« 2018年11月 | トップページ | 2019年1月 »

2018年12月

2018年12月31日 (月)

2018年総括(1):洋楽アルバム編

2018年もあと半日で終わりということで、毎年恒例となった今年の総括を書いていこうと思います。

その年のお気に入りアルバムを洋楽10枚(+次点10枚)、邦楽10枚(+次点10枚)、2018年気になったアイドルソング10曲(+次点5曲)、そして今年印象に残ったライブ10本をピックアップしました。アルファベット順、五十音順に並べており、順位は付けていませんが特に印象に残った作品には「●」を付けています。

特にこの結果で今の音楽シーンを斬ろうとかそういった思いは一切ありません。ごく私的な、単純に気に入った/よく聴いたレベルでの「今年の10枚」です。

まずは洋楽アルバム編です。


■洋楽10枚(アルファベット順)

今年はまず最初に、次点の10枚から紹介していきたいと思います。たまにはやり方を変えて、新鮮さを保たないとね。

<次点>
・BLOOD ORANGE『NEGRO SWAN』
・CHVRCHES『LOVE IS DEAD』
・JACK WHITE『BOARDING HOUSE REACH』(レビュー
・KAMASI WASHINGTON『HEAVEN AND EAERTH』
・KURT VILE『BOTTLE IT IN』
・THE LEMON TWIGS『GO TO SCHOOL』
・MUSE『SIMULATION THEORY』(レビュー
・NINE INCH NAILS『BAD WITCH』(レビュー
・STARCRAWLER『STARCRAWLER』(レビュー
・VOIVOD『THE WAKE』(レビュー

メタル系以外は、自宅でまったりしているときに流していることが多かったか、移動中に聴く頻度が多かったものが中心。BLOOD ORANGEやMUSEなんて、まさにそれですね。CHVRCHESはフジロック以降、がっつり聴いていた記憶が。KAMASI WASHINGTONはレビュー仕事でディスク1のみ先に届いて、こっちばかりリピートしてたんだよな。THE LEMON TWIGSは常にセレクトするというタイプではないんだけど、個人的趣味からしてやっぱり外せないなと。KURT VILEも然り。

STARCRAWLERは今年1月のリリースだったけど、ちょっと12月まで持続させられなかったな、自分の中で。今年後半、もうひと跳ねあったら、自分内評価もまた変わったのかも。

さて、続いてここからが本編。僕が選んだ2018年の洋楽アルバム10枚です。

続きを読む "2018年総括(1):洋楽アルバム編" »

2018年総括(2):邦楽アルバム編

洋楽アルバム編に続いて、邦楽アルバム編。こちらのエントリーでは2018年もっとも気に入った邦楽アルバム10枚(+次点10枚)を紹介します。順位は付けませんが、特に印象に残った作品には「●」を付けています。


■邦楽10枚(アルファベット→五十音順)

こちらも次点の10枚から紹介していきます。

<次点>
・brainchild's『STAY ALIVE』
・Crystal Lake『HELIX』
・ENDRECHERI『HYBRID FUNK』
・Luby Sparks『Luby Sparks』
・sads『FALLING Ultimate Edition』
・sleepyhead『DRIPPING』
・折坂悠太『平成』
・けやき坂46『走り出す瞬間』
・星屑スキャット『化粧室』
・吉澤嘉代子『女優姉妹』

Crystal Lakeは国内ラウド系ではもっとも衝撃を受けた1枚。聴く頻度でいったらCrossfaithやHER NAME IN BLOOD、DIR EN GREYのアルバムのほうが高かったんだけど、2018年という時代をあとで振り返ったときにこのアルバムがこの年に発売されたことを忘れないためにも選びました。sadsはなんだかんだで、やっぱり良いですね。従来のsadsらしさをキープしながらも、ちゃんとモダンにアップデートされている。活休前にもう一度、生で観たかった。

Luby Sparksはアルバムリリース後に前任ボーカルが脱退しちゃいましたが、後任も良さげだし、こないだ出たEPもなかなかだったので、来年も期待してます。星屑スキャットもなんだかんだ、年間通して聴きまくったなあ。

ひらがな(けやき坂46)は最後まで10位内に入れるか悩んだけど、これも毎回言ってるように「全曲聴くには複数仕様全部集めないといけないし、アルバムとしての体が崩壊しているから」あえて落としたところがあります。けど、サブスク主流の時代になりつつある今、もはやこういう考え方は古いのかもしれませんね……。

続いて、本編となる今年の10枚です。

続きを読む "2018年総括(2):邦楽アルバム編" »

2018年総括(3):アイドルソング&印象的なライブ編

2018年総括もこのエントリーで最後。こちらではアイドルソング10曲(+次点5曲/昨年は次点なし)と、2018年印象に残ったライブ10本(昨年は5本)を紹介したいと思います。順位は付けませんが、特に印象に残った楽曲には「●」を付けています。

まずはアイドルソング10選から


■アイドルソング10曲(アルファベット→五十音順)

・Love Cocchi「青春シンフォニー」

・Maison book girl「夢」

●NGT48「世界の人へ」

・アンジュルム「46億年LOVE」

・加藤史帆(けやき坂46)「男友達だから」

・欅坂46「アンビバレント」

・乃木坂46「シンクロニシティ」

・フィロソフィーのダンス「ラブ・バリエーション with SCOOBIE DO」

・道重さゆみ「EIGAをみてよ」

・モーニング娘。'18「Are you Happy?」

続きを読む "2018年総括(3):アイドルソング&印象的なライブ編" »

2018年12月のお仕事

2018年12月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※12月31日更新)


[WEB] 12月31日、「AbemaTIMES」にてももいろクローバーZのインタビュー「マジで大晦日を盛り上げます!!」ももクロ 年越しカウントダウンライブ第2回ももいろ歌合戦、メンバーがそれぞれ「本気企画」に挑戦!が公開されました。

[WEB] 12月31日、「BUBKA WEB」にて乃木坂46岩本蓮加インタビュー「木漏れ美」の序文が公開されました。

[WEB] 12月29日、「BUBKA WEB」にて欅坂46土生瑞穂インタビュー「私には場の空気を変える役割があるのかな」の序文が公開されました。

[WEB] 12月29日、「BUBKA WEB」にて欅坂46守屋茜インタビュー「弱音を吐く自分は許せないし嫌なんです」の序文が公開されました。

[WEB] 12月29日、「リアルサウンド」にてHi-STANDARDのライブ評「Hi-STANDARDのツアーを目撃できる喜び 『THE GIFT EXTRA TOUR 2018』横浜公演」が公開されました。

[紙] 12月29日発売「BUBKA」2019年2月号にて、欅坂46守屋茜、土生瑞穂、乃木坂46岩本蓮加の各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 12月28日発売「乃木坂46×週刊プレイボーイ2018」にて、乃木坂46西野七瀬×白石麻衣、西野七瀬×齋藤飛鳥、西野七瀬×生田絵梨花、西野七瀬×与田祐希×梅澤美波×山下美月の各対談、「西野七瀬に100の質問」などを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 12月28日発売「別冊カドカワ 総力特集 新世代歌舞伎〜新春浅草歌舞伎〜」にて、坂東巳之助ロングインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 12月27日、「週プレNEWS」にて乃木坂46西野七瀬、卒業記念対談【3日連続配信】! 西野七瀬×生田絵梨花、ふたりの「外仕事」が公開されました。

[WEB] 12月26日、「週プレNEWS」にて乃木坂46西野七瀬、卒業記念対談【3日連続配信】! 西野七瀬×齋藤飛鳥、ふたりの「先輩後輩」が公開されました。

[WEB] 12月25日、「リアルサウンド」にて新譜キュレーション記事「西廣智一が選ぶ、2018年ラウドロック年間ベスト10 ネガティブな話題の中にも豊作が揃った1年」が公開されました。

[WEB] 12月25日、「週プレNEWS」にて乃木坂46西野七瀬、卒業記念対談【3日連続配信】! 西野七瀬×白石麻衣、ふたりの「乃木坂46」が公開されました。

[紙] 12月22日発売「週刊プレイボーイ」2019年No.1・2にて、乃木坂46西野七瀬×白石麻衣、西野七瀬×齋藤飛鳥、西野七瀬×生田絵梨花の各対談を担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 12月22日発売「BRODY」2019年2月号にて、今泉力哉監督、林隆行監督の各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 12月20日発売「TV Bros.」2019年2月号にて、「music of the year 2018」に寄稿しました。(Amazon

[紙] 12月19日発売「AbemaTV Bros.」にて、ももいろクローバーZインタビューおよび「第2回ももいろ歌合戦」緊急記者会見レポートを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 12月14日、「リアルサウンド」にて乃木坂46のライブ評「乃木坂46 若月佑美は“思い”の人だったーーグループ在籍7年の軌跡と感謝を伝えた卒業セレモニー」が公開されました。

[紙] 12月11日発売「VOICE BRODY」vol.3にて、LiSAインタビューを構成・執筆、およびLiSAライブ座談会に参加しました。(Amazon

[WEB] 12月7日、「リアルサウンド」にてCrossfaithのライブ評「Crossfaith、新作『EX_MACHINA』と欧州ツアーで遂げた進化 ワールドツアー東京公演レポ」が公開されました。

[紙] 12月6日発売「ヘドバン Vol.20」にて「人生を変えてくれたメタルアルバム/メタルソング」アンケート、Crystal Lake『HELIX』、LOVEBITES『CLOCKWORK IMMORTALITY』、SIGH『Heir to Despair』、WITHIN TEMPTATION『Resist』、METALLICA『...And Justice For All (Remastered & Expanded Edition)』の各ディスクレビューを執筆しました。(Amazon

[紙] 12月4日発売「日経エンタテインメント!」2019年1月号にて、欅坂46菅井友香の連載「菅井友香のお嬢様はいつも真剣勝負」を構成・執筆しました。(Amazon

[WEB] 12月2日、「リアルサウンド」にて片平里菜のインタビュー「片平里菜×小西君枝が語り合う、心を豊かにする人との出会いと“音楽と食”の共通点」が公開されました。

[WEB] 12月1日、「BUBKA WEB」にて乃木坂46川後陽菜インタビュー「Departure day」の序文が公開されました。

[WEB] 12月1日、「BUBKA WEB」にて乃木坂46中田花奈×伊藤かりんインタビュー「麻雀と将棋に魅せられて」の序文が公開されました。


=====


また、11月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 1811号』。一応曲の流れなんかも考慮しつつ曲順を考えておりますので、レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

OZZY OSBOURNE『LIVE & LOUD』(1993)

1993年6月にリリースされた、オジー・オズボーンのライブアルバム(同タイトルのライブ映像作品もあり)。1991年秋から翌年終盤まで行われたアルバム『NO MORE TEARS』(1991年)を携えて行われたワールドツアーの中からのベストテイクをセレクトして、CD2枚に収録。このツアーは当時、オジーの引退ツアーと銘打って行われたものだったこともあり、『NO MORE TEARS』からのヒット曲と中心にしつつも、BLACK SABBATH〜ソロの代表曲満載のグレイテスト・ヒッツ的選曲となりました。

オジーはこれまで4枚のフルアルバム(1982年の『SPEAK OF THE DEVIL』、1987年の『TRIBUTE』、2002年の『LIVE AT BUDOKAN』、そして本作)といくつかのライブEP、アルバム復刻版付属アルバムといった形でライブアルバムを発表しています。『SPEAK OF THE DEVIL』はBLACK SABBATH時代の楽曲オンリー、『TRIBUTE』は初期のソロ2作品とサバス曲のみ、また『LIVE AT BUDOKAN』はCD1枚ものということもあり、いわゆるフルスケールのライブがまるまる収められた形は、天時点ではこの『LIVE & LOUD』のみとなるわけです。

しかも本作、アルバム終盤の「Black Sabbath」でオジー、トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)、ビル・ワード(Dr)の4人が集結。当時ありえないと言われていたオリジナル・サバスが復活した様子が、音源として収められているわけです。まあ、ここから10年も経たないうちにオジー・サバスは本格的に復活して、ニューアルバムやら来日やらが実現するわけですが(そこまでに復活から10数年を要しましたが)。

さて、アルバムの内容について。この当時のバンドメンバーはザック・ワイルド(G)、マイク・アイネズ(B)、ランディ・カスティロ(Dr)という編成。マイクはこのツアー終了後、ALICE IN CHAINSに加入してさらに知名度を上げることになります。

ザック在籍時のライブ作品はEP『JUST SAY OZZY』(1990年)や『LIVE AT BUDOKAN』がありますが、前者はギーザー在籍時とはいえ6曲のみだし、後者はチューニングを1音下げたバリバリにダーク&ヘヴィサウンドにシフトした時期。半音下げとはいえ、初期の楽曲をオリジナルに忠実に、かつザックらしいプレイも織り交ぜた若々しいギターを存分に楽しめるという意味でも、本作はたまらない内容と言えるでしょう。

オジーのボーカルに関しては、スタジオでオーバーダブしているので省略。ライブの生々しさは演奏面で味わいつつ、ボーカルは“いつもどおり”のものを楽しめる。“作品”という観点では文句のつけようがない1枚だと思います。

年明け3月には『DOWNLOAD JAPAN 2019』で正真正銘の“最後の”来日を果たすオジー。ありがたいことにザックも帯同しているので、全音下げのバリヘヴィなチューニングながらもオールタイムベストを堪能できることでしょう。そういった期待も込めつつ、年の瀬にこのアルバムを聴いて待望の来日に思いを馳せてみてはいかがでしょう。



▼OZZY OSBOURNE『LIVE & LOUD』
(amazon:国内盤2CD / 海外盤2CD / MP3

続きを読む "OZZY OSBOURNE『LIVE & LOUD』(1993)" »

2018年12月30日 (日)

HALFORD『RESURRECTION』(2000)

ロブ・ハルフォード(当時ex. JUDAS PRIEST)を中心とした5人組バンドHALFORDが2000年8月に発表したデビューアルバム。当時のメンバーはロブ(Vo)のほか、マイク・クラシアク(G)、パトリック・ラックマン(G/のちのシンガーとしてDAMAGEPLANに加入)、レイ・リーンドウ(B/2WOにも参加)、ボビー・ジャーゾンベク(Dr/RIOT)。アルバムのプロデュースは、のちにギタリストとしてバンドにも加入するロイ・Z(ブルース・ディッキンソンHELLOWEEN、JUDAS PRIESTなど)が手がけています。

プリースト脱退後、正統派ヘヴィメタルから当時流行していたグルーヴメタルへと転身し、FIGHTとして再デビューしたロブ。アルバムを2枚制作するものの、バンドは自然消滅してしまい、さらに時流に乗ってインダストリアルメタル/デジロック路線を取り入れた2WOを結成します。ですが、これらの活動はロブに“メタルゴッド”の面影を重ねる多くのリスナーから反感を買い、どれも短命に終わります。

そうした迷走を経て、ロブは再び伝統的なヘヴィメタルの世界へと舞い戻ります。それもこれも、ロイ・Zのおかげなんじゃないか……そんな気がしてなりません。

このアルバムで展開されているのは、プリーストが当時のモダンメタルへと接近した『PAINKILLER』(1990年)を軸にした作風。そこに、80年代のプリーストのフレイバーや、FIGHT以降のヘヴィロックスタイルを適度なバランスで織り交ぜることで、“しっかり2000年の音として成立する、モダンだけど正統派なヘヴィメタルアルバム”を完成させることに成功しました。

