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2018年10月31日 (水)

2018年10月のお仕事

2018年10月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※10月31日更新)


[WEB] 10月31日、「BUBKA WEB」にて乃木坂46梅澤美波×阪口珠美×山下美月 座談会「若様の背中に憧れて」の序文が公開されました。

[WEB] 10月31日、「リアルサウンド」にてLittle Glee Monsterのインタビュー「Little Glee Monsterが語る、ワールドワイドな活動で得たもの「願望だったものが決意に変わった」」が公開されました。

[紙] 10月31日発売「ブブカ」2018年12月号にて、乃木坂46梅澤美波×阪口珠美×山下美月、けやき坂46金村美玖×河田陽菜×丹生明里 各座談会を担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 10月24日発売「TV Bros.」2018年12月号にて、吉澤嘉代子『女優姉妹』、折坂悠太『平成』、中村佳穂『AINOU』、スカート『遠い春』の各ディスクレビューを執筆しました。(Amazon

[WEB] 10月16日、「リアルサウンド」にて=LOVEのインタビュー「=LOVEが語る、アイドル意識の高まりとプロデューサー指原莉乃への尊敬と信頼」が公開されました。

[WEB] 10月15日、DIR EN GREY 10th ALBUM『The Insulated World』特設サイトにアルバムレビューを寄与しました。

[WEB] 10月10日、「MTV JAPAN」公式サイトにて「MTV VMAJ 2018 -THE LIVE-」ライブレポートが公開されました。

[WEB] 10月10日、「激ロック」ポータルサイトにてKen Yokoyamaインタビューおよび『Songs Of The Living Dead』レビューが公開されました。

[紙] 10月10日配布開始のフリーマガジン「激ロックマガジン」2017年10月号にて、Ken Yokoyamaインタビューを担当・執筆しました。

[WEB] 10月9日、「リアルサウンド」にてNGT48のインタビュー「NGT48 加藤美南&荻野由佳&本間日陽&山口真帆&奈良未遥が語る、“新体制”以降の充実」が公開されました。

[WEB] 10月7日、「リアルサウンド」にてX JAPANのコラム「X JAPANは今もドラマを更新し続けるーー“無観客ライブ”決行した一夜を振り返る」が公開されました。

[紙] 10月4日発売「日経エンタテインメント!」2018年11月号にて、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」を構成・執筆、乃木坂46齋藤飛鳥インタビュー、映画「あの頃、君を追いかけた」の長谷川康夫監督インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 10月2日発売「ぴあ MUSIC COMPLEX(PMC) Vol.11」にて、WANIMA埼玉メットライフドーム公演の舞台裏ドキュメントを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 10月1日発売「ぴあ Movie Special 2018 Autumn」にて、山田裕貴×齋藤飛鳥インタビューを担当・執筆しました。(Amazon


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また、9月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1809号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

投稿: 2018 10 31 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

MARILYN MANSON『SMELLS LIKE CHILDREN』(1995)

1995年10月にリリースされた、MARILYN MANSONのEP。デビューアルバム『PORTRAIT OF AMERICAN FAMILY』(1994年)と、続くメガヒット作『ANTICHRIST SUPERSTAR』(1996年)をつなぐという意味でも、またバンドがブレイクを果たすという点においても非常に重要な1枚となっています。

EPとはいいながらも、16曲(トラック)も用意されており、トータルランニングは54分超え。ボリューム的には完全にフルアルバムのそれなのですが、なぜ本作をEP扱いにしたのか、その理由は16トラック中歌モノが8トラック、うち4トラックが前作『PORTRAIT OF AMERICAN FAMILY』収録曲のリミックス、1トラックは『PORTRAIT OF AMERICAN FAMILY』収録曲のリテイクバージョン、残り3トラックは新録のカバー曲という内訳だから。ほかの8トラックは曲をつなぐSEやコラージュ的インストとなっています。

ですが、これがオリジナルアルバム並みに楽しめる内容でして。どんよりとしたダークさが全体を覆い、SEを多用したことにより聴きようによってはホラー映画のサウンドトラックのようにも聞こえる。その作風がMARILYN MANSONというバンド、およびマリリン・マンソン(Vo)のキャラクターを見事に表しており、本作で日本デビューを飾ったという点においてはそのイメージ作りに大きな貢献を果たしたのではないでしょうか。

そうそう、本作には現在まで必ず演奏されているEURYTHMICS「Sweet Dreams (Are Made Of This)」の名カバーが収録されているほか、初期のライブには欠かせなかったパティ・スミス「Rock 'N' Roll Nigger」、スクリーミン・ジェイ・ホーキンス「I Put A Spell On You」と、ダークで彼ららしいアレンジが施されたカバーが楽しめます。

リミックスも原曲を知らなければ「こういうものなんだ」と思ってしまうほどに自然な作り。新録のカバー曲含め、MARILYN MANSONの次章が大いに期待できるものであることが、この1枚から存分に感じられるはずです。

それもこれも、デビュー時からのプロデューサーであるトレント・レズナー(NINE INCH NAILS)とのコラボレーションが見事にハマったからこそ。のちの不仲を考えると、このあたりから『ANTICHRIST SUPERSTAR』くらいまでがまさに奇跡のタイミングだったのかもしれませんね。

本作はEPながら全米31位という好記録を樹立(前作はチャートインせず)。ミリオンセールスを記録しています。続く『ANTICHRIST SUPERSTAR』での大ブレイクへの下地が、ここで完全に出来上がったわけです



▼MARILYN MANSON『SMELLS LIKE CHILDREN』
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投稿: 2018 10 31 12:00 午前 [1995年の作品, Marilyn Manson] | 固定リンク

2018年10月30日 (火)

PANIC! AT THE DISCO『PRAY FOR THE WICKED』(2018)

2018年6月にリリースされた、PANIC! AT THE DISCO通算6枚目のスタジオアルバム。初の全米No.1を記録した前作『DEATH OF A BACHELOR』(2016年)から2年半ぶりの新作で、引き続き今作も全米1位を獲得しています。

前作からブレンドン・ユーリー(Vo)のソロ体制となったPANIC! AT THE DISCOですが、そのアルバムではソロだからこそなし得た「エレクトロ+サンプリング+ソウルフルな歌モノ」という、過去のスタイルをより推し進めた新たな個性を確立。もはやバンドだとかエモだとか、そういった括りがどうでもよくなるほどにポップで親しみやすいサウンドへと進化し、初期のちょっとゴシックなスタイルはどこへやら……と、『A FEVER YOU CAN'T SWEAT OUT』(2005年)が大好きだったリスナー(自分含む)は置いてきぼりを食らうのです。

が、その後に観たライブ(2016年のサマソニ)では、ビジュアルこそ変化したものの、芯にあるスタンスは変わっていないことに気づかされたりもして。そこから再び『DEATH OF A BACHELOR』に触れるとなるほど、と納得させられる部分も多かったのでした。

この新作も基本路線は変わっていないように思います。いや、むしろ初期の『A FEVER YOU CAN'T SWEAT OUT』を愛聴していた層にもひっかかるフックが豊富に用意されているように感じられました。

古き良き時代のアメリカンポップスやスタンダードナンバーを現代的な解釈(サンプリングを用いることでモダンさとエヴァーグリーンな感覚を残す、かつエレクトロという現代的な要素も忘れない)でビルドアップし、それをブロードウェイミュージカルのような手法で提供する。これこそがPANIC! AT THE DISCOが本来やろうとしていたことではないでしょうか。

それを初期はバンドという形で表現しようとしたものの、あるタイミングに歪みが生じ、1人離れ、また1人離れ、気づけばブレンドン1人になった。結果、ブレンドンが本来やりたかったことを、作品ごとに適したブレインとともに具現化していく。特に今作は前作での成功を踏まえ、全体的にポジティブさに満ちているように感じられ、それがショーアップされたスタイルに散りばめられることでより一層多幸感に満ちた内容となった。前作よりも即効性が強いのはそこも影響しているのかな。そりゃあ売れるわけですよ。

正直、『PRETTY. ODD.』(2008年)以降のPANIC! AT THE DISCOに関してはどこか誤解していた(あるいは、表現する側の焦点がぼやけていた)ところもありましたが、この新作は一点の曇りもない極上のポップアルバムであり、気持ちよく楽しめる1枚です。



▼PANIC! AT THE DISCO『PRAY FOR THE WICKED』
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投稿: 2018 10 30 12:00 午前 [2018年の作品, Panic! at The Disco] | 固定リンク

2018年10月29日 (月)

TWENTY ONE PILOTS『TRENCH』(2018)

メガヒット作となった前作『BLURRYFACE』(2015年)から3年ぶりに発表される、TWENTY ONE PILOTSの3rdアルバム(自主制作盤を含むと通算5作目)。複数のプロデューサーを起用して曲ごとに変化をつけた前作から一転、本作ではメンバーのタイラー・ジョセフとMUTEMATHのフロントマンであるポール・ミーニーという固定したメンツで制作に臨んでいます。

抜けの良さとわかりやすさに満ちた前作と比較すれば、今作は若干地味で内省的なアルバムに映るかもしれません。とはいえ、オープニングを飾る「Jumpsuit」のゴリゴリなリフは圧巻の一言。が、これまでの彼らだったらこのリフでグイグイ押しまくっていたはずなのですが、本作ではグランジ的な強弱を用いたダイナミックなアレンジが用いられています。ここで「TWENTY ONE PILOTSも大人になったなぁ」と困惑するリスナーも少なくないのではないでしょうか。

その後もヒップホップ調の「Levitate」や「Morph」「My Blood」と、全体的に落ち着いたトーンで展開していくこのアルバム。内省的を通り越してダークさすら感じさせる作風は、ライブでの弾けた彼らのイメージを思い浮かべれば異色の内容に映るかもしれません。

とはいえ、楽曲自体の完成度はさすがの一言で、メロディもしっかり練りこまれて親しみやすい。アレンジにしても隙間の多い音作りながらも、芯がしっかりしているからブレることがない。要所要所からは緻密さすら散見され、もはや圧巻を通り越して狂気すら感じさせるものではないでしょうか。

この独特のトーンのせいで、本来持ち合わせているポップかつキャッチーな側面が薄皮や紗幕で覆われてしまっているような気がしないでもないですが、だからこそじっくり聴き込むとその魅力にズブズブとハマっていく。一見気難しそうだけど慣れるとめっちゃ親しみやすい、そんな1枚なのかなと思いました。

大人になったことで若干トーンは落ち着いたのかもしれないけど、やろうとしていることは実は以前から変わっていない。ただ、その時代その時代に合ったやり方でトライしようとする。そりゃあ2018年の今、『BLURRYFACE』とまったく同じことをやったとしても受け入れられるかどうかわかりませんし、あれは2015〜6年という時代と見事合致したからこその成功だった。そう考えると、本作の持つ意味は現時点よりも1年先のほうがより明確になるのかもしれませんね。

確かに『BLURRYFACE』的な抜けの良い作品を期待していた自分にとって、最初は肩透かしだったのは否めません。しかし、何度も聴き返しているうちにその魅力にハマりつつある。現時点では自分的にいろんな可能性を秘めた1枚みたいです。



▼TWENTY ONE PILOTS『TRENCH』
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投稿: 2018 10 29 12:00 午前 [2018年の作品, Twenty One Pilots] | 固定リンク

2018年10月28日 (日)

CHRIS CORNELL『CARRY ON』(2007)

SOUNDGARDENのフロントマン、クリス・コーネルによる2作目のソロアルバム。SOUNDGARDEN解散後に制作された初ソロアルバム『EUPHORIA MORNING』(1999年)から8年ぶりとなりますが、その間にはRAGE AGAINST THE MACHINEのメンバーと結成したAUDIOSLAVEとして3枚のアルバムを発表しており、本作はそのAUDIOSLAVEからの脱退直後に発表されたもの。特にソロとしては、その前年に映画『007 カジノ・ロワイヤル』の主題歌「You Know My Name」(全米79位)を発表しており、良い流れでアルバムも発表されたことになります。

内容的には前作『EUPHORIA MORNING』にあった内省的な作風を引き継ぎつつも、よりエモーショナルで力強くなっているのではないでしょうか。オープニングを飾る「No Such Thing」なんてそれまで封印していたSOUNDGARDEN的ヘヴィ路線を用いているし、かと思えば「Arms Around Your Love」ではAUDIOSLAVEで得たエモい歌モノ路線が引き継がれている。確かに多少内省的ではあるものの、ここには2つのアメリカのトップバンドを渡り歩いたクリスならではの「ど真ん中で戦う」という意思が強く感じられるのです。

その表れとして、かどうかはわかりませんが、本作にはマイケル・ジャクソンの大ヒット曲「Billie Jean」のカバーも収録。もちろん“まんま”ではなく、いかにもクリスらしい落ち着いたトーンのアレンジで生まれ変わっており、完全に自分のモノにしてしまっています。

