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2018年11月

2018年11月30日 (金)

2018年11月のお仕事

2018年11月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※11月30日更新)


[WEB] 11月30日、「BUBKA WEB」にて乃木坂46堀未央奈インタビュー「遠慮せず戦う。」の序文が公開されました。

[紙] 11月30日発売「ブブカ」2019年11月号にて、乃木坂46堀未央奈、中田花奈×伊藤かりん、川後陽菜の各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 11月25日、「リアルサウンド」にて新譜キュレーション記事「Amaranthe、Chthonic、LOVEBITES……“男社会”で格闘するメタル/ラウド系女性アーティスト」が公開されました。

[紙] 11月24日発売「TV Bros.」2019年1月号にて、夢眠ねむ『夢眠時代』、TENDOUJI『FABBY CLUB』、St. VINCENT『MassEducation』、Oneohrix Point Never『Love In The Time Of Lexapro』の各ディスクレビューを執筆しました。(Amazon

[WEB] 11月21日、「リアルサウンド」にてヤバイTシャツ屋さんのアーティスト分析「ヤバイTシャツ屋さん、音楽的特徴とその魅力とは? 高品質の“ヤバT流ロック”を考察」が公開されました。

[紙] 11月20日から全国5都市の主要CDショップで配布開始の「FLYING POSTMAN PRESS」2018年12月号にて、片平里菜のインタビューを担当・執筆しました。

[WEB] 11月16日、「リアルサウンド」にてHi-STANDARDのアーティスト分析「Hi-STANDARDによる新たなサプライズ “語り合いたくなる”ドキュメンタリー映画公開までの軌跡」が公開されました。

[WEB] 11月3日、「リアルサウンド」にてONE OK ROCKのライブ評「ONE OK ROCK、なぜオーケストラとコラボ? 新たな実験が行われた日本ツアーを振り返る」が公開されました。

[WEB] 11月2日、「BUBKA WEB」にてけやき坂46金村美玖×河田陽菜×丹生明里 座談会「ひらがなだいありー」の序文が公開されました。

[紙] 11月2日発売「日経エンタテインメント!」2018年12月号にて、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」を構成・執筆、BiSHセントチヒロ・チッチ、ハシヤスメ・アツコのインタビューを担当・執筆しました。(Amazon


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また、10月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1810号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

BOY GEORGE AND CULTURE CLUB『LIFE』(2018)

CULTURE CLUBの約19年ぶりとなる、通算6枚目のオリジナルアルバム。名義としては「BOY GEORGE AND CULTURE CLUB」となりますが、間違いなく我々が知る“あの”CULTURE CLUBの新作です。

メンバーはボーイ・ジョージ(Vo)、ロイ・ヘイ(G)、マイキー・クレイグ(B)、ジョン・モス(Dr)という不動の4人。2016年頃からニューアルバムの発売間近と噂されてきましたが、あれから2年経ちようやく発売までこぎつけました。

2014年にデジタル配信された新曲「More Than Silence」が、地味ながらも美しい名曲で。そこから4年経って配信された「Let Somebody Love You」や「Life」といった新曲も非常に素晴らしい仕上がりなのですが、とにかく地味。前者はレゲエをベースにした彼ららしい楽曲で、後者はゴスペル調のソウルナンバー。サウンドの色付け方含め、ディープさが増した渋目のテイストなのですが、2曲とも本当に素晴らしい出来で。これはもう、アルバムは傑作になるに違いないと確信したものです。

で、いざ届けられたアルバムは、本当に傑作でした。想像以上でも以下でもない、納得の内容。80年代のキラキラ感皆無ですが、これこそが今聴きたかったCULTURE CLUBなんだよ、と大満足。不満は一切ありません。

ボーイ・ジョージが直近にリリースしたソロアルバム『THIS IS WHAT I DO』(2013年)という雛形があったので、バンドのアルバムもこういう方向に進むのだろうなというのは簡単に予測できたのですが、あそこからヒップホップ的要素を薄めて、若干バンド感を強めたのが今回の『LIFE』というアルバムなのかな。そういう意味では、『THIS IS WHAT I DO』と『LIFE』は地続きの2枚と言えるかもしれません。

ボーイ・ジョージのボーカルパフォーマンスは、ソロのとき以上の多彩さを放っており、曲調に合わせて変化を見せています。その器用さは、80年代のカメレオンボイスとはまた異なるものの、今鳴らされている楽曲に関してはパーフェクトなまでにハマっている。いや、この声だからこそこの音/楽曲なのか。なんにせよ、説得力という意味では全盛期のそれとは比べものにならないほど強いものが備わっているんじゃないでしょうか。

驚きも新鮮さも皆無ですが、安心感とその奥底に眠る煌めきは随一。DURAN DURANの最新作『PAPER GODS』(2015年)同様、やるべきバンドがやるべきことを最高の形でやり遂げた、問答無用の1枚です。



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2018年11月29日 (木)

JUDAS PRIEST FIREPOWER TOUR 2018@TOKYO DOME CITY HALL(2018年11月28日)

Jp01ここ10年くらいは、来日するたびに必ず足を運ぶようにしているJUDAS PRIESTの日本公演。2009年秋の『LOUD PARK 09』の際にはロブ・ハルフォード(Vo)にインタビューする幸運な機会を得て、その足で幕張での『BRITISH STEEL』(1980年)完全再現ライブを観ることができました。また、その次に来日した2012年春のジャパンツアーはフェアウェルツアー名義で、脱退したK・K・ダウニングに代わりリッチー・フォークナー(G)が参加した最初の日本公演になりました。この際には自力で取った武道館公演と、その前日にレーベルからご招待いただいたZepp Tokyo公演の2つに足を運び、「これが最後なのか……」と若干悲しくなったりもしました。

しかし、彼らはその宣言を撤回し、2014年にはリッチーを含む編成で初のアルバム『REDEEMER OF SOULS』をリリース。2015年に再び来日するのですが、スケジュールなどの都合で泣く泣く断念。次こそは……と思っていたところ、以外にも早く新作『FIREPOWER』(2018年)が完成し、同作を携えたジャパンツアーが実現したのでした。しかし、ご存知のとおりグレン・ティプトン(G)がパーキンソン病を患っていることを発表し、ツアーに参加しないことを発表。海外公演ではときおり顔を出していたようですが、さすがに日本は……。とはいえ、次いつ観られるかわからないので、追加公演として行われたTOKYO DOME CITY HALL公演に参加することにしました。

セットリストはほぼ固定で、ジャパンツアーが始まってからもずっと一緒なので予習もしやすかったですし、何よりも個人的にかなり気楽に楽しめそうな内容だったので、事前に作成したプレイリストを聴きながら会場に到着。この日は通常のライブよりも30分遅い19時半スタートだったので、かなり余裕を持って参加できた会社員も多かったのではないでしょうか。

Jp05BLACK SABBATH「War Pigs」が大音量で鳴り始めると、会場が暗転。これがライブ開始の合図です。多くの観客が立ち上がる中、第2バルコニー席下手側でかなり近くから楽しめる環境だったこともあり、この日は座って観覧。「War Pigs」からオリジナルのSEに変わり、ステージを覆う幕に照明が当てられる。その幕の隙間からメンバーがステージに移動する姿が見えました。たぶんリッチーが通ったあとに、誰かに手を引かれるようにロブの姿も。そしてパワフルなギターリフとともに、「Firepower」から勢いよくライブはスタート。ロブは歌っていない間、ステージ上をL字に沿って歩き回る。その姿がちょっと滑稽というか……申し訳ない、なんだかルンバを見ているようで微笑ましかった(笑)。以前はどこかゼンマイ仕掛けのロボットみたいだったんだけど、今回は動きも若干スムーズで、しかも同じ動きをひたすら繰り返すから、もうなんというか……いや、カッコいいんですよ? 僕はそのコミカルさ含めて愛してますから。

グレンの代役としてツアーに参加しているアンディ・スニープ(G)は、最初に写真や動画で観たときは若干違和感が残ったんだけど、こうやって生で観るとその長身もあってわりとカッコいい。リッチーとの並び含めて、全然アリでした。その後方では、若手だと思っていたのにすでに30年選手だという事実にびっくりするスコット・トラヴィス(Dr)と、地味なアクションとバキバキのベースプレイでボトムを支えるイアン・ヒル(B)の姿。ああ、この人たちの頑張りがあるから、ロブはあれだけ遊べるんだよね(いや遊んでるわけではないが)。そう思うと、ちょっと胸が熱くなりました。

Jp04「Running Wild」「Grinder」と、キメキメのリフがたまらないオールドナンバーが続き、3曲終えるとロブが軽く挨拶。そしてリッチーのフィードバックノイズに続いて「Sinner」へ。ロブ、めっちゃ声出てるじゃん! 正直、プリーストに復帰したあとは加齢もあって、以前のように高音で歌うことは難しいのかなと思っていたところ、この日はキメるところでしっかりキメてる。新曲が今のロブの声域に合わせて作られているから耳にしっかり馴染むのはわかるとして、旧曲も「Painkiller」のようなモダンな曲以外は比較的歌いやすい曲を選んでいるような。けど、前回のツアーまでに残っていた“ハイトーンが目立つ”曲がかなり減り、そのぶん「Desert Plains」や「Night Comes Down」みたいに意外な選曲があったりして、個人的には非常に面白かったです。

あ、あと「The Ripper」ってこんなにカッコよかったっけ?って初めて思ったかも。今までは、80年代のプリーストナンバーと比べてもかなりオールドスクールな印象しかなかったけど、今回はなぜかモダンに聴こえた。ギタリスト2名によるものが大きいのかな。あと、イアンのベースが本当にバキバキした音で、そこもよかったのかも。

そして何度も言いますが、「Turbo Lover」は名曲です。名曲中の名曲。この曲ではロブが、サビを全部オーディエンスに歌わせる暴挙に。いや、それが客に盛り上がりにつながったのでよかったんだけど。僕もしっかり歌わせてもらいましたよ。楽しかった。

合間合間に入る『FIREPOWER』からの楽曲も、厳選された4曲という気がして、決して少なすぎるとは感じなかったかな。「Firepower」は言わずもがな、「Lightning Strikes」や「No Surrender」のど直球さ、そして21世紀版「Blood Red Skies」or「A Touch Of Evil」的立ち位置のミドルヘヴィバラード(と個人的には断言したい)「Rising From Ruins」の素晴しさたるや。文句なしのセレクトだと思いました。『FIREPOWER』というアルバムがどんな内容か、この4曲だけでも伝わるはずですから。

Jp09そういえば、ロブ様は2〜3曲歌うとジャケットを次々と変えて、優雅にステージに登場するのですが、その様子はまるで昭和の歌謡スターのようでした。着替えでステージから捌けている間に次の曲のイントロが始まり、着替えを終えると歌いながらステージに再登場するその姿、シビレます(笑)。

「Night Comes Down」「Rising From Ruins」とミディアムバラード2連発を終えると、いよいよ佳境へ。「Freewheel Burning」「You've Got Another Thing Comin'」とキラーチューンが立て続けに披露され、「Hell Bent For Leather」ではお約束となったバイクに跨ったロブ様が。まるで後尾しているかのようにバイクにへばりつき歌うロブの姿から目が離せませんでした。

本編ラストは、スコットの煽りからそのまま「Painkiller」へ。2000年代以降で一番“ちゃんと”歌えていたような気がします。ホント、ここまで安定して高音もしっかり出て、なおかつ中音域でセクシーさを見せるロブ、過去最高の仕上がりじゃないでしょうか。これが本ツアー100公演目ですよ? 正直、「このツアーで見納めかな?」と思っていた自分を悔い改めたい。もう1回やれるって、これ。スクリーンにはグレン・ティプトンがギターを弾く姿が映されていますが、そうだよね、もう1回グレンが弾く「Painkiller」も観たかったよね。でも、今日のリッチー&アンディのプレイもかなりアグレッシヴで良いんです。ああ、このクライマックス感、本当に最高。素敵な本編締めくくりでした。

Jp14本来、このあとのアンコールは「Electric Eye」のはずでした。いや、“はず”と勝手に決めつけるのはよくないか。ここまでの日本公演ではすべてそういうセトリでした。が、この日は聴き覚えのあるインダストリアル調SEに乗せて、ステージには帽子とサングラスをかけたスポーティーなファッションのおじさんが……スクリーンにアップが映し出されると、それがグレン・ティプトンだとわかりました。会場、この日一番の大歓声。そしてそのまま、予想を覆す「Metal Gods」がスタート! アンディは本来上手側ですが、そこをグレンに譲り、自身は下手後方で影武者のようにギターを弾きます。その控えめさ、嫌いじゃないよ。リッチーはそれまで使っていたVタイプからレスポールタイプにギターを持ち替え、グレンとの共演を心底楽しんでいる様子。ロブはそれまでのルンバからいきなりゼンマイ仕掛けに逆戻り(笑)。いや、この曲にはこの動きが正解か。ロブも楽しそう。いやあ、観てる間に鳥肌立って、しまいにゃ涙が出てきたよ。まさかプリーストのライブで泣くことになるとは、想像もしてなかったわ(苦笑)。

その後もグレンを含む6人編成で「Breaking The Law」、そして「Living After Midnight」でエンディング。最後も6人で挨拶をして、ロブの「JUDAS PRIESTコール」からのSE「We Are The Champions」(QUEEN)をみんなで合唱して、約100分におよぶライブは終了しました。

正直、今まで観たどのプリーストのライブよりも良かったし、胸に来るものがありました。僕が最初に観たのは1991年の『PAINKILLER』ツアーだったので、そこまで数を観ているほうではないですが、それでも“自分が観たかったJUDAS PRIEST”が見事なまでに表現されていたと思います。本当に行ってよかった。

Jp16


[SETLIST]
01. Firepower
02. Running Wild
03. Grinder
04. Sinner
05. The Ripper
06. Lightning Strikes
07. Desert Plains
08. No Surrender
09. Turbo Lover
10. The Green Manalishi (With The Two Prong Crown)
11. Night Comes Down
12. Guardians 〜 Rising From Ruins
13. Freewheel Burning
14. You've Got Another Thing Comin'
15. Hell Bent For Leather
16. Painkiller
<ENCORE>
17. Metal Gods [with Glenn Tipton]
18. Breaking The Law [with Glenn Tipton]
19. Living After Midnight [with Glenn Tipton]


STEPHEN PEARCY『VIEW TO A THRILL』(2018)

RATTのフロントマン、スティーヴン・パーシーの通算5作目となるソロアルバム。前作『SMASH』(2017年)から約1年半と、最近としては短いスパンで発表されました。

レコーディングに参加したのは、2005年からスティーヴンのソロ活動における片腕的存在のエリック・フェレンションズ(G)、初期RATTやROUGH CUTTのメンバーだったマット・ソーン(B)、元BRIDES OF DESTRUCTIONのメンバーでスティーヴンのソロバンドにも在籍経験を持つスコット・クーガン(Dr)という気心知れたメンバー。プロデュース自体もスティーヴン、マット、エリックの3名で手がけ、ミックスをマットが担当。ソングライティングはスティーヴンとエリックの2人で進められたとのことです。

基本的には前作までと同じく、RATTで展開される世界観をそのままソロに持ち込んだ、ミディアムテンポ中心のハードロック=ラットン・ロールが繰り広げられています。オープニングの「U Only Live Twice」は正直RATTでそのままやってもカッコよかったんじゃないか、ソロには勿体ないんじゃないかと思うくらいの1曲。掴みは完璧です。

が、そこから数曲はちょっとインパクトが弱いかなという印象。特に2曲目の「Sky Falling」はスティーヴンの悪い面……淡白で一本調子なところが前面に出てしまい、まったく印象に残らないという。5曲目「Double Shot」までアップテンポの楽曲がないというのも、アルバム全体のテンポの悪さにつながっているようにも思えました。

あと、曲の頭に思わせぶりなSEを付けるのも、アルバムのテンポに悪影響を及ぼしているような。これ、そのまま曲間縮めて構成していたら、もっとカッコよかったのになと思うのは、僕だけでしょうか。

「Not Killin' Me」や「I'm A Ratt」みたいに良曲もあるのですが、全体的にミドルテンポで似通った曲が多い。前作のほうがもうちょっとインパクトが強かった記憶があるんだけどなあ。ここまで薄い内容のアルバムを矢継ぎ早に作るのならば、もっと1曲1曲に手間暇かけたり練り込んだりしてほしかったかな。これはもうスティーヴン云々より、その周りにいるスタッフが悪いんじゃないかという気がしてきた。誰かが「No!」って言わないと、この先どんどんインパクトの薄いアルバムが増産されていくんじゃないか……そんな予感がします。

