カテゴリー「2018年の作品」の125件の記事

2020年9月10日 (木)

YUNGBLUD『21ST CENTURY LIABILITY』(2018)

2018年7月6日にリリースされたYUNGBLUDの1stアルバム。日本盤未発売。

YUNGBLUDはこの8月に23歳になったばかりの鬼才ドミニク・ハリソンによるプロジェクトで、“若き血”を意味するプロジェクト名のごとく血気盛んで反骨心にあふれる型破りなスタイルで、若年層を中心に支持を集めています。ヒップホップやダブステップ以降の(広意義での)ロックをベースにしたそのサウンドからは、POST MALONEやTHE 1975あたりとの共通点も見受けられ、この今ならではのミクスチャー感が強いテイストはポップフィールドでも十分に戦える仕上がりと言えるでしょう。

僕自身そこまで熱心リスナーというわけではありませんが、時折耳に飛び込んでくる楽曲の数々は40超えたオッサンの耳にも馴染みやすく、同時に刺激的なものでもあり、その流れでアルバムもチェックしていました。聴いて感じたのは、ケイティ・ペリーあたりが登場したときと同じような感触で、オルタナティブ感をしっかりアピールしながらもメインストリームでも受け入れられる、そんな「随所に大衆性の強いフックが仕掛けられた、オルタナティブ作品」だなと。

鳴らされている音そのものは、40代以上のリスナーが想像する“真っ当なロック”とは言い難いですし、ボーカルスタールもラップ以降のそれです。でも……例えばマシン・ガン・ケリー然り、先のPOST MALONEやTHE 1975しかり、実践していることの先鋭性は間違いなく“ロック”なんですよね。そういう概念的な“ロック”を忘れずに、2010年代的な音を提示してくれる。それが近年における“ロック”の解釈なのかもしれません。

あと、アルバム冒頭を飾る「Die For The Hype」を筆頭に、そのサウンドは“EDM以降”の低音の鳴りが特徴的で、可能な限り大音量で鳴らせば鳴らすほど、アルバムが持つ暴力性が増すというのも興味深いポイント。「Psychotic Kids」のようなドラムンベース調のミドルナンバーも、「I Love You, Will You Marry Me」のようなアップテンポのロックチューンも、「Kill Somebody」みたいなアコースティック主体の楽曲も、「21st Century Liability」みたいにラウド寄りのナンバーも、この“EDM以降”の質感で構築されているからこそアルバムの中でも浮くことなく統一感を持って楽しむことができる。このミクスチャー感、個人的には非常に好みでグッとくるものがあります。だからこそ、ホールジーやマシン・ガン・ケリー、マシュメロ、BRING ME THE HORIZONのような幅広いアーティストからラブコールを受けるんでしょうね。

このアルバムは1st EP『YUNGBLUD』(2018年)からの楽曲も含む、どちらかというと処女作といった1枚であり、以降に発表されているシングルなどを通じてドミニク・ハリソンの本性があらわになり、それが最初に爆発したのが昨年のEP『THE UNDERRATED YOUTH』かなと。なので、ヒップホップに苦手意識がある方はまず『THE UNDERRATED YOUTH』から聴いてみるといいかもしれません。6曲とコンパクトで、サウンド的なロック色もフルアルバム以上に濃いですしね。

 


▼YUNGBLUD『21ST CENTURY LIABILITY』
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2020年6月 1日 (月)

KAONASHI『WHY DID YOU DO IT?』(2018)

2018年11月に配信リリースされたKAONASHIの3rd EP。

彼らはアメリカ・ペンシルバニア州フィラデルフィア出身の5人バンド。バンド名は日本の某ジブリ系アニメのキャラクターから取られたものであることは明白で、彼らのアー写を見るとボーカルがドーモくんのTシャツを着ていたり、他メンバーもヘアバンド付けてたりモサかったりと、明らかに“オタク”であることがわかります。ボーカル、こっち見んな感が半端ない(笑)。

