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2018年10月 1日 (月)

ANTHRAX『STATE OF EUPHORIA』(1988)

1988年9月発売の、ANTHRAX通算4作目のスタジオアルバム。前作『AMONG THE LIVING』(1987年)が初の全米トップ100入り(62位)を記録したことで人気バンドの仲間入りを果たした彼らですが、続く本作はついに全米30位とトップ40入り。前作同様にアメリカだけで50万枚以上を売り上げるヒット作となりました。

プロデューサーを前作のエディ・クレイマーからマーク・ドッドソン(JUDAS PRIESTSUICIDAL TENDENCIESMETAL CHURCHなど)へ交代し、エンジニアに1stアルバム『FISTFUL OF METAL』(1984年)や2ndアルバム『SPREADING THE DISEASE』(1985年)に関わったアレックス・ペリアラス(METALLICATESTAMENTOVERKILLなど)が復帰するなど、最高の布陣で制作された本作、悪いわけがありません。

前作から導入したプログレッシヴな展開を含むアレンジはさらに激化。カバー曲「Antisocial」と短尺インスト「13」以外はすべて5分以上あり、オープニングの「Be All, End All」は6分半、「Who Cares Wins」は7分半という大作になっています。また、スラッシュメタルというよりは複雑な曲展開が用意されたスピードメタル的な要素が強まっており、スラッシュメタル度は前作よりも若干落ちるかもしれません。

とはいえ、我々がイメージする“ANTHRAXらしさ”は満載で、『AMONG THE LIVING』が好きな人なら一発で気にいる内容ではないかと思います。

とはいえ、すべてが良いとは言い切れないのも本作の特徴。複雑な展開を用いているとはいえ、全体的なイメージがちょっと直線的すぎる気もします。だからなのか、リリース当時は数回聴いて飽き始めた……という記憶も残っています。深みがない、コクが弱いと言ってしまえばそれまでですが、“ANTHRAXにしては”若干弱いのは確か。ほかのスラッシュメタルバンドと比べたら、クオリティははるかに高いものがあるとは思うのですが。

あと、それに関連していわゆる“キメ曲”が少ないのも弱さの一端なのかなと。だって、本作を代表する楽曲と言われたら、誰もがカバーの「Antisocial」を挙げるでしょうし、本作から今でも頻繁にライブで演奏する楽曲もそれくらいだし(時点で「Be All, End All」だろうけど、こっちはもっと頻度が低いし)。

音楽的/作家性としては、本作あたりから極まり始めているんですよね。ホームレスを題材にした「Who Cares Wins」や、当時アメリカで話題になっていたテレビ宣教師をネタにした「Make Me Laugh」(オジー・オズボーン「Miracle Man」と同じ題材ですね)などの社会派楽曲は次作『PERSISTENCE OF TIME』(1990年)への布石といえるし、小説や映画を題材にした楽曲(スティーヴン・キング『ミザリー』がネタの「Misery Loves Company」、デヴィッド・リンチ『ブルー・ヴェルヴェット』からインスパイアされた「Now It's Dark」)あたりは『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)へと続いていくし。そういった意味では、初期の路線と90年代以降の路線をつなぐ、過渡期の1枚なのかもしれませんね。

個人的な思い出は、リリース時期もあってか高校の修学旅行の移動中によく聴いた記憶が。彼らの全キャリアの中でもっとも聴く頻度の低い作品でしたが、こうやって久しぶりに聴いたら意外と良かったのも嬉しい発見かも。

あ、本作は10月5日に30周年記念エディションとして、シングルB面曲や秘蔵デモ音源をコンパイルした2枚組仕様がリリース予定です。これから聴くという人は、こちらを手にしてみてはどうでしょう?



▼ANTHRAX『STATE OF EUPHORIA』
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投稿: 2018 10 01 12:00 午前 [1988年の作品, Anthrax] | 固定リンク