かと思えば「Safe And Sound」みたいに大らかなソウルナンバーがあったり、「Scar On The Sky」といったサイケデリックカントリーソングもあるし、「Your Soul Today」のギターリフなんてストーンズAC/DCみたいなど直球さがにじみ出ている。すべてにおいて彼のキャリアを総括するような意思が感じられ、と同時に文字どおり「ここから続けていく(=Carry On)」という決意表明も受け取れる。アルバムのラストに、そのきっかけとなった映画主題歌「You Know My Name」(007主題歌らしく、ストリングスをフィーチャーしたスタンダード色の強い1曲)が置かれているという構成からも、彼がここから何を成し遂げようとしているのかが感じられるのではないでしょうか。

とはいえ、クリスのソロは実験的な次作『SCREAM』(2009年)でひと区切りつけることになってしまう。その理由は、SOUNDGARDEN再結成によるものなので仕方ないのですが……もしあのまま、バンドを復活させることなくソロアーティストとして細々と音楽活動を続けていたら、彼は……それでも同じ道をたどったのでしょうか。ここでたられば話をしても仕方ないですが、この『CARRY ON』から始まった新たな旅の行方を見届けてみたかったものです。



▼CHRIS CORNELL『CARRY ON』
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投稿: 2018 10 28 12:00 午前 [2007年の作品, Chris Cornell] | 固定リンク

2018年10月27日 (土)

ALICE COOPER『THE LAST TEMPTATION』(1994)

1994年7月リリースの、アリス・クーパー通算20枚目のスタジオアルバム。モダンな産業ハードロックサウンドによる『TRASH』(1989年)で再ブレイクを果たし、続く同系統の『HEY STOOPID』(1991年)もそれなりの成功を収めましたが、本作は生々しいバンドサウンドを主軸に据えた、時代に呼応した作品となっています。

プロデューサーにはドン・フレミング(SONIC YOUTH、TEENAGE FANCLUBHOLEなど)、デュアン・バロン&ジョン・パーデル(オジー・オズボーンDREAM THEATERKIXなど)、アンディ・ウォレス(SEPULTURAFAITH NO MOREBLIND MELONなど)を迎え制作。曲ごとにプロデューサーが異なり、ドンは「Nothing's Free」「Lost In America」「Bad Place Alone」、デュアン&ジョンは「You're My Temptation」「Lullaby」「It's Me」、それ以外の楽曲をアンディが手がけています。

ドン・フレミングがプロデュースした「Nothing's Free」「Lost In America」あたりは70年代のアリス・クーパーらしさが復活しつつ、90年代前半のシーンを接見したオルタナティヴロック/グランジからの影響も感じさせる生々しいサウンドで、シンプルで刺々しいバンドサウンドの中にしっかりキャッチなーメロディが備わっている。かと思えば、ジャック・ブレイズ(NIGHT RANGER)&トミー・ショウ(STYX)のDAMN YANKEESコンビのペンによる「You're My Temptation」「It's Me」あたりは、前作までの流れを汲みつつもしっかりモダンな色付けが施されているのですから、さすがの一言です。

とはいえ、本作最大の聴きどころは中盤に置かれた「Stolen Prayer」「Unholy War」の2曲ではないでしょうか。前者はアリスとクリス・コーネルSOUNDGARDEN)との共作で、後者はクリス単独による書き下ろし曲。クリスは2曲でボーカル&コーラスでも参加しており、その存在感を示しています。本作発売の数ヶ月前にSOUNDGARDENはアルバム『SUPERUNKNOWN』で初の全米1位を獲得したばかりで、そんなクリスをソングライター&ボーカルでフィーチャーするあたりにアリスの本気度が伺えます。クリスらしいダークな楽曲を歌うアリス、最高です。

また、本作は70年代の名作『WELCOME TO MY NIGHTMARE』(1976年)の主人公であるスティーヴンが登場するコンセプトアルバムでもあります。そのへんも往年のファンには興味深いものがあるのではないでしょうか(当時発売された限定盤には、そのへんのストーリーが描かれたコミックも同梱されていました)。

ここまでやったにも関わらず、残念ながら本作は全米68位止まり。シングルヒットも生まれていません。グランジ世代にはオリジネーターであるアリスも“旧世代側の人”と受け取られてしまったのでしょうか。『TRASH』や『HEY STOOPID』は苦手だけど70年代のヒット作は好きというリスナーもスッと入っていける、隠れた名盤だと思うので、機会があったらチェックしてみてください。



▼ALICE COOPER『THE LAST TEMPTATION』
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投稿: 2018 10 27 12:00 午前 [1994年の作品, Alice Cooper, Chris Cornell] | 固定リンク

2018年10月26日 (金)

KISS『HOTTER THAN HELL』(1974)

デビューアルバム『KISS』(1974年)から8ヶ月という短いスパンで発表された、1974年10月発売のKISSの2ndアルバム。前作同様ケニー・カーナー&リッチー・ワイズがプロデュースを手がけているのですが、全体的に軽快な作風だった前作よりも重みのあるサウンドに仕上げられています。

前作はポップでキャッチーなロックンロールがベースにある楽曲が多かったものの、本作はよりタフでハードなノリの楽曲が増えています。エース・フレーリー(G, Vo)作の「Parasite」やジーン・シモンズ(Vo, B)による「Goin' Blind」「Watchin' You」などがその最もたる例と言えるでしょう。

また、全体を通してジーンが10曲中5曲でリードボーカルをとっていることも、ヘヴィさに多少なりとも影響しているのかもしれません。ポール・スタンレー(Vo, G)は以外にも3曲(「Got To Choose」「Hotter Than Hell」「Comin' Home」)しか歌っておらず、残り2曲(「Mainline」「Strange Ways」)はピーター・クリス(Dr, Vo)がリードを担当。以降の作品にも言えますが、ジーンが歌う曲が多いアルバムって作風的に重くなりがちなので、本作はそういった意味ではその先駆け的1枚かもしれませんね。

それもあるのでしょうか、本作は90年代に入ってからグランジ/ヘヴィロック系バンドから高く評価されていたような印象があります。「Let Me Go, Rock 'n' Roll」みたいにKISSのパブリックイメージまんまな楽曲もあるものの、本作でやっぱり印象に残るのは先の「Parasite」や「Goin' Blind」「Hotter Than Hell」「Watchin' You」だったりするのですから。グランジのルーツなんていうのも頷ける話です。

とはいえ、KISS史の中では本作ってそこまで人気の高い1枚とはいえず、人気曲の多いデビューアルバムや、「Rock And Roll All Nite」を生み出した次作『DRESSED TO KILL』(1975年)と比較すると地味と言わざるを得ません。まあ、地味だからこそ玄人好みするというのもありますけどね。

あと、本作は現在の“耳”で聴くと非常にこもった音質に感じられます。『KISS』も『DRESSED TO KILL』も、もうちょっと抜けがよいだけに、それらに挟まれた本作は余計にこもった感が強い気がしてしまうんです。ダークさ、ヘヴィさを演出するという点においては、そこが功を奏している気がしないでもないですが……もうちょっとクリアな音で鳴らされたとき、この楽曲群のイメージがどう変わるのかも興味深いところです。



▼KISS『HOTTER THAN HELL』
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投稿: 2018 10 26 12:00 午前 [1974年の作品, KISS] | 固定リンク

2018年10月25日 (木)

MUDHONEY『DIGITAL GARBAGE』(2018)

MUDHONEYによる通算10作目のオリジナルアルバム。前作『VANISHING POINT』から5年ぶりの新作にあたり、今年結成30周年&リリース元であるSub Pop Recordsの設立30周年を祝う記念すべき1枚でもあります。

グランジ創世記から現在まで活動を続ける彼らですが、本作でも良い意味でなんら変わりない、あの頃のままのローファイなガレージロックを展開しています。

もちろん、当時にはなかったような味付けも本作には加えられており、例えばそれが「Please Mr. Gunman」で聴けるピアノであったり、リードトラック「Kill Yourself Live」で大々的にフィーチャーされたオルガンであったり、「21st Century Pharisees」を包み込むシンセであったりと、こういった味付けが不思議とポップさを際立てているんだから、本当に興味深い。

確かに初期の頃にあったアグレッシヴさや衝動性はここにはないのかもしれません。そういう点においては「なんら変わりない」というのは嘘になってしまいますが、でも聴けばMUDHONEYの作品だとわかるそのスタイルは、「Touch Me I'm Sick」から30年経った今も変わっていない。あの頃から維持している部分もしっかり残しつつ、人間としてもミュージシャンとしても成長した部分もしっかり感じられる。30年間で10枚と、キャリアのわりにリリースされたアルバムは少ないものの、だからこそ1枚1枚に凝縮されたエキスは濃いのです。

全11曲で34分と、昨今のロックアルバムの中でも比較的短い部類に入る本作ですが、だからといって聴きやすくてコンパクトというわけではない。この短さの中に30年の積み重ねがしっかり凝縮されているし、へたに60分以上あるロックアルバムよりも何倍も濃度が高い、極上の1枚だと個人的には感じています。

にしても、『DIGITAL GARBAGE』ってタイトル、最高じゃないですか? 結成30周年の節目に出すアルバムにこんなタイトルを付けるあたりも、いかにも彼ららしい。歌詞も実際に起きた最近の事件にインスパイアされたものから世の中の風潮を捉えたものまで存在する。マーク・アーム(Vo, G)は本作について「僕は物事を多少なりとも普遍的なものにしようとしてるんだ。だから、このアルバムのサウンドは今風には聴こえない。一方、(普遍的と言っても)ここに収録された曲は将来、消え去ってしまうことを望むよ。『おい、このアルバムの歌詞は今でも健在だよな』、なんて将来言いたい人はいないからね」とコメントしていますが、そういった意味では2018年ならではの内容と言えるのかもしれませんね。



▼MUDHONEY『DIGITAL GARBAGE』
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投稿: 2018 10 25 12:00 午前 [2018年の作品, Mudhoney] | 固定リンク

2018年10月24日 (水)

QUEEN『LIVE KILLERS』(1979)

1979年6月に発売された、QUEENキャリア初となるライブアルバム。前年11月に発売された7thスタジオアルバム『JAZZ』を携えたワールドツアーの中から、1979年1〜3月のヨーロッパ公演からピックアップされた音源が収録されているとのこと。CD/アナログともに2枚組で、トータル90分という当時としてはかなりのボリュームですが、実際のライブではさらに4曲演奏されており、それらが収録時間の都合でカットされています(カットされたのは「If You Can't Beat Them」「Fat Bottomed Girls」「Somebody To Love」「It's Late」とのこと)。また、このアルバムが発売される直前の4月には、QUEENは日本武道館公演を含むジャパンツアーも敢行しています。

パンクの余波が意識されたであろう『NEWS OF THE WORLD』(1977年)と大衆的ポップさが花開く『THE GAME』(1980年)の間、つまり両作の橋渡し的作品となった『JAZZ』のツアーというタイミング的にはちょっと過渡期なのかな?と思われる時期かもしれませんが、視点を変えると「生々しいロックバンド感」が色濃く表現されたツアーはこのへんが最後だったのかなと。奇しくも70年代最後の年、パンクからニューウェイヴ、そしてヘヴィメタルという新しい波が訪れる前の絶妙な時期。その後、ポップの権化へと進化するQUEENが時代の変わり目に最後の爪痕を残した。そんなふうにも受け取れる内容かもしれません。

なにしろこの作品、音がそこまで良くない。ただ、この荒さが当時のバンドのテンションと相まって、ロックバンドの初期衝動的な生々しさにつながっている。当時のセットリスト(アップテンポにロックアレンジされた「We Will Rock You」から「Let Me Entertain You」「Death On Two Legs」へと続く構成)をベストな状態で表現した、結果オーライな音質・状態だと思うのですが……完璧主義のQUEENの皆さんはお気に召さないようで(そして、その言葉を真に受けて本作の評価を低くしている一部のファンにも)。

そりゃあ『LIVE AT WEMBLEY '86』(1992年)と比べればその質は雲泥の差ですが、逆に『LIVE AT WEMBLEY '86』にはないもの、『LIVE AT WEMBLEY '86』期のQUEENには表現できないものがここには詰め込まれているのも、また事実。ここ数年、本作よりも前に録音されたアーカイヴ音源が発表されていますが、1979年という時代だからこそのアイデア、演奏力、録音クオリティあってこその奇跡の結集がこの『LIVE KILLERS』だと思うのですよ。