しかし、出してる音とバンドのキャラクターは切り離して考えるべきと言いますか、鳴らしているサウンドや楽曲群は非常にカッコいいポストハードコア/メタルコアだったりします。

適度なグルーヴィーさを持つ変幻自在なリズムに乗せて、カオティックなギターフレーズと時にヒステリックに叫び、時にセンチメンタルに歌声を響かせるボーカル。これらの要素で構築された楽曲群は、マスコアと呼ぶにふさわしいものがあるのではないでしょうか。オープニングを飾る「Real Leather」を筆頭に、ジェントとも異なる気持ち良さを持つリフやフレーズの数々は、間違いなくこのバンドの魅力のひとつと言えます。

そして、そのルックスや体格とは相反し、線の細さや繊細さを見せるシンガーのボーカルスタイルも日本人には親しみやすいものがあるはず。メロウなギターフレーズが耳に残る「You'll Understand When You're Older」や不穏さが際立つ「Coffee & Conversation」、ギターの不協和音が不思議と気持ちよく響く「My 5-Year Plan」はまさにその代表的なスタイルで、変態的なアレンジが施されているにも関わらず聴きやすいと感じられるのは、ボーカルの声質や歌唱法によるものが大きいのではないでしょうか。

そのボーカルの精細さが最大限に活かされているのが、穏やかなオープニングから伸びやかなサビへとつなげていく「M.O.R.G.A.N」ではないでしょうか。そこからカオティックなタイトルチューン「Why Did You Do It?」へと続く構成、なかなか良いです。各曲とも平均点は超えているのですが、ここからさらに洗練され強力な1曲が完成すれば、一気に知名度が高まるはず。本作はそんな可能性を大いに感じさせる処女作と言えるでしょう。

ちなみに彼ら、本作発表後の2018年夏にはPOLYPHIAやSAVES THE DAY、GIDEONなどが所属するEqual Vision Recordsと契約。本作に続く新曲のリリースが待たれるところです。大きなバックアップが付いたことで、このEPをはるかに超える力作に期待しておきましょう。

 


▼KAONASHI『WHY DID YOU DO IT?』
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2020年3月19日 (木)

WARDRUNA『RUNALJOD - RAGNAROK』(2016)

2016年10月にリリースされたWARDRUNAの3rdアルバム。本作が日本デビューアルバムとなっており、海外から1年半遅れの2018年3月に満を辞して発表さてました。

WARDRUNAはノルウェーのベルゲンを拠点とするバンド/ユニットで、元GORGOROTHのドラマーだったアイナル・セルヴィク(GORGOROTH時代はクヴィトラフンと名乗っていた)を中心に2003年に結成。自身の音楽ルーツに目覚めたアイナルが、土着的民謡や北欧神話などの伝承に触発されたことを機に、ブラックメタルの対極にあるトラッドフォークやゴシック、アンビエントといった“静”のスタイルで独自の音楽を構築しています。

アイナルはボーカルやドラムのほかにターゲルハルパ(擦弦楽器)、クラヴィクリラ(小型の竪琴)、ブッケホルン(角笛)、ルール(細長い管楽器)といった古楽器を多用。現在は彼の他に女性ボーカルのリンディ=ファイ・ヘラ、ルールやホルン、フルート、アイス・パーカッション奏者のエイリッフ・グンダーゼン、アルネ・サンヴォル(Vo)、HCダルガード(Vo)、ヒェル・ブラーテン(Vo)というメンバーが在籍しています。

本作はデビューアルバム『RUNALJOD - GAP VAR GINNUNGA』(2009年)から始まった、「創生」「生長」「終末」というサイクルを描く三部作の最終章にあたるもの。前作『RUNALJOD - YGGDRASIL』(2013年)まで在籍したガァールことクリスチャン・アイヴィン・エスペダル(Vo/ex. GORGOROTH)脱退を経て、1stアルバムから7年、結成から13年にてついに最初のコンセプトが完結することになります。