オープニングを飾る「Resurrection」は完全に『PAINKILLER』の流れを汲むものですし、続く「Made In Hell」は80年代のプリースト的ヘヴィメタル。「Locked And Loaded」は90年代での経験が見事に生かされているし、大作「Silent Scream」も『PAINKILLER』的スタイルに80年代プリーストの王道さと90年代以降のアレンジを取り込むことでよりドラマチックな楽曲へと昇華されている。かと思えば、盟友ブルース・ディッキンソンとのデュエットナンバー「The One You Love To Hate」なんて豪華な1曲もあるんだから、メタルファン生唾モノの楽曲が満載なわけですよ。

もちろん後半も捨て曲なし。「Cyber World」や「Slow Down」「Temptation」で緩急をつけつつ、ダークな「Drive」やメロディアスな疾走メタル「Savior」で締めくくる。『PAINKILLER』はもちろん、FIGHTの『WAR OF WORDS』(1993年)を素直に楽しめる方ならスッと入っていける1枚ではないでしょうか。もちろん、それ以外のメタルリスナーにもぜひ触れてほしい内容だと思っています。



▼HALFORD『RESURRECTION』
(amazon:国内盤CD / 国内リマスター盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "HALFORD『RESURRECTION』(2000)" »

2018年12月29日 (土)

IRON MAIDEN『IRON MAIDEN』(1980)

1980年にリリースされた、IRON MAIDENの記念すべきデビューアルバム。本国イギリスではいきなりチャート4位まで上昇するなど、早い段階から成功を収めています。

当時のメンバーはポール・ディアーノ(Vo)、スティーヴ・ハリス(B)、デニス・ストラットン(G)、デイヴ・マーレイ(G)、クライヴ・バー(Dr)。現メンバーはスティーヴとデイヴのみですが、この時期このタイミングこの編成でしかなし得なかった“パンクとヘヴィメタルの融合”が見事な形で表現されています。

ご存知のとおり、この時期のイギリスは1977年頃から勃発したパンクムーブメントがひと段落し、新たな波としてのヘヴィメタルブーム……New Wave Of British Heavy Metal(NWOBHM)が押し寄せ始めた頃。IRON MAIDENやDEF LEPPARDといったバンドがメジャーデビューを果たし、MOTÖRHEADのようなパンクとロックンロール、ハードロックの中間にいるバンドもその“枠内”で受け入れられ、大きな成功を残しました。

さて、今やHR/HMシーンにおける最重要バンドのひとつと数えられるメイデンですが、すでにこのデビューアルバムの時点で個性的なスタイルを確立させつつあります。旧来のハードロック、ヘヴィメタルが持つ疾走感と激しいリズム&ギターリフ、プログレッシヴロックからの影響も見え隠れする、複雑な展開を持つ長尺曲。これだけなら、今の彼らとなんら変わりないでしょう。実際、「Remember Tomorrow」や「Phantom Of The Opera」あたりは現在のスタイルの原点と言えるものですしね。

しかし、それだけじゃない。この時期のメイデンには20代前半のバンドらしい勢いの良さと、“パンク以降”を感じさせる荒々しさ、無軌道さが備わっているのです。それがオープニングを飾る「Prowler」や「Running Free」「Charlotte The Harlot」ににじみ出ているのではないでしょうか。

旧規格(1998年リマスター)に追加収録されていた「Sanctuary」もそうですが、このへんのスタイルは先のMOTÖRHEADにも通ずるものがあり、のちのスラッシュメタルにもかなり影響を与えているはずです。この荒々しさはバンドが成長を続けることで、どんどん整理・洗練されていくのですが、80年代初頭、特にこのデビューアルバムにおけるメイデンはパンクとメタルの橋渡しをしていたのではないか……もちろん当時をリアルタイムで通過しているわけではないので想像でしかありませんが、そんな気がしてなりません。

そういう意味では、僕にとってメイデンの1stアルバムはある種の“パンクアルバム”であり、とても大切な1枚なのです。なかなか共感してもらえないかもしれませんが。

なお、本作を含む初期4作品はつい最近、新たにリマスタリング&パッケージした形で再リリースされたばかり。先に書いたように、本作も前規格からボーナストラックが外され、ジャケット含めオリジナルの体裁に戻っています。「Sanctuary」がベスト盤やライブ盤以外で聴けなくなってしまったのは残念ですが、前のジャケットにはずっと違和感が残っていたので、正直この形に戻ってホッとしていますけどね。



▼IRON MAIDEN『IRON MAIDEN』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD [旧規格] / 海外盤CD / MP3

続きを読む "IRON MAIDEN『IRON MAIDEN』(1980)" »

2018年12月28日 (金)

MOTÖRHEAD『WE ARE MOTÖRHEAD』(2000)

2000年5月(日本は同年6月)にリリースされた、MOTÖRHEAD通算15枚目のスタジオアルバム。レミー(Vo, B)、フィル・キャンベル(G)、ミッキー・ディー(Dr)のトリオ編成になってからは3枚目のアルバムとなります。

ツインギター編成かつミッキー・ディー加入後のアルバム『BASTARDS』(1993年)でスラッシーなスピードメタル的要素を強めつつも、バンド本来が持つロックンロールバンドとしてのカラーをさらに強化させていったMOTÖRHEADですが、そのスタンスはギターが1人減ろうが変わることなく、むしろこのアルバムあたりでメタリックなファストチューン、アップテンポのロックンロール、ミドルテンポのロックンロール/ヘヴィチューン、バラード調のスローナンバーをうまく使い分けながらアルバムを構築させる術を熟知し始めたんじゃないか、そんな気がします。

オープニングを飾るのは、メタリックなスピードナンバー「See Me Burning」。『BASTARDS』以降の流れを汲む、アルバムの幕開けにふさわしい1曲です。そこからモダンヘヴィネスの色合いが若干感じられるミドルヘヴィ「Slow Dance」へと続き、彼ららしいアップテンポのロックンロール「Stay Out Of Jail」と序盤から良い流れを作ります。

が、4曲目にして早くも本作における最大の問題作が登場。それがSEX PISTOLSの名曲「God Save The Queen」のカバーです。結成タイミングを考えればほぼ同期と言えるピストルズをMOTÖRHEADがカバーするというのお面白い話ですし、それを企画盤に提供するのではなく、自身のオリジナルアルバムに収録し、しかもリードトラックとしてMVまで制作したのですから。当時はとにかく驚いたものです(この曲はのちに、企画カバーアルバム『UNDER COVER』にも収録)。しかも、カバー自体がど直球な仕上がりなので、より複雑な気持ちになったんだよねえ……。

そんな驚きがありながらも、以降は“らしい”楽曲が続いていきます。再びアップテンポのロックンロール「Out Of Lunch」で息を吹き返したかと思うと、ミッキー・ディーのツーバスがドコドコ唸りを上げるヘヴィ&ファストナンバー「Wake The Dead」、ブルージーなスローナンバー「One More Fucking Time」、重量級の暴走トラックみたいな疾走チューン「Stagefright / Crash & Burn」、メタリックなカラーが強い「(Wearing Your) Heart On Your Sleeve」と緩急を付け、ラストにアルバムタイトルトラックにしてバンドのテーマソングにふさわしい「We Are Motörhead」で幕を下ろします。

とにかく、MOTÖRHEADのパブリックイメージそのままの1枚ではあるんだけど、90年代以降に得た武器をしっかり活かしながら過去をアップデートさせている様はさすがだと思います。どのアルバムもお気に入りですが、なぜかこれは個人的に思い入れがある1枚。40分に満たない長さも丁度いいですしね。



▼MOTÖRHEAD『WE ARE MOTÖRHEAD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "MOTÖRHEAD『WE ARE MOTÖRHEAD』(2000)" »

2018年12月27日 (木)

RITCHIE BLACKMORE'S RAINBOW『MEMORIES IN ROCK II』(2018)

この流れで、2018年が終わる前に触れておかなくちゃいけないのがこのアルバム。2018年4月にリリースされた、現RITCHIE BLACKMORE'S RAINBOWによる最新ライブアルバム(+新録楽曲3曲)なのですが……正直、どう前向きに捉えようか本当に困る作品でした。

ご存知のとおり、リッチー・ブラックモア(G)は2015年夏に「2016年にRAINBOWとしてヨーロッパでのフェス出演」をアナウンス。70〜80年代とも、90年代とも異なるロニー・ロメロ(Vo)、ボブ・ヌーボー(B)、デヴィッド・キース(Dr)、イェンス・ヨハンソン(Key)という布陣で2016年、2017年、そして2018年にそれぞれフェス出演やツアーを敢行しております。

イェンス・ヨハンソンはイングヴェイとの共演やSTRATOVARIUSの一員としておなじみですが、ロニー・ロメロはこれを機に注目が集まった気鋭のシンガー。LORDS OF BLACKというバンドに在籍しており、RAINBOW参加をきっかけにこちらにも注目が集まるようになりました。ディオにもグラハムにもジョー・リン・ターナーにもなれる器用な歌い手ですよね(しかもフレディ・マーキュリーっぽさもあるし)。

で、本作は2017年に行われたロンドン、グラスゴー、バーミンガムの3公演からベストテイクを選出し、1本のライブのように組み立てた内容。リッチーのロックサイドを総括するような選曲となっており、RAINBOW時代にこだわらずDEEP PURPLEの代表曲(「Smoke On The Water」「Black Night」「Child In Time」から「Burn」、さらには「Perfect Strangers」まで)を含むセットリストは、「別にこれ、RAINBOW名義じゃなくてもいいんじゃね?」と思ってしまうものですが……まあ、DEEP PURPLEは現存するし、かといって新しい名前で活動しても長期的に継続するものでもないし、そもそも集客的にも、ねえ。だったらRITCHIE BLACKMORE'S RAINBOWという名前でやるのが正解なんでしょうね。

でね。オープニングの「Somewhere Over The Rainbow」から「Spotlight Kid」への構成……この、ちょっと何かが引っかかるような歯切れの悪いギタープレイに正直がっかりしたんですわ。これは嘘偽りなく書き残しておきたい。こんなリッチーを聴きたかったわけじゃないのに。時の流れって残酷すぎる。「I Surrender」も完全にAOR化してるし。

ただ、「Mistreated」あたりから……「あれ、これアリじゃね?」と思う自分もいて。いぶし銀って一言で済ませたくはないけど、それも間違いじゃないんだよね。でもさあ……緊張感は皆無。ロニーやイェンスは本当に頑張ってるけど、おじいちゃんが昔を思い出しながら一生懸命弾いてる絵が思い浮かんじゃって。

で、ここでふと思い出すわけです。「あれ、ジミー・ペイジだってこんなじゃね?」って。そう考えたら妙に腑に落ちてしまって……だからといって、全部を納得できたわけではないですけど。こんなユルユルな「Burn」、聴きたくなかったもん。WHITESNAKEカバーもどうかと思うけど、これを聴いたらまだマシに思えてしまうし。う〜ん……助けて……。

あ、肝心のスタジオ新録曲についても触れておきましょう。こっちで巻き返しなるか……。

約23年ぶりのスタジオ新録になるわけですが、そのうちの1曲は「I Surrender」の再録。もはやハードロックでも産業ロックでもない……演歌? 違うか。ユルいんだよなぁ……はぁ。

もう1曲はクラシックの名曲「威風堂々」をカバーした「Land Of Hope And Glory」。ライブのSEとして使われているものらしいですが、これはもうBLACKMORE'S NIGHTの曲にエレキギターをかぶせたような代物。やっぱりユルいです。

最後の1曲が、純然たる新曲「Waiting For A Sign」。どの時代のリッチーの作品にも1曲は含まれていそうな、ブルース主体の古臭いロックなのですが……これが一番よかったというのは、なんとも皮肉な話です。もうこれだったら、最初からオリジナル作品を……いや、なんでもないです。

曲の良さは当然文句なし。70年代から現在に至るまで幅広い世代に愛され続けてきた名曲ばかりですから。けど、ハードロックとして触れようとすると、現在進行形のロックを楽しんでいる耳にはちょっと厳しいんですよ。そこをどう解釈するかで、本作の評価は変わりそうな気がします。

その枯れたプレイ含めて、本当の意味でノスタルジーに浸りたい人向けかも。ぶっちゃけ、今の僕には必要ない、かな。残念ですけど。



▼RITCHIE BLACKMORE'S RAINBOW『MEMORIES IN ROCK II』
(amazon:国内盤3CD / 国内盤3CD+DVD / 海外盤2CD+DVD / MP3

続きを読む "RITCHIE BLACKMORE'S RAINBOW『MEMORIES IN ROCK II』(2018)" »

2018年12月26日 (水)

2018年総括(番外編):HR/HM、ラウドロック編

隔月の奇数月に「リアルサウンド」さんにて、HR/HMやラウドロックの新譜キュレーション記事を書いているのですが、2018年のまとめ記事となる年間ベスト10紹介エントリー「西廣智一が選ぶ、2018年ラウドロック年間ベスト10 ネガティブな話題の中にも豊作が揃った1年」が12月25日に公開されました。

基本的には順位を付けるのは苦手なのですが、ここでま毎回思い切って1位から10位まで順番をつけて10枚紹介しています。今年に関しては上位3作品に関しては不動なのですが、4位以降は日によって変動があると思うので、セレクトの際に泣く泣く10枚から落とした準候補10枚を加えた20枚を紹介する意味で、SpotifyとApple Musicに記事と同名のプレイリストを作成しました。

改めて、20枚を紹介しておきますね(基本的には順位は付けていませんが、先のリアルサウンドさんで1〜10位と順位付けしているため、便宜上20までナンバリングしておきます)。


01. DEAFHEAVEN『ORDINARY CORRUPT HUMAN LOVE』(レビュー
02. VOIVOD『THE WAKE』(レビュー
03. ALICE IN CHAINS『RAINIER FOG』(レビュー
04. Crystal Lake『HELIX』
05. AZUSA『HEAVY YOKE』(レビュー
06. IHSAHN『ÁMR』(レビュー
07. JUDAS PRIEST『FIREPOWER』(レビュー
08. SIGH『Heir to Despair』
09. LOVEBITES『CLOCKWORK IMMORTALITY』(レビュー
10. ARCHITECTS『HOLY HELL』(レビュー
11. CORROSION OF CONFORMITY『NO CROSS NO CROWN』(レビュー
12. FEVER 333『MADE AN AMERICA』(レビュー
13. GHOST『PREQUELLE』(レビュー
14. THE STRUTS『YOUNG & DANGEROUS』(レビュー
15. MANTAR『THE MODERN ART OF SETTING ABLAZE』
16. NINE INCH NAILS『BAD WITCH』(レビュー
17. NOTHING『DANCE ON THE BLACKTOP』(レビュー
18. SHINEDOWN『ATTENTION ATTENTION』(レビュー
19. SLEEP『THE SCIENCES』
20. CHTHONIC『BATTLEFIELDS OF ASURA』


最初の10曲が「リアルサウンド」さんで紹介した10枚から。一応順位どおりに楽曲を並べています。で、後半の10曲が選から漏れた10枚から。こちらは基本的には順不同ですが、まあ大体こんな並びかなと。基本的には当サイトで紹介した作品、あるいはキュレーション連載で紹介した作品ばかりですが、個人的にはこういう1年だったのかなとこれを聴いて振り返っているところです。

