2018年4月19日 (木)

FM『ATOMIC GENERATION』(2018)

90年代のブリティッシュHR/HMファンの間では、おそらくTHUNDERと同系統のバンドとして評価されているFM。THUNDER同様、彼らも90年代半ばに一度解散を経験していますが、2007年の再結成以降、『METROPOLIS』(2010年)を機に定期的に新作を発表してくれています。

今作『ATOMIC GENERATION』は彼らにとって通算10作目にあたる、記念すべき1枚。オリジナルアルバムとしては『HEROES AND VILLAINS』(2015年)から3年ぶりとなりますが、その間にデビューアルバム『INDISCREET』(1986年)の再録アルバム『INDISCREET 30』(2016年)を挟んでいるので、意外とそこまで時間が経っていない印象があります。

初期2枚(『INDISCREET』と1989年の2ndアルバム『TOUGH IT OUT』)は産業ハードロック的な印象を持っていましたが、3作目の『TAKIN' IT TO THE STREET』(1991年)あたりから伝統的なブリティッシュハードロックに傾倒し始め、個人的にも「『TOUGH IT OUT』は素晴らしかったけど、これはこれで良いかも」と好意的に受け入れていました。

今回の『ATOMIC GENERATION』も、比較的『TAKIN' IT TO THE STREET』以降の路線に近いのですが、単なる「王道の継承」というよりは「80年代的なAOR/産業ハードロックのルーツ部分も残しつつ、王道ブリティッシュハードロックと融合させていく」という独自のスタンスを取っているように感じられます。

特に、序盤5曲の流れは適度にハードで心地よいメロディを兼ね備えた、大人のハードロックを楽しむことができます。THUNDERと比較されがちだけど、このへんは例えばJOURNEYFOREIGNERあたりにも通ずるものがあるんじゃないでしょうか。

かと思うと、6曲目「Playing Tricks On Me」でブラスセクションをフィーチャーしたソウルフルなミディアムナンバーをぶち込んできます。ここまでくると、もはやハードロックというよりはサンタナあたりのアダルトなAORと呼んでも違和感ないくらいの作風。続く「Make The Best Of What You Got」も若干黒っぽさを表出させたロックンロールで、サビに入る前までの流れにFOREIGNERをちょっと思い浮かべたり。「Follow Your Heart」もその系統ですよね。

で、9曲目にしてこのアルバム初のバラード「Do You Love Me Enough」が登場。大人の渋みを感じさせる落ち着いたトーンで、コーラスの入れ方も絶妙。そこから大きなノリの「Stronger」、切ないアコースティックバラード「Love Is The Law」で締めくくる。この余韻を残す終わり方も、なかなかだと思いました。

正直、再結成後の彼らの作品はそこまで真剣に聴いてこなかったし、ピンとくるアルバムもそこまでありませんでした。が、これは全体のバランス含めてすごく良いんじゃないでしょうか。派手さは皆無ですが、じっくり腰を据えて向き合うことができるスルメ系な1枚。入門編としても最適だと思いますよ。



▼FM『ATOMIC GENERATION』
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投稿: 2018 04 19 12:00 午前 [2018年の作品, FM] | 固定リンク

2018年4月 8日 (日)

JACK WHITE『BOARDING HOUSE REACH』(2018)

2018年3月発売の、ジャック・ホワイト通算3作目のソロアルバム。前作『LAZARETTO』(2014年)から約4年ぶりの新作となりますが、その間には2枚組アコースティック&レアトラックアルバム『ACOUSTIC RECORDINGS 1998-2016』(2016年)が挟まれているので、実質2年ぶりくらいの感覚なんでしょうか。

とはいえ、純粋な新曲ばかりのアルバムは4年ぶりなので、ファンならずとも“待望の”という表現がぴったりな1枚かと思います。

THE WHITE STRIPES時代から一貫して、ジャック・ホワイトが作り出すサウンドにはブラックミュージックからの影響は間違いなく含まれていましたが、今作は彼の作品中でもっとも“黒っぽい”仕上がり。それもそのはず、本作にはドラムやベース、オルガンなどでゲスト参加しているメンツがビヨンセやQ-TIP、ジョン・レジェンド、マライア・キャリー、カニエ・ウエスト、リル・ウェイン、ジェイ・Z、FISHBONE、SOULIVEなどなど、ソウルやファンク、R&B、ヒップホップ系アーティストをサポートするミュージシャンばかりなのです。こういった外的要素が、彼の生み出す楽曲をより“黒っぽく”仕上げたことは想像に難しくないはずです。

また、アルバムを聴いていて非常に興味深かったのは、これまでの彼の作品はそういった要素(=ルーツ)をテイストとしてロックンロールを展開してきたのに対し、今回に限ってはロックが“テイスト側”で、表現しようとしているものがジャック・ホワイトなりのブラックミュージックなのではないか……そう思わずにはいられないぐらい、芯からドス黒さに満ち溢れていのです。

さらに本作でのジャックは、スライ・ストーンやプリンスといった鬼才たちの姿とイメージが重なる瞬間が多々ある。彼が今回のアルバムで目指したのは、そういった先人たちの偉業を引き継いで未来につなぐことだったのではないでしょうか……なんていうのは、ちょっと大げさかしら?

でも、時代性や昨今の音楽シーンの状況を考えると、この『BOARDING HOUSE REACH』というアルバムでの試みはあながち間違ってないのかもしれませんね。ぜひこのアルバムをライブで演奏する際には、SLY & THE FAMILY STONEやPRINCE & THE REVOLUTIONみたいなスタイルで表現してもらいたい。そう思わずにはいられないくらい、このアルバムの中には過去と未来をつなぐ大切なものが詰まっている。そんな、とんでもない異形のアルバムだと断言させてください。

いやはや、すげえアルバムですわ。



▼JACK WHITE『BOARDING HOUSE REACH』
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投稿: 2018 04 08 12:00 午前 [2018年の作品, Jack White] | 固定リンク

2018年3月31日 (土)

JUDAS PRIEST『FIREPOWER』(2018)

2018年3月に発表された、JUDAS PRIEST通算18枚目のスタジオアルバム。前作『REDEEMER OF SOULS』(2014年)からほぼ4年ぶりにあたる本作は、全米・全英ともに5位という好成績(アメリカでは過去最高位)を残し、概ね高評価を得たように思います。

前作から制作に加わったリッチー・フォークナー(G)の影響もあってか、『REDEEMER OF SOULS』は70年代〜80年代初頭のハードロック的スタイルを踏襲しつつ、再結成後の2枚(2005年の『ANGEL OF RETRIBUTION』と2008年の『NOSTRADAMUS』)をより若々しくしたような楽曲を楽しむことができました。それに続く今作『FIREPOWER』は、『REDEEMER OF SOULS』をさらにメタリックに、かつよりモダンにアップデートしたような内容と言えるでしょう。

プロデュースを手がけたのは、プリーストの80年代の名盤を多数手がけてきたトム・アロムと、昨今のモダンなヘヴィメタル作品を多数プロデュースするアンディ・スニープ。この「プリーストのことを一番理解しているプロデューサー」と「もっとも現在のメタルシーンを理解しているプロデューサー」を同時投入することで、このエネルギッシュなアルバムが完成したのだと思うと、なるほど納得です。

アルバムのオープニングを飾る「Firepower」の疾走感と、続く「Lightning Strikes」で見せる(聴かせる)王道感。前者は80年代後半以降、特に『PAINKILLER』(1990年)で確立させたブルータルな作風を彷彿とさせますし(もちろん単なる焼き直しでは終わっていない)、後者はその『PAINKILLER』に含まれていたハードロック的ストロングスタイルをブラッシュアップさせたような1曲です。かと思えば、「Never The Heroes」のような若干ダークな空気感の楽曲(でも、聴けばプリーストのそれだとわかる)や、「Children Of The Sun」みたいにオールドスタイルのハードロックをモダンに昇華させたミドルヘヴィナンバーも存在する。

アルバム後半に入ると、短尺のインスト「Guardian」から続く「Rising From Ruins」や「Spectre」といったミドルチューンで深みを見せる。3分にも満たないメロウな「No Surrender」あたりは80年代前半の彼らをイメージさせるし、逆に「Lone Wolf」はなんとなくFIGHT時代のロブ・ハルフォード(Vo)を思い浮かべてしまう。そんなバラエティに富んだ楽曲群のラストを飾るのは、6分前後におよぶ本作最長のメタルバラード「Sea Of Red」。全14曲、58分と決して短いとはいえない大作ですが、意外とスルッと聴けてしまうのも本作の魅力かもしれません。

前作『REDEEMER OF SOULS』はエディション違いで曲数が違ったり、そのデラックス盤が全18曲で90分超えと、その前の『NOSTRADAMUS』同様に1曲1曲の印象が薄まる作風でした。本作も14曲と確かに曲数が多いので、しっかり聴き込むには時間が必要ですが、それでも「何度でも聴きたい」と思わせてくれる魅力が豊富な1枚だと思いました。すごく簡単な分類をしてしまえば、前作が“ハードロックバンドJUDAS PRIESTの集大成”だとしたら、本作は“ヘヴィメタルバンドJUDAS PRIESTの、過去と今をつなぐ現在進行形”と言えるのではないでしょうか。そう、単なる集大成というよりは、しっかり2018年という時代と向き合っている。そんな印象を強く受けます。

本作リリース直前には、オリジナルメンバーと呼んでも過言ではないギタリスト、グレン・ティプトンが10年前からパーキンソン病を患っていること、同作を携えたワールドツアーには参加せず、代わりにアンディ・スニープが参加することがアナウンスされたばかり。3月からスタートした全米ツアーのある公園にはグレンもゲスト参加したようですが、こうなると本作の持つ意味合いも今後少し変わってくる気がします。『ANGEL OF RETRIBUTION』以降では、ロブのボーカルも一番脂が乗っているし、もう少しいけるんじゃないか……と思っていた矢先だったので、この現実を受け入れるにはもう少し時間がかかりそうです。

とはいえ、自分は「間違いなく素晴らしい作品だし、大好きだし、2018年を代表する1枚」という、最初にこのアルバムを聴いたときに感じた気持ちを大切にしたいと思います。



▼JUDAS PRIEST『FIREPOWER』
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投稿: 2018 03 31 12:00 午前 [2018年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2018年3月29日 (木)

THE DEAD DAISIES『BURN IT DOWN』(2018)

前作『MAKE SOME NOISE』(2016年)で日本デビューを果たし、2度の来日公演で人気を確かなものにしつつあるTHE DEAD DAISIES。そんな彼らが、早くも4thアルバム『BURN IT DOWN』を日本先行でリリースしました。

前作発表後ブライアン・ティッシー(Dr)が脱退し、ディーン・カストロノヴォ(元JOURNEY、現REVOLUTION SAINTS)が加わった編成でレコーディングされた本作は、前作にあった軽やかさが減退し、全体的にヘヴィなビート&音像の“圧が強い”1枚に仕上がっています。

やっぱりドラマーが変わると雰囲気が変わるんだな、ってことをまざまざと見せつけられる本作は、冒頭の「Resurrected」から重いビートとヘヴィなギターサウンド、ジョン・コラビ(Vo)のよるスモーキーな歌声でダークな空気感を作り上げていきます。続く「Rise Up」もその延長線上にある1曲で、オープニングのギターこそブルージーながら本編に入るとやはりヘヴィになる「Burn It Down」や「Judgement Day」など、基本的にトーンが近い曲が並んでおります。これを良しとするか否かで、本作に対する評価は大きく分かれそうな気がします。

