FAITH NO MORE『THE REAL THING』(1989)
1989年初夏に発表された、FAITH NO MORE通算3作目のオリジナルアルバム。今作からReprise Records経由でメジャー流通され、「Epic」(全米9位)や「Falling To Pieces」(同92位)のヒットも手伝い、アルバムは全米11位、100万枚以上を売り上げる出世作となりました。
前作『INTRODUCE YOURSELF』(1987年)まで在籍したチャック・モズリー(Vo)が脱退し、代わりにマイク・パットンが加わることでマイク・ボーディン(Dr)、ロディ・ボッタム(Key)、ビル・グールド(B)、ジム・マーティン(G)という黄金期ラインナップが完成。また、マイクという変態的な多彩さを持つフロントマンが加わったことで、その音楽性もより豊かなものへと進化します。
……と書けばかなり好意的ですが、実際はというと……リリース当時は正直、よくわかりませんでした(笑)。いや、ヘヴィメタル的要素も感じられるし、何よりBLACK SABBATH「War Pigs」のカバーもやってますし。アルバムオープニングの「From Out Of Nowhere」が持つ闇を突き抜けるような疾走感は、非常にハードロック的でしたしね。「Surprise! You're Dead!」も完全にヘヴィメタルのギターリフと複雑怪奇な展開が備わっているし、マイクのボーカルもメタルバンドらしいアジテートぶりを発揮していて納得できる部分もあるんです。
ですが、大ヒットした「Epic」のヒップホップ的スタイル……サウンドこそHR/HMのそれですが、リズムは跳ね気味だし、ボーカルもサビ以外はラップしてるし、エンディングではいきなり耽美なピアノソロで終わるし。妙にクセになるんですよ。でも……今でこそミクスチャーロックなんて括りで納得できるけど、80年代の単純なメタル脳では「黒か白か?」でしか判断できなかったから……10代の自分には、正直敷居の高い1枚に思えました。
けど、それも数年経てば自然と馴染んでいき、「Zombie Eater」の序盤がちょっとSKID ROWの「Quicksand Jesus」ぽいなとか(SKID ROWのほうが後追いなんだけど)、「The Real Thing」や「Woodpeckers From Mars」にはプログレメタル的な側面も感じられるなとか、勝手に解釈するようになり。単純にメタル一色で判断しようとすると理解できなかったことが、一気に透けて見えるようになり、そこからはこのアルバムばかり聴いていたことをよく覚えています。ここで慣らされたから、続く『ANGEL DUST』(1992年)にもスススッと入っていけたわけですしね。
でも、『ANGEL DUST』を経て振り返ると、この『THE REAL THING』って無駄にメジャー感が濃い1枚ですよね。変態度でいえばかなり低いし。今では物足りなさすら感じますが、それはそれ。久しぶりに「War Pigs」の完コピ(笑)を聴いて、当時を思い返してみようかな。

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