先に書いたように、ブラックメタル的な“動”の要素は皆無で、むしろそのサブジャンルとも言えるダークフォークに属する密室感の強い土着的なサウンドと、宗教音楽のような(言い方は失礼ですが)不気味なミニマルサウンドが交差する、非常にクセの強い楽曲が並んでいます。ドラムというよりもパーカッションをメインに使ったリズムセクションが土着感をより強め、パターン化されたフレーズをループすることで生み出される不思議な高揚感が聴き手にトリップを誘う。そういったところにも密教的な危うさが感じられるのではないでしょうか。

また、古ノルド語によるボーカルもまるで何かの神様(善の神か、あるいは悪霊か)を降臨させる呪文のようにも聞こえ、聴き手の情緒を不安に陥れる。だけど、なぜか聴くことをやめられない不思議な魅力が強い……そう、気づけばこの音色/ハーモニー/プリミティブなリズムに魅了されている自分がいるのです。

メタルの要素は皆無ですが、MYRKURなどにも通ずる魅力を持つアーティストだけに、メタルから派生したひとつの進化形と捉えて楽しむのもありかもしれません。

なお、彼らは昨年新たにSony Music / Columbia Recordsとメジャー契約。今年6月には通算5作目のアルバム『KVITRAVN』をリリース予定です。4作目『SKALD』(2018年)がほぼアイナルのソロアルバム形態だったので、三部作とソロスタイルを経たWARDRUNAが新たにどんなサウンドスケープを構築するのか、今から楽しみでなりません。

 


▼WARDRUNA『RUNALJOD - RAGNAROK』
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2019年12月 6日 (金)

CRYPTOPSY『THE BOOK OF SUFFERING』(2019)

CRYPTOPSYが2019年6月中旬にリリースした日本限定アルバム。

全8曲が収録された本作は、同年7月中旬に実現した7年ぶりの来日公演を記念して企画されたもので、もともとはアルバム前半4曲がEP『THE BOOK OF SUFFERING - TOME I』(2015年)、後半4曲がEP『THE BOOK OF SUFFERING - TOME II』(2018年)が初出という、連作となったシリーズEPをひとまとめにした内容となっています。

現在のメンバーはフロ、マット・マギャキー(Vo)、クリス・ドナルドソン(G)、オリヴィエ・ピナール(B)、フロ・モーニエ(Dr)の4人。ロード・ワーム(Vo)が脱退してからもだいぶ経ちますし、もはやこの4人編成は安定感すら感じられます。

事実、僕も7月13日の代官山UNIT公演に足を運んでいますが、計算され尽くしたプレイの数々と、音数が多いにも関わらずすべての音の粒が感じ取れるほどクリアなサウンドは、この手のバンドとしては異例といえるもので、熱狂的なリアクションを見せるオーディエンスとの相乗効果により、今まで観た彼らのステージの中でも一番と呼べる内容でした。まあとにかく、フロ・モーニエ先生の千手観音ドラミングが圧巻の一言で、あれだけ連打しても音の粒一つひとつが感じられるのは奇跡的だなと思うわけです。観られて本当によかった。

さて、改めてアルバムの話題に戻りましょう。前述のとおり、本作は2つの録音時期が異なるEPをひとつにまとめたもので、2作品の間には3年というタイムラグが生じています。しかし、『THE BOOK OF SUFFERING - TOME I』のラストである4曲目「Framed by Blood」と、『THE BOOK OF SUFFERING - TOME II』のオープニング曲である5曲目「The Wretched Living」の間にその“3年の差”は一切感じられません。そこには『THE BOOK OF SUFFERING』というひとつのテーマのもとに制作された連作という要素も大きく影響しているのでしょうか。

むしろ、アナログでいうところのA面(『TOME I』)とB面(『TOME II』)という形で、うまく色付けされているとさえ感じられる。つまり、これら8曲は本来収まるべき場所に、収まるべき形で収まったと言えるのではないでしょうか。

