2018年12月14日 (金)

METAL CHURCH『DAMNED IF YOU DO』(2018)

METAL CHURCH通算12作目のオリジナルアルバム。前作『XI』(2016年)で2代目シンガーのマイク・ハウが復帰し、多くのファンを喜ばせましたが、日本未発売のライブアルバム『CLASSIC LIVE』(2017年)を挟んで早くも新作が届けられました。

前作は良くも悪くもマイク・ハウ時代=4thアルバム『THE HUMAN FACTOR』(1991年)を軸に、3rdアルバム『BLESSING IN DISCUISE』(1989年)のプログレッシヴテイストを散りばめ、さらに5thアルバム『HANGING IN THE BALANCE』(1993年)の正統派パワーメタルスタイルを随所に導入した、あの路線を再構築したものでした。もちろん、それは良い方向に作用したと思います。しかし、新しさは皆無。若いリスナーよりも1990年前後を知るオールドファンを喜ばせるだけで終わったような気がします。

実際、同作を携えた来日公演も実現しませんでしたし(何度かアナウンスされた『LOUD PARK』もすべてキャンセルしてるし)、挙句『CLASSIC LIVE』も未発売。そりゃ話題になりませんよ。

そんな中登場した今作ですが、前半は基本路線は『XI』と一緒。つまり、上に書いた80〜90年代のマイク・ハウ在籍時のいいとこ取りを、よりブラッシュアップした内容。オープニングの「Damned If You Do」こそパワーメタル路線ですが、以降は“いかにもマイク・ハウ時代のMETAL CHURCH”が並び、「ああ、また『Badlands』の焼き直しか……」と思ったものの(いや、それ自体は悪くないし、実際良い曲が並んでいると思います。しかし、刺激という点においては……)、中盤に入ると「Guillotine」でその印象を一変させられます。

今作からドラマーとしてステット・ホーランド(ex. W.A.S.P.など)が加入したこともあってか、ドラムの派手さが前作よりも増しているような気がします。それによる影響か、「Guillotine」のようなスラッシュテイストの楽曲が含まれていることは、本作における新たな驚きかもしれません。

これを筆頭に、テクニカルなファストチューン「Rot Away」、激しさと重さを兼ね備えた「Into The Fold」、これまたスラッシュメタルと正統派パワーメタルの融合「Out Of Balance」、どことなくMEGADETHを思い出す「The War Electric」と攻撃的な楽曲が並ぶのです。

……あれ、予想と違うじゃん。意外と攻めのヘヴィメタルしてる。叙情的で長尺の楽曲が多かった前作から一転し、本作は全10曲/45分という潔いトータルランニング。そうそう、こういうMETAL CHURCHがまた聴きたかったのよ!と叫びたくなるくらい、いい意味で我々の期待を裏切ってくれる、そんな良作です。

なお、本作の日本盤はCD 1枚ものと、先に触れた『CLASSIC LIVE』にボーナストラックとして2015年に発表した「Badlands」の再録バージョンを追加したボーナスディスク付き2枚組仕様の2形態を用意。『CLASSIC LIVE』は文字どおり、80〜90年代の代表曲をライブレコーディングしたもので、デヴィッド・ウェイン時代の楽曲ももちろん含まれています。さらに、QUEENSRYCHEのトッド・ラ・トゥーレ(Vo)がゲスト参加した「Fake Healer」スタジオ再録バージョンも収録。

2枚のCDを続けて聴くと、『CLASSIC LIVE』があったから今回の『DAMNED IF YOU DO』が生まれた、という解釈もできなくはないのかな。そう考えると、『CLASSIC LIVE』については改めて触れてもいいのかもしれませんね。ということで、また別の機会に……。



▼METAL CHURCH『DAMNED IF YOU DO』
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2018年12月13日 (木)

UNEARTH『EXTINCTION(S)』(2018)

MA(=マサチューセッツ)メタルも今は昔。気づけば20年選手になっていたメタルコアバンド、UNEARTHの通算7枚目のオリジナルアルバム。

長年在籍したMetal Blade Recordsを離れ、前作『WATCHERS OF RULE』(2014年)を北米ではeOne Music Recordsから、ヨーロッパではCentury Media Recordsから発表した彼らでしたが、続く本作もCentury Media Recordsからのリリース。プロデューサーには新たにウィル・パットニー(GOJIRAPIG DESTROYERSHADOWS FALLなど)を迎え、レコーディグドラマーとして同じMAメタルの盟友KILLSWITCH ENGAGEからアダム・デュトキエヴィッチ(本来はギタリスト)が参加した意欲作となっています。

4年ぶりの新作となる今作では、“これぞメタルコア!”と膝をパンパン叩きなくなるような、王道サウンドが展開されています。オープニングを飾る「Incinerate」での不穏なギターフレーズと、メロディを無視してひたすらガナり叫びまくるトレヴァー・フィップス(Vo)のボーカル。要所要所に導入されたブレイクダウンとメロウなギターソロ。そうだよね、10数年前はこういうサウンドに夢中になって、フロアを駆け回ってたよね。そんなことを思い出させてくれる、非常に真っ当な1枚です。

なだけに、聴く人が聴いたら「古臭い」と感じるかもしれません。最近のメタルコアにありがちなクリーントーンでの歌唱など“歌う”要素は皆無ですし(セリフのようなパートはありますけどね)、ギターフレーズもごく当たり前のことしか弾いていません。もうやり尽くしたじゃん。そう思われても仕方ないかもしれません。

しかし、一周回って、いや、二周くらい軽く回って本作を聴くと、なぜか新鮮に聴こえてくるのです。もはやこのスタイルすらもオールドスクールと言えるのかどうかわかりませんが、今の耳には間違いなく“新しく”聴こえる。それは、いろいろと過剰なサウンド、過剰な楽曲アレンジを導入するバンドが増えた結果ではないでしょうか。

変わり続けることにアイデンティティを見出すバンドもいれば、変わらないでいることでバンドとしてのアイデンティティを維持するUNEARTHのようなバンドもいる。結成20周年という節目のタイミングにリリースする記念碑的1枚だからこ、あえてこういったスタイルにこだわったのかもしれませんが、そうすることがファンに対しても、そして自分たちに対しても正直であると。そう考えた結果が、このストロングスタイルの力作なんでしょうね。

何も考えずに大音量で聴けば、きっと20年選手の深みや凄みが浮き上がってくるはず。最後まで緊張感が一切途切れることがない、濃厚な37分。いやあ、素直にカッコいいと思える1枚です。



▼UNEARTH『EXTINCTION(S)』
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2018年12月12日 (水)

ARCHITECTS『HOLY HELL』(2018)

イギリス・ブライトン出身のメタルコアバンド、ARCHITECTSが2018年11月にリリースした通算8枚目のスタジオアルバム。現在も在籍するEpitaph Recordsに移籍後発表した6thアルバム『LOST FOREVER // LOST TOGETHER』(2014年)で初めて接したバンドでしたが、フレドリック・ノルドストロームをアディショナルプロデューサーに迎えたこともあってか、同作は初の全英トップ20(16位)入りを果たしています。

しかし、前作『ALL OUR GODS HAVE ABANDONED US』(2016年)発表直後にトム・サール(G)が皮膚癌のため死去(享年28歳)。その後サ、ポートメンバーとしてツアーに参加していたSYLOSISのジョシュ・ミルドンが正式加入し、今作の制作に臨みました。

プロデューサーはメンバーのダン・サール(Dr/トムと双子の兄弟)とジョシュが担当。Facebookのコメントなどでダンが語るように、本作はトムに向けて書かれた楽曲が大半を占めるとのこと。亡くなるまでの3年間を癌で苦しみぬいた彼の悲痛な叫びを激しいサウンドで表現し、病と戦った日々を刻むかのようにヘヴィなビートと鋭角的なギターリフが叩きつけられる。そんなズッシリと心に響く1枚となっています。

ストリングスを効果的に用いたアレンジと、要所要所に打ち込みやエレクトロの要素を挿入し、適度なブレイクを導入することで緩急を自在に操り、ドラマチックさを演出するバンドアンサンブルはひたすら気持ちよく聴けるものばかり。スクリームもクリーンパート同様のメロディアスさが感じられ、とにかく親しみやすい内容となっています。

鼓動を打つようなビートと「死は敗北ではない」というタイトルを持つオープニングトラック「Death Is Not Defeat」から始まり、曲を重ねるごとに感情を叩き続ける本作は、後半に進むに連れ全体を覆うヘヴィさが増していき、「Modern Misery」あたりではそのヘヴィさが悲痛さへと変わっていく。「The Seventh Circle」のバスドラ連打からは怒りすら感じられ、その悲哀に満ちた感情は「Doomsday」で一気に爆発し、ラストの「A Wasted Hymn」はどこか鎮魂歌のようにも聞こえる。

……なんてことを書くと、完全に偏見に満ちていると受け取られてしまうかもしれませんが、それくらいこのアルバムからはトムを失ったダンの悲しみ、バンドのやるせなさがヘヴィでエモーショナルなサウンドの塊となって押し寄せてくるのです。まるで音の壁で密閉され、呼吸できなくなるような……といったら大袈裟でしょうか。

外部プロデューサーの力を借りず、メンバーだけで作り上げたこのアルバム。それだけ深い意味が込められた、今後のARCHITECTSにとって大きなターニングポイントになるのではないでしょうか。気楽に聴けるアルバムではありませんが、気がつくと手を伸ばしている、そんな中毒性のある1枚です。



▼ARCHITECTS『HOLY HELL』
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2018年12月10日 (月)

MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS: 20 YEAR COLLECTIORS' EDITION』(2018)

MANIC STREET PREACHERSが1998年9月にリリースした、通算5作目のスタジオアルバム『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』。同作のリリース20周年を記念して、2018年12月にCD 3枚組ボックスエディションとアナログ2枚組エディションが発売されました。どちらも新たにリマスタリングが施されておりますが、もともとダイナミックなバンドサウンドを堪能できる良作だったので、音質的にはそこまで大きく変化していないような気がします。

さて、このアルバムに関しては非常に個人的思い入れが強く、当ブログの前身サイトが20年前にスタートしたとき、最初に書いたディスクレビューが本作に関してでした。あそこには書いていませんが……要は、長年付き合った彼女と別れ話をしてる間、ずっと車の中で流れていたのがこのアルバムなんですよ(苦笑)。

……重い。重いでしょ?(笑)

そんなわけで、好きなアルバムではあるものの、聴いていると必要以上に感傷的な気持ちになってしまう。なので、一時期まったく手をつけられない時期もありました。作品の良し悪しとは全然関係ない理由なんですけどね。

あれから20年。それ以上にいろんなヘヴィな出来事があったり、こうやって音楽について趣味で書き連ねていたことが、いつの間にか仕事になっていたり。本当にいろんなことがありました。そう思うと、このアルバムの背景にある個人的な出来事がいかにちっぽけなことか。おちこんだりもしたけれど、私はげんきです(笑)。

さてさて。このリマスター盤について書いていきましょうか。

前作『EVERYTHING MUST GO』(1996年)での成功を踏まえた上で制作された本作は、ミディアム〜スロウナンバーを軸とした極上のメロディックロックアルバムです。『EVERYTHING MUST GO』には若干の歪さが残っており、そこがまたマニックスらしくて良かったのですが、本作ではそういった要素が完全に払拭され、非常に完成度の高い内容に仕上げられています。スロウナンバーが多いせいか、全13曲で63分というトータルランニングには多少過剰さを感じたものの、ぶっちゃけ捨て曲がないので有無を言わせぬまま最後まで聴かされてしまう。そんな“静なる暴力性”すら感じさせる傑作だと、今でも信じています。

が……。

このリマスター盤、昨年発売された『SEND AWAY THE TIGERS』(2007年)の10周年盤同様に、収録曲が一部差し替えられるという改悪が加えられています。日本のファンにとっては思い入れの強いであろう12曲目「Nobody Loved You」が、シングル「If You Tolerate This Your Children Will Be Next」のカップリング曲およびカップリング曲集『LIPSTICK TRACES』(2003年)収録曲「Prologue To History」に変更されているのですよ! この曲自体は特に嫌いではないし、むしろ好きな部類に入る1曲ですが、どうしても「Nobody Loved You」のインパクトが強かっただけに、また終盤をドラマチックに盛り立てる上で重要な役割を果たすだけに、「Prologue To History」がラス前に置かれてそこから「S.Y.M.M.」へと続く構成がどうにも馴染めないのです。

何度か聴き返しました。なんなら、M11「Black Dog On My Shoulder」からM13「S.Y.M.M.」の3曲だけを何度か続けて聴き返したりもしました。が、どうしても「Prologue To History」だけ軽く聴こえてしまう。ミディアム〜スロウのメロウな楽曲中心とはいえ重厚さが全体を支配する構成だけに、やっぱり「Prologue To History」は浮くんですよ。だからこの曲をカップリングに回したんじゃなかったの? そうしてそんな気の迷いを見せる? 本当にこの改悪、理解に苦しみます(しかも、ストリーミングバージョンだと「S.Y.M.M.」のあとに「Nobody Loved You」が置かれているという。なんなのまったく!)。

ジャケットのアートワーク変更は全然いいんですよ。同じフォトセッションの中から、別テイクを選んでいるわけですから。新しいアートワークも嫌いじゃありません。ただ、安っぽくなってしまったのも事実。ああ、勿体ない。こんな傑作が……。

せっかくなのでCDのディスク2、ディスク3にも触れておきましょう。ディスク2は改変されたディスク1『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』の収録曲のホームデモ音源/スタジオデモ音源/ライブリハーサルデモ音源/テイク違いが、本編と同じ曲順で並べられています。完成バージョンとは異なるアレンジやテンポ感、特に「The Everlasting」のライブリハデモは嫌いじゃないなあ。「Nobody Loved You」が原曲よりもテンポが遅く、ヘヴィさが際立っている印象なのも良いなあ。まあ、こちらは完全にマニア向けですね。

ディスク3は1998〜99年にリリースされた本作からのシングルに収められたカップリング曲を1枚にまとめたもの。MASSIVE ATTACKやデヴィッド・ホルムス、デーモン・バクスター、STEALTH SONIC ORCHESTRA(APOLLO 440)、MOGWAICornelius、STEREOLABによるシングル表題曲のリミックス、アルバム未収録の「Montana/Autumn/78」「Black Holes For The Young」「Valley Boy」「Socialist Serenade」「Buildings For Dead People」といったオリジナル曲が楽しめます。THE CLASHのカバー「Train In Vain」などライブテイク以外のオリジナル曲とリミックスは網羅されているはずなので、当時シングルやカセットを集めるのに苦労した人にはありがたい1枚じゃないでしょうか。

僕にとっても、そして本サイトにとっても思い出の1枚なだけに、いろいろ厳しいことを連ねましたが、それでも本作の魅力は変わらない(と思いたい)。この20周年盤を聴いて興味を持った人は、ぜひオリジナルバージョンも聴いてみてください。もしかしたら、僕とまったく逆のリアクション(逆に「Nobody Loved You」が入っているほうを受け付けない)をするかもしれませんしね。



▼MANIC STREET PREACHERS『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS: 20 YEAR COLLECTIORS' EDITION』
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2018年12月 9日 (日)

VOIVOD『THE WAKE』(2018)

カナダ出身のテクニカルスラッシュメタル/プログレッシヴメタルバンド、VOIVODによる通算14枚目のスタジオアルバム。前作『TARGET EARTH』(2013年)から5年半ぶりのフルアルバムにあたり、スネイク(Vo)、アウェイ(Dr)のオリジナルメンバーにチューウィー(G/2008年加入)、ロッキー(B/2004年加入)という新メンバーが加わった編成で初のアルバムになります(同編成では2016年にプレEP『POST SOCIETY』を発表済み)。

正直、VOIVODは80年代から90年代前半の『THE OUTER LIMITS』(1993年)くらいまでは聴いていたものの、それ以降はジェイソン・ニューステッド(ex. METALLICA)が加入した当時の『VOIVOD』(2003年)や『KATORZ』(2006年)くらいしか知りません。その程度の知識で、あえて前作など聴かずにいきなり新作に触れてみました。

……なんですか、これ。めちゃくちゃすごい内情じゃないですか。怪しい雰囲気を醸し出すコード進行に、聴いているとどこか不安を覚えるメロディ。オープニングの「Obsolete Beings」からして、今まで聴いたことがない、だけどVOIVODのそれだとわかる世界観が展開されています。ヘヴィメタル的な重厚さがすべてを占めるのではなく、KING CRIMSONあたりに通ずる不思議な雰囲気や、プログレッシヴロックが持っていた聴き手をまだ見ぬ世界へと誘うあの空気感が混在するのです。

全8曲で56分というボリューム。うち5曲が6分以上もあり、ラストナンバー「Sonic Mycelium」は12分半という超大作。この曲がまた……ものすごいことになっています。語彙なさすぎだろ?と思われてしまっても仕方ありませんが、聴き終えたときの正直な感想が本当にこんな感じなのですから、仕方ないのです。この終盤にかけてのドラマチックかつ不穏な展開ときたら……ぶっちゃけ、この1曲のためだけにこのアルバムを購入しても、損はありません。そう断言させたくなるだけの、凄みと緊張感、今までに聴いたことのなかった空間が構築されているのですから。

VOIVODは今年結成35周年を迎えたとのこと。本作はその集大成的な1枚であると同時に、まだまだやれるという気概が至るところに込められている。そんな強気な内容なんですよ。いや、ちょっとこれは驚いた。軽い気持ちで手にとってみたら、想像をはるかに超える内容だったので。確実に年間ベストに入る、2018年のHR/HMシーン、エクストリームミュージックシーンを代表する1枚だと思います。

なお、本レビューではアルバム本編にのみ触れましたが、海外盤の限定仕様と日本盤は先に触れたEP『POST SOCIETY』とライブテイク6曲を追加したボーナスディスク付きの2枚組仕様。日本盤は2枚組永久仕様なので、ぜひこちらを購入することをオススメします(『POST SOCIETY』については、また改めて紹介したいと思います)。



▼VOIVOD『THE WAKE』
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投稿: 2018 12 09 12:00 午前 [2018年の作品, Voivod] | 固定リンク

2018年12月 4日 (火)

ACCEPT『SYMPHONIC TERROR - LIVE AT WACKEN 2017』(2018)

ACCEPTからピーター・バルデス(B)脱退、という衝撃的なニュースが届いたのが数日前。正直、ウルフ・ホフマン(G)とピーターはバンド創世記からACCEPTに関わってきたメンバーだけに、この2人さえいればACCEPTは安泰……そう信じてきただけに、本当に驚きました。

今回紹介するライブ作品は、そのピーター在籍時最後のアイテムとなります。2017年8月3日、ドイツ最大級のメタルフェス『WACKEN OPEN AIR』の初日公演でACCEPTが披露した、オーケストラとの共演ステージが2時間まるまる収められた2枚組CDと、同CDに映像版のBlu-ray or DVDを同梱したパッケージ作品です。

当日は3部構成のライブとなっており、第1部の5曲がACCEPTのみでのライブパフォーマンス。当日はまだリリース前だったニューアルバム『THE RISE OF CHAOS』(2017年)からの楽曲がいち早く披露されており、セットリスト的にも「Restless And Wild」以外はマーク・トニーロ(Vo)加入後の楽曲のみという、現地での人気ぶりを示す内容です。正直、「Restless And Wild」よりもカッコいいと思える楽曲ばかりが並ぶし、前任のウド・ダークシュナイダーそっくりと言われてきたマークのボーカルも、もはや比較云々が気にならないくらい“そこにあるのが当たり前”になっているし。うん、すごく良いと思います。

第2部はウルフが2016年にリリースしたソロアルバム『HEADBANGERS SYMPHONY』からの楽曲を中心とした、全6曲のクラシックカバー。ここからオーケストラが加わり、ムソルグスキー「禿山の一夜」、ベートーヴェン「スケルツォ」「悲愴」、モーツァルト「交響曲第40番」などといった誰もが一度は耳にしたことのあるクラシックの名曲が、ACCEPTの演奏+オーケストラという極上の編成でメタリックに演奏されていきます。正直、この手のインストって個人的には退屈に感じることが多いのですが、これは素直に楽しめました。それもこれも、ACCEPTというバンド自体が80年代からクラシックの名フレーズを自身の楽曲に取り込んできたことも大きいのでしょう。

そして、第3部がACCEPT with Orchestraということで、ACCEPT新旧の名曲群がオーケストラを加えたダイナミックなアレンジで披露されていきます。ここでも「Princess Of The Dawn」「Breaker」「Fast As A Shark」などといった80年代の代表曲に加え、「Stalingrad」「Dying Breed」などマーク加入後の楽曲も織り交ぜられたオールタイムベスト選曲で、再々始動後のACCEPTの楽曲がドイツのメタルファンの間にしっかり根付いていることを実感させられました。

やはり圧巻なのは、クライマックスの「Fast As A Shark」から「Metal Heart」へと続く流れと大ラスの「Balls To The Wall」、そしてその間に挟まれたマーク加入後の「Teutonic Terror」という4曲でしょう。正直、トラックリストを見たときは「Teutonic Terror」だけ浮いてる?と思ったけど、通して聴いたらそんな違和感なんて皆無。観客の盛り上がりもそのほかの楽曲と変わらないし、偏見を持ってるのって実は日本人くらいなんじゃないか……そんな気すらしてきました。

本当は映像とともに大音量で楽しみたい作品ですが、ライブアルバムとしてもメタル史に残したい名演集だと思うので、こういう形で取り上げることにしました。いや、まずはストリーミングで音源を堪能して、そこから映像に手を出してみてはどうでしょう。必然的にCDも付いてきますし、メタルファン一家に1セットあっても不思議じゃない力作です。



▼ACCEPT『SYMPHONIC TERROR - LIVE AT WACKEN 2017』
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投稿: 2018 12 04 12:00 午前 [2018年の作品, Accept] | 固定リンク

2018年11月30日 (金)

BOY GEORGE AND CULTURE CLUB『LIFE』(2018)

CULTURE CLUBの約19年ぶりとなる、通算6枚目のオリジナルアルバム。名義としては「BOY GEORGE AND CULTURE CLUB」となりますが、間違いなく我々が知る“あの”CULTURE CLUBの新作です。

メンバーはボーイ・ジョージ(Vo)、ロイ・ヘイ(G)、マイキー・クレイグ(B)、ジョン・モス(Dr)という不動の4人。2016年頃からニューアルバムの発売間近と噂されてきましたが、あれから2年経ちようやく発売までこぎつけました。

2014年にデジタル配信された新曲「More Than Silence」が、地味ながらも美しい名曲で。そこから4年経って配信された「Let Somebody Love You」や「Life」といった新曲も非常に素晴らしい仕上がりなのですが、とにかく地味。前者はレゲエをベースにした彼ららしい楽曲で、後者はゴスペル調のソウルナンバー。サウンドの色付け方含め、ディープさが増した渋目のテイストなのですが、2曲とも本当に素晴らしい出来で。これはもう、アルバムは傑作になるに違いないと確信したものです。

で、いざ届けられたアルバムは、本当に傑作でした。想像以上でも以下でもない、納得の内容。80年代のキラキラ感皆無ですが、これこそが今聴きたかったCULTURE CLUBなんだよ、と大満足。不満は一切ありません。

ボーイ・ジョージが直近にリリースしたソロアルバム『THIS IS WHAT I DO』(2013年)という雛形があったので、バンドのアルバムもこういう方向に進むのだろうなというのは簡単に予測できたのですが、あそこからヒップホップ的要素を薄めて、若干バンド感を強めたのが今回の『LIFE』というアルバムなのかな。そういう意味では、『THIS IS WHAT I DO』と『LIFE』は地続きの2枚と言えるかもしれません。

ボーイ・ジョージのボーカルパフォーマンスは、ソロのとき以上の多彩さを放っており、曲調に合わせて変化を見せています。その器用さは、80年代のカメレオンボイスとはまた異なるものの、今鳴らされている楽曲に関してはパーフェクトなまでにハマっている。いや、この声だからこそこの音/楽曲なのか。なんにせよ、説得力という意味では全盛期のそれとは比べものにならないほど強いものが備わっているんじゃないでしょうか。

驚きも新鮮さも皆無ですが、安心感とその奥底に眠る煌めきは随一。DURAN DURANの最新作『PAPER GODS』(2015年)同様、やるべきバンドがやるべきことを最高の形でやり遂げた、問答無用の1枚です。



▼BOY GEORGE AND CULTURE CLUB『LIFE』
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投稿: 2018 11 30 12:00 午前 [2018年の作品, Boy George, Culture Club] | 固定リンク

2018年11月29日 (木)

STEPHEN PEARCY『VIEW TO A THRILL』(2018)

RATTのフロントマン、スティーヴン・パーシーの通算5作目となるソロアルバム。前作『SMASH』(2017年)から約1年半と、最近としては短いスパンで発表されました。

レコーディングに参加したのは、2005年からスティーヴンのソロ活動における片腕的存在のエリック・フェレンションズ(G)、初期RATTやROUGH CUTTのメンバーだったマット・ソーン(B)、元BRIDES OF DESTRUCTIONのメンバーでスティーヴンのソロバンドにも在籍経験を持つスコット・クーガン(Dr)という気心知れたメンバー。プロデュース自体もスティーヴン、マット、エリックの3名で手がけ、ミックスをマットが担当。ソングライティングはスティーヴンとエリックの2人で進められたとのことです。

基本的には前作までと同じく、RATTで展開される世界観をそのままソロに持ち込んだ、ミディアムテンポ中心のハードロック=ラットン・ロールが繰り広げられています。オープニングの「U Only Live Twice」は正直RATTでそのままやってもカッコよかったんじゃないか、ソロには勿体ないんじゃないかと思うくらいの1曲。掴みは完璧です。

が、そこから数曲はちょっとインパクトが弱いかなという印象。特に2曲目の「Sky Falling」はスティーヴンの悪い面……淡白で一本調子なところが前面に出てしまい、まったく印象に残らないという。5曲目「Double Shot」までアップテンポの楽曲がないというのも、アルバム全体のテンポの悪さにつながっているようにも思えました。

あと、曲の頭に思わせぶりなSEを付けるのも、アルバムのテンポに悪影響を及ぼしているような。これ、そのまま曲間縮めて構成していたら、もっとカッコよかったのになと思うのは、僕だけでしょうか。

「Not Killin' Me」や「I'm A Ratt」みたいに良曲もあるのですが、全体的にミドルテンポで似通った曲が多い。前作のほうがもうちょっとインパクトが強かった記憶があるんだけどなあ。ここまで薄い内容のアルバムを矢継ぎ早に作るのならば、もっと1曲1曲に手間暇かけたり練り込んだりしてほしかったかな。これはもうスティーヴン云々より、その周りにいるスタッフが悪いんじゃないかという気がしてきた。誰かが「No!」って言わないと、この先どんどんインパクトの薄いアルバムが増産されていくんじゃないか……そんな予感がします。

RATTのほうもウォーレン・デ・マルティーニ(G)抜きで再始動したようですが、こちらはフォアン・クルーシェがいるぶんまだマシなのかな……なんにせよ、新しいソロアルバムよりも本家の新作を先に期待したいところです。



▼STEPHEN PEARCY『VIEW TO A THRILL』
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投稿: 2018 11 29 12:00 午前 [2018年の作品, Stephen Pearcy] | 固定リンク

2018年11月28日 (水)

METALLICA『...AND JUSTICE FOR ALL: DELUXE EDITION』(2018)

言わずと知れた、METALLICAが1988年秋に発表した4thアルバム『...AND JUSTICE FOR ALL』。本作はここ数年バンドが取り組んでいる旧譜リマスター&エクスパンド企画の一環として、リリース30周年のタイミングにあたる2018年にリリースしたものです。昨年の『MASTER OF PUPPETS』(1986年)デラックスエディションに続いて、今回もボリューム満点の内容となっています。

まず、本作が正式にリマスタリングされると発表された際に、多くのマニアから「ベースの音は?」という声が挙がりました。ご存知のとおり、オリジナル盤のミックスはかなりひどくてジェイソン・ニューステッド(B)のベースラインは一切聴こえない、ドラムとギターに軸を置いた独特のミックスが施されていました。当時の録音技術ではジェイソンの5弦ベースを的確に収めることができなかったなどいろんな憶測がありましたが、後年になりジェイムズ・ヘットフィールド(Vo, G)だったかラーズ・ウルリッヒ(Dr)だったかがエンジニアに「ギターの低音と被るから、ベースの音を抑えろ。もっと小さく!」と指示したのが原因だと判明。多くのファンが「……1発殴りてぇ……」と思ったはずです。

また、こういった不完全なアルバムが現在まで一度も正式にリマスタリングされず、音圧の低い80年代のサウンドのままで流通していること、ライブではしっかりベースの音が聴こえる(笑)ことから、有志たちがYouTubeなどの動画サイトにジャスティス音源に自身でベースラインを弾いて加えた“本当のジャスティスアルバム”音源をアップすることも少なくありませんでした。こういった音源が、これまたカッコいいんですよね。

さて、話を最初の「ベースの音は?」という声に戻します。結果を見る前からわかっていたことですが、今回施されるのは“リミックス”ではなく“リマスター”であることから、それまで一切聴こえなかったベースラインがいきなり復活することはまずあり得ない。なので、過剰な期待はせずにリリースを待ちました。事実、先行配信された「Dyers Eve」を聴いてもベースの音、ほとんどわかりませんでしたしね。

リマスタリングされたアルバム本編ですが、これがまた、音質/音圧が飛躍的な向上を遂げているのです。ファミコンの8ビット風サウンドに聴こえたドラムも、高音域を強調した耳にキンキン響くギターサウンドも、中音域を強調することでより自然で聴きやすいものへと進化。全体的にふくよかで重みがあり、しかも切れ味の鋭いサウンドに生まれ変わっています。特にギターリフの歯切れの良さとドラムの硬質さが増したことで、このアルバムが本来持つ個性や魅力は格段に進歩し、ジェイムズのボーカルからはオリジナル盤では感じられなかった微妙な表情の動きすら見つけることができるのです。

あんなに聴き込んだこのアルバムを、まさか2018年になってから再びこんなにリピートしまくることになるなんて。リマスターの魔力、おそるべし。

そして、デラックスエディションにたっぷり含まれているデモ音源やライブテイクの数々も、音質の差はまちまちながらも、それぞれ聴きごたえのあるものばかり。デモ音源も曲によってはベースラインが聴き取れるものもあり、本来はこういう形だったんだ……と妙に嬉しくなったり、逆にデモの段階で完成版と1ミリも変わらないギター&ドラムのみで完結する曲を聴いてはジェイソンってなんだったんだろうと悲しくなったり。悲喜こもごもです。

こうなると、気になるのが続く5thアルバム『METALLICA』(1991年)なわけですよ。もともと音質的にもクオリティが高い作品だけに、ここまで格段にサウンドが向上することはないでしょうけど、それでも今の技術でリマスタリングされたらどう生まれ変わるのか、聴いてみたいものです。デモやライブ音源はこれまでにも発表されているので、そこにはあんまり過剰な期待はしませんが。

まあ、何はともあれ。さすがに3万前後のボックスセットを買うのは躊躇するという方は、ぜひ3枚組エディションでリマスター盤、デモ音源集、ライブ音源と3つの異なる視点でジャスティスアルバムを楽しんでみてはいかがでしょう。すでにオリジナル盤を持っている人でも、新たに購入する価値はあると思いますよ。



▼METALLICA『...AND JUSTICE FOR ALL: DELUXE EDITION』
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投稿: 2018 11 28 12:00 午前 [1988年の作品, 2018年の作品, Metallica] | 固定リンク

2018年11月25日 (日)

V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』(2018)

2018年10月リリースの、ゲイリー・ムーアのトリビュートアルバム。アルバムジャケットにあるように、ゲイリーの諸作品やライブに参加してきたベーシスト、ボブ・デイズリーが中心となって制作された本作には、ニール・カーター(Key)やドン・エイリー(Key/DEEP PURPLE)、エリック・シンガー(Dr/KISS)、グレン・ヒューズ(Vo)に加え、元SKID ROW(「Youth Gone Wild」じゃないほう)のブラッシュ・シールズ(Vo)といったゲイリー・ムーアと馴染み深い面々、ゲイリーの実子であるガス・ムーア(Vo)とジャック・ムーア(G)のほか、豪華ゲストプレイヤーが多数参加しています。

そのメンツもジョン・サイクス(G)やダニー・ボウズ(Vo/THUNDER)、スティーヴ・ルカサー(G/TOTO)、ジョー・リン・ターナー(Vo)、リッキー・ウォリック(Vo/BLACK STAR RIDERS)、スティーヴ・モーズ(G/DEEP PURPLE)、デーモン・ジョンソン(Vo, G/BLACK STAR RIDERS)、ダグ・アルドリッチ(G/THE DEAD DAISIES)などなど。とにかく、無駄に豪華です。

選曲的にはブルースに傾倒した『STILL GOT THE BLUES』(1990年)以降の作品にこだわることなく、初期の『BACK ON THE STREETS』(1978年)から『VICTIMS OF THE FUTURE』(1983年)、『WILD FRONTIER』(1987年)の楽曲も収録。ボブ・デイズリー自身が関わっていることもあってか、『POWER OF THE BLUES』(2004年)という晩年の作品から3曲も選ばれていることがちょっと意外でした。

基本的にはどの曲もゲイリー独特の粘っこいギターフレーズを活かしつつ、オリジナルを尊重しながら随所に自身の個性を取り入れていく手法で、またボブが中心となって制作していることもあって統一感も強く、この手のトリビュートアルバムとしてはかなり水準の高いもののように思います。HR/HM系ギタリストが多く参加しているものの、各自そこまで出しゃばることもないので、本当に気持ちよく楽しめる1枚です。

やはり本作最大の聴きどころは、久しぶりにシーン復帰を果たしたジョン・サイクス参加の「Still Got The Blues (For You)」になるかと。ゲイリーからの影響も大きく、彼と同じTHIN LIZZY(=フィル・ライノット)にもお世話になった関係もあり、そりゃあもうディープなソロを聴かせてくれています。まあこの曲自体、基本的にメインフレーズの繰り返しになるのでそこまでアドリブを効かせることは難しいのですが、特に終盤のソロはサイクスらしいもので、フェイドアウトせずにこのままずっと聴いていたい!と思わせられるはずです。

で、この曲を歌うのがTHUNDERのダニー・ボウズというのが、また最高。思ったよりも感情抑え気味ですが、それがギターのエモーショナルさに拍車をかけているように感じました。うん、これ1曲のために購入してたとしても無駄じゃないと思います。

個人的にはこのほか、リッキー・ウォリックが歌い、スティーヴ・モーズがギターを弾く「Parisienne Walkways」、グレン・ヒューズが最高のボーカルパフォーマンスを聴かせる「Nothing's The Same」、思ったよりもゲイリー・ムーア色の強いダグ・アルドリッチのプレイが印象に残る「The Loner」、デーモン・ジョンソンが歌って弾いてと大活躍の「Don't Believe A Word」あたりがお気に入り。もちろん、そのほかの曲も文句なしに良いです。

来年の2月で、亡くなってから早8年。ゲイリー・ムーアというギタリストがどんな存在だったか、改めてロック/ブルース/HR/HMシーンに与えた影響をこのアルバムから振り返ることができたら、と思います。彼の名前しか知らないという若いリスナーにこそ聴いてほしい1枚です。



▼V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』
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投稿: 2018 11 25 12:00 午前 [2018年の作品, Black Star Riders, Compilation Album, Dead Daisies, The, Deep Purple, Gary Moore, Glenn Hughes, Joe Lynn Turner, John Sykes, KISS, Thunder, Toto] | 固定リンク

2018年11月20日 (火)

DIMMU BORGIR『EONIAN』(2018)

今年結成25周年を迎えたノルウェーのシンフォニックブラックメタルバンド、DIMMU BORGIRの通算10作目となるスタジオアルバム(オリジナルアルバムとしては9作目)。前作『ABRAHADABRA』(2010年)から実に8年ぶりに発表された、待望の新作となります。本国では2位という高記録を獲得したものの、アメリカでは前作の42位には及ばぬ142位止まり。しかし、イギリスでは過去最高の73位まで上昇するほか、ドイツとフィンランドで最高4位、スイスで最高5位、オーストリアでも最高10位を記録しています。

ここ数作、オーケストラとのコラボレーションが通例となっていた彼らですが、本作でもそのスケールの大きな世界観は引き継がれています。ただし、今作では生演奏を起用せずサンプリングで済ませているとのこと。一聴した限りでは、実際のオーケストラとの違いはそこまで顕著ではないし、違和感もないので問題なし(音のタッチによほど時間をかけたのではないかと推測されます)。

しかも、このアルバムでは前作や2011年のライブにも参加した合唱隊・SCHOLA CANTORUM CHOIRも全面参加。ブラックメタルならではのブルータルさと、合唱隊のハーモニー&オーケストラサウンドが融合した、どこまでも突き抜けるような壮大さが最初から最後まで展開されています(どの曲ももちろんですが、特にラストのインスト「Rite Of Passage」の美しさといったら!)。

そもそも、このアルバムのテーマ自体が“時間の幻聴性”という壮大さを伴うもの。それを2012年頃から5年以上かけて完成までこぎつけたわけですから……どれだけ気の遠くなる作業だったか、想像を絶するものがあります。

内容的には、前作あたりまでに存在したクリーンボーカル……シャグラット(Vo, Key)以外のゲストが歌うパートがなくなり、すべて彼のデス声で通されています。そこが単調さにつながる危険もありますが、そのぶんを合唱隊がうまくフォローしてくれます。

また、バンドのプレイもブルータルさを少々残しているものの過去の作品ほどではなく(せいぜい9曲目「Alpha Aeon Omega」程度かな)、ミドルテンポを中心とした、あくまでオーケストラと合唱隊ありきのアレンジが施されている気がします。各曲5〜6分程度というのも、こういった編成のわりには練りこまれ、しっかりまとめられている印象が強いです。ホント、気の遠くなる作業だったんでしょうね……。

以前からのファンには酷評されているようですが、自分のようにそこまで熱心なリスナーではない人間には比較的好印象な1枚。というか、好きです。もはやこれをブラックメタルと呼べるのかどうか問題もありますが、これもヘヴィメタル/エクストリームミュージックの進化形のひとつ。素直に楽しみたいと思います。



▼DIMMU BORGIR『EONIAN』
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投稿: 2018 11 20 12:00 午前 [2018年の作品, Dimmu Borgir] | 固定リンク

2018年11月19日 (月)

CHROME DIVISION『ONE LAST RIDE』(2018)

ノルウェーのシンフォニックブラックメタルバンドDIMMU BORGIRのフロントマン、シャグラットがギタリストとして参加するプロジェクト、CHROME DIVISONの2018年11月発売の5thアルバムにしてラストアルバム。

ここ日本でも3rdアルバム『3RD ROUND KNOCKOUT』(2011年)が国内盤としてリリースされた経験がありますが、今作は今のところ国内盤リリース予定なし。3rdおよび4thアルバム『INFERNAL ROCK ETERNAL』(2014年)に参加した2代目シンガー、シェイディ・ブルーが昨年脱退し、今作では初代シンガーのエディ・ガス(爆走R&RバンドTHE CARBURETORSのフロントマン)が再参加。さらに、2代目ベーシストのオギーも昨年脱退しており、本作ではシャグラットがベースを兼任しております。

デビュー以来、一貫してMOTÖRHEAD直系のバイカーロックをプレイしてきた彼ら。その信念はラスト作でも突き通されており、哀愁味漂う(まるでカントリーウエスタンのオープニングのような)インスト「Return From The Wasteland」からヘヴィなロックンロール「So Fragile」へとなだれ込む構成はさすがの一言。以降もアップテンポでヘヴィさを伴う男臭いロックンロールが次々に繰り出されていきます。

