SICK OF IT ALL『WAKE THE SLEEPING DRAGON!』(2018)
NYHCの重鎮、SICK OF IT ALLが2018年11月にリリースした通算12枚目のスタジオアルバム。前作『THE LAST ACT OF DEFIANCE』(2014年)から4年ぶりの新作にあたり、『LIFE ON THE ROPES』(2003年)以来15年ぶりとなるFat Wreck Chordsからのリリース作品となります(流通はこれまでどおり、Century Media Recordsからですが)。
僕自身はこのバンドの熱心なリスナーではなく、90年代初頭にRelativity Records(日本ではソニー)から発表された2nd『JUST LOOK AROUND』(1992年)や、メジャー移籍作となった3rd『SCRATCH THE SURFACE』(1994年)と続く4th『BUILT TO LAST』(1997年)程度しか聴いていませんが、90年代半ばの来日公演(アイルランドのTHERAPY?とのジョイント公演)には足を運んだことがある、その程度の知識しかありません。
が、このアルバムは全17曲33分、気持ちが途切れることなく最後まで楽しむことができました。速かろうがミドルで重かろうが、どの曲も1〜2分で完結している。中には1分に満たないショートチューンも存在し、気を抜けばどんどん曲が進行していくこのテンポ感、嫌いじゃないです。それに、チュー・マドセン(彼らの過去作のほか、THE HAUNTEDやDARK TRANQUILLITY、日本のDIR EN GREY、ONE OK ROCK、BABYMETALなど)がミックスを手がけていることも、この聴きやすさの大きな要因かもしれません。
モダンメタルとのミクスチャー化が顕著だった『SCRATCH THE SURFACE』あたりとは異なり、シリアスさの目立つ初期の『JUST LOOK AROUND』ともちょっと違う、もっとストレートなハードコアパンクといったイメージでしょうか。中には陽気さが感じらえるメロディックハードコア寄りのナンバーもあり、そういった楽曲がアクセントとなって単調になりがちなこの手の作品に深みを作っているような気がしました。
また、「『SCRATCH THE SURFACE』あたりとは異なり」と書いたものの、そういった要素が完全に払拭されたかと言うとそうではなく、“通過した過去の要素”たちも本作の中から感じ取ることができます。それが30年以上にわたり地道な活動を続けてきた、彼らなりのこだわりであり強みなのかもしれませんね。
Spotifyの新作リリースの中からたまたま見つけ、久しぶりに聴いてみようとおもったのがきっかけでしたが、こうやって新鮮な気持ちで彼らの音と接することができたのは嬉しい限り。基本的には店頭でCDを購入するほうが好きですが、こういう出会いがあるとストリーミングサービスも捨てたもんじゃないなと思えました。

▼SICK OF IT ALL『WAKE THE SLEEPING DRAGON!』
(amazon:海外盤CD / MP3)
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