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2018年8月31日 (金)

2018年8月のお仕事

2018年8月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※8月31日更新)


[WEB] 8月31日、けやき坂46出演の舞台「マギアレコード」の公演ダイジェストPVに、コメントを提供しました。現在公式Twitterアカウントにて公開中。追ってYouTubeなどでも公開予定です。

[紙] 8月31日発売「BUBKA」2018年10月号にて、乃木坂46斉藤優里×新内眞衣インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 8月28日、10月1日開催のイベント「mights」オフィシャルサイトにてNo Buses近藤×スグロリョウゴ対談が公開されました。

[紙] 8月24日発売「TV Bros.」2018年10月号にて、欅坂46平手友梨奈ソロインタビュー、平手友梨奈×北川景子×月川翔鼎談、月川翔インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 8月22日、「Red Bull Japan」オフィシャルサイトにてインタビュー【1人3曲挙げてみて】sleepyhead武瑠のベースを作った「90年代の音楽」が公開されました。

[WEB] 8月20日、「FLYING POSTMAN PRESS」オフィシャルサイトにてゲスの極み乙女。インタビューが公開されました。紙面に掲載されているものと同じ内容になります。

[紙] 8月20日から全国5都市の主要CDショップで配布開始の「FLYING POSTMAN PRESS」2018年9月号にて、ゲスの極み乙女。インタビューを担当・執筆しました。

[WEB] 8月15日、「リアルサウンド」にてアーティスト分析記事「TWICE、Superorganism、Now United……エンタメ業界における多国籍グループの波」が公開されました。

[WEB] 8月14日、「リアルサウンド」にて欅坂46菅井友香インタビュー「欅坂46 菅井友香が語る、幾度の挑戦で芽生えた責任感と新たな決意 「パワーの源になりたい」」が公開されました。

[紙] 8月10日発売「UTB+」Vol.45にて、けやき坂46金村美玖、富田鈴花、松田好花の各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 8月8日、LINE LIVEとニコ生にて8月22日(水)21時から生配信される「ウツシヨノユメ」発売記念特番にてMCを務めることが発表されました。当日の視聴はこちらこちらから。

[紙] 8月4日発売「日経エンタテインメント!」2018年9月号にて、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」を構成・執筆、サザンオールスターズ『海のOh, Yeah!!』全曲解説を担当しました。(Amazon


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また、7月に当サイトで紹介したアルバム(Spotifyで配信している作品のみ)から各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストを制作しました。題して『TMQ-WEB Radio 1807号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

さらに今月から、Apple Musicでも同プレイリストを作成しております。曲によってはSpotify、Apple Music限定のものもありますので、一部選曲がことなりますのでご了承を。

投稿: 2018 08 31 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

FOO FIGHTERS『ONE BY ONE』(2002)

前作『THERE IS NOTHING LEFT TO LOSE』(1999年)をデイヴ・グロール(Vo, G)、ネイト・メンデル(B)、そして新加入のテイラー・ホーキンス(Dr)の3人で制作し、ツアーを前にクリス・シフレット(G)が加わったことで現在まで続くベースの4人が揃ったFOO FIGHTERS。『THERE IS NOTHING LEFT TO LOSE』を携えたツアーを経て、この4人で初めて制作したのが、2002年10月発売の4thアルバムです。

プロデューサーに前作を手がけたアダム・カスパー(SOUNDGARDENQUEENS OF THE STONE AGEPEARL JAMなど)と、ニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINSKORNMASTODONなど)、そしてバンド自身がクレジットされている本作は、FOO FIGHTERS史上もっともヘヴィな1枚と言えるでしょう(もっとも、カスパー・プロデュース曲は「Tired Of You」1曲にとどまり、残りは当初からエンジニアとして携わってきたラスクリネクツとバンドの手によるもの)。

冒頭の「All My Life」から「Low」への流れは、硬派なハードロックをイメージさせるサウンドで、とてもグランジシーンから生まれたバンドとは思えないほど。従来の彼ららしい「Have It All」や「Time Like These」みたいにメロディアスな楽曲もしっかり含まれているものの、全体のトーンは非常にシリアスでヒリヒリした感覚で覆われています。

実は彼ら、このレコーディング中にもメンバー間での衝突があり、一時は解散寸前にまで追い詰められたそう。しかし、そういった困難を乗り越えた末にこのアルバムにたどり着く。大半の楽曲はその後レコーディングし直されたそうで、そういうタフな状況良い意味でバンド内の緊張感が伝わる攻めの作風へと昇華させた。そう考えると、この方向性はしかるべきものなのかもしれません。

もちろん、ここで展開されるスタイルは以降のアルバムにも反映されており、現在のスタジアムロックテイストはここから始まったといっても過言ではないわけです。ここまでくると、もはや「元NIRVANA」の肩書きは必要ないし、むしろあの頃グランジを毛嫌いしていたHR/HMファンにこそ率先して聴いてほしい、強力なアメリカンハードロックアルバムではないでしょうか。

本作はこの時点で過去最高となる全米3位を獲得。過去3作同様にミリオンセールスを記録し、「All My Life」(全米43位)、「Time Like These」(全米65位)というスマッシュヒットシングルも生まれています。さらに、2003年の来日公演では神戸ワールド記念ホール、幕張メッセという大会場でのライブも実現。本作は名実ともにトップバンドの仲間入りを果たす、起死回生の1枚となりました。

ちなみに、本作にはQUEENブライアン・メイが「Tired Of You」にギターで、デイヴとのNIRVANA時代の盟友クリス・ノヴォセリックが「Walking A Line」にコーラスで、デイヴ・リー・ロスのバンドで知られるグレッグ・ビソネットが「Danny Says」にドラムでゲスト参加。次作『IN YOUR HONOR』(2005年)の片鱗を、早くもここで見せています。



▼FOO FIGHTERS『ONE BY ONE』
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投稿: 2018 08 31 12:00 午前 [2002年の作品, Brian May, Foo Fighters, Nirvana] | 固定リンク

2018年8月30日 (木)

ALICE IN CHAINS『RAINIER FOG』(2018)

全米2位まで上昇した前作『THE DEVIL PUT DINOSAURS HERE』(2013年)から5年3ヶ月ぶりに発表された、ALICE IN CHAINS通算6枚目のオリジナルアルバム。これで再結成後、レイン・ステイリー(Vo/2002年死去)在籍時と同じ枚数だけオリジナルアルバムを出したことになりますね。

過去2作同様、ニック・ラスクリネクツ(HALESTORMKORNMASTODONなど)をプロデューサーに迎えた本作は、過去2作以上にレイン在籍時の“90年代のALICE IN CHAINS”が脳裏に浮かぶ、これぞ完全復活作と断言できるような大傑作。いや、なんでしょうこのバランス感は。

ウィリアム・デュヴァール(Vo, G)という新たな個性が10数年という歳月をかけて、ようやくバンドに馴染んだということなのでしょうか。それとも、ジェリー・カントレル(Vo, G)が“あの頃”の感覚をようやく取り戻したということなのでしょうか。とにかく往年のALICE IN CHAINS節が、過去2作以上に強まっているのです。これって過去2作がカリフォルニアレコーディング、今作が地元シアトルでのレコーディングというのも大きく作用しているのかもしれませんね。質感が全然違いますもの。90年代の彼らが持っていた、あの“淀み”がここに完全復活していますし。

その“淀み”は質感のみならず楽曲スタイルにも表れており、例えば陰惨でヘヴィなオープニングトラック「The One You Know」は過去2作以上にALICE IN CHAINSだし、2曲目「Rainier Fog」は1stアルバム『FACELIFT』(1990年)時代を彷彿とさせる若干アップテンポのハードロック、4曲目「Fly」でのギターの泣きっぷりは2ndアルバム『DIRT』(1992年)当時を思い出させるし、5曲目「Drone」での曲展開も3rdアルバム『ALICE IN CHAINS』(1995年)までの彼らが憑依したような印象を受ける。そういう1曲1曲の作り込みと、このバンドが本来持っていた“らしさ”がアルバムの至るところから感じられるのです。

しかも、それが単なる焼き直しで終わっておらずに、しっかりアップデートされている。実はそのアップデート感こそが、デュヴァールのカラーなのではないか、と思うわけです。レインの亡霊を断ち切り、かといって完全に消し去るのではなく、意思を継ぎながら先に進む。再結成からの10数年で彼らはようやく本当の意味での“前進”ができたのかもしれませんね。

また、前作は12曲で67分とトータルランニングも長すぎた。今作は楽曲のバラエティに富みながらも10曲で53分と非常に聴きやすい。ラストの「All I Am」で終わるドラマチックな構成も含め、完璧すぎるほどにALICE IN CHAINSらしいアルバム……これぞ90年代以降のアメリカンハードロックの“王道”なのではないでしょうか。



▼ALICE IN CHAINS『RAINIER FOG』
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投稿: 2018 08 30 12:00 午前 [2018年の作品, Alice in Chains] | 固定リンク

2018年8月29日 (水)

DEFTONES『COVERS』(2011)

DEFTONESが2011年4月に“レコード・ストア・デイ”の限定アイテムとしてリリースした、カバーコンピレーションアルバム。当初はアナログ5000枚限定でリリースされましたが、数年後にデジタルリリース&ストリーミング配信開始。現在ではこうやって手軽に聴くことができるようになりました。

DETFONESは2005年にも『B-SIDES & RARITIES』と題した、シングルのカップリング曲や未発表音源からなるCDとMVなどを収めたDVDの2枚組作品を発表していますが、本作『COVERS』には先の『B-SIDES & RARITIES』にも収録されていたカバー曲が複数含まれています。

本作の内訳は以下のとおり。原曲者カッコ後ろに「*」が付いている楽曲は、『B-SIDES & RARITIES』にも収録されていたものです。


01. Drive [原曲:THE CARS]
02. Caress [原曲:DRIVE LIKE JEHU]
03. Please, Please, Please, Let Me Get What I Want [原曲:THE SMITHS] *
04. No Ordinary Love [原曲:シャーデー] *
05. Savory [原曲:JAWBOX] *
06. Do You Believe [原曲:THE CARDIGANS]
07. Simple Man [原曲:LYNYRD SKYNYRD] *
08. Ghosts [原曲:JAPAN]
09. The Chauffeur [原曲:DURAN DURAN] *
10. If Only Tonight We Could Sleep (Live) [原曲:THE CURE] *
11. Sleep Walk [原曲:SANTO & JOHNNY]


11曲中5曲がアルバム初収録。つまり、『B-SIDES & RARITIES』以降に録音されたカバーということになります。

どの曲も原曲のイメージを損なうことなく、しっかりDEFTONESとしてのカラーも主張した良カバーではないでしょうか。THE CARSの「Drive」の気怠さなんて最高だし、DURAN DURANやJAPANはこれ以上崩しようがなかったのか比較的原曲に近い状態。そういったところに、このバンドの原曲者への愛情が感じられます。

ちなみに、『B-SIDES & RARITIES』のみで聴けるカバー曲は以下のとおり。


Wax And Wane [原曲:COCTEAU TWINS]
Sinatra [原曲:HELMET]
Night Boat [原曲:DURAN DURAN](iTunes版のみ収録)


どんだけDURAN DURANが好きなんだ!って話ですが、このへんが個人的にDEFTONESを信用できるところでもあるんですけどね。彼らはこのほかにも、コンピレーションアルバムに「To Have and to Hold」(原曲:DEPECHE MODE)、「Jealous Guy」(原曲:ジョン・レノン)を提供しています。

さて、昨日のDEATH OF LOVERSからの続き。同じようなUKニューウェイブからの影響下にあるDEFTONESとNOTHING / DEATH OF LOVERSですが、いくつか被る要素はありつつも軸になっているものが異なることに気づかされます。THE SMITHSやTHE CURE、COCTEAU TWINS、DEPECHE MODEのようなバンドこそ両者ともルーツとして重なるものの、NOTHING / DEATH OF LOVERSはニューウェイブでもポストパンク寄りで、DEFTONESはニューロマンティック寄り。大雑把に括ればこうなるのではないでしょうか。あと、DETONESはMTV世代という言い方もできるかもしれない。THE CARSやシャーデーが入っているあたりに、その匂いが感じられます。まあ、これは両バンドの年齢の違いとも受け取れますが。