また、本作には日本盤ボーナストラック含め、カバー曲が2曲収められています。アルバム本編に登場する「Bitch」はかのTHE ROLLING STONESの定番曲。ソウルフルなロックンロールといった印象の原曲がヘヴィにアップデートされており、原曲に対する思い入れによって評価が割れそうな予感。個人的には「悪くないけど、絶賛するほどでもない」という仕上がりかな。もうひとつは、日本盤ボーナストラックの「Revolution」。THE BEATLESの名曲カバーですが、こちらはもともとヘヴィにアレンジしてもなんら違和感のないナンバーなので自然な仕上がりです。なんでこっちをアルバム本編に入れなかったんだろう?という疑問も残りますが、まあわかります。若干ポップになっちゃいますものね。にしても、ストーンズにビートルズっていうセレクトが、なんていうか……(まあ前作もTHE WHOとCCRだったしね)。

アルバム本編の話題に戻ります。後半には「Set Me Free」というソウルフルなロッカバラードがあるものの、続く「Dead And Gone」でヘヴィ路線へ逆戻り。ラストにアップテンポのロックンロール「Leave Me Alone」があってホッとしますが、個人的にはちょっと期待はずれな1枚だったかな。

適度なヘヴィさはもちろん必要だと思います。けど、このバンドの魅力って(特にジョン・コラビが加入してからは)コラビのハスキーかつソウルフルな歌声を活かしたAEROSMITH譲りのハードロックンロールだと思うんです。そこにダグ・アルドリッジ(G)が加わった前作で、そのハードさがよりモダンなものへと昇華されつつあった。バランスとしては最高だったんですよ。だからこそ、この行きすぎた感がちょっと残念でなりません。

これまでの作品にもヘヴィな楽曲は存在したけど、ちゃんとヘヴィな中にもR&Rらしいスウィング感が存在したんだけど……難しいですね、バンドって。



▼THE DEAD DAISIES『BURN IT DOWN』
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投稿: 2018 03 29 12:00 午前 [2018年の作品, Dead Daisies, The] | 固定リンク

2018年3月27日 (火)

SUPERCHUNK『WHAT A TIME TO BE ALIVE』(2018)

アメリカの4人組オルタナロックバンドSUPERCHUNKの4年半ぶり、通算11枚目のオリジナルアルバム。彼らのアルバムは毎回すべてチェックしているわけではなく、何枚か聴いて気に入っているといった程度のリスナーですが、本作はとにかく素晴らしいと素直に思える1枚。

前作『I HATE MUSIC』(2014年)も聴いていましたし、あれも素晴らしい1枚だと思っているのですが、今作は予想していた以上といいますか。いや、正直言えばそんな良し悪しを気にせずに接した1枚でした。ふいに手にした1枚が、極上の1枚だった。だからこそ、驚きも大きかったわけです。

メンバーは本作発表に際して、「自分達が住み、そして自分達の子供が成長しようとしている周辺の状況を完全に無視したレコードをつくることは、バンドをやっている者、少なくとも今の自分たちのバンドにとっては奇妙なことなんだ」というコメントを発表しています。つまり、今作では現在のドナルド・トランプ政権に対する絶望と怒りが表現されていると。それがこのアグレッシヴなサウンドにも反映されているんでしょうね。

とにかくラウドで前のめりで力強い。「Lost My Brain」「Break The Glass」「Bad Choices」「Cloud Of Hate」など、どこかネガティヴさが感じられるタイトルがずらりと並びますが、実際にアルバムを聴くと悲惨さや絶望は感じられず、むしろ状況を変えようと前進していくことを選んだバンドの強い意志すら感じられます。メンバーの言葉じゃないですが、まさに「これは悲惨で落ち込んでいる状況についてのレコードだけど、聴いていても悲惨で憂鬱に感じるようなレコードではない」と。ホント、救いのあるアルバムだと思います。

全11曲(日本盤ボーナストラックを除く)で32分というトータルランニングも素晴らしく、その熱量と勢いと相まって、あっという間に聴き終えてしまう。気づけばまた最初からリピートしているし、何度聴いても飽きが来ない。それは楽曲の持つパワーはもちろんのこと、優れたメロディとバンドアンサンブルによるものも大きいのかなと。ただパンキッシュで速い曲だけではないし、ラストにはじっくり聴かせるミディアムナンバー「Black Thread」も控えている。この余韻を残す終わり方が、また聴きたいという思いにつながるのかもしれませんね。

オルタナロックファンやパワーポップリスナーにはもちろんのこと、初期のFOO FIGHTERSあたりがお気に入りのハードロックファンにも絶対にひっかかりの多い、スルメ的な1枚だと思います。



▼SUPERCHUNK『WHAT A TIME TO BE ALIVE』
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投稿: 2018 03 27 12:00 午前 [2018年の作品, Superchunk] | 固定リンク

2018年3月25日 (日)

ANDREW W.K.『YOU'RE NOT ALONE』(2018)

ANDREW W.K.世界共通の新作としては、日本未発売の『55 CADILLAC』(2009年)以来実に9年ぶりの新作。特にここ日本では2008〜9年にかけてJ-POPカバーアルバムやガンダムカバーアルバムなど企画モノを連発したおかげで、“過去の人”的なイメージで語られる機会も増えていました。そこから数えても9年、周りにはデビューアルバム『I GET WET』(2001年)の衝撃を知らない若いリスナーも増えています。

そんな中、満を辞して発表された通算5枚目のオリジナルアルバム。路線的には2ndアルバム『THE WOLF』(2003年)や3rdアルバム『CLOSE CALLS WITH BRICK WALLS』(2006年)に近いのかなと(前作『55 CADILLAC』は毛色の違う異色作でしたし)。

そもそも、アルバムタイトルの『YOU'RE NOT ALONE』からして、ANDREW W.K.“っぽく”ない。「あれ、大丈夫?」と不安になったのは僕だけはないはず。で、実際にアルバムを聴くと、オープニングの仰々しいインストナンバーから続く「Music Is Worth Living For」……あれ、こんなだっけ? あ、でも最近はこんなだったか……と難しい顔をしている自分がいる。聴き進めるうちに、我々がイメージする“パーティソング”もいくつか顔を覗かせるのだけど、その勢いもデビュー作と比べたら落ち着き払ったもので、どこかお上品。鼻血を流しながらパーティ!パーティ!していた時代は今は昔。ああ、こうやってみんな大人になっていくのか、と肩を落としたのでした。

が、だからといって本作のクオリティが低いものかと言われたら、そこはまた話は別。パーティの質は確かに変わったものの、楽曲そのものは非常に練り込まれており、リスニングに耐えうるものばかり。1曲1曲の曲間がかなり短いせいで、組曲のように聴こえる構成があったり、優雅なサウンド&世界観が影響してか、どこかコンセプトアルバムのように思えたり。『THE WOLF』から顕著になったQUEENへの憧れが、本作では独自の形でオリジナルなものへと昇華されたのかな、そんな気がします。

だからこそ、このアルバムはもっとゴージャスなサウンドプロダクションで聴きたかったな。例えば往年のDEF LEPPARD的なビッグプロダクションで。それが似合う楽曲たちだと思うし、それを今ちゃんとした形でやれる人だと思うのですよ。もちろん、それに近いことをやってくれてはいるのですが、『I GET WET』の頃と比べるとどうしても1音1音のアタックが弱いような。それがメジャー資本とインディーズとの違いなのか、あるいは今やりたいこととしてのこだわりなのかはわかりませんが……。

ファンの求めるANDREW W.K.像とのズレ、この音ならもっとこうやれたんじゃ……という惜しさ含め、9年ぶりの新作(日本では数々の企画盤や『55 CADILLAC』をなかったことにして、『CLOSE CALLS WITH BRICK WALLS』以来12年ぶりと謳ってます)のわりには……と思ってしまうのが正直なところ。曲が良いだけに、余計にね。でも、ライブを観たら印象がまた変わるのかなぁ。嫌いになれない作品だけに、そう願いたい。



▼ANDREW W.K.『YOU'RE NOT ALONE』
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投稿: 2018 03 25 12:00 午前 [2018年の作品, Andrew W.K.] | 固定リンク

2018年3月22日 (木)

MINISTRY『AMERIKKKANT』(2018)

MINISTRYの4年半ぶり、通算14作目のスタジオアルバム。前作『FROM BEER TO ETERNITY』(2013年)を最後にもうオリジナルアルバムは作らないなんて話があったような気がしますが、アル・ジュールゲンセン(Vo, G)はこのアルバムを作らずにはいられなかった。そういうことなんでしょう。

それもそのはず、本作は現在のアメリカでのドナルド・トランプ政権に対する怒りが大きなきっかけになっているのですから。

これまでもMINISTRYは『PSALM 69: THE WAY TO SUCCEED AND THE WAY TO SUCK EGGS』(1992年)を筆頭に、ブッシュ政権を批判する楽曲や作品を発表しています。こういったポリティカルな要素はアルにとって、創作活動における大きな起爆剤になっていることは間違いないでしょう(もちろん、それがすべてだとは言いませんが)。

そして、アルはただトランプ政権を批判・攻撃するだけではなく、そういった人物を国のトップに選んだ社会に対する批判もこのアルバムで繰り広げています。それがまさしく、アルバムタイトルである『AMERIKKKANT』に示されているのでしょう。

とにかく、本作に関しては対訳の付いた国内盤を購入して、アルが表現したいこと、伝えたいことをしっかり理解してほしいところです。

そして、サウンドについて。お聴きいただけばわかるように、“これぞMINISTRY”というインダストリアルサウンドが終始展開されています。序盤こそヘヴィなミドルチューンが続くように思われますが、M-3「Victims Of A Clown」の終盤から始まるデジタルスラッシュビート……おなじみの“TVシリーズ”最新章「TV5/4 Chan」に続いて、突っ走りまくりの「We're Tired Of It」へと流れる構成は、往年のファンなら思わず手に汗握るものなんじゃないでしょうか。

後半もグルーヴィーな「Wargasm」、パワフルなインダストリアルビートが気持ち良い「Antifa」や「Game Over」、本作の主題ともなるエピックナンバー「AmeriKKKa」と、好きな人にはたまらない内容と言えるでしょう。とうことは、初心者には……決してキャッチーな作品とは言い切れないので、初めてMINISTRYの作品を手に取る人には本作はちょっとだけ難易度が高い1枚かもしれません。しかし、時代と対峙するという点においては、今このタイミングに聴いておくべき重要な“パンク”アルバムとも言えるでしょう。

なお、本作にはFEAR FACTORYのフロントマン、バートン・C・ベルが数曲にゲスト参加しています。さらに、N.W.A.のオリジナルメンバーのひとり、アラビアン・プリンス、ベックのバックバンドなどでおなじみのDJスワンプなども名を連ねています。このへんの名前にピンと来た人、ぜひチェックしてみてください。

なお、個人的には本作、ここ数作の中で一番好きな1枚です。



▼MINISTRY『AMERIKKKANT』
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投稿: 2018 03 22 12:00 午前 [2018年の作品, Beck, Fear Factory, Ministry] | 固定リンク

