カテゴリー「2018年の作品」の130件の記事

2022年8月 9日 (火)

MÅNESKIN『IL BALLO DELLA VITA』(2018)

2018年10月26日にリリースされたMÅNESKINの1stフルアルバム。日本盤は2022年8月3日発売。

本国イタリアで最高3位を記録した1st EP『CHOSEN』(2017年)から10ヶ月後に発表された、バンド初の完全オリジナル作品(前作は全7曲中5曲がカバー)。本作からは「Morirò da re」(イタリア2位)、「Torna a casa」(同1位)など計5曲のシングルヒットが生まれ、アルバム自体も最高1位を記録しています。

本作制作時はメンバー全員10代後半でしたが、ここに詰め込まれた12曲のオリジナル曲からは大きな可能性が伝わってきます。前作では「Chosen」「Recovery」の2曲だけでバンドの未来を占うのは難しかったものの、ルールが垣間見えるカバー5曲のおかげでバンドの方向性はなんとなく透けて見えたのではないでしょうか。

事実、本作には「Chosen」の延長線上にあるファンクロック「New Song」を筆頭に、メロディアスなバラード「Torna a casa」、ラテン色の強いダンサブルな「L'altra dimensione」とかなりバラエティに富んだ内容であることが伺えます。続く2ndアルバム『TEATRO D'IRA: VOL.1』(2021年)で確固たる個性を掴み取ったとするならば、この1stアルバムは次作への予行練習、あるいは習作と捉えることもできるのではないでしょうか。

アルバムはこのほかにも、アダルトな雰囲気を醸し出すミドルテンポのダンスチューン「Shit Blvd」、グルーヴィーな「Fear For Nobody」、切なげなメロディラインとイタリア語で歌われるボーカルが独特の世界観を構築する「Le parole lontane」など、前半だけでもかなり変化に満ちた構成。後半も同郷のラッパーのヴェガス・ジョーンズをゲストに迎えたグルーヴチューン「Immortale」をはじめ、RED HOT CHILI PEPPERS の影響下にあるファンクロック「Lasciami stare」、ラガメタル調でリズミカルな「Are You Ready?」、グイグイ引っ張るベースラインが耳にこびりつくストレートなハードロック「Close To The Top」、ヒップホップの香りが強い「Niente da dire」、このバンドの得意技が凝縮されたファンキーな「Morirò da re」と色彩豊かな楽曲がズラリと並びます。

どの曲も2〜3分と非常にコンパクトで、4分を超える楽曲がひとつもないのは非常に興味深いところ。結果、12曲とボリューミーに感じられるものの、尺的には34分と古き良き時代のロックとリンクする作り。このへんも非常にイマドキ感が強く、なぜ彼らがロック低迷な海外で受け入れられているのかわかるような気がしました。

レッチリをはじめとする1990年代のオルタナティヴロック、2000年代のロックンロールリバイバルやニューウェイヴリバイバル、2010年代のモダンポップからの影響を適度に受けつつ、それらを忠実に再現するわけではなく完全に「今」のものとしてオリジナルなものを作り上げる。その才能開花の“前夜”が本作なのかな。もちろん、アルバムとしても平均点を軽く超える力作なので、最新作『TEATRO D'IRA: VOL.1』やそれ以降に発表されたシングルで彼らにハマったというリスナーなら一発で気に入ることでしょう。

 


▼MÅNESKIN『IL BALLO DELLA VITA』
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2022年6月27日 (月)

COHEED AND CAMBRIA『VAXIS I: THE UNHEAVENLY CREATURES』(2018)

20018年10月5日にリリースされたCOHEED AND CAMBRIAの9thアルバム。

バンド史上初の“ノン”コンセプトアルバムだった前作『THE COLOR BEFORE THE SUN』(2015年)から3年ぶり、Roadrunner Records移籍第1弾アルバム。バンドがデビュー時から描き続けてきた壮大な物語“The Amory Wars”の新章が描かれたコンセプトアルバムで、5部作の第1章にあたる作品とのこと。