THE HELLACOPTERSよりはヘヴィロック寄り、だけど泣きのメロディは共通するものがある。かつ、MOTÖRHEADほど速すぎず、適度なアップテンポ感がこのヘヴィさと相まって、本当に気持ち良い。「Walk Away In Shame」ではミドルテンポにシフトチェンジするパートがあったり、ギターのツインリードや女性ボーカル(Miss Selia)がフィーチャーされたりと、いろんなフックが仕掛けられています。「You Are Dead To Me」のアレンジも、なんとなくストーナーロック的なものが感じられるし、「The Call」あたりにはモダンメタルの色合いも見え隠れする。こういった要素が彼らの独自性確立につながっていることは間違いありません。

DIMMU BORGIRの白塗りメイク&シンフォニックなサウンドをイメージすると、この泥臭いバイカーロックにつながりにくいかもしれません。が、こうやってノーメイクで別の側面を見せてくれるところに人間味を感じるし、こうした生々しいロックでよりその温かみを見せて/聴かせてくれると「なんだ、めっちゃいい奴じゃん」と不思議と株が上がる……のは気のせいでしょうか(完全に偏見ですね)。

メタル耳にも十分に耐えうる重さが伴っているので、いわゆるガレージロックに物足りなさを感じるHR/HMリスナーにも打ってつけではないでしょうか。本作でその活動に幕を降ろすのは非常に勿体ない気がしますが、今は頭を空っぽにして本作を爆音で楽しみたいところです。



▼CHROME DIVISION『ONE LAST RIDE』
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2018年11月18日 (日)

AZUSA『HEAVY YOKE』(2018)

THE DILLINGER ESCAPE PLANのリアム・ウィルソン(B)と、ノルウェーのテクニカルデスメタルバンドEXTOLのクリスター・エスペヴォル(G)&デイヴィッド・フスヴィック(Dr)というカオティックなエクストリームミュージックファン生唾モノのメンツが揃ったバンドAZUSA。彼らが2018年11月にリリースしたのが、このデビューアルバム『HEAVY YOKE』です。

AZUSAはこの3人に紅一点のエレーニ・ザフィリアドウ(Vo, Piano)を加えた4人編成。バンド名の“アズサ”から日本人女性が関係あるのかと思いきや、「18世紀当時、南カリフォルニアにいたコマ・リーというネイティヴ・アメリカンの少女は断食と祈りで、人々の病を治すことができた。“アズサ”という名は彼女の神秘的な力で病が治ったという部族の長老が与えたもの。彼らトングヴァ族の言葉で“祝福された奇跡”を意味する」そうです。

そんな神秘的なバンド名を持つ彼ら。このメンツから想像できるサウンドが終始展開されているのですが、特筆すべきはエレーニのボーカルでしょう。

時には男性真っ青なスクリームを轟かせ、時には癒しのような繊細な歌声で囁く。プレス資料にある「ケイト・ブッシュがボーカルのSLAYER、もしくはアネット・ピーコックとDEATHのコラボレーションをあなたは想像できるだろうか?」という説明も納得のボーカルパフォーマンスを、存分に楽しめます。

もちろん、これはボーカルだけが素晴らしいからというわけではなく、そのバックでうねるように変幻自在な演奏を繰り広げる楽器隊の手腕によるものも大きいわけですが。つまり、どっちもクセが強いのに相手を負かしてないし、自分も相手に負けていない。力と力のぶつかり合いをしつつも、共倒れすることなく、むしろするりとかわしたりしながら両者の魅力を引き出している。これって簡単なようですごく難しいことだと思うのですが、それをいとも簡単にやり遂げている。いやいや、ものすごいアルバムですよ、これ。

全11曲(日本盤はボーナストラック1曲追加)で34分(日本盤は38分)というトータルランニングもちょうどよい。狂気じみた作品だけど、これくらいのボリュームだと何度も繰り返し聴きたくなるし、聴き返すにはちょうど良い長さなんですよね。

変拍子があったり不協和音が飛び出したりと、ヘヴィロック/ラウドロックファンはもちろんのこと、ハードコアやアヴァンギャルドな音楽が好きな人にもアピールするものが少なからず含まれている本作。エクストリームミュージックにおける最新形……と言ってしまうのは大げさかもしれませんが、2018年に彼らのようなバンドが登場し、このアルバムでその存在感を時代に刻み込んだことは間違いない事実。これ、ライブで観たらどうなるんだろう……ただただ、それだけが楽しみでならない、今一番“生で観たい”バンドのひとつです。



▼AZUSA『HEAVY YOKE』
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2018年11月17日 (土)

SICK OF IT ALL『WAKE THE SLEEPING DRAGON!』(2018)

NYHCの重鎮、SICK OF IT ALLが2018年11月にリリースした通算12枚目のスタジオアルバム。前作『THE LAST ACT OF DEFIANCE』(2014年)から4年ぶりの新作にあたり、『LIFE ON THE ROPES』(2003年)以来15年ぶりとなるFat Wreck Chordsからのリリース作品となります(流通はこれまでどおり、Century Media Recordsからですが)。

僕自身はこのバンドの熱心なリスナーではなく、90年代初頭にRelativity Records(日本ではソニー)から発表された2nd『JUST LOOK AROUND』(1992年)や、メジャー移籍作となった3rd『SCRATCH THE SURFACE』(1994年)と続く4th『BUILT TO LAST』(1997年)程度しか聴いていませんが、90年代半ばの来日公演(アイルランドのTHERAPY?とのジョイント公演)には足を運んだことがある、その程度の知識しかありません。

が、このアルバムは全17曲33分、気持ちが途切れることなく最後まで楽しむことができました。速かろうがミドルで重かろうが、どの曲も1〜2分で完結している。中には1分に満たないショートチューンも存在し、気を抜けばどんどん曲が進行していくこのテンポ感、嫌いじゃないです。それに、チュー・マドセン(彼らの過去作のほか、THE HAUNTEDやDARK TRANQUILLITY、日本のDIR EN GREYONE OK ROCKBABYMETALなど)がミックスを手がけていることも、この聴きやすさの大きな要因かもしれません。

モダンメタルとのミクスチャー化が顕著だった『SCRATCH THE SURFACE』あたりとは異なり、シリアスさの目立つ初期の『JUST LOOK AROUND』ともちょっと違う、もっとストレートなハードコアパンクといったイメージでしょうか。中には陽気さが感じらえるメロディックハードコア寄りのナンバーもあり、そういった楽曲がアクセントとなって単調になりがちなこの手の作品に深みを作っているような気がしました。

また、「『SCRATCH THE SURFACE』あたりとは異なり」と書いたものの、そういった要素が完全に払拭されたかと言うとそうではなく、“通過した過去の要素”たちも本作の中から感じ取ることができます。それが30年以上にわたり地道な活動を続けてきた、彼らなりのこだわりであり強みなのかもしれませんね。

Spotifyの新作リリースの中からたまたま見つけ、久しぶりに聴いてみようとおもったのがきっかけでしたが、こうやって新鮮な気持ちで彼らの音と接することができたのは嬉しい限り。基本的には店頭でCDを購入するほうが好きですが、こういう出会いがあるとストリーミングサービスも捨てたもんじゃないなと思えました。



▼SICK OF IT ALL『WAKE THE SLEEPING DRAGON!』
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2018年11月15日 (木)

PIG DESTROYER『HEAD CAGE』(2018)

アメリカはヴァージニア州アレクサンドリア出身の5人組グラインドコアバンド、PIG DESTROYERが2018年9月に発表した6thアルバム。実は20年以上のキャリアを持つ重鎮で、本作は前作『BOOK BURNER』(2012年)から実に6年ぶりの新作となります。

このバンド、もともとはベーシスト不在でしたが、前作リリース後(2013年)に初めてベーシストが参加。本作はベーシスト(ジョン・ジャーヴィス)を含む5人体制での初レコーディング作品に当たります。

ベーシストが加わるというバンドにとって大きな変革が訪れたためか、本作にはサウンド自体にも大きな変化が表れています。例えば、これまでの作品はグラインドコアバンドらしく、1曲が1分前後と非常にコンパクトなショートチューンばかりで、アルバム自体も20曲前後で30分程度のものが多かったように思います(アルバムによっては10分近くある実験的なナンバーも1曲程度含まれていましたが)。

ところが、本作は全12曲で31分。5曲が1分台とこれまでどおりですが、2分台後半から3分台後半の曲が半数近くを占め、それらの楽曲はスピードに頼らないグルーヴィーなものだったりします。ボーカルはいつもどおりグロウルやらデスボイスやら中心で、ミドルテンポになろうがメロウになることは一切ないのですが、アレンジのバリエーションが増えたことでアルバムに緩急が付き、これまでの「なんだかわからないうちに終わっていた」という傾向が薄まりつつあります。これが良いことなのか悪いことなのかは、彼らに何を求めるかでまったく異なりますが、個人的には「なんだか面白いことになったな。これ、聴きやすいぞ」と思いました。

まあそもそも、このバンドに聴きやすさを求める輩がどれだけいるのか?って話ですけどね。

聴きやすさの話題が続きますが、本作はミックスのバランスも非常に聴きやすくなっている気がします。ベースの低音域が加わったこともあってか、かなり聴きやすい。ミキシングを担当したウィル・パットニー(BODY COUNT、MISS MAY I、SHADOWS FALLなど)の手腕によるものも大きいんでしょうか。

ショートチューンのカッコよさは文句のつけようがありませんが、メタル耳で聴くと終盤の「The Last Song」あたりはツボじゃないかな。7分におよぶラストナンバー「House Of Snakes」もドゥーミーかつメタリックで、爆音で聴いたらなお気持ちよし。普段そこまで積極的にグラインドバンドを聴くわけではないですが、この作品は非常に楽しめました。



▼PIG DESTROYER『HEAD CAGE』
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2018年11月14日 (水)

THE FEVER 333『MADE AN AMERICA』(2018)

ボーカル、ギター、ドラムのトリオ編成によるアメリカのラップコアバンド、THE FEVER 333のデビューEP。海外では2018年3月にデジタルリリースされ、ここ日本では同年7月の『FUJI ROCK FESTIVAL '18』での初来日に合わせて同月に初CD化発売されています(海外では未CD化でデジタルとアナログ盤のみ)。

フジロックでのパフォーマンスが大反響を呼び、ロックファンのみならずメタル界隈の一部でも話題になった彼ら。早くも来年3月の単独来日も決まり、さらに年明け1月には1stフルアルバム『STRENGTH IN NUMB333RS』のリリースも控えています。海外では新人ながらも『KERRANG!』誌の表紙を飾り、BRING ME THE HORIZONのサポートアクトも決まるなど、まさに今もっとも旬なバンドのひとつと言えるでしょう。

Roadrunner Records期待の新人という文字面だけで判断したら「どんなメタルバンドだよ!?」と期待してしまいがちですが、お聴きのとおりモダンなテイストを含む、メタルやパンク、ラウドの枠だけには収まらない音をかましています。「新世代のRAGE AGAINST THE MACHINE」なんて声も聞こえてきましたが、いやいや、彼らはTWENTY ONE PILOTS以降のポストハードコア/エモ/ラウド/ポップスの流れを踏襲した、生まれるべくして生まれたバンド……ルーツや出身が異なるだけで、実はベクトル的にはTWENTY ONE PILOTSと比較的近いような気がするのは、僕だけでしょうか。きっとフジロックでのパフォーマンス映像を観た影響も強いんでしょうね。

とはいえ、そう判断するのはこのEPに含まれた7曲と、先のライブパフォーマンスによるものが大きいので、続く1stフルアルバムを聴いたらまた印象が変わるかもしれませんが、それはそれとして(すでに配信済みのリードトラック「Burn It」からはこのEPをさらに一歩押し進めたカッコよさが漂っています)。

確かにRATM以降のラウドシーンに現れた新たな可能性として、メタル/ラウド村側から花火を打ち上げたいのはよくわかります。けど、そこはもっと広い目で見ておかないとね。

ポップな側面も至るところから感じられますが、基本的にはストリート寄りの攻め攻めな内容。収録曲の「(The First Stone) Changes」にはラッパーのイェラウルフがフィーチャーされていたり、このプロジェクト自体にBLINK-182のドラマー、トラヴィス・パーカーが携わっていたり、メタル/ラウド/パンク系プロデューサーとしても活躍するジョン・フェルドマン(GOLDFINGER)が全面参加していたりという点からも、彼らの出身が伺えるし、現時点でどこに進んでいきたいのかも理解できます。

というわけで、個人的にはメタル/ラウド村よりはもっと広いフィールドでのびのびと活躍してほしいなと願わんばかり。まずはフルアルバムと、来年の来日公演ですね。そこで正確な判断を下したいと思います。



▼THE FEVER 333『MADE AN AMERICA』
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投稿: 2018 11 14 12:00 午前 [2018年の作品, Fever 333, The] | 固定リンク

2018年11月12日 (月)

MUSE『SIMULATION THEORY』(2018)

初の全米No.1を獲得した前作『DRONES』(2015年)から約3年ぶりに発表される、MUSEの通算8枚目のスタジオアルバム。ロバート・ジョン・マット・ラング(DEF LEPPARDブライアン・アダムスAC/DCなど)とタッグを組んだ前作から一変、本作では旧知の仲間であるリッチ・コスティ(FOO FIGHTERSTHE MARS VOLTAAT THE DRIVE-INなど)に加え、マイク・エリゾンド(ドクター・ドレー、エミネム、MAROON 5など)、シェルバック(テイラー・スウィフト、アデル、アダム・ランバートなど)、ティンバランド(ジャスティン・ティンバーレイク、ミッシー・エリオット、ONE REPUBLICなど)という異色のプロデューサー/ソングライターを多数迎えた、バラエティ豊かな内容に仕上げられています。

本作は昨年5月に発表されたシングル「Dig Down」からスタートしたと言っても過言ではないでしょう。当初は単発シングルであり、これが次作への序章とはまた異なるものであるようなアナウンスもあったかと思いますが、年が明けてから2月に「Thought Contagion」、7月に「Something Human」と不定期に新曲が届けられると、ようやくニューアルバム発売情報も発表され、秋には「The Dark Side」や「Pressure」といったリードトラックも解禁。どの曲も完成度は高いものの、アルバムとしてまとまったときの方向性がボンヤリしていたような気がして少々モヤモヤしたものがありました。そう、曲単位では本当に素晴らしいんですけどね。

先週末に届けられたニューアルバム。デラックス盤やスーパーデラックス盤などボーナストラックが複数含まれるバージョンがあるものの、今回はアルバム本編11曲(トータル42分程度)について話を進めたいと思います。

まず、40分台のコンパクトなアルバムはずいぶん久しぶりだなと。振り返ると、全米ブレイクのきっかけとなった4thアルバム『BLACK HOLES AND REVELATIONS』(2006年)以来(トータル45分)でした。最近は50分強で、本編中に大作が含まれていたり、曲数が13曲くらい入っていたりしましたからね。

ですが、この11曲42分という内容、先に書いたようにトータリティに関しては過去イチで薄いものと言えるでしょう。従来のMUSEらしい変態的ギタープレイをフィーチャーしたロック/ポップチューンを含みつつも、モダンなエレクトロポップの要素を強めたシングル向き楽曲、ヒップホップ色濃厚なナンバーなど、かなり斬新な楽曲も複数含まれています。ですが、それらは決して「MUSEらしくない」ものではなく、しっかりとMUSEのフォーマットの中でギリギリのラインをはみ出したりはみ出さなかったりしながら、ジワジワとその許容量を広げているのです。ぶっちゃけ、曲単位で聴いたら(例えば先行リリースされた「Dig Down」みたいに)若干拒否反応を示すかもしれませんが、アルバムの流れで聴くと意外と馴染んでしまうのだから、不思議です。

そうなんです。トータリティは薄いんだけど、不思議と「MUSEの作品集」としては当たり前のように楽しめる。これまでの「アルバム」というフォーマットを重要視したスタイルとは明らかに異なるものの、この流れで聴けば抵抗なく聴き進められるのです。そんなマジックみたいなアルバムがこの『SIMULATION THEORY』なのかもしれません。

アルバム冒頭の2曲(「Algorithm」「The Dark Side」)は確かにアルバムというフォーマットを想定した構成だと思いますし、ラスト2曲(「Dig Down」「The Void」)も同様でしょう。それを意図して作られたものなのか否かはわかりませんが、ストリーミング主流時代に突入した今、アルバムというフォーマットの意味が薄まりつつある中でMUSEというバンドがこんな作品を提示してきた。これ自体がある意味現実を表すと同時に、挑戦でもある。そう受け取ることはできないでしょうか。

ぶっちゃけ、アルバムとしての思い入れは過去作ほど強いものにはならないかもしれない。だけど、聴く頻度は異常に高くなりそうな気がする。そんな新時代の代表作になりそうな1枚の登場です。

だからこそ、デラックス盤、スーパーデラックス盤に別バージョンを複数収録したというのも頷ける話。とはいっても、個人的には受け付けませんけどね、アルバムの流れとしては。こちらは単体で聴いて楽しんでいます、出来が良いものも多いので。



▼MUSE『SIMULATION THEORY』
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2018年11月 9日 (金)

SUEDE『THE BLUE HOUR』(2018)

2018年9月リリースの、SUEDE通算8枚目のスタジオアルバム。再結成後としては3作目のアルバムとなり、過去2作でプロデュースを務めた(初期作でおなじみの)エド・ビューラーが離れ、新たにアラン・モウルダーが初プロデュースを担当しています。

復活後の『BLOODSPORTS』(2013年)、『NIGHT THOUGHTS』(2016年)、そして本作は三部作を想定して制作されたそうで、その最終章となる今作は映画のサントラ的テイストが好印象だった前作を引き継ぐ、“これぞSUEDE!”なお耽美アルバムに仕上がっています。

本作のタイトル『THE BLUE HOUR』とは、日の出前と日の入り後に発生する空が濃青色に染まる時間帯を指します(アルバムジャケットで表現されている、まさにこの絵ですね)。つまり、深夜を表現した『NIGHT THOUGHTS』から夜明けまでの短い時間帯、その刹那を凝縮したのがこのアルバムなわけです。もう、この時点でSUEDEそのもの。聴く前から「これは傑作に決まってる!」と勝手に決めつけていました。

で、実際に聴いたら……これ、キャリア最高傑作じゃないか?って言いたくなるくらい、本当に素晴らしい内容なんです。問答無用のデビューアルバム『SUEDE』(1993年)はもちろん、続く『DOG MAN STAR』(1994年)や大ヒット作の3rdアルバム『COMING UP』(1996年)に並ぶ、いや、僕個人としては(現時点では)それらを超えたと言いたくなるくらい、圧倒的な内容だと思うのです。

序盤のドラマチックな流れといい、その楽曲群を見事な形で表現する楽器隊、「これしかない!」と言わんばかりに唯一無二なブレット・アンダーソン(Vo)のボーカル。すべてが完璧なバランスの上で成り立っており、そのどれもが他者を邪魔しない控えめさを持ち合わせている。なのに、「これじゃなくちゃダメ!」と納得するぐらいの説得力と存在感も兼ね備えている。だけど、どこかいびつ……うまく表現できないのですが、本当にそんなアルバムなのです。

パワフルなギターロックもあれば、ストリングスを効果的に用いたスローナンバーも多数用意。むしろ、そっちが中心なのですが、だからといってロックバンド的なパンチが弱いかと言われると、全然そんなことがない。むしろ、このバンドの場合はそっち側でノックアウトを狙ってくるから油断大敵。気づけばハートを鷲掴みにされ、目には涙が……みたいなことになるので、聴く際には細心の注意を。

曲単位でこれが好き!というよりも、アルバム全体を通してひとつの曲(組曲)みたいなアルバム。そう思っていたのですが、ふとしたときにYouTubeでたどり着いた「Life Is Golden」のMVにドキリとさせられ、気づいたらこの曲を延々リピートしていた。歌詞の内容とチェルノブイリの廃墟感を表した映像に後頭部を思いっきり殴られたような衝撃を受けました。個人的にこんな1曲がまたSUEDEの中から出てくるなんて、想像もしてなかったから本当に不意打ちを食らった気分です。

地味だけど豪華。そして濃厚。2018年はまだ終わっていませんが、間違いなく本年度のベストアルバムです。



▼SUEDE『THE BLUE HOUR』
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2018年11月 8日 (木)

THE STRUTS『YOUNG & DANGEROUS』(2018)

昨日取り上げたGRETA VAN FLEET同様、現在Universal Recordsが力を入れているロックバンドがこのTHE STRUTSなのは間違いないと思います。本作は本国イギリスで2014年に発売され、その後2016年に再リリースされたデビューアルバム『EVERYBODY WANTS』に続く2ndアルバム。個人的にはGRETA VAN FLEET以上に“待望の”という表現がぴったりな1枚でした。

前作をワールドワイドリリースして以降、シングルを小出しにするなどして2作目のアルバムへと向かっていった彼ら。プロデューサーにはブッチ・ウォーカーFALL OUT BOYアヴリル・ラヴィーン、ケイティ・ペリーなど)とサム・ホランダー(PANIC! AT THE DISCOWEEZER、ONE DIRECTIONなど)というアメリカ有数の名ソングライターを迎えて制作。結果、前作以上にモダンでカラフルなアルバムに仕上がりました。

フロントマンのルーク・スピラー(Vo)のフレディ・マーキュリーを思わせるルックスやファッション、歌声などから“第二のQUEEN”的な扱いをされることも少なくないTHE STRUTS。このアルバムもそうしたQUEEN的雑多さ満載の1枚で、聴く人によっては「焦点の定まらないもの」とネガティヴに受け取られる可能性もあります。が、そもそも80年代のQUEEN自体がそういう傾向が強かったため、70年代の彼らを評価するリスナーからは敬遠されていたところもあったと思います。その一方で、ロックだとかハードロックだとか固定のジャンルにこだわらないリスナーからは「ヒットチャートを賑わせるアーティストのひとつ」として、そのポップでキャッチーな楽曲自体を純粋に評価された。結果、彼らは80年代半ばにライブにおいてキャリア最大のピークを迎えるわけですから、世の中わからないものです。

それと同じことが、このTHE STRUTSの2作目にも言えるんじゃないか。そんな気がしています。ストレートなロックチューンもあれば、モダンな味付けがされたポップナンバーもある。前作以上にアメリカンフレイバーが強まっていますが、その軸には古き良き時代のブリティッシュポップ/ロックからの影響が感じられる。それらの楽曲を、どこかフレディ・マーキュリーを彷彿とさせるシンガー(ルーク)が歌うのですから、嫌が応にもQUEENを思い浮かべてしまう。そりゃあ僕が嫌いなわけがない(自分の話で恐縮ですが)。

アルバム中盤の「Fire (Part 1)」や終盤の「Ash (Part 2)」なんて、本当にQUEENですよね。ちょっと泣けましたもん。かと思えば、KE$SHAとコラボしたバージョンも捨てがたい「Body Talks」や「Primadonna Like Me」みたいな“今ドキ”な音もある。エヴァーグリーンな「Somebody New」や「Tatler Magazine」を聴いてもなお「売れ線に走ったバンド」と揶揄するというのなら、きっとこのバンドはあなたには合わないんだと思います。けど、1曲くらいは引っかかる曲、あるはずです。そういう“お子様ランチ”的アルバムなのですから。

お子様ランチは子どもがある一定の年齢に達すると注文するのを躊躇し、ある程度大人になると「子どもの食べ物」だと敬遠される。けど、自我を確立した大人になるとちょっと懐かしくなって食べてみたくなったりもする……このアルバムを聴いて、そんなことを思い浮かべたりもしました。自分の好きな食材(=音楽要素)がてんこ盛りの1枚。こういうバンドが2018年に存在してくれることに感謝したいです。



▼THE STRUTS『YOUNG & DANGEROUS』
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投稿: 2018 11 08 12:00 午前 [2018年の作品, Struts, The] | 固定リンク

2018年11月 7日 (水)

GRETA VAN FLEET『ANTHEM OF THE PEACEFUL ARMY』(2018)

GRETA VAN FLEETが2018年10月末にリリースした、待望の1stフルアルバム。1st EP『BLACK SMOKE RISING』(2017年)が全米182位、2枚組EP『FROM THE FIRES』(2018年)が全米36位と、バンドに対する注目度と比例するように順位を上げてきた彼らですが、このフルアルバムでは全米3位という好記録を獲得。イギリスでも最高12位という順位を残しております。今年8月の『SUMMER SONIC』での初来日は残念ながらキャンセルされてしまいましたが、この力作を携えて2019年1月にはついに単独来日公演も決定。今度はキャンセルしないでね。

さて、1年ぶりの新作となるこのフルアルバム。基本的には過去2作のEPと路線は一緒です。全10曲でトータル46分というトータルランニングも程よくて聴きやすい。過去作でハマったというリスナーなら間違いなく気にいる内容かと思います。

オープニングは「Age Of Man」という6分にわたるサイケデリックなスローナンバー。よく引き合いに出されるLED ZEPPELIN的な豪快ハードロックではなく、意表を突いた始まり方だと思います。もちろんM2「The Cold Wind」、M3「When The Curtain Falls」ではZEP的なロックが展開されているのでご安心を。1stアルバムでここまで思い切ったオープニングを用意するとは、すでに貫禄すら感じられます。

で、「Age Of Man」を聴いて改めて思ったのですが、ボーカルのジョシュ・キスカのハイトーンってロバート・プラントというよりはジョン・アンダーソン(ex. YES)のほうが近いんじゃないかなって。「The Cold Wind」や「When The Curtain Falls」では確かにプラントっぽく聞こえるんだけど、それって節回しだったり歌い方がプラント的なんだろうなと。声質自体は意外とアンダーソンのそれなのかもしれません。だからなのか、「Age Of Man」はどことなく70年代のYESを思い出したりもして……そう感じません?

とはいえ、アルバム全体で表現されているのはZEP以降の土着的なブルース(ハード)ロック。南部的なフレイバーももちろん健在で、そういった意味ではTHE BLACK CROWES的でもある……なんて解説は、今さらいらないですよね。むしろ、こういう新人を前にするとオッサンほどうんちくを語りたくなる傾向が強いので、過去との比較はこのへんにしておきます。

これを純粋に“新しい”と感じられるリスナーが本当に羨ましい。この50数年の間に何度も生まれては廃れ、そして再生されてきたスタイルが2018年に再び“新しい”音楽として浸透し始めている。それって本当に素晴らしいことですよね。実際、40代半ばの自分が聴いてもカッコいいと思えるわけですから、若い子たちにとってはその比じゃないんだろうなあ。

どの曲も良いんだけど、やっぱり個人的にグッとくるのは「Age Of Man」や「Lover, Leaver (Taker, Believer)」といった長尺の楽曲。特に後者は中盤のインストパートがツボです(YouTubeではライブ映像が公開されていますが、インプロヴィゼーションを含む30分近い圧巻のプレイを楽しめます)。この曲、CDでは5曲目というベストなポジションに配置されていますが、配信バージョンはラストに置き換え。代わりに5曲目には配信シングルとして先行リリースされたショートバージョン「Lover, Leaver」が置かれています。個人的にはCDバージョンの曲順のほうが好み。

あと、日本盤CDはボーナストラックとして1st EP『BLACK SMOKE RISING』の4曲が丸々追加されているので、初めてGRETA VAN FLEETに触れるビギナーはこっちを購入するといいんじゃないかな。



▼GRETA VAN FLEET『ANTHEM OF THE PEACEFUL ARMY』
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2018年11月 6日 (火)

DISTURBED『EVOLUTION』(2018)

再始動後もやっぱり働き者なDISTURBED、早くもニューアルバム発売です。

2015年8月発売の6thアルバム『IMMORTALIZE』では“これぞDISTURBED!”というヘヴィかつキャッチーなモダンメタルを展開し、5作連続全米No.1を獲得。翌2016年11月にはライブアルバム『LIVE AT RED ROCKS』もリリースされ、その前後には「The Sound Of Silence」(ご存知、SIMON & GARFUNKELのカバー)がシングルヒット(全米42位)。このバンドにしては異色のカバーでしたが、ひとまず再始動後の活動はメタルファンから大いに受け入れられたのでした。

で、オリジナルアルバムとしては3年ぶりの7thアルバム『EVOLUTION』が、2018年10月中旬にリリース。ケヴィン・チャーコ(オジー・オズボーンロブ・ゾンビFIVE FINGER DEATH PUNCHなど)を再びプロデューサーに迎えて制作された本作は、前作以上にキャッチーな“異色作”に仕上げられています。

スケジュールの都合で前作のレコーディングには参加できなかったジョン・モイヤー(B)でしたが、今回は無事制作に参加。アルバム本編に収められた10曲の新曲はバンドとケヴィン・チャーコの曲作なのですが、その収録内容の幅広さに驚かされます。だって、オープニングの「Are You Ready」こそ従来のDISTURBEDらしいヘヴィロックですが、3曲目「A Reason To Fight」や6曲目「Hold On To Memories」、8曲目「Watch You Burn」、10曲目「Already Gone」と約半数近くの楽曲がアコースティックギター主体のバラードナンバーなのですから。

間違いなく前作での「The Sound Of Silence」カバーの成功がもたらした“変化”であり“進化”である、と。これを良しとするかなしとするかで、本作に対する評価は大きく異なるのではないでしょうか。ぶっちゃけ、僕は本作を最初に聴いたとき、3曲目に早くも「A Reason To Fight」みたいなバラードが登場してひっくり返りましたから。さらに数曲おきに訪れるバラードタイム……「いやいや、聴きたいのはそれじゃないから!」とツッコミを入れながら再生1周目は幕を下ろすわけですが。

確かに、慣れたらそこまで気にならない……とまでは言わないけど、意外と馴染むんですよ。アルバムタイトルで『EVOLUTION』と歌っている以上、新しく変わるならここまでやらないと、という気概も大いに感じられるし。ジャケットのテイストが変わったのもその表れでしょうしね。

ちなみに本作、デラックス盤にはボーナストラック4曲を追加しているので、どうせならそっちにバラードを少し分けてあげたら……と思ったら、ボートラ4曲中2曲がバラードだった!(笑) うち1曲は「The Sound Of Silence」のライブバージョン(ALTER BRIDGEマイルズ・ケネディがゲスト参加)だし。残りの2曲も1曲が「Are You Ready」のリミックスなので、正味水増し感がハンパない……。数百円高くても曲を多く聴きたい人はデラックス盤を購入したらいいでしょう。けど、アルバムのトータリティにこだわりたい人は10曲おみの通常盤でいいと思います。

にしても、悪くないんだけど……う〜ん。なんとも評価が難しい1枚です。きっと数年後に新しいアルバムが出たときに、本作に対する本当の評価が下されることになると思うのですが、現時点では難しい。現時点では日本盤もリリースされていないし、5作連続だった全米1位記録も本作で途絶えてしまったし(初登場4位)。数字がすべてではないですが、う〜ん。



▼DISTURBED『EVOLUTION』
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2018年11月 3日 (土)

QUEEN『BOHEMIAN RHAPSODY (THE ORIGINAL SOUNDTRACK)』(2018)

11月9日から劇場公開されるQUEENを題材にした映画『ボヘミアン・ラプソディ』のオリジナルサウンドトラックとして、今年10月下旬にリリースされたのが本作。大半がリリース済みの音源ですが、貴重なライブ音源や本作のために制作されたミックスも多数含まれている、新たなコンピレーションアルバムとしても存分に楽しめる1枚となっています。

内容的には映画のストーリーとリンクした作りで、オープニングには20世紀フォックス(同映画の配給先)のファンファーレ(映画のオープニングに流れる、おなじみのアレ)がブライアン・メイ(G, Vo)のギターオーケストレーションにより新録されたトラックが収められています。これだけでもファンはアガるわけですよ。

全22曲中、シングル曲が19曲、さらに世界各国で1位を獲得した楽曲が11曲と、ファンでなくても耳にしたことがある楽曲ばかりではないかと。映画のタイトルとなった「Bohemian Rhapsody」や「Somebody To Love」「Killer Queen」「Another One Bites The Dust」「I Want To Break Free」「Under Pressure」「Who Wants To Live Forever」「The Show Must Go On」は既発のリマスター音源で収録。手軽なベストアルバムとして楽しめる一方で、実はそれ以外のテイクが本作のキモだったりするわけです。

先のファンファーレ含め、未発表/初登場音源が5曲、映像では発表済みながらもこれがオーディオフォーマットで初収録となる音源が6曲。つまり、半数が今のところ本作でしか聴けない音源となります。

例えば3曲目「Doing All Right」はQUEENのデビューアルバム『QUEEN』(1973年)収録曲ですが、本作はQUEENの前身バンドSMILEのバージョンで収録されています。とはいえこれ、実はボーカルや演奏はブライアン、ロジャー・テイラー(Dr, Vo)、そしてSMILEのオリジナルメンバーであるティム・スタッフェル(Vo, B)の3人で本作のために新たに録音したテイク。「Doing All Righ... revisited」というタイトルは、そういう意味なんですね。

また、おなじみの「We Will Rock You」はスタジオテイクとライブテイクをくっつけた、本作のために制作されたバージョン。スタジオで制作してからスタジアムで映える曲にまで成長するという、まるで映画の一場面を観ているような錯覚に陥る新鮮なテイクです。さらに「Don't Stop Me Now」も「revisited」がタイトルに付け加えられているとおり、新たに手が加えられたバージョンです。

本作は貴重なライブ音源も豊富で、近年リリースされた『LIVE AT THE RAINBOW '74』(2014年)や『A NIGHT AT THE ODEON – HAMMERSMITH 1975』(2015年)からの音源に加え、『LIVE IN RIO』(1985年)のビデオ作品(当時VHSやレーザーディスクで発売。現在まで未DVD/Blu-ray化)から「Love Of My Life」(観客の盛り上がりが異常!)や、同じく1985年の歴史的イベント『LIVE AID』から5音源(フレディ・マーキュリーの煽り含む)まで楽しむことができる、本当にファンにとって嬉しい内容。現時点で映画『ボヘミアン・ラプソディ』は未見ですが、確か『LIVE AID』がクライマックスとして描かれているという話なので、これらの音源が初CD化され終盤に収められているというのも納得な話です。

筆者同様、ファンならすでに何度もリピートしていることでしょうが、QUEENにそこまで明るくなくこの映画で触れようとしているビギナーは映画を観てからこのアルバムを聴くもよし。逆に先に本作で予習してから映画を観て、そのあとにほかのスタジオアルバムやベストアルバムに手を出してみるのもいいかもしれません。入り口としてはちょっと変則的な内容ではありますが、あくまで映画とセットでという注釈付きでの入門盤です。



▼QUEEN『BOHEMIAN RHAPSODY (THE ORIGINAL SOUNDTRACK)』
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2018年11月 1日 (木)

SLIPKNOT『ALL OUT LIFE』(2018)

10月31日、ハロウィンの深夜(日本時間)に突如SLIPKNOTからのプレゼント。なんと、2014年の5thアルバム『.5: THE GRAY CHAPTER』以来となる新曲「All Out Life」が公開されました。

レコーディングに突入したこと、来年にはヨーロッパツアーが開催されることがアナウンス、さらにイギリス『DOWNLOAD FESTIVAL』中日のヘッドライナー担当など、活動が活発化しつつあった彼らが、不意をついて5分40秒におよぶ新曲をハロウィンに配信とは、いやはや、嬉しいじゃないですか。

前作の際にもアルバムリリースの約3ヶ月前の8月1日に、アグレッシヴな先行シングル「The Negative One」を発表。このスパンから勝手に予想すると、アルバムは来年1月下旬〜2月頃にリリースされるのではないでしょうか。いや、順調に事が進んでいればの話ですが。まあ遅くても春先までには発表されると思います。それまでにもう1、2曲は小出しにしてくれるでしょうから、アルバムの方向性についてはそれらを聴くまで保留としておきます。

で、この「All Out Life」。ここ数作のSLIPKNOTらしさが凝縮されたアグレッシヴかつプログレッシヴな1曲となっています。コリィ・テイラー(Vo)は終始ドスの効いた声で叫び、リズムはグルーヴィーさを保ちつつ、しっかりとブラストビートも交えてくる。ギターリフのインパクトが若干弱い気がしないでもないですが(思えば前作もそういう作りでしたし)、“らしい”フレーズやプレイはところどころに登場するし、リズムとボーカルがグイグイと引っ張るスタイルだから、とりあえずはそこまでマイナスには感じない……ことにしておこう。

にしても、1曲にいろいろ詰め込んだね。猟奇性とドラマチックさが共存するこのアレンジ、嫌いじゃないです。特に、中盤以降のテンポダウンした(ピアノをフィーチャーした)ミドルパートからのブラストビート。最高です。MVのエグみ含めて、現時点では合格。

先にも書いたように、1曲だけで自作の方向性は語れないけど、この曲に関しては高く見積もって10点満点中8点をあげたい。来年でデビュー20周年。マンネリと言われようが、ここまで続けてくれていることに感謝。

ああ、この曲を爆音で流しながら渋谷のど真ん中に突っ込みたい(やらないけど)。



▼SLIPKNOT『ALL OUT LIFE』
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2018年10月30日 (火)

PANIC! AT THE DISCO『PRAY FOR THE WICKED』(2018)

2018年6月にリリースされた、PANIC! AT THE DISCO通算6枚目のスタジオアルバム。初の全米No.1を記録した前作『DEATH OF A BACHELOR』(2016年)から2年半ぶりの新作で、引き続き今作も全米1位を獲得しています。

前作からブレンドン・ユーリー(Vo)のソロ体制となったPANIC! AT THE DISCOですが、そのアルバムではソロだからこそなし得た「エレクトロ+サンプリング+ソウルフルな歌モノ」という、過去のスタイルをより推し進めた新たな個性を確立。もはやバンドだとかエモだとか、そういった括りがどうでもよくなるほどにポップで親しみやすいサウンドへと進化し、初期のちょっとゴシックなスタイルはどこへやら……と、『A FEVER YOU CAN'T SWEAT OUT』(2005年)が大好きだったリスナー(自分含む)は置いてきぼりを食らうのです。

が、その後に観たライブ(2016年のサマソニ)では、ビジュアルこそ変化したものの、芯にあるスタンスは変わっていないことに気づかされたりもして。そこから再び『DEATH OF A BACHELOR』に触れるとなるほど、と納得させられる部分も多かったのでした。

この新作も基本路線は変わっていないように思います。いや、むしろ初期の『A FEVER YOU CAN'T SWEAT OUT』を愛聴していた層にもひっかかるフックが豊富に用意されているように感じられました。

古き良き時代のアメリカンポップスやスタンダードナンバーを現代的な解釈(サンプリングを用いることでモダンさとエヴァーグリーンな感覚を残す、かつエレクトロという現代的な要素も忘れない)でビルドアップし、それをブロードウェイミュージカルのような手法で提供する。これこそがPANIC! AT THE DISCOが本来やろうとしていたことではないでしょうか。

それを初期はバンドという形で表現しようとしたものの、あるタイミングに歪みが生じ、1人離れ、また1人離れ、気づけばブレンドン1人になった。結果、ブレンドンが本来やりたかったことを、作品ごとに適したブレインとともに具現化していく。特に今作は前作での成功を踏まえ、全体的にポジティブさに満ちているように感じられ、それがショーアップされたスタイルに散りばめられることでより一層多幸感に満ちた内容となった。前作よりも即効性が強いのはそこも影響しているのかな。そりゃあ売れるわけですよ。

正直、『PRETTY. ODD.』(2008年)以降のPANIC! AT THE DISCOに関してはどこか誤解していた(あるいは、表現する側の焦点がぼやけていた)ところもありましたが、この新作は一点の曇りもない極上のポップアルバムであり、気持ちよく楽しめる1枚です。