せっかくなので、この20枚から漏れた「今年よく聴いたHR/HM、ラウドロック系アルバム」も紹介しておきます。こちらはアルファベット順に並べています。


・BEHIMOTH『I LOVED YOU AT YOUR DARKNESS』
・BURN THE PRIEST『LEGION: XX』(レビュー
・COHEED AND CAMBRIA『THE UNHEAVENLY CREATURES』
・Crossfaith『EX_MACHINA』
・DIMMU BORGIR『EONIAN』(レビュー
・DIR EN GREY『The Insulated World』
・Graupel『Bereavement』
・GRETA VAN FLEET『ANTHEM OF THE PEACEFUL ARMY』(レビュー
・HALESTORM『VICIOUS』(レビュー
・HER NAME IN BLOOD『POWER』
・JONATHAN DAVIS『BLACK LABYRINTH』(レビュー
・LOUDNESS『RISE TO GLORY -8118-』(レビュー
・MICHAEL SCHENKER FEST『RESURRECTION』(レビュー
・OBSCURE『DILUVIUM』
・A PERFECT CIRCLE『EAT THE ELEPHANT』
・SAXON『THUNDERBOLT』(レビュー
・SHINNING『X - VARG UTAN FLOCK』
・SKINDRED『BIG TINGS』(レビュー
・SURVIVE『Immortal Warriors』
・THERAPY?『CLEAVE』(レビュー
・U.D.O.『STEELFACTORY』(レビュー
・UNITED『Absurdity』
・VENOM『STORM THE GATES』(レビュー
・陰陽座『覇道明王』

RAINBOW『LONG LIVE ROCK 'N' ROLL』(1978)

1978年春にリリースされた、RAINBOW通算3作目のスタジオアルバム。リッチー・ブラックモア(G)、ロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)、コージー・パウエル(Dr)という、いわゆる“三頭政治”時代のラストアルバムに当たります。

前作『RISING』(1976年)まで在籍したジミー・ベイン(B)とトニー・カレイ(Key)が事実上クビになり、本作のレコーディングにはセッションミュージシャンとしてボブ・ディズリー(B)とデヴィッド・ストーン(Key)が参加。リッチー自身も半数以上の曲でベースを担当しています。

大作主義だった『RISING』から一変、本作ではアメリカでのラジオヒットを狙った3〜4分台の楽曲が大半を占め、長尺ナンバーはアナログA面ラスト(M-4)の「Gates Of Babylon」とアナログB面ラスト(M-8)の「Rainbow Eyes」のみ。これによってRAINBOWらしさが減退したのかというと、実はまったくそんなことはなく。リッチーのギターも、ロニーのボーカルも、そしてコージーのドラミングも緊張感のある、そして非常に勢いの強いものとなっています。

確かにオープニングを飾る「Long Live Rock 'n' Roll」や、それに続く「Lady Of The Lake」のキャッチーさは前作までになかったカラーかもしれません。けど、こういったスタイルは振り返るとDEEP PURPLE時代からリッチーが持っていたカラーですし、後追いの自分からしたら特に違和感なく楽しめるんですよね。

長尺の楽曲にしても、「Gates Of Babylon」の持つ怪しい雰囲気とリフ(とそのメロディ)がちょっとだけツェッペリンっぽかったりして新鮮ですし。かと思えば、トラッドミュージック的な色合いが強いスローバラード「Rainbow Eyes」も素晴らしい仕上がり。この曲でリッチー/ロニー/コージー時代が幕を下ろしたのも、今となっては「しょうがないよな……」と思うものがあったり、なかったり。

アルバムとしての思い入れとなると『RISING』のほうが数歩勝るのですが、本作には「Kill The King」というHR/HM界の歴史に残る名曲/名演が含まれていることもあって、個人的評価が非常に高い1枚だったりします。そこに「Gates Of Babylon」や「Rainbow Eyes」のような楽曲も含まれているんですから、嫌いになれるわけがない。いや、嫌いな人なんていないですよね?

なお、本作の2枚組デラックス盤(サブスクはこちらが配信されています)では、本作のラフミックスバージョンも楽しむことができます。完成度はオリジナル盤のほうが勝りますが、そちらではよく聴き取れないフレーズも楽しめるので、マニア向けとはいえ貴重な音源集ではないでしょうか。



▼RAINBOW『LONG LIVE ROCK 'N' ROLL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "RAINBOW『LONG LIVE ROCK 'N' ROLL』(1978)" »

2018年12月25日 (火)

IMPELLITTERI『STAND IN LINE』(1988)

1988年にリリースされた、クリス・インペリテリ(G)率いるIMPELLITTERIの1stフルアルバム。前年1987年にバンド名を冠したEPを発表しているのですが、その時点ではロブ・ロック(Vo)がフロントマンを務めていました。が、このフルアルバムではRAINBOWなどでの活躍で知られるグラハム・ボネット(Vo)に交代。といっても、グラハムもこのアルバム1枚ですぐに脱退し、ロブが再加入することになるのですが。

当時のメンバーはクリス、グラハム、チャック・ライト(B/ex. QUIET RIOTなど)、パット・トーピー(Dr/MR. BIG)、フィル・ウォルフ(Key)という布陣。もっとも、パット・トーピーもチャック・ライトもすぐに脱退して、代わりにステット・ホーランド(ex. W.A.S.P.など)やデイヴ・スピッツ(ex. WHITE LION、ex. GREAT WHITEなど)が加入することになったりで、いろいろこの時期の彼らはアレなんですよね……。あー面倒くさい(笑)。

本作リリース当時、その超絶速弾きプレイに注目が集まり、やたらと「イングヴェイより速い」だの何だのと騒がれたクリスですが、アルバム自体も80年代のイングヴェイを彷彿とさせるネオクラシカル系の正統派ハードロックが展開されています。しかも、そのルーツとなるRAINBOWの2代目シンガーのグラハムを迎えてネオクラシカルをやっちゃうわけですから……当時はさぞ、イングヴェイも悔しがったことでしょう(そんなこともないか)。

その恩恵といいますか、本作にはRAINBOW時代のヒット曲「Since You've Been Gone」のカバーと、RAINBOWのライブではオープニングに欠かせなかった名曲「Somewhere Over The Rainbow」のギターインストカバーも収録。前者は正直、原曲をよりモダンにしようと頑張りすぎて失敗しているような気がしないでもありませんが、後者は8分の6拍子にアレンジしたりと工夫が良い方向に作用していると思います。

もちろん、オリジナル曲もなかなかのもので、オープニングを飾るドラマチックな「Stand In Line」はグラハムを含む編成だからこそ作り得た名曲。ネオクラシカル系の「Secret Lover」はエンディングこそ唐突ですが、曲としては非常にカッコいいし、ヘヴィなミディアムチューン「Tonight I Fly」もグラハムのパワフルなボーカルが楽しめて良き仕上がり。その後も「White And Perfect」や「Leviathan」といったメロディアス&パワフルな楽曲、シンセがいかにもなファストチューン「Goodnight And Goodbye」、クリスのプレイを存分にお楽しみいただけるインスト「Playing With Fire」と、良曲目白押しです。

正直、この手の速弾きギタリストにほぼ興味がないのですが、そこで歌う人と楽曲が良ければ純粋にアルバムとしては楽しめる人なので、このアルバムも当時から現在に至るまで「あー、グラハムかっこいいなー」という気持ちで素直に堪能できています。まあ邪道かもしれませんが、そういう人間がひとりくらいいてもいいですよね?



▼IMPELLITTERI『STAND IN LINE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "IMPELLITTERI『STAND IN LINE』(1988)" »

2018年12月24日 (月)

THE MONKEES『CHRISTMAS PARTY』(2018)

前作『GOOD TIMES!』(2016年)で本格的復活を果たしたTHE MONKEESが2年ぶりの新作として発表した、初のクリスマスアルバム。相変わらず正式メンバーはミッキー・ドレンツとピーター・トークの2人ですが、前作同様に脱退しているオリジナルメンバーのマイク・ネスミスも参加。さらに、2012年に亡くなったデイヴィ・ジョーンズのボーカルテイクを使った楽曲も含まれており、完全に“あのモンキーズ”のアルバムとして仕上げられています。

内容的にはクリスマスソングのスタンダードと、ポール・マッカートニー「Wonderful Christmastime」やBIG STAR「Jesus Christ」といったロック/ポップスのクリスマスソングカバーが中心。そこに、前作でもオリジナル曲を提供したアダム・シュレシンジャー(FOUNTAINS OF WAYNE)やアンディ・パートリッジ(XTC)、リヴァース・クオモ(WEEZER)がオリジナル曲を書き下ろし。さらに、今回は元R.E.M.のピーター・バックもソングライティング&ギターで参加するなど、アメリカンロック/パワーポップ界的には今回もたまらない内容となっています。

全体のプロデュースを手がけたのは、今回もアダム。演奏面でも全面的に彼が関わっており、プレイヤー陣の中にはジョディ・ポーター(G)やブライアン・ヤング(Dr)といったバンドメイトの名前も見つけることができます。今や解散状態のFOUNTAINS OF WAYNEなだけに、こういう形で再び共演が楽しめるのはファンとしては嬉しいかぎり。

数少ないオリジナル曲4曲は、オープニングを飾るアンディ・パートリッジ作「Unwrap You At Christmas」こそ“らしい”クリスマスソングですが、リバース・クオモ作「What Would Santa Do」はハンドベルこそ用いているものの、基本的にはWEEZERっぽいパワーポップ。アダム・シュレシンジャーによる「House Of Broken Gingerbread」もFOW風パワーポップで、特にクリスマスソングという印象は薄いかもしれません。

そしてもう1曲、ピーター・バックが関わるアルバムタイトルトラック「Christmas Party」もそのギターフレーズのせいもあってか、どこかR.E.M.を彷彿とさせるもの。これを歌うミッキー・ドレンツの声もどこかマイケル・スタイプっぽいような……気がしませんか?

もちろん、それ以外のカバー曲も原曲が素晴らしいですし、それを演奏するプレイヤー陣も優れているので、安心して楽しめるはず。若々しいデイヴィのボーカルを用いた「Mele Kalikimaka」や「Silver Bells」には、ちょっとウルっとしてしまいますけどね。アコースティックテイストにアレンジされた「Wonderful Christmastime」も素敵な仕上がりですし。安心安定の1枚として、この時期にお楽しみくださいませ。



▼THE MONKEES『CHRISTMAS PARTY』
(amazon:海外盤CD / MP3

続きを読む "THE MONKEES『CHRISTMAS PARTY』(2018)" »

2018年12月23日 (日)

STEVE PERRY『TRACES』(2018)

年明け1月には70歳の誕生日を迎える、元JOURNEYスティーヴ・ペリーによる通算3作目のソロアルバム。前作『FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE』(1994年)から実に24年ぶりの新作……びっくりですよね。そもそも、その24年の間に発表された“新作”って、JOURNEY再結成アルバムの『TRIAL BY FIRE』(1996年)と、ソロベストアルバム『GREATEST HITS + FIVE UNRELEASED』(1998年)に収録された未発表曲くらいですから(それも、1988年に2枚目のソロアルバム用にレコーディングしながらもお蔵入りした10年前のテイク)。

前作『FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE』が1994年という時代性を完全に無視した、良くも悪くも“産業ロック”テイストにJOURNEY時代から引き継ぐソウルテイストを加えた「いかにもスティーヴ・ペリーらしい」仕上がりでしたが、あれから時は24年も流れて音楽業界も流行りのサイクルが何回転も繰り返し……今作では「結局俺にはこれしかできないし、これしか歌えない」という開き直りにも似た、過去2作の延長線上にありながらもしっかり“大人”になったスタイルが展開されています。

オープニングの「No Erasin'」を先行配信で聴いた瞬間、「そうそう、これだよね、スティーヴ・ペリーって」と妙に納得させられたことを覚えています。JOURNEYをよりソフトにしながらも、しっかりそのイメージをギリギリのところで保っている。で、彼が歌えばそれが確実に“それっぽく”成立する。なかなかの佳曲だと思います。

じゃあ、アルバム全体でそういったソフトな産業ロックが展開されているのかというと、そこは齢69のスティーヴ・ペリー御大。メロディアスなミディアム/スロウナンバーを中心に、要所要所にソウルやR&Bのカラーを加えたポップロック/バラードがずらりと並びます。刺激的な要素は皆無。もちろん、彼にそういったものは求めるはずもなく、最初から最後まで安心して楽しめる1に仕上がっています。

前作の時点で感じた声の“枯れ”はさすがにあれから24年も経っていることもあり、さらに加速していますが、それでも伸びのあるハイトーンは健在。とはいえ、その“かつての武器”をこれでもかと使い回すことはせず、すごく自然に使うことで曲の中に溶け込ませている。まったく嫌味のない、本当にナチュラルな“歌”が楽しめるはずです。

「No Erasin'」や「Sun Shine Gray」(ROB ZOMBIEのギタリスト、ジョン・5がソングライティングやギターで参加)程度しかロックと呼べるものはないので、ハードロック寄りのリスナーには少々厳しい内容かもしれませんが、例えばJOURNEYが好きでマイケル・ボルトンあたりのAORシンガーも好みという方には間違いなくハマる内容だと断言できます。完成度だけは無駄に高いです。年間ベストには選ばないもののふとした瞬間に聴きたくなる、自分的にはそんな“癒し”の1枚。

ちなみに本作、全米6位/全英40位と、ともにキャリア最高記録を更新しています。



▼STEVE PERRY『TRACES』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "STEVE PERRY『TRACES』(2018)" »

2018年12月22日 (土)

TESSERACT『SONDER』(2018)

イギリス・ミルトンキーンズ出身の5人組バンド、TESSERACTが今年4月に発表した4thアルバム。スティーヴン・ウィルソンなどで知られるプログレッシヴロック専門レーベルKscopeからのリリースで、同レーベルからの2作目にあたります。本作は全英62位、全米198位という成績を残したようで、この手のバンドの中でもそこそこ成功しているほうに分類されるのではないでしょうか。

その所属レーベルの特性からも、また実際に音を聴いてもらえばわかるように、彼らのスタイルはプログレッシヴメタルやジェントに属するといっていいでしょう。プログレメタルというと、どうしてもDREAM THEATERのような長尺の楽曲をイメージしがちですが、このアルバムに関して言えば2〜3分台の楽曲も存在するし、最長のものでも7分に満たないという比較的コンパクトな楽曲が中心。全8曲で36分程度というトータルランニングだけを目にすると、意外とスルッと聴けてしまうような印象がありますが、いやいや、その中身は実際の尺の数倍も濃いんですよ。

短いながらも複雑なアレンジが施されたバンドアンサンブル、基本的にはクリーントーンで歌い上げながらも、ところどころにスクリームを取り入れることでヘヴィさを表現するダニエル・トンプキンスのボーカル、そして低音を強調したギターサウンドなど、確かに我々がイメージするプログレメタルやジェントそのものです。

ですが、“そのもの”であると同時に、やはりどこか違う感触も受ける。それが、静と動を巧みに操る緻密なアレンジ力によるものであることを、アルバムを何度か聴くうちに気づかされるわけです。どこか環境音楽的な側面もありつつ(「Orbital」がまさにそれ。このへんは旧来のプログレ的ですね)、突如訪れる激低音とヘヴィかつグルーヴィーなリズム(しかも、ところどころで変拍子まで飛び込んでくる)。曲によってはダンスミュージック的ですらあり(「Juno」あたりがこれ)、その変幻自在ぶりにはただ驚かされるばかりです。

PERIPHERYあたりと比べたら相当ポップに聴こえるかもしれませんが、やってることの変態度や音の密度は彼らとなんら変わらないのではないでしょうか。等に中盤〜後半の「Beneath My Skin」や「Smile」などを聴くと、その思いはより強まるばかり。

