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2018年9月 2日 (日)

THE WiLDHEARTS『¡CHUTZPAH!』(2009)&『¡CHUTZPAH! JNR.』(2009)

2009年8月にリリースされたTHE WiLDHEARTSの6thオリジナルアルバム。不完全かつ不本意な形で発売された『FISHING FOR LUCKIES』(1994年)、カバーアルバム『STOP US IF YOU'VE HEARD THIS ONE BEFORE, VOL. 1』(2008年)を含むと、通算8枚目のスタジオアルバムということになります。

また、本作は海外盤と日本盤とで仕様が異なったり、アルバムのアウトテイクで構成されたEP『¡CHUTZPAH! JNR.』(2009年)があったりといろいろ複雑なので、この項でひとまとめに解説していきたいと思います。

まず、本作はジンジャー(Vo, G)、C.J.(G, Vo)、リッチ(Dr, Vo)、そしてスコット・ソーリー(B, Vo)という『THE WILDHEARTS』(2007年)、『STOP US IF YOU'VE HEARD THIS ONE BEFORE, VOL. 1』と同じ布陣で制作。レコーディングはデンマークで行われ、ジェイコブ・ハンセン(VOLBEAT、PRETTY MAIDS、AMARANTHEなど)がプロデューサーを務めました。

本作の特徴は、前作『THE WILDHEARTS』で少しだけ復活した“バンド感”が一気に向上していること。これは同じメンツで長い時間を過ごしてきたことと、直近のカバーアルバムで原点回帰したところも大きかったのかもしれません。

そして、もうひとつ。これまでの半音下げ(E♭)から全音下げ(C)にチューニングを変更したこと。これにより、楽曲の質感がよりヘヴィかつモダンで(どことなく)シャープになった印象を受けます。特にオープニングを飾る「The Jackson Whites」や「Plastic Jebus」「Time Smith」といった楽曲は、このダウンチューニングの恩恵をもろに受け、独特の輝きを見せています。

さて、ここからは各アルバムの仕様についてです。


①『¡CHUTZPAH!』オリジナル盤

全10曲入りでトータル36分。上に書いたように「The Jackson Whites」からスタートし、エレクトロでハードコアでドラマチックなタイトルトラック「Chutzpah」で幕を下ろす構成です。確かに全体的にヘヴィでモダンですが、メロディラインは前作『THE WILDHEARTS』のそれよりもかなり練られている印象が。「You Are Proof That Not All Woman Are Insane」みたいに“いかにも”なひねくれアレンジもあれば、ピアノバラード!?と驚かせておいてハードな展開をみせる「Low Energy Vortex」、軽快なポップロック「You Took The Sunshine From New York」、ストレートなロックンロール「Mazel Tov Cocktail」など“らしい”楽曲満載です。

先に“バンド感”に触れましたが、その要因として作曲にジンジャー以外のメンバーも積極に携わっていること、「The Only One」ではスコット・ソーリーがリードボーカルを担当していることが挙げられるでしょう。個人的にはスタンスが『ENDLESS, NAMELESS』(1997年)にもどこか似ている印象を受けました。もっとも、サウンドの質感や表現したいことは似ているようで異なるんですが。

THE WiLDHEARTSがバンドとして、いよいよ本気を出した……と当時はワクワクしたものですが、ご存知のとおり彼らはこのアルバム以降、新作をリリースしていません。そこも『ENDLESS, NAMELESS』に似ていたりして(苦笑)。

コンパクトで聴きやすく、ヘヴィだけどポップ。このバンドの真髄が現代的な形で表現された、後期の良盤ではないでしょうか。


②『¡CHUTZPAH!』日本盤

イギリス(オリジナル)盤とほぼ同時期にリリースされた日本盤は、全14曲入りで48分というボリューム。オープニングに1分にも満たないアップチューン「Chutzpah Jnr.」が配置され、そこから「The Jackson Whites」「Plastic Jebus」へと続きます。それ以外はオリジナル盤8曲目「You Took The Sunshine From New York」と9曲目「Mazel Tov Cocktail」の間に、「Zeen Requiem」「All That Zen」「People Who Die」(THE JIM CARROLL BANDのカバー。原曲はGUNS N' ROSESがライブ開演前に流していたり、映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』のエンディングテーマにも使用されました)の3曲が追加されています。

これらの新曲4曲は同年12月にバンドのUKツアー会場で販売されたEP『¡CHUTZPAH! JNR.』収録曲。僕は日本盤をまず最初に購入したので、この②の曲順を当たり前のように受け入れ、「おおっ、ショートチューンから入ってヘヴィでモダンな楽曲へと続く構成、カッコいい!」と素直に感じていました。この曲順も悪くない。

ただ、後半……特に追加された3曲が余計だと思ってしまったのも事実。のちに①を購入して聴いてみたら、こっちのほうがスッキリしていて聴きやすい。まあ一長一短ありますよね。

曲数が多い日本盤のほうがいいか、コンパクトなオリジナル盤を選ぶかは、その人次第。まあ機会があったら、両方試してみてください。

ちなみに、ストリーミング(Spotify、Apple Music)には①のみ置かれています。



▼THE WiLDHEARTS『¡CHUTZPAH!』
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③『¡CHUTZPAH! JNR.』

上に書いたように、海外では2009年末にライブ会場およびオフィシャルサイト限定で、ここ日本では『¡CHUTZPAH!』のオリジナル盤(①)との2枚組仕様で『¡CHUTZPAH! –DELUXE EDITION-』と題して2010年5月にリリースされています。

収録曲は②に追加された新曲4曲のほか、オフィシャルサイトで無料配信された「The Snake, The Lion, The Monkey And The Spider」や、「Vernix」「Under The Waves」「Some Days Just Fucking Suck」の全8曲。トータルで26分、EPというよりはミニアルバムと呼んだほうが正しいかもしれません。

まあ、アルバム本編からは漏れた8曲ということで、曲順などはそこまで練られていません。オープニングこそ②と同じショートチューン「Chutzpah Jnr.」始まりですが、続いて彼らならではのヘンテコアレンジな「The Snake, The Lion, The Monkey And The Spider」、さらにポップなメロディのロックナンバー「All That Zen」、8分の6拍子かと思いきや、途中で何度も転調を迎える「Vernix」、BOOM BOOM SATELLITESを思い出させてくれるデジロック「Under The Waves」など、アルバム『¡CHUTZPAH!』以上にクセの強い楽曲ばかり。ああ、確かにこれはあのアルバムに入れたら浮くわな。

アルバム単位では印象的な作風ではないものの、1曲1曲は非常に考えられた“らしい”ものばかり。彼らに一度でもハマったことがあるリスナーなら聴いておいて間違いない1枚です。


▼THE WiLDHEARTS『¡CHUTZPAH! JNR.』
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以上、長くなりましたが、これが『¡CHUTZPAH!』に関連する一連の作品群となります。良い子は最後に触れた『¡CHUTZPAH! –DELUXE EDITION-』を購入しておけば間違いないと思うよ。けどこれ、限定リリースなので現在は廃盤。店頭で新品を見つけたら即買いですし、中古でもときどき見かけるので根気よく探してみてください。


▼THE WiLDHEARTS『¡CHUTZPAH! -DELUXE EDITION-』
(amazon:日本盤CD

投稿: 2018 09 02 12:00 午前 [2009年の作品, Wildhearts, The] | 固定リンク