▼PANIC! AT THE DISCO『PRAY FOR THE WICKED』
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投稿: 2018 10 30 12:00 午前 [2018年の作品, Panic! at The Disco] | 固定リンク

2018年10月29日 (月)

TWENTY ONE PILOTS『TRENCH』(2018)

メガヒット作となった前作『BLURRYFACE』(2015年)から3年ぶりに発表される、TWENTY ONE PILOTSの3rdアルバム(自主制作盤を含むと通算5作目)。複数のプロデューサーを起用して曲ごとに変化をつけた前作から一転、本作ではメンバーのタイラー・ジョセフとMUTEMATHのフロントマンであるポール・ミーニーという固定したメンツで制作に臨んでいます。

抜けの良さとわかりやすさに満ちた前作と比較すれば、今作は若干地味で内省的なアルバムに映るかもしれません。とはいえ、オープニングを飾る「Jumpsuit」のゴリゴリなリフは圧巻の一言。が、これまでの彼らだったらこのリフでグイグイ押しまくっていたはずなのですが、本作ではグランジ的な強弱を用いたダイナミックなアレンジが用いられています。ここで「TWENTY ONE PILOTSも大人になったなぁ」と困惑するリスナーも少なくないのではないでしょうか。

その後もヒップホップ調の「Levitate」や「Morph」「My Blood」と、全体的に落ち着いたトーンで展開していくこのアルバム。内省的を通り越してダークさすら感じさせる作風は、ライブでの弾けた彼らのイメージを思い浮かべれば異色の内容に映るかもしれません。

とはいえ、楽曲自体の完成度はさすがの一言で、メロディもしっかり練りこまれて親しみやすい。アレンジにしても隙間の多い音作りながらも、芯がしっかりしているからブレることがない。要所要所からは緻密さすら散見され、もはや圧巻を通り越して狂気すら感じさせるものではないでしょうか。

この独特のトーンのせいで、本来持ち合わせているポップかつキャッチーな側面が薄皮や紗幕で覆われてしまっているような気がしないでもないですが、だからこそじっくり聴き込むとその魅力にズブズブとハマっていく。一見気難しそうだけど慣れるとめっちゃ親しみやすい、そんな1枚なのかなと思いました。

大人になったことで若干トーンは落ち着いたのかもしれないけど、やろうとしていることは実は以前から変わっていない。ただ、その時代その時代に合ったやり方でトライしようとする。そりゃあ2018年の今、『BLURRYFACE』とまったく同じことをやったとしても受け入れられるかどうかわかりませんし、あれは2015〜6年という時代と見事合致したからこその成功だった。そう考えると、本作の持つ意味は現時点よりも1年先のほうがより明確になるのかもしれませんね。

確かに『BLURRYFACE』的な抜けの良い作品を期待していた自分にとって、最初は肩透かしだったのは否めません。しかし、何度も聴き返しているうちにその魅力にハマりつつある。現時点では自分的にいろんな可能性を秘めた1枚みたいです。



▼TWENTY ONE PILOTS『TRENCH』
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投稿: 2018 10 29 12:00 午前 [2018年の作品, Twenty One Pilots] | 固定リンク

2018年10月25日 (木)

MUDHONEY『DIGITAL GARBAGE』(2018)

MUDHONEYによる通算10作目のオリジナルアルバム。前作『VANISHING POINT』から5年ぶりの新作にあたり、今年結成30周年&リリース元であるSub Pop Recordsの設立30周年を祝う記念すべき1枚でもあります。

グランジ創世記から現在まで活動を続ける彼らですが、本作でも良い意味でなんら変わりない、あの頃のままのローファイなガレージロックを展開しています。

もちろん、当時にはなかったような味付けも本作には加えられており、例えばそれが「Please Mr. Gunman」で聴けるピアノであったり、リードトラック「Kill Yourself Live」で大々的にフィーチャーされたオルガンであったり、「21st Century Pharisees」を包み込むシンセであったりと、こういった味付けが不思議とポップさを際立てているんだから、本当に興味深い。

確かに初期の頃にあったアグレッシヴさや衝動性はここにはないのかもしれません。そういう点においては「なんら変わりない」というのは嘘になってしまいますが、でも聴けばMUDHONEYの作品だとわかるそのスタイルは、「Touch Me I'm Sick」から30年経った今も変わっていない。あの頃から維持している部分もしっかり残しつつ、人間としてもミュージシャンとしても成長した部分もしっかり感じられる。30年間で10枚と、キャリアのわりにリリースされたアルバムは少ないものの、だからこそ1枚1枚に凝縮されたエキスは濃いのです。

全11曲で34分と、昨今のロックアルバムの中でも比較的短い部類に入る本作ですが、だからといって聴きやすくてコンパクトというわけではない。この短さの中に30年の積み重ねがしっかり凝縮されているし、へたに60分以上あるロックアルバムよりも何倍も濃度が高い、極上の1枚だと個人的には感じています。

にしても、『DIGITAL GARBAGE』ってタイトル、最高じゃないですか? 結成30周年の節目に出すアルバムにこんなタイトルを付けるあたりも、いかにも彼ららしい。歌詞も実際に起きた最近の事件にインスパイアされたものから世の中の風潮を捉えたものまで存在する。マーク・アーム(Vo, G)は本作について「僕は物事を多少なりとも普遍的なものにしようとしてるんだ。だから、このアルバムのサウンドは今風には聴こえない。一方、(普遍的と言っても)ここに収録された曲は将来、消え去ってしまうことを望むよ。『おい、このアルバムの歌詞は今でも健在だよな』、なんて将来言いたい人はいないからね」とコメントしていますが、そういった意味では2018年ならではの内容と言えるのかもしれませんね。



▼MUDHONEY『DIGITAL GARBAGE』
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投稿: 2018 10 25 12:00 午前 [2018年の作品, Mudhoney] | 固定リンク

2018年10月19日 (金)

PAUL WELLER『TRUE MEANINGS』(2018)

2018年9月リリースの、ポール・ウェラー14作目のスタジオアルバム。12thアルバム『SATURNES PATTERN』(2015年)でParlophone Recordsに移籍して早くも3作目となります。前作『A KIND REVOLUTION』(2017年)が去年の5月発売だったので、1年4ヶ月という非常に短いインターバルにも驚きです。そういやあ、来日公演なんて今年の1月でしたものね。

5月25日に還暦を迎えてもなお、いや、還暦に向けてその活動ペースが再びアップしだしているポール・ウェラー御大ですが、今回のアルバムはアコースティックギターを軸にした、非常に穏やかな作品集に仕上がっています。

確かにエレキギターも使ってはいるものの、その音色はほとんど歪んでおらず、あくまで味付け程度。アコギを爪引きながら落ち着いたトーンで歌うポールの声に、ところどころでストリングスや美しいハーモニーが重ねられていく。なんですか、これは(笑)。最初に聴いたときは正直驚きました。前作『A KIND REVOLUTION』がどこかそれまでの集大成感が漂っていたのもあって、その延長線上で来るのかと思いきや、これですから。

もちろん、曲を聴けばメロディや節回し、ソウルの影響下にあるアレンジからウェラー翁らしさを存分に味わえるのですが、終始同じトーンなので……もしかしたら聴き手を選ぶ1枚かもしれません。

それは言い方を変えれば、今までポール・ウェラーという人にある種の暑苦しさを感じていた層にこそ触れてほしい1枚とも言えるわけで。THE STYLE COUNCIL時代とまではいわないものの、あの頃にあったクールダウンした(ちょっとオシャレな)世界観に近いものが再び展開されている、とも言えなくはないのかな。ただ、その表現方法は80年代のそれとは異なるわけですが。

“ロックスター:ポール・ウェラー”の姿はここにはないのかもしれない。あるとしたら、60歳になった男の等身大の姿と生きざま。THE JAM、THE STYLE COUNCIL、そしてソロと何周もしてきたこの音楽界で何度目かの“上がり”を経て、彼はようやく今、心の底からリラックスして音楽を楽しめているのかもしれない……そう受け取れなくもない1枚かな。

にしても、そのものズバリ「Bowie」なんてタイトルの美しいバラードもあったりして、本当に泣かせてくれます。

今年はむちゃくちゃ暑かったし、気象状況もヘンテコだったし、本当に散々な夏だったな……そんなことを思い返しながら、この秋じっくり浸りたい。僕にとってはそんなアルバムになりそうです。

もし、本作で来日公演が実現したら、この世界観を忠実に再現した編成になるのかしら。それはそれで観てみたいかも。



▼PAUL WELLER『TRUE MEANINGS』
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投稿: 2018 10 19 12:00 午前 [2018年の作品, Paul Weller] | 固定リンク

2018年10月17日 (水)

ASH『ISLANDS』(2018)

2018年5月にリリースされた、ASH通算7枚目のオリジナルアルバム。純粋なオリジナルアルバムとしては8年ぶりだった前作『KABLAMMO!』(2015年)から3年ぶりの新作となる本作は、デビューから5thアルバム『TWILIGHT OF THE INNOCENTS』(2007年)まで在籍した古巣Infectious Recordsに復帰しての意欲作で、プロデュースはメンバーのティム・ウィーラー(Vo, G)が担当。全英18位と、4thアルバム『MELTDOWN』(2004年)以来14年ぶりにトップ20入りを果たしました。

『TWILIGHT OF THE INNOCENTS』で“青春の終わり”を具現化したような物悲しさを表現し、続く“A-Z”シングルシリーズ期間にはいろいろと実験を繰り返したASHでしたが、前作『KABLAMMO!』で“青春よ再び”的初期衝動を取り戻し、年齢を感じさせない青臭さと疾走感を伴うパワーポップサウンドで往年のファンを喜ばせてくれました。

ところが、続く本作では前作でのポップネスをより追求した結果なのか、疾走感は二の次といった印象で、どっしりと構えたミドルテンポ〜ミドルアッパーの楽曲で占められています。それ自体は決して悪いことではなく、逆に「前作はなんだったんだ?」って不思議に思うくらい本作は年相応(?)なサウンドに回帰しているのです。

思えばASHって作品ごとの振り幅が強いバンドで、1作目『1977』(1996年)でパンキッシュなパワーポップを展開したかと思えば、続く2作目『NU-CLEAR SOUNDS』(1998年)ではテンポを抑えたポップロックに挑戦。3作目『FREE ALL ANGELES』(2001年)では再び青春感に満ちたパワーポップに回帰したものの、4thアルバム『MELTDOWN』ではメタリックなヘヴィサウンドへとシフトチェンジ……と、常に“前作とは違う方向”を探りながら作品を提供し続けてきたのです。

そういった意味では、前作と今作は軸こそブレていないものの、そのタッチや表現手段は意図的に変えているような、そんな印象を受けます。まあね、“A-Z”シングルシリーズを聴けば、この人たちが如何に多才で多彩かがおわかりいたわけるでしょうし、メロディアスさこそ変わらないものの表現方法が作品ごとに変わるのはもはや恒例行事と言っても過言ではありません。

そこを踏まえて聴いても、本作は非常に良くできたパワーポップアルバムだと思いますし、低迷期を経てもなお「Annabel」や「Buzzkill」「Don't Need Your Love」「Somersault」などのようなキラーチューンを生み出し続けているというその事実に驚かされるというか、頭が下がるわけですよ。

インディロックやブリットポップ、いろんな呼び方があるかと思いますが、僕の中ではASHは常にパワーポップバンドでした。この良作を携えて、11月には待望の来日公演も控えています。前作リリース時にも足を運びましたが、新曲と過去の代表経のバランスが絶妙で、初めて観た人でも一発でノックアウトされるようなステージを展開してくれるはずです。ぜひこの機会に足を運んでみてください。僕もスケジュールが合えば必ず行きます!



▼ASH『ISLANDS』
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2018年10月13日 (土)

NOTHING『DANCE ON THE BLACKTOP』(2018)

2018年8月にリリースされた、NOTHINGの3rdアルバム。前作『TIRED OF TOMORROW』(2016年)のツアー後に脱退した元DEAFHEAVEN、現WHIRRのニック・バセット(B/WHIRRではギタリスト)に代わり、USハードコアバンドJESUS PIECEのフロントマンであるアーロン・ハードが新たに加入、プロデューサーにはジョン・アグネロ(DINOSAUR JR.、SONIC YOUTH、ANDREW W.K.など)を迎え制作された初作品です。

シューゲイザー、ドリームポップ、ニューウェイヴ、90年代のUKロックといった要素をミックスし、現代によみがえらせたそのサウンドは本作でも健在。オープニングを飾る「Zero Day」からして、「これがフィラデルフィアのバンドかよ!」と思わせる陰鬱としたシューゲイザーサウンドを唸らせています。

そこにはグランジをはじめとする90年代初頭のUSオルタナティヴロックはもちろん、DEFTONESなど90年代後半からゼロ年代に勃発したヘヴィロックの香りも感じられ、単なるシューゲイザー/ドリームポップ・フォロワーでは終わらない不思議な質感が備わっています。

ダークでメランコリックな冒頭2曲(「Zero Day」「Blue Line Baby」)があるかと思えば、「You Wind Me Up」のようなモロに90年代前半のUKロック/シューゲイズポップも存在するし、爆音ギターとクリーントーンの対比が豪快ながらもポップさが感じられる「Us/We/Are」や、センチメンタリズムの強い「Hail On Palace Pier」みたいに「これ、本当にアメリカのバンドなの?」と驚かされる楽曲も含まれている。もちろん、その合間には「Plastic Migraine」や「I Hate The Flower」にようにヘヴィさを伴う楽曲が並んでいるのですから……なんというか、本当に気持ち良い。ある一定の年代にとって、ど真ん中に響くアルバムではないでしょうか。

個人的に本作のキモとなっているのが、終盤に配置された8分近くにおよぶ対策「The Carpenter's Son」。初期RIDEのアルバム終盤に入ってそうなスローナンバーは、本当に夢見心地にさせてくれる極上の1曲だと思うんです。大きな山こそないものの、このなだらかに流れていく感じと音響系的なギターの音色やフレージング、すべてがツボなんです。だからこそ、(ボーナストラック除く)ラストに再びメランコリックなロックチューン「(Hope) Is Just Another Word With A Hole In It」があると余計にグッとくるというか。いやあ……完璧。

本作は特に、ギターのエフェクトや音色の作り方が過去イチだと思いますし、実際それをカッコよく活かせる楽曲が揃っていると思います。と同時に、メジャー感も過去2作以上ではないかと。

これが2018年後半にリリースされた新譜かと思うと、90年代リアルタイム通過世代にはおよそ信じられないといいますか……若い世代はもちろんですけど、あの時代に思春期を過ごした大人たちにこそ触れてほしい1枚です。



▼NOTHING『DANCE ON THE BLACKTOP』
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投稿: 2018 10 13 12:00 午前 [2018年の作品, Nothing] | 固定リンク

2018年10月12日 (金)

THERAPY?『CLEAVE』(2018)

2018年9月リリースの、THERAPY?通算13枚目のオリジナルフルアルバム。前作『DISQUIET』(2015年)でAmazing Recordsに移籍した彼らでしたが、今作では新たにMarshall Records(あのアンプメーカーのMarshallによる新興レーベル)と契約。ここ数作、リリースのたびにレーベルを変えている彼らですが、やはりTHERAPY?クラスでも複数枚契約って難しいんですね。

本作最大の注目ポイントは、2作目のアルバムにして最大のヒット作『TROUBLEGUM』(1994年)やポップに振り切れた4thアルバム『SEMI-DETACHED』(1998年)以来となるクリス・シェルドン(PIXIESFEEDERFOO FIGHTERSなど)がプロデュースを手がけたということ(2003年の7thアルバム『HIGH ANXIETY』ではミックスを担当していたので、実質15年ぶりのタッグとなります)。今春以降「Callow」や「Wreck It Like Beckett」といった楽曲がデジタルシングルとして発表されてきましたが、それを聴く限りでは前作の延長線上にある、90年代半ばの黄金期を思わせるスタイルに回帰した作風ではないかと期待させてくれました。

で、完成したアルバム。全10曲でトータル33分と非常にコンパクトな内容ですが、期待を裏切らないかなりの力作に仕上げられています。

HELMETを思わせる硬質な「Wreck It Like Beckett」や、親しみやすいメロディを持つキャッチーな「Callow」、ヘヴィながらもとっつきやすい「Success? Success Is Survival」、THERAPY?らしいグルーヴ感を持つ「Crutch」、あの“カンカン”したスネアの音色とハーモニクスを効かせたギターのカッティング音が「そうそう、これこれ!」と懐かしさを思い出させてくれる「Dumbdown」など、とにかく“ファンが望むTHERAPY?像”をとことん追求してくれていることろに共感を覚えます。やればできるじゃん、と。

もちろん、2000年代以降の作品も決して悪かったわけではありません。ですが、以前よりも高音が出なくなったアンディ・ケアンズ(Vo, G)のメロディライン&センスに首を傾げたくなることが多かったのもまた事実。ところが、本作ではここ数作での努力が実ったのか、過去の“らしさ”と今できることの折衷案がベストな形で具現化されているのです。これは決してマイナスの遺産ではなく、すべてをポジティブに捉えた結果ではないでしょうか。

とにかくどの曲も、聴けばそれが「うん、THERAPY?ってこうだよね!」と納得いくものばかり。ラストの「No Sunshine」で聴かせるダークでドラマチックな世界観含め、すべてにおいて“痒いところに手が届く”作品なのです。

以前のような成功を収めることはもはや難しいでしょうし、日本盤もリリースされることはないでしょう。来日にしても……いや、観たいなあ。このアルバムの楽曲はぜひ生で聴きたいです。そう強く思わせてくれる力作、ぜひ触れてみてください。



▼THERAPY?『CLEAVE』
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2018年9月30日 (日)

LENNY KRAVITZ『RAISE VIBRATION』(2018)

ここ数作、古巣のVirgin Recordsを離れ、アルバムごとに所属レーベルが変わっているレニー・クラヴィッツ。前作『STRUT』(2014年)はソニー系列からのリリースでしたが、4年ぶりの新作『RAISE VIBRATION』はBMG(ワーナー配給)からの発売となります。

通算11枚目のスタジオアルバムとなる本作は、レニー本人のプロデュースのもと、長年のコラボレーターであるクレイグ・ロス(G)&デヴィッド・バロン(Key)との共同作業の末完成。ロックンロール色が後退し、初期の作品からプンプン匂っていたファンク色が濃厚になった、異色の1枚となっています。

まるで賛美歌のような厳かさと力強いビートがミックスされた「We Can Get It All Together」から始まると、その後は「Low」「Who Really Are The Monsters?」とファンク攻め。特に前者にはマイケル・ジャクソンのような抜けの良さがあり、後者はプリンス的な密室ファンク的要素が感じられる。「マイケルもプリンスも亡き今、俺が引き継ぐ!」とは考えていないでしょうけど、なんとなくその覚悟が感じられる……と思ったのは僕だけでしょうか。

その後もファンクロック的粘っこさがカッコいい「Raise Vibration」があったかと思うと、セクシーなソウルバラード「Johnny Cash」、もの悲しげなピアノバラード「Here To Love」など、歌をしっかり聴かせる曲が続きます。

8分近くあるラテン調ファンクの大作「It's Enough!」や、ディスコロックという表現がぴったりな「5 More Days 'Til Summer」、ブラスの音が気持ちいいグルーヴィーなミディアムチューン「The Majesty Of Love」、中期ビートルズ的サイケデリック感の強い「Gold Dust」、アコギが印象的なミドルナンバー「Ride」、そしてラストを締めくくる密室系ソウルバラード「I’ll Always Be Inside Your Soul」で幕を降ろします(日本盤ボーナストラック「Low」デヴィッド・ゲッタ・リミックスは除く)。

さまざまな苦悩を経て到達した本作は、テーマ的にはデビュー作『LET LOVE RULE』(1989年)の頃に立ち返った1枚と言えるかもしれません。来年でデビュー30周年を迎えるタイミングだけに、そこを見つめ直したのはある意味では正解と言えるでしょう。そこに加え、ポリティカルな主張も忘れていない。音楽的には大きな成長が感じられるし、と同時に温故知新も忘れていない。原点回帰とはいえ、むしろあの頃と同じものではない。そこらへんから、ようやくレニーが真の意味で復活を果たしてくれたのでは……と感じているのですが、いかがでしょう?

2015年の来日公演が中止になり、過去にも同様の件があったことから「やっぱりな……」と残念に感じていましたが、ここらでひとつ本気の姿を日本でも見せてほしい。そう願っております。



▼LENNY KRAVITZ『RAISE VIBRATION』
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投稿: 2018 09 30 12:00 午前 [2018年の作品, Lenny Kravitz] | 固定リンク

2018年9月20日 (木)

PAUL McCARTNEY『EGYPT STATION』(2018)

2018年9月発売の、ポール・マッカートニー通算18枚目のソロスタジオアルバム。前作『NEW』(2013年)からもう5年も経っていたんですね。ここ最近、2年おきに来日している気がして、そこまで時間が経っていると思いませんでした(よく調べたら、来日公演自体は2013年、2015年、2017年に実施していて、2014年は中止になった国立競技場公演があったのでした。実質4回も来てたのか。そりゃ来過ぎた! しかも2018年にもやってきますし)。

6月に先行リリースされたシングル「I Don't Know」「Come On To Me」は、良くも悪くも“いつもの”ポール節。安心安定で、今回も水準以上の作品にはなるんだろうなと信じていました。

で、8月には新しいシングル「Fuh You」が先行カットされたのですが……これがモダンな、“イマドキの”サウンドによるポップチューンでびっくり。おお、こりゃちょっと楽しみかも!と思っていたところに、アルバム到着。全体的には“いつもの”と“イマドキの”が程よくミックスされた、非常によくできた1枚だと思います。

全体のプロデュースはTHE BIRD AND THE BEEのグレッグ・カースティン(アデル、リリー・アレン、シーア、リアム・ギャラガーFOO FIGHTERSなど)、1曲のみライアン・テダー(ONEREPUBLICのシンガー)が担当しています。そう聞くと「なるほどな」と頷けてしまう、そんな内容ではないでしょうか。

ちなみに、僕が非常に気になった「Fuh You」はライアンとの共作&プロデュース曲。これも「なるほどな」と腑に落ちました。キャリアを総括するような作品であると同時に、しっかり“今”と向き合っている。それは手慣れたメンツとタッグを組むのではなく、グレッグ・カースティンやライアン・テダーといった現在のポップシーンを代表するトップアーティストとコラボする姿勢に表れていますし、自身の持ち味をどうモダンに昇華するか、それが2018年に通用するのか。ある意味、これはポールから今のポップシーンに対する“最後の挑戦状”なのかもしれません。

年齢的にも、おそらくこれが最後になってもおかしくないわけで、だからこそここまでゴッタ煮感がありながらも不思議と統一感がある内容になっているのではないかと。ポールが書く楽曲に一度でも心奪われたことがある人なら、絶対にどれか1曲、いや、どこか1ヶ所でもひっかかるパートがあるのではないでしょうか。そんな、76歳のおじいさんが今できることをすべて詰め込んだ、渾身の1枚だと思います。

終盤の「Do It Now」から「Caesar Rock」への流れ、そこからドラマチックな「Despite Repeated Warnings」へと続き、インタールード「Station II」から組曲「Hunt You Down / Naked / C-Link」で幕を下ろす構成は、涙なしには語れません。間違いなく、あのポール・マッカートニーのアルバムです。



▼PAUL McCARTNEY『EGYPT STATION』
(amazon:国内盤CD / 海外CD / MP3

投稿: 2018 09 20 12:00 午前 [2018年の作品, Paul McCartney] | 固定リンク

2018年9月17日 (月)

MONSTER MAGNET『MINDFUCKER』(2018)

2018年3月に発表された、MONSTER MAGNET通算10作目のオリジナルアルバム。前作『LAST PATROL』(2013年)から4年半ぶりとだいぶ間が空いたように思えますが、その間には『LAST PATROL』の再構築アルバム『MIKING THE STARS: A RE-IMAGINING OF LAST PATROL』(2014年)や、前々作『MASTERMIND』(2010年)の再構築アルバム『COBRAS AND FIRE (THE MASTERMIND REDUX)』(2015年)が立て続けに発表されているので、実はそこまで空いた感がないという。

プロデュースは前作同様、メンバーのデイヴ・ウィンドルフ(Vo, G)とフィル・カイヴァーノ(G)が担当。コ・プロデューサーとしてモーガン・ストラットン(WOLFMOTHER、BIFFY CLYRO、ノラ・ジョーンズなど)とジョー・バレッシ(MELVINS、QUEENS OF THE STONE AGECLUTCHCOHEED AND CAMBRIAなど)の名も連ねられており、ジョー・バレッシはミックスも担当しております。

まあ、そんなデータはどうでもいい話ですが(苦笑)、内容ですよね。

実は、MONSTER MAGNETのアルバムをまともに聴くのって、2000年代前半以来なんですね。それこそ、アルバムで言ったらメジャー時代最後の『GOD SAYS NO』(2001年)が最後かもしれない。それくらい彼らに対して積極的なリスナーではなかったですし、ぶっちゃけ『DOPES TO INFINIGY』(1995年)と『POWERTRIP』(1998年)と『GOD SAYS NO』ぐらいしかまともに聴いたことがない、そんな浅いリスナーであることを最初にお断りしておきます。

「ハードロックと21世紀のパラノイアを祝う作品」と謳われている本作ですが、基本的な路線はそこまで変わっていないのかなと。埃っぽくてブルージー、どこかサイケデリックなハードロック。ストーナーロックってことでいいんだろうけど、本作からはもっと直線的な印象も受けます。王道感といいましょうか……良くも悪くもド直球。それを「肝が座っていてカッコいい」と受け取るか「2018年にしては古臭い」と切り捨てるかで、本作に対する評価も大きく変わりそうな気がします。

また、本作ではHAWKWINDのシンガーだったロバート・キャルバート(1988年死去)のカバー「Ejection」も収録。この選曲もストレートすぎて、笑ってしまうといいますか。まあ、それでこそ彼らなんでしょうけどね。

そういえば、オリジナルアルバムとしては本作から初めてクリス・コスニック(B/ex. GODSPEED、現THE ATOMIC BITCHWAX)が参加。2004年に加入したボブ・パンテラ(Dr)も現在までTHE ATOMIC BITCHWAXと活動を兼任しているようですし、そのへんの影響も強くなっているのかもしれません。そういえば、THE ATOMIC BITCHWAXにはエド・マンデル(G/1992年から2010年までMONSTER MAGNETに在籍)も過去に参加していたので、このへんの交流をいろいろ調べていくと、サウンドの微妙な変化にも気づけるのかもしれません。

個人的評価としては、「肝が座っていてカッコいい」と「2018年にしては古臭い」の中間なんですよね……やっていること自体決して新しくはないし、だけど首尾一貫しているところはカッコよくて、そもそもこのサウンド/スタイル自体は嫌いじゃない。まあ、彼らに革新的なものを求めること自体が間違いだし、頭空っぽにして素直に楽しめばいいだけなんですけどね。

あ、ラストの「When The Hammer Comes Down」はBLACK SABBATHっぽくてかなりお気に入りです。途中の節回しや歌声もまんまオジー・オズボーンですし(笑)。このへんに、彼らのファン気質が感じられて、ちょっと嬉しかったりして。



▼MONSTER MAGNET『MINDFUCKER』
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投稿: 2018 09 17 12:00 午前 [2018年の作品, Monster Magnet] | 固定リンク

2018年9月16日 (日)

CLUTCH『BOOK OF BAD DECISIONS』(2018)

アメリカ・メリーランド州出身の4人組バンド、CLUTCHによる通算12枚目のオリジナルアルバム。前作『PSYCHIC WARFARE』(2015年)から3年ぶりの新作となり、プロデューサーを初期作や前2作を手がけたマシーン(LAMB OF GODFALL OUT BOY、SUICIDE SILENCEなど)からヴァンス・パウエル(THE WHITE STRIPES、KINGS OF LEON、ジャック・ホワイトなど)に代えた意欲作となっています。

90年代はワーナー系やソニー系のレーベルに所属していたことから、ここ日本でも国内盤がリリースされていたCLUTCHですが、2000年代半ば以降はインディーズで細々と活動しているようです。が、最近は前々作『EARTH ROCKER』(2013年)が全米15位、前作『PSYCHIC WARFARE』は全米11位と、メジャーで活動していた頃よりも好成績を残しています。本作はまだリリースされたばかりなので、これを書いている時点ではBillboardチャートの成績も発表前ですが、もしかしたら前よりも良い記録を残せるのでは……と思えるくらい、面白い内容に仕上がっているんじゃないでしょうか。

CLUTCHというとサザンロック流れのストーナーロックやブルースロックという印象が強いですが、本作はその集大成的な傾向が強まっている気がします。大半の楽曲が3分台というのは変わらず、楽曲のバリエーションも前作までに近いのですが、なぜかその聴かせ方いつも以上に冴えているといいますか。

ブラスをフィーチャーしたファンキーな「In Walks Barbarella」、軽快なピアノサウンドとの相性も抜群なアップチューン「Vision Quest」あたりは、ヴァンス・パウエルというプロデューサーの手腕発揮と言わんばかりの力作。ギターやベースのファズの効かせっぷりも絶妙で、音の温かみや厚みも“ちょうどよい”。そのまま演奏したら古臭いと片付けられそうな楽曲を、独特のセンスで現代にも通ずるようにうまく昇華させているし、もはやハードロックだとかストーナーロックだとか、そういった枠組みさえも飛び出している気がします。

で、こうやって聴いてみるみると、先に挙げたヴァンス・パウエルがプロデューサーやエンジニアとして携わったアーティスト群……THE WHITE STRIPES、KINGS OF LEON、ジャック・ホワイト、それにジュエルやリアン・ライムス、BIG & RICHといったカントリー系など……の名前を見て、妙に納得するものがあるんですよね。前作までのスタイルとそこまで大きく変化はないはずなのに、ここまで進化したように思えるのは、彼のアイデアも多少は含まれているということなんでしょうか。

こんなアルバムを聴かせられちゃったら、そりゃあ生で観たいと思っちゃうわけですよ。ところが彼ら、もう15年くらい来日していない。しかも、しばらく日本盤も出ていないわけですから……単独では厳しいですね。ぜひ来年あたり、苗場あたりが呼んでくれたらなあ……。



▼CLUTCH『BOOK OF BAD DECISIONS』
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投稿: 2018 09 16 12:00 午前 [2018年の作品, Clutch] | 固定リンク

2018年9月15日 (土)

SUICIDAL TENDENCIES『STILL CYCO PUNK AFTER ALL THESE YEARS』(2018)

前作『WORLD GONE MAD』(2016年)からちょうど2年ぶりに発表された、SUICIDAL TENDENCIESの通算13枚目となるオリジナルアルバム。前作から加入したデイヴ・ロンバード(Dr/ex. SLAYERDEAD CROSSなど)が叩く2枚目のアルバムとなります。本作の前には、今春に10曲入りEP『GET YOUR FIGHT ON!』が発売されており、そちらには本作にも収められている「Nothin' To Lose」が先行収録されています。

このアルバムは、マイク・ミューア(Vo)が1996年にCYCO MIKO名義でリリースしたソロアルバム『LOST MY BRAIN! (ONCE AGAIN)』を現メンバーでリメイクしたもの。基本的にはオリジナルに近いアレンジで、軽いサウンドメイクと疾走感が気持ちよかったオリジナル版に、デイヴ・ロンバードのドラミングにより重さが加わり、よりハードコア感が増したような印象を受けました。

また、オリジナル版がプロジェクト色の強いものだったこともあり、今回のリメイク版はよりバンド感が増しているのも特徴。そのへん、本作にはこの布陣ならではのタイトさも表れており、どちらが好きかと尋ねられたら迷わず今回のリメイク版を挙げることでしょう。

また、本作は完全リメイクというわけではなく、「Ain't Mess'n Around」は未収録(こちらのみEP『GET YOUR FIGHT ON!』にリメイク版が収録されています)。また、オリジナル版では「Cyco Miko Loves You」というタイトルだった楽曲がバックトラックはオリジナルの雰囲気を再現しつつ、歌詞とメロディラインを変え、「Sippin’ From The Insanitea」と題して収録されています。

本作に対して、マイク・ミューアはこんなコメントを残しています。


「デイヴ・ロンバードがSUICIDAL TENDENCIESにいる今、SUICIDAL TENDENCIESのレトロではないモダンなサイコ・パンク・レコードとして、このアルバムはリリースされなくてはならない。何年もの間、俺はこのアルバムの曲が好きだった。おそらく、30才であった当時より、今のほうが俺はこのアルバムの曲が好きだ。そして皮肉なことに、SUICIDAL TENDENCIESの作品ではなかったアルバムが俺をよりSUICIDAL TENDENCIESにした」


前作『WORLD GONE MAD』ではメタリックな楽曲も含まれており、曲によっては6分もあったりと持ち前のミクスチャー感を全面にアピールしていましたが、今作はそういうわけでど直球のパンク/ハードコア。そんななので、全11曲で41分というトータルランニングになっています。これ、10曲入りだった前のEP(45分)より短いんですけどね。まあ、潔くて良いじゃないですか。

まあ、これをデイヴ・ロンバードがいる編成でやらなくてもいいじゃないか……という声も聞こえてきそうですが、これはこれで楽しいのでよろしいのでは。何も考えずに楽しめる1枚ですし。

なお、本作のレコーディングをもってジェフ・ポーガン(G)が脱退。ツアーには昨年解散した THE DILLINGER ESCAPE PLANのベン・ワインマンが参加するそうです。それはそれで見てみたいぞ。



▼SUICIDAL TENDENCIES『STILL CYCO PUNK AFTER ALL THESE YEARS』
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投稿: 2018 09 15 12:00 午前 [2018年の作品, Suicidal Tendencies] | 固定リンク

2018年9月 4日 (火)

ULTRAPHONIX『ORIGINAL HUMAN MUSIC』(2018)

相変わらず次々に新しいバンド/プロジェクトを立ち上げる多作振りを発揮中のジョージ・リンチ。今度はLIVING COLOURのシンガー、コリー・グローヴァーと新たなバンドULTRAPHONIXを結成、今年8月に初のアルバム『ORIGINAL HUMAN MUSIC』をリリースしました。

メンバーはジョージ、コリーのほか、スタジオセッションなどで活躍するクリス・ムーア(Dr)、ファンクバンドWARやデイヴ・ロンバード(元SLAYER、現SUICIDAL TENDENCIES)とのトリオバンドPHILMなどでしられるパンチョ・トマセリ(B)の4人。このバンド、もともとはコリーではなくFISHBONEのアンジェロ・ムーア(Vo)と別の名前でライブを行っていたはずですが……まあ細かいことは気にしないことにしましょう。

ジョージがここでやりたかったことは、上のシンガー変遷とリズム隊のカラーからもわかるように、ハードロックとファンクの融合。ソウルフルだけどハードロック的なコリーのボーカルと、適度にグルーヴィーでタイトなリズム隊、その上でジョージが好き放題弾きまくるという、ファンならなんとなく想像できてしまう構図が、このアルバムの中で展開されているわけです。ここまで聴く前から内容がイメージできてしまうアルバム……さすがジョージ・リンチ。

さて、ジョージのプレイですが、思っていた以上にユルいです。リフもそこまでメタリックではないし、印象に残るものも少ない。ただ、ソロになるといきなりハメを外すんですよ。その落差が面白い。まあ、特に目新しいことはやってないですし、近年のジョージそのものかなと。

楽曲自体はコリーが歌ってることもあって、どこか LIVING COLOUR的。ただ、残念ながらヴァーノン・リードみたいな変態チックなプレイはありません。その“制御された狂気”こそがジョージそのものなんでしょうけど、これはこれで悪くない。個人的にはジョージのほかのバンド(特にKXM)よりは楽しめたかな。

プレスリリースでは、このバンドが目指す方向性について「初期RED HOT CHILI PEPPERS meets JUDAS PRIEST & KING CRIMSON」と記されていますが……後者2つの色、弱くない? KING CRIMSONなんて本編ラストの「Power Trip」ぐらいじゃ(ていうか、まんまなアレンジですけど)……まあ、本人がそう言ってるんだから、そうなんでしょう。たぶん、ライブではそういった要素が強まるんだろうなと、前向きに考えておきます。

このボーカルに対して、もっとメタリックなリフをバシバシぶつければよかったのに、といのが本作に対しての唯一の不満。それ以外は想定内であり、ジョージ・リンチのファンとしては心を広く持っているほうなので、純粋に楽しめる作品でした。



▼ULTRAPHONIX『ORIGINAL HUMAN MUSIC』
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投稿: 2018 09 04 12:00 午前 [2018年の作品, George Lynch, Living Colour, Ultraphonix] | 固定リンク

2018年9月 3日 (月)

U.D.O.『STEELFACTORY』(2018)

2018年8月末にリリースされた、ウド・ダークシュナイダー(Vo/ex. ACCEPT)率いるU.D.O.の通算16作目となるオリジナルアルバム。気づけば『ANIMAL HOUSE』(1987年)でデビューしてから、昨年で30周年を迎えていたんですね。途中、ACCEPTの再結成があって活動休止していたとはいえ、すでにウドはこちらでのキャリアのほうが長いことになるのか……。

真面目な話をすると、僕は熱心なU.D.O.リスナーではありません。むしろ、リアルタイムでしっかり追いかけていたのは、最初の活動休止前まで。つまり、4作目『TIMEBOMB』(1991年)までなんです。その後も『THUNDERBALL』(2004年)あたりは聴いていたけど、毎作必ず聴いていたかと問われると……ごめんなさい、というタイプのリスナーです。

そんな浅いリスナーの僕が聴いても、この『STEELFACTORY』は「これぞウド、ダークシュナイダー!」と力説したくなるくらいの、とても彼らしい王道ヘヴィメタルが展開されています。

オープニングの「Tongue Reaper」での疾走感、気持ち良いテンポ感の「Make The Move」、そして勇ましいヘヴィチューン「Keeper Of My Soul」と、冒頭の3曲だけで「今、自分はU.D.O.の新作を聴いているんだ」と理解できる/納得できる仕上がり。レコーディングはギタリスト1人のみですが、「In The Heat Of The Night」などで聴けるツインリードはACCEPT時代からのトレードマーク的なものだし、そこにウドの声やシンガロングしたくなるコーラスが乗れば、どこからどう聴いてもU.D.O.やACCEPTの楽曲になるわけです。

随所随所にきめ細やかなメロディラインが用意されており、昔のウドがらみの作品以上に聴きやすさが増している印象もあり、そのへんはアーティストとしての成長と受け取ります。プロデューサーであるジェイコブ・ハンセン(昨日のTHE WiLDHEARTSを筆頭に、VOLBEAT、PRETTY MAIDS、AMARANTHEなどヨーロッパ出身のバンドを多数担当)の手腕によるところも大きいのかもしれませんが、するする聴き進めてしまえる好盤だと思います。

全13曲で58分(日本盤は14曲で62分、海外限定盤および配信版は15曲で68分)と思っていた以上に長いし、ミディアムテンポ中心だから最初は「途中で飽きちゃうんじゃ……」と不安でしたが、飽きずに聴けたのも意外でした。それって、過去の作品よりもメロディラインやアレンジが凝っているからなんでしょうかね。とにかく、古き良きヘヴィメタルやHELLOWEENらそはじめとする“ジャーマンメタル”以前の王道ジャーマンヘヴィメタルを楽しみたいという人にうってつけの1枚だと思います。



▼U.D.O.『STEELFACTORY』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / 海外限定盤CD / MP3

投稿: 2018 09 03 12:00 午前 [2018年の作品, U.D.O.] | 固定リンク

2018年8月30日 (木)