そうそう、本作の初回限定盤には今作からボーカルトラックのみを抜き取ったインストゥルメンタル盤が付くので、そちらを聴き込めばよりその変態度が理解できるかと思います。最近この手のバンドは食傷気味でしたが、これはなかなか良いのでは……と思い、久しぶりに引っ張り出して聴いて、これを書くに到ました。これも年末ならでは、かな。



▼TESSERACT『SONDER』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3

続きを読む "TESSERACT『SONDER』(2018)" »

2018年12月21日 (金)

LITA FORD『LITA』(1988)

元THE RUNAWAYSのギタリスト、リタ・フォードが1998年初頭にリリースした通算3作目のソロアルバム。「Kiss Me Deadly」(全米12位)、「Close My Eyes Forever」(同8位)とヒットシングルが続出したこともあり、アルバムは最高29位まで上昇。アメリカのみで100万枚を超えるセールスを記録しました。

バンド時代のイメージを払拭するように、ソロではHR/HMスタイルへと移行した彼女。このアルバムにもそういった印象の強い楽曲を多数用意しており、なおかつメタル界から強力なバックアップを受けたこともあり、当時の流行に見事乗ることができたのかもしれません。

プロデューサーこそマイク・チャップマン(BLONDIE、THE KNACK、スージー・クアトロなど)というHR/HMの印象から程遠い人選ですが、ソングライター陣に目を向けるとM-2「Can't Catch Me」にはレミー・キルミスター(MOTÖRHEAD)、M-5「Falling In And Out Of Love」ではニッキー・シックス(MOTLEY CRUE)、M-9「Close My Eyes Forever」にはオジー・オズボーンの名前をクレジットで見つけることができます。

また、アルバムラストを飾る「Close My Eyes Forever」ではソングライティグのみならず、オジー本人がデュエットで参加。これがまた、彼らしい歌声&フレーズでたまんないんですよね。考えてみたら、オジー絡みの全米トップ10ヒットシングルって、これが最初だったのではないでしょうか。

アルバムのオープニング「Back To The Cave」こそサンタナ風のラテン調ロックですが、それ以降はLAメタル風味のゴリゴリ&キラキラしたハードロックチューンが満載。外部ライターによる楽曲ですが、シングルヒットした「Kiss Me Deadly」なんてど真ん中のポップメタルで、これでラジオヒットを狙ったんだろうなという魂胆が見え見えです。

かと思えば、「Can't Catch Me」はパワフルな疾走メタルだし、「Falling In And Out Of Love」もミドルテンポのメロディアスハードロックだし。だけど、アルバム後半になるとHEARTあたりのおこぼれを貰おうと思ったのか、ミドル〜スローナンバーが目白押し。「Under The Gun」「Broken Dreams」はまさにそういった路線の楽曲ですし、きわめつけはオジー御大を投入した泣きのバラード「Close My Eyes Forever」ですから。「売ってやろう!」っていう強い意思をここまで前面に打ち出せば、本当に売れるんですね(もちろん、大前提として楽曲の良さがあるわけですが)。

そりゃ、ここまで色気のある女性ですもの。オジーだってレミーだってニッキーだって放っておきませんよね。わかる、わかるよ。



▼LITA FORD『LITA』
(amazon:海外盤CD / MP3

続きを読む "LITA FORD『LITA』(1988)" »

2018年12月20日 (木)

VIXEN『VIXEN』(1988)

80年代後半に活躍したアメリカの女性4人組バンド、VIXENが1988年に発表したデビューアルバム。「Edge Of A Broken Heart」(全米26位)、「Cryin'」(同22位)のシングルヒットも手伝い、アルバム自体も全米41位まで上昇しました。

当時は空前のHR/HMブームで、レーベルもメディアも「第二のBON JOVIMOTLEY CRUEは誰だ?」「次世代のDEF LEPPARDWHITESNAKEを探せ」と躍起になっていた頃。そんな状況でしたが、女性HR/HMバンド/アーティストに日の目が当たる機会はかなり少なく、HEARTは別格として、それ以外ではドイツのWARLOCK、イギリス生まれながらもアメリカで活躍した元THE RUNAWAYSのリタ・フォードが目立ったヒットを飛ばした程度でした。

そんな中、VIXENが契約したのはManhattan Recordsという、当時EMI(現Universal Records)傘下の新興レーベル。すでにGLASS TIGERやロビー・ネヴィル、リチャード・マークスといったロック/ポップス系アーティストがヒットを飛ばしていましたが、本格的にHR/HM系アーティストを手がけるのはドイツのZENO以来。ここでハズすわけにはいきません。

そこで投入されたのが、当時すでに“時の人”となりつつあったリチャード・マークス。リードトラック「Edge Of A Broken Heart」では彼が楽曲制作を担当したほか、プロデューサーとしても名を連ねています。さらに、そのリチャード・マークスやボブ・シーガーなどのアメリカンロックを担当してきたデヴィッド・コール、QUIET RIOTW.A.S.P.、KING KOBRAなどを手がけたスペンサー・プロファーも参加し、曲のテイストごとにプロデューサーを替えています。

このほか、M-5「Desperate」には当時WHITESNAKEでブイブイ言わせていたヴィヴィアン・キャンベル(現DEF LEPPARD)がギターソロでゲスト参加。デビュー作にこれだけ力を入れてるあたりからも、彼女たちに社運を賭けてるるんじゃ?と思えるほどの気合いが感じられます。

実際、どの楽曲も本当によく作り込まれたものばかりで、BON JOVIやHEARTあたりを気に入っているライト層を引き込むには十分魅力的な内容と言えるでしょう。おそらくハードめの曲はスペンサー・プロファーあたりが、ポップめのソフトナンバーはデヴィッド・コールが手がけているんでしょうね。そのへんの色分けもわかりやすいし、HR/HMという色眼鏡なしでも存分に楽しめるロックアルバムだと思います。だって、当時も今も、これくらいハードでもHR/HMの範疇に含まれないアルバム、たくさんありますものね。これもあの時代故。

とにかくシングル2曲のクオリティが飛び抜けているところが、特筆すべきポイント。もちろん他の曲がダメというわけではなく、平均的に良質なロックチューンの中に2曲だけ職業作家による上品で高品質な楽曲が混ざっちゃったもんだから、必要以上に輝いているといいますか。なんとなくですが、レーベルはこの2曲をシングルで切ったあとのこと、あんまり考えてなかったような気もするんだけどな(「Love Made Me」あたりはその予備軍っぽいけど、やっぱり“差”を感じるわけですよ)。

まあ、そんことを書きながらも、安心して楽しめる良質なメロディアス産業ハードロックアルバムなのは間違いない事実。HEARTほど圧倒的なボーカルが楽しめるわけではないけど、あの路線が好きな方はぜひ一度お試しください。



▼VIXEN『VIXEN』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "VIXEN『VIXEN』(1988)" »

2018年12月19日 (水)

BURNING WITCHES『HEXENHAMMER』(2018)

スイスの女性5人組バンド、BURNING WITCHESの2ndアルバム。昨年5月(日本では同年11月)にセルフタイトルアルバムでデビューを飾った彼女たちですが、新たにNuclear Blast Recordsと契約。早くも2作目のアルバムを届けてくれました。

DESTRUCTIONのシュミーア(Vo, B)が全面的サポート&プロデュースで参加した前作では、オールドスクールの正統派パワーメタルスタイルがヨーロッパ圏で好評を博しましたが、今作の内容もその延長線上にあるもの。アンプテンポのスラッシュメタルからミディアムテンポの王道ヘヴィメタル、あるいはメロディアスな泣きのバラードまで、前作以上に楽曲の幅を穂広げつつも「これぞヘヴィメタル!」と叫びたくなるくらいにど真ん中を突いてくる、気持ちの良い1枚に仕上がっています。

ちなみに、結成時のメンバーのひとりであるアリア(G)が脱退したため、今作から新たにソニアが加入。彼女はECOCIDEやSHADE OF THE HATREDといったデスメタルバンドにベーシストとして参加していたとのことです。補足まで。

さて、気になる内容ですが、上に書いたように本当にストレートなHR/HMが鳴らされており、「女性メンバーによる」とか「女性バンドならではの」なんて比喩はまったく必要ありません。むしろ、下手な男性バンドよりもゴツくて厳つい。セイレナ(Vo)のパワフルな歌声はBATTLE BEASTあたりと比較されそうな気がしますが、それも納得してしまうくらいに堂々としたもので、「Don't Cry My Tears」のようなスローバラードもしっかり歌いこなしています。この曲は日本盤と海外限定盤にのみアコースティックバージョンも収録されていますが、こちらもなかなかの仕上がりです。

この手のバンドの場合、どうしても歌い方がヒステリックに走りがちですが、基本的にはそういった様子もなく、ひたすらストロングスタイルの歌唱を聴かせてくれるので、その手の女性ボーカルが苦手というリスナーにも違和感なく楽しんでもらえるのではないでしょうか(一部楽曲でそういった歌唱も見受けられますが、それもあくまで味付け程度。アクセントのひとつとして受け止められるはずです)。

また、前作ではJUDAS PRIESTの「Jawbreaker」をカバーしていましたが、今作ではDIOの「Holy Diver」をピックアップ。こういった“ど真ん中”の名曲を選ぶあたりに、彼女たちが何をやりたいのかが伺えるし、実際にそういう音になっていると実感できるはず。

MVでは動く姿を目にすることができるものの、ライブではこれらの楽曲をどんな具合に披露してくれるのか、ぜひ生で拝みたいものです。



▼BURNING WITCHES『HEXENHAMMER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外限定盤CD / MP3

続きを読む "BURNING WITCHES『HEXENHAMMER』(2018)" »

2018年12月18日 (火)

LOVEBITES『CLOCKWORK IMMORTALITY』(2018)

LOVEBITES待望の2ndアルバム。1stアルバム『AWAKENING FROM ABYSS』(2017年)から1年2ヶ月ぶりとなりますが、間にミニアルバム『BATTLE AGAINST THE DAMNATION』(2018年)を挟んでいるので、実質的には半年ぶりの新作ということになるのでしょうか。

8月には日本人女性アーティストとしては初となる、ドイツ最大級のメタルフェス『WACKEN OPEN AIR』に出演。続いてイギリスの『BLOODSTOCK OPEN AIR』にも参加し、昨年秋のショーケースライブも功を奏して英・ブッキングエージェントの最大手のひとつ「X-Ray Touring」と提携。11月にはオランダ、ドイツ、フランス、イギリスを回るヨーロッパツアーも実現し、このニューアルバム『CLOCKWORK IMMORTALITY』も世界最大のメタルレーベルのひとつであるNuclear Blast Recordsの傘下Arising Empireを通じてヨーロッパ各国やオーストラリアなどでリリースされています。

さて、この1年で環境が激変したLOVEBITES。どんなアーティストにとっても2枚目のアルバムは鬼門と言われますが、彼女たちの場合はといいますと……正直に書きますと、最初に1巡したときは『AWAKENING FROM ABYSS』や『BATTLE AGAINST THE DAMNATION』ほどの衝撃や驚きはありませんでした。それは、このバンドに対する期待値が自分が思っている以上のものだったということの表れでもあるのですが。

では、今作の出来は悪いのかといいますと、まったくそんなことはない。インパクトという点においては過去作のほうが勝るものの、1曲1曲の作り込みや完成度は正直この新作のほうが上だと思います。アルバムのオープニングを飾る「Addicted」やリードトラックとしてMVも公開中の「Rising」などは、我々がイメージする“LOVEBITES像”がよりブラッシュアップされた形で提示されています。

かと思えば、ダンサブルでキャッチーな「Empty Daydream」や疾走感に満ちあふれた「Mastermind 01」のような曲もあるし、緊張感ほとばしるスラッシーな「M.D.O.」、asami(Vo)の伸びやかな歌声が楽しめる「Journey To The Otherside」、ドラマチックなアレンジのパワーメタル「The Final Collision」、イントロのツインリードギターにヤラレる「We The United」もある。

そうなんです。本作は1曲1曲のバラエティ豊かさが過去イチで、非常に柔軟性の高い内容に仕上がっているのです。作曲能力は確実にレベルアップしているし、表現力やアンサンブルも文句なし。先に述べたようにasamiの歌唱力・表現力も確実な成長を見せていると同時に、独自の個性を確実にモノにしている。つまり、本作は“世界”で鳴らされることを意識した、インパクトよりも中身の濃さで勝負する1枚なのではないでしょうか。だからなのか、何度も聴き込むと1回目には見えてこなかった魅力的な世界が拓けてくる。そんなスルメ的アルバムだと思います。

そして最後に、アルバムラストを飾る泣きのバラード「Epilogue」。この曲で締めくくられるというのも、また堪らないものがあります。この曲はasamiが初めて作曲に挑戦した1曲で、古き良き時代のブリティッシュハードロック風を彷彿とさせるものがあります。逆に、2枚目のアルバムで早くもこんなに大人びたテイストを提供するなんて、どこまで成長著しいんだと驚くばかり。この曲でのmiyako(G, Key)のアコギとasamiのボーカルは、圧巻の一言。ライブで聴いたらどうなっちゃうんだろう……と、今から来年のツアーが楽しみでなりません。

ファンの間では賛否両論あるようですが、本作は間違いなく“世界のLOVEBITES”へと導く鍵になるはずだし、2018年のHR/HMシーンを代表する1枚だと思っています。



▼LOVEBITES『CLOCKWORK IMMORTALITY』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+DVD / 国内盤CD+Blu-ray / 海外盤CD / MP3

続きを読む "LOVEBITES『CLOCKWORK IMMORTALITY』(2018)" »

2018年12月17日 (月)

VENOM『STORM THE GATES』(2018)

2018年12月発売の、VENOM通算15枚目のスタジオアルバム。前作『FROM THE VERY DEPTHS』(2015年)から3年11ヶ月ぶり、ほぼ4年ぶりの新作となります。

前作『FROM THE VERY DEPTHS』は個人的に2015年の年間ベストアルバム10枚の中に選ぶくらいよく聴いた1枚でした。正直、VENOMというと初期の『WELCOME TO HELL』(1981年)や『BLACK METAL』(1982年)で聴ける“劣悪なサウンドの中、何をやってるのかわからないけどとにかくすごい”スタイルの印象が強く、これまではどちらかというと敬遠してきたバンドのひとつだったのですが、そのイメージをガラリと変えられたのが『FROM THE VERY DEPTHS』だったわけです。

クロノス(Vo, B)、レイジ(G)、ダンテ(Dr)という現在の布陣になってから来年でまる10年という記念すべきタイミングに発表された今作も、基本的には前作の延長線上にある1枚。よくブラックメタルの始祖と言われますが、そのイメージで触れるとちょっと肩透かしを食らう、至極真っ当なスタッシュメタル/爆走メタルが展開されています。

もともとMOTÖRHEADとの共通点も語られることの多い彼らですが、本作にはその影響がかなり強くにじみ出ているのではないでしょうか。思えば前作リリース時にはまだレミーは生きていたわけで、そう考えると本作のこのスタイルはレミーおよびMOTÖRHEADに対するトリビュートと受け取ることもできるのではないでしょうか。

疾走感のあるメタリックな楽曲よりも、そういった爆走ロックンロール的な楽曲(「Notorious」「Dark Night (Of The Soul)」や、終盤の「Immortal」「Storm The Gates」あたり)のほうが、今作に限っては魅力的に映る。そして、今作ではそういったノリが非常に気持ち良い。不思議なもので、このアルバムに触れる前はスラッシーなサウンドを求めていたはずなのに、聴き終える頃にはこの猪突猛進な爆走感が愛おしく思えてくるのです。