もしNOTHINGやDEATH OF LOVERSが純粋なカバーアルバムを作るとしたら、一体どんな選曲になるのか。あそこまでど直球でルーツへの愛情を形にするバンドなんだもん、そりゃあカバーにも捻りなんて求めませんよこちらも。ホント、一度聴いてみたいものです。



▼DEFTONES『COVERS』
(amazon:海外盤アナログ / MP3

投稿: 2018 08 29 12:00 午前 [2011年の作品, Cure, The, Deftones, Duran Duran, Japan, Smiths, The] | 固定リンク

2018年8月28日 (火)

DEATH OF LOVERS『THE ACROBAT』(2017)

NOTHINGのドミニク・パレルモ(Vo, G)とカイル・キンボール(Dr)が、WHIRRのギタリストだったニック・バセット(のちにNOTHINGに加入し、ベーシストに)らと結成したドリームポップ/ニューウェイブプロジェクトDEATH OF LOVERSの、2017年11月に発売された1stフルアルバム。DEATH OF LOVERSとしては2014年にEP『BURIED UNDER A WORLD OF ROSES』を発表しており、本作はそれ以来の新音源となります。またここ数年の間に、上記の3人に加えキーボーディストの女性メンバー、CC・ルーが加入。本作は4人編成になってから初の音源にもなります。

NOTHING自体がUKロックやシューゲイザーへの憧れをそのまま形にしたものだとしたら、本作はUKニューウェイブやエレポップへの憧れがなんの捻りもなく具現化された1枚と言えるでしょう。だって、オープニングの「Orphans Of The Smog」。これ、JOY DIVISIONやNEW ORDERへの彼らなりのアンサーですよね。もう、笑っちゃうぐらいいベースが……(笑)。

2曲目「Here Lies」を聴くと、脳裏にDEPECHE MODEの影がチラつき、6曲目「Quai d’ Orsay」にはNEW ORDERが再び……。また、4曲目の「The Lowly People」はPULPの代表曲「Common People」へのアンサーだと名言されており、なるほどねと納得させられます(笑)。

シンセのちょっとしたフレージングや音使い、ボーカルのトーン、ギターのメロディやフレーズが、僕らが慣れ親しんできた80〜90年代のそれ。ああ、恥ずかしいったらありゃしない(もちろん良い意味で!/笑)

もうね、なんか笑ってしまうんですよ。リアルタイムであの時代を通過して、さらに後追いで80年代初頭、あるいは70年代末の歴史的価値の高い作品群に触れてきたアラフォー以上のオッさんオバさんたちは、これを聴いたら身体中がむず痒くなるんじゃないでしょうか。それぐらい、ずっとひた隠しにしてきた思い出の恥部を大胆にひけらかされたような気がする、そんな1枚。真面目に聴いてはダメです、半笑いぐらいがちょうどいい。

このドミニク・パレルモという男はどういう経緯でここにたどり着いたのか。本当に不思議でならない。彼はフィラデルフィアの片隅で、ハードコアとともにこういったUKバンドを聴き漁る青春時代を過ごしたってことなんでしょうね。なんだか、DEFTONESのチノ・モレノにも通ずるものがあるなぁ……。

にしても、こんなど直球な新作アルバムを2017〜8年に聴くことになろうとは。なんとも言えない気持ちになりますね(苦笑)。



▼DEATH OF LOVERS『THE ACROBAT』
(amazon:海外盤CD / MP3

投稿: 2018 08 28 12:00 午前 [2017年の作品, Death of Lovers, Nothing] | 固定リンク

2018年8月27日 (月)

NOTHING『TIRED OF TOMORROW』(2016)

2016年5月発売の、アメリカのシューゲイザー/ドリームポップバンドNOTHINGによる2ndアルバム。本作には元DEAFHEAVEN、WHIRRのニック・バセット(B/WHIRRではギタリスト)が参加しています(のちに脱退)。

このバンドの面白いところは、アメリカのバンドなのにUKシューゲイザーやブリットポップの影響下にあるサウンドをベースにしているところ。しかも、そういったサウンドを主軸にしているのに、アメリカのハードコア/メタルコア専門レーベルのRelapse Recordsに所属しているとうことでしょう。メタルレーベル所属のシューゲイザーバンドというと、ブラックゲイズやスクリーモといったスタイルが脳内で再生されますが、このNOTHINGはボーカルの気怠さや耽美な音作りはおもっくそUKバンドのソレなんです。

もともとはCONVERGE周りのハードコア界隈にいたドミニク・パレルモ(Vo, G)ですが、傷害事件を起こして2年間刑務所へ。出所後にこのNOTHINGを結成しています。この2年の間に彼の中でどんな変化があったのかはわかりませんが、まあ何か閃いちゃったのか悟っちゃったのか。激しさの中にも甘美さや耽美さを秘めた、それまでの世界観とは異なる“あっち側”に到達しちゃったわけです。

僕は前作『GUILTY OF EVERYTHING』(2014年)でこのバンドのことを知ったのですが、続く本作はよりポップさや温かみが増しており、シューゲイザーバンドにありがちなヒンヤリ感は減ったかな。

また、単にRIDEマイブラのようなカラーを取り入れるだけでなく、アメリカのバンドらしく90年代のオルタナティヴロック(グランジ含む)のテイストも至るところに含まれており、その両要素が融合することでオリジナリティを確立させようとしている。そんな印象を受ける1枚かなと思います。

特にこのバンドは、1曲がそんなに長くないのが他の同系統バンドとは異なる点ではないでしょうか。本編ラストのタイトルトラック「Tired Of Tomorrow」こそ6分半の大作ですが(ピアノとストリングスをフィーチャーした名曲!)、そのほかは3〜4分台の楽曲がメイン。そこが大作志向のDEAFHEAVENなどと異なり、しっかり差を出せているのかなと。

Relapse Records所属バンドということで、一部のリスナーから敬遠されそうな気がしないでもないですが、食わず嫌いせずにぜひ一度トライしてみては。ちなみに彼ら、待望の3rdアルバム『DANCE ON THE BLACKTOP』を先日リリースしたばかり。より濃度が高まったこの力作についても、後日触れてみようと考えているところです。



▼NOTHING『TIRED OF TOMORROW』
(amazon:海外盤CD / MP3

投稿: 2018 08 27 12:00 午前 [2016年の作品, Nothing] | 固定リンク

2018年8月26日 (日)

DONNIE VIE『GOODBYE: ENOUGH Z'NUFF』(2014)

2013年にENUFF Z'NUFFを脱退したドニー・ヴィ(Vo, G)が、同年に行ったツアー「Magical History Tour」からセレクトされた音源で構成された、2014年2月発売のライブアルバム。フィジカルではCD+DVDで発売され、DVDにはライブの模様に加え、ENUFF Z'NUFF時代のMVがたっぷり収録されています(MV自体の画質はかなりひどいですが)。

さて、このアルバムタイトル……ズナフの2ndアルバム『STRANGTH』(1991年)の収録曲から取ったものです(本ライブアルバムの最後にも収録されています)が、サブタイトルとして付けられた「ENOUGH Z'NUFF」によってその意味合いがかなり変わってくるのではないでしょうか。そこにこのアルバムジャケット。これを知ったときは「ああ、もう復帰はあり得ないんだろうな……」と気持ちを切り替えたことをよく覚えています。悲しかったけどね。

ここで演奏されている楽曲は、ファンならお気づきかと思いますがすべてENUFF Z'NUFF時代の楽曲。これらがドニーのアコギやピアノ弾き語りで表現されています。やっぱりこの“声”なんですよね。何ものにも変えがたい、唯一無二の歌声。この声でグラムメタルやパワーポップ的な楽曲を歌うからこそ、ほかの同系統バンドとは異なる艶やかさが生まれ、オリジナルな存在になれたわけですから。

そして、改めて良曲の多いバンドであると同時に、こうやってギター1本で歌っても魅力が落ちないことに驚かされる楽曲をたくさんもっとバンドだったんだな……と過去形で言いたくなるくらい、いろんなしがらみから解き放たれたドニーの歌を楽しめる、好企画盤だと思います。たとえこれが小金稼ぎのために無理やり作ったものだとしても、すでに脱退したメンバーを含む、30年近く前の音源を発表する今のあのバンドより、こちらを支持したいな。

曲によってはシンガーソングライターのバズ・フランシスがハーモニーで華を添えています。「You Got A Hold On Me」や「New Thing」あたりが、まさにそれ。ラスト2曲(「Someday」「Goodbye」)のバラードもそうですね。

にしても、「There Goes My Heart」や「Fly High Michelle」「Time To Let You Go」はいつ聴いても色褪せない名曲中の名曲だなと。「There Goes My Heart」が発表された時期には、ズナフも再びオーバーグラウンドへ浮上できるんじゃないか……と思ったんですけどね。残念です。



▼DONNIE VIE『GOODBYE: ENOUGH Z'NUFF』
(amazon:海外盤CD+DVD / MP3

投稿: 2018 08 26 12:00 午前 [2014年の作品, Donnie Vie, Enuff Z' Nuff] | 固定リンク

2018年8月25日 (土)

ENUFF Z'NUFF『DIAMOND BOY』(2018)

2018年8月リリースの、ENUFF Z'NUFF通算14枚目(かな? 未発表曲集などの編集盤含めて)のスタジオアルバム。ドニー・ヴィ(Vo, G)在籍時のデモ音源などを含む前作『CLOWNS LOUNGE』(2016年)で、チップ・ズナフ(Vo, B)を中心にした新編成で本格的再始動を果たした彼ら。続く本作は、すべてチップ、トリー・ストッフリーゲン(G)、トニー・フェンネル(G, Key)、ダニエル・ヒル(Dr)という布陣で制作。もちろん、ボーカルはすべてチップが担当しています。

正直、チップの歌声にはドニーのような艶や危うさ(そこが“これぞフロントマン”的で良かったんですが)は皆無で、なんとなく録音の質感で“それっぽさ”は表現できているものの、ちょっとパンチに欠けるかな……楽曲のインパクトも以前と比べて弱めなだけに、歌が弱いと全体的にナヨナヨしたものに感じられちゃうんですよね。本当に勿体ない。

その楽曲も、インパクトは若干弱いものの、全体的にはよくできているほうではないかと。オープニングのSE「Transcendence」には少々驚くものの、続く「Diamond Boy」「Where Did You Go」は初期のグラムメタル然とした彼らをイメージさせるし、「We're All The Same」は王道のパワーポップ感がにじみ出ている。けど、歌がパッとしないから(以下同文)。

その後も初期っぽいヘヴィサイケロック「Fire & Ice」、ストレンジポップ風の「Down On Luck」、タイトルのわりにそこまでメタルっぽくない「Metalheart」、サイケバラード「Love Is On The Line」、豪快なハードロック「Faith Hope & Luv」、バラード調の「Dopesick」「Imaginary Man」と“惜しい”楽曲が並びます。悪くはないんですよ、どれもこれも。だって、ドニーが歌うだけでもうちょっと点数が高くなったと思うし。

本当に歌って大事。特にこの手のサウンドを信条とするバンドは、絶対に歌をごまかしちゃダメ。全部ラジオボイスみたいなエフェクトをかけて逃げようとするぐらいなら、もっとこのバンドに合ったフロントマンを見つけてこなくちゃ。それとも、過去の遺産(ENUFF Z'NUFFというバンド名さえあればやれること含め)を使ってミュージシャンとして延命したいだけなんでしょうかね、チップは。前作の録り下ろし曲「Dog On A Bone」は普通に録音してたぶん、まだよかったのに……。