メロディやドラマチックさは皆無で、終始無慈悲なまでに轟音で攻めまくり、ときには複雑怪奇な展開で聴き手を驚かせる、CRYPTOPSYならではの個性はどの曲でも健在。むしろ、1曲1曲の際立ちはなかなかのものがあると思います。それはアルバムという形を想定して録音したものではなく、4曲のみというEPとして録音したのも功を奏しているのかもしれませんね。

正式なオリジナルアルバムではありませんし、この形で聴くことができるのは日本のファンのみですが、エクストリームメタルのエクストリームたる所以を存分に味わえる貴重な1枚はぜひとも2019年のうちに触れておいてもらいたいところです。

 


▼CRYPTOPSY『THE BOOK OF SUFFERING』
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2019年11月25日 (月)

DEF LEPPARD『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』(2018)

2018年11月末にリリースされた、DEF LEPPARDの最新グレイテスト・ヒッツ・アルバム。2枚組仕様とDISC 1のみの単品、同時期にデジタルリリースされたオリジナルのクリスマスソング「We All Need Christmas」を加えたアナログ盤の3形態が発売されました。

DEF LEPPARDのグレイテストヒッツ・アルバムはこれまでにも複数発表されておりますが、世界共通の収録内容という点においては本作が初めて。最初のベスト盤『VAULT: DEF LEPPARD GREATEST HITS (1980-1995)』(1995年)は北米とヨーロッパで一部収録内容が異なりましたし、ヨーロッパ&日本向けの『BEST OF DEF LEPPARD』(2004年)と北米向けの『ROCK OF AGES: THE DEFINITIVE COLLECTION』(2005年)もリリース時期および内容が異なるものでした。

そこから13、4年ぶりに制作された新たなグレイテストヒッツ・アルバムは、2005年以降に発表された新録曲……カバーアルバム『YEAH!』(2006年)、オリジナル作『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008年)、新曲入りライブアルバム『MIRROR BALL: LIVE & MORE』(2011年)、最新オリジナルアルバム『DEF LEPPARD』(2015年)、Spotify限定シングル『SPOTIFY SINGLES』(2018年)を加えた全35曲にて構成されています。

CD単品(1枚もの)および2枚組仕様のDISC 1は従来のグレイテストヒッツ同様、おなじみのシングルヒットをまとめたもの。そこに『SPOTIFY SINGLES』から「Personal Jesus」(DEPECHE MODEカバー)のリミックス・バージョンを追加した内容で、正直新鮮さは皆無。「Pour Some Sugar On Me」や「Rocket」がMV用に編集されたバージョンではなく、アルバム『HYSTERIA』(1987年)のテイクという点は過去のベストとは異なるところでしょうか。

となると、注目すべきは2枚組仕様のDISC 2ということになるわけでして。「Personal Jesus」以外の“2005年以降に発表された新録曲”はすべてこちらにまとめられており、というか“大ヒットしなかった曲”の総決算的な1枚とでも言えばいいのでしょうか(苦笑)。個人的にはこちらのディスクの内容が新鮮味を持って楽しむことができました。

実験作『SLANG』(1996年)からの楽曲をはじめ『DEF LEPPARD』からのシングル曲、「Promises」や「Bringin' On The Heartbreak」「Tonight」「Stand Up (Kick Love Into Motion)」といったDISC 1から漏れた80〜90年代の中ヒット曲、一般的には駄作として扱われる『X』(2002年)から唯一選ばれ佳作「Now」など、いわゆる“隠れた名曲”が満載なわけです。DISC 1が誰もが知る“DEF LEPPARDのパブリックイメージ”だとしたら、DISC 2は“DISC 1を通過した人に向けた、DEF LEPPARDのディープサイド”とでも言えばいいのかな。とにかく、これまで発表されたグレイテストヒッツ・アルバムの中では一番新鮮味を持って向き合えた1枚でした。

