこれ、ライブで聴くとめちゃめちゃカッコいいんですよね。トミー・リーが生み出すグルーヴ感とミック・マーズのスライドギターが絶妙で、不思議と飽きがこないんですよ。サビのコール&レスポンスも明らかにライブをイメージして作ったものでしょうしね。

さらにもう1曲、オリジナルの新曲「Angela」はパワーポップ寄りのメロディアスなロックナンバー。「Primal Scream」との対比が面白い。あんまりライブで披露されたことのないレア曲じゃないかなと。この曲もドラムとギターがカッコいいったらありゃしない。

そして、最後の最後にカバー曲……ベタ中のベタ、SEX PISTOLSの「Anarchy In The U.K.」です。彼らにしては手垢のついた曲に手を出したなと。なぜ今これを選んだ!?と当時は疑問に思ったものですが(数年前にMEGADETHがカバーしたばかりじゃん!って)……まあ、普通のカバーです。以降のライブでは定番化してしまいましたが、個人的にはどうでもいい1曲です。

ちなみに、本作はワーナー(本国のElektra Records)との契約が終了し、権利を自身のレーベルに移行させてからは廃盤状態に。大半の新曲/コンピ収録曲は『SUPERSONIC AND DEMONIC RELICS』(1999年)で聴くことができるので、CDを中古盤で安く購入するか配信で『SUPERSONIC AND DEMONIC RELICS』をチェックするかしてみてください。


※念のため、こっちも貼っておきますね。



▼MOTLEY CRUE『DECADE OF DECADENCE '81-'91』
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2018年7月17日 (火)

L.A.GUNS『COCKED & LOADED』(1989)

1989年8月に発表された、L.A.GUNS通算2作目のオリジナルアルバム。デビューアルバム『L.A. GUNS』(1988年)完成後に加入したスティーヴ・ライリー(Dr)がレコーディングに初参加した作品で、フィリップ・ルイス(Vo)、トレイシー・ガンズ(G)、ミック・クリプス(G)、ケリー・ニッケルズ(B)、スティーヴという全盛期メンバーがレコーディングのみならず曲作りにも本格的に参加した1枚でもあります。

プロデュースを手がけたのは、MOTLEY CRUECHEAP TRICKPOISONDOKKENなどでおなじみのトム・ワーマンと、デュアン・バロン&ジョン・パーデル(オジー・オズボーンアリス・クーパーDREAM THEATERなど)というゴールデンチーム。演奏や音質含め初期衝動の塊だった前作とは異なり、かなり“整理された”ハードロックアルバムに仕上げられています。

パンキッシュな疾走感はできる限り抑えられ、代わりにメロディや演奏面が非常に練りこまれている。1曲1曲の仕上がりは非常に高品質で、かつ楽曲のタイプの幅も広がっている。このへん、上記プロデューサー陣がかなりテコ入れしたんじゃないかと想像できます。

例えば「Rip And Tears」のような曲も、前作に入っていてもおかしくないんだけど、要所要所にフックが仕込まれている。その一番わかりやすい形が、エンディングですね。こういった仕掛けはMOTLEY CRUEの楽曲にも存在しましたが、ライブ感を強めるという意味でもこの仕掛けは成功しと言えるでしょう。

アレンジという点においては、「Malaria」や「Magdalaine」といった楽曲が生まれたことも、このバンドにとって非常に大きかったと思います。ヘヴィさやサイケデリック感を打ち出したこれらの楽曲は、アルバムの中でも異彩を放っているし、ライブにおいても見せ場のひとつになったのは間違いありません。事実、前者はいまでもライブで披露される機会が多いですし、そういう意味でも本作中盤、「Never Enough」〜「Magdalaine」の流れは以降の“L.A.GUNSらしさ”にもつながる重要な要素になったのではないでしょうか。

また、この時期のHR/HMバンドにとって重要なファクターだった“パワーバラード”、“アコースティックテイスト”もしっかり備わっており、その2つを効果的に用いた「The Ballad Of Jayne」というヒットシングル(全米33位)も生まれました。これを受けてアルバムも最高38位まで上昇し、無事ミリオンセールスを記録したわけですから。

さて、L.A.GUNSのメジャー時代(80年代後半〜90年代前半)の諸作品って、一切デジタル配信&ストリーミング配信されてないんですね。しかも、本作に関しては国内外で廃盤状態みたいですし(5年くらい前に、ボーナストラックが追加されたものが再発レーベルRock Candy経由で流通していましたが、今はどうなんでしょう)。つい先日、1枚目のほうは国内盤が1000円で限定再発されましたが、むしろこっちのほうを再発してほしいんですよね。同企画の第2弾の際にはぜひお願いします!(いや、むしろあの企画の選盤に関わりたいくらいですけどね)


※代わりに2000年にリリースされたオリジナル編成での再録バージョンを。



▼L.A.GUNS『COCKED & LOADED』
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2018年7月16日 (月)

TESLA『FIVE MAN ACOUSTICAL JAM』(1990)

海外で1990年11月に、日本では1991年7月にリリースされたTESLAのアコースティックライブアルバム。2ndアルバム『THE GREAT RADIO CONTROVERSY』(1989年)が全米だけで200万枚を超えるヒット作となり、同作からのバラード「Love Song」がシングルとして全米10位を記録。また、アコースティックギターを効果的に用いた「Heaven's Trail (No Way Out)」もラジオヒットしていたし、それ以前にもアコースティックギターを前面に打ち出した「Little Suzi」がシングルヒット(全米91位)と、なんとなくTESLAというバンドの印象の中にアコースティック楽器が存在していました。

そして、『MTV UNPLUGGED』のスタートと同時にアコースティック主体のアレンジが支持を集め始める(これはBON JOVIの「Wanted Dead Or Alive」のヒットが大きいと言われています)。バンドのスタイルと時代が見事合致したわけです……そりゃあアコースティックライブ、やりますよね? やらないほうがおかしい。というわけで、バンドは1990年7月にアコースティックツアーを小箱中心に敢行。自身のオリジナル曲のみならず、バンドのルーツとなるカバー曲もたっぷり披露されました。

まず驚かされるのが、オープニングの「Comin' Atcha Live / Truckin'」。自身のオリジナルナンバーとGRATEFUL DEADカバーのメドレーなのですが、ライブのオープニングで披露されることの多い前者が完全に別モノに生まれ変わっている。このアレンジ力にまず圧倒されるし、そこからGRATEFUL DEADへとつなげるアイデアもさすが(きっとこちらに合わせてアレンジしたんでしょうね)。

本作ではほかにも、シングルカットされ全米8位のヒットとなった「Signs」(原曲はFIVE MAN ELECTRIC BAND。本アルバムタイトルの元ネタですね)や、THE BEATLESの「We Can Work It Out」、THE ROLLING STONESの「Mother's Little Helper」、CCRの「Lodi」といったカバーも披露されています。いわゆるHR/HM的な楽曲は皆無で、このセレクトからもTESLAというバンドがどういう流れで生まれたのかが伺えるのではないでしょうか。

