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2018年7月28日 (土)

DAVID BOWIE『1. OUTSIDE』(1995)

1995年9月に発表された、デヴィッド・ボウイ通算19枚目のスタジオアルバム。TIN MACHINEでの失敗を経て、前作『BLACK TIE WHITE NOISE』(1993年)で再びソロアーティストとして活動再開したボウイは、早くも多作モードに突入。70年代後半のベルリン三部作(『LOW』『HEROES』『LODGER』)で共作したブライアン・イーノと18年ぶりにタッグを組み、コンセプチュアルかつモダンな作品を完成させます。

全19曲で75分という収録内容は、アナログ時代なら2枚組の大作と受け取られましたが、CD主流の90年代半ばではこのボリュームすらもどこか「当たり前」と思わされてしまうところがあったり、なかったり。まあこういったストーリー性の高い作品も、盤を裏返したり取り替えたりしなくても80分近くぶっ通し再生できてしまうCDならではと言えるでしょう。時代の恩恵受けまくりです。

前作でみせたジャジーなテイストを残しつつも、ここで全体を覆うのはエレクトリックでインダストリアルで不穏な空気感。NINE INCH NAILSのようなアーティストがもてはやされていた中では、この取捨選択は“流行りに乗っかった”と言われてしまいがちですが、じっくり腰を据えて聴くと流行りの一言では済まされない、徹底的に作り込まれたディープな世界観を楽しむことができます。

そういえば、この頃のボウイは海外ドラマ『ツイン・ピークス』の劇場版『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』に出演するなど、役者としても活躍していた時代。また、そういったダークでサイコな作品が世界的にウケている、そういうものが求められていることを考えると、ボウイがこのコンセプトアルバムの世界に飛び込んだのは納得できるものがあるのではないでしょうか。そういえば、本作からのシングル「The Hearts Filthy Lesson」が映画『セブン』のエンディングテーマに採用されたのも、今となってはなるほどと思ってしまいます。

のちにPET SHOP BOYSがリミックスしたダンスバージョンがヒットした「Hallo Spaceboy」は、ヘヴィな原曲もカッコいいですし、前作の延長線上にある「A Small Plot Of Land」や「The Motel」にもゾクゾクさせられる。かと思えばデジロック調の「No Control」があったり、ベルリン三部作にも通ずるスペーシーな「Wishful Beginning」もあるし、まんまNINな「I'm Deranged」もあり、最後はどこかピースフルな「Strangers When We Meet」で幕を降ろす……いや、本当はここで終わらず、このコンセプト作品は5部作となるはずだったんですけどね。アルバムタイトルのナンバリングはその名残り。でも、本作が思うほどヒットしなかったことから、続編は後回しに。結果、次章となるはずだった『2. INSIDE』は制作されることなく、ボウイはこの世を去るのでした。

ボウイ亡き今、このアルバムを冷静に語ることは難しいのかもしれませんが、個人的にはリリース当時から大好きでした。何も彼が時代に擦り寄るのは今に始まったことでもないですしね。それに、このダークさは今みたいな時代こそ評価されるべきとも思うのですが、いかがでしょう。



▼DAVID BOWIE『1. OUTSIDE』
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