ひどいことばかり書いているけど、本当に好きなバンドだからハードルを高く設定したくなるんですよ。ドニーを呼び戻すことが考えられないなら、本当にね、早急に歌える色気あるシンガーを捕まえてくること。チップが歌い続ける限り、100点は与えることはできないと思うな、自分。



▼ENUFF Z'NUFF『DIAMOND BOY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2018 08 25 12:00 午前 [2018年の作品, Enuff Z' Nuff] | 固定リンク

2018年8月24日 (金)

SHINEDOWN『ATTENTION ATTENTION』(2018)

2018年5月にリリースされた、SHINEDOWN通算6枚目のスタジオアルバム。3作目『THE SOUND OF MADNESS』(2008年)が初の全米TOP10入り(8位)を記録し、200万枚を超えるヒット作になったのを機に、以降の作品はすべて全米チャートで10位内に入っている彼ら。最新作も初登場5位というこう記録を残しています。

前作『THREAT TO SURVIVAL』(2015年)がポップな作風で、初期のガッツのあるサウンドを好むリスナーからは若干敬遠されがちでしたが、続く本作は本来のヘヴィさをモダンな質感にシフトさせた意欲作。それもそのはず、本作は心の中でささやく“悪魔”や忍び寄る不安と戦いながら生きる人々の様を時にヘヴィで引きずるようなサウンド、時には現代的なエレクトロサウンドを織り交ぜながら表現したコンセプトアルバムなのですから。

本作はブレント・スミス(Vo)を襲った精神的トラブルや心の葛藤がそのまま反映されていると言われています。アルバム冒頭を飾る「Devil」はまさにこのアルバムを象徴するような1曲で、先に挙げた「心の中でささやく“悪魔”や忍び寄る不安」を表現したもの。「Kill Your Conscience」ではSNSによって行動が縛られた現代人への怒りが綴られ、「Get Up」はうつ病に苦しむ人たちへ向けた応援歌、「The Human Radio」では自分の真実のために戦い続けることを歌い、「Brilliant」では心の強さで恐怖に打ち勝った瞬間が描かれている。もうこれだけで……ブレントに何が起こったのか、想像に難しくありません。

では、このようなテーマがどういったサウンドで表現されているかというと……意外とネガティヴすぎないんですよね。もちろんヘヴィでダーク、悲哀に満ちたサウンドもところどころで登場しますが、モダンな色付けを用いつつもしっかり光が感じられるのです。要するに、冷たくない。人工的な味付けをしていようが、どこかに必ず人の温もりが感じられるのです。いわゆるポスト・グランジ勢の中でも彼らが頭ひとつ飛び抜けた存在なのは、こうした「ネガティヴを享受して、聴き手にポジティヴを与える」ところに秘密があるのかもしれませんね。

デビューアルバム『LEAVE A WHISPER』(2003年)を初めて聴いたときは、正直アメリカでこんなに大きな存在になるなんて想像もしていませんでした。だけど、こうやっていろんなものを受け止めて前に進んできた彼らだからこそ、今の地位があり、このアルバムがある。ここ日本での評価は決して高くはありませんが(なにせ、2015年8月に初来日が実現したばかりですから)、この意欲作を携えた再来日にもぜひ期待したいところ。よろしくお願いします!



▼SHINEDOWN『ATTENTION ATTENTION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 08 24 12:00 午前 [2018年の作品, Shinedown] | 固定リンク

2018年8月23日 (木)

NICKELBACK『DARK HORSE』(2008)

2008年11月にリリースされたNICKELBACK通算6枚目のスタジオアルバム。前作『ALL THE RIGHT REASONS』(2005年)が全米だけで1000万枚を超えるメガヒット作となり、6曲ものUS TOP100ヒットシングルを生み出すという、まさにDEF LEPPARDにおける『HYSTERIA』(1987年)的な1枚となったわけですが、続く本作『DARK HORSE』は全米1位こそ逃したものの(最高2位)、アメリカだけで売り上げ300万枚を超え、前作同様に6曲ものヒットシングルを送り出しています。

先に“DEF LEPPARDにおける『HYSTERIA』的な1枚”と触れましたが、このアルバムではそのLEPPSで知られるロバート・ジョン・マット・ラングをプロデューサーに迎えて制作。ロバートはソングライティングにも数曲携わり、まさに“こういうのが作りたかったんだ!”という思いがまっすぐ伝わってくる力作に仕上がっています。

「Something In Your Mouth」のようにガッツのあるハードロックから始まり、そのままスポーツのスタジアム観戦にもピッタリな「Burn It To The Ground」と“いかにも”なサウンドメイキングのロックナンバーが続きますが、キャッチーなメロディを持つミディアムチューン「Gotta Be Somebody」やパワーバラードと呼ぶにふさわしい「I'd Come For You」、ゴリゴリに攻めるメタリックな「Next Go Round」、エモーショナルなマイナーチューン「Just To Get High」などなど、とにかくバラエティに富んだ良曲がズラリと並んでいます。

その曲も一寸の隙も感じさせない、しっかり作り込まれており、このきめ細やかさ(いや、異常な執着ぶりと言ったほうが正しいか)に“ロバート・ジョン・マット・ラングのプロデュース作品”らしさが強く表れています。『HYSTERIA』はもちろんですが、ブライアン・アダムス『WAKING UP THE NEIGHBOURS』(1991年)にも通ずるものがある1枚かもしれません。

しかし、これれら過去の名盤と明らかに違うのが、アルバム全体が非常にコンパクトだということ。全11曲で43分というバランス感が、このアルバムをより親しみやすいものにしているのは間違いないと思います。

肩の力が抜けたラストナンバー「This Afternoon」ですら、思いっきり作り込みが感じられるあたり、リラックスして楽しんで……とは言いにくいですが(苦笑)、ヘッドフォンでがっつり、あるいはドライブのお供として爆音で楽しむには最適の1枚ではないかと思います。実は、『ALL THE RIGHT REASONS』よりも好きな作品だったりするんですよね、個人的に。



▼NICKELBACK『DARK HORSE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 08 23 12:00 午前 [2008年の作品, Nickelback] | 固定リンク

2018年8月22日 (水)

CHUCK BERRY『HAIL! HAIL! ROCK'N'ROLL』(1987)

1987年に制作・公開されたライブ/ドキュメンタリー映画『ヘイル!ヘイル!ロックンロール』のサウンドトラック的ポジションにあたる、チャック・ベリーのライブアルバム。ちゃんと音源を聴いたことがない人でも、チャック・ベリー=「Johnny B. Goode」の人、という構図は自然と浮かんでくるはず。僕もそのひとりで、さらに「ビートルズストーンズが初期にカバーした人」といった程度の知識で、実はこのアルバムを通して初めてチャック・ベリーという人にちゃんと触れ、映画(というかビデオ)で初めて動く姿を目にしたのでした。

この映画は、チャック60歳の誕生日をお祝いするライブイベントを、彼を敬愛するキース・リチャーズがプロデュースしていく流れが収められたもので、さてどんなレジェンドの一挙手一投足が見られるのか、と楽しみにしていると……その期待が木っ端微塵に打ち砕かれます。

なんだよ、ただの偏屈ジジイじゃねえか、と(笑)。

リハーサルにもちゃんと参加しない、キースがうまく進めようとするといちゃもんをつけるチャックの姿は、ダックウォークでギターをプレイする伝説的な姿とは真逆にあるもので、チャックの前ではあのキースも子供に見えてしまうのですから、本当に面白いものです。ぜひアルバムと同時に、この映画のほうもチェックしていただきたいです。良くも悪くも、ロック史に残る名ドキュメント作品ですので。

ですが、そんなチャックもライブ本番はきっちりこなすわけです。この、良い意味でのテキトーさが、長きにわたり愛され続けた所以……とは思いたくないですが、アルバムで聴けるロッククラシックの数々と、そのチャックを支えるキースを中心としたバンドたち(ドラムにスティーヴ・ジョーダン、キーボードにチャック・リーヴェルという布陣はアレサ・フランクリンのときと同じ)に加え、ゲストプレイヤーとしてエリック・クラプトン、ロバート・クレイ、ゲストボーカルでエタ・ジェイムズ、ジュリアン・レノン、リンダ・ロンシュタットが参加。リンダ・ロンシュタットの力強い歌声や、クラプトンらしいブルージーなギタープレイ、さらには父親ジョン・レノンそっくりな歌声で「Johnny B. Goode」を歌うジュリアンなど、聴きどころ満載です。

チャック・ベリーってどれから聴けばいいの?とお悩みのあなた。遺作となった『CHUCK』(2017年)でもベストアルバムでもいいですが、僕は単なる映画のサントラでは終わらない、ここでしか聴けない豪華なコラボ&名演が詰まった本作をオススメしたいと思います。後半の名リフ連発っぷりは、ただただアガりっぱなしですから。



▼CHUCK BERRY『HAIL! HAIL! ROCK'N'ROLL』
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投稿: 2018 08 22 12:00 午前 [1987年の作品, Chuck Berry, Eric Clapton, Keith Richards] | 固定リンク

2018年8月21日 (火)

THE ROLLING STONES『THROUGH THE PAST, DARKLY (BIG HITS VOL.2)』(1969)

昨日の「Jumpin' Jack Flash」つながりで引っ張り出したのが、このアルバム。高校生の頃、これと『BIG HITS (HIGH TIDE AND GREEN GRASS)』(1966年)を同時購入し、初期のTHE ROLLING STONESをひたすら勉強しまくったのも、今となっては懐かしい思い出です。

本作は1969年9月に英米でリリースされた、通算2枚目のベストアルバム。タイトルからもわかるように、『BIG HITS (HIGH TIDE AND GREEN GRASS)』に続く第2弾ということで、ヒットシングルの数々がセレクトされています。

実はこのアルバム、英米同時リリースながらもそれぞれ選曲が異なるんですよね。60年代はTHE BEATLES同様、国ごとにオリジナルアルバムの選曲が少しずつ異なったり、本国では発売されていないアメリカ制作のアルバムがあったりと、いろいろ複雑なんですよね。

で、僕が購入したのは「Jumpin' Jack Flash」から始まるイギリス版の選曲のほう(『BIG HITS (HIGH TIDE AND GREEN GRASS)』はもともとアメリカ制作だったのですが、のちに異なる選曲のイギリス版も発売。こちらも僕が購入したのはイギリス版選曲のほうです)。

イギリス版のほうは選曲が非常に興味深く、基本的には1967〜69年のサイケデリック期の楽曲が中心。「2000 Light Years From Home」や「We Love You」「She's A Rainbow」「Dandelion」といった楽曲はこの当時ならではといえるもので、そこに初期の「You Better Move On」やフォーキーな「Sittin' On A Fence」、サイケデリック期と南部ロック期の間にある「Street Fighting Man」、70年代ストーンズの兆しが見え始めた「Honky Tonk Women」が入り乱れてと、バンドとしての過渡期ぶりが凝縮されているんですよね。

このへんのどっちつかずな感じもストーンズらしいと思うし、こんななんだからそりゃあ70年代後半以降のディスコやらダブやら、あらぬ方向に進んでしまうのも致し方ないのかなと。ストーンズを80年代半ばから聴き始めた後追い世代としてはそう思うわけです。

ちなみに、「Paint It Black」から始まるアメリカ版のほうも後から聴いてみたのですが、やっぱりしっくり来ないんですよね。もうね、「Jumpin' Jack Flash」のあとに「Mother's Little Helper」が来る流れがする込まれてしまっているので。こればかりはどうにもなりません。

今でこそCD複数枚でキャリアを総括するベストアルバムは当たり前ですけど、アナログ盤ならではの曲数(12曲程度で40分前後)は手軽に聴けて、しかもリピートしやすいので“ながら聴き”には最適。いやあ、良質なベストアルバムですよこれは。