フレディ・マーキュリー(Vo, Piano)の完全に成熟しきる前の歌声、思った以上にアグレッシヴなブライアン・メイ(G, Vo)のギタープレイ、実はめちゃめちゃ安定感があって作り込まれたフレーズを紡ぐジョン・ディーコン(B)のベース、そして若さありきの(ちょっとだけ不安定な)ロジャー・テイラー(Dr, Vo)のドラミング。そのすべてが奇跡的に絡み合ってこその『LIVE KILLERS』。確かに初めて聴いたQUEENのライブアルバムは『LIVE MAGIC』(1986年)でしたし、『LIVE AT WEMBLEY '86』は記録としても素晴らしいですが、僕にとってはそれらと同じくらい、いや、『LIVE AT WEMBLEY '86』と『LIVE KILLERS』はQUEENというバンドを言い表す上で必要不可欠なライブ作品なんです。どちらも同じくらい重要で大切。だって、その両方が僕の好きなQUEENなんですから。



▼QUEEN『LIVE KILLERS』
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投稿: 2018 10 24 12:00 午前 [1979年の作品, Queen] | 固定リンク

2018年10月23日 (火)

U2『ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BIHIND』(2000)

2000年10月にリリースされた、U2通算10作目のスタジオアルバム。これまで3枚で一区切りの3部作を3セットリリースしてきたU2ですが、2000年代に突入したこともあり、本作ここから再び新たなステージに突入したことを高らかに宣言するような力強いロックアルバムに仕上げられています。ランキング的にはイギリスで1位、アメリカでは5作連続で獲得した1位を逃す結果となりましたが(最高3位)、売り上げ的には400万枚以上と過去2作(1993年の『ZOOROPA』、1997年の『POP』)を大きく上回っています。また、「Beautiful Day」(全英1位、全米21位)、「Stuck in a Moment You Can't Get Out Of」(全英2位、全米52位)、「Elevation」(全英3位)、「Walk On」(全英5位)とイギリスでヒットシングルが多数生まれたのも本作の特徴です。

リードシングルとなった「Beautiful Day」を聴いて、きっと多くの(80年代のU2のみを愛好する)リスナーは「俺たち、私たちのU2が帰ってきた!」と喜んだのではないでしょうか。事実、このアルバムで展開されているのは90年代の彼らが試みたデジタル/エレクトロ路線とは一線を画する、大陸的なおおらかさを感じさせる“歌”が中心のロック/ポップソングなのですから。

「Stuck in a Moment You Can't Get Out Of」なんて名盤『THE JOSHUA TREE』(1987年)期を彷彿とさせるソウルフルなミディアムナンバーだし、「Elevation」はボノ(Vo)の<Hu〜>という節回しが往年のバンド像と重なるし……「そうそう、これこれ!」と膝を叩きたくなるよな楽曲がズラリと並びます。

けど、これって単なる原点回帰とか「90年代の失敗をなかったことに」した作品ではなく、しっかり“あの頃”もなかったことにせず通過した結果なんですよね。だって、絶対に『ACHTUNG BABY』(1991年)を通過していなければ生み出せていないような楽曲も多数含まれていますし(それはサウンド的にも、メロディ的にも)。「Elevation」はもちろん、「Kite」や「In A Little While」みたいな楽曲は確実に“『ACHTUNG BABY』以降”を強く感じさせますしね。

20年近くにわたる実験を経て、再びたどり着いた第二のデビューアルバム。もちろんそんな表現も可能でしょう。だとしたら、このデビューアルバムってとてつもなく強烈で豪華じゃないですか? 過去のいろんなエッセンスが凝縮されていて、ある種の集大成でもあるんだけど、と同時に新たな始まりを予感させるフレッシュさもある。20年選手ならではの落ち着き、安定感は至るところから感じられるけど、同じくらい新しいことが始まりそうなワクワク感も散りばめられている。これがあったから、続く『HOW TO DISMANTLE AN ATOMIC BOMB』(2004年)へと到達できたんだと考えると、非常に納得にいく1枚です。



▼U2『ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BIHIND』
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投稿: 2018 10 23 12:00 午前 [2000年の作品, U2] | 固定リンク

2018年10月22日 (月)

MUSE『THE RESISTANCE』(2009)

2009年9月にリリースされた、MUSEの5thアルバム。前作『BLACK HOLES AND REVELATIONS』(2006年)が本国イギリスで100万枚を超えるメガヒット作となっただけでなく、全米9位&100万枚突破と、ついにアメリカでもブレイクを果たした彼ら。3年ぶりに発表された今作は、全英1位&全米3位という好記録を残し、セールス的にも前作に匹敵する1枚となりました。また、「Uprising」(全英9位、全米37位)や「Undisclosed Desires」(全英49位)、「Resistance」(同38位)というヒットシングルも生まれています。アメリカでのシングルヒットというのは非常に大きいのではないでしょうか。

前作では「Starlight」や「Invincible」といったメジャーキーのポップチューンが印象に残りましたが、本作は全体的に前々作『ABSOLUTION』(2003年)までの要素を強めたイメージ。オープニングの「Uprising」は当時流行だったシャッフルビートを用いつつも、作風的に前作における「Supermassive Black Hole」の延長線上にある1曲。そこからMUSEらしいドラマチックさを持つハードロックチューン「Resistance」や、生とデジタルの融合から生まれたニューウェイヴ的な「Undisclosed Desires」というシングル3連発で聴き手を惹きつけます。ここまでは、前作でファンになったリスナーを楽しませるための“掴み”といったところでしょうか。

ですが、このアルバムは4曲目「United States of Eurasia (+Collateral Damage)」からが本領発揮。QUEENを彷彿とさせる壮大なオペラバラードは、初期の彼らが持ち合わせていた仰々しさがエスカレートしていますし、続く「Guiding Light」も前作にあったポップチューンをさらに激化させたもので、必要以上に力んでいる。ギターの弾きまくりっぷりなんて「この曲のそこで、ここまで弾かなくてもいいんじゃない?」と思わされますが、でも待った。この“無駄なまでに過剰”なのがMUSEの魅力だったんじゃなかった?と、自分が彼らのどこに惹きつけられたかをこの一連の流れで思い出させてくれるわけです。

アルバムはその後も、賛美歌とブルースと攻撃的なハードロックミックスしたような「Unnatural Selection」、ダイナミックかつドラマチックな「MK Ultra」、ピアノを軸にしたストレンジポップ「I Belong to You (+Mon Cœur S'ouvre a ta Voix)」と過剰な曲が続くのですが、アルバム終盤に本作最大の問題作が用意されています。それこそが、9〜11曲目からなる「Exogenesis: Symphony」3部作。トータルで13分におよぶこの組曲は、ストリングスを軸にしたおおらかな第1楽章「Overture」から、クラシカルなピアノとストリングスがじわじわと曲を盛り上げる第2楽章「Cross-pollination」、そして光で包み込まれるようなポジティブさでクライマックスを迎える第3楽章「Redemption」まで、かなり力を入れて作り込まれたもの。各楽章(1曲)単位でも存分に楽しめる内容ですが、ここはあえて3曲続けて聴いて、その世界に浸りたいところです。

エレクトロの要素は前作以上に高まりモダンさを強めているものの、クラシックからの引用やストリングスの導入といった“生の要素”がこのアルバムの持つドラマチックさに拍車をかけている。現代的なサウンドながらも初期作にあった耽美さが復活したように感じますが、実は楽曲自体は「これ!」といった飛び抜けたものが少ないのが難点。「Uprising」のようなアンセムが1曲あるだけでも十分っちゃあ十分ですが、やはり前作がトータルとしての完成度が高かっただけに、ちょっと残念な気もします。決して悪いアルバムではないんですが、もしかしたら「どのアルバムからMUSEのファンになったか?」で本作の評価は激変するんじゃないか……そんな1枚でもあるのかなと。

僕自身は最初に聴いたとき「これはちょっと……」と思ったものですが、何度も聴き込むことでポジティブに受け入れられるようになったし、リリースから数年経ってからは「あれ、悪くないじゃん」と思えるようになった作品でもあります。



▼MUSE『THE RESISTANCE』
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投稿: 2018 10 22 12:00 午前 [2009年の作品, Muse] | 固定リンク

2018年10月21日 (日)

DEF LEPPARD『VIVA! HYSTERIA』(2013)

2013年10月に発売された、DEF LEPPARD通算2作目のライブアルバム(およびライブ映像作品)。前作『MIRROR BALL: LIVE & MORE』(2011年)は直近のオリジナルアルバム『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008年)を携えたワールドツアー音源に3曲の新曲を追加した作品でしたが、今作はそのタイトルからもわかるようにバンド史上最大のヒット作『HYSTERIA』(1987年)を完全再現した、ラスベガスのHard Rock Hotel And Casinoでのライブを収めたものです。

ライブは『HYSTERIA』収録曲全12曲を、アルバムの曲順どおりに演奏した本編に加え、「Rock Of Ages」「Photograph」のヒットシングル2曲を披露したアンコール2曲の全14曲。2枚組CDのうち、ディスク1にこの模様がまるまる収録されています。

そして、ディスク2には近年あまりライブで演奏される機会の少なかった楽曲群……1stアルバム『ON THROUGH THE NIGHT』(1980年)期の「Good Morning Freedom」や「Wasted」「Rock Brigade」、2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』(1981年)から「Mirror, Mirror (Look Into My Eyes)」や「Another Hit And Run」、さらに「Stagefright」や「Action」「Slang」「Promises」などを演奏した、同ライブのオープニングアクト(DEF LEPPARDがDED FLATBIRD名義で登場)のライブ音源も収録。日本盤のみ、「Now」や「When Love & Hate Collide」「Two Steps Behind」など計5曲を約8分のメドレーで披露したアコースティックセットが追加されています。

リック・アレン(Dr)が交通事故で片腕を失い、それに合わせて制作されたスペシャルなドラムセットを用いてレコーディングされた最初のアルバム『HYSTERIA』。その特徴的なドラムサウンドのみならず、何十、何百にもおよぶオーバーダビングによる重厚なサウンドがあのアルバムの特徴でしたが、ライブではそのマジックが完全再現されるわけではありません。ステージにいる5人だけで表現される『HYSTERIA』の楽曲群は、聴く人が聴けばオリジナル盤よりも薄っぺらくて、迫力が弱いものに成り下がっていると感じるかもしれません。

しかし、あの完璧に作り込まれた作品をここまで生々しくよみがえらせたという点においては、オリジナルとはまた違った楽しみ方ができるというのもあります。ドラムサウンドも1987年当時より技術的に向上しており、幾多のライブを重ねてきた彼ららしいアレンジとプレイの妙技もこの作品ならでは。2本のみで再現されるフィル・コリン(G)&ヴィヴィアン・キャンベル(G)のギターアンサンブルと、キーを半音下げながらもなるべく原曲に忠実に歌おうとするジョー・エリオット(Vo)のボーカル、さらに少ないメンバーで再現しようとするコーラスワークは、そりゃあスタジオワークの重厚さには敵いませんが、この隙間のあるアンサンブルも“ザ・ロックバンド”然としていてカッコいいではありませんか。

個人的に印象に残るのは、実はリック・サヴェージ(B)のベースプレイ。アルバムだとシンセベースに置き換えていたりするものも、ここではベースギターで演奏されているので、この低音が気持ち良かったりするんですよね。

間もなく3年ぶりの来日を果たすDEF LEPPARD。ここ日本でも『HYSTERIA』完全再現が実施されるわけですが、まずはこのライブ作品で予習するもよし。ライブを観た人はここで思い出に浸りつつ、復習するのもよし。スタジオ版とは異なるライブバンドならではの魅力を、ここから感じ取ってもらいたいです。



▼DEF LEPPARD『VIVA! HYSTERIA』
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投稿: 2018 10 21 12:00 午前 [2013年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2018年10月20日 (土)

HURRICANE #1『HURRICANE #1』(1997)

アンディ・ベル(Vo, G)がRIDE解散後に結成した4人組バンドHURRICANE #1の、1997年9月発売のデビューアルバム(日本では本国よりも早い同年7月に先行リリース。アメリカでは10月に発売)。メンバーはギターに専念したアンディのほか、アレックス・ロウ(Vo, G)、ウィル・ペッパー(B)、ガレス・ファーマー(Dr)という4人編成。RIDEから引き続き Creation Recordsからのリリースで、「Step Into My World」(全英29位)、「Just Another Illusion」(同35位)というシングルに続いてアルバムも全英22位まで上昇。その後も「Chain Reaction」(同30位)とヒットシングルが続き、デビュー作としてはひとまず成功を収めた部類に入るのかな。

後期はレイドバックしたカントリーロックに片足突っ込んだり、ラスト作では中途半端なロックを聴かせたりと、踏んだり蹴ったりだったRIDEでしたが、初期はバンドの中心人物だったアンディがこの新バンドで鳴らしているのは、モロに“OASIS以降”のUKロック。いや、UKロックというよりもブリットポップと呼んだほうが正しいか。

アレックス・ロウの歌声や歌唱法、「Step Into My World」で鳴らされているサウンドもあって、本当にOASISのそれなんですよね。しかも、単なる亜流では終わらない、しっかり作り込まれた曲だったりするから余計にタチが悪い(笑)。いや、本当に良い曲なんですよ。

まあそれもそもはず、当時のアンディは血迷ったのか「OASISとTHE STONE ROSESを足して2で割ったようなバンド」をいたのですから……ちゃんとそのとおりになっていますよね!

