THERAPY?『INFERNAL LOVE』(1995)
1995年6月にリリースされた、THERAPY?のメジャー3rdアルバム(日本では同年7月、アメリカでは翌1996年1月発売)。チャート/セールス的に大成功を収めた前作『TROUBLEGUM』(1994年)から1年半という短いスパンで制作された本作では、プロデューサーにアル・クレイ(THE WiLDHEARTS、REEF、フランク・ブラックなど)を迎え、さらに曲と曲をつなぐサウンドエフェクトをクラブ系アーティストのデヴィッド・ホルムスが担当。ポスト・グランジ的なザクザク感と疾走感が印象的だった前作とは異なる、ムーディで閉塞感の強いダークな作品を作り上げることに成功しています。
イギリス国内ではブリットポップ・ムーブメントが勃発し、猫も杓子も“第二のOASIS”、“新たなBLUR”を求め続けた1995年。そんな中、THERAPY?はもうひとつの新たなムーブメント……UNDERWORLDやTHE PRODIGYが築き上げようとしていたエレクトロミュージックの世界へと接近……というほどでもないですが、旬なDJ(デヴィッド・ホルムス)を迎えることで、彼らの根底にあるダークでゴシックな世界観をより強化させました。もともと、彼らのメロディにはそういった影の部分が備わっていましたし、そこに特化したアルバムを作ろうと考えることは、ごく自然な流れだったのでしょう。
前作で得た手応えから、バンドはストリングスやホーンセクションを導入することにもまったく躊躇しません。リードシングル「Stories」のブラスなんて、最初に聴いたときはひっくり返りましたけど(笑)、今では「これがないと物足りない」と感じるくらいには馴染みましたし、「Bowels Of Love」や「Diane」のストリングスも絶対に必要な要素だと断言できるくらい重要ですしライブでの再現よりも、アルバムとしての完成度を考えた結果の選択肢。僕は全面支持したいな。
楽曲面でも、前作にあった陽の要素は完全に消え失せ、全編マイナーコードの切ないメロディばかり(メジャーコードの「Bad Mother」ですら物悲しく聴こえてくるし)。そういった楽曲を盛り上げる曲間のサウンドエフェクトは、確かに賛否あると思います。実はこれ、日本盤ではすべてカットされているんですよね。普通に1曲終わったらすぐ次の曲という具合に。リリース当時、僕は日本盤を購入して、ずっとそれを聴いてきたものですから、数年前にデラックスエディションが発売された際にリマスター盤の『INFERNAL LOVE』で初めてサウンドエフェクト入り(オリジナルのイギリス盤)を聴いたときには「……えっ?」と驚いたものです。
もちろん、日本盤のような聞かせ方も悪いわけではなく、最初に聴いたのがこっちだったらこれが当たり前になるわけですし。でも、作者の意図を考えたら、正解はイギリス盤のエフェクトありのほうなんですよね。最近はもっぱらオリジナル盤のほうばかりを聴いているので、完全にそっちに馴染みましたが(ストリーミングに置かれているのは、オリジナル盤のほう)。
ちなみに、本作でチェロを弾いていたマーティン・マッカリック(ex. SIOUXSIE AND THE BANSHEES)はそのまま本作のツアーに参加し、のちにギター&チェロ担当でバンドに加入。THERAPY?は次作『SEMI-DETACHED』(1998年)から4人編成バンドとして活動していくことになります。
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