2018年3月21日 (水)

CORROSION OF CONFORMITY『NO CROSS NO CROWN』(2018)

CORROSION OF CONFORMITYの通算10作目となるスタジオアルバム。前作『IX』(2014年)から約3年半ぶり、ペッパー・キーナン(Vo, G)が復帰して初のスタジオ作品となります。ちなみに、ペッパーが最後に参加したアルバムは2005年の7thアルバム『IN THE ARMS OF GOD』が最後。前作『IX』ではソングライターとして参加していたように、バンドとの関係はそこまで悪くなかったようです。

個人的にCOCというと、1991年の『BLIND』(このときは専任シンガーが在籍しており、ペッパーは数曲のみでボーカルを披露)、1994年の『DELIVERANCE』、そして1996年の『WISEBLOOD』の3枚あたりがバンドとしての人気のピークかなと考えています。もちろん、マイク・ディーン(B, Vo)が歌う時代も嫌いじゃないですが、どうにもペッパーの印象が強くて。だからこの3枚の中でも特に『DELIVERANCE』と『WISEBLOOD』は、今でもお気に入りだったりします。

で、今回の新作ですが……多くのリスナーが想像するとおりのCOCのサウンドが展開されています。つまり、BLACK SABBATHからの影響を強く感じさせるストーナーロック的なハードロックサウンドに、サザンロックのようにレイドバックしたアーシーなサウンドをミックスしたもの。ミドルテンポ中心の、引きずるように重いビートと、聴き手を不安にさせる不穏なギターリフ、そしてペッパーによる適度にメロウ、だけどひたすら叫ぶようなボーカル。例えば今のバンドだったら、BLACK LABEL SOCIETYあたりに通ずるヘヴィさとキャッチーさを兼ね備えた存在といえばわかりやすいでしょうか。

もちろん、ただヘヴィ一辺倒というわけではなく、アルバム中盤にはアコースティックギター主体の短尺インスト「Matres Diem」があったり、サイケデリック感とカオティックなヘヴィさをミックスさせた「Nothing Left To Say」、不穏な効果音と不気味なコーラス隊が加わったダーク&スローな「No Cross No Crown」みたいなフックとなる楽曲も存在する。そういう緩急を経て、ラストにダイナミックな「A Quest To Believe (A Call To The Void)」で大団円を迎えるという構成は圧巻の一言です。50分以上もあるボリューミーな作品ですが、この“圧”のおかげで、実はそれ以上にも感じられるほど、とにかく緊迫感の強い1枚です。

ちなみに、日本盤にはラストにQUEENのカバー「Son And Daughter」を追加収録。あのQUEENならではのオーケストレーションも見事に再現されていますが、COCらしく“どヘヴィ”に生まれ変わったこのアレンジもなかなかのものがあります。オマケ以上の価値がある1曲なので、興味があったらぜひ日本盤を手にとってみてください。

このアルバムを携えて、久しぶりの来日公演にも期待したいところ。僕が最後に観たのは、確かOUTRAGEと共演したときだから、もう20年以上も前ですね……せっかく久しぶりに日本盤が出たのだから、ぜひフェスでの再来日を願っております。



▼CORROSION OF CONFORMITY『NO CROSS NO CROWN』
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投稿: 2018 03 21 12:00 午前 [2018年の作品, Corrosion of Conformity] | 固定リンク

2018年3月18日 (日)

STONE TEMPLE PILOTS『STONE TEMPLE PILOTS (2018)』(2018)

前作『STONE TEMPLE PILOTS』(2010年)と同タイトルですが、内容は別モノとなるSTONE TEMPLE PILOTS通算7作目のオリジナルアルバム。フルアルバムとしてはスコット・ウェイランド参加最終作であり、彼の復帰後最初で最後のアルバムとなった『STONE TEMPLE PILOTS』以来8年ぶり、新音源としてはそのスコットの後任としてLINKIN PARKから兼任参加したチェスター・ベニントンとのEP『HIGH RISE』(2013年)以来5年ぶり。まあとにかく、ここ数年のストテンはツイてない。解雇したスコットは2015年12月に、やはりというかドラッグのオーバードーズで死去。さらに2017年7月にはLINKIN PARKへと戻っていったチェスターも自殺と、歴代シンガーをことごとく不幸な形で失っているのですから。

しかし、バンドとして歩みを止めることなく、ストテンは2016年秋に新ボーカリストオーディションを開始。その結果はしばらく発表されることなく、彼らは水面下で後任を決め、そのままレコーディングに突入。しばらく沈黙を貫き(チェスター死去のときはコメント出しましたが)、昨年11月に新メンバーとしてジェフ・グートが加わったことと、新曲「Meadow」の配信を発表し、年明け2月にはアルバムリリースがアナウンスされたのでした。

「Meadow」を聴いた時点で、まあボーカリストが変わろうがストテンはストテンのままなんだろうな、とは思っていましたが……アルバムも“まんま”でした。もちろん良い意味で。

ジェフ・グートの歌声は決してアクが強いというわけではないものの、どことなくスコットにもチェスターにも似てるような印象もあり(そう聞こえてくる瞬間が多々あり)、前任たちからかけ離れているとは思えない。もちろん、ディレクションによって歌い方を“寄せている”のもあるんでしょう。20年以上にわたり貫きとおしてきた信念を強く感じさせる仕上がりです。

楽曲自体も適度にハード、かつ適度にポップ。最初の解散前にあったサイケデリックな要素もしっかり兼ね備えており、ある種の集大成感すら感じさせます。が、思えば前作『STONE TEMPLE PILOTS』(タイトルややこしい)の時点で「再結成一発目にしてセルフタイトル」を名乗っていたのですから、あの時点で「今自分たちがやるべきこと=集大成的作品を作ること」というコンセプトがあったと思うんです。実際、そういうアルバムだと思いましたし(もちろん、ただの“焼き直し”だけでは終わっていませんでしたが)。

そういう点において、今作も同じコンセプトのもとに制作されているように感じるのですが、ただ前回と今回は同じ“立て直し後一発目”でも、そこへ向かうまでの経緯やメンバーのテンションもまったく異なるもの。特に今回は少なからずどんよりした空気を抱えていたでしょうし……。そこを打ち消すことができたのは、やはりフレッシュな新メンバーのおかげなんでしょうね(フレッシュといいながら、ジェフはすでに40歳オーバーですけどね)。それに、無駄に若くてメラメラな奴ではなく、ある程度落ち着き払った、それなりにキャリアのある人間を迎えたのも大きいのかなと。

もしあなたが過去のストテンの作品に少しでも触れたことがあり、1枚でも好きなアルバム、1曲でも好きなナンバーがあるのなら、本作にはあなたの琴線にっ触れる要素があるはずです。むしろ、「ボーカルが違う」「オリメンじゃない」なんてつまらないことにこだわらなければ、今までの“続き”として普通に楽しめることでしょう。衝撃こそないけど、いつ何時でも安心して楽しめる1枚。



▼STONE TEMPLE PILOTS『STONE TEMPLE PILOTS (2018)』
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投稿: 2018 03 18 12:00 午前 [2018年の作品, Stone Temple Pilots] | 固定リンク

2018年3月17日 (土)

BON JOVI『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE (2018 VERSION)』(2018)

3月10日付けの米・Billboardアルバムチャート「BILLBOARD 200」にて、2016年11月発売のBON JOVIのアルバム『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』が1年3ヶ月ぶりに1位を獲得したことをご存知でしょうか。発売から数週でトップ200圏外へと落ちたアルバムが、1年以上経ってからいきなり1位まで上昇するって、通常では考えられないことなんですが、一体何が起きたんでしょう?

実はこれ、簡単なカラクリで。3月14日から始まる全米アリーナツアーのチケットにアルバムCDを付けたらしく(これ自体は付ける/付けないの選択が可能)、35万枚以上ものチケットに対して12万枚分のCDが新たに売れたと(詳細はこちら)。そりゃあいきなり1位になりますよね。最近ではMETALLICAあたりもこの手法を使っており、彼らも2016年発売のアルバム『HARDWIRED... TO SELF-DESTRUCT』を昨年1年間で50万枚近く売り上げています。日本でもかなり前にEXILEが同様の手法を取りましたが、今はこの形態ではチャートに計上されないんでしたっけ。なんにせよ、アルバムをまだ買ってない、ストリーミングでしか聴いてないけどライブには行きたいって人にはフィジカルに触れてもらう、よいきっかけになるかもしれませんね(押し売りにさえならなければね)。

で、話をBON JOVIに戻しますと、彼らは2月末に『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』に新曲2曲を追加したリイシューバージョンをデジタルアルバム&ストリーミングのみで発表しています。これにより以前のバージョンから既存曲が外されるということもなく、単に頭に新曲2曲を追加し、3曲目からは既存のアルバムどおりのトラックリストのまま。アルバム頭の印象が大きく変わる程度かと思いきや、意外とアルバム序盤の雰囲気がガラッと変わるんじゃないかと思うのです。

アルバムオープニング曲となった新曲「When We Were Us」は、メジャーキーのアップチューン。軽快なリズムとディレイを効かせたギターリフ、ダイナミックなアレンジがいかにもBON JOVIといった印象で、マイナーキーのハードロック「This House Is Not For Sale」から始まる以前のバージョンとは冒頭の印象がガラッと変わりました。ゼロ年代中盤以降のアメリカンパワーポップ的作風が戻ってきた感もあり、僕はこのオープニング(およびこの曲)大好きですよ。

続く2曲目「Walls」はここ最近のBON JOVIらしいマイナーキーの枯れたロックナンバー。が、この曲にも軽快さが備わっており、サビに入ると拍が半分になりビッグなビートが刻まれる、この感じが現代的でなかなかのアレンジだと思います。ただ、先の「When We Were Us」同様に、日本人にはシンガロングが難しい楽曲かなと。そういったポピュラー感は過去のヒットナンバーと比較すると弱い気がします。そこだけが勿体ない。

で、3曲にようやく「This House Is Not For Sale」。ダークさが漂うこの曲から始まる以前のバージョンは、全体的にひんやりした印象が強かったですが、頭2曲の軽快さが加わったことで、少しだけ入っていきやすくなったんじゃないでしょうか。以前の重厚さがある雰囲気も悪くないけど、やっぱりBON JOVIというバンドにはこれくらいのポップ感が常にないとね。

ということで、通常盤は2曲追加の14曲入り、デラックス盤は19曲入りとかなりの曲数になってしまいますが(そもそもライブではそんなに新曲やらないのにね)、これからこのアルバムに触れる場合は14曲の通常盤で問題ないと思います。

にしても、全然来日しませんね、BON JOVI。アルバム発売から1年3ヶ月以上経っても情報がないなんて、よほど日本に対して興味がなくなったのか、動員が見込めないと思っているのか……ワールドツアーの最後に1、2回東京ドームでやって終わり、みたいになりそうな気がします。まあ、それでも来てくれるだけいいんですけど、ちょっと機を逃しすぎてないかい。本当に動員悪くなりそうで怖いです……。



▼BON JOVI『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE (2018 VERSION)』
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投稿: 2018 03 17 12:00 午前 [2016年の作品, 2018年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2018年3月10日 (土)