ビート感の強さはローゼズ、メロディの強さはOASIS。しかし、そこに“RIDEのアンディ”の個性はちゃんと出ているのか、と問われると正直答えに困ります。「Mother Superior」や「Let Go Of The Dream」といった楽曲は、確かにアンディ・ベルというソングライターでなければ書けなかった曲かもしれないけど、別にアンディがこれをやらなくてもいいんじゃない?っていう思いもある。無駄に曲の出来が良いもんだから、当時は非常に評価に迷った記憶があります。

その後、アンディが当のOASISに加入し(しかもベーシストとして。苦笑)、OASIS解散後は紆余曲折を経てRIDEを復活させアルバムまで制作した。そんな20年を経て、今改めてフラットな気持ちで接してみると……やっぱり「良いアルバム」以上の感想は持てないかな。まあ、それでいいじゃない?って声もありますけど、やっぱりアンディ・ベルという人には“もっと上”を求めてしまいたくなるんですよね。

ちなみにHURRICANE #1、2014年にアレックス・ロウ中心に再結成しています。アンディはRIDEがあるので正式復帰はしていませんが、16年ぶりの新作『FINE WHAT YOU LOVE AND LET IT KILL YOU』(2015年)には1曲のみアンディもギターでゲスト参加しております。解散前と異なり、アレックス中心で書かれた新作の楽曲群もなかなかの出来です。



▼HURRICANE #1『HURRICANE #1』
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投稿: 2018 10 20 12:00 午前 [1997年の作品, Hurricane #1, Ride] | 固定リンク

2018年10月19日 (金)

PAUL WELLER『TRUE MEANINGS』(2018)

2018年9月リリースの、ポール・ウェラー14作目のスタジオアルバム。12thアルバム『SATURNES PATTERN』(2015年)でParlophone Recordsに移籍して早くも3作目となります。前作『A KIND REVOLUTION』(2017年)が去年の5月発売だったので、1年4ヶ月という非常に短いインターバルにも驚きです。そういやあ、来日公演なんて今年の1月でしたものね。

5月25日に還暦を迎えてもなお、いや、還暦に向けてその活動ペースが再びアップしだしているポール・ウェラー御大ですが、今回のアルバムはアコースティックギターを軸にした、非常に穏やかな作品集に仕上がっています。

確かにエレキギターも使ってはいるものの、その音色はほとんど歪んでおらず、あくまで味付け程度。アコギを爪引きながら落ち着いたトーンで歌うポールの声に、ところどころでストリングスや美しいハーモニーが重ねられていく。なんですか、これは(笑)。最初に聴いたときは正直驚きました。前作『A KIND REVOLUTION』がどこかそれまでの集大成感が漂っていたのもあって、その延長線上で来るのかと思いきや、これですから。

もちろん、曲を聴けばメロディや節回し、ソウルの影響下にあるアレンジからウェラー翁らしさを存分に味わえるのですが、終始同じトーンなので……もしかしたら聴き手を選ぶ1枚かもしれません。

それは言い方を変えれば、今までポール・ウェラーという人にある種の暑苦しさを感じていた層にこそ触れてほしい1枚とも言えるわけで。THE STYLE COUNCIL時代とまではいわないものの、あの頃にあったクールダウンした(ちょっとオシャレな)世界観に近いものが再び展開されている、とも言えなくはないのかな。ただ、その表現方法は80年代のそれとは異なるわけですが。

“ロックスター:ポール・ウェラー”の姿はここにはないのかもしれない。あるとしたら、60歳になった男の等身大の姿と生きざま。THE JAM、THE STYLE COUNCIL、そしてソロと何周もしてきたこの音楽界で何度目かの“上がり”を経て、彼はようやく今、心の底からリラックスして音楽を楽しめているのかもしれない……そう受け取れなくもない1枚かな。

にしても、そのものズバリ「Bowie」なんてタイトルの美しいバラードもあったりして、本当に泣かせてくれます。

今年はむちゃくちゃ暑かったし、気象状況もヘンテコだったし、本当に散々な夏だったな……そんなことを思い返しながら、この秋じっくり浸りたい。僕にとってはそんなアルバムになりそうです。

もし、本作で来日公演が実現したら、この世界観を忠実に再現した編成になるのかしら。それはそれで観てみたいかも。



▼PAUL WELLER『TRUE MEANINGS』
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投稿: 2018 10 19 12:00 午前 [2018年の作品, Paul Weller] | 固定リンク

2018年10月18日 (木)

THE CHARLATANS『TELLIN' STORIES』(1997)

1997年4月に発表された、THE CHARLATANSの5thアルバム。本作からメジャーレーベルのMCA / Universal Recordsからの流通となり(イギリス以外。本国イギリスでは本作まで古巣のBeggars Banquet Recordsからのリリース)、それも影響してか(また、折からのブリットポップムーブメントの影響もあってか)、バンドはこのアルバムで通算3度目の全英1位を獲得。前年に発売されたシングル「One To Another」(全英3位)を筆頭に、「North Country Boy」(同4位)、「How High」(同6位)、「Tellin' Stories」(同16位)と数々のヒットシングルが生まれます。

アルバムのミックス作業中だった1996年夏、メンバーのロブ・コリンズ(Key)が交通事故で死去。結果として、ロブを含む布陣での純粋な作品はシングル「One To Another」が最後となってしまいます。しかしバンドは PRIMAL SCREAMのキーボーディスト、マーティン・ダフィーをゲストに迎えて作業を継続。1997年初頭に無事本作が完成します。

90年代前半という時代性を反映させた初期のダンサブルな作風から徐々に変化を遂げ、この5作目では強いビート感はそのままに、ティム・バージェス(Vo)のボーカルの深みやマーク・コリンズ(G)のギタープレイの多彩さが増したこと、また残されたロブのプレイのみならず、ゲスト参加のマーティン・ダフィーの尽力もあって、ハモンドオルガンやピアノの存在感もより強いものとなり、バンドとしての表現力が急成長。ソングライティング面でも歌詞に具体性が増し、メロディやバンドアンサンブルも鉄壁と言わんばかりの仕上がり。文句なしの1枚なんですよね。

初期のサウンドが好きだというリスナーからは拒絶されたのかもしれませんが、逆に僕のような“好きな曲と嫌いな曲の差が激しかった”リスナーにはこの内容には当時かなり驚かされました。

ストーンズにおける60年代後半のサイケ期〜南部サウンド系統期の中間にあるようなサウンドといい、一見古臭いのに一周回って新しい(と感じてしまう)方向性といい、90年代後半の時代性と見事に一致したんでしょうね。そういえば、「One To Another」や「With No Shoes」「Tellin' Stories」のループを手がけたのが、THE CHEMICAL BROTHERSのトム・ローランズでしたし。なるほど、そりゃ売れるわ。

上に挙げたようなシングル曲はもちろんですが、個人的にはアルバム中盤の山場に置かれたインスト「Area 51」がお気に入り。「You're A Big Girl Now」のようなアコースティックチューンも本作ならではですし、パーカッションを強調した「Only Teethin'」も捨てがたい。ロブに捧げられたラストのインスト「Rob's Theme」含めて、1曲たりとも聴き逃せない、だけど肩の力を抜いて楽しめる名作です。



▼THE CHARLATANS『TELLIN' STORIES』
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投稿: 2018 10 18 12:00 午前 [1997年の作品, Charlatans, The, Chemical Brothers, The, Primal Scream] | 固定リンク

2018年10月17日 (水)

ASH『ISLANDS』(2018)

2018年5月にリリースされた、ASH通算7枚目のオリジナルアルバム。純粋なオリジナルアルバムとしては8年ぶりだった前作『KABLAMMO!』(2015年)から3年ぶりの新作となる本作は、デビューから5thアルバム『TWILIGHT OF THE INNOCENTS』(2007年)まで在籍した古巣Infectious Recordsに復帰しての意欲作で、プロデュースはメンバーのティム・ウィーラー(Vo, G)が担当。全英18位と、4thアルバム『MELTDOWN』(2004年)以来14年ぶりにトップ20入りを果たしました。

『TWILIGHT OF THE INNOCENTS』で“青春の終わり”を具現化したような物悲しさを表現し、続く“A-Z”シングルシリーズ期間にはいろいろと実験を繰り返したASHでしたが、前作『KABLAMMO!』で“青春よ再び”的初期衝動を取り戻し、年齢を感じさせない青臭さと疾走感を伴うパワーポップサウンドで往年のファンを喜ばせてくれました。

ところが、続く本作では前作でのポップネスをより追求した結果なのか、疾走感は二の次といった印象で、どっしりと構えたミドルテンポ〜ミドルアッパーの楽曲で占められています。それ自体は決して悪いことではなく、逆に「前作はなんだったんだ?」って不思議に思うくらい本作は年相応(?)なサウンドに回帰しているのです。

思えばASHって作品ごとの振り幅が強いバンドで、1作目『1977』(1996年)でパンキッシュなパワーポップを展開したかと思えば、続く2作目『NU-CLEAR SOUNDS』(1998年)ではテンポを抑えたポップロックに挑戦。3作目『FREE ALL ANGELES』(2001年)では再び青春感に満ちたパワーポップに回帰したものの、4thアルバム『MELTDOWN』ではメタリックなヘヴィサウンドへとシフトチェンジ……と、常に“前作とは違う方向”を探りながら作品を提供し続けてきたのです。

そういった意味では、前作と今作は軸こそブレていないものの、そのタッチや表現手段は意図的に変えているような、そんな印象を受けます。まあね、“A-Z”シングルシリーズを聴けば、この人たちが如何に多才で多彩かがおわかりいたわけるでしょうし、メロディアスさこそ変わらないものの表現方法が作品ごとに変わるのはもはや恒例行事と言っても過言ではありません。

そこを踏まえて聴いても、本作は非常に良くできたパワーポップアルバムだと思いますし、低迷期を経てもなお「Annabel」や「Buzzkill」「Don't Need Your Love」「Somersault」などのようなキラーチューンを生み出し続けているというその事実に驚かされるというか、頭が下がるわけですよ。

インディロックやブリットポップ、いろんな呼び方があるかと思いますが、僕の中ではASHは常にパワーポップバンドでした。この良作を携えて、11月には待望の来日公演も控えています。前作リリース時にも足を運びましたが、新曲と過去の代表経のバランスが絶妙で、初めて観た人でも一発でノックアウトされるようなステージを展開してくれるはずです。ぜひこの機会に足を運んでみてください。僕もスケジュールが合えば必ず行きます!



▼ASH『ISLANDS』
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投稿: 2018 10 17 12:00 午前 [2018年の作品, Ash] | 固定リンク

2018年10月16日 (火)

FEEDER『COMFORT IN SOUND』(2002)

2002年10月にリリースされた、FEEDER通算4作目のオリジナルフルアルバム。プロデュースは全英8位のヒット作となった前作『ECHO PARK』(2001年)から引き続きギル・ノートン(PIXIESFOO FIGHTERSTERRORVISIONなど)、そしてメンバーのグラント・ニコラス(Vo, G)が担当。前作の流れを受け、本作は全英5位という高ランクを記録し、本国のみで50万枚以上の大ヒット作に。「Come Back Around」(全英14位)、「Just The Way I'm Feeling」(同10位)、「Forget About Tomorrow」(同12位)、「Find The Colour」(同24位)といったヒットシングルも多数生まれました。

2001年4月発売の『ECHO PARK』のヒットにより、国民的バンドに一歩近づいたFEEDERでしたが、翌2002年1月にジョン・ヘンリー・リー(Dr)が自宅で自殺するという不幸に見舞われます。しかし、バンドは歩みを止めることなくレコーディングを続行。レコーディングに(当時)元SKUNK ANANSIEのマーク・リチャードソン(Dr)を迎え、無事完成までこぎつけます。

『ECHO PARK』はポスト・グランジの影響下にありつつ、パンクや王道UKロックなどがバランスよく混ざり合った力作でしたが、続く今作ではどこか影のあるメロディと、ストリングスなどを導入した叙情的かつドラマチックなアレンジが際立つ新境地を見せています。この穏やかさやメランコリックさは、ジョンの死が大きく影響しているものと思われますが、結果としてここで見せた新たなスタイルがキャリア最大の成功へと導くわけですから、皮肉なものですね。

この“メンバーが不慮のトラブルで1人欠け、残されたメンバーで作り上げたドラマチックな作品で国民的バンドへと成長する”ストーリー、安直ですがマニックスにも近いものがありますよね。奇しくもフロントマンのグラントは南ウェールズ出身。世代的にもマニックスの面々と一緒というのもあり、こういった“オルタナティヴロックとエヴァーグリーンの融合”というスタイルが共通するのはなんとなく納得できるところもあるんですよね。もちろん、育った環境は違うとは思うんですが。