RATTのほうもウォーレン・デ・マルティーニ(G)抜きで再始動したようですが、こちらはフォアン・クルーシェがいるぶんまだマシなのかな……なんにせよ、新しいソロアルバムよりも本家の新作を先に期待したいところです。



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2018年11月28日 (水)

METALLICA『...AND JUSTICE FOR ALL: DELUXE EDITION』(2018)

言わずと知れた、METALLICAが1988年秋に発表した4thアルバム『...AND JUSTICE FOR ALL』。本作はここ数年バンドが取り組んでいる旧譜リマスター&エクスパンド企画の一環として、リリース30周年のタイミングにあたる2018年にリリースしたものです。昨年の『MASTER OF PUPPETS』(1986年)デラックスエディションに続いて、今回もボリューム満点の内容となっています。

まず、本作が正式にリマスタリングされると発表された際に、多くのマニアから「ベースの音は?」という声が挙がりました。ご存知のとおり、オリジナル盤のミックスはかなりひどくてジェイソン・ニューステッド(B)のベースラインは一切聴こえない、ドラムとギターに軸を置いた独特のミックスが施されていました。当時の録音技術ではジェイソンの5弦ベースを的確に収めることができなかったなどいろんな憶測がありましたが、後年になりジェイムズ・ヘットフィールド(Vo, G)だったかラーズ・ウルリッヒ(Dr)だったかがエンジニアに「ギターの低音と被るから、ベースの音を抑えろ。もっと小さく!」と指示したのが原因だと判明。多くのファンが「……1発殴りてぇ……」と思ったはずです。

また、こういった不完全なアルバムが現在まで一度も正式にリマスタリングされず、音圧の低い80年代のサウンドのままで流通していること、ライブではしっかりベースの音が聴こえる(笑)ことから、有志たちがYouTubeなどの動画サイトにジャスティス音源に自身でベースラインを弾いて加えた“本当のジャスティスアルバム”音源をアップすることも少なくありませんでした。こういった音源が、これまたカッコいいんですよね。

さて、話を最初の「ベースの音は?」という声に戻します。結果を見る前からわかっていたことですが、今回施されるのは“リミックス”ではなく“リマスター”であることから、それまで一切聴こえなかったベースラインがいきなり復活することはまずあり得ない。なので、過剰な期待はせずにリリースを待ちました。事実、先行配信された「Dyers Eve」を聴いてもベースの音、ほとんどわかりませんでしたしね。

リマスタリングされたアルバム本編ですが、これがまた、音質/音圧が飛躍的な向上を遂げているのです。ファミコンの8ビット風サウンドに聴こえたドラムも、高音域を強調した耳にキンキン響くギターサウンドも、中音域を強調することでより自然で聴きやすいものへと進化。全体的にふくよかで重みがあり、しかも切れ味の鋭いサウンドに生まれ変わっています。特にギターリフの歯切れの良さとドラムの硬質さが増したことで、このアルバムが本来持つ個性や魅力は格段に進歩し、ジェイムズのボーカルからはオリジナル盤では感じられなかった微妙な表情の動きすら見つけることができるのです。

あんなに聴き込んだこのアルバムを、まさか2018年になってから再びこんなにリピートしまくることになるなんて。リマスターの魔力、おそるべし。

そして、デラックスエディションにたっぷり含まれているデモ音源やライブテイクの数々も、音質の差はまちまちながらも、それぞれ聴きごたえのあるものばかり。デモ音源も曲によってはベースラインが聴き取れるものもあり、本来はこういう形だったんだ……と妙に嬉しくなったり、逆にデモの段階で完成版と1ミリも変わらないギター&ドラムのみで完結する曲を聴いてはジェイソンってなんだったんだろうと悲しくなったり。悲喜こもごもです。

こうなると、気になるのが続く5thアルバム『METALLICA』(1991年)なわけですよ。もともと音質的にもクオリティが高い作品だけに、ここまで格段にサウンドが向上することはないでしょうけど、それでも今の技術でリマスタリングされたらどう生まれ変わるのか、聴いてみたいものです。デモやライブ音源はこれまでにも発表されているので、そこにはあんまり過剰な期待はしませんが。

まあ、何はともあれ。さすがに3万前後のボックスセットを買うのは躊躇するという方は、ぜひ3枚組エディションでリマスター盤、デモ音源集、ライブ音源と3つの異なる視点でジャスティスアルバムを楽しんでみてはいかがでしょう。すでにオリジナル盤を持っている人でも、新たに購入する価値はあると思いますよ。



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2018年11月27日 (火)

BON JOVI『NEW JERSEY: DELUXE EDITION』(2014)

BON JOVIの4thアルバム『NEW JERSEY』(1988年)に、同作制作時に録音したアウトテイクなどを加えたCD2枚組(もしくはCD2枚組+DVD)作品。バンドのデビュー30周年を記念して、海外で2014年6月、日本で7月にリリースされました。

当初、メガヒットを記録した『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)に続くニューアルバムのために、ジョン・ボン・ジョヴィ(Vo)とリッチー・サンボラ(G)はアルバム2枚分以上もの新曲を用意しました。文字どおり、彼らはあの天文学的セールスを打ち立てた3rdアルバム続く4thアルバムを2枚組アルバムにしようと計画していたのです。

しかし、レーベル側からは「2枚組だと単価が高くなり、売り上げに影響する」と難色を示されます。また、用意された楽曲の大半が『SLIPPERY WHEN WET』で示したキャッチーさとは少々距離のある、ヘヴィさを打ち出した作風だったこともあり、レーベルは「1枚でのリリース」「キャッチーな楽曲を追加で書き下ろす」ことを指示。そうして完成したのが、我々の知る『NEW JERSEY』というアルバムでした。

つまり、このデラックス・エディションは当初バンドが想定していた2枚組の、『SONS OF BEACHES』と題された幻の4thアルバムに近い形なのです。

とはいえ、収録曲順などは本来考えていたものとは大幅に異なるはずです。まず、ディスク1が現行の『NEW JERSEY』12曲に、トリビュートアルバムに提供したTHIN LIZZYのカバー「The Boys Are Back In Town」、シングルのカップリングで発表済みのデモ音源「Love Is War」、ヒットシングル「Born To Be My Baby」のアコースティックバージョンを加えた全15曲。すべて既発曲で構成された、まあわかりやすい1枚です。新たにリマスタリングも施されているので、以前のバージョンよりもクリアで迫力のある音を楽しめるのではないでしょうか。

こうやって並べて聴くと、「Love Is War」は「You Give Love A Bad Name」や「Livin' On A Prayer」路線を狙って書いた1曲なんでしょうけど、そのレベルには達していない、だからアルバムから外されたんだってことがよくわかるかと思います。ある意味残酷ですね。

で、問題はディスク2。13曲のデモ音源が収録されており、そのうち「Homebound Train」「Wild Is The Wind」「Stick To Your Guns」は『NEW JERSEY』本編にも収録。「Diamond Ring」はのちに6thアルバム『THESE DAYS』(1995年)で正式にレコーディングされることになります。また、「House Of Fire」はアリス・クーパーの大ヒットアルバム『TRASH』(1989年)に収録、「Does Anybody Really Fall In Love Anymore?」はのちにシェールやケイン・ロバーツに提供することになります。つまり、ボツにはなったものの、意外と耳にしたことのある曲が多く含まれているってことです。

ここで初めて耳にするレア曲やボックスセット『100,000,000 BON JOVI FANS CAN'T BE WRONG』(2004年)に含まれていた曲、90年代に海賊盤で流出したデモ音源集ですでに聴いていた楽曲も含まれており、コアなファンにはそこまで新鮮な驚きはないかもしれません。第一、『NEW JERSEY』という非常に完成されたアルバムの楽曲群と比較すれば、デモ音源とはいえディスク2で聴けるレア曲たちは……やっぱり“劣る”んですよね。そりゃあアルバムから漏れるわ、っていうのも納得してしまうというか。これを全部正式にレコーディングして、2枚組でリリースしていたら、もっと印象の薄い作品集になっていたんだろうなあ。で、リリースから30年経った今もこうして楽しめていたのかなぁ……そういう意味では、バンドもレーベルも正しい判断を下したのではないでしょうか。

あ、個人的に気になったのは、のちにリッチーが自身のソロアルバム『STRANGER IN THIS TOWN』(1991年)に収録した「Rosie」のデモが収録されていないこと。海賊盤では何度も耳にしていたこの曲のデモを、クリアな音質で楽しめると思ったのに。そう考えると、ここに収められたのが『SONS OF BEACHES』デモのすべてではないってことなんですよね。勿体ぶりやがって。

というわけで、現在5年ぶりの来日ツアーを実施中のBON JOVI。今宵はこの名盤+“名盤前夜”の2枚組を聴きながら、改めてこのバンドの魅力に浸ってみてはいかがでしょう。



▼BON JOVI『NEW JERSEY: DELUXE EDITION』
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2018年11月26日 (月)

GARY MOORE『WILD FRONTIER』(1987)

1987年3月にリリースされた、ゲイリー・ムーア通算6作目のスタジオアルバム。前作『RUN FOR COVER』(1985年)はゲイリーのほか、グレン・ヒューズ(B, Vo)、フィル・ライノット(B, Vo)とシンガーが3人混在する形で制作され、アルバムとしての内容は良かったものの統一性が若干薄いような印象を受けました。とはいえ、フィルとのデュエット曲「Out In The Fields」のヒットや、本作リリース後にフィルが急逝したこともあって、ファンの間では忘れられない1枚になったのもまた事実です。

そんな、多くのミュージシャンが参加した前作から一変、今作はゲイリーのほかニール・カーター(Key)、ボブ・デイズリー(B)という旧友たちの3人でスタジオ入り。ドラムトラックはすべて打ち込みで臨み、同郷のヒーローであったフィル・ライノットを追悼するかのように故郷・北アイルランドと向き合った、“ルーツ回帰”的な1枚に仕上がりました。

前作でのメロウさがより強まった本作は、そこにケルト民謡などアイリッシュであることのアイデンティティが加わることで、それまでの作品とは一風変わったスタイルが築き上げられています。オープニングの「Over The Hills And Far Away」のメインフレーズなんて、まさにそれですよね。続く「Wild Frontier」のギターフレーズもエモーショナルさが増し、より日本人の琴線に触れるものがあったのではないでしょうか。事実、僕もリリース当時この2曲を聴いて完全にノックアウトされたひとりですから。

コージー・パウエルのアルバムに収録されていた「The Loner」のカバーでは、ゲイリーの濃厚なギタープレイを思う存分堪能できますし、EASYBEATSのカバー「Friday On My Mind」は本作の中でも比較的ポップな作風でちょっと浮いてる感があるものの、これはこれとして楽しめるのではないでしょうか。

ケルティックなカラーを内包しつつもエネルギッシュなハードロックが展開される「Thunder Rising」、「Out In The Fields」の流れを汲むアップチューン「Take A Little Time」といったメタリックな楽曲もありつつ、アルバムを締めくくるのは「Over The Hills And Far Away」とともにこのアルバムを象徴するようなスローナンバー「Johnny Boy」。これまでのゲイリーの作風を考えると異色であることは間違いないのですが、アーティストとしてここで再スタートを切れた……そういう受け取り方もできるのではないでしょうか。ここからブルース路線へと傾倒していくことを考えると、その起点は間違いなく本作だったと言うことができるはずです。

とはいえ、この名盤中の名盤にも欠点があります。それは、1曲1曲の録音レベル(音圧)がバラバラなこと。「Over The Hills And Far Away」や「Thunder Rising」の音圧の低さといったら……そこだけが残念でなりません。

なお、本作は何度かの再発を経て、現行のCDには「Over The Hills And Far Away」や「Wild Frontier」の12インチバージョンも追加収録。これらでは、原曲にはないギタープレイも含まれているので必聴かと。かつ、本作リリース当時に本田美奈子に提供した「the Cross -愛の十字架-」のセルフカバー「Crying In The Shadows」も収録されており、ゲイリーらしい泣きメロを楽しめるはず。本田美奈子バージョンと聴き比べてみるのもよいかと。

ちなみに本作、イギリスでは初のTOP10入り(最高8位)を記録。シングルも「Over The Hills And Far Away」(全英20位)を筆頭に、「Wild Frontier」(同35位)、「Friday On My Mind」(同26位)、「The Loner」(同53位)、「Take A Little Time」(同75位)と計5曲のヒットが生まれており、名実ともに代表作と言える1枚ではないかと思います。



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2018年11月25日 (日)

V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』(2018)

2018年10月リリースの、ゲイリー・ムーアのトリビュートアルバム。アルバムジャケットにあるように、ゲイリーの諸作品やライブに参加してきたベーシスト、ボブ・デイズリーが中心となって制作された本作には、ニール・カーター(Key)やドン・エイリー(Key/DEEP PURPLE)、エリック・シンガー(Dr/KISS)、グレン・ヒューズ(Vo)に加え、元SKID ROW(「Youth Gone Wild」じゃないほう)のブラッシュ・シールズ(Vo)といったゲイリー・ムーアと馴染み深い面々、ゲイリーの実子であるガス・ムーア(Vo)とジャック・ムーア(G)のほか、豪華ゲストプレイヤーが多数参加しています。

そのメンツもジョン・サイクス(G)やダニー・ボウズ(Vo/THUNDER)、スティーヴ・ルカサー(G/TOTO)、ジョー・リン・ターナー(Vo)、リッキー・ウォリック(Vo/BLACK STAR RIDERS)、スティーヴ・モーズ(G/DEEP PURPLE)、デーモン・ジョンソン(Vo, G/BLACK STAR RIDERS)、ダグ・アルドリッチ(G/THE DEAD DAISIES)などなど。とにかく、無駄に豪華です。

選曲的にはブルースに傾倒した『STILL GOT THE BLUES』(1990年)以降の作品にこだわることなく、初期の『BACK ON THE STREETS』(1978年)から『VICTIMS OF THE FUTURE』(1983年)、『WILD FRONTIER』(1987年)の楽曲も収録。ボブ・デイズリー自身が関わっていることもあってか、『POWER OF THE BLUES』(2004年)という晩年の作品から3曲も選ばれていることがちょっと意外でした。

基本的にはどの曲もゲイリー独特の粘っこいギターフレーズを活かしつつ、オリジナルを尊重しながら随所に自身の個性を取り入れていく手法で、またボブが中心となって制作していることもあって統一感も強く、この手のトリビュートアルバムとしてはかなり水準の高いもののように思います。HR/HM系ギタリストが多く参加しているものの、各自そこまで出しゃばることもないので、本当に気持ちよく楽しめる1枚です。

やはり本作最大の聴きどころは、久しぶりにシーン復帰を果たしたジョン・サイクス参加の「Still Got The Blues (For You)」になるかと。ゲイリーからの影響も大きく、彼と同じTHIN LIZZY(=フィル・ライノット)にもお世話になった関係もあり、そりゃあもうディープなソロを聴かせてくれています。まあこの曲自体、基本的にメインフレーズの繰り返しになるのでそこまでアドリブを効かせることは難しいのですが、特に終盤のソロはサイクスらしいもので、フェイドアウトせずにこのままずっと聴いていたい!と思わせられるはずです。

で、この曲を歌うのがTHUNDERのダニー・ボウズというのが、また最高。思ったよりも感情抑え気味ですが、それがギターのエモーショナルさに拍車をかけているように感じました。うん、これ1曲のために購入してたとしても無駄じゃないと思います。

個人的にはこのほか、リッキー・ウォリックが歌い、スティーヴ・モーズがギターを弾く「Parisienne Walkways」、グレン・ヒューズが最高のボーカルパフォーマンスを聴かせる「Nothing's The Same」、思ったよりもゲイリー・ムーア色の強いダグ・アルドリッチのプレイが印象に残る「The Loner」、デーモン・ジョンソンが歌って弾いてと大活躍の「Don't Believe A Word」あたりがお気に入り。もちろん、そのほかの曲も文句なしに良いです。

来年の2月で、亡くなってから早8年。ゲイリー・ムーアというギタリストがどんな存在だったか、改めてロック/ブルース/HR/HMシーンに与えた影響をこのアルバムから振り返ることができたら、と思います。彼の名前しか知らないという若いリスナーにこそ聴いてほしい1枚です。



▼V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』
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2018年11月24日 (土)

KISS『HOT IN THE SHADE』(1989)

1989年10月リリースの、KISS通算15枚目のオリジナルアルバム。リードシングル「Hide Your Heart」こそ全米66位と低調で終わりましたが、続く「Forever」は最高8位と、「Beth」(1976年/全米7位)以来13年ぶりの全米TOP10ヒットを記録。その後も「Rise To It」(全米81位)のスマッシュヒットが生まれたものの、アルバム自体は最高29位止まりで50万枚程度のセールスという中ヒットで終わっています。