ALICE IN CHAINS『RAINIER FOG』(2018)

全米2位まで上昇した前作『THE DEVIL PUT DINOSAURS HERE』(2013年)から5年3ヶ月ぶりに発表された、ALICE IN CHAINS通算6枚目のオリジナルアルバム。これで再結成後、レイン・ステイリー(Vo/2002年死去)在籍時と同じ枚数だけオリジナルアルバムを出したことになりますね。

過去2作同様、ニック・ラスクリネクツ(HALESTORMKORNMASTODONなど)をプロデューサーに迎えた本作は、過去2作以上にレイン在籍時の“90年代のALICE IN CHAINS”が脳裏に浮かぶ、これぞ完全復活作と断言できるような大傑作。いや、なんでしょうこのバランス感は。

ウィリアム・デュヴァール(Vo, G)という新たな個性が10数年という歳月をかけて、ようやくバンドに馴染んだということなのでしょうか。それとも、ジェリー・カントレル(Vo, G)が“あの頃”の感覚をようやく取り戻したということなのでしょうか。とにかく往年のALICE IN CHAINS節が、過去2作以上に強まっているのです。これって過去2作がカリフォルニアレコーディング、今作が地元シアトルでのレコーディングというのも大きく作用しているのかもしれませんね。質感が全然違いますもの。90年代の彼らが持っていた、あの“淀み”がここに完全復活していますし。

その“淀み”は質感のみならず楽曲スタイルにも表れており、例えば陰惨でヘヴィなオープニングトラック「The One You Know」は過去2作以上にALICE IN CHAINSだし、2曲目「Rainier Fog」は1stアルバム『FACELIFT』(1990年)時代を彷彿とさせる若干アップテンポのハードロック、4曲目「Fly」でのギターの泣きっぷりは2ndアルバム『DIRT』(1992年)当時を思い出させるし、5曲目「Drone」での曲展開も3rdアルバム『ALICE IN CHAINS』(1995年)までの彼らが憑依したような印象を受ける。そういう1曲1曲の作り込みと、このバンドが本来持っていた“らしさ”がアルバムの至るところから感じられるのです。

しかも、それが単なる焼き直しで終わっておらずに、しっかりアップデートされている。実はそのアップデート感こそが、デュヴァールのカラーなのではないか、と思うわけです。レインの亡霊を断ち切り、かといって完全に消し去るのではなく、意思を継ぎながら先に進む。再結成からの10数年で彼らはようやく本当の意味での“前進”ができたのかもしれませんね。

また、前作は12曲で67分とトータルランニングも長すぎた。今作は楽曲のバラエティに富みながらも10曲で53分と非常に聴きやすい。ラストの「All I Am」で終わるドラマチックな構成も含め、完璧すぎるほどにALICE IN CHAINSらしいアルバム……これぞ90年代以降のアメリカンハードロックの“王道”なのではないでしょうか。



▼ALICE IN CHAINS『RAINIER FOG』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 08 30 12:00 午前 [2018年の作品, Alice in Chains] | 固定リンク

2018年8月25日 (土)

ENUFF Z'NUFF『DIAMOND BOY』(2018)

2018年8月リリースの、ENUFF Z'NUFF通算14枚目(かな? 未発表曲集などの編集盤含めて)のスタジオアルバム。ドニー・ヴィ(Vo, G)在籍時のデモ音源などを含む前作『CLOWNS LOUNGE』(2016年)で、チップ・ズナフ(Vo, B)を中心にした新編成で本格的再始動を果たした彼ら。続く本作は、すべてチップ、トリー・ストッフリーゲン(G)、トニー・フェンネル(G, Key)、ダニエル・ヒル(Dr)という布陣で制作。もちろん、ボーカルはすべてチップが担当しています。

正直、チップの歌声にはドニーのような艶や危うさ(そこが“これぞフロントマン”的で良かったんですが)は皆無で、なんとなく録音の質感で“それっぽさ”は表現できているものの、ちょっとパンチに欠けるかな……楽曲のインパクトも以前と比べて弱めなだけに、歌が弱いと全体的にナヨナヨしたものに感じられちゃうんですよね。本当に勿体ない。

その楽曲も、インパクトは若干弱いものの、全体的にはよくできているほうではないかと。オープニングのSE「Transcendence」には少々驚くものの、続く「Diamond Boy」「Where Did You Go」は初期のグラムメタル然とした彼らをイメージさせるし、「We're All The Same」は王道のパワーポップ感がにじみ出ている。けど、歌がパッとしないから(以下同文)。

その後も初期っぽいヘヴィサイケロック「Fire & Ice」、ストレンジポップ風の「Down On Luck」、タイトルのわりにそこまでメタルっぽくない「Metalheart」、サイケバラード「Love Is On The Line」、豪快なハードロック「Faith Hope & Luv」、バラード調の「Dopesick」「Imaginary Man」と“惜しい”楽曲が並びます。悪くはないんですよ、どれもこれも。だって、ドニーが歌うだけでもうちょっと点数が高くなったと思うし。

本当に歌って大事。特にこの手のサウンドを信条とするバンドは、絶対に歌をごまかしちゃダメ。全部ラジオボイスみたいなエフェクトをかけて逃げようとするぐらいなら、もっとこのバンドに合ったフロントマンを見つけてこなくちゃ。それとも、過去の遺産(ENUFF Z'NUFFというバンド名さえあればやれること含め)を使ってミュージシャンとして延命したいだけなんでしょうかね、チップは。前作の録り下ろし曲「Dog On A Bone」は普通に録音してたぶん、まだよかったのに……。

ひどいことばかり書いているけど、本当に好きなバンドだからハードルを高く設定したくなるんですよ。ドニーを呼び戻すことが考えられないなら、本当にね、早急に歌える色気あるシンガーを捕まえてくること。チップが歌い続ける限り、100点は与えることはできないと思うな、自分。



▼ENUFF Z'NUFF『DIAMOND BOY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2018 08 25 12:00 午前 [2018年の作品, Enuff Z' Nuff] | 固定リンク

2018年8月24日 (金)

SHINEDOWN『ATTENTION ATTENTION』(2018)

2018年5月にリリースされた、SHINEDOWN通算6枚目のスタジオアルバム。3作目『THE SOUND OF MADNESS』(2008年)が初の全米TOP10入り(8位)を記録し、200万枚を超えるヒット作になったのを機に、以降の作品はすべて全米チャートで10位内に入っている彼ら。最新作も初登場5位というこう記録を残しています。

前作『THREAT TO SURVIVAL』(2015年)がポップな作風で、初期のガッツのあるサウンドを好むリスナーからは若干敬遠されがちでしたが、続く本作は本来のヘヴィさをモダンな質感にシフトさせた意欲作。それもそのはず、本作は心の中でささやく“悪魔”や忍び寄る不安と戦いながら生きる人々の様を時にヘヴィで引きずるようなサウンド、時には現代的なエレクトロサウンドを織り交ぜながら表現したコンセプトアルバムなのですから。

本作はブレント・スミス(Vo)を襲った精神的トラブルや心の葛藤がそのまま反映されていると言われています。アルバム冒頭を飾る「Devil」はまさにこのアルバムを象徴するような1曲で、先に挙げた「心の中でささやく“悪魔”や忍び寄る不安」を表現したもの。「Kill Your Conscience」ではSNSによって行動が縛られた現代人への怒りが綴られ、「Get Up」はうつ病に苦しむ人たちへ向けた応援歌、「The Human Radio」では自分の真実のために戦い続けることを歌い、「Brilliant」では心の強さで恐怖に打ち勝った瞬間が描かれている。もうこれだけで……ブレントに何が起こったのか、想像に難しくありません。

では、このようなテーマがどういったサウンドで表現されているかというと……意外とネガティヴすぎないんですよね。もちろんヘヴィでダーク、悲哀に満ちたサウンドもところどころで登場しますが、モダンな色付けを用いつつもしっかり光が感じられるのです。要するに、冷たくない。人工的な味付けをしていようが、どこかに必ず人の温もりが感じられるのです。いわゆるポスト・グランジ勢の中でも彼らが頭ひとつ飛び抜けた存在なのは、こうした「ネガティヴを享受して、聴き手にポジティヴを与える」ところに秘密があるのかもしれませんね。

デビューアルバム『LEAVE A WHISPER』(2003年)を初めて聴いたときは、正直アメリカでこんなに大きな存在になるなんて想像もしていませんでした。だけど、こうやっていろんなものを受け止めて前に進んできた彼らだからこそ、今の地位があり、このアルバムがある。ここ日本での評価は決して高くはありませんが(なにせ、2015年8月に初来日が実現したばかりですから)、この意欲作を携えた再来日にもぜひ期待したいところ。よろしくお願いします!



▼SHINEDOWN『ATTENTION ATTENTION』
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投稿: 2018 08 24 12:00 午前 [2018年の作品, Shinedown] | 固定リンク

2018年8月 9日 (木)

SALEMS LOTT『MASK OF MORALITY』(2018)

3年半前、本サイトでデビューアルバム『SALEMS LOTT』(2015年)を紹介して局地的に話題となったLAのグラムメタル/ヴィジュアル系(笑)バンド、SALEMS LOTTがついに待望の2ndアルバム(前作はミニアルバムでしたが)をリリースしました。今回もフィジカルでの一般流通はなさそうですが、デジタル配信&ストリーミングでここ日本でも聴くことができるので、大きな問題はないですね。よかったよかった。

彼らはそのルックス&ファッション、そして音楽性から「80年代のジャパメタ、主にX(X JAPAN)からの影響が強い」HR/HMバンドとして認識されていました(「いました」って、そこまで気にしていた人、ほとんどいないと思いますが)。が、あれから3年強が経ち、そのサウンドに少し変化が生じています。あれだけ前作を「80年代に活躍したバンドのアウトテイク」と揶揄した自分も、今回の新作を聴いて、まず1曲目の「Enigma」で驚かされました。

え、どうしたの? (前作よりも)めっちゃモダンなんですけど……(汗)。

全体的に80年代後半から90年代初頭ぐらいにまでバージョンアップされています。80年代半ばのジャパメタアウトテイクから大きく成長したな、おい!

でね。単なるコピー的な、個性のカケラも感じられなかった前作(ヒドイ言い草だ)から、一気に“らしさ”を確立させているから、驚いたわけです。そりゃね、MOTLEY CRUEっぽかったり、W.A.S.P.っぽかたり、どことなくX JAPANっぽかったりするところもありますよ。至るところから先人からの影響も見え隠れするのですが、今作ではそれが“コピー”や“真似っこ”ではなく“エッセンス”程度にとどめられている。しかも、ヴィジュアル系的な色合いもサウンドからはほぼ消えて、全体的に無理してない感じが素敵なんですよ。

そういった意味では彼ら、初期のBLACK VEIL BRIDESフォロワーと見られてもおかしくないんですが……そこまでも才能もないか(苦笑)。ま、だからこそ愛せる存在なんですけどね。

音質的にも、前作より多少良くなり、アルバム全編通して聴くに耐えうる程度にはなっている……かな。個人的にはもうちょっと頑張ってほしかったとも思うけど、これはこれでアリなのかな、と。

もし今、『VISUAL SUMMIT JAPAN』や『V-ROCK FESTIVAL』が存在したら、ぜひエントリーしてもらいたいバンドのひとつ。つうかさ、絶対にウケるでしょ? 「良い」ではなく「ウケる」ね。彼らこそ日本の洋楽メタルファンではなく、V系ヲタクに見つかってほしいんですどね。難しいかしら。



▼SALEMS LOTT『MASK OF MORALITY』
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投稿: 2018 08 09 12:00 午前 [2018年の作品, Salems Lott] | 固定リンク

2018年8月 4日 (土)

FIVE FINGER DEATH PUNCH『AND JUSTICE FOR NONE』(2018)

昨年12月発売のベストアルバム『A DECADE OF DESTRUCTION』を挟んで、『GOT YOUR SIX』(2015年)以来約3年ぶりに発表されるFIVE FINGER DEATH PUNCHの7thアルバム。プロデューサーは過去数作同様、バンドと好ダッグを組み続けるケヴィン・チャーコ。2枚目のアルバム『WAR IS THE ANSWER』(2009年)から6作連続で全米TOP10入り(最高4位)を果たすなど、改めてこのバンドの本国での人気ぶりを証明する結果を打ち立てました。

彼らはデビューからまだ11年と、キャリアのわりにアルバムをしっかり発表し続けており、成功も早い段階から掴んでいる、今のアメリカンHR/HMシーンの中では非常に稀有な存在です。また、彼らは非常にアメリカという国に密着した活動を続けており、例えば日本をはじめ世界各地の米軍基地で慰問ライブを行うなどして、ファンを拡大し続けており、そういった地道な活動がファンベースの拡大に一役買ったのは間違いありません(同じことは HALESTORMにも言えますが)。

また、ニューメタル以降のHR/HMバンドながらもブルースやカントリーなどの土着的サウンドをベースに持つところも、どこか日本における演歌っぽさがあり、それも親しみやすさにつながっているのでしょう(逆に言えば、そこが日本人には馴染みが薄いポイントでもあるわけですが)。

この新作でもそのスタイルは引き継がれており、正直特別新しい要素は皆無なのですが、そういった頑固一徹さもバンドのキャラクターとしての“男らしさ”につながっていると受け取ることもできます。もちろん、「Fire In The Hole」のような(音楽ジャンルとしての)クラシカルなカラーを持つ楽曲も含まれているし、THE OFFSPRINGのカバー「Gone Away」なんていうのもあったりするので、それなりに“新しい何か”に挑もうとする姿勢はゼロではないわけですが。とはいえ、やっぱり耳を引きつけられるのは、デラックス盤のオープニングを飾るニューメタル的な「Trouble」であったり、枯れたロックバラード「I Refuse」といった従来の彼ららしい楽曲なんですけどね。

むしろ、このスタイルを変えずに10年続けている事実がすべてであって、これこそが今の王道アメリカンHR/HMなのだ、と胸を張って言い切ることができる。もうそういう地点に到達しているのではないでしょうか。昨年のベストアルバムでひと区切りをつけたように思われたけど、ここから10年も変わらずこのスタイルを守っていく(もちろん、時代時代で新しさも少しずつ取り入れながら)……その意思表明が、アルバムタイトルの『AND JUSTICE FOR NONE』(アメリカ合衆国の「忠誠の誓い」に出てくる「Liberty and justice for all」をもじったもので、METALLICAの名盤『...AND JUSTICE FOR ALL』のパロディでもあるのかなと)にも表れているような気がします。

まあ、なにはともあれ。これこそが今のアメリカなんでしょうね、良くも悪くも。僕はもちろん“良くも”のほうで受け取っていますけど。まあ、あれだ。日本に来る機会が極端に少ないバンドなので、もっとしっかりライブをやってほしいわけです、ここ日本でも。それだけでも、だいぶイメージが変わると思うので。そこだけはぜひお願いしたいです。このアルバムの楽曲だって、ライブで映えるナンバーがたくさんあると思いますので。



▼FIVE FINGER DEATH PUNCH『AND JUSTICE FOR NONE』
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投稿: 2018 08 04 12:00 午前 [2018年の作品, Five Finger Death Punch] | 固定リンク

2018年8月 3日 (金)

HALESTORM『VICIOUS』(2018)

オリジナルアルバムとしては前作『INTO THE WILD LIFE』(2015年)から3年3ヶ月ぶりとなる、HALESTORM通算4作目のスタジオアルバム。プロデューサーは前作のジェイ・ジョイスから、最新カバーEP『REANIMATE 3.0: THE COVERS EP』(2017年)を担当したニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINSMASTODONKORNなど)に交代。EPでの仕事ぶりに好印象を受けた結果がこの新作に反映されているということなのでしょう。

作風は基本的に『INTO THE WILD LIFE』の延長線上にあるのですが、自分が想像していた以上にタフさ、ヘヴィさが際立つ1枚に仕上がった印象があります。実は前作をリリース当時に聴いたとき、そこまで強く惹きつけられず、数回聴いてしばらく放ったらかしだったのですが、今回はリード曲「Uncomfortable」からグッと惹きつけられ、リリースの1ヶ月近く前から取材用に聴いたアルバムサンプルでさらにグッと惹きつけられ、結果「これはなかなかな1枚!」とかなりお気に入りだったのです。このバンドのアルバムでここまで聴き込みまくったのは初めてってくらいに。

ヘヴィさが印象的ながらも、同時にメロディの冴え渡りぶりも前作以上。だからなのか、演奏がどれだけ重々しくなろうと、軸にあるものは非常にキャッチーだと思えてくる。そういった点から、昨今のモダンなラウドロックよりも80年代のHR/HM黄金期のそれに近く、我々オッサン世代にも引っかかるものが多々あるのでは、なんて思うのです。でも、もしかしたら若い世代にはこれ以前の作品のほうが引っかかるのかな。そのへんの意見、ぜひ各世代に聞き回りたいものです。

また、5曲目「Do Not Disturb」あたりを筆頭に、「Conflicted」「Killing Ourselves To Live」「Heart Of Novocaine」といった中盤に配置された楽曲群がかつてないほどにドラマチックな展開を見せており、そのあたりにHALESTORMとしての新境地も見え隠れしています。冒頭のヘヴィさといい、この展開といい、個人的にはこのバンド、まだまだ伸びしろ十分だなと思うのですが、どうでしょう? このバンドらしさをしっかりと残しつつも、新たな地点へと毎回到達でいているという意味では、作品ごとに異なるカラーをしっかり提示できている。そこもこのバンドの凄みなのかなと思いました。

とにかく今は、早くライブで聴きたいなと。そういうアルバムではないでしょうか。こういうアルバムに出会うと「アメリカの HR/ HMシーン、まだまだ捨てたもんじゃないな!」と、改めて実感します。ロック不毛と言われる時代だからこそ、思いっきり売れてほしい!



▼HALESTORM『VICIOUS』
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投稿: 2018 08 03 12:00 午前 [2018年の作品, Halestorm] | 固定リンク

2018年8月 2日 (木)

CONVERGE『BEAUTIFUL RUIN』(2018)

今年6月末に突如デジタルリリース&ストリーミング配信開始となった、CONVERGEの最新EP。トータルで7分に満たない、ショートチューン4曲で構成された勢い重視の1枚です。

ジャケットのテイストなどからもなんとなく想像できるように、本作は昨年11月にリリースされた5年ぶりのアルバム『THE DUSK IN US』と同時期にレコーディングされた、いわばアウトテイク集のようなもの、と言えるかもしれません。

アルバムでは長尺のミディアムヘヴィナンバーや叙情性の強いメロウナンバーなどを用意することで、これまでのCONVERGEの作品から頭ひとつ抜き出た異色作といったイメージを与えてくれましたが、このEPにはそういった要素は皆無。頭を空っぽにして、この激情まみれの爆音に浸ることができるはずです。

もうね、このEPに関してはこれ以上説明はいらないかなと。言葉よりもまず音。何か語っているうちに4曲あっという間に終わってしまうので。気を抜かずに接してほしいです。

『THE DUSK IN US』のレコーディングに際し、アルバム未収録曲が5曲残っているようなことを、リリース当時のインタビューでメンバーが語っており、そのうちの1曲「Eve」はアルバムからのリードシングル「I Can Tell You About Pain」にカップリングとして収録済み(この7分強もあるダークでカオティックな大作は、Spotifyなどストリーミングサービスでも聴くことができます)。

残る4曲がどういった形でリリースされるのか、はたまたこのまま発表されずじまいなのか、それは神のみぞ知るといったところでしたが、まさかこういう形でサプライズリリースされるとは思ってもみませんでした。

これで『THE DUSK IN US』関連の音源はすべて世に出たことになります。いまだ実現しない同作の日本盤発売、そして来日公演。ぜひ今後日本盤を発表することが実現した際には、ぜひEPなどの5曲を別添えにした“コンプリートエディション”にしてもらいたいところです。『THE DUSK IN US』に関してはすでに輸入盤CD、アナログ盤を購入済みですが、ちゃんと国内盤も購入しますので。よろしくお願いします。

にしても、改めて。『THE DUSK IN US』発売から9ヶ月近く経ちましたが、まだまだ色褪せない傑作だなと。そして、5曲のアウトテイクを通して再び『THE DUSK IN US』に戻ると、またこの作品の個性が際立つのではないかと思うのです。まだ聴いていないというリスナーがいましたら、悪いことは言いません。今すぐ聴きなさいって。もちろん、できるだけ大音量でね。



▼CONVERGE『BEAUTIFUL RUIN』
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投稿: 2018 08 02 12:00 午前 [2018年の作品, Converge] | 固定リンク

2018年8月 1日 (水)

DEAFHEAVEN『ORDINARY CORRUPT HUMAN LOVE』(2018)

前作『NEW BERMUDA』(2015年)から約3年ぶりの新作となる、DEAFHEAVENの4thアルバム。前作は海外から半年遅れの2016年夏に日本盤がソニーからリリースされましたが(フジロック出演が決定したのも大きかったのかな)、本作は海外でのリリースから1ヶ月近く経った現在も日本盤発売の知らせは届いておりません。残念極まりないですね。

本作に関しては海外でのリリースに先駆けて聴く機会を得ており、この2ヶ月くらいひたすら聴きまくっていました。ポストブラックメタルだとかブラックゲイズだとかいろんなサブジャンルに括られる機会の多い彼らですが、本作ではその色を残しつつもネクストレベルに到達したことを存分にアピールする意欲作となっています。

アルバムは穏やかかつ牧歌的、そこに壮大さも兼ね備えたメジャーキーの「You Without End」からスタートします。正直、この曲を最初に聴いたときは腰を抜かすほど驚きました。だって、オープニングから滑らかなピアノとギターの音色に乗せて、女性のポエトリーリーディングが始まるのですから。けど、途中から加わるいつものスクリームが聴こえてくると、ちょっとホッとする自分がいたりして……落ち着かないですよね、いざ「DEAFHEAVENの新作を聴くぞ!」と意気込んだのにこのオープニングだったとしたら(笑)。

もちろん、このアルバムは「You Without End」で展開されるテイストがすべてではありませんが、作品全体を通して多幸感やロマンティシズムに満ちているのも事実。ブラックゲイズ的な手法で始まる「Honeycomb」にしても、途中からメジャー展開に突入しますし。

確かにDEAFHEAVENの過去作に耳を傾けると、これまでもそういったテイストは含まれていました。ただ、ここまで徹底してこのスタイルが追求されたのはこれが初めてではないでしょうか。明と暗の対比が際立つのはもちろんのこと、静寂と轟音、メロディとスクリーム……さらには現実と非日常まで、そういった対となるものが絶妙なバランスで並列し、そこから織りなされるサウンドスケイプは圧巻の一言だと思います。初期のダークさを伴うスタイルも好きですが、前作『NEW BERMUDA』を経てここに到達したことを考えると、改めてすごい進化を遂げたなと実感します。

イギリスの小説家グレアム・グリーンの『情事の終わり』(同作は『ことの終わり』のタイトルで映画化されています)から引用されたアルバムタイトルや、アルゼンチンの作家フリオ・コルタサルの作品からインスパイアされた歌詞など、人間が内に秘める激情とメランコリックさがとことん追求されたこのアルバムは、まるで架空の映画のサウンドトラックのようでもあり、あるひとりの人間が見る白昼夢に対するサウンドトラックでもある。そんな、生活に根付いた作品に思えてきます。いやあ、これは傑作だ。



▼DEAFHEAVEN『ORDINARY CORRUPT HUMAN LOVE』
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投稿: 2018 08 01 12:00 午前 [2018年の作品, Deafheaven] | 固定リンク

2018年7月25日 (水)

DEF LEPPARD『SPOTIFY SINGLES』(2018)

今年10月に名盤『HYSTERIA』(1987年)再現ライブで3年ぶりの来日を果たすDEF LEPPARD。彼らの動向が今年に入ってから、かなり活発化しているのはご存知のとおりでしょう。1月にUniversal Records時代のカタログがすべてデジタルリリース&ストリーミング配信開始、6月には初期4作にボーナスディスクをつけたボックスセットを発売。そして今回、「Spotify」限定でEPをリリース。それが今回紹介する『SPOTIFY SINGLES』です。

この『SPOTIFY SINGLES』は2016年頃から始まったサービスで、ニューヨークにあるSpotify Studioでさまざまなアーティストが自身の楽曲とカバー曲を1曲ずつレコーディングするという企画。過去にはテイラー・スウィフトやエド・シーラン、CHVRCHES、SUPERORGANISMなどが参加し、最近も日本からもCorneliusが参加して話題を集めたばかりです。

この企画にHR/HM系バンドが参加することは珍しく、調べてみたらGRETA VAN FLEETくらいしか見当たりませんでした。なので、積極的にこういった企画に加わることを考えると、今のDEF LEPPARDのスタンスがある程度見えてくるのではないでしょうか。

DEF LEPPARDがレコーディングしたのは、『HYSTERIA』からタイトルトラックの「Hysteria」と、同郷イギリスのDEPECHE MODEのヒット曲「Personal Jesus」という意外なセレクト。前者はアルバム再現ライブをやっていること、代表曲のひとつということを考えれば頷ける話で、アレンジ的にもダウンチューニングされた現在のライブバージョンをそのままレコーディングしています。

で、問題は後者。DEF LEPPARDが取り上げるカバー曲といえば、過去に発表したカバーアルバム『YEAH!』(2006年)では自身のルーツに当たるアーティストばかりで、同時代に活躍する世代の近いアーティストの曲はあまり音源に残していないはず。ライブではOASISNIRVANAなどをワンフレーズだけカバーすることもありましたけどね。そういった意味でも、この音源は非常に貴重なものと言えるでしょう。

過去にはMARILYN MANSONカバーしたこの曲。DEF LEPPARDバージョンのアレンジも比較的原曲に忠実で、コーラスの入れ方含め同曲に対する愛情が感じられるものになっています。もともと半分電子ドラムのような編成のバンドということもあり、こういったエレクトロ調の楽曲をカバーするのはDEF LEPPARDに合っているのかもしれません。終盤のギターソロの応酬のみ、彼らなりのこだわりが見え隠れし、そこも微笑ましいかな。

こういった選曲ができるのも、90年代半ばに周りから迷作、駄作と叩かれた『SLANG』(1996年)を経験したからこそ。そう思えば、あれも重要な歴史だと言えるのではないでしょうか(僕は彼らの歴史に欠かせない重要作だと思っていますが)。

たった2曲という物足りなさこそあるものの、こういった企画ならぜひほかのバンドにも挑戦してもらいたいところ。どんなカバー曲を取り上げ、どんなアレンジを施すのか、センスが試されますしね(そもそもDEF LEPPARDのカバーアレンジにセンスがあるのかという問題もあるけど、それは見なかったことにします)。



▼DEF LEPPARD『HYSTERIA』
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投稿: 2018 07 25 12:00 午前 [2018年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2018年7月 9日 (月)

NINE INCH NAILS『BAD WITCH』(2018)

NINE INCH NAILSの通算9枚目のスタジオアルバム、にして2016年からスタートしたEP 3部作の最終作。「え、アルバムなのにEP?」という声が上がりそうですが、本作はもともとEPとして制作されたもので、SpotifyなどストリーミングサービスでEPはアルバムよりも下の欄に並べられスルーされがちという現実を踏まえ、あえてアルバム名義で発表することになったそうなんです。

だから、中身も6曲で30分。過去2枚と比べて曲数もトータルランニングも最多・最長ですが、過去のNIN諸作品と比べたら短いったらありゃしない。それでも、70年代や80年代初頭のCD時代前夜だったらフルアルバムで通せるボリューム&内容ですけどね。

さて、このEP 3部作でトレント・レズナーは『THE FRAGILE』(1999年)の“その後”を描こうとしているんじゃないか……そんなことを前回の『ADD VIOLENCE』(2017年)のレビューで書きました。それはあくまで前作を聴いた時点での感想ではあるのですが、今作をじっくり聴いて感じたのは、「それはあながち間違いではないな」ということと「我々の簡単な憶測じゃ測りきれないものが詰め込まれているな」ということ。

本作の序盤の流れは過去2作と共通するものが確かにあるし、そこにはトレントが『THE FRAGILE』以降にNINで試そうとしたことの“答え”があるようにも思えます。もちろん、彼自身この20年近くで成長しているわけですから、単なる“続き”ではないし、正しい意味での“答え”ではないかもしれない。それでも本作までの3部作を聴いてそう思えてしまうのは、そこにトレントのある“意思”を感じてしまうから。もちろんそれも深読みかもしれないし、聴き手側の勝手な妄想なのは百も承知。だけど、過去に一度でもNINに魅せられた人なら共感してもらえる“意思”は、間違いなくそこに存在していると信じています。

と同時に、「我々の簡単な憶測じゃ測りきれないもの」も確実に存在している。それが3曲目「Play The Goddamned Part」以降の流れではないかと思うのです。これ、明らかにデヴィッド・ボウイに対するトリビュートですよね?

トレントとボウイの交流についてはファンならよく知るところですし、ボウイがトレントにどれだけの影響を与えてきたかは想像に難しくありません。が、トレントはこれまでそういった影響をしっかり咀嚼して、自分のオリジナルとして発表してきたはずです。ところが、今回はその影響を目に見える形で表現している。ここに彼の“意思”を感じるし、いつも以上に思いが強く伝わってくる。

そういう意味では本作って、実は3部作の完結編と謳っているけど、当初の目的からちょっとだけ外れたイレギュラーなものだったんじゃないか……そんな印象も受けるのです。

結果として進化と回顧という相反する要素が並んでしまいましたが、これがトレントからの“答え”だとしたら……いやいや。ここで結果を出すのはよしておきましょう。まずは8月の『SONICMANIA』でのステージを観てから。ここまでを含めて、ひとつの回答を出すことにしたいと思います。

……とまあ、小難しいことを長々と書いてきましたが、個人的には非常に気に入っている1枚です。



▼NINE INCH NAILS『BAD WITCH』
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投稿: 2018 07 09 12:00 午前 [2018年の作品, Nine Inch Nails] | 固定リンク

2018年7月 7日 (土)

GUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION: SUPER DELUXE EDITION』(2018)

今から31年前(!)の7月にリリースされたGUNS N' ROSESのデビューアルバム『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)に、当時制作された他の楽曲やデモ音源などをまとめたボックスセット。タンスのような箱に入った14万円超えの超豪華版は手を出せないとして、頑張れば手を出せる(国内盤で2万7000円程度、輸入盤なら2万円以下で入手可能)スーパー・デラックス・エディション(CD4枚組+Blu-ray)について、今回は音源中心に語っていきたいと思います。

まずディスク1のアルバム本編。オリジナル盤はもともと抜けの良いサウンドで、あまり80年代という時代を感じさせない普遍性の高いミックスだったと思うので、今回のリミックスに関しては「まあ、良くなったかな」と言った程度。そこまで劇的な変化はありません。そもそも、このアルバムにそういった変化は誰も求めていないので、これはこれでいいかなと。ただ、個人的な好みで言ったらオリジナル盤のアナログの音が一番良いと思います(メリハリが最高)。

ディスク2は1988年発売の『GN'R LIES』の音源や、当時のシングルに収められていたライブ音源などをまとめたもの。もともとスタジオライブ音源に歓声を被せた“擬似”ライブ音源だった「Reckless Life」「Nice Boys」「Move To The City」「Mama Kin」、そして同じタイミングに録音されながらも未収録だった「Shadow Of Your Love」がひとまとめになっており、まるでひとつのライブを聴いているよう錯覚に陥ります。あ、「Mama Kin」の前に入っていたアクセル・ローズのMCがカットされているのは残念。

『GN'R LIES』アコースティックサイドからは、「One In A Million」のみ未収録。歌詞に登場する“ニガー”ってワードがいろいろ物議を醸し出したりして、あえてカットしたんでしょうかね。代わりに「You're Crazy」のリズム隊抜きアコースティックバージョンが追加されてますが、同じ曲がバージョン違いでたくさん入っていてもねえ。アーカイヴ性という時点では「One In A Million」が入っていない時点でアウトなんだからさ。まあ、こうやってこのバージョンを聴けるのは、それはそれで嬉しいけど。

あと、日本のみで限定販売されていたEP『LIVE FROM THE JUNGLE』(1988年)の“リアル”ライブ音源もリマスタリングされて収録。「Knockin' On Heaven's Door」の初期バージョン(正直、スタジオテイクよりこっちのほうがカッコいい)や、AC/DCのカバー「Whole Lotta Rosie」がより良い音で楽しめるのは素直に嬉しいですね。

ディスク3&4は1986年のデモ音源中心。このへんの音源は1990年前後にわんさかブートで流出していたので、まあ今さら感もありつつ。別テイクとか入れてくれるのは嬉しいのですが、だったらなぜ「Don't Cry」をカットしたのかと(のちに発表されるスタジオバージョンよりも気持ちテンポがスロー)。この時期のブートは死ぬほど聴き漁ったので、「あれがない、これがない」という話になってくるわけですよ。特に、のちに『USE YOUR ILLUSION I』および『同 II』(ともに1991年)に収録される楽曲の数々(ここに収められている「Back Off Bitch」「November Rain」)はこのデモバージョンで慣れ親しんできたので……ね。「November Rain」なんてピアノバージョン(現在のスタジオバージョン)より、アコギバージョンのほうが好きだったし。

と、苦言ばかり書いてますが、それくらい好きなアルバムだし、今まで生きてきて一番聴き込んだアルバムだから、こだわりもそれだけ強いんですよ。

でもね、だからといって内容が悪いかといったら、それはまた別の話。デモだろうが良い曲はやっぱり良いし、当時のブート版よりも音質が向上しているのは素直に喜ばしいこと。ぶっちゃけ、スーパー・デラックス・エディションを買うのは自分みたいなマニアか、あの時代のGN'Rに魅せられた人、そしてあの時代を追体験したい人だろうから……そういう人なら、高い金額を払っても大満足な内容だと思いますよ(と、最後にフォロー)。

まあ、さすがに数万出すのは厳しいよね、って人はCD 2枚組のデラックス・エディションだけでも十分だと思います。重要なテイクはここでほとんど楽しめるはずなので。そして、あの歴史的名盤がどういう過程を経て完成にこぎつけたかを知りたい人は、ぜひ頑張ってスーパー・デラックス・エディションを購入してみてください。




▼GUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION: SUPER DELUXE EDITION』
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投稿: 2018 07 07 12:00 午前 [1987年の作品, 2018年の作品, Guns N' Roses] | 固定リンク

2018年7月 3日 (火)

BRIDES OF LUCIFER『BRIDES OF LUCIFER』(2018)

昨年6月に開催された『GRASPOP METAL MEETING』など、海外のメタルフェスに出演したのを機に一部で話題になっていた、女性13人からなるHR/HMの名曲をカバーするコーラス隊BRIDES OF LUCIFERがアルバムをリリースしました。

本作でピックアップされている楽曲たちは下記のとおり(曲名後ろのカッコは原曲アーティスト名)。


01. Burn In Hell [TWISTED SISTER]
02. Walk [PANTERA
03. Warriors Of The World [MANOWAR]
04. Chop Suey! [SYSTEM OF A DOWN
05. Painkiller [JUDAS PRIEST
06. Fear Of The Dark [IRON MAIDEN
07. Roots Bloody Roots [SEPULTURA
08. O Father O Satan O Sun! [BEHEMOTH]
09. Holy Diver [DIO
10. South Of Heaven [SLAYER
11. Futility [SCALA & KOLACNY BROTHERS]
12. Halo [MACHINE HEAD
13. White Moon [SCALA & KOLACNY BROTHERS]


ライブではこのほか、RAMMSTEIN「Engel」あたりもカバーされているみたいですね。

ライブやレコーディングには彼女たちのほか、ドラム/ベース/ギター/ピアノが入り、原曲に比較的忠実なアレンジでカバーされています。もちろん、コーラスがメインになるので、彼女たちの歌声が前面に出るようなアレンジも新たに施されており、曲によってはギターソロパートをカットしていたりもします。

どのバンドの曲もボーカルのクセが強いものばかりで、特にPANTERAやSEPULTURAみたいなスクリームメインの楽曲、SYSTEM OF A DOWNのように変態的なボーカルが耳に残る曲すらも聖歌のようなボーカルアレンジで表現されているので、聴き進めていくうちに「あれ、こんなに聴きやすくて大丈夫?」と不安に陥る瞬間も。メタルファンには数年に1枚は世に産み落とされる“ネタCD”として楽しめば、そこまで不快ではないはず。むしろ、僕は積極的に楽しんでおります。

逆に、普段メタルに疎い人にこそ「ね? 意外と曲自体は悪くないんだよ?」と手に取ってほしい1枚だったりして。まあ、一緒に笑って聴いてみましょうよ。

あ、あと本作で2曲もピックアップされているSCALA & KOLACNY BROTHERSという存在。彼らはこのBRIDES OF LUCIFERの先輩的存在でもある、2000年代前半に90年代〜ゼロ年代のUKロックやグランジの代表曲をピアノ伴奏でカバーしたベルギーの少女合唱隊のこと。グループ名は指揮者&ピアノ伴奏者でもある中心人物となる兄弟の名前から取られています。このグループのオリジナル曲をカバーするあたりに、BRIDES OF LUCIFERの起源が見え隠れするのも興味深いところです。



▼BRIDES OF LUCIFER『BRIDES OF LUCIFER』
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投稿: 2018 07 03 12:00 午前 [2018年の作品, Brides of Lucifer, Dio, Iron Maiden, Judas Priest, Machine Head, Pantera, Sepultura, Slayer, System of a Down] | 固定リンク

2018年7月 2日 (月)

BULLET FOR MY VALENTINE『GRAVITY』(2018)

BULLET FOR MY VALENTINE通算6枚目のオリジナルアルバム。前作『VENOM』(2015年)制作中にジェイソン・ジェイ・ジェイムズ(B, Vo)が脱退し、さらに2016年にはマイケル・ムース・トーマス(Dr)も脱退と、ここ数年はバンドにとって大きな転換期を迎えます。特にマシュー・タック(Vo, G)が喉を壊して以降、スクリームはジェイが担当していたため、後任ベーシストのジェイミー・マティアスにもその役目が求められるわけでして……まあ、新曲は積極的にそういった要素を減らしていくんだろうな、というのもなんとなく想像できたわけです。

マシューとマイケル・マッジ・パジェット(G)のオリジナルメンバー2人にジェイミー、そしてジェイソン・ボウルド(Dr)を迎えたBFMVは、これまで在籍したJive / RCA Recordsから離れ、新たにSpinefarm Recordsと契約。2016年11月には手始めとして、新曲「Don’t Need You」が配信リリースされています。この曲は『VENOM』の延長線上にありながらも、よりモダンな要素が際立つ1曲でした。おそらく次のアルバムは、この方向性なんだろうな、これはこれで悪くないけど……そう思ってから1年半、ついにアルバムが届けられたわけです。

プロデュースを手がけたのは、FIGHTSTARやBUSTED、WHILE SHE SLEEPSといったモダンなバンドを多数手がけ、BFMVの前作『VENOM』でも一部ミックスなどで携わっていたカール・ボウン。もともとこれまでも作品ごとに変化を繰り返してきた彼らですが、それは本作も同様で、メタルコア以降のモダンなサウンドメイキングと現代的な壮大さを兼ね備えた楽曲群がズラリと並びます。

特に本作はメタル度という観点で言えば、メタリックではあるものの正直ヘヴィメタルとは言い難い作品かもしれません。実際、タイトルトラック「Gravity」や「Letting You Go」あたりにはONE OK ROCKの最新作『Ambitions』(2017年)あたりにも通ずるテイストがあり、そのへんが苦手な人には敬遠されそうな気もします。が、8月に控えたサマソニ出演を通してこれまで届かなかった層にもアピールできる可能性もゼロではありません。