▼THE ROLLING STONES『THROUGH THE PAST, DARKLY (BIG HITS VOL.2)』
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投稿: 2018 08 21 12:00 午前 [1969年の作品, Rolling Stones] | 固定リンク

2018年8月20日 (月)

ARETHA FRANKLIN『ARETHA』(1986)

1986年10月にリリースされた、アレサ・フランクリン通算34枚目のスタジオアルバム。アルバムの大半を前作『WHO'S ZOOMIN' WHO?』(1985年)を手がけたナラダ・マイケル・ウォルデンが、2曲のみアレサ自身が、そして1曲だけキース・リチャーズTHE ROLLING STONES)が担当。前作の全米13位(ミリオン)には届かなかったものの、本作も全米32位まで上昇し、50万枚以上売り上げています。特に本作からは、ジョージ・マイケルとのデュエット曲「I Knew You Were Waiting (For Me)」が全米1位の大ヒットとなったほか、「Jumpin' Jack Flash」(全米21位)、「Jimmy Lee」(全米28位)、「Rock-A-Lott」(全米82位)という数々のヒットシングルが生まれています。

僕自身、初めて手に取ったアレサ・フランクリンのアルバムが本作でした。当時中学生だったものの、ストーンズのキースとロニー・ウッドをゲストに迎えた「Jumpin' Jack Flash」のカバー(当然キースがプロデュース)は、原曲とは異なるスローなテンポで、なおかつソウルテイストが強まったクールなアレンジで、MVともどもヘビロテした記憶があります。この曲でドラムを叩いているのが、のちにキースのバンドに加わるスティーヴ・ジョーダン。キーボードはストーンズのサポートでおなじみのジャック・リーヴェルだし、本当にオールスターバンドによる豪華なカバーなんですよね。

この1曲聴きたさに手にしたアルバムでしたが、オープニングを飾る「Jimmy Lee」(今聴くと時代を感じますね)、WHAM!解散後のジョージ・マイケルが華やかな歌声を聴かせてくれる「I Knew You Were Waiting (For Me)」と、とにかくポップさが際立つアルバムではないかと。いかにもなソウルバラード「Do You Still Remember」も当時は非常に大人っぽさを感じつつ、背伸びしながら聴いていました。懐かしい。

アナログB面は派手なディスコチューン「Rock-A-Lott」を皮切りに始まるも、ゆったりしたリズムのソウルチューン「An Angel Cries」、ストリングス&ブラスをフィーチャーしたゴスペルナンバー「He’ll Come Along」、ラリー・グラハムとのデュエット「If You Need My Love Tonight」など、全体的に落ち着いた印象。ラストはブロードゥエイミュージカル『フィニアンの虹』から「Look To The Rainbow」のカバーでしっとり幕を下ろします。

1986年当時の僕は、とにかくMTVで気になった曲があったらジャンル問わず、まずはアルバムをレンタルして聴くことが習慣になっていました。このアルバムもその延長だったのですが、ストーンズやジョージ・マイケルといった取っ付きやすさがあったおかげで、すんなり入っていけました。今となってはアレサ・フランクリンの魅力はここじゃないことは承知しておりますが(笑)、それでも記憶の片隅にはいつもこのアルバムが存在していました。そりゃあ、『LADY SOUL』(1968年)とか聴いたほうがわかりやすいですけどね。それでも、気づけばこの週末はこのアルバムばかり聴いていたのですから……まあ、こうしてここで取り上げるのも自分なりのトリビュートになってるのかな。



▼ARETHA FRANKLIN『ARETHA』
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投稿: 2018 08 20 12:00 午前 [1986年の作品, Aretha Franklin, George Michael, Keith Richards, Rolling Stones] | 固定リンク

2018年8月19日 (日)

HARDLINE『DOUBLE ECLIPSE』(1992)

昨日のスティーヴ・ペリーの項で触れた元JOURNEY組(ギターのニール・ショーン、キーボードのジョナサン・ケイン)が結成したBAD ENGLISHですが、1991年8月に2ndアルバム『BACKLASH』をリリースしてすぐに解散。ニールと、同バンドのドラマーだったディーン・カストロノヴォはジョニー(Vo)&ジョーイ(G)のジョエル兄弟と意気投合し、デヴィッド・リー・ロスのツアーなどに参加したトッド・ジェンセン(B)の5人でHARDLINEというバンドを結成するのでした。

本作は、1992年4月にリリースされたデビューアルバム。プロデュース自体をニール自身が担当しており、ソングライティングに関してもジョエル兄弟とともに行っております。

ここ日本では本作収録曲の「Hot Cherie」が先行して名曲扱いされ、このイメージで語られることの多いバンドかもしれませんが、アルバム自体は「Hot Cherie」のように哀愁味あふれる泣きのハードロックとは異なる、カラッとした王道アメリカンハードロック風味で仕上げられています。

オープニングの「Life's A Bitch」や続く「Dr. Love」など、重量感のあるミディアムテンポがいかにもアメリカンハードロック的ですし、アコースティックギターを用いたバラード「Change Of Heart」もJOURNEY時代のピアノバラードやBAD ENGLISHでのパワーバラードと比べたらケレン味の薄い作風と言えるでしょう。

しかし、本作がそれでも名作と呼ばれるのは「Hot Cherie」1曲のせいだけではなく、こういった良質のハードロックナンバーを、的確な演奏とジョニー・ジョエルという新たな可能性を持つシンガーが歌っていることも大きいのではないかなと。とにかく、ジョニーの歌が非常に良いのですよ。BON JOVIほどクセが強くなく、だけど胸に響く歌心が感じられる。そしてポップにもハードにも歌いこなせるその実力に、「本当にこれ、無名の新人?」と思わされたものです。

個人的には「Rhythm From A Red Car」や「Everything」「Bad Taste」のようなハードロックチューン、「Can't Find My Way」みたいなバラード、「I'll Be There」的な壮大さを持つミディアムナンバーがお気に入り。もちろん「Hot Cherie」も素晴らしいですけどね。

とにかく、JOURNEYやBAD ENGLISHとはまた異なる、良質のアメリカンハードロックバンドであることは間違いありません。ただ、ニールはこのアルバム1枚でとっとと脱退してしまうのですが(苦笑)。それにより、バンドも解散するのですが、1999年には再結成を果たしており、現在はジョニーのみが残りバンドを継続しています。



▼HARDLINE『DOUBLE ECLIPSE』
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投稿: 2018 08 19 12:00 午前 [1992年の作品, Hardline, Journey] | 固定リンク

2018年8月18日 (土)

STEVE PERRY『FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE』(1994)

1994年7月にリリースされた、元JOURNEYのフロントマンであるスティーヴ・ペリーの2ndソロアルバム。ソロ作品としては前作『STREET TALK』(1984年)からおよそ10年ぶり、スティーヴが参加したスタジオアルバムとしてもJOURNEYの『RAISED ON RADIO』(1986年)以来8年ぶりと、ファンにとってはまさに待望の新作でした。

事実、当時JOURNEYに大した思い入れのなかった僕ですら、「おお、久しぶりに!」と真っ先に飛びついたくらいですから。

ニール・ショーン(G)やジョナサン・ケイン(Key)といったJOURNEY組は1989年にBAD ENGLISHとして再デビューしてブレイクを果たしましたが、スティーヴは自身が先にバンドから離れたにも関わらず、このアルバムまでかなりの時間を要しています。

プロデュースに当たったのはスティーヴ本人と、ジェイムズ・ジンボ・バートン(QUEENSRYCHE、TRIXTER、LITTLE ANGELSなど)、ゴスペル/R&B系シンガーソングライターのティム・マイナーの3人。作品自体、このメンツからも想像できるような高品質の産業ハードロックとR&Bテイストの歌モノロックが入り混じった、我々が想像する“JOURNEYのスティーヴ・ペリー”らしい1枚に仕上がっています。

1曲目の「You Better Wait」のオープニングに感じられる讃美歌調のアレンジ、そこから流れるように突入するメロディアスハードロックサウンドに、当時は歓喜したものです。だって、1994年といえばカート・コバーン(NIRVANA)の急逝はあったものの、シーンはまだまだグランジまっただ中、かつヘヴィでラウドな音楽がもてはやされる時期でしたから。

ミディアムテンポでAOR寄りのハードロック/ハードポップと、じっくり聴かせるミディアム/スローバラードの数々。新しい要素はこれといって見受けられませんが、終始安心して聴ける1枚。各楽曲、非常に手の込んだ完成度の高いものです。『ESCAPE』(1981年)から『RAISED ON RADIO』までのJOURNEYらしさも至るところから感じられますし、ファンなら間違いなく気に入る作品集ではないでしょうか。特に後半の盛り上げで重要な役割を果たす壮大なバラード「Missing You」と、ラストの大人びたスローナンバー「Anyway」は涙なしには聴けない1曲なはずです。

ですが、スティーヴの歌声……最初に聴いたときは、その“枯れ”っぷりに驚きを隠せなかったことも、記しておかねばなりません。最近公開された24年ぶりの新曲「No Erasin'」を聴いて、さらなるその“枯れ”っぷりに時の流れを感じたものですが(とはいえ、すでにスティーヴも69歳。そりゃあ衰えますよ)、それを最初に感じたのはこのアルバムだったな、と久しぶりに本作を聴いて思い出しました。

上記のような時代背景や、8年ぶりの音源などといった不安要素があったものの、本作は全米15位、50万枚を超えるヒットとなりました。また、「You Better Wait」(全米29位)、「Missing You」(同74位)というシングルヒットも生まれています。このアルバムを携え、ソロとしての来日公演も予定されていましたが、二度目のJOURNEY脱退理由にもなった退行性骨関節疾患のために実現せず。その後、JOURNEY再結成などいろいろありながらも、ソロとしては3作目となる『TRACES』(2018年)が完成するまでには、さらに24年もの歳月を要するのでした。



▼STEVE PERRY『FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE』
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投稿: 2018 08 18 12:00 午前 [1994年の作品, Journey, Steve Perry] | 固定リンク

2018年8月17日 (金)

NIGHT RANGER『BIG LIFE』(1987)

1987年春にリリースされたNIGHT RANGERの4thアルバム。前々作『MIDNIGHT MADNESS』(1983年)のミリオンヒットおよび「Sister Christian」(全米5位)や「When You Close Your Eyes」(全米14位)のシングルヒット、続く前作『7 WISHES』(1985年)のトップ10入り(全米10位)および「Sentimental Street」(全米8位)、「Four In The Morning」(全米19位)、「Goodbye」(全米17位)といったバラードシングルのヒットで、“産業ロック”やら“バラードバンド”やら揶揄され続けた彼ら。そんな彼らが「俺たちはれっきとしたロックバンド。次はハードにキメる!」と宣言してから制作に向かったのが本作『BIG LIFE』でした。

前3作を担当したパット・グラッサーから、全盛期のJOURNEYEUROPE『THE FINAL COUNTDOWN』(1986年)、のちにMR. BIGの諸作品を手がけるケヴィン・エルソンにプロデューサーを交替。さらに映画『摩天楼はバラ色に(原題:THE SECRET OF MY SUCCESS)』のサウンドトラックに提供した同タイトル曲「The Secret Of My Success」のみ、CHICAGOなどで知られるデヴィッド・フォスターとの共作&プロデュースで完成させた本作は、確かに“バラードバンド”の汚名を払拭させるくらい、ドラマチックでトータルバランスの取れたハードロックアルバムに仕上がっています。

が、そこまでハードなのか?と問われると、答えに困ってしまうのも事実。オープニングを飾る「Big Life」や続く「Color Of Your Smile」の持つ激しさからは確かにハードロックバンドらしさが感じられますが、と同時にやはり彼らはメロディアスでポップが信条のバンドであることも浮き彫りになっており、そこは生まれ持った性なのかな、消しようがないのかなと。けど、それこそが彼ら最大の個性にして魅力なのだから、ねえ。