ポップ路線が際立った前作『CRAZY NIGHTS』(1987年)は完成度こそ高かったものの、KISSらしさという点においてはファンから敬遠されてしまった。その反省から、今作ではジーン・シモンズ(Vo, B)&ポール・スタンレー(Vo, G)のセルフプロデュースで原点に立ち返り、時代に合わせてよりタフでハードなスタイルへとシフトチェンジさせています。

ソングライターにはおなじみのデズモンド・チャイルドやボブ・ハリガン・Jr.、ヴィニー・ポンシア、アダム・ミッチェルに加え、BON JOVIやHEARTで名を馳せたホーリー・ナイト、のちに復帰するエース・フレーリーの後釜としてバンドに加わるトミー・セイヤーも名を連ねています。面白いところでは、当時頭角を現していたシンガーのマイケル・ボルトンが「Forever」のソングライターとしてクレジットされているところでしょうか。

シングルカットされた3曲含め、本作収録曲はどれもメロディ自体はKISSらしいメロディアスさやポップさがあるんだけど、サウンドが硬すぎて通して聴くのが疲れるんですよね。全15曲でトータル59分というKISS史上最多曲数のオリジナル作品というのもあってね。ポールVo曲とジーンVoが7曲ずつとバランスよく収まっているものの、15曲中すべて良い曲かと言われると……3〜4曲削って、10〜12曲程度に収めたらもっと聴きやすくて、印象も良くなったんじゃないかと思うんですよ。

ちなみに、「Hide Your Heart」は同タイミングにKISSのほか、ボニー・タイラー(彼女のバージョンが最初にリリース)や、当時元メンバーだったエース・フレーリーもレコーディング。不思議な競演を繰り広げるものの、この曲自体はそこまでヒットにはつながらなかったという。もともとは『CRAZY NIGHTS』制作時に生まれた曲だったようだし、あのタイミングに出していたらもうちょっとヒットしたんじゃないでしょうかね。

本作にはエリック・カー(Dr)がオリジナルアルバムで初のメインボーカルを務めたオリジナル曲「Little Caesar」も収録(先に1988年発売のベストアルバム『SMASHES, THRASHES & HITS』で、「Beth」のVo差し替えバージョンを担当済み)。ダイナミックなハードロックと、クセの強くないストレートな歌声の相性も抜群で、当時はこれが最後のVo曲になってしまうなんて思いもしなかったなあ。

KISSファンにとっては内容的に印象が薄い1枚ですが(ライブでも、もはや「Forever」程度しか演奏されてませんし)、エリック・カー生前ラスト作という点においては忘れられない1枚かもしれません。聴く頻度が低い作品だけに、せめて命日の今日くらいは大音量で鳴らそうではないですか。



▼KISS『HOT IN THE SHADE』
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FREDDIE MERCURY『MESSENGER OF THE GODS: THE SINGLES』(2016)

2016年9月にリリースされた、フレディ・マーキュリーのシングルコレクションアルバム。フレディのソロアルバムは、生前に残した『MR. BAD GUY』(1985年)とオペラ歌手モンセラ・カバリエとのコラボ作『BARCELONA』(1988年)の2枚のみで、それ以外のアルバムはすべて彼の死後に制作されたもの。『THE FREDDIE MERCURY ALBUM』(1992年)を筆頭に、数々のコンピ盤が発表されていますが、今作はフレディの生誕70周年を記念してシングルの表題曲とカップリング曲を2枚のディスクにまとめたものになります。

収録内容は実に幅広く、QUEENのデビュー前にラリー・ルレックス名義で1973年に発表された「I Can Hear Music」(THE BEACH BOYSのカバー)から始まり、映画『メトロポリス』のサウンドトラックに提供された「Love Kills」(1984年)、「I Was Born To Love You」や「Made In Heaven」などといった『MR. BAD GUY』からのヒットシングル(この2曲はのちにQUEENバージョンも制作)、ミュージカル『タイム』に使用された「Time」(1986年)、『BARCELONA』からのシングル、アルバム未収録だったソロシングル「The Great Pretender」、そしてフレディの死後に発表されヒットした「In My Defence」(ミュージカル『タイム』より)や「Living On My Own」のリミックス(1993年に全英1位獲得)など、全13枚のシングルがカップリング含め網羅されています。

『MR. BAD GUY』や『BARCELONA』収録曲は各アルバムのレビューを読んでいただけばいいし、それ以外の曲も『FREDDIE MERCURY SOLO』に収録されているものが多いので、ここでそういった曲の解説はあえて避けておきます。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』の中では、フレディのソロがバンドの及ぼした悪影響が表現されており、パーティ三昧だったレコーディング期間を目にするに“いかにも失敗”だったように描かれています。もちろんこれはストーリー的にも、絆を再確認するクライマックスを盛り上げるために必要な描写だったわけですが、じゃあ本当にフレディのソロが駄作ばかりかというと……聴いていただけばおわかりのとおり、QUEENの『HOT SPACE』(1982年)期をサウンド的により推し進めたポップソングが目白押しなわけですよ。その究極形が、「Living On My Own」のリミックスだと個人的には思っています。

もちろんフレディのソングライターとしてのセンスはしっかり証明されていると思うし、「Time」や「The Great Pretender」のようなスタンダートナンバー的な楽曲では彼のシンガーとしての資質が余すところなく表現されている。『BARCELONA』なんてまさにそんな作品集ですし、死後にヒットした「In My Defence」はそれがベストな形でパッケージされた1曲ですしね。

シングルコレクションとはいえ、本作は時系列を無視した構成になっています。アルバムとして楽しむことを想定した曲順だと思うのですが、至るところからフレディのエネルギーを感じ取ることができるし、その歌の深みにじっくり浸ることができるはず。QUEENとはまた違った形で、シンガーとしてのフレディの魅力を堪能できる、手軽な1枚ではないでしょうか。

P.S.
ストリーミングでは肝心の「In My Defence」や「Time」など、デイヴ・クラーク楽曲がすべて聴けない状況です。残念極まりない……。



▼FREDDIE MERCURY『MESSENGER OF THE GODS: THE SINGLES』
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2018年11月23日 (金)

PAUL McCARTNEY FRESHEN UP JAPAN TOUR 2018@東京ドーム(2018年11月1日)

Img_3736おそらくこれが最後の来日なんじゃないかという気もしているので、時間が経ったものの記録として残しておこうかなと。なので、ひっそりと載せておきます(笑)。

ポール・マッカートニーのライブを初めて観たのは、『OFF THE GROUND』(1993年)を携え行われた二度目の来日となった「THE NEW WORLD TOUR 1993」での東京ドーム。そこからしばらく時間が空いて、2010年代に入ってからは2013年以降毎回観てるんじゃないかな(中止となった2015年は日本武道館公演のチケットも確保していましたし)。なので、前回が2017年4月だから1年半ぶりと非常に有り難みがないわけでして。とはいえ、今回は5年ぶりの新作『EGYPT STATION』を引っさげてのツアーですし、それに……毎回毎回思うわけですが、「これが最後の来日かも……」と。特に2015年に体調不良で中止になって以来、その思いはより強いものになり、毎回行くかどうかギリギリまで悩みながらも、なんだかんだで足を運んでしまうという。完全に思うツボですね、はい。

そんなわけで、公演数日前にチケットを購入して東京ドーム2日目へ。年々チケットを買うタイミングがギリギリになっているので、当然座席も回を重ねるごとにステージからどんどん遠くなっていくという。今回なんて、完全なる点空席でしたからね。ま、そのおかげでじっくり座って楽しめたわけですが。

18時半スタートの予定が、なんだかんだで19時前後に会場暗転。ほぼ昨年のツアーと似たような演出のもと、ビートルズの「A Hard Day's Night」からライブはスタート。相変わらず、ライブ序盤の東京ドームは音が小さいな、なんて思いながらビール片手に名曲を堪能していくわけですが……頭4曲終わった時点で、ものすごい既視感に気づくわけです。


「あれ……前回とセトリ、まったく一緒じゃね?」


そうなんです。僕が昨年観た2017年4月28日の東京ドーム公演と、セットリストがほぼほぼ一緒だったのです頭4曲に関してはまったく同じ。そこに『EGYPT STATION』からの新曲を数曲散りばめつつ……ああ(苦笑)。今回のドーム初日はちょっとセトリが違ったようですが、個人的好みは今回のほうだったので結果オーライなんですが。まあ、良い曲、良いセトリはいつ何度観ても楽しいって結論でよろしいのではないでしょうか。

ポール御大の声はまあまあ出てるほう。そりゃあ5年前と比べたら確実に高音の伸びや深みが衰えているものの、それでもキーを下げることなく、ある曲ではベースで、ある曲ではエレキギター、ある曲ではアコギ、ある曲ではピアノ、ある曲ではウクレレと……どんだけエネルギッシュでアクティブな76歳だよ!とツッコミ入れつつ、名曲の数々をビール飲みながら味わいました。

Img_3740「Got To Get You Into My Life」ではブラス隊がアリーナ客席内から登場したり(あれ、ブラスって前回いましたっけ? ちょっと記憶が曖昧)、お客をステージに上げたりと今回のツアーならではの演出もあり。それでも、基本的には前回と一緒。ジミヘンパートも、ジョージ・ハリスンパート(「Something」)もまったく同じで、新鮮味はやっぱり皆無。でも、ビートルズ曲もポールのソロもWINGSナンバーも30年以上何十回、何百回とリピートしてきたものなのに、やっぱり生で聴くと印象が変わってくるんだから不思議です。

そんな僕ですが、やっぱり「Band On The Run」や「Back In The U.S.S.R.」が始まればテンションが上がるし、もはやガンズの持ちネタと化している「Live And Let Die」を聴けば一緒に歌うし、ベタだと思いつつも「Let It Be」や「Hey Jude」には涙腺が緩む。これはもう業みたいなものです。

そして、アンコール。久しぶりに聴く「I Saw Her Standing There」はやっぱりカッコいいし、「Helter Skelter」でのポールのシャウトには鳥肌が立った。で、「Golden Slumbers」「Carry That Weight」「The End」とおなじみのクライマックス。もはや有り難みすら感じなくなったこのエンディングも、やっぱり生で観たらジワジワくるから不思議。これはもう、DNAレベルで感動することが刷り込まれているんでしょうね。だったら仕方ない。

ライブ中盤で披露された「From Me To You」にはさすがにグッと来ましたし(そこから続く、前回も演奏した「Love Me Do」もしかり)、「Maybe I'm Amazed」は何度聴こうが色褪せることのない名曲中の名曲だし。そういったロック/ポップスの50年史を今もこうやって生で楽しめるのは、なんだかんだで幸せ以外の何者でもないわけです。また来年も来日するんじゃないかとか、毎回一緒なのに劣化したポールに2万近く払うのはいかがなものかとか、いろいろ意見があるのもわかります。けど、それでも足を運んでしまうのは、なんと言おうと業なのです。だから、毎回毎回「これが最後」と思いながらも高いチケット代を払って、会場でビールを飲みながら歌い楽しむ。そういう接し方が自分には合っているのかなと。

それともうひとつ。これは完全に個人的事情ですが、自分は数年前に耳を患い、その際ビートルズが雑音にしか聞こえず「これはもうライター引退なのかな……」と本気で泣いたことがありました。それを思えば、こうやって来日のたびにライブに足を運べるのはラッキーなことだし、「人生みっけもん」だなと。「ああ、まだこの曲で感動できるんだ」と確認しに東京ドームまで足を運んでいる気すらします。この気持ちだけは絶対に忘れたくないな。そういう意味では、現在のスタンスの原点を確認しにいく作業の一環でもあるのかもしれません。


[SETLIST]
01. A Hard Day's Night
02. Junior's Farm
03. Can't Buy Me Love
04. Letting Go
05. Who Cares
06. Got To Get You Into My Life
07. Come On To Me
08. Let Me Roll It
09. I've Got A Feeling
10. Let 'Em In
11. My Valentine
12. 1985
13. Maybe I'm Amazed
14. We Can Work It Out
15. In Spite Of All the Danger
16. From Me To You
17. Love Me Do
18. Blackbird
19. Here Today
20. Queenie Eye
21. Lady Madonna
22. Eleanor Rigby
23. Fuh You
24. Being For The Benefit Of Mr. Kite!
25. Something
26. Ob-La-Di, Ob-La-Da
27. Band On The Run
28. Back In The U.S.S.R.
29. Let It Be
30. Live And Let Die
31. Hey Jude
<ENCORE>
32. I Saw Her Standing There
33. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)
34. Helter Skelter
35. Golden Slumbers
36. Carry That Weight
37. The End


QUEEN『JAZZ』(1978)

1978年11月発売の、QUEEN通算7作目のスタジオアルバム。前作『NEWS OF THE WORLD』(1977年)が全英4位/全米3位と本国以上にアメリカで成功を収めた彼らでしたが(アメリカでは400万枚以上のセールス)、続く本作は全英2位/全米6位と再びその勢力が逆転しています。「Bicycle Race / Fat Bottomed Girls」(全英11位/全米24位)、「Don't Stop Me Now」(全英9位/全米86位)と、シングルにおいてもその傾向は同様だったようです。

コテコテとした『A NIGHT AT THE OPERA』(1975年)、『A DAY AT THE RACES』(1976年)を経て、シンプル・イズ・ベストな方法論を取った前作『NEWS OF THE WORLD』。そこから今作では、3rdアルバム『SHEER HEART ATTACK』(1974年)的なごった煮感覚を取り戻し、音楽的にもより拡散方向へと進み始めます。

オープニングの「Mustapha」ではアラビア音楽を思わせるメロディを持つアップチューンで、歌詞にも英語のほかアラビア語、ペルシャ語が用いられ、聴き手を驚かせます。かと思えば、QUEENらしい重厚さの目立つ「Fat Bottomed Girls」やフレディ・マーキュリー(Vo, Piano)作の美しいバラード「Jealousy」、展開の激しいポップチューン「Bicycle Race」、ジョン・ディーコン(B)作のストレートなロックナンバー「If You Can't Beat Them」やフレディ作の豪快なハードロック「Let Me Entertain You」、ブライアン・メイ(G, Vo)作の前のめりなハードロック「Dead On Time」など、ロック/ハードロック色の強い楽曲が並びます。

そういえばジョンは本作でもう1曲、美しいメロディのミディアムチューン「In Only Seven Days」も提供しています。改めて優れたソングライターであることを実感させられますね。

後半ではブライアンのギターオーケストレーションをフィーチャーしたヴォードヴィル風ブルース「Dreamer's Ball」や、80年代のQUEENを先取りしたロジャー・テイラー(Dr, Vo)作のディスコソング「Fun It」、ブライアンが単独で歌うミディアムポップチューン「Leaving Home Ain't Easy」、名曲中の名曲「Don't Stop Me Now」、ヘヴィかつコラージュ的アレンジも用いられた“らしさ”満載の「More Of That Jazz」と、とにかく聴き応えのある楽曲が目白押し。統一性は前作より薄いものの、改めて“QUEENとはなんぞや?”という命題と向き合った意欲作ではないかと思っています。

アメリカでバカ売れした前作『NEWS OF THE WORLD』と次作『THE GAME』(1980年)との間の1枚ということで、全キャリア中インパクトの薄い作品かもしれませんが、混沌の80年代を迎える前に彼らが今一度QUEENらしさを取り戻したという意味では、実は非常に重要な1枚だと思っています。

ちなみに、タイトルの『JAZZ』。本作にはジャンルとしてのジャズは1曲も収録されていません。これはスラングで、「くだらない話」や「ほら話」「ナンセンス」を意味する言葉なんだとか。自身のスタイルを皮肉った、これもある意味彼ららしいタイトルなのかもしれませんね。



▼QUEEN『JAZZ』
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2018年11月22日 (木)

QUEEN『HOT SPACE』(1982)

1982年5月に発売されたQUEEN通算10作目のスタジオアルバム。前作『FLASH GORDON』(1980年)が同名映画のサウンドトラック盤だったこともあり、全英10位/全米23位と、前々作『THE GAME』(1980年)の英米1位と比べて低調な結果で終わっていました。それもあり、続くこの『HOT SPACE』に対する期待は相当大きなものがあったと思われますが、誰もがそのサウンドの変貌ぶりに腰を抜かした……のではないかと想像します(なにせこのへんはリアルタム組ではないので)。