もちろん、オリジナル曲のアコースティックアレンジも新鮮かつ斬新なものが多く、聴きごたえバッチリ。ハードロックバラード的なドラマチックさを持つ原曲とは異なる趣の「Paradise」、王道ハードロック的代表曲をアコギのみで表現した「Modern Day Cowboy」、途中からエレキギターソロが加わる10分近くにもおよぶ名演を楽しめる「Love Song」……やっぱり元となる楽曲のメロディがいかに優れているか、それがすべてなわけですよ。なんでもかんでもアコギでやればいいってわけではないのです。

本作はアルバム自体も全米12位まで上昇し、ミリオンセールスを記録。海外でのヒットをよそに、ここ日本ではリリースが半年以上遅れたわけですが……これは国内配給元の変更などが災いしたわけで……ちゃんとプロモーションしてほしかったですね。1990年って、HR/HMシーンにとっては本当に重要な1年だったので。ここ日本においてはそれだけが残念でなりません。



▼TESLA『FIVE MAN ACOUSTICAL JAM』
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2018年7月15日 (日)

GREAT WHITE『...TWICE SHY』(1989)

1989年4月発売の、GREAT WHITE通算4作目のスタジオフルアルバム。前作『ONCE BITTEN...』(1987年)が100万枚を超えるヒット作となったことを受け、同作で垣間見せたブルースロック路線をより強めた続編的な作風に仕上がっています。それはタイトルの関連性(2作あわせて「Once Bitten, Twice Shy」=日本の「あつものにこりてなますを吹く」と同意のことわざ)からも伺えると思います。

オープニングを飾る「Move It」の、どこか洗練されたクールさにまず度肝を抜かれる本作は、モダンさとブルージーさを併せ持つ「Heart The Hunter」、ヘヴィなんだけどちょっとしたフレーズにジャズっぽさすら感じさせる「Hiway Nighs」など、前作にありそうでなかった新たなタイプの楽曲がずらりと並びます。

かと思うと、儚さと美しさを兼ね備えた名バラード「The Angel Song」があったり、ヘヴィなブルースロック「Mista Bone」、ファンキーなギターフレーズ&アレンジが気持ち良い「Baby's On Fire」と緩急に富んだ流れも楽しめる。さらに「House Of Broken Love」みたいにブルージーなロッカバラードもあれば、泣きのアコースティックバラード「She Only」もある。どの曲もかなりアレンジやメロディが練られており、本当に捨て曲がないから驚きです。

で、アルバムラストを締めくくるのがアルバムの表題曲ともいえる「Once Bitten, Twice Shy」。元MOTT THE HOOPLEのイアン・ハンターがソロでヒットさせた名曲のカバーですが、オリジナルに比較的近いアレンジなものの、それでもGREAT WHITEらしさに満ち溢れているという好カバーです。実際、この曲はアルバムからの先行シングルとして全米5位のヒットを記録しています。また同曲のヒットに導かれ、アルバム自体も全米9位まで上昇。200万枚を超えるヒット作となりました。『ONCE BITTEN...』で得た経験と成功をうまく活かせたわけですね。

全9曲とコンパクトなアルバムですが、CDのみ5曲目に「Bitches And Other Women」、ラストに「Wasted Rock Ranger」が追加されています。前者はTHE ROLLING STONESの「Bitch」とFOREIGNERの「Women」をメドレーにしたアコースティックカバー、後者はブラッド・ベイカー作のカントリーナンバー。カバー曲や他者の楽曲が多くなってしまうことから、アナログ盤では省かれたのでしょうか(そもそもアルバム自体、9曲でも約50分というボリュームでしたし)。CD世代の我々にとっては、この2曲を加えた11曲バージョンのほうが馴染みが強く、今の配信バージョン(オリジナルの9曲入り)は少々物足りなかったりもします。

なお、「Wasted Rock Ranger」はベストアルバムなどで聴くことができるので、ストリーミングサービスで探してみてください。1990年の初来日公演でもアンコールで最後に演奏された、ファンには馴染み深い1曲ですので。



▼GREAT WHITE『...TWICE SHY』
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2018年7月14日 (土)

CINDERELLA『HEARTBREAK STATION』(1990)

1990年11月に発表されたCINDERELLA通算3作目のスタジオアルバム。トム・キーファー(Vo, G)とジョン・ジャンセン(BANG TANGO、LOVE/HATE、BRITNY FOX、FASTER PUSSYCATなど)との共同プロデュースで制作された本作は、前作『LONG COLD WINTER』(1988年)で垣間見せたレイドバック路線をより推し進めた、ルーツミュージック色の強い作風に仕上がっています。

オープニングを飾る「The More Things Change」や「Love's Got Me Doin' Time」ではブラスをフィーチャーしており、ギタープレイもHR/HMのそれとは異なるアーシーなスタイル。ボーカルさえ違えば、例えばTHE BLACK CROWES周辺のバンドと言われても不思議じゃないくらい。もはやデビュー作『NIGHT SONGS』(1986年)とは別モノになってしまった印象すらあります。

さらにアルバムでは、シングルカットされた「Shelter Me」(全米36位)や「Heartbreak Station」(全米44位)などでサザンロックやブルースロック的な側面も提示。特に「Shelter Me」ではサックスがソロを取ったり女性コーラス隊をフィーチャーすることで、完全にハードロックの枠から飛び抜けることに成功しています。「Sick For The Cure」のオープニングなんて、完全にストーンズの「Honky Tonk Women」ですものね。

また、トム・キーファーも前作のオープニング曲「Bad Seamstress Blues」で少しだけ聴かせてくれた“地声”での歌唱を、本作中でも「Heartbreak Station」や「One For Rock & Roll」「Dead Man's Road」「Electric Love」「Winds Of Change」(名曲!)といった楽曲でフィーチャー。ジャニス・ジョプリン並みに暑苦しいハイトーンが減ったことで、また作風的にもアコースティックテイストが増したことで、過去2作以上にリラックスして楽しむことができます。トムの地声、僕は好きなんですけどね。

ちょうど本作リリースと前後して、先に名前を挙げたTHE BLACK CROWESがデビューアルバム『SHAKE YOUR MONEY MAKER』(1990年)で大ブレイクしたり、イギリスからはTHE QUIREBOYSが登場したり、また音楽シーン的にも『MTV UNPLUGGED』がヒットしたりと、時代がより“生音”を求める方向にシフトしていたこともあり、チャート的には全米19位、100万枚のヒットと過去2作には及ばなかったものの、それでも好意的に受け入れられた印象が強い1枚なのです。

個人的ベストは、『NIGHT SONGS』と本作の中間に位置する2ndアルバム『LONG COLD WINTER』ですが、この『HEARTBREAK STATION』も非常に好みの作品です。

あ、最後に。過去2枚では散々な扱いを受けてきたドラマーのフレッド・コウリー、本作では初めてすべてのドラムパートを担当しております。おめでとう!(これが最初で最後でしたが。苦笑)



▼CINDERELLA『HEARTBREAK STATION』
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2018年7月13日 (金)

WARRANT『CHERRY PIE』(1990)