特にラストナンバーにしてタイトルトラックの「Storm The Gates」は、邪悪さを通り越した凄みが感じられる、個人的にも推し曲のひとつです。爆音で聴き終えたときの清々しさといったら。ねえ。

もちろん、アルバム冒頭を飾る攻撃的なメタルチューン「Bring Out Your Dead」や「I Dark Lord」といった、ヘヴィメタルファンが喜ぶ楽曲も用意されています。そういう意味では、後期MOTÖRHEADのようなスタイルが好みのリスナーにはうってつけの1枚かもしれませんね。個人的にはこれ、大好物です。



▼VENOM『STORM THE GATES』
(amazon:海外盤CD / MP3

続きを読む "VENOM『STORM THE GATES』(2018)" »

2018年12月16日 (日)

ANTHRAX『STOMP 442』(1995)

1995年10月にリリースされた、ANTHRAX通算7枚目のオリジナルアルバム。3代目シンガーとしてジョン・ブッシュ(当時ex. ARMORED SAINT)が加わった前作『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)は全米7位、50万枚以上を売り上げる好成績を残しました。が、今作の制作に入ったところでダン・スピッツ(G)が脱退(事実上のクビのようです)。残されたジョン・ブッシュ、スコット・イアン(G)、フランク・ベロ(B)、チャーリー・ベナンテ(Dr)の4人を中心にレコーディングされました。

前々作『PERSISTENCE OF TIME』(1990年)で提示した“スピードではなくヘヴィさに特化したスタイル”は、前作『SOUND OF WHITE NOISE』でグランジ以降のモダンヘヴィネス路線を導入することでさらに磨きがかかります。特に、ジョン・ブッシュという個性的なボーカリストを獲得したことで、どんなにポップでキャッチーなメロディの楽曲だろうが、それを彼が歌えばヘヴィになる。この武器を手にしたことは、あの頃のANTHRAXにとってかなり大きかったはずです。

そして、この『STOMP 442』ではモダンヘヴィネス路線にさらに拍車がかかることで、90年代前半に追い求めたスタイルがついに完成の域に達します。ヘヴィさはそのままに、過去2作よりも軽快さが増したことが本作最大の魅力で、オープニングの「Random Acts Of Senseless Violence」から“いい感じ”にアルバムは進行していきます。特に、「Fueled」や「Riding Shotgun」のような楽曲は前作にはなかったタイプで、1995年という時代を振り返ってみてもかなり特徴的な楽曲だったように記憶しています。

ダン・スピッツという個性的なリードギタリストを欠いたものの、本作にはのちにANTHRAXに正式加入するポール・クルック、PANTERAのダイムバッグ・ダレル、スコット・イアンのギターテックだったマイク・テンペスタ(ドラマーのジョン・テンペスタの弟。のちにPOWERMAN 5000に加入)などを迎えることで乗り切ります(「Nothing」や「American Pompeii」「Tester」ではチャーリーもソロを担当)。中でも、やはりダイムバッグ・ダレルが特徴的なギターソロを聴かせる「King Size」と「Riding Shotgun」は必聴モノで、特に後者のオープニングで聴くことのできるスリリングかつメロディアスなソロは“これぞ名演!”と呼べるものではないでしょうか。

正直、このアルバムを最初に聴いたときは「……地味!」と思ったものです。『SOUND OF WHITE NOISE』までのANTHRAXが持っていた派手さが完全に消え失せ、モノトーンで玄人向けなサウンドになってしまった、とガッカリしたのです。ぶっちゃけ、駄作とまでは言わないものの、聴く頻度はかなり低かったと思います。それも、つい最近まで……。

ところが本作、本当に久しぶりに聴き込んだら……めっちゃ良いんですよね。正直、個人的名盤に挙げる『PERSISTENCE OF TIME』や『SOUND OF WHITE NOISE』よりも良いんじゃないか。そんな気すらしてきました。

しかし、本作や『SOUND OF WHITE NOISE』といったElektra Records時代の諸作品を含むジョン・ブッシュ時代のスタジオアルバム全作品を日本ではストリーミングで聴くことができないんです。こんな不幸、あっていいものなんでしょうか……ジョン・ブッシュ再評価および90年代〜ゼロ年代前半のANTHRAX再評価に必要不可欠な要素なのですから、ぜひとも早急に配信を開始してもらいたいものです。



▼ANTHRAX『STOMP 442』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

2018年12月15日 (土)

SLAYER『DIABOLUS IN MUSICA』(1998)

1998年6月にリリースされた、SLAYER通算7枚目のオリジナルアルバム(カバーアルバム『UNDISPUTED ATTITUDE』を含めたら8枚目のスタジオアルバム)。トム・アラヤ(Vo, B)、ケリー・キング(G)、ジェフ・ハンネマン(G)、ポール・ボスタフ(Dr)の布陣では2作目のオリジナル作となり、初の全米TOP10入り(8位)を記録した6thアルバム『DIVINE INTERVENTION』(1994年)と比べると最高31位と近作の中では低調で終わっています。

アルバムタイトル『DIABOLUS IN MUSICA』はラテン語の音楽用語で「音楽の中の悪魔」と呼ばれる不協和音から取られているとのこと(Wikipedia情報)。ジャケットの不安を掻き立てるホラー映画感といい、これまでの直接的な邪悪さとはちょっと異なる恐怖感が演出されているような気がします。

というのも本作、これまでの残虐性の高い無慈悲なスラッシュメタルとは一線を画する、当時流行し始めていたニューメタルやヘヴィロック、ラップメタル的なテイストが導入されているのです。引きずるようなヘヴィさにヒップホップ的な“跳ね感”が加わったことで従来のサウンドよりもモダンさが際立っていますが、そこはSLAYERのこと。要所要所で“らしさ”をしっかり演出しているのでちゃんと「SLAYER」のアルバムとして成立していますのでご安心を。

とはいえ、ここまでのキャリアを総括すると、やっぱり異色の1枚なんですよね。例えば『DIVINE INTERVENTION』がケリー・キングの楽曲中心だったのに対し、今作は全11曲10曲がジェフ・ハンネマンの楽曲(日本盤ボーナストラック除く)。音楽的には上に述べたとおりで、さらに邪悪さをこれまでとは違った形で表現するためにトム・アラヤのボーカルを機械的にエフェクトしたり、SLAYERとしては初めてダウンチューニング(C#)も導入したりしています。そのへんの実験的要素の強さが、従来の正統派スラッシュメタルスタイルを愛するハードコアなリスナーから敬遠される理由なのかもしれません。

今となってはこういうヘヴィさも新鮮ですし、これがあったから続く『GOD HATES US ALL』(2001年)を生み出すことができたと捉えることもできるでしょう。しかし、1998年当時はかなりショッキングな内容に感じたことを、今でも昨日のことのように覚えています。ジャケット同様に、その音からも(別の意味で)不安をかきたてられるとは。

でもね。下手なヘヴィロックバンドやニューメタルバンド以上にヘヴィですし、内容も充実している。オープニングの「Bitter Peace」やエンディングの「Point」の、モダンさとSLAYERらしさを掛け合わせた独自性は、今こそ再評価されるべきではないでしょうか。そこに関しては太鼓判を押しておきます。まあ僕が言うまでもないでしょうけどね。



▼SLAYER『DIABOLUS IN MUSICA』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / SMP3

続きを読む "SLAYER『DIABOLUS IN MUSICA』(1998)" »

2018年12月14日 (金)

METAL CHURCH『DAMNED IF YOU DO』(2018)

METAL CHURCH通算12作目のオリジナルアルバム。前作『XI』(2016年)で2代目シンガーのマイク・ハウが復帰し、多くのファンを喜ばせましたが、日本未発売のライブアルバム『CLASSIC LIVE』(2017年)を挟んで早くも新作が届けられました。

前作は良くも悪くもマイク・ハウ時代=4thアルバム『THE HUMAN FACTOR』(1991年)を軸に、3rdアルバム『BLESSING IN DISCUISE』(1989年)のプログレッシヴテイストを散りばめ、さらに5thアルバム『HANGING IN THE BALANCE』(1993年)の正統派パワーメタルスタイルを随所に導入した、あの路線を再構築したものでした。もちろん、それは良い方向に作用したと思います。しかし、新しさは皆無。若いリスナーよりも1990年前後を知るオールドファンを喜ばせるだけで終わったような気がします。

実際、同作を携えた来日公演も実現しませんでしたし(何度かアナウンスされた『LOUD PARK』もすべてキャンセルしてるし)、挙句『CLASSIC LIVE』も未発売。そりゃ話題になりませんよ。

そんな中登場した今作ですが、前半は基本路線は『XI』と一緒。つまり、上に書いた80〜90年代のマイク・ハウ在籍時のいいとこ取りを、よりブラッシュアップした内容。オープニングの「Damned If You Do」こそパワーメタル路線ですが、以降は“いかにもマイク・ハウ時代のMETAL CHURCH”が並び、「ああ、また『Badlands』の焼き直しか……」と思ったものの(いや、それ自体は悪くないし、実際良い曲が並んでいると思います。しかし、刺激という点においては……)、中盤に入ると「Guillotine」でその印象を一変させられます。

今作からドラマーとしてステット・ホーランド(ex. W.A.S.P.など)が加入したこともあってか、ドラムの派手さが前作よりも増しているような気がします。それによる影響か、「Guillotine」のようなスラッシュテイストの楽曲が含まれていることは、本作における新たな驚きかもしれません。

これを筆頭に、テクニカルなファストチューン「Rot Away」、激しさと重さを兼ね備えた「Into The Fold」、これまたスラッシュメタルと正統派パワーメタルの融合「Out Of Balance」、どことなくMEGADETHを思い出す「The War Electric」と攻撃的な楽曲が並ぶのです。

……あれ、予想と違うじゃん。意外と攻めのヘヴィメタルしてる。叙情的で長尺の楽曲が多かった前作から一転し、本作は全10曲/45分という潔いトータルランニング。そうそう、こういうMETAL CHURCHがまた聴きたかったのよ!と叫びたくなるくらい、いい意味で我々の期待を裏切ってくれる、そんな良作です。

なお、本作の日本盤はCD 1枚ものと、先に触れた『CLASSIC LIVE』にボーナストラックとして2015年に発表した「Badlands」の再録バージョンを追加したボーナスディスク付き2枚組仕様の2形態を用意。『CLASSIC LIVE』は文字どおり、80〜90年代の代表曲をライブレコーディングしたもので、デヴィッド・ウェイン時代の楽曲ももちろん含まれています。さらに、QUEENSRYCHEのトッド・ラ・トゥーレ(Vo)がゲスト参加した「Fake Healer」スタジオ再録バージョンも収録。

2枚のCDを続けて聴くと、『CLASSIC LIVE』があったから今回の『DAMNED IF YOU DO』が生まれた、という解釈もできなくはないのかな。そう考えると、『CLASSIC LIVE』については改めて触れてもいいのかもしれませんね。ということで、また別の機会に……。



▼METAL CHURCH『DAMNED IF YOU DO』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "METAL CHURCH『DAMNED IF YOU DO』(2018)" »

2018年12月13日 (木)

UNEARTH『EXTINCTION(S)』(2018)

MA(=マサチューセッツ)メタルも今は昔。気づけば20年選手になっていたメタルコアバンド、UNEARTHの通算7枚目のオリジナルアルバム。

長年在籍したMetal Blade Recordsを離れ、前作『WATCHERS OF RULE』(2014年)を北米ではeOne Music Recordsから、ヨーロッパではCentury Media Recordsから発表した彼らでしたが、続く本作もCentury Media Recordsからのリリース。プロデューサーには新たにウィル・パットニー(GOJIRAPIG DESTROYERSHADOWS FALLなど)を迎え、レコーディグドラマーとして同じMAメタルの盟友KILLSWITCH ENGAGEからアダム・デュトキエヴィッチ(本来はギタリスト)が参加した意欲作となっています。

4年ぶりの新作となる今作では、“これぞメタルコア!”と膝をパンパン叩きなくなるような、王道サウンドが展開されています。オープニングを飾る「Incinerate」での不穏なギターフレーズと、メロディを無視してひたすらガナり叫びまくるトレヴァー・フィップス(Vo)のボーカル。要所要所に導入されたブレイクダウンとメロウなギターソロ。そうだよね、10数年前はこういうサウンドに夢中になって、フロアを駆け回ってたよね。そんなことを思い出させてくれる、非常に真っ当な1枚です。

なだけに、聴く人が聴いたら「古臭い」と感じるかもしれません。最近のメタルコアにありがちなクリーントーンでの歌唱など“歌う”要素は皆無ですし(セリフのようなパートはありますけどね)、ギターフレーズもごく当たり前のことしか弾いていません。もうやり尽くしたじゃん。そう思われても仕方ないかもしれません。

しかし、一周回って、いや、二周くらい軽く回って本作を聴くと、なぜか新鮮に聴こえてくるのです。もはやこのスタイルすらもオールドスクールと言えるのかどうかわかりませんが、今の耳には間違いなく“新しく”聴こえる。それは、いろいろと過剰なサウンド、過剰な楽曲アレンジを導入するバンドが増えた結果ではないでしょうか。

変わり続けることにアイデンティティを見出すバンドもいれば、変わらないでいることでバンドとしてのアイデンティティを維持するUNEARTHのようなバンドもいる。結成20周年という節目のタイミングにリリースする記念碑的1枚だからこ、あえてこういったスタイルにこだわったのかもしれませんが、そうすることがファンに対しても、そして自分たちに対しても正直であると。そう考えた結果が、このストロングスタイルの力作なんでしょうね。

何も考えずに大音量で聴けば、きっと20年選手の深みや凄みが浮き上がってくるはず。最後まで緊張感が一切途切れることがない、濃厚な37分。いやあ、素直にカッコいいと思える1枚です。



▼UNEARTH『EXTINCTION(S)』
(amazon:海外盤CD / SMP3

続きを読む "UNEARTH『EXTINCTION(S)』(2018)" »

2018年12月12日 (水)

ARCHITECTS『HOLY HELL』(2018)

イギリス・ブライトン出身のメタルコアバンド、ARCHITECTSが2018年11月にリリースした通算8枚目のスタジオアルバム。現在も在籍するEpitaph Recordsに移籍後発表した6thアルバム『LOST FOREVER // LOST TOGETHER』(2014年)で初めて接したバンドでしたが、フレドリック・ノルドストロームをアディショナルプロデューサーに迎えたこともあってか、同作は初の全英トップ20(16位)入りを果たしています。

しかし、前作『ALL OUR GODS HAVE ABANDONED US』(2016年)発表直後にトム・サール(G)が皮膚癌のため死去(享年28歳)。その後サ、ポートメンバーとしてツアーに参加していたSYLOSISのジョシュ・ミルドンが正式加入し、今作の制作に臨みました。

プロデューサーはメンバーのダン・サール(Dr/トムと双子の兄弟)とジョシュが担当。Facebookのコメントなどでダンが語るように、本作はトムに向けて書かれた楽曲が大半を占めるとのこと。亡くなるまでの3年間を癌で苦しみぬいた彼の悲痛な叫びを激しいサウンドで表現し、病と戦った日々を刻むかのようにヘヴィなビートと鋭角的なギターリフが叩きつけられる。そんなズッシリと心に響く1枚となっています。

ストリングスを効果的に用いたアレンジと、要所要所に打ち込みやエレクトロの要素を挿入し、適度なブレイクを導入することで緩急を自在に操り、ドラマチックさを演出するバンドアンサンブルはひたすら気持ちよく聴けるものばかり。スクリームもクリーンパート同様のメロディアスさが感じられ、とにかく親しみやすい内容となっています。