そういった意味では、先にも書いたように本当にバランス感に優れているのですよ。正直、大ヒットした過去2作よりもそのバランス感は高いと思いますし、個々の楽曲も非常に考えて作り込まれたものばかり。バラードタイプの楽曲にしても、これまでのシングルヒットやラジオヒットを狙ったキャッチーでコンパクトなものから、「Rain Comes Chrashing Down」や「Hearts Away」みたいにハードロック特有のドラマ性を意識して制作されたものへとシフトチェンジ。それがこのアルバムに合っているんですよね。だからこそ嫌いになれないし、意外と聴く頻度の高い1枚だったりします。

シンセの使い方などに時代を感じるものの、ハードさ/ポップさのバランス感は随一。HR/HMとAORの良いとこ取りみたいな楽曲も多く、それでいて1987年というUS HR/HMブーム元年らしさも存在する。残念ながら全米28位でゴールドディスク(50万枚)と前作、前々作には及ばず、シングルも「The Secret Of My Success」の全米64位と「Hearts Away」の全米90位とヒットに恵まれず、本作をもってアラン・フィッツジェラルド(Key)はバンドを脱退してしまうのでした。



▼NIGHT RANGER『BIG LIFE』
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投稿: 2018 08 17 12:00 午前 [1987年の作品, Night Ranger] | 固定リンク

2018年8月16日 (木)

HEART『BAD ANIMALS』(1987)

1987年6月にリリースされた、HEART通算9作目のスタジオアルバム。ロン・ネヴィソン(オジー・オズボーンEUROPE、SURVIVOR、KISSなど)を迎えた前作『HEART』(1985年)でシングル/アルバムともに初の全米No.1を獲得し、本格的な大復活を遂げたHEARTですが、続く本作ではその延長線上にある非常に高品質かつエレガントなハードロックアルバムを提供してくれました。

80年代半ばに入り、いよいよアメリカでのHR/HMブームが本格化していく中、HEARTはロン・ネヴィソンという“わかっている”人をブレインに、適度なハードさと適度な甘さ、ポップさを兼ね備えたバランスの良いヒット作を作り上げましたが、いよいよブームに突入した1987年、バンドはそのハードさと甘さ/ポップさの両軸のうち後者へと傾倒し始めます。

その結果が、先行シングルにして最大のヒット曲となった(全米1位のみならず、この年のBillboard年間チャート2位に君臨した)「Alone」や、「Who Will You Run To」(全米7位)、「There's The Girl」(全米12位)、「I Want You So Bad」(全米49位)といったポップサイドの楽曲群ではないでしょうか。この4曲すべてが外部ライターの手によるもの(「There's The Girl」のみ、この曲を歌うナンシー・ウィルソンの名もクレジット)であり、アルバム全体でも10曲すべてに職業作家がソングライティングに携わっています。

もちろん、バンドがメインになって書いたであろうヘヴィな「Bad Animals」なども含まれており、こういった楽曲がアルバム内でも良いアクセントにはなっているものの、本作の軸は間違いなくポップでメロウな楽曲たち。そこにクリアで高品質なサウンドが組み合わさることで、いよいよCDを中心としたデジタル時代へと足を踏み入れた音楽業界において、かなりクオリティの高いハードロックアルバムを完成させた……そういった意味で、本作の果たした役割は非常に大きなものがあると思います。特に本作と同じ年に発表されたKISSの『CRAZY NIGHTS』と、翌年リリースのEUROPEの4thアルバム『OUT OF THIS WORLD』(1988年)は、80年代後半のロン・ネヴィソン・ワークスにおける重要作と言えるでしょう。

ですが、激しさを求めるリスナーには本作はちょっと不向きかもしれません。ドラマチックな「Alone」や「I Want You So Bad」、アルバムラストを飾るにふさわしい「RSVP」などバラード系楽曲にばかり耳が行き、疾走感のあるハードロック皆無な本作は、前作を気に入った人にはちょっとインパクトは弱いかも。もちろん、アルバムとしての完成度は異常に高いので、今聴いても存分に耐えうる内容なのですが……。このバンドに何を求めるかでその評価が大きく逆転する、ある種の問題作かもしれませんね。



▼HEART『BAD ANIMALS』
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投稿: 2018 08 16 12:00 午前 [1987年の作品, Heart] | 固定リンク

2018年8月15日 (水)

JOURNEY『REVELATION』(2008)

2008年6月に海外で(日本では同年10月に)リリースされた、JOURNEY通算13枚目のスタジオアルバム。前任のスティーヴ・オージェリー(Vo)に代わり、新たに加入したフィリピン・マニラ出身の新人シンガー、アーネル・ピネダを迎えて制作された第1弾作品となります。

また、本作はバンドにとって初の2枚組スタジオ作品となり、DISC 1が新曲で構成された純粋な新作(1曲のみ前作『GENERATIONS』収録曲のリテイク)、DISC 2は代表曲の数々をアーネル・ピネダのボーカルでレコーディングした再録ベストアルバムとなっています(さらにUS盤限定の付属DVDには、同編成でのライブ映像を収録)。ボリューミーながらも豪華な内容ということもあり、本作は前作の170位を大きく上回る全米5位にランクイン。現在までに100万枚以上を売り上げるヒット作となりました。

アーネルの歌声は、バンドの全盛期を支えたスティーヴ・ペリー(Vo)の歌声にそっくりということもあり、ある種“クリカン版『ルパン三世』”と同じようなイメージを持つ人も多いかもしれません。がしかし、アーネルが加入してすでに12年以上経っており、ここ日本のロックファンの間でも彼の存在は浸透したと言い切ってもいいでしょう。

確かにモノマネ上手かもしれませんが、スティーヴ・ペリーよりも太く、深みのある歌声は若干疲れ果てていたバンドに新たな潤いを与えたことは間違いありません。結果、本作のDISC 1に収録されている新曲の大半は、初めて聴くはずなのに「あれ、以前も聴いたことある?」と思えてしまうくらい、どこをどう切り取ってもJOURNEYの楽曲そのもの。しかも、そのクオリティが単なる焼き直しレベルで終わっておらず、耳に残るものばかりなのです。

また、随所随所には過去の名曲のフレーズが散りばめられていて、思わずニヤリとしてしまう場面も多いですしね。ぶっちゃけ、1996年の復活作『TRIAL BY FIRE』(1996年)以降の作品で、もっとも“らしい”内容で、かつ完成度の高い1枚ではないでしょうか。

そして、DISC 2ですが……サントラ収録曲「Only The Young」から始まり、そのまま「Don't Stop Believin'」「Wheel In The Sky」という流れ……そう、これって彼らのベストアルバム『GREATEST HITS』(1998年)の構成をなぞったものなんですよね。まったく一緒というわけではなく、元が15曲のところを11曲に減らし、しかもオリジナル盤にはなかった「Stone In Love」をピックアップしていたりと、アーネルや今のバンドのスタンスに合わせた選曲がなされているのではないんでしょうか。そこも含めて、『GREATEST HITS』とはまた違った楽しみ方ができるはずです。

ニール・ショーン(G)の弾きまくりっぷりもハンパないし、ディーン・カストロノヴォ(Dr)のヘヴィヒッターぶりも存分に楽しめる。バンドとしてフレッシュさを取り戻しつつも、しっかり円熟味も感じさせてくれる、強烈なアルバムだと思います。



▼JOURNEY『REVELATION』
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投稿: 2018 08 15 12:00 午前 [2008年の作品, Journey] | 固定リンク

2018年8月14日 (火)

QUEENSRYCHE『EMPIRE』(1990)

1990年9月にリリースされたQUEENSRYCHEの4thアルバム。前作『OPERATION: MINDCRIME』(1988年)が全米50位止まりながらも、「I Don't Believe In Love」や「Eyes Of A Stranger」のラジオヒットを受けて100万枚をヒット作となり、満を持して発表された次作『EMPIRE』は全米7位、300万枚以上もの好セールスを記録しました。また、本作からは「Silent Lucidity」(全米9位)というヒットシングルも生まれ、ほかにも「Empire」「Jet City Woman」などがラジオヒットとなりました。

プログレッシヴロックの影響下にあるテクニカルなヘヴィメタル。QUEENSRYCHEにはそういったイメージがありましたが、特に『OPERATION: MINDCRIME』はコンセプトアルバムだったこともあり、そのイメージがさらに強まったと思います。そんな彼らが、これに続く『EMPIRE』で示したのは、良い意味での“ヘヴィメタルバンドからの脱却”だったのではないでしょうか。

もちろん、聴けばHR/HMの範疇にあるサウンドなのですが、そのひんやりとしていてモダンなスタイルは、ヘヴィメタルというよりはハードロックと呼ぶほうがぴったり合うのではないでしょうか。彼らは続く『PROMISED LAND』(1994年)、『HEAR IN THE NOW FRONTIER』(1997年)でグランジやオルタナティヴロックのテイストを強めていき、完全にヘヴィメタルバンドからの脱却に成功しますが、この『EMPIRE』はその間にある過渡期的1枚と言えるかもしれません。

しかし、過渡期とは言うもののその内容・完成度には目を見張るものがあり、ある意味では前作『OPERATION: MINDCRIME』以上のクオリティと言えるでしょう。RUSHほどテクニカルではなく、DREAM THEATERほどメタリック、ドラマチックではない。その適度さがこのアルバムの魅力であり、HR/HMブームとグランジブームの間(はざま)を象徴するような作風と言えるのではないでしょうか。

個人的には「Della Brown」や「Anybody Listening?」といったスローナンバー、エモーショナルさが本作の中でも際立つ「Jet City Woman」「Another Rainy Day (Without You)」、そしてひんやりとしたヘヴィロック「Empire」あたりがお気に入り。もちろん、シングルヒットしたバラード「Silent Lucidity」も嫌いじゃありません。

『OPERATION: MINDCRIME』はストーリー性が強いせいもあり、頭から最後まで通して聴かなくちゃ……的な使命感が強い1枚でしたが、この『EMPIRE』は個々の曲にストーリーがあるものの(しかもその物語が、銃規制や環境問題などシリアスなものが多い)、単曲で気楽に楽しめる作品集ではないかなと。とはいえ、作風のシリアスさもあって、そこまで気楽に楽しめるといった感じでもないんですけどね。



▼QUEENSRYCHE『EMPIRE』
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投稿: 2018 08 14 12:00 午前 [1990年の作品, Queensryche] | 固定リンク

2018年8月13日 (月)

GOTTHARD『G.』(1996)

スイスの4人組ハードロックバンド、GOTTHARDが1996年初夏にリリースした3rdアルバム。日本ではデビューアルバム『GOTTHARD』(1992年)の時点でそこそこ人気を集めていましたが、個人的にどハマりしたのがこの3作目から。単にアルバム発売後のツアーから元KATMANDUのマンディ・メイヤー(G)が加入したから、というのも大きかったのかもしれませんね。

オープニングの「Sister Moon」のブルージーなハードロックサウンドが特にツボで、かと思えば「Mighty Quinn」(ボブ・ディランのカバー)みたいなスタジアムロック的なアレンジの楽曲もある。そして「Let It Be」みたいにしっかり聴かせるミディアムバラードや、「Father Is That Enough?」のようなスローバラード、「One Life, One Soul」みたいなアコースティックナンバーもある。

当然それだけじゃなくて、ハードロックバンドらしいガッツにあふれた「Fist In Your Face」や、疾走感に満ちたマイナーコードの「Ride On」、ブギーのリズムが心地よい「Lay Down The Law」、VAN HALEN的なハードブギー「Hole In One」もある。そう、アルバムとしてのバランス感が非常に優れているんです。

ただハードなだけではなく、しっかり聴かせる要素も強い。その“聴かせる”側の比重が急激に大きくなり出したのが、このアルバムなのかなと。1曲1曲がしっかり練られていて、B級っぽさ皆無。スティーヴ・リー(Vo)というシンガーの力量も幅広い楽曲群によってより発揮される結果となったし、ソングライターにしてギタリストのレオ・レオーニの才能も突出していることが伺える。貶すところが一切ないんですよね。