1990年9月にリリースされたWARRANTの2ndアルバム。前年1月に発売されたデビューアルバム『DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH』(1989年)が全米10位、200万枚を超えるヒット作となり、シングルカットされた「Heaven」も全米2位という大ヒットを記録。これを受けて早くも制作された次作では、引き続きボー・ヒル(RATTWINGEREUROPEなど)をプロデューサーに迎え、よりタフになったサウンドを聴かせてくれます。

日本盤には『いけないチェリー・パイ』というLAメタル/ヘアメタルらしい“いかにも”なタイトルが付けられています。実際、このアートワークを目にしたら、まあそういうアルバムなんだろうなと思われてしまうでしょう。

しかし、アルバムのオープニングを飾るタイトルトラック「Cherry Pie」の、前作までのキャッチーさを兼ね備えつつもよりハードになったそのスタイルに驚かされるのではないでしょうか。QUEENの「We Will Rock You」やDEF LEPPARDの大ヒット曲「Pour Some Sugar On Me」を彷彿とさせるリズムとテイストは、まさにスタジアムロックと呼ぶにふさわしい仕上がりで、この曲自体も全米10位のヒットシングルとなります。

アルバムはその後も枯れたギターフレーズと激しくタイトなアンサンブルな単純にカッコいい「Uncle Tom's Cabin」(全米78位)、アコギとピアノの相性も抜群の大人びたバラード「I Saw Red」(全米10位)と、前作にあったパーティロック感が薄らいでいることを感じさせる作風が続きます。

かと思えば、ポップなメロディが印象に残るストレートな「Bed Of Roses」、アップテンポのハードロック「Sure Feels Good on Me」、前作の延長線上にあるパーティチューン「Love In Stereo」など、1stアルバムをイメージさせる楽曲も混在。そういった従来のカラーと、渋みの増したバラード「Blind Faith」(全米88位)などが共存することで、前作までのファンを維持しつつ、WARRANTにネガティブな印象を持つリスナーを“音楽的に”取り込もうとする新境地も見せる。バンドとしても今後の生き残りを賭けて、「ただ楽しいだけじゃない」側面をしっかりここでアピールしているわけです。それが、本作を覆うクールな空気感なわけです(ラストの「Ode To Tipper Gore」は完全に蛇足ですけどね。自己満足でしかないし、我々はこれをあなたたちには求めていないのに、って伝えたい)。

思えば本作より数ヶ月先に発表されたPOISONの新作『FLESH & BLOOD』もそういう作風でしたし、パーティに明け暮れた80年代を終え、あの時代を華やかに彩ったHR/HMバンドたちが次の10年を駆け抜けるために次のステップに向かった……その足がかりだったんでしょうね。

しかし、時代は80年代の生き残りよりも新たなヒーローを求めた。それが“アンチ・ヒロイズム”的なグランジシーンへとつながったわけですから……クールやシリアスまでは正解だったんだけど。うん、残念でしたね。

にしてもこのアルバム、本当によく考えられています。デビューアルバムの完成度の高さも策士ジェイニー・レイン(Vo)によるものが大きかった気がしますが、本作の方向性も彼のアイデアだったんですかね。だとしたら、いい線行ってたわけですよ。彼らの登場ももう5年早かったら、その後の結果もまた違ったのかもしれませんが……。

とはいえ、本作は前作を上回る全米7位まで上昇し、200万枚を超えるセールスを達成しています。時代の変化もあり、彼らの全盛期は本作までということになるのでしょうか。あ、大きなヒットにはならなかった次作『DOG EAT DOG』(1992年)もなかなかの力作ですよ。機会があったら、こちらもぜひ。



▼WARRANT『CHERRY PIE』
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2018年7月12日 (木)

EUROPE『PRISONERS IN PARADISE』(1991)

1991年9月にリリースされた、EUROPE通算5作目のスタジオアルバム。3作目『THE FINAL COUNTDOWN』(1986年)が世界中で記録的な大ヒット作となり、続く4thアルバム『OUT OF THIS WORLD』(1988年)も前作には及ばないものの、それなりのヒットを記録しましたが、その2作をフォローするアルバム作りは非常に難航したようです。

当初このアルバムはBON JOVIAEROSMITHMOTLEY CRUEなどで知られるボブ・ロックをプロデューサーに迎えて制作する予定でしたが、METALLICAブラックアルバム制作に時間がかかりすぎたため白紙に。と同時に、アメリカのレコード会社から「『THE FINAL COUNTDOWN』に続くヒット作を!」というプレッシャーをかけられ続けたバンドは、ひたすら曲作りに没頭します。その中には、メンバーの望まない外部ライターとの共作も含まれていました。

この時期のデモ音源の数はかなりのものがあり、それは日本盤を含めのちにシングルやベスト盤などのボーナストラックとして登場する未発表曲群で一目瞭然です(このとき制作された楽曲の一部は、再結成後にも流用されているとのこと)。

最終的にRATTWINGERなどで知られるボー・ヒルをプロデューサーに迎えて完成させた本作は、“アメリカナイズされた”と揶揄された『OUT OF THIS WORLD』以上にアメリカナイズされた内容に仕上がりました。初期2作のヨーロッパのHR/HMバンド然とした佇まいはもはやそこには存在せず、それどころか『THE FINAL COUNTDOWN』の頃ともまた違うバンドに進化していました。

ですが、1曲1曲の完成度は異常に高く、良質な美メロハードロックアルバムとして捉えるとかなり充実した内容なのです。これ、EUROPEというバンドに対して偏見や固定概念を持っていない人なら思う存分楽しめる1枚ではないでしょうか。

ソングライター人に目を向けると、エリック・マーティン(MR. BIG)やジム・ヴァランス(ブライアン・アダムスなどでおなじみ)、ニック・グラハム(CHEAP TRICK「The Flame」共作者)、フィオナ(女性ロックシンガーで当時ボー・ヒルの奥さん)など、かなり気合いを入れて曲作りに臨んだことが伺えます(メンバーではなく、レコード会社が)。しかも、その大半は作詞に携わっていることからも、彼らをいかにアメリカで再成功させたかったかが理解できるのではないでしょうか。

とにかく本作は、アンセミックなタイトルトラック「Prisoners In Paradise」に尽きるでしょう。再結成以降もこの曲だけは本作からはちょくちょく演奏されていますし、ジョーイ・テンペスト(Vo)自身にとっても思い入れが強い1曲なんだと思います。

もちろん、それ以外にもシングルカットされたポップな「I'll Cry For You」、爽快感の強い「Halfway To Heaven」、ダイナミックなハードロック「Seventh Sign」「Girl From Lebanon」、本作唯一のバラード(のわりに地味な印象の)「Homeland」など聴きどころは多いのですが、1991年という時代を考えるとちょっと不幸な1枚かもしれませんね。

あ、本作は国内盤だと2曲のボーナストラックが追加されており、その中でも「Yesterday's News」が本当に素晴らしいので、ぜひCDで購入する際には中古でもいいので日本盤をオススメしておきます。この曲がなるとないとでは大違いなので。