『THE GAME』でシンセサイザーを解禁し、続く『FLASH GORDON』では全面的にフィーチャーした彼ら。この『HOT SPACE』ではその路線を踏まえつつ、当時のヒットチャートを賑わせていたダンスビートやディスコサウンドを軸に楽曲制作を敢行するのです。

「Another One Bites The Dust」の大成功がバンドにどれだけの影響を及ぼしたのかわかりませんが、彼らはこのアルバムで(それまでも随所から感じられた)ブラックミュージックへと本格的に傾倒します。オープニングの「Staying Power」なんてブラスをフィーチャーした、これぞファンクミュージック!と言いたくなるファンキーな楽曲で、ドラムは打ち込み、ベースもシンセベースを導入するなど、とても70年代のQUEENとは比べようがないほどの変貌を遂げています。

その後も「Dancer」「Back Chat」「Body Language」と、時代を感じさせる黒っぽいダンスミュージックが満載。「Dancer」のサビ後ろで鳴っているブライアン・メイ(G, Vo)のディストーションギターを聴いて、ようやく「自分はQUEENのアルバムを聴いているんだ」と思い出すくらい、しばらくQUEENという存在を忘れさせてくれる。そんな1枚です(笑)。

ところが、アルバム後半に入ると突如従来のQUEENがよみがえってきます。「Put Out The Fire」のようなハードロックチューンを聴くと、彼らは自分たちがどんなバンドであったか決して忘れたわけではないことに気づかされるし、ジョン・レノンを追悼するピアノバラード「Life Is Real (Song For Lennon)」も我々がよく知るQUEENが表現されているのですから。

「Calling All Girls」のようなポップロックも『THE GAME』の流れを組む良曲ですし、シンセが全面フィーチャーされているものの「Las Palabras De Amor (The Words of Love)」だってコーラスを聴けばQUEENそのもの。フレディ・マーキュリー(Vo, Piano)のファルセットがセクシーなソウルバラード「Cool Cat」なんて、アルバム前半の打ち込みサウンドと比べたら全然受け入れられるし、アルバムのラストはデヴィッド・ボウイとのデュエット曲「Under Pressure」ですから。あれ、これ完全にQUEENじゃん。俺、QUEENのアルバム聴いてたわ!って、最後の最後でしっかり満足させてくれるのですよ。

序盤で濃厚な実験作を並べてリスナーを引かせてしまう本作ですが、通して聴くと実はちゃんと“QUEENらしい”内容だって気づかされる。「Action This Day」でロジャー・テイラー(Dr, Vo)が、「Las Palabras De Amor (The Words of Love)」でブライアンがそれぞれ一部歌唱していますが、メインボーカルを務めるのはほぼフレディのみというのも、バンドの作品というよりものちにリリースされることになるフレディのソロアルバム『MR. BAD GUY』(1985年)に通ずるものがあるなと、今聴くと思うわけです。

QUEENの歴史上、どうしても駄作だとか失敗作だとかそういうネガティブな印象の強い1枚ですが(チャート的には全英4位、全米22位。シングルも全英1位の「Under Pressure」を除けば、「Body Language」が全英25位/全米11位、「Las Palabras De Amor (The Words of Love)」が全英17位、「Back Chat」が全英40位と低調な結果に)、本作があったからこそ80年代後半以降の“マジック”が確立するわけですから。80年代のQUEENを語る上では欠かせない1枚であることは間違いありません。



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2018年11月21日 (水)

QUEEN『SHEER HEART ATTACK』(1974)

QUEENが1974年11月(日本では同年12月)にリリースした通算3作目のスタジオアルバム。『QUEEN II』(1974年)から8ヶ月という短いスパンで発表され、前作のスマッシュヒット(全英5位)も後押し、また先行シングル「Killer Queen」の大ヒット(全英2位)もあって、イギリスで最高2位まで上昇する代表作となりました。本作からはこのほかにも「Now I'm Here」(全英11位)のヒット曲も生まれ、アメリカでもアルバムは最高12位を記録(シングル「Killer Queen」も全米12位のヒット曲に)。本作を携え、1975年春には初の来日公演も実現しています。

前作ではプログレッシヴなハードロックをよりコンセプチュアルに煮詰め、また多重録音による“QUEENらしさ”を確立させることで、1stアルバム『QUEEN』(1973年)にあった“先人たちの亜流”的な評価を払拭することに成功。しかし、バンドは『QUEEN II』を同じことを続けるのではなく、その個性をさらに独特なものへと昇華させます。

スタジオ録音らしい多重録音は本作でも健在ですが、今作ではそこにより強いライブ感が加わり、ロックバンドとしてのストロングスタイルと、本来持ち合わせているポップセンス、そしてクラシックなど古典音楽への傾倒など、さまざまな音楽要素がバランスよく混在。オープニングの「Brighton Rock」や「Now I'm Here」ではドライブ感のあるハードロックサウンドを聴かせつつ、前者ではブライアン・メイ(G, Vo)がディレイを多用した津軽じょんがら風ギターソロを披露しています。

かと思えば、フレディ・マーキュリー(Vo, Piano)による英国出身らしいクラマラスなポップソング「Killer Queen」もある。さらに、ロジャー・テイラー(Dr, Vo)作の「Tenement Funster」、フレディ作「Flick Of The Wrist」「Lily Of The Valley」と組曲のような構成で、前作で得た武器を最大限に生かしている。

アルバム後半でもより際立つ個性を見せており、フレディ作のドラマチックな「In The Lap Of The Gods」、METALLICAものちにカバーしている高速ハードロック「Stone Cold Crazy」、ブライアン作のピアノバラード「Drea Friends」からジョン・ディーコン(B)作のキャッチーな「Misfire」、フレディ作の軽やかなロックンロール「Bring Back That Leroy Brown」と1〜2分程度の短尺曲が立て続けに並び、ブライアンが自らボーカルを担当するスローナンバー「She Makes Me (Stormtrooper in Stilettoes)」から「In The Lap Of the Gods... Revisited」というコンセプチュアルな展開で締めくくり。約40分、あっという間に聴き終えてしまう1枚なのですよ。

どの曲も非常に個性豊かで素晴らしく、まさに“これぞQUEEN”と呼べるものばかり。我々の知るQUEENはここでまず完成されたと言っても過言ではありません。

そして、ジョン・ディーコン作の楽曲が初めて収録されていることにも注目しておかなければなりません。4人の優れたソングライターの才能がここで開花したという点でも、本作は真の意味でのデビューアルバムと言えるのではないでしょうか。

本作がなかったら、代表曲「Bohemian Rhapsody」を含む次作『A NIGHT AT THE OPERA』(1975年)は生まれなかったはずですから。個人的にもアルバム単位で3本指に入るくらい好きな1枚です。



▼QUEEN『SHEER HEART ATTACK』
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2018年11月20日 (火)

DIMMU BORGIR『EONIAN』(2018)

今年結成25周年を迎えたノルウェーのシンフォニックブラックメタルバンド、DIMMU BORGIRの通算10作目となるスタジオアルバム(オリジナルアルバムとしては9作目)。前作『ABRAHADABRA』(2010年)から実に8年ぶりに発表された、待望の新作となります。本国では2位という高記録を獲得したものの、アメリカでは前作の42位には及ばぬ142位止まり。しかし、イギリスでは過去最高の73位まで上昇するほか、ドイツとフィンランドで最高4位、スイスで最高5位、オーストリアでも最高10位を記録しています。

ここ数作、オーケストラとのコラボレーションが通例となっていた彼らですが、本作でもそのスケールの大きな世界観は引き継がれています。ただし、今作では生演奏を起用せずサンプリングで済ませているとのこと。一聴した限りでは、実際のオーケストラとの違いはそこまで顕著ではないし、違和感もないので問題なし(音のタッチによほど時間をかけたのではないかと推測されます)。

しかも、このアルバムでは前作や2011年のライブにも参加した合唱隊・SCHOLA CANTORUM CHOIRも全面参加。ブラックメタルならではのブルータルさと、合唱隊のハーモニー&オーケストラサウンドが融合した、どこまでも突き抜けるような壮大さが最初から最後まで展開されています(どの曲ももちろんですが、特にラストのインスト「Rite Of Passage」の美しさといったら!)。

そもそも、このアルバムのテーマ自体が“時間の幻聴性”という壮大さを伴うもの。それを2012年頃から5年以上かけて完成までこぎつけたわけですから……どれだけ気の遠くなる作業だったか、想像を絶するものがあります。

内容的には、前作あたりまでに存在したクリーンボーカル……シャグラット(Vo, Key)以外のゲストが歌うパートがなくなり、すべて彼のデス声で通されています。そこが単調さにつながる危険もありますが、そのぶんを合唱隊がうまくフォローしてくれます。

また、バンドのプレイもブルータルさを少々残しているものの過去の作品ほどではなく(せいぜい9曲目「Alpha Aeon Omega」程度かな)、ミドルテンポを中心とした、あくまでオーケストラと合唱隊ありきのアレンジが施されている気がします。各曲5〜6分程度というのも、こういった編成のわりには練りこまれ、しっかりまとめられている印象が強いです。ホント、気の遠くなる作業だったんでしょうね……。

以前からのファンには酷評されているようですが、自分のようにそこまで熱心なリスナーではない人間には比較的好印象な1枚。というか、好きです。もはやこれをブラックメタルと呼べるのかどうか問題もありますが、これもヘヴィメタル/エクストリームミュージックの進化形のひとつ。素直に楽しみたいと思います。



▼DIMMU BORGIR『EONIAN』
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2018年11月19日 (月)

CHROME DIVISION『ONE LAST RIDE』(2018)

ノルウェーのシンフォニックブラックメタルバンドDIMMU BORGIRのフロントマン、シャグラットがギタリストとして参加するプロジェクト、CHROME DIVISONの2018年11月発売の5thアルバムにしてラストアルバム。

ここ日本でも3rdアルバム『3RD ROUND KNOCKOUT』(2011年)が国内盤としてリリースされた経験がありますが、今作は今のところ国内盤リリース予定なし。3rdおよび4thアルバム『INFERNAL ROCK ETERNAL』(2014年)に参加した2代目シンガー、シェイディ・ブルーが昨年脱退し、今作では初代シンガーのエディ・ガス(爆走R&RバンドTHE CARBURETORSのフロントマン)が再参加。さらに、2代目ベーシストのオギーも昨年脱退しており、本作ではシャグラットがベースを兼任しております。

デビュー以来、一貫してMOTÖRHEAD直系のバイカーロックをプレイしてきた彼ら。その信念はラスト作でも突き通されており、哀愁味漂う(まるでカントリーウエスタンのオープニングのような)インスト「Return From The Wasteland」からヘヴィなロックンロール「So Fragile」へとなだれ込む構成はさすがの一言。以降もアップテンポでヘヴィさを伴う男臭いロックンロールが次々に繰り出されていきます。

THE HELLACOPTERSよりはヘヴィロック寄り、だけど泣きのメロディは共通するものがある。かつ、MOTÖRHEADほど速すぎず、適度なアップテンポ感がこのヘヴィさと相まって、本当に気持ち良い。「Walk Away In Shame」ではミドルテンポにシフトチェンジするパートがあったり、ギターのツインリードや女性ボーカル(Miss Selia)がフィーチャーされたりと、いろんなフックが仕掛けられています。「You Are Dead To Me」のアレンジも、なんとなくストーナーロック的なものが感じられるし、「The Call」あたりにはモダンメタルの色合いも見え隠れする。こういった要素が彼らの独自性確立につながっていることは間違いありません。

DIMMU BORGIRの白塗りメイク&シンフォニックなサウンドをイメージすると、この泥臭いバイカーロックにつながりにくいかもしれません。が、こうやってノーメイクで別の側面を見せてくれるところに人間味を感じるし、こうした生々しいロックでよりその温かみを見せて/聴かせてくれると「なんだ、めっちゃいい奴じゃん」と不思議と株が上がる……のは気のせいでしょうか(完全に偏見ですね)。

メタル耳にも十分に耐えうる重さが伴っているので、いわゆるガレージロックに物足りなさを感じるHR/HMリスナーにも打ってつけではないでしょうか。本作でその活動に幕を降ろすのは非常に勿体ない気がしますが、今は頭を空っぽにして本作を爆音で楽しみたいところです。



▼CHROME DIVISION『ONE LAST RIDE』
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2018年11月18日 (日)

AZUSA『HEAVY YOKE』(2018)

THE DILLINGER ESCAPE PLANのリアム・ウィルソン(B)と、ノルウェーのテクニカルデスメタルバンドEXTOLのクリスター・エスペヴォル(G)&デイヴィッド・フスヴィック(Dr)というカオティックなエクストリームミュージックファン生唾モノのメンツが揃ったバンドAZUSA。彼らが2018年11月にリリースしたのが、このデビューアルバム『HEAVY YOKE』です。

AZUSAはこの3人に紅一点のエレーニ・ザフィリアドウ(Vo, Piano)を加えた4人編成。バンド名の“アズサ”から日本人女性が関係あるのかと思いきや、「18世紀当時、南カリフォルニアにいたコマ・リーというネイティヴ・アメリカンの少女は断食と祈りで、人々の病を治すことができた。“アズサ”という名は彼女の神秘的な力で病が治ったという部族の長老が与えたもの。彼らトングヴァ族の言葉で“祝福された奇跡”を意味する」そうです。

そんな神秘的なバンド名を持つ彼ら。このメンツから想像できるサウンドが終始展開されているのですが、特筆すべきはエレーニのボーカルでしょう。

時には男性真っ青なスクリームを轟かせ、時には癒しのような繊細な歌声で囁く。プレス資料にある「ケイト・ブッシュがボーカルのSLAYER、もしくはアネット・ピーコックとDEATHのコラボレーションをあなたは想像できるだろうか?」という説明も納得のボーカルパフォーマンスを、存分に楽しめます。

もちろん、これはボーカルだけが素晴らしいからというわけではなく、そのバックでうねるように変幻自在な演奏を繰り広げる楽器隊の手腕によるものも大きいわけですが。つまり、どっちもクセが強いのに相手を負かしてないし、自分も相手に負けていない。力と力のぶつかり合いをしつつも、共倒れすることなく、むしろするりとかわしたりしながら両者の魅力を引き出している。これって簡単なようですごく難しいことだと思うのですが、それをいとも簡単にやり遂げている。いやいや、ものすごいアルバムですよ、これ。

全11曲(日本盤はボーナストラック1曲追加)で34分(日本盤は38分)というトータルランニングもちょうどよい。狂気じみた作品だけど、これくらいのボリュームだと何度も繰り返し聴きたくなるし、聴き返すにはちょうど良い長さなんですよね。

変拍子があったり不協和音が飛び出したりと、ヘヴィロック/ラウドロックファンはもちろんのこと、ハードコアやアヴァンギャルドな音楽が好きな人にもアピールするものが少なからず含まれている本作。エクストリームミュージックにおける最新形……と言ってしまうのは大げさかもしれませんが、2018年に彼らのようなバンドが登場し、このアルバムでその存在感を時代に刻み込んだことは間違いない事実。これ、ライブで観たらどうなるんだろう……ただただ、それだけが楽しみでならない、今一番“生で観たい”バンドのひとつです。



▼AZUSA『HEAVY YOKE』
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2018年11月17日 (土)

SICK OF IT ALL『WAKE THE SLEEPING DRAGON!』(2018)

NYHCの重鎮、SICK OF IT ALLが2018年11月にリリースした通算12枚目のスタジオアルバム。前作『THE LAST ACT OF DEFIANCE』(2014年)から4年ぶりの新作にあたり、『LIFE ON THE ROPES』(2003年)以来15年ぶりとなるFat Wreck Chordsからのリリース作品となります(流通はこれまでどおり、Century Media Recordsからですが)。

僕自身はこのバンドの熱心なリスナーではなく、90年代初頭にRelativity Records(日本ではソニー)から発表された2nd『JUST LOOK AROUND』(1992年)や、メジャー移籍作となった3rd『SCRATCH THE SURFACE』(1994年)と続く4th『BUILT TO LAST』(1997年)程度しか聴いていませんが、90年代半ばの来日公演(アイルランドのTHERAPY?とのジョイント公演)には足を運んだことがある、その程度の知識しかありません。

が、このアルバムは全17曲33分、気持ちが途切れることなく最後まで楽しむことができました。速かろうがミドルで重かろうが、どの曲も1〜2分で完結している。中には1分に満たないショートチューンも存在し、気を抜けばどんどん曲が進行していくこのテンポ感、嫌いじゃないです。それに、チュー・マドセン(彼らの過去作のほか、THE HAUNTEDやDARK TRANQUILLITY、日本のDIR EN GREYONE OK ROCKBABYMETALなど)がミックスを手がけていることも、この聴きやすさの大きな要因かもしれません。