こう書くと以前とは激変してしまったような印象を受けるかもしれません。確かにデビュー時と比べれば激変したと言っても過言ではないのですが、それでも「聴けばBFMVの楽曲だとすぐに理解できるオリジナリティ」はしっかり確立されているので、彼らのことをここまでポジティブに見守ってきたリスナーには安心できる内容ではないでしょうか。

ぶっちゃけ、このアルバムを通してBFMVがHR/HMの未来を担うことができるのか、僕にはわかりません。好きか嫌いか?で問われれば、僕は好きな部類に入る作品ではあります。なので今は1年後、2年後にこのアルバムが時代に爪痕を残せるのかどうかを静かに見守りたいと思います。



▼BULLET FOR MY VALENTINE『GRAVITY』
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投稿: 2018 07 02 12:00 午前 [2018年の作品, Bullet For My Valentine] | 固定リンク

2018年7月 1日 (日)

2018年上半期総括(アルバムベスト10)

恒例となった上半期ベスト。ひとまず7月1日現在の10枚を紹介したいと思います。バランスとしては洋楽5枚、邦楽5枚というセレクトで順位など関係なし。今回はあえてミニアルバムやEPを外し、フルアルバムのみをピックアップしました。


COURTNEY BARNETT『TELL ME HOW YOU REALLY FEEL』(amazon)(レビューはこちら

IHSAHN『ÁMR』『SPIRIT』(amazon)(レビューはこちら

JUDAS PRIEST『FIREPOWER』(amazon)(レビューはこちら

MANIC STREET PREACHERS『RESISTANCE IS FUTILE』(amazon)(レビューはこちら

STARCRAWLER『STARCRAWLER』(amazon)(レビューはこちら

brainchild's『STAY ALIVE』(amazon

HER NAME IN BLOOD『POWER』(amazon

エレファントカシマシ『WAKE UP』(amazon

おとぎ話『眺め』(amazon

けやき坂46『走り出す瞬間』(amazon

投稿: 2018 07 01 12:00 午後 [2018年の作品, brainchild's, Courtney Barnett, HER NAME IN BLOOD, Ihsahn, Judas Priest, Manic Street Preachers, Starcrawler, おとぎ話, けやき坂46, エレファントカシマシ] | 固定リンク

LOVEBITES『BATTLE AGAINST DAMNATION』(2018)

2017年10月発売の1stアルバム『AWAKENING FROM ABYSS』に続く、LOVEBITESの最新EP。本作は日本盤発売からさほど変わらぬタイミングに海外でもリリースされており、8月に控えた『WACKEN OPEN AIR』に向けた景気づけの1枚となっています。

個人的にも1st EP『THE LOVEBITES EP』や『AWAKENING FROM ABYSS』は、昨年のメタルシーンを語る上で(特に後者は間違いなく)重要な作品だと思っています。実際、アルバム発表以降は国内ツアーや初のUK公演なども成功させ、本EP発売直後にはワンマンライブでは国内最大規模となるTSUTAYA O-EAST公演を大成功させています。僕もこのライブは拝見しましたが、過去2回のワンマンライブをよりスケールアップさせた内容で、バンドとして脂の乗った現状が余すところなく表現されていたと思います。

で、そのライブでもキーとなっていたのが、本EP収録の新曲4曲。ライブのオープニングを飾った「The Crusade」は今年2月のワンマンライブでも先行披露されていた1曲で、IRON MAIDENを彷彿とさせる“ツインリード風ギターリフでグイグイ引っ張る”タイプの王道メタルチューン。一回聴けば、問答無用で気にいるストロングスタイルの1曲は、すでに2月のライブの時点でも「今後ライブにおけるアンセムになるのでは?」と感じていたけど、その予感に間違いはありませんでした。

2曲目「Break The Wall」はスラッシュメタルをベースにした疾走チューンですが、ただ闇雲に突っ走るだけではなく、中盤にスロー&メロウになる展開も用意され、このバンドの懐の深さを感じさせるアレンジを楽しめます。ボーカルasamiの歌唱もただ激しいだけでなく、しっかりと色香を感じさせるもので、そこでも他の女性メタルシンガーとの違いをアピールしております。

で、本作のキモとなるのが、3曲目「Above The Black Sea」と4曲目「Under The Red Sky」。両曲ともクラシックをモチーフにしており、そのタイトルからも対になっていることが伺える力作なのです。シンフォニックメタルを彷彿とさせるアレンジ&サウンドの前者と、心ときめくハーモニーと思わず一緒にシンガロングしたくなるコーラスパートを持つ後者。どちらもEPで聴いたときから素晴らしいと思ってはいましたが、実は音源以上にライブでその威力を発揮する、本当に素晴らしい2曲であることを、声を大にして伝えたい……そう思い、国内アーティストながらも本ブログでピックアップしたわけです。

改めて、6月28日のライブはこのEPの新曲4曲を軸に、セットリストが組み立てられているなと、ライブと同じ曲順でプレイリストを作ってみて改めて実感。それくらいこの4曲は“LOVEBITESの今後”をしっかり提示しており、“これから”をより期待させてくれるのです。

これはまだまだ、来たる2ndアルバムへの序章に過ぎない……そう信じているし、あとになって「やっぱりそうだったね!」と思わせてくれるものすごいニューアルバムに期待したいところです。プレッシャーをかけるようでなんですが、今の彼女たちなら絶対にそれを成し遂げてくれる。そう信じています。



▼LOVEBITES『BATTLE AGAINST DAMNATION』
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投稿: 2018 07 01 12:00 午前 [2018年の作品, LOVEBITES] | 固定リンク

2018年6月29日 (金)

RSO (RICHIE SAMBORA / ORIANTHI)『RADIO FREE AMERICA』(2018)

海外では2018年5月上旬、日本では6月下旬にリリースされた、リッチー・サンボラ(ex. BON JOVI)とオリアンティによるプロジェクト・RSOの1stアルバム。プロデュースを手がけたのが、かのボブ・ロック。ボブは曲作りにも携わっており、リッチー&ボブの組み合わせから想像できるサウンド&楽曲が展開された、なかなか聴きごたえのある1枚に仕上がっています。

レコーディングにはクリス・チェイニー(B)、デイヴ・ピアース(B)、アーロン・スターリング(Dr)、クリス・テイラー(Dr)など名うてのプレイヤーが多数参加していますが、リッチーとオリアンティはボーカル&ギター以外にもベースやキーボード、プログラミングにも携わっているようです。

リッチー・サンボラという人は決して非凡なギタープレイヤーではないし、ソングライターとしてもひとりでは100%の力を発揮できない人だと思っています。つまり、ジョン・ボン・ジョヴィやデズモンド・チャイルドといった才能あるソングライターをサポートすることで自身の個性を発揮する、ある種バイプレイヤー的な存在ではないでしょうか。

そして、オリアンティという人についてはマイケル・ジャクソン最後のライブに参加する予定だったことで名を馳せ、その後ソロ作をスマッシュヒットさせましたが、この人もマイケルや、のちに絡むアリス・クーパーのような絶対的フロントマンの隣でこそ映える人だと思うのです(個人的見解ですが)。

そんな2人が恋仲になり、音楽活動まで一緒に行う。それ自体は決して悪いことではないですし、実際このアルバムの出来もリッチーが最後に参加したBON JOVIのアルバムより良い曲が多いと思っています。が、突出した“何か”が足りないのもまた事実。全体的に80点近くまでは獲れるんだけど、そのボーダーを超える決定打がないのです。だから、いくら80点に近い楽曲が15曲並ぼうが、ただぼんやりと時間が過ぎていってしまう。悪くないだけに、非常に勿体ない1枚だと思いました。

2人で歌ったり、リッチーやオリアンティが単独で歌う曲があったり、曲調も往年のBON JOVIを思わせる派手なハードロックがあったり、内省的なアコースティックナンバーがあったり、いろいろやってます。が、ここには「Livin' On A Prayer」も「Bad Medecine」も「It's My Life」も「Have A Nice Day」もない。それと同じクオリティーの1曲を求めるのではなく、そういった“アルバムの軸になる1曲”が欲しかった。それだったら15曲もいらないし、たとえ10曲入りでも誰も文句は言わないんですよ。

だからこそ、この2人が普通に歌う曲よりもアリス・クーパーをフック的にフィーチャーした「Together On The Outside」みたいな曲のほうが印象に残ってしまう。貶しようのない内容だけに、本当に困りものの1枚です(一応褒めているんですけどね)。



▼RSO『RADIO FREE AMERICA』
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投稿: 2018 06 29 12:00 午前 [2018年の作品, Alice Cooper, Orianthi, Richie Sambora, RSO] | 固定リンク

2018年6月28日 (木)

THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』(2018)

CDショップで久しぶりにジャケ買いした1枚。そのアートワークのセンスと「THUNDERPUSSY」という思い切ったバンド名から、てっきり70年代のB級C級ガレージバンドのリイシューかと思ったら、今年の5月下旬に発売されたばかりの新作。しかも、メジャーレーベルのRepublic(Universal Records傘下)配給だと知り、迷わずレジまで走ったわけです(ウソ走ってはいないです)。

日本盤すらリリースされていないこのバンドですが、2013年に結成されたシアトル出身の4人組ガールズバンド。同郷のマイク・マクレディ(PEARL JAM)に見出され、彼のプライベートレーベルからシングル「Velvet Noose」を発表しています。このシングルはマイクがプロデュースを手がけたほか、ギターでも参加(本アルバムにも彼が参加した「Velvet Noose」「The Cloud」を収録)。これが話題となり、現在のメジャーレーベルと契約し、TOOLRED HOT CHILI PEPPERSSYSTEM OF A DOWN、ジョニー・キャッシュなどのプロデュース、ミックスを手がけてきた女性エンジニア、シルヴィア・マシーをプロデューサーに迎えて完成させたのがこのアルバムです。

聴く前のイメージとしてはガレージロック的な側面が強いのかなと思っていました。実際、そういったカラーも存在するのですが、それ以上に全体を多くのは70年代のハードロック的なテイスト。曲によってはLED ZEPPELINを彷彿とさせるものもありますが、それ以上にもっとカラッとしているというか。ジャニス・ジョプリン以降、ジョーン・ジェット以前というイメージ(伝わるでしょうか?)のボーカルと、音の隙間を効果的に聴かせるアンサンブルが、古臭くもあり、どこか新鮮でもあるのが不思議です。

……で、冷静になって考え直してみると、ああそうか、これってPEARL JAM以降のアメリカンロックなのかなと。グランジの中でもBLACK SABBATHに影響を受けていない側のバンド、そちらに近い存在なのかもしれないなと。マイクがこのバンドに引っかかったのも、そういったところにあるのかもしれないな、なんて思ったわけです。

それでいて、このヴィジュアルの華やかさ。ジャケットのエログロチックな世界観とはちょっと違うものもあるんだけど、このキラキラ感もどこか70年代のそれに近いものがあるんじゃないかなと。決して80年代的煌びやかさではない、そこの小さな違いがすごく大きいと思うのですが、いかがでしょう?

アメリカではすでにGRETA VAN FLEETと共演しているようです。それもすごく納得。グランジすら後追いの世代が、気づいたら70年代的な音楽を“今の音”として作り上げてしまった。その結果が、このTHUNDERPUSSYやGRETA VAN FLEETなのかなと。もっと言えば、イギリスのTHE STRUTSあたりもそこに含まれますよね。ロックの歴史が何サイクルも経て、またここにたどり着いた。我々おっさん世代にはウェルカムですが、今を生きる若い世代にはどう響くのか。これからが見ものです。



▼THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』
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投稿: 2018 06 28 12:00 午前 [2018年の作品, Pearl Jam, Thunderpussy] | 固定リンク

2018年6月27日 (水)

IHSAHN『ÁMR』(2018)

ノルウェーが誇る伝説のブラックメタルバンドEMPEROR。そのフロントマンであるイーサーン(Vo, G)による通算7作目のソロアルバム。前作『ARKTIS.』(2016年)からちょうど2年ぶりの新作となります。

4作目の『EREMITA』(2012年)以降の作品同様、本作もドラム以外のパートをほぼイーサーンひとりで担当し、そのドラムのみトビアス・アンダーソンが叩いております。また、本作では2曲目「Arcana Imperii」のみギターソロでフレドリック・オーケソン(OPETH)、「Where You Are Lost And I Belong」のドラム打ち込みをAngell Solberg Tveitanなる人物が担当しています。

これまでの作品同様、ブラックメタル的スタイルを残しつつも、シンフォニックメタルやプログレッシヴロック的手法も大々的に取り入れられており、EMPEROR後期の延長線上にありながらも、その作風をさらにモダンにしたスタイルが展開されている、と言ったほうが正しいのでしょうか。イーサーンのボーカルこそデスボイスとクリーンボイスが混在する手法で、そこにEMPERORの名残が感じられるかもしれませんが、例えば2000年代半ば以降のOPETHあたりが好きな人になら間違いなくアピールする1枚だと思います。

冒頭の2曲「Lend Me The Eyes Of Millennia」「Arcana Imperii」やラストの「Wake」は“EMPERORのイーサーン”をイメージさせる作風ですが、「Sárm」や「Twin Black Angels」のエモーショナルさ/穏やかさはどこか往年のプログレを彷彿とさせ、本作の中でも程よいフックになっています。こういう楽曲で全体に起伏をつけているからこそから、ダークでアグレッシヴな「Wake」が最後に来ることでドラマチックさが強調される。そんな印象を受けました。

ギターの歪み方もブラックメタルのそれとは一線を画するし、ドラムのチューニングもふくよかさを感じさせ、とてもメタルのそれとは思えない。また、要所要所にフィーチャーされるストリングスサウンドも非常に効果的で、イーサーンのクリーンボイスによるハーモニーとの相性も抜群です。そういった健やかな要素が、暗雲立ち込めるブラックメタル・マナーの合間に飛び出すことで、ハッと現実に引き戻される感覚。そこが気持ち良いんですよね。

11曲で60分近くあった前作『ARKTIS.』と比べて、本作は全9曲で約43分(デラックス盤ボーナストラック「Alone」を除く)というトータルランニングも聴きやすさ、聴いたときの心地よさに拍車をかけている気がします。彼のソロ作はどれも好きですが、今の自分に一番フィットするという点においては、今作は過去のアルバムの中で一番好きな作品。個人的な年間ベストに入れておきたい、2018年における重要な1枚です。



▼IHSAHN『ÁMR』
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投稿: 2018 06 27 12:00 午前 [2018年の作品, Emperor, Ihsahn, Opeth] | 固定リンク

2018年6月26日 (火)

MADBALL『FOR THE CAUSE』(2018)

80年代後半から活躍するニューヨーク出身のハードコアバンドMADBALLの4年ぶり、通算9作目のスタジオアルバム。前作『HARDCORE LIVES』(2014年)同様、メタル系レーベルのNuclear Blast Recordsからのリリースとなっております。

90年代半ばの本格的デビュー時、Roadrunner Recordsからのリリースだったこともあり、またメタリックなNYHCバンド(SICK OF IT ALLやBIOHAZARDなど)に注目が集まっていたこともあり、当時はその一環として僕も聴いておりました。そこから早20年強経ち、偶然手にしたこの1枚。久しぶりにMADBALLのアルバムをこうして聴いてみたわけですが……シンプルかつストレートな作風はそのままに、より強度を増したそのサウンドはHR/HM耳にも十分に楽しめるものだと思いました。

バンドとティム・アームストロング(RANCID)との共同プロデュース、MESHUGGAH、THE HAUNTED、SICK OF IT ALL、そしてDIR EN GREYなどを手がけてきたチュー・マドセンがミックス&マスタリング。ゲストにアイス-T(BODY COUNT)とティムが参加しているなど、想像以上にバラエティに富んだ作りでしたが、それも一回聴き終わって冷静になってからデータを見て気づいたこと。要するに、そういった要素は“オマケ”くらいの気持ちで、とにかく最初から最後まで爆音で楽しめる1枚です。むしろ、頭を空っぽにして聴け!ぐらいの勢いで。

確かにドラムの抜けやギターの歪み&ザクザク感が心地よい&聴きやすいのは、チュー・マドセンの手腕によるものが大きいと思います。が、それ以上に楽曲が聴きやすい。正直、最初の1、2枚しか聴いてない耳なので、近作がどうだったかは知りません。なので、ずっと聴いてきたファンには「いつもと一緒じゃん」と思われるかもしれませんが、自分のようなリスナーでもスッと入っていけるという意味では、初めて彼らに触れるビギナーにも入門編としてぴったりなんじゃないかと思いました。

ちなみにMADBALL、現在はフレディ・クリシエン(Vo)、ホヤ(B)、マイク・ジャスティン(Dr)の3人編成。昨年ギタリストのミッツが脱退したばかりで、本作のレコーディングには1992〜2000年に在籍したマット・ヘンダーソンが参加しています(ツアーには参加しないとのこと)。それもあって、初期を知る自分のようなリスナーにも取っつきやすいのかしら。

適度にグルーヴィーでヘヴィ、そして疾走感も伴っている(最後の最後にレゲエのユルさもあり)。“あの頃”の記憶が20数年ぶりによみがえってくる、そんな好盤です。



▼MADBALL『FOR THE CAUSE』
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投稿: 2018 06 26 12:00 午前 [2018年の作品, Madball, Rancid] | 固定リンク

2018年6月25日 (月)

REEF『REVELATION』(2018)

イギリスの4人組ロックバンド、REEFの通算5枚目となるスタジオアルバム。前作が『GETAWAY』(2000年)だから、実に18年ぶりですか……まあ2003年に一度解散して、2010年に再結成しているので、それも納得っちゃあ納得ですけどね。

現在のバンドメンバーはゲイリー・ストリンガー(Vo/最近SKINDREDの新作『BIG TINGS』にもゲスト参加してました)、ジャック・ベサント(B)、ドミニク・グリーンスミス(Dr)のオリジナルメンバーに、2015年に加入したジェシー・ウッド(G/ストーンズのロニー・ウッドの実子)の4人。再結成以降、2012年には過去の音源と2002年に制作途中で頓挫した幻の5thアルバムのデモ音源をまとめたボックスセット『93/03』、2013年には配信限定ライブアルバム『LIVE FROM METROPOLIS STUDIO』、2014年にはシングル「Barking At Trees」、2016年にはライブアルバム『LIVE AT ST. IVES』とシングル「How I Got Over」といろいろ発表してきたものの、純粋なオリジナルアルバムは本当に久しぶりなんですね。

本作のプロデュースは名盤『GLOW』(1997年)や『RIDES』(1999年)を手がけたジョージ・ドラキュリアス(THE BLACK CROWESPRIMAL SCREAMKULA SHAKERRIDEなど)が担当。18年の空白をまったく感じさせない、『GLOW』や『RIDES』から地続きの楽曲やサウンドを楽しむことができます。

オープニングのタイトルチューン「Revelation」からいきなり飛ばしてきますが、シェリル・クロウをフィーチャーした2曲目「My Sweet Love」以降はいかにも彼ららしい、ユルくてまったりとしながらも地に足の着いた、グルーヴィーでアーシーなロックンロールが展開されていきます。

いやあ、良い意味で何も変わってない。いや、表層的には変わってないけど、ボーカルやサウンドからは以前以上の深みが感じられる。単に18年分歳を重ねたというのも大きいけど、再結成以降はライブを軸にマイペースな活動を続けてきた彼らならではの説得力が大きいのかなと。

確かに『GLOW』と比べたら勢いはないのかもしれないし、あれほどの奇跡的な整合感はないかもしれない。けど、聴けば間違いなく「これぞREEF!」と納得できる内容。このバンドに何を求めるかによって評価は異なるかもしれないけど、少なくとも彼らの作品を複数追ってきたリスナーにはぴったりフィットする内容だと思います。

ちなみに、本作には3曲のカバー曲を収録。2年前にシングルリリースされた「How I Got Over」はアレサ・フランクリンなどで知られるゴスペルのスタンダート、「Darling Be Home Soon」はTHE LOVIN' SPOONFULが1967年に発表して全米15位まで上昇したナンバー、「Like A Ship (Without A Sail)」はPASTOR T.L. BARRETT & THE YOUTH FOR CHRIST CHOIRが1971年に発表したソウルナンバー。それぞれ原曲の雰囲気を残しつつ、よりREEFらしく生まれ変わっています。「How I Got Over」や「Like A Ship (Without A Sail)」なんてゴスペル隊までフィーチャーしてゴージャスさが増しているし、「Darling Be Home Soon」はフォーキーな原曲がよりファンクロック調に生まれ変わっている。特に「Darling Be Home Soon」や「Like A Ship (Without A Sail)」あたりは、90年代初頭のマンチェムーブメントを彷彿とさせるものがあるので、あのへんのダンサブルでソウル寄りのバンドが好きだった人にもオススメできるかも。

本作は日本盤リリースなし、デジタルリリースやストリーミングも今のところ国内配信なし。なのに、9月には実に15年ぶりの来日公演が決定しています。もしかしたら直近に国内盤リリースが決まってるのかな? せっかく来日するのに勿体ないですよね。ぜひしっかり流通させてもらいたいと思います。


※アルバム配信なしなので、シングル「How I Got Over」のみ貼っておきます。



▼REEF『REVELATION』
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投稿: 2018 06 25 12:00 午前 [2018年の作品, Reef] | 固定リンク

2018年6月24日 (日)

JONATHAN DAVIS『BLACK LABYRINTH』(2018)

KORNのフロントマン、ジョナサン・デイヴィスによる初のソロアルバム。バンドとしての最新作『THE SERENITY OF SUFFERING』が2016年の作品だったので、そろそろ新作を聴けるのかなと思っていたら、昨年くらいからジワジワ噂になり始めていたソロ作を先に出したのですね。まあ、この春にはバンドとして『VANS WARPED TOUR JAPAN 2018』で来日公演も行なったばかりなので、まだそこまでの飢餓感はありませんが。

さて、ソロ作ということで、本作はバンドサウンドにこだわらない縦横無尽かつ自由度の高い楽曲/サウンドで聴き手を楽しませてくれます。ジョナサンがあの声で歌っていれば、確かにそれはKORNそのものですし、過去にはバンドとしてEDMにも挑戦している(2011年の『THE PATH OF TOTALITY』)くらいですから、本作も抵抗なく、違和感なく接することができました。

アルバムにはLIMP BIZKITのウェス・ボーランド(G)やジャズミュージシャンのマイルズ・モズリー(B)、KORNとのコラボレーションでも知られる音楽家のザック・ベアード(Key)、そしてKORNのメンバーでもあるレイ・ルジアー(Dr)など気心知れた面々が参加。ジョナサン自身もギターやキーボードやプログラミングのほか、バイオリンやシタールなどを披露する多才ぶりを見せています。

「Happiness」や「Your God」などちいったヘヴィな楽曲も存在するものの、もちろんKORNとは異なるアプローチが取られており、変態性は薄いかも。プログラミングによるリズムを同期させたドラムビートには非常にダンサブルなものが多いし、低音を強調したヘヴィなギターサウンドと同じくらいスペーシーなシンセが被せられている。KORNでも似たようなことに挑戦しているものの、やはり表現するメンツが変わればこうも違うんだなと。とにかく、聴きやすさがKORNのそれとはまったく違います。

近年のKORNは初期のようなダークさとは異なる世界観が展開されていますし、そのへんがいまだに好きで近年の諸作が苦手という人には今作もダメかもしれません。が、最近のKORNに対して好意的なリスナーなら、本作も“その延長として”楽しめるのではないでしょうか。僕みたいに『THE PATH OF TOTALITY』を前のめりで楽しめた方なら、間違いなく取っつきやすい1枚だと思います。

あ、あとダークはダークでもどこかニューウェイブ風ダークさの漂う本作は、DEPECHE MODEとかあのへんのアーティストが好きな人にも引っかかる内容ではないかと。KORNに対して偏見を持っているリスナーにこそ聴いてもらいたい、隠れた名盤です。純粋に好き。

あと、本作も日本盤未発売。最近、本当に増えましたね、こういうケースが。そりゃあ某フェスも開催なくなるはずだ……(それだけが理由じゃないだろうけど)。



▼JONATHAN DAVIS『BLACK LABYRINTH』
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投稿: 2018 06 24 12:00 午前 [2018年の作品, Jonathan Davis, Korn, Limp Bizkit] | 固定リンク

2018年6月23日 (土)

GHOST『PREQUELLE』(2018)

スウェーデン出身のハードロックバンド、GHOST(北米地区ではGHOST B.C.と表記されることも)の4thアルバム。前作『MELIORA』(2016年)の全米8位にも驚かされましたが、本作はそのさらに上をいく全米3位に輝くという大成功を収めています。アメリカ人、こういうキャラものが結局好きなのかね。

はい、キャラものと書きましたが、フロントマンのパパ・エメリタスことコピア枢機卿こと本名トビアス・フォージ(Vo/ややこしいわ!)のルックスやそのステージングを過去の映像で観たら、納得してもらえると思います(最新のMVではかなり地味になっていますが)。まあメンバーのその名前もふざけてますし、バンド名が“おばけ”って時点で世の中ナメてますからね(笑)。

だけど、音そのものは非常に聴きやすいメロディアスかつプログレッシヴな80年代風ハードロックを聴かせてくれます。スタート時こそリー・ドリアン(元CATHEDRAL)主宰のRise Avobe Records所属のドゥームメタルバンドでしたが、今やちょっと古臭いオールドスクールなハードロックを展開しているんですから驚きです(しかもこのルックスで)。

でも、アルバムで取り上げているテーマには彼ら(というかトビアス・フォージ)ならではのこだわりがあり、過去には「迫りくる破滅」「反キリストと宗教裁判」「人文主義と強欲さ」(以上、レーベルサイトより)を取り扱っており、本作では「暗黒時代」をテーマにアルバムは制作されています。

とにかく、聴きやすい。見た目の印象からもうちょっとおどろおどろしいものをイメージするかもしれませんが、まったくそんなことはなく、歌声も意外と?爽やか。メロディもしっかりしており、適度にフィーチャーされたキーボードと適度に歪んだギターの音が気持ちよく響きます。

また、アルバムにはインストナンバーも2曲含まれており、中盤の「Miasma」ではサックスまでフィーチャーされています。さらに、「Pro Memoria」では壮大なストリングス&コーラス隊も導入されており、どこか往年のヨーロピアンプログレを思い出させてくれます。

ボーカルのトーンが高くなく、中音域をメインにしていることからHIMあたりにも通ずるものがあったりします。そのへんが好きなリスナーなら絶対に気にいる1枚かと。こういったアルバムが純粋に評価されるのは、ロック低迷といわれる2018年だからこそ嬉しくもあります。ですが、本作は日本盤のリリース予定なし。ちなみに前作も日本盤はスルーされています。来日が決まったりしたら、また違うんでしょうかね……過去にはサマソニで来日しているのですが、ぜひ秋恒例の大型フェスで観たいものです(まあ今年はなしですけどね)。

なお、本作のデラックス盤にはボーナストラックとして2曲のカバー(PET SHOP BOYS 「It's A Sin」、レオナード・コーエン「Avalanche」)が追加されているので、カバーソング好きはこちらもチェックしてみてはどうでしょう。



▼GHOST『PREQUELLE』
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投稿: 2018 06 23 12:00 午前 [2018年の作品, Ghost] | 固定リンク

2018年6月22日 (金)

BURN THE PRIEST『LEGION: XX』(2018)

海外では2018年5月中旬、日本では1ヶ月遅れて6月22日(つまり本日)に発売された。BURN THE PRIESTのカバーアルバム。BURN THE PRIESTと聞いてピンと来ないリスナーもいるかもしれませんが、なんのことはない、LAMB OF GODの変名バンドのことです。

いや、変名というと語弊がありますね。BURN THE PRIESTというのはLAMB OF GODの前進バンドの名前で、1999年にセルフタイトルのアルバムを1枚リリースしております(メンバーも5人中4人が一緒で、ウィリー・アドラーが加入して現在のLAMB OF GODとしての活動がスタート)。今回のカバーアルバム『LEGION: XX』は現LAMB OF GODのメンバー5人で制作しているので、まあ早い話がLAMB OF GODのニューアルバムですね。

カバーの内訳は下記のとおり。


01. Inherit The Earth [THE ACCÜSED]
02. Honey Bucket [MELVINS]
03. Kerosene [BIG BLACK]
04. Kill Yourself [S.O.D.]
05. I Against I [BAD BRAINS]
06. Axis Rot [SLIANG LAOS]
07. Jesus Built My Hotrod [MINISTRY]
08. One Voice [AGNOSTIC FRONT]
09. Dine Alone [QUICKSAND]
10. We Gotta Know [CRO-MAGS]


基本的にはハードコア/クロスオーバー系のバンド中。なので大半の楽曲が2〜3分台とシンプルなショートチューンばかりで、トータルランニングも38分と非常に聴きやすい長さです。どのバンドもLAMB OF GODに大きな影響を与えたルーツとなる存在ばかりで、そういった意味で初期のバンド名を使ったのかもしれません。まあ、お遊びですよね。そこも踏まえて楽しみたい1枚です。

サウンド的には完全にLAMB OF GODのそれで、基本的には原曲のイメージを大切にしつつカバーしています。しかし、中にはBIG BLACKの「Kerosene」をよりキャッチーなアレンジでカバーしていたり、MINISTRYの代表曲「Jesus Built My Hotrod」を完全なマンアレンジで再構築するなど、ところどころにフックとなる好カバーが含まれています。ちなみに、この2曲が本作の中では長尺にあたるもので、両方とも6分超え。後者は原曲にないリズムアレンジを加えるなどして、オリジナルよりも長くなっています。

こういったカバーアルバムは、まずはひと通り聴いて楽しんでから、原曲を掘り起こしてその違いを楽しむ、そしてバンドのルーツがどこにあるのかその片鱗を探すことが楽しいと思うんです。なので、ぜひサブスクやYouTubeなどで原曲をチェックしてほしいなと。

あと、LAMB OF GODはヘヴィすぎて苦手という人にとっては、「あ、こういう側面もあるのね」と取っつきやすい内容になっているのではないかと。そこもカバーアルバムの醍醐味ですよね。とにかく、いろんな人に楽しんでほしい1枚です。



▼BURN THE PRIEST『LEGION: XX』
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投稿: 2018 06 22 12:00 午前 [2018年の作品, Burn The Priest, Lamb of God] | 固定リンク

2018年6月18日 (月)

MEGADETH『KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!: THE FINAL KILL』(2018)

MEGADETHが1985年6月にリリースしたデビューアルバム『KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!』を新たにリミックス&リマスターを施し、未発表のライブ音源などを追加し、ジャケットも新たに作り直した、まさに“THE FINAL KILL”というサブタイトルにふさわしいデラックスエディション。

『KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!』はその音の悪さ、ジャケットのチープさ(レーベルから与えられた予算を、デイヴ・ムステインがドラッグに使ってしまったため、制作にかけるお金がなくなったことが原因だとか)から、2002年には新たにリミックス&リマスターを施しジャケットを一新したバージョンが発売されています(現在配信などで聴けるのがこちらのバージョン)。確かにあのチープさが払拭され、2本のギターやドラムなどがすべてセンター寄りにミックスされていたオリジナル盤を“モノラル的”と呼ぶなら、こちらはしっかり左右にパンされた“ステレオ的”に生まれ変わっています。

ですが、このアルバム。何度かの再発のたび中身に手を入れられた曰く付きの1枚でして。1985年版(8曲入り)に入っていたナンシー・シナトラのカバー「These Boots」(オリジナルタイトルは「These Boots Are Made For Walkin'」)が、作者から「歌詞がお下品極まりない!」とクレームが入り、1995年再発版にてカット(7曲入り)。2002年版で晴れて「These Boots」が復活するのですが、歌詞に規制が入り、ところどころに“ピー”音が加えられるというひどい展開に(同曲は1985年版では4曲目に収録されていましたが、2002年版から8曲目に変更)。なお、同作から「Last Rites / Love To Deth」「The Skull Beneath The Skin」「Mechanix」のデモが追加され、全11曲入りとなります。

さて。そこから16年経ち、バンドも結成35周年を迎えた2018年に“最終バージョン”として発表された『KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!: THE FINAL KILL』。音のキレがより研ぎ澄まされ、ドラムサウンド(特にバスドラ)により重みが加わったことで、「1985年のインディーズ作品のサウンド」からかなりかけ離れた、非常に“イマドキ”な音にバージョンアップしています。また、今回のリミックスではオリジナル版には入ってなかった音も追加され、よりゴージャスに変化。ぶっちゃけ、かなりカッコいいです。本当に細かな違いですが、2002年版よりもスッと入っていける仕上がり。2004年にCapitol Records時代のオリジナルアルバムがムステイン主導でリミックス&リマスタリングされましたが、まさにあの一環で補正された1枚と言えるでしょう。

しかも、問題の「These Boots」も今回から“ピー”音が外されている。それどころか、新たにムステインのボーカルが再録されているんですよ。これにはびっくりしました。ただ……現在のキーに合わせてなのか、曲自体のキー(チューニング)が落とされているのがちょっと……違和感残りまくり。今のムステインに往年のキーを求めるのは酷でしょうけど、そこだけはちゃんと原曲キーでやってほしかったな。あと、曲順も1985年版に戻してほしかった。ま、オッサンのたわごとですけどね。

あと、今回のデラックス版には新たに『KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!』収録曲全曲(「These Boots」除く)の未発表ライブ音源が追加収録されています。「ムステインが自宅の屋根裏から発掘したVHSテープより、初出となる86〜90年の貴重なライヴ音源」(プレスリリースより)とのことで、もちろん時期によってバンド編成が異なるものが並列しています。といっても、「The Skull Beneath The Skin」1曲だけ、マーティ・フリードマン(G)&ニック・メンザ(Dr)在籍時ってだけですけどね。これらの音の悪さについては……まあオマケですね。最近のMETALLICAのリイシューと同じ感覚で楽しめたらと。

にしても、改めてこのアルバムってこんなにカッコいい曲だったんだ(いや、もちろん今までもカッコいいと思ってたけど、オリジナル版を聴いて感じていたブルータルな“カッコいい”とは違う、整合感がしっかりあって攻撃的な“カッコいい”なんですよね、今回のって)ってことを再認識するきっかけをくれたこのリイシュー版。最高ですね。「Last Rites / Love To Deth」「The Skull Beneath The Skin」「Rattlehead」「Mechanix」あたりはここ最近のMEGADETHしか知らない若いリスナーにこそ聴いてほしいし、全体を通して今の彼らが失ってしまった(もはや取り戻せない)ギリギリ感、ヒリヒリ感を追体験してもらいたいものです。



▼MEGADETH『KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!: THE FINAL KILL』
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投稿: 2018 06 18 12:00 午前 [1985年の作品, 2018年の作品, Megadeth] | 固定リンク

2018年6月 5日 (火)

BIFFY CLYRO『MTV UNPLUGGED: LIVE AT ROUNDHOUSE, LONDON』(2018)

ついにBIFFY CLYROまで『MTV UNPLUGGED』に出演。本国ではそこまで“求められる”存在なのは今に始まったことではないし、逆にここ日本では過去5年は『FUJI ROCK FESTIVAL』でしか来日していないため、あのライブのすごさがなかなか伝わりにくいという現実もあります。一度ナマで観ちゃえば、絶対にハマること間違いなしなんだけどね(筆者もそのクチです)。

本作に収められている音源は、昨年11月にロンドンROUNDHOUSE(1700人キャパ)で行われた収録の模様を収めたもの。アルバム発売日にはここ日本でもMTV JAPANで映像が放送されたので、ご存知の方も多いかもしれません。

本国ではCD単品とMP3(およびストリーミング)、CD+DVDなどの仕様でリリースされていますが、今のところ日本盤リリースは予定なし。輸入盤の映像は日本語字幕なしなので、今はMTV JAPANでオンエアされたものを楽しむほかありません(オンエア盤は全曲オンエアされてませんが)。筆者は録画したものを何度もリピートして楽しんでいるところです(MCで「今日は“肉”は用意してないよ」的なことを言ってたのには笑いました)。

もともとメロディがしっかりしたバンドなので、歪みや装飾を剥ぎ取ったところで、本来の魅力は色褪せることなく。むしろ通常のライブではハイテンションで攻めまくるあのテイストがなくなったことで、BIFFY CLYROというバンドの軸がしっかり見える好盤ではないでしょうか。

オープニングを飾る「The Captain」みたいに、ライブでは盛り上げに必須の1曲も、こうやって骨格がはっきり見えることでひたすらポップでキャッチーな1曲であることに気づかされるし(もちろん最初からわかってはいましたが)、アコースティックアレンジに生まれ変わったことでより地味になった(笑)「Black Chandelier」とか、実は美メロで馴染みやすい「Re-arrange」とか、とにかくこのバンドの入り口にふさわしい名曲群がより親しみやすいスタイルに生まれ変わっている。中にはBEACH BOYS「God Only Knows」のカバーや、このライブのために用意された新曲「Different Kind Of Love」まで聴くことができる。

きっと、「やっぱり素晴らしいバンドなんだ!」と再認識させられることでしょう。ぶっちゃけ、このバンドに対して妙な偏見を持っているリスナーにこそ聴いてほしい1枚です。

それにしても、オーディエンスが冒頭から大合唱しているのが羨ましい。日本でもこれくらい盛り上がってくれたなら、もっと来日してくれるんでしょうに。まあ、フェスであのスケール感を堪能できるのも嬉しいけど、もし日本でZeppやSTUDIO COASTキャパで観ることができたら、一気に人気が爆発するんじゃないか……そう信じて止みません。



▼BIFFY CLYRO『MTV UNPLUGGED: LIVE AT ROUNDHOUSE, LONDON』
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投稿: 2018 06 05 12:00 午前 [2018年の作品, Biffy Clyro] | 固定リンク

2018年6月 4日 (月)

COURTNEY BARNETT『TELL ME HOW YOU REALLY FEEL』(2018)

世間を賑わせたデビューアルバム『SOMETIMES I SIT AND THINK, AND SOMETIMES I JUST SIT』(2015年)から3年ぶりに発表される、コートニー・バーネットの2ndアルバム。

プロデュースチーム、バンドメンバーともに前作と同じ布陣で制作されており、リード曲「Nameless, Faceless」と「Crippling Self-Doubt And A General Lack Of Confidence」のコーラスおよび後者のギターでキム・ディール(THE BREEDERS、元PIXIES)、「Crippling Self-Doubt And A General Lack Of Confidence」のコーラスにケリー・ディール(THE BREEDERS)がゲスト参加しています。

基本的にはデビュー作の延長線上にあるものの、無駄を極力削ぎ落としているのにより強度が上がっている点が非常に興味深い1枚。全体的にはグランジ以降のドライな質感やヒリヒリするギターサウンド、斜に構えたその世界観はパンクロックそのものだけど、どこかブルースに通ずるものが展開されており、90年代をリアルタイムで通過した世代にはどこか懐かしさすら感じさせる内容だと思います。

彼女は1987年生まれですから、グランジブームは直撃というよりも少し後追いかもしれません。あの時代と今を比較するのはナンセンスですが、けどあえて言わせてもらうと……25年前よりもさらに“ひどく”なっている2018年だからこそ、この手法はより説得力を増すのではないでしょうか。

また、歌詞にしても彼女独特の視点やものの例え方/書き方が非常に冴えまくっています。これもある種ブルースに例えられる世界観であり、もしかしたらここで歌われている内容こそが2018年版ブルースなのかもしれない。それくらいシンパシーが感じられる内容ばかりなのです。

ささくれ立ったサウンドに淡々と歌われるボーカル。彼女ならではの独特なクセも強まっているのに、不思議と嫌味が感じられず、むしろポップさが際立っている。これがかえって中毒性を高める結果となっており、気づけば何度もリピートしてしまっている。ぶっちゃけ、デビューアルバムよりも大好きですし、ツボです。