冒頭の「Prologue」から「The Dark Sentencer」、タイトルトラック「Unheavenly Creatures」への流れはSFを題材にした物語らしく、近未来的な空気が伝わるサウンドメイクが施されており、ここから新たな物語が再び始まることを予感させます。序盤こそ若干のスリリングさが伝わるテイストですが、「Toys」というキャッチーさの強い楽曲で適度な緩急を付けつつ、物語は「Black Sunday」や「Queen Of The Dark」をはじめとするヘヴィ&ダークな楽曲で独特の世界観を作り上げていきます。

大半が5分前後の楽曲で構成され、全15曲/79分というアナログならば2枚組に匹敵するボリューミーな内容は1、2度聴いただけでは咀嚼しきれない情報量かもしれません。事実、リリースから4年近く経った今聴いても、筆者は本作の魅力をすべてを理解できたと断言することは難しく、久しぶりに聴き返すと毎回新たな発見があるといった体たらく。年齢的なこともあってか、近年こうした長尺作品にじっくり耳を傾けるだけの集中力が不足し始めているのかな……と不安になることもありますが(苦笑)、聴くたびに発見があるということはそれだけ良い作品なのだと解釈することにします。

このバンドの場合、毎作コンセプトアルバムだという事実やキャリアを通してひとつの物語を描き続けているというスタイルもあって、どこか敷居の高さを感じることもあるのですが、実は変に意識しすぎることなる触れるのが一番ではないかという気もしていて。事実、1曲1曲を取り上げると非常にカッコいいハードロック/プログメタルなわけで、クラウディオ・サンチェス(Vo, G)の声質もあってRUSHと印象が重なる瞬間もあったりして。脳で聴くことが求められているような錯覚に陥ってしまいがちですが、実は頭を使わずに接することも時には必要だなと、これまた本作を久しぶりに引っ張り出して聴いてみて実感したところです。

というのも、初聴時はヘヴィな楽曲にばかり耳が向いていたのに対し、最近は先の「Toys」をはじめ「True Ugly」や「Love Protocol」といったメジャー感の強い楽曲には妙に惹きつけられるものがあるから。このへんの楽曲、どこか80年代のRUSHっぽさがありますよね? 4年前と比べて自分の趣味趣向が少し変化したこともあるとは思いますが、聴くタイミングによって夢中になるポイントが変わるのもそれだけ多彩さに満ちた内容だからこそ。それだけいろんな要素が詰まっているんですよね……そりゃ理解するのに時間がかかるわけだ(苦笑)。

今年6月24日には本作の続編、5部作の第2章にあたる『VAXIS II: A WINDOW OF THE WAKING MIND』(2022年)も発売されたばかり。続編は全13曲で約53分と比較的コンパクトで、3分台の楽曲中心で構成されているとのこと。約4年もの歳月をかけて完成させた次作でどのような変化を遂げたのかについては、続けてレビューする予定です。

 


▼COHEED AND CAMBRIA『VAXIS I: THE UNHEAVENLY CREATURES』
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2022年5月 6日 (金)

GINGER WILDHEART『THE PESSIMIST’S COMPANION』(2018/2022)

2022年4月22日にリリースされた、ジンジャー・ワイルドハートの7thアルバムのリパッケージ盤。日本盤未発売。

本作は2018年11月末からRound Recordsを通じてネット(当初はデジタルのみ、翌2019年にフィジカルも)販売され、2020年9月からはデジタルリリース&サブスク配信が実施されていた同名の10曲入りアルバムに、新たに5曲を追加して曲順を変更、Wicked Cool Records経由で一般流通させた全15曲入りの新作。プロデュースはTHE WiLDHEARTSの最新作(にして何度目かの解散に際してのラスト作となってしまった)『21ST CENTURY LOVE SONGS』(2021年)やライブアルバム『30 YEAR ITCH』(2020年)、THE PROFESSIONALSの『WHAT IN THE WORLD』(2017年)などのほか、ジンジャーの前作『GHOST IN THE TANGLEWOOD』(2017年/2018年)でミックスを手掛けたデイヴ・ドレイパーが担当しています。