JOHN CORABI『LIVE '94 (ONE NIGHT IN NASHVILLE)』(2018)

MOTLEY CRUEのアルバムで一番好きな作品はどれか?と聞かれたら、きっと多くのリスナーが『DR. FEELGOOD』(1989年)『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)を挙げると思うんです。もちろん僕もこの2枚はトップクラスで好きですし、事実80年代〜90年代初頭は確実にこの2枚を選んでました。

が、年をとるとだんだんとひねくれてきて(笑)、バンドの真の姿を無視したセレクトになっていくんですよね……例えば、ここ数年はデビューアルバム『TOO FAST FOR LOVE』のインディーズ盤(1981年)がお気に入りだし、同じくらいに“好きすぎてたまらない!”と声を大にして公言しているのが唯一ヴィンス・ニール不参加の6thオリジナルアルバム『MOTLEY CRUE』(1994年)なのです。

2003年に執筆したレビューの時点から、いや、もっと言えばこのアルバムが発売された1994年当時から僕はこの『MOTLEY CRUE』というアルバムがバンドのキャリア上での最高傑作だと公言してきました(もちろん異論反論は受け付けます。笑)。それは、このアルバムが『DR. FEELGOOD』以降彼らがやろうとしてきたこと、それに加えてグランジやグルーヴメタルなど90年代前半のヘヴィな音楽シーンの流行を自分たちなりに解釈した結果が形として表現された、あの時代にしか作り得なかった作品だからなんです。この1994年3月発売という絶妙なタイミング。カート・コバーン(NIRVANA)が亡くなる1ヶ月前のことですもん。まあ、結果から言えば内容含め、総スカンを食らったわけですが……。

で、ニッキー・シックス(B)が「MOTLEY CRUEであってMOTLEY CRUEではない」このアルバムは、バンドが解散するまで自身のキャリアからスルーされてきたわけですが、それに対して「NO!」と言い続けたのが、今回の主役であるジョン・コラビ。彼はMOTLEY CRUE脱退後も事あるごとにアルバム『MOTLEY CRUE』の楽曲を演奏してきた、ある種『MOTLEY CRUE』の功労者なわけです。涙ぐましい努力ですね。

今でこそTHE DEAD DAISIESのフロントマンとして再ブレイクを果たした感のあるジョンですが、このタイミングに『MOTLEY CRUE』の完全再現ライブを収めたライブアルバムを発表しました。当時の映像、ライブ音源は公式では残っていないので、同作のファンにはとっても嬉しい限り。また、THE DEAD DAISIESでジョンのことを知ったという若いリスナーにも、(音楽性こそ異なるものの)こういうこともやってたんだぜ!というアピールにもなるし、3月下旬にリリースを控えたTHE DEAD DAISIESの最新作『BURN IT DOWN』への布石としても絶好の1枚になるんじゃないでしょうか。

本作は2015年10月27日にアメリカ・ナッシュビルでライブレコーディングされたもの。Jeremy Asbrock(G, Cho)、 Phil Shouse(G, Cho)といったジーン・シモンズKISS)のソロツアーにも参加した面々、Topher Nolen(B, Cho)、そしてアルバム中のMCでも触れられているジョン・コラビの実子Ian Corabi(Dr)という布陣で、『MOTLEY CRUE』の世界観を限りなくオリジナルに近い形で再現しています。曲によってはジョンもギターを弾くのでトリプルギター編成となり、これが『MOTLEY CRUE』という“Wall of Heavy Sound”を再現するにはぴったり。本作の要となるトミー・リーのグルーヴィーかつヘヴィヒッティングなドラムも、まぁトミーの域には及ばないものの、かなり良い感じで近づけているように思います。

ジョンのボーカルは、曲によっては高音域が出ておらず、うまくごまかしている箇所も多いんですが、まあ50代後半といった年齢を考えればかなり頑張っているほうではないでしょうか。むしろ、20数年前の脂が乗った時期とはことなる、ちょっとスティーヴン・タイラーAEROSMITH)に近づいた今のボーカルスタイルで表現される『MOTLEY CRUE』の世界観も悪くない。うん、良いですよ、これは。

ヘヴィなリフ&ドラムからスタートする「Power To The Music」をオープニングに、アルバム『MOTLEY CRUE』全編12曲を曲順通りに演奏し、ライブは最後に「Driftaway」で締めくくり、ボーナストラックとして当時の編成で制作された「10,000 Miles Away」(ミニアルバム『QUATERNARY』日本盤やボックスセット『MUSIC TO CRASH YOUR CAR TO: VOL.2』に収録)が、レアな1曲として演奏され、本作にも追加収録されています。このブルージーな世界観は、『MOTLEY CRUE』というよりも現在のTHE DEAD DAISIESにより近いなと改めて実感させられるのですが、いかがでしょう?

このライブアルバムを聴いてもなお、やはりアルバム『MOTLEY CRUE』は傑作だという思いは少しも薄れることはありませんでした。まだ『MOTLEY CRUE』を聴いたことがないというリスナーはホント、このライブアルバムを機に、一度は『MOTLEY CRUE』に触れてみてもいいんじゃないですか? できることならMOTLEY CRUEだとかTHE DEAD DAISIESだとかそういった先入観を抜きにして、一度接してみてください。

って、結局このライブアルバムではなくて『MOTLEY CRUE』をオススメする内容になっちゃいましたね(笑)。そりゃあ熱が入って、こんなに長文になるわな(苦笑)。



▼JOHN CORABI『LIVE '94 (ONE NIGHT IN NASHVILLE)』
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2018年3月 9日 (金)

SAXON『THUNDERBOLT』(2018)

SAXON通算22作目のスタジオアルバム。IRON MAIDENDEF LEPPARDと並ぶNWOBHM(=New Wave Of British Heavy Metal)の代表格バンドのひとつですが、ビフ・バイフォード(Vo)とポール・クィン(G)以外のメンバーは様変わりしており、現編成は2005年から13年にわたり続いているので、まぁ安定しているほうなのかなと(ドラムのナイジェル・グロックラーは歯抜けで不参加時期もあるけど、何気に1981年から参加しているので、ギターのダグ・スカーラットが参加した1996年から数年は現編成がすでに揃っていたんですけどね)。

結成40周年を超え制作された本作。僕自身は近作を熱心に聴いてきたリスナーではないし、いまだに80年代前半のイメージしかなかったわけですが、改めて聴いてみたらこれが素晴らしいのなんの。新作としては2015年の『BATTERING RAM』以来3年ぶりということになるのですが、サウンドそのものは王道のHR/HMであり、楽曲の質もなかなかのもの。ミディアムテンポで攻めるのかなと思っていたら、序盤から「Thunderbolt」「The Secret Of Flight」と疾走感の強い楽曲連発で、続く「Nasferatu (The Vampires Waltz)」もドラマチックなアレンジが施されており、聴き応えバッチリです。

かと思えば、再びアッパーな「They Played Rock And Roll」で往年のSAXON節を聴かせたり(しかもこの曲、タイトルからも想像できるようにMOTÖRHEADレミーのトリビュートソングで、曲中盤にはレミーの音声もフィーチャーされてます)、ヘヴィなシャッフルナンバー「Predator」でアクセントをつけたり、重々しいビートが心地よいミディアムチューン「Sons Of Odin」で自身の世界に引き込んだりと、想像以上にバラエティに富んだ楽曲が並びます。

後半も「Sniper」や“これぞSAXON!”と言いたくなる「Speed Merchants」などアップテンポの曲と、ヘヴィでリズミカルな「A Wizard's Tale」や泣きメロギターが気持ち良い「Roadie's Song」などが交互に並び、スルスル聴き進めることができます。

IRON MAIDENはひたすらプログレッシヴな方向に突き進み、DEF LEPPARDはポップかつ王道のブリティッシュロックを追求する中、SAXONはBLACK SABBATH(主に“DIOサバス”)やJUDAS PRIESTが作り上げた王道ブリティッシュHR/HMの世界を極めている。本作を聴いてそんな印象を受けました。

自分たちに何ができるか、何が一番得意なのか。それを「HR/HMとは?」という命題とともに真正面から向き合った結果が、この路線でありこのアルバムなんでしょね。新鮮さは皆無だけど、このバンドにそういったものを求める人はもはやいないでしょうし、むしろこのサウンドだからこそ信頼できる。40年も活動すれば“枯れ”や“いぶし銀”も自然と浮き出てきそうですが、そういったものを一切出さずに貫禄を感じさせるこのストロングスタイルは、もはや国宝級と呼んでいいのでは? 最高以外のナニモノでもない、唯一無二のヘヴィメタルです(本作は全英29位と、1986年の『ROCK THE NATION』以来32年ぶりに全英トップ40入りしたのも納得です)。



▼SAXON『THUNDERBOLT』
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投稿: 2018 03 09 12:00 午前 [2018年の作品, Saxon] | 固定リンク

2018年3月 1日 (木)

MICHAEL SCHENKER FEST『RESURRECTION』(2018)

さて、昨日からの続きです。

2016年のヨーロッパでのフェス出演、および日本での奇跡の来日公演でMICHAEL SCHENKER FESTというプロジェクトに手応えを感じたマイケル・シェンカーは、2017年に入ってから同メンツでのアルバム制作に乗り出します。確かに、それが実現したら最高だなと思うわけですよ。

しかも、ゲイリー・バーデン、グラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーというMSG(MICHAEL SCHENKER GROUPおよびMcAULEY SCHENKER GROUP)のシンガー3人だけでなく、現在マイケルが活動の主としているMICHAEL SCHENKER'S TEMPLE OF ROCKの現シンガーであるドゥギー・ホワイトまで加えた4人ボーカル編成でのアルバム作りですよ……正直、「うまくいくの、それ?」と不安に思ったわけですよ。

アルバムをほぼ完成させ、その流れでドゥギーを除くMICHAEL SCHENKER FESTの面々(2016年と同じ編成)は2017年10月、『LOUD PARK 17』2日目のヘッドライナーとして来日。そして年が明けた2018年2月末、ついにアルバムはリリースされました。

実はこのアルバム、雑誌のレビュー向けにひと足先に聴かせてもらってました。そこで僕は、短いながらも下記のようなテキストを用意しました。


マイケル・シェンカーが歴代ボーカリストと現行バンドのシンガーの計4名を迎え制作した異色のスタジオアルバム。完全オリジナル作品ながらも、“フェスト=祭典”というワードを含むプロジェクト名どおり彼の全キャリアが総括されたお祭り的内容は圧巻の一言。各シンガーの特性が見事に使い分けられている点もさすがだが、シェンカーの作曲能力やギタープレイがここにきて新たな黄金期に突入していることにも驚かされる。


いや、本当にこれ以上書きようがないくらい、良いんですよ。楽曲面も過去にシェンカーが関わってきたバンドを総括するかのようであり、それでいて今のTEMPLE OF ROCKにも匹敵する良質のHR/HMが展開されている。曲によって4人のシンガーがパートごとに歌い分けていたり、あるいは1曲まるまる歌っていたり、あるいはあるいは豪華な面々によるバッキングコーラスがあったりと。これ、世が世なら“マイケル・シェンカー版HEAR 'N AID”として機能してたんじゃないかな。そう思えるぐらい、夢の競演であり、サプライズ感満載の1枚なんです。