ロックの生命力がどんどん弱まりつつある昨今、この変貌ぶりは大歓迎。個人的には2018年を象徴する1枚として大プッシュしたいです。早くナマで観たいし聴きたいなあ。



▼COURTNEY BARNETT『TELL ME HOW YOU REALLY FEEL』
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投稿: 2018 06 04 12:00 午前 [2018年の作品, Courtney Barnett] | 固定リンク

2018年6月 3日 (日)

ARCTIC MONKEYS『TRANQUILITY BASE HOTEL & CASINO』(2018)

ずいぶん変わった……というよりも、ガラッと変わってしまったな。だけど、嫌いじゃない。むしろ好みかもしれない。それが本作を初めて聴いたときの第一印象でした。

初めてアメリカでもミリオンヒット作となった前作『AM』(2013年)から約4年半ぶりに発表された、ARCTIC MONKEYS通算6枚目のスタジオアルバム。本国イギリスではデビュー以来6作連続1位を記録、アメリカでも前作に続いてトップ10入り(8位)を果たすなど好意的に受け入れられたようです。

2ndアルバム『FAVOURITE WORST NIGHTMARE』(2007年)からすべての作品を手がけるジェームズ・フォード(SIMIAN MOBILE DISCO)がプロデュースに携わった本作は、まさかここまで実験的に、かつ斬新に変化を遂げるとは思ってもみなかったほどに新たなスタイルを築き上げています。

とはいえ、変化の予兆は3rdアルバム『HUMBUG』(2009年)あたりから少しずつ見え隠れしていました。とはいえ、当時はまだその変化がメンバーの中でも明確化されておらず、できることから挑戦していく。そんな印象でした。事実、1stアルバム『WHATEVER PEOPLE SAY I AM, THAT'S WHAT I'M NOT』(2006年)の頃と比較すれば、その後の『SUCK IT AND SEE』(2011年)や『AM』は“変貌を遂げた”と呼ぶにふさわしい内容だったと思います。が、それはあくまで1stアルバムというベースがあって、そこから進化していったものというイメージがあるから。それと比べたら、今回の変貌はむしろ“変身”と言えるものかもしれません。

全体的に穏やかでじっくり聴かせる楽曲ばかりで構成された本作は、実験作とはいえアバンギャルドさは皆無。むしろ、ラウンジミュージックや映画のサウンドトラックのような不思議な世界観が展開されていると表現したくなるもの。そこで歌われているメロディなどは確実にARCTIC MONKEYSのものもなのに、どこか別の世界で鳴らされているような感覚すらある。ある種、アレックス・ターナー(Vo, G)のソロアルバム的要素が強く、彼の別プロジェクトであるTHE LAST SHADOW PUPPETSにも通ずるものがある。思えば、そのバンドのメンバー4人のうち2人(アレックスとジェームズ・フォード)がいるんだもん、そうなったとしても不思議じゃない。

だけど、これをARCTIC MONKEYSでやろうとした、やることを受け入れたほかのメンバーがいるわけで、これは紛れもなくARCTIC MONKEYSの新作なわけです。そこを受け入れるか、受け入れないかで印象も変わるでしょうし、もしかしたら“ARCTIC MONKEYSの新作”と意識しないで聴けばもっとフラットに楽しめる内容かもしれない。

けど、僕はこの挑戦を素直に受け入れたいし、ロックバンドとして“次の10年”をどうサバイヴしていくか、腹を括った上でのこの内容だと思うので、そこを諸手を挙げて支持したい。問題作ではあるけれど、力作なのも間違いない。目下お気に入りの1枚です。



▼ARCTIC MONKEYS『TRANQUILITY BASE HOTEL & CASINO』
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投稿: 2018 06 03 12:00 午前 [2018年の作品, Arctic Monkeys] | 固定リンク

2018年5月15日 (火)

CONFUSION MASTER『AWAKEN』(2018)

ドイツ出身の4人組ドゥームメタル/ストーナーロックバンド、CONFUSION MASTERの1stアルバム。CYNESS、WOJCZECHといったジャーマンデス/グラインドバンドの元&現役メンバーを中心に2015年に結成された、と聞くとスーパーバンドのように感じられますが、筆者がそのへんのドイツのバンドに疎いため、まったく有り難みが感じられません。ごめんなさい。

CONFUSION MASTERという名前でドゥーム/ストーナーをやる……ってだけで、なんとなくBLACK SABBATHをイメージしてしまうメタラーは多いかと思いますが、それ正解。資料には「“Electric Sabbath Action Doom”を標榜する」とあり、正直“Electric Sabbath Action Doom”の意味はまったくわかりませんが、なんとなく伝わってくるものだけはあるので、まあそういうことなのでしょう。

アルバムはいきなり11分近くもあるドゥーミーな「Witch Pollution」から始まり、続く「Nothern Midnight Ghoul Dance」も約11分。ともにサバスのようなスリリングな展開はなく、引きずるようなミドルテンポを維持したまま演奏で変化を付けていくスタイル。聴く人が聴けば退屈……ってことになるんでしょうが、これがね、大音量で聴いていると気持ち良いのなんの。ダンスミュージックを聴き続けて高揚感が増すのと同じ作用なのか、変な高揚感に包まれてトリップしてしまう……ような気がします(笑)。

もちろん、短い曲もあります。3曲目のシャフルビートの効いた「Reaper's Fist」は約7分(笑)、5曲目「In The Shadown Of The Bong」も約7分(笑)、6曲目「False Dawn」は約8分と多少長めですが(笑)、アルバムを締めくくる7曲目「Awaken」は約5分と本作で最短の楽曲です。

あ、1曲飛ばしましたけど、4曲目「Goner Colony」は本作最長の11分9秒ですので、ご確認ください(笑)。

ひたすらひとつのリフで引っ張り、リズムやギターソロで変化をつけていく。もちろんオジー・オズボーンを彷彿とさせるヘロヘロボーカルも良い味出してますし、時にはセリフのようなボーカルもフィーチャーされ、ちゃんと緩急をつけています。

どこか宗教じみているところも、元祖サバスのそれをさらに極化させたみたいで、もしかしたら聴き手を選ぶことになるかもしれない。けど、大音量で聴き続けているうちに妙に癖になる。ストーナーやドゥームってそういうところ、ありますよね。

このバンド(プロジェクト)が今後どこまで続くかわかりませんが、5月21日からはジャパンツアーも行われるようなので、気になった方はぜひ会場に足を運んでみてはいかがでしょう。僕は時間的余裕があったら、ぜひ生で観てみようと思ってます。



▼CONFUSION MASTER『AWAKEN』
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投稿: 2018 05 15 12:00 午前 [2018年の作品, Confusion Master] | 固定リンク

2018年5月14日 (月)

SEPTIC TANK『ROTTING CIVILISATION』(2018)

CATHEDRAL、元WITH THE DEADのフロントマン、リー・ドリアンが新たにスタートさせたハードコアバンド(プロジェクト)SEPTIC TANKのデビューアルバム。メンバーはリー(Vo)のほか、CATHEDRALでの相方ギャズことギャリー・ジェニングス(G)、CATHEDRAL最後の数年間在籍した元REPULSIONのスコット・カールソン(B)、レコーディングエンジニアのジェイミー“ゴメス”アレリャーノ(Dr)という編成。

もともとは90年代半ば、リーとギャズ、当時ツアーメンバーとしてCATHEDRALに参加していたスコットの3人に、元TROUBLEのバリー・スターンを加えた編成でスタジオに入って遊びでハードコアナンバーをプレイしたのがきかっけ。その後、2005年にバリーが亡くなってしまいましたが、90年代に作った楽曲をレコーディングしようと2011年頃に現メンバーで集結。2012年に4曲入りEP『THE SLAUGHTER EP』を発表しましたが、それから5年後の2017年に再集結して、この1stアルバムを完成させました。

全18曲で40分に満たないその内容は、文字通りハードコア。1〜2分台の楽曲が大半で、最短で58秒、最長でも4分。リーはグロウルなどに頼ることなく、現在のボーカルスタイルで(ときにダミ声を多用しつつ)歌いきっています。ギャズのギターも冴えまくりで、ひたすらカッコいいリフとソロを聴かせてくれるし、リズム隊のツボを心得た軽快なプレイも最高。ベースの歪み具合も非常に好みですし、メタル/パンク/ハードコア/デスメタルとかそういったジャンルを超越した、最高にイカしたナンバーをがっつり楽しむことができるはずです。

それにしても、2018年に再びリーとギャズがタッグを組んでバンドをするなんて、CATHEDRAL解散時に誰が想像したことでしょう。20年以上にわたり苦楽をともにした仲間ですもん、こうやって一緒に音を出せば常に最高のものを提供してくれる。でも、それが想像もしてなかったスタイルだったりするもんだから、さらに驚くわけですよ(事前にEPはあったけどさ)。

リー・ドリアンとハードコア/グラインドというと初期NAPALM DEATHを思い浮かべる人もいるかと思いますが、そこは切り離してから接したほうが得策かと。完全にど真ん中のハードコアパンクですので。そっちの素養がないメタラーの方にはちょっと厳しいかもしれませんが、必ず引っかかるところはあるはずですので、ぜひ一度トライしてみてください。

なお、日本盤には先に発売された『THE SLAUGHTER EP』からの4曲をボーナストラックとして追加収録。より生々しくて邪悪なサウンドは、アルバム音源とは違った味わいがあるはずですので、ぜひ日本盤を手に取ることをオススメします。



▼SEPTIC TANK『ROTTING CIVILISATION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 05 14 12:00 午前 [2018年の作品, Cathedral, Septic Tank] | 固定リンク

2018年5月13日 (日)

SKINDRED『BIG TINGS』(2018)

2018年4月にリリースされたSKINDREDの通算7作目のスタジオアルバム。前作『VOLUME』(2015年)発売後、2016年春と2017年秋の2度にわたり来日公演を行い、前者ではCrossfaithをはじめとする国内勢らと共演、後者では『LOUD PARK』という国内最大級のメタルフェスでパフォーマンスしました。これまでSiMやCrossfaithなどの国内ラウドロックバンドと共演することが多く、そちら側のリスナーにはある程度知られていたものの、生粋のメタルファンには「レゲエメタル? そんな邪道」と若干敬遠されていたところもあったのではないでしょうか。それが、あのライブパフォーマンスを観て、いや見せられてしまったら、みんなイチコロですよね。

また、特に彼らのアルバムはアルバムごとに国内でのリリース先がコロコロ変わり、情報が得難いことも少なくありませんでしたが、今回は前作から引き続き国内盤はビクターから発売。前作での来日も好評だったので、きっと今回も……期待しています(笑)。

さて、国内盤を購入した方ならすでにご存知かもしれませんが、本作のライナーノーツを筆者が担当させていただきました。実は、このライナー執筆後にメンバーのベンジー・ウェッブ(Vo)にインタビューする機会を得まして、そちらが『BURRN!』6月号に掲載中です。ライナーでは拾いきれなかった情報(メンバーの脱退やレコーディングに関して)も多数フィーチャーされておりますので、ぜひ併せてチェックしていただけると幸いです。

ということで、以上の資料を読んでいただければ、本作の素晴らしさは十分伝わると思うので、今回はこれにて……というわけにはいかないですよね(苦笑)。まだ聴いてない!っていう人は、『VOLUME』のレビューを読んでからこちらを読んでいただいて……。

基本的には、路線は前作から大きくは変わっていません。ただ、若干ストレートな作風かな?といった程度の変化はありまして、それがメタルファンにとっては聴きやすさにつながっているのではないでしょうか。特にリードトラックの「Machine」はAC/DCを彷彿とさせる軽快なロックンロールですし、ゲストボーカルでREEFのゲイリー・ストリンガー、ギターソロで元MOTÖRHEAD、現PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONSのフィル・キャンベルが参加しているので、よりとっつきやすいと思います。

それ以外の楽曲もレッチリほどファンクというわけでもなく、レゲエ要素も味付けとして曲の幅を広げることに成功してますし。前作が好きなら間違いなく気にいる1枚ですし、前作を聴いてなくても存分に楽しめる入門編的な1枚ではないかと断言します。はい。

なお、日本盤のみボーナストラックとしてマックス・ロメロというレゲエシンガーの代表曲「Chase The Devil」をパンキッシュにカバーしております。パンクとレゲエはもともと地続きな存在ですし、このアレンジは納得の一言。残念ながら配信バージョンでは聴けないので、気になる方はぜひ国内盤を購入いただけますと(クドイですね。笑)。

インタビュー時にはまだ来日は決まっていないという話でしたが、ぜひこの際また10月に来日していただいて、そのタイミングに小箱での単独公演も……お願いします!



▼SKINDRED『BIG TINGS』
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投稿: 2018 05 13 12:00 午前 [2018年の作品, Motorhead, Phil Campbell And The Bastard Sons, Reef, Skindred] | 固定リンク

2018年5月10日 (木)

RIOT V『ARMOR OF LIGHT』(2018)

前作『UNLEASH THE FIRE』(2014年)からRIOT V名義で活動を再開させたRIOT。彼らの通算16作目、RIOT Vとしては2作目となるニューアルバムが本作『ARMOR OF LIGHT』です。今回もジャケット、最高ですね(笑)。

オリジナルメンバーのマーク・リアリ(G)を失い、マイク・フリンツ(G)とドン・ヴァン・スタヴァン(B)を中心に再編成されたRIOT Vですが、前作から新加入のトッド・マイケル・ホール(Vo)がいよいよ本作で本領発揮か?という素晴らしいボーカルを聴かせてくれます。

サウンド的には『THUNDERSTEEL』(1988年)以降の路線ではあるのですが、本作はスピード感以上にドラマチックさに重点を置いたのが功を奏し、1曲1曲が聴き応えのある仕上がりに。オープニングの「Victory」から「End Of The World」へと続く泣きメロ満載のファストチューン連発に思わずガッツポーズしたかと思うと、『THUNDERSTEEL』期を思わせるスラッシーな「Messiah」が飛び出したりと、とにかく気をつかせぬ展開の連続です。

どの曲にもしっかり“RIOTらしさ”が感じられつつも、そことも違う“何か新しいもの”が始まろうとしている感覚が前作以上に強まっている。そこは、『UNLEASH THE FIRE』発表前後のツアーを経て強めた絆によるものが大きいのかもしれません。RIOT時代に築き上げたスタイルを引き継ぎつつも、「RIOT V」という新しい名前を得たことによる新たな道を切り開くことも重要な命題であるわけですから。

マイク・フリンツとニック・リー(G)からなるツインリードソロも随所に盛り込まれておりますが、どれも自然な形で飛び込んでくる。そう、無理してる感がないんですね。“RIOTらしさ”を意識しすぎて「どこかに入れないと」みたいな感じではないから、こちらも素直に向き合える。なおかつ、トッド・マイケル・ホールの高音域の伸びの良さと力強さが本当に気持ちよく、バックのパワフルな演奏にまったく負けていない。逆に考えると、ここまで歌えるシンガーがいるからこそ、ツインリードも随所に盛り込めるし、演奏もどこまでもドカドカと派手にやれるわけですね。

7曲目「Armor Of Light」までひたすら突っ走り、8曲目「Set The World Alight」でようやくミディアムテンポのメロウナンバーが登場するのですが、続く9曲目「San Antonio」で再度ファストチューンに。その後は10曲目にミドルヘヴィ調の「Caught In The Witches Eye」、11曲目にシャッフルナンバー「Ready To Shine」ときて、本編ラストは再び疾走系の「Raining Fire」で終了。日本盤にはボーナストラックとしてミドルナンバー「Unbelief」と、名曲「Thundersteel」の再録バージョンが追加されています。

……あれ、バラードとかないんだ……というのが、最初に聴き終えたときの素直な感想。これだけしっかりした曲が書くことができて、しっかり歌えるシンガーがいるんだから、1曲くらい朗々と歌い上げるメタルバラードがあってもいいのに。とにかくファストチューンが多すぎて、後半のミディアムナンバーが登場するまで変化に乏しいというのもあって、できればそういう1曲が欲しかったなと。そこだけが残念でした。

ボーナストラック「Unbelief」もバラードとは違うけど変わったタイプの楽曲なので、アルバム本編に入っていたらちょっと印象が変わったかも。とにかく、オッサンが60分近く聴くにはちょっとカロリー高いかな、というのが本音です。だからといって、別に悪い作品というわけではないので勘違いないように。

なお、デラックス盤には2015年の『KEEP IT TRUE FESTIVAL』でのライブ音源13曲を収めたボーナスディスク付き。過去の名曲群を現編成で楽しめる貴重な音源なので、ぜひこちらをチェックしてみることをオススメします。



▼RIOT V『ARMOR OF LIGHT』
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投稿: 2018 05 10 12:00 午前 [2018年の作品, Riot, Riot V] | 固定リンク

2018年5月 9日 (水)

JESUS JONES『PASSAGES』(2018)

JESUS JONES待望のニューアルバム(通算6枚目)がようやく到着。前作『LONDON』(2001年)は日本盤が発売されることもなく(ぶっちゃけ、内容も地味だったこともあり)ファン以外の間では大して話題になりませんでしたが、その後何度か来日公演も実現しており、それなりに成功を収めたようです(そうです、僕は一度も行ってません。というか行けませんでした)。

数年前からリリースが噂され、昨年初頭に「2017年初夏」とアナウンスされたものの、結局そこから1年を経た今年4月に発売。前作から17年ぶりのニューアルバム、今回も日本盤リリースはありません!

まあ、そんな細かいことはどうでもいいです。この際ちゃんと聴けるだけで十分ですから。

昨年から先行シングルやYouTubeでのMV公開があったので数曲は耳にすることができていたわけですが、基本的には前作『LONDON』の延長線上にある“ベーシックなバンドサウンドに適度なエレクトロ要素を取り入れた、90年代前半のスタイルとは真逆のスタイル”。ですが、前作よりもエレクトロ色が若干復活しており、90年代前半の名作ほどではないものの“あの頃の香り”が多少は感じられる力作に仕上がっています。

確かに『DOUBT』(1991年)ほど派手ではないし、『PERVERSE』(1993年)ほど煌びやかではないかもしれない。でも、そのどちらのアルバムにも通ずるキャッチーは間違いなく存在する。それは前作『LONDON』にも間違いなくあったものなのですが、その『LONDON』以上にJESUS JONESらしさが強まっている気がするのは自分だけでしょうか?

改めて、マイク・エドワーズ(Vo, G)のソングライターとしての非凡さもここで再確認することもできたし、何よりもその歌声の変わらなさには驚かされます(よく聴けば若干老けた感はありますが、それも誤差範囲内)。そこに“らしい”メロディと“らしい”サウンドメイクが組み合わさることで生まれるマジックが、確実にここにはある。残念ながら『ALREADY』(1997年)にはそこが希薄だったと思うのです(あれはあれで悪くなかったけど)。

中盤の地味なエレクトロ路線は、間違いなく“あの”JESUS JONESそのもの。『LONDON』で肩を落とした90年代のファンも、きっと今回は気に入ってくれるのではないか……そう願っております。

ちなみに、僕はかなり好きです。下手したら『LOQUIDIZER』(1989年)よりも好き……っていうのは言い過ぎか(苦笑)。『DOUBT』と『PERVERSE』が同じくらい好きで、『LOQUIDIZER』がちょっと落ちるというようなリスナーの言うことなので、参考にならないかもしれませんが(笑)。



▼JESUS JONES『PASSAGES』
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2018年5月 8日 (火)

KYLIE MINOGUE『GOLDEN』(2018)

カイリー・ミノーグ通算14作目のスタジオアルバム。前作は季節モノのクリスマスアルバム『KYLIE CHRISTMAS』(2015年)でしたが、完全なるオリジナルアルバムとなるとその前の『KISS ME ONCE』(2014年)以来4年ぶりとなります。

個人的にはその前の『APHRODITE』(2010年)の出来が素晴らしいと思っていただけに、続く『KISS ME ONCE』にはいまいちピンとくるものがなく、聞く頻度は今までで一番低かったような記憶が。それもあってか(また季節モノの企画盤色が強いせいもあってか)『KYLIE CHRISTMAS』は聴かずじまいでした。

というわけで、個人的には正真正銘の4年ぶりの新作となる今作。エレクトロ路線を極めまくった『APHRODITE』と、そこから一歩進んで当時主流だったテイストを取り入れた『KISS ME ONCE』から外れ、ようやく新機軸にたどり着いた印象です。

オープニングを飾る先行シングル「Dancing」を一聴すればおわかりいただけるように、いきなりのカントリー路線です。もちろん、ただのレイドバックではなく、基盤になるのはモダンなビート&サウンドスケープであり、そこにナッシュビルテイストの歌メロと枯れたカントリーギターやバンジョーが乗る。もちろんこれは先人たちが今までに試してきたスタイルではありますが、今年50歳になろうとするカイリーが現在の自分にフィットしたカラーを見つけるという意味では非常に最適なものを持ってきたなという印象。うん、合っているんですよねこれが。

タイトルトラック「Golden」冒頭で聴けるファルセット然り、全体的に落ち着いたトーンのボーカル然り、セクシーさとは異なるアダルト感が増しているし、ギターやバンジョーが前面に打ち出されていることでいつも以上にロッキンなカイリーが楽しめるという点においても(カイリーにしては)新鮮さが感じられる。カントリーという手垢が付いたジャンルをピックアップしているにも関わらず、しっかりモダンさも備わっています。

しかも収録曲の大半が3分前後という曲の長さも非常に現代的。モダンなポップスとしても高性能だと思うし、アメリカではチャート上では低調(64位)だったものの、今後のシングルヒット次第ではさらにヒットしそうな予感。何がどんなきっかけで当たるかわからない今だからこそ、いろんな可能性を秘めた力作だと思います。リリースからここ1ヶ月ぐらい、何気に日常で流れていることの多い1枚です。



▼KYLIE MINOGUE『GOLDEN』
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投稿: 2018 05 08 12:00 午前 [2018年の作品, Kylie Minogue] | 固定リンク

2018年5月 7日 (月)

THIRTY SECONDS TO MARS『AMERICA』(2018)

前作『LOVE, LUST, FAITH AND DREAMS』(2013年)から5年ぶりに発表された、THIRTY SECONDS TO MARSの通算5作目のスタジオアルバム。初の全米TOP10入り(6位)を記録した前作を上回る、初登場2位という高ランキングを記録した最新作ですが、その内容に驚いたリスナーも多かったのではないでしょうか。

いわゆるオルタナティヴロックの延長線上にある親しみやすいサウンドに、スタジアムロックの壮大さやその時代にフィットしたモダンなポップテイストを散りばめたスタイルで、作品を重ねるごとにそのモダンさが強まっている彼らですが、本作はその極みと言えるような内容に仕上げられています。

オープニングを飾るのは、昨年夏に先行公開されていた「Walk On Water」。昨今のヒットチャートを賑わせているエレクトロテイストのポップロックは前作の延長線上にある楽曲ですが、その振り切れ方はそれ以上。続く「Dangerous Night」に至ってはプロデューサーにかのZEDDを迎えた意欲作で、ポップさの冴えっぷりは言うまでもなく、音数を抑えたアレンジなどかなりモダンさが際立つ仕上がりです。

さらにはエイサップ・ロッキー(A$AP ROCKY)をフィーチャーした「One Track Mind」やホールジー(HALSEY)とのデュエット曲「Love Is Madness」などは、もはやロックバンドの枠を超えた作風。では「ロックではない」からダメかというと、まったくそんなことはなく、非常によく作り込まれた良曲なのです。

かと思えば、ゴスペルを彷彿とさせる壮大なロックバラード「Great Wide Open」やアコギ弾き語りによる「Remedy」なども存在している。確かに全体を覆う世界観はロックバンドのそれとは異なるものかもしれません。しかし、今や世界的に「(いわゆるヒットチャート上で)ロックは死んだ」なんて言われている状況下で、ロックバンドがその時代と対峙して今のメインストリームで戦おうとしている姿を、僕は全面的に支持したいと思っています。

昨年のLINKIN PARKの新作『ONE MORE LIGHT』を聴いたあとと同じ気持ちになった、THIRTY SECONDS TO MARSの新作。『AMERICA』というシンプルなタイトルに込めた思いと、そのアメリカをイメージさせるキーワードがいくつか並ぶだけのシンプルなアルバムジャケット(海外盤はそのキーワードと色が異なる10種類のジャケットが用意されています)。日本のリスナーにはぜひその歌詞の意味を理解しつつこのサウンドを楽しんでほしいので、5月23日リリースの国内盤を手にとってもらえたらと思います(日本盤のみ、エイサップ・ロッキー抜きの「One Track Mind」も収録されているので)。



▼THIRTY SECONDS TO MARS『AMERICA』
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2018年4月24日 (火)

MANIC STREET PREACHERS『RESISTANCE IS FUTILE』(2018)

MANIC STREET PREACHERS通算13枚目のスタジオアルバム。ってそんなに出してたのかと改めて驚かされます。まあ、バンドがデビューして早27年。2年に1枚ペースで出している計算ですよね。ところが本作、スタジオ新作としては実に3年9ヶ月ぶりと過去最長インターバルなんですよね。とはいえ、ここ数年は4thアルバム『EVERYTHING MUST GO』(1996年)の20周年盤や8thアルバム『SEND AWAY THE TIGERS』(2007年)の10周年盤なんかも出てたので、そんなに間隔が空いたような印象も受けず。不思議なものです。

前々作『REWIND THE FILM』(2013)と前作『FUTUROLOGY』(2014)は同時進行で制作された、対となる連作でした。なので、作風的にも前者はオーガニックでアダルト、後者はエレクトロ色強めで攻めるという違いがありましたが、今作はどうかというと……従来のMANICS節はそのままに、若干落ち着いた印象があることから、『REWIND THE FILM』をよりロックサイドに寄せたイメージを受けました。

昨年末から「International Blue」「Distant Colours」「Dylan & Caitlin」「Liverpool Revisited」といったデジタルシングルを小出しにして話題作りに専念してきた彼ら。確かに、長期にわたりこうしたプロモーションを続けるのは今の風潮に合ったやり方と言えるでしょう。特に、90年代のMANICSはシングル切りまくりでヒット曲を連発させてきたバンド。2000年代後半以降こそヒットシングルに恵まれないものの、こうして「良い曲、たくさんありますよ?」とアピールするのは、このバンドの場合間違ってない気がします。

勇ましさがありつつもどこかドリーミーという黄金MANICS節を効かせたキラーチューン「People Give In」から幕を開けるこのアルバムは、以降上記のシングル曲が連発し、すでに馴染み深いアルバムのような錯覚を与えてくれます。そんな名曲群の合間に登場する「Vivian」の、サビに絡みつく裏メロギターソロがまた気持ち良いのなんの。

後半は初出の新曲目白押しで、これがまた良いんです。グッとロック度の増した「Sequels Of Forgotten Wars」を筆頭に、ゆったりとしたリズムとアンセム度の強いシンガロングが耳に残る「Hold Me Like A Heaven」、前作からの余韻を感じさせる「In Eternity」、久しぶりに攻撃的なギターリフが聴けるパンキッシュな「Broken Algorithms」、これも王道感満載なキラーチューン「A Song For The Sadness」、かなり落ち着いた印象のラストチューン「The Left Behind」と完璧な流れ。全12曲捨て曲なしの、完璧なまでに真っ当な“MANICSのロック/ポップアルバム”と断言できます。もはやこれは焼き直しとかそういう次元ではなく、MANICSがMANICSであることを、次の時代に継承しようとする生き様の表れなのです。

どこにも無理矢理さや肩肘張った感じがなく、すごくナチュラルに良曲が並ぶ。そんな曲が1曲あるだけでもすごいのに、それが12曲並ぶのですから……彼らはここにきて、キャリア何度目かの黄金期に突入したのかもしれませんね。ここまで吹っ切れていると、本当に気持ちよく楽しめるんですよ。

「International Blue」のMV然り、アートワーク然り、日本を強くイメージさせる作品ですので、ぜひ1日も早く日本に戻ってきてもらいたいところです。いやあ、アルバム曲をライブで聴くのが今から楽しみだ。



▼MANIC STREET PREACHERS『RESISTANCE IS FUTILE』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3 / MP3デラックス版

投稿: 2018 04 24 12:00 午前 [2018年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

2018年4月22日 (日)

THE DAMNED『EVIL SPIRITS』(2018)

結成から40年を超えたTHE DAMNEDの、前作『SO, WHO'S PARANOID?』(2008年)以来10年ぶりの新作(通算11枚目)。前作も7年ぶりでしたし、そもそもライブで求められるのは初期の楽曲中心でしょうから、新作が求められているのかどうか微妙ですが……ここは素直に音を評価してみたいと思います。

現在のメンバーはデイヴ・ヴァニアン(Vo)、キャプテン・センシブル(G, Vo)のオリジナルメンバーのほか、モンティ・オキシモロン(Key)、ポール・グレイ(B)、ピンチ(Dr)。ベースのポールは80年代初頭に在籍したことがあり、昨年前任のスチュ・ウェストと入れ替わりで再加入したばかり。

プロデューサーはデヴィッド・ボウイなどでおなじみのトニー・ヴィスコンティ。サウンド的には80年代以降のサイケデリックロックやゴシックロックの延長線上にある、およそパンクロックとは呼びがたいもの。1stアルバム『DAMNED DAMNED DAMNED』(1977年)や3rdアルバム『MACHINE GUN ETIQUETTE』(1979年)の路線を期待して臨むと痛い目を見ることでしょう。

とはいえ、彼らが今やパンクロック主体で活動していないことは、その動向を追っていればなんとなくわかっているはず。なので、そういう広い心でアルバムに臨むと……あれ、意外と良いんじゃない? と思えてくるから不思議です。

THE DOORSあたりを彷彿とさせるサイケガレージロック「Standing On The Edge Of Tomorrow」を筆頭に、序盤はスルスル聴き進められるはず。かと思うと、どこか土臭い壮大さのある“聴かせる”ミディアムナンバー「Look Left」、小気味良いシャッフルビートの「Sonar Deceit」「Daily Liar」、ジャジーなピアノバラードからドラマチックな展開を見せる映画のサントラみたいな「I Don't Care」と、意外とバラエティに富んだ楽曲群がずらりと並びます。

正直、僕は90年代以降のTHE DAMNEDをちゃんと聴いてきたわけではありませんが、これは80年代諸作品に非常に近い作風で、僕個人としてはなかなか聴き応えのある1枚だと思いました。デイヴ・ヴァニアンの落ち着いたトーンの歌声も気持ち良いですし、なによりも全体を覆うオルガンサウンドの気持ち良さといったら。初期パンクの固定観念さえ切り離せれば、普通に気持ちよく楽しめる1枚だと思いました。

なぜかホラー映画のサウンドトラックを聴いてるような、不思議な感覚に陥る作風・構成。アルバムジャケットもそれっぽいですもんね。単純に自分がホラーマニアだからか、この“架空のサウンドトラック”は新しさ皆無ながらも自分のツボにハマる、なかなかの好盤でした。



▼THE DAMNED『EVIL SPIRITS』
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2018年4月19日 (木)

FM『ATOMIC GENERATION』(2018)

90年代のブリティッシュHR/HMファンの間では、おそらくTHUNDERと同系統のバンドとして評価されているFM。THUNDER同様、彼らも90年代半ばに一度解散を経験していますが、2007年の再結成以降、『METROPOLIS』(2010年)を機に定期的に新作を発表してくれています。

今作『ATOMIC GENERATION』は彼らにとって通算10作目にあたる、記念すべき1枚。オリジナルアルバムとしては『HEROES AND VILLAINS』(2015年)から3年ぶりとなりますが、その間にデビューアルバム『INDISCREET』(1986年)の再録アルバム『INDISCREET 30』(2016年)を挟んでいるので、意外とそこまで時間が経っていない印象があります。

初期2枚(『INDISCREET』と1989年の2ndアルバム『TOUGH IT OUT』)は産業ハードロック的な印象を持っていましたが、3作目の『TAKIN' IT TO THE STREET』(1991年)あたりから伝統的なブリティッシュハードロックに傾倒し始め、個人的にも「『TOUGH IT OUT』は素晴らしかったけど、これはこれで良いかも」と好意的に受け入れていました。

今回の『ATOMIC GENERATION』も、比較的『TAKIN' IT TO THE STREET』以降の路線に近いのですが、単なる「王道の継承」というよりは「80年代的なAOR/産業ハードロックのルーツ部分も残しつつ、王道ブリティッシュハードロックと融合させていく」という独自のスタンスを取っているように感じられます。

特に、序盤5曲の流れは適度にハードで心地よいメロディを兼ね備えた、大人のハードロックを楽しむことができます。THUNDERと比較されがちだけど、このへんは例えばJOURNEYFOREIGNERあたりにも通ずるものがあるんじゃないでしょうか。

かと思うと、6曲目「Playing Tricks On Me」でブラスセクションをフィーチャーしたソウルフルなミディアムナンバーをぶち込んできます。ここまでくると、もはやハードロックというよりはサンタナあたりのアダルトなAORと呼んでも違和感ないくらいの作風。続く「Make The Best Of What You Got」も若干黒っぽさを表出させたロックンロールで、サビに入る前までの流れにFOREIGNERをちょっと思い浮かべたり。「Follow Your Heart」もその系統ですよね。

で、9曲目にしてこのアルバム初のバラード「Do You Love Me Enough」が登場。大人の渋みを感じさせる落ち着いたトーンで、コーラスの入れ方も絶妙。そこから大きなノリの「Stronger」、切ないアコースティックバラード「Love Is The Law」で締めくくる。この余韻を残す終わり方も、なかなかだと思いました。

正直、再結成後の彼らの作品はそこまで真剣に聴いてこなかったし、ピンとくるアルバムもそこまでありませんでした。が、これは全体のバランス含めてすごく良いんじゃないでしょうか。派手さは皆無ですが、じっくり腰を据えて向き合うことができるスルメ系な1枚。入門編としても最適だと思いますよ。



▼FM『ATOMIC GENERATION』
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2018年4月 8日 (日)

JACK WHITE『BOARDING HOUSE REACH』(2018)

2018年3月発売の、ジャック・ホワイト通算3作目のソロアルバム。前作『LAZARETTO』(2014年)から約4年ぶりの新作となりますが、その間には2枚組アコースティック&レアトラックアルバム『ACOUSTIC RECORDINGS 1998-2016』(2016年)が挟まれているので、実質2年ぶりくらいの感覚なんでしょうか。

とはいえ、純粋な新曲ばかりのアルバムは4年ぶりなので、ファンならずとも“待望の”という表現がぴったりな1枚かと思います。

THE WHITE STRIPES時代から一貫して、ジャック・ホワイトが作り出すサウンドにはブラックミュージックからの影響は間違いなく含まれていましたが、今作は彼の作品中でもっとも“黒っぽい”仕上がり。それもそのはず、本作にはドラムやベース、オルガンなどでゲスト参加しているメンツがビヨンセやQ-TIP、ジョン・レジェンド、マライア・キャリー、カニエ・ウエスト、リル・ウェイン、ジェイ・Z、FISHBONE、SOULIVEなどなど、ソウルやファンク、R&B、ヒップホップ系アーティストをサポートするミュージシャンばかりなのです。こういった外的要素が、彼の生み出す楽曲をより“黒っぽく”仕上げたことは想像に難しくないはずです。

また、アルバムを聴いていて非常に興味深かったのは、これまでの彼の作品はそういった要素(=ルーツ)をテイストとしてロックンロールを展開してきたのに対し、今回に限ってはロックが“テイスト側”で、表現しようとしているものがジャック・ホワイトなりのブラックミュージックなのではないか……そう思わずにはいられないぐらい、芯からドス黒さに満ち溢れていのです。

さらに本作でのジャックは、スライ・ストーンやプリンスといった鬼才たちの姿とイメージが重なる瞬間が多々ある。彼が今回のアルバムで目指したのは、そういった先人たちの偉業を引き継いで未来につなぐことだったのではないでしょうか……なんていうのは、ちょっと大げさかしら?