カントリーやフォークなどアメリカーナからの影響を強く受けた前作『GHOST IN THE TANGLEWOOD』から間髪入れずに発表された作品ということもあり、同作の延長線上にある内容。それもあってジンジャー(Vo, Dr,B, G,Per)のほかジョン・ケトル(G, Mandolin, Bouzouki)、マシュー・コリー(Piano, Hammond, Keys)、マーカス・ヒプキス(Pedal Steel)、エミリー・アーウィング(Cho)といったメンツは前作から引き続き参加しており、新たにデイヴ・ドレイパーもギターやプログラミングでも制作に加わっています。

そういった意味では、『GHOST IN THE TANGLEWOOD』とこの『THE PESSIMIST'S COMPANION』は姉妹作と言えるかもしれません。事実、『GHOST IN THE TANGLEWOOD』日本盤にボーナストラックとして追加された3曲のうち、「In Reverse」とは『THE PESSIMIST'S COMPANION』オリジナル盤、「I Don't Wanna Work On This Song No More」は同リパッケージ盤に改めて収録されていますし。録音時期もさほど変わらず、単にデイヴ・ドレイパーがプロデュース&プレイヤーとしてタッチしているか、していないかの違いくらいのものなのかなと。

曲順がだいぶ変わっていることもあり(オリジナル盤では2曲目だった「Why Aye (Oh You)」が1曲目、そしてオリジナル盤オープニングの「May The Restless Find Peace」がラストナンバーに)、全体を通して聴いたときの印象も少々異なりますが、全体を覆うリラックスした空気自体はまったく一緒。ロック/パンク/メタルなTHE WiLDHEARTSの中にもこうした“枯れた”要素はもともと含まれていたものですし、その一要素を抜き取って拡大させただけと受け取ることもできますし、パワーポップのルーツにはこうしたアメリカーナ的側面も多く含まれていることを考えると、ジンジャーが年老いていく中でこちらの方面に特化した作品づくりに移行していくのも納得がいきます。

実際、どの曲も非常にクオリティが高く、一時期の「あと一歩!」「もう一声!」的な時代を考えると終始安心して楽しむことができるはず。特にこのアルバムを制作していた頃は、まだバンドとしての新作に取り掛かっていない時期だったこともあり、ソングライターとしてはこちらの活動に集中しており、そこでここまでの才能を発揮できていたのは改めて素晴らしいことだなと再認識させられます。

また、本作にはARCTIC MONKEYS「I Wanna Be Yours」とTHE WALKER BROTHERS「No Regrets」というカバー曲も収録。この2曲は2019年春の「Record Store Day 2019」のために提供されたもので、当時はアナログ・変形ピクチャー盤(犬の写真が可愛い)で限定販売もされました。原曲はダウナーかつソウルフルなアレンジの「I Wanna Be Yours」も、ジンジャーの手にかかると軽快なカントリーロックへと生まれ変わるあたり、さすがです。

「Sweet Wonderlust」や「Stalemate」あたりはTHE WiLDHEARTSでプレイしても違和感なさそうな名曲ですし、バンドの(何度目かの)解散に凹んでいるファン(「またいつものことさ」と落ち込んでいないかと思いますが。苦笑)にこそ改めて触れていただきたいと同時に、いまだにジンジャー=THE WiLDHEARTSという固定観念を持っている人にこそ聴いていただきたい1枚です。

 


▼GINGER WILDHEART『THE PESSIMIST'S COMPANION』
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2021年10月14日 (木)

OBSCURA『DILUVIUM』(2018)

2018年7月13日にリリースされたOBSCURAの5thアルバム。日本盤未発売。

2002年にドイツで結成された4人組テクニカル・デスメタルバンド。フレットレスベースを擁する、デスメタルバンドとして非常に稀な存在ですが、そのサウンドも非常に個性的。その技巧派スタイルはプログメタルにも通ずるものがあり、随所に散りばめられたメランコリックな要素も魅力のひとつと言えるでしょう。

本作は2作目『COSMOGENESIS』(2009年)から続いたコンセプト連作の最終章にあたる1枚。序盤こそ前のめりで攻めまくるテクニカル・デスメタル的な側面が随所に散りばめられているものの、曲が進むにつれてメランコリックかつドラマチックなテイストも増えていき、ギターソロもデスメタルにありがちな不穏な音階を奏でるよりは、非常に計算されたメロディアスなものが多い。ボーカルはデス声中心ですが、コーラスとしてメロウなクリーンボイスが用意されているから、非常に聴きやすい作品としてまとめられているんですよね。