ジョンの生前に書かれたという疾走感あふれるオルタナポップ「Come Back Around」やひたすらヘヴィな「Godzilla」みたいな曲もありつつ、やはり印象に残るのは「Just The Way I'm Feeling」や「Forget About Tomorrow」「Quick Fade」といったメロディアスな楽曲。グランジ的スタイルを取った「Summer's Gone」もサウンドこそ激しさを伴うものの、スタンス的にはこっち側なんですよね。

前作での「Buck Rogers」や「Seven Days In The Sun」「Just A Day」みたいな曲に惹かれたリスナーにはガッツの弱い作品に映るかもしれませんが、悲しみを乗り越えてまたひとつ大人になっていく、その残酷ながらも貴重な瞬間を見事に捉えたという点において本作はFEEDERのキャリアにおける重要な1枚なのです。生き続けることを決めたバンドが、延命のために胸の内をすべて吐き出した本作があったから、続く『PUSHING THE SENSES』(2005年)も、そこから再び激しいロックへと回帰する6thアルバム『SILENT CRY』(2008年)も生まれたわけですから。



▼FEEDER『SILENT CRY』
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投稿: 2018 10 16 12:00 午前 [2002年のライブ, Feeder, Skunk Anansie] | 固定リンク

2018年10月15日 (月)

MANIC STREET PREACHERS『LIPSTICK TRACES: A SECRET HISTORY OF MANIC STREET PREACHERS』(2003)

2003年7月にリリースされた、MANIC STREET PREACHERS通算2作目のコンピレーションアルバム(日本ではだいぶ遅れ、2005年7月発売)。初のシングルコレクションアルバム『FOREVER DELAYED』(2002年)と対をなす、シングルカップリング曲を中心に構成された2枚組アルバムで、ディスク1にはオリジナル曲(未発表曲含む)、ディスク2にはカバー曲(初音源化曲含む)がそれぞれ収められており、マニックスの“裏サイド”を存分に満喫できる内容となっています。

“裏サイド”とはいうものの、その内容はアルバム本編と引けを取らないほどの完成度の高い楽曲ばかり。録音時期はさまざまで、古いものは1991年の「Motown Junk」収録の「Sorrow 16」と「We Her Majesty’s Prisoners」で、最新は「4 Ever Delayed」(前年の『FOREVER DELAYED』のタイトルトラックとして制作されたものの、未収録。2003年に日本企画EP『FOREVER DELAYED EP』が初出)になるのかな。というわけで、10年以上にわたりシングルのカップリングで実践されてきた実験の数々が、ここで聴けるというわけです。

もちろん、ここに収録されていないカップリング曲も多数存在します。例えば「R.P. McMurphy」(1991年の「Stay Beautiful」収録)や「Patrick Bateman」(1993年の「La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)」収録)、「Too Cold Here」(1994年の「Revol」収録)あたりは、ファンの間でも人気の高い楽曲なのに未収録。このへんは日本限定で発売された紙ジャケ2枚組仕様の限定盤などで聴くことができるので、興味を持った方はチェックしてみてはいかがかと。

とはいえ、それ以外は概ね満足な内容ではないかと。90年代初頭の勢いに満ちたパンクチューンから、3rdアルバム『THE HOLY BIBLE』(1994年)へと向かっていく過程の無機質さが増した楽曲、3人になってからのエモーショナルかつキャッチーなポップチューンなど、とにかくバラエティに富んでいる。改めて、シングルコレクション以上にこのバンドの凄みが味わえるのではないでしょうか。

そして、ディスク2のカバー集。スタジオテイクからライブ音源、ラジオパフォーマンスまで音源的にはさまざまですが、取り上げているアーティストがTHE CLASHチャック・ベリーストーンズといったルーツから、GUNS N' ROSESNIRVANA、HAPPY MONDAYS、PRIMAL SCREAMといった近代のアーティストまで、さらに意外なところではWHAM!などもあり、改めてその多様性にも驚かされます。ちなみに、こちらのカバーに関しては意外とストレートに演奏しており、どちらかというとコピーに近いのかなと。そのへんは原曲者に対する愛情の強さ故かもしれませんね。

なお、ここでも漏れたカバー曲がいくつか。「Under My Wheels」(アリス・クーパー)、「Charles Windsor」(McCARTHY)、「The Drowners」(SUEDE)、「Stay With Me」(FACES)と、漏れたどれもが個人的に気に入っていたカバーなので残念極まりないです。ま、これらの音源も先に書いた紙ジャケ2枚組で聴けるので、気になる人は探してみてはどうでしょう。

あ、本作を購入するときは少々高いですが国内盤をオススメします。というのも、ボーナストラックとして今は入手困難な無料配布EP『GOD SAVE THE MANICS』(2005年)収録の3曲が追加されているので(カバー盤のラストに追加というのが少々アレですが)。さらに、当時ソニーのCMソングとしてオンエアされていた「Everything Must Go」のシングルバージョン(3分ちょっとに編集されたバージョン)も追加されているので、まあ多少のお得感があるのかなと。『GOD SAVE THE MANICS』は配信もされていない貴重音源なので、ぜひ日本盤を探してみてください!



▼MANIC STREET PREACHERS『LIPSTICK TRACES: A SECRET HISTORY OF MANIC STREET PREACHERS』
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投稿: 2018 10 15 12:00 午前 [2003年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

2018年10月14日 (日)

RIDE『GOING BLANK AGAIN』(1992)

1992年3月にリリースされた、RIDE通算2枚目のオリジナルアルバム(日本では4月に発売)。1stアルバム『NOWHERE』(1990年)から1年半という短いスパンで届けられた本作は、プロデュースをバンド自身と前作のミックスを手がけたアラン・モウルダー(MY BLOODY VALENTINETHE SMASHING PUMPKINSNINE INCH NAILSなど)が担当。自己最高の全英5位を記録し、本国では10万枚を超えるヒット作に。「Leave Them All Behind」(同9位)、「Twisterella」(同36位)というシングルヒットも生まれました。

8分を超えるオープニングトラック「Leave Them All Behind」こそ“これぞシューゲイザー!”と呼びたくなるほど完成度の高い楽曲ですが、本作は決してシューゲイザー一辺倒というわけではありません。むしろ、シューゲイザーのフィールドに片足を突っ込みながら、もう片方で“脱シューゲイザー”を宣言するような、そんな力作に仕上がっています。

前作『NOWHERE』は確かにシューゲイザーの代名詞的作品だったと思います。しかし、「Leave Them All Behind」を初めて聴いたとき……ぶっちゃけ「あ、軽く前作を超えやがった」と思ったものです。強度という点においては、本作の無双感はハンパないんですよ。

かと思えば、歪み系の弱いギターポップチューン「Twisterella」にびっくりさせられ、“もはやパワーポップじゃん!”と叫びたくなる「Not Fazed」、前作にあったスタイルのひとつを進化させた叙情的な「Chrome Waves」など、音楽性の幅を一気に広げ始めています。

これってつまり、友達同士で「これやろうぜ!」って軽い気持ちで始めたバンドが、経験を積んだことで急激に進化していった……その一番良いタイミングを捉えたということなんでしょうかね。事実、この先メンバー間のバランスがいびつになり始め、急速に終焉へと向かっていくわけですから。

「Leave Them All Behind」とは別の形でシューゲイザーを体現している「Cool Your Boots」や「OX4」など、次作『CARNIVAL OF LIGHT』(1994年)ではもう聴けない輝き……バンドとしてここでクライマックスを迎えるなんて、あの当時は考えもしなかったなぁ。

個人的な思い出をひとつ。このアルバムがリリースされた頃、僕はイギリスに留学中でした。たまたま観たBBC『TOP OF THE POPS』で流れた「Leave Them All Behind」のスタジオライブ映像(たぶん当て振りだったと思う)に衝撃を受け、アルバムは発売されてすぐに購入。当時ポータブルCDプレイヤーなんて持っておらず、カセットしか聴けない状況だったので、当然カセット版を購入するわけです。旅の間、ずっと聴きまくったなぁ……。で、帰国してCDを購入したんだった。マニックス『GENERATION TERRORISTS』とこれはイギリス滞在中、本当にお世話になったアルバムでした。そんな大切な思い出の詰まった1枚です。



▼RIDE『GOING BLANK AGAIN』
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投稿: 2018 10 14 12:00 午前 [1992年の作品, Ride] | 固定リンク

2018年10月13日 (土)

NOTHING『DANCE ON THE BLACKTOP』(2018)

2018年8月にリリースされた、NOTHINGの3rdアルバム。前作『TIRED OF TOMORROW』(2016年)のツアー後に脱退した元DEAFHEAVEN、現WHIRRのニック・バセット(B/WHIRRではギタリスト)に代わり、USハードコアバンドJESUS PIECEのフロントマンであるアーロン・ハードが新たに加入、プロデューサーにはジョン・アグネロ(DINOSAUR JR.、SONIC YOUTH、ANDREW W.K.など)を迎え制作された初作品です。

シューゲイザー、ドリームポップ、ニューウェイヴ、90年代のUKロックといった要素をミックスし、現代によみがえらせたそのサウンドは本作でも健在。オープニングを飾る「Zero Day」からして、「これがフィラデルフィアのバンドかよ!」と思わせる陰鬱としたシューゲイザーサウンドを唸らせています。

そこにはグランジをはじめとする90年代初頭のUSオルタナティヴロックはもちろん、DEFTONESなど90年代後半からゼロ年代に勃発したヘヴィロックの香りも感じられ、単なるシューゲイザー/ドリームポップ・フォロワーでは終わらない不思議な質感が備わっています。

ダークでメランコリックな冒頭2曲(「Zero Day」「Blue Line Baby」)があるかと思えば、「You Wind Me Up」のようなモロに90年代前半のUKロック/シューゲイズポップも存在するし、爆音ギターとクリーントーンの対比が豪快ながらもポップさが感じられる「Us/We/Are」や、センチメンタリズムの強い「Hail On Palace Pier」みたいに「これ、本当にアメリカのバンドなの?」と驚かされる楽曲も含まれている。もちろん、その合間には「Plastic Migraine」や「I Hate The Flower」にようにヘヴィさを伴う楽曲が並んでいるのですから……なんというか、本当に気持ち良い。ある一定の年代にとって、ど真ん中に響くアルバムではないでしょうか。

個人的に本作のキモとなっているのが、終盤に配置された8分近くにおよぶ対策「The Carpenter's Son」。初期RIDEのアルバム終盤に入ってそうなスローナンバーは、本当に夢見心地にさせてくれる極上の1曲だと思うんです。大きな山こそないものの、このなだらかに流れていく感じと音響系的なギターの音色やフレージング、すべてがツボなんです。だからこそ、(ボーナストラック除く)ラストに再びメランコリックなロックチューン「(Hope) Is Just Another Word With A Hole In It」があると余計にグッとくるというか。いやあ……完璧。

本作は特に、ギターのエフェクトや音色の作り方が過去イチだと思いますし、実際それをカッコよく活かせる楽曲が揃っていると思います。と同時に、メジャー感も過去2作以上ではないかと。

これが2018年後半にリリースされた新譜かと思うと、90年代リアルタイム通過世代にはおよそ信じられないといいますか……若い世代はもちろんですけど、あの時代に思春期を過ごした大人たちにこそ触れてほしい1枚です。



▼NOTHING『DANCE ON THE BLACKTOP』
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投稿: 2018 10 13 12:00 午前 [2018年の作品, Nothing] | 固定リンク

2018年10月12日 (金)

THERAPY?『CLEAVE』(2018)

2018年9月リリースの、THERAPY?通算13枚目のオリジナルフルアルバム。前作『DISQUIET』(2015年)でAmazing Recordsに移籍した彼らでしたが、今作では新たにMarshall Records(あのアンプメーカーのMarshallによる新興レーベル)と契約。ここ数作、リリースのたびにレーベルを変えている彼らですが、やはりTHERAPY?クラスでも複数枚契約って難しいんですね。

本作最大の注目ポイントは、2作目のアルバムにして最大のヒット作『TROUBLEGUM』(1994年)やポップに振り切れた4thアルバム『SEMI-DETACHED』(1998年)以来となるクリス・シェルドン(PIXIESFEEDERFOO FIGHTERSなど)がプロデュースを手がけたということ(2003年の7thアルバム『HIGH ANXIETY』ではミックスを担当していたので、実質15年ぶりのタッグとなります)。今春以降「Callow」や「Wreck It Like Beckett」といった楽曲がデジタルシングルとして発表されてきましたが、それを聴く限りでは前作の延長線上にある、90年代半ばの黄金期を思わせるスタイルに回帰した作風ではないかと期待させてくれました。