しかも、シェンカーのギタープレイも冴えまくっている。昨年秋の段階ではそこまで彼の近況に明るくなかった僕ですが、あれから数ヶ月でかなり勉強しました。過去作はもちろんのこと、近年の作品も聴き漁り、見事にハマってしまいました。だからこそ、このタイミングにこんな豪華な布陣を迎え、彼のキャリア中でもトップクラスの作品を生み出すことができて、なんとも幸せなことじゃないですか……今がベスト、本当にそのとおりだと思います。

過去にマイケル・シェンカーの楽曲やアルバム、プレイに心を動かされたことのある人なら、間違いなくピンとくる1枚。それがこの『RESURRECTION』というアルバムだと断言できます。いやあ、年始早々に最高なアルバムに出会えた僕も、本当に幸せな気分でいっぱいです。



▼MICHAEL SCHENKER FEST『RESURRECTION』
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投稿: 2018 03 01 12:00 午前 [2018年の作品, Graham Bonnet, McAuley Schenker Group, Michael Schenker, Michael Schenker Fest, Michael Schenker Group] | 固定リンク

2018年2月 6日 (火)

CANE HILL『TOO FAR GONE』(2018)

アメリカ・ルイジアナ州ニューオリンズ出身の4人組メタルコアバンド、CANE HILLの2ndアルバム。デビューアルバム『SMILE』(2016年)発表後はBULLET FOR MY VALENTINEASKING ALEXANDRIA、ATREYUなどのヘッドラインツアーでサポートアクトを務めたほか、『VANS WARPED TOUR』に参加して実力/知名度を高めていったようです。

人気インディーレーベル「Rise Records」から発表された本作は、基本的に前作の延長線上にある内容ですが、激しさはそのままに、よりキャッチーさが増したように感じられます。

ミドルテンポ中心でグルーヴィーな作風は90年代後半以降のヘヴィロックからの影響が強く感じられるし、なおかつALICE IN CHAINSSTONE TEMPLE PILOTSあたりのグランジバンドが持っていた危うさや、カオティックハードコアバンドらしい狂気性も備えている。ハーモニーのかまし方こそ90年代後半以降のバンドっぽいですが、僕はそこになんとなく「グランジの突然変異」的な色合いを感じました。

でもね、今AICやSTPの名前を挙げてみたものの、実は具体的に「このバンドっぽい」とか「誰それのパクリ」みたいな明確さが見えてこないのも、実はこのバンドの特徴なんじゃないかと思っていて。確かにKORNTOOLなど90年代後半のシーンを席巻したバンドたちからの影響は、テイストとしていたるところから感じられるのだけど、直接的に「ここが誰っぽい!」という表現は少なく、そこが現代的な味付けで上手にミックスされているからこそ、「CANE HILLらしさ」が確立できているのではないでしょうか。

だから、もし1998年や2001年にこのバンドと出会っていたとしたら、「めっちゃ新しい音のバンドが出てきた!」と大喜びして聴きまくっていたんじゃないかな。

と同時に、現時点において「CANE HILLらしさ」はできているものの、「他のバンドとはここが違う!」という絶対的な個性がまだ見つけられていないという現実もあるわけで。同系統のサウンドを持つバンドたちと比べたら頭ひとつ抜きん出た印象はあるものの、そこからさらに上に行くにはそういった個性を見つけることがこのバンドには必要なんじゃないか、と思いました。

そのためには、まずは多くの人にもっと知ってもらうこと、聴いてもらうこと、観てもらうことが急務かな。本当は今年日本で初開催が決まった『VANS WARPED TOUR』に出演するといいんじゃないかと思うんですよね。

まあ個人的には、不思議とクセになる1枚なので、これからも頻繁に聴くことになると思います。



▼CANE HILL『TOO FAR GONE』
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投稿: 2018 02 06 12:00 午前 [2018年の作品, Cane Hill] | 固定リンク

2018年2月 5日 (月)

OF MICE & MEN『DEFY』(2018)

カリフォルニアのオレンジ・カウンティ出身のメタルコアバンド、OF MICE & MEN通算5作目のオリジナルアルバム。

前々作『RESTORING FORCE』(2014年)が全米4位、前作『COLD WORLD』(2016年)が全米20位とそれなりに大きな成功を収めていた彼らでしたが、アルバム発表から数ヶ月後にフロントマンのオースティン・カーライルが脱退。ATTACK ATTACK!時代から声や風貌に色気のあるフロントマンだっただけに、彼の脱退はバンドにとってかなりの痛手だったはずです。きっと新たなフロントマンを迎えることも考えたことでしょう。しかしバンドはアーロン・ポーリー(B, Vo)がリードボーカルを兼任する形で、残された4人で活動を継続。前作から1年4ヶ月というハイペースで新作を完成させました。

もともとアーロン自身、OF MICE & MEN加入以前はJAMIE'S ELSEWHEREというポストハードコアバンドでボーカリストとして活躍していたので、この兼任にはなんの問題もないはず。事実、オースティン脱退後も4人で『COLD WORLD』を携えたツアーを行っていたのですから。

なのに……なんでしょう、この至るところから感じるこの不思議な感覚は。

アルバムのプロデューサーは過去2作を手がけたデヴィッド・ベンデス(BEARTOOTH、coldrain、Crossfaith、WE CAME AS ROMANCEなど)から替わり、大御所ハワード・ベンソン(HOOBASTANKMY CHEICAL ROMANCESEPULTURAなど)が担当。適度にヘヴィで、スクリームを多用しつつも歌メロがキャッチーでしっかり作り込まれているメタルコア路線は過去2作から引き継がれており、ボーカルが変わったことで受ける違和感はほとんどないはずです。

アッパーな曲もミドルテンポのヘヴィな楽曲も、ひたすら聴きやすいしライブ映えするものばかり。PINK FLOYDのカバー「Money」も原曲まんまなのですが、ヘヴィな音像で表現することで他のオリジナル曲の中に混ざってもしっかり馴染んでいます。例えば、国内のラウドロックと呼ばれるカテゴリーのバンドが好きなリスナーなら間違いなく気に入る1枚でしょう。

だけど、上に書いたとおり、従来のファンだったらちょっとした「あれっ?」を感じるかもしれません。アーロンのクリーントーンも決して悪いわけじゃない。メタルコアとしては十分に魅力的なんです。でも、オースティンという絶対的な前任者と比較してしまうと若干劣る……いや、劣ってはいないですね。なんていうか、味気ないんですよね。それが、最初に書いた“色気”があるか/ないかの違いなのかもしれません。

アルバムとしては非常に優れた内容ですし、これはこれで高評価に値する作品だと思います。が、自分がこのバンドのどこに魅力を見出していたか?と考えると……ね? だから、現編成に対する正当な評価はこの次のアルバムが出るまで持ち越しかな。もう1枚聴けば、本作に対して感じた「あれっ?」が消え去ると信じています。



▼OF MICE & MEN『DEFY』
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投稿: 2018 02 05 12:00 午前 [2018年の作品, Of Mice & Men] | 固定リンク

2018年2月 4日 (日)

BLACK VEIL BRIDES『VALE』(2018)

セルフタイトル作『BLACK VEIL BRIDES』(2014年)から3年3ヶ月ぶりとなる、BLACK VEIL BRIDES通算5作のオリジナルアルバム。2010年のデビュー以来、ほぼ1〜2年間隔でアルバムを量産し続けてきた彼らですが、今回は意外と間が空いたなという印象。とはいえ、その間にフロントマンのアンディ・ビアサックがANDY BLACK名義での初ソロ作『THE SHADOW SIDE』(2016年)を発表したりサマソニで来日したりしてたので、アンディ自身はかなり働いてたわけです。

勝負作となった前作『BLACK VEIL BRIDES』はかなりヘヴィな仕上がりで、個人的にもお気に入りの1枚だったのですが、国内盤がリリースされなかったためここ日本では一部で地味な盛り上がりをしたのみ。結局来日公演も実現しなかったんじゃないかな。思えば初来日公演が東日本大震災で中止になったりと、ここ日本では踏んだり蹴ったりのイメージが強いバンドですが、だからこそもうちょっと丁寧に応援してあげてほしい気がします。

ですが、今作も今のところ国内盤リリースの予定なし。そういえばANDY BLACKのアルバムも国内盤未発売でしたもんね。だったらということで、ここでしっかり紹介しておきたいと思います。

デビュー時の、初期MOTLEY CRUEを彷彿とさせるヴィジュアルとゴス/メタルコアの影響下にあるサウンドから徐々に正統派HR/HM路線へと移行していったBVBですが、本作はハードなギターリフを取り入れつつもボーカルラインは非常にポップというバランス感に優れた楽曲集に仕上げられています。イメージ的にはAVENGED SEVENFOLD(A7X)に近いのかな。あそこまでメタリックで大作路線ではないですが、聴きやすさ・とっつきやすさという点においては共通するものが多いと思います。これが現代的なアメリカンHR/HMのスタンダードということなんでしょうかね。

もともとアンディのキーがそこまで高くはないので、ロー&ミドルを軸にした歌メロのおかげでどうしてもメタルっぽくは聞こえなかったのですが、今作に関してはそこにポップ&キャッチーさが強まったことでより親しみやすさが増した気がします。ギターリフや全体の音像こそHR/HM的ではあるものの、ここ日本だったらJ-POPやアニソンの範疇にも収まってしまうのではないか、というくらいキャッチー。ゴリゴリのメタルはちょっと……という人にもオススメできる1枚だと思います。

先にA7Xほど大作主義ではないと書きましたが、そんな本作にも1曲だけ、8分半におよぶドラマチックな大作「Dead Man Walking (Overture II)」が収録されています。この曲もヘヴィメタル的というよりはアニソン的なシンフォニックさに近いイメージも。適度なゴシックテイストやハードさを取り入れつつも、根がポップな人たちなのかもしれないですね。

ANDY BLACKのアルバムよりは激しく、かといって前作よりはポップ。過去の作品と比較するなら、3枚目の『WRETCHED AND DIVINE: THE STORY OF THE WILD ONES』(2013年)がもっとも近いかもしれません。なので、同作がお気に入りという人には入っていきやすいでしょうし、前作みたいなヘヴィ路線でハマった人にはちょっとヤワに感じられる1枚かもしれません。バランス取るのって本当に難しいですね。

さて、ここまでキャッチーなアルバムを作ったのですから、あとは来日に期待したいところ。国内盤は出ていないものの、ANDY BLACKのときみたいにサマソニやラウパーなどフェスでの来日に期待しておきましょう。



▼BLACK VEIL BRIDES『VALE』
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投稿: 2018 02 04 12:00 午前 [2018年の作品, Black Veil Brides] | 固定リンク

2018年1月31日 (水)

MARMOZETS『KNOWING WHAT YOU KNOW NOW』(2018)

紅一点ベッカ・マッキンタイア(Vo)を擁するイギリスの5人組バンド、MARMOZETSの2ndアルバム。前作『THE WEIRD AND WONDERFUL MARMOZETS』(2014年/日本盤は2015年7月)は輸入盤がリリースされた2014年9月からしばらくして手に入れており、非常に愛聴した1枚でした。ここ日本にも2015年夏に『SUMMER SONIC』で初来日したのを機に、それなりに注目されたような印象があります。