前任ベーシストがフレットレスプレイヤーだったこともあってか、本作でプレイしているベーシストもその音色を意識したものとなっており、そこもほかの同系統バンドにはない個性につながっている。というかこのアルバム、めちゃめちゃ各楽器の録音/ミックスバランスが良すぎて、それも聴きやすさにつながっているような気がします。

かつ、アルバムが後半に進むに連れてメランコリックさがどんどん増していく。なんとなくOPETHあたりとの共通点も見受けられ、非常に好印象。特に「The Seventh Aeon」中盤パートでの緩急の付け方はお見事としか言いようがありません。こういうの、大好きです。

このアルバムに参加したメンバーのうち、フロントマンのシュテフェン・クメラー(Vo, G)以外は現在脱退しており、ベーシストには初期に在籍したフレットレスプレイヤーのヨルン・パウル・テセリンが復帰。ギタリストの片割れも2008〜2014年に在籍したクリスティアン・ミュンツナーが出戻り、ドラマーにはダーヴィト・ディーボルトを迎え、約3年ぶりの新作『A VALEDICTION』が11月19日にリリース予定。現在公開されている3曲を聴く限りでは、本作にあった抒情性は後退しているような印象があります。さて、どうなるのやら……。

まあ、まずはこの『DILUVIUM』という傑作を入り口に、OBSCURAのめくるめくテクニカル&プログレッシヴな音世界に浸ってみてはどうでしょう。個人的には2018年の年間ベスト候補にも挙げられた1枚なので、ぜひこの機会に改めて触れてみることをオススメします。

 


▼OBSCURA『DILUVIUM』
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2021年8月 2日 (月)

DEE SNIDER『FOR THE LOVE OF METAL』(2018)

2018年7月27日にリリースされたディー・スナイダーの4thアルバム。

TWISTED SISTERとしての活動に終止符を打った2016年に発表された前作『WE ARE THE ONES』から1年9ヶ月という短いスパンで届けられた新作。リリース元を新たにNapalm Recordsへと移し、HATEBREEDのジェイミー・ジャスタ(Vo)のプロデュース&バックアップのもと制作された1枚となっています。

レコーディングにはジェイミーのソロプロジェクトJASTAやKINGDOM OF SORROWの一員でもあるチャーリー・ベルモア(G, B)、ニッキー・ベルモア(Dr)が全面参加。この布陣は続く5作目『LEAVE A SCAR』(2021年)でも継続しているので、よほど本作で得られた手応えが大きなものだったのでしょう。

実際、本作で聴くことができるパワフル&エネルギッシュな正統派メタルサウンドは想像以上の凄みが備わったもので、TWISTED SISTERでのグラマラスなイメージで軽く見ていると痛い目を見ると思います。僕自身、最新作『LEAVE A SCAR』でまさにそういう事態に陥り、過去作をさかのぼって聴き始めたくらいですから。

ハードコア度は新作『LEAVE A SCAR』に譲りますが、キャッチーさは今作のほうが上かなと。わかりやすいメロディと、それを崩すことなくストレートに伝えるディーのボーカル、無駄を一切削ぎ落とした演奏&アレンジ、すべてが最高のバランスの中で成立している。楽曲事態どれもハズレがないし、ヘヴィメタルという音楽に多少なりとも興味がある方なら絶対に気に入るはずだと確信しております。

アルバム終盤には元KILLSWITCH ENGAGE、現LIGHT THE TORCHのハワード・ジョーンズ(Vo)をフィーチャーした「The Hardest Way」、ARCH ENEMYの紅一点アリッサ・ホワイト=グラズをゲストに迎えた「Dead Hearts (Love Thy Enemy)」も用意。前者はハワードのねっとりとした濃厚ボーカルとディーの歌声との絡みが印象的ですし、後者はアリッサの女性的な側面を反映させたメタルバラードを思う存分味わうことができる。そこからの流れで、タイトルトラック「For The Love Of Metal」という象徴的な楽曲へとなだれ込み終焉を迎える構成、最高です。