最後に。このアルバムはアメリカではチャートインすらせず黙殺され、バンドは1992年に事実上の解散と言える無期限活動休止に突入。再びメンバーがステージ上に揃うまで、そこから7年もの歳月を要することになります。



▼EUROPE『PRISONERS IN PARADISE』
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2018年7月11日 (水)

SCORPIONS『CRAZY WORLD』(1990)

1990年11月にリリースされた、SCORPIONS通算11枚目のオリジナルアルバム。それまで同郷のエンジニアであるディーター・ダークスとともに制作を進めてきたバンドが、初めてアメリカのプロデューサーであるキース・オルセン(オジー・オズボーンWHITESNAKEEUROPEなど)を迎えて完成させた1枚です。

サウンドや楽曲の質感は、大成功を収めた『LOVE AT FIRST STING』(1984年)と、それに続く『SAVAGE AMUSEMENT』(1988年)の延長線上にあるもの。ですが、本作では過去2作に残っていたヘヴィメタル的側面を極力排除し、「良質なメロディに重点を置いたハードロック」という点に注力した内容になっています。もしかしたらポップでメロウな楽曲を好むものの『LOVE AT FIRST STING』路線が好きだったというリスナーには、若干“軽く”感じるかもしれません。

楽曲制作面では、ブライアン・アダムスHEARTなどで知られるジム・ヴァランスを迎えています。そう知ると「なるほど」と納得できるものがあるかもしれません。実際、僕はジム・ヴァランスが参加していることを知らずに本作を聴いて、「なんだかHEARTみたいになってきたなぁ」と思ったものですから……彼らの中にそういった意図があったかどうかはわかりませんけど。

ですが、楽曲の完成度やアルバムとしてのまとまりは非常に高いものがあります。「Tease Me Please Me」「Don't Believe Her」というオープニング2曲の軽やかさ、メロディアスさはさすがの一言だし、全米4位のみならず世界中で大ヒットした名バラード「Wind Of Change」もポップソングとして非常に優れた1曲ですし。かと思えばアップテンポなロックチューン「Kicks After Six」「Hit Between The Eyes」のような疾走感も兼ね備えている。メタリックなノリとは異なるロックンロールなノリだけど、これはこれで良いじゃないですか。で、ラストには“以前の”SCORPIONSらしさを引き継ぐ泣きメロバラード「Send Me An Angel」も用意されている。どの曲も過剰なドラマチックさは皆無だけど、幅広い層を取り込む求心力がたっぷり感じられる。そういった意味での“非の打ち所のなさ”は抜群すぎるものがあると思います。

正直言えば、リリース当時はそこまで好きなアルバムではありませんでした。が、ベルリンの壁崩壊をはじめとした世界情勢の大きな変動を踏まえた上で、なぜ「Wind Of Change」が世界中でヒットしたのか、そしてドイツのバンドである彼らがなぜこのアルバムに『CRAZY WORLD』というタイトルを冠したのか。そういったことを考えてから再び本作と接すると、また感じ方が変わってきたのも確か。90年代初頭という時代に産み落とされたからこそ意味のある、そんな1枚なのかもしれませんね。



▼SCORPIONS『CRAZY WORLD』
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2018年7月10日 (火)

AC/DC『THE RAZORS EDGE』(1990)

サッカーW杯が始まってから、CMでよく耳にするAC/DC「Are You Ready」。HR/HMファンなら「えっ?」って振り返ってしまうと思うんです。事実、僕も何度このCMと直面しても「えっ?」って画面に釘付けになってしまいますから。これ、コカ・コーラFIFAワールドカップキャンペーン「Stock Up」編CMにて使用されているとのこと。YouTubeにもCM動画が公開されています。→W杯終了と同時に、動画は削除されたようです。

ということで今回はこの「Are You Ready」が収録されている、1990年9月リリースのAC/DC通算11作目(本国オーストラリアでは12作目)のスタジオアルバム『THE RAZORS EDGE』をピックアップしたいと思います。

前作『BLOW UP YOUR VIDEO』(1988年)で全米12位、全英2位と本格的に復活を果たしたAC/DCですが、続く『THE RAZORS EDGE』ではその人気をさらに確固たるものとします。プロデューサーに迎えたのはBON JOVIAEROSMITHなどでおなじみの“時の人”ブルース・フェアバーン。その組み合わせに最初こそ度肝を抜かれましたが、いざ完成したアルバムを聴くと「なるほど!」と思わずにはいられないキャッチーさ納得させられます。

おそらくブルースはかなりアレンジ面に口を挟んだんじゃないかと思うのです。例えばオープニングを飾る「Thunderstruck」にしても、リフ自体はアンガス・ヤング(G)の手癖的プレイの延長ですが、それをここまでシークエンスさせて引っ張るアレンジはブルースのアイデアだったのではないでしょうか。結果、それにより非常にモダンさが強まり、またドラマチックさを演出する上でもかなり効果的だったように思います。今やスポーツ観戦にも欠かせない1曲になりましたからね。

それ以外の楽曲も非常にポップでコンパクト。シングルヒットした「Moneytalks」(全米23位)や「Mistress For Christmas」、そして先の「Are You Ready」のような曲はもちろんのこと、アップテンポな「Fire Your Guns」やヘヴィな「The Razors Edge」ですらポップさを兼ね備えているのですから。

では、ポップになってことで彼らがヤワになったのか?と問われると、実はまったくそんなことはなく。名盤『BACK IN BLACK』(1980年)とは異なる質感のヘヴィさはしっかり表現されていると思います。

が、それ以上にポップさやキャッチーさが強く前面に打ち出されている。それが全米2位(500万枚以上のセールスを記録)、全英4位という数字に裏打ちされているのではないでしょうか。本作は「AC/DCはちょっと苦手……」というリスナーにも、もしかしたら受け入れてもらえる可能性の高い1枚かもしれません。



▼AC/DC『THE RAZORS EDGE』
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2018年7月 9日 (月)

NINE INCH NAILS『BAD WITCH』(2018)

NINE INCH NAILSの通算9枚目のスタジオアルバム、にして2016年からスタートしたEP 3部作の最終作。「え、アルバムなのにEP?」という声が上がりそうですが、本作はもともとEPとして制作されたもので、SpotifyなどストリーミングサービスでEPはアルバムよりも下の欄に並べられスルーされがちという現実を踏まえ、あえてアルバム名義で発表することになったそうなんです。

だから、中身も6曲で30分。過去2枚と比べて曲数もトータルランニングも最多・最長ですが、過去のNIN諸作品と比べたら短いったらありゃしない。それでも、70年代や80年代初頭のCD時代前夜だったらフルアルバムで通せるボリューム&内容ですけどね。

さて、このEP 3部作でトレント・レズナーは『THE FRAGILE』(1999年)の“その後”を描こうとしているんじゃないか……そんなことを前回の『ADD VIOLENCE』(2017年)のレビューで書きました。それはあくまで前作を聴いた時点での感想ではあるのですが、今作をじっくり聴いて感じたのは、「それはあながち間違いではないな」ということと「我々の簡単な憶測じゃ測りきれないものが詰め込まれているな」ということ。

本作の序盤の流れは過去2作と共通するものが確かにあるし、そこにはトレントが『THE FRAGILE』以降にNINで試そうとしたことの“答え”があるようにも思えます。もちろん、彼自身この20年近くで成長しているわけですから、単なる“続き”ではないし、正しい意味での“答え”ではないかもしれない。それでも本作までの3部作を聴いてそう思えてしまうのは、そこにトレントのある“意思”を感じてしまうから。もちろんそれも深読みかもしれないし、聴き手側の勝手な妄想なのは百も承知。だけど、過去に一度でもNINに魅せられた人なら共感してもらえる“意思”は、間違いなくそこに存在していると信じています。

と同時に、「我々の簡単な憶測じゃ測りきれないもの」も確実に存在している。それが3曲目「Play The Goddamned Part」以降の流れではないかと思うのです。これ、明らかにデヴィッド・ボウイに対するトリビュートですよね?