ちょうどWHITESNAKEタイプのバンドに飢えていた時期でもあったので、そこにこのアルバムが飛び込んできたらストライクだった……たったそれだけの理由かもしれませんが、あのタイミングに出会ってなかったら気に入っていなかったかもしれない。正直、彼らの作品でここまでどハマりしたのはこれ1枚のみ。そこが不思議なんですよね。そう思うと、出会いのタイミングって本当に大切なんだなと思うわけです。

スティーヴ・リーは2010年、交通事故で帰らぬ人となってしまいましたが、バンドはオーディションの末、新ボーカリストを迎えて活動を継続中。機会があったら近作にも手を出してみようと思います。もしかしたら、タイミング的に再びどハマりすることもあるかもしれませんしね。

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▼GOTTHARD『G.』
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投稿: 2018 08 13 12:00 午前 [1996年の作品, Gotthard] | 固定リンク

2018年8月12日 (日)

THUNDER『SHOOTING AT THE SUN』(2003)

2002年に再結成を果たしたTHUNDERが、2003年3月に日本先行で、海外では翌月4月に発表したのがこの『SHOOTING AT THE SUN』というアルバム。通算6枚目のオリジナルアルバムとなりますが、当初は日本盤と同時期にオフィシャルサイトでオンライン販売されるのみという、再結成したものの単なるファンアイテムなんじゃ……くらいのプライオリティでリリースされました。要するに、この再結成自体も意気込んで「またやってやるぞ!」というよりも「うまくいったらマイペースに続けていこうかな?」くらいのテンションだったんでしょうね。

前年には4曲入りEP『BACK FOR THE CRACK』(2002年)がここ日本でも発売されていますが、本作はその延長線上にある1枚。アルバムにはEPから「The Pimp And The Whore」「Somebody Get Me A Spin Doctor」「Blown Away」の3曲が収録されているのですが……地味。とにかく地味で玄人好みでブルース/ソウルテイスト満載のハードロックが展開されています。

オープニングを飾る「Loser」こそ、往年のTHUNDERらしい豪快さが若干感じられますが、以降はFREEやBAD COMPANYあたりをより地味にしたような、とても『BACKSTREET SYMPHONY』(1990年)とは同じバンドとは思えないくらい(いや、よく聴けば同じバンドだと気づくけど)派手さが消えています。

何がそんなに地味なのかというと、きっとこれって演奏のメリハリとメロディラインによるものが大きいんだろうなと。演奏は決して弾き倒したりひとつの楽器だけ前に出ようとか、そういった欲がまったく感じられないし、ボーカルをバックアップするためだけに存在しているような、そんな印象すら受けます(本当はそんなことないとは思うけど)。

また、メロディラインも初期の頃のように高音で張り上げるようなものではなく、装飾による抑揚を極力削り落とし、歌の熱量だけでメリハリをつけるような、そんな表現方法に変化しています。これは解散前の最終作『GIVING THE GAME AWAY』(1999年)の時点ですでに見え隠れいていた手法なので、その延長と考えれば納得いくことでしょう。

にしても、「祝・復活!」的な盛り上げが一切ないのが、よくも悪くもこのバンドらしいといいますか。ま、だから好きなんですけどね。地味だ地味だと書き倒してきましたが、だから悪いわけではなく、むしろ「わかる人にはわかる!」最高の1枚だと確信しています。



▼THUNDER『SHOOTING AT THE SUN』
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投稿: 2018 08 12 12:00 午前 [2003年の作品, Thunder] | 固定リンク

2018年8月11日 (土)

FATE『A MATTER OF ATTITUDE』(1986)

デンマーク出身のハードロックバンドFATEが1986年秋に発表した2ndアルバム。このバンド、メンバーのハンク・シャーマン(G)が元MERCYFUL FATEのリードギタリストということで、バンド名のFATEも元いたバンドから一部拝借したものなんですね。MERCYFUL FATEというとキング・ダイアモンド(Vo)のイメージが強く、特に初期はブラックメタルのイメージもあったかと思います。

そのバンドでギターを弾いていた人間が新たに結成したこのバンド。メジャーのEMI / Capitol Recordsと契約していたという事実もすごいですが、この2枚目のアルバムで聴かせるその音も衝撃的です。

僕は当時、ラジオでオープニングナンバー「Won't Stop」を聴いてこのバンドの存在を知ったのですが、当然上記のような知識は一切ない中高生でしたので、普通に「EUROPEを能天気にしたようなバンドだな」くらいの印象しかありませんでした。いや、それ褒めているんですよ? ぶっちゃけ、このアルバムは日本盤も発売されていましたが、メタルに弱い田舎のCD屋には並ぶこともなく、FMからエアチェックしたカセットでひたすらこの1曲だけを聴きまくったものです。

で、最近Spotify上をサーフしていたら、このバンドにたどり着き「あ、いたいた!」と懐かしがってこの2作目を聴いてみたのでした。

「Won't Stop」は本作中でもっとも異色のアレンジ/曲調でした。ソロになるとやっとギターが目立つアレンジが、どこかVAN HALENの「Jump」を彷彿とさせますが、要は同曲や当時すでにヒットしていたEUROPEの「The Final Countdown」に影響されてシンセメインのポップな楽曲に挑んでみたんでしょうね。ま、僕みたいな人間がそこに釣られたのですから、あながち失敗でなかったようです。

というわけで、このアルバムの真の魅力は2曲目から。北欧のバンドらしく、マイナーキーを軸にした哀愁味の強いメロディアスハードロックが展開されていきます。バンドの編成にはシンセは含まないものの、レコーディングにはこれでもか!というくらいにシンセを多用。これが厚みのあるコーラスとともに良い味付けになっているんです。3曲目「(I Can't Stand) Losing You」や6曲目「Summerlove」なんて、ぶっちゃけ名曲じゃないですか?

なんて思っていると、後半には軽快なアメリカンロック調の「Farrah」や「Get Up And Go」を筆頭に、メジャーキーの曲がずらりと並ぶ。このバランス感、嫌いじゃないです。しかも、ラストにお遊びっぽい「Do It」まである。ああ、VAN HALENを北欧感覚でやろうとするとこうなるのかな、なんて思ったりして。

作品的にはハンク脱退後に発表された4thアルバム『SCRATCH 'N SNIFF』(1990年)の評価が高いようですが、ポップサイドに振り切ったこの2ndアルバムも素敵だと思います。ビバ!産業ハードロック。



▼FATE『A MATTER OF ATTITUDE』
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投稿: 2018 08 11 12:00 午前 [1986年の作品, Fate] | 固定リンク

2018年8月10日 (金)

SHADOW KING『SHADOW KING』(1991)

当時FOREIGNERを脱退したルー・グラム(Vo)が、同じくDIOWHITESNAKE〜RIVERDOGSと渡り歩いてきたヴィヴィアン・キャンベル(G)と結成したスーパーバンド、SHADOW KING。彼らが1991年10月(日本では同年11月)に発表した、唯一のアルバムが本作になります。

バンドのメンバーはルー、ヴィヴィアンのほか、ルーの旧友でのちにFOREIGNERにも加入するブルース・ターゴン(B)、KISSのレコーディングセッションに参加したり、のちにCINDERELLAなどに加入するケヴィン・ヴァレンタイン(Dr)の4名。キース・オルセン(FOREIGNER、オジー・オズボーン、WHITESNAKE、HEARTなど)をプロデューサーに迎え制作されたこのアルバムは、非常にクオリティの高い産業ハードロック/メロディアスハードロックの隠れた名盤です。

全10曲中、ヴィヴィアンが作曲に関わっているのはラストの「Russia」のみ(ルーとの共作)。それ以外のすべてがルーとブルースの共作で、ある意味ルー・グラムのソロアルバムやルー復帰後のFOREIGNERにも通ずる世界観が展開されています。いや、むしろこれ、80年代後半、『INSIDE INFORMATION』(1987年)以降のメロディアスハードロック路線のFOREIGNERじゃん。

ギターは要所要所で、確かにヴィヴィアンらしいプレイ(主にソロ)を楽しめますが、本作における最大の武器は良質のメロディとルーのパワフルなボーカル。WHITESNAKEでシンガーとギタリストのバトルに懲りたのか、はたまたRIVERDOGSでバランス感を学んだのか、ここでのギタープレイはかなり後ろに引いたものになっていて、そこだけは若干不満が残るかなと(ヴィヴが参加しているとわかっているから、余計に)。とはいえ、曲の良さやアルバムの完成度を前にすると、実はギターがそこまで重要ではないことに気づかされるわけですが。

この湿り気のあるマイナーキーと、要所要所に挿入されるシンセ。強く主張せず、バッキング(パワーコードやアルペジオなど)に徹するギター。それってもう、本当にFOREIGNERなんですよね。これを聴いたあとに、ルー復帰作となる『MR. MOONLIGHT』(1994年)を手にすると、あら不思議。同じバンドのように思えてくるのですから……。

ってくらい、このジャンルが好きな人なら絶対にハマる1枚。当時まったく話題にならなかったし売れもしなかったので、バンドはすぐに解散。翌1992年に入るとヴィヴはDEF LEPPARDに加入。ルーとブルースはFOREIGNERに加わり、ケヴィンはCINDERELLAへ……。なんだ、みんなこのバンドを踏み台にしてるんじゃないか(笑)。

そんな不運のバンド、この機会に触れてみてはいかがでしょう。



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2018年8月 9日 (木)

SALEMS LOTT『MASK OF MORALITY』(2018)

3年半前、本サイトでデビューアルバム『SALEMS LOTT』(2015年)を紹介して局地的に話題となったLAのグラムメタル/ヴィジュアル系(笑)バンド、SALEMS LOTTがついに待望の2ndアルバム(前作はミニアルバムでしたが)をリリースしました。今回もフィジカルでの一般流通はなさそうですが、デジタル配信&ストリーミングでここ日本でも聴くことができるので、大きな問題はないですね。よかったよかった。

彼らはそのルックス&ファッション、そして音楽性から「80年代のジャパメタ、主にX(X JAPAN)からの影響が強い」HR/HMバンドとして認識されていました(「いました」って、そこまで気にしていた人、ほとんどいないと思いますが)。が、あれから3年強が経ち、そのサウンドに少し変化が生じています。あれだけ前作を「80年代に活躍したバンドのアウトテイク」と揶揄した自分も、今回の新作を聴いて、まず1曲目の「Enigma」で驚かされました。

え、どうしたの? (前作よりも)めっちゃモダンなんですけど……(汗)。

全体的に80年代後半から90年代初頭ぐらいにまでバージョンアップされています。80年代半ばのジャパメタアウトテイクから大きく成長したな、おい!

