THE CURE『KISS ME, KISS ME, KISS ME』(1987)
THE CUREが1987年春にリリースした、通算7枚目のスタジオアルバム。初の2枚組作品(アナログ盤のみ。CDは1枚にまとたもの)で、全18曲入りという非常にボリューミーな大作となっています。が、初出時のCDは当時の容量の問題で、「Hey You!!!」がカットされた17曲入りでした。「Hey You!!!」を含めた全18曲で74分強なので、今となっては問題なく完全収録できるのですが、CDというものが出始めた頃の技術では70分強が最長収録時間だったようです。
実は、僕が初めて聴いたTHE CUREのアルバムが本作なんです。意外と遅かったんですよね。たぶんラジオかMTVで「Why Can't I Be You?」(全英21位/全米54位)を聴いて気になって、友人に「THE CUREって知ってる?」と聞いたらこのアルバムをダビングしてくれた。そんなことをよく覚えています。
まあ、まずオープニングの「The Kiss」で驚くわけですよね。6分強あるこの曲、歌が入るのが4分近くになってからですから。それまで、ひたすら浮遊感の強いサイケデリック調のインストが続くわけですし、正直ハードル高いな……と思ったものです。
が、このアルバムにある世界観はぶっちゃけ嫌いじゃなかったし、むしろ好みでした。ロバート・スミスのボーカルもクセは強いものの、決して苦手ではなかったし、何よりも歌メロがキャッチーで入っていきやすい。あとになって「これがゴスっていうのかぁ」なんてわかったふりをしたり(苦笑)、まあとにかく、自分にとっていろんなとっかかりとなった1枚でもあります。
とにかく、「The Kiss」や「Snakepit」などのサイケデリックでドロドロした楽曲がありつつ、先の「Why Can't I Be You?」、「Just Like Heaven」(全英29位/全米40位)、「Catch」(全英27位)といったシングル曲や「Perfect Girl」といった親しみやすいポップチューンもある。かと思えば、ゴージャス感のある「Hey You!!!」やファンキーな「Hot Hot Hot!!!」(全英45位/全米68位)、のちのV系にも通ずる前のめりな「Shiver And Shake」もあったりと、収録されている楽曲の幅がとにかく広い。
これはあとになって気づくことですが、このアルバムがバンドにとって大きなターニングポイントになっているんですよね。ここでの解放が、続く原点回帰的な『DISINTEGRATION』(1989年)へと続くと。で、『KISS ME, KISS ME, KISS ME』はチャート的にも初めて大きな成功を得ることができ(全英6位のみならず、全米35位で初のトップ40も記録)、これが機になり次作でのミリオンヒットにつながるわけですから。そう思うと、自分のようなビギナーがひっかかったのも理解できる気がします。
ほかにも良いアルバムはたくさんあるものの、思い入れという意味ではいまだに本作が一番かもしれません。

▼THE CURE『KISS ME, KISS ME, KISS ME』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3)
« QUEEN『A DAY AT THE RACES』(1976) | トップページ | THE STOOGES『FUN HOUSE』(1970) »
「1987年の作品」カテゴリの記事
- サブスクに存在する音源を通して1980年〜1994年のHR/HM(およびそれに付随するハード&ヘヴィな音楽)の歴史的推移を見る(2024.11.10)
- BLACK SABBATH『THE ETERNAL IDOL』(1987)(2024.04.09)
- STEVE JONES『MERCY』(1987)(2023.01.14)
- マイケル・ジャクソンの黄金期をオリジナルアルバムで振り返る(1979〜1991年)(2022.12.31)
- THE SMITHS『STRANGEWAYS, HERE WE COME』(1987)(2022.02.25)
「Cure, the」カテゴリの記事
- 2024年総括(2025.01.31)
- THE CURE『WISH』(1992)(2023.02.03)
- THE CURE『DISINTEGRATION』(1989)(2019.07.23)
- THE CURE『KISS ME, KISS ME, KISS ME』(1987)(2019.01.12)
- DEFTONES『COVERS』(2011)(2018.08.29)