トレントとボウイの交流についてはファンならよく知るところですし、ボウイがトレントにどれだけの影響を与えてきたかは想像に難しくありません。が、トレントはこれまでそういった影響をしっかり咀嚼して、自分のオリジナルとして発表してきたはずです。ところが、今回はその影響を目に見える形で表現している。ここに彼の“意思”を感じるし、いつも以上に思いが強く伝わってくる。

そういう意味では本作って、実は3部作の完結編と謳っているけど、当初の目的からちょっとだけ外れたイレギュラーなものだったんじゃないか……そんな印象も受けるのです。

結果として進化と回顧という相反する要素が並んでしまいましたが、これがトレントからの“答え”だとしたら……いやいや。ここで結果を出すのはよしておきましょう。まずは8月の『SONICMANIA』でのステージを観てから。ここまでを含めて、ひとつの回答を出すことにしたいと思います。

……とまあ、小難しいことを長々と書いてきましたが、個人的には非常に気に入っている1枚です。



▼NINE INCH NAILS『BAD WITCH』
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2018年7月 8日 (日)

NINE INCH NAILS『ADD VIOLENCE』(2017)

NINE INCH NAILSが2017年7月に発表した、『NOT THE ACTUAL EVENTS』(2016年)に続くEP 3部作第2弾。前作はデジタルリリース&ストリーミングメインでしたが(一部、限定でCDもリリースされたとか)、本作はアナログ、CD、デジタル&ストリーミングで発表。これにあわせて、『NOT THE ACTUAL EVENTS』のCD一般流通も開始となりました。

オープニングの「Less Than」こそ前のめりのデジタルチューンで情報量が多く、前作からの流れを感じさせますが、それ以降の作風は音数が多く攻めの姿勢が強かった前作と比べるとちょっとだけ落ち着いた印象を受けるかもしれません。それは、作品自体のトーンが若干大人びたものであること、音数が比較的“抜き”気味だから感じるのかもしれませんが、基本的な方向性や“向かいたい行き先”はなんとなく共通したものがあるんじゃないか、そう思わされる1枚です。

エレクトロ/インダストリアル調な世界観は前作から引き続きですが、収録曲5曲中4曲が3〜4分台と非常に聴きやすい長さなのも、今作の特徴か。かと思えば、ラストには約12分におよぶ「The Background World」が配置されていたりと、一筋縄でいかない曲者な印象も(しかもこの曲。後半でかなりのループ&ノイズ地獄を味あわせてくれます)そのせいもあってトータル27分という、EPとしては比較的長めな内容となっています。

なんとなくのイメージですが、2000年代の活動/実験を踏まえつつ、この3部作では2枚組の大作『THE FRAGILE』(1999年)の“その後”を描いている、あるいは描こうとしているのではないかという気がします。

もちろん、トレント・レズナーがそんな安易なことを試みるわけがないですし、これは単なるいちファンの妄想でしかありませんが……。

そもそもトレントは再びインディーズに戻って、この3部作で何をしようとしたのか。再びNINE INCH NAILSというユニット名で何を表現したかったのか。その目的こそが一番気になるわけでして。EPという、完成した曲を5曲程度まとまった時点で発表できるスタイルが、今の彼の制作スタイルには合っているんでしょうけど、だからこそ3枚作り終えたときに何が見えてくるのかがとても気になるわけです。

すでに3部作の最終作『BAD WITCH』(2018年)が、アルバム名義で発売されていますが、この3作目を聴いて自分が何を感じたかは、また次回触れたいと思います。

あ、単純に好きです、このEP。前のやつよりも好き。単純に好みです、はい。



▼NINE INCH NAILS『ADD VIOLENCE』
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2018年7月 7日 (土)

GUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION: SUPER DELUXE EDITION』(2018)

今から31年前(!)の7月にリリースされたGUNS N' ROSESのデビューアルバム『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)に、当時制作された他の楽曲やデモ音源などをまとめたボックスセット。タンスのような箱に入った14万円超えの超豪華版は手を出せないとして、頑張れば手を出せる(国内盤で2万7000円程度、輸入盤なら2万円以下で入手可能)スーパー・デラックス・エディション(CD4枚組+Blu-ray)について、今回は音源中心に語っていきたいと思います。

まずディスク1のアルバム本編。オリジナル盤はもともと抜けの良いサウンドで、あまり80年代という時代を感じさせない普遍性の高いミックスだったと思うので、今回のリミックスに関しては「まあ、良くなったかな」と言った程度。そこまで劇的な変化はありません。そもそも、このアルバムにそういった変化は誰も求めていないので、これはこれでいいかなと。ただ、個人的な好みで言ったらオリジナル盤のアナログの音が一番良いと思います(メリハリが最高)。

ディスク2は1988年発売の『GN'R LIES』の音源や、当時のシングルに収められていたライブ音源などをまとめたもの。もともとスタジオライブ音源に歓声を被せた“擬似”ライブ音源だった「Reckless Life」「Nice Boys」「Move To The City」「Mama Kin」、そして同じタイミングに録音されながらも未収録だった「Shadow Of Your Love」がひとまとめになっており、まるでひとつのライブを聴いているよう錯覚に陥ります。あ、「Mama Kin」の前に入っていたアクセル・ローズのMCがカットされているのは残念。

『GN'R LIES』アコースティックサイドからは、「One In A Million」のみ未収録。歌詞に登場する“ニガー”ってワードがいろいろ物議を醸し出したりして、あえてカットしたんでしょうかね。代わりに「You're Crazy」のリズム隊抜きアコースティックバージョンが追加されてますが、同じ曲がバージョン違いでたくさん入っていてもねえ。アーカイヴ性という時点では「One In A Million」が入っていない時点でアウトなんだからさ。まあ、こうやってこのバージョンを聴けるのは、それはそれで嬉しいけど。

あと、日本のみで限定販売されていたEP『LIVE FROM THE JUNGLE』(1988年)の“リアル”ライブ音源もリマスタリングされて収録。「Knockin' On Heaven's Door」の初期バージョン(正直、スタジオテイクよりこっちのほうがカッコいい)や、AC/DCのカバー「Whole Lotta Rosie」がより良い音で楽しめるのは素直に嬉しいですね。