モダンメタルとのミクスチャー化が顕著だった『SCRATCH THE SURFACE』あたりとは異なり、シリアスさの目立つ初期の『JUST LOOK AROUND』ともちょっと違う、もっとストレートなハードコアパンクといったイメージでしょうか。中には陽気さが感じらえるメロディックハードコア寄りのナンバーもあり、そういった楽曲がアクセントとなって単調になりがちなこの手の作品に深みを作っているような気がしました。

また、「『SCRATCH THE SURFACE』あたりとは異なり」と書いたものの、そういった要素が完全に払拭されたかと言うとそうではなく、“通過した過去の要素”たちも本作の中から感じ取ることができます。それが30年以上にわたり地道な活動を続けてきた、彼らなりのこだわりであり強みなのかもしれませんね。

Spotifyの新作リリースの中からたまたま見つけ、久しぶりに聴いてみようとおもったのがきっかけでしたが、こうやって新鮮な気持ちで彼らの音と接することができたのは嬉しい限り。基本的には店頭でCDを購入するほうが好きですが、こういう出会いがあるとストリーミングサービスも捨てたもんじゃないなと思えました。



▼SICK OF IT ALL『WAKE THE SLEEPING DRAGON!』
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2018年11月16日 (金)

RISE OF THE NORTHSTAR『WELCAME』(2014)

フランス出身の5人組ハードコア/ニューメタルバンド、RISE OF THE NORTHSTARが海外で2014年11月、日本で2015年8月にリリースした1stアルバム。海外ではNuclear Blast Records、日本ではワーナーミュージックから発売されました。

そのジャケットから日本先行ではないかと思われがちですが、実はかなり前から何度も日本を訪れているくらいの親日家の彼ら。とにかく日本の文化、マンガやアニメが大好きで、バンド名は『北斗の拳』をモチーフにしつつも、ヴィジュアルは日本の(古き良き時代の)ヤンキーを思わせる学ラン姿という“全部のせ”状態。それでいて、東日本大震災の際には復興支援のチャリティソング「Phoenix」をリリースしたりと、とにかく愛すべきバカヤロウたちなのです。

そもそもこのアルバムも収録曲に目を向けると、「Welcame (Furyo State Of Mind)」「Samurai Spirit」「Tyson」「Bosozoku」……「不良」「侍」「タイソン=おそらくマイク・タイソンではなく『ろくでなしBLUES』の前田太尊」「暴走族」と、偏った日本のカルチャー満載。しかも「Bosozoku」のオープニングには、日本を代表する暴走族実録映画『ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR』からのサンプリングが含まれていたりと、とてもテン年代の作品とは思えないもの(これ、権利的に大丈夫なのかなぁ? ほかにも「Ahthentic」や「Blast 'Em All」の隠しトラックにも日本語のセリフが。これもヤンキーアニメかヤンキー映画から拝借したものではないでしょうか)。

過去の楽曲には「Demonstrating My Saiya Style」なんていう『ドラゴンボール』をイメージさせるものもあり、MVでは来日時に訪れた渋谷や秋葉原、甲子園球場まで登場します(しかも、どのMVも日本語訳が用意されている)。これ、日本人がやったらただダサイだけだし、そもそも権利的にいろいろアレだろ!と突っ込みたくなるのですが、不思議と彼らがやると微笑ましいで済ましたくなるのですから、不思議なものです。

サウンド自体はBIOHAZARD以降のニュースクール・ハードコアの影響下にあるもので、そこにスラッシュメタルやメタルコア、ラップメタル/ラップコアなどの要素を加えた、特別新しいとは言えないスタイルですが、そのリズム&ボーカルのグルーヴ感とキレの良いギターリフはただただ気持ちよく楽しめます。「Samurai Spirit」の「♪Sa Sa Sa Sa Sa, Samurai Spirit!」ってフレーズなんて、まさにその真骨頂ですよね。

また本作は1曲のみカバー曲を収録。それがNY出身のラッパー、ファロア・モンチの「Simon Says」というのもなかなかのもの。ほかのオリジナル曲と並べて聴いてもなんら違和感なく楽しめます。

こういったバンドは瞬発力重視のネタものとして消費されがちですが、つい最近4年ぶり(日本では3年ぶり)の2ndアルバム『THE LEGACY OF SHI』をリリースしたばかり。より濃密なROTNSを堪能できます。



▼RISE OF THE NORTHSTAR『WELCAME』
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2018年11月15日 (木)

PIG DESTROYER『HEAD CAGE』(2018)

アメリカはヴァージニア州アレクサンドリア出身の5人組グラインドコアバンド、PIG DESTROYERが2018年9月に発表した6thアルバム。実は20年以上のキャリアを持つ重鎮で、本作は前作『BOOK BURNER』(2012年)から実に6年ぶりの新作となります。

このバンド、もともとはベーシスト不在でしたが、前作リリース後(2013年)に初めてベーシストが参加。本作はベーシスト(ジョン・ジャーヴィス)を含む5人体制での初レコーディング作品に当たります。

ベーシストが加わるというバンドにとって大きな変革が訪れたためか、本作にはサウンド自体にも大きな変化が表れています。例えば、これまでの作品はグラインドコアバンドらしく、1曲が1分前後と非常にコンパクトなショートチューンばかりで、アルバム自体も20曲前後で30分程度のものが多かったように思います(アルバムによっては10分近くある実験的なナンバーも1曲程度含まれていましたが)。

ところが、本作は全12曲で31分。5曲が1分台とこれまでどおりですが、2分台後半から3分台後半の曲が半数近くを占め、それらの楽曲はスピードに頼らないグルーヴィーなものだったりします。ボーカルはいつもどおりグロウルやらデスボイスやら中心で、ミドルテンポになろうがメロウになることは一切ないのですが、アレンジのバリエーションが増えたことでアルバムに緩急が付き、これまでの「なんだかわからないうちに終わっていた」という傾向が薄まりつつあります。これが良いことなのか悪いことなのかは、彼らに何を求めるかでまったく異なりますが、個人的には「なんだか面白いことになったな。これ、聴きやすいぞ」と思いました。

まあそもそも、このバンドに聴きやすさを求める輩がどれだけいるのか?って話ですけどね。

聴きやすさの話題が続きますが、本作はミックスのバランスも非常に聴きやすくなっている気がします。ベースの低音域が加わったこともあってか、かなり聴きやすい。ミキシングを担当したウィル・パットニー(BODY COUNT、MISS MAY I、SHADOWS FALLなど)の手腕によるものも大きいんでしょうか。

ショートチューンのカッコよさは文句のつけようがありませんが、メタル耳で聴くと終盤の「The Last Song」あたりはツボじゃないかな。7分におよぶラストナンバー「House Of Snakes」もドゥーミーかつメタリックで、爆音で聴いたらなお気持ちよし。普段そこまで積極的にグラインドバンドを聴くわけではないですが、この作品は非常に楽しめました。



▼PIG DESTROYER『HEAD CAGE』
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2018年11月14日 (水)

THE FEVER 333『MADE AN AMERICA』(2018)

ボーカル、ギター、ドラムのトリオ編成によるアメリカのラップコアバンド、THE FEVER 333のデビューEP。海外では2018年3月にデジタルリリースされ、ここ日本では同年7月の『FUJI ROCK FESTIVAL '18』での初来日に合わせて同月に初CD化発売されています(海外では未CD化でデジタルとアナログ盤のみ)。

フジロックでのパフォーマンスが大反響を呼び、ロックファンのみならずメタル界隈の一部でも話題になった彼ら。早くも来年3月の単独来日も決まり、さらに年明け1月には1stフルアルバム『STRENGTH IN NUMB333RS』のリリースも控えています。海外では新人ながらも『KERRANG!』誌の表紙を飾り、BRING ME THE HORIZONのサポートアクトも決まるなど、まさに今もっとも旬なバンドのひとつと言えるでしょう。

Roadrunner Records期待の新人という文字面だけで判断したら「どんなメタルバンドだよ!?」と期待してしまいがちですが、お聴きのとおりモダンなテイストを含む、メタルやパンク、ラウドの枠だけには収まらない音をかましています。「新世代のRAGE AGAINST THE MACHINE」なんて声も聞こえてきましたが、いやいや、彼らはTWENTY ONE PILOTS以降のポストハードコア/エモ/ラウド/ポップスの流れを踏襲した、生まれるべくして生まれたバンド……ルーツや出身が異なるだけで、実はベクトル的にはTWENTY ONE PILOTSと比較的近いような気がするのは、僕だけでしょうか。きっとフジロックでのパフォーマンス映像を観た影響も強いんでしょうね。

とはいえ、そう判断するのはこのEPに含まれた7曲と、先のライブパフォーマンスによるものが大きいので、続く1stフルアルバムを聴いたらまた印象が変わるかもしれませんが、それはそれとして(すでに配信済みのリードトラック「Burn It」からはこのEPをさらに一歩押し進めたカッコよさが漂っています)。

確かにRATM以降のラウドシーンに現れた新たな可能性として、メタル/ラウド村側から花火を打ち上げたいのはよくわかります。けど、そこはもっと広い目で見ておかないとね。

ポップな側面も至るところから感じられますが、基本的にはストリート寄りの攻め攻めな内容。収録曲の「(The First Stone) Changes」にはラッパーのイェラウルフがフィーチャーされていたり、このプロジェクト自体にBLINK-182のドラマー、トラヴィス・パーカーが携わっていたり、メタル/ラウド/パンク系プロデューサーとしても活躍するジョン・フェルドマン(GOLDFINGER)が全面参加していたりという点からも、彼らの出身が伺えるし、現時点でどこに進んでいきたいのかも理解できます。

というわけで、個人的にはメタル/ラウド村よりはもっと広いフィールドでのびのびと活躍してほしいなと願わんばかり。まずはフルアルバムと、来年の来日公演ですね。そこで正確な判断を下したいと思います。



▼THE FEVER 333『MADE AN AMERICA』
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2018年11月13日 (火)

QUEEN『ON AIR』(2016)

2016年11月にリリースされたQUEENのライブアルバム。フレディ・マーキュリー(Vo)の死後、現役時代を超える数のライブ作品が掘り起こされ発表されてきましたが、本作はその中でもちょっと異色の内容で、1973年2月(デビュー前)から1977年10月(6thアルバム『NEWS OF THE WORLD』リリースタイミング)までの間にQUEENがイギリスの国営ラジオ放送局BBCに出演した際の音源をまとめたものになります。

QUEENはこの期間、6回にわたりBBCセッションを行なっています(1973年2月5日、同年7月25日、同年12月3日、1974年4月3日、同年10月16日、1977年10月28日)。6回中5回が1974年10月まで、つまり3rdアルバム『SHEER HEART ATTACK』リリース直前(1974年11月発売)ということで、2枚組CDに収録されている全24曲中20曲がQUEENの初期3作品からということになります。

スタジオセッションというと、いわゆるスタジオライブを思い受かべると思いますが、ここで聴ける音源はそういった“ライブバンドQUEEN”のラフな面を捉えたものではなく、アルバムと同じように楽器をオーバーダビングしたも少なくありません。音楽ファンならよく“BBCセッション”というワードは耳に/目にするかと思います。中にはQUEENの本作やLED ZEPPELINの『BBC SESSIONS』(1997年)を筆頭に、BBCセッションをまとめたアルバムもあるし、NIRVANA『INCESTICIDE』(1992年)に出演音源がコンピレーション盤に含まれるケースも多々あります。

そもそもこのセッションが始まったきっかけは、60年代のイギリスにはラジオ局が1日にかけられるレコードの数に制限が設けられており、その抜け道として番組/局独自のライブ音源を用意したと。今となってはかなり無茶な制限ですが、そのおかげで数々の貴重な音源や名演を楽しむことができたのですから、ありがたいかぎりです。

さて、QUEENに話題を戻しましょう。初セッションとなった1973年2月5日のテイクからは4曲を収録。レコーディングは済んでいたものの、リリースがまだだったデビューアルバム『QUEEN』(1973年)から「My Fairy King」や「Liar」といった初期ならではの楽曲、映画『ボヘミアン・ラプソディ』でもフィーチャーされたSMILE時代の楽曲「Doing All Right」などを楽しむことができます。「Liar」ではギターがオーバーダブされていたりと、スタジオライブながらもQUEENというバンドが持つこだわりがしっかり感じられます。

2回目の1973年7月25日セッションからは4曲。アルバム『QUEEN』発売直後ということもあり、前回も披露した「Keep Yourself Alive」「Liar」、そしてアルバムの核を担う「Son And Daughter」を演奏しています。そんな中、次作『QUEEN II』(1974年)収録曲「Seven Seas Of Rhye」のシングルカップリング曲「See What A Fool I've Been」を演奏していること。シンプルなブルースロックという、彼らにしては異色のこの曲からは次作の片鱗は見つけられませんが、続く3回目のセッション(1973年12月3日)では早くも『QUEEN II』(1974年)収録曲「Ogre Battle」を披露しています。時系列的にはすでに『QUEEN II』のレコーディングは終わっている頃なので、リリースに3ヶ月ほど先駆けて実験的に披露したということなのでしょうか。ボーカルこそオーバーダブされているものの、「Ogre Battle」の生々しさはスタジオテイクとは異なる緊張感があり、これ1曲のために本作を購入しても不思議じゃありません(大げさですかね。笑)

ここまでがディスク1の12曲。これだけでもかなり濃いですね(笑)。

さて、後半戦へ。4回目のセッション(1974年4月3日)は『QUEEN II』リリース直後。ここからはデビューアルバムから「Modern Times Rock'n'Roll」と『QUEEN II』から「Nevermore」「White Queen (As It Began)」の3曲がピックアップされています。「Modern Times Rock'n'Roll」は前回のセッションでも演奏されていますが、パンキッシュでやけくそさが強かった前回と比べてテンポダウンし、重さが増したこちらのテイクも悪くない。けど、ここでは『QUEEN II』からの2曲に焦点を当てたいな。

5回目のセッションはさらに半年後の1974年10月16日。発売を翌月に控えた3rdアルバム『SHEER HEART ATTACK』からの4曲が演奏されていますが、あえてヒットシングル「Killer Queen」を外しているところが興味深い(そっちはシングルをオンエアしてもらえるしね)。ロック然とした「Now I'm Here」や「Stone Cold Crazy」に加え、フレディらしい「Flick Of The Wrist」、ロジャー・テイラー(Dr, Vo)作&歌唱の「Tenement Funster」をピックアップしており、ここから始まるQUEEN全盛期の勢いみたなものが少なからず見えてくるのではないでしょうか。特に「Tenement Funster」でのブラアン・メイ(G, Vo)のギタープレイは圧巻です。

ラストは3年ほど時間が空いた1977年10月28日。世界的大ヒット作『NEWS OF THE WORLD』からの5曲で、「We Will Rock You」はオリジナルバージョンと当時ライブのオープニングを飾ったファストバージョンの2テイクを収録。前者はスタジオ音源からそのままリズムトラックを流用したんじゃないかなって音で、ロジャーの銅鑼→女性ナレーション→ブライアンのギターリフとそのままファストバージョンへと切れ目なく続きます。実際のライブバージョンよりもテンポが遅いですが、コーラスの厚み含めとにかくカッコいい。のたうちまわるようなギターソロも素敵です。で、「Spread Your Wing」で小休止して、ラスト2曲「It's Late」「My Melancholy Blues」で締めくくるアルバム同様の構成、本当に最高です。

以上、駆け足でアルバムを追ってきましたが、スタジオアルバムとも通常のライブアルバムとも異なる魅力、ぜひ実際に聴いて感じてください。映画でQUEENに注目が集まっているこのタイミングだからこそ、改めてスポットを当てたい作品です。

なお、本作はBBCセッションCD2枚に加え、1973〜1986年の間にBBCでオンエアされたライブ音源やインタビュー音源を追加したCD6枚組ボックスセットも用意。こちらのBBCセッションパートは実際のラジオパーソナリティの声も入っており、2枚組バージョンの通常盤とは異なる雰囲気を楽しめます。



▼QUEEN『ON AIR』
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2018年11月12日 (月)

MUSE『SIMULATION THEORY』(2018)

初の全米No.1を獲得した前作『DRONES』(2015年)から約3年ぶりに発表される、MUSEの通算8枚目のスタジオアルバム。ロバート・ジョン・マット・ラング(DEF LEPPARDブライアン・アダムスAC/DCなど)とタッグを組んだ前作から一変、本作では旧知の仲間であるリッチ・コスティ(FOO FIGHTERSTHE MARS VOLTAAT THE DRIVE-INなど)に加え、マイク・エリゾンド(ドクター・ドレー、エミネム、MAROON 5など)、シェルバック(テイラー・スウィフト、アデル、アダム・ランバートなど)、ティンバランド(ジャスティン・ティンバーレイク、ミッシー・エリオット、ONE REPUBLICなど)という異色のプロデューサー/ソングライターを多数迎えた、バラエティ豊かな内容に仕上げられています。