僕自身、ずっと初期TWISTED SISTERのイメージを持ち続け、ディーのソロ作を敬遠してきた身なので、今も食わず嫌いしている方の気持ち、よくわかります。けど、騙されたと思って本作、あるいは最新作を手に取ってみてください。その偏見、見事に崩されますから。

 


▼DEE SNIDER『FOR THE LOVE OF METAL』
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2020年9月10日 (木)

YUNGBLUD『21ST CENTURY LIABILITY』(2018)

2018年7月6日にリリースされたYUNGBLUDの1stアルバム。日本盤未発売。

YUNGBLUDはこの8月に23歳になったばかりの鬼才ドミニク・ハリソンによるプロジェクトで、“若き血”を意味するプロジェクト名のごとく血気盛んで反骨心にあふれる型破りなスタイルで、若年層を中心に支持を集めています。ヒップホップやダブステップ以降の(広意義での)ロックをベースにしたそのサウンドからは、POST MALONEやTHE 1975あたりとの共通点も見受けられ、この今ならではのミクスチャー感が強いテイストはポップフィールドでも十分に戦える仕上がりと言えるでしょう。

僕自身そこまで熱心リスナーというわけではありませんが、時折耳に飛び込んでくる楽曲の数々は40超えたオッサンの耳にも馴染みやすく、同時に刺激的なものでもあり、その流れでアルバムもチェックしていました。聴いて感じたのは、ケイティ・ペリーあたりが登場したときと同じような感触で、オルタナティブ感をしっかりアピールしながらもメインストリームでも受け入れられる、そんな「随所に大衆性の強いフックが仕掛けられた、オルタナティブ作品」だなと。

鳴らされている音そのものは、40代以上のリスナーが想像する“真っ当なロック”とは言い難いですし、ボーカルスタールもラップ以降のそれです。でも……例えばマシン・ガン・ケリー然り、先のPOST MALONEやTHE 1975しかり、実践していることの先鋭性は間違いなく“ロック”なんですよね。そういう概念的な“ロック”を忘れずに、2010年代的な音を提示してくれる。それが近年における“ロック”の解釈なのかもしれません。

あと、アルバム冒頭を飾る「Die For The Hype」を筆頭に、そのサウンドは“EDM以降”の低音の鳴りが特徴的で、可能な限り大音量で鳴らせば鳴らすほど、アルバムが持つ暴力性が増すというのも興味深いポイント。「Psychotic Kids」のようなドラムンベース調のミドルナンバーも、「I Love You, Will You Marry Me」のようなアップテンポのロックチューンも、「Kill Somebody」みたいなアコースティック主体の楽曲も、「21st Century Liability」みたいにラウド寄りのナンバーも、この“EDM以降”の質感で構築されているからこそアルバムの中でも浮くことなく統一感を持って楽しむことができる。このミクスチャー感、個人的には非常に好みでグッとくるものがあります。だからこそ、ホールジーやマシン・ガン・ケリー、マシュメロ、BRING ME THE HORIZONのような幅広いアーティストからラブコールを受けるんでしょうね。

このアルバムは1st EP『YUNGBLUD』(2018年)からの楽曲も含む、どちらかというと処女作といった1枚であり、以降に発表されているシングルなどを通じてドミニク・ハリソンの本性があらわになり、それが最初に爆発したのが昨年のEP『THE UNDERRATED YOUTH』かなと。なので、ヒップホップに苦手意識がある方はまず『THE UNDERRATED YOUTH』から聴いてみるといいかもしれません。6曲とコンパクトで、サウンド的なロック色もフルアルバム以上に濃いですしね。

 


▼YUNGBLUD『21ST CENTURY LIABILITY』
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2020年6月 1日 (月)

KAONASHI『WHY DID YOU DO IT?』(2018)

2018年11月に配信リリースされたKAONASHIの3rd EP。

彼らはアメリカ・ペンシルバニア州フィラデルフィア出身の5人バンド。バンド名は日本の某ジブリ系アニメのキャラクターから取られたものであることは明白で、彼らのアー写を見るとボーカルがドーモくんのTシャツを着ていたり、他メンバーもヘアバンド付けてたりモサかったりと、明らかに“オタク”であることがわかります。ボーカル、こっち見んな感が半端ない(笑)。