ディスク3&4は1986年のデモ音源中心。このへんの音源は1990年前後にわんさかブートで流出していたので、まあ今さら感もありつつ。別テイクとか入れてくれるのは嬉しいのですが、だったらなぜ「Don't Cry」をカットしたのかと(のちに発表されるスタジオバージョンよりも気持ちテンポがスロー)。この時期のブートは死ぬほど聴き漁ったので、「あれがない、これがない」という話になってくるわけですよ。特に、のちに『USE YOUR ILLUSION I』および『同 II』(ともに1991年)に収録される楽曲の数々(ここに収められている「Back Off Bitch」「November Rain」)はこのデモバージョンで慣れ親しんできたので……ね。「November Rain」なんてピアノバージョン(現在のスタジオバージョン)より、アコギバージョンのほうが好きだったし。

と、苦言ばかり書いてますが、それくらい好きなアルバムだし、今まで生きてきて一番聴き込んだアルバムだから、こだわりもそれだけ強いんですよ。

でもね、だからといって内容が悪いかといったら、それはまた別の話。デモだろうが良い曲はやっぱり良いし、当時のブート版よりも音質が向上しているのは素直に喜ばしいこと。ぶっちゃけ、スーパー・デラックス・エディションを買うのは自分みたいなマニアか、あの時代のGN'Rに魅せられた人、そしてあの時代を追体験したい人だろうから……そういう人なら、高い金額を払っても大満足な内容だと思いますよ(と、最後にフォロー)。

まあ、さすがに数万出すのは厳しいよね、って人はCD 2枚組のデラックス・エディションだけでも十分だと思います。重要なテイクはここでほとんど楽しめるはずなので。そして、あの歴史的名盤がどういう過程を経て完成にこぎつけたかを知りたい人は、ぜひ頑張ってスーパー・デラックス・エディションを購入してみてください。




▼GUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION: SUPER DELUXE EDITION』
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2018年7月 6日 (金)

SLAUGHTER『THE WILD LIFE』(1992)

1992年4月に発売された、SLAUGHTER通算2枚目のスタジオアルバム。デビューアルバム『STICK IT TO YA』(1990年)が200万枚を超えるヒット作となったのを受け、完全にその延長線上にある作風でまとめられています。

どこかひねくれたメロディを持つミドルテンポの「Reach For The Sky」でスタートすると、続くアップチューン「Out For Love」では前作からのヒットシングル「Up All Night」がラジオから流れてくるというシャレた仕掛けも用意。曲調やアルバムの構成もかなり前作を意識しているので、新作なのに初めて聴いた感が薄い1枚です。

あ、それでもオーバープロデュース気味だった前作と比較して、本作はもっと“むき出し感”が強いかも。そのへんは1992年という時代に合わせているのかもしれませんね。ただ、そのオーバープロデュース感こそがSLAUGHTERの魅力でもあったんですが……。

で、そのオーバープロデュース感を見事に引き継いでいるのが、4曲目「Days Gone By」かなと。完全にQUEENを意識したピアノバラード風の1曲なのですが、単なるバラードで終わってない風変わりなポップロック調なところも、後半のコーラスの重ね方も、往年のQUEENを彷彿とさせます。前年11月にフレディ・マーキュリーが亡くなったことを受けて制作されたであろうことが、聴けば想像できる1曲です。前作の延長線上にある楽曲が多い中で、この曲が本作においてかなり強いフックになっていることは、間違いありません。

もちろん、そのほかにも日本のVOW WOWに提供した「Move To The Music」のセルフカバーや、泣きメロのミディアムナンバー「Real Love」、ブルースハープをフィーチャーした渋めの「Old Man」など印象に残る曲は含まれていますが、いかんせん14曲で60分オーバーという内容はちょっとトゥーマッチすぎやしないかなと。もう2、3曲フックになる印象深い曲が含まれていたら、また違ったんでしょうけど……ちょっと狙いすぎてやりすぎた感が強いかもしれません。

チャート的には前作を超える全米8位を記録していますが、セールスは前作の4分の1にあたる50万枚程度で終了。シングルヒットも「Real Love」が最高69位にランクインしたのみ。まあグランジ全盛の中でこれだけの成績を残せたのは、ある意味では奇跡なのかもしれませんが。

あ、現行CDはさらにボーナストラックが追加されており、70分超えの大ボリュームになっております。まあ、こっちは本当におまけ程度の内容。やっぱり「Old Man」から「Days Gone By」のアコースティックインストでしっとり終わるほうが、この長尺作品にはぴったりな気がするので。



▼SLAUGHTER『THE WILD LIFE』
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2018年7月 5日 (木)

DAVID LEE ROTH『A LITTLE AIN'T ENOUGH』(1991)

海外では1991年1月中旬、ここ日本では同年2月下旬にリリースされた、デヴィッド・リー・ロスの3rdフルアルバム。プロデュースを手がけたのはBON JOVIAEROSMITHMOTLEY CRUEなどでおなじみのボブ・ロック。チャート的にも全米18位まで上昇し、50万枚以上を売り上げるスマッシュヒットとなりました。が、残念ながら過去のようなシングルヒットは誕生せず。このへん、リリース時に勃発した湾岸戦争やその後の不況なども影響しているのかもしれませんね。

前作『SKYSCRAPER』(1988年)完成後にビリー・シーン(B)がバンドを離れ、同作のツアー終了後にはスティーヴ・ヴァイ(G)も脱退と、バンドの鍵を握るプレイヤーたちが相次いでいなくなってしまいますが、ダイヤモンド・デイヴはグレッグ(Dr)&マット(B)のビソネット兄弟、ブレット・タグル(Key)はそのままに、新たにジェイソン・ベッカー(G)とスティーヴ・ハンター(G)を迎えてレコーディングに突入。ボブ・ロックの手腕もあり、派手でポップで豪快なハードロックアルバムを完成させます。

良くも悪くもチープさを伴うデイヴの過去作(VAN HALEN時代含む)でしたが、時代の寵児(ボブ・ロック)を迎えたことでここまで現代的な音に生まれ変わるか!と、リリース当時はずいぶん驚いたことを今でもよく覚えています。楽曲自体は良い意味でのB級感が薄れ、無理してマッチョしてる(笑)感が強まっています。それまでビールばかり飲んでたところに、急にプロテインばかりガブ飲みした結果、たるんだ腹が一気にシェイプアップ……そんな音/楽曲なんですよね(笑)。

僕の中でのイメージとしては、AEROSMITH『PERMANENT VACATION』(1987年)とBON JOVI『NEW JERSEY』(1988年)の質感と世界観をダイヤモンド・デイヴ流に料理した結果がこれ、という感じ。伝わるでしょうか?