でね。単なるコピー的な、個性のカケラも感じられなかった前作(ヒドイ言い草だ)から、一気に“らしさ”を確立させているから、驚いたわけです。そりゃね、MOTLEY CRUEっぽかったり、W.A.S.P.っぽかたり、どことなくX JAPANっぽかったりするところもありますよ。至るところから先人からの影響も見え隠れするのですが、今作ではそれが“コピー”や“真似っこ”ではなく“エッセンス”程度にとどめられている。しかも、ヴィジュアル系的な色合いもサウンドからはほぼ消えて、全体的に無理してない感じが素敵なんですよ。

そういった意味では彼ら、初期のBLACK VEIL BRIDESフォロワーと見られてもおかしくないんですが……そこまでも才能もないか(苦笑)。ま、だからこそ愛せる存在なんですけどね。

音質的にも、前作より多少良くなり、アルバム全編通して聴くに耐えうる程度にはなっている……かな。個人的にはもうちょっと頑張ってほしかったとも思うけど、これはこれでアリなのかな、と。

もし今、『VISUAL SUMMIT JAPAN』や『V-ROCK FESTIVAL』が存在したら、ぜひエントリーしてもらいたいバンドのひとつ。つうかさ、絶対にウケるでしょ? 「良い」ではなく「ウケる」ね。彼らこそ日本の洋楽メタルファンではなく、V系ヲタクに見つかってほしいんですどね。難しいかしら。



▼SALEMS LOTT『MASK OF MORALITY』
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投稿: 2018 08 09 12:00 午前 [2018年の作品, Salems Lott] | 固定リンク

2018年8月 8日 (水)

THE WHO『WHO'S NEXT』(1971)

1971年8月に発表された、THE WHO通算5作目のオリジナルアルバム。前作『TOMMY』(1969年)で示したコンセプチュアルかつシアトリカルな“ロックオペラ”スタイルを確立させ、初期のスタイルとは異なる個性を手に入れたTHE WHO。続くこのアルバムでは、初期の彼らが持っていたハードロックバンド的な側面が強調されています。

おそらく、本作の前に発表されたライブアルバム『LIVE AT LEEDS』(1970年)で示したライブバンドとしての爆発力、そこで表現されたハードロックバンド的な演奏スタイルも『WHO'S NEXT』という傑作に大きな影響を与えているはずです。結果、このアルバムは初の全英1位を獲得。アメリカでも前作同様の4位を記録し、アメリカだけでも300万枚を超える大ヒット作となりました。

興味深いのは、本作はバンド4人のサウンドのみならず、シンセサイザーやシーケンサーといった電子楽器が積極的に用いられていること。オープニングを飾る「Baba O'Riley」で常に流れているシンセのシーケンスは、非常に象徴的なサウンドといえるでしょう。特にこの曲と、ラストを飾る8分半におよぶ大作「Won't Get Fooled Again」はその色合いが強いものの、ハードロックバンドとしての豪快さは全く損なわれておらず、70年代前半の彼らにとって代表曲と呼べる作品ではないでしょうか。

そのほかにも、カントリー的な匂いが感じられる「Love Ain't for Keeping」や「Going Mobile」、ブラスをフィーチャーしたゴージャズな「My Wife」、ピアノやシンセの音色が心地よいミディアムナンバー「The Song Is Over」、ひんやりとしたアコースティックテイストからパワフルな展開をしていく「Behind Blue Eyes」など、聴きごたえの強い楽曲ばかり。なんだかんだで、彼らのオリジナルアルバムの中ではもっとも聴きやすくて好きな1枚かもしれません。

実は、本作をアルバム通してちゃんと聴いたのは、だいぶ大人になってからのこと。もともとTHE WHOってそこまで積極的に接してこなかったバンドで、代表曲をベストアルバムなどで掻い摘んで聴く程度。あとは、いろんなバンドがカバーしたもので原曲を知るみたいな。だからこのアルバムの収録曲に関しても、「Baba O'Riley」をMR. BIGで、「Won't Get Fooled Again」をVAN HALENで先に知ったという。で、アルバムをちゃんと聴いてからは、「Behind Blue Eyes」をLIMP BIZKITがカバーして「ああ、この曲知ってる!」となったり。その程度の知識なんです。申し訳ありません。



▼THE WHO『WHO'S NEXT』
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投稿: 2018 08 08 12:00 午前 [1971年の作品, Who, The] | 固定リンク

2018年8月 7日 (火)

DISTURBED『THE SICKNESS』(2000)

海外で2000年3月、日本では同年6月に発売されたDISTURBEDのデビューアルバム。同年10月にリリースされたLINKIN PARKのデビュー作『HYBRID THEORY』とともに、当時“ニューメタル”と呼ばれたシーンを飛躍させた立役者的作品で、全米29位まで上昇、現在までにアメリカだけで500万枚を超える売り上げに達しています。

プロデュースを手がけたのは、ENUFF Z' NUFFMACHINE HEAD、DROWNING POOLなどに携わってきてジョニー・K。今でこそヘヴィ系ではおなじみの名前ですが、意外にもこの手のバンドのプロデュースを担当したのは本作が初めてだったようです(それまではエンジニアとして関わるのみ)。本作が出世作となり、その後引き手数多な存在になったのでしょうね。

LINKIN PARKや、それ以前にヒットを飛ばしていたLIMP BIZKITのようにDJ(ターンテーブル)を含む編成ではない、正統的な4ピースバンドなのですが、それでも彼らが時代にフィットしたのはデヴィッド・ドレイマン(Vo)による“パーカッシヴな発声スタイル”と“しっかり歌えるフロントマン然とした佇まい”、そして旧来のHR/HMと90年代以降のグランジ、そしてヘヴィロックを通過した、個性的ながらも安定感の強い楽曲によるものが大きかったと思います。

直線的/タテ揺れの音楽性ではなく、あくまでヨコ揺れ。そこがアメリカ的だけど、オーソドックスなHR/HMとはどこか違う。だけど、聴けばそのヘヴィなサウンドはHR/HMと呼んでも問題ない。SYSTEM OF A DOWN、あるいはそれ以前のKORNにも通ずる個性的な歌唱スタイルは、そういったヨコ揺れな楽曲にとって良いアクセントとなる。そりゃあアメリカでウケるわけだ。しかも、ライブを観ればスタジアム映えするし。2002年だったか、彼らがサマソニで来日した際、そのパフォーマンスに圧倒された記憶が今でも鮮明に残っています(観客のウケは正直そこまで大きなものではなかったけど)。

とにかく冒頭4曲の流れが完璧。これだけでも聴いてもらいたいし、80年代のMTV世代にはTEARS FOR FEARSの名曲カバー「Shout」にもぜひ触れてほしい。彼らはその後も往年のヒットソングをカバーしているけど、その原点がこれなんですよね。

ニューメタルという単語に嫌悪感を示すHR/HMファンがいまだに残っているのかわかりませんが、あれから20年近く経った今だからこそ改めて触れてみてもいいんじゃないでしょうか。問答無用でカッコいいので、ぜひ大音量で、体を揺すりながら聴いてもらいたいです。



▼DISTURBED『THE SICKNESS』
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投稿: 2018 08 07 12:00 午前 [2000年の作品, Disturbed] | 固定リンク

2018年8月 6日 (月)

JOHN LENNON『IMAGINE』(1971)

1971年9月にリリースされた、ジョン・レノンの通算2作目となるオリジナルアルバム。英米ともに1位を記録し、シングルカットされた「Imagine」は全米3位のヒットとなりました(イギリスでは1975年にシングル化され6位)。代表曲と呼べるような曲が多く含まれている印象ですが、意外とシングル曲が少ないんですよね。

ポール・マッカートニーの脱退を受け、THE BEATLESは解散。そして発表された前作『PLASTIC ONO BAND』(1970年)は、良くも悪くもオノ・ヨーコの影響が強い内省的な内容でした。続く本作もその延長線上にある1枚と言えるのですが、どうしても表題曲「Imagine」のインパクトの強さ、そして同曲の神格化などもあり、世界平和を訴える壮大な作品と捉えられてしまいがちです。実際、「I Don't Want to Be A Soldier」や「Gimme Some Truth」なんて曲もあるし、そう受け取られても仕方ないのですが。

けれど、「Oh My Love」のような美しい楽曲や自分のことを“ただの嫉妬深い男”と表現する「Jealous Guy」、自身の生き様を綴った「It's So Hard」や「How?」、オノ・ヨーコに捧げた「Oh Yoko!」といったプライベートな楽曲も多く含まれている。さらには当時不仲だったポールへ向けた痛烈な批判が歌詞に込められた「How Do You Sleep?」のような曲まである(しかもその曲に、かつての盟友ジョージ・ハリスンやリンゴ・スターを迎えているあたりにも、ジョンの性格が表れていて面白い)。〈想像してごらん、争いのない世界を〉を歌う男が、同じ作品の中でかつての仲間を攻撃する。この矛盾こそ、実はもっともジョン・レノンという男らしいんじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。

聖人君子のような扱いを受けるけど、全然そんなことはないし、むしろ「Jealous Guy」のような側面があったり、「Oh My Love」でのロマンチシズムも持っていたり、「How Do You Sleep?」なんて人としての未熟さもストレートに表してしまう。この人間臭さに自分は惹かれるし、半分呆れつつも嫌いになれない。気づけばこのアルバムとも30年以上もの付き合いになるわけですが、ジョンのことを深く知れば知るほど、このアルバムの感じ方もその都度変わっていったわけです。

ちなみに今、僕がジョンのソロ楽曲の中で一番好きな1曲を挙げろと言われたら、迷わず「Oh My Love」を選ぶと思います。年取ると、どんどん保守的になるんですかね(苦笑)。

自分がこの世に生を受けた1ヶ月後に発売されたこのアルバム。今後も人生の節目のたびに、接していきたいと思います。



▼JOHN LENNON『IMAGINE』
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投稿: 2018 08 06 12:00 午前 [1971年の作品, John Lennon] | 固定リンク

2018年8月 5日 (日)

SLIPKNOT『ALL HOPE IS GONE』(2008)

2008年8月にリリースされたSLIPKNOTの4thアルバム。もう10年も経つんですね。その事実に驚きです……。

メンバーの不仲など解散の危機を経て完成にこぎつけた前作『VOL.3: (THE SUBLIMINAL VERSES)』(2004年)から4年ぶりに発表された本作は、プロデューサーをリック・ルービンからデイヴ・フォートマン(EVANESCENCE、MUDVAYNE、GODSMACKなど)に交代して制作。全米2位止まりだった前作を上回る、初の全米1位を獲得する記念すべき1枚となりました。

作風的には前作の延長線上にある、歌メロが際立つ楽曲スタイルが中心なのですが、そこに2ndアルバム『IOWA』(2001年)が持っていた凶暴性(狂気性ではなく)が若干復活し、ヘヴィロック/ラウドロックアルバムとしては正にお手本と呼べるような1枚に仕上げられています。

曲によってはブラストビートをフィーチャーしたりしており、ところどころに初期の衝動性が感じられますが、それも味付け程度といったところ。もちろんこのバンドにおける“怒り”は活動する上で必要な要素なのですが、本作に関してはあくまでキモはそこではないことは、聴けばおわかりいただけることでしょう。

メジャーデビューからまる10年経ち、大きな成功を手に入れた。活動ベースも初期のクラブやライブハウスから、今や世界各区のアリーナやスタジアムをヘッドライナーとして回っている。なんの不自由もない生活、欲しいものはなんでも手に入る人生。ある意味、この10年で彼らは人生の勝ち組にまで登りつめた。そんな人間が、「People = Shit」と素直に叫ぶことができるのか。もしかしたら、このアルバムで彼らはそういったことと向き合ったのではないでしょうか。

つまり、「ここから先もSLIPKNOTとして人生を続けることができるのか」。それは音楽のみならず、ライフスタイルという点においても。音楽という点では、個々がミュージシャンとして成長を重ねているが故の、音楽性の変化は致し方ない。そこを踏まえて、SLIPKNOTのスタイルをどう守っていくか、そのひとつの回答が本作でのバランス感なのかもしれません。そういう意味でも、本作が正統的なラウドロックアルバムに仕上がったのは正しい選択だったと、リリースから10年経った今も信じています。

ただ、ライフスタイルという点においてはメンバーによってバラツキが生じてしまった。その影響の表れのひとつが、本作リリースから2年後に起こったポール・グレイ(B)の急逝かもしれません。さらに、2013年末のジョーイ・ジョーディソン(Dr)脱退もそのひとつに数えられるでしょう。結果として、本作がデビュー時から続いた黄金期メンバーによる最後の作品となってしまいました。そう考えると非常に罪作りな1枚なのかもしれませんね……。



▼SLIPKNOT『ALL HOPE IS GONE』
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投稿: 2018 08 05 12:00 午前 [2008年の作品, Slipknot] | 固定リンク

2018年8月 4日 (土)

FIVE FINGER DEATH PUNCH『AND JUSTICE FOR NONE』(2018)