ちなみに、単曲配信された新曲「We All Need Christmas」はアコースティックベースの、シンプルなバラード。昨年よりDEF LEPPARDの過去作がデジタル配信開始となったことで、このように新曲を気軽に配信できるようになったのは、彼らのようにアルバム1枚に5〜10年近くかけてしまうバンドにとっては良い傾向なんじゃないでしょうか。「Two Steps Behind」の延長線上にあるこの曲、ストリングスをフィーチャーした美しいメロディは非常にリラックスして楽しめるもので、今後この季節になったら聴いておきたい1曲になるといいですね。

なお、本作のストリーミングバージョンは、『DEF LEPPARD』からの3曲を除いた全32曲入り。これはリリース元が異なったり契約上のあれこれが原因なんでしょうけど、今や個人でプレイリストを作れる時代。ここに改めて「We All Need Christmas」を含む全36曲の完全版を用意しましたので、こちらでお楽しみいただけたらと。

 


▼DEF LEPPARD『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』
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2019年10月 1日 (火)

MYLES KENNEDY『YEAR OF THE TIGER』(2018)

ALTER BRIDGEスラッシュGUNS N' ROSES)のソロバンドSLASH FEATURING MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORSでも活躍するシンガー、マイルズ・ケネディが2018年3月に発表した初のソロアルバム。

意外にも初のソロ名義作品となるこのアルバムは、彼の父親が亡くなった1974年を中心に、当時5歳前後だったマイルズの幼少期を題材としたコンセプチュアルな内容となっています。

実は2009年頃から計画されていたこのアルバムですが、完成させるまでに9年もの歳月を要することとなってしまいました。まあ、計画し始めた直後にスラッシュのソロバンドに参加したり、売れっ子バンドALTER BRIDGEが忙しかったりというのもあったのでしょう。ですが、まもなく50歳になろうとするこのタイミングに本作を完成させられたのは、ある意味では運命だったのかもしれません。

レコーディングにはジア・ディン(Dr, Per)、ティム・トゥルニエ(B)といった少数精鋭で臨み、マイルズはボーカルとギター以外にもマンドリンやバンジョー、ラップスティールなどを披露しています。相変わらず多才ですね。

楽曲自体はコンセプトもコンセプトなので、どこか内省的で落ち着いた雰囲気を醸し出しています。アコースティック主体で展開されるサウンドですが、マイルズのエモーショナルなボーカルと相まって、アコースティックならではの「枯れた」感は皆無。「The Great Beyond」のような楽曲ではむしろドラマチックさやダイナミズムすら感じられ、本作が単なる“バンド活動の合間の息抜き”とは異なるものであることがうかがえるはずです。

南部色の強いトラディショナルなアメリカンフォーク色もありつつ、どこか異国情緒を感じさせる音色があったり、また全体的には内向的なのに開放感のあるアレンジも散りばめられていたりと、改めてこの人の偉才ぶりを存分に味わえる1枚ではないでしょうか。

なんとなくですが、本作の軸はクリス・コーネルSOUDNGARDEN解散後、AUDIOSLAVEを立ち上げる前に出したソロ1作目『EUPHORIA MORNING』(1999年)にも近い気がします。ただ、この『YEAR OF THE TIGER』に関してはデジタル要素皆無で生々しさが際立っているので、装飾のある/なしでここまで変わるのかと改めて驚かされます。

スラッシュのソロも素晴らしいし、もちろんALTER BRIDGEは言うまでもなく。だけど、ここにはそれら2作品にもない輝きがあるので、両バンドのファン必携の1枚だと思います。年間ベストには選ばなかったけど、この先もずっと聴き続けるであろうスルメ的良作。

 


▼MYLES KENNEDY『YEAR OF THE TIGER』
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2019年8月23日 (金)

LIGHT THE TORCH『REVIVAL』(2018)

KILLSWITCH ENGAGEのシンガー、ハワード・ジョーンズがバンド脱退後の2012年に結成したバンドDEVIL YOU KNOW。これまでに『THE BEAUTY OF DESTRUCTION』(2014年)、『THE BLEED RED』(2015年)と2枚のアルバムを発表してきましたが、2017年にバンド名をLIGHT THE TORCHに変更。改名後初となるアルバム(通算3作目)『REVIVAL』を2018年3月にリリースしました。