大きなヒットにはつながらなかったけど、タイトルトラックや「Shoot It」「Hammerhead Shark」などのキャッチーさ、「Sensible Shoes」に漂ういかがわしさ、そしてデイヴといえばこれ!と言いたくなるハードブギー「It's Showtime!」のカッコよさ……どれも水準以上の完成度。1991年という時代もあってか、“見過ごされた1枚”かもしれませんね。改めて再評価してほしい作品集だと思っています。

あと、本作の何が不幸かって、ジェイソン・ベッカーですよ。彼は本作のレコーディングに関わるものの、ツアーには参加できず……理由はご存知かと思いますが、本作のレコーディング中に筋萎縮性側索硬化症が発症して表舞台から去ることに。もし彼があのまま健康体でツアーに参加していたら、ポール・ギルバートやマーティ・フリードマンのようになれていたのかもしれませんね。そういった点でも不幸さが伴う1枚ですが、しのごの言わず「It's Showtime!」や「Drop In The Bucket」のギタープレイなどを聴いてジェイソン・ベッカーの素晴らしさに触れてみてください。



▼DAVID LEE ROTH『A LITTLE AIN'T ENOUGH』
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2018年7月 4日 (水)

IRON MAIDEN『FEAR OF THE DARK』(1992)

1992年5月にリリースされた、IRON MAIDEN通算9枚目のスタジオアルバム。ヤニック・ガース(G)が加入して2枚目、そして長きにわたりメイデンのフロントマンとして活躍したブルース・ディッキンソン(Vo)の(当時)最後のオリジナルアルバムにあたり、全英1位(通算3作目)/全米12位を記録しています。また、本作からは「Be Quick Or Be Dead」(全英2位)、「From Here To Eternity」(全英21位)、「Wasting Love」(チャートインせず)、「Fear Of The Dark」(ライブテイク/全英8位)というヒットシングルも生まれました。

プロデュースを手がけたのは、初期からバンドとタッグを組んできたマーティン・バーチ。ですが、彼は本作を最後にプロデュース業から引退しており、そういう意味でもメイデンファンには印象に残る1枚かもしれませんね。

これまでのメイデンのアルバムは40分台が基本、長くても51分程度で、そういう場合は曲数も8〜9曲ということが多かったと思います。が、本作ではそういった“お約束”が破られ、全12曲で58分というCD時代らしい長さになっております。かといって1曲が長いものばかりかというとそうでもなく、7分程度あるのは「Afraid To Shoot Strangers」と「Fear Of The Dark」の2曲のみ。ほかは3〜4分程度が中心。そのへんのコンパクトさは前作『NO PRAYER FOR THE DYING』(1990年)に通ずるものがあると言えます。

ですが、本作はそれ以前の作品とちょっと違う印象を受けるんですよね。それは音の質感によるものが大きいのかなと。前作までが80年代の延長にある“ドンシャリ”的なサウンドだとすると、本作はもっとファットで硬質なイメージ。メタルシーン自体がそういう音を求めつつある時代だったというのもあるんでしょうけど、ここらへんに“90年代のメイデン”の軸足を見出せはしないでしょうか。

また、楽曲のテイストも従来のメイデンらしいものから、もっとLED ZEPPELIN的なスタイル、ポップなテイストのものなども増えており、名ソングライターのひとりであったエイドリアン・スミス(G)を失ったマイナス要素はあまり感じられません。いや、人によってはこの新機軸が嫌っていうこともあるのかな。当時、日本では比較的ポジティブに受け入れられていた記憶があるのですが。

ブルース・ディッキンソン脱退は、リリースからしばらく経って発表されたものでしたが、そういった意味でも本作はブルース在籍時の集大成的なものであると同時に、バンドとしての“これから”を示す大事な1枚でした。

ひたすら直線的なファストチューン「Be Quick Or Be Dead」や、メロウな「Childhood's End」「Judas Be My Guide」、シンプルなバラード「Wasting Love」、プログレッシヴな「Fear Is The Key」、そして現在まで歌い継がれるメタルアンセム「Fear Of The Dark」など印象的な楽曲も多く、個人的にも今でも好きな1枚です。



▼IRON MAIDEN『FEAR OF THE DARK』
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2018年7月 3日 (火)

BRIDES OF LUCIFER『BRIDES OF LUCIFER』(2018)

昨年6月に開催された『GRASPOP METAL MEETING』など、海外のメタルフェスに出演したのを機に一部で話題になっていた、女性13人からなるHR/HMの名曲をカバーするコーラス隊BRIDES OF LUCIFERがアルバムをリリースしました。

本作でピックアップされている楽曲たちは下記のとおり(曲名後ろのカッコは原曲アーティスト名)。


01. Burn In Hell [TWISTED SISTER]
02. Walk [PANTERA
03. Warriors Of The World [MANOWAR]
04. Chop Suey! [SYSTEM OF A DOWN
05. Painkiller [JUDAS PRIEST
06. Fear Of The Dark [IRON MAIDEN
07. Roots Bloody Roots [SEPULTURA
08. O Father O Satan O Sun! [BEHEMOTH]
09. Holy Diver [DIO
10. South Of Heaven [SLAYER
11. Futility [SCALA & KOLACNY BROTHERS]
12. Halo [MACHINE HEAD
13. White Moon [SCALA & KOLACNY BROTHERS]


ライブではこのほか、RAMMSTEIN「Engel」あたりもカバーされているみたいですね。

ライブやレコーディングには彼女たちのほか、ドラム/ベース/ギター/ピアノが入り、原曲に比較的忠実なアレンジでカバーされています。もちろん、コーラスがメインになるので、彼女たちの歌声が前面に出るようなアレンジも新たに施されており、曲によってはギターソロパートをカットしていたりもします。

どのバンドの曲もボーカルのクセが強いものばかりで、特にPANTERAやSEPULTURAみたいなスクリームメインの楽曲、SYSTEM OF A DOWNのように変態的なボーカルが耳に残る曲すらも聖歌のようなボーカルアレンジで表現されているので、聴き進めていくうちに「あれ、こんなに聴きやすくて大丈夫?」と不安に陥る瞬間も。メタルファンには数年に1枚は世に産み落とされる“ネタCD”として楽しめば、そこまで不快ではないはず。むしろ、僕は積極的に楽しんでおります。

逆に、普段メタルに疎い人にこそ「ね? 意外と曲自体は悪くないんだよ?」と手に取ってほしい1枚だったりして。まあ、一緒に笑って聴いてみましょうよ。

あ、あと本作で2曲もピックアップされているSCALA & KOLACNY BROTHERSという存在。彼らはこのBRIDES OF LUCIFERの先輩的存在でもある、2000年代前半に90年代〜ゼロ年代のUKロックやグランジの代表曲をピアノ伴奏でカバーしたベルギーの少女合唱隊のこと。グループ名は指揮者&ピアノ伴奏者でもある中心人物となる兄弟の名前から取られています。このグループのオリジナル曲をカバーするあたりに、BRIDES OF LUCIFERの起源が見え隠れするのも興味深いところです。



▼BRIDES OF LUCIFER『BRIDES OF LUCIFER』
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2018年7月 2日 (月)

BULLET FOR MY VALENTINE『GRAVITY』(2018)