しかし、出してる音とバンドのキャラクターは切り離して考えるべきと言いますか、鳴らしているサウンドや楽曲群は非常にカッコいいポストハードコア/メタルコアだったりします。

適度なグルーヴィーさを持つ変幻自在なリズムに乗せて、カオティックなギターフレーズと時にヒステリックに叫び、時にセンチメンタルに歌声を響かせるボーカル。これらの要素で構築された楽曲群は、マスコアと呼ぶにふさわしいものがあるのではないでしょうか。オープニングを飾る「Real Leather」を筆頭に、ジェントとも異なる気持ち良さを持つリフやフレーズの数々は、間違いなくこのバンドの魅力のひとつと言えます。

そして、そのルックスや体格とは相反し、線の細さや繊細さを見せるシンガーのボーカルスタイルも日本人には親しみやすいものがあるはず。メロウなギターフレーズが耳に残る「You'll Understand When You're Older」や不穏さが際立つ「Coffee & Conversation」、ギターの不協和音が不思議と気持ちよく響く「My 5-Year Plan」はまさにその代表的なスタイルで、変態的なアレンジが施されているにも関わらず聴きやすいと感じられるのは、ボーカルの声質や歌唱法によるものが大きいのではないでしょうか。

そのボーカルの精細さが最大限に活かされているのが、穏やかなオープニングから伸びやかなサビへとつなげていく「M.O.R.G.A.N」ではないでしょうか。そこからカオティックなタイトルチューン「Why Did You Do It?」へと続く構成、なかなか良いです。各曲とも平均点は超えているのですが、ここからさらに洗練され強力な1曲が完成すれば、一気に知名度が高まるはず。本作はそんな可能性を大いに感じさせる処女作と言えるでしょう。

ちなみに彼ら、本作発表後の2018年夏にはPOLYPHIAやSAVES THE DAY、GIDEONなどが所属するEqual Vision Recordsと契約。本作に続く新曲のリリースが待たれるところです。大きなバックアップが付いたことで、このEPをはるかに超える力作に期待しておきましょう。

 


▼KAONASHI『WHY DID YOU DO IT?』
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2020年3月19日 (木)

WARDRUNA『RUNALJOD - RAGNAROK』(2016)

2016年10月にリリースされたWARDRUNAの3rdアルバム。本作が日本デビューアルバムとなっており、海外から1年半遅れの2018年3月に満を辞して発表さてました。

WARDRUNAはノルウェーのベルゲンを拠点とするバンド/ユニットで、元GORGOROTHのドラマーだったアイナル・セルヴィク(GORGOROTH時代はクヴィトラフンと名乗っていた)を中心に2003年に結成。自身の音楽ルーツに目覚めたアイナルが、土着的民謡や北欧神話などの伝承に触発されたことを機に、ブラックメタルの対極にあるトラッドフォークやゴシック、アンビエントといった“静”のスタイルで独自の音楽を構築しています。

アイナルはボーカルやドラムのほかにターゲルハルパ(擦弦楽器)、クラヴィクリラ(小型の竪琴)、ブッケホルン(角笛)、ルール(細長い管楽器)といった古楽器を多用。現在は彼の他に女性ボーカルのリンディ=ファイ・ヘラ、ルールやホルン、フルート、アイス・パーカッション奏者のエイリッフ・グンダーゼン、アルネ・サンヴォル(Vo)、HCダルガード(Vo)、ヒェル・ブラーテン(Vo)というメンバーが在籍しています。

本作はデビューアルバム『RUNALJOD - GAP VAR GINNUNGA』(2009年)から始まった、「創生」「生長」「終末」というサイクルを描く三部作の最終章にあたるもの。前作『RUNALJOD - YGGDRASIL』(2013年)まで在籍したガァールことクリスチャン・アイヴィン・エスペダル(Vo/ex. GORGOROTH)脱退を経て、1stアルバムから7年、結成から13年にてついに最初のコンセプトが完結することになります。

先に書いたように、ブラックメタル的な“動”の要素は皆無で、むしろそのサブジャンルとも言えるダークフォークに属する密室感の強い土着的なサウンドと、宗教音楽のような(言い方は失礼ですが)不気味なミニマルサウンドが交差する、非常にクセの強い楽曲が並んでいます。ドラムというよりもパーカッションをメインに使ったリズムセクションが土着感をより強め、パターン化されたフレーズをループすることで生み出される不思議な高揚感が聴き手にトリップを誘う。そういったところにも密教的な危うさが感じられるのではないでしょうか。