で、完成したアルバム。全10曲でトータル33分と非常にコンパクトな内容ですが、期待を裏切らないかなりの力作に仕上げられています。

HELMETを思わせる硬質な「Wreck It Like Beckett」や、親しみやすいメロディを持つキャッチーな「Callow」、ヘヴィながらもとっつきやすい「Success? Success Is Survival」、THERAPY?らしいグルーヴ感を持つ「Crutch」、あの“カンカン”したスネアの音色とハーモニクスを効かせたギターのカッティング音が「そうそう、これこれ!」と懐かしさを思い出させてくれる「Dumbdown」など、とにかく“ファンが望むTHERAPY?像”をとことん追求してくれていることろに共感を覚えます。やればできるじゃん、と。

もちろん、2000年代以降の作品も決して悪かったわけではありません。ですが、以前よりも高音が出なくなったアンディ・ケアンズ(Vo, G)のメロディライン&センスに首を傾げたくなることが多かったのもまた事実。ところが、本作ではここ数作での努力が実ったのか、過去の“らしさ”と今できることの折衷案がベストな形で具現化されているのです。これは決してマイナスの遺産ではなく、すべてをポジティブに捉えた結果ではないでしょうか。

とにかくどの曲も、聴けばそれが「うん、THERAPY?ってこうだよね!」と納得いくものばかり。ラストの「No Sunshine」で聴かせるダークでドラマチックな世界観含め、すべてにおいて“痒いところに手が届く”作品なのです。

以前のような成功を収めることはもはや難しいでしょうし、日本盤もリリースされることはないでしょう。来日にしても……いや、観たいなあ。このアルバムの楽曲はぜひ生で聴きたいです。そう強く思わせてくれる力作、ぜひ触れてみてください。



▼THERAPY?『CLEAVE』
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2018年10月11日 (木)

MICK JAGGER『WANDERING SPIRIT』(1993)

1993年2月にリリースされた、ミック・ジャガーの3rdソロアルバム。1989年に発売されたTHE ROLLING STONESのアルバム『STEEL WHEELS』とそれに伴う大々的なワールドツアー、その模様を収めたライブアルバム『FLASHPOINT』(1991年)のリリースと、ストーンズに関する大仕事を終え、ひと段落したタイミングに制作されたのが、この5年半ぶりのソロアルバムでした。イギリスでは前作の26位を上回る12位、アメリカでは過去最高の11位にランクイン(50万枚以上の売り上げ)。「Sweet Thing」(全英24位、全米84位)、「Don't Tear Me Up」(全英86位)というシングルヒットも生まれています。

過去2作ではビル・ラズウェルやナイル・ロジャース、デイヴ・スチュワートといった旬のプロデューサーを迎えましたが、本作ではRED HOT CHILI PEPPERSなどでおなじみのリック・ルービンと初タッグ。すでにこの頃、リックはAC/DCの新作に着手したりと、オールドロック復興支援的な役割に不可欠な存在となっていました。もしかしたらミック、ここでのリックとのタッグがうまくいったら次のストーンズの新作も……なんてことも考えていたのかしら。

そして、過去2作との最大の違いはバンドサウンドに特化した作風だということ。前2作はジェフ・ベックを迎えつつも、バンド的な楽曲とダンサブルなポップソングをうまくミックスした作風でしたが、今回は曲によってゲストプレイヤーとしてレッチリのフリーやレニー・クラヴィッツが参加しつつも、ほぼ固定のバンドメンバーで制作。1988年のソロツアーに参加したジミー・リップ(G)がバンマス的な役割を果たしたのでしょうか、彼は本作を携えたソロライブにも参加しております。また、ストーンズの『STEEL WHEELS』や同ツアーに携わったマット・クリフォードもハープシーコードなどでその名前を見つけることができます。

まあとにかく、オープニングの「Wired All Night」からドライブ感あふれるロックンロールを聴かせてくれ、続く「Sweet Thing」ではブラックテイストの強いファンクチューン、「Out Of Focus」ではアメリカ南部風ロックでストーンズファンを楽しませてくれます。レニー・クラヴィッツとのデュエット「Use Me」(ビル・ウィザースのカバー)やジェームズ・ブラウンでおなじみの「Think」のファンクロックカバーなど、ストーンズでやるにはちょっと……と思われる楽曲もピックアップされているのが、いかにもソロっぽくて良いです。

「そうそう、こういうミックが聴きたかった!」と、80年代のストーンズファンならそう評価したことでしょう。しかし、この頃にはすでにストーンズは息を吹き返しており、本作の翌年1994年夏には早くも次作『VOODOO LOUNGE』を発表しているので、また本作の評価は変わってくるのかなと。とはいえ、その内容の良さにはまったく文句はありませんし、ミックのソロでここまでワクワクさせられたのも初めてのこと。今でも聴く頻度の多いお気に入りの1枚です。



▼MICK JAGGER『WANDERING SPIRIT』
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2018年10月10日 (水)

THE ROLLING STONES『BRIDGES TO BABYLON』(1997)

1997年9月にリリースされたTHE ROLLING STONESの21stアルバム(イギリスにて。アメリカでは23枚目のアルバム)。全英6位、全米3位という好成績を残し、アメリカでは100万枚を超えるセールスを記録したほか、「Anybody Seen My Baby?」(全英22位)、「Saint Of Me」(全英26位、全米94位)、「Out Of Control」(全英51位)といったシングルヒットを生み出しました。

産業ロック的な『STEEL WHEELS』(1989年)から『VOODOO LOUNGE』で原点回帰。ビル・ワイマン(B)というオリジナルメンバーを欠きながらも、レコーディング&ツアーメンバーとしてダリル・ジョーンズ(マイルス・デイヴィスのバンドや、スティングの1stソロツアーに参加)が加わったことで「クセは弱いけど安定感の強いロック&ソウルバンド」へと進化しました。そこから続くこの『BRIDGES TO BABYLON』では、『VOODOO LOUNGE』でのスタイルに当時主流だったダンスミュージックやデジタルサウンドを加えた革新的なものとなっています。

プロデュースは前作『VOODOO LOUNGE』(1994年)から引き続きドン・ウォズ&THE GLIMMER TWINS(ミック・ジャガーキース・リチャーズ)という安定の布陣に、ダニー・セイバー(マドンナデヴィッド・ボウイU2オジー・オズボーンKORNなど)、THE DUST BROTHERS(ベックBEASTIE BOYSサンタナヴィンス・ニールなど)、ロブ・フラボニ(ボブ・ディラン、エリック・クラプトン、THE BEACH BOYSなど)、ピエール・ド・ビューポート(キースのギターテック)といったモダンなプロデューサーとトラディショナルな面々が多数参加。こうして1枚のアルバムに多数のプロデューサーが参加するのはストーンズ史初のことで、曲ごとに変化をつけるという新たな試みが施されています。

それは演奏面にも言えることで、例えばオープニングの「Flip The Switch」や11曲目「Too Tight」ではアップライトベースを導入。モダンな色合いが濃い「Anybody Seen My Baby?」や「Out Of Control」ではサンプリングを導入したり、「Saint Of Me」では打ち込みのダンスビートを同期させたブリットポップ的手法が採られている(この曲ではベースをミシェル・ンデゲオチェロがプレイ)。「Might As Well Get Juiced」にもそれっぽいシンセがフィーチャーされていたりと、まあミックらしさに満ち溢れているんですよね、このアルバム。

かと思うと、キースVo曲が史上最多の3曲(「You Don't Have To Mean It」「Thief In The Night」「How Can I Stop」)も収録されている。そう考えると、トータル性重視というよりはそのときにやりたいことをいろいろ詰め込んだ実験作と言えなくもない。実際、トータルバランスは近作の中では一番バラバラですしね。

だけど、今でも演奏される頻度の高い「Out Of Control」が含まれているという点においては、バンドにとって無視できない1枚なのかもしれません。

にしても、このアルバムから次のスタジオアルバム『A BIGGER BANG』(2005年)まで、まさか8年もブランクが空くなんて当時は思ってもみませんでしたよ。視点を変えたら、ここでいろいろやり尽くした感も強かったのかもしれませんが……。



▼THE ROLLING STONES『BRIDGES TO BABYLON』
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2018年10月 9日 (火)

PRIMAL SCREAM『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP』(1994)

1994年3月にリリースされた、PRIMAL SCREAMの4thアルバム(日本では同年4月発売)。前作『SCREAMADELICA』(1991年)で全英8位、50万枚を超えるヒットを記録し、バンドは時代の寵児となりました。が、当時すでにヘロイン中毒でヘロヘロだった彼らは、この状態で次のアルバム制作に突入。イギリスを離れ、アメリカ・テネシー州メンフィスにてトム・ダウド(アレサ・フランクリンエリック・クラプトン、ロッド・スチュワートなど)をプロデューサーに迎えてレコーディングに突入したのですが……。

このへんは近く発売される本作のオリジナルバージョン『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP: THE ORIGINAL MEMPHIS RECORDINGS』と比較していただければおわかりいただけると思いますが、元のセッションはとにかく毒気の抜けたユルユルの“ストーンズもどき”なんですわ。もちろん、テイクによってはオリジナル版のほうが好み、っていう楽曲もなくはないですが、それでもすべてをこのままリリースするわけにはいかなかったと。

曲によってはジョージ・クリントンが参加&リミックスを担当してそれらしくなったものの、さすがに“ジャンキーがほぼ勢いで作ったかのような代物”をそのまま世に出せるわけもなく、ジョージ・ドラクリアス(THE BLACK CROWESRIDEREEFなど)が新たにミックスし直し、現代的な要素が加わることに。こうして、総制作費42万ポンド(笑)と言われる名(迷)作が難産を経て完成したわけです。

が、個人的にはこのアルバム、リリース当時から好きだったんですけどね。きっとミック・ジャガーは嫉妬したんじゃないかな、って。たぶんミックがストーンズでやりたいことって、こういうことなんじゃないの?って思ったわけです。

確かに『SCREAMADELICA』という、新たな時代を作る作品の後にここまでレイドバックされたら、そりゃあ呆れますよ。だけど、ボビー・ギレスピーというロックバカがお薬の力を借りて、なんの工夫もなくストレートにやりたいことをやった結果がオリジナル版であり、そこに多少の“作為”を加えた結果、少しだけ時代に寄り添った。最高じゃないですか。

「Rocks」(全英7位)も「Jailbird」(全英29位)も、その“作為”があったから名曲になったわけだし、アルバム自体も(セールス的には前作に及ばないものの)全英2位という好記録を残せたわけだしね。2ndアルバム『PRIMAL SCREAM』(1989年)でのガレージロック色や8thアルバム『RIOT CITY BLUES』(2006年)でのオーガニックなロックンロール色とも違う、1994年という時代の転換期にしか生み出せなかったであろうこの異色作、間もなくリリースされるオリジナル版とともに、ぜひこのタイミングにじっくり浸ってみてください。



▼PRIMAL SCREAM『GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP』
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投稿: 2018 10 09 12:00 午前 [1994年の作品, Primal Scream] | 固定リンク

2018年10月 8日 (月)

NEW YORK DOLLS『NEW YORK DOLLS』(1973)

1973年7月にリリースされた、NEW YORK DOLLSのデビューアルバム。当時のメンバーはデヴィッド・ヨハンセン(Vo)、ジョニー・サンダース(G)、シルヴェイン・シルヴェイン(G)、アーサー・キラー・ケイン(B)、ジェリー・ノーラン(Dr)。アルバムのプロデュースはかのトッド・ラングレンが担当し、このほかにもトッドはアルバムでピアノやモーグシンセなどでも参加しております。

アルバムジャケットを見ると、そのケバケバしいルックスに驚かされ「グラムロック?」と思ってしまうかと思います。もちろんそれも間違いではありませんが、それよりもここで鳴らされている(記録されている)音の塊はパンクロックそのものではないでしょうか。

例えば、60年代末から70年代初頭のキラキラしたメイクのストーンズ。アメリカではマイナーな存在だったかもしれないけど、デヴィッド・ボウイを筆頭にMOTT THE HOOPLE、T. REXといったお化粧をしたロックアーティスト。そういったバンドたちと肩を並べる存在、あるいはその延長線上にあるムーブメントだったのかもしれない。けど、何か違う。むしろ、ドールズの数年先にデビューしていたTHE STOOGESを、アグレッシヴさをそのままに、もっとキャッチーにした存在。そのほうがピンとくるのは僕だけでしょうか。

オープニングの「Personality Crisis」を筆頭に、「Looking For A Kiss」や「Frankenstein」「Trash」など、ロックンロールのフォーマットに乗ったポップなメロディと、どこか危うさが伴うバンドアレンジ。例えばそれは、本作から数年後に誕生するSEX PISTOLSにも通ずるものがある気がするし、さらにそこから10年後にデビューするGUNS N' ROSESにも共通するものがある。なんていうのは言い過ぎでしょうか?