BULLET FOR MY VALENTINE通算6枚目のオリジナルアルバム。前作『VENOM』(2015年)制作中にジェイソン・ジェイ・ジェイムズ(B, Vo)が脱退し、さらに2016年にはマイケル・ムース・トーマス(Dr)も脱退と、ここ数年はバンドにとって大きな転換期を迎えます。特にマシュー・タック(Vo, G)が喉を壊して以降、スクリームはジェイが担当していたため、後任ベーシストのジェイミー・マティアスにもその役目が求められるわけでして……まあ、新曲は積極的にそういった要素を減らしていくんだろうな、というのもなんとなく想像できたわけです。

マシューとマイケル・マッジ・パジェット(G)のオリジナルメンバー2人にジェイミー、そしてジェイソン・ボウルド(Dr)を迎えたBFMVは、これまで在籍したJive / RCA Recordsから離れ、新たにSpinefarm Recordsと契約。2016年11月には手始めとして、新曲「Don’t Need You」が配信リリースされています。この曲は『VENOM』の延長線上にありながらも、よりモダンな要素が際立つ1曲でした。おそらく次のアルバムは、この方向性なんだろうな、これはこれで悪くないけど……そう思ってから1年半、ついにアルバムが届けられたわけです。

プロデュースを手がけたのは、FIGHTSTARやBUSTED、WHILE SHE SLEEPSといったモダンなバンドを多数手がけ、BFMVの前作『VENOM』でも一部ミックスなどで携わっていたカール・ボウン。もともとこれまでも作品ごとに変化を繰り返してきた彼らですが、それは本作も同様で、メタルコア以降のモダンなサウンドメイキングと現代的な壮大さを兼ね備えた楽曲群がズラリと並びます。

特に本作はメタル度という観点で言えば、メタリックではあるものの正直ヘヴィメタルとは言い難い作品かもしれません。実際、タイトルトラック「Gravity」や「Letting You Go」あたりにはONE OK ROCKの最新作『Ambitions』(2017年)あたりにも通ずるテイストがあり、そのへんが苦手な人には敬遠されそうな気もします。が、8月に控えたサマソニ出演を通してこれまで届かなかった層にもアピールできる可能性もゼロではありません。

こう書くと以前とは激変してしまったような印象を受けるかもしれません。確かにデビュー時と比べれば激変したと言っても過言ではないのですが、それでも「聴けばBFMVの楽曲だとすぐに理解できるオリジナリティ」はしっかり確立されているので、彼らのことをここまでポジティブに見守ってきたリスナーには安心できる内容ではないでしょうか。

ぶっちゃけ、このアルバムを通してBFMVがHR/HMの未来を担うことができるのか、僕にはわかりません。好きか嫌いか?で問われれば、僕は好きな部類に入る作品ではあります。なので今は1年後、2年後にこのアルバムが時代に爪痕を残せるのかどうかを静かに見守りたいと思います。



▼BULLET FOR MY VALENTINE『GRAVITY』
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2018年7月 1日 (日)

2018年上半期総括(アルバムベスト10)

恒例となった上半期ベスト。ひとまず7月1日現在の10枚を紹介したいと思います。バランスとしては洋楽5枚、邦楽5枚というセレクトで順位など関係なし。今回はあえてミニアルバムやEPを外し、フルアルバムのみをピックアップしました。


COURTNEY BARNETT『TELL ME HOW YOU REALLY FEEL』(amazon)(レビューはこちら

IHSAHN『ÁMR』『SPIRIT』(amazon)(レビューはこちら

JUDAS PRIEST『FIREPOWER』(amazon)(レビューはこちら

MANIC STREET PREACHERS『RESISTANCE IS FUTILE』(amazon)(レビューはこちら

STARCRAWLER『STARCRAWLER』(amazon)(レビューはこちら

brainchild's『STAY ALIVE』(amazon

HER NAME IN BLOOD『POWER』(amazon

エレファントカシマシ『WAKE UP』(amazon

おとぎ話『眺め』(amazon

けやき坂46『走り出す瞬間』(amazon

LOVEBITES『BATTLE AGAINST DAMNATION』(2018)

2017年10月発売の1stアルバム『AWAKENING FROM ABYSS』に続く、LOVEBITESの最新EP。本作は日本盤発売からさほど変わらぬタイミングに海外でもリリースされており、8月に控えた『WACKEN OPEN AIR』に向けた景気づけの1枚となっています。

個人的にも1st EP『THE LOVEBITES EP』や『AWAKENING FROM ABYSS』は、昨年のメタルシーンを語る上で(特に後者は間違いなく)重要な作品だと思っています。実際、アルバム発表以降は国内ツアーや初のUK公演なども成功させ、本EP発売直後にはワンマンライブでは国内最大規模となるTSUTAYA O-EAST公演を大成功させています。僕もこのライブは拝見しましたが、過去2回のワンマンライブをよりスケールアップさせた内容で、バンドとして脂の乗った現状が余すところなく表現されていたと思います。

で、そのライブでもキーとなっていたのが、本EP収録の新曲4曲。ライブのオープニングを飾った「The Crusade」は今年2月のワンマンライブでも先行披露されていた1曲で、IRON MAIDENを彷彿とさせる“ツインリード風ギターリフでグイグイ引っ張る”タイプの王道メタルチューン。一回聴けば、問答無用で気にいるストロングスタイルの1曲は、すでに2月のライブの時点でも「今後ライブにおけるアンセムになるのでは?」と感じていたけど、その予感に間違いはありませんでした。

2曲目「Break The Wall」はスラッシュメタルをベースにした疾走チューンですが、ただ闇雲に突っ走るだけではなく、中盤にスロー&メロウになる展開も用意され、このバンドの懐の深さを感じさせるアレンジを楽しめます。ボーカルasamiの歌唱もただ激しいだけでなく、しっかりと色香を感じさせるもので、そこでも他の女性メタルシンガーとの違いをアピールしております。

で、本作のキモとなるのが、3曲目「Above The Black Sea」と4曲目「Under The Red Sky」。両曲ともクラシックをモチーフにしており、そのタイトルからも対になっていることが伺える力作なのです。シンフォニックメタルを彷彿とさせるアレンジ&サウンドの前者と、心ときめくハーモニーと思わず一緒にシンガロングしたくなるコーラスパートを持つ後者。どちらもEPで聴いたときから素晴らしいと思ってはいましたが、実は音源以上にライブでその威力を発揮する、本当に素晴らしい2曲であることを、声を大にして伝えたい……そう思い、国内アーティストながらも本ブログでピックアップしたわけです。

改めて、6月28日のライブはこのEPの新曲4曲を軸に、セットリストが組み立てられているなと、ライブと同じ曲順でプレイリストを作ってみて改めて実感。それくらいこの4曲は“LOVEBITESの今後”をしっかり提示しており、“これから”をより期待させてくれるのです。

これはまだまだ、来たる2ndアルバムへの序章に過ぎない……そう信じているし、あとになって「やっぱりそうだったね!」と思わせてくれるものすごいニューアルバムに期待したいところです。プレッシャーをかけるようでなんですが、今の彼女たちなら絶対にそれを成し遂げてくれる。そう信じています。



▼LOVEBITES『BATTLE AGAINST DAMNATION』
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