でも、時代性や昨今の音楽シーンの状況を考えると、この『BOARDING HOUSE REACH』というアルバムでの試みはあながち間違ってないのかもしれませんね。ぜひこのアルバムをライブで演奏する際には、SLY & THE FAMILY STONEやPRINCE & THE REVOLUTIONみたいなスタイルで表現してもらいたい。そう思わずにはいられないくらい、このアルバムの中には過去と未来をつなぐ大切なものが詰まっている。そんな、とんでもない異形のアルバムだと断言させてください。

いやはや、すげえアルバムですわ。



▼JACK WHITE『BOARDING HOUSE REACH』
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2018年3月31日 (土)

JUDAS PRIEST『FIREPOWER』(2018)

2018年3月に発表された、JUDAS PRIEST通算18枚目のスタジオアルバム。前作『REDEEMER OF SOULS』(2014年)からほぼ4年ぶりにあたる本作は、全米・全英ともに5位という好成績(アメリカでは過去最高位)を残し、概ね高評価を得たように思います。

前作から制作に加わったリッチー・フォークナー(G)の影響もあってか、『REDEEMER OF SOULS』は70年代〜80年代初頭のハードロック的スタイルを踏襲しつつ、再結成後の2枚(2005年の『ANGEL OF RETRIBUTION』と2008年の『NOSTRADAMUS』)をより若々しくしたような楽曲を楽しむことができました。それに続く今作『FIREPOWER』は、『REDEEMER OF SOULS』をさらにメタリックに、かつよりモダンにアップデートしたような内容と言えるでしょう。

プロデュースを手がけたのは、プリーストの80年代の名盤を多数手がけてきたトム・アロムと、昨今のモダンなヘヴィメタル作品を多数プロデュースするアンディ・スニープ。この「プリーストのことを一番理解しているプロデューサー」と「もっとも現在のメタルシーンを理解しているプロデューサー」を同時投入することで、このエネルギッシュなアルバムが完成したのだと思うと、なるほど納得です。

アルバムのオープニングを飾る「Firepower」の疾走感と、続く「Lightning Strikes」で見せる(聴かせる)王道感。前者は80年代後半以降、特に『PAINKILLER』(1990年)で確立させたブルータルな作風を彷彿とさせますし(もちろん単なる焼き直しでは終わっていない)、後者はその『PAINKILLER』に含まれていたハードロック的ストロングスタイルをブラッシュアップさせたような1曲です。かと思えば、「Never The Heroes」のような若干ダークな空気感の楽曲(でも、聴けばプリーストのそれだとわかる)や、「Children Of The Sun」みたいにオールドスタイルのハードロックをモダンに昇華させたミドルヘヴィナンバーも存在する。

アルバム後半に入ると、短尺のインスト「Guardian」から続く「Rising From Ruins」や「Spectre」といったミドルチューンで深みを見せる。3分にも満たないメロウな「No Surrender」あたりは80年代前半の彼らをイメージさせるし、逆に「Lone Wolf」はなんとなくFIGHT時代のロブ・ハルフォード(Vo)を思い浮かべてしまう。そんなバラエティに富んだ楽曲群のラストを飾るのは、6分前後におよぶ本作最長のメタルバラード「Sea Of Red」。全14曲、58分と決して短いとはいえない大作ですが、意外とスルッと聴けてしまうのも本作の魅力かもしれません。

前作『REDEEMER OF SOULS』はエディション違いで曲数が違ったり、そのデラックス盤が全18曲で90分超えと、その前の『NOSTRADAMUS』同様に1曲1曲の印象が薄まる作風でした。本作も14曲と確かに曲数が多いので、しっかり聴き込むには時間が必要ですが、それでも「何度でも聴きたい」と思わせてくれる魅力が豊富な1枚だと思いました。すごく簡単な分類をしてしまえば、前作が“ハードロックバンドJUDAS PRIESTの集大成”だとしたら、本作は“ヘヴィメタルバンドJUDAS PRIESTの、過去と今をつなぐ現在進行形”と言えるのではないでしょうか。そう、単なる集大成というよりは、しっかり2018年という時代と向き合っている。そんな印象を強く受けます。

本作リリース直前には、オリジナルメンバーと呼んでも過言ではないギタリスト、グレン・ティプトンが10年前からパーキンソン病を患っていること、同作を携えたワールドツアーには参加せず、代わりにアンディ・スニープが参加することがアナウンスされたばかり。3月からスタートした全米ツアーのある公園にはグレンもゲスト参加したようですが、こうなると本作の持つ意味合いも今後少し変わってくる気がします。『ANGEL OF RETRIBUTION』以降では、ロブのボーカルも一番脂が乗っているし、もう少しいけるんじゃないか……と思っていた矢先だったので、この現実を受け入れるにはもう少し時間がかかりそうです。

とはいえ、自分は「間違いなく素晴らしい作品だし、大好きだし、2018年を代表する1枚」という、最初にこのアルバムを聴いたときに感じた気持ちを大切にしたいと思います。



▼JUDAS PRIEST『FIREPOWER』
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投稿: 2018 03 31 12:00 午前 [2018年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2018年3月29日 (木)

THE DEAD DAISIES『BURN IT DOWN』(2018)

前作『MAKE SOME NOISE』(2016年)で日本デビューを果たし、2度の来日公演で人気を確かなものにしつつあるTHE DEAD DAISIES。そんな彼らが、早くも4thアルバム『BURN IT DOWN』を日本先行でリリースしました。

前作発表後ブライアン・ティッシー(Dr)が脱退し、ディーン・カストロノヴォ(元JOURNEY、現REVOLUTION SAINTS)が加わった編成でレコーディングされた本作は、前作にあった軽やかさが減退し、全体的にヘヴィなビート&音像の“圧が強い”1枚に仕上がっています。

やっぱりドラマーが変わると雰囲気が変わるんだな、ってことをまざまざと見せつけられる本作は、冒頭の「Resurrected」から重いビートとヘヴィなギターサウンド、ジョン・コラビ(Vo)のよるスモーキーな歌声でダークな空気感を作り上げていきます。続く「Rise Up」もその延長線上にある1曲で、オープニングのギターこそブルージーながら本編に入るとやはりヘヴィになる「Burn It Down」や「Judgement Day」など、基本的にトーンが近い曲が並んでおります。これを良しとするか否かで、本作に対する評価は大きく分かれそうな気がします。

また、本作には日本盤ボーナストラック含め、カバー曲が2曲収められています。アルバム本編に登場する「Bitch」はかのTHE ROLLING STONESの定番曲。ソウルフルなロックンロールといった印象の原曲がヘヴィにアップデートされており、原曲に対する思い入れによって評価が割れそうな予感。個人的には「悪くないけど、絶賛するほどでもない」という仕上がりかな。もうひとつは、日本盤ボーナストラックの「Revolution」。THE BEATLESの名曲カバーですが、こちらはもともとヘヴィにアレンジしてもなんら違和感のないナンバーなので自然な仕上がりです。なんでこっちをアルバム本編に入れなかったんだろう?という疑問も残りますが、まあわかります。若干ポップになっちゃいますものね。にしても、ストーンズにビートルズっていうセレクトが、なんていうか……(まあ前作もTHE WHOとCCRだったしね)。

アルバム本編の話題に戻ります。後半には「Set Me Free」というソウルフルなロッカバラードがあるものの、続く「Dead And Gone」でヘヴィ路線へ逆戻り。ラストにアップテンポのロックンロール「Leave Me Alone」があってホッとしますが、個人的にはちょっと期待はずれな1枚だったかな。

適度なヘヴィさはもちろん必要だと思います。けど、このバンドの魅力って(特にジョン・コラビが加入してからは)コラビのハスキーかつソウルフルな歌声を活かしたAEROSMITH譲りのハードロックンロールだと思うんです。そこにダグ・アルドリッジ(G)が加わった前作で、そのハードさがよりモダンなものへと昇華されつつあった。バランスとしては最高だったんですよ。だからこそ、この行きすぎた感がちょっと残念でなりません。

これまでの作品にもヘヴィな楽曲は存在したけど、ちゃんとヘヴィな中にもR&Rらしいスウィング感が存在したんだけど……難しいですね、バンドって。



▼THE DEAD DAISIES『BURN IT DOWN』
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2018年3月27日 (火)

SUPERCHUNK『WHAT A TIME TO BE ALIVE』(2018)

アメリカの4人組オルタナロックバンドSUPERCHUNKの4年半ぶり、通算11枚目のオリジナルアルバム。彼らのアルバムは毎回すべてチェックしているわけではなく、何枚か聴いて気に入っているといった程度のリスナーですが、本作はとにかく素晴らしいと素直に思える1枚。

前作『I HATE MUSIC』(2014年)も聴いていましたし、あれも素晴らしい1枚だと思っているのですが、今作は予想していた以上といいますか。いや、正直言えばそんな良し悪しを気にせずに接した1枚でした。ふいに手にした1枚が、極上の1枚だった。だからこそ、驚きも大きかったわけです。

メンバーは本作発表に際して、「自分達が住み、そして自分達の子供が成長しようとしている周辺の状況を完全に無視したレコードをつくることは、バンドをやっている者、少なくとも今の自分たちのバンドにとっては奇妙なことなんだ」というコメントを発表しています。つまり、今作では現在のドナルド・トランプ政権に対する絶望と怒りが表現されていると。それがこのアグレッシヴなサウンドにも反映されているんでしょうね。

とにかくラウドで前のめりで力強い。「Lost My Brain」「Break The Glass」「Bad Choices」「Cloud Of Hate」など、どこかネガティヴさが感じられるタイトルがずらりと並びますが、実際にアルバムを聴くと悲惨さや絶望は感じられず、むしろ状況を変えようと前進していくことを選んだバンドの強い意志すら感じられます。メンバーの言葉じゃないですが、まさに「これは悲惨で落ち込んでいる状況についてのレコードだけど、聴いていても悲惨で憂鬱に感じるようなレコードではない」と。ホント、救いのあるアルバムだと思います。

全11曲(日本盤ボーナストラックを除く)で32分というトータルランニングも素晴らしく、その熱量と勢いと相まって、あっという間に聴き終えてしまう。気づけばまた最初からリピートしているし、何度聴いても飽きが来ない。それは楽曲の持つパワーはもちろんのこと、優れたメロディとバンドアンサンブルによるものも大きいのかなと。ただパンキッシュで速い曲だけではないし、ラストにはじっくり聴かせるミディアムナンバー「Black Thread」も控えている。この余韻を残す終わり方が、また聴きたいという思いにつながるのかもしれませんね。

オルタナロックファンやパワーポップリスナーにはもちろんのこと、初期のFOO FIGHTERSあたりがお気に入りのハードロックファンにも絶対にひっかかりの多い、スルメ的な1枚だと思います。



▼SUPERCHUNK『WHAT A TIME TO BE ALIVE』
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2018年3月25日 (日)

ANDREW W.K.『YOU'RE NOT ALONE』(2018)

ANDREW W.K.世界共通の新作としては、日本未発売の『55 CADILLAC』(2009年)以来実に9年ぶりの新作。特にここ日本では2008〜9年にかけてJ-POPカバーアルバムやガンダムカバーアルバムなど企画モノを連発したおかげで、“過去の人”的なイメージで語られる機会も増えていました。そこから数えても9年、周りにはデビューアルバム『I GET WET』(2001年)の衝撃を知らない若いリスナーも増えています。

そんな中、満を辞して発表された通算5枚目のオリジナルアルバム。路線的には2ndアルバム『THE WOLF』(2003年)や3rdアルバム『CLOSE CALLS WITH BRICK WALLS』(2006年)に近いのかなと(前作『55 CADILLAC』は毛色の違う異色作でしたし)。

そもそも、アルバムタイトルの『YOU'RE NOT ALONE』からして、ANDREW W.K.“っぽく”ない。「あれ、大丈夫?」と不安になったのは僕だけはないはず。で、実際にアルバムを聴くと、オープニングの仰々しいインストナンバーから続く「Music Is Worth Living For」……あれ、こんなだっけ? あ、でも最近はこんなだったか……と難しい顔をしている自分がいる。聴き進めるうちに、我々がイメージする“パーティソング”もいくつか顔を覗かせるのだけど、その勢いもデビュー作と比べたら落ち着き払ったもので、どこかお上品。鼻血を流しながらパーティ!パーティ!していた時代は今は昔。ああ、こうやってみんな大人になっていくのか、と肩を落としたのでした。

が、だからといって本作のクオリティが低いものかと言われたら、そこはまた話は別。パーティの質は確かに変わったものの、楽曲そのものは非常に練り込まれており、リスニングに耐えうるものばかり。1曲1曲の曲間がかなり短いせいで、組曲のように聴こえる構成があったり、優雅なサウンド&世界観が影響してか、どこかコンセプトアルバムのように思えたり。『THE WOLF』から顕著になったQUEENへの憧れが、本作では独自の形でオリジナルなものへと昇華されたのかな、そんな気がします。

だからこそ、このアルバムはもっとゴージャスなサウンドプロダクションで聴きたかったな。例えば往年のDEF LEPPARD的なビッグプロダクションで。それが似合う楽曲たちだと思うし、それを今ちゃんとした形でやれる人だと思うのですよ。もちろん、それに近いことをやってくれてはいるのですが、『I GET WET』の頃と比べるとどうしても1音1音のアタックが弱いような。それがメジャー資本とインディーズとの違いなのか、あるいは今やりたいこととしてのこだわりなのかはわかりませんが……。

ファンの求めるANDREW W.K.像とのズレ、この音ならもっとこうやれたんじゃ……という惜しさ含め、9年ぶりの新作(日本では数々の企画盤や『55 CADILLAC』をなかったことにして、『CLOSE CALLS WITH BRICK WALLS』以来12年ぶりと謳ってます)のわりには……と思ってしまうのが正直なところ。曲が良いだけに、余計にね。でも、ライブを観たら印象がまた変わるのかなぁ。嫌いになれない作品だけに、そう願いたい。



▼ANDREW W.K.『YOU'RE NOT ALONE』
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投稿: 2018 03 25 12:00 午前 [2018年の作品, Andrew W.K.] | 固定リンク

2018年3月22日 (木)

MINISTRY『AMERIKKKANT』(2018)

MINISTRYの4年半ぶり、通算14作目のスタジオアルバム。前作『FROM BEER TO ETERNITY』(2013年)を最後にもうオリジナルアルバムは作らないなんて話があったような気がしますが、アル・ジュールゲンセン(Vo, G)はこのアルバムを作らずにはいられなかった。そういうことなんでしょう。

それもそのはず、本作は現在のアメリカでのドナルド・トランプ政権に対する怒りが大きなきっかけになっているのですから。

これまでもMINISTRYは『PSALM 69: THE WAY TO SUCCEED AND THE WAY TO SUCK EGGS』(1992年)を筆頭に、ブッシュ政権を批判する楽曲や作品を発表しています。こういったポリティカルな要素はアルにとって、創作活動における大きな起爆剤になっていることは間違いないでしょう(もちろん、それがすべてだとは言いませんが)。

そして、アルはただトランプ政権を批判・攻撃するだけではなく、そういった人物を国のトップに選んだ社会に対する批判もこのアルバムで繰り広げています。それがまさしく、アルバムタイトルである『AMERIKKKANT』に示されているのでしょう。

とにかく、本作に関しては対訳の付いた国内盤を購入して、アルが表現したいこと、伝えたいことをしっかり理解してほしいところです。

そして、サウンドについて。お聴きいただけばわかるように、“これぞMINISTRY”というインダストリアルサウンドが終始展開されています。序盤こそヘヴィなミドルチューンが続くように思われますが、M-3「Victims Of A Clown」の終盤から始まるデジタルスラッシュビート……おなじみの“TVシリーズ”最新章「TV5/4 Chan」に続いて、突っ走りまくりの「We're Tired Of It」へと流れる構成は、往年のファンなら思わず手に汗握るものなんじゃないでしょうか。

後半もグルーヴィーな「Wargasm」、パワフルなインダストリアルビートが気持ち良い「Antifa」や「Game Over」、本作の主題ともなるエピックナンバー「AmeriKKKa」と、好きな人にはたまらない内容と言えるでしょう。とうことは、初心者には……決してキャッチーな作品とは言い切れないので、初めてMINISTRYの作品を手に取る人には本作はちょっとだけ難易度が高い1枚かもしれません。しかし、時代と対峙するという点においては、今このタイミングに聴いておくべき重要な“パンク”アルバムとも言えるでしょう。

なお、本作にはFEAR FACTORYのフロントマン、バートン・C・ベルが数曲にゲスト参加しています。さらに、N.W.A.のオリジナルメンバーのひとり、アラビアン・プリンス、ベックのバックバンドなどでおなじみのDJスワンプなども名を連ねています。このへんの名前にピンと来た人、ぜひチェックしてみてください。

なお、個人的には本作、ここ数作の中で一番好きな1枚です。



▼MINISTRY『AMERIKKKANT』
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2018年3月21日 (水)

CORROSION OF CONFORMITY『NO CROSS NO CROWN』(2018)

CORROSION OF CONFORMITYの通算10作目となるスタジオアルバム。前作『IX』(2014年)から約3年半ぶり、ペッパー・キーナン(Vo, G)が復帰して初のスタジオ作品となります。ちなみに、ペッパーが最後に参加したアルバムは2005年の7thアルバム『IN THE ARMS OF GOD』が最後。前作『IX』ではソングライターとして参加していたように、バンドとの関係はそこまで悪くなかったようです。

個人的にCOCというと、1991年の『BLIND』(このときは専任シンガーが在籍しており、ペッパーは数曲のみでボーカルを披露)、1994年の『DELIVERANCE』、そして1996年の『WISEBLOOD』の3枚あたりがバンドとしての人気のピークかなと考えています。もちろん、マイク・ディーン(B, Vo)が歌う時代も嫌いじゃないですが、どうにもペッパーの印象が強くて。だからこの3枚の中でも特に『DELIVERANCE』と『WISEBLOOD』は、今でもお気に入りだったりします。

で、今回の新作ですが……多くのリスナーが想像するとおりのCOCのサウンドが展開されています。つまり、BLACK SABBATHからの影響を強く感じさせるストーナーロック的なハードロックサウンドに、サザンロックのようにレイドバックしたアーシーなサウンドをミックスしたもの。ミドルテンポ中心の、引きずるように重いビートと、聴き手を不安にさせる不穏なギターリフ、そしてペッパーによる適度にメロウ、だけどひたすら叫ぶようなボーカル。例えば今のバンドだったら、BLACK LABEL SOCIETYあたりに通ずるヘヴィさとキャッチーさを兼ね備えた存在といえばわかりやすいでしょうか。

もちろん、ただヘヴィ一辺倒というわけではなく、アルバム中盤にはアコースティックギター主体の短尺インスト「Matres Diem」があったり、サイケデリック感とカオティックなヘヴィさをミックスさせた「Nothing Left To Say」、不穏な効果音と不気味なコーラス隊が加わったダーク&スローな「No Cross No Crown」みたいなフックとなる楽曲も存在する。そういう緩急を経て、ラストにダイナミックな「A Quest To Believe (A Call To The Void)」で大団円を迎えるという構成は圧巻の一言です。50分以上もあるボリューミーな作品ですが、この“圧”のおかげで、実はそれ以上にも感じられるほど、とにかく緊迫感の強い1枚です。

ちなみに、日本盤にはラストにQUEENのカバー「Son And Daughter」を追加収録。あのQUEENならではのオーケストレーションも見事に再現されていますが、COCらしく“どヘヴィ”に生まれ変わったこのアレンジもなかなかのものがあります。オマケ以上の価値がある1曲なので、興味があったらぜひ日本盤を手にとってみてください。

このアルバムを携えて、久しぶりの来日公演にも期待したいところ。僕が最後に観たのは、確かOUTRAGEと共演したときだから、もう20年以上も前ですね……せっかく久しぶりに日本盤が出たのだから、ぜひフェスでの再来日を願っております。



▼CORROSION OF CONFORMITY『NO CROSS NO CROWN』
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投稿: 2018 03 21 12:00 午前 [2018年の作品, Corrosion of Conformity] | 固定リンク

2018年3月18日 (日)

STONE TEMPLE PILOTS『STONE TEMPLE PILOTS (2018)』(2018)

前作『STONE TEMPLE PILOTS』(2010年)と同タイトルですが、内容は別モノとなるSTONE TEMPLE PILOTS通算7作目のオリジナルアルバム。フルアルバムとしてはスコット・ウェイランド参加最終作であり、彼の復帰後最初で最後のアルバムとなった『STONE TEMPLE PILOTS』以来8年ぶり、新音源としてはそのスコットの後任としてLINKIN PARKから兼任参加したチェスター・ベニントンとのEP『HIGH RISE』(2013年)以来5年ぶり。まあとにかく、ここ数年のストテンはツイてない。解雇したスコットは2015年12月に、やはりというかドラッグのオーバードーズで死去。さらに2017年7月にはLINKIN PARKへと戻っていったチェスターも自殺と、歴代シンガーをことごとく不幸な形で失っているのですから。

しかし、バンドとして歩みを止めることなく、ストテンは2016年秋に新ボーカリストオーディションを開始。その結果はしばらく発表されることなく、彼らは水面下で後任を決め、そのままレコーディングに突入。しばらく沈黙を貫き(チェスター死去のときはコメント出しましたが)、昨年11月に新メンバーとしてジェフ・グートが加わったことと、新曲「Meadow」の配信を発表し、年明け2月にはアルバムリリースがアナウンスされたのでした。

「Meadow」を聴いた時点で、まあボーカリストが変わろうがストテンはストテンのままなんだろうな、とは思っていましたが……アルバムも“まんま”でした。もちろん良い意味で。

ジェフ・グートの歌声は決してアクが強いというわけではないものの、どことなくスコットにもチェスターにも似てるような印象もあり(そう聞こえてくる瞬間が多々あり)、前任たちからかけ離れているとは思えない。もちろん、ディレクションによって歌い方を“寄せている”のもあるんでしょう。20年以上にわたり貫きとおしてきた信念を強く感じさせる仕上がりです。

楽曲自体も適度にハード、かつ適度にポップ。最初の解散前にあったサイケデリックな要素もしっかり兼ね備えており、ある種の集大成感すら感じさせます。が、思えば前作『STONE TEMPLE PILOTS』(タイトルややこしい)の時点で「再結成一発目にしてセルフタイトル」を名乗っていたのですから、あの時点で「今自分たちがやるべきこと=集大成的作品を作ること」というコンセプトがあったと思うんです。実際、そういうアルバムだと思いましたし(もちろん、ただの“焼き直し”だけでは終わっていませんでしたが)。

そういう点において、今作も同じコンセプトのもとに制作されているように感じるのですが、ただ前回と今回は同じ“立て直し後一発目”でも、そこへ向かうまでの経緯やメンバーのテンションもまったく異なるもの。特に今回は少なからずどんよりした空気を抱えていたでしょうし……。そこを打ち消すことができたのは、やはりフレッシュな新メンバーのおかげなんでしょうね(フレッシュといいながら、ジェフはすでに40歳オーバーですけどね)。それに、無駄に若くてメラメラな奴ではなく、ある程度落ち着き払った、それなりにキャリアのある人間を迎えたのも大きいのかなと。

もしあなたが過去のストテンの作品に少しでも触れたことがあり、1枚でも好きなアルバム、1曲でも好きなナンバーがあるのなら、本作にはあなたの琴線にっ触れる要素があるはずです。むしろ、「ボーカルが違う」「オリメンじゃない」なんてつまらないことにこだわらなければ、今までの“続き”として普通に楽しめることでしょう。衝撃こそないけど、いつ何時でも安心して楽しめる1枚。



▼STONE TEMPLE PILOTS『STONE TEMPLE PILOTS (2018)』
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投稿: 2018 03 18 12:00 午前 [2018年の作品, Stone Temple Pilots] | 固定リンク

2018年3月17日 (土)

BON JOVI『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE (2018 VERSION)』(2018)

3月10日付けの米・Billboardアルバムチャート「BILLBOARD 200」にて、2016年11月発売のBON JOVIのアルバム『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』が1年3ヶ月ぶりに1位を獲得したことをご存知でしょうか。発売から数週でトップ200圏外へと落ちたアルバムが、1年以上経ってからいきなり1位まで上昇するって、通常では考えられないことなんですが、一体何が起きたんでしょう?

実はこれ、簡単なカラクリで。3月14日から始まる全米アリーナツアーのチケットにアルバムCDを付けたらしく(これ自体は付ける/付けないの選択が可能)、35万枚以上ものチケットに対して12万枚分のCDが新たに売れたと(詳細はこちら)。そりゃあいきなり1位になりますよね。最近ではMETALLICAあたりもこの手法を使っており、彼らも2016年発売のアルバム『HARDWIRED... TO SELF-DESTRUCT』を昨年1年間で50万枚近く売り上げています。日本でもかなり前にEXILEが同様の手法を取りましたが、今はこの形態ではチャートに計上されないんでしたっけ。なんにせよ、アルバムをまだ買ってない、ストリーミングでしか聴いてないけどライブには行きたいって人にはフィジカルに触れてもらう、よいきっかけになるかもしれませんね(押し売りにさえならなければね)。

で、話をBON JOVIに戻しますと、彼らは2月末に『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』に新曲2曲を追加したリイシューバージョンをデジタルアルバム&ストリーミングのみで発表しています。これにより以前のバージョンから既存曲が外されるということもなく、単に頭に新曲2曲を追加し、3曲目からは既存のアルバムどおりのトラックリストのまま。アルバム頭の印象が大きく変わる程度かと思いきや、意外とアルバム序盤の雰囲気がガラッと変わるんじゃないかと思うのです。

アルバムオープニング曲となった新曲「When We Were Us」は、メジャーキーのアップチューン。軽快なリズムとディレイを効かせたギターリフ、ダイナミックなアレンジがいかにもBON JOVIといった印象で、マイナーキーのハードロック「This House Is Not For Sale」から始まる以前のバージョンとは冒頭の印象がガラッと変わりました。ゼロ年代中盤以降のアメリカンパワーポップ的作風が戻ってきた感もあり、僕はこのオープニング(およびこの曲)大好きですよ。

続く2曲目「Walls」はここ最近のBON JOVIらしいマイナーキーの枯れたロックナンバー。が、この曲にも軽快さが備わっており、サビに入ると拍が半分になりビッグなビートが刻まれる、この感じが現代的でなかなかのアレンジだと思います。ただ、先の「When We Were Us」同様に、日本人にはシンガロングが難しい楽曲かなと。そういったポピュラー感は過去のヒットナンバーと比較すると弱い気がします。そこだけが勿体ない。

で、3曲にようやく「This House Is Not For Sale」。ダークさが漂うこの曲から始まる以前のバージョンは、全体的にひんやりした印象が強かったですが、頭2曲の軽快さが加わったことで、少しだけ入っていきやすくなったんじゃないでしょうか。以前の重厚さがある雰囲気も悪くないけど、やっぱりBON JOVIというバンドにはこれくらいのポップ感が常にないとね。

ということで、通常盤は2曲追加の14曲入り、デラックス盤は19曲入りとかなりの曲数になってしまいますが(そもそもライブではそんなに新曲やらないのにね)、これからこのアルバムに触れる場合は14曲の通常盤で問題ないと思います。

にしても、全然来日しませんね、BON JOVI。アルバム発売から1年3ヶ月以上経っても情報がないなんて、よほど日本に対して興味がなくなったのか、動員が見込めないと思っているのか……ワールドツアーの最後に1、2回東京ドームでやって終わり、みたいになりそうな気がします。まあ、それでも来てくれるだけいいんですけど、ちょっと機を逃しすぎてないかい。本当に動員悪くなりそうで怖いです……。



▼BON JOVI『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE (2018 VERSION)』
(amazon:MP3 / MP3デラックス版

投稿: 2018 03 17 12:00 午前 [2016年の作品, 2018年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2018年3月10日 (土)

JOHN CORABI『LIVE '94 (ONE NIGHT IN NASHVILLE)』(2018)

MOTLEY CRUEのアルバムで一番好きな作品はどれか?と聞かれたら、きっと多くのリスナーが『DR. FEELGOOD』(1989年)『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)を挙げると思うんです。もちろん僕もこの2枚はトップクラスで好きですし、事実80年代〜90年代初頭は確実にこの2枚を選んでました。

が、年をとるとだんだんとひねくれてきて(笑)、バンドの真の姿を無視したセレクトになっていくんですよね……例えば、ここ数年はデビューアルバム『TOO FAST FOR LOVE』のインディーズ盤(1981年)がお気に入りだし、同じくらいに“好きすぎてたまらない!”と声を大にして公言しているのが唯一ヴィンス・ニール不参加の6thオリジナルアルバム『MOTLEY CRUE』(1994年)なのです。

2003年に執筆したレビューの時点から、いや、もっと言えばこのアルバムが発売された1994年当時から僕はこの『MOTLEY CRUE』というアルバムがバンドのキャリア上での最高傑作だと公言してきました(もちろん異論反論は受け付けます。笑)。それは、このアルバムが『DR. FEELGOOD』以降彼らがやろうとしてきたこと、それに加えてグランジやグルーヴメタルなど90年代前半のヘヴィな音楽シーンの流行を自分たちなりに解釈した結果が形として表現された、あの時代にしか作り得なかった作品だからなんです。この1994年3月発売という絶妙なタイミング。カート・コバーン(NIRVANA)が亡くなる1ヶ月前のことですもん。まあ、結果から言えば内容含め、総スカンを食らったわけですが……。

で、ニッキー・シックス(B)が「MOTLEY CRUEであってMOTLEY CRUEではない」このアルバムは、バンドが解散するまで自身のキャリアからスルーされてきたわけですが、それに対して「NO!」と言い続けたのが、今回の主役であるジョン・コラビ。彼はMOTLEY CRUE脱退後も事あるごとにアルバム『MOTLEY CRUE』の楽曲を演奏してきた、ある種『MOTLEY CRUE』の功労者なわけです。涙ぐましい努力ですね。

今でこそTHE DEAD DAISIESのフロントマンとして再ブレイクを果たした感のあるジョンですが、このタイミングに『MOTLEY CRUE』の完全再現ライブを収めたライブアルバムを発表しました。当時の映像、ライブ音源は公式では残っていないので、同作のファンにはとっても嬉しい限り。また、THE DEAD DAISIESでジョンのことを知ったという若いリスナーにも、(音楽性こそ異なるものの)こういうこともやってたんだぜ!というアピールにもなるし、3月下旬にリリースを控えたTHE DEAD DAISIESの最新作『BURN IT DOWN』への布石としても絶好の1枚になるんじゃないでしょうか。

本作は2015年10月27日にアメリカ・ナッシュビルでライブレコーディングされたもの。Jeremy Asbrock(G, Cho)、 Phil Shouse(G, Cho)といったジーン・シモンズKISS)のソロツアーにも参加した面々、Topher Nolen(B, Cho)、そしてアルバム中のMCでも触れられているジョン・コラビの実子Ian Corabi(Dr)という布陣で、『MOTLEY CRUE』の世界観を限りなくオリジナルに近い形で再現しています。曲によってはジョンもギターを弾くのでトリプルギター編成となり、これが『MOTLEY CRUE』という“Wall of Heavy Sound”を再現するにはぴったり。本作の要となるトミー・リーのグルーヴィーかつヘヴィヒッティングなドラムも、まぁトミーの域には及ばないものの、かなり良い感じで近づけているように思います。

ジョンのボーカルは、曲によっては高音域が出ておらず、うまくごまかしている箇所も多いんですが、まあ50代後半といった年齢を考えればかなり頑張っているほうではないでしょうか。むしろ、20数年前の脂が乗った時期とはことなる、ちょっとスティーヴン・タイラーAEROSMITH)に近づいた今のボーカルスタイルで表現される『MOTLEY CRUE』の世界観も悪くない。うん、良いですよ、これは。

ヘヴィなリフ&ドラムからスタートする「Power To The Music」をオープニングに、アルバム『MOTLEY CRUE』全編12曲を曲順通りに演奏し、ライブは最後に「Driftaway」で締めくくり、ボーナストラックとして当時の編成で制作された「10,000 Miles Away」(ミニアルバム『QUATERNARY』日本盤やボックスセット『MUSIC TO CRASH YOUR CAR TO: VOL.2』に収録)が、レアな1曲として演奏され、本作にも追加収録されています。このブルージーな世界観は、『MOTLEY CRUE』というよりも現在のTHE DEAD DAISIESにより近いなと改めて実感させられるのですが、いかがでしょう?

このライブアルバムを聴いてもなお、やはりアルバム『MOTLEY CRUE』は傑作だという思いは少しも薄れることはありませんでした。まだ『MOTLEY CRUE』を聴いたことがないというリスナーはホント、このライブアルバムを機に、一度は『MOTLEY CRUE』に触れてみてもいいんじゃないですか? できることならMOTLEY CRUEだとかTHE DEAD DAISIESだとかそういった先入観を抜きにして、一度接してみてください。

って、結局このライブアルバムではなくて『MOTLEY CRUE』をオススメする内容になっちゃいましたね(笑)。そりゃあ熱が入って、こんなに長文になるわな(苦笑)。



▼JOHN CORABI『LIVE '94 (ONE NIGHT IN NASHVILLE)』
(amazon:海外盤CD / MP3

投稿: 2018 03 10 12:00 午前 [2018年の作品, John Corabi, Motley Crue] | 固定リンク

2018年3月 9日 (金)

SAXON『THUNDERBOLT』(2018)

SAXON通算22作目のスタジオアルバム。IRON MAIDENDEF LEPPARDと並ぶNWOBHM(=New Wave Of British Heavy Metal)の代表格バンドのひとつですが、ビフ・バイフォード(Vo)とポール・クィン(G)以外のメンバーは様変わりしており、現編成は2005年から13年にわたり続いているので、まぁ安定しているほうなのかなと(ドラムのナイジェル・グロックラーは歯抜けで不参加時期もあるけど、何気に1981年から参加しているので、ギターのダグ・スカーラットが参加した1996年から数年は現編成がすでに揃っていたんですけどね)。

結成40周年を超え制作された本作。僕自身は近作を熱心に聴いてきたリスナーではないし、いまだに80年代前半のイメージしかなかったわけですが、改めて聴いてみたらこれが素晴らしいのなんの。新作としては2015年の『BATTERING RAM』以来3年ぶりということになるのですが、サウンドそのものは王道のHR/HMであり、楽曲の質もなかなかのもの。ミディアムテンポで攻めるのかなと思っていたら、序盤から「Thunderbolt」「The Secret Of Flight」と疾走感の強い楽曲連発で、続く「Nasferatu (The Vampires Waltz)」もドラマチックなアレンジが施されており、聴き応えバッチリです。

かと思えば、再びアッパーな「They Played Rock And Roll」で往年のSAXON節を聴かせたり(しかもこの曲、タイトルからも想像できるようにMOTÖRHEADレミーのトリビュートソングで、曲中盤にはレミーの音声もフィーチャーされてます)、ヘヴィなシャッフルナンバー「Predator」でアクセントをつけたり、重々しいビートが心地よいミディアムチューン「Sons Of Odin」で自身の世界に引き込んだりと、想像以上にバラエティに富んだ楽曲が並びます。

後半も「Sniper」や“これぞSAXON!”と言いたくなる「Speed Merchants」などアップテンポの曲と、ヘヴィでリズミカルな「A Wizard's Tale」や泣きメロギターが気持ち良い「Roadie's Song」などが交互に並び、スルスル聴き進めることができます。

IRON MAIDENはひたすらプログレッシヴな方向に突き進み、DEF LEPPARDはポップかつ王道のブリティッシュロックを追求する中、SAXONはBLACK SABBATH(主に“DIOサバス”)やJUDAS PRIESTが作り上げた王道ブリティッシュHR/HMの世界を極めている。本作を聴いてそんな印象を受けました。

自分たちに何ができるか、何が一番得意なのか。それを「HR/HMとは?」という命題とともに真正面から向き合った結果が、この路線でありこのアルバムなんでしょね。新鮮さは皆無だけど、このバンドにそういったものを求める人はもはやいないでしょうし、むしろこのサウンドだからこそ信頼できる。40年も活動すれば“枯れ”や“いぶし銀”も自然と浮き出てきそうですが、そういったものを一切出さずに貫禄を感じさせるこのストロングスタイルは、もはや国宝級と呼んでいいのでは? 最高以外のナニモノでもない、唯一無二のヘヴィメタルです(本作は全英29位と、1986年の『ROCK THE NATION』以来32年ぶりに全英トップ40入りしたのも納得です)。



▼SAXON『THUNDERBOLT』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 03 09 12:00 午前 [2018年の作品, Saxon] | 固定リンク

2018年3月 1日 (木)

MICHAEL SCHENKER FEST『RESURRECTION』(2018)

さて、昨日からの続きです。

2016年のヨーロッパでのフェス出演、および日本での奇跡の来日公演でMICHAEL SCHENKER FESTというプロジェクトに手応えを感じたマイケル・シェンカーは、2017年に入ってから同メンツでのアルバム制作に乗り出します。確かに、それが実現したら最高だなと思うわけですよ。

しかも、ゲイリー・バーデン、グラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーというMSG(MICHAEL SCHENKER GROUPおよびMcAULEY SCHENKER GROUP)のシンガー3人だけでなく、現在マイケルが活動の主としているMICHAEL SCHENKER'S TEMPLE OF ROCKの現シンガーであるドゥギー・ホワイトまで加えた4人ボーカル編成でのアルバム作りですよ……正直、「うまくいくの、それ?」と不安に思ったわけですよ。

アルバムをほぼ完成させ、その流れでドゥギーを除くMICHAEL SCHENKER FESTの面々(2016年と同じ編成)は2017年10月、『LOUD PARK 17』2日目のヘッドライナーとして来日。そして年が明けた2018年2月末、ついにアルバムはリリースされました。

実はこのアルバム、雑誌のレビュー向けにひと足先に聴かせてもらってました。そこで僕は、短いながらも下記のようなテキストを用意しました。


マイケル・シェンカーが歴代ボーカリストと現行バンドのシンガーの計4名を迎え制作した異色のスタジオアルバム。完全オリジナル作品ながらも、“フェスト=祭典”というワードを含むプロジェクト名どおり彼の全キャリアが総括されたお祭り的内容は圧巻の一言。各シンガーの特性が見事に使い分けられている点もさすがだが、シェンカーの作曲能力やギタープレイがここにきて新たな黄金期に突入していることにも驚かされる。


いや、本当にこれ以上書きようがないくらい、良いんですよ。楽曲面も過去にシェンカーが関わってきたバンドを総括するかのようであり、それでいて今のTEMPLE OF ROCKにも匹敵する良質のHR/HMが展開されている。曲によって4人のシンガーがパートごとに歌い分けていたり、あるいは1曲まるまる歌っていたり、あるいはあるいは豪華な面々によるバッキングコーラスがあったりと。これ、世が世なら“マイケル・シェンカー版HEAR 'N AID”として機能してたんじゃないかな。そう思えるぐらい、夢の競演であり、サプライズ感満載の1枚なんです。

しかも、シェンカーのギタープレイも冴えまくっている。昨年秋の段階ではそこまで彼の近況に明るくなかった僕ですが、あれから数ヶ月でかなり勉強しました。過去作はもちろんのこと、近年の作品も聴き漁り、見事にハマってしまいました。だからこそ、このタイミングにこんな豪華な布陣を迎え、彼のキャリア中でもトップクラスの作品を生み出すことができて、なんとも幸せなことじゃないですか……今がベスト、本当にそのとおりだと思います。

過去にマイケル・シェンカーの楽曲やアルバム、プレイに心を動かされたことのある人なら、間違いなくピンとくる1枚。それがこの『RESURRECTION』というアルバムだと断言できます。いやあ、年始早々に最高なアルバムに出会えた僕も、本当に幸せな気分でいっぱいです。



▼MICHAEL SCHENKER FEST『RESURRECTION』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+DVD / 国内盤CD+DVD+Tシャツ / 海外盤CD / 海外盤CD+DVD / MP3

投稿: 2018 03 01 12:00 午前 [2018年の作品, Graham Bonnet, McAuley Schenker Group, Michael Schenker, Michael Schenker Fest, Michael Schenker Group] | 固定リンク

2018年2月 6日 (火)

CANE HILL『TOO FAR GONE』(2018)

アメリカ・ルイジアナ州ニューオリンズ出身の4人組メタルコアバンド、CANE HILLの2ndアルバム。デビューアルバム『SMILE』(2016年)発表後はBULLET FOR MY VALENTINEASKING ALEXANDRIA、ATREYUなどのヘッドラインツアーでサポートアクトを務めたほか、『VANS WARPED TOUR』に参加して実力/知名度を高めていったようです。

人気インディーレーベル「Rise Records」から発表された本作は、基本的に前作の延長線上にある内容ですが、激しさはそのままに、よりキャッチーさが増したように感じられます。

ミドルテンポ中心でグルーヴィーな作風は90年代後半以降のヘヴィロックからの影響が強く感じられるし、なおかつALICE IN CHAINSSTONE TEMPLE PILOTSあたりのグランジバンドが持っていた危うさや、カオティックハードコアバンドらしい狂気性も備えている。ハーモニーのかまし方こそ90年代後半以降のバンドっぽいですが、僕はそこになんとなく「グランジの突然変異」的な色合いを感じました。

でもね、今AICやSTPの名前を挙げてみたものの、実は具体的に「このバンドっぽい」とか「誰それのパクリ」みたいな明確さが見えてこないのも、実はこのバンドの特徴なんじゃないかと思っていて。確かにKORNTOOLなど90年代後半のシーンを席巻したバンドたちからの影響は、テイストとしていたるところから感じられるのだけど、直接的に「ここが誰っぽい!」という表現は少なく、そこが現代的な味付けで上手にミックスされているからこそ、「CANE HILLらしさ」が確立できているのではないでしょうか。

だから、もし1998年や2001年にこのバンドと出会っていたとしたら、「めっちゃ新しい音のバンドが出てきた!」と大喜びして聴きまくっていたんじゃないかな。

と同時に、現時点において「CANE HILLらしさ」はできているものの、「他のバンドとはここが違う!」という絶対的な個性がまだ見つけられていないという現実もあるわけで。同系統のサウンドを持つバンドたちと比べたら頭ひとつ抜きん出た印象はあるものの、そこからさらに上に行くにはそういった個性を見つけることがこのバンドには必要なんじゃないか、と思いました。

そのためには、まずは多くの人にもっと知ってもらうこと、聴いてもらうこと、観てもらうことが急務かな。本当は今年日本で初開催が決まった『VANS WARPED TOUR』に出演するといいんじゃないかと思うんですよね。

まあ個人的には、不思議とクセになる1枚なので、これからも頻繁に聴くことになると思います。



▼CANE HILL『TOO FAR GONE』
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投稿: 2018 02 06 12:00 午前 [2018年の作品, Cane Hill] | 固定リンク

2018年2月 5日 (月)

OF MICE & MEN『DEFY』(2018)

カリフォルニアのオレンジ・カウンティ出身のメタルコアバンド、OF MICE & MEN通算5作目のオリジナルアルバム。

前々作『RESTORING FORCE』(2014年)が全米4位、前作『COLD WORLD』(2016年)が全米20位とそれなりに大きな成功を収めていた彼らでしたが、アルバム発表から数ヶ月後にフロントマンのオースティン・カーライルが脱退。ATTACK ATTACK!時代から声や風貌に色気のあるフロントマンだっただけに、彼の脱退はバンドにとってかなりの痛手だったはずです。きっと新たなフロントマンを迎えることも考えたことでしょう。しかしバンドはアーロン・ポーリー(B, Vo)がリードボーカルを兼任する形で、残された4人で活動を継続。前作から1年4ヶ月というハイペースで新作を完成させました。

