YUNGBLUD『21ST CENTURY LIABILITY』(2018)
2018年7月6日にリリースされたYUNGBLUDの1stアルバム。日本盤未発売。
YUNGBLUDはこの8月に23歳になったばかりの鬼才ドミニク・ハリソンによるプロジェクトで、“若き血”を意味するプロジェクト名のごとく血気盛んで反骨心にあふれる型破りなスタイルで、若年層を中心に支持を集めています。ヒップホップやダブステップ以降の(広意義での)ロックをベースにしたそのサウンドからは、POST MALONEやTHE 1975あたりとの共通点も見受けられ、この今ならではのミクスチャー感が強いテイストはポップフィールドでも十分に戦える仕上がりと言えるでしょう。
僕自身そこまで熱心リスナーというわけではありませんが、時折耳に飛び込んでくる楽曲の数々は40超えたオッサンの耳にも馴染みやすく、同時に刺激的なものでもあり、その流れでアルバムもチェックしていました。聴いて感じたのは、ケイティ・ペリーあたりが登場したときと同じような感触で、オルタナティブ感をしっかりアピールしながらもメインストリームでも受け入れられる、そんな「随所に大衆性の強いフックが仕掛けられた、オルタナティブ作品」だなと。
鳴らされている音そのものは、40代以上のリスナーが想像する“真っ当なロック”とは言い難いですし、ボーカルスタールもラップ以降のそれです。でも……例えばマシン・ガン・ケリー然り、先のPOST MALONEやTHE 1975しかり、実践していることの先鋭性は間違いなく“ロック”なんですよね。そういう概念的な“ロック”を忘れずに、2010年代的な音を提示してくれる。それが近年における“ロック”の解釈なのかもしれません。
あと、アルバム冒頭を飾る「Die For The Hype」を筆頭に、そのサウンドは“EDM以降”の低音の鳴りが特徴的で、可能な限り大音量で鳴らせば鳴らすほど、アルバムが持つ暴力性が増すというのも興味深いポイント。「Psychotic Kids」のようなドラムンベース調のミドルナンバーも、「I Love You, Will You Marry Me」のようなアップテンポのロックチューンも、「Kill Somebody」みたいなアコースティック主体の楽曲も、「21st Century Liability」みたいにラウド寄りのナンバーも、この“EDM以降”の質感で構築されているからこそアルバムの中でも浮くことなく統一感を持って楽しむことができる。このミクスチャー感、個人的には非常に好みでグッとくるものがあります。だからこそ、ホールジーやマシン・ガン・ケリー、マシュメロ、BRING ME THE HORIZONのような幅広いアーティストからラブコールを受けるんでしょうね。
このアルバムは1st EP『YUNGBLUD』(2018年)からの楽曲も含む、どちらかというと処女作といった1枚であり、以降に発表されているシングルなどを通じてドミニク・ハリソンの本性があらわになり、それが最初に爆発したのが昨年のEP『THE UNDERRATED YOUTH』かなと。なので、ヒップホップに苦手意識がある方はまず『THE UNDERRATED YOUTH』から聴いてみるといいかもしれません。6曲とコンパクトで、サウンド的なロック色もフルアルバム以上に濃いですしね。
▼YUNGBLUD『21ST CENTURY LIABILITY』
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