本作は昨年5月に発表されたシングル「Dig Down」からスタートしたと言っても過言ではないでしょう。当初は単発シングルであり、これが次作への序章とはまた異なるものであるようなアナウンスもあったかと思いますが、年が明けてから2月に「Thought Contagion」、7月に「Something Human」と不定期に新曲が届けられると、ようやくニューアルバム発売情報も発表され、秋には「The Dark Side」や「Pressure」といったリードトラックも解禁。どの曲も完成度は高いものの、アルバムとしてまとまったときの方向性がボンヤリしていたような気がして少々モヤモヤしたものがありました。そう、曲単位では本当に素晴らしいんですけどね。

先週末に届けられたニューアルバム。デラックス盤やスーパーデラックス盤などボーナストラックが複数含まれるバージョンがあるものの、今回はアルバム本編11曲(トータル42分程度)について話を進めたいと思います。

まず、40分台のコンパクトなアルバムはずいぶん久しぶりだなと。振り返ると、全米ブレイクのきっかけとなった4thアルバム『BLACK HOLES AND REVELATIONS』(2006年)以来(トータル45分)でした。最近は50分強で、本編中に大作が含まれていたり、曲数が13曲くらい入っていたりしましたからね。

ですが、この11曲42分という内容、先に書いたようにトータリティに関しては過去イチで薄いものと言えるでしょう。従来のMUSEらしい変態的ギタープレイをフィーチャーしたロック/ポップチューンを含みつつも、モダンなエレクトロポップの要素を強めたシングル向き楽曲、ヒップホップ色濃厚なナンバーなど、かなり斬新な楽曲も複数含まれています。ですが、それらは決して「MUSEらしくない」ものではなく、しっかりとMUSEのフォーマットの中でギリギリのラインをはみ出したりはみ出さなかったりしながら、ジワジワとその許容量を広げているのです。ぶっちゃけ、曲単位で聴いたら(例えば先行リリースされた「Dig Down」みたいに)若干拒否反応を示すかもしれませんが、アルバムの流れで聴くと意外と馴染んでしまうのだから、不思議です。

そうなんです。トータリティは薄いんだけど、不思議と「MUSEの作品集」としては当たり前のように楽しめる。これまでの「アルバム」というフォーマットを重要視したスタイルとは明らかに異なるものの、この流れで聴けば抵抗なく聴き進められるのです。そんなマジックみたいなアルバムがこの『SIMULATION THEORY』なのかもしれません。

アルバム冒頭の2曲(「Algorithm」「The Dark Side」)は確かにアルバムというフォーマットを想定した構成だと思いますし、ラスト2曲(「Dig Down」「The Void」)も同様でしょう。それを意図して作られたものなのか否かはわかりませんが、ストリーミング主流時代に突入した今、アルバムというフォーマットの意味が薄まりつつある中でMUSEというバンドがこんな作品を提示してきた。これ自体がある意味現実を表すと同時に、挑戦でもある。そう受け取ることはできないでしょうか。

ぶっちゃけ、アルバムとしての思い入れは過去作ほど強いものにはならないかもしれない。だけど、聴く頻度は異常に高くなりそうな気がする。そんな新時代の代表作になりそうな1枚の登場です。

だからこそ、デラックス盤、スーパーデラックス盤に別バージョンを複数収録したというのも頷ける話。とはいっても、個人的には受け付けませんけどね、アルバムの流れとしては。こちらは単体で聴いて楽しんでいます、出来が良いものも多いので。



▼MUSE『SIMULATION THEORY』
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2018年11月11日 (日)

TEARS FOR FEARS『RULE THE WORLD: THE GREATEST HITS』(2017)

2017年11月に発売された、TEARS FOR FEARS通算3作目のコンピレーションアルバム(アーティスト主導の作品のみ買うカウント)。2枚目の『SATURNINE MARTIAL & LUNATIC』(1996年)がシングルのカンプリング曲やレアトラックをまとめたものだったので、純粋なグレイテスト・ヒッツとしては『TEARS ROLL DOWN (GREATEST HITS 82-92)』(1992年)以来25年ぶりになります。また、本作はイギリスで最高12位まで上昇と、4thアルバム『ELEMENTAL』(1993年)以来24年ぶりのトップ20入り作品となりました。

収録された全16曲中、11曲が前作『TEARS ROLL DOWN (GREATEST HITS 82-92)』にも収録されていることから、前のベストを持っている人は購入を躊躇してしまいがちですが、その11曲のうち「Shout」「Change」「Pale Shelter」「Mothers Talk」が別バージョン(前2曲はシングル&ラジオエディション、「Pale Shelter」は初期シングルバージョン、「Mothers Talk」はUS向けリミックスバージョン)なので、若干新鮮な気分を味わえるかもしれません。

となると、注目すべきポイントは残り5曲ということになるのでしょうか。

5曲すべてが『TEARS ROLL DOWN (GREATEST HITS 82-92)』以降にリリースされた楽曲ばかりで、うち2曲(「I Love You But I'm Lost」「Stay」)は本作のために用意された新曲。「Break It Down Again」はローランド・オーザバル(Vo, G)ソロ体制になった4thアルバム『ELEMENTAL』から、「Raoul And The Kings Of Spain」は5thアルバム『RAOUL AND THE KINGS OF SPAIN』(1995年)から、そして「Closest Thing To Heaven」がローランド&カート・スミス(Vo, B)体制が復活した最初のアルバムにして最新オリジナルアルバム(6作目)『EVERYBODY LOVES A HAPPY ENDING』(2004年)からの各シングルとなります。

既発の3曲はそれぞれ全英20位、31位、40位とそこそこの記録を残しているので、ここに収録されるのは納得かなと。むしろ、80年代のTEARS FOR FEARSしか知らないリスナーにとってはほぼ新曲みたいなものなので、ここで聴けるのはある意味(バンドにとっても、そして新たな発見となるリスナーにとっても)ラッキーかもしれません。特に『EVERYBODY LOVES A HAPPY ENDING』は日本リリースがなかっただけに、ぜひこの機会にその片鱗に触れてみることをオススメします(残念ながら、Apple Musicでは「Raoul And The Kings Of Spain」と「Closest Thing To Heaven」は国内試聴不可。Spotifyは問題なく聴くことができます)。

で、本作最大の聴きどころは『EVERYBODY LOVES A HAPPY ENDING』以来の新曲ということになるのでしょうか。リードシングルとして先行発売された「I Love You But I'm Lost」はどこか1stアルバム『THE HURTING』(1983年)の頃を彷彿とさせつつも、しっかり現代的なポップスとして通用するようなアレンジが施されている。やや音数が多いのが前時代的に映るかもしれませんが、比較的良曲ではないかと思います。

もう一方の「Stay」は正反対で、音数の少ない浮遊感漂う1曲。現代的なアプローチという点においてはこちらのほうが勝るのかなと。コード使いや節回しからも“らしさ”が感じられますし。まあ、「アルバムの中の1曲」という印象の地味曲ですよね。悪くはないです。

というわけで、数(要素)は少ないけど現在進行形であることを提示してくれたこのベストアルバム。本来ならTEARS FOR FEARSはこのアルバムを携えて今年1月からツアーを行う予定でしたが、「予期せぬ健康上の懸念と医師の指示」を理由に来年1月まで延期。その間には『EVERYBODY LOVES A HAPPY ENDING』以来となるオリジナルアルバムのリリースもアナウンスされていましたが、こちらに関しては今年4月以降音沙汰がないので、おそらく来年以降まで持ち越しかなと。ベスト盤で聴ける新曲に特別落胆させられることもなかったので、まあ気長に待ちたいと思います。



▼TEARS FOR FEARS『RULE THE WORLD: THE GREATEST HITS』
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2018年11月10日 (土)

BOY GEORGE『THIS IS WHAT I DO』(2013)

2013年10月に本国イギリスで、翌2014年3月に北米や日本でリリースされたボーイ・ジョージの9thソロアルバム。純粋なオリジナルアルバムとしては、1995年の5thアルバム『CHEAPNESS AND BEAUTY』以来、18年ぶりになるようで、本国では全英33位という好成績を残しています。これはソロデビュー作『SOLD』(1987年)に続く高順位(29位)とのことで、当時メディアでは「20世紀のポップアイコンが、ついに魔法を取り戻した」「今年最高のカムバック作品」などと高く評価されました。

僕自身、ボーイ・ジョージの新作を手にしたのは先に挙げた『CHEAPNESS AND BEAUTY』以来なので、完全に“終わった人”の枠の中にいた人だったんですが、YouTubeで目に耳にしたリードトラック「King Of Everything」があまりに素晴らしく、すかさず輸入盤を購入。半年後にはボーナストラックがたっぷり追加された国内盤も購入しています(あれ、レコード会社からサンプルをもらったんだっけ? ちと記憶が曖昧ですが、手元には12曲バージョンと18曲バージョンの2仕様の音源ファイルがあります)。

サウンド/楽曲的にはボーイ・ジョージがCULTURE CLUB以降展開してきたレゲエ/ソウルミュージックをベースにした、よりアダルトで艶やかになった楽曲群が楽しめます。しかも、ボーイ・ジョージの声が(ドラッグや不摂生も影響してか)野太くかつ枯れ気味になっていることで、味わい深さや強い哀愁を感じさせてくれるのです。

正直、最初に「King Of Everything」を聴いたときはその声の太さに若干引いたものの、それもアルバムを通して聴けばすぐに慣れてくる。80年代の彼が持っていたキラキラしたスター感皆無ですが、楽曲の完成度やボーカルパフォーマンスの説得力含め本当に素晴らしいのです。

もちろん、単なるレゲエやソウルの焼き直しで終わっておらず、ヒップホップ以降のテイストも加えられ、アレンジの質感も現代的なものに近づけられちえるので、そこまで古臭さは感じない。だけど、初期のボーイ・ジョージが持っていた強い刺激や即効性は皆無。もしかしたら、そこが聴き手を選ぶ基準になってしまうかもしれません。

がしかし。これを受け入れられた人であれば、先日発売されたBOY GEORGE AND CULTURE CLUB名義の新作『LIFE』は一発でハマるはず。この助走があったからこそ、CULTURE CLUB名義での新作にまで到達できたと僕は思っています。そういう意味でも、新作『LIFE』を語る上で必要不可欠な1枚として、新譜を紹介する前にピックアップさせていただきました。

北米および日本盤はボーナストラックで水増しされた大ボリュームになってしまっていますが、12曲入りアルバムとして考えると非常に聴きやすい内容だと思います。『LIFE』で再びボーイ・ジョージに興味を持った人、あるいは『LIFE』で初めてCULTURE CLUBやボーイ・ジョージに触れた人(少ないと思いますが)、ぜひ続いてこの『THIS IS WHAT I DO』も聴いてみてください。だって、最近のCULTURE CLUBのツアーではこのアルバムからも演奏されているのですから。



▼BOY GEORGE『THIS IS WHAT I DO』
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2018年11月 9日 (金)

SUEDE『THE BLUE HOUR』(2018)

2018年9月リリースの、SUEDE通算8枚目のスタジオアルバム。再結成後としては3作目のアルバムとなり、過去2作でプロデュースを務めた(初期作でおなじみの)エド・ビューラーが離れ、新たにアラン・モウルダーが初プロデュースを担当しています。

復活後の『BLOODSPORTS』(2013年)、『NIGHT THOUGHTS』(2016年)、そして本作は三部作を想定して制作されたそうで、その最終章となる今作は映画のサントラ的テイストが好印象だった前作を引き継ぐ、“これぞSUEDE!”なお耽美アルバムに仕上がっています。

本作のタイトル『THE BLUE HOUR』とは、日の出前と日の入り後に発生する空が濃青色に染まる時間帯を指します(アルバムジャケットで表現されている、まさにこの絵ですね)。つまり、深夜を表現した『NIGHT THOUGHTS』から夜明けまでの短い時間帯、その刹那を凝縮したのがこのアルバムなわけです。もう、この時点でSUEDEそのもの。聴く前から「これは傑作に決まってる!」と勝手に決めつけていました。

で、実際に聴いたら……これ、キャリア最高傑作じゃないか?って言いたくなるくらい、本当に素晴らしい内容なんです。問答無用のデビューアルバム『SUEDE』(1993年)はもちろん、続く『DOG MAN STAR』(1994年)や大ヒット作の3rdアルバム『COMING UP』(1996年)に並ぶ、いや、僕個人としては(現時点では)それらを超えたと言いたくなるくらい、圧倒的な内容だと思うのです。

序盤のドラマチックな流れといい、その楽曲群を見事な形で表現する楽器隊、「これしかない!」と言わんばかりに唯一無二なブレット・アンダーソン(Vo)のボーカル。すべてが完璧なバランスの上で成り立っており、そのどれもが他者を邪魔しない控えめさを持ち合わせている。なのに、「これじゃなくちゃダメ!」と納得するぐらいの説得力と存在感も兼ね備えている。だけど、どこかいびつ……うまく表現できないのですが、本当にそんなアルバムなのです。

パワフルなギターロックもあれば、ストリングスを効果的に用いたスローナンバーも多数用意。むしろ、そっちが中心なのですが、だからといってロックバンド的なパンチが弱いかと言われると、全然そんなことがない。むしろ、このバンドの場合はそっち側でノックアウトを狙ってくるから油断大敵。気づけばハートを鷲掴みにされ、目には涙が……みたいなことになるので、聴く際には細心の注意を。

曲単位でこれが好き!というよりも、アルバム全体を通してひとつの曲(組曲)みたいなアルバム。そう思っていたのですが、ふとしたときにYouTubeでたどり着いた「Life Is Golden」のMVにドキリとさせられ、気づいたらこの曲を延々リピートしていた。歌詞の内容とチェルノブイリの廃墟感を表した映像に後頭部を思いっきり殴られたような衝撃を受けました。個人的にこんな1曲がまたSUEDEの中から出てくるなんて、想像もしてなかったから本当に不意打ちを食らった気分です。

地味だけど豪華。そして濃厚。2018年はまだ終わっていませんが、間違いなく本年度のベストアルバムです。



▼SUEDE『THE BLUE HOUR』
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2018年11月 8日 (木)

THE STRUTS『YOUNG & DANGEROUS』(2018)

昨日取り上げたGRETA VAN FLEET同様、現在Universal Recordsが力を入れているロックバンドがこのTHE STRUTSなのは間違いないと思います。本作は本国イギリスで2014年に発売され、その後2016年に再リリースされたデビューアルバム『EVERYBODY WANTS』に続く2ndアルバム。個人的にはGRETA VAN FLEET以上に“待望の”という表現がぴったりな1枚でした。

前作をワールドワイドリリースして以降、シングルを小出しにするなどして2作目のアルバムへと向かっていった彼ら。プロデューサーにはブッチ・ウォーカーFALL OUT BOYアヴリル・ラヴィーン、ケイティ・ペリーなど)とサム・ホランダー(PANIC! AT THE DISCOWEEZER、ONE DIRECTIONなど)というアメリカ有数の名ソングライターを迎えて制作。結果、前作以上にモダンでカラフルなアルバムに仕上がりました。

フロントマンのルーク・スピラー(Vo)のフレディ・マーキュリーを思わせるルックスやファッション、歌声などから“第二のQUEEN”的な扱いをされることも少なくないTHE STRUTS。このアルバムもそうしたQUEEN的雑多さ満載の1枚で、聴く人によっては「焦点の定まらないもの」とネガティヴに受け取られる可能性もあります。が、そもそも80年代のQUEEN自体がそういう傾向が強かったため、70年代の彼らを評価するリスナーからは敬遠されていたところもあったと思います。その一方で、ロックだとかハードロックだとか固定のジャンルにこだわらないリスナーからは「ヒットチャートを賑わせるアーティストのひとつ」として、そのポップでキャッチーな楽曲自体を純粋に評価された。結果、彼らは80年代半ばにライブにおいてキャリア最大のピークを迎えるわけですから、世の中わからないものです。

それと同じことが、このTHE STRUTSの2作目にも言えるんじゃないか。そんな気がしています。ストレートなロックチューンもあれば、モダンな味付けがされたポップナンバーもある。前作以上にアメリカンフレイバーが強まっていますが、その軸には古き良き時代のブリティッシュポップ/ロックからの影響が感じられる。それらの楽曲を、どこかフレディ・マーキュリーを彷彿とさせるシンガー(ルーク)が歌うのですから、嫌が応にもQUEENを思い浮かべてしまう。そりゃあ僕が嫌いなわけがない(自分の話で恐縮ですが)。

