NINE INCH NAILS『THE FRAGILE』(1999)
1999年9月に発表された、NINE INCH NAILS通算3作目のオリジナルアルバム。前作『THE DOWNWARD SPIRAL』(1994年)から5年半ぶりという待望の新作は、CD2枚組/全23曲/トータル104分という大作でした。当然のように全米1位を獲得し、アメリカのみで200万枚(2枚組なので、実質100万セット)を売り上げました。また、本作からは「The Day The World Went Away」(全米17位)という過去最大のヒット曲も生まれています。
この5年半の間には、リミックスアルバム『FURTHER DOWN THE SPIRAL』(1995年)や初の映像作品『CLOSURE』(1997年/日本未発売)に加え、『ナチュラル・ボーン・キラー』や『ロスト・ハイウェイ』といった映画のサウンドトラックへの楽曲提供もありました。そこから「Burn」や「The Perfect Drug」(全米46位)といった人気曲も生まれていますが、ツアー自体も1996年を最後に行われておらず、当時いろいろとヤキモキしたことをよく覚えています。
そんな中、アルバムに先駆けること2ヶ月。夏フェスシーズンに突入するというタイミングに届けられた先行シングル「The Day The World Went Away」。当然、アルバムまで待ちきれずにシングルを購入するのですが、そのサウンドに衝撃を受けるわけです。
……ドラム(リズム)がないじゃん、と。
ダークでヘヴィでゴシック調。前作からの代表曲「Hurt」をもう少しヘヴィにしたようなイメージの楽曲ですが、文字どおりリズムトラックがないアレンジで、その斬新さに衝撃を覚えました。と同時に、もっと派手なリードトラックを期待していた自分もおり、ちょっとだけ肩透かしを食らったことも記憶に残っています。
ただ、カップリングに収録された「Starfuckers, Inc.」はNINの攻撃的な部分とインダストリアルロックテイストが程よくミックスされた攻めの1曲で、こちらは1発で気に入りました。まあ、この2曲だけでは2枚組大作の全貌は掴めなかったわけですが。
そこから2ヶ月後、ようやく手元に届いた『THE FRAGILE』。“こわれもの”を意味するタイトルどおり、激しさの中にも穏やかさや繊細さが見え隠れする、非常に考えられた、ディープな作品集でした。ぶっちゃけ、すべてを理解/把握するまでに相当な時間を要しましたし、今でも完全に理解できているのかと問われると、ちょっと不安になってきます。
そういった要素は前作『THE DOWNWARD SPIRAL』にも含まれていたのですが、本作はその比じゃないくらいに濃厚。シンプルな破壊衝動や破滅願望とは違う、常に裏側にある“隠された本心”を読み取ろうとしないと、その面白みが可燃に理解できない。そんな“脳を刺激する”アルバムだと思いました。
1曲1曲の強度もさることながら、それらが組曲のように連なった構成は前作以上に練られたもの。すべてが歌モノではないのは今更な話ですが、特に本作はその実験度の高さが際立っています。『THE DOWNWARD SPIRAL』が5年の歳月を経て大人になった。だけと、別に物分かりが良い大人になったのではなく、思慮深くなったのだ。そんな内容だと、今も思っています。
だからなのか、本作がリリースされた1999年の年間ベストアルバムには本作を選んでおりません。ギリギリまで悩みましたが、結局はわかりやすい作品ばかりを選出した記憶が……その後、NINは2000年1月に待望の初来日を果たすのですが、僕は転職したばかりで行くことができず。悔し紛れにこのアルバムを夢中になって聴いていたら、だんだんとその世界にハマっていったわけです。
結局、NINを初めてナマで観たのは、次の来日となる2005年のサマソニでのこと。あのときはこのアルバムから、「The Frail」「The Wretched」、そして「Starfuckers, Inc.」くらいしかやらなかったんだよな……なんていう、自分にとっての思い出と因縁の1枚です。

▼NINE INCH NAILS『THE FRAGILE』
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