デビュー時はツインギターの5人編成でしたが、前作の時点で正式メンバーは4人(シングルギター編成)となり、ライブのみギタリスト1名をサポートメンバーとして迎えています。

オリジナルメンバーはすでにハワードのほか、元ALL SHALL PERISHのフランチェスコ・アルトゥサト(G)の2人のみですが、デビューアルバム完成後に加入したライアン・ウォンバチャー(B / BLEEDING THROUGH)も初期メンバーと捉えれば、ドラム以外は不動のメンバーということになります。

さて、本作で展開されているサウンドですが、DEVIL YOU KNOW時代のサウンドを引き継ぎつつも、よりモダンで重低音を活かした(若干ジェント的な香りのする)メロディアスなヘヴィメタルが展開されています。

KILLSWITCH ENGAGE時代の諸作品……代表作となった3rdアルバム『THE END OF HEARTACHE』(2004年)ほどメタルコア的でもなく、スクリームの比率もかなり抑えられており(とはいえ、皆無というわけではないのでご心配なく)、軸になるのはあくまでメロディアスな“歌”。シンガロングできそうなサビが豊富に用意されており、そういった点においては古巣のKILLSWITCH ENGAGEが最近発表した最新作『ATONEMENT』(2019年)にも共通するものがあると言えるでしょう。

本作を聴くと、改めてハワードは個性的で歌のうまいシンガーだということに気づかされます。もちろん、そんな事実は重々理解していたのですが、それでもそう思わされるということは、べらぼうにダメ押しされているってことなんでしょうか。ミドルテンポでヘヴィ、だけどメロディアスという本作で展開されている楽曲群はまさに歌を聴かせるハワードに最適で、そこに楽器隊のモダンさや、適度に取り入れたデジタル要素などが良いアクセントとなり、バンドとしての個性をさらに強いものへと引き立てている。本作を聴いて、そんな印象を受けました。

正直、DEVIL YOU KNOW時代は「良いんだけど、歌以外は平均的」といったどっちつかずな印象がありましたが、本作でようやく“らしさ”のきっかけを手に入れられたのかな、と。ハワード自身も第二の、いや、第三のデビュー作でようやく本当のスタート地点に立てたのかもしれませんね。

残念ながら本作は日本でのリリースは叶いませんでしたが、メタルフェスなどを通じて来日の機会を得たら、一気に知名度が向上するはず。ぜひ来年の春あたりに予定されているフェスでの“初来日”に期待したいところです。

 


▼LIGHT THE TORCH『REVIVAL』
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2019年7月11日 (木)

BOSTON MANOR『WELCOME TO THE NEIGHBOURHOOD』(2018)

イギリス・ランカシャー出身の5人組バンド、BOSTON MANORが2018年9月にリリースした2ndアルバム。

このバンドについては事前情報は一切持っていなかったのですが、店頭でジャケ写とタイトル(「NEIGHBOURHOOD」のイギリス英語)でピンときて購入を決意。いわゆるジャケ買いですね、久しぶりです。

帰宅後いろいろ調べてみると、ポップパンクやエモ系らしく。ありゃ、ヘヴィ系かと思ったんだけどな。しくったかしら。

しかし、再生してみるとこれがなかなか良くて。どうやら前作からサウンドの方向性が一気に変化したようですね。このアルバムを聴く限りでは、全然ポップパンクに思えませんでしたから。

モダンなデジタル要素を施したそのサウンドプロダクションは、どこかひんやりしていて湿り気が感じられるもの。うん、嫌いじゃない。序盤はミディアムテンポの楽曲で統一されており、この感情の起伏が意図的に抑えられている空気感がたまらなく気持ち良い。