鼓動を打つようなビートと「死は敗北ではない」というタイトルを持つオープニングトラック「Death Is Not Defeat」から始まり、曲を重ねるごとに感情を叩き続ける本作は、後半に進むに連れ全体を覆うヘヴィさが増していき、「Modern Misery」あたりではそのヘヴィさが悲痛さへと変わっていく。「The Seventh Circle」のバスドラ連打からは怒りすら感じられ、その悲哀に満ちた感情は「Doomsday」で一気に爆発し、ラストの「A Wasted Hymn」はどこか鎮魂歌のようにも聞こえる。

……なんてことを書くと、完全に偏見に満ちていると受け取られてしまうかもしれませんが、それくらいこのアルバムからはトムを失ったダンの悲しみ、バンドのやるせなさがヘヴィでエモーショナルなサウンドの塊となって押し寄せてくるのです。まるで音の壁で密閉され、呼吸できなくなるような……といったら大袈裟でしょうか。

外部プロデューサーの力を借りず、メンバーだけで作り上げたこのアルバム。それだけ深い意味が込められた、今後のARCHITECTSにとって大きなターニングポイントになるのではないでしょうか。気楽に聴けるアルバムではありませんが、気がつくと手を伸ばしている、そんな中毒性のある1枚です。



▼ARCHITECTS『HOLY HELL』
(amazon:海外盤CD / SMP3

続きを読む "ARCHITECTS『HOLY HELL』(2018)" »

2018年12月11日 (火)

PAUL STANLEY『LIVE TO WIN』(2006)

2006年10月(日本では11月)リリースの、KISSのフロントマンであるポール・スタンレー(Vo, G)通算2作目のソロアルバム。『PAUL STANLEY』(1978年)から28年ぶりのソロ作となりますが、前作は当時のKISSメンバー4人同時ソロアルバムリリースという企画の一環だったので、純粋なソロアルバムという意味ではこの『LIVE TO WIN』が今のところ唯一の作品と言えるかもしれません。

2000年代半ばはKISSとしての新作が途絶えていた時期で、その2年前にはジーン・シモンズ(Vo, B)も2ndソロアルバム『ASSHOLE』(2004年)をリリースしています。そちらに対するフラストレーションも多少なりともあったと思うのです(事実、本作リリース後にはソロでショートクラブツアーも行っていましたし)。

さて、内容ですが、我々がイメージするポール・スタンレーそのままの、メロディアスなハードロックアルバムに仕上がっています。80年代のHR/HMテイストのKISSをよりモダンな質感にして、ゼロ年代のアレンジでアップデートした、と書けばよりイメージしやすいかもしれません。

そういった楽曲を手がけるのは、ポールのほかにデズモンド・チャイルド、アンドレアス・カールソン、マーティ・フレデリクセン、ホーリー・ナイトなどといった80年代〜ゼロ年代を代表する職業作家たち。さらにジョン・5(ROB ZOMBIE、ex. MARILYN MANSON)もソングライターとしてだけでなく、ギタリストとしてレコーディングにも参加。かつてのKISSメンバーでもあるブルース・キューリックはベーシストとして3曲でプレイしており、そういった意味ではこれまでの絆と新たな血を交えた実験的な1枚と言えるでしょう。

オープニングを飾る「Live To Win」は“いかにも”なメロディアスハードロックだし、「Everytime I Se You Around」は「Forever」を彷彿とさせるパワーバラード。「Lift」からはモダンなヘヴィロックからの影響が感じられるし、「It’s Not Me」はオールディーズ風のメロディを持ちながらもアレンジは現代的。「Where Angels Dare」あたりはKISSでそのまま演奏すれば間違いなく“KISSの楽曲”になるはずなのに、ここでは“ポールが歌ってるけど、KISSとはまた違ったテイスト”が感じられる。

そう、本作はポール・スタンレーのパブリックイメージそのままの内容なのに、完全にはKISSっぽくなっていない。そのさじ加減がミソなのかなと思うのです。そりゃあソロアルバムを作るんだからKISSとの差別化は考えるでしょう。それがアンドレアス・カールソンやマーティ・フレデリクセンといったモダンなソングライターと、ジョン・5など若手プレイヤーの導入に端的に表れていると。頭ではわかっていても、実はそのへんを理解するのが濃いKISSファンになればなるほど難しさを伴う1枚かもしれません。

ハードロックアルバムとして考えれば、本作は非常によく作り込まれた1枚です。が、KISSファンとして接しようとすると肩透かしを食らう。リスナーのポジションによって若干の評価の違いが生じてしまう、悲しい1枚と言えるでしょう。少なくとも、KISSの新譜に植えていた2006年という時代においては。

けど、リリースから12年経った今聴くとすんなり楽しめる。時代が一周したのもあるし、KISSがその後2枚のオリジナルバムを発表しているのも大きいでしょう。とにかく、KISSのイメージを持ちつつも、ポールひとりでやりたいことをやったらこんなアルバムができるよと。そういう接し方が一番素直に楽しめるのではないでしょうか。



▼PAUL STANLEY『LIVE TO WIN』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / SMP3

続きを読む "PAUL STANLEY『LIVE TO WIN』(2006)" »

2018年12月10日 (月)

MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS: 20 YEAR COLLECTIORS' EDITION』(2018)

MANIC STREET PREACHERSが1998年9月にリリースした、通算5作目のスタジオアルバム『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』。同作のリリース20周年を記念して、2018年12月にCD 3枚組ボックスエディションとアナログ2枚組エディションが発売されました。どちらも新たにリマスタリングが施されておりますが、もともとダイナミックなバンドサウンドを堪能できる良作だったので、音質的にはそこまで大きく変化していないような気がします。

さて、このアルバムに関しては非常に個人的思い入れが強く、当ブログの前身サイトが20年前にスタートしたとき、最初に書いたディスクレビューが本作に関してでした。あそこには書いていませんが……要は、長年付き合った彼女と別れ話をしてる間、ずっと車の中で流れていたのがこのアルバムなんですよ(苦笑)。

……重い。重いでしょ?(笑)

そんなわけで、好きなアルバムではあるものの、聴いていると必要以上に感傷的な気持ちになってしまう。なので、一時期まったく手をつけられない時期もありました。作品の良し悪しとは全然関係ない理由なんですけどね。

あれから20年。それ以上にいろんなヘヴィな出来事があったり、こうやって音楽について趣味で書き連ねていたことが、いつの間にか仕事になっていたり。本当にいろんなことがありました。そう思うと、このアルバムの背景にある個人的な出来事がいかにちっぽけなことか。おちこんだりもしたけれど、私はげんきです(笑)。

さてさて。このリマスター盤について書いていきましょうか。

前作『EVERYTHING MUST GO』(1996年)での成功を踏まえた上で制作された本作は、ミディアム〜スロウナンバーを軸とした極上のメロディックロックアルバムです。『EVERYTHING MUST GO』には若干の歪さが残っており、そこがまたマニックスらしくて良かったのですが、本作ではそういった要素が完全に払拭され、非常に完成度の高い内容に仕上げられています。スロウナンバーが多いせいか、全13曲で63分というトータルランニングには多少過剰さを感じたものの、ぶっちゃけ捨て曲がないので有無を言わせぬまま最後まで聴かされてしまう。そんな“静なる暴力性”すら感じさせる傑作だと、今でも信じています。

が……。

このリマスター盤、昨年発売された『SEND AWAY THE TIGERS』(2007年)の10周年盤同様に、収録曲が一部差し替えられるという改悪が加えられています。日本のファンにとっては思い入れの強いであろう12曲目「Nobody Loved You」が、シングル「If You Tolerate This Your Children Will Be Next」のカップリング曲およびカップリング曲集『LIPSTICK TRACES』(2003年)収録曲「Prologue To History」に変更されているのですよ! この曲自体は特に嫌いではないし、むしろ好きな部類に入る1曲ですが、どうしても「Nobody Loved You」のインパクトが強かっただけに、また終盤をドラマチックに盛り立てる上で重要な役割を果たすだけに、「Prologue To History」がラス前に置かれてそこから「S.Y.M.M.」へと続く構成がどうにも馴染めないのです。

何度か聴き返しました。なんなら、M11「Black Dog On My Shoulder」からM13「S.Y.M.M.」の3曲だけを何度か続けて聴き返したりもしました。が、どうしても「Prologue To History」だけ軽く聴こえてしまう。ミディアム〜スロウのメロウな楽曲中心とはいえ重厚さが全体を支配する構成だけに、やっぱり「Prologue To History」は浮くんですよ。だからこの曲をカップリングに回したんじゃなかったの? そうしてそんな気の迷いを見せる? 本当にこの改悪、理解に苦しみます(しかも、ストリーミングバージョンだと「S.Y.M.M.」のあとに「Nobody Loved You」が置かれているという。なんなのまったく!)。

ジャケットのアートワーク変更は全然いいんですよ。同じフォトセッションの中から、別テイクを選んでいるわけですから。新しいアートワークも嫌いじゃありません。ただ、安っぽくなってしまったのも事実。ああ、勿体ない。こんな傑作が……。

せっかくなのでCDのディスク2、ディスク3にも触れておきましょう。ディスク2は改変されたディスク1『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』の収録曲のホームデモ音源/スタジオデモ音源/ライブリハーサルデモ音源/テイク違いが、本編と同じ曲順で並べられています。完成バージョンとは異なるアレンジやテンポ感、特に「The Everlasting」のライブリハデモは嫌いじゃないなあ。「Nobody Loved You」が原曲よりもテンポが遅く、ヘヴィさが際立っている印象なのも良いなあ。まあ、こちらは完全にマニア向けですね。

ディスク3は1998〜99年にリリースされた本作からのシングルに収められたカップリング曲を1枚にまとめたもの。MASSIVE ATTACKやデヴィッド・ホルムス、デーモン・バクスター、STEALTH SONIC ORCHESTRA(APOLLO 440)、MOGWAICornelius、STEREOLABによるシングル表題曲のリミックス、アルバム未収録の「Montana/Autumn/78」「Black Holes For The Young」「Valley Boy」「Socialist Serenade」「Buildings For Dead People」といったオリジナル曲が楽しめます。THE CLASHのカバー「Train In Vain」などライブテイク以外のオリジナル曲とリミックスは網羅されているはずなので、当時シングルやカセットを集めるのに苦労した人にはありがたい1枚じゃないでしょうか。

僕にとっても、そして本サイトにとっても思い出の1枚なだけに、いろいろ厳しいことを連ねましたが、それでも本作の魅力は変わらない(と思いたい)。この20周年盤を聴いて興味を持った人は、ぜひオリジナルバージョンも聴いてみてください。もしかしたら、僕とまったく逆のリアクション(逆に「Nobody Loved You」が入っているほうを受け付けない)をするかもしれませんしね。



▼MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS: 20 YEAR COLLECTIORS' EDITION』
(amazon:国内盤3CD / 海外盤3CD / 海外盤アナログ / MP3

続きを読む "MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS: 20 YEAR COLLECTIORS' EDITION』(2018)" »

2018年12月 9日 (日)

VOIVOD『THE WAKE』(2018)

カナダ出身のテクニカルスラッシュメタル/プログレッシヴメタルバンド、VOIVODによる通算14枚目のスタジオアルバム。前作『TARGET EARTH』(2013年)から5年半ぶりのフルアルバムにあたり、スネイク(Vo)、アウェイ(Dr)のオリジナルメンバーにチューウィー(G/2008年加入)、ロッキー(B/2004年加入)という新メンバーが加わった編成で初のアルバムになります(同編成では2016年にプレEP『POST SOCIETY』を発表済み)。

正直、VOIVODは80年代から90年代前半の『THE OUTER LIMITS』(1993年)くらいまでは聴いていたものの、それ以降はジェイソン・ニューステッド(ex. METALLICA)が加入した当時の『VOIVOD』(2003年)や『KATORZ』(2006年)くらいしか知りません。その程度の知識で、あえて前作など聴かずにいきなり新作に触れてみました。

……なんですか、これ。めちゃくちゃすごい内情じゃないですか。怪しい雰囲気を醸し出すコード進行に、聴いているとどこか不安を覚えるメロディ。オープニングの「Obsolete Beings」からして、今まで聴いたことがない、だけどVOIVODのそれだとわかる世界観が展開されています。ヘヴィメタル的な重厚さがすべてを占めるのではなく、KING CRIMSONあたりに通ずる不思議な雰囲気や、プログレッシヴロックが持っていた聴き手をまだ見ぬ世界へと誘うあの空気感が混在するのです。

全8曲で56分というボリューム。うち5曲が6分以上もあり、ラストナンバー「Sonic Mycelium」は12分半という超大作。この曲がまた……ものすごいことになっています。語彙なさすぎだろ?と思われてしまっても仕方ありませんが、聴き終えたときの正直な感想が本当にこんな感じなのですから、仕方ないのです。この終盤にかけてのドラマチックかつ不穏な展開ときたら……ぶっちゃけ、この1曲のためだけにこのアルバムを購入しても、損はありません。そう断言させたくなるだけの、凄みと緊張感、今までに聴いたことのなかった空間が構築されているのですから。

VOIVODは今年結成35周年を迎えたとのこと。本作はその集大成的な1枚であると同時に、まだまだやれるという気概が至るところに込められている。そんな強気な内容なんですよ。いや、ちょっとこれは驚いた。軽い気持ちで手にとってみたら、想像をはるかに超える内容だったので。確実に年間ベストに入る、2018年のHR/HMシーン、エクストリームミュージックシーンを代表する1枚だと思います。

なお、本レビューではアルバム本編にのみ触れましたが、海外盤の限定仕様と日本盤は先に触れたEP『POST SOCIETY』とライブテイク6曲を追加したボーナスディスク付きの2枚組仕様。日本盤は2枚組永久仕様なので、ぜひこちらを購入することをオススメします(『POST SOCIETY』については、また改めて紹介したいと思います)。



▼VOIVOD『THE WAKE』
(amazon:国内盤2CD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3

続きを読む "VOIVOD『THE WAKE』(2018)" »

2018年12月 8日 (土)

SLIPKNOT『.5: THE GRAY CHAPTER』(2014)

2014年10月にリリースされた、SLIPKNOTの5thアルバム。前作『ALL HOPE IS GONE』(2008年)から実に6年ぶりの新作にあたりますが、その間にベストアルバム『ANTENNAS TO HELL』(2012年)を挟んでいたとはいえ本当に「長く待たされた!」と強く感じさせられた1枚でした。

その6年間というのはバンドにとって非常に大きな変化を及ぼした期間でした。まず、2010年にベーシストのポール・グレイ突然の逝去。その後、2011年からはサポートベーシストを迎えてツアーを行うのですが、今度は本作制作直前にドラマーのジョーイ・ジョーディソンが脱退。9人いたメンバーが7人に減るものの、それでもSLIPKNOTは歩みを止めずレコーディングに突入します。

プロデューサーとしてグレッグ・フィデルマン(METALLICABLACK SABBATHSLAYERなど)を迎えた本作では、前作にあった“ブルータルさ”、“耽美さ”、“ポップさ”の3要素のうち、若干“ポップさ”が減退。そのぶん“耽美さ”が上回り、ポップとは別のベクトルにある「激しくも聴きやすい」内容に仕上がっています。

メロウかつゆったりと始まるオープニングの「XIX」はインストかと思いきや歌モノである事実に驚かされたり、「Killpop」はメロはポップなのにこれまでとはちょっと違うゴシック感が漂っていたりと、なかなか侮れない楽曲が多数含まれています。

