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2018年8月 1日 (水)

DEAFHEAVEN『ORDINARY CORRUPT HUMAN LOVE』(2018)

前作『NEW BERMUDA』(2015年)から約3年ぶりの新作となる、DEAFHEAVENの4thアルバム。前作は海外から半年遅れの2016年夏に日本盤がソニーからリリースされましたが(フジロック出演が決定したのも大きかったのかな)、本作は海外でのリリースから1ヶ月近く経った現在も日本盤発売の知らせは届いておりません。残念極まりないですね。

本作に関しては海外でのリリースに先駆けて聴く機会を得ており、この2ヶ月くらいひたすら聴きまくっていました。ポストブラックメタルだとかブラックゲイズだとかいろんなサブジャンルに括られる機会の多い彼らですが、本作ではその色を残しつつもネクストレベルに到達したことを存分にアピールする意欲作となっています。

アルバムは穏やかかつ牧歌的、そこに壮大さも兼ね備えたメジャーキーの「You Without End」からスタートします。正直、この曲を最初に聴いたときは腰を抜かすほど驚きました。だって、オープニングから滑らかなピアノとギターの音色に乗せて、女性のポエトリーリーディングが始まるのですから。けど、途中から加わるいつものスクリームが聴こえてくると、ちょっとホッとする自分がいたりして……落ち着かないですよね、いざ「DEAFHEAVENの新作を聴くぞ!」と意気込んだのにこのオープニングだったとしたら(笑)。

もちろん、このアルバムは「You Without End」で展開されるテイストがすべてではありませんが、作品全体を通して多幸感やロマンティシズムに満ちているのも事実。ブラックゲイズ的な手法で始まる「Honeycomb」にしても、途中からメジャー展開に突入しますし。

確かにDEAFHEAVENの過去作に耳を傾けると、これまでもそういったテイストは含まれていました。ただ、ここまで徹底してこのスタイルが追求されたのはこれが初めてではないでしょうか。明と暗の対比が際立つのはもちろんのこと、静寂と轟音、メロディとスクリーム……さらには現実と非日常まで、そういった対となるものが絶妙なバランスで並列し、そこから織りなされるサウンドスケイプは圧巻の一言だと思います。初期のダークさを伴うスタイルも好きですが、前作『NEW BERMUDA』を経てここに到達したことを考えると、改めてすごい進化を遂げたなと実感します。

イギリスの小説家グレアム・グリーンの『情事の終わり』(同作は『ことの終わり』のタイトルで映画化されています)から引用されたアルバムタイトルや、アルゼンチンの作家フリオ・コルタサルの作品からインスパイアされた歌詞など、人間が内に秘める激情とメランコリックさがとことん追求されたこのアルバムは、まるで架空の映画のサウンドトラックのようでもあり、あるひとりの人間が見る白昼夢に対するサウンドトラックでもある。そんな、生活に根付いた作品に思えてきます。いやあ、これは傑作だ。



▼DEAFHEAVEN『ORDINARY CORRUPT HUMAN LOVE』
(amazon:海外盤CD / MP3

投稿: 2018 08 01 12:00 午前 [2018年の作品, Deafheaven] | 固定リンク