昨年12月発売のベストアルバム『A DECADE OF DESTRUCTION』を挟んで、『GOT YOUR SIX』(2015年)以来約3年ぶりに発表されるFIVE FINGER DEATH PUNCHの7thアルバム。プロデューサーは過去数作同様、バンドと好ダッグを組み続けるケヴィン・チャーコ。2枚目のアルバム『WAR IS THE ANSWER』(2009年)から6作連続で全米TOP10入り(最高4位)を果たすなど、改めてこのバンドの本国での人気ぶりを証明する結果を打ち立てました。

彼らはデビューからまだ11年と、キャリアのわりにアルバムをしっかり発表し続けており、成功も早い段階から掴んでいる、今のアメリカンHR/HMシーンの中では非常に稀有な存在です。また、彼らは非常にアメリカという国に密着した活動を続けており、例えば日本をはじめ世界各地の米軍基地で慰問ライブを行うなどして、ファンを拡大し続けており、そういった地道な活動がファンベースの拡大に一役買ったのは間違いありません(同じことは HALESTORMにも言えますが)。

また、ニューメタル以降のHR/HMバンドながらもブルースやカントリーなどの土着的サウンドをベースに持つところも、どこか日本における演歌っぽさがあり、それも親しみやすさにつながっているのでしょう(逆に言えば、そこが日本人には馴染みが薄いポイントでもあるわけですが)。

この新作でもそのスタイルは引き継がれており、正直特別新しい要素は皆無なのですが、そういった頑固一徹さもバンドのキャラクターとしての“男らしさ”につながっていると受け取ることもできます。もちろん、「Fire In The Hole」のような(音楽ジャンルとしての)クラシカルなカラーを持つ楽曲も含まれているし、THE OFFSPRINGのカバー「Gone Away」なんていうのもあったりするので、それなりに“新しい何か”に挑もうとする姿勢はゼロではないわけですが。とはいえ、やっぱり耳を引きつけられるのは、デラックス盤のオープニングを飾るニューメタル的な「Trouble」であったり、枯れたロックバラード「I Refuse」といった従来の彼ららしい楽曲なんですけどね。

むしろ、このスタイルを変えずに10年続けている事実がすべてであって、これこそが今の王道アメリカンHR/HMなのだ、と胸を張って言い切ることができる。もうそういう地点に到達しているのではないでしょうか。昨年のベストアルバムでひと区切りをつけたように思われたけど、ここから10年も変わらずこのスタイルを守っていく(もちろん、時代時代で新しさも少しずつ取り入れながら)……その意思表明が、アルバムタイトルの『AND JUSTICE FOR NONE』(アメリカ合衆国の「忠誠の誓い」に出てくる「Liberty and justice for all」をもじったもので、METALLICAの名盤『...AND JUSTICE FOR ALL』のパロディでもあるのかなと)にも表れているような気がします。

まあ、なにはともあれ。これこそが今のアメリカなんでしょうね、良くも悪くも。僕はもちろん“良くも”のほうで受け取っていますけど。まあ、あれだ。日本に来る機会が極端に少ないバンドなので、もっとしっかりライブをやってほしいわけです、ここ日本でも。それだけでも、だいぶイメージが変わると思うので。そこだけはぜひお願いしたいです。このアルバムの楽曲だって、ライブで映えるナンバーがたくさんあると思いますので。



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投稿: 2018 08 04 12:00 午前 [2018年の作品, Five Finger Death Punch] | 固定リンク

2018年8月 3日 (金)

HALESTORM『VICIOUS』(2018)

オリジナルアルバムとしては前作『INTO THE WILD LIFE』(2015年)から3年3ヶ月ぶりとなる、HALESTORM通算4作目のスタジオアルバム。プロデューサーは前作のジェイ・ジョイスから、最新カバーEP『REANIMATE 3.0: THE COVERS EP』(2017年)を担当したニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINSMASTODONKORNなど)に交代。EPでの仕事ぶりに好印象を受けた結果がこの新作に反映されているということなのでしょう。

作風は基本的に『INTO THE WILD LIFE』の延長線上にあるのですが、自分が想像していた以上にタフさ、ヘヴィさが際立つ1枚に仕上がった印象があります。実は前作をリリース当時に聴いたとき、そこまで強く惹きつけられず、数回聴いてしばらく放ったらかしだったのですが、今回はリード曲「Uncomfortable」からグッと惹きつけられ、リリースの1ヶ月近く前から取材用に聴いたアルバムサンプルでさらにグッと惹きつけられ、結果「これはなかなかな1枚!」とかなりお気に入りだったのです。このバンドのアルバムでここまで聴き込みまくったのは初めてってくらいに。

ヘヴィさが印象的ながらも、同時にメロディの冴え渡りぶりも前作以上。だからなのか、演奏がどれだけ重々しくなろうと、軸にあるものは非常にキャッチーだと思えてくる。そういった点から、昨今のモダンなラウドロックよりも80年代のHR/HM黄金期のそれに近く、我々オッサン世代にも引っかかるものが多々あるのでは、なんて思うのです。でも、もしかしたら若い世代にはこれ以前の作品のほうが引っかかるのかな。そのへんの意見、ぜひ各世代に聞き回りたいものです。

また、5曲目「Do Not Disturb」あたりを筆頭に、「Conflicted」「Killing Ourselves To Live」「Heart Of Novocaine」といった中盤に配置された楽曲群がかつてないほどにドラマチックな展開を見せており、そのあたりにHALESTORMとしての新境地も見え隠れしています。冒頭のヘヴィさといい、この展開といい、個人的にはこのバンド、まだまだ伸びしろ十分だなと思うのですが、どうでしょう? このバンドらしさをしっかりと残しつつも、新たな地点へと毎回到達でいているという意味では、作品ごとに異なるカラーをしっかり提示できている。そこもこのバンドの凄みなのかなと思いました。

とにかく今は、早くライブで聴きたいなと。そういうアルバムではないでしょうか。こういうアルバムに出会うと「アメリカの HR/ HMシーン、まだまだ捨てたもんじゃないな!」と、改めて実感します。ロック不毛と言われる時代だからこそ、思いっきり売れてほしい!



▼HALESTORM『VICIOUS』
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投稿: 2018 08 03 12:00 午前 [2018年の作品, Halestorm] | 固定リンク

2018年8月 2日 (木)

CONVERGE『BEAUTIFUL RUIN』(2018)

今年6月末に突如デジタルリリース&ストリーミング配信開始となった、CONVERGEの最新EP。トータルで7分に満たない、ショートチューン4曲で構成された勢い重視の1枚です。

ジャケットのテイストなどからもなんとなく想像できるように、本作は昨年11月にリリースされた5年ぶりのアルバム『THE DUSK IN US』と同時期にレコーディングされた、いわばアウトテイク集のようなもの、と言えるかもしれません。

アルバムでは長尺のミディアムヘヴィナンバーや叙情性の強いメロウナンバーなどを用意することで、これまでのCONVERGEの作品から頭ひとつ抜き出た異色作といったイメージを与えてくれましたが、このEPにはそういった要素は皆無。頭を空っぽにして、この激情まみれの爆音に浸ることができるはずです。

もうね、このEPに関してはこれ以上説明はいらないかなと。言葉よりもまず音。何か語っているうちに4曲あっという間に終わってしまうので。気を抜かずに接してほしいです。

『THE DUSK IN US』のレコーディングに際し、アルバム未収録曲が5曲残っているようなことを、リリース当時のインタビューでメンバーが語っており、そのうちの1曲「Eve」はアルバムからのリードシングル「I Can Tell You About Pain」にカップリングとして収録済み(この7分強もあるダークでカオティックな大作は、Spotifyなどストリーミングサービスでも聴くことができます)。

残る4曲がどういった形でリリースされるのか、はたまたこのまま発表されずじまいなのか、それは神のみぞ知るといったところでしたが、まさかこういう形でサプライズリリースされるとは思ってもみませんでした。

これで『THE DUSK IN US』関連の音源はすべて世に出たことになります。いまだ実現しない同作の日本盤発売、そして来日公演。ぜひ今後日本盤を発表することが実現した際には、ぜひEPなどの5曲を別添えにした“コンプリートエディション”にしてもらいたいところです。『THE DUSK IN US』に関してはすでに輸入盤CD、アナログ盤を購入済みですが、ちゃんと国内盤も購入しますので。よろしくお願いします。

にしても、改めて。『THE DUSK IN US』発売から9ヶ月近く経ちましたが、まだまだ色褪せない傑作だなと。そして、5曲のアウトテイクを通して再び『THE DUSK IN US』に戻ると、またこの作品の個性が際立つのではないかと思うのです。まだ聴いていないというリスナーがいましたら、悪いことは言いません。今すぐ聴きなさいって。もちろん、できるだけ大音量でね。



▼CONVERGE『BEAUTIFUL RUIN』
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投稿: 2018 08 02 12:00 午前 [2018年の作品, Converge] | 固定リンク

2018年8月 1日 (水)

DEAFHEAVEN『ORDINARY CORRUPT HUMAN LOVE』(2018)

前作『NEW BERMUDA』(2015年)から約3年ぶりの新作となる、DEAFHEAVENの4thアルバム。前作は海外から半年遅れの2016年夏に日本盤がソニーからリリースされましたが(フジロック出演が決定したのも大きかったのかな)、本作は海外でのリリースから1ヶ月近く経った現在も日本盤発売の知らせは届いておりません。残念極まりないですね。

本作に関しては海外でのリリースに先駆けて聴く機会を得ており、この2ヶ月くらいひたすら聴きまくっていました。ポストブラックメタルだとかブラックゲイズだとかいろんなサブジャンルに括られる機会の多い彼らですが、本作ではその色を残しつつもネクストレベルに到達したことを存分にアピールする意欲作となっています。

アルバムは穏やかかつ牧歌的、そこに壮大さも兼ね備えたメジャーキーの「You Without End」からスタートします。正直、この曲を最初に聴いたときは腰を抜かすほど驚きました。だって、オープニングから滑らかなピアノとギターの音色に乗せて、女性のポエトリーリーディングが始まるのですから。けど、途中から加わるいつものスクリームが聴こえてくると、ちょっとホッとする自分がいたりして……落ち着かないですよね、いざ「DEAFHEAVENの新作を聴くぞ!」と意気込んだのにこのオープニングだったとしたら(笑)。

もちろん、このアルバムは「You Without End」で展開されるテイストがすべてではありませんが、作品全体を通して多幸感やロマンティシズムに満ちているのも事実。ブラックゲイズ的な手法で始まる「Honeycomb」にしても、途中からメジャー展開に突入しますし。

確かにDEAFHEAVENの過去作に耳を傾けると、これまでもそういったテイストは含まれていました。ただ、ここまで徹底してこのスタイルが追求されたのはこれが初めてではないでしょうか。明と暗の対比が際立つのはもちろんのこと、静寂と轟音、メロディとスクリーム……さらには現実と非日常まで、そういった対となるものが絶妙なバランスで並列し、そこから織りなされるサウンドスケイプは圧巻の一言だと思います。初期のダークさを伴うスタイルも好きですが、前作『NEW BERMUDA』を経てここに到達したことを考えると、改めてすごい進化を遂げたなと実感します。

イギリスの小説家グレアム・グリーンの『情事の終わり』(同作は『ことの終わり』のタイトルで映画化されています)から引用されたアルバムタイトルや、アルゼンチンの作家フリオ・コルタサルの作品からインスパイアされた歌詞など、人間が内に秘める激情とメランコリックさがとことん追求されたこのアルバムは、まるで架空の映画のサウンドトラックのようでもあり、あるひとりの人間が見る白昼夢に対するサウンドトラックでもある。そんな、生活に根付いた作品に思えてきます。いやあ、これは傑作だ。



▼DEAFHEAVEN『ORDINARY CORRUPT HUMAN LOVE』
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投稿: 2018 08 01 12:00 午前 [2018年の作品, Deafheaven] | 固定リンク