僕自身がこのアルバムと出会ってすでに30年近く経ちますが、今でも本作と向き合うときは「ジャンルとは?」「カテゴリーとは?」なんてことを考えさせられます。それくらい、括りとかどうでもよくなる1枚。それがNEW YORK DOLLSのデビューアルバムの持つ大きな意味なのかもしれません。

このアルバムから影響を受けて誕生したバンドは、ここ日本にも少なくありません。ジャケットのアートワークを見て「あっ!」と思い浮かべるバンドもいるでしょうし、楽曲の1つひとつを聴いて脳内でイメージできるバンドもいるでしょう。そういった意味でも、国境関係なくすべてのロックファンに一度は接してほしいアルバムです。



▼NEW YORK DOLLS『NEW YORK DOLLS』
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投稿: 2018 10 08 12:00 午前 [1973年の作品, New York Dolls] | 固定リンク

2018年10月 7日 (日)

THE HELLACOPTERS『HEAD OFF』(2008)

2008年4月にリリースされたTHE HELLACOPTERSの通算7枚目にあたるスタジオアルバム。本作リリース前には同年での解散もされており、これがラストアルバムになることも事前にアナウンス済み。そんな中届けられたこのアルバムは、どこからどう聴いてもTHE HELLACOPTERS以外の何者でもない。誰もがそう、思ったはずです。いや、「でした」が正しいかな。

4thアルバム『HIGH VISIBILITY』(2000年)から6thアルバム『ROCK & ROLL IS DEAD』(2005年)までの3作をメジャーのUniversal Recordsから発表しましたが、ラスト作はインディーズに戻ってのリリース。国内盤も初期3作などを発表してきたトイズ・ファクトリーから発売されました。なんだか、最後の最後で原点回帰的で泣かせる、なんて当時は思ったものです。

気になる内容ですが、3枚目の『GRANDE ROCK』(1999年)から顕著になりだした「ガレージロック+ソウルミュージック」的なスタイルの究極形と言いたくなるような楽曲ばかり。速さにこだわるのではなく、メロディとグルーヴを追求した結果がこのスタイルなんでしょうね。ガレージロックとしてのカッコ良さを保ちながらも、要所要所が“黒っぽく”てセクシー、そしてメロディアスで男臭い。ロックファンが追い求めるセンチメンタリズムがすべてここに詰まっている、と言っても過言ではないと思います。

THE HELLACOPTERS、最後に“らしい”アルバムで幕を降ろすんだな。そう、僕を含め誰もが最初にそう思ったのではないでしょうか。一部のディープなガレージロックマニアを除いて……。

これ、発売後にネタ明かしされたのですが、実はこのアルバム、(日本盤ボーナストラック「Same Lame Story」を除く)全曲(いわゆる)B級ガレージロックバンドのカバーだったのです。詳細はWikipediaを見てもらうとして、僕自身が当時知っていたバンド名はTHE PEEPSHOWS、NEW BOMB TURKS、THE BELLRAYS、GAZA STRIPPERSくらい。とはいっても、バンド名は知っていてもこれらの楽曲は知らなかったのですが……。

にしても、THE HELLACOPTERSが「偏見なく聴いてほしい」という理由でその詳細を明かさなかったこと、そして「俺らみたいなバンドのアルバムを通じて少しでもカバーしたバンドに金が入れば」という心意気。それを最後にやるか?という点含めて、すごいバンドだなと当時は呆気に取られたものです。

今も別にカバーアルバムと思って接していないし、純粋にTHE HELLACOPTERSのアルバムの1枚として楽しんでおります。だって、普通にカッコいいもの。それ以外の言葉、必要ないでしょ?



▼THE HELLACOPTERS『HEAD OFF』
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投稿: 2018 10 07 12:00 午前 [2008年の作品, Hellacopters, The] | 固定リンク

2018年10月 6日 (土)

ROB ZOMBIE『HELLBILLY DELUXE』(1998)

1998年8月にリリースされた、WHITE ZOMBIEのフロントマンであるロブ・ゾンビの1stアルバム。1995年発売の『ASTRO CREEP: 2000』(1995年)を最後に、オリジナルアルバムの発売がなかったWHITE ZOMBIEはこの『HELLBILLY DELUXE』発売直後に解散発表。ロブは『ASTRO CREEP: 2000』で築き上げたスタイルを、ソロ活動で引き継ぐことになります。

当時のバンドメンバーは、WHITE ZOMBIE後期に参加したジョン・テンペスタ(Dr)、のちにオジー・オズボーンのバンドに加わるブラスコ(B)、そしてマイク・リッグス(G)という面々。プロデュースはスコット・ハンフリー(MOTLEY CRUEANDREW W.K.MONSTER MAGNETなど)が担当し、そういった繋がりからダニー・ローナー(NINE INCH NAILSMARILYN MANSONなど)やトミー・リー(MOTLEY CRUE)もゲスト参加しています。

聴けばわかるように、とにかくモダンなヘヴィロックナンバーをザクザクしたギターリフと適度なデジタル加工で表現しており、抑揚がないようで実はキャッチーというロブのメロディ/ボーカルラインと合わさることで不思議と親やすい仕上がり。これはWHITE ZOMBIE時代から引き継がれている重要な要素なのですが、ソロになってからバンド形態にこだわる必要もなくなったためか、そこの入っていきやすさがより増しているような気がします。

ヘヴィロックなのにキャッチーで聴きやすい。それってどうなの?と思われそうですが、それっておどろおどろしいMARILYN MANSONにも共通して言えることで、そのへんは彼らのルーツのひとつであるKISSアリス・クーパーあたりに通ずるものがあるのではないでしょうか。そういう意味では、僕はマンソンの時代に敏感なショックロックはアリス・クーパーの後継者、ロブ・ゾンビの良くも悪くも金太郎飴的スタイルはKISSの後継者だと思っているのですが、いかがでしょう?

一歩間違えばアングラなデジロック/インダストリアルメタルで括られてしまっても不思議じゃないのに、しっかりメジャーのど真ん中で活躍できるだけのポテンシャルも備わっている。しかも、1曲1曲が2〜3分台と非常にコンパクトなのも好感が持てるポイント。トータルで38分程度というトータルランニングも古き良き時代のロックのスタンダードに通ずるものがあるし、しかもこのスタンス、現在まで見事に踏襲されている。最長でも『HELLBILLY DELUXE 2』(2010年)の46分ですから。最新作『THE ELECTRIC WARLOCK ACID WITCH SATANIC ORGY CELEBRATION DISPENSER』(2016年)に至っては過去最短の31分ですからね(笑)。恐れ入ります。

ソロキャリア20年を迎えた今、どの作品から手を出せばいいのか迷っている方。キャリア総括的なライブアルバムやWHITE ZOMBIE時代からソロまでを総括したベストアルバム『PAST, PRESENT & FUTURE』(2003年)も良いですが、まずはソロの原点でもある本作『HELLBILLY DELUXE』から聴くことをオススメします。一応キャリア的にも全米5位、300万枚以上を売り上げた最大のヒット作ですから。



▼ROB ZOMBIE『HELLBILLY DELUXE』
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投稿: 2018 10 06 12:00 午前 [1998年の作品, Motley Crue, Rob Zombie] | 固定リンク

2018年10月 5日 (金)

NINE INCH NAILS『BROKEN』(1992)

1992年9月にリリースされた、NINE INCH NAILSのEP。1stアルバム『PRETTY HATE MACHINE』(1989年)のリリース元TVT Recordsとの裁判があり、思うように新作を発表できなかったトレント・レズナー。そういった経緯もあり、本作は新たに契約を結んだInterscope Records経由での実に3年ぶりの新作となりました。人気や注目度がひたすら高まる中でのリリースとあって、本作は全米7位という好記録を残しています。

エレポップやインダストリアル、エレクトリックボディミュージックを彷彿とさせる前作から一変、本作では激しいギターを軸にした実に攻撃的な作品集に仕上げられています。6曲入りと実に短い作品集ですが、その内訳も2曲がSE的なインストなので、実質4曲の歌モノということになります。

で、その歌モノ楽曲が実に素晴らしく。オープニングSE「Pinion」から続く「Wish」は、当時主流だったダンスミュージックの手法をそのままヘヴィなギターミュージックに置き換えたようなインダストリアルメタルの名曲。現在までほぼ毎回ライブで披露される、彼らの代表曲のひとつになっています。

そこから続く「Last」が、これまたヘヴィ&ラウドでカッコいい。小休止的なインスト「Help Me I Am In Hell」を挟んで始まる「Happiness In Slavery」は前作の延長線上にあるボディミュージック的な作風ですが、その強度は前作以上。さらに「Wish」の続編的なファストチューン「Gave Up」で激しく幕を降ろします。ホント、一寸の隙も見せない完璧な作り。

で、本作はアメリカでの初リリース時に8センチCDが特典として付き、こちらに「Physical」と「Suck」の2曲が収録されていました。前者がアダム・アントのカバーで、後者はトレントも制作に携わったPIGFACEのカバー。で、日本やアメリカ以外の国ではこれらの楽曲はCD本編に、トラック98、99に収録されていました。つまり、トラック7からトラック97までは1秒程度の無音が収録されており、ストレートプレイだったらこの無音を経てラスト2曲へ到達、メンドくさかったら一気に曲を飛ばさなければ聴けないわけです。CDが99トラックしか収録できないという事実を突きつけられたというか、逆に99トラックをフルで使ったCDに初めて出会ったというか。トレントの不敵な笑みが浮かんできそうな仕掛けですね。

あと、本作といえば世に公開できないMVが制作されたのも印象深い出来事でした。本作からは「Last」以外の5曲(ボーナス2曲除く)のMVが制作されており、そのうち「Happiness In Slavery」はとてもじゃないけどオンエアできないってことで、1997年発売のビデオ作品『CLOSURE』まで正式な形では公開されていませんでした。内容については文字にするとアレなので(笑)、ネットで調べてみてください。ちなみにこの『CLOSURE』、国内リリースはこれまでなし。2本組VHS版が発売後数年間は西新宿あたりで入手可能でした。2004年にはDVDバージョンも発売されたようです。

※以下、エグい内容ですので閲覧注意。

なお、NINは今年9月13日からスタートした全米ツアー『Cold and Black and Infinite North America 2018』で、ライブ冒頭からこの『BROKEN』をボーナス2曲含む形で完全再現披露しています。「Happiness In Slavery」が演奏されたのは1995年以来だとか……なんだそれ、生で観たいぞ。



▼NINE INCH NAILS『BROKEN』
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投稿: 2018 10 05 12:00 午前 [1992年の作品, Nine Inch Nails] | 固定リンク

2018年10月 4日 (木)

SLAYER『DIVINE INTERVENTION』(1994)

1994年9月に発表された、SLAYER通算6作目のオリジナルアルバム。前作『SEASONS IN THE ABYSS』(1990年)から4年ぶりのスタジオ作品となりますが、その間にはライブアルバム『DECADE OF AGGRESSION』(1991年)のリリース、凄腕ドラマーのデイヴ・ロンバード脱退、新たに元FORBIDDENのポール・ボスタフ加入、映画『ジャッジメント・ナイト』のサウンドトラック『JUDGEMENT NIGHT: MUSIC FROM THE MOTION PICTURE』(1993年)にポール参加後初のスタジオ音源「Disorder」を提供するなど、常に話題には事欠かない状況でした。

『SEASONS IN THE ABYSS』をそれまでの路線……スピードの『REIGN IN BLOOD』(1986年)と重さの『SOUTH OF HEAVEN』(1988年)を総括するかのような集大成的作品に仕上げ、過去10年のベストアルバム的内容の『DECADE OF AGGRESSION』でそれまでの活動に(デイヴ脱退という予期せぬハプニングも含め)ひと区切りをつける形となったSLAYER。新ドラマーが加入したこともあり、また音楽シーンが1990年からの4年で大きな変化を迎えたことも影響し、SLAYERは新たなステージへと突入します。

ブラックアルバム期のMETALLICAPANTERAを筆頭としたグルーヴメタルや、NIRVANAなどをはじめとするグランジがメインストリームを席巻していた時代に投入されたこの作品は、時代に迎合することなく、バンドが持つ凶暴性と狂気性のみに特化した内容と言っても過言ではありません。ぶっちゃけ、『SEASONS IN THE ABYSS』で感じられたメロウさ、(それまでのSLAYERと比べての)親しみやすさは完全に消え失せ、無慈悲なまでに轟音とスピード、ヘヴィさで圧倒させます。

また、音質的にも意図的なのかデッドなサウンドで録音されており、そこに異質さを感じるものの、逆にこういった演出によって凶暴さをより強めることに成功。そういった要素は、エモーショナルさすら感じさせた前作とは相反した無機質なものへと昇華させており、それが本作が潜在的に持つ狂気性をより強める結果につながっています。