アルバム中盤の「Fire (Part 1)」や終盤の「Ash (Part 2)」なんて、本当にQUEENですよね。ちょっと泣けましたもん。かと思えば、KE$SHAとコラボしたバージョンも捨てがたい「Body Talks」や「Primadonna Like Me」みたいな“今ドキ”な音もある。エヴァーグリーンな「Somebody New」や「Tatler Magazine」を聴いてもなお「売れ線に走ったバンド」と揶揄するというのなら、きっとこのバンドはあなたには合わないんだと思います。けど、1曲くらいは引っかかる曲、あるはずです。そういう“お子様ランチ”的アルバムなのですから。

お子様ランチは子どもがある一定の年齢に達すると注文するのを躊躇し、ある程度大人になると「子どもの食べ物」だと敬遠される。けど、自我を確立した大人になるとちょっと懐かしくなって食べてみたくなったりもする……このアルバムを聴いて、そんなことを思い浮かべたりもしました。自分の好きな食材(=音楽要素)がてんこ盛りの1枚。こういうバンドが2018年に存在してくれることに感謝したいです。



▼THE STRUTS『YOUNG & DANGEROUS』
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2018年11月 7日 (水)

GRETA VAN FLEET『ANTHEM OF THE PEACEFUL ARMY』(2018)

GRETA VAN FLEETが2018年10月末にリリースした、待望の1stフルアルバム。1st EP『BLACK SMOKE RISING』(2017年)が全米182位、2枚組EP『FROM THE FIRES』(2018年)が全米36位と、バンドに対する注目度と比例するように順位を上げてきた彼らですが、このフルアルバムでは全米3位という好記録を獲得。イギリスでも最高12位という順位を残しております。今年8月の『SUMMER SONIC』での初来日は残念ながらキャンセルされてしまいましたが、この力作を携えて2019年1月にはついに単独来日公演も決定。今度はキャンセルしないでね。

さて、1年ぶりの新作となるこのフルアルバム。基本的には過去2作のEPと路線は一緒です。全10曲でトータル46分というトータルランニングも程よくて聴きやすい。過去作でハマったというリスナーなら間違いなく気にいる内容かと思います。

オープニングは「Age Of Man」という6分にわたるサイケデリックなスローナンバー。よく引き合いに出されるLED ZEPPELIN的な豪快ハードロックではなく、意表を突いた始まり方だと思います。もちろんM2「The Cold Wind」、M3「When The Curtain Falls」ではZEP的なロックが展開されているのでご安心を。1stアルバムでここまで思い切ったオープニングを用意するとは、すでに貫禄すら感じられます。

で、「Age Of Man」を聴いて改めて思ったのですが、ボーカルのジョシュ・キスカのハイトーンってロバート・プラントというよりはジョン・アンダーソン(ex. YES)のほうが近いんじゃないかなって。「The Cold Wind」や「When The Curtain Falls」では確かにプラントっぽく聞こえるんだけど、それって節回しだったり歌い方がプラント的なんだろうなと。声質自体は意外とアンダーソンのそれなのかもしれません。だからなのか、「Age Of Man」はどことなく70年代のYESを思い出したりもして……そう感じません?

とはいえ、アルバム全体で表現されているのはZEP以降の土着的なブルース(ハード)ロック。南部的なフレイバーももちろん健在で、そういった意味ではTHE BLACK CROWES的でもある……なんて解説は、今さらいらないですよね。むしろ、こういう新人を前にするとオッサンほどうんちくを語りたくなる傾向が強いので、過去との比較はこのへんにしておきます。

これを純粋に“新しい”と感じられるリスナーが本当に羨ましい。この50数年の間に何度も生まれては廃れ、そして再生されてきたスタイルが2018年に再び“新しい”音楽として浸透し始めている。それって本当に素晴らしいことですよね。実際、40代半ばの自分が聴いてもカッコいいと思えるわけですから、若い子たちにとってはその比じゃないんだろうなあ。

どの曲も良いんだけど、やっぱり個人的にグッとくるのは「Age Of Man」や「Lover, Leaver (Taker, Believer)」といった長尺の楽曲。特に後者は中盤のインストパートがツボです(YouTubeではライブ映像が公開されていますが、インプロヴィゼーションを含む30分近い圧巻のプレイを楽しめます)。この曲、CDでは5曲目というベストなポジションに配置されていますが、配信バージョンはラストに置き換え。代わりに5曲目には配信シングルとして先行リリースされたショートバージョン「Lover, Leaver」が置かれています。個人的にはCDバージョンの曲順のほうが好み。

あと、日本盤CDはボーナストラックとして1st EP『BLACK SMOKE RISING』の4曲が丸々追加されているので、初めてGRETA VAN FLEETに触れるビギナーはこっちを購入するといいんじゃないかな。



▼GRETA VAN FLEET『ANTHEM OF THE PEACEFUL ARMY』
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2018年11月 6日 (火)

DISTURBED『EVOLUTION』(2018)

再始動後もやっぱり働き者なDISTURBED、早くもニューアルバム発売です。

2015年8月発売の6thアルバム『IMMORTALIZE』では“これぞDISTURBED!”というヘヴィかつキャッチーなモダンメタルを展開し、5作連続全米No.1を獲得。翌2016年11月にはライブアルバム『LIVE AT RED ROCKS』もリリースされ、その前後には「The Sound Of Silence」(ご存知、SIMON & GARFUNKELのカバー)がシングルヒット(全米42位)。このバンドにしては異色のカバーでしたが、ひとまず再始動後の活動はメタルファンから大いに受け入れられたのでした。

で、オリジナルアルバムとしては3年ぶりの7thアルバム『EVOLUTION』が、2018年10月中旬にリリース。ケヴィン・チャーコ(オジー・オズボーンロブ・ゾンビFIVE FINGER DEATH PUNCHなど)を再びプロデューサーに迎えて制作された本作は、前作以上にキャッチーな“異色作”に仕上げられています。

スケジュールの都合で前作のレコーディングには参加できなかったジョン・モイヤー(B)でしたが、今回は無事制作に参加。アルバム本編に収められた10曲の新曲はバンドとケヴィン・チャーコの曲作なのですが、その収録内容の幅広さに驚かされます。だって、オープニングの「Are You Ready」こそ従来のDISTURBEDらしいヘヴィロックですが、3曲目「A Reason To Fight」や6曲目「Hold On To Memories」、8曲目「Watch You Burn」、10曲目「Already Gone」と約半数近くの楽曲がアコースティックギター主体のバラードナンバーなのですから。

間違いなく前作での「The Sound Of Silence」カバーの成功がもたらした“変化”であり“進化”である、と。これを良しとするかなしとするかで、本作に対する評価は大きく異なるのではないでしょうか。ぶっちゃけ、僕は本作を最初に聴いたとき、3曲目に早くも「A Reason To Fight」みたいなバラードが登場してひっくり返りましたから。さらに数曲おきに訪れるバラードタイム……「いやいや、聴きたいのはそれじゃないから!」とツッコミを入れながら再生1周目は幕を下ろすわけですが。

確かに、慣れたらそこまで気にならない……とまでは言わないけど、意外と馴染むんですよ。アルバムタイトルで『EVOLUTION』と歌っている以上、新しく変わるならここまでやらないと、という気概も大いに感じられるし。ジャケットのテイストが変わったのもその表れでしょうしね。

ちなみに本作、デラックス盤にはボーナストラック4曲を追加しているので、どうせならそっちにバラードを少し分けてあげたら……と思ったら、ボートラ4曲中2曲がバラードだった!(笑) うち1曲は「The Sound Of Silence」のライブバージョン(ALTER BRIDGEマイルズ・ケネディがゲスト参加)だし。残りの2曲も1曲が「Are You Ready」のリミックスなので、正味水増し感がハンパない……。数百円高くても曲を多く聴きたい人はデラックス盤を購入したらいいでしょう。けど、アルバムのトータリティにこだわりたい人は10曲おみの通常盤でいいと思います。

にしても、悪くないんだけど……う〜ん。なんとも評価が難しい1枚です。きっと数年後に新しいアルバムが出たときに、本作に対する本当の評価が下されることになると思うのですが、現時点では難しい。現時点では日本盤もリリースされていないし、5作連続だった全米1位記録も本作で途絶えてしまったし(初登場4位)。数字がすべてではないですが、う〜ん。



▼DISTURBED『EVOLUTION』
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2018年11月 5日 (月)

QUEEN『QUEEN II』(1974)

1974年3月にイギリスでリリースされた、QUEENの2ndアルバム。アメリカでは本国から1ヶ月遅れの同年4月、日本では3ヶ月遅れの6月に発売されています。

デビューアルバム『QUEEN』(1973年)はレコーディングからリリースまでに1年以上の遅れが生じ、発売された1973年夏にはすでに彼らの中では“古い”ものとなっていました。それもあってか、QUEENは1stアルバム発売直後の1973年8月からこの2ndアルバムのレコーディングを開始。結局、本作も完成からリリースまでに7ヶ月を要する結果となりましたが、「Seven Seas Of Rhye」のシングルヒット(全英10位)も手伝い、アルバム自体も全英5位まで上昇。大ブレイクの地盤を作ることになります。

このアルバムは“White Side”と題されたアナログA面(M-1「Prosession」からM-5「The Loser In The End」まで)と、“Black Side”と称するアナログB面(M-6「Ogre Battle」からM-11「Seven Seas Of Rhye」まで)で構成されたコンセプトアルバムの一種。“White Side”はブライアン・メイ(G, Vo)の楽曲が中心で(5曲中4曲がブライアンの手によるもの。残り1曲「The Loser In The End」のみがロジャー・テイラー作)、“Black Side”はすべてフレディ・マーキュリー(Vo, Piano)による楽曲とカラー分けがされており、前作『QUEEN』にあったプログレッシヴなハードロック色をより推し進めたものになっています。

また、楽曲自体も1曲1曲が単独で成り立つというよりは数曲からなる組曲的作風が強調され、その後のQUEENの諸作品に通ずるスタイルがここで早くも確立されています。

ボーカル面でも、“White Side”では「Some Day One Day」をブライアンが、「The Loser In The End」をロジャーがそれぞれ単独で歌唱しており、“Black Side”では「The March Of The Black Queen」にてフレディとロジャーのデュエットを聴くことができます。このへんでも、次作以降の布石ができあがったと言えるでしょう。

内容に関してはもはや何も言うことはない、ってくらいに完璧な仕上がり。デビューアルバムで試みたことの完成形がここで展開されており、それでいて新たな可能性も見え始めている。本作を基盤に、QUEENは次作以降音楽的拡散を続けていくわけです。

“White Side”の「Father To Son」、“Black Side”の「Ogre Battle」と両サイドを代表する楽曲がそれぞれ冒頭(“White Side”はインスト小楽曲「Procession」に続いてですが)に置かれているという点も、本作を語る上では非常に重要なことかもしれません。かのアクセル・ローズ(GUNS N' ROSES)は「俺が死んだらこのアルバムを棺桶に入れてくれ」と言ったそうですが、それくらいあの人にも衝撃や大きな影響を与えた作品。曲単位ではなく、あくまでアルバム通してじっくり味わってほしい、そんな1枚です。



▼QUEEN『QUEEN II』
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2018年11月 4日 (日)

QUEEN『THE MIRACLE』(1989)

1989年5月にリリースされた、QUEEN通算13作目のスタジオアルバム。バンドとして起死回生の1枚となった前作『A KIND OF MAGIC』(1986年)が本国で大ヒット(全英1位)し、これに伴うツアーも大成功を収めたQUEENでしたが、ライブ活動自体を1986年にて休止。しばらく表立った活動はなかったものの、パワフルなハードロックチューン「I Want It All」のシングルリリースとともに再びシーンに復帰します。

前作は映画『ハイランダー』のサウンドトラック的側面も強かった内容でしたが、続く本作は『A KIND OF MAGIC』でのポップな側面も残しつつ、ハードロックバンドとしてのカラーも再び強めた、時代に呼応した1枚と言えるでしょう。

オープニングの「Party」こそ80年代前半の『HOT SPACE』(1982年)期を思わせるダンサブルなポップチューンですが(とはいえ、ブライアン・メイのギタープレイは完全にハードロックのそれなのですが)、そこからメドレーのようになだれ込む「Khashoggi's Ship」は豪快なハードロックそのもの。タイトルトラック「The Miracle」で再び『A KIND OF MAGIC』的な側面を見せつつ、続く「I Want It All」はちょっとTHE WHOっぽくもあり、初期のQUEEN的な展開も見せる王道ハードロックで我々を楽しませてくれます。

この曲、シングルバージョン(MVはこちら)とアルバムバージョンでオープニングのアレンジや中盤の展開がまったく異なり、同じ曲なのに2度楽しめる変わった1曲となっています。個人的には「詰め込み感が強いもののスリリングさが強調された」シングルバージョンがお気に入りで、中盤のフレディ・マーキュリー(Vo)とブライアンの掛け合いから唐突に始まるギターソロのカッコ良さがツボです。

かと思うと、再び『HOT SPACE』を思わせるダンスポップ「The Invisible Man」があったり、『A KIND OF MAGIC』の延長線上にあるポップロック「Breakthru」があったり、パーカッシヴなポップチューン「Rain Must Fall」やシリアスなロックナンバー「Scandal」もある。そして、音数が少ない落ち着いた雰囲気のR&B調「My Baby Does Me」から初期を彷彿とさせるパワフルで派手なハードロック「Was It All Worth It」で締めくくる。全10曲、トータル41分程度という聴きやすさ含め、すごくよくまとめられた1枚だと思います。

全体的には確実に80年代のQUEENそのものなのですが、バンドのキャリアを総括しつつもしっかり当時の流行(HR/HMであったりヒップホップ以降のR&Bであったり)にも目を向けている。そのへんの嗅覚の強さは確実にフレディによるものが大きいと言えるでしょう。

残念ながら本作を携えたライブは一度も実現せず、アルバムからシングルカットされるたびにMVを制作しつつ、早くも次のアルバムへと向かっていったQUEEN。その理由は2年後に判明するわけですが、まさかこの当時はあんなことになるとは思ってもみませんでした。そういう意味ではこのアルバム、タイトルどおり“ミラクル”な1枚だったのかもしれませね。バンドは永遠ではない。だからこそ、こうやって新作を発表できることは奇跡なんだ、と。



▼QUEEN『THE MIRACLE』
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2018年11月 3日 (土)

QUEEN『BOHEMIAN RHAPSODY (THE ORIGINAL SOUNDTRACK)』(2018)

11月9日から劇場公開されるQUEENを題材にした映画『ボヘミアン・ラプソディ』のオリジナルサウンドトラックとして、今年10月下旬にリリースされたのが本作。大半がリリース済みの音源ですが、貴重なライブ音源や本作のために制作されたミックスも多数含まれている、新たなコンピレーションアルバムとしても存分に楽しめる1枚となっています。

内容的には映画のストーリーとリンクした作りで、オープニングには20世紀フォックス(同映画の配給先)のファンファーレ(映画のオープニングに流れる、おなじみのアレ)がブライアン・メイ(G, Vo)のギターオーケストレーションにより新録されたトラックが収められています。これだけでもファンはアガるわけですよ。

全22曲中、シングル曲が19曲、さらに世界各国で1位を獲得した楽曲が11曲と、ファンでなくても耳にしたことがある楽曲ばかりではないかと。映画のタイトルとなった「Bohemian Rhapsody」や「Somebody To Love」「Killer Queen」「Another One Bites The Dust」「I Want To Break Free」「Under Pressure」「Who Wants To Live Forever」「The Show Must Go On」は既発のリマスター音源で収録。手軽なベストアルバムとして楽しめる一方で、実はそれ以外のテイクが本作のキモだったりするわけです。

先のファンファーレ含め、未発表/初登場音源が5曲、映像では発表済みながらもこれがオーディオフォーマットで初収録となる音源が6曲。つまり、半数が今のところ本作でしか聴けない音源となります。

例えば3曲目「Doing All Right」はQUEENのデビューアルバム『QUEEN』(1973年)収録曲ですが、本作はQUEENの前身バンドSMILEのバージョンで収録されています。とはいえこれ、実はボーカルや演奏はブライアン、ロジャー・テイラー(Dr, Vo)、そしてSMILEのオリジナルメンバーであるティム・スタッフェル(Vo, B)の3人で本作のために新たに録音したテイク。「Doing All Righ... revisited」というタイトルは、そういう意味なんですね。