そんな彼らの約3年ぶりとなる新作。前作はハードさの中にもキャッチーさ、ポップさが光る絶妙なバランス感で成り立っていましたが、本作はハードさを少しだけ抑えめにし、ポップさキャッチーさをより強めた、非常に聴きやすい作風が極まっています。

それはオープニングトラック「Play」を聴けば一耳瞭然で、サウンドの硬さはそのままに、スクリームを排除したベッカのメロディアスなボーカルがより前面に打ち出されている印象が強まったかなと。続く「Habit」ではダークさを残しつつもそこに優しさが加わり、バンドとしての成長が強く伺えるアレンジを聴かせてくれます。続く「Meant To Be」「Major System Error」もハイトーンを活かしたメロディワークが冴えているし、「Insomnia」には90年代ブリットロックを思い出させる香りが漂ってきます。

もちろんスクリームがゼロになったわけではありません。「Lost In Translation」では効果的に取り入れられていますしね。ただ、曲調やアレンジの効果なのか、スクリームが入っても前作より上品に聴こえてくるのだから不思議でなりません。

前作を初めて聴いたとき、オープニングトラック「Born Young And Free」のインパクトが強く、全体的にハードでエモなサウンドが心地よく感じられたこともあってお気に入りとなったのですが、今回は良い意味でインディー臭が薄らいでいるんですよね。例えば、サウンドの質感やプロダクションひとつ取り上げても、前作にあった(良い意味での)チープさが今作では排除され、完全にメジャー感が強まっている。もっといえば、アルバムジャケットにもそういった上昇志向が現れているし。もしかしたらリスナーがそこを成長と受け取るか、あるいはセルアウトしたと拒絶するかで、本作に対する評価は二分するかもしれませんね。

もともと魅力的なフロントウーマンを擁するバンドだけに、この進化は個人的には大歓迎。もっと幅広く受け入れられるべきバンドですし、なんなら“新世代のPARAMORE”くらいになってもおかしくない存在だと思っているので、ここでさらにひと化けしてほしいところです。



▼MARMOZETS『KNOWING WHAT YOU KNOW NOW』
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投稿: 2018 01 31 12:00 午前 [2018年の作品, Marmozets] | 固定リンク

2018年1月30日 (火)

JOE SATRIANI『WHAT HAPPENS NEXT』(2018)

本サイトでは滅多にピックアップすることのないインストゥルメンタルアルバムですが、これは非常に楽しい1枚だったのでぜひ紹介したいと思い書いてみることにしました。

ジョー・サトリアーニの通算16枚目となるオリジナルアルバム。いまだに『SURFING WITH THE ALIEN』(1987年)や『FLYING IN A BLUE DREAM』(1989年)の印象で語ってしまいがちのサトリアーニ。これらの作品、すでに30年も前のものなんですよね。もちろん、上記の2枚以降も10数枚ものスタジオ作品を発表してますが、歌モノロック&HR/HMリスナーにはどうしても敬遠しまいがちな存在でもあるわけで。なので、そういう自分にとってのサトリアーニはサミー・ヘイガー(Vo)&マイケル・アンソニー(B)の元VAN HALEN組、RED HOT CHILI PEPPERSのチャド・スミス(Dr)と組んだCHICKENFOOTのギタリストっていう認識が強い人かもしれません。

が、たまたま手にした今回のアルバム『WHAT HAPPENS NEXT』がHR/HMファンの耳にも親しみやすい仕上がりだったので、驚いたわけですよ。

今回のアルバムは元DEEP PURPLEのグレン・ヒューズ(B)、CHICKENFOOTでの盟友チャド・スミス(Dr)という豪華なトリオ編成で制作した意欲作。もちろんグレンは一切歌うことなく、ベースプレイヤーに徹しています。前作、前々作あたりではクリス・チェイニー(B)&ヴィニー・カリウタ(Dr)がリズム隊として参加していましたが、本作は全編サトリアーニ/グレン/チャドの3人でレコーディングに臨んだこともあって、全体的にハードエッジな1枚に仕上げられています。また、プロデューサーにハードロック畑のマイク・フレイザー(AC/DCAEROSMITHMETALLICAなど)を迎えていることも、このへんに大きく影響を与えているのかもしれません。

とにかく1曲目「Energy」の飛ばしっぷりから気持ち良いったらありゃしない。サトリアーニらしいリフ&ソロワークはもちろんのこと、ダイナミックなアンサンブルを生み出しているリズム隊のプレイも圧巻。続く「Catbot」ではエフェクトのかかったベースリフの上を、同じく機械的なエフェクトがかかったギターがのたうちまわるし、クリーントーンのカッティングが気持ち良く加わる。序盤にハードロック色強めの楽曲が並ぶからこそ、5曲目「Righteous」のメロウ&ポップさがより際立つし、かと思えばソウルフルかつフュージョンチックな「Smooth Soul」みたいな曲もこの構成なら心地よく楽しめるわけです。

後半はハードブギーテイストの「Headrush」から始まるものの、ファンキーさも感じられる落ち着いたトーンの「Looper」や「What Happens Next」、ダイナミックなギタープレイ&バンドアンサンブルが存分に味わえる「Invisible」、ラストを飾るにふさわしいミディアムスロー「Forever And Ever」と、前半と比べればトーンダウンは否めませんが、決して悪いわけじゃない。むしろメリハリという意味では、前半戦の攻めがあるからこそ後半の「曲調は落ち着いているけどプレイは派手」な楽曲も素直に受け入れられるというもの。しかも全編ギターが歌いまくっているから、単純に楽しく聴けるんですよね。これがメロディ無視で弾きまくりなギタープレイヤーだったら、いくらハード&ヘヴィな作風でもここまで楽しめなかったと思います。

年間ベストに挙げるような作品ではないかもしれないけど、スルメ的アルバムとして長きにわたり愛聴できる1枚になりそうです。意外な収穫でした。



▼JOE SATRIANI『WHAT HAPPENS NEXT』
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投稿: 2018 01 30 12:00 午前 [2018年の作品, Joe Satriani, Red Hot Chili Peppers] | 固定リンク

2018年1月29日 (月)

PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONS『THE AGE OF ABSURDITY』(2018)

2015年末のレミー(Vo, B)急逝を受け活動を終了させたMOTÖRHEAD。そのMOTÖRHEADにおいて、“ファスト”・エディ・クラーク(G)の後釜としてバンドに加わり、活動終了までバンドのギタリストとして在籍したフィル・キャンベルがMOTÖRHEAD後に結成したのがこのPHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONSというバンドです。

同バンドは活動終了から約半年後の2016年8月、ドイツで行われたフェス『WACKEN OPEN AIR』にて本格始動。同年11月にオリジナル曲で構成されたEP『PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONS』を発表し、2017年6月にはMOTÖRHEADやRAMONESBLACK SABBATHのカバーを含むライブEP『LIVE AT SOLOTHURN』をリリースしています。

そして2018年1月、ついに発表された1stフルアルバム『THE AGE OF ABSURDITY』では、MOTÖRHEADで養われた爆走ロックンロール魂はそのままに、さらに幅を広げたロックンロール/ハードロックを存分に堪能することができます。

メンバーはフィル(G)のほか、トッド(G)、デイン(Dr)、タイラ(B)というフィル自身の実子3人に加え、ニール・スター(Vo)という5人編成。“これぞMOTÖRHEAD!”と叫びたくなる黄金ギターリフからスタートし、疾走感あふれるバンドサウンドを聴かせつつもサビではグルーヴィーなミドルテンポへとテンポチェンジする巧みなアレンジがたまらない「Ringleader」1曲で、このアルバムの掴みはOK。以降も「Freak Show」や「Gypsy Kiss」「Dropping The Needle」など、MOTÖRHEADのテイストがふんだんに散りばめられたハードロックが多数登場します。

もちろん、それだけじゃないのがこのバンドの特徴でもあり、グルーヴィーなモダンヘヴィネスナンバー「Skin And Bones」、いかにもなバッドボーイズロック「Welcome To Hell」、ヘヴィブルースと呼びたくなる「Dark Days」、男臭い哀愁味すら感じさせるミディアムスローの「Into The Dark」など、本当に聴きどころの多い1枚に仕上げられています。MOTÖRHEADフリークはもちろんのこと、フィルがゲスト参加したLAのハードロックバンドBUDDERSIDEをはじめ、BUCKCHERRYなど硬派なハードロックバンドが好きなリスナーにも存分にアピールする内容ではないでしょうか。特にこのバンドの場合、シンガーのニールが聴かせる歌声がレミーっぽくないのが良い方向に作用しており、いい意味でMOTÖRHEADに一線を引くことができたと個人的には感じています。

ちなみに、日本盤の初回限定盤には先に紹介したライブEP『LIVE AT SOLOTHURN』同梱の2枚組仕様も用意。AppleMusicでは2作品別々に配信されているので、CD購入を考えている人は通常盤に500円程度プラスしてこの初回盤を手に入れることをオススメします。



▼PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONS『THE AGE OF ABSURDITY』
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投稿: 2018 01 29 12:00 午前 [2018年の作品, Motorhead, Phil Campbell And The Bastard Sons] | 固定リンク

2018年1月28日 (日)

MACHINE HEAD『CATHARSIS』(2018)

2014年11月発売の『BLOODSTONE & DIAMONDS』から3年2ヶ月ぶりとなる、MACHINE HEAD通算9枚目のスタジオアルバム。超大作主義から若干コンパクトになり始めた前作を踏襲した、よりコンパクトでキャッチーな楽曲が並ぶ1枚で、全15曲74分というボリューム満点の内容に仕上がっています。

2016年に配信リリースされた新曲「Is There Anybody Out There?」(本作には未収録)を聴いたとき、非常にキャッチーなメロディとどこかメタルコア以降を感じさせるアレンジに「おおっ!」と驚くと同時に「……大丈夫だろうか?」と若干不安を覚えたのが昨日のことのように思い出されますが、あの前振りがあったおかげで僕自身は本作にスッと入っていけた気がします。

それまでの彼らが得意とした複雑なアレンジを持つスラッシーな大作は皆無。全体的に4〜5分台のミドルヘヴィナンバーが中心で、その中にモダンでどこかゴシック調な「Catharsis」みたいな楽曲が混ざっているのだから、さあ大変。そりゃあ皆さん問題作だのなんだのと騒ぎ立てるわけです。

が、そもそもこのバンドってそういう“血迷い”をたまに見せるから面白かったんじゃなかったでしたっけ? いつから「正統的メタル/ラウドの後継者」になったんでしたっけ?(いや、なってないってば)

僕、彼らの作品の中で特に気に入っているのが1stの『BURN MY EYES』(1994年)3rd『THE BURNING RED』(1999年)、そして6th『THE BLACKENING』(2007年)なんですね。まぁ1枚目と3枚目は共感してもらえる人も多いかもしれませんが、3rdをお気に入りに挙げるMACHINE HEADファンは少ないんじゃないでしょうか。でも、それくらいこのバンドの本質の一部がここに含まれていると思っているんです。

