ここ10年くらいは、来日するたびに必ず足を運ぶようにしているJUDAS PRIESTの日本公演。2009年秋の『LOUD PARK 09』の際にはロブ・ハルフォード(Vo)にインタビューする幸運な機会を得て、その足で幕張での『BRITISH STEEL』(1980年)完全再現ライブを観ることができました。また、その次に来日した2012年春のジャパンツアーはフェアウェルツアー名義で、脱退したK・K・ダウニングに代わりリッチー・フォークナー(G)が参加した最初の日本公演になりました。この際には自力で取った武道館公演と、その前日にレーベルからご招待いただいたZepp Tokyo公演の2つに足を運び、「これが最後なのか……」と若干悲しくなったりもしました。
しかし、彼らはその宣言を撤回し、2014年にはリッチーを含む編成で初のアルバム『REDEEMER OF SOULS』をリリース。2015年に再び来日するのですが、スケジュールなどの都合で泣く泣く断念。次こそは……と思っていたところ、以外にも早く新作『FIREPOWER』(2018年)が完成し、同作を携えたジャパンツアーが実現したのでした。しかし、ご存知のとおりグレン・ティプトン(G)がパーキンソン病を患っていることを発表し、ツアーに参加しないことを発表。海外公演ではときおり顔を出していたようですが、さすがに日本は……。とはいえ、次いつ観られるかわからないので、追加公演として行われたTOKYO DOME CITY HALL公演に参加することにしました。
セットリストはほぼ固定で、ジャパンツアーが始まってからもずっと一緒なので予習もしやすかったですし、何よりも個人的にかなり気楽に楽しめそうな内容だったので、事前に作成したプレイリストを聴きながら会場に到着。この日は通常のライブよりも30分遅い19時半スタートだったので、かなり余裕を持って参加できた会社員も多かったのではないでしょうか。
BLACK SABBATH「War Pigs」が大音量で鳴り始めると、会場が暗転。これがライブ開始の合図です。多くの観客が立ち上がる中、第2バルコニー席下手側でかなり近くから楽しめる環境だったこともあり、この日は座って観覧。「War Pigs」からオリジナルのSEに変わり、ステージを覆う幕に照明が当てられる。その幕の隙間からメンバーがステージに移動する姿が見えました。たぶんリッチーが通ったあとに、誰かに手を引かれるようにロブの姿も。そしてパワフルなギターリフとともに、「Firepower」から勢いよくライブはスタート。ロブは歌っていない間、ステージ上をL字に沿って歩き回る。その姿がちょっと滑稽というか……申し訳ない、なんだかルンバを見ているようで微笑ましかった(笑)。以前はどこかゼンマイ仕掛けのロボットみたいだったんだけど、今回は動きも若干スムーズで、しかも同じ動きをひたすら繰り返すから、もうなんというか……いや、カッコいいんですよ? 僕はそのコミカルさ含めて愛してますから。
グレンの代役としてツアーに参加しているアンディ・スニープ(G)は、最初に写真や動画で観たときは若干違和感が残ったんだけど、こうやって生で観るとその長身もあってわりとカッコいい。リッチーとの並び含めて、全然アリでした。その後方では、若手だと思っていたのにすでに30年選手だという事実にびっくりするスコット・トラヴィス(Dr)と、地味なアクションとバキバキのベースプレイでボトムを支えるイアン・ヒル(B)の姿。ああ、この人たちの頑張りがあるから、ロブはあれだけ遊べるんだよね(いや遊んでるわけではないが)。そう思うと、ちょっと胸が熱くなりました。
「Running Wild」「Grinder」と、キメキメのリフがたまらないオールドナンバーが続き、3曲終えるとロブが軽く挨拶。そしてリッチーのフィードバックノイズに続いて「Sinner」へ。ロブ、めっちゃ声出てるじゃん! 正直、プリーストに復帰したあとは加齢もあって、以前のように高音で歌うことは難しいのかなと思っていたところ、この日はキメるところでしっかりキメてる。新曲が今のロブの声域に合わせて作られているから耳にしっかり馴染むのはわかるとして、旧曲も「Painkiller」のようなモダンな曲以外は比較的歌いやすい曲を選んでいるような。けど、前回のツアーまでに残っていた“ハイトーンが目立つ”曲がかなり減り、そのぶん「Desert Plains」や「Night Comes Down」みたいに意外な選曲があったりして、個人的には非常に面白かったです。
あ、あと「The Ripper」ってこんなにカッコよかったっけ?って初めて思ったかも。今までは、80年代のプリーストナンバーと比べてもかなりオールドスクールな印象しかなかったけど、今回はなぜかモダンに聴こえた。ギタリスト2名によるものが大きいのかな。あと、イアンのベースが本当にバキバキした音で、そこもよかったのかも。
そして何度も言いますが、「Turbo Lover」は名曲です。名曲中の名曲。この曲ではロブが、サビを全部オーディエンスに歌わせる暴挙に。いや、それが客に盛り上がりにつながったのでよかったんだけど。僕もしっかり歌わせてもらいましたよ。楽しかった。