また、古ノルド語によるボーカルもまるで何かの神様(善の神か、あるいは悪霊か)を降臨させる呪文のようにも聞こえ、聴き手の情緒を不安に陥れる。だけど、なぜか聴くことをやめられない不思議な魅力が強い……そう、気づけばこの音色/ハーモニー/プリミティブなリズムに魅了されている自分がいるのです。

メタルの要素は皆無ですが、MYRKURなどにも通ずる魅力を持つアーティストだけに、メタルから派生したひとつの進化形と捉えて楽しむのもありかもしれません。

なお、彼らは昨年新たにSony Music / Columbia Recordsとメジャー契約。今年6月には通算5作目のアルバム『KVITRAVN』をリリース予定です。4作目『SKALD』(2018年)がほぼアイナルのソロアルバム形態だったので、三部作とソロスタイルを経たWARDRUNAが新たにどんなサウンドスケープを構築するのか、今から楽しみでなりません。

 


▼WARDRUNA『RUNALJOD - RAGNAROK』
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2019年12月 6日 (金)

CRYPTOPSY『THE BOOK OF SUFFERING』(2019)

CRYPTOPSYが2019年6月中旬にリリースした日本限定アルバム。

全8曲が収録された本作は、同年7月中旬に実現した7年ぶりの来日公演を記念して企画されたもので、もともとはアルバム前半4曲がEP『THE BOOK OF SUFFERING - TOME I』(2015年)、後半4曲がEP『THE BOOK OF SUFFERING - TOME II』(2018年)が初出という、連作となったシリーズEPをひとまとめにした内容となっています。

現在のメンバーはフロ、マット・マギャキー(Vo)、クリス・ドナルドソン(G)、オリヴィエ・ピナール(B)、フロ・モーニエ(Dr)の4人。ロード・ワーム(Vo)が脱退してからもだいぶ経ちますし、もはやこの4人編成は安定感すら感じられます。

事実、僕も7月13日の代官山UNIT公演に足を運んでいますが、計算され尽くしたプレイの数々と、音数が多いにも関わらずすべての音の粒が感じ取れるほどクリアなサウンドは、この手のバンドとしては異例といえるもので、熱狂的なリアクションを見せるオーディエンスとの相乗効果により、今まで観た彼らのステージの中でも一番と呼べる内容でした。まあとにかく、フロ・モーニエ先生の千手観音ドラミングが圧巻の一言で、あれだけ連打しても音の粒一つひとつが感じられるのは奇跡的だなと思うわけです。観られて本当によかった。

さて、改めてアルバムの話題に戻りましょう。前述のとおり、本作は2つの録音時期が異なるEPをひとつにまとめたもので、2作品の間には3年というタイムラグが生じています。しかし、『THE BOOK OF SUFFERING - TOME I』のラストである4曲目「Framed by Blood」と、『THE BOOK OF SUFFERING - TOME II』のオープニング曲である5曲目「The Wretched Living」の間にその“3年の差”は一切感じられません。そこには『THE BOOK OF SUFFERING』というひとつのテーマのもとに制作された連作という要素も大きく影響しているのでしょうか。

むしろ、アナログでいうところのA面(『TOME I』)とB面(『TOME II』)という形で、うまく色付けされているとさえ感じられる。つまり、これら8曲は本来収まるべき場所に、収まるべき形で収まったと言えるのではないでしょうか。

メロディやドラマチックさは皆無で、終始無慈悲なまでに轟音で攻めまくり、ときには複雑怪奇な展開で聴き手を驚かせる、CRYPTOPSYならではの個性はどの曲でも健在。むしろ、1曲1曲の際立ちはなかなかのものがあると思います。それはアルバムという形を想定して録音したものではなく、4曲のみというEPとして録音したのも功を奏しているのかもしれませんね。

正式なオリジナルアルバムではありませんし、この形で聴くことができるのは日本のファンのみですが、エクストリームメタルのエクストリームたる所以を存分に味わえる貴重な1枚はぜひとも2019年のうちに触れておいてもらいたいところです。