そのダークさは、4曲目「England's Dreaming」から一気に激化。いいじゃないですか、この曲名からして“いかにも”で。そこからアップテンポの「Funeral Party」へと続くのですが、この曲の細かなリズムの刻み方もどこか機械的でクセになる。

そうそう。そういえばこのバンド、曲タイトルのセンスがイカしているんですわ。「Flowers In Your Dustbin」とか「Funeral Party」とか「Digital Ghost」とか。単純っちゃあ単純なんですが、嫌いになれないですね、この感覚。

中盤もエモさが爆発する「Digital Ghost」や叙情的なオープニングからFUNERAL FOR A FRIENDあたりのスクリーモっぽいアレンジへと続く「Tunnel Vision」、アコースティックギターを使った静のパートと動のバンドパートとの対比が気持ち良い「Bad Machine」など、やはりテンポ抑え気味の楽曲が続きます。

後半に入ると、インダストリアル調かと思いきやアップテンポで攻める「If I Can't Have It No One Can」や「Hate You」、聴き手を不安にさせる1分少々のインスト「Fy1」を経て豪快な「Stick Up」、そして叙情的なバラード「The Day That I Ruined Your Life」でアルバムを締めくくります。決して派手ではないけど、じわじわと沁みてくるこの感覚は、普段ラウド系を聴いている耳にも十分耐えうるものだと思いますし、むしろそっち方面やポップパンクが苦手なオルタナ系リスナーにもしっかり通用する内容だと思います。

それと、なんとなく……ボーカルの抑え気味なトーンさえ気にならなければ、前作『Ambitions』(2017年)あたりのONE OK ROCKが好きなリスナーにも響く1枚なんじゃないかなと思いました。それくらい日本人の琴線に触れるメロディラインが詰め込まれているんじゃないかと。試聴もせずにジャケ買いした1枚でしたが、これはかなり当たりでした。

 


▼BOSTON MANOR『WELCOME TO THE NEIGHBOURHOOD』
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2019年6月30日 (日)

ANNISOKAY『ARMS』(2018)

ドイツのスクリーモ・バンドANNISOKAYが2018年8月(日本では同年9月)に発表した、通算4作目のオリジナルアルバム。

本作制作時のメンバーはデイヴ・グランウォルド(Unclean Vo)、クリストフ・ヴォチョレク(Clean Vo, G)、ノーベート・カヨ(B)、フィリップ・クレッチマー(G)、ニコ・ヴァーン(Dr)の5人。このアルバムをリリースしたあとにリードギターのフィリップが脱退し、現在は4人で活動を続けているようです。

マイケル・ジャクソンのヒット曲「Smooth Criminal」のワンフレーズからヒントを得たバンド名が印象的な彼ら。スクリーモやポストハードコア、ジェントにエレクトロテイストをミックスしたエレクトロニコアサウンドの上でスクリーム&クリーンの2人のボーカルが絡み合うことで、非常に独創的なサウンドを作り上げています。

ドイツでエレクトロニコアというとESKIMO CALLBOYの名前を真っ先に思う浮かべるかもしれませんが、ANNISOKAYのサウンドはそれとも異なる個性を放っています。

“歌える”ハイトーンシンガーがいるという点も大きいですが、そこにスクリームが重なることで(交互に歌うのではなく、クロスするところがカッコいい)絶妙な“エモさ”を醸し出す。さらに適度なエレクトロニクス色が加わったヘヴィサウンドとミックスされることで、2000年代前半のニューメタルにも似た世界観が添加される。そんな懐かしさもありつつ、リズムが“跳ねて”いない……つまり、ヒップホップ以降のニューメタルとは異なる観点で表現されているからこそ、メロから生まれるエモさに懐かしさを覚えるものの、全体的にはモダンな香りがする。

しかも、そのエモさにはどこかゴシックの香りもするんですよね。そのへんはEVANESCENSEにも共通するものがある気がします。だけど、7弦ギターによる低音を強調したリフワークやリズムの組み立て方は完全に2010年代のそれ。昨今のヘヴィロックリスナーのみならず往年のメタルコア、ラウドロックリスナーまでもを巻き込む、このバランス感こそが、本作の魅力なんじゃないでしょうか。