合間合間に入る『FIREPOWER』からの楽曲も、厳選された4曲という気がして、決して少なすぎるとは感じなかったかな。「Firepower」は言わずもがな、「Lightning Strikes」や「No Surrender」のど直球さ、そして21世紀版「Blood Red Skies」or「A Touch Of Evil」的立ち位置のミドルヘヴィバラード(と個人的には断言したい)「Rising From Ruins」の素晴しさたるや。文句なしのセレクトだと思いました。『FIREPOWER』というアルバムがどんな内容か、この4曲だけでも伝わるはずですから。
そういえば、ロブ様は2〜3曲歌うとジャケットを次々と変えて、優雅にステージに登場するのですが、その様子はまるで昭和の歌謡スターのようでした。着替えでステージから捌けている間に次の曲のイントロが始まり、着替えを終えると歌いながらステージに再登場するその姿、シビレます(笑)。
「Night Comes Down」「Rising From Ruins」とミディアムバラード2連発を終えると、いよいよ佳境へ。「Freewheel Burning」「You've Got Another Thing Comin'」とキラーチューンが立て続けに披露され、「Hell Bent For Leather」ではお約束となったバイクに跨ったロブ様が。まるで後尾しているかのようにバイクにへばりつき歌うロブの姿から目が離せませんでした。
本編ラストは、スコットの煽りからそのまま「Painkiller」へ。2000年代以降で一番“ちゃんと”歌えていたような気がします。ホント、ここまで安定して高音もしっかり出て、なおかつ中音域でセクシーさを見せるロブ、過去最高の仕上がりじゃないでしょうか。これが本ツアー100公演目ですよ? 正直、「このツアーで見納めかな?」と思っていた自分を悔い改めたい。もう1回やれるって、これ。スクリーンにはグレン・ティプトンがギターを弾く姿が映されていますが、そうだよね、もう1回グレンが弾く「Painkiller」も観たかったよね。でも、今日のリッチー&アンディのプレイもかなりアグレッシヴで良いんです。ああ、このクライマックス感、本当に最高。素敵な本編締めくくりでした。
本来、このあとのアンコールは「Electric Eye」のはずでした。いや、“はず”と勝手に決めつけるのはよくないか。ここまでの日本公演ではすべてそういうセトリでした。が、この日は聴き覚えのあるインダストリアル調SEに乗せて、ステージには帽子とサングラスをかけたスポーティーなファッションのおじさんが……スクリーンにアップが映し出されると、それがグレン・ティプトンだとわかりました。会場、この日一番の大歓声。そしてそのまま、予想を覆す「Metal Gods」がスタート! アンディは本来上手側ですが、そこをグレンに譲り、自身は下手後方で影武者のようにギターを弾きます。その控えめさ、嫌いじゃないよ。リッチーはそれまで使っていたVタイプからレスポールタイプにギターを持ち替え、グレンとの共演を心底楽しんでいる様子。ロブはそれまでのルンバからいきなりゼンマイ仕掛けに逆戻り(笑)。いや、この曲にはこの動きが正解か。ロブも楽しそう。いやあ、観てる間に鳥肌立って、しまいにゃ涙が出てきたよ。まさかプリーストのライブで泣くことになるとは、想像もしてなかったわ(苦笑)。
その後もグレンを含む6人編成で「Breaking The Law」、そして「Living After Midnight」でエンディング。最後も6人で挨拶をして、ロブの「JUDAS PRIESTコール」からのSE「We Are The Champions」(QUEEN)をみんなで合唱して、約100分におよぶライブは終了しました。
正直、今まで観たどのプリーストのライブよりも良かったし、胸に来るものがありました。僕が最初に観たのは1991年の『PAINKILLER』ツアーだったので、そこまで数を観ているほうではないですが、それでも“自分が観たかったJUDAS PRIEST”が見事なまでに表現されていたと思います。本当に行ってよかった。

[SETLIST]
01. Firepower
02. Running Wild
03. Grinder
04. Sinner
05. The Ripper
06. Lightning Strikes
07. Desert Plains
08. No Surrender
09. Turbo Lover
10. The Green Manalishi (With The Two Prong Crown)
11. Night Comes Down
12. Guardians 〜 Rising From Ruins
13. Freewheel Burning
14. You've Got Another Thing Comin'
15. Hell Bent For Leather
16. Painkiller
<ENCORE>
17. Metal Gods [with Glenn Tipton]
18. Breaking The Law [with Glenn Tipton]
19. Living After Midnight [with Glenn Tipton]