 


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2019年11月25日 (月)

DEF LEPPARD『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』(2018)

2018年11月末にリリースされた、DEF LEPPARDの最新グレイテスト・ヒッツ・アルバム。2枚組仕様とDISC 1のみの単品、同時期にデジタルリリースされたオリジナルのクリスマスソング「We All Need Christmas」を加えたアナログ盤の3形態が発売されました。

DEF LEPPARDのグレイテストヒッツ・アルバムはこれまでにも複数発表されておりますが、世界共通の収録内容という点においては本作が初めて。最初のベスト盤『VAULT: DEF LEPPARD GREATEST HITS (1980-1995)』(1995年)は北米とヨーロッパで一部収録内容が異なりましたし、ヨーロッパ&日本向けの『BEST OF DEF LEPPARD』(2004年)と北米向けの『ROCK OF AGES: THE DEFINITIVE COLLECTION』(2005年)もリリース時期および内容が異なるものでした。

そこから13、4年ぶりに制作された新たなグレイテストヒッツ・アルバムは、2005年以降に発表された新録曲……カバーアルバム『YEAH!』(2006年)、オリジナル作『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008年)、新曲入りライブアルバム『MIRROR BALL: LIVE & MORE』(2011年)、最新オリジナルアルバム『DEF LEPPARD』(2015年)、Spotify限定シングル『SPOTIFY SINGLES』(2018年)を加えた全35曲にて構成されています。

CD単品(1枚もの)および2枚組仕様のDISC 1は従来のグレイテストヒッツ同様、おなじみのシングルヒットをまとめたもの。そこに『SPOTIFY SINGLES』から「Personal Jesus」(DEPECHE MODEカバー)のリミックス・バージョンを追加した内容で、正直新鮮さは皆無。「Pour Some Sugar On Me」や「Rocket」がMV用に編集されたバージョンではなく、アルバム『HYSTERIA』(1987年)のテイクという点は過去のベストとは異なるところでしょうか。

となると、注目すべきは2枚組仕様のDISC 2ということになるわけでして。「Personal Jesus」以外の“2005年以降に発表された新録曲”はすべてこちらにまとめられており、というか“大ヒットしなかった曲”の総決算的な1枚とでも言えばいいのでしょうか(苦笑)。個人的にはこちらのディスクの内容が新鮮味を持って楽しむことができました。

実験作『SLANG』(1996年)からの楽曲をはじめ『DEF LEPPARD』からのシングル曲、「Promises」や「Bringin' On The Heartbreak」「Tonight」「Stand Up (Kick Love Into Motion)」といったDISC 1から漏れた80〜90年代の中ヒット曲、一般的には駄作として扱われる『X』(2002年)から唯一選ばれ佳作「Now」など、いわゆる“隠れた名曲”が満載なわけです。DISC 1が誰もが知る“DEF LEPPARDのパブリックイメージ”だとしたら、DISC 2は“DISC 1を通過した人に向けた、DEF LEPPARDのディープサイド”とでも言えばいいのかな。とにかく、これまで発表されたグレイテストヒッツ・アルバムの中では一番新鮮味を持って向き合えた1枚でした。

ちなみに、単曲配信された新曲「We All Need Christmas」はアコースティックベースの、シンプルなバラード。昨年よりDEF LEPPARDの過去作がデジタル配信開始となったことで、このように新曲を気軽に配信できるようになったのは、彼らのようにアルバム1枚に5〜10年近くかけてしまうバンドにとっては良い傾向なんじゃないでしょうか。「Two Steps Behind」の延長線上にあるこの曲、ストリングスをフィーチャーした美しいメロディは非常にリラックスして楽しめるもので、今後この季節になったら聴いておきたい1曲になるといいですね。

なお、本作のストリーミングバージョンは、『DEF LEPPARD』からの3曲を除いた全32曲入り。これはリリース元が異なったり契約上のあれこれが原因なんでしょうけど、今や個人でプレイリストを作れる時代。ここに改めて「We All Need Christmas」を含む全36曲の完全版を用意しましたので、こちらでお楽しみいただけたらと。

 


▼DEF LEPPARD『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』
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