ちなみに彼ら、この3月にはBRING ME THE HORIZONのカバー曲「Nihilist Blues」を配信リリース。序盤こそ「完コピじゃん!(笑)」と微笑ましさを見せつつも、後半に進むにつれて彼ららしさが加わっていくので、こちらも必聴です。

 


▼ANNISOKAY『ARMS』
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2019年4月23日 (火)

死霊のえじき:Bloodline(2018)

あらすじ
街にはロッターと呼ばれるゾンビが蔓延していた。大学の医療センターで医学生ゾーイはロッターの研究を行っている。ある日、ゾーイは一方的に好意を寄せられている患者のマックスに強姦されそうになるが、マックスがゾンビに襲われ、ゾーイは助かる。
5年後─ゾーイたちは生き残り軍事施設にいたが、さらに世界中にはゾンビが増殖していた。その施設内で抗生剤の効かない謎の伝染病が発生し、ゾーイは施設外へ薬を取得しに行くことになる。途中、5年前に死亡したはずのマックスがゾーイを追って施設内に忍び込んで来る。ゾーイはマックスにはウィルスへの抗体があることに気づき、ミゲル大尉たちの反対を押し切りマックスの血清から特効薬を作ろうとしていたが、マックスは鎖を引きちぎり脱走してしまう…。

 

ジョージ・A・ロメロの名作『死霊のえじき』は当時、中学生ながらも映画館で観て衝撃を受けたことをよーく覚えています。個人的にもゾンビものでは3本指に入るほど好きな作品ですが、2008年のリメイク版『デイ・オブ・ザ・デッド』はサバイバルアクションものにリブートされており、それはそれで悪くはなかったけど好きとは言い切れず。

で、あれから10年の歳月を経て再びリブート版の登場です。今回はオリジナルの邦題に「Bloodline」というサブタイトルが付けられています。女性が主人公という点、知能のあるゾンビが登場するという点は過去2作と共通するのですが、例によって現代的な味付けが施されております。

まず、知能のあるゾンビが人間から転化したものであるという点は『デイ・オブ・ザ・デッド』と同じ。ただ、『デイ・オブ・ザ・デッド』は主人公の部下が転化したことでの信頼関係みたいなものが存在していたのに対し、本作は“サイコ野郎”……主人公のストーカーが転化してしまうという内容。つまり、主人公の女性に対しての執着から、その知性を使って追いかけ回すという非常に厄介な野郎なのです。

さらに厄介なのが、本作のゾンビが“走る”タイプだということ。もうね、否が応でもアクションものにならざるを得ないわけ。『ドーン・オブ・ザ・デッド』などで慣れているとはいえ、やっぱり情緒が足りない。物語の展開もスピーディーにならざるを得ないし。

知性=半転化に気づいた主人公は、そこからワクチンを作り出すという活路を見出すあたりは、『28週後...』あたりにも似た展開ですね。感染したら殲滅、というありがちな構成から脱している点はモダンなゾンビものの系譜にあるのかもしれません。

まあとにかく、本作の主人公のわがままでいきなり仲間が死んだり、半転化のサイコ野郎を生かすことになるし、そういったホラー映画にありがちな「登場人物のありえないわがままさが不幸を呼ぶ」という要素はしっかり死守されており、観ているとイライラさせられるのですが(笑)、最終的にはハッピーエンド? という、この手の作品にしては無難な作り。このへんもホラーというよりはアクションの色が強いからこそと言えなくもないかな。

序盤の薬の調達あたりですでに脱落しそうになったし、なおかつその場面での主人公の身勝手さにイラっとして一回再生を止めましたが(笑)、そこを乗り切ればまあまあ楽しめるかな。かといって、平均点を超えているかと言われたら「いやいやいや……」と即答しますが。

(*55点)

 


▼死霊のえじき:Bloodline
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