もともとアーロン自身、OF MICE & MEN加入以前はJAMIE'S ELSEWHEREというポストハードコアバンドでボーカリストとして活躍していたので、この兼任にはなんの問題もないはず。事実、オースティン脱退後も4人で『COLD WORLD』を携えたツアーを行っていたのですから。

なのに……なんでしょう、この至るところから感じるこの不思議な感覚は。

アルバムのプロデューサーは過去2作を手がけたデヴィッド・ベンデス(BEARTOOTH、coldrain、Crossfaith、WE CAME AS ROMANCEなど)から替わり、大御所ハワード・ベンソン(HOOBASTANKMY CHEICAL ROMANCESEPULTURAなど)が担当。適度にヘヴィで、スクリームを多用しつつも歌メロがキャッチーでしっかり作り込まれているメタルコア路線は過去2作から引き継がれており、ボーカルが変わったことで受ける違和感はほとんどないはずです。

アッパーな曲もミドルテンポのヘヴィな楽曲も、ひたすら聴きやすいしライブ映えするものばかり。PINK FLOYDのカバー「Money」も原曲まんまなのですが、ヘヴィな音像で表現することで他のオリジナル曲の中に混ざってもしっかり馴染んでいます。例えば、国内のラウドロックと呼ばれるカテゴリーのバンドが好きなリスナーなら間違いなく気に入る1枚でしょう。

だけど、上に書いたとおり、従来のファンだったらちょっとした「あれっ?」を感じるかもしれません。アーロンのクリーントーンも決して悪いわけじゃない。メタルコアとしては十分に魅力的なんです。でも、オースティンという絶対的な前任者と比較してしまうと若干劣る……いや、劣ってはいないですね。なんていうか、味気ないんですよね。それが、最初に書いた“色気”があるか/ないかの違いなのかもしれません。

アルバムとしては非常に優れた内容ですし、これはこれで高評価に値する作品だと思います。が、自分がこのバンドのどこに魅力を見出していたか?と考えると……ね? だから、現編成に対する正当な評価はこの次のアルバムが出るまで持ち越しかな。もう1枚聴けば、本作に対して感じた「あれっ?」が消え去ると信じています。



▼OF MICE & MEN『DEFY』
(amazon:海外盤CD / MP3

投稿: 2018 02 05 12:00 午前 [2018年の作品, Of Mice & Men] | 固定リンク

2018年2月 4日 (日)

BLACK VEIL BRIDES『VALE』(2018)

セルフタイトル作『BLACK VEIL BRIDES』(2014年)から3年3ヶ月ぶりとなる、BLACK VEIL BRIDES通算5作のオリジナルアルバム。2010年のデビュー以来、ほぼ1〜2年間隔でアルバムを量産し続けてきた彼らですが、今回は意外と間が空いたなという印象。とはいえ、その間にフロントマンのアンディ・ビアサックがANDY BLACK名義での初ソロ作『THE SHADOW SIDE』(2016年)を発表したりサマソニで来日したりしてたので、アンディ自身はかなり働いてたわけです。

勝負作となった前作『BLACK VEIL BRIDES』はかなりヘヴィな仕上がりで、個人的にもお気に入りの1枚だったのですが、国内盤がリリースされなかったためここ日本では一部で地味な盛り上がりをしたのみ。結局来日公演も実現しなかったんじゃないかな。思えば初来日公演が東日本大震災で中止になったりと、ここ日本では踏んだり蹴ったりのイメージが強いバンドですが、だからこそもうちょっと丁寧に応援してあげてほしい気がします。

ですが、今作も今のところ国内盤リリースの予定なし。そういえばANDY BLACKのアルバムも国内盤未発売でしたもんね。だったらということで、ここでしっかり紹介しておきたいと思います。

デビュー時の、初期MOTLEY CRUEを彷彿とさせるヴィジュアルとゴス/メタルコアの影響下にあるサウンドから徐々に正統派HR/HM路線へと移行していったBVBですが、本作はハードなギターリフを取り入れつつもボーカルラインは非常にポップというバランス感に優れた楽曲集に仕上げられています。イメージ的にはAVENGED SEVENFOLD(A7X)に近いのかな。あそこまでメタリックで大作路線ではないですが、聴きやすさ・とっつきやすさという点においては共通するものが多いと思います。これが現代的なアメリカンHR/HMのスタンダードということなんでしょうかね。

もともとアンディのキーがそこまで高くはないので、ロー&ミドルを軸にした歌メロのおかげでどうしてもメタルっぽくは聞こえなかったのですが、今作に関してはそこにポップ&キャッチーさが強まったことでより親しみやすさが増した気がします。ギターリフや全体の音像こそHR/HM的ではあるものの、ここ日本だったらJ-POPやアニソンの範疇にも収まってしまうのではないか、というくらいキャッチー。ゴリゴリのメタルはちょっと……という人にもオススメできる1枚だと思います。

先にA7Xほど大作主義ではないと書きましたが、そんな本作にも1曲だけ、8分半におよぶドラマチックな大作「Dead Man Walking (Overture II)」が収録されています。この曲もヘヴィメタル的というよりはアニソン的なシンフォニックさに近いイメージも。適度なゴシックテイストやハードさを取り入れつつも、根がポップな人たちなのかもしれないですね。

ANDY BLACKのアルバムよりは激しく、かといって前作よりはポップ。過去の作品と比較するなら、3枚目の『WRETCHED AND DIVINE: THE STORY OF THE WILD ONES』(2013年)がもっとも近いかもしれません。なので、同作がお気に入りという人には入っていきやすいでしょうし、前作みたいなヘヴィ路線でハマった人にはちょっとヤワに感じられる1枚かもしれません。バランス取るのって本当に難しいですね。

さて、ここまでキャッチーなアルバムを作ったのですから、あとは来日に期待したいところ。国内盤は出ていないものの、ANDY BLACKのときみたいにサマソニやラウパーなどフェスでの来日に期待しておきましょう。



▼BLACK VEIL BRIDES『VALE』
(amazon:海外盤CD / MP3

投稿: 2018 02 04 12:00 午前 [2018年の作品, Black Veil Brides] | 固定リンク

2018年1月31日 (水)

MARMOZETS『KNOWING WHAT YOU KNOW NOW』(2018)

紅一点ベッカ・マッキンタイア(Vo)を擁するイギリスの5人組バンド、MARMOZETSの2ndアルバム。前作『THE WEIRD AND WONDERFUL MARMOZETS』(2014年/日本盤は2015年7月)は輸入盤がリリースされた2014年9月からしばらくして手に入れており、非常に愛聴した1枚でした。ここ日本にも2015年夏に『SUMMER SONIC』で初来日したのを機に、それなりに注目されたような印象があります。

そんな彼らの約3年ぶりとなる新作。前作はハードさの中にもキャッチーさ、ポップさが光る絶妙なバランス感で成り立っていましたが、本作はハードさを少しだけ抑えめにし、ポップさキャッチーさをより強めた、非常に聴きやすい作風が極まっています。

それはオープニングトラック「Play」を聴けば一耳瞭然で、サウンドの硬さはそのままに、スクリームを排除したベッカのメロディアスなボーカルがより前面に打ち出されている印象が強まったかなと。続く「Habit」ではダークさを残しつつもそこに優しさが加わり、バンドとしての成長が強く伺えるアレンジを聴かせてくれます。続く「Meant To Be」「Major System Error」もハイトーンを活かしたメロディワークが冴えているし、「Insomnia」には90年代ブリットロックを思い出させる香りが漂ってきます。

もちろんスクリームがゼロになったわけではありません。「Lost In Translation」では効果的に取り入れられていますしね。ただ、曲調やアレンジの効果なのか、スクリームが入っても前作より上品に聴こえてくるのだから不思議でなりません。

前作を初めて聴いたとき、オープニングトラック「Born Young And Free」のインパクトが強く、全体的にハードでエモなサウンドが心地よく感じられたこともあってお気に入りとなったのですが、今回は良い意味でインディー臭が薄らいでいるんですよね。例えば、サウンドの質感やプロダクションひとつ取り上げても、前作にあった(良い意味での)チープさが今作では排除され、完全にメジャー感が強まっている。もっといえば、アルバムジャケットにもそういった上昇志向が現れているし。もしかしたらリスナーがそこを成長と受け取るか、あるいはセルアウトしたと拒絶するかで、本作に対する評価は二分するかもしれませんね。

もともと魅力的なフロントウーマンを擁するバンドだけに、この進化は個人的には大歓迎。もっと幅広く受け入れられるべきバンドですし、なんなら“新世代のPARAMORE”くらいになってもおかしくない存在だと思っているので、ここでさらにひと化けしてほしいところです。



▼MARMOZETS『KNOWING WHAT YOU KNOW NOW』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 01 31 12:00 午前 [2018年の作品, Marmozets] | 固定リンク

2018年1月30日 (火)

JOE SATRIANI『WHAT HAPPENS NEXT』(2018)

本サイトでは滅多にピックアップすることのないインストゥルメンタルアルバムですが、これは非常に楽しい1枚だったのでぜひ紹介したいと思い書いてみることにしました。

ジョー・サトリアーニの通算16枚目となるオリジナルアルバム。いまだに『SURFING WITH THE ALIEN』(1987年)や『FLYING IN A BLUE DREAM』(1989年)の印象で語ってしまいがちのサトリアーニ。これらの作品、すでに30年も前のものなんですよね。もちろん、上記の2枚以降も10数枚ものスタジオ作品を発表してますが、歌モノロック&HR/HMリスナーにはどうしても敬遠しまいがちな存在でもあるわけで。なので、そういう自分にとってのサトリアーニはサミー・ヘイガー(Vo)&マイケル・アンソニー(B)の元VAN HALEN組、RED HOT CHILI PEPPERSのチャド・スミス(Dr)と組んだCHICKENFOOTのギタリストっていう認識が強い人かもしれません。

が、たまたま手にした今回のアルバム『WHAT HAPPENS NEXT』がHR/HMファンの耳にも親しみやすい仕上がりだったので、驚いたわけですよ。

今回のアルバムは元DEEP PURPLEのグレン・ヒューズ(B)、CHICKENFOOTでの盟友チャド・スミス(Dr)という豪華なトリオ編成で制作した意欲作。もちろんグレンは一切歌うことなく、ベースプレイヤーに徹しています。前作、前々作あたりではクリス・チェイニー(B)&ヴィニー・カリウタ(Dr)がリズム隊として参加していましたが、本作は全編サトリアーニ/グレン/チャドの3人でレコーディングに臨んだこともあって、全体的にハードエッジな1枚に仕上げられています。また、プロデューサーにハードロック畑のマイク・フレイザー(AC/DCAEROSMITHMETALLICAなど)を迎えていることも、このへんに大きく影響を与えているのかもしれません。

とにかく1曲目「Energy」の飛ばしっぷりから気持ち良いったらありゃしない。サトリアーニらしいリフ&ソロワークはもちろんのこと、ダイナミックなアンサンブルを生み出しているリズム隊のプレイも圧巻。続く「Catbot」ではエフェクトのかかったベースリフの上を、同じく機械的なエフェクトがかかったギターがのたうちまわるし、クリーントーンのカッティングが気持ち良く加わる。序盤にハードロック色強めの楽曲が並ぶからこそ、5曲目「Righteous」のメロウ&ポップさがより際立つし、かと思えばソウルフルかつフュージョンチックな「Smooth Soul」みたいな曲もこの構成なら心地よく楽しめるわけです。

後半はハードブギーテイストの「Headrush」から始まるものの、ファンキーさも感じられる落ち着いたトーンの「Looper」や「What Happens Next」、ダイナミックなギタープレイ&バンドアンサンブルが存分に味わえる「Invisible」、ラストを飾るにふさわしいミディアムスロー「Forever And Ever」と、前半と比べればトーンダウンは否めませんが、決して悪いわけじゃない。むしろメリハリという意味では、前半戦の攻めがあるからこそ後半の「曲調は落ち着いているけどプレイは派手」な楽曲も素直に受け入れられるというもの。しかも全編ギターが歌いまくっているから、単純に楽しく聴けるんですよね。これがメロディ無視で弾きまくりなギタープレイヤーだったら、いくらハード&ヘヴィな作風でもここまで楽しめなかったと思います。

年間ベストに挙げるような作品ではないかもしれないけど、スルメ的アルバムとして長きにわたり愛聴できる1枚になりそうです。意外な収穫でした。



▼JOE SATRIANI『WHAT HAPPENS NEXT』
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投稿: 2018 01 30 12:00 午前 [2018年の作品, Joe Satriani, Red Hot Chili Peppers] | 固定リンク

2018年1月29日 (月)

PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONS『THE AGE OF ABSURDITY』(2018)

2015年末のレミー(Vo, B)急逝を受け活動を終了させたMOTÖRHEAD。そのMOTÖRHEADにおいて、“ファスト”・エディ・クラーク(G)の後釜としてバンドに加わり、活動終了までバンドのギタリストとして在籍したフィル・キャンベルがMOTÖRHEAD後に結成したのがこのPHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONSというバンドです。

同バンドは活動終了から約半年後の2016年8月、ドイツで行われたフェス『WACKEN OPEN AIR』にて本格始動。同年11月にオリジナル曲で構成されたEP『PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONS』を発表し、2017年6月にはMOTÖRHEADやRAMONESBLACK SABBATHのカバーを含むライブEP『LIVE AT SOLOTHURN』をリリースしています。

そして2018年1月、ついに発表された1stフルアルバム『THE AGE OF ABSURDITY』では、MOTÖRHEADで養われた爆走ロックンロール魂はそのままに、さらに幅を広げたロックンロール/ハードロックを存分に堪能することができます。

メンバーはフィル(G)のほか、トッド(G)、デイン(Dr)、タイラ(B)というフィル自身の実子3人に加え、ニール・スター(Vo)という5人編成。“これぞMOTÖRHEAD!”と叫びたくなる黄金ギターリフからスタートし、疾走感あふれるバンドサウンドを聴かせつつもサビではグルーヴィーなミドルテンポへとテンポチェンジする巧みなアレンジがたまらない「Ringleader」1曲で、このアルバムの掴みはOK。以降も「Freak Show」や「Gypsy Kiss」「Dropping The Needle」など、MOTÖRHEADのテイストがふんだんに散りばめられたハードロックが多数登場します。

もちろん、それだけじゃないのがこのバンドの特徴でもあり、グルーヴィーなモダンヘヴィネスナンバー「Skin And Bones」、いかにもなバッドボーイズロック「Welcome To Hell」、ヘヴィブルースと呼びたくなる「Dark Days」、男臭い哀愁味すら感じさせるミディアムスローの「Into The Dark」など、本当に聴きどころの多い1枚に仕上げられています。MOTÖRHEADフリークはもちろんのこと、フィルがゲスト参加したLAのハードロックバンドBUDDERSIDEをはじめ、BUCKCHERRYなど硬派なハードロックバンドが好きなリスナーにも存分にアピールする内容ではないでしょうか。特にこのバンドの場合、シンガーのニールが聴かせる歌声がレミーっぽくないのが良い方向に作用しており、いい意味でMOTÖRHEADに一線を引くことができたと個人的には感じています。

ちなみに、日本盤の初回限定盤には先に紹介したライブEP『LIVE AT SOLOTHURN』同梱の2枚組仕様も用意。AppleMusicでは2作品別々に配信されているので、CD購入を考えている人は通常盤に500円程度プラスしてこの初回盤を手に入れることをオススメします。



▼PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONS『THE AGE OF ABSURDITY』
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投稿: 2018 01 29 12:00 午前 [2018年の作品, Motorhead, Phil Campbell And The Bastard Sons] | 固定リンク

2018年1月28日 (日)

MACHINE HEAD『CATHARSIS』(2018)

2014年11月発売の『BLOODSTONE & DIAMONDS』から3年2ヶ月ぶりとなる、MACHINE HEAD通算9枚目のスタジオアルバム。超大作主義から若干コンパクトになり始めた前作を踏襲した、よりコンパクトでキャッチーな楽曲が並ぶ1枚で、全15曲74分というボリューム満点の内容に仕上がっています。

2016年に配信リリースされた新曲「Is There Anybody Out There?」(本作には未収録)を聴いたとき、非常にキャッチーなメロディとどこかメタルコア以降を感じさせるアレンジに「おおっ!」と驚くと同時に「……大丈夫だろうか?」と若干不安を覚えたのが昨日のことのように思い出されますが、あの前振りがあったおかげで僕自身は本作にスッと入っていけた気がします。

それまでの彼らが得意とした複雑なアレンジを持つスラッシーな大作は皆無。全体的に4〜5分台のミドルヘヴィナンバーが中心で、その中にモダンでどこかゴシック調な「Catharsis」みたいな楽曲が混ざっているのだから、さあ大変。そりゃあ皆さん問題作だのなんだのと騒ぎ立てるわけです。

が、そもそもこのバンドってそういう“血迷い”をたまに見せるから面白かったんじゃなかったでしたっけ? いつから「正統的メタル/ラウドの後継者」になったんでしたっけ?(いや、なってないってば)

僕、彼らの作品の中で特に気に入っているのが1stの『BURN MY EYES』(1994年)3rd『THE BURNING RED』(1999年)、そして6th『THE BLACKENING』(2007年)なんですね。まぁ1枚目と3枚目は共感してもらえる人も多いかもしれませんが、3rdをお気に入りに挙げるMACHINE HEADファンは少ないんじゃないでしょうか。でも、それくらいこのバンドの本質の一部がここに含まれていると思っているんです。

ロブ・フリン(Vo, G)って実は何かのオリジネーターというよりも、ひとつ題材を与えたらそこから“それっぽい”ものを作り上げるのが上手な人なんじゃないかな、と個人的には思っていて。だからPANTERAだ、HELMETだと世間が騒いでいた時期に『BURN MY EYES』を作り上げ、LIMP BIZKITだ、KORNだ、DEFTONESだと世間が騒いでいた時期に『THE BURNING RED』みたいな作品を何の迷いもなく完成させてしまう。なんなら、ファッションもそっちに寄せちゃうんですから……好きなんですよ、“そういう”ものが。

ここ最近は大きく道を踏み外すことがなかったロブですが、前作でのコンパクト化が世間的に受け入れられたこと思いついたのか、それとも「ずっとやってみたかったんだよね」と秘めてた思いが爆発したのか、再び振り切った1枚を作っちゃったわけです。お茶目な奴め。

確かに曲によっては“MACHINE HEAD以降”のバンドたちの匂いがプンプンするし、「あれ、これってあのバンドのあのアルバムに入ってなかったっけ?」と思ってしまっても不思議じゃないタイプの楽曲も存在します。けど、それすら「しょーがねーなぁ(苦笑)」と許せてしまう自分もいるわけでして。あのね、そこまで悪いアルバムじゃないですよ? 賛否両論って言われる「Catharsis」なんて僕、このアルバムのなかで1、2を争うぐらいに好きだし、ハンドクラップから始まるアップチューン「Kaleidoscope」も、コリィ・テイラーが歌っても不思議じゃないメロディアスな「Triple Beam」も、序盤のアコースティックパートに度肝を抜かれるアメリカンロック調の「Bastards」、アコギ主体のバラード「Behind A Mask」、ゴシック調のスローナンバー「Eulogy」もみんな嫌いじゃない。むしろ好意的に受け取っています。

それ以外のヘヴィナンバーも決して悪くないしね。上に挙げた異色作のほうにどうしても目が耳が行きがちだから、全体に対する正統な判断が下しにくいのかもしれないけど、この振り切り方を僕は全面的に支持したいと思います。むしろ、こういった新たな側面がライブで過去の楽曲と混ざり合ったとき、どう聴こえるのかが楽しみ。7月の来日公演、ぜひ足を運んで確かめたいと思います。



▼MACHINE HEAD『CATHARSIS』
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2018年1月27日 (土)

LOUDNESS『RISE TO GLORY -8118-』(2018)

以前OUTRAGEの新作『Raging Out』(2017年)の際にも書きましたが、更新再開後の当サイトでは「新譜、旧譜にかかわらず海外作品のみを取り上げる」というポリシーで続けてきましたが、再びそういった前提を破ってでも書きたい国内メタル作品が登場したので紹介したいと思います。

昨日1月26日に世界同時リリースとなったLOUDNESSのニューアルバム『RISE TO GLORY -8118-』は、2014年発売の『THE SUN WILL RISE AGAIN 〜撃魂霊刀』以来となるオリジナルアルバム。通算27枚目となるのでしょうか……デビューから37年でこの枚数はかなりのものがあると思います。にしても、オリジナルメンバーで再始動した2001年以降、1〜2年に1枚は新作を発表してきた彼らにしては4年も空いたのは意外でしたね(とはいえ、2016年にはセルフカバーアルバム『SAMSARA FLIGHT 〜輪廻飛翔〜』を発表しており、メンバーは同作をオリジナルアルバムという感覚で制作したと発言しているので、2年ぶりの新作くらいのつもりなんでしょうね)。

過去にも海外でアルバムを発表してきたLOUDNESSですが、実は世界同時リリースというのはこれが初めてなんじゃないでしょうか。まあそれぐらい、現在の海外を含むメタルシーンがLOUDNESSの新しい音を求めているという表れかもしれません。

本作ですが、リリースよりずいぶん前に聴く機会を得たのですが……本当に素晴らしいんですよ。『THE SUN WILL RISE AGAIN 〜撃魂霊刀』の時点でかなり“戻って”きた感はあったのですが、本作はその比じゃないくらい“戻って”きています。ぶっちゃけ、『SAMSARA FLIGHT 〜輪廻飛翔〜』を制作したのも大きく影響していると思います。同作からあまり感覚を空けることなく、よい流れで今作の制作に入っていったのも大きかったんでしょうね。

オープニングのインスト「8118」を経てスタートする「Soul on Fire」の“往年のLOUDNESS”感。そして、ゼロ年代以降のモダンメタル/ハードコアなテイストを含みつつも基本的には“往年のLOUDNESS”な「I'm Still Alive」、80年代的だけど現代的なテイストも含まれているハードロック「Go for Broke」など、とにかく我々がイメージする“あのLOUDNESS”感満載なのです。しかも、単なる焼き直しやセルフパロディでは終わらず、しっかりゼロ年代、テン年代の彼らをそのまま引き継ぎつつ原点を見つめ直している印象を受けるのですから、そりゃあ悪いわけがない。

アルバム全体はヘヴィメタルというよりもハードロックという印象で、そういう意味では全米進出前の4枚(『THE BIRTHDAY EVE 〜誕生前夜〜』『DEVIL SOLDIER 〜戦慄の奇蹟〜』『THE LAW OF DEVIL'S LAND 〜魔界典章〜』『DISILLUSION 〜撃剣霊化〜』)をイメージする作品かもしれません。だが、それが良いんですよ。もちろん『THUNDER IN THE EAST』(1985年)以降のテイストも含まれていますし、先にも述べたように2000年以降の彼らの持ち味も随所に散りばめられています。要は、メンバー自身がLOUDNESSという存在をより客観的に見つめることができた、だからこその1枚なのかもしれませんね。

ヘヴィバラード「Untill I See the Light」もミドルヘヴィナンバー「The Voice」もツービート炸裂のハードコアチューン「Massive Tornado」も、そして初期の彼らを彷彿とさせつつも現代的なギタープレイが映えるインスト「Kama Sutra」も、オープニングのタッピングプレイでニンマリしてしまうファストチューン「Rise to Glory」も、ザクザクしたギターリフがいかにも彼ららしい「Why and for Whom」も、オープニングのリフを聴いた瞬間に“そうそう、これこれ!”と唸ってしまう「No Limits」も、ヘヴィながらも泣きメロが気持ち良いバラード「Rain」も、全部文句なし。これを待っていたんですよ、僕たちは……そう声高に叫びたくなるくらいの1枚。メロディが現代的になり、その部分は80年代初頭の“いかにも”とは違うかもしれないけど、そこに関しては僕は進化と真正面から捉えることにしています。

最近LOUDNESSから離れていたオッさん世代にこそ聴いてもらいたいアルバムだと思います。ぜひセルフカバーアルバム『SAMSARA FLIGHT 〜輪廻飛翔〜』と併せてチェックしてもらいたい、2018年の日本のHR/HMシーンを代表する1枚です。



▼LOUDNESS『RISE TO GLORY -8118-』
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2018年1月26日 (金)

FALL OUT BOY『M A N I A』(2018)

活動再開以降、『SAVE ROCK AND ROLL』(2013年)、『AMERICAN BEAUTY / AMERICAN PSYCHO』(2015年)と2作連続で全米1位を獲得し、第二の黄金期に突入した感の強いFALL OUT BOY。その彼らが当初の予定から4ヶ月遅れて、通算7作目のスタジオアルバム『M A N I A』をリリースしました。

活動休止前の『FOLIE A DEUX』(2008年)の時点でその片鱗はあったとはいえ、『SAVE ROCK AND ROLL』では従来のエモーショナルなバンドサウンドをよりモダンな方向に昇華……サンプリングやエレクトロテイストを積極的に取り入れたアレンジで、初期のポップパンクスタイルを愛好していたリスナーを驚かせました。続く『AMERICAN BEAUTY / AMERICAN PSYCHO』ではその強度をさらに高め、ロックバンドのアルバムというよりも幅広い意味での“ロック”を鳴らすバンドの作品集としては最高峰の1枚になったのではないかと思っています。

そんな力作のあとですから、そりゃあバンド側も新作制作には慎重になるわけですよね。昨年春以降からシングルとして少しずつ新曲を切っていき、リスナーからの反響を伺う。果たして自分たちがやろうとしていることは今でも有効なのかどうか、それを調べるかのように。

今回の『M A N I A』、まず驚いたのはフィジカル(CD)版とデジタル版とで曲順が異なること。僕はストリーミングなどで先に公開済みの数曲を耳にしていたし、そこでアルバムの曲順もわかってはいたのですが、実際に発売されたCDはこれとはまったく異なるものでした。なので、ここではフィジカル版の曲順で聴いた感想を述べておきます。

本作の中でも比較的パワフルな部類の「Stay Frosty Royal Milk Tea」からスタートする形にしたのは正解だと思いました。デジタル版の「Young And Menace」は前作までの路線をさらに進化させた究極形で、インパクトという点ではこちらのほうが良いのかもしれません。が、ロックバンドとしてのこだわりなのでしょうか。フィジカルを買う=ファンということを意識した「Stay Frosty Royal Milk Tea」は、なるほどと頷けるものだと思うのです。

デジタル版だと序盤に公開済みの楽曲が多く並ぶ構成で、こういった曲順はライトユーザーを掴む上では非常にわかりやすいものだと思いました。で、フィジカル版は2曲目にアッパーな「The Last Of The Real Ones」を筆頭に、「Hold Me Tight Or Don't」「Wilson (Expensive Mistake)」と既発曲でたたみかける。この曲順も悪くない。むしろ、こっちのほうが従来のロックバンドの新作っぽくて僕は好きです。

フィジカル版では中盤にディープなゴスペルロック「Church」、R&B色が増したバラード「Heaven's Gate」でじっくり聴かせたあとに、既存曲と新曲を入れ子に並べ、ラストはデジタル版同様に「Bishops Knife Trick」で締めくくる。全10曲35分というトータルランニングも程よく、心地よく楽しめる1枚に仕上げられていると思います。

これはもう完全に好みでしょうけど、僕はフィジカル版のほうが「ロックバンドの新作」を聴いている印象が強いかな。SpotifyやAppleMusicでのデジタル版のほうも悪くないし、手軽に楽しむ分にはこっちでもいいけど。こうして聴き比べると、曲順って本当に大事なんだなと実感させられました。

さて、この試みは吉と出るのか凶と出るのか。気になるところです。



▼FALL OUT BOY『M A N I A』
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2018年1月25日 (木)

STARCRAWLER『STARCRAWLER』(2018)

2018年最注目ロックバンドのひとつは、間違いなくこのSTARCRAWLERではないでしょうか。

名門レーベルRough Trade Recordsと契約したことで一気に注目を集めることになったLA出身の4人組は、僕も昨年秋にレーベルから送られてきた資料を目にし、そして昨年春に発売されていたEP『ANTS』を聴いて、より興味を持つようになりました。

音もさることながら、まず気になるのがそのヴィジュアル。ボーカルのアロウ・デ・ワイルドのルックスや佇まい、ロックが好きな者なら惹きつけられないわけがない。「Ants」(アルバム未収録。国内盤にはボーナストラックとして収録)のMVは何度観たことか。パンクロックの衝動性と、どこかシアトリカルな要素を持ち合わせたそのステージングは絶対的なものがあり、これは今すぐにでも観たい!と思わせるものでした。

そうそう、「Used To Know」のセッション映像も最高なんですよ。これ、「Ants」と同じ人ですよ? 最高じゃないですか?

そうこうしているうちに、FOO FIGHTERSが自身主催の大型フェスにアルバムデビュー前の彼らを呼び入れたりして、知名度は一気に加速。ここ日本でも3月に待望の初来日が控える中、デビューアルバムがリリースされました。

アルバムをプロデュースしたのは、かのライアン・アダムス。悪いわけがない。アルバムに先駆けて公開された「I Love LA」は、あのバカげたMV含め最高だったので、当然過剰に期待していたわけですが、全10曲27分があっという間でした。録音のせいもあって音も骨太になり、ボーカルのアクの強さに負けてない。ロックもパンクもあるし、ポップもサイケもブルースもある。その時代、その時代で先人たちが作り上げてきたものを全部ミキサーに入れて粉々にして混ぜて、それをまたいびつな形で固めてできたのがこの音……そんな“完成しきってない”感がいかにもデビューアルバムらしくて、聴いていて本当にワクワクしてくるんです。

とにかく、曲がキャッチーなんですよね。シンプルなバンドサウンドはパンクロック的でもあるし、ゼロ年代のロックンロールリバイバル的でもある。それをあのヴィジュアルで表現しているんですから……そこが非常にLA的とも受け取れるし、ある種の突然変異とも受け取れる。まあ何はともあれ、ハタチ前後の若い世代が今もこうやってカッコいいロックンロールを鳴らしてくれることに、オッサン世代は素直に嬉しいわけです。

こんなにワクワクしたの、THE LIBERTINES以来? ARCTIC MONKEYS以来? もう覚えてないけど、少なくともこの10年くらいはなかったように思います。

ロックンロール、まだまだ捨てたもんじゃないよ。



▼STARCRAWLER『STARCRAWLER』
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投稿: 2018 01 25 12:00 午前 [2018年の作品, Starcrawler] | 固定リンク

2018年1月24日 (水)

BLACK LABEL SOCIETY『GRIMMEST HITS』(2018)

ザック・ワイルド(Vo, G)のメインバンド、BLACK LABEL SOCIETYの4年ぶり、通算10作目となるスタジオアルバム。前作『CATACOMBS OF THE BLACK VATICAN』(2014年)が全米5位という好成績を残し、ソロ名義では20年ぶりとなる『BOOKS OF SHADOWS II』(2016年)も全米18位を記録。昨年はオジー・オズボーンのツアーに参加して話題を集めるなど、この4年間はとにかく積極的に動いている印象でしたが、そんななか満を持して発表されたBLSの新作、これが非常に優れた作品なのです。

特に何が変わったということもなく、相変わらずヘヴィな曲はヘヴィでギター弾きまくり、サザンロックフィーリングを感じさせる緩い曲では枯れたプレイを聴かせるわけですが、なぜか本作はここ数作の中でも非常に充実度が高い印象を受けます。

まず、昨年のうちに先行公開された「Rooms Of Nightmares」のキャッチーさといったら。もちろん急にキャッチーになったわけではありません。これまでの彼らの楽曲はヘヴィな中にもしっかりキャッチーなメロディが存在しており、そこにザックのメロディメイカーとしての才能が感じられたわけですが、今回はその部分がより冴え渡っているというか、洗練されている気がするのです。

この「Rooms Of Nightmares」に限らず、アルバム冒頭を飾る「Trampled Down Below」にしろ、続く「Seasons Of Falter」「The Betrayal」にしろ、とにかく歌メロが親しみやすく耳に残りやすいものばかり。もちろん、サザンロックフィーリングの強いバラード「The Only Words」や「The Day That Heaven Had Gone Away」も素晴らしい仕上がりで、そういえばこの人オジーのところで「Mama I'm Coming Home」や「Road To Nowhere」を書いた人だった、ってことを思い出させてくれるぐらいのメロディセンスが発揮されているのです。

かと思えば、「A Love Unreal」のような曲では師匠のオジーの姿が重なるような歌声を聴かせてくれる(特にこの曲は、アレンジ自体がBLACK SABBATH的ですものね)。若干キーを上げてこれらの曲をオジーが歌ったら……なんてことも想像するわけですが、このローチューニングだからカッコいいわけであって、それもまた違う。そう考えると、やっぱりこれはザック自身が歌うために作られた楽曲群なんですよね。

ギターリフもソロも、相変わらずブっとい音で“らしさ”満点。過剰なプレイが遺憾なく反映されているにもかかわらず、どこか洗練された印象を受ける。その絶妙なバランス感が過去数作とは明らかに異なる。また、その内容もどこか集大成的でもある。久しぶりのソロアルバムでアク抜きできたのもあるでしょうし、久しぶりにオジーと共演したことも大きかったのかもしれない。『NO REST FOR THE WICKED』(1988年)でデビューして今年で30年、しかもBLSとしても10作目という節目のタイミングに、ザックはこのアルバムでひとつの結果を残すことができたのかもしれませんね。

これは本当に傑作です。いやはや、恐れ入りました。



▼BLACK LABEL SOCIETY『GRIMMEST HITS』
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投稿: 2018 01 24 12:00 午前 [2018年の作品, Black Label Society, Zakk Wylde] | 固定リンク

2018年1月23日 (火)

JOE PERRY『SWEETZERLAND MANIFESTO』(2018)

AEROSMITHのギタリスト、ジョー・ペリーが数日前にひっそりと新しいソロアルバムをリリースしていました。あれ、実は大々的に告知されていて、自分だけが知らなかったパターン?とも思ったのですが(昨年11月には告知されていたようですね)、国内盤の予定もなく……まったく気づいていませんでした。申し訳ない!

で、ジョーのソロですよ。彼はエアロに復帰して以降、2000年代半ばまでソロアルバムを作って来ませんでした。それ以前のJOE PERRY PROJECTはエアロを脱退したからこそ生まれた産物だったわけで、メインバンドがある以上はソロで何かをする必要性はなかったと。ところが、2000年代以降のジョーのソロ2作(2005年の『JOE PERRY』、2009年の『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』)には作る理由がちゃんとあった。『JOE PERRY』のときはエアロが無期限活動休止を発表したタイミング、『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』のときはエアロのアルバム『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』(2012年)の制作初期段階で、途中で頓挫してしまった時期にソロへと向かった。クリエイターとしての制作意欲の吐け口として、止むを得ず(かどうかはわかりませんが)再びソロへと向かっていったわけです。

事実、『JOE PERRY』は90年代以降のエアロらしさにジョーならではの渋みが加わった良作ですし、『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』は新たな才能(YouTubeで見つけた無名のシンガーを迎えて制作)から触発された初期衝動がにじみ出た力作でした。それぞれカラーが異なり、個人的にも楽しんで聴くことができたけど、エアロの色が散りばめられていることで「だったらエアロの新作が聴きたいよ……」と思ってしまったのも事実でした。

では、今回発表された9年ぶりのソロアルバムはどうでしょう? 実はこれ、めっちゃ肩の力が抜けているんですよ。バンドとしてのエアロは終わりが近づいている、音楽でたくさん稼げたし、納得のいく作品もたくさん作ってこられた、あとは余生を楽しむのみ……と思ったかどうかはわかりません。でも、数年前にジョーがステージで倒れて意識不明?なんて事故がありましたが、あれを思い浮かべると今回は純粋に好きな音楽を楽しもうという姿勢が感じられるのです。

全10曲中インストが2曲、ジョー自身がボーカルと務めるのが1曲。残り7曲はロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)、デヴィッド・ヨハンセン(NEW YORK DOLLS)、テリー・リードというロックファンなら誰もが知るレジェンドたちを迎えて制作しているのです。もちろん、悪いわけがない。基本的にはブルースをベースにしたロック/ハードロックで、エアロを彷彿とさせる曲もあるんだけど、以前のように「これ、エアロでやれよ!」的な“そのもの”ではなくてエアロのフレーバーを散りばめた楽曲をアクの強いフロントマンが歌ってるという印象にとどまっている。ああ、そうか。ジョー本人が歌ったりスティーヴン・タイラーを彷彿とさせるフロントマンが歌ったりするからいけなかったんだ。当たり前の話だけど。けどそれも、アリス・クーパーやジョニー・デップたちと始めたスーパーバンド、HOLLYWOOD VAMPIRESがあったからこそなんでしょうね。フロントに立つよりも、アクの強いシンガーの隣でこそ光ることを再確認できたのかもしれません。

ジョーのギターも非常にリラックスしたプレイを聴かせてくれているし、各ボーカリストに触発されて引っ張り出されたキレのあるフレーズも見受けられる。ぶっちゃけ、エアロの最新作『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』よりも良いんじゃないかと思うほど。いやあ、ジョーのソロアルバムでここまで興奮したの、久しぶり、いや、初めてかもしれない。

現在67歳。まだまだ最前線でやろうと思えばやれるし、若い才能をフックアップすることも可能でしょう。でも、エアロの近況もそうだけど、アーティストとしてはそろそろ“終活”の時期なのかな……もはや『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』レベルを保つことすら難しいのだったら、エアロのアルバムはもう無理に作らなくてもいいから、スティーヴンもジョーも自分の好きな音楽を、楽しみながら作ればいいと思うのです。その結果として本作が生まれたのだったら、僕はそれを素直に受け入れるので。



▼JOE PERRY『SWEETZERLAND MANIFESTO』
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投稿: 2018 01 23 12:00 午前 [2018年の作品, Aerosmith, Cheap Trick, Joe Perry, New York Dolls] | 固定リンク

2018年1月17日 (水)

WANIMA『Everybody!!』(2018)

フルアルバムとしては前作『Are You Coming?』から2年2ヶ月ぶり、WANIMAにとってメジャーから初のオリジナルフルアルバム。

初の全国流通盤リリースとなった『Can Not Behaved!!』(2014年)からたった3年でアリーナ会場ワンマンライブやCM&ドラマタイアップ、紅白出場などを成し遂げ、気づけば国民的バンドの域に一歩近づいたWANIMA。この2年ぶりのフルアルバムは、そんな彼らの人気を決定づける最後の切り札といっていいでしょう。

わかりやすい言葉と表現を親しみやすいメロディと直情的なメロディックパンクで表現することは、ある時期から「ダサい」「カッコ悪い」という風潮があったし、今でも揶揄する層は一定数残っています。でも、それがなんだと言うの? ポジティブもネガティブもエロも下心も全部飲み込んで放たれるその歌詞は間違いなく“今、もっとも歌ってほしいこと”であり、そこには一切の嘘がない。10代のリスナーが彼らの音楽を素直に受け入れている事実は素直に嬉しいし、同時に本作を聴いて忘れそうになっていたあの頃をまた思い出せることにも感謝したいです。

本作を年始に発表したことで2018年のロックシーンが熱くなることを実感させてくれたWANIMAが、ここから何を見せてくれるのか楽しみでならない。ホント、サイコー!



▼WANIMA『Everybody!!』
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投稿: 2018 01 17 12:30 午後 [2018年の作品, WANIMA] | 固定リンク