ロブ・フリン(Vo, G)って実は何かのオリジネーターというよりも、ひとつ題材を与えたらそこから“それっぽい”ものを作り上げるのが上手な人なんじゃないかな、と個人的には思っていて。だからPANTERAだ、HELMETだと世間が騒いでいた時期に『BURN MY EYES』を作り上げ、LIMP BIZKITだ、KORNだ、DEFTONESだと世間が騒いでいた時期に『THE BURNING RED』みたいな作品を何の迷いもなく完成させてしまう。なんなら、ファッションもそっちに寄せちゃうんですから……好きなんですよ、“そういう”ものが。

ここ最近は大きく道を踏み外すことがなかったロブですが、前作でのコンパクト化が世間的に受け入れられたこと思いついたのか、それとも「ずっとやってみたかったんだよね」と秘めてた思いが爆発したのか、再び振り切った1枚を作っちゃったわけです。お茶目な奴め。

確かに曲によっては“MACHINE HEAD以降”のバンドたちの匂いがプンプンするし、「あれ、これってあのバンドのあのアルバムに入ってなかったっけ?」と思ってしまっても不思議じゃないタイプの楽曲も存在します。けど、それすら「しょーがねーなぁ(苦笑)」と許せてしまう自分もいるわけでして。あのね、そこまで悪いアルバムじゃないですよ? 賛否両論って言われる「Catharsis」なんて僕、このアルバムのなかで1、2を争うぐらいに好きだし、ハンドクラップから始まるアップチューン「Kaleidoscope」も、コリィ・テイラーが歌っても不思議じゃないメロディアスな「Triple Beam」も、序盤のアコースティックパートに度肝を抜かれるアメリカンロック調の「Bastards」、アコギ主体のバラード「Behind A Mask」、ゴシック調のスローナンバー「Eulogy」もみんな嫌いじゃない。むしろ好意的に受け取っています。

それ以外のヘヴィナンバーも決して悪くないしね。上に挙げた異色作のほうにどうしても目が耳が行きがちだから、全体に対する正統な判断が下しにくいのかもしれないけど、この振り切り方を僕は全面的に支持したいと思います。むしろ、こういった新たな側面がライブで過去の楽曲と混ざり合ったとき、どう聴こえるのかが楽しみ。7月の来日公演、ぜひ足を運んで確かめたいと思います。



▼MACHINE HEAD『CATHARSIS』
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投稿: 2018 01 28 12:00 午前 [2018年の作品, Machine Head] | 固定リンク

2018年1月27日 (土)

LOUDNESS『RISE TO GLORY -8118-』(2018)

以前OUTRAGEの新作『Raging Out』(2017年)の際にも書きましたが、更新再開後の当サイトでは「新譜、旧譜にかかわらず海外作品のみを取り上げる」というポリシーで続けてきましたが、再びそういった前提を破ってでも書きたい国内メタル作品が登場したので紹介したいと思います。

昨日1月26日に世界同時リリースとなったLOUDNESSのニューアルバム『RISE TO GLORY -8118-』は、2014年発売の『THE SUN WILL RISE AGAIN 〜撃魂霊刀』以来となるオリジナルアルバム。通算27枚目となるのでしょうか……デビューから37年でこの枚数はかなりのものがあると思います。にしても、オリジナルメンバーで再始動した2001年以降、1〜2年に1枚は新作を発表してきた彼らにしては4年も空いたのは意外でしたね(とはいえ、2016年にはセルフカバーアルバム『SAMSARA FLIGHT 〜輪廻飛翔〜』を発表しており、メンバーは同作をオリジナルアルバムという感覚で制作したと発言しているので、2年ぶりの新作くらいのつもりなんでしょうね)。

過去にも海外でアルバムを発表してきたLOUDNESSですが、実は世界同時リリースというのはこれが初めてなんじゃないでしょうか。まあそれぐらい、現在の海外を含むメタルシーンがLOUDNESSの新しい音を求めているという表れかもしれません。

本作ですが、リリースよりずいぶん前に聴く機会を得たのですが……本当に素晴らしいんですよ。『THE SUN WILL RISE AGAIN 〜撃魂霊刀』の時点でかなり“戻って”きた感はあったのですが、本作はその比じゃないくらい“戻って”きています。ぶっちゃけ、『SAMSARA FLIGHT 〜輪廻飛翔〜』を制作したのも大きく影響していると思います。同作からあまり感覚を空けることなく、よい流れで今作の制作に入っていったのも大きかったんでしょうね。

オープニングのインスト「8118」を経てスタートする「Soul on Fire」の“往年のLOUDNESS”感。そして、ゼロ年代以降のモダンメタル/ハードコアなテイストを含みつつも基本的には“往年のLOUDNESS”な「I'm Still Alive」、80年代的だけど現代的なテイストも含まれているハードロック「Go for Broke」など、とにかく我々がイメージする“あのLOUDNESS”感満載なのです。しかも、単なる焼き直しやセルフパロディでは終わらず、しっかりゼロ年代、テン年代の彼らをそのまま引き継ぎつつ原点を見つめ直している印象を受けるのですから、そりゃあ悪いわけがない。

アルバム全体はヘヴィメタルというよりもハードロックという印象で、そういう意味では全米進出前の4枚(『THE BIRTHDAY EVE 〜誕生前夜〜』『DEVIL SOLDIER 〜戦慄の奇蹟〜』『THE LAW OF DEVIL'S LAND 〜魔界典章〜』『DISILLUSION 〜撃剣霊化〜』)をイメージする作品かもしれません。だが、それが良いんですよ。もちろん『THUNDER IN THE EAST』(1985年)以降のテイストも含まれていますし、先にも述べたように2000年以降の彼らの持ち味も随所に散りばめられています。要は、メンバー自身がLOUDNESSという存在をより客観的に見つめることができた、だからこその1枚なのかもしれませんね。

ヘヴィバラード「Untill I See the Light」もミドルヘヴィナンバー「The Voice」もツービート炸裂のハードコアチューン「Massive Tornado」も、そして初期の彼らを彷彿とさせつつも現代的なギタープレイが映えるインスト「Kama Sutra」も、オープニングのタッピングプレイでニンマリしてしまうファストチューン「Rise to Glory」も、ザクザクしたギターリフがいかにも彼ららしい「Why and for Whom」も、オープニングのリフを聴いた瞬間に“そうそう、これこれ!”と唸ってしまう「No Limits」も、ヘヴィながらも泣きメロが気持ち良いバラード「Rain」も、全部文句なし。これを待っていたんですよ、僕たちは……そう声高に叫びたくなるくらいの1枚。メロディが現代的になり、その部分は80年代初頭の“いかにも”とは違うかもしれないけど、そこに関しては僕は進化と真正面から捉えることにしています。

最近LOUDNESSから離れていたオッさん世代にこそ聴いてもらいたいアルバムだと思います。ぜひセルフカバーアルバム『SAMSARA FLIGHT 〜輪廻飛翔〜』と併せてチェックしてもらいたい、2018年の日本のHR/HMシーンを代表する1枚です。



▼LOUDNESS『RISE TO GLORY -8118-』
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投稿: 2018 01 27 12:00 午前 [2018年の作品, Loudness] | 固定リンク

2018年1月26日 (金)

FALL OUT BOY『M A N I A』(2018)

活動再開以降、『SAVE ROCK AND ROLL』(2013年)、『AMERICAN BEAUTY / AMERICAN PSYCHO』(2015年)と2作連続で全米1位を獲得し、第二の黄金期に突入した感の強いFALL OUT BOY。その彼らが当初の予定から4ヶ月遅れて、通算7作目のスタジオアルバム『M A N I A』をリリースしました。

活動休止前の『FOLIE A DEUX』(2008年)の時点でその片鱗はあったとはいえ、『SAVE ROCK AND ROLL』では従来のエモーショナルなバンドサウンドをよりモダンな方向に昇華……サンプリングやエレクトロテイストを積極的に取り入れたアレンジで、初期のポップパンクスタイルを愛好していたリスナーを驚かせました。続く『AMERICAN BEAUTY / AMERICAN PSYCHO』ではその強度をさらに高め、ロックバンドのアルバムというよりも幅広い意味での“ロック”を鳴らすバンドの作品集としては最高峰の1枚になったのではないかと思っています。

そんな力作のあとですから、そりゃあバンド側も新作制作には慎重になるわけですよね。昨年春以降からシングルとして少しずつ新曲を切っていき、リスナーからの反響を伺う。果たして自分たちがやろうとしていることは今でも有効なのかどうか、それを調べるかのように。

今回の『M A N I A』、まず驚いたのはフィジカル(CD)版とデジタル版とで曲順が異なること。僕はストリーミングなどで先に公開済みの数曲を耳にしていたし、そこでアルバムの曲順もわかってはいたのですが、実際に発売されたCDはこれとはまったく異なるものでした。なので、ここではフィジカル版の曲順で聴いた感想を述べておきます。

本作の中でも比較的パワフルな部類の「Stay Frosty Royal Milk Tea」からスタートする形にしたのは正解だと思いました。デジタル版の「Young And Menace」は前作までの路線をさらに進化させた究極形で、インパクトという点ではこちらのほうが良いのかもしれません。が、ロックバンドとしてのこだわりなのでしょうか。フィジカルを買う=ファンということを意識した「Stay Frosty Royal Milk Tea」は、なるほどと頷けるものだと思うのです。

デジタル版だと序盤に公開済みの楽曲が多く並ぶ構成で、こういった曲順はライトユーザーを掴む上では非常にわかりやすいものだと思いました。で、フィジカル版は2曲目にアッパーな「The Last Of The Real Ones」を筆頭に、「Hold Me Tight Or Don't」「Wilson (Expensive Mistake)」と既発曲でたたみかける。この曲順も悪くない。むしろ、こっちのほうが従来のロックバンドの新作っぽくて僕は好きです。

フィジカル版では中盤にディープなゴスペルロック「Church」、R&B色が増したバラード「Heaven's Gate」でじっくり聴かせたあとに、既存曲と新曲を入れ子に並べ、ラストはデジタル版同様に「Bishops Knife Trick」で締めくくる。全10曲35分というトータルランニングも程よく、心地よく楽しめる1枚に仕上げられていると思います。

これはもう完全に好みでしょうけど、僕はフィジカル版のほうが「ロックバンドの新作」を聴いている印象が強いかな。SpotifyやAppleMusicでのデジタル版のほうも悪くないし、手軽に楽しむ分にはこっちでもいいけど。こうして聴き比べると、曲順って本当に大事なんだなと実感させられました。

さて、この試みは吉と出るのか凶と出るのか。気になるところです。



▼FALL OUT BOY『M A N I A』
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投稿: 2018 01 26 12:00 午前 [2018年の作品, Fall Out Boy] | 固定リンク

2018年1月25日 (木)

STARCRAWLER『STARCRAWLER』(2018)

2018年最注目ロックバンドのひとつは、間違いなくこのSTARCRAWLERではないでしょうか。

名門レーベルRough Trade Recordsと契約したことで一気に注目を集めることになったLA出身の4人組は、僕も昨年秋にレーベルから送られてきた資料を目にし、そして昨年春に発売されていたEP『ANTS』を聴いて、より興味を持つようになりました。

音もさることながら、まず気になるのがそのヴィジュアル。ボーカルのアロウ・デ・ワイルドのルックスや佇まい、ロックが好きな者なら惹きつけられないわけがない。「Ants」(アルバム未収録。国内盤にはボーナストラックとして収録)のMVは何度観たことか。パンクロックの衝動性と、どこかシアトリカルな要素を持ち合わせたそのステージングは絶対的なものがあり、これは今すぐにでも観たい!と思わせるものでした。

そうそう、「Used To Know」のセッション映像も最高なんですよ。これ、「Ants」と同じ人ですよ? 最高じゃないですか?