もちろん、序盤の「Sarcastrophe」「AOV」や先行トラック「The Negative One」みたいなブルータルナンバーも含まれていますし、「Skeptic」や「Nomadic」からはインダストリアルの香りも感じられ、ヘヴィなバラード「Goodbye」や「The One That Kills The Least」には泣きメロも備わっている。なかなか侮れない内容なんですよ、これが。

アルバムも5枚目となると1stアルバム『SLIPKNOT』(1999年)とは同じことを繰り返すことはできないし、ミュージシャンを20年近くもやっていれば成長も求められる。だけど、ファンは初期のイメージを求め続け、大胆な変化を拒む。特にこの手のエクストリームミュージック界では、ちょっとした変化が人気の命取りになるから、そのバランス取りが非常に難しくなります。そんな中でSLIPKNOTはデビュー時からのメンバー2人を欠くという変化のタイミングを迎えた。つまり、ここで新しいことにチャレンジしなかったらあとがないんじゃないかと思うんです。

40代になったメンバーが、初期の頃と同じように怒りを維持しつつ、ミュージシャンとしては新しいことにトライする。それがこのアルバムで完全にできているとは言い難いですが、その片鱗はいろんなところから感じられるはずです。確かに初期の無軌道さはここにはないし、良い意味ですべてが整理され、コントロールされている。そこを物足りないとも正直思うけど、だけど大音量で聴けば素直に楽しいと思える自分もいる。複雑な感情になるものの、そこまで悪い内情じゃないから余計に評価に困る。自分にとってこのアルバムはそんな1枚なんです。

もしかしたら、2019年初夏にリリース予定の6thアルバムを聴いたら、この5thアルバムに対する正当な評価が下せるかもしれない。発売から4年以上経ったけど、自分にとってはそういう中途半端なポジションの1枚です。

あ、そのどっちつかずな評価は曲集の多さにも多少影響されているかもしれません。本編は14曲で64分とかなり長尺なのに、デラックス盤はさらに2曲追加で70分超えですから。全曲自分の中に完璧に取り込むのに相当時間がかかったのは言うまでもありません。だって、どれもが最高!とは言い難いですし、かといってそこまで劣るってわけでもないし。せめて12曲で60分以内に収めてくれたら、もうちょっとスッと入っていけて、きっぱり評価できたのかもしれませんね。



▼SLIPKNOT『.5: THE GRAY CHAPTER』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3

続きを読む "SLIPKNOT『.5: THE GRAY CHAPTER』(2014)" »

2018年12月 7日 (金)

THE ROLLING STONES『VOODOO LOUNGE』(1994)

1994年7月にリリースされた、THE ROLLING STONES通算20作目のオリジナルアルバム(イギリスにて。アメリカでは22枚目)。ビル・ワイマン(B)脱退後初のオリジナルアルバムで、レコーディングにはマイルス・デイヴィスやスティングのサポートで知られるダリル・ジョーンズが参加。以後、彼は現在に到るまでツアーやレコーディングに参加する準メンバーとしてバンドに関わっています。

前作『STEEL WHEELS』(1989年)のセールス的成功および大々的なワールドツアーが好評を得たこともあり、本作は全英1位/全米2位という高記録を残していますが、シングルに関しては「Love Is Strong」(全英14位/全米91位)、「You Got Me Rocking」(全英23位/全米113位)、「Out Of Tears」(全英36位/全米60位)、「I Go Wild」(全英29位)と大きなヒットにはつながりませんでした(なんでも、ストーンズとしてヒットシングルが生まれなかったは初めてのアルバムなんだとか)。

プロデュースを手がけたのはドン・ウォズとTHE GLIMMER TWINS(ミック・ジャガーキース・リチャーズ)。本作の前に、キースは『MAIN OFFENDER』(1992年)、ミックは『WANDERING SPIRT』(1993年)とソロアルバムを制作しており、それぞれストーンズとして久々の長期ツアーから解放されたためか、非常にストレートなロックを聴かせてくれました。そういうモードも影響してなのか、ストーンズとして5年ぶりの新作となったこの『VOODOO LOUNGE』は非常に“Back to basic”的な作風となっています。

確かに、産業ロック的でとても“Well-made”だった前作と比べると、本作のスカスカ感と肩の力の抜けた演奏は古くからのストーンズファンが知る“らしさ”に満ちあふれています。60年代のポップサイドにも通ずる「New Faces」や「Moon Is Up」あたりは、その肩の力の抜け具合が良い方向に作用した好例だと思います。特に「Moon Is Up」は、単なる焼き直しで終わらないモダンさがあり、常にアップデートを繰り返していることを感じさせます。

かと思えば、60年代末のオカルトチックな雰囲気を漂わせる「Love Is Strong」がアルバムのオープニングを飾ったり、70年代前半のワイルドサイドをイメージさせる「You Got Me Rocking」や「I Go Wild」もある。「Suck On The Jugular」は80年代以降のダンス/ディスコ路線をモダン化させたものだし、キースVo曲のプログレッシヴなブルース「Thru And Thru」もある。原点回帰すると同時に、これまでのストーンズをごった煮しつつ新たなテイストも包括する。歴史の長いバンドが今もなお、成長過程にあることを伺わせるのがこの『VOODOO LOUNGE』の魅力だと思います。

確かに変態的なベースラインがなくて物足りないって声もわかりますが、オープニングが「Love Is Strong」でラストが「Mean Disposition」という時点でこのアルバムは最高なんですよ。僕はこのユルさがたまらないんです。



▼THE ROLLING STONES『VOODOO LOUNGE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "THE ROLLING STONES『VOODOO LOUNGE』(1994)" »

2018年12月 6日 (木)

KISS『ALIVE III』(1993)

1993年5月発売の、KISS通算3作目のライブアルバム。当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、ブルース・キューリック(G)、エリック・シンガー(Dr)の4人。前年1992年に発表したスタジオアルバム『REVENGE』を提げたUS公演から厳選された16曲(日本盤およびデジタル盤は1曲追加の全17曲)で構成されています。

ライブ盤としての前作『ALIVE II』(1977年)から16年ぶりのライブ作品ということで、実は80年代のKISSって1枚もライブ作品を残していないんですよね。だから、ノーメイク時代の正式なライブアルバムは本作のみという(1996年に『KISS UNPLUGGED』も発売されていますが、あれはアンプラグドライブなので割愛します)。

というのも、80年代、特にKISSがメイクを落とし活動していた80年代半ばはMTVの時代。音のみから映像ありきの時代へと移行していったこともあり、KISSもあの時代にしてはいち早くライブビデオ『ANIMALIZE LIVE UNCENSORED』を1985年に発売しているのです。また、1987年にはMVと70年代〜80年代のライブ映像をミックスした『EXPOSED』も発表していますし、そういう意味ではこの2作品を“80年代流の『ALIVE』シリーズ”と捉えることができるかもしれません。

そうやって時代に敏感なKISSが、90年代に入り再びライブアルバムをリリースしたというのが興味深いところなのですが、派手なヴィジュアルを推した80年代からそういったヴィジュアルありきの時代が終わりを告げ、再び音で勝負みたいな世界に戻っていった。特に1993年なんて時代はNIRVANAPEARL JAMがバカ売れしていた時代です。KISS自身も『REVENGE』でヘヴィかつ生々しいサウンドへとシフトチェンジしましたし、ビデオ作品からこうやって再びライブアルバムという手法に変えたのは、ある意味正解だったのかなと。そういう嗅覚だけは異常に冴えてますからね、この人たち(とはいえ、同時期には『ALIVE III』のライブ映像に70年代の秘蔵映像を追加したビデオ作品『KISS DONFIDENTIAL』も発売されているのですが、それはそれということで)。

さて、その本作ですが内容的には『REVENGE』の楽曲を軸にしつつ、70〜80年代のKISSの名曲を織り交ぜた、実にグレイテスト・ヒッツ的な選曲となっています。「Deuce」や「Rock And Roll All Nite」「Detroit Rock City」といった過去の『ALIVE』シリーズにも収録されていたヒット曲はもちろんですが、『ALIVE II』以降に発表された「I Was Made For Lovin' You」や「I Love It Loud」「Heaven's On Fire」「Lick It Up」「Forever」といったヒット曲/代表曲に加え、「I Still Love You」や「Watchin' You」といったレア曲もあったりと、なかなかこの時代らしいセレクト。KISSがヘヴィメタル化した『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)から3曲も選ばれているのも、90年代前半のKISSのモードを物語っているのではないでしょうか。

あと、ご存知のとおりKISSはライブ作品のオーバーダブをしたりボーカルやギターを差し替えたりすることで知られていますが(そんなのファンしかしらないって。笑)、本作のサウンドの質感がまさに「スタジオライブ音源にスタジアムでの完成を被せた」ような仕上がりでして。本当に純粋なライブアルバムとは言い難い、非常に“整理された”サウンドなのです。そこを良しとするか否かで、本作に対する評価もまた変わってくるのかなと。ただ、このアルバムが発売された当時、KISSは1988年以来の来日公演がまったく実現していなかったため、日本のファンにとってはあの頃のライブの雰囲気に触れるという意味で非常に重要な役割を果たした1枚だったのではないかと思います(あの頃、誰もが海賊盤に手を出せたわけではないしね)。

僕ですか? そんな小難しいこと考えず、夢中になって聴きまくってましたが(笑)。KISSに関しては、そういう楽しみ方が正しいのではないかと思うのです。踊らされてナンボでしょ?



▼KISS『ALIVE III』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "KISS『ALIVE III』(1993)" »

2018年12月 5日 (水)

JUDAS PRIEST『UNLEASHED IN THE EAST』(1979)

1979年秋にリリースされたJUDAS PRIEST初のライブアルバム。同年2月に行われた2度目の日本公演から、今は亡き東京厚生年金会館と中野サンプラザの公演から抜粋された9曲が収録されています。

日本盤は当初、9曲入りLPに4曲入りEPを付けた2枚組仕様で発表されましたが、2001年の世界共通リマスター盤リリース時からEP収録の4曲がボーナストラックとして追加され、現在は13曲入り/60分強のライブ作品として流通しています。また、日本盤のみ『PRIEST IN THE EAST』というタイトルでしたが、この2001年の共通りマスター盤から海外盤と同じ『UNLEASHED IN THE EAST』に変更されています。

ファンならご存知のとおり、この2度目の来日時はロブ・ハルフォードが滞在していたホテルの空調で喉をやられ、決してベストとは言い難いボーカルパフォーマンスだったそうです。それもあり、後日スタジオにて一部のボーカルパートのみ再録音されています。なので、純粋なライブ作品とは言い難いですが、KISSしかり今となってはライブアルバムにもあとから手を加えることは日常茶飯事となりつつあるので、“作品として”楽しむぶんには全然問題ないのではないかと思います(さすがにライブ中に事前録音したボーカルパートを流すのはご法度ですが)。

選曲的には5thアルバム『KILLING MACHINE』(1978年)リリース直後とあって、それまでのアルバム(1974年の1stアルバム『ROCKA ROLLA』は除く)からのベスト選曲となっています。オープニングは4thアルバム『STAINED CLASS』のトップナンバー「Exciter」。ライブならではの生々しい演奏と、変なエフェクトが加わった観客の声(?)との対比が微妙ではありますが、スタジオテイクよりもカッコいいと思うのは僕だけでしょうか。

圧巻はアナログB面(M-6〜9の4曲)のうち、2ndアルバム『SAD WINGS OF DESTINY』(1976年)からの3曲、「Victims Of Changes」「Genocide」「Tyrant」でしょうか。特に「Victims Of Changes」の緊張感あるテイクはのちのベストアルバムにも流用されるほどで、この曲が初期の代表曲のひとつとして数えられる理由がここで理解できるはずです。

80年代以降のヴィメタル化した『SCREAMING FOR VENGEANCE』(1982年)以降のライブと、比較すると旧時代然とした楽曲スタイルやサウンドに面を食うかもしれません。特に先日の来日公演を体験した若いリスナーには、このアルバムで展開されている世界観は古臭く感じることは間違いないと思います。が、あの日のライブでも演奏されていた「Running Wild」や「Sinner」「The Ripper」「The Green Manalishi (With The Two Prong Crown)」「Hell Bent For Leather」というキラーチューンが、初期の若々しいプレイと歌声で収められているので、今とはまた違った若き日のプリーストの姿を追体験できるのではないかと。70年代のスタジオ作品に手を出す前に、軽い予習として本作から入っているのは全然アリだと思います。



▼JUDAS PRIEST『UNLEASHED IN THE EAST』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

続きを読む "JUDAS PRIEST『UNLEASHED IN THE EAST』(1979)" »

2018年12月 4日 (火)

ACCEPT『SYMPHONIC TERROR - LIVE AT WACKEN 2017』(2018)

ACCEPTからピーター・バルデス(B)脱退、という衝撃的なニュースが届いたのが数日前。正直、ウルフ・ホフマン(G)とピーターはバンド創世記からACCEPTに関わってきたメンバーだけに、この2人さえいればACCEPTは安泰……そう信じてきただけに、本当に驚きました。

今回紹介するライブ作品は、そのピーター在籍時最後のアイテムとなります。2017年8月3日、ドイツ最大級のメタルフェス『WACKEN OPEN AIR』の初日公演でACCEPTが披露した、オーケストラとの共演ステージが2時間まるまる収められた2枚組CDと、同CDに映像版のBlu-ray or DVDを同梱したパッケージ作品です。

当日は3部構成のライブとなっており、第1部の5曲がACCEPTのみでのライブパフォーマンス。当日はまだリリース前だったニューアルバム『THE RISE OF CHAOS』(2017年)からの楽曲がいち早く披露されており、セットリスト的にも「Restless And Wild」以外はマーク・トニーロ(Vo)加入後の楽曲のみという、現地での人気ぶりを示す内容です。正直、「Restless And Wild」よりもカッコいいと思える楽曲ばかりが並ぶし、前任のウド・ダークシュナイダーそっくりと言われてきたマークのボーカルも、もはや比較云々が気にならないくらい“そこにあるのが当たり前”になっているし。うん、すごく良いと思います。

第2部はウルフが2016年にリリースしたソロアルバム『HEADBANGERS SYMPHONY』からの楽曲を中心とした、全6曲のクラシックカバー。ここからオーケストラが加わり、ムソルグスキー「禿山の一夜」、ベートーヴェン「スケルツォ」「悲愴」、モーツァルト「交響曲第40番」などといった誰もが一度は耳にしたことのあるクラシックの名曲が、ACCEPTの演奏+オーケストラという極上の編成でメタリックに演奏されていきます。正直、この手のインストって個人的には退屈に感じることが多いのですが、これは素直に楽しめました。それもこれも、ACCEPTというバンド自体が80年代からクラシックの名フレーズを自身の楽曲に取り込んできたことも大きいのでしょう。

そして、第3部がACCEPT with Orchestraということで、ACCEPT新旧の名曲群がオーケストラを加えたダイナミックなアレンジで披露されていきます。ここでも「Princess Of The Dawn」「Breaker」「Fast As A Shark」などといった80年代の代表曲に加え、「Stalingrad」「Dying Breed」などマーク加入後の楽曲も織り交ぜられたオールタイムベスト選曲で、再々始動後のACCEPTの楽曲がドイツのメタルファンの間にしっかり根付いていることを実感させられました。