ぶっちゃけ、リリース当時に初めてこのアルバムを聴いたときは馴染めなかったんですよ。いや、『SEASONS IN THE ABYSS』で自分自身がこのバンドに対してどこか“甘さ”を感じるようになっていたんでしょうね。だからこそ、ここまで圧倒的な作品(というよりも、音の塊)をつぶけられて、そこについていけなかったと。そういうことなんだと思います。

そういえば、上でこのアルバムを無慈悲と表現しましたけど、無慈悲=NO MERCY……1stアルバム『SHOW NO MERCY』(1983年)……ああ、そうか。これってSLAYER第2章の幕開けを飾る、新たなデビューアルバムだったのか。発売から25年近く経って、ようやく理解できた気がします。

こんな残虐なアルバムが、全米8位という過去最高記録を打ち出したのも興味深い。ホント、最高のカムバック作ですね。



▼SLAYER『DIVINE INTERVENTION』
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投稿: 2018 10 04 12:00 午前 [1994年の作品, Slayer] | 固定リンク

2018年10月 3日 (水)

FLOTSAM AND JETSAM『NO PLACE FOR DISGRACE』(1988)

1988年5月にリリースされた、アメリカ・アリゾナ州出身のスラッシュメタルバンドFLOTSAM AND JETSAMの2ndアルバム(日本では同年7月発売)。Elektra Recordsからのメジャー1作目となり、全米143位を記録する小ヒット作となりました(とはいえ、Elektraからのリリースは本作のみ。1990年の次作『WHEN THE STORM COMES DOWN』よりMCA Recordsからのリリースとなります)。

このバンドは当時METALLICAに加入したジェイソン・ニューステッド(B)が以前在籍していたバンドということで知られており、メジャー契約もそのへんの流れがあったのかなという気がします(ジェイソンの後任で加入したトロイ・グレゴリーはMETALLICAのラーズ・ウルリッヒの推薦だったという話もありますし)。

ジェイソンのプレイは1stアルバム『DOOMSDAY FOR THE DECEIVER』(1986年)で聴くことができますが、本作にはその名残といいますか、ジェイソンがクレジットされている楽曲が複数含まれております(「No Place For Disgrace」「N.E. Terror」「I Live You Die」の3曲)。だからといって、それらの楽曲からジェイソンの面影が見え隠れするかと言われたら、まったくそんなことはなく、むしろFLOTSAM AND JETSAMというバンドが前作からどのように進化したかが克明に浮き彫りになっていることが理解できるのではないでしょうか。

この時代ならではの音質には目を瞑るとして、楽曲の質やアレンジの妙、ギターリフの冴え渡りっぷりにはハンパないものがあり、上記のジェイソンの件がなくとも彼らは間違いなくメジャーに進出していたんだろうな、と思わされる内容。1988年という時代性にフィットしたテクニカルなスラッシュナンバーがずらりと並び、54分という長尺ながらも最後まで退屈することなく楽しめます。

オープニングを飾るタイトルトラック(名曲!)を筆頭に、アップダウンの激しいアレンジの楽曲が多い中、メロウなバラード「Escape From Within」、エルトン・ジョンの代表曲を非常に“らしく”カバーした「Saturday Night's Alright (For Fighting)」なども含まれており、本当に聴きどころの多い1枚です。

先に挙げた「I Live You Die」は、のちに発売された『DOOMSDAY FOR THE DECEIVER』再発盤にジェイソン在籍時のデモ音源が追加されているのですが、そのブラッシュアップっぷり、短期間でのセンスの磨かれぶりに驚かされるのではないでしょうか。そういった意味でも、本作はなるべくしてこうなったということが理解できるはず。僕自身、確かにジェイソンきっかけで聴いたバンド/アルバムですが、今もこうやって素直に楽しめるというのは、やっぱりそれだけ魅力的なアルバムだという事実があってこそなんです。

ちなみに本作、2014年には発売25周年を記念した再録アルバムもリリースされています。オリジナル版に参加したメンバーのうち、ベーシスト以外は当時のメンバーのままで、新たにバイオリンやマンドリンなどが加わったパートがあるものの(笑)、オリジナル版よりも良い音質と安定感のある演奏を楽しめるので、聴き比べてみるのも面白いと思いますよ。



▼FLOTSAM AND JETSAM『NO PLACE FOR DISGRACE』
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投稿: 2018 10 03 12:00 午前 [1988年の作品, Flotsam And Jetsam] | 固定リンク

2018年10月 2日 (火)

最近制作したプレイリスト(2018年9月版)

当サイトでは1ヶ月の間に紹介した作品からの楽曲をピックアップしたプレイリストを制作し、SpotifyやAppleMusicといったストリーミンスサービスにて公開しておりますが、たまに気が向いたら「仕事で執筆した記事に対応したプレイリスト」や「そのときの気分で聴きたい曲を集めたプレイリスト」を作っています。


ここで紹介するのは、そんなプレイリストの一部。まずは、恒例となった『TMQ-WEB Radio』の最新版。

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続いて、リアルサウンドさんで連載中のたHR/HMやラウドロックの海外新譜を紹介するキュレーション記事の最新版「U.D.O.、Mantar、Annisokay……ジャーマンメタル&ラウドシーンの過去と未来をつなぐ新作10枚」に関連したプレイリストです。

こちらは、記事内で紹介した新作から、各ストリーミングサービスで配信されているものを中心に、そこに付随するジャーマンメタルの代表的なバンドの楽曲も追加した20数曲で構成したプレイリスト。あえてSpotify、AppleMusic双方の選曲を変えていますので、両サービスお楽しみいただける方はぜひ2つともチェックしてみてください。

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もうひとつは、9月頭くらいに気まぐれで作ろうと思って、途中で放置していたプレイリスト。9月末くらいの急に涼しくなったときに、「あ、あれの続き作りたいな」と思った“夏の終わりに聴きたい曲”セレクションです。

まあ、もう10月ですし……とはいえ、もう少し暑い日が続きそうな気もするので、そんなときに(秋の始まりを感じつつ)聴いていただけたらと。


不定期にですが、こんな感じでたまにプレイリストを作って公開していきたいと思います。

投稿: 2018 10 02 09:00 午後 [「音楽配信」] | 固定リンク

METAL CHURCH『BLESSING IN DISGUISE』(1989)

1989年2月発売の、METAL CHURCH通算3作目のオリジナルアルバム(メジャー2作目)。前作『THE DARK』(1986年)を携えたツアーを終えたあとにシンガーのデヴィッド・ウェインが脱退。新たにマイク・ハウを迎え、前作完成後にバンドを離れたカート・ヴァンダーフーフ(G)に代わりジョン・マーシャル(G)が加わった編成で始めて制作された1枚となります(とはいえ、カートは楽曲制作に全面参加したほか、レコーディングでも一部でプレイしているのですが)。

プロデューサーは前作のマーク・ドッドソンから、前作までエンジニアを務めていたテリー・デイト(PANTERASOUNDGARDENDEFTONES)に交代。ごく初期こそスラッシュメタル的印象のあった彼らですが、前作『THE DARK』で独自性を確立し、また新たなフロントマンの加入によってさらに新しい個性を生み出すことに成功します。

スラッシュの影響下にあるパワーメタルや、IRON MAIDEN以降のプログレッシヴなヘヴィメタルをベースにしつつ、アメリカのバンドらしい大味加減とアメリカのバンドらしからぬ繊細さが同居する珍しい、ある種のストイックさを感じさせるスタイル(と、昔から勝手に思っていました)は、当時メジャーで活躍していたほかのスラッシュメタルバンド/スラッシュ流れのメタルバンドと比較してもかなり異色。そこにデヴィッド・ウェインほどクセが強すぎず、耳に馴染む声を持つマイク・ハウの歌が加わることでバンドとしてもかなり親しみやすくなった印象があります。

また、ある程度スピード感を維持しているものの、実は軸になるのはミドルテンポの楽曲というのも、次作『THE HUMAN FACTOR』(1991年)への布石を感じさせます。歌メロも耳に残りやすいものが多いせいか、長尺の楽曲が多いながらもまったく飽きが来ない。だって、アルバムのど真ん中に大作3曲(4曲目「Anthem To The Estranged」は9分半、5曲目「Badlands」は7分半、6曲目「The Spell Can’t Be Broken」は約7分)を配置しているんですから。

しかも、その「Anthem To The Estranged」と「Badlands」は本作におけるキモであり、オープニングトラック「Fake Healer」とともに本作を代表する名曲という事実にも驚かされます。いや、本当にこのドラマチックさは何ものにも変えがたいものがありますよ。

リリース当時、「Badlands」のMVがMTVでヘヴィローテーションされたこともあり、アルバムはBillboard 200で最高75位を記録。前作『THE DARK』での成功を見事結果につなげました。チャート的には失敗したものの、内容的には素晴らしい次作『THE HUMAN FACTOR』までの3作はバンドの充実期に相応しい名盤ばかり。ただ、残念なことに本作、日本国内では配信リリースもストリーミングもなし。勿体ないったらありゃしない。多くの人に伝わってほしい80年代の名盤のひとつだと思うので、ぜひ気軽に聴けるようにしてもらいたいものです。



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投稿: 2018 10 02 12:00 午前 [1989年の作品, Metal Church] | 固定リンク

2018年10月 1日 (月)

ANTHRAX『STATE OF EUPHORIA』(1988)

1988年9月発売の、ANTHRAX通算4作目のスタジオアルバム。前作『AMONG THE LIVING』(1987年)が初の全米トップ100入り(62位)を記録したことで人気バンドの仲間入りを果たした彼らですが、続く本作はついに全米30位とトップ40入り。前作同様にアメリカだけで50万枚以上を売り上げるヒット作となりました。

プロデューサーを前作のエディ・クレイマーからマーク・ドッドソン(JUDAS PRIESTSUICIDAL TENDENCIESMETAL CHURCHなど)へ交代し、エンジニアに1stアルバム『FISTFUL OF METAL』(1984年)や2ndアルバム『SPREADING THE DISEASE』(1985年)に関わったアレックス・ペリアラス(METALLICATESTAMENTOVERKILLなど)が復帰するなど、最高の布陣で制作された本作、悪いわけがありません。

前作から導入したプログレッシヴな展開を含むアレンジはさらに激化。カバー曲「Antisocial」と短尺インスト「13」以外はすべて5分以上あり、オープニングの「Be All, End All」は6分半、「Who Cares Wins」は7分半という大作になっています。また、スラッシュメタルというよりは複雑な曲展開が用意されたスピードメタル的な要素が強まっており、スラッシュメタル度は前作よりも若干落ちるかもしれません。

とはいえ、我々がイメージする“ANTHRAXらしさ”は満載で、『AMONG THE LIVING』が好きな人なら一発で気にいる内容ではないかと思います。

とはいえ、すべてが良いとは言い切れないのも本作の特徴。複雑な展開を用いているとはいえ、全体的なイメージがちょっと直線的すぎる気もします。だからなのか、リリース当時は数回聴いて飽き始めた……という記憶も残っています。深みがない、コクが弱いと言ってしまえばそれまでですが、“ANTHRAXにしては”若干弱いのは確か。ほかのスラッシュメタルバンドと比べたら、クオリティははるかに高いものがあるとは思うのですが。

あと、それに関連していわゆる“キメ曲”が少ないのも弱さの一端なのかなと。だって、本作を代表する楽曲と言われたら、誰もがカバーの「Antisocial」を挙げるでしょうし、本作から今でも頻繁にライブで演奏する楽曲もそれくらいだし(時点で「Be All, End All」だろうけど、こっちはもっと頻度が低いし)。

音楽的/作家性としては、本作あたりから極まり始めているんですよね。ホームレスを題材にした「Who Cares Wins」や、当時アメリカで話題になっていたテレビ宣教師をネタにした「Make Me Laugh」(オジー・オズボーン「Miracle Man」と同じ題材ですね)などの社会派楽曲は次作『PERSISTENCE OF TIME』(1990年)への布石といえるし、小説や映画を題材にした楽曲(スティーヴン・キング『ミザリー』がネタの「Misery Loves Company」、デヴィッド・リンチ『ブルー・ヴェルヴェット』からインスパイアされた「Now It's Dark」)あたりは『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)へと続いていくし。そういった意味では、初期の路線と90年代以降の路線をつなぐ、過渡期の1枚なのかもしれませんね。

個人的な思い出は、リリース時期もあってか高校の修学旅行の移動中によく聴いた記憶が。彼らの全キャリアの中でもっとも聴く頻度の低い作品でしたが、こうやって久しぶりに聴いたら意外と良かったのも嬉しい発見かも。

あ、本作は10月5日に30周年記念エディションとして、シングルB面曲や秘蔵デモ音源をコンパイルした2枚組仕様がリリース予定です。これから聴くという人は、こちらを手にしてみてはどうでしょう?



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投稿: 2018 10 01 12:00 午前 [1988年の作品, Anthrax] | 固定リンク