また、おなじみの「We Will Rock You」はスタジオテイクとライブテイクをくっつけた、本作のために制作されたバージョン。スタジオで制作してからスタジアムで映える曲にまで成長するという、まるで映画の一場面を観ているような錯覚に陥る新鮮なテイクです。さらに「Don't Stop Me Now」も「revisited」がタイトルに付け加えられているとおり、新たに手が加えられたバージョンです。

本作は貴重なライブ音源も豊富で、近年リリースされた『LIVE AT THE RAINBOW '74』(2014年)や『A NIGHT AT THE ODEON – HAMMERSMITH 1975』(2015年)からの音源に加え、『LIVE IN RIO』(1985年)のビデオ作品(当時VHSやレーザーディスクで発売。現在まで未DVD/Blu-ray化)から「Love Of My Life」(観客の盛り上がりが異常!)や、同じく1985年の歴史的イベント『LIVE AID』から5音源(フレディ・マーキュリーの煽り含む)まで楽しむことができる、本当にファンにとって嬉しい内容。現時点で映画『ボヘミアン・ラプソディ』は未見ですが、確か『LIVE AID』がクライマックスとして描かれているという話なので、これらの音源が初CD化され終盤に収められているというのも納得な話です。

筆者同様、ファンならすでに何度もリピートしていることでしょうが、QUEENにそこまで明るくなくこの映画で触れようとしているビギナーは映画を観てからこのアルバムを聴くもよし。逆に先に本作で予習してから映画を観て、そのあとにほかのスタジオアルバムやベストアルバムに手を出してみるのもいいかもしれません。入り口としてはちょっと変則的な内容ではありますが、あくまで映画とセットでという注釈付きでの入門盤です。



▼QUEEN『BOHEMIAN RHAPSODY (THE ORIGINAL SOUNDTRACK)』
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2018年11月 2日 (金)

DEF LEPPARD『HYSTERIA』PERFORMED IN ITS ENTIRETY & MORE@日本武道館(2018年10月24日)

Img_3716もう1週間経ってしまいましたが、いまだに余韻が抜けないので改めて記録として残しておきます(ベビメタやらポール・マッカートニーやらで記憶が薄まる前に)。

DEF LEPPARD、3年ぶりの来日公演。前回は久しぶりのニューアルバム『DEF LEPPARD』(2015年)発売直後でしたが、今回は傑作『HYSTERIA』(1987年)完全再現+αというHR/HMファン歓喜の内容。そりゃ行かない理由はないですよね。

しかも、前回の来日時は自身の体調が万全ではなく(耳を患い長時間大音量が厳しい状態)、しかもライブ当日に名古屋で取材。開演に20分以上遅れるという失態を犯したこともあり、今回は最初から最後までまるまる堪能したいなと。30分前には武道館入りし、場内で延々流れるブリティッシュロック/ハードロックの名曲群に浸っておりました(ラジオDJ風で、途中「あと◯◯分でライブだよ」みたいな英語アナウンスが入る)。

ステージは非常にシンプル。後方に巨大LEDスクリーン、その前の一段高い位置にドラムセット。ステージ上にはギターアンプの類は一切なし。そういえば、前回の来日時も同じようなことで驚いた記憶が。あと、DURAN DURANのときも同じようなステージセットだったような。最近はこういう形が増えているんですかね。

予定時間から10分ほど遅れて暗転(そういえば、暗転前最後に流れたのはDEPECHE MODE「Personal Jesus」のDEF LEPPARDカバー。自分たちの曲を流すのは斬新でしたね。笑)。『HYSTERIA』収録曲をコラージュしたSEが流れる中、メンバーがステージに登場し、最後にジョー・エリオット(Vo)が現れたところでフィル・コリン(G)が「Women」のギターフレーズを奏でライブ開始。キーは半音下げでしょうか。ライブアルバム&映像作品『VIVA! HYSTERIA』(2013年)と同じキーだったと記憶しています。全体的に音量が抑えめで、ジョーの声も若干聞こえにくいような。高音が厳しいのは今に始まった話じゃないですが、こういった音響のせいもあってサビではジョーの声が聞き取りにくいったらありゃしない。まあそこは、観客の大合唱でフォローするわけですが。

ライブで久しぶりに耳にする「Women」からアルバムテイクの「Rocket」、ポップで小気味良い「Animal」へと順調に流れていき、MCは極力控えめ。4曲目「Love Bites」はさすがに半音下げでも厳しかったのか、1音下げだったのでは?(もっとかも) それでも違和感なく楽しめましたが。そしてライブ終盤の定番曲「Pour Some Sugar On Me」と、5曲立て続けにヒットシングルを演奏……冷静に考えて、なんて豪華なアルバム/ライブなんでしょう。普通のバンドだったら、ヒット曲はライブ全編に散りばめるのに、MCを挟んでさらに続く「Armageddon It」と、ここまでシングル6連発。アナログA面全曲がシングルナンバーって、それどこの『THRILLER』だよ!?って話ですよね。

ここまではライブで耳にする機会が比較的多い楽曲が続きましたが、個人的にはこれ以降が本番。マニアックな楽曲が並ぶアナログB面(M-7〜12)ゾーンに突入です。

Img_3714「Gods Of War」の前にはスティーヴ・クラーク(G/1991年死去)の在りし日の姿がスクリーンに映し出され、涙腺が刺激されます。この頃から演奏全体のボリュームが安定し、大きめになったような記憶があります。フィル・コリンやヴィヴィアン・キャンベル(G)がクールなギタープレイを披露し、リック・アレン(Dr)とリック・サヴェージ(B)がヘヴィなビートでボトムを固める。アルバムで聴ける人工的なサウンドとは異なる、生々しさがむき出しになったライブでのアレンジ、本当に良いです。

そして「Don't Shoot Shotgun」「Run Riot」と久しぶりにライブで演奏される楽曲が続くのですが……残念ながら、序盤と比べると観客のテンションが少しだけ落ちたような気が。シングル曲ではサビでシンガロングが続きましたが、このへんでは(主に自分の周りでは)ほとんどなかったような。が、「Hysteria」では会場の熱量も復活。スクリーンに映し出される過去の写真に、再び胸が締め付けられるのでした。

ライブで聴くと意外と楽しかったダンスチューン「Excitable」を経て、感動のラストナンバー「Love And Affection」へ。「Hysteria」とテンポ感が似ており、かつ曲の並びが近かったのはライブとしては残念だったかもしれません(アルバムで聴くと違和感ないんだけど)。けど、良い曲であることには違いなく、結局70分近くにおよぶ完全再現を経て、バンドは一度ステージを後にします。

12曲で本編終了と、ライブとしては若干物足りなさが残りますが、ここからは「+α」パート。つまり、『HYSTERIA』以外の代表曲のパートになるわけですが、まずいきなり「Let It Go」(2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』収録曲)から始まるとは! これにはさすがに驚かされました(大阪や名古屋では「Action」や「Wasted」が演奏されたようですね。これも聴きたかった!)。そこから、この日演奏された楽曲の中でもっとも最新ナンバー(笑。1995年作)「When Love & Hate Collide」へと続き、「Let’s Get Rocked」「Rock Of Ages」「Photograph」と定番ナンバー連発でアンコールを締めくくりました。

全17曲、正味95分程度と最近のライブとしては比較的短いほうかもしれませんが、ヒット曲満載でこのボリュームなら納得がいくといいますか。腹八分目で「また観たい!」と思えるくらいの長さが、実はちょうどいいのかもしれません。2時間半から3時間のライブが当たり前となっていた時代もありますが、アーティストのエゴで(ファン的には不人気な)レア曲にて水増しされるよりはこれでいい気がしました。

バンドは間もなく新たなグレイテスト・ヒッツアルバム『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』をリリースしますが、できることなら同作を携え、また来年も来日してほしいな。今回ライブに足を運んだ人は間違いなく、次も行くはずですから。


[SETLIST]
01. Women
02. Rocket
03. Animal
04. Love Bites
05. Pour Some Sugar On Me
06. Armageddon It
07. Gods Of War
08. Don't Shoot Shotgun
09. Run Riot
10. Hysteria
11. Excitable
12. Love And Affection
<ENCORE>
13. Let It Go
14. When Love & Hate Collide
15. Let's Get Rocked
16. Rock Of Ages
17. Photograph




▼DEF LEPPARD『VIVA! HYSTERIA』
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WITHIN TEMPTATION『HYDRA』(2014)

オランダ出身のシンフォニックメタルバンド、WITHIN TEMPTATIONが2014年2月に発表した6thアルバム。前2作(2007年の『THE HEART OF EVERYTHING』、2011年の『THE UNFORGIVING』)をRoadrunner Recordsからリリースした彼らでしたが、このアルバムでNuclear Blast Recordsへ移籍。ここ日本でもワーナーからビクターへとリリース元を変更しております。

そういった環境の変化が音楽性にも変化を及ぼした……のかどうかは不明ですが、本作では新たな試みがいくつか用意されています。

まず、従来のゴシックなシンフォニックメタル路線からもう少し真ん中寄りの、ストレートなヘヴィロック(ただし美しいメロディを備えている)へと接近したこと。もちろん以前の作品にもそういった要素はところどころから感じられましたが、本作では少しだけそのテイストに変化が生じ、これによりバンドの雰囲気も若干変わったように感じられます。

そして、過去にもアルバムに1曲くらいは存在した他シンガーとの共演曲が4曲に急増していること。しかも、その人選もいかにも彼ららしいターヤ(元NIGHTWISH)から、ゼロ年代モダンヘヴィネスの代表格であるKILLSWITCH ENGAGEの元シンガー、ハワード・ジョーンズ、アメリカのラッパーであるイグジビット、さらにはUSオルタナティヴロックバンドSOUL ASYLUMのフロントマン、デイヴ・パーナーまで、かなりバラエティに富んだ布陣が揃っています。

僕自身は前作からこのバンドに入ったので、『THE UNFORGIVING』の路線はとても気に入っていたのですが、だからといって本作で展開される世界観がダメということはまったくなく、むしろこのバンドが本来持っているであろう色がより濃くなったことにより、焦点がよりぴったり合ったのではないかと感じました(過去作を大して聴いてないくせして言う意見ではないですが)。そんな中でも、より美しさを追求したターヤとのコラボ曲「Paradise (What About Us?)」はそれこそターヤ在籍時のNIGHTWISHを彷彿とさせ、ラップを導入した「And We Run」も特別風変わりなことをやっているようには感じられない。むしろアクセントとして良い方向に作用しているように思いました。

ファストチューンこそないものの、それに匹敵する攻撃的な「Silver Moonlight」や「Dangerous」は存在する。けれど、本作の醍醐味はやはり紅一点のシャロン・デン・アデル(Vo)の色香が濃厚なバラード、「Edge Of The World」や「Dog Days」、「Whole World Is Watching」にこそあるのではないか。そう感じています。

間もなく約5年ぶりの新作『RESIST』がリリース予定ですが、こちらでもさらなる変化を遂げているようですので、この『HYDRA』がその変化の第一歩だった……そう捉えることもできるでしょう。後から振り返ると、本作がバンドにとっての大きなターニングポイントだった……そう評価されるまでには、もうちょっと時間がかかるのかもしれませんね。



▼WITHIN TEMPTATION『HYDRA』
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2018年11月 1日 (木)

SLIPKNOT『ALL OUT LIFE』(2018)

10月31日、ハロウィンの深夜(日本時間)に突如SLIPKNOTからのプレゼント。なんと、2014年の5thアルバム『.5: THE GRAY CHAPTER』以来となる新曲「All Out Life」が公開されました。

レコーディングに突入したこと、来年にはヨーロッパツアーが開催されることがアナウンス、さらにイギリス『DOWNLOAD FESTIVAL』中日のヘッドライナー担当など、活動が活発化しつつあった彼らが、不意をついて5分40秒におよぶ新曲をハロウィンに配信とは、いやはや、嬉しいじゃないですか。

前作の際にもアルバムリリースの約3ヶ月前の8月1日に、アグレッシヴな先行シングル「The Negative One」を発表。このスパンから勝手に予想すると、アルバムは来年1月下旬〜2月頃にリリースされるのではないでしょうか。いや、順調に事が進んでいればの話ですが。まあ遅くても春先までには発表されると思います。それまでにもう1、2曲は小出しにしてくれるでしょうから、アルバムの方向性についてはそれらを聴くまで保留としておきます。

で、この「All Out Life」。ここ数作のSLIPKNOTらしさが凝縮されたアグレッシヴかつプログレッシヴな1曲となっています。コリィ・テイラー(Vo)は終始ドスの効いた声で叫び、リズムはグルーヴィーさを保ちつつ、しっかりとブラストビートも交えてくる。ギターリフのインパクトが若干弱い気がしないでもないですが(思えば前作もそういう作りでしたし)、“らしい”フレーズやプレイはところどころに登場するし、リズムとボーカルがグイグイと引っ張るスタイルだから、とりあえずはそこまでマイナスには感じない……ことにしておこう。

にしても、1曲にいろいろ詰め込んだね。猟奇性とドラマチックさが共存するこのアレンジ、嫌いじゃないです。特に、中盤以降のテンポダウンした(ピアノをフィーチャーした)ミドルパートからのブラストビート。最高です。MVのエグみ含めて、現時点では合格。

先にも書いたように、1曲だけで自作の方向性は語れないけど、この曲に関しては高く見積もって10点満点中8点をあげたい。来年でデビュー20周年。マンネリと言われようが、ここまで続けてくれていることに感謝。

ああ、この曲を爆音で流しながら渋谷のど真ん中に突っ込みたい(やらないけど)。



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DEF LEPPARD『RETRO ACTIVE』(1993)

1993年10月にリリースされた、DEF LEPPARD初のコンピレーションアルバム。1991年1月にスティーヴ・クラーク(G)を失い、残されたメンバー4人で5thアルバム『ADRENALIZE』(1992年)を完成させたバンドは、その直後に新メンバーとしてヴィヴィアン・キャンベル(G)を迎えます。そこでバンドは、スティーヴ・クラーク在籍時にひと区切りつけるために、過去のアルバム未収録曲や未発表曲をひとまとめにしたアルバムを作る計画を立てます。

ちょうどそんなタイミングに、映画『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年公開)のサウンドトラックに提供した「Two Steps Behind」がシングルヒット(全米12位)。もともとこの曲も『ADRENALIZE』からのシングル「Make Love Like A Man」に収められていたものに手を加えたもので、当然この『RETRO ACTIVE』に収録。そういう良き流れもあり、アルバム自体も純粋な新作ではないものの全米9位、全英6位という好成績を残しています。

収録曲の大半は『HYSTERIA』(1987年)および『ADRENALIZE』のレコーディングセッションから生まれたものばかりで、アルバム冒頭を飾る「Desert Song」と「Fractured Love」は『HYSTERIA』セッション時に生まれたアウトテイク。スティーヴ在籍時の貴重な音源で、『HYSTERIA』に入れるにはちょっとヘヴィ&シリアスすぎたのかなと。決して悪くはない出来で、普通にアルバムに入っていても違和感はないかも。

3曲目「Action」(ご存知SWEETのカバーで、今ではライブ定番の1曲)以降は、ヴィヴィアン加入後の音源やこのアルバム用にレコーディングされたテイクも混在。同じ曲の別テイクも複数含まれており、「Two Steps Behind」「Miss You In A Heartbeat」はそれぞれ2 バージョン、3バージョン(うち1バージョンはシークレットトラック)と「ちょっと余計じゃない?」と若干のクドさも。とはいえ、それぞれアコースティックバージョンとエレクトリックバージョンでカラーが異なるので、ファンなら楽しめるんじゃないかなと。

のちに発売された『HYSTERIA』30周年盤にも含まれている「Ride Into The Sun」「Ring Of Fire」「I Wanna Be Your Hero」は、本作収録バージョンとは若干ミックスが異なります。また、『ADRENALIZE』日本盤にボーナストラックとして収められた「She's Too Tough」と「Miss You In A Heartbeat」(エレクトリックバージョン)も新たにリミックスが加えられているので、マニアはその違いを聴き比べるのも面白いかもしれませんね。あ、「Ride Into The Sun」は『THE DEF LEPPARD E.P.』(1979年)が初出なので、聴き比べの際にはそちらもお忘れなく。

純然たるシングルコレクションとは異なり、あくまでオリジナルアルバムのアウトテイクやお遊び的楽曲が中心なので、バンドの本筋とは若干異なりますが、逆に軸にあるものがより見えやすい1枚かもしれません。そういう意味では、本作はDEF LEPPARDを語る上で欠かせないアルバムと言えるでしょう。個人的にもお気に入りの上位に入る作品集です。



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