そうこうしているうちに、FOO FIGHTERSが自身主催の大型フェスにアルバムデビュー前の彼らを呼び入れたりして、知名度は一気に加速。ここ日本でも3月に待望の初来日が控える中、デビューアルバムがリリースされました。

アルバムをプロデュースしたのは、かのライアン・アダムス。悪いわけがない。アルバムに先駆けて公開された「I Love LA」は、あのバカげたMV含め最高だったので、当然過剰に期待していたわけですが、全10曲27分があっという間でした。録音のせいもあって音も骨太になり、ボーカルのアクの強さに負けてない。ロックもパンクもあるし、ポップもサイケもブルースもある。その時代、その時代で先人たちが作り上げてきたものを全部ミキサーに入れて粉々にして混ぜて、それをまたいびつな形で固めてできたのがこの音……そんな“完成しきってない”感がいかにもデビューアルバムらしくて、聴いていて本当にワクワクしてくるんです。

とにかく、曲がキャッチーなんですよね。シンプルなバンドサウンドはパンクロック的でもあるし、ゼロ年代のロックンロールリバイバル的でもある。それをあのヴィジュアルで表現しているんですから……そこが非常にLA的とも受け取れるし、ある種の突然変異とも受け取れる。まあ何はともあれ、ハタチ前後の若い世代が今もこうやってカッコいいロックンロールを鳴らしてくれることに、オッサン世代は素直に嬉しいわけです。

こんなにワクワクしたの、THE LIBERTINES以来? ARCTIC MONKEYS以来? もう覚えてないけど、少なくともこの10年くらいはなかったように思います。

ロックンロール、まだまだ捨てたもんじゃないよ。



▼STARCRAWLER『STARCRAWLER』
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投稿: 2018 01 25 12:00 午前 [2018年の作品, Starcrawler] | 固定リンク

2018年1月24日 (水)

BLACK LABEL SOCIETY『GRIMMEST HITS』(2018)

ザック・ワイルド(Vo, G)のメインバンド、BLACK LABEL SOCIETYの4年ぶり、通算10作目となるスタジオアルバム。前作『CATACOMBS OF THE BLACK VATICAN』(2014年)が全米5位という好成績を残し、ソロ名義では20年ぶりとなる『BOOKS OF SHADOWS II』(2016年)も全米18位を記録。昨年はオジー・オズボーンのツアーに参加して話題を集めるなど、この4年間はとにかく積極的に動いている印象でしたが、そんななか満を持して発表されたBLSの新作、これが非常に優れた作品なのです。

特に何が変わったということもなく、相変わらずヘヴィな曲はヘヴィでギター弾きまくり、サザンロックフィーリングを感じさせる緩い曲では枯れたプレイを聴かせるわけですが、なぜか本作はここ数作の中でも非常に充実度が高い印象を受けます。

まず、昨年のうちに先行公開された「Rooms Of Nightmares」のキャッチーさといったら。もちろん急にキャッチーになったわけではありません。これまでの彼らの楽曲はヘヴィな中にもしっかりキャッチーなメロディが存在しており、そこにザックのメロディメイカーとしての才能が感じられたわけですが、今回はその部分がより冴え渡っているというか、洗練されている気がするのです。

この「Rooms Of Nightmares」に限らず、アルバム冒頭を飾る「Trampled Down Below」にしろ、続く「Seasons Of Falter」「The Betrayal」にしろ、とにかく歌メロが親しみやすく耳に残りやすいものばかり。もちろん、サザンロックフィーリングの強いバラード「The Only Words」や「The Day That Heaven Had Gone Away」も素晴らしい仕上がりで、そういえばこの人オジーのところで「Mama I'm Coming Home」や「Road To Nowhere」を書いた人だった、ってことを思い出させてくれるぐらいのメロディセンスが発揮されているのです。

かと思えば、「A Love Unreal」のような曲では師匠のオジーの姿が重なるような歌声を聴かせてくれる(特にこの曲は、アレンジ自体がBLACK SABBATH的ですものね)。若干キーを上げてこれらの曲をオジーが歌ったら……なんてことも想像するわけですが、このローチューニングだからカッコいいわけであって、それもまた違う。そう考えると、やっぱりこれはザック自身が歌うために作られた楽曲群なんですよね。

ギターリフもソロも、相変わらずブっとい音で“らしさ”満点。過剰なプレイが遺憾なく反映されているにもかかわらず、どこか洗練された印象を受ける。その絶妙なバランス感が過去数作とは明らかに異なる。また、その内容もどこか集大成的でもある。久しぶりのソロアルバムでアク抜きできたのもあるでしょうし、久しぶりにオジーと共演したことも大きかったのかもしれない。『NO REST FOR THE WICKED』(1988年)でデビューして今年で30年、しかもBLSとしても10作目という節目のタイミングに、ザックはこのアルバムでひとつの結果を残すことができたのかもしれませんね。

これは本当に傑作です。いやはや、恐れ入りました。



▼BLACK LABEL SOCIETY『GRIMMEST HITS』
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投稿: 2018 01 24 12:00 午前 [2018年の作品, Black Label Society, Zakk Wylde] | 固定リンク

2018年1月23日 (火)

JOE PERRY『SWEETZERLAND MANIFESTO』(2018)

AEROSMITHのギタリスト、ジョー・ペリーが数日前にひっそりと新しいソロアルバムをリリースしていました。あれ、実は大々的に告知されていて、自分だけが知らなかったパターン?とも思ったのですが(昨年11月には告知されていたようですね)、国内盤の予定もなく……まったく気づいていませんでした。申し訳ない!

で、ジョーのソロですよ。彼はエアロに復帰して以降、2000年代半ばまでソロアルバムを作って来ませんでした。それ以前のJOE PERRY PROJECTはエアロを脱退したからこそ生まれた産物だったわけで、メインバンドがある以上はソロで何かをする必要性はなかったと。ところが、2000年代以降のジョーのソロ2作(2005年の『JOE PERRY』、2009年の『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』)には作り理由がちゃんとあった。『JOE PERRY』のときはエアロが無期限活動休止を発表したタイミング、『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』のときはエアロのアルバム『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』(2012年)の制作初期段階で、途中で頓挫してしまった時期にソロへと向かった。クリエイターとしての制作意欲の吐け口として、止むを得ず(かどうかはわかりませんが)再びソロへと向かっていったわけです。

事実、『JOE PERRY』は90年代以降のエアロらしさにジョーならではの渋みが加わった良作ですし、『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』は新たな才能(YouTubeで見つけた無名のシンガーを迎えて制作)から触発された初期衝動がにじみ出た力作でした。それぞれカラーが異なり、個人的にも楽しんで聴くことができたけど、エアロの色が散りばめられていることで「だったらエアロの新作が聴きたいよ……」と思ってしまったのも事実でした。

では、今回発表された9年ぶりのソロアルバムはどうでしょう? 実はこれ、めっちゃ肩の力が抜けているんですよ。バンドとしてのエアロは終わりが近づいている、音楽でたくさん稼げたし、納得のいく作品もたくさん作ってこられた、あとは余生を楽しむのみ……と思ったかどうかはわかりません。でも、数年前にジョーがステージで倒れて意識不明?なんて事故がありましたが、あれを思い浮かべると今回は純粋に好きな音楽を楽しもうという姿勢が感じられるのです。

全10曲中インストが2曲、ジョー自身がボーカルと務めるのが1曲。残り7曲はロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)、デヴィッド・ヨハンセン(NEW YORK DOLLS)、テリー・リードというロックファンなら誰もが知るレジェンドたちを迎えて制作しているのです。もちろん、悪いわけがない。基本的にはブルースをベースにしたロック/ハードロックで、エアロを彷彿とさせる曲もあるんだけど、以前のように「これ、エアロでやれよ!」的な“そのもの”ではなくてエアロのフレーバーを散りばめた楽曲をアクの強いフロントマンが歌ってるという印象にとどまっている。ああ、そうか。ジョー本人が歌ったりスティーヴン・タイラーを彷彿とさせるフロントマンが歌ったりするからいけなかったんだ。当たり前の話だけど。けどそれも、アリス・クーパーやジョニー・デップたちと始めたスーパーバンド、HOLLYWOOD VAMPIRESがあったからこそなんでしょうね。フロントに立つよりも、アクの強いシンガーの隣でこそ光ることを再確認できたのかもしれません。

ジョーのギターも非常にリラックスしたプレイを聴かせてくれているし、各ボーカリストに触発されて引っ張り出されたキレのあるフレーズも見受けられる。ぶっちゃけ、エアロの最新作『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』よりも良いんじゃないかと思うほど。いやあ、ジョーのソロアルバムでここまで興奮したの、久しぶり、いや、初めてかもしれない。

現在67歳。まだまだ最前線でやろうと思えばやれるし、若い才能をフックアップすることも可能でしょう。でも、エアロの近況もそうだけど、アーティストとしてはそろそろ“終活”の時期なのかな……もはや『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』レベルを保つことすら難しいのだったら、エアロのアルバムはもう無理に作らなくてもいいから、スティーヴンもジョーも自分の好きな音楽を、楽しみながら作ればいいと思うのです。その結果として本作が生まれたのだったら、僕はそれを素直に受け入れので。



▼JOE PERRY『SWEETZERLAND MANIFESTO』
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投稿: 2018 01 23 12:00 午前 [2018年の作品, Aerosmith, Cheap Trick, Joe Perry, New York Dolls] | 固定リンク

2018年1月17日 (水)

WANIMA『Everybody!!』(2018)

フルアルバムとしては前作『Are You Coming?』から2年2ヶ月ぶり、WANIMAにとってメジャーから初のオリジナルフルアルバム。

初の全国流通盤リリースとなった『Can Not Behaved!!』(2014年)からたった3年でアリーナ会場ワンマンライブやCM&ドラマタイアップ、紅白出場などを成し遂げ、気づけば国民的バンドの域に一歩近づいたWANIMA。この2年ぶりのフルアルバムは、そんな彼らの人気を決定づける最後の切り札といっていいでしょう。

わかりやすい言葉と表現を親しみやすいメロディと直情的なメロディックパンクで表現することは、ある時期から「ダサい」「カッコ悪い」という風潮があったし、今でも揶揄する層は一定数残っています。でも、それがなんだと言うの? ポジティブもネガティブもエロも下心も全部飲み込んで放たれるその歌詞は間違いなく“今、もっとも歌ってほしいこと”であり、そこには一切の嘘がない。10代のリスナーが彼らの音楽を素直に受け入れている事実は素直に嬉しいし、同時に本作を聴いて忘れそうになっていたあの頃をまた思い出せることにも感謝したいです。

本作を年始に発表したことで2018年のロックシーンが熱くなることを実感させてくれたWANIMAが、ここから何を見せてくれるのか楽しみでならない。ホント、サイコー!



▼WANIMA『Everybody!!』
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投稿: 2018 01 17 12:30 午後 [2018年の作品, WANIMA] | 固定リンク