やはり圧巻なのは、クライマックスの「Fast As A Shark」から「Metal Heart」へと続く流れと大ラスの「Balls To The Wall」、そしてその間に挟まれたマーク加入後の「Teutonic Terror」という4曲でしょう。正直、トラックリストを見たときは「Teutonic Terror」だけ浮いてる?と思ったけど、通して聴いたらそんな違和感なんて皆無。観客の盛り上がりもそのほかの楽曲と変わらないし、偏見を持ってるのって実は日本人くらいなんじゃないか……そんな気すらしてきました。

本当は映像とともに大音量で楽しみたい作品ですが、ライブアルバムとしてもメタル史に残したい名演集だと思うので、こういう形で取り上げることにしました。いや、まずはストリーミングで音源を堪能して、そこから映像に手を出してみてはどうでしょう。必然的にCDも付いてきますし、メタルファン一家に1セットあっても不思議じゃない力作です。



▼ACCEPT『SYMPHONIC TERROR - LIVE AT WACKEN 2017』
(amazon:国内盤2CD / 国内盤Blu-ray+2CD / 国内盤DVD+2CD / 海外盤2CD / 海外盤Blu-ray+2CD / 海外盤DVD+2CD / MP3

続きを読む "ACCEPT『SYMPHONIC TERROR - LIVE AT WACKEN 2017』(2018)" »

2018年12月 3日 (月)

POISON『SWALLOW THIS LIVE』(1991)

1991年11月にリリースされた、POISON初のライブアルバム。3rdアルバム『FLESH & BLOOD』(1990年)を携えて行われた1991年のUSツアーの中からマイアミ公演とタンパ公演のベストテイク(笑)を厳選し、フルライブが丸々再現された形で構成されています。さらに、本作のために制作された新曲4曲も追加されており、KISSにおける『ALIVE II』(1977年)を模した2枚組作品と言えるでしょう。実際、スタジオアルバム3枚の区切りで作ったベスト盤的ライブ作品集ですしね。

POISONのライブを観たことがある人がどれだけいるかわかりませんが、ベストアルバム『POISON'S GREATEST HITS 1986-1996』(1996年)のレビューで書いたように、本当に80年代の彼らの演奏力は酷いものでした(少なくとも、自分が観たライブの印象ですが)。そこまでうまいわけじゃないのに、妙にテクニック志向に走ったり、そこからさらに表現力を必要とするブルースやソウルのテイストを取り入れたりと、まあその勘違いっぷりといったら笑いすら込み上げてきます。

しかし、このバンドの場合はその“勘違いっぷり”に加えて、ポップでキャッチーな楽曲を書く才能に恵まれていたこと、その2つがうまいこと噛み合ったおかげで爆発的大ヒットを手にすることができたわけです。プラスして、時代も追い風になったのも大きかったですけどね。

だけど、演奏力だけは本当にどうにもならない。練習しても、その人の潜在能力を超えるものは出てこないわけですから。結局、ポップセンスに優れた4人は演者(演奏力ではなく、ステージで魅せる者としての技術)としての才能は優れていたものの、プレイヤーとしての技量はある一定値以上伸びなかったわけです。

その現実が、この2枚組アルバムには余すところなく収録されています(笑)。いや、冗談抜きで。もちろん、アリーナクラスをバンバン埋めていたバンドです。バンドとしてはある程度聴ける演奏や歌を披露していますが、これがソロプレイ……ライブでのお約束的なギターソロコーナーやドラムソロコーナーになると……あとは言わなくてもわかるよね?(苦笑) ホント、なんで10分前後もあるギターソロやドラムソロまでそのまま入れちゃったんでしょうね……と言われたら、エゴ以外の何者でもないわけですが。

幸いにも、2000年代に入ってからCD1枚モノで再発された本作からは、このソロコーナーはカットされています。安心してください、ヒット曲のオンパレードを楽しめます(笑)。けど、ここはあえてソロコーナーを完全収録した2枚組バージョンをオススメしておきたい! この気持ち、共有しましょうよ!

あ、新曲についても触れておきますか。当時シングルカットされた「So Tell Me Why」は非常にポップで、サビもキャッチーで親しみやすい1曲。そのわりにヒットしませんでしたけど(アメリカではランクインせず、イギリスでは最高25位)。「Souls On Fire」は『FLESH & BLOOD』に入っていそうな、ブルースハープをフィーチャーした黒っぽいロックで、「Only Time Will Tell」はデビューアルバム『LOOK WHAT THE CAT DRAGGED IN』(1986年)に入っていそうなバラードで、「No More Lookin' Back (Poison Jazz)」はタイトルどおりPOISON流のジャズ……ではなく、ギター弾き倒しのアップチューンでこれも1stアルバムに入ってそうなテイスト。まあ、どれも本気で書いたというよりはアルバムのアウトテイクっぽいような気が。熱心なマニアに向けた、ボーナス的な4曲なのかな。

本作は全米51位と、過去3作のスタジオアルバムと比べたら失敗に近い数字しか残せませんでしたが、1991年という時代性を考えるとそれも納得かなと。なお、本作リリース後にC.C.デヴィル(G)がバンドを脱退し、代わりにリッチー・コッツェンが加入。バンドはより本格志向の4thアルバム『NATIVE TONGUE』(1993年)で再起を図ることになりますが、そのへんは同作のレビューをご覧ください。



▼POISON『SWALLOW THIS LIVE』
(amazon:国内盤2CD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3

続きを読む "POISON『SWALLOW THIS LIVE』(1991)" »

2018年12月 2日 (日)

DOKKEN『BEAST FROM THE EAST』(1988)

DOKKENが1988年11月(日本では翌12月)にリリースした、初のライブアルバム。前年秋に発表した4thアルバム『BACK FOR THE ATTACK』(1987年)を携え、1988年春に実施したジャパンツアーから厳選されたライブ音源16曲と、本作のみに収録の新曲「Walk Away」から構成された2枚組作品(アナログ盤とカセットのみ)。CDは当時、収録時間の関係で3曲(「Standing In The Shadows」「Sleepless Night」「Turn On The Action」)削った全14曲の1枚もので発売され、のちに2枚組完全版が日本のみで限定発売されました。

曲数的に日本公演の模様を完全収録したものと思われがちですが、実はそんなことはなく、当時のセットリストを振り返ると実際には連日18〜20曲程度が演奏されており、アルバムには「Heartless Heart」や「Burning Like A Flame」、当時未発表だった「Cry Again」(結局、今日まで正式リリースなし)あたりがカットされています。

また、曲順も実際のライブとかかけ離れたもので、本来は「Kiss Of Death」から始まるものの、アルバムでは「Unchain The Night」(実際は3曲目)に置き換えられています。

さらに、ギターやボーカルの差し替えもかなり行われているようです(まあこれは、この手の作品なら当たり前のようになっていますが)。ライブではヘロヘロでちゃんと歌えないドン・ドッケン(Vo)も、このアルバムだと荒々しいもののちゃんと高音が出て歌えているし、逆にライブならではの荒さが気に入らないジョージ・リンチ(G)はソロを弾き直している、と。

このように、本作はライブの実況盤というよりは、ライブ音源を使った新しい形のオリジナルアルバム、もしくはベストアルバムと呼んだほうが正しいのかもしれません。じゃなかったら、ラストに唯一のスタジオ音源「Walk Away」を入れたりしないよな。

ただ、とはいえ実際のライブの雰囲気が台無しになってしまっているかというと、いやいや。ちゃんとあの当時の、脂の乗ったバンドの様子は感じ取ることはできます。この頃になるとドンとジョージの確執もかなり強まっていましたが、日本公演の時点ではそういったバンド内の緊張感がまだ良い方向に作用していたはずなんです。事実、このあとに行われたUSツアー(METALLICAとかVAN HALENとかと回っていたはず)くらいになると関係性がさらに悪化し、結局このライブアルバムを最後にバンドは解散するわけですから。

最後に、唯一の新曲「Walk Away」についても。これ、『BACK FOR THE ATTACK』からのおこぼれだと思うんですが(あのアルバム、バラードらしいバラードは皆無だったしね)、MVでラストにドンがひとり去っていく演出といい、確実に“別れ”や“決別”を意識して収録してますよね。ドン自身、もはや自分だけではコントロールが効かなくなったバンドに対する意思表示だったのかなと。そんな深読みも、当時はよくしたものでした。

DOKKENはつい最近も、オリジナルメンバー復活時の日本公演を収めたライブ作品『RETURN TO THE EAST LIVE 2016』(2018年)を発表していますが、バンドの演奏はすごく良いものの歌がアレなので(苦笑)、オリジナルDOKKENの凄みを味わいたい方はぜひこの『BEAST FROM THE EAST』を聴いてみてください。

残念ながらデジタル版やストリーミングではCD1枚ものの短縮版しか聴けませんが、昨年海外の再発レーベルRock Candyから2枚組完全盤がリリースされ、廃盤状態だった2枚組国内盤もタワーレコード限定で再プレスされたようですので、機会があったらCDで購入することをオススメします。



▼DOKKEN『BEAST FROM THE EAST』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3

続きを読む "DOKKEN『BEAST FROM THE EAST』(1988)" »

2018年12月 1日 (土)

QUEEN『FLASH GORDON』(1980)

今から20年前の1998年12月1日、「とみぃの宮殿」というテキストサイトがオープンしました。2004年12月1日に同サイトは完全閉鎖するものの、同日から今ご覧になっている「TMQ-WEB」がスタート。間10年くらい不定期更新でしたが、ここ3年くらいは連日レビュー更新が続いており、現在は「とみ宮」時代のレビューやレポートもこちらに完全移行し、3000エントリー近い読み物を“記録”として残すことができています。

20年前は完全に暇つぶしで始めたこの「音楽について何か書く」という作業でしたが、気づけばそれでメシを食う生活を送っているわけで、本当に人生何が起こるかわかりません。いや、それ以上に20年前とほぼ同じマインドでこうやって何か書いていられることが奇跡じゃないかと思うわけです。体を壊したりしながらも20年続けてこられたことに感謝。そして今このテキストを読んでくださっている方々に感謝です。

* * * * *

さて、20周年ってことで、まず1発目のレビューで何を取り上げようかと1ヶ月くらい前から考えていたわけですよ。自分のルーツになる重要な音楽やアルバム……は、結構この20年で書き尽くした感があるし、かといって何事もなかったかのように新譜を取り上げるのも違う気がする。今の気分的にはQUEENなんだろうけど……と、数日前まで頭を悩ませていたら、ふと「そういえば、このサイトで最初に書いたテキストってなんだっけ?」と思ったわけです。で、掘り起こしてみたら、やっぱりというか、QUEENとフレディ・マーキュリーについて書いた「QUEENと僕」というコラムでした(ディスクレビューだと、MANIC STREET PREACHERSの当時の新作『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』になります。こちらに関しては間もなく20周年盤が発売されるので、その際に再び執筆したいと思います)。

じゃあ、やっぱりQUEENだなと。けど、オリジナルアルバムに関しては残すところあと2枚なんですよね。別にベストアルバムやコンピレーション盤でもよかったんだけど、せっかくならオリジナルアルバムのほうがいいのかなと。で、どっちにするか……となると、やっぱりこっちなわけですよ。

* * * * *

はい、ここからが本編です。前置き長くてごめんね(笑)。

本国イギリスで1980年12月、日本やアメリカでは翌1981年1月にリリースされたQUEEN通算9作目のスタジオアルバム『FLASH GORDON』。アメリカでメガヒットを記録した前作『THE GAME』(1980年)から半年あまりで発表という驚くショートスパンですが、これは『FLASH GORDON』という作品が同名映画のサウンドトラック盤として制作されたため。内容自体は非常にコンセプチュアルなもので、全19曲(アナログA面が10曲、B面が9曲)という彼らのオリジナルアルバムとしてはもっとも曲数が多いのですが、トータルランニングは35分と短いのも特徴。しかも、歌モノはそのうち2曲、オープニングとエンディングのみという、ライトユーザーはおろかマニア的にもハードルの高い内容となっています。

シングルカットされたメインテーマの「Flash」(アルバムでは「Flash's Theme」名義)こそ全英10位/全米42位というまずまずの成績を残しましたが、アルバムは『THE GAME』のあとにも関わらず全英10位、全米23位と低調で終わりました。

QUEEN=フレディの歌、と認識しているリスナーには確かに本作はハードルの高い作品です。それは間違いない事実でしょう。事実、僕自身もここ2〜30年、この作品とマトモに向き合ってこなかったのですから。だけど、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットによるここ最近の流れで、久しぶりにオリジナルアルバムをすべて、リリース順に聴き続けたら……この『FLASH GORDON』、不思議とスルスル聴き進めてしまったのです。いや、むしろこのアルバムばかりリピートしている自分がいて、素直に驚いております。

確かにフレディの歌モノはオープニングの「Flash's Theme」とラストの「The Hero」のみです。しかし、そのほかの17曲も間違いなくQUEENそのものであり、むしろプレイヤーとしてのブライアン・メイ(G)、ジョン・ディーコン(B)、ロジャー・テイラー(Dr)、そしてフレディ(Vo, Key)の技量やセンスを存分に楽しめる。前作『THE GAME』から導入したシンセサイザーも全面的に導入されており、メンバー4人が至るところで、楽しみながらそれらを弾いているのも微笑ましい。

そして何より、本作は初期QUEENが持っていたプログレッシヴ・ロックバンドとしての側面を、80年代的に昇華させた貴重な1枚でもあります。『THE GAME』でポップバンド的な側面が強まり、アルバムをコンセプチュアルなものにするよりも単曲で楽しめるシングル志向の楽曲の寄せ集めにする方向にシフトしたQUEENが、映画のサントラを盾に好き放題趣味に走った。そう受け取ることもできないでしょうか。そう考えると、実は本作ってもっとも“QUEENらしい”アルバムなんじゃないか……そうより強く思えるわけです。

ちゃんとクラシカルな要素も含まれており、ところどころにフレディの声やハーモニーも用いられている。ストリングスを使った仰々しい、いかにも映画のサントラといった要素もあり、ただモダンなだけではない。もちろん、QUEENらしいポップさと、ハードロックバンドらしさも混在する。プログレバンドとして語られることが少ないQUEENですが、このアルバムこそ当時時代遅れになっていたプログレを現在に蘇らせた、なんて受け取ることはできないでしょうか。まあ、それもリリースから40年近く経った2018年だからこそ言えることなのかもしれませんが。

正直、今頃になってこのアルバムにここまでハマるとは思いもしなかった。これも、20年もこんなサイトを続けてこられたからこそ気づけたことなのかもしれませんね。そういう意味でも、今でもこうやって音楽テキストを書き続けていられることに心から感謝したいと思います。

追記:
ちなみに、皆さんがよく知る「Flash」ですが、アルバムバージョンとシングルバージョンは内容が若干異なります。アルバムのほうの「Flash's Theme」が映画で使われたバージョンで、意外と淡々としたアレンジ。シングルバージョンの「Flash」は映画のセリフを多用したもので、コラージュ色が強まっています。僕はベスト盤から入った人間なので、「Flash」の印象が強かったため、最初にアルバムバージョンを聴いたときは「あれ? こんなに薄味だっけ?」と驚いたものです。なので、ストリーミングなどで聴く際にはぜひ2枚組のデラックス・エディション(ボーナスディスクにシングルバージョンやデモ音源、ライブバージョンを収録)をオススメします!



▼QUEEN『FLASH GORDON』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3

続きを読む "QUEEN『FLASH GORDON』(1980)" »

« 2018年11月 | トップページ | 2019年1月 »

2019年8月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

カテゴリー

無料ブログはココログ